(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】シートパッド及びシートパッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
A47C 7/18 20060101AFI20221129BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
A47C7/18
A47C27/14 A
A47C27/14 C
(21)【出願番号】P 2018132629
(22)【出願日】2018-07-12
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】根本 泰
【審査官】五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-037558(JP,A)
【文献】特開2003-004688(JP,A)
【文献】特開2008-296771(JP,A)
【文献】特開2005-080938(JP,A)
【文献】特開平05-300906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/18
A47C 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ポリウレタン樹脂からなるシートパッド本体と、前記シートパッド本体に埋設されたチューブとを備えており、
前記チューブは、ポリウレタン樹脂からなり、
前記シートパッド本体は、前記チューブに対して一体に成形されており、当該チューブの少なくとも一方の端面は、前記シートパッド本体の表面から露出しており、
前記チューブは、ケーブル類を挿入可能な導管であり、
前記導管に、潤滑用材料が充填されている、シートパッド。
【請求項2】
前記チューブは、前記シートパッド本体の支え面に沿って配置されている、請求項1に記載の、シートパッド。
【請求項3】
前記チューブは、座部に配置されている、請求項1
又は2に記載の、シートバッド。
【請求項4】
請求項1に記載されたシートパッドを製造する方法であって、
ポリウレタン樹脂からなる前記チューブが配置されたモールド内で、ポリウレタン樹脂を発泡させ
る工程を含む、シートパッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッド及びシートパッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシートパッドには、流体を圧入し内圧を保つ弾性チューブが発泡樹脂により一体に成形されたクッションパッドがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のシートパッドは、弾性チューブが発泡樹脂により一体に成形されているものの、前記弾性チューブの末端を引っ張ると、当該弾性チューブがクッションパッドから容易に引き抜けてしまう虞がある。
【0005】
本発明の目的は、チューブが強固に固定されたシートパッド、及び、当該シートパッドを容易に得ることができる、シートパッドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るシートパッドは、発泡ポリウレタン樹脂からなるシートパッド本体と、前記シートパッド本体に埋設されたチューブとを備えており、前記チューブは、ポリウレタン樹脂からなり、前記シートパッド本体は、前記チューブに対して一体に成形されており、当該チューブの少なくとも一方の端面は、前記シートパッド本体の表面から露出している。本発明に係るシートパッドによれば、チューブが強固に固定されたシートパッドとなる。
【0007】
本発明に係るシートパッドにおいて、前記チューブは、前記シートパッド本体の支え面に沿って配置されているものとすることができる。ここで、「支え面」とは、シートパッド本体の表面のうち、使用者が使用したとき(座ったとき)に、当該使用者が接触する側の表面をいう。この場合、チューブの動きがパッド本体の動きに対して追従し易くなることにより、チューブの耐久性を向上させることができる。
【0008】
本発明に係るシートパッドにおいて、前記チューブは、ケーブル類を挿入可能な導管であることが好ましい。前記導管は、少なくとも1つのケーブル類を挿入することができる。前記ケーブル類としては、ケーブル、コード等の導線は勿論、気体・液体を流通させる供給管及び排出管が挙げられる。この場合、ケーブル類等を、シートパッド本体の内部に対して容易に挿入することができる。
【0009】
本発明に係るシートパッドは、前記導管に、潤滑用材料が充填されているものとすることができる。この場合、ケーブル類等を、シートパッド本体の内部に対してより容易に挿入することができる。
【0010】
本発明に係るシートパッドでは、前記チューブは、座部に配置されていることが好ましい。この場合、様々なケーブル類等が配置され得るシートクッション部にチューブが埋設されるため、ケーブル類等の挿入に便利である。
【0011】
本発明に係る、シートパッドの製造方法は、発泡ポリウレタン樹脂からなるシートパッド本体にチューブが埋設されたシートパッドを製造する方法であって、前記チューブとしてポリウレタン樹脂製のチューブを使用し、前記チューブが配置されたモールド内で、ポリウレタン樹脂を発泡させる工程を含む。この場合、チューブが強固に固定されたシートパッドを容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、チューブが強固に固定されたシートパッド、及び、当該シートパッドを容易に得ることができる、シートパッドの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシートパッドを概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のシートパッドの内部にケーブル類を挿入する方法について説明するための、概略斜視図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係るシートパッドの製造方法を説明するための概略断面図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る、シートパッドの製造方法を説明するための、他の概略断面図である。
【
図3C】
図3A及び
図3Bを得て得られたシートクッションパッドを概略的に示す断面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係るシートパッドを概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る、シートパッド及びシートパッドの製造方法について説明をする。
【0015】
[シートパッド]
図1中、符号1は、本発明の一実施形態に係るシートパッドである。シートパッド1は、例えば、自動車用シート、車椅子用シート等の車両用シート、その他の座席シートに採用することができる。本実施形態では、シートパッド1は、車両用、より具体的には、自動車用シートパッドである。
【0016】
シートパッド1は、発泡ポリウレタン樹脂からなるシートパッド本体2を備えている。本実施形態では、シートパッド本体2は、クッションパッド部2Aと、バックパッド部2Bと、ヘッドレスト部2Cとを有している。
【0017】
加えて、シートパッド1は、シートパッド本体2に埋設されたチューブ3を備えている。本発明によれば、チューブ3は、クッションパッド部2A、バックパッド部2B及びヘッドレスト部2Cの少なくともいずれか1つに配置することができる。本実施形態では、説明を簡略化するために、チューブ3は、クッションパッド部2Aのみに配置されている。
【0018】
チューブ3は、ポリウレタン樹脂からなる。前記ポリウレタン樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂が挙げられる。更に、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、商品名「ミラクトラン(登録商標)E660」(日本ミラクトラン株式会社製)が挙げられる。また、チューブ3の硬度は、シートパッド本体2と同一であることが好ましい。ここで、チューブ3及びシートパッド本体2の硬度は、例えば、ビッカース硬さ試験により測定することができる。この場合、シートパッド本体2とチューブ3とが馴染み易く、シートパッド本体2とチューブ3との間の剛性差による、着席時の違和感を防止することができる。また、シートパッド本体2とチューブ3との間の接合面に生じるせん断応力を抑制し、耐久性を向上させることができる。
【0019】
また、シートパッド本体2は、チューブ3に対して一体に成形されている。本実施形態では、クッションパッド部2Aは、チューブ3をインサート品として、モールド成形されている。また、本実施形態では、シートパッド本体2は、凹部2nを有している。本発明によれば、凹部2nは、クッションパッド部2A、バックパッド部2B及びヘッドレスト部2Cの少なくともいずれか1つに配置することができる。本実施形態では、例示的に、クッションパッド部2Aは、凹部2nを有している。また、本発明によれば、チューブ3の少なくとも1つとすることができる。本実施形態では、複数のチューブ3が配置されている。
【0020】
更に、チューブ3の少なくとも一方の末端3eは、シートパッド本体2の表面から露出している。チューブ3の末端3eは、シートパッド本体2の表面と同一面を構成するように露出させることができる。又は、チューブ3の末端3eは、シートパッド本体2の表面よりも突出させることができる。
【0021】
チューブ3の一方側末端3e1は、シートパッド本体2の表面fから露出している。本実施形態では、シートパッド本体2の表面fは、前面f1、側面f2、背面f3及び底面f4を含んでいる。本発明によれば、チューブ3の一方側末端3e1は、シートパッド本体2の前面f1、2つの側面f2、背面f3及び底面f4の少なくともいずれか1つの面から露出させることができる。本実施形態では、チューブ3の一方側末端3e1は、クッションパッド部2Aの、前端面f1a1、座面(支え面)f1a2、2つの側面f2a、背面f3a及び底面f4a(f4)の少なくともいずれか1つの面から露出させることができる。本実施形態では、チューブ3の一方側末端3e1は、例示的に、クッションパッド部2Aの前端面f1a1、2つの側面f2a及び背面f3aのそれぞれから露出している。また、例示的に、クッションパッド部2Aの前端面f1a1では、チューブ3の一方側末端3e1は、前端面f1a1と同一の面を形成するように露出させている。また、例示的に、クッションパッド部2Aの側面f2a及び背面f3aでは、チューブ3の一方側末端3e1は、側面f2a及び背面f3aから突出させている。
【0022】
他方、チューブ3の他方側末端3e2は、シートパッド本体2に形成された凹部2nの内表面f5から露出している。本発明によれば、チューブ3の他方側末端3e2は、シートパッド本体2に形成された凹部2nを形作る、4つの側面f5a及び底面f5bの少なくともいずれか1つの面から露出させることができる。本実施形態では、チューブ3の他方側末端3e2は、例示的に、4つの側面f5aのそれぞれから露出させている。
【0023】
本実施形態に係るシートパッド1では、チューブ3は、ケーブル類4を挿入する導管である。前記導管は、少なくとも1つのケーブル類4を挿入することができる。ケーブル類4としては、ケーブル、コード、リード線等の導線は勿論、気体・液体を流通させる供給管及び排出管が挙げられる。更に、前記ケーブルとしては、電源ケーブル、通信ケーブルが挙げられる。本実施形態では、ケーブル類4は、電源ケーブル及び通信ケーブルとして説明する。またケーブル類4がケーブルの場合、ケーブル類4の先端にセンサを取り付けることも可能である。
【0024】
チューブ3が導管である場合、当該チューブ3の内径は、ケーブル類4の外径の110%~200%の寸法とすることが好ましい。チューブ3の内径がケーブル類4の外径の110%以上の場合、ケーブル類4をチューブ3に対して確実に挿入することができる。また、チューブ3の内径がケーブル類4の外径の200%以上の場合、少なくとも2つのケーブル類4を挿入することができる。
【0025】
ここで、
図2を参照して、シートパッド1の内部にケーブル類4を挿入する方法について説明する。
図2中、符号5は、シートパッド1の内部に収納される収納要素である。収納要素5としては、センサ、ヒータ、クーラー等の電装品、熱交換用パイプが挙げられる。ケーブル類4は、収納要素5に接続することができる。シートパッド1の凹部2nに収納要素5を収納した後は、同様の発泡ポリウレタン樹脂で蓋をして閉じることができる。
【0026】
図2に示すように、本実施形態では、作業者は、ケーブル類4をシートパッド本体2(ここでは、クッションパッド部2A)から露出しているチューブ3の一方側末端3e1から挿入する。これによって、ケーブル類4は、シートパッド本体2に形成された凹部2nに送られる。チューブ3の他方側末端3e2から突出させたケーブル類4は、収納要素5に接続することができる。
【0027】
本実施形態に係るシートパッド1によれば、シートパッド本体2及びチューブ3は、同材質のポリウレタン樹脂からなり、シートパッド本体2は、チューブ3に対して一体に成形されている。ポリウレタン樹脂からなるチューブ3は、発泡ポリウレタン樹脂と相溶解してシートパッド本体2と一体化される。このため、チューブ3の外周面3fは、シートパッド本体2に対して滑動することがない。一方、チューブ3の内周面は円滑であるため、挿入したケーブル類4がチューブ3の中を円滑に移動する。従って、ケーブル類4は、チューブ3に対して容易に挿入することができる。また、ケーブル類4は、チューブ3から容易に抜き取ることができ、当該ケーブル類4の交換も容易である。
【0028】
更に、本実施形態に係るシートパッド1によれば、チューブ3は、ポリウレタン樹脂からなることで、可撓性(弾性)を有し、変形及び復元が可能である。このため、使用者がシートに座る(重量物が積載される)ことで、シートパッド1全体が撓む場合でも、チューブ3の内部に配置されたケーブル類4は、チューブ3の撓みの程度に合せて滑って動くことが可能である。このため、シートパッド1全体が撓む場合でも、ケーブル類4の断線を防止できる。
【0029】
上述のとおり、本実施形態に係るシートパッド1は、発泡ポリウレタン樹脂からなるシートパッド本体2と、シートパッド本体2に埋設されたチューブ3とを備えており、チューブ3は、ポリウレタン樹脂からなり、シートパッド本体2は、チューブ3に対して一体に成形されており、当該チューブ3の少なくとも一方の末端3eは、シートパッド本体2の表面2fから露出している。従って、本実施形態によれば、チューブ3が強固に固定されたシートパッドとなる。なお、本実施形態によれば、ケーブル類4の末端には、弾性材料を配置することが好ましい。この場合、前記弾性材料は、ケーブル類4がチューブ3内の滑って動くときに伸び縮みすることで、ケーブル類4の良好な動きを実現することができる。
【0030】
本実施形態において、チューブ3は、シートパッド本体2の支え面に沿って配置されているものとすることができる。ここで、シートパッド本体2の支え面とは、使用者が使用したとき(座ったとき)に、当該使用者が接触する側の面をいう。この場合、チューブ3の動きがシートパッド本体2の動きに対して追従し易くなることにより、チューブ3の耐久性を向上させることができる。本実施形態では、チューブ3は、クッションパッド部2Aの座面f1a2に沿って配置されている。なお、チューブ3がバックパッド部2Bに配置される場合、チューブ3は、バックパッド部2Bの支え面f1bに沿って配置されていることが好ましい。更に、チューブ3がヘッドレスト部2Cに配置される場合、チューブ3は、ヘッドレスト部2Cの支え面f1cに沿って配置されていることが好ましい。
【0031】
また、本実施形態において、チューブ3は、ケーブル類4を挿入可能な導管であることが好ましい。この場合、ケーブル類4を、シートパッド本体2の内部に対して容易に挿入することができる。本実施形態では、チューブ3は、ケーブル類4を挿入可能な導管である。従って、本実施形態によれば、ケーブル類4をクッションパッド部2Aの内部に容易に挿入することができる。
【0032】
また、本実施形態に係るシートパッド1は、前記導管に、潤滑用材料が充填されているものとすることができる。この場合、ケーブル類4を、シートパッド本体2の内部に対してより容易に挿入することができる。本実施形態では、チューブ3の内部に、潤滑用材料が充填されている。前記潤滑用材料としては、粘性の高い潤滑用材料、例えば、グリスが挙げられる。
【0033】
更に、本実施形態では、チューブ3は、クッションパッド部(座部)2Aに配置されていることが好ましい。チューブ3は、クッションパッド部2A、バックパッド部2B及びヘッドレスト部2Cの少なくともいずれか1つに配置することができる。本実施形態では、チューブ3は、クッションパッド部2Aに配置されている。この場合、様々なケーブル類4が配置され得るクッションパッド部2Aにチューブ3が埋設されるため、ケーブル類等の挿入に便利である。また、この場合、動きの頻度が高いクッションパッド部(座部)2Aにチューブ3を配置したことで、チューブ3の引き抜けの防止に有効である。
【0034】
図4には、本発明の他の実施形態に係るシートパッド1´を概略的に示す。本実施形態に係るチューブ3は、クッションパッド部2Aの両側に、サイドパッド部2Dを有している。本実施形態では、チューブ3は、その他方側末端3e2に収容部3bを有している。収容部3bには、収納要素5を内蔵させることができる。こうしたチューブ3は、例えば、モールドを用いたブロー成形によって成形することができる。この場合、シートパッド1´には、凹部2nを形成する必要がない。即ち、シートパッド1´は、チューブ3をインサート品とすることにより、モールド成形するだけで製造できる。また、本実施形態では、チューブ3は、サイドパッド部2Dに配置することもできる。
【0035】
[シートパッドの製造方法]
次に、
図3A~
図3Cを参照して、本実施形態に係る、シートパッドの製造方法について説明をする。本実施形態に係る、シートパッドの製造方法は、発泡ポリウレタン樹脂からなるシートパッド本体2にチューブ3が埋設されたシートパッドを製造する方法である。本実施形態に係る、シートパッドの製造方法は、チューブ3としてポリウレタン樹脂製のチューブを使用し、チューブ3が配置されたモールド内で、ポリウレタン樹脂を発泡させる工程を含む。
【0036】
図3Aに示すように、本実施形態では先ず、ポリウレタン樹脂製のチューブ3をモールド10内に配置する。本実施形態では、モールド10は、複数のモールド片10Aからなる分割モールドである。次いで、
図3Bに示すように、複数のモールド片10Aを型締めして、モールド10を形成し、当該モールド10の内部に、シートパッドを形作るキャビティCを形成する。本実施形態では、キャビティCは、クッションパッド部2Aを形作る。このとき、チューブ3は、キャビティC内の所定の立体座標位置に配置される。を型締めしたキャビティC内には、所定の原料が注入され、キャビティC内で発泡させる。その後、
図3Cに示すように、モールド10から取り出した成形品に凹部2nを形成する。凹部2nは、例えば、切削加工によって、
図3Cの破線で区画された領域Aをくり抜くことによって形成することができる。或いは、モールド10のキャビティC内に中子を挿入しておくことで、発泡と同時に成形することもできる。
【0037】
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるチューブ3は、ポリウレタンスポンジ製シート材料に要求される、可撓性、圧縮歪み、硬度を維持するためにモジュラス硬度などを調整して作製する。この場合、チューブ3を埋設するための孔をドリル切削等で加工する場合と相違して、直径の異なるチューブ3、ダム形状のチューブ3(チューブ3の直径が多段階に変化する形状)、チューブ3を二股、三又等の複数に分岐させる等の、ネットワーク形状とする場合にも対応させることができる。
【0038】
本実施形態に係る、シートパッドの製造方法は、発泡ポリウレタン樹脂からなるシートパッド本体にチューブが埋設されたシートパッドを製造する方法であって、チューブ3としてポリウレタン樹脂製のチューブを使用し、
図3Bに示すように、チューブ3が配置されたモールド10内で、ポリウレタン樹脂を発泡させる工程を含む。この場合、チューブ3が強固に固定されたシートパッドを容易に得ることができる。本実施形態では、チューブ3が強固に固定されたクッションパッド部2Aを容易に得ることができる。更に、ポリウレタンチューブは、上述のとおり、1つのチューブを複数のチューブに枝分かれさせて作製することが可能である。この場合、チューブ3として、予め複雑な分岐を有するチューブを使用することにより、シートパッド本体2の内部に複雑な管路(導管)を容易に形成することができる。なお、上述のとおり、チューブ3として、1つのチューブを複数のチューブに枝分かれさせたチューブを使用する場合、当該チューブ3のうちの所望のチューブにケーブル類4を挿入する方法としては、例えば、ケーブル類4に通したワイヤーを案内部材として、当該ケーブル類4を目的するチューブに案内するガイドワイヤー操作技術が挙げられる。また、本実施形態では、凹部2nは、クッションパッド部2Aの支え面f1a2に開口させたが、支え面f1a2以外の面(例えば、底面f4)に開口させることができる。
【0039】
上述したところは、本発明のいくつかの実施形態を開示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、チューブ3は、バックパッド部2Bに配置することができる。この場合、チューブ3の一方側末端3e1は、バックパッド部2Bの、前面(支え面)f1b、2つの側面f2b、背面f3b及び底面f4bの少なくともいずれか1つの面から露出させることができる。また、チューブ3は、ヘッドレスト部2Cに配置することができる。この場合、チューブ3の一方側末端3e1は、ヘッドレスト部2Cの、前面(支え面)f1c、2つの側面f2c、背面f3c及び底面f4cの少なくともいずれか1つの面から露出させることができる。この場合、アームレスト部、フットレスト部にチューブ3を配置することができる。また、本発明に係るシートパッドには、クッションパッド部2A、バックパッド部2B及びヘッドレスト部2Cを一体に備えるものに限定されない。本発明に係るシートパッドには、クッションパッド部2A、バックパッド部2B及びヘッドレスト部2Cの少なくともいずれか1つが独立して、シートパッドを構成するものも含まれる。更に、本発明に係るシートパッドは、アームレスト部、フットレスト部を備えていてもよい。これらも、本発明に係るシートパッドとして、一体として又は独立して構成するものも含まれる。また、収納要素5が薄肉のフィルム状のセンサ等である場合は、シートパッド1に凹部2nを設ける必要、又は、チューブ3に収容部3bを設ける必要がない。即ち、
図1等に示すような、通常のチューブ3を用いて、当該チューブ3と一体に成形された成形品をそのまま、シートパッド本体2として使用することもできる。
【実施例1】
【0040】
<実施例1>
直径100mm、高さ50mmの円筒形モールド内に、発泡ポリウレタン樹脂からなるチューブ(外径2.0mm、内径1.4mm)を3本配置した。3本のチューブは、前記円筒形モールドの底面の中心から放射状に略対称形となるように配置した。ポリオール(サンニックス(登録商標)GP3000U、三洋化成工業株式会社)100重量部、イソシアネート(コスモネードT80、三井化学工業株式会社)60重量部、水5重量部、添加剤 スズ触媒(WG31-NK、日本化学産業株式会社)0.2重量部、触媒の溶媒としてのポリオール(サンニックス(登録商標)GS3000、三洋化成工業株式会社)0.8重量部、整泡剤(L580/STL、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)1重量部、発泡剤(ジクロロメタン、株式会社トクヤマ)3重量部、アミン触媒(33LV、東ソー株式会社)0.3重量部をディゾルバー攪拌機で10秒間攪拌し、速やかに、前記円筒形モールド内へ100mL注入した。
【0041】
注入から約5秒後に発泡が始まり、モールド内に配位した3本のチューブを浸漬するように増量し、15秒後に停止して収縮期へ移行した。発泡の停止後、内部温度は135°Cまで上昇し、最高温度へ達したと同時に降温が始まり、約10分かけて50°Cまで降下した。
【0042】
得られた円筒形の発泡ポリウレタンの内部には、3本のチューブは、初期に配置した位置と同じ位置に、内周面が円滑なチューブとして存在し、かつ、3本のチューブの外周面は、前記発泡ポリウレタンと融着し、一体化していた。
【0043】
チューブの内部に、案内部材として、直径1.0mm、長さ150mmのワイヤーを通すと容易に、前記チューブ内を貫通させることができた。前記ワイヤーの末端に直径1.0mm、長さ150mmの柔軟なリード線を、熱収縮チューブを使用して固定し、当該ワイヤーを前記発泡ポリウレタンから抜き取るように操作することで、当該発泡ポリウレタンの内部に形成された前記チューブ内へリード線をケーブル類として挿入することができた。
【0044】
(圧縮歪みに対する効果)
前記発泡ポリウレタン内に挿入した柔軟なリード線の一方側末端を固定し、他方側末端は、50mm長さの輪ゴムの接続部を介して固定した。前記発泡ポリウレタンの上に、重量5kgの丸底形状の分銅を載せると、前記発泡ポリウレタンは撓み、その撓みに追随するように前記リード線が前記チューブの内部へ引き込まれた(輪ゴムが伸びた)。分銅を除去し、リード線の通電性を確認すると切断されることがなく、圧縮歪みの負荷に耐えたことが確認できた。
【0045】
<比較例1>
実施例1で熱可塑性ポリウレタン製チューブに替えて、ポリスチレン系エラストマー樹脂(テファブロック(登録商標)4300C、三菱ケミカル株式会社)で作製した直径2.0mm、内径1.4mmのチューブを使用した以外は同様の実験を行った。
【0046】
得られたスポンジには3本のチューブが埋設されたものの、当該チューブの外周面と前記スポンジの骨格は接着しておらず、当該チューブの末端を引っ張ると容易に引き抜くことができた。引き抜いた後には、当該スポンジの管腔が露出しており、引き抜く際に発生したデブリスや骨格の破片が露出していた。
【0047】
比較例1において、得られた発泡体からチューブを引きぬくことなく、そのまま、ワイヤーを挿入して実施例と同様の歪み負荷試験を実施した。
【0048】
実施例1と同様に、チューブの内腔面が円滑であることにより、リード線の一方側末端に固定した輪ゴムが引っ張られることが確認され、負荷後のリード線が断線することはなかった。一方、前記チューブも前記スポンジの内部に引き込まれており、当該スポンジの内部で前記チューブの変形による、当該チューブの内径の狭搾が確認された。前記チューブが前記スポンジと接着していないために、当該スポンジの内部に引き込まれ、かつ、引きこまれたチューブが完全に元に戻らなかった結果であると判断できる。
【0049】
<参考例1A>
ポリオール(サンニックス(登録商標)GP3000U、三洋化成工業株式会社)100重量部、イソシアネート(コスモネードT80、三井化学工業株式会社)60重量部、水5重量部、添加剤 スズ触媒(WG31-NK、日本化学産業株式会社)0.2重量部、触媒の溶媒としてのポリオール(サンニックス(登録商標)GS3000、三洋化成工業株式会社)0.8重量部、整泡剤(L580/STL、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)1重量部、発泡剤(ジクロロメタン、株式会社トクヤマ)3重量部、アミン触媒(33LV、東ソー株式会社)0.3重量部をディゾルバー攪拌機で10秒間攪拌し、速やかに、前記円筒形モールド内へ100mL注入した。
【0050】
注入から約5秒後に発泡が始まって増量し、15秒後に停止して収縮期へ移行した。発泡の停止後、内部温度は135°Cまで上昇し、最高温度へ達したと同時に降温が始まり、約10分かけて50°Cまで降下した。
【0051】
得られた円筒形のスポンジに対し、直径2.0mmのドリル刃を装着した卓上ボール盤で穿孔を試みたが、回転するドリル刃に前記スポンジが巻き着き、5mm~10mm径程度のすり鉢状の穴が形成されるように引きちぎられて破壊された。結果、前記スポンジの内部には、直径2.0mmの管腔を形成させることはできなかった。柔軟なスポンジであればこの現象は強調されることは当業者には自明である。
【0052】
<参考例1B>
上記参考例1Aで作製した前記スポンジを-70°Cの環境下へ置き、同様にして卓上ボール盤で2.0mmのドリル刃で穿孔を行った。ドリル刃に巻き着くことなく穿孔は可能であったが、直線のみで、内部で湾曲しているような管腔を形成させることはできなかった。また、切削時に発生するデブリス(切り屑)が前記スポンジに粉状に捕捉され、吸引機を使用しても除去することは困難であった。
【0053】
<参考例1C>
上記参考例1Bで作製した2.0mm径の単純な直線状の管腔に対して、実施例と同様に前記ワイヤーを貫通、挿入させようと試みたが、前記ワイヤーの先端が前記スポンジの孔へ引っ掛かり、挿入することは困難であった。このことは、前記スポンジに形成されている管腔が直線状でなく曲線状であった場合、直線状あっても距離が長い場合、前記ワイヤーの挿入は非常に困難となることが自明である。
【0054】
次に、実施例1と同様に前記ワイヤーを柔軟なリード線に置き換える操作を行った後に、前記スポンジに対して重量物を積載することによるリード線への撓み負荷実験を行った。前期リード線が前記スポンジに形成されている管腔の凹凸に起因する摩擦によって当該管腔内を摺動することなく固定され、リード線の一方側末端に介した輪ゴムは伸びることなく、当該リード線が、あたかも両末端が固定されたような状態で引っ張られ、中央付近で断線することとなった。
【符号の説明】
【0055】
1:シートパッド, 1´:シートパッド, 2:シートパッド本体, f:シートパッド本体の表面, f1:シートパッド本体の前面, f1a1:クッションシート部の前端面, f2:シートパッド本体の側面, f3:シートパッド本体の背面, f4:シートパッド本体の底面, f5:凹部の内表面, f5a:凹部の側面, f5b:凹部の底面, 2A:クッションパッド部, f1a1:クッションシート部の前端面, f1a2:クッションシート部の支え面, f2a:クッションシート部の側面, f3a:クッションシート部の背面, f4a:クッションシート部の底面, 2B:バックパッド部, f1b:バックパッド部の支え面, f2b:バックパッド部の側面, f3b:バックパッド部の背面, f4b:バックパッド部の底面, 2C:ヘッドレスト部, f1c:ヘッドレスト部の支え面, f2c:ヘッドレスト部の側面, f3c:ヘッドレスト部の背面, f4c:ヘッドレスト部の底面, 3:チューブ, 3f:チューブの外周面, 4:ケーブル類, 5:収納要素, 10:モールド, 10A:モールド片