(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】移送要素クランプシステム
(51)【国際特許分類】
F16L 3/237 20060101AFI20221129BHJP
F16L 3/10 20060101ALI20221129BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20221129BHJP
B64D 37/00 20060101ALI20221129BHJP
H02G 3/32 20060101ALI20221129BHJP
F16B 2/22 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
F16L3/237
F16L3/10 Z
B64C1/00 A
B64D37/00
H02G3/32
F16B2/22 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018072973
(22)【出願日】2018-04-05
【審査請求日】2021-03-17
(32)【優先日】2017-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・レスリー・ギルバートソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ピー・ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エル・カーペンター
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0280092(US,A1)
【文献】米国特許第02355742(US,A)
【文献】特開2003-289618(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0249636(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/237
F16L 3/10
B64C 1/00
B64D 37/00
H02G 3/32
F16B 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体または電気を移送する移送要素のための移送要素クランプシステムであって、
第1の数の切欠を有し、航空機内の2つの支持構造の間の間隙を埋める下方部分と、
第2の数の切欠を有し、前記下方部分と連動する上方部分と、
前記第1の数の切欠および前記第2の数の切欠によって形成されるチャネルシステムと、
前記下方部分および前記上方部分が前記航空機の運航中に前記移送要素クランプシステムにかかる荷重を分担するように前記下方部分を前記上方部分に固着するロック機構と、
を備
え、
前記チャネルシステムが、前記上方部分および前記下方部分が互いに連結されるときにいくつかの
前記移送要素を受容し、
前記移送要素クランプシステムが、前記いくつかの移送要素を前記2つの支持構造から電気的に絶縁
し、
前記上方部分および前記下方部分は互換性があり、
前記ロック機構が、
前記下方部分の第1の側面上の第1のクリップと、
前記下方部分の第2の側面上の第1の片持梁と、
前記下方部分の前記第2の側面上の前記第1の片持梁と係合する、前記上方部分の第1の側面上の第2のクリップと、
前記下方部分の前記第1の側面上の前記第1のクリップと係合する、前記上方部分の第2の側面上の第2の片持梁と、
を備える、移送要素クランプシステム。
【請求項2】
前記チャネルシステム内に配置され、前記いくつかの移送要素を安定させるいくつかのインサート
をさらに備える、
請求項1に記載の移送要素クランプシステム。
【請求項3】
前記いくつかのインサートのうちの1つのインサートが、
前記下方部分の第1の切欠内に配置される第1の半体と、
前記上方部分の第2の切欠内に配置される第2の半体と、を備え、
前記第1の半体および前記第2の半体が、
前記移送要素の周面を取り囲むのに対応する、
請求項2に記載の移送要素クランプシステム。
【請求項4】
前記インサートの前記第1の半体が、第1のロックピンによって前記下方部分に固着され、
前記インサートの前記第2の半体が、第2のロックピンによって前記上方部分に固着される、
請求項3に記載の移送要素クランプシステム。
【請求項5】
前記第1の切欠に形成された第1組の溝と、
前記第2の切欠に形成された第2組の溝と、
をさらに備える、
請求項3または4に記載の移送要素クランプシステム。
【請求項6】
前記インサートが、前記第1組の溝または前記第2組の溝の少なくとも一方と係合するフランジを有する、
請求項5に記載の移送要素クランプシステム。
【請求項7】
前記下方部分、前記上方部分およびインサートが、誘電体材料で構成される、
請求項1から6のいずれか一項に記載の移送要素クランプシステム。
【請求項8】
航空機内の
流体または電気を移送する移送要素を安定させる方法であって、前記方法は、
前記航空機内の2つの支持構造の間の間隙に移送要素クランプシステムの下方部分を配置するステップと、
前記下方部分の第1の数の切欠内にいくつかの
前記移送要素を配置するステップと、
前記いくつかの移送要素の上に前記移送要素クランプシステムの上方部分を配置して、前記いくつかの移送要素が前記上方部分の第2の数の切欠内に静止しているようにするステップと、
前記上方部分を前記いくつかの移送要素に沿って前記下方部分の方へ摺動させて、前記第1の数の切欠および前記第2の数の切欠が前記いくつかの移送要素のそれぞれの周面を取り囲むようにするステップと、
前記上方部分を前記下方部分に固着するステップであって、前記移送要素クランプシステムが前記いくつかの移送要素を第1の支持構造および第2の支持構造から電気的に絶縁する、ステップと、
を含
み、
前記上方部分および前記下方部分は互換性があり、
前記下方部分が第1の片持梁および第1のクリップを備え、前記上方部分が第2の片持梁および第2のクリップを備え、前記上方部分を前記下方部分に固着する前記ステップが、
前記下方部分上の前記第1の片持梁を前記上方部分上の前記第2のクリップに係合させるステップと、
前記上方部分上の前記第2の片持梁を前記下方部分上の前記第1のクリップに係合させるステップと、
を含む方法。
【請求項9】
前記移送要素クランプシステムの第1の端部を前記第1の支持構造上の第1のブラケットに固締するステップと、
前記移送要素クランプシステムの第2の端部を前記第2の支持構造上の第2のブラケットに固締するステップと、
をさらに含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記移送要素クランプシステムの下方部分を配置するステップが、第1のロックピンを使用してインサートの第1の半体を前記下方部分に固着するステップであって、前記インサートの前記第1の半体が前記下方部分の第1の切欠内に配置される、ステップ
を含み、
前記いくつかの移送要素の上に前記移送要素クランプシステムの上方部分を配置するステップが、第2のロックピンを使用して前記インサートの第2の半体を前記上方部分に固着するステップであって、前記インサートの前記第2の半体が前記上方部分の第2の切欠内に配置される、ステップ
を含む、
請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
支持構造と、
前記支持構造相互間の間隙を前記支持構造と平行に延在する
流体または電気を移送するいくつかの移送要素と、
移送要素クランプシステムと、
を備える航空機であって、
前記移送要素クランプシステムが、
第1の数の切欠を有し、前記支持構造相互間の前記間隙を埋める、下方部分と、
第2の数の切欠を有し、前記下方部分と連動する、上方部分と、
前記第1の数の切欠および前記第2の数の切欠によって形成されるチャネルシステムと、
を備え、
前記チャネルシステムが、前記いくつかの移送要素を受容し、
前記移送要素クランプシステムが、前記いくつかの移送要素を前記支持構造から電気的に絶縁
し、
前記上方部分および前記下方部分は互換性があり、
前記移送要素クランプシステムが、
前記下方部分および前記上方部分が前記航空機の運航中に前記移送要素クランプシステムにかかる荷重を分担するように前記下方部分を前記上方部分に固着するロック機構
をさらに備え、
前記ロック機構が、
前記下方部分の第1の側面上の第1のクリップと、
前記下方部分の第2の側面上の第1の片持梁と、
前記下方部分の前記第2の側面上の前記第1の片持梁と係合する、前記上方部分の第1の側面上の第2のクリップと、
前記下方部分の前記第1の側面上の前記第1のクリップと係合する、前記上方部分の第2の側面上の第2の片持梁と、
を備える、航空機。
【請求項12】
前記下方部分、前記上方部分およびインサートが誘電体材料で構成される、
請求項11に記載の航空機。
【請求項13】
前記移送要素クランプシステムが、
インサートをさらに備え、
前記インサートの第1の半体が、前記下方部分の第1の切欠内に配置され、前記インサートの第2の半体が、前記上方部分の第2の切欠内に配置され、前記インサートの前記第1の半体および前記インサートの前記第2の半体が、
前記移送要素の周面を取り囲んで前記移送要素を安定させる、
請求項11または12に記載の航空機。
【請求項14】
前記インサートの前記第1の半体が、第1のロックピンで前記下方部分に固着され、前記インサートの前記第2の半体が、第2のロックピンで前記上方部分に固着される、
請求項13に記載の航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、航空機用途向けの移送要素に関する。より詳細には、本開示は、移送要素と支持構造との間の電気的絶縁を維持するとともに移送要素を支持構造に固着する移送要素支持組立品に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の運航中に種々の移送システムが使用される。これらの移送システムは航空機の至る所に延在し得、流体または電気を1つの場所から別の場所へ移動させるために使用することができる。例えば、移送要素は2つの支持構造の間を延在し、最終的に、移送要素の経路の支持構造の開口部を通過することができる。これらの移送要素に流体が入っている場合、流体は、燃料、油圧流体、またはガスとすることができる。
【0003】
運航中、航空機は電磁事象にさらされることがある。システムを燃焼および損傷から保護するために、連邦航空局規則は、航空機製造業者に、航空機の可燃性範囲内に火花が発生しないようにするよう要求している。これらの規則に従うために、航空機製造業者は、可燃性範囲内の金属体を接地または絶縁しなければならない。多くの場合、電気絶縁材料を有する組立品は、火花発生を防止するために移送要素の周囲に設置される。
【0004】
これらの組立品は、移送要素が航空機運航の条件下で曲がるときに移送要素を支持しかつ拘束するためにも使用される。そうするために、組立品は2つの支持構造の間の間隙を埋めて、移送要素を定位置に保持する。何百ものこれらの組立品が航空機内に設置される。
【0005】
単一の支持組立品は、金属ブリッジおよび金属締結具を含む多数の部品を含むことがある。これらの部品はそれぞれ、所定の電磁効果要件に準拠していなければならない。例えば、金属締結具が金属ブリッジを固着するために使用されると、継手における火花およびアークが電磁事象中に発生することがある。この発生から保護するために、航空機製造業者は組立品内の締結具のそれぞれの上にキャップシールを設置する。各組立品の締結具の位置決め、位置合せ、処理、および封止には、数えきれない時間の人的資源を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、上述した課題のうちの少なくともいくつか、ならびにその他の起こり得る課題を考慮した方法および装置があれば望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の例示的な一実施形態は、下方部分、上方部分、およびチャネルシステムを備える移送要素クランプシステムを提供する。下方部分は第1の数の切欠を有し、上方部分は第2の数の切欠を有する。下方部分は、航空機内の2つの支持構造の間の間隙を埋めるように構成される。上方部分は下方部分と連動するように構成される。チャネルシステムは、第1の数の切欠および第2の数の切欠によって形成される。チャネルシステムは、上方部分および下方部分が互いに連結されるときにいくつかの移送要素を受容するように構成される。移送要素クランプシステムは、いくつかの移送要素を2つの支持構造から電気的に絶縁する。
【0008】
本開示の別の例示的な実施形態は、航空機内の移送要素を安定させる方法を提供する。移送要素クランプシステムの下方部分が、航空機内の2つの支持構造の間の間隙に配置される。いくつかの移送要素が下方部分の第1の数の切欠内に配置される。移送要素クランプシステムの上方部分外板がいくつかの移送要素の上に配置されて、いくつかの移送要素は上方部分の第2の数の切欠内に静止しているようにする。上方部分はいくつかの移送要素に沿って下方部分の方へ摺動して、第1の数の切欠および第2の数の切欠がいくつかの移送要素のそれぞれの周面を取り囲むようにする。上方部分は下方部分に固着されて、移送要素クランプシステムがいくつかの移送要素を第1の支持構造および第2の支持構造を電気的に絶縁するようにする。
【0009】
本開示の別の例示的な実施形態は、支持構造、いくつかの移送要素、および移送要素クランプシステムを備える航空機を提供する。いくつかの移送要素は、支持構造相互間の間隙を支持構造と平行に延在する。移送要素クランプシステムは、第1の数の切欠を有する下方部分、第2の数の切欠を有する上方部分、およびチャネルシステムを備える。下方部分は、支持構造相互間の間隙を埋めるように構成される。上方部分は下方部分と連動するように構成される。チャネルシステムは、第1の数の切欠および第2の数の切欠によって形成される。チャネルシステムは、いくつかの移送要素を受容するように構成される。移送要素クランプシステムは、いくつかの移送要素を支持構造から電気的に絶縁する。
【0010】
上記の形態および機能は、本開示の種々の実施形態で独立に実現することができる、あるいは、さらなる詳細が下記の説明および図面を参照して理解することができる他の実施形態では組み合わされてもよい。
【0011】
例示的な実施形態の特徴と考えられる新規な形態は、添付の特許請求の範囲に記載されている。しかしながら、例示的な諸実施形態、ならびにこれらの実施形態の好ましい使用モード、他の目的および形態は、本開示の例示的な実施形態の下記の詳細な説明を参照して添付図面と共に読んだときに最も良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】例示的な一実施形態による航空機の翼の斜視図である。
【
図2】例示的な一実施形態による航空機のブロック図である。
【
図3】例示的な一実施形態による移送要素クランプシステムの斜視図である。
【
図4】例示的な一実施形態による移送要素クランプシステムの分解図である。
【
図5】例示的な一実施形態による移送要素クランプシステムのセクションの説明図である。
【
図6】例示的な一実施形態による移送要素クランプシステムの正面図である。
【
図7】例示的な一実施形態による移送要素クランプシステムの説明図である。
【
図8】例示的な一実施形態によるインサートの一部の説明図である。
【
図9】例示的な一実施形態によるインサートの一部の別の説明図である。
【
図10】例示的な一実施形態による移送要素クランプシステムの各構成要素を示す航空機のセクションの説明図である。
【
図11】例示的な一実施形態による移送要素クランプシステムの各構成要素を示す航空機のセクションの別の説明図である。
【
図12】例示的な一実施形態による航空機内の移送要素を安定させるプロセスの流れ図である。
【
図13】例示的な一実施形態による航空機の製造および保守点検方法のブロック図である。
【
図14】例示的な一実施形態が実装され得る航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
例示的な諸実施形態は、1以上の異なる考慮事項を認識し考慮する。例えば、例示的な諸実施形態は、航空機内の移送要素を電気的に絶縁しかつ支持する製造プロセスが所望されるよりも費用がかかり、かつ時間がかかることが多いことを認識し考慮する。現在の解決法は、縦通材ブラケットに装着される金属肋間部を使用して、2つの支持構造の間の間隙を埋めている。肋間部は金属締結具で固着され、金属締結具はそれぞれ、アーク発生および火花発生を防止するためにキャップ封止されなければならない。移送要素の周囲構造内に移送要素を支持しかつ拘束するために追加の取付具が使用される。
【0014】
多片の複雑な取付具を手動で位置合せし連結するには、かなりの組立時間を要する。さらに、組立品の各部品は、特定の電磁効果要件に準拠していなければならない。キャップ封止プロセスは、各締結具がスタックアップの上部上および下部上にキャップシールを受容しなければならないので、製造時間が延びる。結果として、これらの部品を設計し、製造し、そして実装するために所望されるよりも多くの時間を要することがある。
【0015】
開示された実施形態は、キャップ封止プロセスを必要としない、電磁的絶縁と構造支持を組み合わせた移送要素クランプシステムに関する。実施形態は、移送システムを安定させかつ電磁効果から保護するための多種多様な航空機用途に使用することができる。
【0016】
次に図を参照すると、特に
図1を参照すると、例示的な一実施形態による航空機の翼の斜視図が示されている。航空機101の翼100はリブ102および縦通材104を有する。移送システム106が翼100を貫通する。移送システム106は移送要素108を有する。移送要素108は、この例示的な例では翼100を通って流体を運ぶ。他の例示的な例では、移送要素108は電気または他の媒体を運ぶことができる。
【0017】
移送要素108は縦通材104相互間を通過する。この例示的な例では、移送要素108は縦通材104と平行に延在する。縦通材104に沿った種々の箇所で、移送要素108は、移送要素クランプシステム(この図には示されていない)を使用して縦通材104に固着することができる。各移送要素クランプシステムは、移送要素108と縦通材104との間に電気的絶縁を与える。移送要素クランプシステムは、移送要素108を定位置に保持するために構造支持も与える。
【0018】
翼100のセクション110は移送システム106の一部を示している。セクション110の各構成要素は
図10により詳細に示されている。
【0019】
次に
図2を参照すると、例示的な一実施形態による航空機のブロック図が示されている。航空機200は、支持構造202、いくつかの移送要素204、および移送要素クランプシステム206を備える。
【0020】
本明細書では、項目に関連して用いられる場合の「いくつかの(a number of)」は1以上の項目を意味する。したがって、いくつかの移送要素は1以上の移送要素を含む。
【0021】
図示のように、支持構造202は、航空機構造208に構造支持を与えることができる。航空機構造208は、いくつかの移送要素204が挿通する任意のタイプの航空宇宙構造とすることができる。
【0022】
航空機構造208は、この例示的な例では翼210の形をとることができる。他の例示的な例では、航空機構造208は、エンジンナセル、マフラ、パネル、コンパートメント、ハウジング、タンク、客室、廃棄物システム、胴体の一部、または移送要素クランプシステム206が使用され得る他の任意のタイプの航空宇宙構造とすることができる。
【0023】
支持構造202は、第1の支持構造212および第2の支持構造214を含む。支持構造202は、この例示的な例では縦通材216の形をとる。他の例では、支持構造202は、リブ、桁、または他のタイプの支持構造の形をとることができる。
【0024】
いくつかの移送要素204はそれぞれ、媒体を航空機200内の1つの場所から別の場所へ移動させるように構成される。この媒体は、例えば、制限なく、流体、燃料、油圧流体、電気、またはその他の媒体の形をとることができる。
【0025】
流体がいくつかの移送要素204を流れる場合、移送要素204はそれぞれ管218の形をとる。管218は、移送される媒体に応じて異なるサイズを有することができる。管218は周面219を有する。管218の形状、サイズ、直径、肉厚、および材料は、管218を流れる流体の種類に応じて、航空機の規則または製造仕様に適合するように選択することができる。
【0026】
この例示的な例では、いくつかの移送要素204は、支持構造202相互間の間隙220内を支持構造202と平行に延在する。移送要素クランプシステム206は、支持構造202相互間のいくつかの移送要素204を安定させるために使用される。そのうえ、移送要素クランプシステム206は、いくつかの移送要素204を支持構造202から電気的に絶縁する。
【0027】
電気的絶縁は、電磁効果による火花発生を防止するために望ましい。電磁効果は、航空機200の運航中に落雷などの電磁事象または他の電磁事象からもたらされることがある。
【0028】
図示のように、移送要素クランプシステム206は、下方部分222、いくつかのインサート223、上方部分224、ロック機構225、およびチャネルシステム226を備える。下方部分222は、支持構造202相互間の間隙220を埋めるように構成される。上方部分224は、下方部分222と連動するように構成される。
【0029】
上方部分224および下方部分222は、この例示的な例では互換性がある。言い換えると、上方部分224および下方部分222は同じ部品である。上方部分224および下方部分222のすべての形態および機能が実質的に均一である。
【0030】
この例示的な例では、下方部分222は第1の数の切欠228を有する。上方部分224は第2の数の切欠230を有する。第1の数の切欠228は、下方部分222に形成される孔または凹部である。第2の数の切欠230は、上方部分224に形成される孔または凹部である。第1の数の切欠228および第2の数の切欠230は、所望の深さおよび形状で形成される。第1の切欠229は、第1の数の切欠228のうちの1つである。切欠232は、第2の数の切欠230のうちの1つである。
【0031】
下方部分222および上方部分224が互いに連結されると、第1の数の切欠228の一つ一つが第2の数の切欠230のうちの1つに対応する。例えば、第1の切欠229は、この例示的な例では切欠232に対応する。
【0032】
チャネルシステム226は、第1の数の切欠228および第2の数の切欠230によって形成される。チャネルシステム226は、上方部分224および下方部分222が互いに連結されるときにいくつかの移送要素204を受容するように構成される。チャネルシステム226はいくつかのチャネル233を有する。いくつかのチャネル233のうちのチャネル235は、2つの片が互いに連結されるときに下方部分222の第1の切欠229および上方部分224の第2の切欠232によって形成される。
【0033】
この例示的な例では、いくつかのインサート223がチャネルシステム226に配置される。いくつかのインサート223のうちのインサート234は、いくつかのチャネル233のうちの1つの中に配置される。場合によっては、複数のチャネルが形成される場合、いくつかのインサート223のうちのインサート234は、いくつかのチャネル233の各チャネル内に配置される。他の例では、いくつかのチャネル233の一部はインサートを有していなくてもよい。この例示的な例では、いくつかのインサート223はいくつかの移送要素204を安定させるように構成される。
【0034】
図示のように、いくつかのインサート223の各インサートは2つの部品を有する。一例として、いくつかのインサート223のうちのインサート234は、第1の半体236および第2の半体238を有する。第1の半体236および第2の半体238は、この例示的な例では互換性がある。他の例示的な例では、インサート234の第1の半体236および第2の半体238は、互いに異なる形態を有していてもよい。
【0035】
第1の半体236は、下方部分222の第1の切欠229内に配置される。第2の半体238は、上方部分224の第2の切欠232内に配置される。第1の半体236および第2の半体238は、移送要素を安定させるためにいくつかの移送要素204のうちのある移送要素の周面219を取り囲むのに対応する。
【0036】
第1のロックピン240は、航空機200の運航中にインサート234の第1の半体236を定位置に保持するように構成される。第2のロックピン242は、航空機200の運航中にインサート234の第2の半体238を定位置に保持するように構成される。
【0037】
この例示的な例では、インサート234の第1の半体236は第1のロックピン240によって下方部分222に固着される。例えば、制限なく、孔が下方部分222に切り開かれてもよく、第1のロックピン240は、インサート234の第1の半体236が航空機200の使用中に所望の位置にとどまるように孔と締まり嵌めであってもよい。
【0038】
同様に、インサート234の第2の半体238は第2のロックピン242によって上方部分224に固着される。他の例示的な例では、第1の半体236、第2の半体238、または両方の半体が、特定の実施態様に応じて他の方法で固着されてもよい。例えば、クリップ、接着剤、または他の機構が使用されてもよい。他の例示的な例では、インサート234の第1の半体236は下方部分222の一部として形成されてもよく、インサート234の第2の半体238は上方部分224の一部として形成されてもよい。
【0039】
図示のように、第1組の溝244は第1の切欠229に形成される。第2組の溝246は第2の切欠232に形成される。第1組の溝244および第2組の溝246はそれぞれ、第1の切欠229および第2の切欠232に切り込まれた窪みである。第1組の溝244は、設置を導くとともにインサート234の第1の半体236の中に対応するフランジを受容するように構成される。第2組の溝246は、設置を導くとともにインサート234の第2の半体238の中に対応するフランジを受容するように構成される。このようにして、インサート234は、第1組の溝244または第2組の溝246の少なくとも一方に係合するように構成されたフランジ248を有する。
【0040】
本明細書では、項目リストと共に用いられるときの「~のうちの少なくとも1つ(at least one of)」という語句は、列挙された項目のうちの1以上の様々な組合せが使用され得ること、および、リスト内の各項目のうちの1つだけが必要とされ得ること、を意味する。言い換えると、「~のうちの少なくとも1つ」は、リストから項目の任意組合せおよび任意の数の項目が使用され得るが、リスト内の項目のすべてが必要ではないことを意味する。項目は、特定の物体、物事、またはカテゴリとすることができる。
【0041】
例えば、「項目A、項目B、または項目Cのうちの少なくとも1つ」は、制限なく、項目A、項目Aおよび項目B、または項目Bを含むことができる。この例は、項目A、項目B、および項目C、または項目Bおよび項目Cも含むことができる。もちろん、これらの項目の任意の組合せが存在し得る。他の例では、「~のうちの少なくとも1つ」は、例えば、制限なく、2個の項目A、1個の項目Bおよび10個の項目C、4個の項目Bおよび7個の項目C、あるいは他の適切な組合せとすることができる。
【0042】
この例示的な例では、下方部分222、上方部分224、およびインサート234は誘電体材料250で構成される。誘電体材料250は、熱可塑性材料、熱硬化性材料、アセタールホモポリマー、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミドイミド、黒鉛、炭素繊維強化プラスチック、メラミン、フェノール樹脂および他の樹脂(強化繊維の有無にかかわらず)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ゴム、または他の適当な電気絶縁材料のうちの少なくとも1つから選択された材料で構成することができる。場合によっては、下方部分222、上方部分224、およびインサート234は同じ材料で構成することができる。他の例では、これらの部品のうちの1以上は、他の部品とは異なるタイプの材料で構成することができる。
【0043】
ロック機構225は、下方部分222および上方部分224が航空機200の運航中に移送要素クランプシステム206にかかる荷重252を分担するように下方部分222を上方部分224に固着するように構成された1以上の構造である。ロック機構225を使用することで、場合によっては、下方部分222および上方部分224は荷重252を均等に分担することができる。ロック機構225は、2つの片を互いに連結するように機能する下方部分222および上方部分224の両方の上にいくつかの構造を備えることができる。
【0044】
この例示的な例では、ロック機構225は、第1のクリップ254、第2のクリップ256、第1の片持梁258、および第2の片持梁260を備える。第1のクリップ254は下方部分222の第1の側面262上に配置される。第1の片持梁258は下方部分222の第2の側面264上に配置される。第2のクリップ256は上方部分224の第1の側面266上に配置され、第2の片持梁260は上方部分224の第2の側面268上に配置される。
【0045】
図示のように、第2のクリップ256は、第1の片持梁258と係合するように構成される。第2の片持梁260は、第1のクリップ254と係合するように構成される。この組合せは、移送要素クランプシステム206の下方部分222および上方部分224を互いに連動させる。
【0046】
移送要素クランプシステム206が航空機200内に設置されるとき、移送要素クランプシステム206の第1の端部270は第1の支持構造212上の第1のブラケット272に固締される。同様に、移送要素クランプシステム206の第2の端部274は第2の支持構造214上の第2のブラケット276に固締される。
【0047】
例示的な一実施形態では、移送要素クランプシステム206の製造および設置は、現在使用されているシステムほど時間をかけずに済ますことができる。移送要素クランプシステム206は、1つの機構内のいくつかの移送要素204に電磁的絶縁および支持を与えるクランプとブラケットとの両方である。移送要素クランプシステム206内のすべての部品が誘電体材料250で構成されるので、移送要素クランプシステム206を支持構造202に固着するために使用されるどの締結具もキャップ封止される必要がない。結果として、移送要素クランプシステム206を使用すると、製造時間が節約され、コストが節減され、製造を容易にするために互換性のある片を有する組立品が提供される。
【0048】
図3を参照すると、例示的な一実施形態による移送要素クランプシステムの斜視図が示されている。
図3は、
図2にブロック形式で示されている移送要素クランプシステム206の一実施態様の例を示す。
【0049】
図示のように、移送要素クランプシステム300は、上方部分302、下方部分304、インサート306、インサート308、およびロック機構310を有する。
図3は、ロック位置にある移送要素クランプシステム300を示す。言い換えると、上方部分302および下方部分304は互いにしっかりと相互作用している。ロック機構310は上方部分302を下方部分304に固着する。ロック機構310の反対側には別のロック機構(この図には示されていない)が配置されている。
【0050】
この図にはチャネル312およびチャネル314も示されている。インサート306は、チャネル312が形成されるような形状にされる。インサート308は、チャネル314が形成されるような形状にされる。移送要素(この図には示されていない)がチャネル312、チャネル314、または両チャネルを通過する。チャネル312およびチャネル314は円い形をして示されているが、インサート306およびインサート308がそれぞれどのように形成されるかに応じて他の形状も可能である。
【0051】
移送要素クランプシステム300は2つの縦通材の間の間隙を埋める。この例示的な例では、移送要素クランプシステム300は第1の端部316および第2の端部318を有する。航空機内に設置されるとき、第1の端部316は、孔320を使用して第1の縦通材上のブラケットに固締される。第2の端部318は、孔322を使用して第2の縦通材上のブラケットに固締される。孔320および孔322はそれぞれ、この例示的な例では2つの孔を有しているが、他の数の孔も可能である。
【0052】
セクション324は、移送要素クランプシステム300の一部を示す。セクション324内の各構成要素が
図5により詳細に示されている。
【0053】
次に
図4を参照すると、例示的な一実施形態による移送要素クランプシステムの分解図が示されている。この図に示されているように、インサート306は第1の半体400および第2の半体402を有する。インサート308は第1の半体404および第2の半体406を有する。
【0054】
この例示的な例では、上方部分302は切欠410および切欠412を有する。下方部分304は切欠414および切欠416を有する。各切欠は、この例示的な例ではインサートの半体を受容する。例えば、切欠410はインサート306の第1の半体400を受容し、切欠414はインサート306の第2の半体402を受容する。切欠412はインサート308の第1の半体404を受容し、切欠416はインサート308の第2の半体406を受容する。
【0055】
インサート306の第1の半体400を上方部分302に固着するために、ロックピン418が上方部分302の孔420と締まり嵌めである。インサート308の第1の半体404を上方部分302に固着するために、ロックピン422が上方部分302の孔424と締まり嵌めである。同様に、インサート306の第2の半体402およびインサート308の第2の半体406は下方部分304に固着することができる。
【0056】
図示のように、切欠414は溝426を有する。切欠416は溝428を有する。インサート306の第2の半体402のフランジ430は、インサート306の第2の半体402が下方部分304内に設置されるときに溝426と係合する。インサート308の第2の半体406のフランジ432は、インサート308の第2の半体406が下方部分304内に設置されるときに溝428と係合する。
【0057】
この例示的な例では、インサート306の第1の半体400はフランジ434を有し、インサート308の第1の半体404はフランジ436を有する。上述したのと同様に、フランジ434は切欠410の溝(この図には示されていない)と係合し、フランジ436は切欠412の溝(この図には示されていない)と係合する。
【0058】
移送要素クランプシステム300は両側面上にロック機構を有する。この例示的な例では、ロック機構310は片持梁438およびクリップ440を有する。片持梁438は、上方部分302を下方部分304に連結するためにクリップ440にパチンと嵌め込まれる。
【0059】
この図には、下方部分304にいくつかの排水孔442が見られる。排水孔442は、ブラケットの各部分に沿って形成され得る。排水孔442は、移送要素クランプシステム300内の各部品を凍結させ傷つける恐れがある水の捕捉を妨げるように構成される。加えて、排水孔442は、組立品内の捕捉される未使用燃料の量を最小限に抑えるために燃料を排出することができる。対応する排水孔は、燃料が全体として移送要素クランプシステム300を通って移動することができるように、上方部分302(この図には示されていない)に存在する。
【0060】
次に
図5を参照すると、例示的な一実施形態による移送要素クランプシステムのセクションが示されている。
図5は、
図3の視線5-5の方向に示されている移送要素クランプシステム300のセクション324のより詳細な図を示す。
【0061】
ロック機構310は、片持梁438がクリップ440と係合した状態で示されている。移送要素クランプシステム300の反対側では、ロック機構500もまた上方部分302を下方部分304にロックする。ロック機構500は片持梁502およびクリップ504を有する。片持梁502は、さらに上方部分302を下方部分304に固着するためにクリップ504にパチンと嵌め込まれる。
【0062】
いくつかの例示的な例では、互いに連結されたときに上方部分302と下方部分304との間に小間隙が存在していてもよい。この種の間隙は、製造公差、反り、およびプレロードなしの組立てしやすさを可能にする。
【0063】
次に
図6を参照すると、例示的な一実施形態による移送要素クランプシステムの正面図が示されている。移送要素クランプシステム300は
図3の視線6-6の方向に示されている。
【0064】
異なるタイプの移送要素のニーズに合うように種々の実施形態のインサートを調製することができる。この図に示されているように、インサート306はインサート308より薄いので、チャネル312の直径はチャネル314より大きくなる。このようにして、チャネル312は、チャネル314よりも大きな移送要素を保持するように構成される。他の例示的な例では、インサート306およびインサート308はともに、実質的に同じ厚さを有することができる。同様の厚さを有するインサートは、航空機のニーズに応じて、同じまたは異なるタイプの移送要素を保持するように構成することができる。
【0065】
図7には、例示的な一実施形態による移送要素クランプシステムの説明図が示されている。
図7は、
図2にブロック形式で示されている移送要素クランプシステム206の代替実施態様を示す。移送要素クランプシステム700は、この例示的な例ではただ1つの移送要素を電気的に絶縁しかつ支持するように構成される。
【0066】
図示のように、移送要素クランプシステム700は、上方部分702、下方部分704、インサート706、およびロック機構708を有する。チャネル710はインサート706によって形成される。
【0067】
図8および
図9は、インサートの一部の2つの異なる構成を示す。
図8のインサート半体800はロックピン802およびフランジ804を備える。
図9のインサート半体900はロックピン902、フランジ904、および溝906を備える。溝906は、インサート半体900の肉厚を最小限に抑え、それによりインサート半体900が冷えるときの反りおよび変形を最小限に抑えるために、インサート半体900に形成することができる。溝906は、インサート半体900の重量を減らすこともできる。
図9のインサート半体900の厚さ908は、これらの例示的な例では
図8のインサート半体800の厚さ806より大きい。
【0068】
次に
図10を参照すると、例示的な一実施形態による移送要素クランプシステムの各構成要素を示す航空機のセクションの説明図が示されている。
図10は、
図1のセクション110のより詳細な図を示し、
図3および
図4の移送要素クランプシステム300の各構成要素が航空機101の翼100内に設置されている。
【0069】
図示のように、移送要素1000および移送要素1002は、縦通材1006と縦通材1008との間の間隙1004を貫通する。下方部分304は、縦通材1006上のブラケット1010および縦通材1008上のブラケット(この図には示されていない)上に配置されている。
【0070】
インサートは、移送要素クランプシステム300の上方部分302および下方部分304の中に既に設置されている。移送要素1000は、インサート308の第2の半体406の中に配置されている。移送要素1002は、インサート306の第2の半体402の中に配置されている。
【0071】
移送要素クランプシステム300の上方部分302は移送要素1000および移送要素1002に載っている。上方部分302は、上方部分302および下方部分304を互いに連結するために矢印1012の方向に摺動される。
【0072】
次に
図11を参照すると、例示的な一実施形態による移送要素クランプシステムの各構成要素を示す航空機のセクションの説明図が示されている。この例では、上方部分302は、定位置にパチンと嵌め込むために矢印1012の方向に摺動されている。次に、移送要素クランプシステム300を全体として縦通材1006および縦通材1008に固着するために締結具を使用することができる。これらの締結具は別個の電磁的絶縁を必要としない。
【0073】
図1の翼100は、
図2の移送要素クランプシステム206を組み込んだプラットホームのただ1つの物理的実施態様である。例示的な一実施形態の例が航空機に関連して説明されるが、例示的な一実施形態は他のタイプのプラットホームに適用することができる。
図2の移送要素クランプシステム206は、管類または配線が存在する任意のプラットホームに使用することができる。プラットホームは、例えば、移動プラットホーム、固定プラットホーム、陸ベース構造、水ベース構造、または宇宙プラットホームとすることができる。より具体的には、プラットホームは、水上艦、タンク、人員運搬車、列車、宇宙船、宇宙ステーション、人工衛星、潜水艦、自動車、発電所、橋、ダム、家屋、製造用設備、建築物、および他の適当なプラットホームとすることができる。
【0074】
図1および
図3~
図11に示されている様々な構成要素は、
図2の構成要素と組み合わされてもよく、
図2の構成要素と併用されてもよく、またはこれら2つを組み合わせたものでもよい。さらに、
図1および
図3~
図9の構成要素のうちのいくつかは、
図2にブロック形式で示されている構成要素がどのようにして物理的構造として実装され得るかの例示的な例とすることができる。
【0075】
移送要素クランプシステム300の他の構成は、
図3~
図9に示されている構造以外で実装されてもよい。例えば、移送要素クランプシステムは、移送要素用の1つ、2つ、3つ、または4つ以上のインサート箇所を有することができる。このようなインサート箇所は、ブラケットに沿って所望の態様で離間されてもよい。
【0076】
次に
図12を参照すると、例示的な一実施形態による航空機内の移送要素を安定させるプロセスの流れ図が示されている。
図12に示されている方法は、
図2に示されている移送要素クランプシステム206を設置するために使用することができる。
【0077】
プロセスは、航空機内の2つの支持構造の間の間隙に移送要素クランプシステムの下方部分を配置することから始まる(作業1200)。次に、移送要素クランプシステムの下方部分の第1の数の切欠内にいくつかの移送要素が配置される(作業1202)。
【0078】
次いで、プロセスは、いくつかの移送要素の上に移送要素クランプシステムの上方部分を配置して、いくつかの移送要素が上方部分の第2の数の切欠内に静止しているようにする(作業1204)。上方部分をいくつかの移送要素に沿って下方部分の方へ摺動させて、第1の数の切欠および第2の数の切欠がいくつかの移送要素のそれぞれの周面を取り囲むようにする(作業1206)。
【0079】
2つの片が相互作用すると、上方部分は下方部分に固着される(作業1208)。次いで、移送要素クランプシステムは2つの支持構造に固着され(作業1210)、その後、プロセスは終了する。このプロセスは、航空機内に各移送要素クランプシステムを設置するために繰り返すことができる。
【0080】
例示的な一実施形態による移送要素クランプシステムは、本明細書に記述されている方法とは異なる方法で設置されてもよい。例えば、移送要素クランプシステムは、航空機の製造中に、または航空機内の既存の支持組立品を交換するために、既に存在する移送要素の周囲に設置されてもよい。
【0081】
異なる図示の例示的な実施形態での流れ図およびブロック図は、例示的な一実施形態での装置および方法のいくつかの可能な実施態様の構造、機能性、および作業を示す。この点に関して、流れ図またはブロック図の各ブロックは、モジュール、セグメント、機能、および/または作業もしくはステップの一部を表すことができる。
【0082】
本開示の例示的な諸実施形態は、
図13に示されている航空機の製造および保守点検方法1300ならびに
図14に示されている航空機1400の状況で説明することができる。最初に
図13を参照すると、例示的な一実施形態による航空機の製造および保守点検方法のブロック図が示されている。生産開始までの間、航空機の製造および保守点検方法1300は、
図14の航空機1400の仕様および設計1302ならびに材料調達1304を含むことができる。
【0083】
生産中、
図14の航空機1400の構成要素および部分組立品の製造1306ならびにシステム統合1308が行われる。その後、
図14の航空機1400は、就航中1312に置かれるために認証および搬送1310を経ることがある。顧客による就航中1312に、
図14の航空機1400は日常整備および保守点検1314が計画され、日常整備および保守点検1314は、変更、再構成、改修、および他の整備もしくは保守点検を含むことができる。
【0084】
図2の移送要素クランプシステム206および移送要素クランプシステム206の構成要素は、構成要素および部分組立品の製造1306中に製作することができる。加えて、移送要素クランプシステム206は、
図14の航空機1400の変更、再構成、または改修の一部として日常整備および保守点検1314のために製作される部品に使用することができる。
【0085】
航空機の製造および保守点検方法1300のプロセスはそれぞれ、システム統合者、第三者、オペレータ、またはそれらの何らかの組合せによって実行または実施することができる。これらの例では、オペレータは顧客とすることができる。この説明のために、システム統合者は、制限なく、任意の数の航空機製造業者および主要システム下請業者を含むことができ、第三者は、制限なく、任意の数の売主、下請業者、および供給業者を含むことができ、オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、保守点検組織など、とすることができる。
【0086】
次に
図14を参照すると、例示的な一実施形態が実装され得る航空機のブロック図が示されている。この例では、航空機1400は、
図13の航空機の製造および保守点検方法1300によって生産され、複数のシステム1404および内部1406を有する機体1402を含むことができる。システム1404の例としては、推進システム1408、電気システム1410、油圧システム1412、および環境システム1414のうちの1以上を含む。任意の数の他のシステムが含まれていてもよい。航空宇宙の一例が示されているが、異なる例示的な実施形態が自動車産業などの他の産業に適用されてもよい。
【0087】
本明細書で具現化される装置および方法は、
図13の航空機の製造および保守点検方法1300の諸段階のうちの少なくとも1つの段階中に使用することができる。
【0088】
例示的な一例では、
図13の構成要素および部分組立品の製造1306で生産される構成要素または部分組立品は、航空機1400が
図13の就航中1312である間に生産される構成要素または部分組立品と同様に製作または製造することができる。別の例としては、1以上の装置実施形態、方法実施形態、またはそれらを組み合わせたものが、
図13の構成要素および部分組立品の製造1306やシステム統合1308などの生産段階中に利用されてもよい。1以上の装置実施形態、方法実施形態、またはそれらを組み合わせたものが、航空機1400が就航中1312である間に、
図13の整備および保守点検1314中に、あるいはこれらの両方で利用されてもよい。いくつかの異なる例示的な実施形態を使用すると、航空機1400の組立を実質的に促進することができ、航空機1400のコストを節減することができ、あるいは航空機1400の組立を促進しかつ航空機1400のコストを節減することができる。
【0089】
例示的な諸実施形態は航空機の製造および設置時間を短縮する。移送要素クランプシステムは、移送要素に電磁的絶縁および支持を与える。移送要素クランプシステム内のすべての構成要素が誘電体材料で製作されるので、アークおよび火花の発生するリスクがない。結果として、キャップ封止締結具の必要が減少するまたはなくなり、時間およびコストを節約する。
【0090】
移送要素クランプシステムの下方部分および上方部分は互換性があるので、構成要素は大量生産し迅速に設置することができる。ロック機構により、両部分は航空機の運航中に移送要素クランプシステムにかかる荷重を分担して、故障のリスクを低下させることができる。
【0091】
移送要素クランプシステムのこの設計は、異なるインサートを使用することにより異なるタイプの移送要素を支持しかつ電気的に絶縁するために使用することができる。例えば、大型の管を支持するために薄いインサートが使用されてもよい。このようにして、例示的な諸実施形態は、航空機用途向けの完全にカスタマイズ可能なクランプシステムを提供する。
【0092】
例示的な諸実施形態により、管類を絶縁し固着するために以前使用された構成要素のうちのいくつかが不要になる。さらに、例示的な諸実施形態により、構成要素のそれぞれが別個の電磁効果保護を有する必要がなくなる。電磁的絶縁は、
図2の移送要素クランプシステム206だけから実現される。
【0093】
例示的な一実施形態のいくつかの代替実施態様では、ブロック内に記されている1以上の機能は、図に記されている順序を外れて行われてもよい。例えば、場合によっては、連続して示されている2つのブロックは実質的に同時に実行されてもよく、あるいは、2つのブロックは、関係する機能性に応じて逆の順序で実行されてもよいことがある。また、図示のブロックに加えて、他のブロックが流れ図またはブロック図に追加されてもよい。
【0094】
異なる例示的実施形態に関する記述は、例示および説明のために提示されており、網羅的とする、あるいは開示される形の実施形態に限定するためのものではない。多くの修正形態および変形形態が当業者には明らかであろう。さらに、異なる例示的実施形態が、他の望ましい実施形態と比べて異なる形態をもたらすことができる。選定される1以上の実施形態は、実施形態の原理および実際的な用途を最も良く説明するとともに、当業者が検討される特定の使用に適した様々な変更を伴う様々な実施形態の開示を理解できるようにするために、選択され説明される。
【符号の説明】
【0095】
100 翼、101 航空機、102 リブ、104 縦通材、106 移送システム、108 移送要素、110 セクション、200 航空機、202 支持構造、204 移送要素、206 移送要素クランプシステム、208 航空機構造、210 翼、212 第1の支持構造、214 第2の支持構造、216 縦通材、218 管、219 周面、220 間隙、222 下方部分、223 インサート、224 上方部分、225 ロック機構、226 チャネルシステム、228 第1の数の切欠、229 第1の切欠、230 第2の数の切欠、232 第2の切欠、233 いくつかのチャネル、234 インサート、235 チャネル、236 第1の半体、238 第2の半体、240 第1のロックピン、242 第2のロックピン、244 第1組の溝、246 第2組の溝、248 フランジ、250 誘電体材料、252 荷重、254 第1のクリップ、256 第2のクリップ、258 第1の片持梁、260 第2の片持梁、262 第1の側面、264 第2の側面、266 第1の側面、268 第2の側面、270 第1の端部、272 第1のブラケット、274 第2の端部、276 第2のブラケット、300 移送要素クランプシステム、302 上方部分、304 下方部分、306 インサート、308 インサート、310 ロック機構、312 チャネル、314 チャネル、316 第1の端部、318 第2の端部、320 孔、322 孔、324 セクション、400 第1の半体、402 第2の半体、404 第1の半体、406 第2の半体、410 切欠、412 切欠、414 切欠、416 切欠、418 ロックピン、420 孔、422 ロックピン、424 孔、426 溝、428 溝、430 フランジ、432 フランジ、434 フランジ、436 フランジ、438 片持梁、440 クリップ、442 排水孔、500 機構、502 片持梁、504 クリップ、700 移送要素クランプシステム、702 上方部分、704 下方部分、706 インサート、708 ロック機構、800 インサート半体、802 ロックピン、804 フランジ、806 厚さ、900 インサート半体、902 ロックピン、904 フランジ、906 溝、908 厚さ、1000 移送要素、1002 移送要素、1004 間隙、1006,1008 縦通材、1010 ブラケット、1012 矢印、1200 作業、1202 作業、1204 作業、1206 作業、1208 作業、1210 作業、1300 航空機の製造および保守点検方法、1302 仕様および設計、1304 材料調達、1306 構成要素および部分組立品の製造、1308 システム統合、1310 認証および搬送、1312 就航中、1314 日常整備および保守点検、1400 航空機、1402 機体、1404 システム、1406 内部、1408 推進システム、1410 電気システム、1412 油圧システム、1414 環境システム