(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ファイル
(51)【国際特許分類】
B42F 7/00 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
B42F7/00 K
(21)【出願番号】P 2021147020
(22)【出願日】2021-09-09
(62)【分割の表示】P 2017081971の分割
【原出願日】2017-04-18
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000129437
【氏名又は名称】株式会社キングジム
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】栗山 朋之
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-290695(JP,A)
【文献】特開2010-137383(JP,A)
【文献】実開昭63-021076(JP,U)
【文献】実開平03-103773(JP,U)
【文献】実開昭59-019377(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42F 1/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表紙部および第2の表紙部を有する開閉可能な表紙体と、
被収容物を収容可能なポケット体とを具備し、
前記ポケット体は、前記第1の表紙部から前記第2の表紙部に亘って位置する収容部を有し、
前記表紙体は、前記ポケット体を摺動可能に保持する保持部材を有するファイルであって、
前記ポケット体は、挿通孔を有し、
前記保持部材は、前記挿通孔に挿通された細長い板状の挿通部を有し、
前記挿通孔の一方向の長さは、前記挿通部の前記一方向の長さよりも長
く、
前記保持部材は、前記第1の表紙部および前記第2の表紙部のいずれか一方の表紙部のみに設けられ、
前記ポケット体は、前記第1の表紙部および前記第2の表紙部のいずれか他方の表紙部のみに固定されている
ことを特徴とするファイル。
【請求項2】
前記保持部材は、前記ポケット体の一部を覆うケース部を有し、
前記挿通部は、前記ケース部内に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載のファイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書類等の被収容物を収容するためのポケット体が表紙体に取り付けられたファイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のファイルとしては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されているように、合成樹脂製の薄肉状のシートにより形成されたポケットが合成樹脂製の表紙体に対して熱溶着や超音波溶着により接合された構成が知られている。
【0003】
このようなファイルのポケットは、四角形のうちの一の側端部が表紙体に接合されずに開口部を構成し、他の側端が接合された袋状に構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-177970号公報
【文献】特開2004-216595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2に記載の発明は、一の袋体の左右方向略中央が上下方向の略全長に亘って表紙体に溶着されることにより、その溶着箇所を介して隣接する2つのポケット部が形成されている。
【0006】
また、一のポケット部の幅(溶着箇所とこれと対向する位置にある側端との距離)は、想定される被収容物の幅よりやや大きくなるように形成されており、さらに表紙体を折り曲げた状態、すなわちファイルを閉じた状態の表紙体の幅は一のポケット部の幅よりやや大きくなるように形成されている。
【0007】
ここで、ファイルの使用目的の1つとしては、表紙体によって外力から被収容物を保護することがある。この保護性を考慮すると、特許文献1および特許文献2の構成において、表紙体の幅は一のポケット部の幅や被収容物の幅よりも大きいことが好ましいが、このような構成であると、このようなファイルは、閉じた状態でも被収容物よりも大きな面積を有することになる。
【0008】
そして、例えば、利用者がファイルを鞄等に収納して持ち歩く場合等には、その鞄は、ファイルを収容し得る大きさである必要があり、つまり、このようなファイルはその大きさに起因して利便性の高いものではなかった。
【0009】
また、当然ながら、特許文献1および特許文献2の構成において、ポケット部に被収容物を収容したファイルを開口部が下向きとなるように持ってしまうと、ポケット部の開口部から被収容物が落ちてしまうため、利用者はファイルを持つ場合のファイルの向きに関して注意を払う必要があった。
【0010】
したがって、大きさや使用状態の観点からも、利便性が良好なファイルが求められていた。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、利便性が良好なファイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、表紙体と、この表紙体に取り付けられたポケット体とを具備するファイルであって、前記表紙体は、第1の表紙部と、第2の表紙部とを有し、これら第1の表紙部と第2の表紙部とは対向するように互いに回動可能であり、前記ポケット体は、前記第1の表紙部から前記第2の表紙部に亘って配置され被収容物を収容可能な収容部と、この収容部に対して被収容物を出し入れするための開口部と、前記収容部より平面視で外側に位置する被保持部とを有し、前記表紙体は、前記第1の表紙部および前記第2の表紙部のうちの少なくともいずれか一方の表紙部に設けられ前記被保持部を移動可能に保持する保持部材を有するものである。
【0013】
保持部材は、第1の表紙部および第2の表紙部のいずれか一方の表紙部に設けられている。
【0014】
ポケット体は、他方の表紙部に固定される固定部を有する。
【0015】
保持部材は、第1の表紙部と第2の表紙部とに設けられている。
【0016】
被保持部は、挿通孔を有し、保持部材は、前記挿通孔に挿通された挿通部を有し、前記挿通孔の一方向の長さが前記挿通部の一方向の長さよりも長ければ、前記挿通孔の前記一方向の直行方向である他方向の長さは、前記挿通部の他方向の長さと略同じでもよい。
【0017】
表紙体は、第1の表紙部と第2の表紙部との間に、ヒンジ部を介して連設された背表紙部を有する。
【0018】
表紙体は、第1の表紙部と第2の表紙部との間に位置する背表紙部を有し、背表紙部は、ヒンジ部を有し、前記第1の表紙部と前記第2の表紙部とは前記背表紙部を中心に前記ヒンジ部を介して互いに回動可能である。
【0019】
第1の表紙部および第2の表紙部は、表紙体の幅方向において、前記第1の表紙部の一方側の端部および前記第2の表紙部の他方側の端部を基点にして、前記第1の表紙部の他方側の端部と前記第2の表紙部の一方側の端部とが接離するように互いに回動可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1の表紙部から第2の表紙部に亘ってポケット体の収容部が配置されているため、被収容物がポケット体に収容された状態にて、第1の表紙部と第2の表紙部とが対向するように表紙体を屈曲でき、利便性を向上できる。
【0021】
すなわち、第1の表紙部と第2の表紙部とが対向するように表紙体を屈曲することで、ポケット体が屈曲して第1の表紙部と第2の表紙部との間に収められるため、被収容物を小さくすることができ、被収納物の面積よりも小さい面積を有するファイルを提供することができる。
【0022】
さらに、被収容物がポケット体の屈曲に合わせて屈曲した状態でポケット体に収容されるため、その状態において両者の屈曲した箇所またはその近傍において互いに接する状態が維持されることから、両者の間の摩擦力が強くなり、被収容物が開口部から離脱しづらくなり、確実に被収容物をファイルに収めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るファイルの使用状態を示す参考正面図である。
【
図2】同上ファイルの表紙体を開いた状態の正面図である。
【
図3】同上ファイルの表紙体を開いた状態の背面図である。
【
図4】同上ファイルの表紙体を開いた状態の平面図である。
【
図5】同上ファイルの表紙体を開いた状態の底面図である。
【
図6】同上ファイルの表紙体を開いた状態の右側面図である。
【
図7】同上ファイルの表紙体を開いた状態の左側面図である。
【
図8】同上ファイルの表紙体を開いた状態の斜視図である。
【
図9】同上ファイルの表紙体を閉じた状態の正面図である。
【
図10】同上ファイルの表紙体を閉じた状態の背面図である。
【
図11】同上ファイルの表紙体を閉じた状態の右側面図である。
【
図12】同上ファイルの表紙体を閉じた状態の左側面図である。
【
図13】同上ファイルの表紙体を閉じた状態の平面図である。
【
図14】同上ファイルの表紙体を閉じた状態の底面図である。
【
図15】同上ファイルの表紙体を閉じた状態の斜視図である。
【
図19】
図18に示す状態から表紙体に対してポケット体が移動した状態を示す部分拡大図である。
【
図20】本発明の第2の実施の形態に係るファイルの構成を示す平面図である。
【
図21】参考例としてのファイルを閉じた状態おける各ポケット体の下端部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、
図1における上下方向を「ファイルの上下方向」とし、同様に
図1における左右方向を「ファイルの左右方向」とし、左右方向の長さを「幅」とする。
【0025】
図1ないし
図15において、1はファイルであり、このファイル1は、表紙体2の一方面である内側面に、ポケット体3が熱溶着や超音波溶着等の方法によって溶着されて取り付けられている。そして、ポケット体3に、例えば書類等の被収容物4を収容可能である。なお、
図1は、ファイル1において、二点鎖線で示す被収容物4をポケット体3に収容している動作途中の状態を示している。
【0026】
表紙体2は、第1の表紙部としての表表紙部5と、背表紙部6と、第2の表紙部としての裏表紙部7とが左右方向に順次配置されている。なお、これら表表紙部5、背表紙部6および裏表紙部7はいずれも合成樹脂や紙等にて形成されており、例えば、表表紙部5、背表紙部6および裏表紙部7のいずれも同じ材料で形成された構成や、表表紙部5、背表紙部6および裏表紙部7のいずれも異なる材料で形成された構成や、表表紙部5および裏表紙部7と、背表紙部6とが異なる材料で形成された構成等のように、それぞれの材料は適宜選択できる。
【0027】
表表紙部5および裏表紙部7は、略矩形状であり、表表紙部5の左右方向の一方側の端部(右端部)、および、裏表紙部7の左右方向の他方側の端部(左端部)の上下方向の全長に亘って背表紙部6が接合されている。
【0028】
背表紙部6は、左右方向に所定幅で離間し上下方向に沿って配置された2つのヒンジ部11と、これらヒンジ部11の左右方向の外側に設けられた接続部12とを有している。
【0029】
そして、接続部12が表表紙部5および裏表紙部7に溶着して接続されることにより、表表紙部5および裏表紙部7は、背表紙部6を中心にヒンジ部11を介して、表表紙部5の左右方向の一方側の端部(左端部)と裏表紙部7の左右方向の他方側の端部(右端部)とが接離するように互いに回動可能である。すなわち、表紙体2は、表表紙部5および裏表紙部7の少なくとも一方を回動させることにより、左右方向に開閉でき、
図1ないし
図8に示すように、表表紙部5と背表紙部6と裏表紙部7とが略同一平面上に配置された状態(開いた状態)と、
図9ないし
図15に示すように、表表紙部5の左端部と裏表紙部7の右端部とを接近させ表表紙部5と裏表紙部7とを互いに対向させて、これら表表紙部5および裏表紙部7を背表紙部6に対し屈曲させた状態(閉じた状態)とにできる。なお、開いた状態とは、表表紙部5と背表紙部6と裏表紙部7とが略同一平面上に配置された状態に限定されず、閉じた状態に対して表表紙部5の左端部と裏表紙部7の右端部とが離間した状態であればよい。
【0030】
また、裏表紙部7には、表紙体2を閉じた状態を維持するための維持部材である紐状のゴム13が環状に設けられている。
【0031】
さらに、表表紙部5の下端部および裏表紙部7の上下方向の両端部には、ゴム13が係合可能な凹部14が設けられている。
【0032】
そして、表紙体2を閉じた状態で、ゴム13を伸張させながら裏表紙部7から表表紙部5にそのゴム13を架け渡して各凹部14に係合させることで、ゴム13が表表紙部5および裏表紙部7の他方面である外側面上に配置された状態で保持され、そのゴム13の収縮力によって表紙体2が閉じた状態が維持される。
【0033】
また、表表紙部5の上端部の左側部分には、ポケット体3を移動可能に保持するための合成樹脂製の保持部材21が設けられている。
【0034】
ポケット体3は、例えば合成樹脂等にて矩形シート状に形成されており、複数のポケット体3が厚さ方向に積層された状態で、背表紙部6を跨ぐように表表紙部5から裏表紙部7に亘って配置されている。
【0035】
このようなポケット体3は、被収容物4を収容可能な袋状の収容部15と、この収容部15の上下方向の外側である上側に一体に設けられた左右方向に長尺状の固定部16を有している。
【0036】
収容部15は、右端部の上下方向の全長に亘って開口部17が設けられ、上下方向の両端部および左端部が閉塞された袋状である。
【0037】
具体的には、ポケット体3は、例えば1枚の合成樹脂製の矩形状シートが半分に折り曲げられた状態にて、上下方向において折曲箇所(下端部)とは反対側である上端部同士を溶着し、左端部同士を溶着することにより、これら端部が閉塞され、閉塞されない右端部に開口部17が配置された、平面視で矩形の袋状の収容部15が構成される。
【0038】
なお、ポケット体3は、収容部15が複数の端部が閉塞された袋状に形成されていれば、開口部17が右端部に設けられた構成に限定されず、開口部17が、固定部16に近接する収容部15の上端部や左端部や下端部に設けられた構成にしてもよい。
【0039】
また、この収容部15の一辺である上端部の上側は、左右方向の全長に亘って、重合する2枚のシートが左右方向に長尺状を形成するようにそれらが溶着されて固定部16が構成され、この固定部16は、保持部材21に対応するように位置する被保持部22と、後述する溶着部18とを有している。
【0040】
そして、固定部16を保持部材21を有さない表紙部である裏表紙部7に対して間欠的に左右方向に並ぶように溶着することで、溶着部18が表表紙部5に固定される。
【0041】
ここで、
図16ないし
図19に示すように、被保持部22には、左右方向に延びる長孔状の複数(例えば2つ)の挿通孔23が同一線状に互いに離間して設けられている。
【0042】
また、保持部材21は、平面視にて、ポケット体3の上端部における左端部側の一部を覆うように配置されたケース部24と、このケース部24内に設けられ挿通孔23に挿通された板状の挿通部25とを有している。
【0043】
ケース部24は、表表紙部5の上端部からファイル1を閉じた場合に内側となる方向に略垂直に立設された第1の壁部26と、第1の壁部26の表表紙部5に接する端部(基端部)と対向する位置にある端部(先端部)からこの第1の壁部26に対し略垂直(表表紙部5に対して略平行)に設けられた第2の壁部27とを有し、断面視で略L字状に構成されている。
【0044】
また、ケース部24の内側には、第1の壁部26および第2の壁部27に沿って基部28が設けられ、この基部28の先端部から略垂直に表表紙部5へ向けて挿通部25が設けられている。すなわち、挿通部25は、基部28および表表紙部5に対して略垂直に接続されている。
【0045】
挿通部25の幅寸法は、挿通孔23の幅寸法より小さく、例えば約1/2の長さに形成されている。すなわち、挿通孔23の一方向(左右方向)の長さは、挿通部25の一方向(左右方向)の長さよりも長く、挿通孔23の一方向とは直交方向である他方向(上下方向)の長さは、挿通部25の他方向(上下方向)の長さよりやや長く、挿通部25は挿通孔23内で摺動可能である。なお、挿通孔23内で挿通部25が摺動可能であれば、挿通孔23の上下方向の長さと挿通部25の上下方向の長さが略同じでもよい。
【0046】
そして、挿通部25が挿通孔23に挿通されているため、例えば
図18に示すように挿通孔23内における左側に挿通部25が配置された状態から、挿通孔23が挿通部25にガイドされるようにして、ポケット体3の左側部分が挿通部25に沿って表表紙部5に対して摺動して
図19に示すように挿通孔23内における右側に挿通部25が配置されるとともに、ポケット体3の厚さ方向への変位がケース部24により規制される。すなわち、ファイル1では、挿通部25が挿通孔23に挿通され、その周囲であるポケット体3の上端部の左側部分の一部がケース部24に覆われていることにより、ポケット体3が表表紙部5に対して左右方向に移動可能に保持される。
【0047】
次に、上記第1の実施の形態の作用および効果を説明する。
【0048】
図1に示すように、ファイル1に被収容物4を収容して持ち運ぶ際には、まず、表表紙部5と背表紙部6と裏表紙部7とを略同一平面上に配置し表紙体2を開いた状態にして、この状態において、開口部17から収容部15内へ被収容物4を挿入して収容する。
【0049】
その後、表紙体2が開いた状態から、表紙体2を表表紙部5の左端部と裏表紙部7の右端部とを接近させるように、背表紙部6を中心にヒンジ部11を介して互いに回動させて、表表紙部5と裏表紙部7とを対向させて表紙体2を閉じた状態にする。
【0050】
表紙体2を閉じると、ポケット体3は、固定部16が裏表紙部7に固定されているため、表表紙部5と裏表紙部7との位置関係の変化に基づいて、表表紙部5に対応する固定されていない被保持部22側(左端部側)には、左方向へ押し出されるような力が作用する。
【0051】
また、このように左方向への力がポケット体3に作用すると、挿通孔23と挿通部25とのガイド作用によって、
図18に示す状態から
図19に示す状態となるように、各ポケット体3が挿通部25に沿って表表紙部5に対して移動し、
図9ないし
図15に示すように表紙体2が閉じた(折り畳まれた)状態となる。
【0052】
また、表紙体2が閉じた状態で裏表紙部7から表表紙部5に亘ってゴム13を架け渡すことで、ゴム13の収縮力で表紙体2が閉じた状態を維持され、そのファイル1を例えば鞄等に収納して持ち運ぶ。
【0053】
そして、上記ファイル1によれば、表表紙部5から裏表紙部7に亘ってポケット体3の収容部15が配置されているため、被収容物4が収容された状態のポケット体3を、表紙体2とともに屈曲できる。そのため、被収容物4とそれを収容したポケット体3とが屈曲した状態で表表紙部5と裏表紙部7との間に収められ、平面視にて、被収容物4の通常状態の面積よりもファイル1自体をコンパクトにでき、大きさの観点に基づく利便性を向上できる。
【0054】
また、上述のように表紙体2とともにポケット体3を屈曲することにより、ポケット体3内の被収容物4には、通常の収容状態での収容部15との摩擦力よりも大きな摩擦力が作用するため、例えばファイル1の利用者が、閉じた状態のファイル1をポケット体3の開口部17が下側に位置するように保持しても、収容部15から被収容物4が抜け落ちにくい。すなわち、使用状態における開口部17の位置や向きを考慮しなくても、開口部17から被収容物4が不意に抜け落ちにくいため、使用状態の観点に基づく利便性を向上できる。
【0055】
特に、表紙体2が左右方向に開閉可能で、かつ、ポケット体3における開口部17が収容部15の左右方向の端部に設けられた構成とすることにより、開口部17を下方に向ける等して開口部17から抜け落ちようとする力が被収容物4に作用しても、その力の方向とは略垂直にポケット体3および被収容物4が屈曲されるため、摩擦力がより大きくなり、被収容物4の不意な抜け落ちをより確実に防止できる。
【0056】
また、表表紙部5と裏表紙部7との間に所定幅の背表紙部6が設けられ、背表紙部6のヒンジ部11を介して、表表紙部5と裏表紙部7とが互いに回動可能である構成にすることにより、ファイル1を閉じた状態において、背表紙部6の幅に応じて表紙体2の内側に空間を確保できるため、表紙体2の屈曲により、表紙体2内のポケット体3に収容された被収容物4に折り目等が生じにくい。
【0057】
ところで、例えば積層された複数のポケット体3がそれぞれ表表紙部5と裏表紙部7とに固定された構成であると、表紙体2を折り曲げてポケット体3を屈曲させた場合に、表紙体2に最も近い層である最下層のポケット体3と、表紙体2に最も遠い層である最上層のポケット体3とは、屈曲した形態に違いが生じる。すなわち、最下層のポケット体3は屈曲後においては最外周に位置し、最上層のポケット体3は最外周に位置する場合よりもその距離が短い最内周に位置することになり、つまり、それぞれのポケット体3の固定部16の長さが伸縮しないのであれば、表紙体2に隣接する一のポケット体3と当該ポケット体3に隣接する他のポケット体3とは、屈曲前と屈曲後とで、固定部16およびその近傍における位置関係が変化しなくてはならないのに、一のポケット体3が隣接する他のポケット体3に対して移動することができないように固定されていると、このような位置関係の変化が規制される。そのため、
図21に示す参考例ように、ファイル1を閉じた状態において、各ポケット体3における固定部16とは反対側の下端部の位置が乱れて、その乱れによって、表紙体2が閉じた状態を維持しにくくなる可能性があるとともに、表紙体2からポケット体3の一部がはみ出してしまう可能性がある。
【0058】
そこで、ファイル1では、表表紙部5に設けられた保持部材21がポケット体3の被保持部22を摺動可能に保持するため、表紙体2の開閉に伴って、挿通孔23と挿通部25とのガイド作用により各ポケット体3が挿通部25に沿って左右方向に移動可能であるとともに、各ポケット体3の厚さ方向への変位をケース部24で規制できる。その結果、ファイル1の開閉に伴う表紙体2に対する各ポケット体3の位置関係の変化を表表紙部5側で許容することができる。そのため、ファイル1を閉じた状態においても、各ポケット体3の下端部の位置が乱れにくく、表紙体2およびポケット体3を屈曲させてファイル1を閉じた状態を維持しやすい。
【0059】
なお、上記第1の実施の形態では、表紙体2は、表表紙部5と裏表紙部7との間にヒンジ部11を有する背表紙部6が設けられた構成としたが、このような構成には限定されず、例えば、背表紙部6が設けられておらず表表紙部5と裏表紙部7とが直接回動可能に接続された構成や、リング等で表表紙部5と裏表紙部7とが接続された構成等にしてもよい。
【0060】
また、表紙体2は、表紙体2に維持部材としてのゴム13が設けられるとともに表表紙部5および裏表紙部7に維持部材を係合可能な凹部14が設けられた構成としたが、このような構成には限定されず、ゴム13が設けられ凹部14が設けられていない構成にしてもよいし、さらに、ゴム13も凹部14も設けられていない、すなわち維持部材が設けられていない構成にしてもよい。
【0061】
また、維持部材が設けられた構成では、維持部材としてゴム13が設けられた構成には限定されず、維持部材は、表紙体2を閉じた状態を維持できるものであればよい。
【0062】
表紙体2およびポケット体3は、それぞれ矩形状である構成には限定されず、その形状は適宜設計可能である。
【0063】
表紙体2とポケット体3とは、溶着によって固定された構成には限定されず、表紙体2に対するポケット体3の固定方法は、縫製や溶着等の方法が適宜適用できる。
【0064】
保持部材21と被保持部22とは、挿通孔23に板状の挿通部25を挿通する構成には限定されず、表紙体2に対してポケット体3を摺動可能に保持できる構成であればよい。すなわち、例えば表表紙部5および裏表紙部7の少なくとも一方にレール状の保持部が設けられ、ポケット体3にレール状の保持部に摺動可能に係合する被保持部が設けられた構成や、ポケット体3の端部の一部をケース部24で覆っただけの構成等にしてもよい。
【0065】
ポケット体3は、1枚の合成樹脂製シートで形成された構成には限定されず、被収容物4を収容可能な収容部15と、表紙体2に固定される固定部16とを有する構成であれば、それらの配置や成形方法等は適宜変更できる。
【0066】
開口部17は、収容部15の右端部においてこの右端部と略平行に設けられた構成には限定されず、収容部15に被収容物4を出し入れ可能な構成であればよい。すなわち、例えば、収容部15の上下方向の端部のいずれかにおいて、収容部15の左右方向の端部と略垂直に開口部17が設けられ、上下方向に被収容物4を出し入れする構成にしてもよい。
【0067】
固定部16および被保持部22は、収容部15に一体に設けられ、かつ、これら固定部16および被保持部22同士が一体である構成としたが、このような構成には限定されず、収容部15と固定部16および被保持部22とが別体に設けられた構成や、固定部16と被保持部22とが別体に設けられた構成にしてもよい。
【0068】
また、固定部16および被保持部22は、収容部15の上側に配置された構成には限定されず、収容部15の外側(上下方向の外側または左右方向の外側)に配置されていればよい。
【0069】
表紙体2とポケット体3とは、裏表紙部7に固定部16が固定され、表表紙部5に保持部材21が設けられて、ポケット体3が表表紙部5に対して摺動可能に保持された構成には限定されず、ポケット体3の被保持部22を移動可能に保持する保持部材21が、表表紙部5および裏表紙部7のうちの少なくとも一方に設けられた構成であればよい。
【0070】
すなわち、ポケット体3が表紙体2に対して移動可能に保持された構成であれば、例えば、
図20に示す第2の実施の形態に係るファイル31のように、表表紙部5および裏表紙部7の両方に保持部材21が設けられ、ポケット体3は、表表紙部5および裏表紙部7の両方に対応するように被保持部22が設けられた構成等にしてもよい。そして、このファイル31では、ポケット体3は、表紙体2に固定されず、表表紙部5および裏表紙部7の両方に対して移動可能に保持されている。
【符号の説明】
【0071】
1 ファイル
2 表紙体
3 ポケット体
4 被収容物
5 第1の表紙部としての表表紙部
6 背表紙部
7 第2の表紙部としての裏表紙部
11 ヒンジ部
15 収容部
16 固定部
17 開口部
21 保持部材
22 被保持部
23 挿通孔
25 挿通部
31 ファイル