(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】スピンドル駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/20 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
F16H25/20 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018137348
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】10 2017 212 823.2
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514062655
【氏名又は名称】スタビラス ゲ―エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペーター オスター
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス リッター
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0040765(US,A1)
【文献】国際公開第2016/015730(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドル駆動装置(10)であって、
外周ねじ部を有し、前記スピンドル駆動装置(10)を
一方の上位機構部すなわち前記スピンドル駆動装置(10)に属さない機構部に連結する第一連結ユニット(14)と連結したスピンドル(12)と、
前記スピンドル(12)の前記外周ねじ部と螺合し、前記スピンドル駆動装置(10)を
他方の上位機構部すなわち前記スピンドル駆動装置(10)に属さない機構部と連結する第二連結ユニット(18)と連結したスピンドルナット(16)と、
前記スピンドル(12)または前記スピンドルナット(16)を駆動する駆動ユニット(22)、前記駆動ユニット(22)の出力シャフト(24)および内部に駆動機構部(20)が入っている駆動機構部筺体(30)を有する駆動機構部(20)と、
前記スピンドル(12)または前記スピンドルナット(16)を前記駆動機構部筺体に対して回転可能に支持する
ボール軸受けである少なくとも一つの軸受部(34、64)と、
前記第一連結ユニット(14)を前記スピンドル(12)に連結させ、または前記第二連結ユニット(18)を前記スピンドルナット(16)に連結させ、これら1対の連結されるエレメントが少なくとも前記スピンドル(12)の軸方向において互いに変位しないようにする結合エレメント(36)と、を含み、
前記結合エレメント(36)は前記軸受部(34)の外側の軸受リングと係合し、同軸受リングを締め付けることによってカラー部またはベース部(38)に連結させ、前記結合エレメント(36)はこの連結のためその長手方向の両端に端部(40、42)を有し、これらの端部(40、42)は半径方向内側に向かって変形しており、
一方の前記上位機構部から他方の前記上位機構部へ前記スピンドル駆動装置(10)を介して伝達される
引張力又は圧縮力を前記駆動機構部筺体(30)は受けないスピンドル駆動装置(10)。
【請求項2】
前記結合エレメント(36)は前記第一連結ユニット(14)または前記第二連結ユニット(18)を前記少なくとも一つの軸受部(34)と連結させ、前記軸受部(34)は前記スピンドル(12)または前記スピンドルナット(16)と軸方向で変位不能になるように連結した請求項1に記載するスピンドル駆動装置(10)。
【請求項3】
前記結合エレメント(36)の内部に収容された部品を軸方向に固定する、少なくとも一つの内側に突設された突起(40、42)を、前記結合エレメント(36)が有する請求項1または2に記載するスピンドル駆動装置(10)。
【請求項4】
前記結合エレメント(36)の内部に収容された部品を軸方向に固定する、少なくとも一つのスプリング環(72)を、前記結合エレメント(36)は有する請求項1乃至3のいずれかに記載するスピンドル駆動装置(10)。
【請求項5】
前記駆動ユニット(22)の前記出力シャフト(24)は前記スピンドル(12)と概ね直角である請求項1乃至4のいずれかに記載するスピンドル駆動装置(10)。
【請求項6】
前記第一連結ユニット(14)が前記スピンドル(12)に対して回転可能に支持され、または/さらに、前記第二連結ユニット(18)が前記スピンドルナット(16)に対して回転可能に支持される請求項1乃至5のいずれかに記載するスピンドル駆動装置(10)。
【請求項7】
前記駆動機構部筺体(30)は複数の、特に2個の筺体部材(30a、30b)からなり、前記複数の筺体部材(30a、30b)は互いに連結して、前記駆動機構部筺体(30)が前記駆動機構部(20)、前記結合エレメント(36)および前記スピンドル(12)の少なくとも一部を取り囲む請求項1乃至6のいずれかに記載するスピンドル駆動装置(10)。
【請求項8】
前記スピンドル(12)は支持エレメント(46)を有し、前記支持エレメント(46)は前記スピンドル(12)と特にリベット止めにより連結し、前記軸受部(34)が前記スピンドル(12)に対して軸方向に動かないように固定する請求項1乃至7に記載するスピンドル駆動装置。
【請求項9】
前記スピンドル(12)と連結した駆動ギア(28)を有し、前記駆動ギア(28)が回転することによって、前記スピンドル(12)または前記スピンドルナット(16)が回転するように前記駆動ユニット(22)が前記スピンドル(12)に作用する請求項1乃至8のいずれかに記載するスピンドル駆動装置(10)。
【請求項10】
前記駆動ギア(28)はウォームギアであり、前記出力シャフト(24)と連結したウォームシャフト(26)と螺合する請求項9に記載するスピンドル駆動装置(10)。
【請求項11】
中間エレメント(66)を有し、前記中間エレメント(66)は、一方側で前記スピンドル(12)または前記スピンドルナット(16)と連結し、他方側で前記駆動ギア(28)と連結し、前記駆動ギア(28)のトルクを前記スピンドル(12)または前記スピンドルナット(16)に伝達する請求項9または10に記載するスピンドル駆動装置(10)。
【請求項12】
前記中間エレメント(66)は、少なくとも一つの軸受部(34、64)を外周面に収容する請求項11に記載するスピンドル駆動装置(10)。
【請求項13】
前記中間エレメント(66)は、半径方向外側に向けて突設された突起部(68)を有し、前記突起部(68)は前記軸受部(34、64)および/または前記駆動ギア(28)が軸方向に動かないように固定する請求項11または12に記載するスピンドル駆動装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明、自動車のドアおよび/またはテールゲートを開閉するのに用いる駆動装置のようなスピンドル駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
市販品として一般的に知られているスピンドル駆動装置は、スピンドル駆動装置の長手方向の一端にスピンドルが連結し、スピンドル駆動装置の長手方向の他端にスピンドルに螺合するスピンドルナットが連結する構成を有する。スピンドル駆動装置の長手方向の両端はそれぞれ上位機構部、すなわちスピンドル駆動装置に属さない機構部と連結する。スピンドルが回転する時、その回転の方向によりスピンドル駆動装置の長手方向の両端間の距離は増大または縮小する。スピンドルは駆動ユニットにより駆動され、この駆動ユニットはスピンドルに配置された駆動機構部の筺体の中に収容される。駆動機構部の筺体は、スピンドル駆動装置が伸長または縮小して、それに伴う一対の上位機構部間の距離が変位するときに、駆動機構部の筺体が一方の上位機構部がスピンドル駆動装置を介して他方の上位機構部に及ぼす引張り力および/または圧縮力の少なくとも一部を吸収するように配置される。そのため、このような駆動機構部の筺体は安定でなければならないし、スピンドル駆動装置を通る力の流れの中に入っていなければならない。したがって、このようなスピンドル駆動装置の製造工数および製造コストは高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願発明の目的は前記した欠点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的は、スピンドル駆動装置であって、 外周ねじ部を有し、前記スピンドル駆動装置を上位機構部、すなわち前記スピンドル駆動装置に属さない機構部に連結する第一連結ユニットと連結したスピンドルと、 前記スピンドルの外周ねじ部と螺合し、前記スピンドル駆動装置を前記スピンドル駆動装置に属さない上位機構部と連結する第二連結ユニットと連結したスピンドルナットと、 前記スピンドルまたは前記スピンドルナットを駆動する駆動ユニット、前記駆動ユニットの出力シャフトおよび内部に駆動機構部が入っている駆動機構部筺体を有する駆動機構部と、前記スピンドルまたは前記スピンドルナットを前記駆動機構部筺体に対して回転可能に支持する少なくとも一つの軸受部と、前記第一連結ユニットを前記スピンドルに連結させ、または前記第二連結ユニットを前記スピンドルナットに連結させて、これら1対の連結されるエレメントが少なくとも前記スピンドルの軸方向において互いに変位しないようにする結合エレメントと、を含み、一方の前記上位機構部から他方の前記上位機構部へ前記スピンドル駆動装置を介して伝達される力を前記駆動機構部筺体は受けないスピンドル駆動装置の発明によって達成される。
【0005】
ここで次のことは当然に気がつくことである。本願発明の特徴である「一方の前記上位機構部から他方の前記上位機構部へ前記スピンドル駆動装置を介して伝達される力を前記駆動機構部筺体は受けない」は、車両のテールゲートのような上位機構部の一つのそれ自身の重量によって生じたり、または車両のテールゲートを動かす時に使用者がスピンドル駆動装置を操作することによって生じる軸方向力の形で発生する力、および駆動機構部筺体の中に既知の従来技術のスピンドル駆動装置がある場合にスピンドル駆動装置を駆動する駆動ユニットによって発生する力が本願発明のスピンドル駆動装置に含まれる駆動機構部筺体によって吸収されるということを指す。
【0006】
本願発明のスピンドル駆動装置の駆動機構部筺体は従来技術にかかる駆動機構部筺体に比べて薄い構成になっている。本願発明のスピンドル駆動装置の駆動機構部筺体は外力に対するその駆動機構部筺体内に収容されている部品の安全機能を果たしているのは明らかである。しかし、例えば駆動ユニットがある領域を強化したような部分的に補強された駆動機構部筺体を用いることにより、この必要条件を満たしてもよい。本願発明にかかる駆動機構部筺体は、一対の連結ユニットの間の力のフローの一部とはなっていないので、駆動機構部筺体の製造の公差およびスピンドル駆動装置に駆動機構部筺体を組み付ける公差は緩和される。これらの手段によって、本願発明のスピンドル駆動装置の製造コストが効果的に低減する。
【0007】
前記したように本願発明の駆動機構部筺体は一対の連結ユニットの間の力のフローの一部になっていないという事実のために、ここで用いられる駆動機構部筺体が受ける変形を既知のスピンドル駆動装置に比べて小さくすることが可能になっている。そのため、スピンドルやスピンドルナットのような被駆動エレメントに対する駆動ユニットの軸受精度を高くすることができる。このように高い精度で支持できるため、支持の精度が低いために生じるノイズを減らすことができるし、完全に無くすることができる場合もある。
【0008】
結合エレメントは、駆動機構部筺体と別体のエレメントによって構成されてよい。
【0009】
結合エレメントは、例えば金属製としてよく、特に鋼製または亜鉛ダイキャスト製としてよい。
【0010】
結合エレメントは、また概ね環状とすることができるが、他の多角形の形状にすることも考えられる。
【0011】
駆動ユニットは、電気モーターとするのが有利である。しかし、油圧または空気圧の駆動ユニットも考えられる。
【0012】
ここで次のことに気がつくはずである。スピンドル駆動装置はさらに圧縮ばね、または引張りばねのようなばねエレメントを含むものでよい。このばねエレメントはスピンドル駆動装置の長手方向両端が一方向に相対的に変位するときにエネルギを蓄え、またスピンドル駆動装置の長手方向両端が逆方向に相対的に変位するときに蓄えられたエネルギを解放し、スピンドル駆動装置の長手方向両端を逆方向に変位させるのに駆動ユニットが必要とするパワーを低減させてもよい。特に、スピンドル駆動装置が上位機構部を持ち上げる時、すなわち重力に抗する作用をする時に、ばねエレメントはスピンドル駆動装置を支持する。したがって、スピンドル駆動装置を介して一対の上位機構部の一つからもう一つへ力が伝達されるという特徴は、本願発明においては、これらの伝達される力には、ばねエレメントに蓄えられたエネルギによって生じるスピンドル駆動装置に作用する力も含まれるものとして解釈する必要がある。
【0013】
スピンドル駆動装置、特にスピンドルが駆動されるスピンドル駆動装置においての動作特性を向上させるために、該スピンドル駆動装置は少なくとも2つの軸受部を含むものとしてよい。これらの軸受部によって第一または第二連結ユニットに対してスピンドルまたはスピンドルナットが支持され、一つの軸受部は固定軸受とし、他の軸受部は緩い軸受としてよい。
【0014】
結合エレメントの利点は第一連結ユニットまたは第二連結ユニットを少なくとも一つの軸受部に連結させることである。この連結において、前記少なくとも一つの軸受部は軸方向に変位できない形で、スピンドルまたはスピンドルナットに連結される。
【0015】
したがって、前記結合エレメントは、スピンドルまたはスピンドルナットを軸受部に対して押す、または軸受部から引くことによって軸受部にかかる引張力および/または圧縮力を吸収し、これらの力を第一または第二連結ユニットに伝達し、さらにこれらの連結ユニットを介して対応する上位機構部に伝達するものでよい。この目的のため、前記結合エレメントはその外周で軸受部と連結するものでよい。この軸受部がボール軸受の場合、内側の軸受リングを前記スピンドルまたはスピンドルナットと連結させ、外側の軸受リングを前記結合エレメントと連結させてよい。前記結合エレメントはクリップまたはケージのような対応する前記連結ユニットに対して前記軸受部が軸方向に動かないように該軸受部を固定している。前記連結ユニットは、前記結合エレメントが係合するカラー部またはベース部を有している。
【0016】
本願発明の一つの実施形態においては、前記結合エレメントは少なくとも一つの内側に突設した突起部を備え、この突起部によって前記結合エレメント内部に収容された部品が軸方向に動かないように固定される。前記突起部は、例えば成形法によって形成してよい。特に、少なくとも一つの内側に突設した前記突起部は、前記結合エレメントの両端の一端に備えられる半径方向内側に突設したリングであるので、前記突起部を形成するのにこれ以外エレメントは必要ない。
【0017】
前記結合エレメントは、該結合エレメントの内部に収容された部品が軸方向に動かないように固定する少なくとも一つのばねリングを有するのが好ましい。詳細にいうと、前記結合エレメントに内側に突設した突起部とばねリングとを両方とも有するので、例えばスピンドル駆動装置の部品を前記結合エレメントの中に入れていき、前記結合エレメントの突起部に当て、その後前記ばねリングによって、挿入された部品が前記結合エレメントの中に挿入された方向と逆の方向に動かないように固定する。前記ばねリングは前記結合エレメントの内面上に形成された溝と係合する。例えば、この溝は前記結合エレメントの内面を一周する。
【0018】
また、スピンドル駆動装置の部品を前記結合エレメントの中に入れた後に生じる前記結合エレメントの変形を前記ばねリングの代わりにしてもよい。
【0019】
本願発明において、駆動ユニットの出力シャフトは概ねスピンドルと垂直にしてもよい。例えば、自動車のテールゲートはこの変形例に都合のよい空間的な条件を満たす。自動車のテールゲートの場合、駆動ユニットをテールゲートの回転軸と概ね平行に配置できることは好都合である。前記説明した本願発明においては、駆動ユニットの出力シャフトもまた駆動装置のスピンドルと平行にしてよいのは明らかである。
【0020】
本願発明のスピンドル駆動装置を車両のテールゲートおよびボディのような2つの上位
機構部の間に確実に取り付け、取り付けられたスピンドル駆動装置の長さを変化させて、これらの上位機構部を所定の回転軸周りに回転させるために、第一連結ユニットをスピンドルに対して回転可能に取り付け、さらに/または第二連結ユニットをスピンドルナットに対して回転可能に取り付けてもよい。駆動ユニットにより、本願発明に含まれるスピンドルとスピンドルナットのどちらかが回転するかによって、駆動されない部品が対応する連結ユニットに動かないように連結される。第一および第二連結ユニットの両方を回転可能にスピンドル駆動に配置してもよいのは明らかである。
【0021】
駆動機構部筺体は複数の部品、特に2つの部品により構成される。駆動機構部、結合エレメントおよび少なくともスピンドルの一部を囲むように、これらの部品は互いに連結される。したがって、前記駆動機構部筺体は前記スピンドルの一部に前記スピンドルと平行に挿入され、前記結合エレメントを囲み、ピンドル駆動装置の長手方向一端に当てて、その後、例えばもう一つの筺体部品にねじ止めして前記駆動機構部筺体をスピンドル駆動装置に固定することができる。本願発明にかかる駆動機構部筺体は、埃や損傷から中に収容される部品を保護するだけで、前述した力以外に前述したスピンドル駆動装置の駆動によって生じる力を吸収する必要がないので、同駆動機構部筺体のスピンドルと前記結合エレメントを囲む部分は極めて自由に構成できる。したがって、前記駆動機構部筺体の複数の筺体部品は、互いに挿しこむようにしたり、互いに接着剤でくっつけたりしてもよく、そうすれば複数の筺体部品同士を力をかけてはめ合せたりする必要がない。
【0022】
詳細には、前記スピンドルは支持エレメントを有してもよく、この支持エレメントは、特にリベット止めにより前記スピンドルに連結し、前記軸受部が軸方向に前記スピンドルに対して動かないように固定する。この支持エレメントは特に単純で、しかも低コストで、前記軸受部および前記軸受部の先にある前記結合エレメントを前記スピンドルに対して軸方向に動かないように固定するものである。ディスク形状の前記支持エレメントを例えば前記スピンドルに固定するために、具体的には、前記スピンドルを変形させてキャップの形状にしてよい。前記結合エレメント内部に収容された前記軸受部は、半径方向内側では前記支持エレメントと連結し、半径方向外側では前記結合エレメントと連結する。したがって、前記スピンドルと前記結合エレメントに隣接する前記連結ユニットの間に作用する引張力は、前記スピンドルから前記支持エレメントを介して前記軸受部に、前記軸受部から前記結合エレメントに、さらに前記結合エレメントから前記連結ユニットに伝達される。既に述べたボール軸受の場合、前記支持エレメントはボール軸受の半径方向内側リングに連結し、一方、ボール軸受の半径方向外側リングは前記結合エレメントに連結する。
【0023】
スピンドル駆動装置は駆動ギアを有し、この駆動ギアが回転することによってスピンドルまたはスピンドルナットが回転するように、駆動ユニットが前記駆動ギアに作用するものでよい。例えばキー溝付きシャフト等による形状はめ合いによりトルクを伝達するために、この駆動ギアはスピンドルに連結するものでよい。
【0024】
詳細には、前記駆動ギアは出力シャフトに連結したウォームシャフトと螺合するウォームギアとしてよい。駆動ユニットの出力シャフトの回転速度を減速させるように、前記したように形成されたウォームギアの段階の特徴は低ノイズ出力である。
【0025】
スピンドル駆動装置は中間エレメントを含んでもよい。この中間エレメントの一方側はスピンドルまたはスピンドルナットと連結し、他方側は駆動ギアに連結し、この駆動ギアのトルクを前記スピンドルまたはスピンドルナットに伝達する。前記中間エレメントと前記駆動ギアとは単純な摩擦合わせまたは予荷重付き型ばめによって結合され、そのためこの結合部では過負荷クラッチが形成される。すなわち、例えば前記スピンドルまたはスピンドルナットがブロックされて前記駆動ギアの連続動作がブロックされる場合に、前記中間エレメントと前記駆動ギアの間に滑りがおこる。したがって、スピンドル駆動装置特に駆動ユニットは過負荷によるダメージから保護される。
【0026】
前記中間エレメントはその外周に少なくとも一つの軸受部が収容される。したがって、この中間エレメントはスピンドル駆動装置の所定の機能用に最適化されたスピンドルまたはスピンドルナットと標準サイズの軸受との間のアダプタとして用いられる。標準の軸受部を用いることによって、本願発明のスピンドル駆動装置の製造コスト低減する効果が生じる。
【0027】
前記中間エレメントは半径方向外側に向かって延設された突起部を備えてよい。この突起部は軸受部または/および駆動ギアを軸方向に動かないように固定する。したがって、軸受部の半径方向内側は、例えば前記中間エレメントの突起部とスピンドルまたはスピンドルナットの突起部の間に動かないように固定される。代わりに、または追加として、前記中間エレメント上に収容される軸受部は、一方側は前記中間エレメントの突起部により、他方側は支持エレメントまたはスピンドル自身の一端により、中間軸受部の半径方向内側に固定される。これらの突起部を用いて前記中間エレメントを形成することによって、前記軸受部を簡便に固定することができる。
【0028】
最後になるが、スピンドルを金属製、特に鋼製にし、スピンドルナットを樹脂製、特にPOM(ポリオキシメチレン樹脂)製にし、駆動機構部筺体を樹脂製、特にPBT/PBTGF(ポリブチレンテレフタレート/ガラス繊維入ポリブチレンテレフタレート)製とし、支持エレメントを金属製、特に鋼製にし、駆動ギアを樹脂製、特にPOM製にし、結合エレメントを金属製、特に鋼製にし、さらに連結ユニットを樹脂製、特にPOM製にするのが好ましいことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本願発明は添付した図面を用いて、以下に説明される。
【
図1A】
図1Aは、第一実施形態にかかる本願発明のスピンドル駆動装置の詳細部分の横断面図である。
【
図1B】
図1Bは、第一実施形態にかかる本願発明のスピンドル駆動装置を介して伝達される引張力および圧縮力が示された
図1Aの横断面図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態にかかる本願発明のスピンドル駆動装置の横断面図である。
【
図3】
図3は、第二実施形態にかかる本願発明のスピンドル駆動装置の詳細部分の横断面図である。
【
図4】
図4は、本願発明のスピンドル駆動装置の駆動ユニットの横断面図である。
【
図5】
図5は、本願発明のスピンドル駆動装置の側面図である。
【
図6】
図6は、断面図が断面I-Iおよび断面IV-IVであることがわかる、スピンドルの軸方向から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1Aにおいて、本願発明のスピンドル駆動装置の概略が符号10で示されている。
【0031】
図1A~
図2からわかるように、スピンドル駆動装置10は、外側ねじ部を備えるスピンドル12を有し、このスピンドル12は上位機構部、すなわち、例えば車両のテールゲートのようなスピンドル駆動装置10に属さない機構部にスピンドル駆動装置10を連結させる第一連結ユニット14と連結している。スピンドル駆動装置10は、さらにスピンドル12の外側ねじ部と螺合するスピンドルナット16を有し、このスピンドルナット16は、上位機構部、すなわち、例えば車両ボディのようなスピンドル駆動装置10に属さない上位機構部にスピンドル駆動装置10を連結させる第二連結ユニット18と連結している。
【0032】
ここで、
図2および
図3は、
図1Aおよび
図1Bと異なる本願発明のスピンドル駆動装置の第二実施形態を示していることがわかるはずである。しかしながら、これら両方の実施形態は
図1A、
図1Bおよび
図3の詳細部分のみが相違するものであり、相違する部分については後で説明する。
【0033】
スピンドル駆動装置10は、さらに駆動機構部20を有し、この駆動機構部20が
図2の横断面図中にあるのがわかるし、また
図4の断面図中にあるのもわかる。駆動機構部20は駆動ユニット22を有する。駆動ユニット22はこの場合電気モーターで構成され、スピンドル12を駆動する。
【0034】
スピンドル12を駆動するために、駆動ユニット22の出力シャフト24はウォームシャフト26を支持し、一方このウォームシャフト26は、駆動ギア28と係合し、ウォームギアを構成している。
【0035】
駆動ギア28はキー溝を有するシャフト32を介して、スピンドル32と回転不能な状態で連結している。
【0036】
駆動機構部20は、樹脂製の駆動機構部筺体の内部に収容される。
【0037】
駆動ギア28とスピンドル12は軸受部34によって環状結合エレメント36と駆動機構部筺体に対して回転可能に支持されている。
【0038】
結合エレメント36は、第一連結ユニット14をスピンドル12に連結させる。この連結は、第一連結ユニット14とスピンドル12とが互いにスピンドル12の軸方向で変位しないようにするものである。
図1Aの実施例においては、軸受部34はボール軸受であり、結合エレメント36は軸受部34の外側の軸受リングと係合し、同軸受リングを締め付けることによってカラー部またはベース部38に連結させている。カラー部またはベース部38には第一連結ユニット14がねじ部44によってねじ止めされる。結合エレメント36はこの連結のためその長手方向の両端に端部40、42を有し、これらの端部40、42は半径方向内側に向かって変形する。このようにして、ベース部38と軸受部34は結合エレメント36によって互いに連結される。ベース部38は金属製、特に鋼製でよい。
【0039】
軸受部34の半径方向内側リングはスピンドル12に金属ディスクで形成された支持エレメント46によって固定される。この固定の目的で、スピンドル12の
図1Aにおける左端はキャップのように形成されている。このキャップによって、スピンドル12に対して、支持エレメント46さらに軸受部34および駆動ギア28が、軸方向に動かないように固定される。
【0040】
図1Bからわかるように、引張力は、スピンドル駆動装置10に連結する一対の上位機構部の間に作用し、したがって両方の連結ユニット14、18を介してスピンドル駆動装置10に作用する。この引張力は、ベース部38、結合エレメント36、軸受部34および支持エレメント46を介して、第一連結ユニット14からスピンドル12に伝達される。
【0041】
一対の上位機構部に間に働く引張力に対応する逆向きの圧縮力は、スピンドル12から駆動ギア28、軸受部34およびベース部38を介して第一連結ユニット14に作用する。
【0042】
図2に示すように、これらの力はスピンドル駆動装置10の右側部分ではスピンドル12からスピンドルナット16およびスピンドルナット16と連結する鋼管50を介して第二連結ユニット18に向けられている。
【0043】
前記した力の説明図により、駆動機構部筺体30は上位機構部の一つからスピンドル駆動装置10を介してもう一つの上位機構部に伝達される力を受けない。
【0044】
したがって、駆動機構部筺体30は、例えば樹脂のような軽い材料で作ってもよいし、筺体形状の切り欠きの作用を考慮しないで自由な形状にしてもよい。
【0045】
ここで示す実施形態の駆動機構部筺体30は筺体部材30aと筺体部材30bとを含む。筺体部材30aと筺体部材30bとは、ねじ52によって互いに固定されている。
【0046】
ねじ52の代わりに、またはボルト52に加えて、筺体部材30aと筺体部材30bとを互いに連結するのに、レーザー溶接や接着剤による接着のような連結方法を用いてもよい。
【0047】
図2のスピンドル駆動装置の横断面図から、スピンドルナット16がスピンドル12と螺合している様子がわかる。
【0048】
スピンドル12が回転すると、その回転の向きとスピンドルナット12のねじのタイプにしたがって、スピンドルナット16は
図2中で左または右に変位し、その結果、鋼管50を介して、第二連結ユニット18は第一連結ユニット14の方に、または第一連結ユニット14から離れるように変位する。
【0049】
図2中のスピンドル12の右端部は、鋼管50の中でPOM(ポリオキシメチレン樹脂)のような樹脂製とすることができるガイドリング54によって支持される。
【0050】
鋼管50は、POMのような樹脂製とすることができるガイドスリーブ56を介して、ガイド管58に入れられて支持される。ガイド管58は、アルミニウムのような金属製とすることができ、その中心軸はスピンドル12と共通となっていて、スピンドル12を部分的に囲んでいる。ガイド管58は、駆動機構部筺体30または第一囲繞管60に連結している。スピンドルナット16は、例えば、長手方向の溝によってガイド管58の内部と係合しているので、ガイド管58がスピンドルナット16の受けるトルクを支える。その結果、スピンドルナット16はガイド管58の中でスピンドル12の軸方向のみに沿って動く。
【0051】
図2において、第一連結ユニット14が第一囲繞管60と連結し、第二連結ユニット18が第二囲繞管62と連結しており、第二囲繞管62は入れ子式で第一囲繞管60の中に入るようにしてよい。
【0052】
第一囲繞管60および第二囲繞管62はともに、例えばPOMのような樹脂製とすることができる。
【0053】
図3に示すスピンドル駆動装置10の実施形態が明示的に引用された前記した実施形態と相違するのは以下の特徴のみである。
【0054】
図3の本願発明のスピンドル駆動装置の実施形態では、軸受部34に加えてスピンドルの耐摩擦特性を良好にするもう一つの軸受部64が与えられている。温度に依存する関連部品の長さのばらつきを補償するため、軸受部34は固定軸受となっているが、軸受部64は緩い軸受になっている。
【0055】
駆動ギア28とスピンドル12の間に中間エレメント66をさらに備え、中間エレメント66はキー溝が形成されたシャフト32によるトルク伝達型のはめ合いによってスピンドル12と連結している。中間エレメント66はスピンドル12と軸受部34、64の間の一種のアダプタとして働き、そのため、軸受部34、64両方が配置される領域におけるスピンドル12の外形を大きくなり、標準サイズの軸受を用いることができる。中間エレメント66はさらにトルク伝達型のはめ合いにより駆動ギア28と連結する。
【0056】
中間エレメント66は突起部68を備え、この突起部68によってその一方側に駆動ギア28と軸受部64が係止され、その他方側に軸受部34が係止され、これらが軸方向で動かなくなる。軸受部34は突起部68の前記他方側で
図1Aの実施形態と同様に支持エレメント46によって軸方向に動かないように係止される。駆動ギア28はその突起部68と反対側の側面で軸受部64によって、スピンドル12に対して軸方向に動かないように止められる。軸受部64はブッシュ70によって、特にその肩部に対して軸方向に動かないように止められている。ブッシュ70をスピンドル12のカラー部によって置き換えることもできるが、ブッシュ70を用いれば組立て作業が容易になる。
【0057】
図3の実施形態がさらに違う点はばねリング72である。ばねリング72は結合エレメント36の溝部74と係合する。結合エレメント36の変形する端部42がベース部38と軸受部34とを軸方向に互いに動かないようにするのと同じ機能をばねリング72は果たすが、一方、ばねリング72を用いた場合は、結合エレメント36を変形させるステップを省略してもよいという利点がある。
【0058】
図4の断面図はブレーキユニット76を示す。ブレーキユニット76はブレーキディスク78とともに隣にあるブレーキパッド80を含む。圧縮ばね82が圧縮力をブレーキパッド80に加え、その結果、ブレーキパッド80とブレーキディスク78との間でこれらの部材の摩擦合せがなされる。スピンドル駆動装置10が完全に引っ込んでいない状態で、スピンドル駆動装置10にかかる、車両のテールゲートのような上位機構部の重量をスピンドル駆動装置10が支持することで、前記テールゲートが不意に動くことがないように、すなわち、スピンドル駆動装置10を制御された状態で起動させることなく前記テールゲートが動くことがないように、ブレーキユニット76は駆動ユニット22のヒステリシスを増大させてもよい。
【0059】
ブレーキユニット76が一方向にのみ作用するようにしてもよい。このような構成は、例えばスピンドル駆動装置10を伸長させている間は、ブレーキユニット76がスピンドル駆動装置10の縮小にブレーキかけることによってできる。
【0060】
摩擦ブレーキとして構成されているブレーキユニット76ではなく、磁気ブレーキユニット76のような他のブレーキシステムを用いてもよいことは明らかである。
【0061】
駆動ユニット22の出力シャフト24がスピンドル12と直角であることがわかる。
【0062】
図4に示す駆動機構部筺体30の一部は、駆動機構部筺体30の筺体部材30aの一部と一体になっており、さらに駆動機構部筺体30の筺体部材30bの一部と一体になっており(
図5参照)、駆動機構部筺体30内に収容される駆動ユニット22のような部品を固定するために
図4の上端部と下端部にそれぞれ閉塞キャップ84、86を有する。
【0063】
図5はスピンドル駆動装置10の非断面側面図を示す。第二連結ユニット18は囲繞管62と連結し、第一連結ユニット14は囲繞管60と連結しているのがわかる。
【0064】
図5中では特に、駆動機構部筺体30が特に駆動ユニット22を収容する部分の中にあり、囲繞部分30a、30bからなるものであることがわかる。囲繞部分30a、30bはボルトねじ52によって互いに連結されている。
【0065】
駆動機構部筺体30の
図5の仕切りの代わりに、駆動機構部筺体30の90°回転した仕切りであって、例えば少なくともその一部が断面線IV-IVに沿って延設される仕切りが
考えられる。
【0066】
図5中で、駆動ユニット22を収容する駆動機構部筺体30の上端部と下端部に閉塞キャップ84、86があるのがわかる。
【0067】
図6は、スピンドル12の軸と平行な方向から見たスピンドル駆動装置10の平面図である。断面I-Iは
図1Aから
図3の断面図であり、断面IV-IVは
図4の断面図であるこ
とがわかる。さらにスピンドル駆動装置10または駆動機構部筺体30が支持ブラケット88を介して第一連結ユニット14に連結した上位機構部と連結しており、そのため、このようなスピンドル駆動装置においては通常よくあることであるが、スピンドル駆動装置10または駆動機構部筺体30が上位機構部に対して回転不能になっていることがわかる。
【0068】
支持ブラケット88特に鋼のような金属製でよい。
【0069】
支持ブラケット88は好ましくは、第一連結ユニット14の孔部と位置が合う貫通孔であって、上位機構部のピンによって連結するための貫通孔を有するものでよい。