(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】コンテナ荷役車両用のアダプタ
(51)【国際特許分類】
B60P 1/48 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
B60P1/48 A
(21)【出願番号】P 2018246812
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 惠介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直志
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202264684(CN,U)
【文献】仏国特許出願公開第02613341(FR,A1)
【文献】特開平10-236581(JP,A)
【文献】特開2005-089005(JP,A)
【文献】特開平06-255995(JP,A)
【文献】米国特許第04854807(US,A)
【文献】実開昭61-038198(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/48
B60P 7/13
B66C 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナを積載する車台、及び先端にフックを有して前記車台の上部に前後に回動自在に設けられ前記コンテナを対象とする荷役作業をするための荷役アームを備えるコンテナ荷役車両による前記荷役作業において、前記コンテナの前面に装着されるコンテナ荷役車両用のアダプタであって、
上下又は左右に延出するフレーム体と、
前記フレーム体に設けられ、前記荷役アームのフックを掛けるバーと、
前記フレーム体に連結され、前記コンテナの上部に引っ掛ける爪と、
前記フレーム体に連結され、前記コンテナの側面に当接して前記コンテナに対する位置を規定するガイドと、
前記コンテナに引っ掛かることで前記コンテナの下端部よりも低位置に下降することを防止するストッパとを備え、
前記ストッパは、前記フレーム体から後方に突出して形成されて、前記コンテナの前面に引っ掛かる構造であ
るコンテナ荷役車両用のアダプタ。
【請求項2】
前記ガイドは、前記フレーム体から後方に突出して形成され、前記側面に左右側方から当接する請求項1のコンテナ荷役車両用のアダプタ。
【請求項3】
前記爪は、前記フレーム体に左右一対に設けられ、
前記ガイドは、前記爪の下方に左右一対に設けられ、前記側面を左右から挟み込むように前記側面に当接する請求項1又は2のコンテナ荷役車両用のアダプタ。
【請求項4】
前記フレーム体は、左右に延出する左右フレームと、前記左右フレームに連結されて上下に延出する一対の上下フレームとを備えて構成され、
前記バーは、前記一対の上下フレーム間に設けられている請求項1-
3のいずれか1項のコンテナ荷役車両用のアダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ荷役車両による前記荷役作業に用いられるコンテナ荷役車両用のアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナ荷役車両(以下、コンテナ荷役車両を単に荷役車両と記載する)にはL字型の荷役アームを備えたものがある。この種の荷役車両は、荷役アームを車体後方に回動させて先端のフックをコンテナに掛け、荷役アームを前方に回動させることでコンテナを車台上に引き上げる。荷役車両が独力で積載作業をすることを前提に設計された専用コンテナには、上記のフックを掛けるバーが備わっている。それに対し、一般にクレーンやフォークリフト等の他の荷役機械を用いて輸送手段に積み込まれる海上コンテナ等、ISO規格等の標準規格に適合したコンテナ(以下「標準コンテナ」と記載)には、荷役車両のフックを掛ける部位が存在しない。そこで、フックを掛けるバーを備えたアダプタを標準コンテナに装着することで、荷役機械がない場所で標準コンテナを車台に積み込むことができる荷役車両がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のアダプタは標準コンテナの非積載時も車載され、使用時に荷役アームにより車両後方に持ち出される。具体的には、標準コンテナの前方に荷役車両を移動させ、アダプタにフックを掛けた状態で荷役アームを後方に回動させる。この際の荷役アームの動作が回動運動であるので、荷役アームの回動開始後、アダプタは後進しながら上昇後下降する軌道を描く。特許文献1では、このアダプタが下降する過程でアダプタの上部の爪を標準コンテナ前面の上部に掛け、更にアームの回動を続けることでアダプタを標準コンテナに密着させてアダプタの下部の爪を標準コンテナ前面の下部に掛ける。しかし、アダプタはそのバーが荷役アームのフックに掛かっているだけであるため、標準コンテナに対して上部の爪を掛けてから下部の爪を掛けるまでの間、荷役アームに対してアダプタが前後左右にぐらぐらと動き、真直ぐに下降させることが難しい場合がある。特に凹凸な路面や傾斜した路面に置かれた標準コンテナを引き上げる場合、標準コンテナに対するアダプタの位置合わせが一層難しい。
【0005】
本発明は、標準コンテナに装着する作業を容易化することができるコンテナ荷役車両用のアダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、コンテナを積載する車台、及び先端にフックを有して前記車台の上部に前後に回動自在に設けられ前記コンテナを対象とする荷役作業をするための荷役アームを備えるコンテナ荷役車両による前記荷役作業おいて、前記コンテナの前面に装着されるコンテナ荷役車両用のアダプタであって、前記フレーム体に設けられ、前記荷役アームのフックを掛けるバーと、前記フレーム体に連結され、前記コンテナの上部に引っ掛ける爪と、前記フレーム体に連結され、前記コンテナの側面に当接して前記コンテナに対する位置を規定するガイドと、前記コンテナに引っ掛かることで前記コンテナの下端部よりも低位置に下降することを防止するストッパとを備え、前記ストッパは、前記フレーム体から後方に突出して形成されて、前記コンテナの前面に引っ掛かる構造であるコンテナ荷役車両用のアダプタを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アダプタを標準コンテナに装着する作業を容易化し、標準コンテナを対象とした荷役作業を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアダプタを適用するコンテナ荷役車両の一例の側面図
【
図4】
図1のコンテナ荷役車両に備えられた特装ユニットの斜視図
【
図5】本発明の第2実施形態に係るアダプタの正面図
【
図7】
図5に示したアダプタを標準コンテナに装着した様子を表す斜視図
【
図9】
図7のVIII部を右後方から見た拡大斜視図
【
図10】本発明の一実施形態に係る荷役アームの駆動システムの回路の模式図
【
図11】本発明の一実施形態における荷役アームの制御手順を表すフローチャート
【
図12】
図1のコンテナ荷役車両による標準コンテナの積み込み作業の様子を表す図
【
図13】
図1のコンテナ荷役車両による標準コンテナの積み込み作業の様子を表す図
【
図14】
図1のコンテナ荷役車両による標準コンテナの積み込み作業の様子を表す図
【
図15】
図1のコンテナ荷役車両による標準コンテナの積み込み作業の様子を表す図
【
図16】
図1のコンテナ荷役車両による標準コンテナの積み込み作業の様子を表す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0010】
-コンテナ荷役車両-
図1は本発明の一実施形態に係るアダプタを適用するコンテナ荷役車両の一例の側面図、
図2は平面図、
図3は背面図である。これらの図に示したコンテナ荷役車両(以下、コンテナ荷役車両を単に荷役車両と記載する)は、車両1と、特装ユニット10を備えている。本願明細書では、
図2の図示状態における左側、右側、下側、上側をコンテナ荷役車両の前、後、左、右とする。また、車両の車台3に対してコンテナを積み込んだり下ろしたりする作業を「荷役作業」と記載する。車両1は自走車両であり、前部に運転室2を備え、この運転室2の後側に車台3を備えている。
【0011】
図4は特装ユニット10の斜視図である。同図では構成の視認性のため、他の図面と異なりダンプフレームA2(後述)が立ち上がったダンプ姿勢の特装ユニット10を図示している。特装ユニット10は荷役作業をするために車台3の上部に取り付けたユニットであり、
図1-
図4に示したように荷役装置A、コンテナ案内装置B、ロック装置C、ジャッキD、アダプタE等を備えている。コンテナ案内装置BはアダプタEを用いた荷役作業の対象となる標準コンテナX(
図7等)を支持しガイドする装置であり、特装ユニット10の後部に設けられている。ロック装置Cは積載した専用コンテナ(後述)を積載した際、積載した専用コンテナを固定する装置である。ジャッキDは荷役作業時に車台3の後部の沈み込みを抑制するための装置である。荷役装置A、アダプタEの構成について次に説明する。
【0012】
-荷役装置-
荷役装置Aはコンテナを車台3上に引き上げたり車台3から下ろしたりする装置であり、ベースフレームA1、ダンプフレームA2(
図2等)、荷役アームA3、駆動部A4、ガイドローラA5を備えている。
【0013】
ベースフレームA1は水平な矩形状に構成されて前後に延びる荷役装置Aの基礎構造体であり、車台3の上部に重ねて固定してある。ダンプフレームA2は積載したコンテナの内容物をダンプ排出するために車台3上でコンテナをチルトアップさせるためのフレームであり、左右方向(車幅方向)に延びる軸A6を介してベースフレームA1の後端部に回動自在に連結されている。ダンプフレームA2はベースフレームA1よりも前後方向の長さが短く、ベースフレームA1の後部に配置されている。
【0014】
荷役アームA3は荷役作業用のアームであり、基部アームA7及びフックアームA8を備えている。基部アームA7は直線的に前後に延びる筒状のアームであり、左右に延びる軸A9を介してダンプフレームA2の前部(先端部)に回動自在に連結され、車台3上で前後に回動する。フックアームA8は後部が前後に延び前部が立ち上がったL字型のアームであり、後部が基部アームA7にスライド自在に挿入されている。フックアームA8の先端(上端)には、標準コンテナX(
図7等)に掛けるフックFが設けられている。特に図示していないがフックアームA8の起立部分の上部は下部に対して油圧シリンダ(不図示)により前後に回動自在に形成され、この回動軌跡上でフックFの高さや前後位置等が変えられるように構成される場合がある。本実施形態では基部アームA7に対してフックアームA8がスライドする構成を例示しているが、基部アームA7に対してフックアームA8がスライドする代わりに回動する構成とする場合もある。また、荷役アームA3は基部アームA7とフックアームA8に分割せずに一体のL字型のアームとして構成される場合もある。
【0015】
なお、標準コンテナXはISO規格等の標準規格に沿って製作されたコンテナであり、例えば海上コンテナである。標準コンテナXは荷役車両による荷役作業を想定して製作されておらず、通常はクレーンやフォークリフト等の別体の荷役機械で船やトレーラ、鉄道等の輸送手段に積載される。直方体状に形成された標準コンテナXには、各面に凹部を備えた隅金具が8つの角部にそれぞれ設けられている。後の説明の便宜上、これら隅金具の各凹部のうち、標準コンテナXの上面の四隅の上向きの凹部を凹部X1(
図7)、左右の側面の四隅の左右方向の外側を向いた凹部を凹部X2(
図7)とする。
【0016】
駆動部A4は荷役アームA3を駆動するものである。この駆動部A4は、基部アームA7を回動させる左右一対のリフトシリンダA10の他、フックアームA8を基部アームA7に対してスライドさせるスライドシリンダA12(
図10)やこれらシリンダを駆動する駆動回路G1(
図10)を備えている。リフトシリンダA10及びスライドシリンダA12は共に油圧シリンダであり、駆動回路G1は油圧回路である。左右のリフトシリンダA10の基端はベースフレームA1に、先端は基部アームA7の後部にそれぞれ回動自在に連結されている。フックアームA8をスライドさせるスライドシリンダA12は基部アームA7の内部に収容されており、基端が基部アームA7に、先端がフックアームA8に連結されている。
【0017】
上記のガイドローラA5は専用コンテナ(不図示)をガイドするためのローラであり、ダンプフレームA2を支持する軸A6の左右両端に設けられている。「専用コンテナ」とは、荷役車両による荷役作業を想定して製作されたコンテナであり、アダプタEを用いずに荷役作業ができるように構成されている。ガイドローラA5はコンテナ案内装置Bによる標準コンテナXの案内面(積載された標準コンテナXの下面)よりも低位置に配置されており、荷役作業時を含めて標準コンテナXに干渉しないようになっている。なお、専用コンテナについては、特許第3853051号公報等で参照できる。
【0018】
なお、本実施形態に係る荷役車両においては、荷役作業時にはダンプフレームA2は水平姿勢のまま荷役アームA3のみが前後に回動し、ダンプ作業時には荷役アームA3と一体となってダンプフレームA2が回動する。この動作を可能とするために、ダンプフレームA2に対して荷役アームA3をロックしたりロックを解除したりするダンプロック装置(不図示)が設けられている。ダンプロック装置は、ロックピンやこれに係脱可能なロック用フック等からなる。ロックピンはダンプフレームA2の先端部に設けられており、ロック用フックは荷役アームA3の基部アームA7の両側面に回動自在に設けられている。ロックピンに対するロック用フックの係脱は基部アームA7に対するフックアームA8のスライド動作が利用される。例えばロック用フックはロックピンに係止される方向にバネ等の力を受けており、フックアームA8が後端付近までスライドするとフックアームA8に作動ロッドが押されてロック用フックがロックピンから外れる構成が例示できる。この場合、フックアームA8が後端付近まで後退すると荷役アームA3とダンプフレームA2とのロックが解除され、リフトシリンダA10の伸縮によってダンプフレームA2に対して荷役アームA3が前後に回動する。反対にフックアームA8が前進すると荷役アームA3とダンプフレームA2とがロックされ、この状態でリフトシリンダA10が伸縮すると、荷役アームA3と共にダンプフレームA2がチルトアップ及びチルトダウンする。このようなダンプロック装置の構成については特許第5284541号公報等に記載されている。
【0019】
-アダプタ-
図5はアダプタEの背面図、
図6は背面図、
図7は標準コンテナXにアダプタEを装着した様子を表す斜視図、
図8は
図7のVIII部の拡大図、
図9は
図7のVIII部を右後方から見た拡大斜視図である。これらの図に示したアダプタEは、標準コンテナXを車台3に積載する荷役作業において標準コンテナXの前面に装着する一種のアタッチメントである。このアダプタEは枠状に構成されており、本体フレームE1、バーE2、左右の伸縮機構E3、上部連結部材E4,E5、左右の下部連結部材E6、ガイドE7、ストッパE8及びローラE9等を備えている。このアダプタEは、不使用時にはベースフレームA1の前部に設けた支持ポストA11(
図1等)に固定されている。
【0020】
本体フレームE1は伸縮機構E3、上部連結部材E4,E5及び下部連結部材E6と共にアダプタEの枠本体であるフレーム体を構成する部材であり、フレームE11-E13でπ字型に構成されている。このフレーム体は、本体フレームE1、伸縮機構E3、上部連結部材E4,E5及び下部連結部材E6を組み合わせて上下及び左右に延びる構成であるが、その構成は適宜変更可能であり、例えば主に上下方向にのみ又は左右方向にのみ延びる構成としても良い。フレームE11(左右フレーム)は左右に延びて左右の伸縮機構E3を連結しており、中央部が上に凸の弧状に形成されている。フレームE12(上下フレーム)は左右一対設けられて上下に延びており、上部が互いに一定距離を空けてフレームE11の下面に溶接等で連結され、下側に向かって互いの間隔が拡がるようにそれぞれ左右に折れ曲がっている。フレームE13も左右一対設けられており、それぞれ対応するフレームE12の下部に連結している。
【0021】
バーE2は荷役装置AのフックFを掛けるために本体フレームE1に取り付けたものである。このバーE2は本体フレームE1の一対のフレームE12の間に設けられており、その両端は左右のフレームE12の上部に溶接等で連結されており、アダプタEの重心よりも高位置に配置されている。バーE2は左右方向の中央部が上に凸の形状をしている。アダプタEにはバーE2の下方に構成要素はなくバーE2の下方の空間は開放されている。荷役作業時に荷役アームA3が通るスペースを確保するためである。
【0022】
左右の伸縮機構E3は、中空部材E31、ロッドE32、ストッパE33をそれぞれ備えている。左右の中空部材E31は上下に開口し上下に延びる姿勢で本体フレームE1に支持されている。これら中空部材E31はフレームE13と連結されておらず、フレームE11でのみ支持されている。左右のロッドE32はそれぞれ対応する中空部材E31に通されて上下にスライド可能であり、中空部材E31に対してピン止めすることもできる。中空部材E31及びロッドE32は本実施形態ではパイプ(例えば角パイプ)で構成してあるが、素材の選定は適宜変更可能である。ストッパE33は上部連結部材E4及び上部連結部材E5の昇降範囲の下限を規制するためのものであり、ロッドE32の外周面(本実施形態では左右の側面)に突出して設けられている。アダプタEの不使用時(標準コンテナXに装着されていない時)にはロッドE32の自重でストッパE33が中空部材E31の上端に当たった状態となる。
図5及び
図6では右側の伸縮機構E3のロッドE32を上側に少し引き上げた状態を図示してある。
【0023】
上部連結部材E4,E5は標準コンテナXの上部の前縁に掛かって連結されるものであり、左右一対の下向きの爪E41,E51を後部に備えている。本実施形態では右左のロッドE32の上端に上部連結部材E4,E5が設けられており、標準コンテナXの前縁における右左の凹部X1にそれぞれ爪E41,E51が掛かることで、上部連結部材E4,E5が標準コンテナXに連結される構成である。なお、爪E41,E51が後方に突出することでアダプタEの重心はバーE2よりも後側に位置する。これにより、荷役アームA3で持ち上げられた時に、アダプタEが後傾姿勢になるようにしてある。上部連結部材E4,E5を標準コンテナXに掛け易くするためである。
【0024】
下部連結部材E6は標準コンテナXの下部の左右に連結するものであり、アダプタE(本実施形態では左右のフレームE13)の下部の車幅方向外側にそれぞれ設けられている。左右の下部連結部材E6はそれぞれ、
図8に示したようにプレートE61及びピンE62を備えている。プレートE61は左右に延びる軸E63で伸縮機構E3の中空部材E31に回転自在に取り付けられている。軸E63はフレームE13に取り付けられた軸受E66(
図5等)に支持されており、この軸受E66に対して回転自在であると共に軸方向にスライド可能であり、またバネによりフレームE13側に引っ張られている。加えて、プレートE61にはピン穴E64,E65が設けられている。ピン穴E64,E65はフレームE13の側面に設けたピンE34を通すための穴であり、軸E63から等距離にある。ピン穴E64にピンE34を通した状態では、軸E63に対してピンE62が上側に位置し、プレートE61が全体として上下に延びる格納姿勢を採る(
図1、
図4、
図5)。この状態からプレートE61を車幅方向の外側に引き出し、軸E63を中心に回転させてピンE34にピン穴E65の位置を合わせて手を放すと、ピン穴E65にピンE34が挿し込まれてプレートE61が固定される(
図8)。この状態ではピンE62が軸E63に対して後方に位置し、標準コンテナXの側面の前縁下部の凹部X2に挿し込まれ、下部連結部材E6が標準コンテナXに固定される。
【0025】
ガイドE7は標準コンテナXに対するアダプタEの位置を規定する金具である。本実施形態ではアダプタEの左右の下部(左右のフレームE13の車幅方向の外側)に後方に突出して固定的に設けられているが、これより高位置(例えば中空部材E31)に設けても良い。但し、左右の爪E41,E51よりは下方に位置することとする。アダプタEを標準コンテナXに装着する際、上部連結部材E4,E5を標準コンテナXの上部に掛けた状態で荷役アームA3(
図14等)によりアダプタEを下降させ、左右の下部連結部材E6を標準コンテナXに取り付ける。アダプタEを標準コンテナXの上部に掛けてから下部連結部材E6を取り付けるまでのアダプタEの下降中、左右のガイドE7が標準コンテナXの前部の側面に左右側方から当接しガイドすることで標準コンテナXに対するアダプタEの位置を規定する。特に本実施形態では左右のガイドE7で標準コンテナXを左右から挟み込むことで標準コンテナXに対してアダプタEが左右にずれないようになっている。なお、左右のガイドE7の間隔は標準コンテナXの左右の幅と同程度かそれよりも若干広く設定してあり、ガイドE7の後端部は車幅方向の外側に傾斜していて左右のガイドE7の間隔が後方に広がっている。これにより左右のガイドE7の間に標準コンテナXが円滑に受け入れられるようになっている。また、ガイドE7は左右のいずれか一方を省略してもガイド機能を発揮し得る。
【0026】
ストッパE8は、アダプタEの下端部が標準コンテナXの下端部よりも低位置に下降しないように標準コンテナXの前面に引っ掛かる金具である。本実施形態ではアダプタEの左右の下部(左右のフレームE13の背面)に後方に突出して設けられている。標準コンテナXに装着するためにアダプタEを下降させる際、ストッパE8が標準コンテナXの底板の前縁(不図示)に引っ掛かり、アダプタEが標準コンテナXよりも低く降下することなく停止する。特に本実施形態では、ストッパE8の下端部が本体フレームE1の下端(フレームE13の下端)よりも低位置となるように構成してある。そのため、ストッパE8が標準コンテナXに掛かった状態で、本体フレームE1の下端が標準コンテナXの下端よりも設定距離Lだけ高くなる(
図8)。
【0027】
ローラE9は、アダプタEの車幅方向における中央部分に左右に所定間隔を空けて2つ設けられている。これらローラE9は、アダプタEの下部(本実施形態では左右のフレームE13)に前方に突出して設けられている。ローラE9の下縁の高さは、
図8に示したように本体フレームE1(フレームE13)の下端の高さと同程度に設定してある。また上記支持ポストA11(
図1等)の基部(下部)には車台3上でアダプタEを載せて剛的に支持するスタンド(不図示)が設けられており、スタンドの後部は後方に下る斜面(スロープ)になっている。このスタンドに載せて支持ポストA11に固定されたアダプタEを荷役アームA3により後方に引き出す際、ローラE9で斜面を下ってスタンドからアダプタEが円滑に引き出されるようになっている。またスロープを下りるとベースフレームA1(
図4等)上をローラE9が走行してアダプタEがスムーズに移動するように構成することが好ましい。
【0028】
-駆動システム-
図10は本発明の本実施形態に係る荷役アームの駆動システムの回路の模式図である。同図に示したように、荷役車両にはリフトシリンダA10及びスライドシリンダA12を駆動する駆動回路G1や制御装置G2が備わっている。駆動回路G1は油圧ポンプやコントロールバルブで構成されており、例えばエンジンで油圧ポンプを駆動し、コントロールバルブを介して油圧ポンプの吐出油を供給することでリフトシリンダA10及びスライドシリンダA12を駆動する。制御装置G2は、コントロールバルブを駆動する指令信号を出力し、コントロールバルブにより作動油の供給方向を切り換えることでリフトシリンダA10及びスライドシリンダA12を伸縮させて荷役アームA3の動作を制御する。制御装置G2は車載コンピュータの一種であり、そのメモリに荷役アームA3の制御に関するプログラムが格納されている。具体的には、アダプタEを上記スタンドに載せる際、アダプタEの下端をスタンドよりも高く持ち上げた状態でアダプタEを前進させてスタンドの上部に下ろすように荷役アームA3を制御するプログラムである。
【0029】
図11は本実施形態における荷役アームの制御手順を表すフローチャートである。
図11に示した手順は、例えば標準コンテナXを車台3に積載する場面、使用後のアダプタEを格納する場面で、アダプタEを支持ポストA11の上記スタンドに搭載する際に制御装置G2により実行されるシーケンス制御である。
図11の手順は、標準コンテナXが車台上に引き上げられて水平姿勢になった後、例えばスライドシリンダA12が所定ストロークまで伸長したことをトリガとして開始される。所定ストロークは、例えばアダプタEと支持ポストA11との間隔が所定距離となる値である。また所定ストロークに到達したことは、スライドシリンダA12のストロークを検出するストロークセンサ、アダプタEやフックアームA8が所定位置を通過したことを検出する近接センサ、距離センサ等、適宜のセンサで検知することができる。
【0030】
センサの検出信号によりスライドシリンダA12が所定ストロークまで伸長したことを認識したら、制御装置G2は、スライドシリンダA12の動作を停止させ、リフトシリンダA10を駆動して所定距離だけアダプタEを上昇させる(ステップS11)。続いて、制御装置G2は、リフトシリンダA10の動作を止めてスライドシリンダA12を駆動して所定距離だけアダプタEを前進させる(ステップS12)。最後に、制御装置G2は、スライドシリンダA12の動作を止めてリフトシリンダA10を駆動してアダプタEをスタンドの上面に直接下ろして同図の手順を終了する(ステップS13)。ステップS13の処理を完了するとアダプタEを支持ポストA11にそのまま固定することができる。
【0031】
-荷役作業-
標準コンテナXを車台3に積み込む場合、荷役車両を標準コンテナXの前方の所定位置に停車させ、まず
図1-
図3の状態において手作業によりアダプタEと支持ポストA11との連結を解く。次にリモコン等の操作装置で所定の操作をしてジャッキDを下ろすと共にフックアームA8を前進させ、
図12に示したようにアダプタEのバーE2にフックFを掛ける。フックFがバーE2に掛かったら、アダプタEと共にフックアームA8を後退させ、
図13に示したようにリフトシリンダA10を延ばして荷役アームA3を後方に回動させる。このようにして車両後方に持ち出したアダプタEを
図14に示したように標準コンテナXの前面に固定する。具体的には、荷役アームA3の回動に伴って車両後方でアダプタEが下降する過程で、まずアダプタEの上部連結部材E4,E5を標準コンテナXの前側の凹部X1に掛ける。上部連結部材E4,E5が掛かったことを確認したら更にリフトシリンダA10を伸ばし、左右の伸縮機構E3が伸びてストッパE8が標準コンテナXの底板に当たるまでアダプタEが下降したら、左右の下部連結部材E6を手作業で標準コンテナXに連結する。
【0032】
以上のアダプタEの移動及び装着の作業が完了したら、リモコン等の操作装置で所定の操作をして荷役アームA3を前方に回動させ、
図15に示したように標準コンテナXを車台3上に引き上げる。荷役アームA3の動作に伴って標準コンテナXは後端下部を支点に前側が持ち上がり、更に荷役アームA3が前方に回動することで車両と標準コンテナXが相対的に近付く。その際、標準コンテナXは重量があり下部にローラも付いていないため、車両の方が後退して標準コンテナXの下側に入り込み、標準コンテナXの下面の左右がコンテナ案内装置Bで受けられる。その後更に荷役アームA3が前方に回動することで、標準コンテナXはコンテナ案内装置Bにガイドされながら車台3の上部に引き上げられる。荷役アームA3が水平に倒伏したらフックアームA8を前進させ、
図16に示したように支持ポストA11のスタンドにアダプタEを載せる。その際、
図11で説明した通り前進の途中でアダプタEを一旦持ち上げ、スタンドの上方まで移動させてからスタンド上に下ろす。
図16にステップS11-S13の動作によるアダプタEの軌跡を矢印で図示した。最後にコンテナ案内装置Bに備わったロック装置で標準コンテナXをコンテナ案内装置Bに対して固定して、標準コンテナXの積載作業を完了する。
【0033】
標準コンテナXを荷台から下ろす荷下ろし作業は、以上のコンテナ積載作業と逆の手順で行うことができる。但し、ステップS11-S13に対応する動作は省略しても良い。この場合、スタンドにアダプタEが支持された状態でリフトシリンダA10を伸縮させずにスライドシリンダA12のみを収縮させ、上記ローラE9でスタンドのスロープを走行させてスタンドからアダプタEを下ろす。なお、荷役アームA3でアダプタEを後に引く動作は、スライドシリンダA12の収縮動作の他、フックアームA8が回動可能な場合にはフックアームA8の回動動作でも可能であるが、この場合もアダプタEを一旦持ち上げる動作は省略できる。
【0034】
-効果-
(1)ガイドE7を設けたことにより、前述した通りアダプタEを標準コンテナXに装着する際に標準コンテナXに対してアダプタEが左右にずれないようにすることができ、アダプタEの装着作業の効率が向上する。アダプタEを標準コンテナXに装着する作業を容易化し、標準コンテナXを対象とした荷役作業を効率化することができる。
【0035】
(2)また、ストッパE8を設けたことにより、標準コンテナXに装着する過程でアダプタEが標準コンテナXを超えて下降することを抑制できる。特に本実施形態では上記設定距離Lを確保したことにより、標準コンテナXに装着した状態では標準コンテナXの接地面からアダプタEが浮いた状態となる。例えば不整地では標準コンテナが地面に沈み込むことがあり、アダプタと標準コンテナとの下端が一致する構成を採ると、標準コンテナの周囲の地面が障害となってアダプタが装着位置まで下ろせない場合がある。このような不具合の発生をストッパE8により抑制することができる。但し、上記の本質的な効果(1)を得る限りにおいては、ストッパE8は必須ではなく省略可能である。
【0036】
(3)本実施形態では、標準コンテナXと専用コンテナの双方を荷役作業の対象とする当たり、例えば専用コンテナを積載する際等に、使用しないアダプタEを荷役アームA3から外して専用コンテナの積載位置よりも前方のスタンドで支持する構成とした。そして、アダプタEをスタンドに載せる際、アダプタEをスタンドよりも高く持ち上げてスタンドの上部に直接下ろすように、制御装置G2で荷役アームA3を制御する構成とした。これによりアダプタEとスタンドとの擦れを抑制することができ、アダプタEをスタンドに載せる動作を円滑化することができる。標準コンテナXの積載時のみならず、アダプタEを支持ポストA11に格納する際も同様に効果を奏する。但し、上記効果(1)を得る限りにおいては、アダプタEを持ち上げてスタンドの上部に下ろす制御は必須ではなく省略可能である。
【0037】
(4)支持ポストA11からアダプタEを後方に引き出す際、アダプタEに設けたローラE9が支持ポストA11のスタンドに接触するので、アダプタEがスタンドに擦れることを抑制できる。これによりアダプタEを円滑にスタンドから下ろすことができ、スタンドとアダプタEの双方を摩擦から保護することができる。但し、上記効果(1)を得る限りにおいては、ローラE9は必須ではなく省略可能である。また、ローラE9は、アダプタEに設ける代わりにベースフレームA1に設けても良い。
【0038】
(5)仮に左右に延びる鉛直面内で動作する回動機構を介して上部連結部材E4,E5が本体フレームE1に対して支持された構成とした場合、標準コンテナXに対してアダプタEが昇降するのに伴って上部連結部材E4,E5の位置が車幅方向にも変化する。この場合、標準コンテナXの凹部X1に左右の爪E41,E51が掛かった後の下降動作中における凹部X1の内部での爪E41,E51の車幅方向への変位を許容しなければならない。そのため、凹部X1に対して爪E41,E51の径を必要以上に小さくしけなればならない。
【0039】
それに対し、本実施形態においてはロッドE32が真直ぐ上下にスライドする左右の伸縮機構E3で上部連結部材E4,E5を支持したので、上部連結部材E4,E5が車幅方向に移動することなく線形的に昇降する。凹部X1の内部における爪E41,E51の車幅方向への変位を考慮する必要がない。従って凹部X1に対して円滑に挿し込める範囲で爪E41,E51の径を大きくすることができ、標準コンテナXに対するアダプタEの強固な装着状態を確保することができる。
【0040】
但し、上記効果(1)を得る限りにおいては少なくとも上部連結部材E4が昇降すれば良く、その軌道が線形的である必要は必ずしもない。この場合、回動機構を介して上部連結部材E4と上部連結部材E5の少なくとも一方を支持し、弧状の軌道で昇降する構成としても良い。
【0041】
-変形例-
上記実施形態においては、ロッドE32の外周面にストッパE33を突出して設けた場合を例に挙げて説明したが、例えば中空部材E31の内周面にストッパE33を突出して設けてロッドE32を係止する構成としても良い。また、ストッパE33はロッドE32又は中空部材E31に固着した構成に限らず、ボルトやピン等を用いて適宜着脱式にすることもできる。この場合、例えばロッドE32又は中空部材E31に対するストッパE33の着脱位置を高さ方向に複数設けておき、ロッドE32又は中空部材E31に対するストッパE33の位置が高さ方向に可変な構成とすることもできる。ロッドE32又は中空部材E31に対してストッパE33が高さ方向にスライド可能な構成とすることも考えられる。この場合、ロッドE32の昇降範囲の下限が調整できるようになる。
【0042】
更に、上記の各実施形態では上部連結部材E4及び上部連結部材E5の爪E41,E51を下向きにし、これらが標準コンテナXの上面の上向きの凹部X1に嵌まる構成を例示した。しかしこのような構成に限定されず、例えば爪E41,E51を車幅方向の内側に向け、これらが標準コンテナXの側面の左右方向の外向きの凹部X2に嵌まる構成とすることも考えられる。標準コンテナXの前面の前方を向いた凹部に爪E41,E51を嵌める構成にすることも考えられる。下部連結部材E6についても同様である。
【0043】
また、専用コンテナを車台3に積載するための構成(ガイドローラA5やロック装置C等)を別途備える構成を例に挙げて説明したが、専用コンテナ積載用の構成は必ずしも必要なく、省略可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…車両、3…車台、A3…荷役アーム、E…アダプタ、E1…本体フレーム(フレーム体)、E2…バー、E3…伸縮機構(フレーム体)、E4,E5…上部連結部材(フレーム体)、E6…下部連結部材(フレーム体)、E11…左右フレーム、E12…上下フレーム、E41,E51…爪、E7…ガイド、E8…ストッパ、F…フック、X…標準コンテナ(コンテナ)