(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】バイオマス消化液の処理方法及びその廃水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 11/148 20190101AFI20221129BHJP
C02F 11/125 20190101ALI20221129BHJP
C02F 1/54 20060101ALI20221129BHJP
C02F 1/56 20060101ALI20221129BHJP
C02F 3/12 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C02F11/148
C02F11/125
C02F1/54 E
C02F1/56 E
C02F3/12
(21)【出願番号】P 2018090796
(22)【出願日】2018-05-09
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501369879
【氏名又は名称】三浦 征八朗
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(72)【発明者】
【氏名】三浦 征八朗
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-297229(JP,A)
【文献】国際公開第2006/022188(WO,A1)
【文献】特開2005-248337(JP,A)
【文献】特開2005-021839(JP,A)
【文献】特開平05-038495(JP,A)
【文献】特開2006-087968(JP,A)
【文献】特開2013-233519(JP,A)
【文献】特開昭56-013099(JP,A)
【文献】特開平10-109094(JP,A)
【文献】特開2018-192383(JP,A)
【文献】特開2003-145199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/01
C02F 1/52-1/56
C02F 3/02-3/26、11/12、11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルジョンを形成しているバイオマス消化液の処理方法であって、
被処理水のバイオマス消化液に、
植物性繊維を機械的剪断により粉砕した粒径1~100μmの粉砕物を主成分とし、Mp値(Moisture percentage value;含水率評価)がMp(ケーキ含水率)≦55乃至Mp(ケーキ含水率)=55~70を有する脱水助剤、及びフロック(Flock;綿毛状沈殿)形成能を有する凝集剤とを添加して、フロック;特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)を形成させる工程、該フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率55%以下乃至55~70%とに分離する工程、次いで、該脱離液を生物処理槽(曝気槽)に投入して生物処理を実行する工程、を含むことを特徴とするバイオマス消化液の処理方法。
【請求項2】
少なくとも混和槽-反応槽-汚泥脱水機-(中和槽)-生物処理槽を備えた浄化施設において、混和槽で、被処理水のバイオマス消化液に、上記特定の脱水助剤を添加する工程、次いで、反応槽で、被処理水に、フロック形成能を有する凝集剤を添加して、バイオマス消化液中の乳化成分と微粒子成分を包接したフロック;特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)を形成させる工程、汚泥脱水機で、該フロックを除去すると同時に、フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率55%以下乃至55~70%とに分離する工程、次いで、該脱離液を生物処理槽(曝気槽)に投入して生物処理を実行する工程、を備えた、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
Mp値(含水率評価)がMp(ケーキ含水率)=55~70を有する脱水助剤、及びフロック形成能を有する凝集剤とを添加して、フロック;大(φ5~10mm)を形成させる工程、フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率55~70%、とに分離する工程、次いで、該脱離液を生物処理槽(曝気槽)に投入して生物処理を実行する工程、を備えた、請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項4】
被処理水の生物処理槽流入前に、バイオマス消化液中の乳化成分と微粒子成分を包接したフロックを除去する操作を実行する、請求項1から3のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項5】
被処理水の生物処理槽(曝気槽)流入前に、必要により、中和槽で、消毒剤の中和の操作を実行する、請求項1から3のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項6】
被処理水のバイオマス消化液に対して、混和槽で、上記脱水助剤を0.1%以下(対廃水容量)添加する、請求項1から3のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項7】
被処理水のバイオマス消化液に対して、反応槽で、凝集剤を1%以下(0.2%水溶液)添加する、請求項1から3のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項8】
上記請求項1から7のいずれかに記載のバイオマス消化液の処理方法で使用するための廃水処理装置であって、
少なくとも混和槽-反応槽-汚泥脱水機-(中和槽)-生物処理槽を備えた浄化施設を構成要素として含み、
1)混和槽で、被処理水の
エマルジョンを形成しているバイオマス消化液に、
植物性繊維を機械的剪断により粉砕した粒径1~100μmの粉砕物を主成分とし、Mp値(含水率評価)がMp(ケーキ含水率)≦55乃至Mp(ケーキ含水率)=55~70を有する脱水助剤を添加する工程、
2)反応槽で、被処理水にフロック形成能を有する凝集剤を添加してバイオマス消化液中の乳化成分と微粒子成分を包接したフロック;特大(φ10nm以上)~大(φ5~10mm)を形成させる工程、
3)汚泥脱水機で、該フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率55%以下乃至55~70%とに分離する工程、
を実行することにより、上記脱離液を生物処理槽(曝気槽)に投入して生物処理を実施するようにしたことを特徴とする上記廃水処理装置。
【請求項9】
1)混和槽で、被処理水のバイオマス消化液に、Mp値(含水率評価)がMp(ケーキ含水率)=55~70を有する脱水助剤を添加する工程、
2)反応槽で、被処理水に凝集剤を添加してバイオマス消化液中の乳化成分と微粒子成分を包接したフロック;大(φ5~10mm)を形成させる工程、
3)汚泥脱水機で、該フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率55~70%とに分離する工程、
を実行することにより、上記脱離液を生物処理槽(曝気槽)に投入して生物処理を実施するようにした、請求項8に記載の廃水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス消化液の処理方法及びその廃水処理装置に関するものであり、更に詳しくは、バイオマス発電施設で発電を終えた後に残る残渣が含まれる廃水である所謂バイオマス消化液の処理方法及び該処理方法で使用するためのバイオマス消化液(以下、「廃水」と記載することがある。)の処理装置に関するものである。本発明は、上記バイオマス消化液の処理方法及びその廃水処理装置に関する新技術・新製品を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
2012年に始まった再生可能エネルギーの固定価格買取り制度(買取り期間:20年)の対象となるバイオマス発電は、再生可能エネルギーの拡大に伴って更に増加する傾向にある。しかし、原子力発電と同じように、発電を終えた後に残渣が残るという問題が発生しており、該残渣を含む廃水をバイオマス消化液と呼んでいる。
【0003】
このバイオマス消化液の処理には、ろ液にしてからの濃縮、蒸留技術の開発例はあるが、その手前の固液分離技術がなく、そのため、現在は、バイオマス消化液は、焼却、土壌の還元、草地の還元などに使用されている。ここで、バイオマス消化液の固液分離技術が不可能である理由としては、該消化液が乳化して安定なエマルジョンを形成していて凝集が困難である点、また、固形物が分解されていて粒子が細かくなって分子が会合してミセルを形成してコロイド状態になっているため、フロックの形成や脱水が困難である点、があげられる。
【0004】
ここで、バイオマス消化液の処理技術について整理すると、従来、先行技術として、例えば、1)外食産業や食品製造所などから排出される食品廃棄物を飼料や燃料などとして効率良く再資源化するために、上記食品廃棄物をメタン醗酵させて、その消化液とガスを利用した再資源化システム(特許文献1)、2)醤油粕の水希釈スラリーを嫌気的に消化することにより醤油粕を殆ど完全に分解する嫌気的処理法(特許文献2)、3)バイオマス資源の可溶化液をメタン発酵するメタン発酵槽を備えたバイオマス燃料化システム及びその制御方法(特許文献3)、4)バイオマス資源を高効率に利用するために、メタン発酵処理によって生じた残渣及び消化液を水熱処理して回収する方法(特許文献4)、などが提案されている。
【0005】
また、他の先行技術として、例えば、5)有機性廃棄物やバイオマス資源をメタン発酵して生じる残渣を含む消化液を焼却炉や溶融炉に導入して処理する方法及びその処理設備(特許文献5)、6)草系バイオマス消化液及び草系バイオマス消化方法(特許文献6)、7)バイオマスプラントにおいて発生する消化液から固形成分を再利用可能な形態で分離回収する消化液処理システム(特許文献7)、などが提案されている。
【0006】
また、一般に、8)水溶性タンパク質の分離には、荷電中和により凝集する作用を有する鉄塩や、アルミニウム塩で処理する方法が用いられ、この処理により、生成した微細なフロックを、水から分離し易くするために、合成高分子凝集剤が用いられ、このようにして凝集したフロックを固形分離するために、加圧浮上分離法を用いる方法(非特許文献1)、が提案されている。
【0007】
一般に、従来の水産加工廃水を集積して共同処理する施設のように、例えば、組成が大きく変動する水産加工廃水のフロスを処理する場合には、凝集したフロックを、スクリュープレスにより脱水することはほとんど不可能である。そのため、現状では、ボイラーによる蒸発工程により水分を飛ばして脱水する手法が採られているが、高コストであり、CO2を多く排出し、環境負荷が非常に大きいという問題がある。そこで、当技術分野においては、現状のボイラー蒸発工程による脱水システムに代わる低環境負荷型の新しい脱水システムを確立することが喫緊の課題として強く要請されていた。
【0008】
バイオマス発電消化液の浄化処理については、該バイオマス消化液を放流可能なレベルまで浄化処理する方法として、現状では、例えば、標準的な活性汚泥法による浄化処理が主流になりつつある。しかし、活性汚泥法による浄化設備を設置するには、例えば、調整池や、生物処理槽(曝気槽)、沈殿池、これらの運転設備などを備えた大掛かりの浄化設備の設置が必要となり、設備費用やランニングコストの点で、中小規模の事業者が個々に設置する設備としては、非効率で、かつ経済的ではない。そこで、当技術分野においては、より小規模で、効率のよい実用化可能な新しい浄化技術及び浄化施設を開発することが強く要請されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-88838号公報
【文献】特開2005-6649公報
【文献】特開2007-313427号公報
【文献】特開2008-43902号公報
【文献】特開2008-221105号公報
【文献】特開2012-16652号公報
【文献】特開2016-10742号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】廃棄物処理・再資源化技術ハンドブック編集委員会編、「廃棄物処理・再資源化技術ハンドブック」、株式会社建設産業調査会発行、1993年11月25日、p.407左欄第9-32行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これまでに、本発明者らは、バイオマス発電消化液(以下、「バイオマス消化液」と記載することがある。)の浄化処理について種々検討を重ねる過程で、バイオマス消化液は、該バイオマス消化液が乳化していて安定なエマルジョン状態を形成するため、固液分離が不可能であり、その除去/脱水がきわめて難しいこと、そのため、実際には、バイオマス消化液を未処理のまま生物処理槽(曝気槽)に流入させている場合が多いこと、が判明した。
【0012】
すなわち、従来公知の既存の技術では、上記消化液を含む汚染された廃液に、通常の脱水助剤や凝集剤などを添加してフロックを生成(形成)させても、残渣ケーキの含水率を約70%以下に低下させることは技術的にきわめて難しく、それを解決することは至難とされているのが実情であった。
【0013】
このような状況の中で、本発明者らは、バイオマス消化液の乳化成分及び微粒子成分を生物処理槽(曝気槽)に流入させる前に除去するために、Mp値(Moisture percentage value;含水率評価)がMp(ケーキ含水率)≦70を有する特定の脱水助剤と、該脱水助剤に適合した凝集剤とを併用し、少なくとも混和槽-反応槽-汚泥脱水機-(中和槽)-生物処理槽(曝気槽)を備えた浄化施設において、混和槽で、被処理水に、上記特定の脱水助剤を添加する工程と、次いで、反応槽で、被処理水に凝集剤を添加して、フロック(flock);特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)を形成させる工程と、汚泥脱水機で、該フロックを除去した透明度の高い脱離液と、脱水ケーキ;含水率70%以下、とに分離する工程とを採用し、次いで、該脱離液を生物処理槽(曝気槽)に投入して生物処理を実行すること、それにより、BOD容積負荷の低減、汚泥発生量の抑制、及び必要酸素量の削減による安定した水処理効果が達成でき、生物処理槽(曝気槽)での生物処理を効率よく実行できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明において、Mp値(Moisture percentage value;含水率評価)が、“Mp(ケーキ含水率)≦70を有する特定の脱水助剤”とは、被処理水のバイオマス消化液に、該脱水助剤及び凝集剤とを添加して、フロック;特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)を形成する性能と、該フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率70%以下、とに分離できることが予想(期待)される性能、すなわち、ケーキ含水率を55%以下乃至55~70%に脱水することができる性能を備えた脱水助剤として定義される。
【0015】
本発明において、脱水試験を実施するために、少なくとも混和槽-反応槽-汚泥脱水機-(中和槽)-生物処理槽(曝気槽)を備えた浄化施設において、混和槽及び反応槽で、被処理水に各種の脱水助剤及び凝集剤を添加して試験したところ、後記する表5(段落0067参照)に示したように、フロック及びケーキ脱水率の評価で、フロックを除去した離脱水(上澄水)の透明度は、“濁→透明”、との結果と、反応槽で形成されるフロック(flock)の大きさは、E→A、すなわち、E;フロックできない、D;小(φ3mm以下)、C;中(φ3~5mm)B;大(φ5~10mm)、A;特大(φ10mm以上)、との結果と、汚泥脱水機から発生する予想(期待)されるケーキ含水率は、E→A、すなわち、E;90%以上、D;80~90%、C;70~80%、B;55~70%、A;55%以下、との結果、が得られた。
【0016】
本発明では、上記脱水ケーキの予想(期待)されるケーキ含水率の評価が、後記する表5(段落0067参照)の“評価”の項のE~Aの数値を、“Mp値(Moisture percentage value;含水率評価)”と定義することとする。そして、本発明において、脱水助剤の性能について、例えば、脱水ケーキのケーキ含水率の評価で、予想(期待)されるケーキ含水率が、例えば、55%以下である場合は、これを“Mp(ケーキ含水率)≦55”の性能を有する、また、55~70%である場合は、これを“Mp(ケーキ含水率)=55~70”の性能を有する、と表記することとする。
【0017】
本発明は、上記特定の脱水助剤と、該脱水助剤に適合した凝集剤とを併用した、バイオマス消化液のフロック;特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)の形成と、該フロックの除去/脱水により、フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率70%以下、より詳しくは、含水率55%以下乃至55~70%に分離し、それにより、BOD容積負荷の低減、汚泥発生量の抑制、及び必要酸素量の削減による安定した水処理効果が期待でき、生物処理槽(曝気槽)での生物処理を実行可能としたことを特徴とするバイオマス消化液の処理方法を提供することを目的とするものである。
【0018】
また、本発明は、上記特定の脱水助剤と、該脱水助剤に適合した凝集剤を併用することにより、反応槽で、フロック;特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)を形成させることを可能とし、かつ脱水ケーキの含水率を70%以下、より詳しくは、含水率55%以下乃至55~70%に低減することを可能とし、それによって、生物処理槽(曝気槽)での生物処理を実行可能にしたことを特徴とするバイオマス消化液の処理方法及びその廃水処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)エマルジョンを形成しているバイオマス消化液の処理方法であって、
被処理水のバイオマス消化液に、植物性繊維を機械的剪断により粉砕した粒径1~100μmの粉砕物を主成分とし、Mp値(Moisture percentage value;含水率評価)がMp(ケーキ含水率)≦55乃至Mp(ケーキ含水率)=55~70を有する脱水助剤、及びフロック(Flock;綿毛状沈殿)形成能を有する凝集剤とを添加して、フロック;特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)を形成させる工程、該フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率55%以下乃至55~70%とに分離する工程、次いで、該脱離液を生物処理槽(曝気槽)に投入して生物処理を実行する工程、を含むことを特徴とするバイオマス消化液の処理方法。
(2)少なくとも混和槽-反応槽-汚泥脱水機-(中和槽)-生物処理槽を備えた浄化施設において、混和槽で、被処理水のバイオマス消化液に、上記特定の脱水助剤を添加する工程、次いで、反応槽で、被処理水に、フロック形成能を有する凝集剤を添加して、バイオマス消化液中の乳化成分と微粒子成分を包接したフロック;特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)を形成させる工程、汚泥脱水機で、該フロックを除去すると同時に、フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率55%以下乃至55~70%とに分離する工程、次いで、該脱離液を生物処理槽(曝気槽)に投入して生物処理を実行する工程、を備えた、前記(1)に記載の処理方法。
(3)Mp値(含水率評価)がMp(ケーキ含水率)=55~70を有する脱水助剤、及びフロック形成能を有する凝集剤とを添加して、フロック;大(φ5~10mm)を形成させる工程、フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率55~70%、とに分離する工程、次いで、該脱離液を生物処理槽(曝気槽)に投入して生物処理を実行する工程、を備えた、前記(1)又は(2)に記載の処理方法。
(4)被処理水の生物処理槽流入前に、バイオマス消化液中の乳化成分と微粒子成分を包接したフロックを除去する操作を実行する、前記(1)から(3)のいずれか一項に記載の処理方法。
(5)被処理水の生物処理槽(曝気槽)流入前に、必要により、中和槽で、消毒剤の中和の操作を実行する、前記(1)から(3)のいずれか一項に記載の処理方法。
(6)被処理水のバイオマス消化液に対して、混和槽で、上記脱水助剤を0.1%以下(対廃水容量)添加する、前記(1)から(3)のいずれか一項に記載の処理方法。
(7)被処理水のバイオマス消化液に対して、反応槽で、凝集剤を1%以下(0.2%水溶液)添加する、前記(1)から(3)のいずれか一項に記載の処理方法。
(8)上記前記(1)から(7)のいずれかに記載のバイオマス消化液の処理方法で使用するための廃水処理装置であって、
少なくとも混和槽-反応槽-汚泥脱水機-(中和槽)-生物処理槽を備えた浄化施設を構成要素として含み、
1)混和槽で、被処理水のエマルジョンを形成しているバイオマス消化液に、植物性繊維を機械的剪断により粉砕した粒径1~100μmの粉砕物を主成分とし、Mp値(含水率評価)がMp(ケーキ含水率)≦55乃至Mp(ケーキ含水率)=55~70を有する脱水助剤を添加する工程、
2)反応槽で、被処理水にフロック形成能を有する凝集剤を添加してバイオマス消化液中の乳化成分と微粒子成分を包接したフロック;特大(φ10nm以上)~大(φ5~10mm)を形成させる工程、
3)汚泥脱水機で、該フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率55%以下乃至55~70%とに分離する工程、
を実行することにより、上記脱離液を生物処理槽(曝気槽)に投入して生物処理を実施するようにしたことを特徴とする上記廃水処理装置。
(9)1)混和槽で、被処理水のバイオマス消化液に、Mp値(含水率評価)がMp(ケーキ含水率)=55~70を有する脱水助剤を添加する工程、
2)反応槽で、被処理水に凝集剤を添加してバイオマス消化液中の乳化成分と微粒子成分を包接したフロック;大(φ5~10mm)を形成させる工程、
3)汚泥脱水機で、該フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率55~70%とに分離する工程、
を実行することにより、上記脱離液を生物処理槽(曝気槽)に投入して生物処理を実施するようにした、前記(8)に記載の廃水処理装置。
【0020】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の被処理対象物であるバイオマス消化液とは、バイオマス発電施設で発電を終えた後に残る残渣などが含まれている上記施設から発生する廃水を意味する。このバイオマス消化液については、当技術分野では、バイオマス消化液が未処理のまま生物処理槽(曝気槽)に流入させている場合があるため、生物処理槽(曝気槽)における生物処理(浄化処理)がうまく行かないという問題が多々見られた。
【0021】
また、バイオマス消化液の浄化は、消化液が乳化していて安定なエマルジョン状態を形成するため、凝集が困難であり、また、固形物が分解されて粒子が細かくなって分子が会合してミセルを形成してコロイド状態になることにより、公知の既存の技術では、特に、反応槽の反応工程における、大きさが、特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)のフロックを形成させることが難しく、また、汚泥脱水機によるフロック除去/脱水の工程における脱離液と脱水ケーキとの分離作業がかなり困難であり、フロック;特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)を除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率70%以下、すなわち含水率55%以下乃至55~70%とに分離することがきわめて難しく、当技術分野においては、バイオマス消化液を効率よく浄化処理する方法を開発することが強く要請されていた。
【0022】
本発明者らは、これまで、水産加工排水やパーラー廃水のフロスを処理する方法を種々研究/開発する中で、バイオマス発電施設から発生するバイオマス消化液を処理するために、バイオマス消化液中の乳化成分や、微粒子成分に着目し、これらを生物処理槽(曝気槽)に流入させる前に除去するために、特定の脱水助剤と、該脱水助剤に適合した凝集剤とを併用して、反応槽で、特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)のフロックを形成させ、次いで、汚泥脱水機で、フロック除去/脱水をすることにより、汚泥脱水機で、フロック;特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)を除去した透明度の高い脱離液と、脱水ケーキ;含水率70%以下、とに分離することが可能であること、その後、該脱離液を生物処理槽(曝気槽)に流入させて生物処理を行うことにより、高効率、かつ高精度の生物処理を実行することが可能になること、との新規知見を見出した。
【0023】
バイオマス消化液は、該消化液(廃水)中に乳化成分や、微粒子成分などの分子が会合してミセルを形成して乳化及び微粒子成分が分散したコロイド状態であると同時に、洗浄排水、微粒子成分などを含む汚泥で複雑に複合的に汚染された廃液である。そのために、汚泥脱水機で、フロック除去/脱水をしたとしても、含水率70%以下、とり分け、55%以下の脱水ケーキにすることはきわめて困難であり、従来、大規模で、高度な浄化設備で浄化処理しない限り、該バイオマス消化液を簡便な設備で、低コストで、効率よく浄化することはきわめて困難とされていた。
【0024】
そこで、本発明では、洗浄排水、微粒子成分などを含む汚泥で複雑に複合的に汚染された廃水を含むバイオマス消化液を処理するために、該消化液中の乳化成分、微粒子成分に着目し、これらを生物処理槽(曝気槽)に流入させる前に除くために、特定の脱水助剤と、該脱水助剤に適合した凝集剤を併用して、フロックの形成と、その除去/脱水により、被処理水を浄化することを試みた。
【0025】
すなわち、本発明は、少なくとも混和槽-反応槽-汚泥脱水機-(中和槽)-生物処理槽を備えた浄化施設において、混和槽で、被処理水に、Mp値(含水率評価)がMp(ケーキ含水率)≦70、より詳しくは、Mp(ケーキ含水率)≦55乃至Mp(ケーキ含水率)=55~70を有する脱水助剤を添加し、次いで、反応槽で、被処理水に、該脱水助剤に適合した凝集剤、例えば、高分子凝集剤を添加して、バイオマス消化液中の乳化成分や、微粒子成分を包接したフロック;特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)を形成させ、汚泥脱水機で、該フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率70%以下、より詳しくは、含水率55%以下乃至55~70%とに分離し、次いで、該脱離液を生物処理槽に投入して生物処理を実行することにより、生物処理槽(曝気槽)による生物処理(浄化処理)を効率よく実行することを特徴としている。
【0026】
本発明では、反応槽におけるフロックの形成と、脱水工程におけるフロックの除去と、ケーキ含水率との関係がきわめて重要である。脱水試験の結果、後記する表5(段落0067参照)に示したように、ケーキ含水率が90%以上では、フロックができず、ケーキ含水率が80~90%では、フロックの大きさは小(φ3mm以下)であり、ケーキ含水率が70~80%では、フロックの大きさは中(φ3~5mm)であり、ケーキ含水率が55~70%では、フロックの大きさは大(φ5~10mm)であり、ケーキ含水率が55%以下では、フロックの大きさは特大(φ10mm以上)である。そして、この順に、例えば、上澄水の透明度は、濁→透明になり、評価は、E→Aのランクになることが判明し、かつ、これらの試験結果は、混和槽で添加する脱水助剤の種類の選定と、反応槽で添加する凝集剤の種類の選定、とり分け、前者の混和槽で添加する脱水助剤の種類の選定によって大きく左右されることが判明した。
【0027】
本発明者らは、通常のルーチンの検討をはるかに上回る過度の試験又はそれ以上の試験を積み重ねた結果、少なくとも混和槽-反応槽-汚泥脱水機-(中和槽)-生物処理槽(曝気槽)を備えた浄化施設において、混和槽で、被処理水に、Mp値(含水率評価)がMp(ケーキ含水率)≦70、より詳しくは、Mp(ケーキ含水率)≦55乃至Mp(ケーキ含水率)=55~70を有する脱水助剤を添加する工程、次いで、反応槽で、被処理水に、該脱水助剤に適合した凝集剤、例えば、高分子凝集剤を添加して、バイオマス消化液中の乳化成分と微粒子成分を包接したフロックを形成させる工程を採用することによって、はじめて、脱水ケーキの含水率70%以下、より詳しくは、含水率55%以下乃至55~70%、フロックの大きさ:特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)、上澄水:透明度が高い、という水処理結果(効果)を得た。そして、汚泥脱水機で、該フロックを除去すると同時に、上記フロックを除いた透明度の高い脱離液を生物処理槽(曝気槽)に投入して、生物処理を効率よく実施することに成功した。
【0028】
ここで、更に、特定の脱水助剤と、該脱水助剤に適合した凝集剤とを併用した、バイオマス消化液中の乳化成分と微粒子成分を包接したフロックの形成と、その除去/脱水について詳しく説明すると、本発明で、フロックの形成と、その除去/脱水とは、少なくとも混和槽-反応槽-汚泥脱水機-(中和槽)-生物処理槽(曝気槽)を備えた浄化施設において、原水(脱水前の廃水)に、混和槽で、Mp値(含水率評価)がMp(ケーキ含水率)≦70、より詳しくは、Mp(ケーキ含水率)≦55乃至Mp(ケーキ含水率)=55~70を有する特定の脱水助剤を添加し、例えば、500rpm×2分間撹拌した後、反応槽で、該脱水助剤に適合した凝集剤、例えば、高分子凝集剤を添加して、例えば、120rpm×3分間撹拌して、バイオマス消化液中の乳化成分と微粒子成分を包接したフロックを形成させる。次いで、該フロックを、汚泥脱水機に投入し、バイオマス消化液中の乳化成分と微粒子成分を含むフロックを除去/脱水して、脱離液と脱水ケーキに分離し、脱水ケーキの含水率を70%以下、より詳しくは、含水率55%以下乃至55~70%に低下させた後、該脱離液を生物処理槽(曝気槽)で生物処理することを意味する。
【0029】
本発明では、上記特定の脱水助剤として、例えば、植物性繊維を機械的剪断により粉砕した粒径1~100μmの粉砕物を主成分とする脱水助剤を使用することができ、凝集剤として、例えば、上記脱水助剤に適合した高分子凝集剤(市販製品)を使用することができる。ここで、植物性繊維を機械的剪断により粉砕した粒径1~100μmの粉砕物を主成分とするとは、当該粒径1~100μmの粉砕物を少なくとも50重量%以上(すなわち、半分以上)含有するものであることを意味する。上記脱水助剤の主成分である植物性繊維としては、例えば、針葉樹又は広葉樹の木粉、あるいは稈が木質化した単子葉植物である竹の粉末、間伐材チップや木工の切屑の粉砕物又は製材時に発生するノコ屑や廃棄物、サンダー掛けで発生する研削屑や、サンドブラストで発生する切削屑、製紙用パルプ、古紙パルプなどを例示することができる。しかし、これらに制限されるものではなく、植物性繊維が含まれる原材料(素材)であればその種類に拘わらず適宜使用することができる。
【0030】
これらの植物性繊維は、望ましくは、セルロース繊維としての純度を90%以上に高めたものが好適に使用される。このような植物性繊維を機械的剪断により粉砕した粒径1~100μmの粉砕物を主成分とする脱水助剤については、約40種類以上の市販製品があり、例えば、「リセルバーMTシリーズ」(リセルバー社製)として、品番を指定して適宜入手することが可能である。
【0031】
本発明において、脱水助剤の主成分である“植物性繊維”としては、例えば、粉砕もみがら、わら、粉砕コーンコブ、セルロースファイバー、微細木粉などの植物性繊維があり、これらの植物性繊維を機械的剪断により粉砕し、例えば、擂潰機などを用いて粉砕又は摩砕することにより、粒径1~100μmに微細化した粉砕物を主成分とする粉砕物(試料)を好適に使用することができる。しかし、本発明で使用できる脱水助剤は、これらに制限されるものではなく、Mp値(含水率評価)がMp(ケーキ含水率)≦55乃至Mp(ケーキ含水率)=55~70を有する試料、すなわち、後記する表5の評価の項のA~Bランクの試料であれば、同様に使用することができる。
【0032】
本発明では、上記粉砕もみがらなどの特定の脱水助剤は、粒径1~100μmの粉砕物を主成分とする試料の状態で、少なくとも混和槽-反応槽-汚泥脱水機-(中和槽)-生物処理槽を備えた浄化施設において、混和槽で、被処理水に添加して利用することができる。上記特定の脱水助剤を用いてバイオマス消化液を処理するには、混和槽で、原水(処理前の廃水)に対し、例えば、上記特定の脱水助剤を0.1%(対廃水容量)添加し、次いで、反応槽で、上記脱水助剤に適合した凝集剤、例えば、有機高分子凝集剤(例えば、0.2質量%の水溶液)を添加する。この有機高分子凝集剤としては、ノニオン系、カチオン系又は両性合成高分子凝集剤が用いられる。
【0033】
上記ノニオン系合成高分子凝集剤としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、尿素-ホルマリン樹脂などを例示することができ、カチオン系合成高分子凝集剤としては、例えば、ポリアミノメチルアクリルアミド、ポリビニルイミダゾリン、キトサン、アイオネン系共重合体、エポキシアミン共重合体などを例示することができる。また、両性合成高分子凝集剤としては、例えば、レシチン系両性界面活性剤、カゼイン分解物系両性界面活性剤などを例示することができる。これらの有機高分子凝集剤は、例えば、市販製品(浅田化学工業社製、ハイモ社製など)として適宜入手可能である。また、本発明では、上記脱水助剤に適合した凝集剤として、無機凝集剤、例えば、ポリ硫酸鉄(III)、ポリ塩化鉄(III)、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸アルミニウムや、塩化第二鉄、硫酸アルミニウムなどを使用することができ、また、上記特定の脱水助剤に適合する凝集剤であれば適宜の凝集剤を使用することができる。
【0034】
本発明のバイオマス消化液の浄化処理を実行するに際しては、上記特定の脱水助剤と、該脱水助剤に適合した凝集剤、例えば、有機高分子凝集剤を添加する順序が重要である。少なくとも混和槽-反応槽-汚泥脱水機-(中和槽)-生物処理槽(曝気槽)を備えた浄化施設において、前段の混和槽で、上記特定の脱水助剤を添加し、次いで、反応槽で、該脱水助剤に適合した凝集剤、例えば、有機高分子凝集剤を添加し、撹拌すると、次第に、フロックが生成(形成)されるので、十分にフロックを形成させてから、汚泥脱水機による搾液処理を実行する。このフロックの生成(形成)に要する時間は、通常は、5~15分程度である。
【0035】
このようにして十分にフロックを形成させてから、例えば、スクリュープレス、ベルトプレス又は加圧ろ過により搾液して、脱離液と脱水ケーキとに分離し、脱水ケーキを取り出す。本発明においては、バイオマス消化液中の乳化成分、微粒子成分に着目し、少なくとも混和槽-反応槽-汚泥脱水機-(中和槽)-生物処理槽を備えた浄化施設において、混和槽で、被処理水に、Mp値(含水率評価)がMp(ケーキ含水率)≦70を有する脱水助剤、例えば、植物性繊維を機械的剪断により粉砕した粒径1~100μmの粉砕物を主成分とする脱水助剤を添加し、次いで、反応槽で、被処理水に、上記脱水助剤に適合した凝集剤、例えば、高分子凝集剤を添加して、バイオマス消化液中の乳化成分と微粒子成分を包接したフロックを形成させる。
【0036】
次いで、汚泥脱水機で、該フロック;特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)を除去すると同時に、フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率70%以下、とに分離し、必要により、中和槽で、消毒剤の中和も同時に実行する。次いで、該脱離液を生物処理槽(曝気槽)に投入して生物処理を実行する。本発明では、フロック;特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)の形成と、該フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率70%以下、とに分離することが重要であり、これらの条件を全て満たして、はじめて、生物処理槽(曝気槽)による生物処理を効率よく実行することが可能になる。
【0037】
本発明では、後記する実施例に示したように、凝集剤として、約30種類の市販の凝集剤の中から、特定の市販製品(品番;RB-PT、PB-C1805など)を選定したが、本発明では、脱水助剤、凝集剤の選定の中でも、“脱水助剤”の選定が最も重要であり、“凝集剤”については、フロック判定(上澄水、大きさ、硬さ、握り感)で、A~E:最高ランク~最低ランク、を基準にして、上記特定の脱水助剤に適合する好適な凝集剤を選定して使用すればよい。
【0038】
本発明において、上記フロック;特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)の形成と、該フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率70%以下、とに分離できない場合は、バイオマス消化液を生物処理槽(曝気槽)で生物処理しても、BOD容積負担の低減、汚泥発生量の抑制及び必要酸素量の削減による安定した水処理効果を期待することは困難である。その結果、上澄水の評価、フロックの評価(大きさ、硬さ、握り感)で良好な結果を得ることができず、生物処理槽(曝気槽)による生物処理がうまく行かなくなり、水質汚濁防止法による一般排水基準を満たすようなバイオマス消化液の処理方法及びその廃水処理装置を構築することができなくなる。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、以下に示すような格別の作用効果が奏される。
(1)本発明では、バイオマス発電施設で発電を終えた後に残る残渣が含まれるバイオマス消化液中の、特に、乳化成分、微粒子成分に着目し、これらを生物処理槽(曝気槽)に流入させる前に効率よく除くために、特定の脱水助剤と、該脱水助剤に適合した凝集剤とを併用して、バイオマス消化液中の乳化成分と微粒子成分を包接したフロックの形成と、フロック除去/脱水をすること、また、必要により、中和槽で消毒剤の中和も同時に行うことにより、生物処理槽(曝気槽)による生物処理を実行することを可能とした。
(2)上記特定の脱水助剤と、該脱水助剤に適合した凝集剤との併用により、バイオマス消化液を、水質汚濁防止法による一般排水基準を満たす形で排水することを可能とした。
(3)残渣として発生する含水率70%以下、より詳しくは、含水率55%以下乃至55~70%の脱水ケーキを堆肥化施設で再利用することが可能である。
(4)バイオマス消化液を、効率よく生物処理する方法及びその廃水処理装置(施設)を提供することができる。
(5)本発明により、フロック;大きさが特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)の形成と、該フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキ;予想(期待)されるケーキ含水率70%以下、より詳しくは、含水率55%以下乃至55~70%とに分離することができ、原水のBODを78%以下に除去することを可能にした。
(6)BOD容積負担の低減、汚泥発生量の抑制及び必要酸素量の削減による安定した水処理効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】リセルバー脱水システムの例を模式的に示した図である。図中、フロックセパレータはオプションである。
【
図2】リセルバー脱水システムの例を模式的に示した図である。
【
図3】混和槽-反応槽-汚泥脱水機-生物処理槽を備えた浄化施設を含むバイオマス消化液(廃水)処理装置の処理フローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、実施例に基づいて本発明の実施形態を具体的に説明する。ただし、以下の実施例において、/D、/日、/dは、各々、“1日分”の値を表わす。
【実施例1】
【0042】
本実施例において、本発明のバイオマス発電消化液の処理に使用する廃水処理装置(設備)、少なくとも原水槽-混和槽-反応槽-調整槽-汚泥脱水機-(中和槽)-生物処理槽(曝気槽)-膜処理槽-処理水槽-希釈水槽-消毒槽を備えた廃水処理装置ついて具体的に説明する。
原水槽は、計画処理量に対し1日分以上の容量とするために、1槽の実容量を、W8.0m×L8.0m×H2.2m=140.8m3とした。上記原水槽に、原水補助ポンプ;50A×0.75kw200Vを1台、原水ポンプ;80A×2.2kw200Vを1台、原水槽撹拌ブロワー;65A×3.7kw200Vを1台、散気撹拌装置;ディスク型を16個設置した。
【0043】
前処理リセルバー脱水設備は、処理量;140.0m3/D、負荷量;BOD量420.0kg/日、除去量;BOD 420.0kg/D×83.3%=349.8kg/d(残量70.2kg/d)、SS;2100.0kg/D×98.0%=2058.0kg/d(残量42.0kg/d)、とした。
【0044】
使用機械設備として、汚水計量装置;FRP製90°三角堰(計量のみ)1基、混和・反応槽設備;SUS製 W900mm×L1,800mm×H1,260mm、実容量0.81m3/槽×2槽を1基、撹拌機200~300rpm×0.75kw×200Vを2台(内1台インバーター制御)、フロックセパレータ;SUS製 0.2kw×200Vを2台、特殊目詰防止機構・自動洗浄装置付、スクリュープレス脱水機(RSP-300Y型);接液部SUS製、固定型自動洗浄装置付1.5kw×200Vを2台(インバーター制御)、脱水ケーキ移送コンベアー;SUS製 U200型×5m×0.75kw×200Vを2台、を設置した。
【0045】
脱水ケーキ発生量は、原水濃度2.1%、脱水ケーキ含水率70%として、(140.0m3/d×2.1%)÷(1-0.7)=9.8t/Dであった。凝集助剤(リセルバーMT-2000)の使用量は、対液0.1%添加として、140.0m3/D×0.1%=140.0kg/Dであった。高分子凝集剤使用量は、凝集剤1を0.5%濃度にて対液10.5%添加として、140.0m3/D×10.5%×0.5%=73.5kg/D、0.5%溶解濃度液73.5kg÷0.5%=14.7m3/Dであった。凝集剤2を0.2%濃度にて対液21%添加として、140.0m3/D×21%×0.2%=58.8kg/D、0.2%溶解濃度液58.8kg÷0.2%=29.4m3/Dであった。
【0046】
調整槽は、22時間で流入する廃水を24時間にて送水するために、実容量をW2.4m×L5.0m×H4.0m=48.0m3とした。上記調整槽に、調整ポンプ;50A×0.75kw 200Vを1台、調整槽散気撹拌ブロワー;50A×2.2kw 200Vを1台、散気撹拌装置;ディスク型を6個設置した。
【0047】
生物処理槽は、間欠運転方式で、流入BOD負荷を0.2kg・BOD/m3以下とするために、必要容量を140.0m3/D×500mg/l÷0.2kg・BOD/m3・日=350.0m3とした。実容量は、W5.0m×L6.6m×H4.0m=132.0m3、W4.2m×L6.6m×H4.0m=110.88m3、W3.0m×L6.6m×H4.0m=79.2m3、W5.0m×L4.0m×H4.0m(膜処理槽)=80.0m3、合計402.08m3とした。必要容気量は、O2=(0.8×70.2kg/D)+(0.07×5kg/m3×402.08m3)=196.89kg/d、O2=196.89kg/d÷0.49kg/m3÷0.04=10,045.5m3/d=10.1m3/minであった。
【0048】
膜処理槽は、24H/D(8分運転-2分洗浄)で、透過流量を0.275m3/m2・Dとするために、必要膜枚数を140.0m3/D÷0.275m3/m2・D÷0.8m2/枚÷0.8H=796枚、使用膜基数を200枚/基×4基=800枚とした。膜処理必要空気量は、膜1枚当たりの空気量は10L/minとするために、10L/min×800枚=8.0m3/minとした。返送循環比は、5倍以上とした。上記膜処理槽に、浸漬型膜分離装置;孔径0.1~0.4μm 200枚/基を4基、膜ブロワー;65A×45kPa×4.1m3/min×5.5kwを2台、返送循環ポンプ;50A×1.5kwを1台、膜処理水ポンプ;40A×0.75kwを2台(陸上耐蝕型)、設置した。
【0049】
処理水槽は、膜処理水12時間分を貯留できる容量とするために、必要容積を140.0m3/D<5.84m3/h×12時間=70.08m3とし、実容積をW1.8m×L(6.6m+5.9m)×H3.5m=78.75m3とした。上記処理水槽に、処理水移送ポンプ65A×2.2kwを1台設置した。
【0050】
希釈水槽は、希釈水(井水+膜処理水)1日分を貯留できる容量とするために、必要容積を70m3/Dとし、実容積をW4.5m×L5.0m×H3.5m=79.0m3とした。上記希釈水槽に、希釈水移送ポンプ65A×2.2kwを1台(井水用電磁弁40A)を設置した。
【0051】
消毒槽設備は、処理量を140.0m3/Dとした。処理量に対して10mg/Lの注入とするために、必要塩素量を140.0m3/D×10mg/L×10-3=1.40kg/D、1.40kg/D÷70%=2.0kg/Dとした。上記消毒槽設備に、滅菌器(次亜塩素酸錠剤溶解方式、PVC型、15kg型)を1基設置した。
【実施例2】
【0052】
本実施例では、上記実施例1で設置した、原水槽-混和槽-フロックセパレータ-スクリュープレス脱水機-調整槽-計量槽-生物処理槽(曝気槽)-膜処理槽-処理水槽-希釈水槽-消毒槽(→流出)(
図3参照)を使用し、MP値(含水率評価)がMP(ケーキ含水率)≦70を有する脱水助剤として、“粉砕もみがら”;植物性繊維のもみがらを機械的剪断により粉砕した粒径1~100μmの粉砕物を主成分とする粉砕もみがら(試料)を用いた。また、以下の実施例では、試料として、上記“粉砕もみがら”と同等の市販製品である「リセルバー」(リセルバー社製、品番;MT2000、MT5000、MT7000)を用いた。これらのリセルバー製品は、主成分の粉砕もみがらの他に、ダンボール粉砕物を添加した製品であり、その含有量の違いによって各品番に分けたものである。
なお、リセルバー製品としては、これらのリセルバー製品の他に、主成分の粉砕もみがらの他に、例えば、むぎわら、わら及び/又はコーンコブの粉砕物を添加した市販製品(リセルバー社製)などが入手可能である。
【0053】
(1)凝集剤の選定
被処理対象物の試料として、バイオマス発電消化液[前処理後水質;pH値:7.5-8.5、BOD値:500mg/l(除去率83.3%)、SS値:300mg/l(除去率98.0%)]を使用し、該汚泥100mlに、脱水助剤として、試料(市販製品)のリセルバー(MT2000)を0.1%(対汚泥容量)添加し、約30種類の凝集剤(高分子凝集剤など)を各々添加し、反応を確認した。例えば、凝集剤(RB-C1805)を添加率46%で添加し、フロック判定を行った。
【0054】
その結果を、表1に示した。判定条件は、A~E;Aが最高ランク、Eが最低ランクとした。上澄水の評価が、凝集剤RB-C1805において、全品番中最良のA++となったため、約30種類の凝集剤の中から、凝集剤(RB-C1805)を、脱水助剤のリセルバー(MT2000)の凝集剤(脱水助剤に適合する高分子凝集剤)として選定した。
【0055】
【0056】
(2)脱水助剤の選定
次に、脱水助剤として、植物性繊維を機械的剪断により粉砕した粉砕物の中から、本発明に使用できる特定の粉砕物を選定するために、汚泥100mlに、市販製品(リセルバー社製の「リセルバーMT2000」、「同MT5000」、「同MT7000」の3種類を各々0.1%(対汚泥容量)添加し、フロック判定(上澄水,大きさ、硬さ、握り感)及び総合評価を行った。その結果を、表2に示した。判定条件は、A~E;Aが最高ランク、Eが最低ランクとした。
【0057】
反応を確認したところ、フロック判定での上澄水の評価が、MT7000において全品番中最良のA+++となったため、脱水助剤のリセルバーはMT7000を選定した。そこで、本実施例の以下の脱水試験では、脱水助剤として、植物性繊維のもみがらを機械的剪断により粉砕した粒径1~100μmの粉砕物を主成分とする粉砕物(試料)と同等の市販製品の「リセルバー(MT7000)」を使用することとした。
【0058】
【0059】
(3)脱水試験
汚泥600mlに、脱水助剤の「リセルバー(MT7000)」を添加し、凝集剤(品番:RB-C1805)を添加率46%(対汚泥容積、0.2%水溶液)で添加してフロックを形成させた。次いで、フロックをスクリュープレス脱水機を備えた脱水試験機に投入し、脱水試験を行い、フロックを除去した脱離液と、脱水ケーキに分離し、脱水ケーキは含水率測定を、脱離水は水質分析を行った。脱水圧力・保持時間は、スクリュープレス脱水機を想定した。その結果を、表3に示した。リセルバーを0.1%添加したことで、脱水ケーキ含水率は、59.03%であった。
【0060】
【0061】
(4)脱離液の水質分析
原水(脱水前の水)と上記脱水試験での脱離液(“リセルバー脱水脱離液”と記載することがある。)の水質分析(BOD、COD、SS、T-Nの分析)を公的機関で行った。その結果を、表4に示した。リセルバー脱水によって、BODは、86.5%除去、CODは91.8%除去、SSは99.8%除去、T-Nは54%除去が確認された。
【0062】
【0063】
(5)まとめ
リセルバー脱水によって、脱離液の水質分析の全項目で大幅な低減が確認された。これで、浄化槽の建設コストの大幅な削減が見込めることが分かった。リセルバー脱水によって、ケーキ含水率が59.3%までの低減が確認されたことで、現状が処理不能で全量産廃処分に出した場合と比較すると、その量は、現状の1/18となった。
【0064】
また、好適な凝集剤は、品番;RB-C1805で、添加率は46%(対汚泥容量、0.2%水溶液)であり、好適なリセルバーは、品番;MT7000で、添加率は、0.1%(対汚泥容量)であった。
【0065】
上澄水の評価;濁→透明、フロックの評価;A~E、“大きさ”;フロックできない、小(φ3mm以下)、中(φ3~5mm)、大(φ5~10mm)、特大(φ10mm以上)、“硬さ”;柔→硬、“握り感”;握れない→しっかり握れる、予想(期待)されるケーキ含水率;90%以上、80~90%、70~80%、55~70%、55%以下、の結果をまとめて、表5に示した。
【0066】
上記脱水試験によって、上澄水は、透明(フロックの大きさは、特大(φ10mm以上))であり、脱水ケーキの含水率は、55~70%の59.3%であった。また、本発明では、MP(ケーキ含水率)≦55の脱水助剤を用いた場合に限らず、MP(ケーキ含水率)=55~70%の脱水助剤を用いた場合にも、上澄水は、ほぼ、透明(フロックの大きさは、大(φ5~10mm))であり、脱水ケーキの含水率は55~70%の範囲であれば、浄化された液相を河川に廃棄できる程度に浄化できることが確認された。
【0067】
【実施例3】
【0068】
本実施例では、自治体(K市)下水処理場の消化汚泥を対象試料として、該試料の浄化処理を実施した。
【0069】
(1)凝集剤の選定
汚泥[試料の性状;TS(固形物)濃度:1.33%、pH:7.25.外観:黒濁色、臭い:炭臭、繊維状物(100メッシュ):5.2%/ss、繊維状物(200メッシュ):14.2%/ss]100mlに、リセルバー MT2000を0.1%(対汚泥容量)添加し、約30種類の凝集剤(K市指定凝集剤を含む)を各々添加し、反応を確認した。表6に、その結果を示した。
【0070】
【0071】
反応を確認したところ、フロック判定での“握り感”の評価で、B-となったため、凝集剤は、自治体(K市)指定凝集剤を選定した。
【0072】
(2)リセルバーの選定
汚泥100mlに、リセルバーMT2000、MT5000、MT7000の3種類を各々0.1%(対汚泥容量)添加し、反応を確認した。表7に、その結果を示した。
【0073】
【0074】
反応を確認したところ、フロック判定での“握り感”の評価が、全品番で一番評価となったリセルバーMT2000を選定した。
【0075】
(3)脱水試験
汚泥500mlに、リセルバーMT2000を添加し、高分子凝集剤(0.2%水溶液)を添加してフロックを形成させた。フロックを脱水試験機(加圧面積81cm2、圧力・保持時間可変型)に投入して脱水試験を行い、排出された脱水ケーキの含水率を測定した。脱水圧力・保持時間は、スクリュープレス脱水機を想定して設定した。表8に、その結果を示した。
【0076】
【0077】
リセルバー0.04%添加(対TS添加率3%)により、ケーキ含水率は、78.67%となった。リセルバー0.1%添加(対TS添加率7.5%)により、ケーキ含水率は、74,18%となった。リセルバー0.3%添加(対TS添加率22.5%)により、ケーキ含水率は、69.92%となった。
【0078】
(4)脱離水の水質分析
原水(脱水前の水)と、脱水試験での脱離後のSS値と、T-P値を公的機関で測定した。表9に、その結果を示した。
【0079】
【0080】
(5)SSの回収率
SSの回収率は、リセルバー0.1%添加(対TS添加率7.5%)、自治体(K市)指定凝集剤により、99.6%であり、リセルバー0.3%添加(対TS添加率22.5%)、自治体(K市)指定凝集剤により、99.75%であり、リセルバー0.1%添加(対TS添加率7.5%)、高分子凝集剤(0.2%水溶液)により、99.7%であり、リセルバー0.3%添加(対TS添加率22.5%)、高分子凝集剤(0.2%水溶液)により、99.76%であった。
【0081】
(6)T-Pの回収率
T-Pの回収率は、リセルバー0.1%添加(対TS添加率7.5%)、自治体(K市)指定凝集剤により、81%であり、リセルバー0.3%添加(対TS添加率22.5%)、自治体(K市)指定凝集剤により、81%であり、リセルバー0.1%添加(対TS添加率7.5%)、高分子凝集剤(0.2%水溶液)により、78.4%であり、リセルバー0.3%添加(対TS添加率22.5%)、高分子凝集剤(0.2%水溶液)により、80.6%であった。
【0082】
(7)まとめ
好適なリセルバー品番は、MT2000で、添加率は、0.04%~0.3%(対汚泥容量)であり、対TS添加率は、3%~22.5%(汚泥量1m3に対し、0.4kg~3kg使用)であった。また、好適な凝集剤の品番は、自治体(K市)指定凝集剤で、添加率は、12%(0.2%水溶液)であり、対TS添加率は、1.8%(汚泥量1m3に対し、0.24kg使用)であった。
【0083】
好適な凝集剤の品番は、自治体(K市)指定凝集剤で、添加率は、12%(0.2%水溶液)であり、対TS添加率(汚泥量1m3に対し、0.24kg使用)は、1.8%であった。リセルバー脱水によって、ケーキ含水率は、69.92%~78.67%であり、SSの回収率は、99.6%~99.75%であり、T-Pの回収率は、81%であった。
【0084】
上澄水の評価;濁→透明であり、フロックの評価;“大きさ”は、フロックできない、小(φ3mm以下)、中(φ3~5mm)、大(φ5~10mm)、特大(φ10mm以上)であり、“硬さ”は、柔→硬、“握り感”は、握れない→しっかり握れる、であり、総合的な“評価”は、E~Aであり、“予想(予期)されるケーキ含水率は、90%以上、80~90%、70~80%、55~70%、55%以下、であった(表5参照)。
【実施例4】
【0085】
本実施例では、バイオマス消化液の脱水処理で、ケーキ含水率を低減できるかどうかの検証を行った。
【0086】
(1)汚泥性状の確認
試料として、バイオマス消化液(食品廃棄物原料の湿式メタン発酵消化液[試料の性状;TS(固形物)濃度:5.49%、pH:7.59.外観:黒濁色、臭い:硝化臭])を対象試料として使用した。
【0087】
(2)脱水試験
汚泥300mlに、脱水助剤のリセルバー(MT2000)を添加し、高分子凝集剤A(0.2%水溶液)を添加してフロックを形成させた。フロックを脱水試験機(加圧面積81cm2、加圧・保持時間可変型)に投入して脱水試験を行い、排出されたケーキの含水率を測定した。脱水加圧・保持時間は、遠心機を想定して、2,000Gで1分間、スクリュープレス機を想定して490kPaで5分間とした。表10に、その結果を示した。
【0088】
【0089】
リセルバーMT2000、高分子凝集剤A(0.2%水溶液)を添加し、遠心機想定で脱水した結果、ケーキ含水率は、77.62%であった。また、リセルバーMT2000,高分子凝集剤A(0.2%水溶液)を添加し、スクリュープレス機想定で脱水した結果、ケーキ含水率は、67.92%であった。脱離液中へのSSのリーク(漏れ)は、遠心機想定試験では、ほとんど無く、スクリュープレス機想定試験においても少量であった。
【0090】
(3)まとめ
リセルバー脱水によって、遠心機想定試験でケーキ含水率は、77.62%であり、遠心機による75%以下への脱水は、脱水圧力が低いため不可能と考えられた。また、スクリュープレス機想定試験でケーキ含水率は、67.92%であったことで、スクリュープレス機により75%以下への脱水は可能であると判断された。
【実施例5】
【0091】
本実施例では、バイオマス発電施設において発生した消化液の脱水処理を実施した。
【0092】
試料として、バイオマス発電の消化液[固液分離前の汚泥;TS(固形物)濃度:4.36%、pH:7.51、外観:黒濁色、臭い:硝化臭、固形分離後の汚泥;TS(固形物)濃度:1.04%、pH:8.14、外観:茶色、臭い:硝化臭]を使用して、該消化液の脱水処理試験を実施した。固液分離の前と後では、TS(固形物)濃度で、4倍以上の差があった。
【0093】
(1)凝集剤の選定
汚泥100mlに、脱水助剤のリセルバーMT2000を添加し、約20種類の凝集剤を各々添加し、リセルバーと汚泥との相性を確認し、品番選定を行うために、反応を確認した。表11に、その結果を示した。固液分離前と後の汚泥では、適合する凝集剤は同じ品番であった。固液分離前と後の汚泥では、凝集剤の添加量は、1.6倍の差があった。
【0094】
【0095】
(2)脱水試験
汚泥に、リセルバー(MT2000)を添加率0.05%(対廃水容量)で添加し、高分子凝集剤Aを添加して、フロックを形成させた。フロックを脱水試験機(加圧面積81cm2、圧力・保持時間可変型)に投入して脱水試験を行い、排出された脱水ケーキの含水率を測定した。脱水圧力・保持時間は、スクリュープレス脱水機を想定し、480kPaで5分間とした。表12に、その結果を示した。
【0096】
【0097】
(固液分離前の汚泥)
汚泥500mlに、リセルバーMT2000、高分子凝集剤A(0.2%水溶液)を添加量340mlで添加し、スクリュープレス機想定で脱水した結果、ケーキ含水率は、69.01%となった。
(固液分離後の汚泥)
汚泥700mlに、リセルバーMT2000、高分子凝集剤A(0.2%水溶液)を添加量300mlで添加し、スクリュープレス機想定で脱水した結果、ケーキ含水率は、73.88%となった。
【0098】
(3)水質分析
廃水原水(脱水前の水)と、脱水試験での脱離液の水質分析を行った。T-Nは、公的機関で行い、BODは、BOD計により行った。表13に、その結果を示した。
【0099】
【0100】
(固液分離前の汚泥)
リセルバー脱水によって、BODが63.6%除去され、480mg/lとなった。T-Nは、除去率35%にとどまった。残った窒素のほとんどがアンモニア性窒素と考えられた。
(固液分離後の汚泥)
リセルバー脱水によって、BODが83.5%除去され、400mg/lとなった。
【0101】
(4)まとめ
リセルバー脱水処理によって、BODが1/3になったことで、生物処理槽(曝気槽)の設置計画容量は、原水そのままを処理する場合の1/3になることが判明した。また、ケーキ含水率も70%前半を達成したことで、その後の処理が容易となり、堆肥化や産廃処分の計画が立て易くなることが判明した。
【実施例6】
【0102】
本実施例では、バイオマス発電の消化液(高濃度)を使用して、該消化液の脱水処理を実施した。
【0103】
試料として、バイオマス発電の消化液[廃水の性状;TS(固形物)の濃度:81.17%、pH:8.05、外観:濃茶色、臭い:少硝化臭)を使用した。TS(固形物)濃度が8%と非常に高く、以後の試験では、これを2倍希釈したものを使用した。
【0104】
(1)脱水試験
廃水300mlに、脱水助剤のリセルバー(MT2000)を添加率0.05%(対廃水容量)添加し、凝集剤A又はBを添加して、フロックを形成させた。フロックを脱水試験機(加圧面積81cm2、圧力・保持時間可変型)に投入し、脱水試験を行い、排出されたケーキの含水率を測定した。脱水圧力・保持試験は、スクリュープレス脱水機を想定し、480kPaで5分間とした。表14に、その結果を示した。
【0105】
【0106】
リセルバーMT2000、凝集剤Aを添加量60ml(0.5%水溶液)、凝集剤Bを添加量120ml(0.2%水溶液)添加し、スクリュープレス機想定で脱水した結果、ケーキ含水率は、61.1%となった。
【0107】
(2)水質分析
廃水原水(脱水前の水)と、脱水試験での脱離液のBOD測定をBOD計により行った。表15に、その結果を示した。
リセルバー脱水において、BODが82.2%除去され、535mg/lとなった。目視による確認では、SSは、ほとんど除去された。原水の希釈倍率は、2倍以上が好適であり、リセルバー脱水処理においては、ケーキ含水率が61.1%となり、BODは82.2%除去され、535mlとなった。
【0108】
【実施例7】
【0109】
本実施例では、バイオマス消化液を、リセルバー脱水処理することによって、BODやSS濃度をどれだけ下げられるか、また、ケーキ含水率をどれだけ下げられるかについて試験した。
図1に、本実施例で使用したリセルバー脱水システムの例を模式的に示した。図中、フロックセパレータを、オプションとして示した。
【0110】
被処理試料の廃水として、バイオマス消化液[試料の性状;TS(固形物)濃度:4.17%、pH:7.50、外観:濃茶褐色、臭い:硝化臭]を使用し、該試料の脱水試験及び水質分析試験を行った。
【0111】
(1)脱水試験
廃水500mlに、脱水助剤のリセルバー(MT2000)を0.30%(対廃水容量)添加し、凝集剤A(0.5%水溶液)を150ml、凝集剤B(0.2%水溶液)を350ml添加してフロックを形成させた。ろ布で一旦フロックの水を切り、水分は、脱離水として後段の水質分析試験を行い、固形物は、脱水試験機(加圧面積81m2、圧力・保持時間可変型)に投入して脱水試験を行い、排出されたケーキの含水率測定を行った。脱水圧力・保持時間は、スクリュープレス脱水機を想定し、480kPaで5分間とした。表16に、その結果を示した。
【0112】
【0113】
表に示した通り、リセルバーMT2000を添加し、凝集剤A、Bを添加し脱水したことで、ケーキ含水率は、71.95%となった。凝集剤の添加量は、バイオマス原料によって異なってくるが、牛糞、鶏糞由来のバイオマス消化液の場合は、添加量が多くなる傾向にある。
【0114】
(2)水質分析試験
廃水原水(脱水前の水)と脱水試験での脱水液のBOD、SS(浮遊物質)、リン、窒素の測定を公的機関(環境計量士)により行った。表17に、その結果を示した。
【0115】
【0116】
廃水原水(脱水前の水)のBODが、90.5%除去され、リセルバー脱水脱離液のBODが、4,300mg/lから410mg/lとなり、リセルバーの水処理効果が顕著に発揮されることが確認された。また、廃水原水(脱水前の水)のSSが99%除去され、リセルバー脱水脱離液のSSが、26,000mg/lから25mg/lとなり、これについても、リセルバーの水処理効果が顕著に発揮されることが確認された。
【0117】
リセルバー脱水によって、廃水原水(脱水前の水)のBODが、90.5%除去され、リセルバー脱離液のSSが99.9%除去され25mg/lとなった。また、ケーキ含水率も71.95%という低い値となった。これらの値から、バイオマス消化液のリセルバー脱水は、脱水、水処理性能とも高効率での処理が可能であることが確認された。
【0118】
(3)まとめ
リセルバーによる脱水処理により、脱水ケーキ含水率は75%~65%に下がり、含水率は、リセルバー添加量の増減により自由に設定できることが確認された。リセルバー脱水脱離液の水質分析試験により、該リセルバー脱水脱離液のリンは、平均95%除去され、SS(浮遊物質)は、平均95%除去され、BODは、平均60%除去され、窒素は、平均60%除去されることが確認された。リセルバーによる脱水システムは、水処理システムとして、水のリサイクル技術として使用できることが確認された。
【実施例8】
【0119】
本実施例では、バイオマス発電において発生する消化液を、リセルバー脱水処理することによって、BODをどれだけ下げられるか、また、ケーキ脱水率をどれだけ下げられるかについて試験した。実施例7で使用したリセルバー脱水システムと同様のリセルバー脱水システムを使用した。
【0120】
(1)脱水試験
汚泥500mlに、脱水助剤のリセルバー(MT2000)並びに高分子凝集剤A(0.2%水溶液)を90ml添加してフロックを形成させた。フロックを脱水試験機(加圧面積81cm2、加圧・保持時間可変)に投入して脱水試験を行い、排出されたケーキの含水率を測定をした。脱水圧力・保持時間は、スクリュープレス脱水機を想定し、480kPaで5分間とした。表18に、その結果を示した。
【0121】
【0122】
表に示した通り、リセルバーMT2000を0.30%添加(対廃水容量)し、高分子凝集剤A(0.2%水溶液)を90ml添加し、スクリュープレス機想定で脱水した結果、ケーキ含水率は、72.75%となった。
【0123】
(2)水質分析試験
廃水原水(脱水前の水)と、脱水試験による脱離液の測定をBOD計(セントラル科学(社)、OxiTop System)により行った。表19に、その結果を示した。リセルバー脱水によって、廃水原水(脱水前の水)のBOD;6,920mg/lからリセルバー脱水脱離液(脱水後の水)のBOD;3,450mg/lに半減した。
【0124】
【0125】
リセルバー脱水処理によって、廃水原水(脱水前の水)のBODが半減したことで、生物処理槽(曝気槽)の設計計画容量は、原液をそのまま処理する場合の半分になることが確認された。また、ケーキ含水率も70%前半を達成したことで、その後の処理が容易となり、堆肥化や産廃処分の計画が立て易くなることが確認された。
【0126】
(3)まとめ
脱水処理により、脱水ケーキ含水率は、75%~65%に下がることが確認された。リセルバー脱水の脱離液の水質分析試験の結果、リンは平均95%除去され、SS(浮遊物質)は平均95%除去され、BODは平均60%除去され、窒素は平均60%除去されることが確認された。リセルバー脱水システムは、水処理システムのリサイクル技術として使用できることが確認された。
【実施例9】
【0127】
本実施例では、バイオマス発電消化液を脱水処理することにより、ケーキ含水率の測定と、リセルバー脱水脱離液の水質分析試験を実施した。
【0128】
本実施例では、試料として汚泥[汚泥性状;TS(固形物)濃度:2.73%、pH:7.63、外観:濃茶黒褐色、臭い:少腐敗臭]を使用し、該汚泥の脱水試験並びにリセルバー脱水脱離液の水質分析[リン、SS(浮遊物質)、BOD、窒素]を行った。
図2に、本実施例で使用したリセルバー脱水システムプラントの例を模式的に示した。
【0129】
(1)脱水試験
汚泥800mlに、脱水助剤のリセルバー(MT2000)を0.10%(対汚泥容量)添加し、高分子凝集剤(0.2%水溶液)を添加し、フロックを形成させた。フロックを脱水試験機(加圧面積81cm2、加圧・保持時間可変)に投入し、脱水試験を行い、排出されたケーキの含水率を測定をした。脱水圧力・保持時間は、スクリュープレス脱水機を想定し、480kPaで5分間とした。表20に、その結果を示した。
【0130】
【0131】
表に示した通り、リセルバーMT2000を0.1%、高分子凝集剤(既存品)を100ml(対TS1.5%)添加し、スクリュープレス想定で脱水した結果、ケーキ含水率は72.11%となった。元々脱水し易い汚泥であるが、リセルバーを添加することでSSのリーク(漏れ)がほとんど無くなることや、その後の発酵促進につながることが確認された。リセルバーを添加して脱水した結果、ケーキ含水率は72.11%となり、添加量を増やすことにより、更なる低減が可能であることが確認された。
【0132】
(2)水質分析試験
リセルバー脱水脱離液の水質分析試験を行った。その結果、リンは平均95%除去され、SS(浮遊物質)は平均95%除去され、BODは平均60%除去され、窒素は平均60%除去される、という脱水効果が得られた。含水率は、リセルバー添加量の増減により自由に設定できることが確認された。リセルバー脱水システムは、水処理システムのリサイクル技術として使用できることが確認された。
【実施例10】
【0133】
本実施例では、インク洗浄廃水の汚泥の脱水処理によって、どれだけケーキ含水率を低減できるかを調べた。
本実施例では、試料として、インク洗浄廃水汚泥[汚泥性状;TS(固形物濃度:0.45%、pH:6.24、外観:黒濁やや透明色、臭い:鉱物油臭]を使用し、リセルバー脱水試験、リセルバー脱水脱離液の水質分析試験[リン、SS(浮遊物質)、BOD、窒素]を行った。
【0134】
(1)脱水試験
汚泥800mlに、脱水助剤のリセルバー(MT2000)を0.3%(対汚泥容量)添加し、高分子凝集剤A(0.2%水溶液)を75ml添加し、フロックを形成させた。フロックを脱水試験機(加圧面積81cm2、加圧・保持時間可変)に投入し、排出されたケーキの含水率を測定をした。脱水圧力・保持時間は、フィルタープレス脱水機想定で、960kPaで10分間とし、スクリュープレス機想定で、480kPaで5分間とした。表21に、脱水試験の結果を示した。
【0135】
【0136】
表に示した通り、リセルバーMT2000、高分子凝集剤Aを添加し、フィルタープレス想定で脱水した結果、ケーキ含水率は72.74%となり、また、フィルタープレス想定で脱水した結果、ケーキ含水率は77.54%となった。リセルバー脱水によって、ケーキ含水率は72.74%~77.54%となり、現状から15%~20%以上の低減となった。これで、脱水ケーキ量は現状の1/3となった。
【0137】
(2)脱水効果
ケーキ含水率は、リセルバー添加量の増減により自由に設定することができること、水処理効果として、リンは平均95%が除去され、SS(浮遊物質)は平均95%が除去され、BODは平均60%が除去され、窒素は平均60%が除去されることが確認された。リセルバー脱水システムは、水処理システムのリサイクル技術として使用できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0138】
以上詳述したとおり、本発明は、バイオマス消化液の処理方法及びその廃水処理装置に係るものであり、本発明は、1)バイオマス消化液中の、特に、乳化成分、微粒子成分に着目し、これらを曝気槽に流入させる前に効率よく除くために、Mp値(含水率評価)がMp(ケーキ含水率)≦70、より詳しくは、Mp(ケーキ含水率)≦55乃至Mp(ケーキ含水率)=55~70を有する特定の脱水助剤と凝集剤とを併用して、バイオマス消化液中の乳化成分と微粒子成分を包接したフロックの形成と、フロック除去/脱水をすることにより、生物処理槽(曝気槽)による生物処理を実行可能とした、2)上記特定の脱水助剤と凝集剤との併用により、バイオマス消化液を、水質汚濁防止法による一般排水基準を満たす形で排水することを可能とした、3)残渣として発生する脱水ケーキを堆肥化施設で再利用することが可能である、4)バイオマス消化液を、効率よく生物処理する方法及びその廃水処理装置(施設)を提供することができる、5)本発明により、フロック;特大(φ10mm以上)~大(φ5~10mm)を除去した脱離液と、脱水ケーキ;含水率70%以下、より詳しくは、含水率55%以下乃至55~70%とに分離することができ、原水のBODを78%以下に除去することを可能にした、6)BOD容積負担の低減、汚泥発生量の抑制及び必要酸素量の削減による安定した水処理効果を期待することができる、という産業上の利用可能性を有するものである。