(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】摩擦材
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20221129BHJP
F16D 69/02 20060101ALI20221129BHJP
F16D 69/00 20060101ALI20221129BHJP
F16D 13/62 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C09K3/14 520M
C09K3/14 520L
C09K3/14 520G
C09K3/14 520F
C09K3/14 520J
F16D69/02 C
F16D69/00 B
F16D13/62 A
(21)【出願番号】P 2017131919
(22)【出願日】2017-07-05
【審査請求日】2020-06-23
(32)【優先日】2016-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】フェン・ドン
(72)【発明者】
【氏名】ワンジュン・リウ
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527562(JP,A)
【文献】特開2006-022964(JP,A)
【文献】特開2005-121221(JP,A)
【文献】特開2004-092904(JP,A)
【文献】特開平08-035532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/14
F16D11/00-23/14
F16D49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)接合面を提供するベース;
(B)前記ベースと一体型であり
、
前記ベースの前記接合面と対向する摩擦発生面を提供する
、
多孔性摩擦発生層であって
、
(i)繊維、及び
(ii)摩擦調節粒子を含み、
前記繊維の総表面積の
30~95%が前記摩擦調節粒子と接触し
、
前記繊維は、前記ベースに貫通する繊維を含む、
前記多孔性摩擦発生層;及び
(C)前記多孔性摩擦発生層及び前記ベース全体に分散される硬化性樹脂を含む、
摩擦材。
【請求項2】
前記繊維の総表面積の
30~90%が前記摩擦調節粒子と接触している、請求項1に記載の摩擦材。
【請求項3】
前記多孔性摩擦発生層は、
5~100μmの平均孔隙サイズ及び/または
0.4~0.9g/cm
3の密度を有する、請求項1または2に記載の摩擦材。
【請求項4】
前記摩擦調節粒子は、シリカ、炭素、黒鉛、アルミナ、マグネシア、酸化カルシウム、チタニア、セリア、ジルコニア、コージエライト、ムライト、シリマナイト、スポジュメン、ペタライト、ジルコン、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化ハフニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、ホウ化チタン、カシューナッツ、ゴム、及びこれらの組合せから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の摩擦材。
【請求項5】
前記摩擦調節粒子は、
0.1μm~
30μmの平均直径及び
3~9のモース硬度を有する珪藻土;及び/または、
カシューナットシェルオイル、ゴムまたはこれらの組合せから誘導された粒子を含み、前記粒子は、ISO 6310に従って試験したときに
1.5~7.5%の圧縮率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の摩擦材。
【請求項6】
前記繊維は、セルロース繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、炭素繊維、及びこれらの組合せから選択され、前記繊維は、
1μm~
500μmの平均直径及び
2mm~
20mmの平均長さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の摩擦材。
【請求項7】
前記摩擦調節粒子は、前記摩擦発生面の3000ft
2当たり
10~100lbsの量で前記摩擦材内に存在し;及び/または
前記繊維は、前記摩擦発生面の3000ft
2当たり
1~200lbs(278.7m
2当たり
0.5kg~
2.7kg)の量で前記摩擦材内に存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の摩擦材。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項による硬化された摩擦材を含み、前記硬化された摩擦材のベースの接合面は、基材に接合される、摩擦板。
【請求項9】
(A)接合面を提供するベース;
(B)前記ベースと一体型であり
、
前記ベースの前記接合面と対向する摩擦発生面を提供する多孔性摩擦発生層であって
、
(i)
0.4~0.9g/cm
3の密度;及び
(ii)
5~100μmの平均孔隙サイズを有する
、
前記多孔性摩擦発生層;及び
(C)前記多孔性摩擦発生層及び前記ベース全体に分散される硬化性樹脂を含む
、
摩擦材。
【請求項10】
前記多孔性摩擦発生層は、
0.4~0.8g/cm
3の密度、及び
10~50μmの平均孔隙サイズを有する、請求項9に記載の摩擦材。
【請求項11】
前記摩擦材は、前記摩擦発生面と前記接合面との間の距離として定義される厚さを有し、前記多孔性摩擦発生層は、前記摩擦発生面から前記接合面に向かって前記厚さの
40%まで延長される、請求項9または10に記載の摩擦材。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項による硬化された摩擦材を含み、前記硬化された摩擦材のベースの接合面は、基材に接着される、摩擦板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2016年7月15日出願された米国仮特許出願第62/362,906号に対する優先権及びそのすべての利点を主張し、その内容は、本明細書に参照として含まれる。
【0002】
本発明の開示内容は、一般に、ベースと、無分別な摩擦発生層を含む摩擦材に関する。より具体的には、本発明の開示内容は、変速機内のクラッチアセンブリの摩擦板に使用され得る摩擦材に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車パワートレインの多くの部品は、湿式クラッチを用いて車両の動力発生機(すなわち、内燃機関、電気モーター、燃料電池など)から駆動ホイールに動力の伝達を容易にすることができる。動力発生機から下流に位置され、車両発進、ギヤ変速、及び他のトルク伝達現象を可能にする変速機は、このような構成要素中の一つである。一種の湿式クラッチは、自動車の作動のために、現在利用可能な多くの様々タイプの変速機の全体を通じて見出すことができる。湿式クラッチは、自動変速機用トルクコンバータ、自動変速機または半自動デュアルクラッチトランスミッション(DCT)用の多板湿式クラッチパック、及びトルクコンバータの代用品としておおよそ7~9個ものギヤを備えたよりスポーティーな自動変速機に含まれ得る湿式発進クラッチに利用され得るが、これは、いくつかの例示的な用途に過ぎない。類似の湿式クラッチは、変速機外に車両パワートレインのどこでも見出すことができる。
【0004】
湿式クラッチは、2つ以上の相反した回転面の間に選択的な界面摩擦係合を付与することにより潤滑油がある所でこのような面を連動させるアセンブリである。このような係合可能な回転面のうちの1つを提供する摩擦板、バンド、シンクロナイザーリング、または一部の他の部品は、通常的に摩擦材を支持して、意図された連動摩擦係合を誘発する。摩擦界面における潤滑油の存在は、摩擦材の摩耗を冷却し、減らして少しの初期滑りが起こるようにして、急なトルク伝達現象(すなわち、変速ショック)に伴う不便さを非常に速く回避しようとする努力にもかかわらず、トルク伝達が漸進的に進行される。
【0005】
従来の摩擦材は、一般に、このような湿式クラッチ適用において、特に湿式始動クラッチ適用及び変速適用、例えば、半自動DCT適用のようなより最近のクラッチ適用において信頼可能に機能しない。このような湿式クラッチ適用の要求を満たすために向上した摩擦係数(“COF”)を有する摩擦材が開発されたが、開発された多くの摩擦材は、小さすぎる孔隙を有するとても多い従来の摩擦材によって必要なCOFと耐久性が不足である。より小さい孔隙のサイズを有する摩擦材は、条件範囲を超えると一貫性のないCOFを提供する傾向がある。さらに、より小さい孔隙のサイズを有する摩擦材は、摩擦材を通過する潤滑油の流れを制限する傾向があり、このような減少された流れは、摩擦発生材の性能特性及び耐久性に影響を及ぼす不適当な冷却を引き起こす。このように、これらの湿式クラッチ適用のために開発された摩擦材は、十分なトルク伝達の不足、震え、変速ショック、及び低い耐久性を含む様々な問題の原因になる。
【0006】
既存の摩擦材の不適当さによって、向上した性能特性及び耐久性を提供する機会がまだ残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
摩擦材は、ベースと、前記ベースに貫通し、前記ベースと一体型である多孔性摩擦発生層を含む。前記ベースは、接合面を提供する。前記多孔性摩擦発生層は、前記ベースの接合面に対向する摩擦発生面を提供する。前記多孔性摩擦発生層は、繊維及び摩擦調節粒子を含み、前記繊維の総表面積の約30~95%が前記摩擦調節粒子と接触している。硬化性樹脂は、前記多孔性摩擦発生層及び前記ベース全体に分散される。
【0008】
前記多孔性摩擦発生層で前記繊維の総表面積の約30~95%が摩擦調節粒子と接触しているので、前記多孔性摩擦発生層は増加されたサイズの孔隙を有する。前記多孔性摩擦発生層の増加された平均孔隙のサイズは、湿式クラッチ適用において摩擦材を通じた潤滑油の流れの増加を可能にし;このような増加された潤滑油の流れは、摩擦材に向上した性能特性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の他の利点は、添付された図面に関連して考慮されるとき、以下の詳細な説明を参照してよりよく理解されるはずなので、容易に認められるだろう。
【
図1A】従来技術の多孔性摩擦発生層とベースを含む摩擦材の拡大断面図である。
【
図1B】
図1Aの摩擦材の多孔性摩擦発生層の拡大分離断面図である。
【
図2】従来技術の摩擦材の多孔性摩擦発生層の走査電子顕微鏡(“SEM”)イメージの平面図である。
【
図3A】多孔性摩擦発生層とベースを含む摩擦材の拡大断面図である。
【
図3B】
図3Aの摩擦材の多孔性摩擦発生層の拡大分離断面図である。
【
図4】摩擦材の多孔性摩擦発生層のSEMイメージの平面図である。
【
図5】摩擦材の多孔性摩擦発生層の走査電子顕微鏡(SEM)イメージの他の平面図である。
【
図6】
図3の摩擦材を含む摩擦板及び基材の拡大断面図である。
【0010】
図1~
図6は、事実上の例示であり、一定の比率で描かれておらず、これにより、摩擦材の様々な構成要素、例えば、摩擦発生層、ベース、摩擦調節粒子、繊維などの相対的なサイズを示すように意図されていない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照すると、類似の参照符号は、多くの図面全体にわたって対応する部品を示しており、摩擦材は、一般的に10で示されており、摩擦板は、一般的に30で示されている。
【0012】
通常的に、ここで説明された摩擦材10は、自動車の変速機内の湿式クラッチアセンブリに含まれる摩擦板30上で利用される。しかし、ここで説明された摩擦材10及び摩擦板30は、他の車両の適用で利用されることができ、自動車を超えて適用されることを理解すべきである。
【0013】
ここで、
図3Aを参照すると、摩擦材10は、ベース12と、これらのベース12に貫通し、ベース12と一体になった無分別な多孔性摩擦発生層14を含む。ベース12は、接合面16を提供する。多孔性摩擦発生層14は、ベース12の接合面16の反対側で対向する(そして、ベース12の接合面16に平行な)摩擦発生面18を提供する。硬化性樹脂26が摩擦材10の多孔性摩擦発生層14及びベース12の全体にわたって分散されている。
【0014】
さらに、
図3Aを参照すると、摩擦材10は、摩擦発生面18と接合面16との間の距離として定義された厚さT
1を有する。様々な実施形態において、多孔性摩擦発生層14は、厚さT
1の約40%まで、あるいは約30%まで、あるいは約20%まで、あるいは約10%まで、あるいは約5%まで、摩擦発生面18から接合面16に向かって延長される。ベース12は、通常的に、約2mm未満、あるいは約0.3~1mmの厚さT
2を有する。摩擦材10が、変速機のクラッチ板(湿式クラッチ)に適用される摩擦材10に対する典型的な厚さである、約0.25~2mmの厚さなら、多孔性摩擦発生層14は、摩擦発生面18から約0.0125mm(0.25mmの5%)から0.80mm(2mmの40%)までの深さで内側方向に延長され得る。
【0015】
図3Aを参照すると、多孔性摩擦発生層14は、繊維20及び摩擦調節粒子22を含む。繊維20及び摩擦調節粒子22の配列は、複数の孔隙24を形成する。繊維20及び摩擦調節粒子22は、ベース12に適用され、通常的に、ベース12に貫通するので、多孔性摩擦発生層14は、連続型と呼ばれることができる。これと同様に、ベース12の粒子及び繊維は、多孔性摩擦発生層14に貫通することができる。従って、多孔性摩擦発生層14及びベース12は、摩擦材10内の一体型の層である。
【0016】
しかし、一部の実施形態において、ベース12は、摩擦発生層14の構造的属性、例えば、繊維と接触している粒子、増加される孔隙サイズなどの一部または甚だしくはその全てを含む。このような実施形態において、ベース12は、構成的に摩擦発生層14と同一であるか、構成的に異なることもできるが、摩擦発生層14と同一の構造的属性、例えば、繊維と接触している粒子、増加される孔隙サイズなどを有することができる。ベース12が摩擦発生層14と同一の実施形態において、摩擦発生材10は、単一層、単分子層、または同質の摩擦発生材10と呼ばれることができる。
【0017】
繊維20は、総表面積を有する。繊維20の総表面積は、多孔性摩擦発生層14で各繊維の個別的な表面積の合計である。繊維20の表面積の約30~95%、あるいは約40~90%が摩擦調節粒子22と接触しているように繊維調節粒子22は、繊維20と接触している。光学顕微鏡(例えば、Nikan Microphat-Sa)または走査電子顕微鏡(“SEM”)(例えば、Jeol JSM-6610LV)のような光学撮像器具が摩擦調節粒子22と接触している繊維20の表面積だけでなく、繊維20の総表面積を測定するのに利用され得る。多くの実施形態において、摩擦調節粒子22と接触している繊維20の%表面積(“接触率”)は、100を掛けた繊維20の表面積で割った摩擦調節粒子22と接触している繊維20の表面績である。
【0018】
例えば、SEMまたは光学顕微鏡は、繊維20及びそれに接触している摩擦調節粒子22のイメージを得るのに使用され得る。(Media Cybernetics, Inc., Rockville, MDから商業的に利用可能なIMAGE-PRO(登録商標) PLUS ソフトウェアのような)撮像ソフトウェアが繊維20の表面積及び摩擦調節粒子22と接触している繊維20の表面積(すなわち、摩擦調節粒子22が占める繊維20の表面積)を決定するのに利用され得る。接触率は、(パーセントに換算された)100を掛けた繊維20の総表面積に対する占有表面積の比率である。
【0019】
他の例として、EDAX方法が接触率を計算するのに利用され得る。時々EDSと呼ばれるEDAXは、基本的な組成物を決定するためのX線分光方法である。EDAXは、SEM器具上のSEMでの撮像と共に利用され得る。例えば、シリカ(摩擦調節粒子22)対炭素(繊維20)の比率がEDAXによって測定される。EDAXで接触率を測定するために、繊維上の粒子の接触率と比率との間の標準曲線が確立される。
【0020】
また他の例として、XRFが接触率を測定するのに間接的に利用されることもできる。接触率を求める撮像方法とXRFアカウントとの間の標準曲線が確立される。摩擦調節粒子22が占める繊維20の表面積のために、XRFアカウントが測定された後、接触率は、標準曲線を介して得ることができる。
【0021】
このように、本開示内容の多孔性摩擦発生層14によって形成された複数の孔隙24は、(繊維の表面積の接触%を介して)上で定義されたように、摩擦調節粒子と接触している繊維を含む多孔性摩擦発生層によって形成された孔隙よりも通常的に大きい。これのために、
図3Bは、複数の孔隙24を含む本開示内容の多孔性摩擦発生層14の断面図である。
図1Bの多孔性摩擦発生層14は、
図3Bの摩擦発生層14よりも小さい平均孔隙サイズを有する。本開示内容の多孔性摩擦発生層14における繊維20の表面積の約30~95%は、摩擦調節粒子22と接触しているので、多孔性摩擦発生層14は、増加された平均孔隙サイズを有する複数の孔隙24を有する。
【0022】
図4及び
図5は、摩擦材10の多孔性摩擦発生層14の走査電子顕微鏡(SEM)イメージの平面図を示しており、ここで摩擦調節粒子22は、繊維20の表面と接触している。
図4及び
図5において、摩擦調節粒子22が繊維20の表面と接触しており、多孔性摩擦発生層14の複数の孔隙24が、繊維20及び摩擦調節粒子22がランダムに配列されている摩擦材10の多孔性摩擦発生層14のSEMイメージの平面図である
図2に示されたような、摩擦調節粒子22及び繊維20のランダム配列よりも大きい平均孔隙サイズを有することは明らかである。本開示内容のこれらの2つの構成要素(繊維20及び摩擦調節粒子22)の配列は、摩擦材10に優れた動的摩擦係数及び静的摩擦係数(“COF”)を提供する。
【0023】
様々な実施形態において、多孔性摩擦発生層14は、約5~100μm、あるいは約10~80μmの平均孔隙サイズを有する複数の孔隙24を形成する。孔隙体積、平均孔隙サイズ/孔隙サイズ分布、及び孔隙率は、通常的に、ASTM D4404-10によって(摩擦材に貫通するために加圧された水銀を利用する水銀侵入方法で)測定される。
【0024】
理論上の制限なく、多孔性摩擦発生層14の増加された孔隙サイズは、湿式クラッチ適用において、摩擦材10を通じた潤滑油の流れの増加を可能にすると考えられ;このような増加された潤滑油の流れは、摩擦材10に向上した性能特性を提供する。
【0025】
様々な実施形態において、多孔性摩擦発生層14は、約0.4~0.9g/cm3、あるいは約0.4~0.8g/cm3の密度を有する。本開示内容の多孔性摩擦発生層14は、比較摩擦発生層と同一の密度を有することができるが、本開示内容の摩擦調節粒子22が本開示内容の繊維20と接触しているので、本開示内容の多孔性摩擦発生層14は、増加された平均孔隙サイズを有する。
【0026】
前述したように、多孔性摩擦発生層14は、摩擦調節粒子22を含む。様々な適切な摩擦調節粒子22は、シリカ、炭素、黒鉛、アルミナ、マグネシア、酸化カルシウム、チタニア、セリア、ジルコニア、コージエライト、ムライト、シリマナイト、スポジュメン、ペタライト、ジルコン、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化ハフニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、ホウ化チタン、カシューナッツ、ゴム、またはこれらの組合せを含むとか、本質的にそれらからなるとか、またはそれらからなる。ここで使用されたように、“本質的になる(consists essentially of)”ということは、他の構成要素と添加物がないとか、または大略ない(例えば、5重量%未満、1重量%未満、0.1重量%未満を含む)指定された構成要素(例えば、摩擦調節粒子22)を含む実施形態を説明するのに使用される。
【0027】
あるいは、摩擦調節粒子22は、シリカ、炭素、黒鉛、アルミナ、マグネシア、酸化カルシウム、チタニア、セリア、ジルコニア、コージエライト、ムライト、シリマナイト、スポジュメン、ペタライト、ジルコン、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化ハフニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、ホウ化チタン、カシューナッツ、ゴム、及びこれらの組合せから選択される。
【0028】
様々な実施形態において、摩擦調節粒子22は、珪藻土を含む。珪藻土は、シリカを含む鉱物である。珪藻土は、多孔性摩擦発生層14の繊維20全体を介して容易に分散する比較的高い摩擦係数を発揮する高価ではない研磨材である。もちろん、多孔性摩擦発生層14に含まれたすべての摩擦調節粒子22が珪藻土であり得るとか、または代替的に、摩擦調節粒子22は、珪藻土、炭素、黒鉛、及びアルミナの様々な組合せでのような、異なるタイプの摩擦調節粒子22の組合せを含むことができる。多孔性摩擦発生層14に含まれた摩擦調節粒子22のタイプまたはタイプなどは、摩擦材10の摩擦発生面18で確認された摩擦特性に応じて異なることができる。
【0029】
様々な実施形態において、摩擦調節粒子22は、約0.04~40μm、あるいは約1~20μmの平均直径を有する。さらに、様々な実施形態において、摩擦調節粒子22は、約400℃以上、あるいは約450℃以上、あるいは約500℃以上の熱的安全性を有する。熱的安全性によって、摩擦調節粒子22は、溶融せず、軟化せず、または分解されない。摩擦調節粒子22の熱的安全性は、通常的に、熱重量分析(“TGA”)によって決定される。TGAを介して分析された摩擦調節粒子22の試料がこれらの試料の総重量を基準に10重量を失う温度は、摩擦調節粒子22が熱的安全性を失う温度である。
【0030】
様々な実施形態において、摩擦調節粒子22は、カシューナットシェルオイル、ゴム、またはこれらの組合せから得た粒子を含む。カシューナットシェルオイルから得たまたはゴムを含む摩擦調節粒子22は弾性を有し、ゴムのような属性を発揮する。本開示内容において、カシューナットシェルオイル及び/またはゴムから得た粒子は、弾性粒子と指称する。
【0031】
一部の実施形態において、摩擦調節粒子22は、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム(“SBR”)、ブチルゴム、及びクロロブチルゴム、ブロモブチルゴム、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴム、またはこれらの組合せのようなハロゲン化ゴムを含むとか、本質的にそれらからなるとか、またはそれらからなるゴム粒子である。
【0032】
様々な実施形態において、弾性粒子は、約40μm未満、あるいは約2~40μm、あるいは約5~30μm、あるいは約5~15μmの平均直径を有する。有利には、約40μm未満の平均直径を有する多孔性摩擦発生層14の弾性粒子は、通常的に、多孔性摩擦発生層14の圧縮を向上させ、重要には、他の摩擦調節粒子22と繊維20との組合せで使用されるときに向上した静的COFを有する摩擦発生面18を予想外に生成する。理論上の制限なく、弾性粒子によって提供された弾性及び相対的に不足な剛性は、摩擦材10の摩擦発生面18の圧縮時にクッション効果を提供し、これは、増加された温度で圧力を均一に分布させて摩擦発生面18の動的COFに否定的な影響を与えなく、摩擦発生面18の静的COFを向上させる。
【0033】
様々な実施形態において、弾性粒子は、約200℃以上、あるいは約250℃、あるいは約300℃以上、あるいは約350℃以上の熱的安全性を有する。熱的安全性によって、弾性粒子は、溶融せず、軟化せず、または分解されない。弾性粒子の熱的安全性は、通常的に、TGAによって決定される。TGAを介して分析された弾性粒子の試料がこれらの試料の総重量に基づいて10重量%を失う温度は、弾性粒子が熱的安全性を失う温度である。
【0034】
摩擦調節粒子22は、通常的に、摩擦発生面18の3000ft2当たり約10~40lbs、あるいは摩擦発生面18の3000ft2当たり約15~35lbsの量で多孔性摩擦発生層14に存在する。多孔性摩擦発生層14に存在する摩擦調節粒子22の量は、前記範囲外で変わることができるが、通常的に、これらの範囲内の全体及び部分的な値の両者である。さらに、一タイプ以上の摩擦調節粒子22が多孔性摩擦発生層14に含まれることができ、この場合、多孔性摩擦発生層14に存在するすべての摩擦調節粒子22の総量が前記範囲内にあるということが理解されるだろう。
【0035】
摩擦調節粒子22は、通常的に、摩擦発生面18の3000ft2当たり約10~100lbs、あるいは摩擦発生面18の3000ft2当たり約15~80lbsの量で摩擦材10に存在する。摩擦材10に存在する摩擦調節粒子22の量は、前記範囲外で変わることができるが、通常的に、これらの範囲内の全体及び部分的な値の両者である。さらに、一タイプ以上の摩擦調節粒子22が摩擦材10に含まれることができ、この場合、摩擦材10に存在するすべての摩擦調節粒子22の総量が前記範囲内にあるということが理解されるだろう。
【0036】
一実施形態において、摩擦材10は、単層摩擦材であり、摩擦調節粒子22は、通常的に、摩擦発生面18の3000ft2当たり約10~100lbs、あるいは摩擦発生面18の3000ft2当たり約15~80lbsの量で摩擦材10に存在する。摩擦材10に存在する摩擦調節粒子22の量は、前記範囲外で変わることができるが、通常的に、これらの範囲内の全体及び部分的な値の両者である。さらに、一タイプ以上の摩擦調節粒子22が摩擦材10に含まれることができ、この場合、摩擦材10に存在するすべての摩擦調節粒子22の総量が前記範囲内にあるということが理解されるだろう。
【0037】
特に、ここで提供された多孔性摩擦発生層14における構成要素の量は、3000ft2当たりポンドの単位であり、このような単位は、硬化性樹脂26の含浸されるか否かに対して薄層の所定の表面積を基準に重量の計測として製紙産業において慣例的に使用される。
【0038】
ここで、多孔性摩擦発生層14の繊維20を窺って見ると、繊維20は、セルロース繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、炭素繊維、またはこれらの組合せを含むとか、本質的にそれらからなるとか、またはそれらからなる。あるいは、繊維20は、セルロース繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、炭素繊維、及びこれらの組合せから選択される。
【0039】
一実施形態において、多孔性摩擦発生層14の繊維20は、アラミド繊維から本質的になるとか、アラミド繊維からなる。他の実施形態において、多孔性摩擦発生層14の繊維20は、アラミド及びセルロース(例えば、綿)繊維から本質的になるとか、またはそれらからなる。
【0040】
通常的な実施形態において、繊維20はセルロースを含む。例えば、様々な実施形態において、繊維20は、天然セルロース、再生セルロース、セルロース誘導体、またはそれらの混合物を含む。一部の実施形態において、繊維20は、少なくとも50重量%、あるいは少なくとも60重量%、あるいは少なくとも70重量%、あるいは少なくとも80重量%、あるいは少なくとも90重量%、あるいは少なくとも99重量%、あるいは少なくとも100重量%の天然セルロース、再生セルロース、セルロース誘導体、またはそれらの混合物を含む。様々な実施形態において、繊維20は、セルロースから本質的になるとか、またはセルロースからなる。一部の実施形態において、繊維20は、天然セルロースを含むとか、本質的にそれらからなるとか、またはそれらからなる。他の実施形態において、繊維20は、再生セルロースを含むとか、本質的にそれらからなるとか、またはそれらからなる。例えば、このような他の実施形態において、繊維20は、再生リヨセルセルロースを含むとか、本質的にそれらからなるとか、またはそれらからなる。
【0041】
天然セルロースは、繰り返し的なβ(1→4)-グリコシド結合されたグルコース単位を含み、繰り返し単位(“n”)の数が通常100~10、000範囲の高分子一般式(C6H105)nを有する直鎖多糖類である。再生セルロースは、天然セルロースと同一の化学式を有し、ビスコース工程、銅アンモニウム工程、及び有機溶剤紡糸工程を含む多くの工程のうちの1つから天然系ポリマー(例えば、木材パルプまたは竹)から製造される。再生セルロースの一部の例としては、レーヨン、モダル、及びリヨセルである。セルロース誘導体は、ルコース単位上のヒドロキシルグループが完全にまたは部分的に、例えば、エステルグループで置換された変形セルロースである。セルロース誘導体の一部の例としては、酢酸セルロース及び三酢酸セルロースである。
【0042】
一部の実施形態において、繊維20はアラミドを含む。例えば、様々な実施形態において、アラミドは、合成芳香族ポリアミドである。このような芳香族ポリアミドの一例は、1、4-フェニレンジアミンと塩化テレフタロイルとの縮合物のようなパラアラミドである。このような芳香族ポリアミドの他の例は、m-フェニレンジアミンと塩化イソフタロイルとの縮合物のようなメタ-アラミドである。
【0043】
一実施形態において、摩擦材10は、アラミド繊維のみを含む。すなわち、摩擦材10に含まれた(紙を除いた)繊維20は、アラミド繊維を含むとか、これらから本質的になるとか、またはこれらからなる。
【0044】
一部の実施形態において、繊維20はアクリルを含む。例えば、様々な実施形態において、アクリルは、少なくとも85重量%アクリロニトリルモノマーから形成された合成アクリルポリマーである。
【0045】
一部の実施形態において、繊維20は炭素を含む。一部の実施形態において、炭素繊維の存在は、耐熱性を増加させ、摩擦係数を安定的に維持させ、スクウィール抵抗(squeal resistance)を増加させることを助ける。摩擦材10が所望の耐熱性を持つように、炭素繊維は、良好な熱伝導を提供することができる。他の実施形態において、アラミド繊維及び炭素繊維の使用は、高温に耐えるための摩擦材10の能力を向上させる。
【0046】
様々な実施形態において、繊維20は、約1~500μm、あるいは約2~80μm、あるいは約2~60μmの平均直径、及び約1~10mm、あるいは約2~8mm、あるいは約4~6mmの平均長さを有する。このような実施形態において、繊維20は、通常的に、カナダ標準濾水度(“CSF”)によって測定されたような、約5~650ml CSF、あるいは約5~300ml CSF、あるいは約10~200ml CSF、あるいは約10~100ml CSFのフィブリル化度(degree of fibrillation)を有する。一部の実施形態において、摩擦材10は、単層摩擦材であり、繊維20は、約5~10ml CSFのフィブリル化度を有する。CSFは、1リットルの水で3グラムの繊維パルプ材が排水される比率を測定する経験的試験手続きである。CSF計測は、TAPPI T227試験手続きに従って行われる。CSF計測を行うのにあって、よりフィブリル化された繊維パルプ材がさらに低い排水率及びこれによるさらに低い“ml CSF”値を有するはずであり、不十分にフィブリル化された繊維パルプ材がさらに高い“ml CSF”値を有するはずであるということを留意されたい。
【0047】
さらに、様々な実施形態において、繊維20は、約200℃以上、あるいは約250℃以上、あるいは約350℃以上の熱的安全性を有する。熱的安全性によって、繊維20は、溶融せず、軟化せず、または分解されない。繊維20の熱的安全性は、通常的に、TGAによって決定される。TGAを介して分析された弾性粒子の試料がこれらの試料の総重量を基準に10重量%を失う温度は、弾性粒子が熱的安全性を失う温度である。
【0048】
繊維20は、通常的に、摩擦発生面18の3000ft2当たり約1~6lbs、あるいは約2~5lbs、あるいは約2~4lbs、あるいは約3lbsの量で多孔性摩擦発生層14に存在する。多孔性摩擦発生層14に存在する繊維20の量は、前記範囲外で変わることができるが、通常的に、これらの範囲内の全体及び部分的な値の両者である。さらに、一タイプ以上の繊維が多孔性摩擦発生層14に含まれることができ、この場合、多孔性摩擦発生層14に存在するすべての繊維20の総量が前記範囲内にあるということが理解されるだろう。
【0049】
繊維20は、通常的に、摩擦発生面18の3000ft2当たり約1~200lbs、あるいは約2~150lbsの量で摩擦材10に存在する。摩擦材10に存在する繊維20の量は、前記範囲外で変わることができるが、通常的に、これらの範囲内の全体及び部分的な値の両者である。さらに、一タイプ以上の繊維が摩擦材10に含まれることができ、この場合、摩擦材10に存在するすべての繊維20の総量が前記範囲内にあるということが理解されるだろう。
【0050】
一実施形態において、摩擦材10は単層摩擦材であり、繊維20は、通常的に、摩擦発生面18の3000ft2当たり約1~200lbs、あるいは約2~150lbsの量で摩擦材10に存在する。摩擦材10に存在する繊維20の量は、前記範囲外で変わることができるが、通常的に、これらの範囲内の全体及び部分的な値の両者である。さらに、一タイプ以上の繊維が摩擦材10に含まれることができ、この場合、摩擦材10に存在するすべての繊維20の総量が前記範囲内にあるということが理解されるだろう。
【0051】
繊維及び摩擦調節粒子22の量は、摩擦材10の摩擦特性に影響を及ぼすように選択され得る。摩擦発生面18における摩擦材10の孔隙率は、例えば、多孔性摩擦発生層14に存在する繊維20の量に反比例する。多孔性摩擦発生層14に存在する摩擦調節粒子22の量は、摩擦発生面18で達成され得る静的及び動的摩擦係数の両者に影響を及ぼす。より高い摩擦係数が一般に摩擦調節粒子22のさらに多い量を伴い、逆の場合も同様であるが、摩擦調節粒子22及び繊維20自体のみの使用は、摩擦材10の静的摩擦係数の相当な向上を可能にしない。有利には、これらの2つの構成要素(繊維20及び摩擦調節粒子22)の配列が摩擦材10に優れた動的及び静的COFを提供する。
【0052】
ここで、摩擦材10のベース12を窺って見ると、ベース12は、通常的に、紙、様々な構造繊維28、及び充填剤を含む。摩擦材10が単層摩擦材10である場合、摩擦材10は、ベース12に含まれるものとして説明される後述する紙、様々な構造繊維28、及び充電済のうちのいずれか1つを含むことができる。
【0053】
好ましい実施形態において、ベース12は、多孔性摩擦発生層14に貫通し、繊維20と混合される構造繊維28を含む。このために、ベースはまるで多孔性摩擦発生層14のような無分別型と呼ばれ得る。一部の実施形態において、ベース12の構造繊維28は、摩擦発生面18に露出している。他の実施形態において、ベース12の構造繊維28は、摩擦発生面18に露出していない。
【0054】
構造繊維28は、通常的に、セルロース繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ノボロイド(フェノール-ホルムアルデヒド)繊維、炭素繊維、鉱物繊維、及びこれらの組合せから選択される。様々なタイプのセルロース、アラミド、及びアクリル繊維は、多孔性摩擦発生層14の繊維20を参照して前述した通りである。時々、黒鉛繊維と呼ばれる炭素繊維は、炭素原子を含む繊維である。もちろん、ここで論議されたような炭素繊維は、炭素及び他の材料で形成された繊維、すなわち、複合炭素繊維を含む。
【0055】
様々な実施形態において、構造繊維28は、約1~500μm、あるいは約1~300μm、あるいは約1~80μmの平均直径、及び約2~20mm、あるいは約4~18mm、あるいは約6~16mmの平均長さを有する。このような実施形態において、構造繊維28は、通常的に、CSFに従って測定されるフィブリル化度が、約100~1000ml CSF、あるいは約100~800ml CSF、あるいは約100~650ml CSF、あるいは約100~650ml CSFである。
【0056】
一実施形態において、ベース12は、ポリパラフェニレンテレフタルアミドのようなアラミドを含むフィブリル化マイクロ構造繊維28を含む。他の実施形態において、ベース12は、セルロースを含む構造繊維28を含む。他の実施形態において、ベース12は、炭素を含む構造繊維28を含む。好ましい実施形態において、ベース12は、アラミド及びセルロースを含むとか、それらからなるとか、または本質的にそれらからなる個別的構造繊維28を含む。これらの2つのマイクロ繊維タイプの組合せは、ベース12に熱的化学的安全性及び350℃以上の高い耐疲労性を提供する。本実施形態のベース12に存在するアラミド及びセルロース構造繊維は、天然または合成であり得る。
【0057】
構造繊維28は、通常的に、ベース12の総重量を基準に約10~90重量%、あるいは約20~70重量%の量で摩擦材10に存在する。ベース12に存在する構造繊維28の量は、前記範囲外で変わることができるが、通常的に、これらの範囲内の全体及び部分的な値の両者である。さらに、一タイプ以上の構造繊維28がベース12に含まれることができ、この場合、ベース12に存在するすべての構造繊維28の総量が前記範囲内にあるということが理解されるだろう。
【0058】
ここで、ベース12の充填剤を窺って見ると、充填剤は、シリカ、炭素、黒鉛、アルミナ、マグネシア、酸化カルシウム、チタニア、セリア、ジルコニア、コージエライト、ムライト、シリマナイト、スポジュメン、ペタライト、ジルコン、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化ハフニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、ホウ化チタン、珪藻土、カシューナット粒子、及びこれらの組合せの粒子及び/または繊維から選択される。好ましい実施形態において、ベース12の充填剤は、珪藻土と炭素との組合せを含む。
【0059】
充填剤は、通常的に、ベース12の総重量を基準に約20~80重量%、あるいは約20~60重量%の量で摩擦材10に存在する。ベース12に存在する充填剤の量は、前記範囲外で変わることができるが、通常的に、これらの範囲内の全体及び部分的な値の両者である。さらに、一タイプ以上の充填剤がベース12に含まれることができ、この場合、ベース12に存在するすべての充填剤の総量が前記範囲内にあるということが理解されるだろう。
【0060】
ここで、摩擦材10の多孔性摩擦発生層14及びベース12の全体を通じて分散される硬化性樹脂26を窺って見るだろう。硬化性樹脂26は、摩擦材10に構造強度を提供するのに適切な任意の熱硬化性樹脂であり得る。例えば、硬化性樹脂26は、フェノール樹脂または変形されたフェノール樹脂(例えば、エポキシフェノールなど)であり得る。フェノール樹脂は、通常的に、フェノールである芳香族アルコール及び通常的に、ホルムアルデヒドであるアルデヒドの縮合によって生成される熱硬化性樹脂の一種である。フェノール系樹脂は、任意の溶剤を排除するとか、酸を処理しながらすべての樹脂の総重量を基準に少なくとも50重量%のフェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂混合物である。フェノール樹脂と混合され得る他の熱硬化性樹脂の一部の例は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、及びポリブタジエン樹脂を含むが、これはいくつかの例示的な例に過ぎない。一旦硬化されると、硬化性樹脂26は、硬化樹脂34と呼ばれ、硬化樹脂34は、摩擦材10に強度及び耐久性を付与し、適切な潤滑油の流れ及び保有のための所望の孔隙率を維持しながら、多孔性摩擦発生層14内の繊維20と摩擦調節粒子22に付着される。
【0061】
硬化性樹脂26は、通常的に、摩擦材10の100重量部を基準に、約75重量%未満、あるいは約60重量%未満、あるいは約55重量%未満、あるいは約45重量%未満、あるいは約40重量%未満、あるいは約40重量%未満、あるいは約40~55重量%、あるいは約20~35重量%、あるいは約25~30重量%の量で摩擦材10に存在する。あるいは、摩擦材におけるすべての他の構成要素(例えば、繊維、粒子など)に対する硬化性樹脂26の比率は、約5:1~1:5、あるいは約3:1~1:3、あるいは、約2:1~1:2である。
【0062】
ここで、
図6を参照すると、摩擦板30は、接合接着剤36で基材32に硬化されて(すなわち、硬化性樹脂26を含む)接合される摩擦材10を含む。接合面16は、基材320または他の材料への接合が達成されるように意図される摩擦材10の表面である。このように、ベース12の接合面16は基材32に接合される。
【0063】
摩擦材10は、当業者に知られている任意の適切な技術によって基材32に接合される。通常的に、摩擦材10は、一般に当業者に知られている接合接着剤36であって、例えば、フェノール変形されたニトリルゴムを含む接合接着剤26で基材32に接合される。例示的な基材32は、摩擦/クラッチプレート、シンクロナイザーリング、及び変速機バンドを含むが、これらに限定されるのではない。基材32は、通常的に金属である。
【0064】
多孔性摩擦発生材10を形成する方法もここに開示されている。第1実施形態において、このような方法は、(1)硬化性樹脂26をベース紙に含浸させるステップ、(2)繊維20及び摩擦調節粒子22をベース紙に分散させるステップ、及び(3)多孔性摩擦発生材10を硬化させるステップを含む。
【0065】
第2実施形態において、このような方法は、(1)摩擦調節粒子22と硬化性樹脂26を混合して樹脂26コーティングされた粒子22を形成するステップ、(2)繊維20が摩擦調節粒子22と接触しているように樹脂26コーティングされた粒子22と繊維20を混合して摩擦調節粒子22を繊維20に接合させるステップ、(3)摩擦調節粒子22と接触している繊維20をベース紙に分散させるステップ、及び(4)多孔性摩擦発生材10を硬化させるステップを含む。もちろん、繊維20及び樹脂コーティングされた粒子22が2つの別個のステップでベース紙に分散される実施形態がここでまた考慮される。
【0066】
第3実施形態において、このような方法は、(1)繊維20と硬化性樹脂26を混合して樹脂26コーティングされた繊維20を形成するステップ、(2)繊維20が摩擦調節粒子22と接触しているように樹脂26コーティングされた繊維20と摩擦調節粒子22を混合して摩擦調節粒子22を樹脂26コーティングされた繊維20に接合させるステップ、(3)摩擦調節粒子22と接触している繊維20をベース紙に分散させるステップ、及び(4)多孔性摩擦発生材10を硬化させるステップを含む。もちろん、樹脂26コーティングされた繊維20及び摩擦調節粒子22が2つの別個ステップでベース紙に分散される実施形態がここでまた考慮される。
【0067】
第4実施形態において、多孔性摩擦発生材10は、単一の材料であり、すなわち、別個のベース層及び摩擦発生層を有しない。このために、このような方法は、(1)摩擦調節粒子22と硬化性樹脂26を混合して樹脂26コーティングされた粒子22を形成するステップ、(2)ベース紙を前記混合物で飽和させるステップ、及び(3)多孔性摩擦発生材10を硬化させるステップを含む。
【0068】
上で示唆されたように、ここで説明された摩擦材10の様々な実施形態は、湿式クラッチに利用され得る。摩擦材10の摩擦発生面18は、潤滑油がある所で反対される合わせ面(図示せず)と界面摩擦係合を経験するようになる。摩擦発生面18は、潤滑油がある所で反対される回転面(図示せず)と界面摩擦係合を経験するようになり、接合面16は、接着剤または一部の他の適切な接合技術の助けで基材32への接着を達成するようになる。潤滑油は、例えば、自動変速機流体のような任意の適切な潤滑流体であり得る。摩擦材10が満足するように約350℃超過、あるいは約400℃、あるいは約450℃の温度を行うが、摩擦材は、このような高温環境のみに制限されず、所望の場合、摩擦綿18で350℃未満の温度を維持するように設計された湿式クラッチに利用され得る。
【0069】
添付された特許請求の範囲は、詳細な説明で説明された任意の特定の化合物、組成物、または方法を表現するのに制限されず、これらは、添付された特許請求の範囲を逸脱することなく特定の実施形態の間で変わることができるということを理解するだろう。様々な実施形態の特定の特徴または態様を説明するためにここで依存される任意のマーカッシュグループに対して、異なる、特別な、及び/または予想外の結果がすべての他のマーカッシュ部材と、独立的なそれぞれのマーカッシュグループの各部材から求められることができるということを理解すべきである。マーカッシュグループの各部材は、個別的に及び/または組み合わせて添付された特許請求の範囲内で特定の実施形態に依存されることができ、このような実施形態のための適切なサポートを提供することができる。
【0070】
また、本開示内容の様々な実施形態を説明することにおいて、依存される任意の範囲及びサーブ範囲は、独立的に且つ総括的に、添付された特許請求の範囲内に含まれることを理解すべきであり、ここに全体及び/または部分的な値がここに明確に記載されていなくてもこのような値を含むすべての範囲を説明し、考慮することを理解すべきである。当業者は、列挙された範囲及びサーブ範囲が本開示内容の様々な実施形態を十分に説明し、可能にすることを容易に認識するはずであり、これらの範囲及びサーブ範囲は、関連する半分、3等分、4等分、5等分などに分けてさらに記述され得る。一例でのように、“0.1~0.9”の範囲は、個別的に且つ総括的に、添付された特許請求の範囲内にある3等分の下位、すなわち、0.1~0.3、3等分の中間、すなわち、0.4~0.6、3等分の上位、すなわち、0.7~0.9にさらに記述されることができ、個別的に及び/または総括的に添付された特許請求の範囲内で特定の実施形態に依存されることができ、このような実施形態のための適切なサポートを提供することができる。また、“少なくても”、“超過”、“未満”、“僅か”などのような範囲を定義するとか変更する表現に対して、このような表現は、サーブ範囲及び/または上限または下限を含むことを理解すべきである。他の例として、”少なくとも10”の範囲は、本質的に、少なくとも10~35のサーブ範囲、少なくとも10~25のサーブ範囲、25~35のサーブ範囲などを含み、各サーブ範囲は、個別的に及び/または総括的に添付された特許請求の範囲内で特定の実施形態に依存されることができ、このような実施形態のための適切なサポートを提供することができる。最終的に、開示された範囲内の個別的な数字は、添付された特許請求の範囲内で特定の実施形態に依存されることができ、このような実施形態のための適切なサポートを提供することができる。例えば、“1~9”の範囲は、4.1のような小数点(または分数)を含む個別的な数字だけでなく、3のような様々な個々の整数を含み、これらは、添付された特許請求の範囲内で特定の実施形態に依存されることができ、このような実施形態のための適切なサポートを提供することができる。
【0071】
本開示内容は、例示的な方式で説明され、使用された用語は、限定するのではなく、本質的に説明するためのものとして意図されたことを理解されるべきである。前記の教示に照らして見て、本開示内容の多くの修正及び変化が可能であるということは明らかである。従って、添付された特許請求の範囲内において、本開示内容は、具体的に記載されたことのように実施され得る。