(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】浴室の洗い場床パネル及びリフォーム方法
(51)【国際特許分類】
E03C 1/20 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
E03C1/20 E
(21)【出願番号】P 2018213848
(22)【出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2017223015
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】宮下 卓也
(72)【発明者】
【氏名】牧野 祐介
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-082064(JP,A)
【文献】特開2006-132198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の洗い場に設けられる洗い場床パネルであって、
本体排水開口を有するパネル本体と、
前記本体排水開口と重なる表層排水開口を有し、前記パネル本体の上面に被さる表層シートと、
排水口を有する排水口部材と、を備え、
前記排水口部材が、前記排水口の主部を有する排水ベース部材と、前記排水口の上端部を有して前記排水ベース部材の上端部に分離可能に接合された排水縁部材とを含み、
前記排水ベース部材が、前記本体排水開口に収容されて前記パネル本体に接合され、
前記排水縁部材が、前記表層排水開口の縁に沿って前記表層シートに接合されて
おり、
前記排水縁部材には外面に開口する分離工具挿入孔が形成され、
前記表層シートが、前記分離工具挿入孔を覆うようにして前記排水縁部材と分離可能に接合されていることを特徴とする洗い場床パネル。
【請求項2】
前記排水ベース部材と前記排水縁部材の一方に環状の嵌合凹部が形成され、他方に環状の嵌合凸部が形成され、前記嵌合凸部が前記嵌合凹部に嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載の洗い場床パネル。
【請求項3】
前記嵌合凹部に充填シール材が充填されていることを特徴とする請求項2に記載の洗い場床パネル。
【請求項4】
前記表層シートと前記排水縁部材との間に表層シール材が設けられ、
前記表層シール材によって前記分離工具挿入孔の開口が塞がれていることを特徴とする請求項
1~3の何れか1項に記載の洗い場床パネル。
【請求項5】
浴室の洗い場に設けられた洗い場床パネルにおけるパネル本体上の表層シートの貼り替えを含むリフォーム方法であって、
前記パネル本体の上面から既設の表層シートを剥がして撤去し、
前記洗い場床パネルの排水口部材における排水ベース部材の上端部に接合された排水
縁部材を前記排水ベース部材から分離して撤去し、
新たな表層シートを前記パネル本体上に配置して、前記新たな表層シートの表層排水開口の縁に沿って接合された新たな排水縁部材を、前記排水ベース部材の上端部に接合し、
その後、前記新たな表層シートを前記パネル本体に貼り付けることを特徴とする洗い場床パネルのリフォーム方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の洗い場床パネル及びリフォーム方法に関し、特に洗い場床パネルにおける表層シートの貼り替えに対応した排水口構造、及び前記表層シートの貼り替えを含むリフォーム方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1における浴室の洗い場床パネルは、発泡ポリプロピレンなどの発泡樹脂パネルとその底部の補強鋼板を含むパネル本体を備えている。パネル本体の上面にはクッション材を介して軟質の表層シートが設けられている。パネル本体の排水開口には硬質樹脂製の排水口部材が嵌め込まれている。排水口部材の上面の外周部にフランジが形成され、該フランジが表層シートの排水開口の縁部の下面に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-209853号公報(0033)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の洗い場床パネルにおける表層シートは、傷んだり劣化したりしたときや模様替えのためにリフォーム可能であると利便性が高まる。しかし、浴室のリフォーム現場で、新たな表層シートをパネル本体に対して正確に位置決めして設置するのは容易でない。また、排水口部材を取り替える場合は、排水口部材とパネル本体との位置決めも必要になる。
本発明は、かかる事情に鑑み、浴室洗い場床パネルのリフォームなどに際し、表層シートをパネル本体に対して容易に位置決めして設置可能とし、好ましくは排水口部材の取り替えを簡易化ないしは全取り替えを不要とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、浴室の洗い場に設けられる洗い場床パネルであって、
本体排水開口を有するパネル本体と、
前記本体排水開口と重なる表層排水開口を有し、前記パネル本体の上面に被さる表層シートと、
排水口を有する排水口部材と、を備え、
前記排水口部材が、前記排水口の主部を有する排水ベース部材と、前記排水口の上端部を有して前記排水ベース部材の上端部に分離可能に接合された排水縁部材とを含み、
前記排水ベース部材が、前記本体排水開口に収容されて前記パネル本体に接合され、
前記排水縁部材が、前記表層排水開口の縁に沿って前記表層シートに接合されていることを特徴とする。
【0006】
当該洗い場床パネルにおいては、排水口部材が排水ベース部材と排水縁部材とに分割されている。これによって、例えば次のようなリフォーム作業を行なうことができる。
リフォーム現場において、古い表層シートをパネル本体から剥がして撤去するとともに、排水縁部材を排水ベース部材から分離して撤去する。排水ベース部材はそのまま残置しておく。
新たな表層シートの表層排水開口には、予め製造工場などにおいて新たな排水縁部材を設けておく。該新たな表層シートをリフォーム現場に搬入し、新たな排水縁部材を前記残置された排水ベース部材と接合させる。これによって、新たな表層シートが、排水縁部材を介して排水ベース部材に対して位置決めされ、ひいてはパネル本体に対して位置決めされる。
【0007】
前記排水ベース部材と前記排水縁部材の一方に環状の嵌合凹部が形成され、他方に環状の嵌合凸部が形成され、前記嵌合凸部が前記嵌合凹部に嵌合されていることが好ましい。前記嵌合凸部が前記嵌合凹部に弾性的に嵌合されていることがより好ましい。
前記嵌合によって、排水縁部材を排水ベース部材に対して位置出しできる。
【0008】
前記嵌合凹部に充填シール材が充填されていることが好ましい。
排水ベース部材と排水縁部材を嵌合させると、嵌合凸部が充填シール材に埋まる。これによって、嵌合凹部の内周面と嵌合凸部との間を液密にシールできる。ひいては排水縁部材と排水ベース部材との間の水密性を確保できる。
【0009】
前記排水縁部材には外面に開口する分離工具挿入孔が形成され、
前記表層シートが、前記分離工具挿入孔を覆うようにして前記排水縁部材と分離可能に接合されていることが好ましい。
前記表層シートで分離工具挿入孔を覆うことによって、分離工具挿入孔に異物が入り込むのを防止できる。
リフォームの際は、表層シートを剥がすことによって、分離工具挿入孔が現れる。該分離工具挿入孔に分離工具を挿し込み、排水縁部材に対して排水ベース部材からの分離力を作用させることで、排水縁部材を容易に分離撤去できる。分離操作の際、分離工具によって排水口部材の外面、特に残置される排水ベース部材の外面を傷めるおそれを回避できる。
【0010】
前記表層シートと前記排水縁部材との間に表層シール材が設けられ、
前記表層シール材によって前記分離工具挿入孔の開口が塞がれていることが好ましい。
前記表層シール材によって、表層シートと排水縁部材との間の水密性を確保するとともに、分離工具挿入孔の内部への水の侵入を防止できる。
前記表層シール材は、予め製造工場などにおいて表層シートと排水縁部材との間に設置しておくことができる。したがって、リフォームの際のシール作業を簡易化できる。
【0011】
本発明方法は、浴室の洗い場に設けられた洗い場床パネルにおけるパネル本体上の表層シートの貼り替えを含むリフォーム方法であって、
前記パネル本体の上面から既設の表層シートを剥がして撤去し、
前記洗い場床パネルの排水口部材における排水ベース部材の上端部に接合された排水口部材を前記排水ベース部材から分離して撤去し、
前記新たな表層シートを前記パネル本体上に配置して、前記新たな表層シートの表層排水開口の縁に沿って接合された新たな排水縁部材を、前記排水ベース部材の上端部に接合し、
その後、前記新たな表層シートを前記パネル本体に貼り付けることを特徴とする。
新たな表層シートは、新たな排水縁部材を介して排水ベース部材に対して位置決めされ、ひいてはパネル本体に対して位置決めされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、浴室洗い場床パネルのリフォームなどに際し、表層シートをパネル本体に対して容易に位置決めして設置できる。また、排水口部材については排水縁部材を取り替えればよく、排水口ベース部材をも取り替える必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る浴室の洗い場床パネルを示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿う、前記洗い場床パネルの断面図である。
【
図3】
図3は、前記洗い場床パネルの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、前記洗い場床パネルの排水口側の端部の拡大断面図である。
【
図5】
図5(a)は、前記洗い場床パネルの排水口部材の排水ベース部材の平面図である。
図5(b)は、前記排水口部材の排水縁部材の平面図である。
図5(c)は、前記排水縁部材の底面図である。
【
図6】
図6(a)は、表層シートと排水縁部材とを接合する様子を示す断面図である。
図6(b)は、続いて表層シートをパネル本体に被せて排水縁部材と排水ベース部材とを接合する様子を示す断面図である。
【
図7】
図7(a)は、前記洗い場床パネルの排水口部分の斜視図である。
図7(b)は、前記洗い場床パネルの表層シートを撤去した状態における前記排水口部分の斜視図である。
図7(c)は、更に前記排水縁部材を撤去した状態における前記排水口部分の斜視図である。
【
図8】
図8(a)は、前記排水縁部材を排水ベース部材から分離する状態を示す前記排水口部分の断面図である。
図8(b)は、前記排水縁部材が排水ベース部材から分離された状態の前記排水口部分の断面図である。
【
図9】
図9(a)は、新たな表層シート及び新たな排水縁部材を取り付ける状態を示す前記排水口部分の断面図である。
図9(b)は、前記新たな表層シート及び新たな排水縁部材を設置後の前記排水口部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1及び
図2に示すように、浴室の洗い場1bには洗い場床パネル3が設けられている。洗い場床パネル3は、パネル本体10と、表層シート20と、排水口部材30を備え、平面視で長方形状(四角形状)になっている。
【0015】
パネル本体10は、パネル本体部材11と、上下の補強パネル部材12,13を含む。
パネル本体部材11は、EPS(発泡ポリスチレン)等の発泡樹脂によって長方形(四角形)の板状に成形されている。前記EPSの発泡倍率は、好ましくは15倍~30倍程度であり、より好ましくは20倍程度である。なお、パネル本体部材11の材質は、EPSに限られず、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等であってもよい。
【0016】
図1及び
図2に示すように、パネル本体部材11における浴槽1a側の端部には、立ち上り部14(土手部)が一体形成されている。
図1及び
図3に示すように、パネル本体部材11の浴槽1a側を除く3つの端部には樹脂製の枠部材17が設けられている。
図2に示すように、枠部材17は、浴室壁又は浴室扉枠1fの底部を受けている。
【0017】
パネル本体部材11の底部に下側補強パネル部材13が設けられている。下側補強パネル部材13は、四角形の底板部13aと、側板部13bを有している。下側補強パネル部材13は、鋼板などの金属板を成形(シャーリング、穴開け、折り曲げなど)することによって構成されている。下側補強パネル部材13の厚みは、好ましくは0.5mm~1.2mm程度であり、より好ましくは0.6mm程度であるが、必ずしも前記数値に限定されるものではない。
【0018】
図2及び
図3に示すように、下側補強パネル部材13の底板部13aが、パネル本体部材11の底面(下面)に被さっている。底板部13aの4つの端部からそれぞれ側板部13bが一体に立ち上がりパネル本体部材11の端面に被さっている。互いに隣接する側板部13bどうしは縁切りスリット13cによって縁切りされている。
パネル本体部材11と下側補強パネル部材13とは、例えば熱硬化性の接着剤(図示省略)によって接着されている。
【0019】
図2に示すように、立ち上り部14の浴槽側面及び上面には、アルミ押出成形材からなる立ち上り補強部材15が被さっている。
【0020】
図2及び
図3に示すように、パネル本体部材11における立ち上り部14を除く部分の上面には上側補強パネル部材12が被さっている。パネル本体部材11と上側補強パネル部材12とは、例えば熱硬化性の接着剤(図示省略)によって接着されている。
上側補強パネル部材12は、鋼板などの金属板を成形(シャーリング、穴開けなど)することによって構成されている。上側補強パネル部材12の厚みは、好ましくは0.5mm~1.2mm程度であり、より好ましくは0.8mm程度であるが、必ずしも前記数値に限定されるものではない。
【0021】
図1に示すように、パネル本体10の一箇所には本体排水開口10cが設けられている。本体排水開口10cは、例えば洗い場1bの立ち上り部14側ひいては浴槽1a側の端部の幅方向(
図1において上下)の中央部に配置されている。
図2及び
図3に示すように、上側補強パネル部材12及びパネル本体10の上面ひいては洗い場床パネル3の上面には、本体排水開口10cへ向かって下がり勾配が付けられている。
【0022】
図2及び
図3に示すように、パネル本体10の上面に表層シート20が被さっている。表層シート20は、軟質塩化ビニル樹脂(PVC)によって構成されている。なお、表層シート20の材質は、PVCに限られずシリコンラバー等によって構成されていてもよい。
表層シート20の厚みは、好ましくは2mm~4mm程度であるが、必ずしも前記数値に限定されるものではない。表層シート20は、防水性を有している。更に、表層シート20によって、洗い場床パネル3の温熱感性及びクッション性が確保されている。
【0023】
表層シート20は、例えば両面粘着テープ(図示省略)を介してパネル本体10と接合されている。表層シート20における浴槽側部(
図2において左側部)は、立ち上り部14に沿って立ち上がり、立ち上り部14の洗い場側面に被さっている。表層シート20における本体排水開口10cと対応する部位には、表層排水開口23が形成されている。表層排水開口23が、本体排水開口10cの上端部に連なっている。
【0024】
図4に示すように、排水開口10c,23には排水口部材30が設けられている。排水口部材30は、排水ベース部材31と、排水縁部材32を含む。言い換えると、排水口部材30は、排水ベース部材31と排水縁部材32との2部材に分割されている。これら排水ベース部材31及び排水縁部材32によって、排水口30aが形成されている。
【0025】
図4及び
図5(a)に示すように、排水ベース部材31は、平面視で長方形の箱状に形成されている。排水ベース部材31の長辺方向は、洗い場床パネル3の幅方向(
図1において上下方向)へ向けられている。箱状の排水ベース部材31の内部空間が、排水口30aの主部30aを構成している。排水口主部30aは、排水ベース部材31の上面に開口されるとともに排水ベース部材31の下面に達している。
排水ベース部材31は、例えばアクリルニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)等の硬質樹脂によって構成され、表層シート20より硬質である。
【0026】
図4に示すように、排水ベース部材31の上側部分が、本体排水開口10c内に収容されている。排水ベース部材31の下側部分は、底板部13aを貫通してパネル本体10の下方へ突出されている。排水ベース部材31の下端部ひいては排水口主部30aの下端部に排水管(図示せず)が接続される。
【0027】
図4及び
図5(a)に示すように、排水ベース部材31の上端部には、平面視で例えば長方形のフランジ31fが形成されている。フランジ31fが、パネル本体部材11の本体排水開口10cの上端の段差部に係止されている。
【0028】
図5(a)に示すように、フランジ31fの上面には、複数のボルト座31gと、環状の嵌合凹凸部31b,31cが形成されている。ボルト座31gは、概略円形の凹みになっている。複数のボルト座31gが、フランジ31fの周方向に間隔を置いて配置されている。
【0029】
図4に示すように、ボルト34が、各ボルト座31gに通されて底板部13aにねじ込まれている。これによって、排水ベース部材31が、パネル本体10に接合されて固定されている。更にボルト座31gの内部にシリコーン等の座シール材45が充填されることによって、ボルト座31gのボルト挿通孔とボルト34の頭部との間が液密にシールされている。
【0030】
図4及び
図5(a)に示すように、フランジ31fにおけるボルト座31gよりも内周側の部分に、嵌合凹部31bと嵌合凸部31cが形成されている。これら嵌合凹凸部31b,31cは、排水口30aを囲む二重の環状になっている。環状の嵌合凹部31bの内周側に環状の嵌合凸部31cが配置されている。
嵌合凸部31cの更に内周側には環状の内周段差31dが形成されている。
【0031】
図4に示すように、排水ベース部材31の上端部に排水縁部材32が被さっている。
図5(b)及び同図(c)に示すように、排水縁部材32は、排水ベース部材31の平面形状と略同じ長方形の枠状になっている。排水縁部材32の長方形状の中心穴が、排水口30aの上端部32aを構成している。排水口上端部32aが、排水口主部30aの上端に連なっている。
排水縁部材32は、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)等の硬質樹脂によって構成され、表層シート20よりも硬質である。
【0032】
図4及び
図5(c)に示すように、排水縁部材32の下面には、嵌合凸部32bと嵌合凹部32cが形成されている。これら嵌合凸凹部32b,32cは、排水口上端部32aを囲む二重の環状になっている。
排水口上端部32aすなわち排水縁部材32の中心穴の内周縁には、環状の内周凸部32dが下方へ突出するように形成されている。
【0033】
排水ベース部材31の嵌合凹凸部31b,31cと排水縁部材32の嵌合凸凹部32b,32cとが、互いに凹凸嵌合されている。詳しくは、嵌合凹部31bに嵌合凸部32bが嵌り、嵌合凹部32cに嵌合凸部31cが嵌っている。好ましくは、嵌合凸部31c,32bの互いに対向する周側面どうしが全周にわたって弾性的に強く当たって密着されている。
更に、内周凸部32dが内周段差31dに嵌っている。
これによって、排水ベース部材31と排水縁部材32とが凹凸嵌合によって接合されている。排水ベース部材31と排水縁部材32とは、前記凹凸嵌合の解除によって互いに分離可能である。
【0034】
嵌合凹部31bには、シリコーンシーリングなどの充填シール材43が充填されている。充填シール材43内に嵌合凸部32bが埋まっている。充填シール材43によって嵌合凹部31bの内周と嵌合凸部32bの間、ひいては排水ベース部材31と排水縁部材32との間が液密にシールされている。また、充填シール材43の接着性によって排水ベース部材31と排水縁部材32とが接着されている。なお、充填シール材43の接着力は、排水ベース部材31と排水縁部材32との分離を許容する程度であることが好ましい。
【0035】
図4及び
図5(b)に示すように、排水縁部材32の上面には、浅い収容凹部32sが形成されている。収容凹部32sに防水性両面粘着テープ41が収容されている。収容凹部32s及び防水性両面粘着テープ41は、排水口上端部32aを囲む環状になっている。
収容凹部32sの内周側の壁部は、環状の内周側段差面32fとなっている。
【0036】
図4及び
図5(b)に示すように、排水縁部材32の上面における外周部には、外周側段差32eが形成されている。外周側段差32eは、収容凹部32sを囲む環状になっている。外周側段差32eにシリコーン等の表層シール材42が充填されている。表層シール材42は、防水性両面粘着テープ41を囲む環状になっている。
【0037】
図4に示すように、表層シート20における表層排水開口23の周辺部分が、排水縁部材32の上面に被さっている。防水性両面粘着テープ41が表層シート20に貼り付けられるとともに、表層シール材42が表層シート20に密着されている。これによって、表層シート20と排水縁部材32とが、防水性両面粘着テープ41を介して接合されている。かつ表層シート20と排水縁部材32との間が、防水性両面粘着テープ41及び表層シール材42によって二重に液密にシールされている。
表層シート20における表層排水開口23の内周縁は、環状の内周側段差面32fの好ましくは全周にわたって突き当てられている。
【0038】
さらに
図4及び
図5(b)~(c)に示すように、排水縁部材32には複数の分離工具挿入孔33が形成されている。分離工具挿入孔33は、排水縁部材32の外周部における長手方向の中央部及び角部などの所定箇所に配置されている。
【0039】
図4に示すように、各分離工具挿入孔33は、排水縁部材32の外面への開口33eを有している。開口33eは、具体的には、外周側段差32eの隅角部に配置されている。分離工具挿入孔33は、前記開口33eから排水縁部材32の内周側かつ下方へ斜めに延び、排水縁部材32の下面に達している。
【0040】
図4に示すように、分離工具挿入孔33の開口33eは、表層シート20によって覆われている。したがって、表層シート20を剥がさない限り(
図7(b)参照)、分離工具挿入孔33は外部に現れない(
図7(a)参照)。
更に、分離工具挿入孔33の開口33eは、外周側段差32eの表層シール材42によって液密に塞がれている。
【0041】
<洗い場床パネル3の製造手順>
洗い場床パネル3は、例えば次のようにして作製される。
洗い場床パネル3の構成部材をそれぞれ作製する。
下側補強パネル部材13又はパネル本体部材11に熱硬化性接着剤を塗布し、下側補強パネル部材13上にパネル本体部材11を載せる。
次いで、パネル本体部材11又は上側補強パネル部材12に熱硬化性接着剤を塗布し、パネル本体部材11上に上側補強パネル部材12を被せる。
これらパネル積層体11,12,13を真空圧空熱プレス機で圧力を加えながら加熱することによって前記接着剤を硬化させる。これによって、パネル本体10が作製される。
【0042】
浴槽側の立ち上り部14には立ち上り補強部材15を被せる。
パネル本体部材11の浴槽側を除く3つの縁部には、枠部材17を設ける。
【0043】
図6に示すように、表層シート20の表層排水開口23には、排水縁部材32を設けておく。詳しくは、
図6(a)に示すように、排水縁部材32の収容凹部32sに防水性両面粘着テープ41を貼り、外周側段差32eには表層シール材42を設ける。
一方、表層シート20の裏面(
図6(a)において下面)の離型紙24のうち、表層排水開口23の周辺の離型紙部分24aを剥がす。そして、
図6(b)に示すように、表層シート20の表層排水開口23の周辺部分を排水縁部材32の上面に被せて、表層排水開口23の内周縁を内周側段差面32fに嵌め込むとともに、表層シート20の裏面を防水性両面粘着テープ41及び表層シール材42を介して排水縁部材32と接着させる。
【0044】
図6(b)に示すように、本体排水開口10cには排水ベース部材31を設置し、ボルト34で固定する。ボルト座31gには座シール材45を充填する。また、嵌合凹部31bに充填シール材43を充填しておく。
続いて、排水縁部材32が排水ベース部材31の真上に対峙されるようにして、表層シート20をパネル本体10の上方に配置する。そして、排水縁部材32を排水ベース部材31上に被せて凹凸嵌合させる(
図4参照)。更に、表層シート20の裏面における排水縁部材32より外側の離型紙24b(
図6(b)の二点鎖線)を剥がし、パネル本体10に表層シート20を貼り付ける。
このようにして、洗い場床パネル3が作製される。
【0045】
該洗い場床パネル3を建物の浴室施工現場に搬入して洗い場に設置し、使用に供する。
洗い場床パネル3によれば、表層シート20と排水口部材30との間を環状の防水性両面粘着テープ41と環状の表層シール材42とにより二重にシールすることによって、水密性を高めることができる。
また、
図7(a)に示すように、表層シート20で分離工具挿入孔33の開口33eを覆うことによって、分離工具挿入孔33に異物が入り込むのを防止できる。更には、表層シール材42で開口33eを塞ぐことによって、分離工具挿入孔33の内部への水の侵入を防止できる。
更に、充填シール材43によって排水ベース部材31と排水縁部材32との間の水密性を確保できる。
【0046】
<洗い場床パネル3のリフォーム手順>
洗い場床パネル3においては、長年の使用によって表層シート20が傷んだり劣化したりしたときや模様替えのために、次のようなリフォームを行なうことができる。
図7(b)に示すように、まず既設の表層シート20をパネル本体10から剥がす。これによって、排水縁部材32の上面が現れる。ひいては、分離工具挿入孔33の開口33eが現れる。
図8(a)に示すように、分離工具4を開口33eから分離工具挿入孔33内に斜めに挿し込む。分離工具4の側方の洗い場床パネル3上には、当て治具5を設ける。該当て治具5に分離工具4を当てて支点を取りながら、分離工具4を同図の白抜き矢印方向に倒すことによって、てこの原理で排水縁部材32を押し上げる。これによって、
図8(b)に示すように、排水ベース部材31から排水縁部材32を分離させる。分離工具4の先端を排水ベース部材31の外面に突き当てる必要が無いから、排水ベース部材31の外面を傷めるおそれを回避できる。また、分離工具4の支点部に加わる力を当て治具5で受けることによって、洗い場床パネル3が傷むのを防止できる。
分離した排水縁部材32は、表層シート20と一緒に撤去する。
図7(c)に示すように、排水ベース部材31はそのまま残置する。
【0047】
図9(a)に示すように、新たな表層シート20Bの表層排水開口23には、予め製造工場などにおいて新たな排水縁部材32Bを設けておく。新たな表層シート20Bと排水縁部材32Bとの間には、新たな防水性両面粘着テープ41B及び表層シール材42Bを設けておく。
【0048】
前記新たな表層シート20Bを浴室(リフォーム現場)に搬入する。
前記残置された排水ベース部材31の嵌合凹部31bには、新たな充填シール材43Bを充填しておく。逆に言うと、リフォーム現場では、水密材41,42,43に対応する3つの水密施工箇所のうち1箇所だけを施工すればよい。それだけ、リフォーム作業を簡易化できる。
【0049】
図9(b)に示すように、表層シート20Bをパネル本体10上に配置し、排水縁部材32Bを排水ベース部材31と凹凸嵌合させて接合する。該凹凸嵌合によって、排水縁部材32Bが排水ベース部材31に対して位置出しされる。これによって、表層シート20Bを排水ベース部材31ひいてはパネル本体10に対して簡単に位置出しできる。続いて、表層シート20Bの裏面の粘着テープ(図示せず)の離型紙を剥がし、パネル本体10上に表層シート20Bを貼り付ける。
この結果、浴室(リフォーム現場)において、表層シートの貼り替えを含むリフォーム作業を簡易に短時間で行なうことができる。
【0050】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
例えば、洗い場床パネル3の新規製造時における組立て手順として、パネル本体10に組み込んだ排水ベース部材31の上面に排水縁部材32を被せて嵌合させた後、パネル本体10及び排水縁部材32上に表層シート20を貼り付けてもよい。
排水口部材30の形状は、長方形状に限られず円形その他の形状であってもよい。
浴室はシャワー室をも含む。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えば建物に納められる浴室ユニットの洗い場床に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1b 洗い場
3 洗い場床パネル
4 分離工具
10 パネル本体
10c 本体排水開口
20 表層シート
23 表層排水開口
30 排水口部材
30a 排水口
31 排水ベース部材
31a 排水口の主部
31b 嵌合凹部
31c 嵌合凸部
32 排水縁部材
32a 排水口の上端部
32b 嵌合凸部
32c 嵌合凹部
33 分離工具挿入孔
33e 開口
41 防水性両面粘着テープ(水密材)
42 表層シール材(水密材)
43 充填シール材(水密材)
45 座シール材(水密材)