IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピュラック バイオケム ビー. ブイ.の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】乳酸塩粉末及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 59/08 20060101AFI20221129BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20221129BHJP
   A23L 2/44 20060101ALI20221129BHJP
   A23L 2/39 20060101ALI20221129BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20221129BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20221129BHJP
   C07C 51/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C07C59/08
A23L2/00 B
A23L2/00 P
A23L2/00 R
A23L2/52
A23L27/00 A
A23L27/00 C
C07C51/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020519117
(86)(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2018076979
(87)【国際公開番号】W WO2019068798
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】17194983.7
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504421730
【氏名又は名称】ピュラック バイオケム ビー. ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ルーゼン, ランベルトゥス ヘンリキュス エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ヒルホースト, ヘリット アンソン レーン
(72)【発明者】
【氏名】クシュマワーダニ, ヘニー
(72)【発明者】
【氏名】パラゲオルジオー, アポストロス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デー ヴート マースチャルク, キース
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-531754(JP,A)
【文献】特表2005-504840(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1616851(EP,A1)
【文献】米国特許第4537784(US,A)
【文献】特開平6-311855(JP,A)
【文献】国際公開第2005/112662(WO,A1)
【文献】特開昭63-225332(JP,A)
【文献】特表2012-518397(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104130120(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102823872(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 59/08
A23L 2/00
A23L 2/44
A23L 2/39
A23L 2/52
A23L 27/00
C07C 51/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも10重量%の以下の特徴を有する被覆乳酸塩粒子を含む、粒状製品。
乳酸カルシウム水和物、乳酸カルシウム無水物及びそれらの組合せから選択される乳酸カルシウム成分を少なくとも80重量%含有する、1つ又は複数の担体粒子を含むこと、
前記1つ又は複数の担体粒子を覆うコーティング層を含み、前記コーティング層が、少なくとも60重量%の乳酸ナトリウムを含有すること、
ナトリウム及びカルシウムを、2.1:1~5:1のモル比で含有すること、及び、
120~1200μmの範囲の粒径であること。
【請求項2】
前記1つ又は複数の担体粒子が、少なくとも80重量%の乳酸カルシウムを含有する、請求項1に記載の粒状製品。
【請求項3】
前記コーティング層が、少なくとも70重量%の乳酸ナトリウムを含有する、請求項1又は2に記載の粒状製品。
【請求項4】
ナトリウム及びカルシウムが、前記被覆乳酸塩粒子中に4.2:1以下のモル比で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の粒状製品。
【請求項5】
前記乳酸カルシウム成分及び乳酸ナトリウムの組合せが、前記被覆乳酸塩粒子の少なくとも80重量%を構成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒状製品。
【請求項6】
前記被覆乳酸塩粒子が、3.5重量%未満の含水量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の粒状製品。
【請求項7】
少なくとも30重量%の前記被覆乳酸塩粒子を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の粒状製品。
【請求項8】
少なくとも80重量%のアルカリ金属酢酸塩を含有する10重量%の酢酸塩粒子をさらに含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の粒状製品。
【請求項9】
少なくとも80重量%のアルカリ金属プロピオン酸塩を含有する10重量%のプロピオン酸塩粒子をさらに含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の粒状製品。
【請求項10】
少なくとも80重量%の前記被覆乳酸塩粒子を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の粒状製品。
【請求項11】
0.40~0.95g/mlの範囲のかさ密度を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の粒状製品。
【請求項12】
前記被覆乳酸塩粒子に含有される前記1つ又は複数の担体粒子が、40~600μmの範囲の粒径を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の粒状製品。
【請求項13】
食品又は飲料を調製する方法であって、
請求項1~12のいずれか一項に記載の粒状製品を、食品又は飲料の0.1~10重量%の濃度で配合するステップを含む、方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の粒状製品を製造する方法であって、
乳酸カルシウム水和物、乳酸カルシウム無水物及びそれらの組合せから選択される乳酸カルシウム成分を少なくとも80重量%含有する担体粒子の流動床を形成するステップ、
少なくとも30重量%の乳酸ナトリウムを含有する水溶液を前記流動床に噴霧することにより前記担体粒子を噴霧コーティングするステップ、及び
噴霧コーティングされた担体粒子を乾燥するステップ
を含む、粒状製品を製造する方法。
【請求項15】
前記水溶液が少なくとも40重量%の乳酸ナトリウムを含有する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、安定な乳酸塩粉末、より詳細には、乳酸カルシウムを含有する1つ又は複数の担体粒子及び乳酸ナトリウムを含有するコーティング層を含む被覆乳酸塩粒子から成る乳酸塩粉末に関する。本発明の乳酸塩粉末は、取り扱いし易く(自由流動性で)、高い安定性を発揮する。
【0002】
本発明は、前述の乳酸塩粉末と他の粒状成分のブレンドにも関する。さらに、本発明は、食品又は飲料の調製における乳酸塩粉末及び前記乳酸塩粉末を含有するブレンドの使用に関する。最後に、本発明は乳酸塩粉末の製造プロセスを提供する。
【0003】
(発明の背景)
市販の乳酸ナトリウムは、通常、糖源の発酵とそれに続く生成した乳酸の中和により、式NaCを有する塩を作製することによって製造される。乳酸ナトリウムは、食品防腐剤、香味向上剤、酸度調節剤、湿潤剤又は皮膚保湿剤として適用することができる。
【0004】
乳酸ナトリウムは、微生物の増殖を防止し、オフフレーバーの発生を遅らせ、肉製品の調理歩留まりを改善し、肉の色を安定化するために、肉製品に適用することができる。
【0005】
多くの商業的適用に関して、乳酸ナトリウムが乾燥粒状形態で提供されることが好ましい。しかし、純乳酸ナトリウム粉末は吸湿性が高いために、多くの適用に関して安定性が不十分である。さらに、純乳酸ナトリウム粉末の製造は、困難を伴う。
【0006】
米国特許出願公開第2009/0214740号は、出発温度130℃~170℃で60~100%(m/m)アルカリ金属乳酸塩水性濃縮物を処理すること、アルカリ金属乳酸塩を冷却して、アルカリ金属乳酸塩の粉末を形成することを含む、粉末形態の安定なアルカリ金属乳酸塩の調製方法であって、
処理及び冷却がミキサー/押出機の中で行われ、
アルカリ金属乳酸塩が処理の前又は後に担体と混合される
調製方法を記載している。
【0007】
米国特許出願公開第2011/0052772号は、食品処理組成物、特に肉、肉製品、魚及びシーフード製品の処理に関して記載している。処理組成物は、(i)乳酸ナトリウム及び/又は乳酸カリウム、並びに(ii)少なくとも1つのリン酸ナトリウム及び/又はカリウム塩の組合せを含み、その組成物は粉末、顆粒、スラリー又はペーストの形態である。さらに、
a)40~80重量%の乳酸塩を含む、乳酸ナトリウム及び/又は乳酸カリウムの水溶液を調製するステップ、
b)0.5~1.5重量部のステップa)の乳酸塩水溶液と2.0重量部の少なくとも1つのリン酸ナトリウム及び/又はカリウム塩を混合するステップ
を含む、食品処理組成物を調製する方法も記載されている。
【0008】
米国特許出願公開第2015/0150835号は、少なくとも20重量%の乳酸塩含有量及び3.5重量%未満の含水量を有する乳酸塩粉末であって、カチオン性カルシウム及びカチオン性ナトリウムを乳酸塩に対して化学量論量の50%を超える全量で含み、カルシウム及びナトリウムが0.1~5の範囲内のモル比で存在する、乳酸塩粉末を記載している。さらに、
乳酸塩と、0.1~5の範囲内のモル比で存在するカルシウムイオン及びナトリウムイオンを含有する金属カチオンとの化学量論的混合物を含む水溶液を得るステップ、及び
水溶液を、3.5重量%未満の含水量へ乾燥するステップ、
を含む、こうした乳酸塩粉末を製造する方法も記載されている。
【0009】
EP1616851は、
a)乳酸金属塩を含有する濃縮物を冷却下でミキサー/押出機の中で処理して、乳酸金属塩の粉末を形成し、
b)実質的に、乳酸金属塩の粉末をカプセル化剤によって部分的にカプセル化して、部分的にカプセル化された乳酸金属塩粉末を形成する、
粉末形態の安定な乳酸金属塩の調製方法に関する。
【0010】
カプセル化剤は部分的にカプセル化された乳酸金属塩粉末全体の1~15重量%の量で適用される。好適なカプセル化剤は、水添された油、脂質、ワックス、抗酸化剤及び糖などの炭水化物、タンパク質、ポリマー、又はそれらの混合物から選択してもよい。
【0011】
米国特許第4,537,784号は、乳酸カルシウム担体、乳酸、及び脂質コーティングを含む粒状食品酸味料を製造するプロセスであって、
乳酸を粒状乳酸カルシウム担体に、前記担体が流動床の形態である間に噴霧塗布することにより、前記乳酸を前記粒状乳酸カルシウム担体にプレーティングするステップ、次いで
融解した食用脂質で前記担体及び酸を噴霧コーティングすることにより、前記担体及び酸をカプセル化するステップ
を含むプロセスを記載している。
(発明の概要)
【0012】
本発明者らは、主として乳酸ナトリウムから成る乳酸塩粒子で構成され、優れた安定性を発揮する自由流動性粉末の製造を可能にするプロセスを開発した。より詳細には、本発明者らは以下の特徴を有する被覆乳酸塩粒子の製造を可能にする方法を開発した。
乳酸カルシウム水和物、乳酸カルシウム無水物及びそれらの組合せから選択される乳酸カルシウム成分を少なくとも80重量%含有する、1つ又は複数の担体粒子を含むこと、
1つ又は複数の担体粒子を覆うコーティング層を含み、前記コーティング層が、少なくとも60重量%の乳酸ナトリウムを含有すること、
ナトリウム及びカルシウムを、2.1:1~5:1のモル比で含有すること、及び
120~1200μmの範囲の粒径を有すること。
【0013】
したがって、本発明の第一の態様は、少なくとも10重量%のこれら被覆乳酸塩粒子を含む、粒状製品に関する。本発明の粒状製品は、被覆乳酸塩粒子から成る粉末の形態で提供できる。代わりに、粒状製品は、これらの被覆乳酸塩粒子と1つ又は複数の他の粒状成分のブレンドの形態で提供してもよい。
【0014】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の被覆乳酸塩粒子は、コーティング層中の乳酸ナトリウムが周囲雰囲気と直接接触している場合でさえも、非常に安定であることを見出した。
【0015】
本発明の別の態様は、前述の粒状製品を食品又は飲料の0.1~10重量%の濃度で配合するステップを含む、食品又は飲料を調製する方法に関する。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、本発明の粒状製品を製造するプロセスであって、
乳酸カルシウム水和物、乳酸カルシウム無水物及びそれらの組合せから選択される乳酸カルシウム成分を少なくとも80重量%含有する、担体粒子の流動床を形成するステップ、
少なくとも30重量%の乳酸ナトリウムを含有する水溶液を流動床に噴霧することにより、担体粒子を噴霧コーティングするステップ、及び
噴霧コーティングされた担体粒子を乾燥するステップ
を含む、プロセスに関する。
【0017】
前述のプロセスは、前記の好ましい特性を有する粒状乳酸塩粉末を産生するという利点を提供する。さらに、このプロセスは、流動床造粒機を用いた単一プロセスで、乳酸塩粉末を産生できるという点で簡潔である。これとは対照的に、米国特許出願公開第2009/021470号及び欧州特許出願公開第1616851号に記載された押出しプロセスは、蒸発装置、ミル、押出機、及びミキサーなどの種々の装置を用いた複数の加工ステップを必要とする。
(発明の詳細な説明)
【0018】
既に記載したように、本発明の第一の態様は、以下の特徴を有する、少なくとも10重量%の被覆乳酸塩粒子を含む、粒状製品に関する。
乳酸カルシウム水和物、乳酸カルシウム無水物及びそれらの組合せから選択される乳酸カルシウム成分を少なくとも80重量%含有する、1つ又は複数の担体粒子を含むこと、
1つ又は複数の担体粒子を覆うコーティング層を含み、前記コーティング層が、少なくとも60重量%の乳酸ナトリウムを含有すること、
ナトリウム及びカルシウムを、2.1:1~5:1のモル比で含有すること、及び
120~1200μmの範囲の粒径を有すること。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「粒状製品」は、粉末又は顆粒などの粒子から成る製品を表す。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「乳酸カルシウム」は、別段の指示がない限り、乳酸カルシウムの水和物及び無水乳酸カルシウム(CaC10)の両方を包含する。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「乳酸ナトリウム」は、乳酸ナトリウム無水物(NaC)を表す。
【0022】
本明細書で「被覆乳酸塩粒子」に言及する場合は常に、別段の指示がない限り、意味するものは、上に明記された特徴を有する被覆乳酸塩粒子又は本明細書において明記されたこれら被覆乳酸塩粒子の好ましい実施形態である。
【0023】
本明細書で粒子の粒径に言及する場合は常に、別段の指示がない限り、この粒径はレーザー回折(Malvern Mastersizer 2000)を用いて測定した粒径である。
【0024】
本発明の被覆乳酸塩粒子は、好ましくは、3.5重量%未満、より好ましくは3.0重量%未満、最も好ましくは2.5重量%未満の含水量を有する。本明細書で物質の含水量に言及する場合には常に、含水量は、乳酸カルシウム五水和物(C10CaO・5HO)などの水和物に含有される結晶水を含む、典型的にはカールフィッシャー滴定法によって測定した含水量である。
【0025】
本発明の粒状製品の含水量は、典型的には8重量%未満、好ましくは6重量%未満、より好ましくは4重量%未満、最も好ましくは2.5重量%未満である。ここで、粒状製品の含水量は、被覆乳酸塩粒子に含有される水を含む。
【0026】
好ましい一実施形態において、粒状製品は、少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の被覆乳酸塩粒子を含有する。
【0027】
被覆乳酸塩粒子の他に、粒状製品は、1つ又は複数の他の粒状成分を好適に含んでもよい。
【0028】
好ましい一実施形態によれば、粒状製品は、少なくとも80重量%のアルカリ金属酢酸塩を含有する10重量%の酢酸塩粒子をさらに含有する。
【0029】
別の好ましい実施形態によれば、粒状製品は、少なくとも80重量%のアルカリ金属プロピオン酸塩を含有する10重量%のプロピオン酸塩粒子をさらに含有する。
【0030】
被覆乳酸塩粒子、酢酸塩粒子及びプロピオン酸塩粒子の組合せは、好ましくは粒状製品の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%を構成する。
【0031】
本発明の被覆乳酸塩粒子は、120~1200μmの範囲、好ましくは150~1100μmの範囲、より好ましくは200~1000μmの範囲の粒径を有する。
【0032】
別の好ましい実施形態によれば、被覆乳酸塩粒子は、200~800μmの範囲、より好ましくは250~750μmの範囲、最も好ましくは300~700μmの範囲の平均直径D[4,3]を有する。ここで、「平均直径D[4,3]」は、de Brouckere平均直径又は体積平均直径を表し、実際の粒子が同じ体積の球形粒子であると仮定した、加重平均体積として定義できる。この平均直径は、以下の式を用いて計算される:
【数1】

式中、
Di=サイズクラスiの平均粒径、
ni=サイズクラスiの粒子の数。
【0033】
本発明の粒状製品は、好ましくは0.40~0.95g/mlの範囲、より好ましくは0.45~0.90g/mlの範囲、最も好ましくは0.50~0.85g/mlの範囲のかさ密度を有する。本明細書で使用する場合、用語「かさ密度」は、一定量の粒状製品の質量を前記量が占める全体積で割った値を表す。全体積は、粒子体積、粒子間空隙体積、及び内部細孔体積を含む。本明細書で言及されるかさ密度は、「タップ」密度、すなわち、体積にそれ以上の変化が見られなくなるまで機械的にタップ(公称カウントで最低180タップ)された後の製品のかさ密度である。
【0034】
被覆乳酸塩粒子中の1つ又は複数の担体粒子は、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の乳酸カルシウム水和物を含有する。
【0035】
特に好ましい一実施形態によれば、担体粒子は、相当な量の乳酸カルシウムを含有する。したがって、好ましい一実施形態において、担体粒子は少なくとも50重量%の乳酸カルシウムを含有する。さらにより好ましくは、担体粒子は少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の乳酸カルシウムを含有する。
【0036】
被覆乳酸塩粒子のコーティング層は、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の乳酸ナトリウムを含有する。
【0037】
本発明の被覆乳酸塩粒子は、少なくとも60重量%の乳酸ナトリウムを含有するコーティング層の他に、1つ又は複数の追加のコーティング層を含んでもよい。しかし、本発明の利点は、被覆乳酸塩粒子が追加のコーティング層を含まない場合に特に評価が高い。
【0038】
別の好ましい実施形態において、ナトリウム及びカルシウムは、被覆乳酸塩粒子中に2.1:1~4.2:1のモル比で存在する。
【0039】
被覆乳酸塩粒子中のナトリウムの全量は、好ましくは10~20重量%の範囲、より好ましくは11~18重量%の範囲である。
【0040】
被覆乳酸塩粒子中のカルシウムの全量は、好ましくは2~10重量%の範囲、より好ましくは2.5~8重量%の範囲である。
【0041】
被覆乳酸塩粒子中の乳酸塩の全量は、好ましくは75~83重量%の範囲、より好ましくは77~82重量%の範囲である。ここで、「乳酸塩の全量」は、乳酸カルシウム水和物に含有される水を含む、乳酸残留物の全量を表す。
【0042】
好ましい一実施形態によれば、乳酸カルシウム成分及び乳酸ナトリウムの組合せは、被覆乳酸塩粒子の少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%を構成する。
【0043】
乳酸カルシウム及び乳酸ナトリウムの組合せは、好ましくは被覆乳酸塩粒子の少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%を構成する。
【0044】
本発明の被覆乳酸塩粒子に含有される1つ又は複数の担体粒子は、好ましくは40~600μmの範囲、より好ましくは45~550μmの範囲、最も好ましくは50~500μmの範囲の粒径を有する。
【0045】
本発明の特に好ましい一実施形態によれば、被覆乳酸塩粒子の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%は、少なくとも2つの担体粒子を含む凝集粒子から成る。
【0046】
本発明の別の態様は、本明細書において定義される粒状製品を、食品又は飲料の0.1~10重量%、好ましくは0.15~8重量%の濃度で配合するステップを含む、食品又は飲料を調製する方法に関する。
【0047】
本方法は、粒状製品を食品全体に分布させるステップ又は粒状製品を飲料全体に分散させるステップを、好ましくは含む。
【0048】
好ましくは、本方法は粒状製品を食品に配合するステップを含む。
【0049】
特に好ましい一実施形態によれば、食品は肉製品、より好ましくは加工肉製品である。加工肉製品の例は、
新鮮肉の加工製品(例えば、ハンバーガー、フライドソーセージ、ケバブ、チキンナゲット)
肉の塩漬け品(例えば、生の塩漬け牛肉、生ハム、調理牛肉、調理ハム、再構成製品及びベーコン)
生肉の調理製品(例えば、フランクフルトソーセージ、モルタデラ、リオナソーセージ及びミートローフ)
調理済みの調理製品(例えば、レバーソーセージ、ブラッドソーセージ及びコーンビーフ)
生(乾燥)肉の発酵ソーセージ(例えば、サラミ)
乾燥肉
を含む。
【0050】
最も好ましくは、本方法は、肉の塩漬け品及び生(乾燥)肉の発酵ソーセージから選択される加工肉製品の調製に適用される。
【0051】
本発明のさらに別の態様は、本発明の粒状製品を製造するプロセスであって、前記プロセスが、
乳酸カルシウム水和物、乳酸カルシウム無水物及びそれらの組合せから選択される乳酸カルシウム成分を少なくとも80重量%含有する、担体粒子の流動床を形成するステップ、
少なくとも30重量%の乳酸ナトリウムを含有する水溶液を流動床に噴霧することにより、担体粒子を噴霧コーティングするステップ、及び
噴霧コーティングされた担体粒子を乾燥するステップ
を含む、粒状製品を製造するプロセスに関する。
【0052】
製造プロセスの好ましい一実施形態において、担体粒子は少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%の乳酸カルシウムを含有する。
【0053】
本発明の特に好ましい一実施形態において、少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%の担体粒子は、40~600μmの範囲、より好ましくは45~550μmの範囲、より好ましくは50~500μmの範囲の直径を有する。
【0054】
水性プロセスにおいて使用される水溶液は、好ましくは少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%の乳酸ナトリウムを含有する。
【0055】
噴霧コーティングされた粒子の乾燥は、乾燥ガスの流れを粒子の流動床に通過させることにより、好ましくは噴霧コーティングと同時に達成される。使用される乾燥ガスは、好ましくは空気、酸素、窒素及びそれらの組合せから選択される。
【0056】
同時に行う噴霧コーティング及び乾燥は、好ましくは50~160℃の範囲、より好ましくは60~150℃の範囲、最も好ましくは70~140℃の範囲の乾燥ガス温度を用いて行われる。
【0057】
同時に行う噴霧コーティング及び乾燥は、好ましくは大気圧又は加圧下で、より好ましくは1.5~4バールの圧力で、最も好ましくは2~3バールの圧力で行われる。
【0058】
本発明は以下の非限定的実施例によって、さらに例証される。
【0059】
(実施例)
実施例1
本発明の被覆乳酸塩粒子を、以下に記載するように、グラット(GLATT)(登録商標)流動床乾燥機中で調製した。
【0060】
流動床乾燥機のバスケットに、平均直径D[4,3]240μmの乳酸カルシウム五水和物(プラカル(Puracal)(登録商標)PP、オランダ、Corbion製)を160kg充填した。この出発物質を、生成物の流動化の間、60℃まで加熱した。気流速度を、2800m/時に設定した。
【0061】
約60%乳酸ナトリウムを含む市販の溶液(プラサル(Purasal)(登録商標)S、オランダ、Corbion製)を噴霧液として使用した。流動床の温度が60℃に達した時に、噴霧を開始した。空気入口温度を120℃に、噴霧圧力を3バールに設定した。噴霧速度を最初は、約300g/分に設定し、次いで4時間にわたり噴霧しながら噴霧速度を2500g/分まで上昇させた後で、噴霧を止めた。生成物を30℃まで約25分間冷却し、アルミニウムバッグに収集した。
【0062】
こうして得られた粉末の特性を、表1に要約する。
【0063】
【表1】

粉末のSEM-EDX像を得た。これらの像は、粉末が、乳酸ナトリウムによって被覆されて一体化した乳酸カルシウムの多孔性凝集粒子から成っていることを示した。
【0064】
実施例2
実施例1の被覆乳酸塩粒子粉末の安定性を同一組成の無水乳酸カルシウム及び乳酸ナトリウムの乾燥混合物の安定性と比較するために実験を行った。乾燥混合物を以下のように調製した。
【0065】
プラカル(登録商標)PPを流動床乾燥機の中で、±40分間、80~100℃で乾燥し、続いて約30℃まで冷却した。生成した粉末は2.9重量%の水分含有量(IRバランス、130℃)を有しており、物質が本質的に無水であることを示した。こうして得られた無水乳酸カルシウムを、水分吸収を防ぐために、密封包装中で保存した。
【0066】
40gの無水乳酸カルシウムを60gのプラサル粉末S100(Purac、Corbion製)と、セキュリテナー(securitainer)ジャーの中でブレンドした。次に、混合物をターブラ(Turbula)ブレンダーの中で20分間混転した。最終ブレンドを、密封包装中に収集した。
【0067】
2種の粉末の吸湿性を、動的水蒸気吸着測定装置(DVS)Q5000SA(TA instruments製)を用いて分析した。5.00分間又は500分後の重量変化(%)が0.0100未満である場合に次のステップを条件として、試料を20℃で、0%RH~90%RHにわたるフルサイクルにかけた。
【0068】
表2は、2種の粉末の20℃での水分吸収プロファイルを示す。
【0069】
【表2】

これらの結果は、特に50%RH~90%RHにおいて、乳酸塩コーティング粉末が物理的混合物よりも、吸湿性が低いことを示している。
【0070】
観察された吸湿性の差の実際的影響を評価するために、温度及び湿度を上昇させてクローズドカップ試験を行った。
【0071】
2gの乾燥混合物及び2gの乳酸塩コーティング粉末を別のプラスチックカップ容器(ポリプロピレン)に移した。プラスチックカップを閉じ、40℃/75%RHに設定した人工気候室内で48時間保存した。この保存期間後に、乾燥混合物試料は潮解及び集塊化を被ったが、乳酸塩コーティング粉末は乾燥した外観を有しており、依然として自由流動性であった。