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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】表示体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20221129BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20221129BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20221129BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20221129BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221129BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221129BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20221129BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221129BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J4/02
C09J201/00
C09J133/04
C09J11/06
B32B27/00 M
B32B27/16 101
B32B27/30 A
G02F1/1333
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018055177
(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2019167422
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 旭平
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆行
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-149807(JP,A)
【文献】特開2016-155981(JP,A)
【文献】特許第5307380(JP,B2)
【文献】特開2014-196452(JP,A)
【文献】特開2015-218324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
B32B 27/16
B32B 27/30
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表示体構成部材と第2の表示体構成部材とを、ダイレクトボンディングフィルムが有する粘着剤層を介して貼合してなる積層体を作製する工程と、
前記積層体の前記粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射し、前記粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とする工程と、を有し、
前記粘着剤層が、
(メタ)アクリル酸エステル共重合体と熱架橋剤とから構成される架橋構造と、
未硬化の活性エネルギー線硬化性成分と、
濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長380nmの吸光度が1.0以上である光重合開始剤と、
紫外線吸収剤と、を有する粘着剤からなり、
波長380nmにおける前記粘着剤層の光線透過率が40%以下であり、
粘着剤層に対する活性エネルギー線照射前において、前記粘着剤層のゲル分率が20%以上50%以下であり、
粘着剤層に対する活性エネルギー線照射後において、前記粘着剤層のゲル分率が40%以上90%以下であり、
活性エネルギー線照射前における前記粘着剤層のゲル分率に対する、活性エネルギー線照射後における前記粘着剤層のゲル分率の比が1.05以上であることを特徴とする表示体の製造方法。
【請求項2】
活性エネルギー線照射前における前記粘着剤層の貯蔵弾性率に対する、活性エネルギー線照射後における前記粘着剤層の貯蔵弾性率の比が1.20以上であることを特徴とする請求項1に記載の表示体の製造方法。
【請求項3】
粘着剤層に対する活性エネルギー線照射後において、前記粘着剤層の貯蔵弾性率が0.05MPa以上0.50MPa以下であることを特徴とする請求項2に記載の表示体の製造方法。
【請求項4】
粘着剤層に対する活性エネルギー線照射前において、前記粘着剤層の貯蔵弾性率が0.01MPa以上0.20MPa以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の表示体の製造方法。
【請求項5】
粘着剤層に対する活性エネルギー線照射後において、前記粘着剤層の粘着力が、20N/25mm以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の表示体の製造方法。
【請求項6】
前記紫外線吸収剤の含有量が、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、2質量部以上25質量部以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の表示体の製造方法。
【請求項7】
前記第1の表示体構成部材および前記第2の表示体構成部材の少なくともいずれか一方は段差を有し、
前記粘着剤層は、前記段差に沿って貼合されていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の表示体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレクトボンディングフィルム、表示体および表示体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイレクトボンディングは、液晶素子、発光ダイオード(LED)素子、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子等を有する表示体モジュールを使用した表示体(ディスプレイ)の製造において採用される技術である。
【0003】
表示体において、映像が表示される表示体モジュール上には、表示体モジュールを保護するための保護パネルが配置される。従来、表示体モジュール上には、空気層からなる隙間(エアーギャップ)を介して保護パネルが配置されていた。このような構成により、表示体の製造は容易となるものの、表示体モジュールからの表示光がエアーギャップにおいて反射しやすく、映像の視認性が低下してしまうという問題があった。
【0004】
そこで、表示体モジュールと保護パネルとを光学的に透明な粘着剤により接着し、表示体モジュールと保護パネルとの間のエアーギャップを接着剤で充填するダイレクトボンディングが行われている。ダイレクトボンディングを採用することにより、映像のコントラストが高くなり、視認性が向上し、映り込みも低減できる。さらに、エアーギャップが存在しないため、表示体の強度が高くなり、結露等を防止できる。このようなダイレクトボンディングに用いられるフィルム状の粘着剤は、ダイレクトボンディングフィルムと呼ばれる。
【0005】
ところで、紫外線は、人体に有害であるだけでなく、機器を構成する部材等を劣化させてしまう。そこで、紫外線吸収能を有する部材を、紫外線を透過する材料(たとえば、ガラス)に貼合する、または、当該部材を機器内に組み込むことにより、紫外線から人体または機器を保護することが行われている。
【0006】
たとえば、特許文献1は、車輌、建築物等の窓ガラスに貼合される粘着シートにおいて、粘着剤に紫外線吸収剤を含有させることを開示している。この紫外線吸収剤を含む粘着剤は、電子線照射を利用する重合反応により得られる。
【0007】
また、紫外線から保護すべき機器としては、屋外で使用される携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末等の表示体を備える各種モバイル電子機器が例示される。モバイル電子機器が備える表示体においては、表示体にセンサーが組み込まれ、表示体がタッチパネルを兼ねることが多い。
【0008】
上述したように、モバイル電子機器は屋外で使用されるため、その構成部材は紫外線の影響により劣化してしまう。このような劣化を抑制するために、紫外線吸収能を有する部材が電子機器内に組み込まれる。
【0009】
このような部材として、電子機器の表面側に配置される保護パネルと、他の構成部材とを貼合する粘着剤に紫外線吸収能を持たせることが知られている。たとえば、特許文献2は、表示体を構成する表示体構成部材同士を貼合するための粘着シートが紫外線吸収層を有していることを開示している。
【0010】
また、特許文献3~5には、表示体を構成する表示体構成部材同士を貼合するための粘着剤が紫外線硬化型であり、かつ紫外線吸収剤を含むことが開示されている。
【0011】
ところで、表示体構成部材同士を貼合するための粘着剤には、紫外線吸収能だけでなく、表示体構成部材の形状および表示体が曝される環境に起因して要求される特性がある。
【0012】
たとえば、保護パネルの表示体モジュール側には、額縁状の印刷層が形成され、表示体の厚み方向に段差として存在することがある。保護パネルと表示体モジュールとを貼合するダイレクトボンディングフィルムの場合、ダイレクトボンディングフィルムが有する粘着剤層がその段差に追従して貼合しないと、段差近傍で粘着剤層が浮き上がり空隙が形成される。その結果、その空隙に起因して光の反射損失が生じ、ディスプレイの画質が低下してしまう。したがって、段差を有する保護パネルに貼合されるダイレクトボンディングフィルムには、段差追従性が要求される。
【0013】
さらに、電子機器の薄型化・軽量化に伴い、保護パネルは、従来のガラス板からアクリル板やポリカーボネート板等のプラスチック板への変更も検討されている。保護パネルと表示体モジュールとをダイレクトボンディングフィルムにより貼合している構成において、保護パネルをプラスチック板に変更した場合、高温高湿条件下においてプラスチック板からアウトガスが発生して、気泡、浮き、剥がれ等のブリスターが発生するという新たな問題が生じている。このため、表示体モジュールと保護パネルとを貼合するためのダイレクトボンディングフィルムが有する粘着剤層には、耐ブリスター性を要求されることが多くなってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2013-249345号公報
【文献】特開2012-211305号公報
【文献】特開2016-155981号公報
【文献】特許5307380号公報
【文献】特許5528861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1に開示されている粘着剤は、表示体の構成部材同士を貼合するための粘着剤ではないので、段差追従性については何ら考慮されていない。
【0016】
また、特許文献2に開示されている粘着シートは、粘着剤層と紫外線吸収層とが積層された構成と、紫外線吸収剤を有する粘着剤層からなる構成と、がある。しかしながら、粘着剤層が紫外線吸収剤を含む場合には、粘着剤組成物を熱硬化させることにより粘着剤を得ている。この粘着剤は、段差追従性および耐ブリスター性に劣るという問題がある。
【0017】
特許文献3~5に開示されている粘着剤は、段差追従性および耐ブリスター性を高いレベルで両立できないという問題があった。
【0018】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、紫外線吸収能を有しつつ、良好な段差追従性と良好な耐ブリスター性とを両立できるダイレクトボンディングフィルムを提供することを目的とする。また、当該ダイレクトボンディングフィルムを用いて構成される表示体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様は、
[1]活性エネルギー線硬化性の粘着剤層を有するダイレクトボンディングフィルムであって、
波長380nmにおける粘着剤層の光線透過率が40%以下であり、
粘着剤層に対する活性エネルギー線照射前において、粘着剤層のゲル分率が20%以上55%以下であり、
粘着剤層に対する活性エネルギー線照射後において、粘着剤層のゲル分率が40%以上90%以下であり、
活性エネルギー線照射前における粘着剤層のゲル分率に対する、活性エネルギー線照射後における粘着剤層のゲル分率の比が1.05以上であることを特徴とするダイレクトボンディングフィルムである。
【0020】
[2]活性エネルギー線照射前における粘着剤層の貯蔵弾性率に対する、活性エネルギー線照射後における粘着剤層の貯蔵弾性率の比が1.20以上であることを特徴とする[1]に記載のダイレクトボンディングフィルムである。
【0021】
[3]粘着剤層に対する活性エネルギー線照射後において、粘着剤層の貯蔵弾性率が0.05MPa以上0.50MPa以下であることを特徴とする[2]に記載のダイレクトボンディングフィルムである。
【0022】
[4]粘着剤層に対する活性エネルギー線照射前において、粘着剤層の貯蔵弾性率が0.01MPa以上0.20MPa以下であることを特徴とする[2]または[3]に記載のダイレクトボンディングフィルムである。
【0023】
[5]粘着剤層に対する活性エネルギー線照射後において、粘着剤層の粘着力が、20N/25mm以上であることを特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載のダイレクトボンディングフィルムである。
【0024】
[6]粘着剤層が、
(メタ)アクリル酸エステル共重合体と熱架橋剤とから構成される架橋構造と、
活性エネルギー線硬化性成分と、
濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長380nmの吸光度が1.0以上である光重合開始剤と、
紫外線吸収剤と、を有する粘着剤からなることを特徴とする[1]から[5]のいずれかに記載のダイレクトボンディングフィルムである。
【0025】
[7]ダイレクトボンディングフィルムが、剥離シートを有し、
粘着剤層の両主面が、剥離シートの剥離面と接触して構成されることを特徴とする[1]から[6]のいずれかに記載のダイレクトボンディングフィルムである。
【0026】
本発明の第2の態様は、
[8]第1の表示体構成部材と、
第2の表示体構成部材と、
第1の表示体構成部材と第2の表示体構成部材とを互いに貼合する硬化後粘着剤層と、を有する表示体であって、
硬化後粘着剤層は、[1]から[7]のいずれかに記載のダイレクトボンディングフィルムが有する粘着剤層が硬化してなることを特徴とする表示体である。
【0027】
[9]第1の表示体構成部材および第2の表示体構成部材の少なくともいずれか一方は段差を有し、
硬化後粘着剤層は、段差に沿って貼合されていることを特徴とする[8]に記載の表示体である。
【0028】
本発明の第3の態様は、
[10]第1の表示体構成部材と第2の表示体構成部材とを、[1]から[7]のいずれかに記載のダイレクトボンディングフィルムが有する粘着剤層を介して貼合してなる積層体を作製する工程と、
積層体の粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とする工程と、を有することを特徴とする表示体の製造方法である。
【0029】
[11]第1の表示体構成部材および第2の表示体構成部材の少なくともいずれか一方は段差を有し、
粘着剤層は、段差に沿って貼合されていることを特徴とする[10]に記載の表示体の製造方法である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、紫外線吸収能を有しつつ、良好な段差追従性と良好な耐ブリスター性とを両立できるダイレクトボンディングフィルムを提供することができる。また、当該ダイレクトボンディングフィルムを用いて構成される表示体およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るダイレクトボンディングフィルムの断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、詳細に説明する。
【0033】
(1.ダイレクトボンディングフィルム)
本実施形態に係るダイレクトボンディングフィルム1は、図1に示すように、粘着剤層11と、剥離シート12a,12bと、を有する。この粘着剤層11は、活性エネルギー線照射後に硬化し、硬化後粘着剤層となる。粘着剤層11は、後述する粘着剤からなる。また、2枚の剥離シート12a,12bは、その剥離面が当該粘着剤層の両主面に接するように配置されている。換言すれば、粘着剤層11は、2枚の剥離シート12a,12bに挟持されている。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0034】
粘着剤層11の厚みは、20μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、50μm以上であることが特に好ましい。一方、当該厚みは、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、さらに150μm以下が特に好ましい。
【0035】
厚みが小さすぎると、粘着力が小さくなる傾向があり、段差追従性および耐ブリスター性に劣る傾向にある。一方、厚みが大きすぎると、加工性が悪化する傾向にある。
【0036】
(1.1.粘着剤)
本実施形態では、粘着剤層11は、以下に説明する粘着剤からなる。
【0037】
(1.2.粘着剤の物性)
本実施形態では、粘着剤層11を構成する粘着剤は、以下に示すような物性を有している。
【0038】
(1.2.1.光線透過率)
本実施形態では、波長380nmにおける粘着剤の光線透過率は、40%以下であり、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。下限値は、特に限定されないが、通常、0%以上である。粘着剤の光線透過率が上記の範囲内である場合には、粘着剤に入射する紫外線の少なくとも一部が粘着剤を透過できないので、当該粘着剤からなる粘着剤層11は良好な紫外線吸収能を示すことができる。
【0039】
(1.2.2.活性エネルギー線照射前のゲル分率)
本実施形態では、活性エネルギー線を照射前後において、粘着剤のゲル分率を変化させている。このゲル分率の変化に伴い、活性エネルギー線照射前後において、粘着剤の粘着力および凝集性を変化させることができる。
本実施形態では、活性エネルギー線照射前の粘着剤のゲル分率は、20%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。また、当該ゲル分率は、55%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。活性エネルギー線照射前の粘着剤のゲル分率が上記範囲内であることで、粘着剤の柔軟性が良好となる。その結果、良好な段差追従性を示すことができる。
【0040】
したがって、活性エネルギー線照射前の粘着剤からなる粘着剤層を、段差を有する被着体に貼合した場合、当該段差に十分に追従し、被着体と粘着剤との間に隙間や浮きが生じることを抑制することができる。
【0041】
(1.2.3.活性エネルギー線照射後のゲル分率)
また、活性エネルギー線照射後の粘着剤のゲル分率、すなわち、硬化後粘着剤層を構成する硬化後粘着剤のゲル分率は、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。また、当該ゲル分率は、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、70%以下であることが好ましい。
【0042】
硬化後粘着剤のゲル分率が上記範囲内であることで、硬化後粘着剤層の凝集力が高くなる傾向にある。
【0043】
さらに、本実施形態では、活性エネルギー線照射前の粘着剤のゲル分率と、活性エネルギー線照射後の粘着剤のゲル分率と、の比を所定の範囲に制御している。具体的には、活性エネルギー線照射前の粘着剤のゲル分率に対する活性エネルギー線照射後の粘着剤のゲル分率の比(活性エネルギー線照射後の粘着剤のゲル分率/活性エネルギー線照射前の粘着剤のゲル分率)が、1.05以上である。すなわち、硬化後粘着剤のゲル分率は、活性エネルギー線を照射する前のゲル分率よりも高い。これは、活性エネルギー線の照射により活性エネルギー線硬化性成分が重合して重合構造が形成されたためだと考えられる。
【0044】
活性エネルギー線照射前後のゲル分率の比を上記の範囲内とすることにより、粘着剤は、硬化前には良好な段差追従性を示し、硬化後には好適な凝集力を有することができる。したがって、粘着剤層を被着体に貼合した直後の段差追従性および耐ブリスター性に加えて、高温高湿条件下における段差追従性および耐ブリスター性を良好にすることができる。
【0045】
上記の活性エネルギー線照射前後のゲル分率の比は、1.08以上であることが好ましく、1.10以上であることがより好ましい。一方、活性エネルギー線照射前後のゲル分率の比の上限は特に制限されないが、本実施形態では、5.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、1.50以下であることがさらに好ましい。
【0046】
なお、粘着剤のゲル分率は、後述する試験例に示す方法により測定すればよい。
【0047】
(1.2.4.活性エネルギー線照射前の貯蔵弾性率)
本実施形態では、周波数1kHzで測定した活性エネルギー線照射前の粘着剤の貯蔵弾性率は、0.20MPa以下であることが好ましく、0.10MPa以下であることがより好ましく、0.08MPa以下であることがさらに好ましい。一方、当該貯蔵弾性率は、0.01MPa以上であることが好ましく、0.02MPa以上であることがより好ましく、0.04MPa以上であることがさらに好ましい。活性エネルギー線照射前の粘着剤の貯蔵弾性率が上記の範囲内であることで、粘着剤の柔軟性が良好となる。その結果、良好な段差追従性を示すことができる。
【0048】
(1.2.5.活性エネルギー線照射後の貯蔵弾性率)
周波数1kHzで測定した活性エネルギー線照射後の粘着剤、すなわち、硬化後粘着剤の貯蔵弾性率は、0.50MPa以下であることが好ましく、0.20MPa以下であることがより好ましい。また、当該貯蔵弾性率は、0.05MPa以上であることが好ましく、0.08MPa以上であることがより好ましく、0.10MPa以上であることがさらに好ましい。
【0049】
硬化後粘着剤の貯蔵弾性率は、活性エネルギー線を照射する前の貯蔵弾性率よりも1桁程度高くなっている。これは、ゲル分率が高くなる理由と同様に、活性エネルギー線の照射により活性エネルギー線硬化性成分が重合して重合構造が形成されたためだと考えられる。硬化後粘着剤の貯蔵弾性率が上記範囲内であることで、硬化後粘着剤層の凝集力が高くなる傾向にある。
【0050】
さらに、本実施形態では、活性エネルギー線照射前の粘着剤の貯蔵弾性率と、活性エネルギー線照射後の粘着剤の貯蔵弾性率と、の比が所定の範囲内であることが好ましい。具体的には、活性エネルギー線照射前の粘着剤の貯蔵弾性率に対する活性エネルギー線照射後の粘着剤の貯蔵弾性率の比(活性エネルギー線照射後の粘着剤の貯蔵弾性率/活性エネルギー線照射前の粘着剤の貯蔵弾性率)が、1.20以上であることが好ましい。すなわち、硬化後粘着剤の貯蔵弾性率は、活性エネルギー線を照射する前の粘着剤の貯蔵弾性率よりも高い。
【0051】
活性エネルギー線照射前後の貯蔵弾性率の比を上記の範囲内とすることにより、上記のゲル分率と同様に、粘着剤は、硬化前には良好な段差追従性を示し、硬化後には好適な凝集力を有することができる。したがって、粘着剤層を被着体に貼合した直後の段差追従性および耐ブリスター性に加えて、高温高湿条件下における段差追従性および耐ブリスター性を良好にすることができる。
【0052】
上記の活性エネルギー線照射前後の貯蔵弾性率の比は、1.20以上であることが好ましく、1.50以上であることがより好ましく、1.80以上であることがさらに好ましい。一方、活性エネルギー線照射前後の貯蔵弾性率の比の上限は特に制限されないが、本実施形態では、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。なお、粘着剤の貯蔵弾性率は、後述する試験例に示す方法により測定すればよい。
【0053】
(1.2.6.活性エネルギー線照射後の粘着力)
活性エネルギー線照射後の粘着剤、すなわち、硬化後粘着剤のソーダライムガラスに対する粘着力の下限値は、20N/25mm以上であることが好ましく、30N/25mm以上であることがより好ましく、40N/25mm以上であることがさらに好ましい。また、当該粘着力の上限値は、特に限定されないが、通常、80N/25mm以下であることが好ましく、60N/25mm以下であることがより好ましく、50N/25mm以下であることがさらに好ましい。
【0054】
硬化後粘着剤の粘着力が小さすぎると、耐ブリスター性に劣る傾向にある。また、段差近傍から粘着剤が浮きや剥がれが発生し易く、高温高湿条件下における段差追従性が劣る傾向がある。本明細書における粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいい、具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0055】
(1.2.7.活性エネルギー線照射後のヘイズ値)
活性エネルギー線照射後の粘着剤、すなわち、硬化後粘着剤のヘイズ値は、5%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.8%以下であることがさらに好ましい。硬化後粘着剤のヘイズ値が5%以下であると、透明性が高く、光学用途(表示体用)として好適である。硬化後粘着剤のヘイズ値の下限値は、特に限定されないが、通常、0%以上である。なお、本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値とし、具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0056】
(1.3.粘着剤の構造および構成成分)
粘着剤は上記の物性を有していれば、粘着剤の構造および組成は特に限定されないが、本実施形態では、以下に示す構造および構成成分を有していることが好ましい。
【0057】
本実施形態では、粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と熱架橋剤(B)とから構成される架橋構造を有するとともに、活性エネルギー線硬化性成分(C)と、濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長380nmの吸光度が1.0以上である光重合開始剤(D)と、紫外線吸収剤(E)とを含有することが好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0058】
この粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、熱架橋剤(B)と、活性エネルギー線硬化性成分(C)と、濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長380nmの吸光度が1.0以上である光重合開始剤(D)と、紫外線吸収剤(E)とを含有する粘着性組成物を加熱処理して熱架橋させることにより得られることが好ましい。以下、各成分について詳細に説明する。
【0059】
(1.3.1.(メタ)アクリル酸エステル共重合体)
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、後述する熱架橋剤(B)と反応する反応性基を分子内に有する反応性基含有モノマーを含むことが好ましい。この反応性基含有モノマー由来の反応性基が熱架橋剤(B)と反応して、架橋構造(三次元網目構造)が形成されることにより、被膜強度の比較的高い粘着剤を得ることができる。
【0060】
(1.3.1.1.反応性基含有モノマー)
上記の反応性基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)が好ましい。熱架橋剤(B)との反応性に優れ、被着体への悪影響が少ないからである。
【0061】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0062】
これらの中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)における水酸基と熱架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の観点から(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましく、アクリル酸2-ヒドロキシエチルおよびアクリル酸4-ヒドロキシブチルがより好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを、3質量%以上含有することが好ましく、10質量%以上含有することがより好ましく、15質量%以上含有することがさらに好ましく、18質量%以上含有することが特に好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを、50質量%以下含有することが好ましく、45質量%以下含有することがより好ましく、40質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0064】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)がモノマー単位として水酸基含有モノマーを上記の範囲で含有することにより、得られる粘着剤において良好な架橋構造が形成され、被膜強度の比較的高い粘着剤が得られるとともに、耐湿熱白化性に優れる。これは、粘着剤中に、所定量の水酸基が残存するためである。
【0065】
水酸基は親水性基であり、そのような親水性基が所定量粘着剤中に存在すると、粘着剤が高温高湿条件下に置かれた場合でも、その高温高湿条件下で粘着剤に浸入した水分との相溶性が良く、その結果、常温常湿に戻したときの粘着剤の白化が抑制されることとなる。
【0066】
水酸基含有モノマー以外の反応性基含有モノマーとしては、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量が比較的低くても、所望の凝集力が発揮される観点から、カルボキシ基含有モノマーが好ましい。
【0067】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0068】
これらの中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)におけるカルボキシ基と熱架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の観点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が、当該共重合体を構成するモノマー単位としてカルボキシ基含有モノマーを含む場合、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該カルボキシ基含有モノマーを、5質量%以上含有することが好ましく、10質量%以上含有することがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを、30質量%以下含有することが好ましく、15質量%以下含有することがより好ましい。
【0070】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)がモノマー単位としてカルボキシ基含有モノマーを上記の範囲で含有することにより、得られる粘着剤において良好な架橋構造が形成され、被膜強度の比較的高い粘着剤が得られる。
【0071】
また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを微量含むまたは含まないことも好ましい。カルボキシ基は酸成分であるため、カルボキシ基含有モノマーを含有しないことにより、粘着剤の貼付対象に、酸により不具合が生じるもの、例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)等の透明導電膜や金属膜などが存在する場合にも、酸によるそれらの不具合(腐食、抵抗値変化等)を抑制することができる。
【0072】
ただし、上記の不具合が生じない程度に、カルボキシ基含有モノマーを所定量含有することは許容される。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)中に、モノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを5質量%未満、好ましくは2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下の量で含有することが許容される。
【0073】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
(1.3.1.2.(メタ)アクリル酸アルキルエステル)
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、粘着剤が好ましい粘着性を発現することができる。また、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、より好ましい粘着性を発現できる観点からは、直鎖状または分岐鎖状の構造であることが好ましい。
【0075】
アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0076】
これらの中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸n-ブチルまたは(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましく、アクリル酸n-ブチルまたはアクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含有することがより好ましく、60質量%以上含有することがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40質量%以上含有すれば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)に好適な粘着性を付与させることができる。
【0078】
また、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを90質量%以下含有することが好ましく、80質量%以下含有することがより好ましく、70質量%以下含有することがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量を90質量%以下とすることにより、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)中に、所望の特性を発現させるための他のモノマー成分を所望量導入することができる。
【0079】
(1.3.1.3.脂環式構造含有モノマー)
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)を含有することが好ましい。脂環式構造含有モノマーは嵩高いため、これを共重合体中に存在させることにより、重合体同士の間隔を広げるものと推定される。その結果、得られる粘着剤を柔軟性に優れたものとすることができる。したがって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がモノマー単位として脂環式構造含有モノマーを含有することにより、粘着性組成物を架橋させて得られる粘着剤は、初期の段差追従性により優れる。
【0080】
脂環式構造含有モノマーにおける脂環式構造の炭素環は、飽和構造のものであってもよいし、不飽和結合を一部に有するものであってもよい。また、脂環式構造は、単環の脂環式構造であってもよいし、二環、三環等の多環の脂環式構造であってもよい。得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)において重合体同士の間隔を広げ、粘着剤の柔軟性を効果的に発揮させる観点から、上記の脂環式構造は、多環の脂環式構造(多環構造)であることが好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と他の成分との相溶性の観点から、上記の多環構造は、二環から四環であることが特に好ましい。
【0081】
また、上記と同様に粘着剤の柔軟性を効果的に発揮させる観点から、脂環式構造の炭素数(環を形成している部分の全ての炭素数をいい、複数の環が独立して存在する場合には、その合計の炭素数をいう)は、通常5以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましい。一方、脂環式構造の炭素数の上限は特に制限されないが、上記と同様に相溶性の観点から、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
【0082】
脂環式構造としては、例えば、シクロヘキシル骨格、ジシクロペンタジエン骨格、アダマンタン骨格、イソボルニル骨格、シクロアルカン骨格(シクロヘプタン骨格、シクロオクタン骨格、シクロノナン骨格、シクロデカン骨格、シクロウンデカン骨格、シクロドデカン骨格等)、シクロアルケン骨格(シクロヘプテン骨格、シクロオクテン骨格等)、ノルボルネン骨格、ノルボルナジエン骨格、キュバン骨格、バスケタン骨格、ハウサン骨格、スピロ骨格などを含むものが挙げられる。
【0083】
これらの中でも、より優れた耐久性を得る観点から、ジシクロペンタジエン骨格(脂環式構造の炭素数:10)、アダマンタン骨格(脂環式構造の炭素数:10)またはイソボルニル骨格(脂環式構造の炭素数:7)を含むものが好ましく、イソボルニル骨格を含むものがより好ましい。
【0084】
したがって、上記の脂環式構造含有モノマーとしては、上記の骨格を含む(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が挙げられる。
【0085】
これらの中でも、より優れた耐久性を得る観点から、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチルまたは(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましく、(メタ)アクリル酸イソボルニルがより好ましく、アクリル酸イソボルニルが特に好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が、当該共重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、4質量%以上含有することがより好ましく、8質量%以上含有することがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマーを40質量%以下含有することが好ましく、25質量%以下含有することがより好ましく、15質量%以下含有することがさらに好ましい。脂環式構造含有モノマーの含有量が上記の範囲内であることで、得られる粘着剤の柔軟性が良好となり、初期の段差追従性がより優れたものとなる。
【0087】
(1.3.1.4.窒素原子含有モノマー)
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、分子内に窒素原子を有するモノマー(窒素原子含有モノマー)を含有することが好ましい。なお、反応性基含有モノマーとして例示したアミノ基含有モノマーは、当該窒素原子含有モノマーから除かれる。窒素原子含有モノマーを構成単位として共重合体中に存在させることにより、アクリル酸エステル共重合体(A)と熱架橋剤(B)との反応を促進させることができ、粘着剤に極性を付与し、粘着剤自体の凝集力を高めることができる。
【0088】
上記の窒素原子含有モノマーとしては、第3級アミノ基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、窒素含有複素環を有するモノマーなどが挙げられる。これらの中でも、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。
【0089】
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等が挙げられる。
【0090】
これらの中でも、より優れた粘着力を得る観点から、N-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、N-アクリロイルモルホリンがより好ましい。
【0091】
上述の窒素含有複素環を有するモノマー以外の窒素原子含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
【0092】
上記の窒素原子含有モノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が、当該共重合体を構成するモノマー単位として窒素原子含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、4質量%以上含有することがより好ましく、8質量%以上含有することがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを40質量%以下含有することが好ましく、25質量%以下含有することがより好ましく、15質量%以下含有することがさらに好ましい。窒素原子含有モノマーの含有量が上記の範囲内にあることで、得られる粘着剤の凝集力が効果的に向上する。
【0094】
(1.3.1.5.その他)
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、必要に応じて、当該共重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性を有する官能基を含まないモノマーが好ましい。このような他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0096】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、下限値として10万以上であることが好ましく、特に25万以上であることが好ましく、さらには40万以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の下限値が上記以上であると、得られる粘着剤の被膜強度がより高いものとなる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、上限値として90万以下であることが好ましく、特に75万以下であることが好ましく、さらには60万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値が上記以下であると、得られる粘着剤の段差追従性がより優れたものとなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0097】
なお、粘着性組成物において、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
(1.3.2.熱架橋剤)
熱架橋剤(B)を含有する粘着性組成物を加熱すると、熱架橋剤(B)は(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と架橋し、架橋構造(三次元網目構造)を形成する。これにより、被膜強度の比較的高い粘着剤が得られる。
【0099】
上記の熱架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が有する反応性基と反応するものであればよい。例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。
【0100】
これらは、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が有する反応性基の反応性に応じて選択すればよい。たとえば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が有する反応性基が水酸基の場合、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が有する反応性基がカルボキシ基の場合、カルボキシ基との反応性に優れたエポキシ系架橋剤を使用することが好ましい。なお、熱架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0101】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。
【0102】
これらの中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0103】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。これらの中でもカルボキシ基との反応性の観点から、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0104】
粘着性組成物中における熱架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。熱架橋剤(B)の含有量の下限値が上記の値であることで、得られる粘着剤が良好な凝集力を発揮し、被膜強度の比較的高い粘着剤が得られる。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、0.4質量部以下であることがさらに好ましい。熱架橋剤(B)の含有量の上限値が上記の値であることで、得られる粘着剤が十分な柔軟性を有するものとなり、初期の段差追従性に優れた粘着剤が得られる。
【0105】
(1.3.3.活性エネルギー線硬化性成分)
粘着性組成物を熱架橋して得られる粘着剤は、未硬化の活性エネルギー線硬化性成分(C)を含有している。したがって、本実施形態に係る粘着剤は、活性エネルギー線硬化性の粘着剤である。この粘着剤が、被着体に貼付後に活性エネルギー線が照射されると、後述する光重合開始剤(D)の開裂を契機として、活性エネルギー線硬化性成分(C)の重合が促進される。その重合した活性エネルギー線硬化性成分(C)は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および熱架橋剤(B)の熱架橋により形成された架橋構造(三次元網目構造)に絡み付くものと推定される。このような高次構造を有する粘着剤は、高温高湿条件下での段差追従性および耐ブリスター性に優れたものとなる。
【0106】
活性エネルギー線硬化性成分(C)は、後述する光重合開始剤(D)の存在下で活性エネルギー線の照射によって硬化し、上記の効果が得られる成分であれば特に制限されない。モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)等との相溶性に優れる分子量1,000未満の多官能アクリレート系モノマーが好ましい。
【0107】
分子量1000未満の多官能アクリレート系モノマーとしては、2官能型、3官能型、4官能型、5官能型、6官能型アクリレート系モノマーが好ましい。2官能型アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられる。
【0108】
3官能型アクリレート系モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0109】
4官能型アクリレート系モノマーとしては、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。5官能型アクリレート系モノマーとしては、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。6官能型アクリレート系モノマーとしては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0110】
これらの中でも、得られる粘着剤の高温高湿条件下での段差追従性および耐ブリスター性の観点から、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の分子内にイソシアヌレート構造を含有する多官能アクリレート系モノマーが好ましい。これらの中でも、3官能型以上、かつ、分子内にイソシアヌレート構造を含有する多官能アクリレート系モノマーがより好ましい。具体的には、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレートが特に好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
活性エネルギー線硬化性成分(C)としては、活性エネルギー線硬化型のアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。このアクリレート系オリゴマーは重量平均分子量50,000以下のものが好ましい。このようなアクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系等が挙げられる。
【0112】
上記のアクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、50,000以下であることが好ましく、500~50,000であることがより好ましく、3,000~40,000であることがさらに好ましい。これらのアクリレート系オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
また、活性エネルギー線硬化性成分(C)としては、(メタ)アクリロイル基を有する基が側鎖に導入されたアダクトアクリレート系ポリマーを用いることもできる。このようなアダクトアクリレート系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に架橋性官能基を有する単量体との共重合体を用い、当該共重合体の架橋性官能基の一部に、(メタ)アクリロイル基および架橋性官能基と反応する基を有する化合物を反応させることにより得ることができる。
【0114】
上記のアダクトアクリレート系ポリマーの重量平均分子量は、5万~90万程度であることが好ましく、10万~50万程度であることがより好ましい。
【0115】
活性エネルギー線硬化性成分(C)としては、前述した多官能アクリレート系モノマーが好ましいが、多官能アクリレート系モノマー、アクリレート系オリゴマーおよびアダクトアクリレート系ポリマーから、1種を選んで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいし、これらの成分と他の活性エネルギー線硬化性成分とを組み合わせて用いてもよい。
【0116】
粘着性組成物中における活性エネルギー線硬化性成分(C)の含有量は、得られる粘着剤の前述したゲル分率の比や貯蔵弾性率の比を好ましいものにできる観点から、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることがさらに好ましい。これにより、得られる粘着剤の高温高湿条件下での段差追従性および耐ブリスター性をより優れたものにすることができる。一方、上記の含有量が多くなりすぎると、活性エネルギー線硬化後の粘着剤の架橋が密になり過ぎてしまい、粘着力が低下して耐ブリスター性が悪化したり、また、耐久性が悪化する傾向がある。この観点から、活性エネルギー線硬化性成分(C)の含有量の上限値は、30質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
【0117】
(1.3.4.光重合開始剤)
本実施形態では、光重合開始剤(D)としては、濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長380nmの吸光度が1.0以上である光重合開始剤を用いる。すなわち、光重合開始剤(D)の吸光が比較的長波長側においても生じることにより、本実施形態に係る粘着剤に後述する紫外線吸収剤(E)が含まれていても、当該紫外線吸収剤(E)が吸収する光の波長よりも長い波長を有する光のエネルギーを利用して、粘着剤を十分に重合させ、かつ紫外線吸収能を有する硬化後粘着剤とすることができる。
【0118】
また、光重合開始剤(D)の波長380nmの吸光度は1.1以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましい。当該吸光度の上限値は特に限定されないが、通常は2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。吸光度が大きすぎると、ダイレクトボンディングフィルム形成時または保管時に、蛍光灯等の環境光により、光重合開始剤(D)による活性エネルギー線硬化性成分(C)の硬化反応が進行してしまう場合がある。なお、光重合開始剤(D)の吸光度は、後述する実施例に示す方法により測定すればよい。
【0119】
また、光重合開始剤(D)において、濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長200~500nmの吸光度の吸収極大波長が350nm以上にあることが好ましく、370nm以上にあることがより好ましく、380nm以上にあることがさらに好ましい。なお、波長200~500nmの吸光度の吸収極大波長が複数存在する場合には、少なくとも一つの吸収極大波長が上記範囲にあればよい。
【0120】
吸収極大波長が上記の範囲内であることにより、本実施形態に係る粘着剤を十分に光重合できる程度のエネルギーを粘着剤に供給することができる。その結果、紫外線吸収能を有しながら、段差追従性および耐ブリスター性がより優れた硬化後粘着剤を得ることができる。
【0121】
一方、上記吸収極大波長の上限値は特に制限されないが、吸光度と同様に、環境光に起因する重合反応の進行を防止する観点から、450nm以下であることが好ましく、410nm以下であることがより好ましく、405nm以下であることがさらに好ましい。
【0122】
このような光重合開始剤(D)としては、たとえば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0123】
粘着性組成物における光重合開始剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましい。光重合開始剤(D)の含有量の下限値が上記であることで、粘着剤中に紫外線吸収剤を含有していても、活性エネルギー線が照射されると、光重合開始剤(D)が開裂し易くなり、これを契機として、活性エネルギー線硬化性成分(C)の重合が促進されて十分に硬化された硬化後粘着剤を得ることができる。
【0124】
また、光重合開始剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、3.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下であることがより好ましい。光重合開始剤(D)の含有量が多すぎると、硬化後粘着剤中に光重合開始剤が残存し易くなり、これにより、例えば、高温高湿条件下において残存した光重合開始剤の揮発によって気泡等が発生してしまい、高温高湿条件下における段差追従性の悪化や耐ブリスター性の悪化につながり易い。よって、光重合開始剤(D)の含有量の上限値が上記の値であることで、優れた段差追従性および耐ブリスター性を有する粘着剤を得ることができる。
【0125】
また、粘着性組成物における光重合開始剤(D)の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分(C)100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。光重合開始剤(D)の含有量の下限値が上記であることで、粘着剤中に紫外線吸収剤を含有していても、活性エネルギー線が照射されると、光重合開始剤(D)が開裂し易くなり、これを契機として、活性エネルギー線硬化性成分(C)の重合が促進されて十分に硬化された硬化後粘着剤を得ることができる。
【0126】
また、光重合開始剤(D)の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分(C)100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。光重合開始剤(D)の含有量の上限値が上記の値であることで、硬化前においては、環境光に起因する重合反応の進行を防止することができるため、初期の段差追従性に優れた粘着剤を得ることができる。また、硬化後においては、硬化後粘着剤中に光重合開始剤が残存しにくいものとなるため、高温高湿条件下における段差追従性や耐ブリスター性に優れるものとなる。
【0127】
(1.3.5.紫外線吸収剤)
粘着性組成物は、紫外線吸収剤(E)を含有する。上述したように、粘着性組成物を熱架橋して得られる粘着剤が紫外線吸収剤(E)を含有していても、光重合開始剤(D)を上記のものとすることで、十分に硬化された粘着剤を得ることができる。その結果、粘着剤が硬化してなる硬化後粘着剤の硬化性が良好でありながら、たとえば、表示体の保護パネルの材質が、紫外線を透過するガラスから構成されていても、当該硬化後粘着剤は紫外線を吸収することができる。したがって、表示体を構成する部材の劣化を抑制することができる。
【0128】
紫外線吸収剤(E)としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0129】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0130】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0131】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(3-オクチルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-5-α-クミルフェニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(3-ノニルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-5-α-クミルフェニル]-s-トリアジン2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(3-デシルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-5-α-クミルフェニル]-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシエトキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0132】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレートなどが挙げられる。
【0133】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレートなどが挙げられる。
【0134】
これらの中で、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、および、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、および、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤がより好ましい。
【0135】
紫外線吸収剤(E)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることがさらに好ましい。また、紫外線吸収剤(E)の含有量は25質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることがさらに好ましい。紫外線吸収剤(E)の含有量が少なすぎると、紫外線の吸収が不十分となり、表示体を構成する部材の劣化を抑制できない傾向にある。一方、紫外線吸収剤(E)の含有量が多すぎると、粘着剤の硬化に利用される光もある程度吸収されてしまい、当該粘着剤の硬化が十分でない傾向にあり、高温高湿条件下における段差追従性や耐ブリスター性が悪化する。
【0136】
また、紫外線吸収剤(E)の含有量は、光重合開始剤(D)1質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、8質量部以上であることがさらに好ましい。
【0137】
また、上記含有量は、光重合開始剤(D)1質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。光重合開始剤(D)に対する紫外線吸収剤(E)の含有量が上記の範囲内であると、紫外線の吸収性が十分なものでありながら、光重合開始剤が開裂して十分に硬化することができる粘着剤を得ることができる。その結果、硬化後粘着剤は、表示体を構成する部材の劣化を抑制できるものとなる。
【0138】
(1.3.6.シランカップリング剤)
粘着性組成物は、さらにシランカップリング剤(F)を含有することが好ましい。これにより、被着体にガラス部材が含まれている場合、粘着剤および硬化後粘着剤と、当該ガラス部材との密着性が向上する。また、被着体にプラスチック部材が含まれている場合であっても、粘着剤および硬化後粘着剤と、プラスチック板との密着性が向上する。したがって、シランカップリング剤(F)を含有する粘着剤および硬化後粘着剤は、高温高湿条件下での段差追従性により優れたものとなる。
【0139】
本実施形態では、シランカップリング剤(F)として、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、光透過性を有するものが好ましい。
【0140】
このようなシランカップリング剤(F)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0141】
シランカップリング剤(F)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることがさらに好ましい。また、当該含有量は、3質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0142】
(1.3.7.その他の添加剤)
本実施形態に係る粘着剤は、必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、たとえば、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などが例示される。
【0143】
(1.3.8.粘着性組成物の製造)
粘着性組成物は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の溶液に、熱架橋剤(B)、活性エネルギー線硬化性成分(C)、光重合開始剤(D)、紫外線吸収剤(E)を添加し、十分に混合することにより製造することができる。必要に応じてシランカップリング剤(F)、添加剤等を添加してもよい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は以下のようにして製造すればよい。
【0144】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0145】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0146】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0147】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0148】
(1.3.9.粘着剤の製造)
粘着剤は、粘着性組成物における(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を熱架橋剤(B)により熱架橋して得られる。すなわち、粘着性組成物の熱架橋は、加熱処理により行う。なお、この加熱処理は、粘着性組成物の塗布後の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0149】
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、70~120℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、50秒~2分であることがより好ましい。さらに、加熱処理後、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けることが特に好ましい。
【0150】
上記の加熱処理(及び養生)により、熱架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が良好に架橋され、架橋構造が形成される。このような工程を経て、本実施形態に係る粘着剤が得られる。
【0151】
なお、粘着性組成物に含まれる他の成分(活性エネルギー線硬化性成分(C)、光重合開始剤(D)、紫外線吸収剤(E)等)は、熱架橋前後で含有量および性質は変化しない。
【0152】
(1.4.剥離シート)
剥離シート12a,12bは、ダイレクトボンディングフィルム1の使用時まで粘着剤層11を保護するものであり、ダイレクトボンディングフィルム1(粘着剤層11)を使用するときに剥離される。本実施形態に係るダイレクトボンディングフィルム1において、剥離シート12a,12bの一方または両方は必ずしも必要なものではない。
【0153】
剥離シート12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0154】
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
【0155】
なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0156】
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20μm以上、200μm以下である。
【0157】
(2.ダイレクトボンディングフィルムの製造)
ダイレクトボンディングフィルム1を製造する方法としては特に制限されず、公知の方法により製造すればよい。たとえば、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、上記の粘着性組成物の塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物を熱架橋することで所定の厚みを有する塗布層を形成する。形成した塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記ダイレクトボンディングフィルム1が得られる。
【0158】
ダイレクトボンディングフィルム1の他の製造例としては、一方の剥離シート12aの剥離面に、上記の粘着性組成物の塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物を熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12aを得る。また、他方の剥離シート12bの剥離面に、上記の粘着性組成物の塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物を熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12bを得る。そして、塗布層付きの剥離シート12aと塗布層付きの剥離シート12bとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記の積層された塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記ダイレクトボンディングフィルム1が得られる。この製造例によれば、粘着剤層11が厚い場合であっても、安定して製造することが可能となる。
【0159】
粘着性組成物の塗布液を塗布する方法としては、たとえばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が例示される。
【0160】
本実施形態に係るダイレクトボンディングフィルム1は、粘着剤層11が架橋構造を有するので、粘着剤層11の被膜強度が比較的高い。その結果、ダイレクトボンディングフィルム1を裁断加工等する際に、切断面にて粘着剤がはみ出して、刃に粘着剤が付着してしまう等の問題が発生することが抑制される。また、ダイレクトボンディングフィルム1の保管時等に、粘着剤層11から粘着剤が染み出すことも抑制される。
【0161】
(3.ダイレクトボンディングフィルムの使用)
本実施形態に係るダイレクトボンディングフィルム1は以下のように使用される。まず、ダイレクトボンディングフィルム1の粘着剤層11を第1の表示体構成部材と第2の表示体構成部材とに貼合する。続いて、第1の表示体構成部材または第2の表示体構成部材を介して粘着剤層11に対して所定の活性エネルギー線を照射し、粘着剤層11を硬化させて硬化後粘着剤層(後述する図2中では硬化後粘着剤層11’)とする。
【0162】
活性エネルギー線の照射前において、本実施形態では、粘着剤層11を構成する粘着剤は、架橋構造と、未硬化の活性エネルギー線硬化性成分との両方を含んでいるので、所定の凝集力を有しながら、粘着剤層が比較的柔らかい。したがって、段差を有する表示体構成部材にダイレクトボンディングフィルム1を貼付したときに、粘着剤層11が段差に十分追従し、段差近傍に隙間、浮き等が生じることが抑制される。
【0163】
そして、粘着剤層が比較的柔らかい状態で表示体構成部材に貼合した後に、粘着剤層に対して所定の活性エネルギー線を照射して、粘着剤層を硬化させる。このとき、粘着剤層が紫外線吸収剤を含有していても、光重合開始剤が開裂可能な波長が比較的長波長側にあるため、光重合開始剤が十分に開裂し、硬化が十分に促進される。その結果、紫外線吸収能を有しながらも、段差追従性が良好な状態で、硬化後粘着剤層の凝集力を高めることができる。したがって、耐ブリスター性が良好となる。
【0164】
特に、得られた積層体(表示体)を高温高湿条件下、例えば、85℃、85%RH条件下に72時間置いた場合でも、段差近傍に気泡、浮き、剥がれ等が発生することが抑制される。さらに、表示体構成部材と硬化後粘着剤層との界面における気泡、浮き、剥がれ等のブリスターの発生も抑制される。すなわち、本実施形態に係るダイレクトボンディングフィルム1は、紫外線吸収能を有しながらも、初期の段差追従性だけでなく、高温高湿条件下での段差追従性および耐ブリスター性にも優れる。
【0165】
(4.表示体)
図2に示すように、本実施形態に係る表示体2は、段差を有する第1の表示体構成部材21と、第2の表示体構成部材22と、それらの間に位置し、第1の表示体構成部材21および第2の表示体構成部材22を互いに貼合する硬化後粘着剤層11’とを有する。硬化後粘着剤層11’は、図1に示す粘着剤層11を活性エネルギー線照射により硬化した硬化物であり、第1の表示体構成部材21の段差に沿って貼合されている。この段差は、第1の表示体構成部材21に形成されている印刷層3の厚みに起因する。
【0166】
(4.1.硬化後粘着剤層)
硬化後粘着剤層11’は、上記のダイレクトボンディングフィルム1が有する粘着剤層11を、活性エネルギー線照射により硬化させたものである。本実施形態では、この硬化後粘着剤層11’は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と熱架橋剤(B)とから構成される架橋構造を有するとともに、活性エネルギー線硬化性成分(C)が重合して硬化した構造(重合構造)と、光重合開始剤(D)と、紫外線吸収剤(E)とを含有する粘着剤からなる。当該重合構造は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と熱架橋剤(B)とから構成される架橋構造に絡み付いているものと推定される。複数の三次元構造が絡み合う構造を有していることにより、硬化後粘着剤層は高い凝集力を有している。したがって、通常の耐ブリスター性だけでなく、高温高湿条件下における耐ブリスター性も良好である。
【0167】
なお、本発明の効果が得られる限りにおいて、上記の硬化後粘着剤層11’を構成する硬化後粘着剤には、活性エネルギー線照射によっても開裂しなかった光重合開始剤(D)が含まれていてもよい。本実施形態では、硬化後粘着剤中において、光重合開始剤の残量は0.1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。
【0168】
(4.2.表示体のその他の構成)
表示体2としては、例えば、液晶(LCD)ディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電子ペーパー等が挙げられ、タッチパネルであってもよい。また、表示体2としては、それらの一部を構成する部材であってもよい。
【0169】
第1の表示体構成部材21は、ガラス板、プラスチック板等の他、それらを含む積層体などからなる保護パネルであることが好ましい。この場合、印刷層3は、第1の表示体構成部材21における硬化後粘着剤層11’側に、額縁状に形成されることが一般的である。
【0170】
上述したように、本実施形態では、表示体2において、第1の表示体構成部材21としての保護パネルがガラス板で構成されていても、硬化後粘着剤層11’が紫外線を吸収することができるため、他の表示体構成部材の劣化を抑制することができる。また、表示体2において、第1の表示体構成部材21としての保護パネルがプラスチック板で構成されていても、硬化後粘着剤層11’は優れた耐ブリスター性を有している。さらに、保護パネルがプラスチック板で構成されている場合、プラスチック板は空気中の水分が透過し易いため、例えば、高温高湿条件下に置かれた場合、粘着剤に水分が浸入し易くなる。その結果、常温常湿に戻した際に、浸入した水分に起因して粘着剤の白化が発生しやすい。このような場合においても、本発明の粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を構成する反応性基含有モノマーとして水酸基含有モノマーを含む場合、浸入した水分との相溶性が良く、その結果、常温常湿に戻したときの粘着剤の白化が抑制されることとなり、耐湿熱白化性に優れる。
【0171】
上記のガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1mm以上であり、好ましくは0.2mm以上である。また、当該厚さは、通常は5mm以下であり、好ましくは2mm以下である。
【0172】
上記のプラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、アクリル板、ポリカーボネート板等が挙げられる。プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.2mm以上であり、好ましくは0.4mm以上である。また、当該厚さは、通常は5mm以下であり、好ましくは3mm以下である。
【0173】
なお、上記のガラス板やプラスチック板の片面または両面には、各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層等)が設けられていてもよいし、光学部材が積層されていてもよい。また、透明導電膜および金属層は、パターニングされていてもよい。
【0174】
第2の表示体構成部材22は、第1の表示体構成部材21に貼付されるべき光学部材、表示体モジュール(例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール等)、表示体モジュールの一部としての光学部材、または表示体モジュールを含む積層体であることが好ましい。
【0175】
上記光学部材としては、例えば、飛散防止フィルム、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、透明導電性フィルム等が挙げられる。飛散防止フィルムとしては、基材フィルムの片面にハードコート層が形成されてなるハードコートフィルム等が例示される。
【0176】
印刷層3を構成する材料は特に限定されることなく、印刷用の公知の材料が使用される。印刷層3の厚さ、すなわち段差の高さは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましく、20μm以上であることが特に好ましい。また、当該高さは、50μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましい。
【0177】
(4.4.表示体の製造)
上記の表示体2を製造するには、一例として、ダイレクトボンディングフィルム1の一方の剥離シート12aを剥離して、ダイレクトボンディングフィルム1の露出した粘着剤層11を、第1の表示体構成部材21の印刷層3が存在する側の面に貼合する。その後、ダイレクトボンディングフィルム1の粘着剤層11から他方の剥離シート12bを剥離して、ダイレクトボンディングフィルム1の露出した粘着剤層11と第2の表示体構成部材22とを貼合する。また、他の例として、第1の表示体構成部材21および第2の表示体構成部材22の貼合順序を入れ替えてもよい。
【0178】
上記表示体2を製造する方法の一例を示す。まず、ダイレクトボンディングフィルム1の一方の剥離シート12aを剥離して、ダイレクトボンディングフィルム1の露出した粘着剤層11を、第1の表示体構成部材21の印刷層3が存在する側の面に貼合する。このとき、粘着剤層11は、初期の段差追従性に優れるため、印刷層3による段差近傍に隙間や浮きが生じることが抑制される。
【0179】
次いで、ダイレクトボンディングフィルム1の粘着剤層11から他方の剥離シート12bを剥離して、ダイレクトボンディングフィルム1の露出した粘着剤層11と第2の表示体構成部材22とを貼合して積層体を得る。また、他の例として、第1の表示体構成部材21および第2の表示体構成部材22の貼合順序を入れ替えてもよい。
【0180】
その後、上記の積層体中の粘着剤層11に対して活性エネルギー線を照射する。本実施形態では、これにより、粘着剤層11中の上記の活性エネルギー線硬化性成分(C)が重合し、粘着剤層11が硬化して硬化後粘着剤層11’となる。
【0181】
活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線、電子線などが挙げられる。本実施形態では、活性エネルギー線として、200~450nmの波長を有する光を含む活性エネルギー線であることが好ましい。
【0182】
上記の条件を満足する活性エネルギー線は、たとえば、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等の紫外線を照射可能な光源を用いればよい。高圧水銀ランプの場合、主波長は365nmであるが、405nm、436nmの波長を有する光も照射されているので、主波長よりも長波長側の光を粘着剤層11の硬化に用いることができる。
【0183】
活性エネルギー線の照射量は、照度が50mW/cm以上1000mW/cm以下であることが好ましい。光量は、50mJ/cm以上であることが好ましく、80mJ/cm以上であることがより好ましく、200mJ/cm以上であることがさらに好ましい。また、光量は、10000mJ/cm以下であることが好ましく、5000mJ/cm以下であることがより好ましく、2000mJ/cm以下であることがさらに好ましい。
【0184】
以上の工程を経て、表示体2が得られる。表示体2においては、硬化後粘着剤層11’が高温高湿条件下でも段差追従性に優れるため、表示体2が高温高湿条件下(例えば、85℃、85%RH、72時間)に置かれた場合でも、段差近傍に気泡、浮き、剥がれ等が発生することが抑制される。
【0185】
また、上記表示体2においては、硬化後粘着剤層11’が耐ブリスター性に優れるため、表示体2が高温高湿条件下(例えば、85℃、85%RH、72時間)に置かれ、プラスチック板等からなる表示体構成部材からアウトガスが発生した場合でも、硬化後粘着剤層11’と表示体構成部材21,22との界面において気泡、浮き、剥がれ等のブリスターが発生することが抑制される。
【0186】
(5.本実施形態における効果)
本実施形態では、ダイレクトボンディングフィルムの粘着剤層の所定の波長範囲における光線透過率を低くして、粘着剤層に紫外線吸収能を付与しつつ、活性エネルギー線照射前後における粘着剤層のゲル分率を所定の範囲内に制御することにより、良好な段差追従性と良好な耐ブリスター性とを両立させている。さらに、活性エネルギー線照射前後における粘着剤層の貯蔵弾性率、活性エネルギー線照射後の粘着剤層の粘着力を所定の範囲内とすることにより、上記の効果をさらに高めている。
【0187】
このような特性を実現する粘着剤層を構成する粘着剤の具体的な構成として、当該粘着剤において、(メタ)アクリル酸エステル共重合体と熱架橋剤とが架橋反応により硬化して形成された架橋構造(三次元網目構造)を存在させていることに加えて、活性エネルギー線硬化性成分を重合(硬化)させずにそのまま存在させている。換言すれば、粘着剤において硬化物と未硬化物とを共存させている。
【0188】
架橋構造は硬化物であり、粘着剤が架橋構造を有していることにより、所定の凝集力が得られる。一方、活性エネルギー線硬化性成分は重合(硬化)せずにそのまま未硬化物として架橋構造の隙間に存在していると考えられる。その結果、粘着剤は、架橋構造に起因する所定の強度を有しつつ、未硬化物である活性エネルギー線硬化性成分が粘着剤の可塑性を向上させる成分として働く。したがって、当該粘着剤を被着体に貼合した場合、被着体に段差があったとしても、粘着剤がその段差に十分に追従し、段差近傍においても、被着体と粘着剤との間に隙間、浮き等の空隙を生じさせない。
【0189】
そして、粘着剤が被着体に貼合された後に、当該粘着剤に対して活性エネルギー線が照射する。このとき、粘着剤に含まれる紫外線吸収剤が活性エネルギー線を吸収するものの、光重合開始剤が重合反応を進行させるのに十分な吸光度を有する光の波長範囲と、紫外線吸収剤が吸収する光の波長範囲とがずれている。したがって、紫外線吸収剤に吸収されない活性エネルギー線により当該光重合開始剤が開裂して、硬化せずに存在している活性エネルギー線硬化性成分の重合(硬化)が促進される。その結果、架橋構造に絡まるようにして重合構造が形成されると考えられる。活性エネルギー線硬化性成分の硬化は、被着体に十分に貼合した状態で行われるため、活性エネルギー線による硬化後には、架橋構造と重合構造とが適度に相互作用することにより、段差追従性が良好な硬化前の状態では発揮できない程度の凝集力を示すことができる。
【0190】
このように、上述した実施形態では、粘着剤において、被着体に対する貼合前の硬化(熱硬化)と貼合後の硬化(活性エネルギー線硬化)とを組み合わせることにより、段差追従性と耐ブリスター性とを非常に高いレベルで達成することができる。しかも、粘着剤は、紫外線吸収剤を含有しているので、表示体を構成する部材の劣化を効果的に抑制することができる。
【0191】
したがって、この粘着剤を用いて段差を有する構成部材と他の構成部材とを貼合した表示体は、紫外線から十分に保護され、しかも良好な画質を維持することができる。
【0192】
(6.変形例)
上述した実施形態では、ダイレクトボンディングフィルムは2枚の剥離シート12a,12bを有しているが、ダイレクトボンディングフィルム1における剥離シート12a,12bのいずれか一方または両方は省略されてもよい。
【0193】
また、第1の表示体構成部材21は、印刷層3以外の段差を有するものであってもよい。さらには、第1の表示体構成部材21のみならず、第2の表示体構成部材22も硬化後粘着剤層11’側に段差を有するものであってもよい。
【0194】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
【実施例
【0195】
以下、実施例を用いて、発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0196】
(製造例1)
1.(メタ)アクリル酸エステル共重合体の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル60質量部、アクリル酸イソボルニル10質量部、N-アクリロイルモルホリン10質量部、およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル20質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を調製した。得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の分子量を以下に示す方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)50万であった。
【0197】
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
(測定条件)
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0198】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、熱架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート0.2質量部と、活性エネルギー線硬化性成分(C)としてのε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート5.0質量部と、光重合開始剤(D)としての2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド0.5質量部と、紫外線吸収剤(E)としての2-ジヒドロキシー4-メトキシベンゾフェノン3.0質量部と、シランカップリング剤(F)としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度50質量%の粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0199】
3.ダイレクトボンディングフィルムの製造
得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して熱架橋反応を進行させ、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と熱架橋剤(B)とから構成される架橋構造を有する粘着剤からなる塗布層を形成した。
【0200】
次いで、上記で得られた重剥離型剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382120」)とを、当該軽剥離型剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、厚さ50μmの粘着剤層を有するダイレクトボンディングフィルム、すなわち、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:50μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなるダイレクトボンディングフィルムを作製した。なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
【0201】
(実施例2~9、比較例1~4)
光重合開始剤(D)の種類および配合量、並びに、紫外線吸収剤(E)の種類および配合量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にしてダイレクトボンディングフィルムを製造した。
【0202】
【表1】
【0203】
表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
((メタ)アクリル酸エステル共重合体(A))
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
ACMO:N-アクリロイルモルホリン
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
(熱架橋剤(B))
B1:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート
B2:トリメチロールプロパン変性キシレンジイソシアネート
(活性エネルギー線硬化性成分(C))
C1:ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート
(光重合開始剤(D))
D1:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド
D2:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンとを1:1の質量比で混合したもの
(紫外線吸収剤(E))
E1:2-ジヒドロキシー4-メトキシベンゾフェノン
E2:2-メトキシ-1-メチルエチルアセテート、ベンゼンプロパン酸、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ、C7-9側鎖及び直鎖アルキルエステル
E3:オクチル-3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル)プロピオネート+2-エチルヘキシル-3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル)プロピオネート
(シランカップリング剤(F))
F1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0204】
また、光重合開始剤D1およびD2の濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液を調製し、その溶液における波長200~500nmの範囲の吸光度を、紫外可視近赤外(UV-Vis-NIR)分光光度計(島津製作所社製,製品名「UV-3600」)を使用して測定した。その結果に基づき、波長380nmの吸光度および上記測定範囲における吸収極大波長を導出した。結果を表1に示す。
【0205】
(紫外線吸収能の評価)
実施例および比較例で得られたダイレクトボンディングフィルムから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を厚さ1.1mmのソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付した。その後、重剥離型剥離シートを剥離し、活性エネルギー線照射前の評価用サンプルを得た。また、露出した粘着剤層に対して、下記の条件で紫外線を直接照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とし、活性エネルギー線照射後の評価用サンプルを得た。
【0206】
得られた評価用サンプルの粘着剤層に、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、UV-3600)により300~800nmの波長範囲の光を照射して粘着剤層の光線透過率を測定し、380nmにおける粘着剤層(活性エネルギー線照射前および活性エネルギー線照射後)の光線透過率をそれぞれ導出した。導出した380nmにおける粘着剤層の光線透過率が40%以下である試料を紫外線吸収能があると判断し、導出した380nmにおける粘着剤層の光線透過率が40%超である試料を紫外線吸収能がないと判断した。結果を表2に示す。
【0207】
なお、紫外線吸収能がない比較例1は、活性エネルギー線照射前後において、波長300nm付近で、透過率が0より大きくなり(紫外線が吸収されずに透過し始め)、波長350nmでは、透過率がすでに80%を超えるという結果が得られた。
【0208】
一方、実施例1~9では、波長370nmまでは透過率が0であり、波長370nmを超えると、透過率が0よりも大きくなるものの、波長380nmでも表2に示すように30%を遙かに下回っている。すなわち、少なくとも波長300~380nmの紫外線領域における紫外線吸収能に関して、実施例と比較例とでは非常に大きな差が生じることが確認できた。
<紫外線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm,光量2000mJ/cm
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
【0209】
(ゲル分率の評価:活性エネルギー線照射前)
実施例および比較例で得られたダイレクトボンディングフィルムを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0210】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに72時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。これにより、粘着剤のゲル分率(活性エネルギー線照射前)を導出した。結果を表2に示す。
【0211】
(ゲル分率の評価:活性エネルギー線照射後)
実施例および比較例で得られたダイレクトボンディングフィルムから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層に対して、上述した条件で活性エネルギー線を直接照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とした。この硬化後粘着剤層の硬化後粘着剤について、上記と同様にしてゲル分率(活性エネルギー線照射後;直接照射)を導出した。結果を表2に示す。
【0212】
(ゲル分率の評価:活性エネルギー線照射前後における粘着剤のゲル分率の比)
導出した活性エネルギー線照射前の粘着剤のゲル分率と、活性エネルギー線照射後の硬化粘着剤のゲル分率と、から、下記の式より、活性エネルギー線照射前後における粘着剤のゲル分率の比を導出した。結果を表2に示す。
活性エネルギー線照射前後における粘着剤のゲル分率の比=(活性エネルギー線照射後の硬化粘着剤のゲル分率/活性エネルギー線照射前の粘着剤のゲル分率)
【0213】
(硬化性の評価)
活性エネルギー線照射後のゲル分率が、活性エネルギー線照射前のゲル分率よりも大きい場合には、粘着剤層が硬化していることを示しているので、上述して導出された活性エネルギー線照射前後におけるゲル分率の比が、1.05以上である試料の硬化性を「○」と表記し、ゲル分率の比が1.05未満である試料の硬化性を「×」と表記した。結果を表2に示す。
【0214】
(貯蔵弾性率の評価:活性エネルギー線照射前)
実施例および比較例で得られたダイレクトボンディングフィルムから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を直径10mmの円形に打ち抜いて、粘着剤層の粘弾性を測定するための評価用サンプルを得た。粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製,ARES)を使用して、上記の評価用サンプルに周波数1Hzのひずみを与え、-50~150℃の貯蔵弾性率を測定した。結果を表2に示す。
【0215】
(貯蔵弾性率の評価:活性エネルギー線照射後)
実施例および比較例で得られたダイレクトボンディングフィルムから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層に対して、上述した条件で活性エネルギー線を直接照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とした。この硬化後粘着剤層について、上記と同様にして貯蔵弾性率(活性エネルギー線照射後)を測定した。結果を表2に示す。
【0216】
(貯蔵弾性率の評価:硬化前後の粘着剤の貯蔵弾性率の比)
導出した活性エネルギー線照射前の粘着剤の貯蔵弾性率と、活性エネルギー線照射後の硬化粘着剤の貯蔵弾性率と、から、下記の式より、活性エネルギー線照射前後における粘着剤の貯蔵弾性率の比を導出した。結果を表2に示す。
活性エネルギー線照射前後における粘着剤の貯蔵弾性率の比=(活性エネルギー線照射後の硬化粘着剤の貯蔵弾性率/活性エネルギー線照射前の粘着剤の貯蔵弾性率)
【0217】
(粘着力の評価)
実施例および比較例で得られたダイレクトボンディングフィルムから軽剥離型剥離シートを剥離し、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合し、剥離シート/粘着剤層(50μm)/PETフィルムの積層体を得た。得られた積層体を25mm幅、150mm長に裁断し、これをサンプルとした。
【0218】
23℃、50%RHの環境下にて、上記サンプルから重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層をソーダライムガラス(日本板硝子社製、全光線透過率:99%以上)に貼付したのち、2kgのローラーを1往復させることにより圧着した。次に、ソーダライムガラス越しに、上述した条件で活性エネルギー線を照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とした。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表2に示す。
【0219】
(ヘイズ値の評価)
実施例および比較例で得られたダイレクトボンディングフィルムから軽剥離型剥離シートを剥離し、厚さ1.1mmのソーダライムガラス(日本板硝子社製、全光線透過率:99%以上)に貼付した。その後、ソーダライムガラス越しに上述した条件で活性エネルギー線を直接照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とし、重剥離型剥離シートを剥がすことで、評価用サンプルを得た。
【0220】
当該評価サンプルの粘着剤層側から、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH-7000」)の測定光を入射して、ヘイズ値(%)を測定した。測定は、それぞれ3回行い、それらの平均値を算出した。ここに記載した以外の条件はJIS K7136:2000に準拠して、測定を行った。その結果を表2に示す。
【0221】
(耐ブリスター性の評価)
実施例および比較例で得られたダイレクトボンディングフィルムの粘着剤層を、ソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付した。さらに、ダイレクトボンディングフィルムから重剥離型剥離シートを剥離して、露出した粘着剤層を、ポリメタクリル酸メチル層およびポリカーボネート層を有する樹脂板(厚さ:0.7mm,紫外線吸収剤非含有)のポリカーボネート層側の面に貼付することで、評価用サンプルを得た。その後、評価用サンプルを50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理し、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。
【0222】
オートクレーブ処理後の粘着剤層に対して、上記樹脂板越しに上述した条件で紫外線を照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とした。次いで、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて240時間保管した。その後、硬化後粘着剤層と被着体との界面における状態を目視により確認し、以下の基準により耐ブリスター性を評価した。結果を表2に示す。
◎…気泡および浮き・剥がれの発生なし
○…微少発砲がわずかに発生(大きな気泡や剥がれなし)
×…気泡、気泡跡または浮き・剥がれが発生
【0223】
(段差追従性の評価)
ガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラス イーグルXG」,縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の表面に、紫外線硬化型インク(帝国インキ社製,製品名「POS-911墨」)を塗布厚が5μm、10μm、20μmのいずれか1つとなるように額縁状(外形:縦90mm×横50mm,幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を照射(80W/cm,メタルハライドランプ2灯,ランプ高さ15cm,ベルトスピード10~15m/分)して、印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させ、印刷による段差(段差の高さ:5μm、10μm、20μmのいずれか1つ)を有する段差付ガラス板を作製した。
【0224】
実施例および比較例で得られたダイレクトボンディングフィルムから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、ラミネーター(フジプラ社製,製品名「LPD3214」)を用いて、粘着剤層が額縁状の印刷全面を覆うように各段差付ガラス板にラミネートした。次いで、重剥離型剥離シートを剥がして粘着剤層を表出させ、上記ラミネーターを用いて、表出した粘着剤層面にガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラス イーグルXG」,縦90mm×横50mm× 厚み0.5mm)を上記ラミネーターでラミネートして、評価用サンプルを得た。その後、評価用サンプルを50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理し、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。
【0225】
(A)初期の段差追従性の評価
各段差において、上述により得られた評価用サンプルの粘着剤層(特に印刷層による段差の近傍)に気泡、浮き剥がれがないか否か、目視により確認し、以下の基準により初期の段差追従性を評価した。結果を表2に示す。
A:全ての段差に追従し、気泡、浮き剥がれが見られない。
B:段差の高さが20μmにおいて、段差部に気泡、浮き剥がれが見られた。
C:段差の高さが10、20μmにおいて、段差部に気泡、浮き剥がれが見られた。
D:いずれの段差部においても気泡、浮き剥がれが見られる。
【0226】
(B)耐久性(耐久後の段差追従性)の評価
上述により得られた評価用サンプルの粘着剤層に対して、上記ガラス板越しに上述した条件で活性エネルギー線を照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とした。次いで、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて240時間保管し(耐久試験)、その後、粘着剤層(特に印刷層による段差の近傍)を目視により確認し、上記の初期の段差追従性の評価基準により、耐久後の段差追従性を評価した。結果を表2に示す。
【0227】
(耐湿熱白化性の評価)
実施例または比較例で得られたダイレクトボンディングフィルムの粘着剤層を、ソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付した。さらに、ダイレクトボンディングフィルムから重剥離型剥離シートを剥離して、露出した粘着剤層を、ポリメタクリル酸メチル層およびポリカーボネート層を有する樹脂板(厚さ:0.7mm,紫外線吸収剤非含有)のポリカーボネート層側の面に貼付することで、評価用サンプルを得た。その後、評価用サンプルを50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理し、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。その後、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH2000」)を用いて、JIS K7136:2000に準じて、耐湿熱白化性の評価前のヘイズ値(%)を測定した。
【0228】
次に、上記積層体を、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて240時間保管した。その後、23℃、50%RHの常温常湿に戻し、当該積層体について、上記のヘイズメーターを用いて、JIS K7136:2000に準じて、耐湿熱白化性の評価後のヘイズ値(%)を測定した。なお、当該ヘイズ値は、積層体を常温常湿に戻してから30分以内に測定した。
【0229】
耐湿熱白化性の評価後のヘイズ値(%)から耐湿熱白化性の評価前のヘイズ値(%)を差し引いた値(耐久前後のヘイズ値の差:ポイント)から、以下の基準に基づいて耐湿熱白化性を評価した。結果を表2に示す。
◎:耐久前後のヘイズ値の差が、1.5ポイント未満である。
○:耐久前後のヘイズ値の差が、1.5ポイント以上、5ポイント以下である。
×:耐久前後のヘイズ値の差が、5ポイントを超える。
【0230】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0231】
本発明のダイレクトボンディングフィルムは、例えば、表示体構成部材を貼合するのに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0232】
1…ダイレクトボンディングフィルム
11…粘着剤層
12a,12b…剥離シート
2…表示体
21…第1の表示体構成部材
22…第2の表示体構成部材
3…印刷層
図1
図2