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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】磁性粉除去装置
(51)【国際特許分類】
   E01H 8/10 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
E01H8/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019123408
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021008766
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501272454
【氏名又は名称】助川鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094156
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 民安
(72)【発明者】
【氏名】助川 幸寛
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特許第3249980(JP,B2)
【文献】実公昭49-014802(JP,Y1)
【文献】実開昭57-199055(JP,U)
【文献】特開昭54-145547(JP,A)
【文献】特開2005-324160(JP,A)
【文献】中国実用新案第206901612(CN,U)
【文献】中国実用新案第2545149(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 8/10
J-STAGE
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールにガイドされながら走行する車輪を備えた走行体に固定される装着手段と、
上記車輪と接触するレールの部位に接触して転動し、非磁性体により円筒状に成形された転動ローラと、
この転動ローラの内側に配置され上記レール上の磁性粉を該転動ローラの外周面に磁着させる内側磁石と、
スキージと、を備え、
上記スキージは、下端が上記転動ローラの外周面に摺接し板状に成形されてなる基材と、この基材の正面及び背面の双方に固定され板状に成形された板状磁石と、を有してなり、
上記転動ローラの外周面に磁着された上記磁性粉は、上記基材の先端により該転動ローラの外周面から取り除かれるとともに、上記板状磁石に磁着されることを特徴とする磁性粉除去装置。
【請求項2】
前記装着手段が配置され挿通穴が形成された装着プレートと、この装着プレートに形成された挿通穴に挿通されてなるスライド軸と、このスライド軸の下端に固定された先端側には前記スキージが挿通される挿通空間が形成されたベース板と、このベース板の一端に基端が取り付けられた左アームと、上記ベース板の他端に基端が取り付けられた右アームと、上記左アームと右アームとの先端側において転動自在に支持された前記転動ローラと、を備え、
上記スキージは、上記挿通空間に挿通されてなるとともに、該スキージの自重で前記基材の先端が前記転動ローラの外周面に当接してなることを特徴とする請求項1記載の磁性粉除去装置。
【請求項3】
前記スキージの上端には、作業者の手指で把持されるとともに該スキージの肉厚よりも広い幅に成形されてなる把持板部が形成されてなることを特徴とする請求項2記載の磁性粉除去装置。
【請求項4】
前記左アームと右アームとは、前記ベース板に対する取付角度がそれぞれ変更可能とされてなることを特徴とする請求項2又は3記載の何れかの磁性粉除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば走行体の走行をガイドするレールに堆積し又は付着された鉄粉等の磁性粉を除去する磁性粉除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで金属や樹脂或いは食品等を加工する工場の天井近くには、該工場内で使用される材料や装置又は器具等を所定の場所から他の場所に移動させることを目的として、クレーンが使用されている場合が多い。こうしたクレーンは、上記材料や装置等を昇降させるクレーン本体と、このクレーンを所定の方向にガイドするレールと、このレールに沿って上記クレーン本体に装着されたモータの回転駆動力により上記レールを走行する車輪を備えており、上記クレーン本体が移動する場合には、上記レールと車輪との摩擦抵抗により、該クレーン本体が推進するように構成されている。
【0003】
ところで、上記クレーン本体の移動をガイドする上記レールには、工場内における塵埃やミストが付着又は堆積することが多く、このようにレールに塵埃等が付着等している場合には、該レールと車輪とが互いにスリップすることにより上記モータの駆動力が適正にクレーン本体の推進力とされないばかりか、上記車輪又はレールが損傷する危険性もあり、こうした課題を解決するために、上記レールに付着等した上記塵埃等をブラシの先端により除去するレール清掃装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3249980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記工場内に配置されたレールや、このレールにガイドされて走行する車輪は何れも鉄を素材とする場合が多く、該レール上を車輪が長期間に亘って行われる走行動作が繰り返されることにより、該レールと車輪との摩擦によりこれらの一方又は双方が摩耗し、鉄粉が発生する。また、上記レール又は車輪に錆が発生している場合にもこうした鉄粉が発生する場合が多い。
【0006】
しかしながら、こうした原因によりレールに鉄粉が付着したり該鉄粉が堆積した場合、上記特許文献1に開示されたレール清掃装置では、レール上の鉄粉は上記ブラシにより除去されるものの、除去された鉄粉は落下して、工場に設置した機械、装置等に付着するばかりか、工場内で加工する各種の材料にも付着したり混入したりすることとなり、工場内で生産、製造する製品又は商品の品質を著しく劣化させる危険性さえ生じている。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の技術が有する課題を解決するために提案されたものであって、上記レールに付着又は堆積した鉄粉等の磁性粉を効果的に除去するだけでなく該磁性粉を保持し、落下する危険性を有効に防止することができる新規の磁性粉除去装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、レールにガイドされながら走行する車輪を備えた走行体に固定される装着手段と、上記車輪と接触するレールの部位に接触して転動し、非磁性体により円筒状に成形された転動ローラと、この転動ローラの内側に配置され上記レール上の磁性粉を該転動ローラの外周面に磁着させる内側磁石と、
スキージと、を備え、上記スキージは、下端が上記転動ローラの外周面に摺接し板状に成形されてなる基材と、この基材の正面及び背面の双方に固定され板状に成形された板状磁石と、を有してなり、上記転動ローラの外周面に磁着された上記磁性粉は、上記基材の先端により該転動ローラの外周面から取り除かれるとともに、上記板状磁石に磁着されることを特徴とするものである。
【0009】
この第1の発明に係る磁性粉除去装置では、上記レールにガイドされながら走行体が走行すると、上記転動ローラも転動するとともに、該転動ローラは、車輪と接触するレールの部位に接触して転動するものであることから、レールに付着し又は堆積した鉄粉等の磁性粉は、一旦上記内側磁石の磁力により該転動ローラの外周面に磁着する。そして、一旦上記転動ローラの外周面に磁着した磁性粉は、基材の先端により取り除かれ、この取り除かれた磁性粉は、該基材から上記板状磁石の磁力により徐々に該一方又は他方の板状磁石に磁着される。
【0010】
したがって、上記第1の発明に係る磁性粉除去装置によれば、走行体を構成する車輪と接触するレールの部位に付着され又は堆積されていた磁性粉を簡単に取り除くことができ、ひいては、レールから落下することにより、工場内で生産等される製品又は商品の品質が劣化されてしまう事態も有効に防止することができる。
【0011】
なお、上記第1の発明を構成する装着手段は、上記走行体にこの磁性粉除去装置が装着されるものであれば、ボルト及びナットからなる締結具によるものは勿論、他の一般的な手段が採用されたものであっても良い。また、上記転動ローラは、非磁性体(非磁性材料)により円筒状に成形されたものであり、この非磁性体は、例えば、特定のステンレススチール(SUS304,305,316等)やアルミニウム又は樹脂若しくはゴム等を使用することができる。また、上記内側磁石は、上記転動ローラの内部に収容されたものであり、少なくとも上記レールに付着等した磁性粉を該転動ローラの表面に磁着できるものであれば、その形状や数は特に限定されるものではない。なお、この内側磁石は、上記転動ローラに固定されていることが好ましい。
【0012】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記装着手段が配置され挿通穴が形成された装着プレートと、この装着プレートに形成された挿通穴に挿通されてなるスライド軸と、このスライド軸の下端に固定された先端側には前記スキージが挿通される挿通空間が形成されたベース板と、このベース板の一端に基端が取り付けられた左アームと、上記ベース板の他端に基端が取り付けられた右アームと、上記左アームと右アームとの先端側において転動自在に支持された前記転動ローラと、を備え、上記スキージは、上記挿通空間に挿通されてなるとともに、該スキージの自重で前記基材の先端が前記転動ローラの外周面に当接してなることを特徴とするものである。
【0013】
この第2の発明に係る磁性粉除去装置では、上記装着プレートには挿通穴が形成され、この挿通穴には、スライド軸が挿通されている(挿通穴にスライド軸が遊嵌されており、装着プレートとスライド軸とは互いに固定されていない)。また、このスライド軸には、ベース板、左アーム、右アーム及び転動ローラが固定され又は取り付けられている。したがって、上記レールには、上記スライド軸、ベース板、左アーム、右アーム及び転動ローラの荷重全体が作用する。そして、上記レールに多少の段差が存在したり異物が付着していたりした場合には、これらの異物等に上記転動ローラが接触すると、該スライド軸、ベース板、左アーム、右アーム及び転動ローラ全体がやや上昇し、その後に再びレールに接触する。したがって、こうした構成に係る磁性粉除去装置によれば、レールに多少の段差等がある場合であっても、それらを吸収して安定的な走行体の走行を実現することができる。また、こうした構成を採用することにより、この磁性粉除去装置を構成する上記装着プレートを走行体に装着する位置が、レールに接近していたり離間していたりする場合であっても、こうした走行体とレールとの距離の相違を吸収することができる。換言すれば、レールと走行体(に装着プレートが装着可能な位置)との位置関係が、走行体の大きさや形状又は構造によって、種々相違する場合であったとしても、こうした相違に悪影響を受けることなく、確実にこの磁性粉除去装置を走行体に装着することが可能となる。
【0014】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第2の発明において、前記スキージの上端には、作業者の手指で把持されるとともに該スキージの肉厚よりも広い幅に成形されてなる把持板部が形成されてなることを特徴とするものである。
【0015】
この第3の発明に係る磁性粉除去装置では、前記スキージの上端には、作業者の手指で把持されるとともに該スキージの肉厚よりも広い幅に成形されてなる把持板部が形成されていることから、作業者は、この把持板部を把持し、レールとは反対方向に、このスキージを移動させることにより、該スキージは、上記ベース板に形成された挿通空間から抜き取る(取り除く)ことができる。すなわち、この第3の発明に係る磁性粉除去装置によれば、上記スキージの摩耗により交換したり、長期間の使用により大量の磁性粉が上記板状磁石に磁着したことを原因に、該磁性粉を取り除き再び装着したりする作業を極めて容易且つ迅速に行うことができ、またこうした作業中に、上記板状磁石に付着した磁性粉に作業者が触れてしまうことを有効に防止することができる。
【0016】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第2又は第3記載の発明の何れかにおいて、前記左アームと右アームとは、前記ベース板に対する取付角度がそれぞれ変更可能とされてなることを特徴とするものである。
【0017】
この第4の発明に係る磁性粉除去装置では、前記左アームと右アームとは、前記ベース板に対する取付角度がそれぞれ変更可能とされており、こうした左アームと右アームとベース板との取付角度が変更されると、上記スキージの先端が上記転動ローラの外周面に摺接する位置も変化される。すなわち、この第4の発明に係る磁性粉除去装置によれば、左アームと右アームとベース板との取付角度を適宜変更することにより、最も磁性粉を転動ローラの外周面から取り除くことができる位置に調整することができる。また、こうした構成を採用することにより、レールと走行体(に装着プレートが装着可能な位置)との位置関係が、走行体の大きさや形状又は構造によって、種々相違する場合であったとしても、こうした相違に悪影響を受けることなく、確実にスキージの先端を上記転動ローラの外周面に摺接させることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明(請求項1記載の発明)に係る磁性粉除去装置によれば、走行体を構成する車輪と接触するレールの部位に付着され又は堆積されていた磁性粉を簡単に取り除くことができ、ひいては、レールから落下することにより、工場内で生産等される製品又は商品の品質が劣化されてしまう事態も有効に防止することができる。
【0019】
また、上記発明に係る磁性粉除去装置では、前記基材の正面と背面との双方には、それぞれ前記板状磁石が固定されていることから、上記走行体が一方向に走行した場合であってもその反対方向に走行した場合であっても、上記何れかの板状磁石に磁性粉を保持することができる。
【0020】
また、上記第2の発明(請求項2記載の発明)に係る磁性粉除去装置によれば、レールに多少の段差等がある場合であっても、それらを吸収して安定的な走行体の走行を実現することができる。また、こうした構成を採用することにより、レールと走行体(に装着プレートが装着可能な位置)との位置関係が、走行体の大きさや形状又は構造によって、種々相違する場合であったとしても、こうした相違に悪影響を受けることなく、確実に装着することが可能となる。
【0021】
特に、上記第3の発明(請求項3記載の発明)に係る磁性粉除去装置によれば、上記スキージの摩耗により交換したり、長期間の使用により大量の磁性粉が上記板状磁石に磁着したことを原因に、該磁性粉を取り除き再び装着したりする作業を極めて容易且つ迅速に行うことができるとともに、こうした作業中に、上記板状磁石に付着した磁性粉に作業者が触れてしまうことを有効に防止することができる。
【0022】
また、上記第4の発明(請求項4記載の発明)に係る磁性粉除去装置によれば、左アームと右アームとベース板との取付角度を適宜変更することにより、最も磁性粉を転動ローラの外周面から取り除くことができる位置に調整することができる。また、こうした構成を採用することにより、レールと走行体(に装着プレートが装着可能な位置)との位置関係が、走行体の大きさや形状又は構造によって、種々相違する場合であったとしても、こうした相違に悪影響を受けることなく、確実にスキージの先端を上記転動ローラの外周面に摺接させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態に係る磁性粉除去装置を示す正面図である。
図2図1に示す磁性粉除去装置の右側面図である。
図3図1に示す磁性粉除去装置の平面図である。
図4図1に示す磁性粉除去装置からスキージを取り除いた状態を示す正面図である。
図5図3に示す磁性粉除去装置からスキージを取り除いた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態に係る磁性粉除去装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
この実施の形態に係る磁性粉除去装置1は、図1又は図2に示すように、レールRにガイドされながら走行するクレーン本体C(図2参照)に装着されるものであり、該クレーン本体Cの正面又は背面に装着される装着プレート2と、スライド軸3と、第1のベース板4と、この第1のベース板4の下面に固定された第2のベース板5(図2参照)と、を備えている。なお、上記クレーン本体Cは走行体であるとともに、該クレーン本体Cは、図示しないモータやこのモータの駆動により正移転及び逆回転するとともに上記レールR上を走行する図示しない車輪を備えている。
【0026】
そして、上記装着プレート2は、図2に示すように、上記クレーン本体Cの筐体C1(又はクレーン側固定板)の正面(又はクレーン本体Cの背面)に固定される固定板部21と、この固定板部21の下端から折曲された水平板部22と、この水平板部22の中央に形成され後述するスライド軸3が挿通される挿通穴22aと、該水平板部22の上面に下面が溶接され該水平板部22の上面から起立してなるとともに該挿通穴22aを囲んでなり、角パイプ状に成形されたスライドガイド部23と、を備えている。そして、上記固定板部21には、図1に示すように、該固定板部21の幅方向に長さを有する左右の長孔21a,21aがそれぞれ平行に穿設され、これらの長孔21a,21aには、この装着プレート2を上記筐体C1に固定するボルト6,6の軸部6aが挿通され、これらの軸部6aには、ボルト6,6の逆回転を防止する座金7が挿通されている。なお、上記筐体C1には、これらのボルト6,6の軸部6aが螺着されるボルト穴(符号は省略する。)が形成されている。なお、上記各ボルト6,6は、本発明を構成する装着手段である。また、上記水平板部22は、図3に示すように、略逆台形状に成形されてなるものであり、上面の中央には、上記固定板部21の正面から上記スライドガイド部23方向に長さを有する補強用リブ22bが起立した状態で形成されている。
【0027】
また、上記スライド軸3は、図3に示すように、角柱状に成形されており、その下端は、図2又は図4に示すように、第1のベース板4の上面に溶接されている。また、このスライド軸3は、上記スライドガイド部23及び挿通穴22aにこれらの下方から挿通されて(遊嵌され)ている。また、このスライド軸3の上端側中途部には、図1図2又は図4に示すように、該スライド軸3の長さ方向とは直交する方向に貫通穴3aが形成され、この貫通穴3aには、該スライド軸3が上記スライドガイド部23や挿通穴22aから抜けることを防止する割ピン7が取り付けられている。また、上記第1のベース板4の左右両側には、図示しないボルト挿通穴が形成され、これらのボルト挿通穴には、それぞれ固定ボルト8,8の軸部(図示しない)が挿通されており、該固定ボルト8,8により、第1のベース板4の下面に第2のベース板5が固定されている。すなわち、上記第2のベース板5には、上記固定ボルト8,8を構成する図示しない軸部が螺着される図示しないボルト穴が形成されている。なお、上記各固定ボルト8,8の軸部には、それぞれ該固定ボルト8,8の逆回転を防止する座金(符号は省略する)が挿通されている。換言すれば、上記左アーム12と右アーム13とは、上記第2のベース板5に対する取付角度がそれぞれ変更可能とされている。
【0028】
そして、上記第2のベース板5は、図3又は図5に示すように、略長方形状に成形された板体であるとともに、正面側には、後述するスキージ10が着脱可能(上方に引き抜くことが可能)に挿入される挿入空間S(図5参照)が形成されている。この挿入空間Sは左右方向に長さを有してなるものである。換言すれば、上記第2のベース板5の正面の左端には、さらに正面側に延長された左延長板部52が形成され、この左延長板部52の先端には、右側に延長され背面は後述するスキージ10の正面の左側に対向する左対向板部53が形成され、また、上記第2のベース板5の正面の右端には、さらに正面側に延長された右延長板部54が形成され、この右延長板部54の先端には、左側に延長され背面は後述するスキージ10の正面の右側に対向する右対向板部55が形成されている。すなわち、上記第2のベース板5の正面と、上記左対向板部53及び右対向板部55の各背面との間には、後述するスキージ10挿通される挿通空間Sが形成されている。上記挿通空間Sは、上記第2のベース板5の正面、左延長板部52の右側面、左対向板部53の背面、右延長板部54の左側面及び右対向板部55の背面により囲われた空間である。
【0029】
また、上記第2のベース板5の左側面の後方中途部と右側の後方中途部との双方には、後述する基端側固定ボルト11,11の図示しない軸部が螺着されるボルト穴が形成され、これらの基端側固定ボルト11,11により、左アーム12と右アーム13のそれぞれ基端側が取り付けられている。これら左アーム12と右アーム13は、上記第2のベース板5の左右に取り付けられてなるものであり、それぞれの基端側中途部には、上記基端側固定ボルト11,11の軸部が挿通される図示しないボルト挿通穴が穿設され、また、先端側中途部には、後述するベアリングシャフト15,15に形成されたボルト軸15a,15aが挿通される挿通穴12a(右アーム13に形成された挿通穴は図示しない)が形成されている。
【0030】
そして、図1に示すように、上記左アーム12と右アーム13との先端側には、上記レールRの上面に外周面が接触するとともに上記クレーン本体Cの走行により転動する転動ローラ9が配置されている。この転動ローラ1は、樹脂又はゴム等の非磁性体(非磁性材料)により円筒状に成形されてなるものであり、図1に示すように、左右両側には、中心に上記ベアリングシャフト15が配置されたベアリング17が取り付けられている。これらのベアリングシャフト15の左端側(又は右端側)は外周にネジが螺刻されたボルト軸15a,15aが形成され、これらのボルト軸15a,15aは上記挿通穴12aに挿通されてなるとともに、上記左アーム12の外側又は右アーム13の外側においてそれぞれナット18,18に螺着されている。したがって、上記転動ローラ9は、上記左アーム12及び右アーム13に支持されながら上記ベアリング17を介して転動自在とされている。
【0031】
そして、上記転動ローラ9内には、図1に示すように、円柱状に成形された二つの内側磁石19,19が固定されている。これらの内側磁石19,19は、後述するように、上記レールR上に付着し又は堆積している鉄粉等の磁性粉をその磁力により上記転動ローラ9の外周面に磁着するものである。
【0032】
そして、上記第2のベース板5に形成された挿通空間S(図5参照)内に挿通された上記スキージ10は、図2に示すように、クロム鍍金された金属板からなる基材10aと、この基材10aの正面に固定された一方の板状磁石10bと、上記基材10aの背面に固定された他方の板状磁石10cと、を備えている。そして、上記基材10aの上端には、把持板部10dが固定されている。この把持板部10dは、上記一方の板状磁石10bの正面から他方の板状磁石10cの背面までの肉厚よりも長い幅に成形され、作業者が手指で把持するものである。なお、上記スキージ10は、図1に示すように、左右方向に長さを有し上下方向に幅を有してなるものであり、上記一方及び他方の板状磁石10b,10cの幅は、上記基材10aの幅よりもやや短いものとされ、該基材10aの下端の正面及び背面は、一方又は他方の板状磁石10b,10cの下方において露出した状態とされている。
【0033】
したがって、上述した実施の形態に係る磁性粉除去装置1によれば、例えば図2に示す状態から、上記クレーン本体Cが図2中左側に走行すると、上記レールRの上面に接触する上記転動ローラ9は、図2中反時計回り方向に転動し、該レールR上に図示しない鉄粉(磁性粉)が付着している場合には、その鉄粉は上記内側磁石19,19の磁力によって該転動ローラ9の外周面に磁着される。そして、この転動ローラ9の外周面には、上記スキージ10を構成する基材10aの先端が摺接していることから、上記鉄粉はこの基材10aの先端により該転動ローラ9の外周面から取り除かれるとともに、上記一方及び他方の板状磁石10b,10cに磁石される。すなわち、上記レールR上の鉄粉は、クレーン本体Cの走行によって、上記転動ローラ9の外周面から上記スキージ10に移動し保持される。また、上記一方及び他方の板状磁石10b,10cの下端側に磁着した鉄粉は、下側から順次移動する鉄粉により該スキージ10の上端側に移動させられた場合(所定量の鉄粉が磁着した場合)には、作業者は手指で上記把持板部10dを把持しながら、このスキージ10を上記挿通空間Sから取り除くことができ、上記鉄粉を取り除いた上で再び装着することができる。説明するまでもなく、この磁性粉除去装置1が長期間使用されることにより、上記基材10aの先端が摩耗した場合、新たなスキージ10に交換することも容易に行うことができる。なお、上記把持板部10dの幅は、上述した通り、一方の板状磁石10bの正面から他方の板状磁石10cの背面までの肉厚よりも長い幅に成形されていることから、こうした作業中に作業者が上記鉄粉に触れることはない。また、この実施の形態に係る磁性粉除去装置1では、上記方向とは逆方向にクレーン本体Cが走行した場合であっても、上記動作により鉄粉をレールRから取り除くことができる。
【0034】
特に、上記実施の形態に係る磁性粉除去装置1では、上記レールRには、上記スライド軸3、第1及び第2のベース板4,5、左アーム12、右アーム13及び転動ローラ9等の荷重が作用した状態で走行し、この走行中において、上記レールRに多少の段差が存在したり異物が付着していたりした場合には、これらの異物等に上記転動ローラ9が接触すると、該スライド軸3、第1及び第2のベース板4,5等の全体がやや上昇した後に再びレールRに接触することから、レールRに多少の段差等がある場合であっても、それらを吸収して安定的な走行体の走行を実現することができる。また、こうした構成を採用することにより、この磁性粉除去装置1を構成する上記装着プレート2を走行体であるクレーン本体Cに装着する位置が、レールRに接近していたり離間していたりする場合であっても、こうしたクレーン本体CとレールRとの距離の相違を吸収することができる。換言すれば、レールRとクレーン本体Cとの位置関係が、該クレーン本体Cの大きさや形状又は構造によって、種々相違する場合であったとしても、こうした相違に悪影響を受けることなく、この磁性粉除去装置1を走行体であるクレーン本体Cに確実に装着することが可能となる。また、上記スライド軸3は、前述したように、角柱状に成形され、また、前記スライドガイド部23も角パイプ状に成形されていることから、該スライド軸3に固定された第1及び第2のベース板4,5等は、クレーン本体Cの走行中にその位置が該スライド軸3を中心に回動する危険性がない。
【0035】
このように、上記実施の形態に係る磁性粉除去装置1によれば、レールR上の磁性粉を確実に除去するばかりか、レールR上から除去された磁性粉は、上記一方及び他方の板状磁石10b,10cに磁着されることから、該レールRから磁性粉が落下することにより、工場内で生産等される製品又は商品の品質が劣化してしまう事態も有効に防止することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 プレス成形装置
2 着プレート
3 ライド軸
5 2のベース板
12 左アーム
13 アーム
9 動ローラ
10 スキージ
10a 基材
10b 方の板状磁石
10c 他方の板状磁石
10d 把持板部
11 基端側固定ボルト
19 内側磁石
S 挿通空間
C クレーン本体
R レール
図1
図2
図3
図4
図5