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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】建物の給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20221129BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20221129BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20221129BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221129BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 130
H02J3/32
H02J7/35 K
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019077947
(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公開番号】P2020178419
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 涼
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-032419(JP,A)
【文献】国際公開第2017/134773(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/111410(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/165365(WO,A1)
【文献】特開2013-183612(JP,A)
【文献】特開2013-090436(JP,A)
【文献】特開2016-103909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J9/00-11/00
H01M10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電を行う太陽光発電装置と、
電力を蓄える機能を有する蓄電池と、を備え、
商用電源からの電力と、前記蓄電池に蓄えられた電力と、前記太陽光発電装置により発電された電力とを、分電盤を介して建物内の複数の電力供給先に供給可能とする建物の給電システムであって、
前記複数の電力供給先に含まれる特定コンセントと、
前記太陽光発電装置の発電電力を前記分電盤に供給する第1状態と、当該発電電力を前記特定コンセントに供給する第2状態とで切り換えられる切換手段と、
前記商用電源からの電力供給が停止される停電時において、前記発電電力が、建物内で要求される要求消費電力よりも大きい電力余剰状態で、前記発電電力により前記蓄電池を充電する充電制御手段と、
前記充電制御手段による前記蓄電池の充電時に前記蓄電池が満充電になったか否かを判定する満充電判定手段と、
前記満充電判定手段により前記蓄電池が満充電になっていないと判定された場合に、前記切換手段を前記第1状態にする一方、前記満充電判定手段により前記蓄電池が満充電になったと判定された場合に、前記切換手段を前記第1状態から前記第2状態に切り換える停電時電力制御手段と、
を備えることを特徴とする建物の給電システム。
【請求項2】
前記停電時電力制御手段は、前記満充電判定手段により前記蓄電池が満充電になっていないと判定された場合に、前記特定コンセントに対して前記分電盤から電力を供給する一方、前記満充電判定手段により前記蓄電池が満充電になったと判定された場合に、前記特定コンセントに対して前記太陽光発電装置から電力を供給する請求項1に記載の建物の給電システム。
【請求項3】
前記停電時電力制御手段は、前記満充電判定手段により前記蓄電池が満充電になったと判定された場合に、前記蓄電池を充電状態から放電状態に切り換える請求項1又は2に記載の建物の給電システム。
【請求項4】
前記停電時電力制御手段は、前記満充電判定手段により前記蓄電池が満充電になったと判定された後、当該蓄電池の放電に伴う充電量の低下に応じて、前記発電電力による前記蓄電池の充電を再開する請求項3に記載の建物の給電システム。
【請求項5】
通知手段によるユーザへの通知を制御する通知制御手段を備え、
前記通知制御手段は、前記停電時電力制御手段により前記切換手段が前記第1状態から前記第2状態に切り換えられる前に、前記特定コンセントに接続されている電気負荷が瞬断される旨を前記通知手段により通知する請求項1~4のいずれか1項に記載の建物の給電システム。
【請求項6】
前記通知制御手段は、前記停電時電力制御手段により前記切換手段が前記第1状態から前記第2状態に切り換えられる場合に、前記特定コンセント以外のコンセントに接続されている電気負荷を前記特定コンセントに接続するよう前記通知手段により通知する請求項5に記載の建物の給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅等の建物において、太陽光の照射により発電を行う太陽光発電装置と、電力を蓄電する蓄電池とを備えた給電システムが提案されている。この給電システムでは、通常時は、商用電源と太陽光発電装置との系統連系運転を行っているが、太陽光発電装置により発電された電力により建物内の各電気負荷(家電機器や照明器具等)の電力がまかなえる場合には太陽光発電装置の自立運転を行うことができる。この場合、太陽光発電装置による発電電力が建物内の各電気負荷に供給されるだけではなく、余剰の電力がある場合にはその電力を蓄電池に蓄えたり、売電したりすることが可能となっている。
【0003】
ところで、停電時の自立運転においては、太陽光発電装置の発電する電力が売電できない。そのため、蓄電池が満充電となると、各電気負荷に供給後の余剰の電力の行き場がないため蓄電池の直流過電圧が生じ、結果としてこれにより自立運転(システム)が停止し、各電気負荷に対しても停電となってしまう。この事態を回避するために、例えば、特許文献1では、蓄電池の充電量に基づいて太陽光発電装置による発電を停止又は再開する自立運転システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-60839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献1の技術では、蓄電池の充電量に基づき、発電できる環境下にある太陽光発電装置を停止することになり、エネルギーの観点で効率的ではない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、停電時において、太陽光発電装置により発電される電力を効率的に活用することができる建物の給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明は、
太陽光発電を行う太陽光発電装置と、
電力を蓄える機能を有する蓄電池と、を備え、
商用電源からの電力と、前記蓄電池に蓄えられた電力と、前記太陽光発電装置により発電された電力とを、分電盤を介して建物内の複数の電力供給先に供給可能とする建物の給電システムであって、
前記複数の電力供給先に含まれる特定コンセントと、
前記太陽光発電装置の発電電力を前記分電盤に供給する第1状態と、当該発電電力を前記特定コンセントに供給する第2状態とで切り換えられる切換手段と、
前記商用電源からの電力供給が停止される停電時において、前記発電電力が、建物内で要求される要求消費電力よりも大きい電力余剰状態で、前記発電電力により前記蓄電池を充電する充電制御手段と、
前記充電制御手段による前記蓄電池の充電時に前記蓄電池が満充電になったか否かを判定する満充電判定手段と、
前記満充電判定手段により前記蓄電池が満充電になっていないと判定された場合に、前記切換手段を前記第1状態にする一方、前記満充電判定手段により前記蓄電池が満充電になったと判定された場合に、前記切換手段を前記第1状態から前記第2状態に切り換える停電時電力制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
太陽光発電装置を備える建物の給電システムでは、商用電源からの電力供給が停止される停電時において、太陽光発電装置の余剰電力(発電電力から建物内での要求消費電力を差し引いた余剰分)により蓄電池の充電が可能となっている。かかる構成において、蓄電池の充電時に、蓄電池が満充電になったか否かを判定し、蓄電池が満充電になっていなければ、太陽光発電装置の発電電力を分電盤を介して蓄電池に供給すべく、切換手段を第1状態にするようにした。また、蓄電池が満充電になっていれば、太陽光発電装置の電力を分電盤を介さずに特定コンセントに供給すべく、切換手段を第2状態に切り換えるようにした。
【0009】
これにより、停電時において、蓄電池が満充電であることにより蓄電池の充電が停止される場合にあっても、太陽光発電装置の発電電力を特定コンセント側に供給することで、当該発電電力を無駄にすることなく利用することが可能となる。このとき、太陽光発電装置の電力供給先を特定コンセントとすることで、電力供給先を特定のものに制限しつつ、好適な電力供給を実施できる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、
前記停電時電力制御手段は、前記満充電判定手段により前記蓄電池が満充電になっていないと判定された場合に、前記特定コンセントに対して前記分電盤から電力を供給する一方、前記満充電判定手段により前記蓄電池が満充電になったと判定された場合に、前記特定コンセントに対して前記太陽光発電装置から電力を供給することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、停電時に太陽光発電装置の余剰電力により蓄電池の充電が実施される場合に、蓄電池が満充電になる前後において、特定コンセントに対する電力供給として、分電盤からの電力供給と太陽光発電装置からの電力供給とが継続的に実施される。これにより、特定コンセントに対する適切な電力供給を実現できる。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記停電時電力制御手段は、前記満充電判定手段により前記蓄電池が満充電になったと判定された場合に、前記蓄電池を充電状態から放電状態に切り換えることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、停電時において、蓄電池が満充電になった後には、蓄電池の放電による電力供給により電気負荷の駆動が可能となる。この場合、蓄電池の満充電判定の後において、特定コンセントに接続された電気負荷は太陽光発電装置からの電力供給により駆動され、それ以外の電気負荷は、蓄電池からの電力供給により駆動される。これにより、特定コンセントに接続された電気負荷、及びそれ以外の電気負荷への電力供給を好適に分担して実施できる。
【0014】
第4の発明は、第3の発明において、
前記停電時電力制御手段は、前記満充電判定手段により前記蓄電池が満充電になったと判定された後、当該蓄電池の放電に伴う充電量の低下に応じて、前記発電電力による前記蓄電池の充電を再開することを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、停電時において、蓄電池の充電量が放電により低下しても、再び太陽光発電装置の余剰電力による再充電が可能となる。
【0016】
第5の発明は、第1~第4のいずれかの発明において、
通知手段によるユーザへの通知を制御する通知制御手段を備え、
前記通知制御手段は、前記停電時電力制御手段により前記切換手段が前記第1状態から前記第2状態に切り換えられる前に、前記特定コンセントに接続されている電気負荷が瞬断される旨を前記通知手段により通知することを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、ユーザは、切換手段が第1状態から第2状態に切り換えられる前、すなわち太陽光発電装置の発電電力が分電盤に供給されている状態から同発電電力が特定コンセントに供給される状態に切り換えられる前に、特定コンセントに接続された電気負荷が瞬断される可能性があることを知ることができる。これにより、瞬断により動作に不都合が生じる電気負荷が特定コンセントに接続されている場合に、瞬断前にその電気負荷の電源をいったん切る等の事前の対応や、瞬断後に再起動する等の事後の対応が可能となる。よって、利便性の向上を図ることができる。
【0018】
第6の発明は、第5の発明において、
前記通知制御手段は、前記停電時電力制御手段により前記切換手段が前記第1状態から前記第2状態に切り換えられる場合に、前記特定コンセント以外のコンセントに接続されている電気負荷を前記特定コンセントに接続するよう前記通知手段により通知することを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、太陽光発電装置の発電電力が特定コンセントに供給される状態となる場合に、特定コンセント以外のコンセント(一般コンセント)に接続されている電気負荷を特定コンセントに接続するよう通知される。特定コンセントには太陽光発電装置により発電された電力が供給されるため、特定コンセントの活用を促すことにより太陽光発電装置により発電される電力を最大限で活用し、かつ蓄電池に蓄えられた電力の消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】建物の給電システムの概略を示す全体構成図。
図2】停電時給電処理を示すフローチャート。
図3】停電時給電処理をより具体的に示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、住宅等の建物において商用電源からの電力と、蓄電池に蓄えられた電力と、太陽光発電装置により発電された電力とを選択的に用いて、各種電気機器の駆動を可能とするものとしている。図1は、本実施形態における給電システムの概略を示す全体構成図である。
【0022】
図1に示すように、建物10には分電盤11が設けられており、分電盤11には、建物10に電力を供給する電力源の切換を行う第1切換装置12が接続されている。第1切換装置12は、商用電源13が接続された電力供給状態である系統連系状態と、商用電源13が切り離された電力供給状態である自立運転状態とを切り換える切換装置であり、分電盤11との接続を、A点及びB点のいずれかで切り換えるものとなっている。第1切換装置12においてA点には、商用電源13から商用電力を供給する引き込み線14が接続されるとともに、電力変換装置15を介して、自動車16に搭載された蓄電池17が接続されており、第1切換装置12がA点側に切換操作されることにより系統連系運転が行われる。また、第1切換装置12のB点には、電力変換装置15を介して自動車16の蓄電池17が接続されており、第1切換装置12がB点側に切換操作されることにより自立運転が行われる。
【0023】
自動車16は、例えば電気自動車、又は外部充電機能を有するハイブリッド自動車(いわゆるプラグインハイブリッド車)であり、蓄電池17に蓄えられた電力を用いて車両動力源であるモータを駆動させ、走行可能となっている。また、電力変換装置15は、直流電力と交流力との変換を行うACDC変換器であり、電力変換装置15と蓄電池17とがケーブル18を介して接続された状態において、電力変換装置15を介して蓄電池17の充放電が行われる。
【0024】
第1切換装置12において分電盤11がA点に接続された状態(図示の状態)が通常状態であり、かかる状態では、商用電力が分電盤11に供給されるとともに、商用電力による蓄電池17の充電が可能となっている。これに対して、商用電源13からの電力供給が停止される停電時には、第1切換装置12において、分電盤11との接続位置がA点からB点に切換操作される。これにより、蓄電池17に蓄えられた電力を分電盤11に供給することが可能となっている。なお、第1切換装置12においてA点の接続(A接続)とB点の接続(B接続)との切換はユーザによる手動操作により行われる。
【0025】
また、建物10には、太陽光発電装置21が設けられている。太陽光発電装置21は、建物10の屋根等に設置されたソーラパネル22を有しており、ソーラパネル22に太陽光が照射されることにより発電を行い、発電電力(以下、PV電力という)を出力する。太陽光発電装置21から出力されるPV電力は、第2切換装置23を介して分電盤11に供給される。第2切換装置23は、太陽光発電装置21との接続を、C点及びD点のいずれかで切り換えるものとなっている。通常時においては、第2切換装置23がC点の接続(C接続)となっており、分電盤11に太陽光発電装置21が接続されている。なお、D点の接続(D接続)への切換については後述する。
【0026】
建物10において、分電盤11には、電力供給先として各種の電気負荷や各種コンセントである複数の電気機器31が接続されている。これら各電気機器31には、分電盤11から電力が供給され、その電力により各種の電気負荷が駆動される。本実施形態では、停電の生じていない通常時において、商用電力とPV電力とが分電盤11に供給され、それら商用電力やPV電力により電気負荷が駆動される。
【0027】
建物10において、複数の電気機器31には、一般コンセントとは別に特定コンセント32が含まれている。特定コンセント32は、停電時においてPV電力が優先的に供給される非常用コンセントである。特定コンセント32には、第3切換装置33を介して分電盤11から電力が供給される。第3切換装置33は、特定コンセント32への電力供給を、分電盤11から行わせるか、太陽光発電装置21から直接的に行わせるかを切り換えるものであり、第3切換装置33がE点の接続(E接続)になっていることで分電盤11から特定コンセント32に電力が供給され、第3切換装置33がF点の接続(F接続)になっていることで太陽光発電装置21から特定コンセント32に電力が供給される。
【0028】
特定コンセント32に対して太陽光発電装置21から直接的に電力供給が行われる場合には、第2切換装置23がD接続、第3切換装置33がF接続となる状態に操作される。これにより、太陽光発電装置21で生じるPV電力は、分電盤11に供給されることなく、特定コンセント32のみに供給される。
【0029】
通常時において第2切換装置23がC接続となっている状態が、PV電力を分電盤11に供給する第1状態に相当し、停電時において第2切換装置23がD接続、かつ第3切換装置33がF接続となっている状態が、PV電力を特定コンセント32に供給する第2状態に相当する。また、第2切換装置23及び第3切換装置33が切換手段に相当する。なお、通常時において、特定コンセント32を使用可能にするには第3切換装置33をE接続とする。
【0030】
本給電システムは、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータからなるコントローラ40と、建物10内のユーザへの通知を行うための表示装置41とを備えている。コントローラ40は、建物10における電力使用の状態を制御する電力制御機能を有しており、通常時と停電時とにおいてそれぞれ電力制御を実施する。コントローラ40には、例えば建物10内での各種電気機器による消費電力情報や停電情報、太陽光発電による発電情報、蓄電池17の充電状態情報が適宜入力される。コントローラ40は、通常時及び停電時において、上記のとおり入力される各種情報に基づいて、第2切換装置23や第3切換装置33の切換制御を実施する。
【0031】
なお、これら各種情報を取得するための構成は周知であるため、ここではその構成例を簡単に説明する。分電盤11には消費電力を検知する電力センサや、停電の発生を検知する停電検知部が設けられており、それらの検知情報がコントローラ40に入力される。太陽光発電装置21又はそれに付随する装置にはPV電力を検知する電力センサが設けられており、その検知情報がコントローラ40に入力される。また、コントローラ40は、自動車16又は電力変換装置15との間での通信を可能とする通信機能を有しており、それら自動車16等から、蓄電池17の充電状態情報として、蓄電池17が満充電になっていることを示す満充電情報や、蓄電池17のSOC(残存容量)情報を受信する。
【0032】
表示装置41は、例えばディスプレイ表示や音声により各種情報をユーザに通知する通知手段に相当するものであり、コントローラ40からの通知指令に基づいて、ユーザへの通知を適宜実施する。なお、コントローラ40及び表示装置41は、例えば建物10内の壁に取り付けられている。
【0033】
停電の生じていない通常時には、第1切換装置12がA接続、第2切換装置23がC接続、第3切換装置33がE接続となっている。この状態では、商用電力による分電盤11に対する電力供給と自動車16の蓄電池17に対する電力供給が行われる。蓄電池17に対する電力供給は、自動車16側からの充電要求に応じて行われるとよい。また、太陽光発電装置21の発電状況に応じて、PV電力が分電盤11に供給される。この場合、PV電力が建物10内で要求される要求消費電力よりも大きければ、その余剰分の電力が売電されるとよく、第1切換装置12及び引き込み線14を介して他の施設等に給送される。
【0034】
また、停電時には、建物10への商用電力の供給が不可となる。そのため、第1切換装置12がB接続に切り換えられ、これにより建物10において自立運転が行われる。この場合、PV電力が建物10内で要求される要求消費電力よりも大きい電力余剰状態であれば、その余剰分の電力により蓄電池17の充電が行われる。
【0035】
停電状態下での蓄電池17の充電時には、蓄電池17が満充電になったか否かが判定され、蓄電池17が満充電になるまで、PV電力が分電盤11に供給される。これにより、PV電力による蓄電池17の充電が行われる。また、蓄電池17が満充電になると、PV電力による蓄電池17の充電が停止されるとともに、切換装置23,33の切換により、PV電力が分電盤11を介さずに特定コンセント32に供給される。
【0036】
次に、建物10において停電が発生した場合、つまり建物10への商用電力の供給が停止された場合において、コントローラ40により実施される停電時給電処理を説明する。図3は、停電時給電処理を示すフローチャートであり、本処理は、停電の発生時において、コントローラ40により所定周期で繰り返し実施される。
【0037】
図2において、ステップS11では、本給電システムが自立運転状態になっているか否かを判定する。具体的には、第1切換装置12がA接続からB接続に切り換えられているか否かを判定する。自立運転状態になっていない場合には、そのまま本処理を終了し、自立運転状態になっていれば、後続のステップS12に進む。
【0038】
ステップS12では、PV電力が建物10内での要求消費電力よりも大きいPV電力余剰状態になっているか否かを判定する。建物10内での要求消費電力は、停電発生時において電源オンになっている電気負荷(使用中の電気負荷)の消費電力の総量として求められるとよい。PV電力余剰状態になっていない場合には、ステップS13に進み、PV電力余剰状態になっている場合には、ステップS14に進む。
【0039】
ステップS13では、建物10内での要求消費電力のうちPV電力を差し引いた電力不足分を蓄電池17からの電力供給で補うべく、蓄電池17の放電を行わせる。このとき、コントローラ40は、電力変換装置15に対して放電指令信号を出力し、電力変換装置15の駆動により蓄電池17から分電盤11に対して放電を行わせるとよい。なお、ステップS13では、蓄電池17の充電量が所定の下限値以上であることを条件に、蓄電池17の放電を行わせるとよい。そして、本処理を終了する。
【0040】
また、ステップS14では、自立運転の開始後において初回の処理であるか否かを判定する。そして、初回の処理であれば、ステップS15に進み、蓄電池17の充電を開始する。つまり、分電盤11から電力(PV電力)を蓄電池17に供給することにより蓄電池17への充電を実施する。その後、本処理を終了する。なお、自立運転の開始後において、PV電力の非余剰状態から余剰状態に移行した場合にもステップS14を肯定するとよい。
【0041】
また、ステップS14で初回でないと判定された場合には、ステップS16に進み、今現在、蓄電池17の充電中であるか否かを判定する。そして、充電中であれば、ステップS17に進む。
【0042】
ステップS17では、蓄電池17が満充電になったか否かを判定する。このとき、コントローラ40は、自動車16等から受信した蓄電池17の満充電情報に基づいて満充電判定を実施するとよい。又は、コントローラ40は、蓄電池17の端子電圧やSOCに対応する充電量が所定の上限値以上になっているか否かにより、満充電になったか否かを判定してもよい。この場合、充電量の上限値は、蓄電池17の満充電に相当する値、又は満充電の相当値よりも僅かに小さい値(例えば、満充電の相当値の90%の値)であるとよい。蓄電池17が満充電になっていなければ、そのまま本処理を終了する。この場合、自立運転状態下での蓄電池17の充電が継続される。
【0043】
また、蓄電池17が満充電になっていれば、ステップS18に進む。ステップS18では、切換装置23,33の切換に関して、ユーザに対して表示装置41による通知を実施する。具体的には、特定コンセント32への電力供給元が分電盤11から太陽光発電装置21に切り換えられること、及びその切換に伴い特定コンセント32に接続されている電気負荷が瞬断される可能性があることを通知する。
【0044】
その後、ステップS19では、特定コンセント32以外の一般コンセントを用いて電気負荷への電力供給を行っている状況であるか否かを判定する。そして、ステップS19が肯定される場合にはステップS20に進み、ユーザに対して、一般コンセントに接続されている電気負荷を特定コンセント32に接続するよう表示装置41による通知を実施する。
【0045】
その後、ステップS21では、分電盤11を介さずにPV電力を特定コンセント32に供給するべく、第2切換装置23と第3切換装置33との切換操作を実施する。すなわち、第2切換装置23がD接続、かつ第3切換装置33がF接続となる状態への切換を実施する。これにより、PV電力が分電盤11に供給される状態(第1状態)から、PV電力が特定コンセント32に供給される状態(第2状態)への切換が行われる。そしてその後、ステップS22では、蓄電池17を充電状態から放電状態に切り換える。
【0046】
また、ステップS16で充電中でないと判定された場合には、ステップS23に進む。ステップS23では、今現在、蓄電池17の放電中であるか否かを判定する。蓄電池17が放電中でなければ、そのまま本処理を終了する。そして、放電中であれば、ステップS24に進む。
【0047】
ステップS24では、蓄電池17の充電量が所定の下限値まで低下したか否かを判定する。蓄電池17の充電量が所定の下限値まで低下していなければ、そのまま本処理を終了する。この場合、蓄電池17の放電が継続される。
【0048】
また、蓄電池17の充電量が所定の下限値まで低下していれば、ステップS25に進む。ステップS25では、分電盤11へのPV電力の供給を再開すべく、第2切換装置23と第3切換装置33との切換操作を実施する。すなわち、第2切換装置23がC接続、かつ第3切換装置33がE接続となる状態への切換を実施する。これにより、PV電力が特定コンセント32に供給される状態(第2状態)から、PV電力が分電盤11に供給される状態(第1状態)への切換が行われる。そしてその後、ステップS26では、蓄電池17を放電状態から充電状態に切り換える。
【0049】
図3は、停電時給電処理をより具体的に示すタイムチャートである。なお、図3では、図示する全期間において、PV電力が建物10内での要求消費電力よりも大きいPV電力余剰状態になっているとしている。
【0050】
図3において、時刻t1以前は、停電が生じていない通常状態となっており、その通常状態では、第1切換装置12がA接続、第2切換装置23がC接続、第3切換装置33がE接続の状態となっている。またこのとき、電力変換装置15にケーブル18を介して自動車16の蓄電池17が接続されており、蓄電池17の充電が行われている。ただし、時刻t1以前において、蓄電池17の充放電が行われていない状態であってもよい。
【0051】
そして、時刻t1で停電が生じると、時刻t2で、ユーザの操作により第1切換装置12がA接続の状態からB接続の状態に切り換えられ、これにより給電システムが自立運転状態に移行する。なお、停電には、災害等により商用電源13からの電力供給が停止される場合以外に、ユーザによる自発的な第1切換装置12の切換操作により商用電源13からの電力供給が停止される場合が含まれる。
【0052】
時刻t2以降において、PV電力が分電盤11に供給され、そのPV電力により建物10内の電気機器31が駆動される。また、PV電力により蓄電池17の充電が行われ、それに伴い蓄電池17の充電量が増加する。
【0053】
その後、時刻t3で、蓄電池17の充電量が上限値に達して満充電になると、蓄電池17の充電が停止される。このとき、第2切換装置23がC接続の状態からD接続の状態に切り換えられるとともに、第3切換装置33がE接続の状態からF接続の状態に切り換えられる。これにより、各電気機器31のうち特定コンセント32には太陽光発電装置21からPV電力が直接供給され、それ以外の電気機器31には分電盤11から電力が供給されることになる。つまり、特定コンセント32以外の電気機器31には、分電盤11を介して蓄電池17から電力が供給される。時刻t3以降、蓄電池17が放電状態になることで、その充電量が次第に低下する。
【0054】
なお、時刻t3では、切換装置23,33の切換に起因して、特定コンセント32に接続されている電気負荷が瞬断される旨の通知や、一般コンセントに接続されている電気負荷を特定コンセント32に接続することを促す旨の通知が適宜実施される。
【0055】
その後、時刻t4では、蓄電池17の充電量が下限値まで低下することで、第2切換装置23がD接続の状態からC接続の状態に切り換えられるとともに、第3切換装置33がF接続の状態からE接続の状態に切り換えられる。これにより、PV電力は再び分電盤11に対して供給される状態となる。したがって、蓄電池17の充電が再開される。
【0056】
その後、時刻t5では、停電が復旧する。そして、時刻t6において、ユーザの操作により第1切換装置12がB接続の状態からA接続の状態に切り換えられ、これにより給電システムが系統連系状態に復帰する。時刻t6以降においては、通常状態であるため、第2切換装置23がC接続、かつ第3切換装置33がE接続の状態で保持される。
【0057】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0058】
建物10の停電時に蓄電池17を充電する場合において、蓄電池17が満充電になっていなければ、切換装置23,33を、PV電力が分電盤11を介して蓄電池17に供給される状態(第1状態)とし、蓄電池17が満充電になっていれば、切換装置23,33を、PV電力が分電盤11を介さずに特定コンセント32に供給される状態(第2状態)に切り換えるようにした。これにより、停電時において、蓄電池17が満充電であることにより蓄電池17の充電が停止される場合にあっても、太陽光発電装置21の発電電力を特定コンセント32側に供給することで、当該発電電力を無駄にすることなく利用することが可能となる。このとき、太陽光発電装置21の電力供給先を特定コンセント32とすることで、電力供給先を特定のものに制限しつつ、好適な電力供給を実施できる。
【0059】
建物10の停電時において、蓄電池17が満充電になる前には、特定コンセント32に対して分電盤11から電力を供給する一方、蓄電池17が満充電になった後には、特定コンセント32に対してPV電力を供給するようにした。この場合、蓄電池17が満充電になる前後において、特定コンセント32に対する電力供給として、分電盤11からの電力供給と太陽光発電装置21からの電力供給とが継続的に実施される。これにより、特定コンセント32に対する適切な電力供給を実現できる。
【0060】
蓄電池17が満充電になった後に、蓄電池17を充電状態から放電状態に切り換えるようにした。この場合、蓄電池17の満充電判定の後において、特定コンセント32に接続された電気負荷は太陽光発電装置21からの電力供給により駆動され、それ以外の電気負荷は、蓄電池17からの電力供給により駆動される。これにより、特定コンセント32に接続された電気負荷、及びそれ以外の電気負荷への電力供給を好適に分担して実施できる。
【0061】
蓄電池17が満充電になった後に、当該蓄電池17の放電に伴う充電量の低下に応じて、PV電力による蓄電池17の充電を再開するようにした。これにより、停電時において、蓄電池17の充電量が放電により低下しても、再び太陽光発電装置21の余剰電力による再充電が可能となる。
【0062】
切換装置23,33が、PV電力が分電盤11を介して蓄電池17に供給される状態(第1状態)から、PV電力が特定コンセント32に供給される状態(第2状態)に切り換えられる前に、特定コンセント32に接続されている電気負荷が瞬断される旨を表示装置41による通知を実施するようにした。したがって、ユーザは、上記切換の前に、特定コンセント32に接続された電気負荷が瞬断される可能性があることを知ることができる。これにより、瞬断により動作に不都合が生じる電気負荷が特定コンセント32に接続されている場合に、瞬断前にその電気負荷の電源をいったん切る等の事前の対応や、瞬断後に再起動する等の事後の対応が可能となる。よって、利便性の向上を図ることができる。
【0063】
切換装置23,33の上記切換(第1状態から第2状態への切換)が行われる場合に、特定コンセント32以外のコンセントに接続されている電気負荷を特定コンセント32に接続するよう表示装置41による通知を実施するようにした。これにより、特定コンセント32の活用を促すことにより太陽光発電装置21により発電される電力を最大限で活用し、かつ蓄電池17に蓄えられた電力の消費を抑えることができる。
【0064】
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば次のように変更してもよい。
【0065】
・上記実施形態では、停電時において、蓄電池17が満充電になった後に、蓄電池17の充電量が所定の下限値まで低下したことに基づいて分電盤11へのPV電力の供給を再開する構成としたが、これを変更してもよい。例えば、蓄電池17が満充電になった後に、蓄電池17の放電開始から所定時間が経過したこと(放電時間が所定時間になったこと)に基づいて分電盤11へのPV電力の供給を再開する構成としてもよい。要するに、蓄電池17の放電に伴う充電量の低下に応じて、PV電力による蓄電池17の充電を再開する構成であればよい。
【0066】
・上記実施形態では、建物10に対する給電を可能とする蓄電池として、自動車16に搭載された蓄電池17を用いる構成としたが、これに限定されず、定置式の蓄電池を用いる構成であってもよい。
【0067】
・上記実施形態では、第2切換装置23をD接続及び第3切換装置33をF接続とすることにより特定コンセント32にPV電力が供給される構成としたが、第3切換装置33は必須の構成ではない。例えば、第2切換装置23のD接続と特定コンセント32とが接続されていてもよい。この場合、特定コンセント32は、分電盤11からの電力供給はなく、第2切換装置23をD接続とすることによりPV電力が供給される。
【符号の説明】
【0068】
10…建物、11…分電盤、13…商用電源、17…蓄電池、21…太陽光発電装置、23…第2切換装置(切換手段)、32…特定コンセント、33…第3切換装置(切換手段)、40…コントローラ(充電制御手段、満充電判定手段、停電時電力制御手段)。
図1
図2
図3