(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】アセチルコリン受容体結合ペプチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20221129BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20221129BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20221129BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20221129BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221129BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20221129BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C07K7/06
A61K8/64
A61Q19/08
A61P17/00
A61K38/08
(21)【出願番号】P 2019572609
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(86)【国際出願番号】 KR2018007170
(87)【国際公開番号】W WO2019004674
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2019-12-27
(31)【優先権主張番号】10-2017-0082039
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519456251
【氏名又は名称】スキンメドカンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウォンイル
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヨンチョル
(72)【発明者】
【氏名】イ,ズンフン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ヨンソン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジンファ
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-505929(JP,A)
【文献】国際公開第2013/062444(WO,A1)
【文献】J. Control. Release,2014年,Vol. 192,p. 141-147
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/00 - 7/66
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記
配列番号1乃至
22及び27乃至30からなるグループから選択される何れか一つ以
上で表されるアミノ酸配列
からなる、アセチルコリン受容体結合ペプチド
:
[配列番号1]KGTLNR、
[配列番号2]RKSLLR、
[配列番号3]EDKGKN、
[配列番号4]RDKLQM、
[配列番号5]QLGQLS、
[配列番号6]GRLSAS、
[配列番号7]RQLNNQ、
[配列番号8]DNLQNN、
[配列番号9]LYQRLG、
[配列番号10]NKQVKF、
[配列番号11]ETYDSK、
[配列番号12]WTWKGKGTLNR、
[配列番号13]WTWKGRKSLLR、
[配列番号14]WTWKGEDKGKN、
[配列番号15]WTWKGRDKLQM、
[配列番号16]WTWKGQLGQLS、
[配列番号17]WTWKGGRLSAS、
[配列番号18]WTWKGRQLNNQ、
[配列番号19]WTWKGDNLQNN、
[配列番号20]WTWKGLYQRLG、
[配列番号21]WTWKGNKQVKF、
[配列番号22]WTWKGETYDSK、
[配列番号27]TWKGKGTLNR、
[配列番号28]WKGKGTLNR、
[配列番号29]WTWKGKGTLN、及び
[配列番号30]WTWKGKGTL。
【請求項2】
請求項
1に記載のペプチドをコーディングするポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項
1に記載のペプチ
ドを有効成分として含有するシワ改善用化粧料組成物。
【請求項4】
請求項
1に記載のペプチ
ドを有効成分として含有するシワ改善用薬学的組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のペプチドを含有するアセチルコリン抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセチルコリン受容体結合ペプチドに関し、より詳細にはアセチルコリンが作用するアセチルコリン受容体と結合してアセチルコリンの分泌を遮断し、シワ改善の効果を示すペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、健康な生に対する関心が増加し、生活水準の向上、女性の社会進出増加、高齢化の加速化等により、消費者の化粧品に対するニーズは、美しく飾るための用途からますます機能的用途を要求するものに変化している。
【0003】
肌の老化現象を防止し、より健康且つ弾力のある肌を維持するために、シワ改善の効果がある生理活性物質を開発しようとする研究活動が絶えず行われてきた。代表的に1995年光老化した肌の改善のための治療剤としてトレチノイン酸(trans-retinoic acid)が米国FDAの許可を受け、これより副作用の少ないレチノールが、1990年代中後半から化粧品の原料に使用され始め、本格的にシワ改善の化粧品が発売され始めた。それ以降、女性ホルモン類似物質、各種植物から抽出した抗酸化剤などがシワ改善の原料として化粧品に導入された。
【0004】
しかしながら、このような化粧品原料は、ほとんど効能が不十分であるか、または肌副作用を誘発するなど、さまざまな問題点を持っていた。また、効能が良い原料であっても、現在の化粧品原料は、肌に作用する範囲が制限的であり、ほとんどコラーゲンの合成促進、コラーゲン分解抑制、活性酸素の除去のように、肌に及ぼす効能が類似しており、より新しく、より強力であり、より根本的なシワ改善を希望する顧客の要求を十分に満たすことができなかった。これによって、最新の肌科学理論に基づいて、新しい肌老化のメカニズムを解明し、これを遮断したり遅らせることができる原料と技術に対する研究が、化粧品産業で活発に行われている。
【0005】
最近、ペプチド成分を化粧品に使用して肌のシワを改善する研究が活発に行われている。ペプチド(peptide)は、アミノ酸が2つ以上結合して形成された物質であるが、化学合成、酵素反応、又はたんぱく質からの加水分解によって製造される。
【0006】
一方、アセチルコリンは、末梢神経系で骨格筋と内臓の筋肉の運動に関与し、脳では学習と記憶に影響を与える。運動神経と筋肉が出会う場所で、神経伝達物質であるアセチルコリンの分泌を妨げると、筋肉の収縮を抑制し、筋肉が麻痺されながらシワが伸びるが、これを利用したものの一例として、ボトックスがこれに該当する。ボトックスは、運動神経末端で筋肉の収縮に必須の物質であるアセチルコリンが分泌される過程を妨げる。その結果、筋肉が動くことができなくなり、筋肉によって誘発されたシワがなくなる。
【0007】
したがって、同じ原理でアセチルコリンの分泌を抑制するペプチドを開発すれば、肌のシワ改善、及び予防を期待することができるものと予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、アセチルコリン受容体と結合してアセチルコリンの分泌を抑制するペプチドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、下記一般式1乃至6の何れか一つ以上の一般式で表されるアミノ酸配列を含むアセチルコリン受容体結合ペプチドを提供することを本発明の一側面とする。
【0011】
[一般式1]WTWKG-Xn
【0012】
[一般式2]TWKG-Xn
【0013】
[一般式3]WKG-Xn
【0014】
[一般式4]KG-Xn
【0015】
[一般式5]G-Xn
【0016】
[一般式6]Xn
【0017】
(前記Xnは、1乃至6個の任意のアミノ酸からなるシーケンスを表す)
【0018】
本発明において、用語「ペプチド(peptide)又はその断片」とは、アミド結合(又はペプチド結合)で連結された2個以上のアミノ酸からなるポリマーを意味する。本発明の目的上、シワ改善の効果を示すペプチド又はその断片を意味する。
【0019】
本発明のペプチド又はその断片は、標的化配列、タグ(tag)、標識された残基、半減期、又はペプチドの安定性を増加させるための特定の目的で考案されたアミノ酸配列を含むことができる。
【0020】
本発明のペプチド又はその断片は、当分野に広く公知となった様々な方法で獲得できる。詳細には、遺伝子組み換えとたんぱく質発現システムを用いて製造するか、又はペプチド合成のような化学的合成を通じて試験管内で合成する方法、及び無細胞たんぱく質合成法などで製造されることができる。
【0021】
より具体的には、この分野でよく知られている方法、例えば、自動ペプチド合成器によって合成でき、遺伝子操作技術によって生産することもできるが、これに制限されるわけではない。例えば、遺伝子操作を通じて融合パートナーと本発明のペプチドからなる融合たんぱく質をコーディングする融合遺伝子を製造し、それによって宿主微生物を形質転換させた後、宿主微生物から融合たんぱく質の形態で発現させた後、たんぱく質分解酵素又は化合物を用いて融合たんぱく質から本発明のペプチドを切断、分離して、希望するペプチドを生産することができる。このため、例えば、Factor Xaやエンテロキナーゼのようなたんぱく質分解酵素、CNBr、又はヒドロキシルアミンのような化合物によって切断されることができるアミノ酸残基をコーディングするDNA配列を融合パートナーと本発明のペプチド遺伝子との間に挿入できる。
【0022】
本発明によるアセチルコリン受容体と結合し、アセチルコリンの分泌を抑制するペプチドにおいて、前記Xnは、配列番号1乃至11の配列の何れかのアミノ酸配列を有するものであってもよい。
【0023】
[配列番号1]KGTLNR、
【0024】
[配列番号2]RKSLLR、
【0025】
[配列番号3]EDKGKN、
【0026】
[配列番号4]RDKLQM、
【0027】
[配列番号5]QLGQLS、
【0028】
[配列番号6]GRLSAS、
【0029】
[配列番号7]RQLNNQ、
【0030】
[配列番号8]DNLQNN、
【0031】
[配列番号9]LYQRLG、
【0032】
[配列番号10]NKQVKF、
【0033】
[配列番号11]ETYDSK
【0034】
本発明によるアセチルコリン受容体と結合してアセチルコリンの分泌を抑制するペプチドにおいて、前記ペプチドは、配列番号12乃至22の配列の何れかのアミノ酸配列を含むことができる。
【0035】
[配列番号12]WTWKGKGTLNR
【0036】
[配列番号13]WTWKGRKSLLR
【0037】
[配列番号14]WTWKGEDKGKN
【0038】
[配列番号15]WTWKGRDKLQM
【0039】
[配列番号16]WTWKGQLGQLS
【0040】
[配列番号17]WTWKGGRLSAS
【0041】
[配列番号18]WTWKGRQLNNQ
【0042】
[配列番号19]WTWKGDNLQNN
【0043】
[配列番号20]WTWKGLYQRLG
【0044】
[配列番号21]WTWKGNKQVKF
【0045】
[配列番号22]WTWKGETYDSK
【0046】
本発明によるアセチルコリン受容体と結合してアセチルコリンの分泌を抑制するペプチドにおいて、前記アセチルコリン受容体結合ペプチドは、下記配列番号23乃至26で表
されるアミノ酸配列の何れかの配列を含むことを特徴とする。
【0047】
[配列番号23]WTWKGKGTLNR
【0048】
[配列番号24]WTWKGRKSLLR
【0049】
[配列番号25]WTWKGEDKGKN
【0050】
[配列番号26]WTWKGRDKLQM
【0051】
本発明によるアセチルコリン受容体と結合してアセチルコリンの分泌を抑制するペプチドにおいて、前記アセチルコリン受容体結合ペプチドは、下記配列番号27乃至31で表されるアミノ酸配列の何れかの配列を含むことを特徴とする。下記配列番号27乃至31で表されるアミノ酸配列は、最適化のために、配合割合23乃至26で表されるアミノ酸配列のうち一部が欠失した構造である。
【0052】
[配列番号27]TWKGKGTLNR
【0053】
[配列番号28]WKGKGTLNR
【0054】
[配列番号29]WTWKGKGTLN
【0055】
[配列番号30]WTWKGKGTL
【0056】
[配列番号31]KGTLNR
【0057】
また、本発明は、
(1)ペプチドライブラリーを作製後、ベクターに挿入して組み換えファージを製造する段階と、
(2)前記組み換えファージとアセチルコリン受容体とを混合した後、バイオパニング(biopanning)を実施してアセチルコリン受容体と結合するファージを選別する段階と、
(3)前記段階(2)で選別されたファージに対して、アセチルコリン受容体と、対照群との酵素免疫分析(ELISA)を実施する段階と、
(4)前記酵素免疫分析の実施結果を分析し、対照群に対してアセチルコリン受容体と結合シグナルの強度が1.5倍以上であるファージを選別する段階と、を含むアセチルコリン受容体結合ペプチドのスクリーニング方法を提供することを本発明のまた別の側面とする。
【0058】
本発明によるアセチルコリン受容体と結合してアセチルコリンの分泌を抑制するペプチドの選別方法において、前記(1)ペプチドライブラリーを作製後、ベクターに挿入して組み換えファージを製造する段階での前記ペプチドライブラリーは、配列番号1乃至11の何れかの塩基配列からなるDNAライブラリーを用いて作製されたものであってもよい。
【0059】
また、本発明は、本発明によるペプチドをコーディングするポリヌクレオチドを提供する。また、前記生体構造物に対して結合活性を示すことができるペプチドをコーディングすることができる限り、前記塩基配列と相同性を示す塩基配列を含むポリヌクレオチドもやはり、本発明で提供するポリヌクレオチドの範疇に含まれることができるが、好ましくは80%以上の相同性を示す塩基配列を含むポリヌクレオチドになることができ、より好
ましくは90%以上の相同性を示す塩基配列を含むポリヌクレオチドになることができ、最も好ましくは95%以上の相同性を示す塩基配列を含むポリヌクレオチドになることができる。
【0060】
また、本発明は、本発明によるペプチドを有効成分として含有するシワ改善用化粧品組成物を提供することを別の側面とする。
【0061】
また、本発明は、前記のペプチドを有効成分として含有するシワ改善用薬学的組成物を提供することを別の側面とする。
【0062】
本発明によるシワ改善用薬学的組成物は、本発明のペプチド又はこれらの薬学的に許容可能な塩を単独で含有するか、又は一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含有することができる。
【0063】
本発明における用語、「薬学的に許容」とは、治療効果を示すことができる程度の充分な量と、副作用を引き起こさないことを意味し、疾患の種類、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物に対する敏感度、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合、又は同時使用される薬物等、医学分野によく知られている要素に応じて、当業者によって容易に決定されることができる。
【0064】
薬学的に許容される担体としては、例えば、経口投与用担体、又は非経口投与用担体をさらに含むことができる。
【0065】
経口投与用担体は、ラクトース、澱粉、セルロース誘導体、マグネシウムステアレート、ステアリン酸等を含むことができる。また、非経口投与用担体は、水、適合なオイル、食塩水、水性グルコース、及びグリコール等を含むことができ、安定化剤及び保存剤をさらに含むことができる。適合な安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、又はアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。適合な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチル-又はプロピル-パラベン及びクロロブタノールがある。その他の薬学的に許容される担体としては、次の文献に記載されているものを参考とすることができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA,1995)。
【0066】
本発明のシワ改善用薬学的組成物は、ヒトをはじめとした哺乳動物にどんな方法でも投与できる。例えば、経口又は非経口的に投与できる。非経口的な投与方法としては、これに限定されるわけではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下、又は直腸内投与であり得る。好ましくは、本発明の薬学的組成物は、経皮投与されることができる。前記で「経皮投与」とは、本発明の薬学的組成物を細胞または肌に投与して、本発明の組成物に含有された活性成分が肌内へ伝達されるようにすることをいう。例えば、本発明の薬学的組成物を注射型剤形で製造し、これを30ゲージの細い注射針で肌を軽く刺す(prick)する方法、又は肌に直接的に塗布する方法で投与されることができる。
【0067】
本発明の薬学的組成物は、前述したような投与経路によって、経口投与用又は非経口投与用製剤で剤形化できる。
【0068】
経口投与用製剤の場合、本発明の組成物は、粉末、顆粒、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁液等で、当業界に公知となった方法を用いて剤形化できる。例えば、経口用製剤は、活性成分を固体賦形剤と配合してから
これを粉砕し、適合な補助剤を添加した後、顆粒混合物で加工することによって、錠剤又は糖衣錠剤を収得することができる。適合な賦形剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、及びマルチトール等を含む糖類と、トウモロコシ澱粉、ミール澱粉、米澱粉、及びジャガイモ澱粉等を含む澱粉類、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチル-セルロース等を含むセルロース類、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等のような充填剤が含まれることができる。また、場合によって、架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はナトリウムアルジネート等を崩壊剤として添加できる。
【0069】
非経口投与用製剤の場合には、注射剤、クリーム剤、ローション剤、外用軟膏剤、オイール剤、保湿剤、ゲル剤、エアロゾル、及び鼻腔吸入剤の形態で当業界に公知となった方法で剤形化できる。これらの剤形は、全ての製薬化学に一般に公知となった処方書である文献(Remington’s Pharmaceutical Science,15th Edition,1975.Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania 18042,Chapter 87:Blaug,Seymour)に記載されている。
【0070】
本発明のペプチドの全有効量は、単一投与量(single dose)で患者に投与されることができ、多重投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)によって投与されることができる。本発明の薬学的組成物は、疾患の程度によって有効成分の含量を異にすることができる。
【発明の効果】
【0071】
本発明によるペプチドは、アセチルコリン受容体と結合強度が高く、アセチルコリンと強く結合し、アセチルコリンの分泌を抑制することによって、本発明によるペプチドを有効成分として含む化粧品組成物及び薬学的組成物は、優れたシワ改善の効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】本発明の一実施例に係るランダムペプチドDNAライブラリーの作製結果である。
【
図2】本発明の一実施例に係るバイオパニング段階でアセチルコリン受容体に対する特異性の増加可否を確認した結果である。
【
図3】本発明の一実施例に係るバイオパニング段階で回収した組み換えファージの陰性対照群であるストレプトアビジン(streptavidin)に対してアセチルコリン受容体に対するELISAの結果を示すものである。
【
図4】本発明の一実施例に係るELISAの結果で、アセチルコリン受容体ストレプトアビジン(streptavidin)のシグナル比率が1.5倍以上である組み換えファージのシーケンシングによる選別されたペプチドの多重整列(multiple alignment)の結果である。
【
図5】本発明の一実施例に係る陽性対照群であるSynakeとVialoxと選別されたペプチドの結合能を測定した結果である。
【
図6】本発明の一実施例に係る陽性対照群であるSynakeの結合能を測定した結果である。
【
図7】本発明の一実施例に係る選別されたペプチドの結合能を測定した結果である。
【
図8】本発明の一実施例に係る最適化(optimization)のための欠失(deletion)したペプチドの結合能を比較した結果である。
【
図9】本発明の一実施例に係る欠失したペプチドの結合能を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下、実施例を通じて、本発明をさらに詳細に説明しようとする。これらの実施例は、ただ本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されないことは、当業界で通常の知識を有する者にとって自明である。
【0074】
実施例1.ランダムペプチドファージライブラリーの製造
【0075】
1-1.4mer、5mer、6merのランダムペプチドの作製及びベクターへの挿入
【0076】
ランダムペプチドライブラリー(WTWKG(X)n、X=ランダムアミノ酸、n=4乃至6)を製造するために、DNAライブラリー4mer(TTCTATGCGGCCCAGCTGGCCTGGACATGGAAGGGANNKNNKNNKNNKGCGGCCGCAGAAACTGTT)、5mer(TTCTATGCGGCCCAGCTGGCCTGGACATGGAAGGGANNKNNKNNKNKKNNKGCGGCCGCAGAAACTGTT)、6mer(TTCTATGCGGCCCAGCTGGCCTGGACATGGAAGGGANNKNNKNNKNNKNKKNNKGCGGCCGCAGAAACTGTT)を合成した(Bioneer、Daejeon、Korea)。
【0077】
二つの1本鎖(single strand)プライマー(TTCTATGCGGCCCAG、AACAGTTTCTGCGGC)でPCRを用いて2本鎖のインサート(Double strand insert)を増幅した。ランダムペプチドDNAライブラリーの作製結果を
図1に示した。
【0078】
これをファージミドベクター(Phagemid Vector)(pIGT)に挿入するために、ファージミドベクターとPCRを用いて増幅したインサートDNAを制限酵素で処理した。
【0079】
約10μgのインサートDNAをSfiI(New England Biolabs(NEB)、Ipswich)及びNotI(NEB、Ipswich)で8時間反応させた後、PCR精製キットを用いて精製DNAを得た。また、約10μgのファージミドベクターをSfiI及びNotIで8時間処理し、CIAP(Calf Intestinal Alkaline Phosphatase)(NEB、Ipswich)を入れて1時間反応させた後、PCR精製キットを用いて精製した。精製した結果を
図1に示し、4mer、5mer、6merのペプチドライブラリーDNAはそれぞれ1.8×10
9、3.2×10
8、5.9×10
8個作製した。
【0080】
T4 DNAリガーゼ(Bioneer、Daejeon、Korea)を用いてインサートDNA(3μg)をファージミドベクター(10μg)と18℃で15時間連結した後、エタノールで沈殿させて、TEバッファー100μLでDNAを溶解させた。
【0081】
1.2 電気穿孔
【0082】
前記実施例1.1で製造された各4mer、5mer、6merのランダムインサートDNAを含んでいるファージミドベクター100μLを4μLずつ25個に分注し、電気穿孔を行った。
【0083】
より詳細には、コンピテント細胞(competent cell)を氷上で溶かし、200μLのコンピテント細胞をインサートDNAを含んでいるそれぞれのファージミド
ベクター溶液4μLと混合した後、冷却して準備された0.2cmのキュベットに入れた後、1分の間に氷上に置いた。
【0084】
電気穿孔機(BioRAD、Hercules、CA)を200Ωで25μF及び2.5kVの条件でプログラムし、準備されたキュベットの水気を除去して電気穿孔機に位置させた後、パルスを加えた(時間定数は4.5乃至5msec)。以降、直ちに37℃で準備した20mMのグルコースが含まれた1mLのLB(Luria Bertani)液体培地に入れた後、得られた総25mLの細胞を100mLの試験管に移した。一時間の間に37℃で200rpmの速度で混合して培養した後、ライブラリーの個数を測定するために、10μLを分注してから希釈して、アンピシリンagar培地に塗抹した。分注した後に残留する細胞を1LのLBに20mMのグルコース及び50μg/mLのアンピシリンを入れて、30℃で一日培養した。4℃で4,000xgで20分間遠心分離し、沈殿された細胞を除いた上層液を全て除去し、40mLのLBで再懸濁させた後、グリセロールを最終濃度20%以上入れて、-80℃に保管した。
【0085】
1.3 ランダムペプチドライブラリーで組み換えファージの生産
【0086】
前記実施例1.2で-80℃に保存された4mer、5mer、6merのランダムペプチドライブラリーで組み換えファージを生産した。
【0087】
30mLのSB液体培地に-80℃に保管されたライブラリー1mLを追加し、20分間37℃で200rpmの速度で混合して培養した。ここに、ヘルパーファージ(Helper phage)(1010pfu)とアンピシリン(最終の濃度50μg/mL)を入れて、再度1時間の間に同じ条件で培養した。そして、アンピシリン(50μg/mL)及びカナマイシン(10μg/mL)が含まれたSB液体培地30mLに移して、同じ条件で16時間以上培養して組み換えファージを生産した。生産された組み換えファージを4℃で5,000rpmの速度で10分間遠心分離し、上層液を得て、上層液にPEG/NaClを5:1の体積比(v/v)で混合し、氷に1時間放置させた後、4℃で20分間13,000rpmの速度で遠心分離して上層液は慎重に除去し、1mLのPBS(Phosphate bufferd saline)でペレットを再懸濁させた。
【0088】
実施例2.アセチルコリン受容体に結合するペプチドのスクリーニング方法
【0089】
2.1 アセチルコリン受容体のバイオパニング
【0090】
アセチルコリン受容体(AchR)alpha 1(10μg/mL)を96 well high binding plateの8個のウェルに50μLずつ入れた後、4℃で一夜の間に放置し、翌日PBS200μLで1回洗浄した後、2%BSA(Bovine Serum Albumin)200μLを入れて常温で2時間ブロッキングした後、溶液を全て捨ててPBS200μLで3回洗浄した。
【0091】
ここに、前記実施例1.3でそれぞれ製造された4mer、5mer、6merのランダムペプチド組み換えファージを含む溶液400μL及び2%BSA400μLを混合し、ウェル(well)当たりの100μLずつ入れて、常温で1時間放置した。8個のウェル(well)の溶液を全て除去し、0.1%PBST(tween-20)で3回洗浄した後、0.2Mグリシン(pH2.2)をウェル(well)当たりの100μLずつ入れて10分間ファージを溶出させて、800μLのE-tubeに合わせて、ここに1M Tris(pH9.0)200μLを入れて中和させた。
【0092】
各バイオバニング毎にinputファージ及びoutputファージの数を測定するた
めに、OD=0.7であるE.coilに混ぜてアンピシリンが含まれたagar培地に塗抹した。パニングを繰り返すために、outputファージ500μLを5mLのE.coilと混ぜて、37℃で200rpmの速度で30分間混合して培養した後、アンピシリン(50μg/mL)及びヘルパーファージ(1×1010pfu)添加し、同じ方法で30分間培養した。その後、アンピシリン(50μg/mL)とカナマイシン(10μg/mL)が含まれた50mLのSB培地に移して、同じ方法で一日間培養した。培養液を4℃で5,000rpmの速度で10分間遠心分離し、上層液にPEG/NaCl[20%PEG(w/v)及び15%NaCl(w/v)]を5:1の割合で添加した後、氷に1時間静置させた。4℃で13,000rpmの速度で20分間遠心分離後、上層液を完全に除去し、1mLのPBS溶液でファージペレットを懸濁した後、2次バイオパニングに使用した。各パニングの段階毎に前記と同じ方法で使用し、洗浄過程の回数を3回、5回、7回、及び10回として、6merのライブラリー(S6)をアセチルコリン受容体たんぱく質に対して5回にかけてバイオパニングを実施した条件とInputファージ、Outputファージの結果を下記表1に整理した。
【0093】
【0094】
2.2 アセチルコリン受容体(AchR)のインプットファージ(Input phage)のELISA
【0095】
前記ライブラリーの各インプットファージ(Input phage)のELISAをストレプトアビジン(Streptavidin)及びアセチルコリン受容体(AchR)に対して行った。
【0096】
96ウェルのELISAプレートに10μg/mLのアセチルコリン受容体とストレプトアビジンを各ウェル当たりの50μLずつ10個ずつ入れて、4℃で一日間放置した。以降、全てのウェルを0.05%PBSTで3回洗浄し、PBSで希釈した2%BSAを使用して常温で2時間ブロッキングした後、溶液を全て捨てて0.05%PBSTで3回洗浄した。
【0097】
前記表1における組み換えファージである三番目(3
rdS6)、四番目(4
thS6)、及び五番目(5
thS6)のインプットファージ800μL及び10%BSA200μLを混合し、100μLずつアセチルコリン受容体とストレプトアビジンウェルにそれぞれ3ウェルずつ分注し、30℃で1時間静置した。0.05%PBST溶液で3回洗浄した後、HRP-コンジュゲート抗-M13抗体(GE Healthcare)を1:1,000で希釈して30℃で1時間反応させた。0.05%PBSTで3回洗浄した後、ペルオキシダーゼの基質であるテトラメチルベンジジン(TMB)(BD Science)溶液100μLを分注し、発色反応を誘導した後、100μLの1M HClを添加して反応を中止させた。以降、450nmで吸光度を測定した。吸光度の測定結果を
図2に示した。
【0098】
2.3 アセチルコリン受容体に特異的なファージ検索(colony ELISA)
【0099】
前記表1における、四番目(4thS6)、五番目(5thS6)のアウトプットファージをE.coilに接種させた後、プラークがプレート当たりの100乃至200個程度になるように塗抹した。滅菌されたチップを用いてプラーク50個を1mLのSB-アンピシリン(50μg/mL)培養液に接種した後、37℃で5時間振とう培養してヘルパーファージを30μLずつ添加し、37℃で200rpmの速度で一日間培養した。培養液を12,000rpmの速度で2分間遠心分離して上層液を回収した後、2%BSAを入れてこれをファージ検索に使用した。
【0100】
96ウェルのELISAプレートに5μg/mLのアセチルコリン受容体、ストレプトアビジンを各ウェル(well)当たりの50μLずつ50個のウェル(well)に入れて、4℃で一日間放置した。翌日、全てのウェル(well)のたんぱく質を除去し、2%BSAを使用して常温で2時間ブロッキングした後、溶液を全て捨てて0.05%PBSTで3回洗浄した。各クローン別に増幅したファージ溶液100μLずつを全てのウェル(well)に分注し、30℃で1時間静置した。0.05%PBST溶液で3回洗浄した後、HRP-コンジュゲート抗-M13抗体(GE Healthcare)を1:2,000で希釈して100μLずつ分注し、30℃で1時間反応させた。0.05%PBSTで3回洗浄した後、TMB溶液100μLを分注して発色反応を誘導した後、100μLの1M H
2SO
4を添加して反応を中止させた。以降、結果を
図3に整理した。
【0101】
図3を参照とし、ストレプトアビジンに対してアセチルコリン受容体のシグナルが1.5倍以上出たファージのプラスミドを精製し、シーケンシングを依頼した(Bioneer、Deajon、Korea)。シーケンシングプライマーは、GATTACGCCAAGCTTTGGAGCを使用した。
【0102】
シーケンシングを通じて、アセチルコリン受容体に特異的結合能を有するペプチドシーケンスを
図4及び下記の表2に整理した。
【0103】
【0104】
実施例3.発掘したペプチドのアセチルコリン結合力の比較実験
【0105】
前記表2において、ペプチドのうち、多重整列(multiple alignment)を通じてシーケンスの類似性を示すS6_1(WTWKGKGTLNR)、S6_2(WTWKGRKSLLR)、S6_3(WTWKGEDKGKN)、S6_4(WTWKGRDKLQM)を合成した。
【0106】
このアセチルコリン受容体に対する結合力を比較するために、バイオセンサチップを用いて、surface plasmon resonance(SPR)実験を行った(Biacore3000、Biacore AB、Uppsala、Sweden)。選択されたアセチルコリン受容体のたんぱく質をEDC/NHSを用いてCM5チップ(Biacore)に固定し、最大500秒までassociationとdissociationを観察した。観察条件はランニングバッファー20mM Tris(pH 7.4)、速度30μL/分、ペプチド濃度10μM(S6_1、S6_2、S6_3、S6_4)の条件で行った。
【0107】
【0108】
実施例4.発掘したペプチドS6_1と陽性対照群との結合力の比較実験
【0109】
発掘したペプチドであるS6_1(WTWKGKGTLNR)と欠失(deletion)したフォームであるSc_1_C6(KGTLNR)と、陽性対照群であるSynakeとVialoxのアセチルコリン受容体に対する結合力を比較するために、バイオセンサチップを用いてsurface plasmon resonance(SPR)実験を行った(Biacore3000、Biacore AB、Uppsala、Sweden)。
【0110】
選択されたアセチルコリン受容体のたんぱく質をEDC/NHSを用いてCM5チップ(Biacore)に固定し、最大500秒までassociationとdissociationを観察した。観察条件は、ランニングバッファー20mM Tris(pH
7.4)、速度30μL/分、ペプチド濃度10μM(Synake、Vialox、S6_1、S6_1_C6)の条件で行った。結合力の比較実験結果、
図6に整理した。
【0111】
実施例5.S6_1のペプチド及びSynakeペプチドの親和力測定
【0112】
発掘したペプチドであるS6_1(WTWKGKGTLNR)と、陽性対照群であるSynakeのアセチルコリン受容体に対する親和力を確認するために、バイオセンサチップを用いてsurface plasmon resonance(SPR)実験を行った(Biacore3000、Biacore AB、Uppsala、Sweden)。アセチルコリン受容体をEDC/NHSを用いてCM5チップ(Biacore)に固定し、最大500秒までassociationとdissociationを観察した。観察条件は、ランニングバッファー20mM Tris(pH 7.4)、速度30μL/分で行った。濃度10乃至50μM(Synake)、濃度0.1乃至10μM(ペプチドS6_1)の条件で行った。それぞれの結果を
図7(Synake)及び
図8(ペプチドS6_1)に示した。
【0113】
実施例6.S6_1のペプチドの最適化及び結合力の比較実験
【0114】
S6_1の最適化のためにN-末端とC-末端で一つと二つずつアミノ酸を除去したペプチドであるS6_1_C10(TWKGKGTLNR)、S6_1_C9(WKGKGTLNR)とS6_1_C10_end(WTWKGKGTLN)、S6_1_C9_end(WTWKGKGTL)を合成した。
【0115】
これらのペプチドのアセチルコリン受容体に対する結合力を比較するために、バイオセンサチップを用いてsurface plasmon resonance(SPR)実験を行った(Biacore3000、Biacore AB、Uppsala、Sweden)。
【0116】
選択されたアセチルコリン受容体のたんぱく質をEDC/NHSを用いてCM5チップ(Biacore)に固定し、最大500秒までassociationとdissociationを観察した。観察条件は、ランニングバッファー20mM Tris(pH7.4)、速度30μL/分、ペプチド濃度10μM(Synake、Vialox、S6_1、S6_1_C10、S6_1_C9、S6_1_C10_end、S6_1_C9_end、S6_1_C6)の条件で行った。結果を
図9に整理した。
【0117】
実施例7.S6_1_C9のペプチドの親和力測定
【0118】
前記実施例6で製造された最適化されたS6_1_C9のペプチド(WKGKGTLNR)のアセチルコリン受容体に対する親和力を確認するために、バイオセンサチップを用いてsurface plasmon resonance(SPR)実験を行った(B
iacore3000、Biacore AB、Uppsala、Sweden)。
【0119】
選択されたアセチルコリン受容体のたんぱく質をEDC/NHSを用いてCM5チップ(Biacore)に固定し、最大500秒までassociationとdissociationを観察した。観察条件は、ランニングバッファー20mM Tris(pH
7.4)、速度30μL/分、濃度0.1乃至0.5μM(ペプチドS6_1_C9)の条件で行った。
【0120】
結果を
図10に整理した。
図10を参照すると、S6_1_C9のペプチド(WKGKGTLNR)はアセチルコリンに対して、Synakeに対して約100倍高い結合能を示すことが確認できる。
【0121】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者において、このような具体的な技術は単に好ましい実施態様であるだけであり、これによって本発明の範囲が制限されるものではない点は明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付された請求項とそれらの等価物によって定義されるといえる。
【配列表】