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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】繊維構造体
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/541 20120101AFI20221129BHJP
   D04H 1/50 20120101ALI20221129BHJP
   D06M 15/647 20060101ALI20221129BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20221129BHJP
   D06M 101/20 20060101ALN20221129BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
D04H1/541
D04H1/50
D06M15/647
D06M15/643
D06M101:20
D06M101:32
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018098121
(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2019203210
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 篤
(72)【発明者】
【氏名】伴 紀孝
(72)【発明者】
【氏名】枌原 浩太
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-202302(JP,A)
【文献】特開2013-177701(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021319(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00-18/04、D06M13/00-15/715、
F16L59/00-59/22、E04B1/62-1/99、
G10K11/00-13/00、B60R13/01-13/04、13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊度が0.02~0.6dtexの極細短繊維と、繊度が1dtex以上の熱接着性短繊維を含む繊維構造体であって、極細短繊維がケイ素含有量10~74ppm、捲縮数10/25.4mm(1inch)以上の繊維であり、熱接着性短繊維が極細短繊維の融点よりも40℃以上低い融点を有し、極細短繊維の配合量が10~90重量%、熱接着性短繊維の配合量が5~50重量%、繊維構造体の平均密度が0.1g/cm以下であることを特徴とする繊維構造体。
【請求項2】
極細短繊維を構成する樹脂が、ポリエステル樹脂またはポリオレフィン樹脂からなる請求項1記載の繊維構造体。
【請求項3】
ポリエステル樹脂がポリアルキレンテレフタレート樹脂またはポリアルキレンナフタレート樹脂である請求項2記載の繊維構造体。
【請求項4】
ポリオレフィン樹脂がポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂である請求項2記載の繊維構造体。
【請求項5】
極細短繊維の捲縮数が12/25.4mm~36/25.4mmの範囲である請求項1~4のいずれか1項記載の繊維構造体。
【請求項6】
極細短繊維中のケイ素が、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ヒドロキシ変性ポリシロキサン、ポリオキシエチレン共重合ポリジメチルシロキサン、の少なくとも1種類に由来するものである請求項1~5のいずれか1項記載の繊維構造体。
【請求項7】
極細短繊維の融点が200℃以上である請求項1~6のいずれか1項記載の繊維構造体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維構造体に関し、さらには自動車用内装乾式不織布、住宅用乾式不織布、高速道路乾式不織布、電気製品用不織布、コンプレッサー用不織布、衣料用中綿、寝具用中綿等に最適な乾式不織布からなる繊維構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両、住宅、高速道路、電気製品、コンプレッサーなどに用いられる構造体としては、吸音遮音断熱に優れた不織布が広く採用されている。
【0003】
例えば、木質ボードや再生繊維にフェノール樹脂などの熱硬化性バインダーを含浸したフェルトや、ガラス繊維などの無機繊維に熱可塑性樹脂を含浸しホットプレスやコールドプレスした不織布(例えば特許文献1)や、高融点熱可塑性繊維と低融点熱可塑性繊維とから構成され、低融点熱可塑性繊維の一部を熱融着させた繊維集合体(例えば特許文献2)、非弾性捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維とで構成され、熱接着性複合短繊維の熱融着より固着点が形成され、かつ繊維が厚さ方向に配列した吸音用繊維構造体(例えば特許文献3)、繊維構造体にシート状物を貼り合せた積層体(例えば特許文献4)などが提案されている。
【0004】
一方、吸音性や断熱性向上等のために、細繊度繊維を使用することも知られており、例えば、細繊度繊維となるメルトブロー繊維による不織布が、提案されている(例えば、特許文献5)。しかし、繊維が非常に細く、外圧にたいして厚みが変形しやすく、また、熱成形時には極細繊維が溶融しやすいため、高い性能の3次元構造の不織布は得難いものであった。また、メルトブロー以外の方法にて得られた細繊度繊維を使用した繊維集合体も提案されているものの(特許文献6)、細繊度繊維を使用した場合には、繊維の均一分散やネップの発生防止が困難であって、高い品質の繊維構造体を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭59-227442号公報
【文献】特開平7-3599号公報
【文献】特開2001-207366号公報
【文献】特開2004-209975号公報
【文献】特開平6-212546号公報
【文献】特開平7-219556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、吸音特性が良好でありながら、複雑な形状を得やすい繊維構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の繊維構造体は、繊度が0.02~0.6dtexの極細短繊維と、繊度が1dtex以上の熱接着性短繊維を含む繊維構造体であって、極細短繊維がケイ素含有量10~74ppm、捲縮数10/25.4mm(1inch)以上の繊維であり、熱接着性短繊維が極細短繊維の融点よりも40℃以上低い融点を有し、極細短繊維の配合量が10~90重量%、熱接着性短繊維の配合量が5~50重量%、繊維構造体の平均密度が0.1g/cm以下であることを特徴とする。
【0008】
さらには、極細短繊維を構成する樹脂が、ポリエステル樹脂またはポリオレフィン樹脂からなることや、ポリエステル樹脂がポリアルキレンテレフタレート樹脂またはポリアルキレンナフタレート樹脂であること、ポリオレフィン樹脂がポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
また極細短繊維の捲縮数が12/25.4mm~36/25.4mmの範囲であることや、極細短繊維中のケイ素が、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ヒドロキシ変性ポリシロキサン、ポリオキシエチレン共重合ポリジメチルシロキサン、の少なくとも1種類に由来するものであること、極細短繊維の融点が200℃以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸音特性が良好でありながら、複雑な形状を得やすい繊維構造体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の繊維構造体は、繊度が0.02~0.6dtexの極細短繊維と、繊度が1dtex以上の熱接着性短繊維を含む繊維構造体である。そして、極細短繊維がケイ素含有量10~74pm、捲縮数10/25.4mm(1inch)以上の繊維であり、熱接着性短繊維はその極細短繊維の融点よりも40℃以上低い融点を有する。さらに、極細短繊維の配合量が10~90重量%、熱接着性短繊維の配合量が5~50重量%、繊維構造体の平均密度が0.1g/cm以下の繊維構造体である。
【0011】
通常、短繊維の繊維径が細くかつ捲縮数が多くなると絡み合いが大きくなり、不均一性が顕著となるが、本発明ではその構成繊維として繊度が0.02~0.6dtex、かつ捲縮数10/25.4mm(1inch)以上の極細短繊維を含むものの、他の要件を満たすことによって、繊維径が細くかつ捲縮数が多いにも関わらず、作業性に優れ、極細短繊維等が均一に分散しており、最終的に得られる繊維構造体の均一性にも優れるものとなる。
【0012】
このような本発明の繊維構造体に用いられる極細短繊維や熱接着性の短繊維は、一般的に合成樹脂からなるものであることが好ましい。
【0013】
また本発明の繊維構造体に用いられる極細繊維を構成する樹脂としては、合成繊維の中でも、汎用性に優れたポリエステル樹脂やポリオレフィン樹脂を含有する樹脂からなることが好ましい。
【0014】
本発明においては、このようなポリエステル樹脂やポリオレフィン樹脂を単独で用いるともできるが、その一部にのみポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂を含む繊維であることも好ましい。あるいは本発明に用いられる極細短繊維が数種類の樹脂から構成された複合繊維であって、その一成分がポリエステル系樹脂またはポリオレフィン系樹脂から、主として構成されるものであることも好ましい。
【0015】
そしてこのような本発明に好ましく用いられるポリエステル系樹脂を具体的に例示するとすれば、そのポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、もしくはポリブチレンテレフタレート(ポリテトラメチレンテレフタレート)等のポリアルキレンテレフタレート、またはポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、もしくはポリブチレンナフタレート(ポリテトラメチレンナフタレート)等のポリアルキレンナフタレートといった芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールのポリエステルを例示することができる。あるいは、ポリアルキレンシクロヘキサンジカルボキシレート等の脂環族ジカルボン酸と脂肪族ジオールから得られるポリエステルであることや、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等の芳香族ジカルボン酸と脂環族ジオールから得られるポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、もしくはポリエチレンアジペート等の脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールから得られるポリエステル、またはポリ乳酸やポリヒドロキシ安息香酸等のポリヒドロキシカルボン酸等から得られるポリエステルを例示することもできる。またはポリエステル系の繊維となる樹脂としては、これらのポリエステル成分同士の任意の割合による共重合体やブレンド体も、好ましく例示される。
【0016】
また目的に応じて、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分として、イソフタル酸、フタル酸、5-スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、5-スルホイソフタル酸の4級アンモニウム塩、5-スルホイソフタル酸の4級ホスホニウム塩、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、α、β―(4-カルボキシフェノキシ)エタン、4、4-ジカルボキシフェニル、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1、3-シクロヘキサンジカルボン酸もしくは1、4-シクロヘキサンジカルボン酸またはこれらの炭素数1~10個の有機基からなるジエステル化合物等を1成分または2成分以上共重合させても良い。同様に、ポリエステルを構成するジオール成分としてジエチレングリコール、1、2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ビス(p-β-ヒドロキシエチルフェニル)プロパン、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2-プロピレン)グリコール、ポリ(トリメチレン)グリコールもしくはポリ(テトラメチレン)グリコール等を1成分または2成分以上共重合させてもよい。さらに、ω-ヒドロキシアルキルカルボン酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメリット酸、またはトリメシン酸等のヒドロキシカルボン酸、または、3個以上のカルボン酸成分もしくは水酸基をもつ化合物を1成分または2成分以上共重合して分岐をもたせたポリエステルであることも好ましい。また、上記に例示される組成の異なるポリエステルの混合物を用いることも可能である。
【0017】
中でも本発明に好ましく用いられるポリエステル系の樹脂としてはポリアルキレンテレフタレート樹脂またはポリアルキレンナフタレート樹脂であることが、その物性や取扱い性の良さからも好ましい。
【0018】
本発明の短繊維を構成する繊維の固有粘度としては0.35~0.50であることが好ましく、特に繊維を構成する主成分がポリエチレンテレフタレートの場合、その固有粘度が0.35~0.50であることが特に好ましい。固有粘度が低すぎると、繊維の強度が低下し、また繊維化することが困難となる傾向にある。また一方で、固有粘度が高すぎても、延伸性が低下するなどして、乾式不織布用極細短繊維の性能が低下する傾向になる。
【0019】
また、本発明に好ましく用いられる上記のポリエステル系樹脂以外の樹脂としては、ポリオレフィン系の樹脂であることが好ましい。より具体的に本発明に使用されるポリオレフィンを例示すると、アイソタククチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・プロピレンランダム共重合ポリオレフィン、または第三成分をブロック共重合もしくはグラフト共重合させたポリエチレンもしくはポリプロピレンであることが好ましい。
【0020】
なお、以上にあげた各種の熱可塑性樹脂には、公知の添加剤、例えば、顔料、染料、艶消し剤、防汚剤、抗菌剤、消臭剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、または滑剤等を含むポリエステル組成物であることも好ましい態様である。例えば顔料として二酸化チタンなどを含むことが特に好ましい。
【0021】
さらに本発明においては、乾式不織布用極細繊維がポリエステル系樹脂またはポリオレフィン系樹脂のいずれかの極細繊維であることが好ましく、特にポリエチレンテレフタレート系樹脂、共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン系樹脂から選ばれる1種類以上の樹脂であることが好ましい。
【0022】
さて本発明にて用いられる極細短繊維は、上記のような合成樹脂から構成される繊維からなるものであって、繊度が0.02~0.6dtexの極細繊維であることが必要である。ただし単糸繊度が0.01dtex未満の場合に極細繊維同士の絡み合いが著しくなること、また単糸繊度が小さいと、製糸技術の面で困難な点が多い。より具体的には、製糸工程において断糸や毛羽が発生して良好な品質の繊維を安定に生産することが困難になる。さらには製造コストも高くなる傾向にある。逆に単糸繊度が大きすぎる場合には、得られる不織布の物性に極細繊維の特性が反映されなくなる傾向にある。特に低目付け領域での不織布においては、乾式不織布としたときの強力や、繊維間の緻密性が得難くなる傾向にある。
【0023】
このような極細短繊維の繊度としては、単糸繊度が0.02~0.6dtexの範囲であることが必要である。単糸繊度が細くなるほど、繊維構造体の通気抵抗や吸音性が向上するが、さらに、極細になることで、繊維単体の実剛性が低下し、それに呼応して1000Hz前後の吸音率が向上する。なお、その効果を確実に発現するためには、極細短繊維が均一に開繊されていることが好ましい。一方、単糸繊度が0.01dtex未満であると、極細繊維同士の絡み合いが著しくなること、また単糸繊度が小さいと、製糸技術の面でも困難がある。より具体的には、製糸工程において断糸や毛羽が発生して良好な品質の繊維を安定に生産することが困難になるだけでなく、製造コストも高くなるため好ましくない。一方で、単糸繊度が1dtexを超えると、極細繊維の特色を出せる低目付け領域での不織布等の強力や緻密性を確保することができない。
【0024】
またその極細繊維の繊維長としては3~100mmの範囲であることが好ましく、4~50mmがより好ましく、5~40mmの範囲であることがさらに好ましい。繊維長が小さすぎる場合は、繊維長/繊維横断面の幅ないしは長円の直径で表されるアスペクト比が小さくなり過ぎ、不織布を構成する繊維間の結合の観点、不織布の加工性、不織布強度の観点で好ましくない。一方で、繊維長が長すぎる場合は、繊維同士の絡み合いにより欠点が発生しやすくなる。
【0025】
本発明にて用いられる極細短繊維は、捲縮繊維であることが必要であって、捲縮数は10/25.4mm(inch)以上であることが必要である。さらには10~30/25.4mmであることが、特には15~25/25.4mmであることが好ましい。捲縮数が25.4mm(inch)当たり、10個未満では、カード工程を安定的に通過することができない。一方、捲縮数が多すぎる場合、本発明の他の要件を満たしてもても繊維同士の絡み合いが強くなり、ネップ等の欠点を発生させる傾向にある。
【0026】
そして本発明にて用いられる極細短繊維としては、ケイ素含有量が10~74ppmであることが必要である。このようなケイ素は、繊維を構成する樹脂中に練りこみされていても構わないが、繊維表面に配置されていることがより好ましい。ケイ素含有量が10ppm未満であると、繊維の開繊性や単糸切れによる欠点が増加する。特に極細繊維中に他の無機物を含有する場合にこのケイ素の効果はより発揮され、たとえば顔料の二酸化チタンを含む場合に効果的である。
【0027】
このようにケイ素を含有させるためには、ケイ素を含む化合物として添加することが好ましい。より具体的には、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ヒドロキシ変性ポリシロキサン、ポリオキシエチレン共重合ジメチルポリシロキサンなどが例示され、少なくとも1種類を含むことが好ましい。ケイ素を含む上記化合物は、特に繊維の表面上に配置する場合に好ましく用いられ、この場合、ケイ素を含む化合物は、単独で付与しても、静電性、収束性、抗菌性、忌避性等の機能を有するその他の成分と混合して使用しても特に構わない。その他の成分としてはアルキルホスフェート金属塩を油剤中に含むことが好ましく、特にはラウリルホスフェート金属塩などの炭素数が8~18のアルキルホスフェート金属塩を含むことが好ましい。
【0028】
さらにこのケイ素を含む化合物は、ケイ素成分の繊維からの脱落耐久性の観点から、架橋反応するものであることが好ましい。このようなケイ素を含む化合物は、溶液として繊維に付着した後に乾燥するなどして繊維に処理し、本発明の極細短繊維中に含有される。
【0029】
化合物として添加した場合、ケイ素含有量が少なすぎると、繊維の開繊性や単糸切れによる欠点が増加する。一方で、ケイ素含有量が多すぎる場合には、過剰な成分がスカムとなって不織布加工工程で脱落・汚染し、工程調子が悪化することになる。
【0030】
また本発明の繊維構造体では、上記のような繊度が0.02~0.6dtexの極細短繊維とともに、繊度が1dtex以上の熱接着性短繊維を含むことが必要である。
【0031】
このような熱接着性短繊維としては、合成繊維であることが好ましく、特には熱接着性複合短繊維であることが好ましい。本発明の繊維構造体の強度及び嵩性を確保するために、繊維間を接着することが必須であり、さらに嵩性を確保するためには、融点の低い接着性成分と、融点の高い成分からなる複合繊維であることが好ましい。特には接着性成分が鞘成分であり、他の通常樹脂からなる成分が芯となる芯鞘複合繊維であることが好ましい。また、熱接着性短繊維の熱融着成分は、上記の極細短繊維を構成するポリマー成分より、40℃以上低い融点を有することが必要である。この温度が40℃未満では接着が不十分となる上、腰のない取り扱いにくい繊維構造体となり、本発明の目的が達せられない。
【0032】
またこの熱接着性短繊維は繊度が1dtex以上であることが必要であるが、繊度が小さすぎると、特にニードルパンチ等による機械的な繊維の絡合を行った場合には、不織布絡合工程において、針通過抵抗が非常に大きくなり、針折れが発生したり、繊維の切断等が発生するなどして、目的の繊維構造体を得られないこととなる。
【0033】
ここで、本発明の繊維構造体に用いられる熱接着性短繊維の熱融着成分として配されるポリマーとしては、例えばポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、非弾性ポリエステル系ポリマー及びその共重合物、ポリオレフィン系ポリマー及びその共重合物、ポリビニルアルコ-ル系ポリマー等を挙げることができる。
【0034】
上記の熱融着成分の中でも、共重合ポリエステル系ポリマーが特に好ましく、例えば共重合ポリエステルが、ジカルボン酸成分としてイソフタール酸を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。なお、上述のポリマー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消し剤、着色剤、その他各種の改良剤等も必要に応じて配合されていても良い。
【0035】
また、熱接着性短繊維が複合繊維である場合には、上記の熱融着成分の相手側成分としては、非弾性のポリエステル樹脂成分であることが好ましく、ポリエステル樹脂成分としては前述の極細短繊維にて用いたものと同等な樹脂成分を活用することが可能である。その際、熱融着成分が、1/2以上の表面積を占めるものであることが好ましい。さらにはそれらの重量割合としては、熱融着成分とその他の成分が、重量比率で30/70~70/30の範囲にあることが好ましい。熱接着性短繊維が複合短繊維の場合の形態としては、特に限定されないが、熱融着成分とその他の成分とが、サイドバイサイド、あるいは芯鞘型であるのが好ましく、特に好ましくは芯鞘型であることである。このような芯鞘型の熱接着性複合短繊維では、非弾性ポリエステルなどのその他の成分が芯部となり、熱可塑性エラストマーが鞘部となる。またこの時、熱接着性短繊維の芯部は同心円状、若しくは、偏心状にあってもよい。
【0036】
さらにこの熱接着性短繊維には、ケイ素を10~5000ppm含むことも好ましく、より一層、混綿性が向上することとなる。
【0037】
この本発明の繊維構造体に用いられる熱接着性短繊維は、その単繊維径が5~50μmの範囲内であることが好ましい。またその繊維長は極細繊維の繊維長よりも長いことが好ましい。具体的な数値としては3~100mmの長さに裁断されている短繊維であることが好ましい。さらには4~76mmが好ましく、5~64mmの範囲であることが特に好ましい。
【0038】
本発明においては、繊度が0.02~0.6dtexの極細短繊維と繊度が1dtex以上の熱接着性短繊維とを、混綿させ、加熱処理することにより、熱接着性短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点及び熱接着性短繊維と極細短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなる繊維構造体が形成される。
【0039】
この際、繊度0.02~0.6dtexの極細短繊維の配合は10~90重量%の範囲であることが必要である。さらに好ましくは、20~90重量%の範囲で用いることが吸音性能及び断熱性能向上のためには好ましい。本発明の繊維構造体においては、極細短繊維の比率を高くすることにより、吸音性能・断熱性能を向上させることが可能である。また、熱接着性短繊維の配合は5~50重量%の範囲とする必要がある。熱接着繊維がこの範囲より、少ない場合は、固着点が極端に少なくなり、取扱いが難しく、繊維構造体の腰がなく、成型性が不良となる。一方、熱接着複合短繊維の比率がこの範囲より多い場合は、接着点が多くなり過ぎ、熱処理工程での熱収縮による、厚みダウンによる、吸音性の低下がもたらされる。
【0040】
さらに本発明の繊維構造体においては、極細短繊維がポリエステル系短繊維であることがより好ましい。特に本発明の繊維構造体が、車等の吸音部品に用いられる場合、車を構成する他のポリエステル系繊維使用構造体やガラス繊維使用構造体等のボード状構造物と接合する際にメリットとなる。オレフィン極細繊維系の吸音材を用いた場合、ポリエステル系に比べ耐熱性の点で劣り、ボード状構造物と一緒に成型することが困難となっていた。そのため接着樹脂等を使用して、別工程でボード状構造物への接合をされていたが、接着樹脂の使用及び工程が複雑になることがあった。極細短繊維がポリエステル系短繊維である場合には、この工程を省くことができ、さらには耐熱性が高く、一体成型にも対応できるものとなる。
【0041】
また本発明の繊維構造体には、上記の極細短繊維や熱接着性短繊維に加えて、着色繊維を加えることも好ましい。汚れが目立ちにくくなる利点に加えて、混綿状態を容易に外観から判断されるため品質維持のためにも好ましい。特には着色繊維として、反毛繊維を混綿した繊維構造体であることが好ましい。反毛繊維は使用済みの衣料等を回収し再利用するものであり、環境負荷の低減にも貢献する。
【0042】
このような本発明の繊維構造体の平均密度は0.1g/cm未満であることが必要である。さらには0.005~0.100g/cmの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、0.010g/cm~0.08g/cmであることが好ましい。平均密度が0.1g/cmを越えると、繊維構造体が板状となり、その後の成型も困難になる。加えて音が反射しやすくなり、吸音材として使用できなくなるおそれがあるとともに、重量増加によって車用途等に用いることができなくなる。逆にあまりにも低密度の場合、繊維構造体内部の接合が弱く、取扱いが難しくなる傾向にある。
【0043】
また、本発明の繊維構造体においては、200℃以上で嵩性が大きく変化しないことが好ましい。例えば、極細短繊維を含む繊維構造体が、200℃で嵩が30%未満、好ましくは20%未満の変化に留まることが好ましい。そのような繊維構造体とするためには、繊維構造体を構成する極細繊維の融点や、熱接着性短繊維を複合繊維として熱接着性以外の成分の融点として、高い樹脂を選択することが好ましい。
本発明の繊維構造体は、他の繊維構造体と一緒に一体成型する場合が多いが、200℃での嵩性が大きく変化しない場合、一体成型時に嵩が大きく変化しにくく、すなわち、嵩密度が増加せず、厚みが低下しないために、本来の吸音性を高いレベルで確保し続けることが可能となる。
【0044】
さらに本発明の繊維構造体は、その片方、または両方の面に他の層を張り付けることも好ましい。このように多層として使用する場合には、表層には、極細繊維を多く含む乾式不織布、裏面層には、極細繊維を少なく含む乾式不織布、といった使用法が可能である。あるいは、表層には、極細繊維を含む乾式不織布、裏面層には極細繊維を含まない乾式不織布を、熱接着、接着剤、ニードルパンチ等の手段により、貼り合わせて使用することも好ましい。
【0045】
そして本発明の繊維構造体には、本発明の繊維構造体以外の様々な層を張り付けることも好ましい。例えばスパンボンド、メルトブローンまたはフラッシュボンド等の直接紡糸法による不織布を貼りあわせることが好ましい。
【0046】
さらに本発明の繊維構造体には、撥水加工、防炎加工、難燃加工、マイナスイオン発生加工など公知の機能加工が付加することも好ましく、あるいは繊維構造体の1面または2面を熱処理し、その部分を高密度にすることも好ましい態様の一つである。
【0047】
このような本発明の繊維構造体を得るためには、まずは繊維ウエブ形成することが好ましい。中でもエアレイ法を用いたウエブ製造方法が好ましい。例えばより具体的には、まず混綿設備により、2種類以上の繊維を計量し均一に混合した後、繊維を開繊する方法である。この場合、開繊機を使用し、繊維を開繊すると同時に均一に混綿することが好ましく、ピンシリンダーや密度が低いメタリックワイヤーを使用し開繊することが、ポイントである。但し高密度のメタリックワイヤー等を使用した場合、ワイヤーへの綿の沈み込み、ネップ等が発生し品質が低下するとともに、生産性が大きく低下する傾向にある。
【0048】
次に混綿・開繊された構成繊維は、空気流によって引き揃えられ、気流によって円筒形状に表面をメッシュ状とされたサクションドラムの周面に当てることで集束させて、繊維ウエブを形成する。この時、サクションドラムの周面において、構成繊維を引き取る部分で、基材構成繊維は繊維が斜めに積層された形で吸引される。その後、ベルトとローラを備えたコンベアによって集束させた繊維群を搬送することで、表面層および裏面層は、ベルトに平行となるが、中間層は、繊維が厚さ方向に斜めに配向された状態で集積された繊維ウエブを得ることができる。
【0049】
このようなウエブ形成工程に適した、エアレイ法によるウエブ形成装置としては、例えば、オテファ(AUTEFA)社製の「V12/R」、又はランド(RANDO)社製の「RANDO-WEBBER(ランドウェッバー)」(同社登録商標)がある。
【0050】
また本発明の繊維構造体を得るためには、繊維を接合する工程においては、加熱接着工程を行うことが必要である。この加熱接着工程では、熱接着性短繊維の熱特性に応じた温度で、無圧下または通気性のあるベルトで挟んだ状態で加熱し、熱風循環炉や加圧可能な加熱ロールなど周知の手段によって、繊維を加熱し、熱接着性短繊維を他の構成繊維に接着させることで繊維構造体が得られる。
【0051】
また、混綿した綿を十分開繊したのち、極細繊維用メタリックワイヤーを使用したカード方式によりウエブを作成し、クロスレイヤーでウエブを重ね合わせ、加熱処理を施して繊維構造体を作成することもできる。また、ウエブをアコーディオン状に折りたたみながら加熱処理を施して繊維構造体を作成することも好ましい(例えばStruto社製「Struto設備」などを使用しても良い)。さらに、加熱処理する前に、表面毛羽をおさえるために、ニードルパンチを実施することも可能である。
【0052】
さらに、本発明の繊維構造体中の各構成繊維をより3次元的に成形することにより、複雑な形状をした対象物により適した、繊維構造体(乾式不織布)となる。特に、車等は、複雑な形状をしているため、隙間などから、音が漏れてくるが、形状に合わせた乾式不織布とすることで、乾式不織布としての特徴を十分に発揮できる。なお、3次元に成形する方法としては、特に限定はされないが、繊維構造体を180℃程度に余熱し、常温の金型に加熱した繊維構造体を挿入しプレスすることで、容易に作成できる。
【実施例
【0053】
以下に本発明の構成および効果を具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明は、これら実施例になんら限定を受けるものではない。なお、部とは特段断らない限りは重量部を表すものとし、実施例および比較例中の各物性値は、以下の方法に従って測定した。
【0054】
(1)ケイ素含有量
サンプルの乾式不織布用極細繊維をタブレット状に成型加工し、RIGAKU製蛍光X線測定装置(ZSX)でタブレットの表面、裏面をそれぞれ2回測定し、その平均値を算出した。
【0055】
(2)単糸繊度
日本工業規格JIS L 1015:2005 8.5.1 A法に記載の方法により測定した。すなわち、繊維試料の若干量を金ぐしで平行に引きそろえ、これを切断台上に置いたラシャ紙の上に載せる。適度の力でまっすぐ繊維試料を張ったままゲージ板を圧着し、安全かみそりなどの刃で30mmの長さに切断する。繊維を数えて300本を一組とし、その質量を量り、見掛繊度を求める。この見掛繊度と別に測定した平衡水分率とから、下式によって正量繊度を算出する。正量繊度の5回の平均値を算出した。
F=[(100+R0)/(100+Rc)]×D
F:正量繊度
D:見掛繊度
R0:公定水分率(%)(日本工業規格JIS L 0105 4.1に規定する値)
Rc:平衡水分率(%)
【0056】
(3)繊維長
日本工業規格JIS L 1015:2005 8.4.1 A法に記載の方法により測定した。
【0057】
(4)捲縮数
日本工業規格JIS L 1015:2005 8.12.1に記載の方法により測定した。
【0058】
(5)固有粘度:[η]
繊維(ポリエステルポリマー)サンプル0.12gを10mLのテトラクロロエタン/フェノール混合溶媒(容量比1/1)に溶解し、35℃における固有粘度(dL/g)を測定した。
【0059】
(6)メルトフローレイト:MFR
メルトフローレイトは日本工業規格JIS K 7210の条件4(測定温度190℃、荷重21.18N)に準じて測定した。なお、メルトフローレイトは溶融紡糸直前のポリマーペレットを試料として測定した値である。
【0060】
(7)融点
熱示差分析計型を使用し、昇温20℃/分で測定し、融解ピークをもとめた。融解温度が明確に観測されない場合には、微量融点測定装置を用い、ポリマーが軟化して流動を始めた温度(軟化点)を融点とする。なお、n数5でその平均値を求めた。
【0061】
(8)繊維のカード通過性
白色の極細繊維に2.2dtexの丸断面のカーボン粒子を練り込んだ黒色ポリエステル繊維をそれぞれ70%と30%の重量の割合で2層に積層し、合計50gとした。その後、綿をピンシリンダータイプの開繊機に2回とおし、その後、池上機械株式会社製、高速カード試験機を用いて繊維ウェブを作製した際のネップの発生状況、並びに得られた繊維ウェブの混綿状況に基づいて、以下の基準で評価した。なお、黒色ポリエステル繊維を使用しているため、乾式不織布としてはグレー色となり、汚れが見えにくい実用にも耐えうるものであった。
A:繊維がカード機を容易に通過し、未開繊もなく、ネップがほとんど発生しない。
B:未開繊は無さそうであるが、ネップが若干発生。
C:ネップが大量に発生、又は、未開繊がのこっているウエブである。
【0062】
(9)繊維構造体およびシート状物の厚さ(mm)
JIS K6400により測定した。
【0063】
(10)繊維構造体の密度(g/cm
下記式により密度(g/cm3)を求めた。
密度(g/cm)=ウエッブの目付け(g/cm)/繊維構造体の厚さ(cm)
【0064】
(11)吸音特性(吸音率)
シート状物が音源側に位置するよう試料を配し、吸音率を、JIS-A1405による垂直入射吸音率であって、Bruel&Kjar社製マルチチャンネル分析システム3550型(ソフトウェア:BZ5087型2チャンネル分析ソフトウェア)による2マイクロフォン法で測定した。吸音率は、1000Hz時で比較した。
【0065】
(12)成型性
190℃、180秒間熱絞り加工し、内径60mm×高さ20mm×厚み5mmのケーに成形した。このケースの胴部における外観を観察し、以下の基準で評価した。
3級:きれいなケースが作成できた。
2級:やや皺が入るがケースの作成ができた。
1級:ケースができない、または、製品に問題あり。
【0066】
[参考例1]
二酸化チタンを0.3重量%含有し、固有粘度が0.47dL/gのポリエチレンテレフタレート(PET)チップを290℃で溶融し、2504個の丸孔を有する紡糸口金から吐出量340g/分で吐出し、これを500m/分の速度で引き取り、単糸繊度が2.7dtexのポリエチレンテレフタレート未延伸糸を得た。この未延伸糸を引き揃えて、16.3万デシテックスのトウとして、温水中において全延伸倍率32.8倍となるように延伸した。その後、ラウリルホスフェート塩を主成分とし、ケイ素を含む成分としてポリオキシエチレン共重合ポリジメチルシロキサン系油剤を付与した。その後、押し込み式クリンパ―ボックスにて捲縮を付与し、単糸繊度0.06dtex、繊維長24mm、捲縮数17/25.4mmの乾式不織布用極細短繊維を得た。
【0067】
一方、熱接着繊維として、芯鞘型ポリエステル系繊維(鞘成分:低融点PET[融点110℃]、芯成分:ポリエチレンテレフタレート[融点256℃])として、繊維径2.2dtex、繊維長が51mm、捲縮数9/25.4mmの熱接着性短繊維を準備した。
【0068】
極細ポリエステル繊維50質量%と熱接着性短繊維20質量%とを、別途用意した黒色のポリエステル繊維(繊維径2.2dtex、繊維長が51mm、捲縮数10/25.4mm)30重量%とを混綿した後、ミキシング装置にて十分にミキシングし、ピンシリンダーおよびメタリックワイヤーシリンダーを通すことで、さらに混綿性と開繊性を向上させた。その後エアレイ法により、乾式不織布を作成し、次いで、上下にネット状のベルトを有する熱風の温度を180℃に設定した熱風循環炉で加熱接着処理することによって、目付が306g/m、厚み21mm、密度0.015g/cmの繊維構造体(乾式不織布)を得た。繊維特性および繊維構造体(乾式不織布)の成形性、吸音性を測定したところ、表1の通りであった。その他の作成条件や物性も表1に併せて示した。
【0069】
[実施例1]
極細短繊維として、単糸繊度を0.10dtex、カット長を32mm、捲縮数14/25.4mmのものに変更した以外は参考例1と同様にして、繊維構造体(乾式不織布)を得た。結果を表1に併せて示す。
【0070】
[参考例2]
極細短繊維に付着させたジメチルポリシロキサンの付着量を10倍とした以外は、参考例1と同様にして、繊維構造体を得た。結果を表1に併せて示す。
【0071】
[参考例3]
極細短繊維、熱接着性短繊維、及び黒色繊維は、参考例1と同様の物を使用し、混率を変更して極細短繊維25質量%、熱接着性短繊維20質量%、及び黒色のポリエステル繊維55重量%とを混綿した後、参考例1と同様にして目付が487g/m、厚み11.0mm、密度0.05g/cmの繊維構造体を得た。繊維特性および繊維構造体の成形性、吸音性を測定したところ、表1の通りであった。その他の作成条件や物性も表1に併せて示した。
【0072】
[参考例4]
不織布表皮A層として、ポリエチレンフタレート(PET)70部とポリプロピレン(PP)30部に発泡剤としてN2ガスを溶融混合し押し出し機から170~350℃の押し出し温度で押し出し、ダイ出口で急冷しながら引き取り網状異型繊維シートを得た。一方、約45万デニールのポリエステルトウシートを多数組合せ、アクリル系バインダーで貼り合せ、オーバーフィード2倍、延展倍率10倍で延展し、加熱圧着し、目付70g/mのシートを得た。
【0073】
このシートを参考例1における熱風循環炉の前に挿入し参考例3のウエブと貼り合わせ状態で上下にネット状のベルトを有する熱風の温度を180℃に設定した熱風循環炉で加熱接着処理することによって、目付が562g/m、厚み11.7mm、密度0.048g/cmの繊維構造体(乾式不織布)を得た。繊維特性および繊維構造体(乾式不織布)の成形性、吸音性を測定したところ、表2の通りであった。結果を表2に示した。
【0074】
[比較例1]
延伸工程にて繊維に付着させるジメチルポリシロキサンの付着量を減らした以外は、参考例1と同様にして極細短繊維を得た。繊維に含有するケイ素量は6ppmであった。それ以外は参考例1と同様にして繊維構造体を得た。作成した繊維構造体表面には、多数のネップが確認された。結果を表2に併せて示す。
【0075】
[比較例2]
押し込み式クリンパ―ボックスにて付与する捲縮を調整し、極細短繊維の捲縮数を8とした以外は、参考例1と同様にして繊維構造体を得た。その後、参考例1と同じように混綿、開繊工程により、混合した綿を極細用ワイヤーを使用したメタリックカードを使用してウエブを作成し、クロスレイヤーによりウエブを重ね合わせを実施した。製造条件を表2に併せて示した。しかし、メタリックカード下に、多くの極細繊維が落下しており、また、メタリックカード設備よりクロスレイヤー設備ウエブを移行する時に、ウエブの切断が多く発生したため、最終的には不織布の作成を中断した。
【0076】
[比較例3]
スリーM社製、商品名シンサレートのTC3403(目付=318g/m、厚み=30mm)を準備した。このものは、ポリエステルの太い繊維とPPのメルトブロー繊維よりなり、その繊維径を電顕で測定したところ、PPメルトブロー繊維の直径は、0.5~15μmの分布であり、100本の平均値は3.3μmであった。またこのシンサレート繊維を用いて参考例1と同様に加熱成型したところ、含まれる極細繊維が融着し、吸音性高い繊維構造体とはならなかった。加熱成型前のシンサレートの吸音率を表2に示した。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】