(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】勾配運動感受性撮像アプリケーションにおける勾配不均一性を修正する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
A61B5/055 376
A61B5/055 340
(21)【出願番号】P 2018121412
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-06-21
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521274223
【氏名又は名称】シナプティヴ メディカル インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,チャド タイラー
(72)【発明者】
【氏名】カーティス, アンドュリュー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ベアティー, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ステインスバイ, ジェフ アラン
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0113615(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0137813(US,A1)
【文献】特表2010-512174(JP,A)
【文献】特開2011-062508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージング(MRI)システムにおいて勾配コイルの勾配磁場プロファイルにおける非線型性によって引き起こされる誤差を修正する方法であって、方法は、
勾配コイルのコンピュータモデルを使用して撮像空間内の各ボクセルで非線型性テンソルを取得する工程と、
前記非線型テンソルを用いて運動感受性符号化を修正する工程と、 そして
修正された
運動感受性符号化を使用して修正された画像を生成する工程と、で構成され
、
前記非線型テンソルは、対応する各ボクセルにおける磁場勾配から計算され、
前記磁場勾配は、コンピュータモデルを用いて、下記の方程式を使用して計算され、
方程式の、x '、y’及びz'は、傾斜磁場コイルのワイヤパターンの現在の要素の位置を表し、dx'、dy'及びdz'は、導電路を構成する要素の長さを表す、方法。
【請求項2】
各ボクセルにおける磁場勾配が、画像取得中にリアルタイムで計算される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
計算された磁場勾配を、低解像度の3次元アレイに格納する工程をさらに含み、低解像度の3次元アレイは、撮像空間内のボクセルの不連続なサンプルに対応する計算された磁場勾配を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
記憶された
3次元アレイを補間して、各ボクセルにおける磁場勾配を得ることをさらに含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記MRIシステムは複数の勾配コイルを含み、前記コンピュータモデルは複数の勾配コイルの要素アレイモデルであり、複数の勾配コイルのための導電経路の空間表現を形成するために互いに結合された要素のセットを含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記非線型テンソルを得る工程は、前記MRIシステムのメモリから前記非線型テンソルを検索する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記運動感受性符号化を修正する工程は、前記非線型テンソルを使用して修正されたb値を計算する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
生成された修正画像は、修正拡散強調画像である、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記運動感受性符号化を修正する工程は、前記非線型テンソルを使用して修正された拡散テンソルを導出する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
生成された修正画像は、修正された拡散テンソル画像シーケンスである、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記運動感受性符号化を修正することは、修正された勾配モーメントを計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記生成された修正された画像は、修正された速度符号化撮像シーケンスである、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記勾配コイルが非対称勾配コイルである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
磁気共鳴イメージング(MRI)システムにおける勾配コイルの勾配磁場プロファイルにおける非線型性によって引き起こされる誤差を修正する
、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法を実施するためのシステムであって、システムは、
撮像ボリュームから信号を受信するための受信機と、
前記受信機に結合されたプロセッサであって、プロセッサは、
システムの勾配コイルのコンピュータモデルを用いて撮像空間内の各ボクセルで非線型性テンソルを取得する工程と、
非線型性テンソルを用いて運動感受性符号化を修正する工程と、
修正された運動感受性符号化を使用して信号から修正された画像を生成する工程と、を含むプロセッサと、
を含むシステム。
【請求項15】
前記プロセッサによる検索のために各ボクセルに前記非線型テンソルを記憶するためのメモリをさらに備える、請求項
14に記載のシステム。
【請求項16】
前記勾配コイルが非対称勾配コイルである、請求項
14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、運動感受性磁気共鳴(MR)撮像に関し、より具体的には、勾配コイル非線型性に起因するMR撮像における誤差を修正することに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像法の間に生成される信号強度は、空間画像への変換を可能にする様々なメカニズムを使用して符号化することができる。 例えば、勾配コイル(高出力電磁石)を使用して空間情報を符号化することができる。 空間符号化は、勾配コイルに、スキャンされる画像が配置される撮像ボリューム内の位置を有する線形に変化する磁場を生成させることによって達成される。 実際の実装では、勾配コイルによって生成された磁場プロファイルは、厳密に線型から逸脱する。 偏差の量は、画像内の空間の位置に依存する。
【0003】
これらの勾配コイルの非線型性は、拡散加重、位相コントラスト、またはイントラボクセルインコヒーレントモーション(IVIM)撮像を含む様々なタイプのMR撮像において誤差を引き起こす可能性がある。 勾配磁場の不均一性は、しばしば、運動感受性符号化の方向および大きさにおける空間的に依存した誤差をもたらす。 このような勾配コイルの非線型性は、勾配コイルが非対称である場合、例えば拡散強調画像を用いて脳を撮像する場合、に特に顕著であり得る。
【0004】
これらの誤差を修正するために、勾配コイルセットの非線型テンソルは、しばしば、ピクセル毎に計算される。 非線型テンソルを計算するには、各勾配コイルによって生成される磁場の勾配を知る必要があります。 勾配コイルの磁場は、従来、実験的に、または球面調和膨張を用いた近似によって見出されてきた。 これらの磁場の勾配は、それから、数値的または分析的に計算されている。
【0005】
しかし、勾配コイルの磁場を実験的に求めることは、問題である可能性がある。なぜなら、1)画像のボクセル離散化が望ましい連続的なものではなく離散的な歪みマップにつながり、2)シーケンス特有である主磁石からのB 0不均一性によって引き起こされる歪みが歪みマップに含まれる。
【0006】
フィールドの勾配を数値的に計算することも、勾配に必要なものを決定するためにフィールドのサンプリングをより高い分解能で行わなければならないので、理想的ではない。 また、少なくとも2つの点をサンプリングし、計算の方向ごとに差をつけなければならない。 これは処理時間の増加につながる傾向がある。
【0007】
特に、磁場の球面調和表現および磁場の勾配の分析的計算は、脳卒中撮像に使用され得る非対称勾配コイルに対して問題を提起し得る。 非対称勾配コイルの場合、磁場を正確に表現するのに必要な高調波項の数は実質的に増加する。 したがって、球形高調波を用いてそのようなコイルを表現または表現することはしばしば困難である。
【発明の概要】
【0008】
例示的な一態様によれば、本開示は、磁気共鳴画像(MRI)システムにおける勾配コイルの傾斜磁場プロファイルにおける非線型性によって引き起こされる誤差を修正する方法を提供する。 この方法は、勾配コイルのコンピュータモデルを使用して撮像空間内の各ボクセルで非線型テンソルを取得する工程と、非線型テンソルを使用して運動感受性符号化を修正する工程と、修正された運動感受性符号化用いて修正画像を生成する工程とを含む。
【0009】
別の例示的な態様によれば、本開示は、磁気共鳴撮像(MRI)システムにおける勾配コイルの勾配磁場プロファイルにおける非線型性によって引き起こされる誤差を修正するためのシステムを提供する。 このシステムは、撮像ボリュームから信号を受信する受信機と、受信機に結合されたプロセッサとを含む。 プロセッサは、システムの勾配コイルのコンピュータモデルを使用して撮像空間内の各ボクセルで非線型テンソルを取得し、非線型テンソルを使用して運動感受性符号化を修正し、修正された運動感受性符号化を使用して信号から修正された画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の例示的な実施形態は、以下の説明において提供される。 そのような説明は添付の図面を参照する。
【
図1】
図1は、例示的な実施形態による、磁気共鳴撮像(MRI)システムのブロック図である。
【
図2】
図2は、1つの空間次元に沿って勾配コイルによって生成された例示的な磁場プロファイルを示す。
【
図3】
図3は、一実施形態による、
図1のシステムを使用して誤差を修正する方法を示すフローチャートである。 そして
【
図4】
図4は、横方向勾配コイル用のワイヤパターンのコンピュータモデルの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
従来の磁気共鳴撮像(MRI)システムは、対象物中の水素原子などのプロトンからの磁気共鳴(MR)信号の画像を構築するために主に使用される撮像モダリティを表す。 医療用MRIにおいて、典型的な関心信号は、組織の主要な水素含有成分である水と脂肪からのMR信号である。
【0012】
図1を参照すると、例示的な実施形態による磁気共鳴撮像(MRI)システムのブロック図が100で示されている。100で示されたMRIシステムの例示的な実装は、例示的な目的のみであり、バリエーションは付加的な、より少ない、および/または変化的な構成要素を含む得る。
【0013】
図1に示すように、例示的なMRIシステム100は、データ処理システム105を含む。データ処理システム105は、一般に、ディスプレイなどの1つまたは複数の出力デバイス、キーボードおよびマウスなどの1つまたは複数の入力デバイス、並びに揮発性および永続的な構成要素を有するメモリに接続される1つまたは複数のプロセッサ、を含む。 データ処理システム105は、スキャンを実行するために使用されるMRIシステム100のハードウェア構成要素との通信およびデータ交換のために適合された1つまたは複数のインターフェースをさらに備えることができる。
【0014】
続けて
図1を参照すると、例示的なMRIシステム100はまた、静磁場磁石110を含む。静磁場磁石110は、例えば、永久磁石、超伝導磁石または抵抗磁石として実施され得る。 MRIシステム100での使用に適したハイブリッド磁石を含む他の磁石タイプが考えられる。静磁場磁石110は、強度B 0および軸に沿った方向を有する実質的に均一な静磁場を生成するように作動可能である。静磁場は、物体の水及び脂肪の水素内のプロトンのような所望の原子核がスキャンの準備のために磁気的に整列される撮像ボリュームを生成するために使用される。 いくつかの実装形態では、この実施例のように、データ処理システム105と通信する静磁場制御ユニット115を、静磁場磁石110の動作を制御するために使用し得る。
【0015】
MRIシステム100は、例えば、3つの垂直勾配軸に沿って静磁場内の空間情報を符号化するために使用される勾配コイル120をさらに含む。 勾配コイル120のサイズおよび構成は、それらが制御された均一な直線勾配を生成するようなものであってもよい。 例えば、主磁界磁石110内に配置された3つの対になった直交する電流搬送主要コイルは、所望の線型勾配磁界を生成するように設計し得る。 本実施形態に示すように、勾配コイル120は、少なくとも1つの非対称勾配コイル122を含む。
【0016】
いくつかの実施例では、勾配コイル120はシールドされ、主要シールドコイル対を形成する主要勾配コイルによって生成された勾配磁場に対抗するための逆磁場を生成することができるシールドコイルの外層を含む。このようなコイル対では、「主」コイルは傾斜磁場を生成する役割を担い、「シールド」コイルは撮像ボリュームなどの特定の容積の外側の主要コイルの浮遊磁場を低減させる役割を果たすことができる。 勾配コイル120の主要コイルおよびシールドコイルは、直列に接続されてもよい。
【0017】
シールドされた勾配コイルを共に形成する任意の与えられた勾配軸に対して2つ以上のコイル層を有することも可能である。 シールドされた勾配コイル120は、走査された画像にアーチファクトを引き起こし得る渦電流および他の干渉を低減することができる。 渦電流は、主に、撮像ボリューム(フリンジフィールド)の外側の磁場によって引き起こされるMRIシステム100の導電性構成要素に流れるので、勾配コイル120によって生成されるフリンジ電界を低減することにより、干渉が低減され得る。 従って、勾配コイル120の外側の純磁場ができるだけゼロに近くなるように、主要シールドコイル対の形状及びサイズ、導体ワイヤパターン及びサイズ、及び電流振幅及びパターンを選択し得る。 例えば、円筒形磁石の場合、2つのコイルは同心の円筒の形態で配置されてもよく、垂直磁場磁石の場合は、2つのコイルは同軸ディスク内に配置されてもよい。
【0018】
勾配コイル120の導電性構成要素は、遮蔽されているかどうかにかかわらず、主要コイルおよび遮蔽コイルを含み、電気導体(例えば、銅、アルミニウムなど)を含み得る。 内部電気接続は、電位差が勾配コイル120の端子に印加されたときに、電流が所望の経路を流れることができるようにし得る。 主要勾配コイルおよび勾配シールドコイルの両方の3つの勾配軸の導電性構成要素は、物理的分離および/または非導電性バリアによって絶縁されていてもよい。
【0019】
勾配コイル120によって生成された磁場は、組み合わせて及び/又は逐次的に主磁場に重畳されて、撮像ボリューム内の対象物の選択的な空間励起が生じる。 勾配コイル120は、空間励起を可能にすることに加えて、撮像ボリューム内に配置された原子核に空間的に特定の周波数および位相情報を付加することができ、得られたMR信号を有用な画像に再構成することができる。 データ処理システム105と通信する勾配コイル制御ユニット125は、勾配コイル120の作動を制御するために使用される。
【0020】
MRIシステム100のいくつかの実施形態では、シムコイル(従来は、これに限定されるものではないが、2次以上の高調波の磁界プロファイルを生成する)または均一なフィールドオフセットコイル(図示せず)などの追加の電磁石コイルまたは任意の他の修正電磁石であってもよい。 アクティブシミング(異なる物体がシステム内またはその周囲に置かれたときに導入される磁場歪みの修正)を実行するために、シムコイルのような修正電磁石は、静磁場をより均一にするように作用する磁場を提供するために使用される電流を運ぶ。例えば、これらのコイルによって生成された磁場は、主磁石110の不完全性、外部強磁性物体の存在、撮像領域内の材料の感受性の差異、またはその他の静的または時変的現象に起因する主磁場の不均一性の修正を補助し得る。
【0021】
MRIシステム100は、無線周波数(RF)コイル130をさらに含む。RFコイル130は、原子核または「スピン」を励起する強度B1のRF磁場を確立するために使用される。 RFコイル130はまた、撮像される対象物内の「リラックシング」スピンから放出される信号を検出することができる。 したがって、RFコイル130は、別個の送信コイルと受信コイルの組み合わせ、または送信モードと受信モードとを切り替えるためのスイッチング機構を備えた送信と受信の組み合わせのコイルであってもよい。
【0022】
RFコイル130は、典型的には受信のみのコイルおよび/または受信および送信することができるボリュームコイルである表面コイルとして実装することができる。 RFコイル130は、静磁場磁石110のボアに一体化することができる。 あるいは、RFコイル130は、頭部などのスキャン対象のより近くに実装されてもよく、密着型ヘルメットのような被検体の形状に近似する形状をとることができる。 データ処理システム105と通信するRFコイル制御ユニット135は、送信態様または受信態様のいずれかでRFコイル130の作動を制御するために使用されてもよい。
【0023】
図1に示すように、データ処理システム105は、MRIシステム100の勾配コイル120の勾配磁場プロファイルにおける非線型性によって引き起こされる誤差を修正する修正サブシステム150をさらに含む。修正サブシステム150は、修正プロセッサ154を含み、修正プロセッサ154は、 RFコイル130およびメモリ156に結合される。修正プロセッサ154は、メモリ156から非線型テンソルを検索することおよび/またはMRIシステム100の勾配コイル120のコンピュータモデルを使用し、非線型テンソルを見つけ、非線型性テンソルを用いて運動感受性符号化を修正し、次いで修正された運動感受性符号化を使用してRFコイル130からの信号から修正されたイメージを生成することによって、撮像ボリューム内の各ボクセルにおける非線型テンソルを取得するように構成される。修正プロセッサ154は、メモリに記憶された命令を実行することによって上記のアプリケーションを実行するように構成し得る。修正サブシステム150は、データ処理システム105の一般的なプロセッサがデータ処理システム105の一般的なメモリと関連して上記の工程を実行できる点で、必ずしもデータ処理システム105の別個のコンポーネントである必要はない。修正サブシステム150の使用については、以下にさらに詳細に説明する。
【0024】
MRIシステム100から画像を取得するために、データ処理システム105において、RFパルスおよび勾配波形(集合的に「パルスシーケンス」と呼ばれる)の1つまたは複数のセットが選択される。データ処理システム105は、選択されたパルスシーケンス情報を、RF制御ユニット135および勾配制御ユニット125に通信し、スキャンを実行するための一連のパルスを提供するための関連する波形およびタイミングを生成する。
【0025】
典型的には、勾配コイル120によって生成される勾配磁場プロファイルは、線型磁場のプロファイルからの逸脱を含む。 説明的な例として、
図2(a)に示すように、勾配磁場が勾配コイル120によってX軸に沿って印加される場合、210で示される静磁場の理想的な強度は、空間においてX軸に沿ってプロファイルされ、理想的には線型であり、 X軸に沿った勾配コイル120によって生成された所望の勾配であるGxの値である。しかしながら、
図2(b)に示すように220において、磁場強度の実際のプロファイルは、所望の勾配Gxから逸脱する。
図2(b)において、理想的な勾配Gxは参考に、230で点線で示されている。 線型プロファイルからの勾配場プロファイルの偏差は、典型的には、空間的に歪んだ画像および/または深刻なアーティファクトをもたらす。
【0026】
本開示の一態様によれば、波形のパラメータは、勾配磁場プロファイルにおける非線型性によって引き起こされる誤差を修正するように調整されてもよい。 次に
図3を参照すると、非線型誤差を補正する方法は、一般に300で示されている。 いくつかの例では、方法300は、
図1に示すようにMRIシステム100を使用して少なくとも部分的に操作されてもよい。 さらに、方法300について以下の議論は、システム100のさらなる理解を導く。しかしながら、システム100および方法300は変更可能であり、相互に関連して本明細書で説明したように正確に作動する必要はなく、 そのような変更は添付の請求項の範囲内である。
【0027】
勾配非線型性によって引き起こされる誤差を修正するために、勾配コイル120のコンピュータモデルを使用して、302において撮像ボリューム内の各ボクセルにおける非線型性テンソルが得られる。予め計算された304においてメモリ156からの非線型性テンソルを使用して、または306において非線型テンソルを事前に、すなわち撮像の前に、または撮像中に、すなわちリアルタイムで取得することによって、非線型テンソルを得ることができる。
【0028】
非線型性テンソルを見つけるために、勾配コイル120のコンピュータモデルが308で作成される。モデルは、MRIシステム100に存在するコイル、例えばワイヤ接続、のワイヤパターンなどの勾配コイル120に存在する要素を表現する。例えば、モデルは、主要コイルの導電性要素と、変形例ではシールドコイルとを含むことができる。このモデルは、典型的には、コンピュータモデリング技術に基づいて可能な限り勾配コイル120を正確に表現するように構成されている。 1つの例示的なモデルは要素アレイ、すなわち、結合されたときに電磁石のワイヤパターンを形成する1組の小さな電流要素としてモデル化される電磁石、に基づいている。素子アレイモデルは、勾配コイル120の接続経路ならびに勾配コイル120に存在する他の通電ワイヤを含むことができる。素子アレイモデルに基づいて、勾配コイル120の完全な空間表現を構成することができる。素子アレイモデルは、例えば、勾配コイル120のワイヤパターンを表す導電性素子のアレイを含むことができる。
図4は、横勾配コイル用の例示的なワイヤパターンの半分を示す。各「*」は、勾配磁場を計算する空間上の点を表す。
【0029】
方法300に続けて、310にて、モデルに基づいて、磁場勾配が計算される。 1つの実施態様によれば、分析式は下記の方程式の形をとることができる。
上記方程式において、x '、y'及びz 'は、勾配磁場コイルのワイヤパターンの現在の要素の位置を表し、dx'、dy '及びdz'は、導電路を構成する要素の長さを表す。 Iはアンペア(A)単位のワイヤ内の電流を表し、μ0は自由空間の透磁率を表し、rはワイヤからの半径である。
【0030】
上記の式を使用して、撮像ボリューム内の各ボクセルにおける磁場勾配を計算することができる。あるいは、撮像ボリューム内のボクセルの不連続なサンプルに対応する磁場勾配が計算され、メモリ156内の低解像度の3次元アレイに格納されてもよい。後で、記憶された3次元アレイは、各ボクセルで磁場勾配を得るために補間されてもよい。さらなるオプションとして、同じ勾配コイルの記憶アレイと補間されたアレイとの線型結合を組み合わせて、その勾配コイルの各ボクセルで磁場勾配を得ることができる。複数の勾配コイルの記憶されたアレイと補間されたアレイとの線型結合も一緒に組み合わせて、複数の勾配コイルのための画像ボリューム内の各ボクセルにおける磁場勾配を共に使用するときに得ることができる。
【0031】
したがって、撮像ボリューム内の勾配磁場は、事前に計算するか、リアルタイムで計算するか、または撮像ボリューム内の異なるボクセルの両方の工程の組み合わせから取得し得る。 本方法の特定の特徴は、それが対称および非対称勾配コイルの両方の勾配磁場を計算するために使用できることである。 これは、脳卒中撮像法、または拡散撮像法におけるリアルタイム計算が望まれる患者の頭部の想像の間に特に有用であり得る。
【0032】
特定のボクセル位置において磁場の勾配が分かれば、対応するボクセルの磁場勾配から312で非線型テンソルを計算することができる。 このような計算では、通常、下記の方程式を使用する。
上記の方程式において、L(r)が非線型テンソルであり、G0は所望の磁場勾配であり、G(r)は計算された磁場勾配である。
【0033】
この時点で、非線型テンソルは、316で運動感受性符号化を修正するために直接使用されてもよく、および/または、304で別の時間に検索するためにメモリ156に314で記憶されてもよい。
【0034】
非線型性テンソルが取得された後、検索または計算またはそれらの組み合わせによって、非敏感テンソルを用いて動き感知符号化が316で修正される。 拡散撮像および速度符号化された撮像法を含む、すべてのタイプの運動感受性符号化が方法300において企図される。 したがって、316における修正は、非線型テンソルを使用して修正されたb値を計算すること、修正された勾配モーメントを計算すること、または修正された拡散テンソルを導出することを含むことができる。
【0035】
運動感受性符号化、具体的には拡散符号化は、運動感受性符号化のb値についてのよく知られた下記の方程式の中で、勾配依存符号化を覆うものである。
上記方程式において、G0は印加された勾配磁場の所望の振幅であり、δは時間間隔Δで分離された勾配磁場パルスの持続時間であり、γは磁気回転比である。
【0036】
非線型テンソルの修正は、任意の既知の方法を使用して位置rに適用することができる。 位置rに非線型性テンソルの修正を適用した後、修正された勾配振幅Gcorrは、修正されたb値が、下記の方程式に似たような方程式に基づいて計算され得る。
【0037】
修正された拡散テンソルも同様に計算される。 一般に、拡散テンソルは、拡散テンソルを計算する前に、異なる印加勾配方向rおよび勾配GにわたるMR測定の数に基づいて計算される。 上述のb値修正は、標準拡散テンソル計算を実行して修正拡散テンソルを得る前に適用される。
【0038】
次いで、318において修正プロセッサ154によって、計算された、または導出された修正パラメータ(すなわち動き感受性符号化)が使用され、撮像ボリュームから受信された信号から修正画像が生成される。
【0039】
修正されたb値が計算されるか、または修正された拡散テンソルが316で得られた場合、修正された拡散強調画像または拡散テンソル画像シーケンスが318で生成される。
【0040】
拡散強調画像は、水のランダム変位である「見かけの拡散率」に基づいて画像のコントラストを生成することができるメカニズムである。拡散強調画像は、磁気共鳴画像法においてコントラストを生成するために組織内の水分子の拡散を使用する、広く使用されている撮像モダリティである。
【0041】
MR画像法で理解されるように、印加磁場は水分子中のプロトンのスピンの位相に影響を与える。無線周波パルスは、2つの拡散勾配パルスを加えることによって、運動に依存するか、または「拡散強調」される。第1の勾配パルスは、各プロトンの位相シフトを、勾配に対する水分子の空間的位置に比例するか又はそれに依存する量だけ変化させる。水分子が第1および第2パルス(第1勾配と同じであり、第1勾配とは反対である)の印加の間に移動していない場合、第2勾配パルスは、この位相シフトを逆転させる。水分子が第1および第2の勾配パルスの印加の間を移動した場合、完全なリフェージングが起こり得ず、この空間的位置からの信号損失を引き起こす。信号損失の量は、水分子の運動の程度に正比例する。信号損失はまた、水分子の優先拡散方向に比例する。
【0042】
拡散勾配が少なくとも6つの非共線方向に適用される場合、拡散異方性を記述する拡散テンソル(または3×3マトリクス)を各ボクセルで得ることができる。
【0043】
取得された拡散信号は、整理され、q空間と呼ばれる一時的なマトリクスに格納され得る。 単一のパルス勾配シーケンスの適用は、q空間内に位置するものに対応する1つの拡散強調画像を提供する。 加工前MR画像データをq空間から拡散確率密度関数を示す視覚画像に変換するために、フーリエ変換が適用される。
【0044】
このようにして、修正されたb値または修正された拡散テンソルを用いてフーリエ変換されたとき、q空間データから修正された拡散強調画像または拡散テンソル画像シーケンスを生成することができる。 フーリエ変換のサイズは、q空間の配列サイズによって決定される。
【0045】
あるいは、速度符号化に使用するために、勾配モーメントを316で計算し得る。
【0046】
MRデータは、時間変化勾配、例えば双極勾配波形形状がしばしば使用され、を適用することによって速度符号化することができる。 この用途におけるMR信号の位相は、印加された勾配波形の第一のモーメントに敏感である。 一般に、速度符号化された信号は、下記の方程式に依存する。
【0047】
非線型性テンソルを適用すると、各空間位置で修正勾配値Gcorr(例えば、上記説明のように)が得られ、修正後の速度符号化計算は下記の方程式に基づいて導出すべきである。
【0048】
VENCは、位相コントラストMR撮像法および位相コントラストMRアンギオグラフィに使用される、任意の1つの速度符号化アプリケーションに特有の、オペレータ指定のエイリアシング速度パラメータである。 VENCは、関心血管内で遭遇する可能性のある最高速度を反映する。速度符号化パラメータVENCを変化させると、選択される最大速度がデータの180°位相シフトに対応するようにバイポーラ勾配の強度が調整される。
【0049】
位相差画像では、ボクセル値は、速度符号化パラメータによって決定される最大範囲内の血液速度に比例する。他の方向または他の速度で流れを増感するために、追加のスキャンを行うことができる。適切な速度符号化勾配の流れまたは運動を使用して、依存する位相効果を使用して、別の方法で取得パラメータをマッチングさせる際に異なる速度依存信号相を有する2つのデータセットを測定することができる。得られた2つの位相画像を減算することで、基礎となる流れまたは運動の速度の定量的評価が可能になる。
【0050】
このようにして、勾配モーメントが316で計算された場合、318において、修正された速度符号化撮像シーケンスが、撮像ボリュームから取得された信号から修正プロセッサ154によって生成される。
【0051】
本開示のいくつかの実施形態または態様は、完全に機能するコンピュータおよびコンピュータシステムで実施することができるが、他の実施形態または態様は、様々な形態のコンピュータ製品として配布することが可能であり、実際に配布を行うのに使用される機械の特定のタイプまたはコンピュータ可読媒体にかかわらず適用することができる。
【0052】
開示される少なくともいくつかの態様は、少なくとも部分的にソフトウェアで具体化されてもよい。すなわち、いくつかの開示された技術および方法は、マイクロプロセッサなどのプロセッサに応答して、ROM、揮発性RAM、不揮発性メモリ、キャッシュ、またはリモート記憶装置などのメモリに含まれる命令のシーケンスを実行してもよい。
【0053】
コンピュータ可読記憶媒体は、データ処理システムによって実行されるとシステムに本開示の様々な方法または技術を実行させるソフトウェアおよびデータを格納するために使用され得る。実行可能なソフトウェアおよびデータは、例えばROM、揮発性RAM、不揮発性メモリおよび/またはキャッシュを含む様々な場所に格納することができる。このソフトウェアおよび/またはデータの一部は、これらの記憶装置のいずれかに記憶されてもよい。
【0054】
コンピュータ可読記憶媒体の例には、揮発性および不揮発性メモリデバイス、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリデバイス、フロッピー(登録商標)および他のリムーバブルディスク、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)など)などの記録可能型および非記録型媒体が含まれるが、それらに限定されない。命令は、搬送波、赤外線信号、デジタル信号などの電気信号、光学信号、音響信号、または他の形態の伝搬信号のためのデジタルおよびアナログ通信リンクに具体化することができる。 記憶媒体は、インターネットクラウド、またはディスクなどのコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。
【0055】
さらに、本明細書で説明される方法の少なくともいくつかは、説明される方法の態様を実行するために、1つまたは複数のプロセッサによる実行のためのコンピュータ使用可能命令を有するコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品に分散することができる。 媒体は、1つまたは複数のディスケット、コンパクトディスク、テープ、チップ、USBキー、外部ハードドライブ、有線伝送、衛星伝送、インターネット伝送またはダウンロード、磁気および電磁波電子記憶媒体、デジタルおよびアナログ信号などの、それらに限定されない様々な形態で提供されてもよい。 コンピュータ使用可能命令は、コンパイルされたコードおよびコンパイルされていないコードを含む様々な形態であってもよい。
【0056】
本明細書で説明されるシステムの要素の少なくともいくつかは、ソフトウェア、またはソフトウェアとハードウェアの組み合わせによって実施されてもよい。ソフトウェアを介して実装されるシステムの要素は、オブジェクト指向プログラミングまたはスクリプト言語などの高水準手続き言語で記述することができる。したがって、プログラムコードは、C、C ++、J ++、または任意の他の適切なプログラミング言語で記述することができ、オブジェクト指向プログラミングの当業者に知られているように、モジュールまたはクラスを含むことができる。ソフトウェアを介して実装されるシステムの要素の少なくとも一部は、必要に応じてアセンブリ言語、機械語またはファームウェアで記述することができる。いずれの場合においても、プログラムコードは、プロセッサ、オペレーティングシステム、およびそれらを実装するのに必要な関連する、本明細書に記載された実施形態の少なくとも1つの機能性を含む、ハードウェアおよびソフトウェアを有する汎用または専用のプログラム可能なコンピューティングデバイスによって読み取り可能な記憶媒体またはコンピュータ可読媒体に格納することができる。プログラムコードは、コンピューティングデバイスによって読み取られると、本明細書に記載の方法のうちの少なくとも1つを実行するために、新しい、特定の所定の方法で作動するようにコンピューティングデバイスを構成する。
【0057】
本明細書に記載された教示は、説明の目的のために様々な実施形態と関連しているが、その教示がそのような実施形態に限定されることは意図されていない。 それどころか、本明細書に記載され説明された教示は、記載された実施形態から逸脱することなく、様々な代替、変更、および等価物を包含し、その一般的な範囲は添付の特許請求の範囲に規定される。 プロセス自体に必要または本質的な範囲を除いて、本開示に記載された方法またはプロセスの工程または段階に対する特定の順序は意図されていないか、暗示されていない。 多くの場合、説明された方法の目的、効果、またはインポートを変更することなく、プロセス工程の順序を変更することができる。