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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ブラケット及び車載機器取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20221129BHJP
   B60R 1/24 20220101ALI20221129BHJP
   F16B 11/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B60R11/02 C
B60R1/24
F16B11/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019224037
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021091340
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】武田 直也
(72)【発明者】
【氏名】福本 充
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 聡
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10211444(DE,A1)
【文献】特開2018-016296(JP,A)
【文献】特開2016-159875(JP,A)
【文献】特開2014-019217(JP,A)
【文献】特開2004-083007(JP,A)
【文献】特開2018-016199(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0174892(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
B60R 1/00
F16B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のウインドガラスに車載機器を固定するための樹脂製のブラケットであって、
前記ウインドガラスにそれぞれ接着される複数のブラケット片と、
隣接する前記ブラケット片同士を相対移動可能に連結する連結部と、
それぞれの前記ブラケット片に設けられ、前記車載機器に設けられた複数の係合部がそれぞれ係合する被係合部と、
それぞれの前記ブラケット片に設けられ、前記ウインドガラスにそれぞれの前記ブラケット片の接着面を押し付ける押付装置で保持されることによって前記ウインドガラスに対する前記ブラケット片の位置決めを行う位置決め部と、
を有するブラケット。
【請求項2】
一つの前記ブラケット片に複数の前記位置決め部が設けられており、
少なくとも一つの前記位置決め部が前記被係合部に隣接している、請求項1に記載のブラケット。
【請求項3】
前記ブラケット片の複数の前記位置決め部は、一列に並べられており、
一の前記ブラケット片の複数の前記位置決め部の並列方向と、他の前記ブラケット片の複数の前記位置決め部の並列方向とが直交している、請求項2に記載のブラケット。
【請求項4】
前記係合部は、前記車載機器から突出する係合突起であり、
前記係合突起が前記被係合部に係合した状態において、前記ブラケット片の複数の前記位置決め部は、前記係合突起の軸線の延長線上に一列に並んでいる、請求項3に記載のブラケット。
【請求項5】
前記位置決め部は、前記ブラケット片の接着側と反対側の面に設けられた凸部又は凹部である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のブラケット。
【請求項6】
車両用のウインドガラスに接着された請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のブラケットと、
前記ブラケットの被係合部に係合する係合部が設けられ、前記ブラケットに取り付けられる車載機器と、
を備える車載機器取付構造。
【請求項7】
前記車載機器は、車両前方を撮影するステレオカメラであり、
前記ブラケットが有する複数のブラケット片は、車両のフロントガラスに車両幅方向に並列された状態で接着されており、
前記ステレオカメラに設けられた複数の前記係合部が、それぞれの前記ブラケット片に設けられた被係合部にそれぞれ係合している、請求項6に記載の車載機器取付構造。
【請求項8】
一の前記ブラケット片の複数の位置決め部の並列方向が車両幅方向であり、他の前記ブラケット片の複数の位置決め部の並列方向が車両前後方向である、請求項7に記載の車載機器取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラケット及び車載機器取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車載機器をフロントガラスに接着されたカメラ用の樹脂製ブラケットに取り付けることで、ブラケットを介して車載機器をフロントガラスに固定する構造について開示されている。このブラケットには、フロントガラスに対する位置決めのため、フロントガラスに設けられた複数の位置決め用ピンが貫通する貫通孔が複数設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-16199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された技術では、先ずフロントガラスに位置決め用ピンを設置する。次に、位置決め用ピンを利用してブラケットをフロントガラスに位置決めしつつ接着する。その後、フロントガラスに接着されたブラケットに車載機器を取り付けることで、ブラケットを介して車載機器がフロントガラスに固定される。
【0005】
ここで特許文献1に開示された技術では、フロントガラスへのブラケットの位置決めのために、フロントガラスに位置決め用ピンを設置する(言い換えると、位置決め用の加工を施す)必要があり、フロントガラスへ車載機器を固定するための作業が煩雑化している。このため、市場では、フロントガラスに位置決め用の加工を施さなくても、フロントガラスに対してブラケットを容易で且つ精度よく位置決めできる技術の開発が望まれている。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、車両用のウインドガラスに接着される樹脂製のブラケットであって、ウインドガラスに対して位置決め用の加工を施さなくても、ウインドガラスに対して精度よく位置決めでき且つ位置決め作業が容易なブラケット及びこのブラケットを用いた車載機器取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様のブラケットは、車両用のウインドガラスに車載機器を固定するための樹脂製のブラケットであって、前記ウインドガラスにそれぞれ接着される複数のブラケット片と、隣接する前記ブラケット片同士を相対移動可能に連結する連結部と、それぞれの前記ブラケット片に設けられ、前記車載機器に設けられた複数の係合部がそれぞれ係合する被係合部と、それぞれの前記ブラケット片に設けられ、前記ウインドガラスにそれぞれの前記ブラケット片の接着面を押し付ける押付装置で保持されることによって前記ウインドガラスに対する前記ブラケット片の位置決めを行う位置決め部と、を有する。
【0008】
第1態様のブラケットでは、複数のブラケット片をそれぞれウインドガラスに接着し、それぞれのブラケット片の被係合部に車載機器の複数の係合部をそれぞれ係合することで、複数のブラケット片(ブラケット)を介してウインドガラスに車載機器が固定される。
ここで、上記ブラケットでは、それぞれのブラケット片に設けられた位置決め部を押付装置で保持することによってウインドガラスに対するブラケット片の位置決めが行われる。このように上記ブラケットでは、ウインドガラスに対して位置決め用の加工を施さなくても、位置決め部を押付装置で保持させることで、ウインドガラスに対するブラケット片の位置決めを行うことができるため、ウインドガラスに対して精度よく位置決めでき且つ位置決め作業も容易になる。
【0009】
また、上記ブラケットでは、隣接するブラケット片同士が連結部で相対移動可能に連結されているため、例えば、ブラケット片の成形時に成形誤差が生じても、連結部によって隣接するブラケット片の成形誤差を吸収できる。このように上記ブラケットは、成形時における成形誤差を吸収する構成を有することから、ウインドガラスに対して各ブラケット片を精度よく位置決めできる。
【0010】
本発明の第2態様のブラケットは、第1態様のブラケットにおいて、一つの前記ブラケット片に複数の前記位置決め部が設けられており、少なくとも一つの前記位置決め部が前記被係合部に隣接している。
【0011】
第2態様のブラケットでは、一つのブラケット片に複数の位置決め部が設けられており、そのうちの少なくとも一つの位置決め部が被係合部に隣接している。このように上記ブラケットでは、押付装置に対して位置決めの基準となる位置決め部に隣接して被係合部を少なくとも一つ設けていることから、ウインドガラスに対して被係合部の位置が精度よく決まる。すなわち、ウインドガラスに対してブラケットが精度よく位置決めされる。その結果、ブラケットに取り付けられる車載機器のウインドガラスに対する位置決め精度が向上する。
【0012】
本発明の第3態様のブラケットは、第2態様のブラケットにおいて、前記ブラケット片の複数の前記位置決め部は、一列に並べられており、一の前記ブラケット片の複数の前記位置決め部の並列方向と、他の前記ブラケット片の複数の前記位置決め部の並列方向とが直交している。
【0013】
第3態様のブラケットでは、ブラケット片の複数の位置決め部が一列に並べられており、一のブラケット片の複数の位置決め部の並列方向と、他のブラケット片の複数の位置決め部の並列方向とが直交している。このため、ウインドガラスに複数のブラケット片をそれぞれ接着する場合のウインドガラスに対する面内方向の位置決め精度が向上する。
【0014】
本発明の第4態様のブラケットは、第3態様のブラケットにおいて、前記係合部は、前記車載機器から突出する係合突起であり、前記係合突起が前記被係合部に係合した状態において、前記ブラケット片の複数の前記位置決め部は、前記係合突起の軸線の延長線上に一列に並んでいる。
【0015】
第4態様のブラケットでは、ブラケット片の複数の位置決め部が、車載機器から突出する係合突起の軸線の延長線上に一列に並んでいることから、ブラケットを介した車載機器のウインドガラスに対する位置決め精度が更に向上する。
【0016】
本発明の第5態様のブラケットは、第1態様~第4態様のいずれか一態様のブラケットにおいて、前記位置決め部は、前記ブラケット片の接着側と反対側の面に設けられた凸部又は凹部である。
【0017】
第5態様のブラケットでは、位置決め部をブラケット片の接着側と反対側の面に設けられた凸部又は凹部としていることから、ブラケット片の接着側の面に付与する接着剤の配置(すなわち、レイアウト)を自由に設定できる。これにより、ウインドガラスとブラケット片の接着性を向上させることが可能になる。
【0018】
本発明の第6態様の車載機器取付構造は、車両用のウインドガラスに接着された第1態様~第5態様のいずれか一態様のブラケットと、前記ブラケットの被係合部に係合する係合部が設けられ、前記ブラケットに取り付けられる車載機器と、を備える。
【0019】
第6態様の車載機器取付構造では、複数のブラケット片をそれぞれウインドガラスに接着し、それぞれのブラケット片の被係合部に車載機器の複数の係合部をそれぞれ係合することで、複数のブラケット片(ブラケット)を介してウインドガラスに車載機器が固定される。
ここで、上記ブラケットでは、それぞれのブラケット片に設けられた位置決め部を押付装置で保持することによってウインドガラスに対するブラケット片の位置決めが行われている。このように上記ブラケットでは、ウインドガラスに対して位置決め用の加工を施さなくても、位置決め部を押付装置で保持させることで、ウインドガラスに対するブラケット片の位置決めを行うことができるため、ウインドガラスに対して精度よく位置決めでき且つ位置決め作業も容易になる。さらに、上記ブラケットでは、隣接するブラケット片同士が連結部で相対移動可能に連結されているため、例えば、ブラケット片の成形時に成形誤差が生じても、連結部によって隣接するブラケット片の成形誤差を吸収できる。このように上記ブラケットは、成形時における成形誤差を吸収する構成を有することから、ウインドガラスに対して各ブラケットを精度よく位置決めできる。
これにより、上記車載機器取付構造では、ウインドガラスに対して車載機器が精度よく位置決めされる。また、ウインドガラスにブラケットを介して車載機器を固定するまでの作業工数を削減することができる。
【0020】
本発明の第7態様の車載機器取付構造は、第6態様の車載機器取付構造において、
前記車載機器は、車両前方を撮影するステレオカメラであり、
前記ブラケットが有する複数のブラケット片は、車両のフロントガラスに車両幅方向に並列された状態で接着されており、
前記ステレオカメラに設けられた複数の前記係合部が、それぞれの前記ブラケット片に設けられた被係合部にそれぞれ係合している。
【0021】
車両前方を撮影する運転支援用の車載機器であるステレオカメラは、2つのカメラが長手方向に間隔をあけて配置されている。このようなステレオカメラをフロントガラスに固定する場合、フロントガラスに対してステレオカメラの長手方向が車両幅方向となるように(言い換えると、2つのカメラが車両幅方向で離間するように)固定する必要がある。 ここで、第7態様の車載機器取付構造では、複数のブラケット片をフロントガラスに対して車両幅方向に並列した状態で接着しているため、例えば、複数のブラケット片をフロントガラスに対して車両前後方向に並列した状態で接着している構成と比べて、車両幅方向に隣接するブラケット片の熱膨張を連結部で吸収できる。このため、フロントガラスにブラケットを介して固定されるステレオカメラのフロントガラスに対する車両幅方向の位置精度が向上する。
【0022】
本発明の第8態様の車載機器取付構造は、第7態様の車載機器取付構造において、一の前記ブラケット片の複数の位置決め部の並列方向が車両幅方向であり、他の前記ブラケット片の複数の位置決め部の並列方向が車両前後方向である。
【0023】
第8態様の車載機器取付構造では、一のブラケット片の複数の位置決め部の並列方向を車両幅方向とし、他のブラケット片の複数の位置決め部の並列方向を車両前後方向としていることから、ウインドガラスに複数のブラケット片をそれぞれ接着する場合のウインドガラスに対する車両幅方向及び車両前後方向の位置決め精度が向上する。これにより、フロントガラスに対するブラケットの車両幅方向及び車両前後方向の位置精度が向上する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、車両用のウインドガラスに接着される樹脂製のブラケットであって、ウインドガラスに対して位置決め用の加工を施さなくても、ウインドガラスに対して精度よく位置決めでき且つ位置決め作業が容易なブラケット及びこのブラケットを用いた車載機器取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る車載機器取付構造を示す斜視図である。
図2図1に示すブラケットを表面側から見た平面図である。
図3図1に示す車載機器の斜視図である。
図4図2の矢印4で指し示す部分の拡大斜視図である。
図5図2の矢印5で指し示す部分の拡大斜視図である。
図6図2の矢印4で指し示す部分をブラケットの長手方向外側から見た側面図である。
図7図6に示すブラケットの被係合部に一方の係合突起が嵌まった状態を示す側面図である。
図8図2の矢印8で指し示す部分の被係合部をブラケットの長手方向外側から見た側面図である。
図9図8に示す被係合部に他方の係合突起が嵌まった状態を示す側面図である。
図10図5の被係合部をブラケットの幅方向に沿って切断した断面図である。
図11図9に示す被係合部の斜視図である。
図12図10に示す被係合部に他方の係合突起が嵌った状態を示す斜視図である。
図13図2の13-13線に沿った断面図であり、ウインドガラスに接着されたブラケットに車載機器を取り付けた状態を示している。
図14】(A)図2の矢印14で指し示す部分の拡大図である。(B)図4(A)の14B-14B線に沿った断面図である。
図15】フロントガラスにブラケットを押し付ける押付装置の斜視図である。
図16図15の16-16線に沿った断面図である。
図17】押付装置の変形例であり、ブラケットを保持した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、図面を用いて本発明の一実施形態に係るブラケット及びこのブラケットを用いた車載機器取付構造を説明する。
【0027】
図1及び図13に示されるように、本実施形態のブラケット30は、車両用のウインドガラス100に車載機器20を固定するための部材である。なお、ブラケット30の詳細については後述する。
また、本実施形態の車載機器取付構造S1(以下、適宜「取付構造S1」と記載する。)は、ウインドガラス100に設けられるブラケット30に車載機器20を取り付けるための取付構造である。この取付構造S1は、車載機器20と、ブラケット30とを備えている。
【0028】
<車載機器>
車載機器20は、図1及び図13に示されるように、ブラケット30を介してウインドガラス100に固定される電子機器である。本実施形態では、車載機器20として、車両前方を撮影するステレオカメラを用いている。なお、本発明は上記構成に限定されず、車載機器として運転支援用の各種センサ(例えば、モノカメラ、ライダ)を用いてもよいし、ドライブレコーダや電波を受信するアンテナ(例えば、GPSアンテナ、ラジオアンテナ、テレビアンテナ)を用いてもよい。また、車載機器として、上記各種センサ、ドライブレコーダ及びアンテナを種々組み合わせた複合機器を用いてもよい。
【0029】
また、本実施形態の車載機器20は、ハウジング22と、ハウジング22に取り付けられた2つのカメラ24と、ハウジング22に設けられた係合突起26、28と、を備えている。
【0030】
ハウジング22は、樹脂製であり、長手方向(図3では矢印EL方向)の両端部にカメラ24を収容する収容部22Aがそれぞれ形成されている。これらの収容部22Aは、ハウジング22の長手方向(以下、適宜「長手方向EL」と記載する。)の中間部22Bよりも厚みが厚くなっている。また、収容部22Aのハウジング22の幅方向(図3では矢印EW方向)の一方側の周壁22Cからカメラ24のレンズ部24Aが露出している。また、ハウジング22の内部には、2つのカメラ24用の配線類が収められている。
【0031】
2つのカメラ24は、ハウジング22の長手方向ELに間隔をあけて配置されており、各々のレンズ部24Aがハウジング22の幅方向(以下、適宜「幅方向EW」と記載する。)の一方側を向いている。なお、ハウジング22を車室内に設けられたブラケット30に取り付けた状態では、2つのカメラ24の各レンズ部24Aが車両前方を向くようになっている。
【0032】
(係合突起)
係合突起26、28は、ハウジング22をブラケット30へ取り付けるための係合部の一例である。
【0033】
係合突起26は、図3に示されるように、ピン状の突起であり、収容部22Aの長手方向ELの内側(言い換えると、長手方向ELの中央側)の周壁22Dから長手方向ELに沿って突出している。また、長手方向ELの両側の収容部22Aからそれぞれ突出する一対の係合突起26は、互いに同軸となるように各々の収容部22Aに設けられている。言い換えると、一方の係合突起26の軸線の延長線上に他方の係合突起26の軸線が位置するように係合突起26が収容部22Aに設けられている。
【0034】
係合突起28は、図3に示されるように、ピン状の突起であり、収容部22Aの中間部22Bの幅方向EWの一方側の周壁22Dから幅方向EWに沿って突出している。
【0035】
<ブラケット>
ブラケット30は、前述したように、車両用のウインドガラス100に車載機器20を固定するための部材である。なお、本実施形態では、ブラケット30がウインドガラス100の一例であるフロントガラスに接着される。
【0036】
ブラケット30は、樹脂製であり、長尺な板状に形成されている。以下では、ブラケット30の長手方向を矢印BLで示し、ブラケット30の幅方向を矢印BWで示し、ブラケット30の厚み方向を矢印BTで示す。また、ブラケット30に車載機器20を取り付けた状態では、ブラケット30の長手方向(以下、適宜「長手方向BL」と記載する。)がハウジング22の長手方向ELと略一致(製造誤差含む)し、ブラケット30の幅方向(以下、適宜「幅方向BW」と記載する。)がハウジング22の幅方向EWと略一致(製造ござ)する。さらに、ブラケット30をウインドガラス100に取り付けた状態では、ブラケット30の長手方向BLが車両幅方向と略一致し、ブラケット30の幅方向BWが車両前後方向と略一致する。なお、ブラケット30の幅方向BWの一方側が車両前方(図13における矢印FR方向)にあたる。また、図13における矢印UPは車両上方を指名している。
【0037】
ブラケット30は、図2に示されるように、ブラケット片32、34、36と、連結部38、40と、被係合部42、44、46と、を備えている。また、ブラケット30は、位置決め部70、72、74を備えている。なお、ブラケット片32、34、36と、連結部38、40と、被係合部42、44、46と、位置決め部70、72、74と、はそれぞれ一体に成形されている。
【0038】
(ブラケット片)
ブラケット片32、34、36は、ブラケット30の本体を長手方向BLに分割した部位である。言い換えると、ブラケット片32、34、36は、ブラケット30の長手方向BLに並列されている。なお、本実施形態では、ブラケット片34がブラケット30の長手方向BLの中央に配置され、ブラケット片32、36がブラケット片34の長手方向BLの両側にそれぞれ配置されている。
【0039】
ブラケット片32、34、36は、それぞれ板状に形成されている。
【0040】
また、ブラケット片32、34、36の裏面32B、34B、36Bには、それぞれ接着剤が付与されており、それぞれの裏面32B、34B、36Bをウインドガラス100の内面(車室内側の面)100Aに押し付けることで、ブラケット片32、34、36がウインドガラス100に接着されるようになっている。この接着剤は、ブラケット片の裏面全体に付与してもよいし、裏面に部分的に付与してもよい。なお、本実施形態では、接着剤をブラケット片の裏面に部分的(詳細には、間隔をあけて複数の位置)に付与している。
【0041】
(連結部)
連結部38、40は、図2及び図14に示されるように、隣接するブラケット片32、34同士及び隣接するブラケット片34、36同士をそれぞれ相対移動可能に連結する部位である(図14では、隣接するブラケット片32、34を連結する連結部38、40を示している)。すなわち、隣接するブラケット片32、34同士が連結部38、40によって連結され、隣接するブラケット片34、36同士が連結部38、40によって連結されている。
【0042】
連結部38は、弾性変形可能な変形部39を有している。この変形部39は、屈曲変形可能な湾曲部である。具体的には、本実施形態の連結部38は、帯状の部位であり、一方のブラケット片から他方のブラケット片へ向けて延びている。この連結部38の延在方向の中央部は、幅方向BWの他方側へ向けて山なりに湾曲している。この湾曲部は屈曲変形可能な部位であり、連結部38の変形部39を構成している。なお、変形部39は、屈曲変形可能であれば、その湾曲形状については限定されない。例えば、変形部39は、幅方向BWの他方側へ向けて円弧状に湾曲する湾曲部でもよいし、幅方向BWの他方側へ向けてU字状に湾曲する湾曲部でもよい。
【0043】
また、変形部39の厚みT1は、ブラケット片32の厚みT2よりも薄い。なお、ここでいう「ブラケット片32の厚みT2」とは、ブラケット片32の連結部38との連結部分近傍における厚みを指す。また、本実施形態では、ブラケット片34、36の厚みもブラケット片32の厚みT2と同じ厚みである。
【0044】
連結部40は、弾性変形可能な変形部41を有している。この変形部41は、屈曲変形可能な湾曲部である。具体的には、本実施形態の連結部40は、帯状の部位であり、一方のブラケット片から他方のブラケット片へ向けて延びている。この連結部40の延在方向の中央部は、幅方向BWの一方側へ向けて山なりに湾曲している。この湾曲部は屈曲変形可能な部位であり、連結部40の変形部41を構成している。なお、変形部41は、屈曲変形可能であれば、その湾曲形状については限定されない。例えば、変形部41は、幅方向BWの他方側へ向けて円弧状に湾曲する湾曲部でもよいし、幅方向BWの他方側へ向けてU字状に湾曲する湾曲部でもよい。
【0045】
また、本実施形態では、変形部41の厚みが変形部39の厚みと同じである。このため、変形部41の厚みは、ブラケット片32の厚みT2よりも薄い。
【0046】
本実施形態では、2つの連結部38、40が同じ形状であり、隣接する連結部38、40が対称に配置されている。具体的には、隣接するブラケット間で対向する連結部38、40がブラケット30の幅方向BWに対称に配置されている。
【0047】
(被係合部)
被係合部42、46は、車載機器20の一対の係合突起26がそれぞれ係合する部位であり、被係合部44は、車載機器20の係合突起28が係合する部位である。被係合部42はブラケット片32に設けられ、被係合部44はブラケット片34に設けられ、被係合部46はブラケット片36に設けられている。
【0048】
被係合部42は、図4及び図6に示されるように、ブラケット片32に設けられた隆起部33と、隆起部33に設けられたガイド凹部43と、このガイド凹部43に設けられた付勢部材48と、を備えている。この隆起部33は、ブラケット片32の表面32Aから隆起した部分であり、幅方向BWの一方側に向けて凹むガイド凹部43が設けられている。このガイド凹部43は、隆起部33の幅方向BWの他方側の壁面及び長手方向BL外側の壁面に開口しており、ブラケット30への車載機器20の取り付け時に、一方の係合突起26が挿入されるようになっている。このガイド凹部43の奥側(幅方向BWの一方側)には、一方の係合突起26が該係合突起26の突出方向と直交する方向から嵌る係合凹部43Aが形成されている。付勢部材48は、係合凹部43Aに嵌った一方の係合突起26を係合凹部43Aへ向けて付勢する板状の部材であり、本実施形態では、板ばねを用いている。具体的には、付勢部材48は、係合凹部43Aに嵌った一方の係合突起26を嵌った側と反対側から係合凹部43Aの底側へ向けて付勢するようになっている。これにより、係合凹部43Aに嵌った一方の係合突起26は、付勢部材48の付勢力によって係合凹部43Aに嵌った状態が維持される。すなわち、一方の係合突起26と被係合部42との係合状態が維持される。
【0049】
被係合部44は、図5及び図10に示されるように、ブラケット片34に設けられた隆起部35と、隆起部35に設けられたガイド凹部45と、このガイド凹部45に設けられた付勢部材50と、を備えている。この隆起部35は、ブラケット片34の表面34Aから隆起した部分であり、幅方向BWの一方側に向けて凹むガイド凹部45が設けられている。このガイド凹部45は、隆起部33の幅方向BWの他方側の壁面に開口しており、ブラケット30への車載機器20の取り付け時に、係合突起28が挿入されるようになっている。このガイド凹部45の表面34Aと反対側の凹壁面には、係合突起28が該係合突起28の突出方向と直交する方向で嵌る係合凹部45Aが形成されている。付勢部材50は、係合凹部45Aに嵌った係合突起28を係合凹部45Aへ向けて付勢する板状の部材であり、本実施形態では、板ばねを用いている。具体的には、付勢部材50は、係合凹部45Aに嵌った係合突起28を嵌った側と反対側から係合凹部45Aの底側へ向けて付勢するようになっている。これにより、係合凹部45Aに嵌った係合突起28は、付勢部材50の付勢力によって係合凹部45Aに嵌った状態が維持される。すなわち、係合突起28と被係合部44との係合状態が維持される。
【0050】
被係合部46は、図8及び図11に示されるように、ブラケット片36に設けられた隆起部37と、隆起部37に設けられたガイド凹部47と、このガイド凹部47に設けられた付勢部材52と、を備えている。この隆起部37は、ブラケット片36の表面36Aから隆起した部分であり、幅方向BWの一方側に向けて凹むガイド凹部47が設けられている。このガイド凹部47は、隆起部33の幅方向BWの他方側の壁面及び長手方向BL外側の壁面に開口しており、ブラケット30への車載機器20の取り付け時に、他方の係合突起26が挿入されるようになっている。このガイド凹部47の奥側(幅方向BWの一方側)には、他方の係合突起26が該係合突起26の突出方向と直交する方向から嵌る係合凹部47Aが形成されている。付勢部材52は、係合凹部47Aに嵌った他方の係合突起26を係合凹部47Aへ向けて付勢する板状の部材であり、本実施形態では、板ばねを用いている。具体的には、付勢部材52は、係合凹部47Aに嵌った他方の係合突起26を嵌った側と反対側から係合凹部47Aの底側へ向けて付勢するようになっている。これにより、係合凹部47Aに嵌った他方の係合突起26は、付勢部材52の付勢力によって係合凹部47Aに嵌った状態が維持される。すなわち、他方の係合突起26と被係合部46との係合状態が維持される。
【0051】
(位置決め部)
位置決め部70、72、74は、図2に示されるように、それぞれブラケット片32、34、36に設けられている。これらの位置決め部70、72、74は、ウインドガラス100に対するブラケット片32、34、36の位置決めを行うための部位である。具体的には、位置決め部70、72、74がウインドガラス100にそれぞれのブラケット片32、34、36の接着面を押し付ける押付装置90で保持されることによってウインドガラス100に対するブラケット片32、34、36の位置決めが行われる。
【0052】
位置決め部70は、ブラケット片32の表面32Aから突出する凸部であり、ブラケット片32に複数(本実施形態では2つ)設けられている。これらの位置決め部70のうち、少なくとも一つが係合凹部43Aに隣接(又は近接)している。具体的には、少なくとも一つの位置決め部70が、係合凹部43Aが設けられた隆起部33に隣接(又は近接)している。また、複数の位置決め部70は、長手方向BLに沿って一列に並べられている。なお、本実施形態では、一方の係合突起26が係合凹部43Aに係合した状態(嵌った状態)において、複数の位置決め部70が一方の係合突起26の軸線の延長線L1(図2参照)上に一列に並んでいる。
【0053】
位置決め部72は、ブラケット片34の表面34Aから突出する凸部であり、ブラケット片34に複数(本実施形態では2つ)設けられている。これらの位置決め部72のうち、少なくとも一つが係合凹部45Aに隣接(又は近接)している。具体的には、少なくとも一つの位置決め部72が、係合凹部45Aが設けられた隆起部35に隣接(又は近接)している。また、複数の位置決め部72は、幅方向BWに沿って一列に並べられている。なお、本実施形態では、係合突起28が係合凹部45Aに係合した状態(嵌った状態)において、複数の位置決め部72が係合突起28の軸線の延長線L2(図2参照)上に一列に並んでいる。
【0054】
位置決め部74は、ブラケット片36の表面36Aから突出する凸部であり、ブラケット片36に複数(本実施形態では2つ)設けられている。これらの位置決め部74のうち、少なくとも一つが係合凹部47Aに隣接(又は近接)している。具体的には、少なくとも一つの位置決め部74が、係合凹部47Aが設けられた隆起部37に隣接(又は近接)している。また、複数の位置決め部74は、長手方向BLに沿って一列に並べられている。なお、本実施形態では、他方の係合突起26が係合凹部47Aに係合した状態(嵌った状態)において、複数の位置決め部74が他方の係合突起26の軸線の延長線L3(図2参照)上に一列に並んでいる。
【0055】
ここで、ブラケット片34の複数の位置決め部72の並列方向(本実施形態では、幅方向BWと同義)と、ブラケット片32、36の複数の位置決め部70、74の各々の並列方向とが直交している。なお、車載機器20をブラケット30に取り付けた状態では、ブラケット片34の複数の位置決め部72の並列方向が車両幅方向となり、ブラケット片32、36の複数の位置決め部70、74の並列方向が車両前後方向となる。
【0056】
次に、本実施形態の車載機器20をウインドガラス100に固定する車載機器固定方法について説明する。
【0057】
まず、製品として加工されたウインドガラス100にブラケット30を接着により固定する。具体的には、まず、ウインドガラス100を押付装置90の第1保持部92で保持し、次に、押付装置90の第2保持部94でブラケット30を保持する。ここで、押付装置90の第2保持部94は、ブラケット30を構成する各ブラケット片32、34、36にそれぞれ設けられた位置決め部70、72、74を保持することでブラケット30を保持する。詳細には、第2保持部94には、それぞれの位置決め部70、72、74を収容すると共に保持する収容保持部96が設けられており、この収容保持部96によってそれぞれの位置決め部70、72、74が保持される。なお、本実施形態の収容保持部96は、位置決め部が収容される凹状部96Aと、この凹状部96A内の位置決め部を挟んで保持する保持部96Bとを有している。収容保持部96によって保持されることで、第2保持部94に対してブラケット30が位置決めされる。そして、ブラケット30を構成する各ブラケット片32、34、36の裏面32B、34B、36Bに接着剤を付与する。
【0058】
次に、第1保持部92で保持されたウインドガラス100に対して第2保持部94で保持されたブラケット30を近づけ、ウインドガラス100の内面100Aに、接着剤が付与されたブラケット片32、34、36の各裏面32B、34B、36Bを押し付ける。これにより、ウインドガラス100にブラケット片32、34、36が接着される。すなわち、ウインドガラス100にブラケット片32、34、36が接着により固定される。ここで、押付装置90の第1保持部92と第2保持部94は、支持部98で相対回転可能に支持されている。このため、押付装置90の第2保持部94が位置決め部70、72、74を保持することで、第2保持部94にブラケット30が正確に位置決めされ、第1保持部92で保持されたウインドガラス100に対してブラケット30が正確に位置決めされる。
【0059】
なお、本実施形態では、第2保持部94でブラケット30を保持した後で、第1保持部92でウインドガラス100を保持してもよい。また、ブラケット30への接着剤の付与は、ブラケット30を第2保持部94で保持する前に実施してもよい。
【0060】
次に、ブラケット30に車載機器20を取り付ける。
具体的には、まず、図6に示されるように、車載機器20の一方の係合突起26を幅方向BWの他方側からガイド凹部43に挿し入れると共に、図8に示されるように、他方の係合突起26を幅方向BWの他方側からガイド凹部43に挿し入れる。次に、一方の係合突起26をガイド凹部43の奥側へ移動させて、一方の係合突起26を該係合突起26の突出方向と直交する方向から係合凹部43Aに嵌め(図7参照)、他方の係合突起26をガイド凹部47の奥側へ移動させて、他方の係合突起26を該係合突起26の突出方向と直交する方向から係合凹部47Aに嵌める(図8参照)。一方の係合突起26が係合凹部43Aに嵌ると、付勢部材48の付勢力によって、一方の係合突起26の嵌った状態が維持される。また、他方の係合突起26が係合凹部47Aに嵌ると、付勢部材52の付勢力によって、他方の係合突起26の嵌った状態が維持される。そして、一対の係合突起26が係合凹部43A、47Aに嵌るときには、係合突起28も係合凹部45Aに係合突起28の突出方向と直交する方向で嵌まる(図10参照)。
【0061】
このようにして、ブラケット30に車載機器20が取り付けられることで、車載機器20がブラケット30を介してウインドガラス100に固定される。なお、車載機器20のブラケット30への取付は、車体にウインドガラス100を取り付けた後で実施してもよいし、車体にウインドガラス100を取り付け前に実施してもよいが、車載機器20の搬送時の不具合等も考慮し、車体にウインドガラス100を取り付けた後でブラケット30へ車載機器20を取り付けることが好ましい。また、ブラケット30に車載機器20を取り付けた状態では、車載機器20の長手方向EL及びブラケット30の長手方向BLが車両幅方向と略一致し、車載機器20の幅方向BW及びブラケット30の幅方向BWが車両長手方向と略一致する。このとき、車載機器20の2つのカメラ24の各レンズ部24Aが車両前方を向き、車両前方の撮影が可能になる。
【0062】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
ブラケット30では、それぞれのブラケット片32、34、36に設けられた各位置決め部70、72、74を押付装置90で保持することによってウインドガラス100に対するブラケット片32、34、36の位置決めが行われる。このようにブラケット30では、ウインドガラス100に対して位置決め用の加工を施さなくても、位置決め部70、72、74を押付装置90で保持させることで、ウインドガラス100に対するブラケット片32、34、36の位置決めを行うことができるため、ウインドガラス100に対して精度よく位置決めでき且つ位置決め作業も容易になる。
【0063】
またブラケット30では、隣接するブラケット片同士が連結部38、40で相対移動可能に連結されているため、例えば、ブラケット片の成形時に成形誤差が生じても、連結部38、40によって隣接するブラケット片の成形誤差を吸収できる。このようにブラケット30は、成形時における成形誤差を吸収する構成を有することから、ウインドガラス100に対してブラケット片32、34、36を精度よく位置決めできる。
以上より、上記ブラケット30を用いた取付構造S1では、ウインドガラス100に対して車載機器20が精度よく位置決めされる。また、ウインドガラス100にブラケット30を介して車載機器20を固定するまでの作業工数を削減することができる。
【0064】
またブラケット30では、ブラケット片32に複数の位置決め部70が設けられており、そのうちの少なくとも一つの位置決め部70を、係合凹部43Aが設けられた隆起部33に隣接(又は近接)させている。また、ブラケット片34に複数の位置決め部72が設けられており、そのうちの少なくとも一つの位置決め部72を、係合凹部45Aが設けられた隆起部35に隣接(又は近接)させている。さらに、ブラケット片36に複数の位置決め部74が設けられており、そのうちの少なくとも一つの位置決め部74を、係合凹部47Aが設けられた隆起部37に隣接(又は近接)させている。このようにブラケット30では、押付装置90に対して位置決めの基準となる位置決め部70、72、74に隣接(又は近接)して隆起部33、35、37を設けていることから、ウインドガラス100に対して係合凹部43A、45A、47Aの位置が精度よく決まる。すなわち、ウインドガラス100に対してブラケット30が精度よく位置決めされる。その結果、ブラケット30に取り付けられる車載機器20のウインドガラス100に対する位置決め精度が向上する。
【0065】
またブラケット30では、ブラケット片32の複数の位置決め部70が一列に並べられ、ブラケット片34の複数の位置決め部72が一列に並べられ、ブラケット片36の複数の位置決め部74が一列に並べられており、ブラケット片34の複数の位置決め部72の並列方向と、ブラケット片32、36の複数の位置決め部70、74の各々の並列方向とが互いに直交している。このため、ウインドガラス100にブラケット片32、34、36をそれぞれ接着する場合のウインドガラス100に対する面内方向の位置決め精度が向上する。
【0066】
またブラケット30では、車載機器20を取り付けた状態において、ブラケット片32の複数の位置決め部70が車載機器20から突出する一方の係合突起26の軸線の延長線L1上に一列に並び、ブラケット片34の複数の位置決め部72が車載機器20から突出する係合突起28の軸線の延長線L2上に一列に並び、ブラケット片36の複数の位置決め部74が車載機器20から突出する他方の係合突起26の軸線の延長線L3上に一列に並んでいることから、ブラケット30を介した車載機器20のウインドガラス100に対する位置決め精度が更に向上する。
【0067】
またブラケット30では、位置決め部70、72、74をブラケット片の接着側と反対側の面(表面)に設けられた凸部としていることから、ブラケット片の接着側の面(裏面)に付与する接着剤の配置(すなわち、レイアウト)を自由に設定できる。これにより、ウインドガラス100とブラケット片32、34、36の接着性を向上させることが可能になる。
【0068】
また、ブラケット30では、隣接するブラケット片同士が連結部38、40で相対移動可能に連結されているため、車載機器20の温度上昇に伴い各ブラケット片が熱膨張しても、連結部38、40によって隣接するブラケット片の熱膨張が吸収される。このようにブラケット30は、温度上昇に伴う熱膨張を吸収する構成を有することから、熱膨張によってウインドガラス100との間の接着剤に作用するせん断力の上昇を抑制することができる。これにより、ブラケット30では、熱膨張に伴うウインドガラス100との間の接着性の低下を抑制することができる。
以上より、ブラケット30を用いる取付構造S1では、車載機器20の熱膨張に伴うブラケット30とウインドガラス100との間の接着性の低下を抑制することができる。
【0069】
またブラケット30では、連結部38、40が弾性変形可能な変形部39、41をそれぞれ有しており、これらの変形部39、41が弾性変形(面内変形)することで、隣接するブラケット片の熱膨張が吸収される。このようにブラケット30では、変形部39、41が弾性変形する簡単な構成で、熱膨張に伴うウインドガラス100との間の接着性の低下を抑制することができる。
【0070】
またブラケット30では、変形部39、41が屈曲変形可能な山なりの湾曲部であることから、湾曲部の屈曲変形(弾性変形)時に湾曲部に局所的な応力集中が生じるのを抑制することができる。これにより、ブラケット30では、隣接するブラケット片の熱膨張を連結部38、41で吸収する効果を長期に亘り維持することが可能となる。
【0071】
またブラケット30では、変形部39の厚み及び変形部41の厚みをそれぞれブラケット片32の厚みよりも薄くしているため、例えば、変形部39、41の各厚みがブラケット片32の厚み以上の場合と比べて、変形部39、41が弾性変形しやすい。このようにブラケット30では、変形部39、41の各厚みをそれぞれブラケット片32の厚みよりも薄くするという簡単な構成で変形部を弾性変形しやすくできる。
【0072】
またブラケット30では、隣接するブラケット片同士を複数の連結部38、40で連結していることから、例えば、隣接するブラケット片同士を一つの連結部で連結する構成と比べて、隣接するブラケット片の熱膨張を複数の連結部38、40で分けて吸収することが可能になる。これにより、隣接するブラケット片の熱膨張を安定して吸収可能になる。
【0073】
またブラケット30では、隣接するブラケット片同士を同じ形状の複数の連結部38、40で連結すると共に隣接する連結部38、40同士を対称に配置していることから、隣接するブラケット片の熱膨張をそれぞれの連結部38、40で略均等に吸収することが可能になる。これにより、隣接するブラケット片の熱膨張を更に安定して吸収可能になる。
【0074】
車両前方を撮影する運転支援用の車載機器20であるステレオカメラは、2つのカメラ24が長手方向ELに間隔をあけて配置されている。このようなステレオカメラをウインドガラス100であるフロントガラスに固定する場合、フロントガラスに対してステレオカメラの長手方向ELが車両幅方向となるように(言い換えると、2つのカメラ24が車両幅方向で離間するように)固定する必要がある。ここで、取付構造S1では、複数のブラケット片32、34、36をフロントガラスに対して車両幅方向に並列した状態で接着しているため、例えば、複数のブラケット片をフロントガラスに対して車両前後方向に並列した状態で接着している構成と比べて、車両幅方向に隣接するブラケット片の熱膨張を連結部38、40で吸収できる。このため、フロントガラスにブラケット30を介して固定されるステレオカメラのフロントガラスに対する車両幅方向の位置精度が向上する。
【0075】
また、取付構造S1では、ウインドガラス100であるフロントガラスに接着されたブラケット30に車載機器20を取り付けた状態において、ブラケット片32の複数の位置決め部70の並列方向及びブラケット片36の複数の位置決め部74の並列方向が車両幅方向であり、ブラケット片34の複数の位置決め部72の並列方向が車両前後方向であることから、フロントガラスに複数のブラケット片32、34、36をそれぞれ接着する場合のフロントガラスに対する車両幅方向及び車両前後方向の位置決め精度が向上している。これにより、フロントガラスに対するブラケット30の車両幅方向及び車両前後方向の位置精度が向上する。
【0076】
(その他の実施形態)
前述の実施形態では、押付装置90の第1保持部92と第2保持部94が支持部98によって相対回転可能とされているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、図17に示される押付装置110のように、ブラケット30を上にして固定された第2保持部114に対して、ウインドガラス100の内面100Aを下に向けて保持した第1保持部112を近付けてブラケット30をウインドガラス100に押し付ける構成でもよい。このようにブラケット30を上にして固定する場合、第2保持部114には、凸状の位置決め部70、72、74を収容する凹部を形成するのみで、第2保持部114に対してブラケット30を正確に位置決めすることができる。なお、第1保持部112と第2保持部114を近づける手段としては、第2保持部114に対して第1保持部112を相対回転を用いてもよいし、第2保持部114に対して第1保持部112を相対移動(下降)させてもよい。
【0077】
前述の実施形態では、一つのブラケット片に複数の位置決め部を設けているが、本発明はこの構成に限定されず、一つのブラケット片に一つの位置決め部を設ける構成でもよい。
【0078】
前述の実施形態では、係合突起の軸線の延長線上に複数の位置決め部を配置しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、係合突起の軸線の延長線上に複数の位置決め部のうち一部の位置決め部が配置される構成でもよい。
【0079】
前述の実施形態では、隣接するブラケット片32、34同士を連結する連結部と、隣接するブラケット片34、36同士を連結する連結部を同じ連結部としているが、本発明はこの構成に限定されず、隣接するブラケット片32、34同士を連結する連結部と、隣接するブラケット片34、36同士を連結する連結部を異なる連結部としてもよい。
【0080】
前述の実施形態では、弾性変形可能な変形部39を有する連結部38と弾性変形可能な変形部41を有する連結部40とで隣接するブラケット片同士が相対移動可能に連結されているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、連結部38と連結部40がそれぞれスライド機構を有する構成とし、隣接するブラケット片同士を連結部38と連結部40の各々のスライド機構で相対移動可能にしてもよい。
【0081】
前述の実施形態では、ブラケット30をウインドガラス100の一例であるフロントガラスに接着しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、ブラケット30をウインドガラス100の一例であるリアガラスに接着してもよい。この場合には、車載機器20であるステレオカメラが車両後方を撮影する。また、ブラケット30をウインドガラス100のうち、フロントガラス及びリアガラスを除き車体に固定されているウインドガラス(言い換えると、開閉できないウインドガラス)に接着してもよい。この場合には、車載機器20であるステレオカメラがウインドガラスから車両外側を撮影する。
【0082】
前述の実施形態では、ブラケット30を3つのブラケット片32、34、36で構成しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、ブラケットを2つのブラケット片で構成してもよいし、ブラケットを4つ以上のブラケット片で構成してもよい。
【0083】
前述の実施形態では、ブラケット片32、34、36にそれぞれ凸状の位置決め部70、72、74が設けられているが、本発明はこの構成に限定されず、ブラケット片32、34、36にそれぞれ凹状の位置決め部が設けられてもよい。この場合には、押付装置90の第2保持部94に凹状の位置決め部を保持できる部位を設ける。
【0084】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0085】
20 車載機器
24 カメラ(ステレオカメラ)
26 係合突起(係合部)
28 係合突起(係合部)
30 ブラケット
32 ブラケット片
34 ブラケット片
36 ブラケット片
38 連結部
40 連結部
42 被係合部
44 被係合部
46 被係合部
70 位置決め部
72 位置決め部
74 位置決め部
90 押付装置
100 ウインドガラス
110 押付装置
S1 取付構造(車載機器取付構造)
L1 延長線(係合突起の軸線の延長線)
L2 延長線(係合突起の軸線の延長線)
L3 延長線(係合突起の軸線の延長線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17