(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】電圧変換装置、プラズマ発生用の高周波電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
H02M3/155 J
(21)【出願番号】P 2018243594
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】河野 真吾
(72)【発明者】
【氏名】池成 達也
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-061349(JP,A)
【文献】特開2007-014058(JP,A)
【文献】特開2005-077120(JP,A)
【文献】米国特許第04275436(US,A)
【文献】特開2014-054027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
G05F 1/445
G05F 1/56
G05F 1/613
G05F 1/618
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を所定の出力電圧に変換する電圧変換装置であって、
前記出力電圧が出力される出力端子間に接続されて前記出力電圧が印加される半導体スイッチと、
前記出力端子間の出力電圧値を検出する電圧検出部と、
前記半導体スイッチに流れる電流値を検出する電流検出部と、
前記電圧検出部で検出した出力電圧値に対応する目標電流値を導出する目標電流値設定部と、
前記電流検出部で検出した電流値が、前記目標電流値に近づくように前記半導体スイッチのオン抵抗を制御する半導体スイッチ制御部と
を備
え、
前記電圧検出部で検出した出力電圧値に対応する目標抵抗値が記憶された記憶部を更に備え、
前記目標電流値設定部は、前記記憶部を参照することによって、前記電圧検出部で検出した出力電圧値に対応する目標抵抗値を導出するとともに、前記電圧検出部で検出した出力電圧値と前記目標抵抗値とを用いて目標電流値を導出する
ことを特徴とする電圧変換装置。
【請求項2】
入力電圧を所定の出力電圧に変換する電圧変換装置であって、
前記出力電圧が出力される出力端子間に接続されて前記出力電圧が印加される半導体スイッチと、
前記出力端子間の出力電圧値を検出する電圧検出部と、
前記半導体スイッチに流れる電流値を検出する電流検出部と、
前記電圧検出部で検出した出力電圧値に対応する目標電流値を導出する目標電流値設定部と、
前記電流検出部で検出した電流値が、前記目標電流値に近づくように前記半導体スイッチのオン抵抗を制御する半導体スイッチ制御部と
を備え、
前記電圧検出部で検出した出力電圧値に対応する目標電流値が記憶された記憶部を更に備え、
前記目標電流値設定部は、前記記憶部を参照することによって、前記電圧検出部で検出した出力電圧値に対応する目標電流値を導出する
ことを特徴とする電圧変換装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の電圧変換装置と、
該電圧変換装置から出力された直流電圧を交流電圧に変換して出力するRF出力装置と
を備えた高周波電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変換装置、プラズマ発生用の高周波電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DCDCコンバータ等の電圧変換装置は、出力電圧が低い場合に、当該スイッチング電源装置の動作を安定させるため、出力端子間に定抵抗が設けられる場合がある。
【0003】
図5は、出力端子間に定抵抗が設けられた電圧変換装置50の一例(従来技術)である。
図5の電圧変換装置50は、直流電源部11、第2半導体スイッチ12 (以下、第2FET12)、ダイオード13、インダクタ14、平滑コンデンサ15及び第2FET12の制御を行う第2FET制御部21を含み、直流電源部11から印加された直流電圧を降圧し、降圧した直流の出力電圧を負荷S3‘に供給する非同期整流方式の降圧型DCDCコンバータである。
【0004】
電圧変換装置50は、更に、第1半導体スイッチ51(以下、第1FET51)、抵抗52、電圧変換装置50の出力電圧の電圧値(出力電圧値)を検出する電圧検出部17及び第1FET51の制御を行う第1FET制御部53を備えている。なお、
図5の電圧変換装置50のように、出力端子間に半導体スイッチ及び抵抗を備えた技術を記載した文献としては、例えば、特許文献1がある。
【0005】
図5の電圧変換装置50では、出力電圧が低く、負荷S3‘のインピーダンスが高いと、出力電流が小さくなって動作が安定し難くなる。そのため、出力電圧が低い場合には、第1FET51をオンにして、抵抗52にも電流が流れるようにする。これにより電圧変換装置50の安定動作を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、
図5の電圧変換装置50では、抵抗52の抵抗値は、固定値である。また、第1FET51のオン抵抗値も略一定値である。そのため、第1FET51がオンとなる領域では、電圧変換装置50の出力電圧が高くなるに従って、損失電力が大きくなる。また、第1FET51をオンさせるか否かの出力電圧の闇値の前後で、急激に抵抗値が変化することになる。すなわち、電圧変換装置50から見た負荷S3‘のインピーダンス
が急変するので、安定性の面で問題が生じる。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされるものであり、出力端子間に出力電圧に応じた抵抗値を有する可変抵抗を備えた電圧変換装置等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る電圧変換装置は、入力電圧を所定の出力電圧に変換する電圧変換装置であって、前記出力電圧が出力される出力端子間に接続されて前記出力電圧が印加される半導体スイッチと、前記出力端子間の出力電圧値を検出する電圧検出部と、前記半導体スイッチに流れる電流値を検出する電流検出部と、前記電圧検出部で検出した出力電圧値に対応する目標電流値を導出する目標電流値設定部と、前記電流検出部で検出した電流値が、前記目標電流値に近づくように前記半導体スイッチのオン抵抗を制御する半導体スイッチ制御部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本態様にあたっては、出力端子間に接続されて前記出力電圧が印加される半導体スイッチを出力電圧に応じた抵抗値を有する可変抵抗として機能させることができる。
【0011】
本開示の一態様に係る電圧変換装置は、前記電圧検出部で検出した出力電圧値に対応する目標抵抗値が記憶された記憶部を更に備え、前記目標電流値設定部は、前記記憶部を参照することによって、前記電圧検出部で検出した出力電圧値に対応する目標抵抗値を導出するとともに、前記電圧検出部で検出した出力電圧値と前記目標抵抗値とを用いて目標電流値を導出することを特徴とする。
【0012】
本態様にあたっては、前記電圧検出部で検出した出力電圧値に対応する目標抵抗値が記憶された記憶部を備えているので、電圧変換装置の出力端子間の抵抗値を、電圧変換装置の出力電圧値に応じて調整することができる。しかも、その抵抗値を自在に定めることができるので、電圧変換装置の出力電圧値に適した抵抗値にすることができる。
【0013】
本開示の一態様に係る電圧変換装置は、前記電圧検出部で検出した出力電圧値に対応する目標電流値が記憶された記憶部を更に備え、前記目標電流値設定部は、前記記憶部を参照することによって、前記電圧検出部で検出した出力電圧値に対応する目標電流値を導出することを特徴とする。
【0014】
本態様にあたっては、前記電圧検出部で検出した出力電圧値に対応する目標電流値が記憶された記憶部を備えているので、電圧変換装置の出力端子間の抵抗値を、電圧変換装置の出力電圧値に応じて調整することができる。その際、記憶部に出力電圧値に対応する目標抵抗値を記憶する場合に比べて、出力電圧値と目標抵抗値とを用いて目標電流値を導出する過程を省略することができる。
【0015】
本開示の一態様に係るプラズマ発生用の高周波電源装置は、本開示の一態様に係る電圧変換装置と、該電圧変換装置から出力された直流電圧を交流電圧に変換して出力するRF出力装置とを備える。
【0016】
本態様にあたっては、高周波電源装置(プラズマ発生用の高周波電源装置)は、本開示の一態様に係る電圧変換装置と該電圧変換装置から出力された直流電圧を交流電圧に変換して出力するRF出力装置とを備える。従って、電流制御部を出力電圧に対して適切な抵抗値を有する可変抵抗として機能させることによって、例えば、損失を低減できるプラズマ発生用の高周波電源装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、出力端子間に接続されて前記出力電圧が印加される半導体スイッチを出力電圧に応じた抵抗値を有する可変抵抗として機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態1に係るプラズマ制御システムの一構成例を示す模式図である。
【
図2】実施形態1に係る電圧変換装置の一構成例を示す模式的回路構成図である。
【
図3】電流制御部による処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】記憶部に記憶されている抵抗テーブルの説明図である。
【
図5】出力端子間に定抵抗が設けられた電圧変換装置の一構成例(従来技術)を示す模式的回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に関する電圧変換装置1は、例えば、プラズマ制御システムS等の高圧電源装置の構成部位と一つして用いられるものであり、以下にその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。なお、簡略化のため、従来技術と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0020】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るプラズマ制御システムSの一構成例を示す模式図である。プラズマ制御システムSは、半導体整合プロセスにおけるエッチング等のプラズマ処理を行う場合に用いられ、例えば、プラズマ負荷S3、整合器S2、及び高周波電源装置S1を含む。
【0021】
プラズマ負荷S3は、プラズマが発生するプラズマチャンバー(図示せず)を備え、高周波電源装置S1から供給された高周波電力によって、当該プラズマチャンバー内でプラズマを発生させ、半導体整合プロセスにおけるエッチング等のプラズマ処理を行う。
【0022】
整合器S2は、高周波電源装置S1とプラズマ負荷S3との間に介装されている。整合器S2は、例えば、高周波電源装置S1の出力インピーダンスと、高周波電源装置S1の出力端又は当該出力端と同等の箇所である整合器S2の入力端からプラズマ負荷S3側を見た負荷側インピーダンスとが整合するように、内部の可変コンデンサ(図略)の容量値を調整する装置である。この整合器S2の機能によって、プラズマ負荷S3からの反射電力の抑制を行うことができる。なお、整合器S2は必須の構成でなく、プラズマ負荷S3と高周波電源装置S1とを直結してもよい。
【0023】
高周波電源装置S1は、例えば、2MHz、13.56MHz、27MHz又は60MHz等のRF帯(Radio Frequency)の高周波電圧(高周波電力)を出力する交流電源であり、出力インピーダンスは、例えば50Ω等の所定の値に設定されている。この高周波電源装置S1は、入力された直流電圧を所定の直流電圧に変換し出力する電圧変換装置1と、電圧変換装置1が出力した出力電圧を、例えばインバータ回路(図示せず)によって所定の高周波交流電圧(RF電圧)に変換して出力するRF出力装置S11(RF電源)とを含む。
なお、このような高周波電源装置S1では、例えば出力端における電力値が所望の電力値になるように制御されるので、以下では、電圧ではなく電力を制御量として記載している箇所がある。
【0024】
図2は、実施形態1に係る電圧変換装置1の一構成例を示す模式的回路構成図である。電圧変換装置1は、直流電源部11、第2半導体スイッチ12(以下、第2FET12)、ダイオード13、インダクタ14、平滑コンデンサ15及び第2FET12の制御を行う第2FFT制御部21を含み、直流電源部11から印加された直流電圧を降圧し、降圧した直流の出力電圧を負荷S3‘に供給する非同期整流方式の降圧型DCDCコンバータである。なお、
図2では、
図1に示したRF出力装置S11及び整合器S2を省略している。すなわち、
図2では、電圧変換装置1よりも後段の構成を負荷S3‘としている。
【0025】
電圧変換装置1は、更に、出力端子間(正極側出力端子101と負極側出力端子102との間)に接続された第1半導体スイッチ16(以下、第1FET16)、電圧変換装置1の出力電圧の電圧値(出力電圧値)を検出する電圧検出部17、第1FET16に流れる電流を検出する電流検出部18及び第1FET16の制御を行う電流制御部30を備えている。
【0026】
直流電源部11は、例えば、商用の交流電源を変圧した後に全波整流し平滑した直流電源又は大容量蓄電池等である。
【0027】
第2FET12は、例えばnチャネル型MOSFETであり、第2FFT制御部21からの制御に関する信号が、ゲート端子に入力される。第2FET12は、ドレインを直流電源部11の正極側に向けて、直流電源部11の正極側とインダクタ14との間に介装され、インダクタ14と直列に接続されている。
【0028】
ダイオード13は、アノードを直流電源部11の正極側に向けて、第2FET12とインダクタ14との接続接点から分岐させてインダクタ14と並列に接続されている。
【0029】
平滑コンデンサ15は、インダクタ14の負荷側端子と直流電源部11の負極側出力端子との間に介装され、ダイオード13とはインダクタ14を介して並列に接続されている。平滑コンデンサ15は、負荷S3と並列に接続してあり平滑した直流電圧を負荷S3‘に出力する。
【0030】
第1FET16は、例えばnチャネル型MOSFETであり、電流制御部30(第1FET制御部33)からの制御に関する信号が、ゲート端子に入力される。第1FET16は、ドレインを直流電源部11の正極側に向けて、電圧変換装置の出力端子間に接続さている。また、第1FET16は、ゲート端子に入力される電圧値を制御することにより、主に線形領域で使用できるため、オン抵抗値を調整できる。
【0031】
電圧検出部17は、例えばシャント抵抗、ホール素子等による電圧検出手段又は電圧計を含み、平滑コンデンサ15で平滑された出力電圧の電圧値(出力電圧値)を検出し、電流制御部30(目標電流値設定部31)に出力する。なお、電圧検出部17で検出した出力電圧値を第2FFT制御部21に出力してもよい。また、電圧検出部17は、ローパスフィルタを含むものであってもよい。
【0032】
電流検出部18は、例えばシャント抵抗、オール素子等による電流検出手段又は電流計を含み、第1FET16が電流制御部30の第1FET制御部33によってオンにされることによって、第1FET16のドレインからソースに流れるドレイン電流の電流値を検出し、電流制御部30に出力する。
【0033】
また、
図2では、負荷S3‘(例えばプラズマ負荷S3)に供給される電力値を電力検出部24によって検出し、検出した電力値(検出電力値)を第2FFT制御部21に入力する構成を例示している。
なお、検出対象となる電力値がプラズマ負荷S3に供給される高周波電力の電力値の場合、通常は、高周波電源装置S1から出力されてプラズマ負荷S3側に向かう進行波電力が検出対象となるが、進行波電力から反射波電力を減じた負荷側電力を検出対象としてももよい。このような場合、電力検出部24は、例えば、プラズマ負荷S3の近傍に設けられるが、これに限定されない。例えば、RF出力装置S11の出力端、整合器S2の入力端又は整合器S2の出力端の近傍に設けることがある。
【0034】
第2FFT制御部21は、例えばPID制御等のフィードバック制御を行うことによって、電力検出部24によって検出された電力値が、目標電力値設定部22によって設定される目標電力値に近づくように、第2FET12のオンオフ制御を行う。
具体的には、検出された電力値が目標電力値よりも小さい場合は、電圧変換装置1から出力する電圧の電圧値が大きくなるように、第2FET12のオンオフ制御を行う。例えば、PWM制御における第2FET12のオン時間の割合を大きくする。
反対に、検出された電力値(検出電力値)が目標電力値よりも大きい場合は、電圧変換装置1から出力する電圧の電圧値を小さくする。例えば、PWM制御における第2FET12のオン時間の割合を小さくする。
電圧変換装置1を
図1に示したプラズマ制御システムSに適用する場合、RF出力装置S11から出力される高周波電力の電力値は、電圧変換装置1から出力される電圧値に基づいて定まる。そのため、電圧変換装置1の出力電圧値を制御することによって、プラズマ負荷S3に供給される高周波電力の電力値を所望の値に制御することができる。
なお、電圧変換装置1における第2FET12の制御方法は上記に限定されない。例えば、電圧検出部17によって検出された電圧変換装置1の出力端における電圧値が、目標電圧値設定部23によって設定された目標電圧値と等しくなるように、第2FET12のオンオフ制御を行うようにしてもよい。目標電力値設定部22及び目標電圧値設定部23は、高周波電源装置S1内に設けてもよいし、外部装置に設けてもよい。
【0035】
電流制御部30は、目標電流値設定部31、記憶部32及び第1FET制御部33を含む。目標電流値設定部31は、電圧検出部17が検出した電圧値(出力電圧値)を入力し、この出力電圧値に対応する目標電流値を記憶部32から読み出し、目標電流値を演算して出力する。目標電流値は、目標とするドレイン電流値であり、オームの法則により、出力電圧値/目標抵抗値によって演算することができる。
【0036】
第1FET制御部33は、MPU(Micro-processing unit)、システムLSI(Large-Scale Integration)又はFPGA(field-programmable gate array)を含み、種々の制御処理及び演算処理等を行う。第1FET制御部33は、目標電流値設定部31から出力された目標電流値と電流検出部18から出力された検出電流値とを入力し、検出電流値が目標電流値に近づくように、第1FET16のゲート端子に印加するゲート電圧の増減を行う。
例えば、検出電流値が目標電流値よりも小さい場合は、検出電流値を大きくするように、すなわち、電圧変換装置1の出力端子間の抵抗値が低くなるように、第1FET16のゲート端子に印加するゲート電圧を高くする。
反対に、検出電流値が目標電流値よりも大きい場合は、検出電流値を小さくするように、すなわち、電圧変換装置1の出力端子間の抵抗値が高くなるように、第1FET16のゲート端子に印加するゲート電圧を低くする。
上記のように制御することにより、第1FET16を電圧変換装置1の出力電圧値に対応した抵抗値を有する可変抵抗として機能させることができる。
【0037】
図3は、電流制御部30による処理手順を示すフローチャートである。電流制御部30は、例えば自身の記憶領域(記憶部32)に記憶されているプログラムを実行することによって、以下に示す処理を開始する。
【0038】
電流制御部30の第1FET制御部33は、第1FET16の制御を開始する(S11)。第1FET制御部33は、第1FET16のオンオフの制御をするにあたり、例えば初期値として予め定められている所定のゲート電圧をゲート端子に印加して、第1FET16をオンにする。又は、第1FET制御部33は、第2FFT制御部21と通信等することによって負荷S3‘に供給すべき目標電力値に基づいて定まる電圧変換装置1の出力端の目標電圧値を取得し、当該目標電圧値に基づいてゲート電圧を決定してもよい。第1FET制御部33が第1FET16をオンにすることによって、第1FET16にドレイン電流が流れる。
【0039】
目標電流値設定部31は、電圧検出部17が検出した出力電圧値を入力する(S12)。目標電流値設定部31は、記憶部32に記憶されている抵抗テーブルを参照し、入力した出力電圧値に対応する目標抵抗値を導出する(S13)。
【0040】
目標電流値設定部31は、導出した目標抵抗値及び入力した出力電圧値に基づき、目標電流値を導出する(S14)。なお、抵抗テーブルは後述する
図4Aに示すように、出力電圧値と当該出力電圧値に対応する目標抵抗値との関係を定めるものであるが、抵抗テーブルに換えて、後述する
図4Bに示すような出力電圧値に対応した目標電流値との関係を定めたテーブルを用いて、出力電圧値から目標電流値を導出してもよい。
【0041】
第1FET制御部33は、目標電流値設定部31で導出した目標電流値と電流検出部18が検出したドレイン電流値とを入力し、両者の偏差を導出する(S15)。当該偏差は、例えば目標電流値からドレイン電流値を減算することによって導出する。
【0042】
第1FET制御部33は、当該偏差が0であるか否かを判定する(S16)。当該偏差が0である場合(S16:YES)、第1FET制御部33は再度S12の処理を実行すべく、ループ処理を行う。
【0043】
当該偏差が0でない場合(S16:NO)、第1FET制御部33は、ドレイン電流値が目標電流値よりも小さいか否かを判定する(S17)。ドレイン電流値が目標電流値よりも小さい場合(S17:YES)、第1FET制御部33は第1FET16に印加するゲート電圧を増加させる(S171)。これにより、第1FET16の抵抗値が小さくなり、ドレイン電流値が大きくなる。
【0044】
ドレイン電流値が、目標電流値よりも小さくない場合(S17:NO)、すなわちドレイン電流値が目標電流値よりも大きい場合、第1FET制御部33は第1FET16に印加するゲート電圧を減少させる(S172)。これにより、第1FET16の抵抗値が大きくなり、ドレイン電流値が小さくなる。
【0045】
S171又はS172の処理を行った後、電流制御部30は、再度S12の処理を実行すべくループ処理を行う。
【0046】
次に、
図4を参照して、電流制御部30の機能を説明する。
図4は、記憶部32に記憶されている抵抗テーブルの説明図である。
図4Aは、出力電圧値(横軸)に対応する抵抗値(縦軸)の一例である。
図4Bは、出力電圧値(横軸)に対応するドレイン電流値(縦軸)の一例であり、
図4Aを変換したものである。
図4Cは、出力電圧値(横軸)に対応する損失電力値(縦軸)の一例であり、
図4Aを変換したものである。
【0047】
記憶部32は、RAM(Random access memory)又はROM(Read Only Memory)等により構成され、記憶部32には、電圧変換装置1の出力電圧値(出力端子間電圧)に適した抵抗値(以下、目標抵抗値)が、抵抗テーブルとして記憶されている。
【0048】
抵抗テーブルは、例えば、
図4Aに示すような特性を有しており、
図4Aに示すごとく、横軸を電圧変換装置1の出力電圧値(出力端子間電圧)、縦軸を対数による抵抗値として、グラフ形式で表すことができる。この
図4Aに示すように、出力電圧値に対応する目標抵抗値は、出力電圧値の上昇に応じて高くしている。出力電圧値と対応する目標抵抗値との関係は、電圧変換装置1の回路構成、回路を構成する各素子の特性等に基づいて、適宜決定される。従って、電圧変換装置1の回路構成等に好適な出力電圧値と対応する目標抵抗値との関係を決定し、損失を効率的に低減させることができる。これについて、
図4B及び
図4Cも参照しながら説明する。
【0049】
図4Aに示すように、例えば、出力電圧値が200[V]のときの目標抵抗値は、1,200[Ω]である。そのため、電圧変換装置1の出力端子間の抵抗値を目標抵抗値である1,200[Ω]に調整することができれば、オームの法則により、ドレイン電流値は、0.17[A]となる。
また、出力電圧値が800[V]のときの目標抵抗値は、80,000[Ω]である。そのため、電圧変換装置1の出力端子間の抵抗値を目標抵抗値である800[Ω]に調整することができれば、オームの法則により、ドレイン電流値は、0.01[A]となる。
そのため、
図4Bのような出力電圧値に対するドレイン電流値の特性が得られる。
【0050】
上記の例では、出力電圧値が約4倍(800/200=4)に上昇する際に、目標抵抗値は100倍(80000/800=100)になる。
すなわち、出力電圧値の上昇に伴い、目標抵抗値は大幅に大きくなる。そのため、
図4Bに示すように、出力電圧値の上昇に伴い、ドレイン電流が大幅に小さくなる特性を示す。このときの第1FET16の損失Wは、出力電圧値をV、目標抵抗値をRとすると、損失Wは、V2/Rで表されるので、
図4Cのような出力電圧値に対する損失特性が得られる。すなわち、出力電圧値に対する目標抵抗値を適宜定めることによって、損失を調整できることが分かる。
【0051】
上述したように、出力電圧値の上昇率の2乗よりも、目標抵抗値の上昇率の方が大きいと、出力電圧値の上昇に伴い、損失が小さくなっていく。
図4Cに示した例では、出力電圧値が約50~300Vまでの領域では、損失が略一定値となるように目標抵抗値を定め、出力電圧値が約300V以上の領域では、損失が徐々に低下するように目標抵抗値を定めている。
【0052】
なお、損失が略一定値となる領域を「損失一定領域」とすると、「損失一定領域」は、損失が略一定であればよく、所定の範囲(例えば、プラスマイナス5Wの範囲)に収まっていればよい。
また、
図4Cに示した例では、「損失一定領域」と「非損失一定領域」とに分けることができるが、これに限定されない。
すなわち、本実施形態の構成では、電圧変換装置の出力端子間の抵抗値を自在に定めることができるので、損失という観点で、電圧変換装置の出力端子間の抵抗値を定めることができる。
例えば、電圧変換装置の出力電圧値が低い領域においては、
図4Cに示した例よりもドレイン電流を多く流したとしても、損失の絶対値が小さく、装置の許容値に十分収まる場合がある。そのような場合には、制御の応答性を高めるために、敢えて損失を大きくして運用することができる。
【0053】
上記の説明から分かるように、抵抗テーブルに記憶されている出力電圧値に対する目標抵抗値が分かれば、オームの法則により目標とするドレイン電流値(目標電流値)を演算することができる。目標電流値設定部31では、この処理を行い、目標電流値を出力する。
【0054】
なお、記憶部32に記憶されている抵抗テーブル(
図4A)は、離散値であるため、電圧検出部17が検出した出力電圧値に対応する目標抵抗値が記憶されていない場合がある。そのような場合は、記憶されている目標抵抗値を用いて補間演算を行い、電圧検出部17が検出した出力電圧値に対応する目標抵抗値を導出した後、目標電流値を導出すればよい。
もちろん、
図4Bに示すような出力電圧値に対応するドレイン電流の特性を用いる場合も同様に、記憶されている目標電流値を用いて補間演算を行い、電圧検出部17が検出した出力電圧値に対応する目標抵抗値を導出すればよい。
また、補間演算ではなく、関数を用いて記憶されていない目標抵抗値又は目標電流値を
導出するようにしてもよい。
【0055】
次に、本実施形態の電流制御部30の作用効果について説明する。
(1)本実施形態の電流制御部30を用いれば、電圧変換装置の出力端子間の抵抗値を、電圧変換装置1の出力電圧値に応じて調整することができる。しかも、その抵抗値を自在に定めることができるので、電圧変換装置1の出力電圧値に適した抵抗値にすることができる。また、本実施形態では、出力電圧値と目標抵抗値又は目標電流値との対応を示すテーブルを用いることができる。そのため、テーブルを参照するという簡易な方法で、出力電圧値に対応する目標抵抗値又は目標電流値を導出することができる。ひいては、簡易な方法で、電圧変換装置1の出力端子間の抵抗値を、電圧変換装置1の出力電圧値に応じて調整することができる。
【0056】
(2)本実施形態の電流制御部30を用いれば、電圧変換装置1の出力電圧値が高くなるほど、目標抵抗値を大きくすることができる。そのため、電圧変換装置1の出力電圧値が低い領域において、電圧変換装置1の出力電圧値が高くなっても、損失が増加しないように目標抵抗値を定めることができる。
【0057】
(3)本実施形態の電流制御部30を用いれば、電圧変換装置1の出力電圧が大きくなっても(
図3の例では、例えば300V以上)になっても、ドレイン電流が急激な変化(突然0になる等)をしない。そのため、第1FET16の制御によって負荷が急変してしまう恐れを低減できる。これに対して、従来技術では第1FET51をオフさせたときにドレイン電流が0になるので、第1FET51のオン/オフにより、負荷が急変してしまう恐れが高まる。そのため、本発明の方が従来技術よりも安定性の面で優れている。
【0058】
(4)本実施形態の電流制御部30を用いれば、電圧変換装置1の出力電圧が高い領域においても、その出力電圧に応じたドレイン電流が流れる。そして、出力電圧が低い程、ドレイン電流が大きくなっていく。そのため、電圧変換装置1の出力電圧が高い電圧から低い電圧に変動した際には、従来技術に比べて、電圧変換装置1のコンデンサの電荷が放出する時間を短くできる。従って、従来技術よりも応答性が良い。
【0059】
電圧変換装置1は、非同期整流方式の降圧型DCDCコンバータとしたがこれに限定されない。電圧変換装置1は、出力電圧が低い場合に所定の電流を確保する必要があるコンバータを含み、例えば、昇圧コンバータ、昇降圧コンバータ、非反転昇降圧コンバータ、Cukコンバータ、Scpicコンバータ、Zetaコンバータ、フォワードコンバータ、フライバックコンバータ、ハーフブリッジコンバータ、フルブリッジコンバータ、インターリーブ又はマルチフェーズ回路に適用することができる。
【0060】
また、上記の実施形態では、出力端子間に可変抵抗として機能する第1FET16を設けたが、この構成に限定されない。例えば、第1FET16と直列に抵抗を接続してもよい。その場合は、第1FET16と直列に接続した抵抗との合成抵抗値が、所望の抵抗値になるように、第1FET16を制御すればよい。
【0061】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
S プラズマ制御システム、S1 高周波電源装置、S11 RF出力装置、S2 整合器、S3 プラズマ負荷(負荷)、S3‘ 負荷、1 電圧変換装置(DCDCコンバータ)、11 直流電源部、12 第2FET(第2半導体スイッチ)、13 ダイオード、14 インダクタ、15 平滑コンデンサ、16 第1FET(第1半導体スイッチ)、17 電圧検出部、18 電流検出部、21 第2FET制御部、22 目標電力値設定部、23 目標電圧値設定部、24 電力検出部、30 電流制御部、31 目標電流値設定部、32 記憶部、33 第1FET制御部