(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】低密度リポタンパク質の酸化状態および糖化状態を識別するための検出試薬およびキット
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20221129BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20221129BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221129BHJP
G01N 33/52 20060101ALI20221129BHJP
G01N 33/533 20060101ALI20221129BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20221129BHJP
G01N 21/78 20060101ALI20221129BHJP
C07K 17/14 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
C07K16/18
C12M1/34 F
G01N33/53 W
G01N33/52 C
G01N33/533
G01N21/64 F
G01N21/78 C
C07K17/14
(21)【出願番号】P 2019514675
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2018017287
(87)【国際公開番号】W WO2018199317
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2017090740
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517154410
【氏名又は名称】山田 健一
(73)【特許権者】
【識別番号】000238201
【氏名又は名称】扶桑薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】山田 健一
(72)【発明者】
【氏名】井手 友美
(72)【発明者】
【氏名】石田 悠馬
(72)【発明者】
【氏名】一圓 剛
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓一
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-513795(JP,A)
【文献】特開2012-225762(JP,A)
【文献】Nat. Chem. Biol.,2016年,Vol.12,pp.608-613
【文献】Br. J. Pharmacol.,2008年,Vol.153,pp.6-20
【文献】“糖化ストレスとは?”, [online], 2016.11.10, からだサポート研究所, [2018.7.19 検索], インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20161110173212/http://ebn.arkray.co.jp/disciplines/glycation-stress/stress-01/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12M 1/00-3/10
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化低密度リポタンパク質を認識する一次検出抗体、糖化低密度リポタンパク質を認識する一次検出抗体
、前記酸化低密度リポタンパク質を認識する一次検出抗体を認識する二次検出抗体、前記糖化低密度リポタンパク質を認識する一次検出抗体を認識する二次検出抗体および構造式(1):
【化1】
で示される蛍光ニトロキシドを含
み、前記酸化低密度リポタンパク質を認識する一次検出抗体を認識する二次検出抗体および前記糖化低密度リポタンパク質を認識する一次検出抗体を認識する二次検出抗体は、蛍光発色団で蛍光標識されていることを特徴とする、検出試薬。
【請求項2】
酸化低密度リポタンパク質を認識する一次検出抗体が、少なくとも、マロンジアルデヒドリジンを認識する抗体、4-ヒドロキシ-2-ノネナールリジンを認識する抗体およびアクロレインリジンを認識する抗体を含有する混合物である、請求項1に記載の検出試薬。
【請求項3】
糖化低密度リポタンパク質を認識する一次検出抗体が、少なくとも、ペントシジンを認識する抗体、クロスリンを認識する抗体、Nε-カルボキシメチルリジンを認識する抗体、Nε-カルボキシエチルリジンを認識する抗体、およびピラリンを認識する抗体を含有する混合物である、請求項1または2に記載の検出試薬。
【請求項4】
前記酸化低密度リポタンパク質を認識する一次検出抗体を認識する二次検出抗体および前記糖化低密度リポタンパク質を認識する一次検出抗体を認識する二次検出抗体は、互いに異なる発光波長を有する蛍光発色団で標識されている、請求項1に記載の検出試薬。
【請求項5】
前記酸化低密度リポタンパク質を認識する一次検出抗体を認識する二次検出抗体および前記糖化低密度リポタンパク質を認識する一次検出抗体を認識する二次検出抗体は、485nmで励起され、528nmにて蛍光強度を観測される、請求項1に記載の検出試薬。
【請求項6】
低密度リポタンパク質を認識する抗体が固相されたマイクロプレート、請求項1~
5のいずれかに記載の検出試薬、酸化低密度リポタンパク質を認識する一次検出抗体および糖化低密度リポタンパク質を認識する一次検出抗体を共通して認識する二次検出抗体を含み、二次検出抗体は、蛍光発色団で蛍光標識されていることを特徴とする、低密度リポタンパク質の
酸化状態および糖化状態を識別するためのキット。
【請求項7】
二次検出抗体を標識する蛍光発色団が7-ニトロソベンゾフラザン誘導体である、請求項
6に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化および糖化リポタンパク質を可視的に検出する技術に関する。より詳しくは、本発明は、低密度リポタンパク質にある脂質の酸化状態およびタンパク質の糖化状態を蛍光観察により検出するための検出試薬およびキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、脂質の酸化や糖化が老化を促進することが分かってきた。酸化や糖化などの変性を受けた脂質が様々な疾患に関連していることも明らかになり、そのような脂質の変性(酸化および糖化)の発生原因を突き止めることにより、老化防止、美容の分野のみならず、疾患の予防および治療に役立てようとする研究が多くなされている。
【0003】
スーパーオキシドアニオンラジカル、ヒドロキシラジカル、過酸化水素および一重項酸素などの活性酸素種(ROS)が生体内の様々な現象に影響し、なかでも、ヒドロキシラジカルは極めて反応性が高く、様々な疾患をもたらすことが明らかとなり、盛んに研究が進められている。このようなヒドロキシラジカルは脂質に作用して脂質ラジカルを生成することが知られている。
【0004】
脂質ラジカルは反応性が高く不安定なため、脂質ラジカルが生成すると連鎖的脂質過酸化反応が起こり、脂質過酸化物が発生し、さらに代謝産物として求電子性の化合物が生成される。脂質は不飽和脂肪酸を多く含み、その活性メチレン部分の水素原子が引き抜かれるためフリーラジカルによる攻撃を受け易く、反応式(a)~(c)に示す過程から構成される脂質過酸化連鎖反応が誘発される(
図1)。
【0005】
【0006】
フリーラジカル(R・)が不飽和脂肪酸(LH)から水素元素を引き抜き、連鎖反応が開始され(a);生成した脂質ラジカル(L・)と酸素分子との反応により脂質ペルオキシルラジカル(LOO・)が生成し(b);そして、脂質ペルオキシルラジカルが周囲の不飽和脂肪酸から水素原子を引き抜き、脂質ペルオキシド(LOOH)と脂質ラジカル(L・)が生成する(c)。再生された脂質ラジカル(L・)により次の連鎖反応サイクルが開始される。
【0007】
脂質ペルオキシド(LOOH)は、その代謝産物として、マロンジアルデヒド、4-ヒドロキシ-2-ノネナール、アクロレイン、プロパナール、グリオキサールをはじめとする数百種類以上の求電子性化合物に転換される。
これらの代謝産物は、単独で、またはタンパク質との複合体を形成して、それぞれが、細胞毒性、炎症、変異原性を有することが分かっている。
【0008】
生体内において、水に不溶性の脂質はアポタンパク質と結合し、リポタンパク質を形成する。また、細胞膜の形成に必須のコレステロールも水に不溶性であり、同様に、アポタンパク質と結合する。リポタンパク質は、比重により、高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタンパク質(LDL)などに分類される。
【0009】
特に、LDLに含まれる脂質(
図2a)がROSなどの作用により脂質ラジカルが生成され、脂質ペルオキシドを経由して代謝産物が生成する。このように、脂質のみが酸化変性を受けた状態のLDL(oxidized-state LDL)を低度変性酸化LDL(minimally modified oxidized LDL; MM-LDL)という(
図2b)。さらには、生成した代謝産物がLDL中のタンパク質のリジン残基やアルギニン残基を介して結合して、いわゆる酸化LDL(oxidized LDL; OxLDL)になる(
図2c)。
このような酸化LDLは、
図3に示すように、加齢性黄斑変性(age-related macular degeneration; AMD)や動脈硬化をはじめとする様々な疾患を引き起こすことが多大な研究により知られている[例えば、非特許文献1、2など]。
【0010】
また、血糖値が上昇すると、糖類がタンパク質と結合し、3-デオキシグルコソン(3-deoxyglucosone : 3DG)、グリオキサール(glyoxal : GO)、メチルグリオキサール(methylglyoxal : MGO)、グリセルアルデヒド(glyceraldehyde)、グリコールアルデヒド(glycolaldehyde)などのカルボニル化合物となり、最終的に、タンパク質のリジン残基(Lys)やアルギニン残基(Arg)と結合してペントシジン(pentosidine)、クロスリン(crossline)、Nε-カルボキシメチルリジン(Nε-(carboxymethyl) lysine; CML)、Nε-カルボキシエチルリジン(Nε-(carboxyethyl) lysine; CEL)、ピラリン(pyrraline)に代表される糖化最終生成物(advanced glycation endproducts : AGE)となることが知られている。このようなAGEが体内に蓄積すると、様々な疾患を引き起こすことが知られている。例えば、AGEが、血管に蓄積すると動脈硬化を引き起こすこと[非特許文献3]、骨に蓄積すると骨粗しょう症を引き起こすこと[非特許文献4]、脳に蓄積するとアルツハイマー症を引き起こすこと[非特許文献5]、が報告されている。
LDL上のタンパク質が糖化されて糖化LDLとなる。
【0011】
上記のように、LDLを構成する脂質やタンパク質が酸化または糖化されると、体全体に様々な疾患をもたらすことが分かり、その対策が色々と研究され、また、酸化状態LDL(MM-LDL, OxLDL)や糖化LDLを検出する技術が開発されてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
非特許文献1 :Javadzadeh, A. et al. Retina. 2012, 32(4), 658
非特許文献2 :Holvoet, P. et al. Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 2003, 23(8), 1444
非特許文献3 :Brownlee M., et al. : Science. 1986; 232: 1629-1632
非特許文献4 :Saito M., et al. : Osteoporos Int. 2006; 17: 986-995
非特許文献5 :Reddy VP, et al. : Neurotox Res. 2002; 4: 191-209
非特許文献6 :Itabe H. et al. J. Atheroscler, Thromb. 2007, 14(1), 1-11
非特許文献7 :Cerami A., et al., Sci. Am. 256; 90-96: 1987
非特許文献8 :Kotani K et al., Biochim Biophys Acta. 1215 : 121-5, 1994
非特許文献9 :Miyata T, et al., FEBS Lett 445: 202-206, 1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
板部らは、種々ある酸化LDLの免疫学的検出方法により得られた結果を総合的に勘案して、各検出方法の間で異なることを確認した[非特許文献6]。より具体的には、板部らの方法と協和メデックス株式会社が提供するMXキットとは、いずれもDLH3抗体を用いるサンドイッチELISA法により酸化LDL濃度を測定するにもかかわらず、相関性は弱かった(
図4)。
【0014】
DLH3抗体は酸化LDL上で形成された酸化ホスファチジルコリンを認識するものであるが、酸化LDL上には、上記したように、脂質ペルオキシド(LOOH)の代謝産物であるマロンジアルデヒド(malondialdehyde; MDM)、4-ヒドロキシ-2-ノネナール(4-hydroxy-2-nonenal; HEN)、アクロレイン(acrolein; ACR)、プロパナール(propanal)、グリオキサール(glyoxal)などとタンパク質との複合体が種々存在する。すなわち、従来の方法では、酸化LDLの酸化マーカーの一部を観察しているだけであった。
【0015】
糖化LDL上のAGEの多くは蛍光性であり、励起光波長370nmで発光波長440nmの蛍光を発光する[例えば、非特許文献7など]。これにより、ヒトの皮膚から直接蛍光測定する方法が検討されている。皮膚に存在が確認されている蛍光性AGEはペントシジンであるが、検出は成功していない。
一方、ペントシジン、CML、CEL、ピラリン等を認識する抗体や、AGEを検出するELISAキットはすでに市販されている。
【0016】
このように、酸化や糖化した個々の箇所をそれぞれ蛍光測定することはされてきたが、LDLの変性状態(酸化状態および糖化状態)を包括的に観察する手法は開発されていなかった。よって、本発明者らは、LDLの変性状態を包括的に観察する手法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、他の研究において、酸化ストレスを受けた生体から脂質を抽出し、このような脂質抽出物に構造式(1):
【0018】
【化1】
で示される蛍光ニトロキシド2,2,6-trimethyl-4-(4-nitrobenzo[1,2,5]oxadiazol-7-ylamino)-6-pentylpiperadine-1-oxyl (NBD-Pen)を作用させることにより、脂質ラジカルまたはその断片ラジカルを捕捉し、蛍光検出する方法を開発した。
【0019】
そこで、本発明者らは、上記の蛍光ニトロキシドを用いる蛍光検出による低度変性酸化LDLの検出、ELISA法による酸化LDLの検出、および、ELISA法による糖化LDLの検出を同時にまたは漸次行い、LDLの酸化状態および糖化状態のすべてを蛍光的に可視化して、LDLの変性状態を個別にまたは包括的に検出することに成功した。
【0020】
低度変性酸化LDLを検出する蛍光発光波長、酸化LDLを検出する蛍光発光波長および糖化LDLを検出する発光波長が、それぞれ、異なれば、3種類の変性状態を識別することができる。また、全ての蛍光発光波長を同様にすれば、LDLの受けている変性状態を包括的に確認することができる。
【発明の効果】
【0021】
LDLが受けている変性(酸化および糖化)の状態を蛍光法で可視化することにより、変性LDLに起因する疾患の早期発見、診断や治療の改善に有用な知見を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】低密度リポタンパク質(LDL)の酸化状態を示す概略図。
【
図4】従来の2つの酸化LDLの検出法の相関性を示すグラフ(出典:非特許文献6)。
【
図5】NBD-PenによるLDL中の脂質ラジカルの検出の感度につき、ラジカル発生剤による違いを比較するグラフ。
【
図6】酸化LDLに対する本発明のNBD-Penを用いた検出法と既存の検出法との感度を比較するグラフ。
【
図7】NBD-Pen投与した動脈硬化モデルマウスの大動脈サンプルの蛍光顕微鏡画像(a)、oil red染色したプラークのデジタル画像(b)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
参考例1:蛍光ニトロキシドの開発
本発明者らは、構造式(2):
【0024】
【化2】
で示されるTEMPO系ニトロキシド2,2,6,6-tetramethylpiperadine-N-oxylの2,6位置換体の新規合成法を開発し、ラジカル周辺にアルキル鎖を導入すれば、脂質親和性と脂質過酸化抑制能が上昇し、効率的に脂質ラジカルを捕捉できることを見出した。
【0025】
また、ニトロキシド(NO・)は、常磁性を有する安定なラジカルであり、電荷分離状態を伴う光誘起電子移動や電子-スピン交換による項間交差によって蛍光を減弱させる性質を有するので、ニトロキシドに蛍光発色団が共有結合した蛍光性ニトロキシドは、分子内電子移動により、蛍光は消光状態にある。ところが、ニトロキシドがフリーラジカルと反応して常磁性を喪失すれば、電子移動が起こらなくなるため、蛍光発光状態となることが確認された。すなわち、蛍光性ニトロキシドは、蛍光観測により、脂質ラジカルの捕捉を検出するプローブとして有用である。
【0026】
本発明者らは、TEMPO系ニトロキシドの4位カルボニル基をアミノ基に変換し、構造式(3):
【0027】
【化3】
で示される蛍光発色団7-ニトロソベンゾフラザン(7-nitrobenzofurazan; NBD)を共有結合させて、TEMPO系ニトロキシドのラジカル部位との近接性を持たせるようにした。
【0028】
検出対象とする脂質分子の大部分は生体膜内に存在し、疎水性環境を形成している。そのため、親水的環境では蛍光が減弱しているが、疎水的な環境において選択的に高い蛍光を発する環境応答性の蛍光発色団が最適である。そのため、本発明者らは、蛍光発色団として生体膜の相転移や膜融合、あるいは細胞内脂質代謝など、脂質分野で広く用いられているNBDを選択した。
【0029】
NBD誘導体の励起波長はおよそ470 nmであり、アルゴンレーザー励起 (488 nm)に適しているため、蛍光顕微鏡を用いたイメージングへと展開できるため、非常に有利である。さらに、発光極大が約530 nmであり、生体内物質による自家蛍光を軽減できる観点からもNBD誘導体を使用することは有利である。
【0030】
本発明者らは、TEMPO系ニトロキシドのラジカル部位の近傍に鎖状アルキル基を導入することにより、化合物の脂質親和性や立体障害が変化し、結果として脂質ラジカルを効率よく捕捉できることを見出した。
【0031】
本発明者らは、脂質反応性が高いNBD-ニトロキシドとして、2位を2つのメチル基で、6位をメチル基とペンチル基で置換した化合物A(NBD-Pen)を合成した。
【0032】
【0033】
実施例1:NBD-PenによるLDL中の脂質ラジカルの検出
まず、化合物A(NBD-Pen)が、LDL中に生成する脂質ラジカルを検出できるか調べた。酸化刺激には、銅イオン、鉄イオンおよび、LDLとの親和性が高く、動脈硬化症への関与が指摘されている鉄ポルフィリンHemin:
【0034】
【0035】
0.5%のMeCNを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に20 μgタンパク質/mlのLDLと10 μMのNBD-Penを溶解した溶液に、0~3 μMのCuSO
4、FeSO
4またはHeminを加え脂質ラジカルを発生させた。
これらの溶液の蛍光強度(λex: 470 nm, λem: 530 nm)を37℃にて60分間インキュベーションした後、37℃にて測定すると、Cu
2+、Fe
2+またはHeminのいずれでも濃度依存的に蛍光強度が増強し、特に、Hemin添加により蛍光検出の感度が高かった。(
図5)。このことから、NBD-Penは、LDL中で発生した脂質ラジカルと反応していることが示唆された。
【0036】
実施例2:酸化LDLに対する本発明のNBD-Penを用いた検出法と既存の検出法との比較
現在、用いられている酸化LDLの検出法は、主に2種類ある。
1つ目は、アガロースゲル電気泳動法である。酸化変性を受けたLDLはタンパク質変性により陰性荷電が増大している。そのため、アガロースゲルにサンプルを注入後、電位勾配をかけると、陰性化したLDLは陽性側への電気移動度が上昇する。つまり、この電気移動度により、LDLの酸化度が計測できる。しかし、ヒトの血中に存在する酸化LDL濃度はLDL濃度の0.1%以下と低く、本手法の感度では血中酸化LDLを検出することは非常に困難である。
2つ目は、酸化LDLに対するモノクローナル抗体を用いたELISA法である。ELISA法は、抗体を用いることで高感度な検出ができ、実際に、血中の酸化LDLの検出に成功している。これによって酸化LDLに対する研究が急速に進んだ。しかしながら、LDLは脂質とタンパク質からなる巨大な粒子であることから、必然的に抗酸化LDLモノクローナル抗体は粒子全体ではなく、ある一部分のみを認識する。そのため、ELISA法の多くは、酸化変性部位を認識する抗体とLDL中に存在するApoBタンパク質を認識する抗体とを組み合わせ、サンドウィッチELISA法により酸化LDLを検出している。さらに、LDL酸化過程で生じる脂質過酸化代謝物は多種多様な化学構造をとり、これにより生じるタンパク質変性部位も多岐に渡ることから、それぞれに対応した抗体の作製が必要である。そのため、様々な抗酸化LDL抗体が開発されてきた。例えば、脂質過酸化代謝物であるMDAやHNEがリジン残基 (Lys)を修飾することで生じるMDA-Lys, HNE-Lys, Acrolein-Lysを認識する、ML25[非特許文献8]、NA59[非特許文9]、抗アクロレインモノクローナル抗体(例えば、日研ザイル株式会社 日本老化制御研究所、MAR)などが知られている。
【0037】
上記のように、従来のアガロースゲル電気泳動法やELISA法では、タンパク質変性後の酸化LDLのみを標的としていた。一方、酸化脂質の検出手法としては、脂質酸化時の共役ジエン形成による230 nm吸収帯の測定や、LC/MS、TBARs (2-thiobarbituric acid reactive substances)法などがある。吸光光度法による検出は、脂質酸化反応を経時的に追跡でき、LDL酸化機序の詳細を把握する上で有用な手段であるが、感度や選択性の面で不十分である。これに対して、LC/MSや、MDAを検知するTBARs法は高感度である。しかしながら、前者は装置が高価であることに加え、1サンプルあたりの測定時間が長く汎用性に欠ける点、後者はアダクト形成過程で加熱処理をする際に未酸化脂質がMDA類似の構造に変化し、偽陽性を示す点などで改善の余地がある。
【0038】
脂質酸化によって生じる共役ジエンの234 nm付近の吸収帯を吸光光度法により追跡した。また、過酸化脂質 (LOOH)検出蛍光プローブであるジフェニル-1-ピレニルホスフェート(Diphenyl-1-pyrenylphosphate; DPPP)を用いて測定した。その結果、今回用いた濃度域においては、いずれの手法でも脂質過酸化物を検出できなかった(データ示さず)。
【0039】
次に、実施例1と同様に、Hemin添加により60分間酸化刺激を行ったLDLに対して、電気泳動法、TBARs法を用いて評価した。
具体的には、0.5%のMeCNを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS; pH 7.4)に20 μgタンパク質/mlのLDLと10 μMのNBD-Penを溶解した溶液に、0~3 μMのHeminを加え脂質ラジカルを発生させ、37℃にて60分間インキュベーションした後、反応させた溶液に対してそれぞれの手法により測定した。
【0040】
[電気泳動法によるLDL電気移動度の測定]
20 μg タンパク質/ml LDL, 0-3 μMのHeminをPBS (pH 7.4)中で混和後1時間反応させた溶液を、アガロースゲルに10 μl添加し、電圧50 Vで 2 時間電気泳動させた。アガロースゲルは、1 % Agarose H14 TAKARAをTAE緩衝液に加え、加熱・溶解後、型に流し込み静置して作製した。泳動バッファーにはTAE緩衝液を用いた。クーマシーブリリアントブルー(Coomassie brilliant blue; CBB)染色後、ゲルイメージング装置を用いて撮像し、電気移動度を算出した。数値は、Hemin無添加時の結果を基準とし、比を用いて表した。
【0041】
[TBARs法によるLDL中TBARsの検出]
20 μg タンパク質/ml LDL, 0-3 μMのHeminをPBS (pH 7.4)中で混和後1時間反応させた溶液160 μlに、20%酢酸 40 μl, 1.3% チオバルビツール酸(thiobarbituric acid; TBA)60 μl, 10% SDS 15 μlを加え、60℃で40分間、遮光条件下で反応させて、MDA-TBA2付加体を生成した。その後、2000 rpm で4分間遠心分離し、蛍光強度 (λex: 532 nm, λem: 585 nm)を測定した。数値は、Hemin無添加時の結果を基準とし、比を用いて表した。
【0042】
[NBD-Penを用いたLDL中脂質ラジカルの蛍光検出]
本発明のNBD-Penを用いた蛍光検出法では、実施例1で得られた蛍光強度につき、それぞれHemin無添加時を基準とする比で表した。
【0043】
[結果]
電気泳動法では、3 μM添加時で、わずかに陰性側へ移動していたにすぎなかった。TBARs法では、Hemin濃度依存的にTBARsレベルが上昇したが、NBD-Penと比べるとその程度は低かった(
図6)。
実施例1および2の知見から、Hemin添加により酸化刺激を行い、NBD-Penを用いれば、酸化LDLの状態を効率的に蛍光観察できることが確認された。
【0044】
実施例3:本発明のNBD-Penを用いた酸化脂質の蛍光マッピング
6週齢の雄性Apo-E knock outマウス(Apo
-/-)に高脂肪食を与えて3週間後、腹腔内注射により500 μM/kgにてNBD-Penを投与した。
NBD-Pen投与の15分間後に、マウスに3種混合麻酔をかけ、犠牲にして、速やかに胸部大動脈を摘出した。摘出した大動脈サンプルを蛍光顕微鏡にて、励起波長(470 nm)および発光波長(530 nm)でNBD-Pen由来の蛍光観測を行った(
図7a)。同じ大動脈サンプルのプラークのoil red染色した画像をデジタルカメラで撮影した(
図7b)。
NBD-Pen由来の緑色の蛍光発光を示した箇所(白色部分)と、oil red染色したプラークを示すオレンジ色の箇所(白色部分)は完全に一致した。このことは、酸化脂質は、動脈硬化によるプラークに存在することを示している。すなわち、本発明のNBD-Penを用いた蛍光法は、動脈硬化の箇所を検知することができることが確認された。
【0045】
実施例4:本発明のNBD-Penおよびカクテル抗体による変性LDLの検出
(1)MM-LDLの検出用キットの準備
MM-LDLの検出は、NBD-Penを用いる蛍光法により行う。対象の動物から採取した全血に最終濃度50 μMとなるようにNBD-Penを添加し、37℃で1時間反応させる。その後、100 μM Troloxを添加し、反応を停止させ、遠心分離する。上清より得た血漿から超遠心分離法により単離し、蛍光強度(λex: 470 nm, λem: 530 nm)を測定する。
【0046】
(2)OxLDLの検出用キットの準備
酸化LDLの検出は、脂質ラジカルから誘導された脂質過酸化代謝産物を代表するマロンジアルデヒド(MDA)、4-ヒドロキシ-2-ノネナール(HNE)およびアクロレイン(ACR)に対する一次抗体の混合物(カクテル抗体)を用いる酵素免疫測定法(enzyme-linked immunosorbent assay; ELISA)法により行う。これらの複数の一次抗体は同一の動物由来のものであって、検出対象の酸化LDLの由来動物以外のものである。
本発明では、酸化LDLに対するポリクローナル抗体を用いるのではなく、代謝産物の各々に対するモノクローナル抗体の混合物を用いることを要件とする。
例えば、ヒト由来の酸化LDLのMDA-LysやHNE-Lysを検出する場合、マウス由来の抗体(例えば、ML25, NA59)を用いることができる。この一次抗体に対して特異的に結合する二次抗体を用いる。このような二次抗体として、ヒトおよびマウス以外の動物由来の抗マウス抗体、例えば、ウサギ抗マウスIgGなどを用いることができる。
なお、本発明において、マイクロプレートに酸化LDLを固定するための捕捉抗体と、酸化LDL上の脂質過酸化代謝産物を検出する一次抗体により酸化LDLをサンドイッチする点で、サンドイッチELISA法を適用するが、さらに、一次抗体に対して標識分子が標識された二次抗体を反応させる点で、間接法を適用する。
【0047】
二次抗体には、光学的手法で検出するための標識分子が標識されている。
ホースラディッシュペルオキシダーゼ(horse radish peroxidase; HRP)またはアルカリホスファターゼ(alkali phosphatase; ALP)などの酵素が標識された二次抗体を用いることができる。HRP標識抗体を用いる場合、テトラメチルベンジジン(tetramethylbenzidine; TMB)、o-フェニレンジアミン(o-phenylenediamine; OPD)、2,2-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸](2,2-azinobis[3-ethylbenzothiazoline-6-sulfonic acid; ABTS)などの発色基質を添加する。HRPは、過酸化水素を酸化剤としてこれらの発色基質を酸化して、強い光を発色させることにより分光的に観察することができる。ALP標識抗体を用いる場合、p-ニトロフェニルホスフェート(p-nitrophenylphosphate; pNPP)などの発色基質を添加する。ALPは、アルカリ条件下で、pNNPを強い黄色のp-ニトロフェノールを生成させることにより、分光的に観察することができる。
【0048】
二次抗体には任意の蛍光色素を標識することができる。検出対象ごとに異なる蛍光色素を付与することができるが、LDLの酸化状態を包括的に可視化することができるので、検出対象に共通する蛍光色素を付与することが好ましい。
例えば、Thermo Fisher Scientific社が提供する抗体ラベリングキットを用いて、対象の二次抗体を蛍光標識する。前記ラベリングキットには、励起波長/発光波長の異なる複数種のアミン反応性蛍光色素が含まれているので、可視化の目的に合わせて、適宜、選択することができる。
【0049】
このような蛍光色素は、同社の蛍光標識プロトコルに準じて、二次抗体に標識する。すなわち、以下の工程により、蛍光標識を行う。蛍光標識後、精製を行う。
1.1 重炭酸ナトリウム(成分B)の入ったバイアルに1mLの脱イオン水(dH2O中)を添加することによって、重炭酸ナトリウムの1 M溶液を調製する。ボルテックスを行うか、ピペットで液を上下させて、完全に溶解させる。重炭酸溶液はpH 8~9を有し、最大2週間にわたって2~8℃で保存することができる。
1.2 標識される抗体が、適当な緩衝液中の1 mg/mL以上の濃度を有する場合、1 mg/mLに希釈し、次いで、10分の1体積の重炭酸ナトリウムの1 M溶液(ステップ1.1で調製した)を添加する。
タンパク質が適切な緩衝液からの凍結乾燥粉末である場合、タンパク質に適量の0.1 M炭酸水素ナトリウム緩衝液を添加することによって、1 mg/mLの抗体溶液を調製する。1M溶液をdH2Oで10倍希釈し、0.1M重炭酸ナトリウム緩衝液を調製する。
注釈: スクシンイミジルエステルとTFPエステルはアルカリ性pHで効率的に反応するので、重炭酸を添加して反応混合物のpHを上昇させる(pH8~9)。
1.3 100μLの(ステップ1.2からの)タンパク質溶液を反応性染料のバイアルに移す。バイアルをキャップし、数回優しく転倒して染料を完全に溶解させる。タンパク質溶液の激しい撹拌は、タンパク質の変性をもたらす可能性がある。
注釈:視覚的に色素が完全に溶解していることを確認するために、それは反応染料のバイアルのラベルをはがせばいい。
1.4 溶液を室温にて1時間インキュベートする。10~15分毎に、バイアルを優しく転倒して2つの反応物を混合して標識効率を高める。
【0050】
二次抗体にビオチンを結合させ、蛍光標識アビジンを添加することにより、増感することもできる。
【0051】
検出対象の酸化LDLに対して適切なELISAキットが市販されていなければ、自ら作製することもできる。
【0052】
(3)糖化LDLの検出用キットの準備
糖化LDLの検出は、AGEを代表するペントシジン、クロスリン、CML、CEL、およびピラリンに対する一次抗体の混合物(カクテル抗体)を用いる酵素免疫測定法(enzyme-linked immunosorbent assay; ELISA)法により行う。これらの複数の一次抗体は同一の動物由来のものであって、検出対象の糖化LDLの由来動物以外のものである。
本発明では、糖化LDLに対するポリクローナル抗体を用いるのではなく、代謝産物の各々に対するモノクローナル抗体の混合物を用いることを要件とする。
例えば、ヒト由来の糖化LDLのCMLを検出する場合、マウス由来の抗CML抗体(例えば、コスモ・バイオ株式会社 AGE-M01)を用いることができる。この一次抗体に対して特異的に結合する二次抗体を用いる。このような二次抗体として、ヒトおよびマウス以外の動物由来の抗マウス抗体、例えば、ウサギ抗マウスIgGなどを用いることができる。
二次抗体には、光学的手法で検出するための標識分子が標識されている。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(horse radish peroxidase; HRP)またはアルカリホスファターゼ(alkali phosphatase; ALP)などの酵素が標識された二次抗体を用いることができる。
HRP標識抗体を用いる場合、テトラメチルベンジジン(tetramethylbenzidine; TMB)、o-フェニレンジアミン(o-phenylenediamine; OPD)、2,2-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸](2,2-azinobis[3-ethylbenzothiazoline-6-sulfonic acid; ABTS)などの発色基質を添加する。HRPは、過酸化水素を酸化剤としてこれらの発色基質を酸化して、強い光を発色させることにより分光的に観察することができる。
ALP標識抗体を用いる場合、p-ニトロフェニルホスフェート(p-nitrophenylphosphate; pNPP)などの発色基質を添加する。ALPは、アルカリ条件下で、pNNPを強い黄色のp-ニトロフェノールを生成させることにより、分光的に観察することができる。
【0053】
上記の酸化LDLでの説明と同様に、二次抗体には任意の蛍光色素を標識することができる。検出対象ごとに異なる蛍光色素を付与することができるが、LDLの糖化状態を包括的に可視化することができるので、検出対象に共通する蛍光色素を付与することが好ましい。
【0054】
二次抗体にビオチンを結合させ、蛍光標識アビジンを添加することにより、増感することもできる。
【0055】
上記の酸化LDLでの説明と同様に、検出対象の糖化LDLに対して適切なELISAキットが市販されていなければ、自ら作製することもできる。
【0056】
(4)変性LDLの蛍光観察
対象の変性LDLを捕捉する捕捉抗体が固相された96ウェルマイクロプレートを準備する。対象の変性LDLを捕捉するのに適切なマイクロプレートがない場合、適切な捕捉抗体を、炭酸-炭酸水緩衝液またはPBSで希釈した溶液(0.2~100 μg/mL)を0.2 mLづつ各ウェルに滴下し、37℃にて1時間インキュベートする。その後、溶液を除去し、洗浄バッファーでプレートを3回洗浄することにより、捕捉抗体が固相されたマイクロプレートを得る。
キャリブレーターを希釈して、1/2希釈系列(2000、1000、500、250、125、62.5、および31.2 pg/mL)を作成する。
サンプルを調製する。
希釈したキャリブレーター用に7ウェルおよびブランク用に1ウェルを割り当てる。
各ウェルに、100 μLの希釈キャリブレーター、ブランクおよびサンプルを添加し、プレートシーラーでカバーして、37℃にて2時間インキュベートする。
各ウェルの溶液を除去するが、このとき、洗浄は行わない。
各ウェルに、酸化LDL用のマウス由来一次検出抗体(MDA-Lys, HNE-Lys, Aclolein-Lysを認識するためのカクテル抗体)、糖化LDL用のマウス由来一次検出抗体(ペントシジン、クロスリン、CML、CEL、およびピラリンを認識するためのカクテル抗体)ならびにNBD-Penを含有する検出試薬Aを100μL添加し、プレートシーラーでカバーして、37℃にて1時間インキュベートする。
酸化LDL用のマウス由来一次検出抗体として、ML25または4C7 (ab17354)(Abcam社)、NA59またはHNEJ-2 (ab48506)(Abcam社)、MARが混合されたカクテル抗体を用いることができる。
糖化LDL用のマウス由来一次検出抗体として、ES12(Exocell社)、CML26 (ab125145)(Abcam社)、ab23722(Abcam社)が混合されたカクテル抗体を用いることができる。
各ウェルにつき、溶液を吸引除去し、350 μLの洗浄液で洗浄し、1~2分間放置し、その後、全てのウェルから残留液を完全に除去する作業を3回繰り返す。
各ウェルに、二次検出抗体を含有する検出試薬Bを100 μL添加し、プレートシーラーでカバーして、37℃にて1時間インキュベートする。この二次検出抗体は、酸化LDL用のマウス由来一次検出抗体および糖化LDL用のマウス由来一次検出抗体を共通して認識するウサギ抗マウス抗体であり、蛍光発色団が結合している。
このような蛍光発色団としては、NBD-Penの励起波長485 nmで励起され、519 nmに発光極大を有するAlexa FluorR 488 (Thermo Fisher Scientific社)などが好ましい。より好ましくは、7-ニトロソベンゾフラザン(7-nitrobenzofurazan; NBD)をN-ヒドロキシスクシンイミド活性エステルを導入した構造式(5):
【0057】
【化6】
で示されるNBD-NHSを用いて、二次検出抗体をNBDで蛍光標識する。
【0058】
あるいは、以下の構造式(6):
【0059】
【化7】
で示されるアルキン化またはアジド化TEMPO系ニトロキシド(式中、Rはアルキン基またはアジド基を示す。)に二次抗体に用いる蛍光発色団が結合した蛍光ニトロキシドを用いることもできる。
各ウェルにつき、溶液を吸引除去し、350 μLの洗浄液で洗浄し、1~2分間放置し、その後、全てのウェルから残留液を完全に除去する作業を3回繰り返す。
各ウェルに、50 μLの反応停止液を添加する。
マイクロプレートリーダーを用い、485 nmの励起光で蛍光発色団を励起し、528 nmにて蛍光強度を観測した。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の蛍光検出法を用いれば、低密度リポタンパク質(LDL)の変性状態(酸化状態および糖化状態)を包括的に観察することができる。包括的な観察結果により、変性LDLと疾患との関連性の研究を促進することができ、疾患の予防や治療に役立てることができる。