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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】文字板、太陽電池付き時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/06 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
G04B19/06 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018140315
(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公開番号】P2020016574
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蟻田 真里
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎也
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-127666(JP,A)
【文献】特開2012-150051(JP,A)
【文献】特開2005-227047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/06
G04C 10/02
G04G 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と下面を有する単一の板から成り、太陽電池付き時計用の光透過性を有する文字板であって、
記下面は、前記上面側に窪む谷条部と、前記谷条部に隣接して前記下面側に突出する山条部とからなる凹凸を含み、
前記文字板の厚み方向における前記谷条部の深さと前記山条部の高さは等しく、
断面視における、前記厚み方向に交差する方向における前記谷条部の幅は、前記山条部の幅よりも大きく、
前記凹凸は、前記下面に直接形成されると共に、前記文字板の下方の空気層に露出している、
文字板。
【請求項2】
前記下面は、前記谷条部の一部であって最も窪んだ部分である底部と、前記山条部の一部であって最も出っ張った部分である頂部とを含み、
前記底部は、前記文字板の厚み方向における前記谷条部と前記山条部との中心位置よりも上方に位置しており、
前記頂部は、前記文字板の厚み方向における前記谷条部と前記山条部との中心位置よりも下方に位置しており、
前記文字板の厚み方向における前記底部の深さと前記頂部の高さは等しく、
断面視における、前記谷条部の底部の曲率半径は、前記山条部の頂部の曲率半径よりも大きい、
請求項1に記載の文字板。
【請求項3】
断面視における、前記谷条部の底部の形状は丸みを帯びた形状である、
請求項に記載の文字板。
【請求項4】
断面視における、前記山条部の頂部の形状は丸みを帯びた形状であって、
前記底部は、前記頂部よりも大きく丸みを帯びている、
請求項3に記載の文字板。
【請求項5】
前記文字板の上面は平面であり、
断面視における、前記上面に対する前記底部の最大傾斜角度は、前記上面に対する前記頂部の最大傾斜角度よりも小さい、
請求項2~4のいずれか1項に記載の文字板。
【請求項6】
前記谷条部及び前記山条部は、前記下面に同心円状又は渦巻き状に形成される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の文字板。
【請求項7】
ポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂からなる、
請求項1~6のいずれか1項に記載の文字板。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の文字板と、
前記文字板の前記下面側に配置される太陽電池と、
を含む、
太陽電池付き時計。
【請求項9】
前記凹凸は、平面視において少なくとも前記太陽電池と重なる位置に形成される、
請求項8に記載の太陽電池付き時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字板、太陽電池付き時計に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池付き時計においては、太陽電池に光を入射させるため、光透過性を有する文字板が用いられている。太陽電池は独特の濃紫色を有しており、文字板から太陽電池が透けて見えると美観を損なう可能性がある。そこで、例えば、特許文献1に開示される文字板においては、断面形状が略直角である山条部と谷条部とからなる凹凸を下面に形成することにより、光を分散、拡散させて太陽電池の色調を消す工夫を施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-174948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるように、文字板の下面に凹凸を形成した場合、文字板における光の反射率が高くなり、文字板の下側に設けられる時計の内部構造の視認性を下げることができる一方で、光の透過率が低くなることにより、太陽電池における発電量が低下してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、美観を損なうことなく、かつ発電量を確保可能な太陽電池付き時計用の文字板、及び太陽電池付き時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下の通りである。
【0007】
(1)太陽電池付き時計用の光透過性を有する文字板であって、前記文字板の下面は、前記文字板の上面側に窪む谷条部と、前記谷条部に隣接して前記下面側に突出する山条部とからなる凹凸を含み、前記文字板の厚み方向における前記谷条部の深さと前記山条部の高さは等しく、断面視における、前記厚み方向に交差する方向における前記谷条部の幅は、前記山条部の幅よりも大きい、文字板。
【0008】
(2)(1)において、断面視における、前記谷条部の底部の曲率半径は、前記山条部の頂部の曲率半径よりも大きい、文字板。
【0009】
(3)(1)又は(2)において、断面視における、前記谷条部の底部の形状は丸みを帯びた形状である、文字板。
【0010】
(4)(3)において、断面視における、前記山条部の頂部の形状は丸みを帯びた形状であって、前記底部は、前記頂部よりも大きく丸みを帯びている、文字板。
【0011】
(5)(1)~(4)のいずれかにおいて、前記文字板の上面は平面であり、断面視における、前記上面に対する前記谷条部の底部の最大傾斜角度は、前記上面に対する前記山条部の頂部の最大傾斜角度よりも小さい、文字板。
【0012】
(6)(1)~(5)のいずれかにおいて、前記谷条部及び前記山条部は、前記下面に同心円状又は渦巻き状に形成される、文字板。
【0013】
(7)(1)~(6)のいずれかにおいて、ポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂からなる、文字板。
【0014】
(8)(1)~(7)のいずれかに記載の文字板と、前記文字板の前記下面側に配置される太陽電池と、を含む、太陽電池付き時計。
【0015】
(9)(8)において、前記凹凸は、平面視において少なくとも前記太陽電池と重なる位置に形成される、太陽電池付き時計。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の(1)~(9)の側面によれば、美観を損なうことなく、かつ発電量を確保可能な太陽電池付き時計用の文字板、及び太陽電池付き時計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る電子時計を示す平面図である。
図2図1のA-A切断線における断面図である。
図3】本実施形態の文字板及び太陽電池の概要を示す断面図である。
図4】本実施形態の文字板を下面側から見た平面図である。
図5】従来例の文字板に形成される凹凸の谷条部における光の透過と、本実施形態の文字板に形成される凹凸の谷条部における光の透過との比較について説明する模式図である。
図6】本実施形態の文字板に形成される凹凸の谷条部における光の透過について説明する模式図である。
図7】本実施形態の文字板に形成される凹凸の山条部における光の透過について説明する模式図である。
図8】本実施形態における光の反射、透過について説明する模式図である。
図9】本実施形態の文字板の下面の凹凸の形状の詳細を説明するための模式図である。
図10】本実施形態の文字板の下面の凹凸の形状の詳細を説明するための模式図である。
図11】本実施形態の文字板の下面の凹凸の形状の詳細を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態という)について図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る太陽電池付き時計を示す平面図である。図2は、図1のA-A切断線における断面図である。なお、図2においては、後述の竜頭13の図示は省略しており、また、指針の配置を分かりやすくするため、分針16が9時の方向を向いており、時針15及び秒針17が3時の方向を向いている状態を示している。
【0020】
図1には、太陽電池付き時計1の外装(時計ケース)である胴10、胴10内に配置された文字板14、時刻を示す指針である時針15、分針16、秒針17が示されている。また、文字板14には所定の位置に時字49が設けられている。また、胴10の12時側及び6時側の側面からは、バンドを固定するためのバンド固定部11が伸びている。また、胴10の3時側の側面にはユーザが種々の操作を行うためのボタン12、竜頭13が配置されている。
【0021】
なお、図1に示した時計のデザインは一例である。ここで示したもの以外にも、例えば、胴10を丸型でなく角型にしてもよいし、ボタン12や竜頭13の有無、数、配置は任意である。また、本実施形態では、指針を時針15、分針16、秒針17の3本としているが、これに限定されず、秒針17を省略してもよいし、あるいは、曜日、タイムゾーンやサマータイムの有無、電波の受信状態や電池の残量、各種の表示を行う指針や、日付表示等を追加したりしてもよい。
【0022】
なお、本明細書では、太陽電池付き時計1として、GPS(Global Positioning System)衛星などの日付や時刻に関する情報を含む衛星信号を送信する衛星から当該衛星信号を受信し、それに含まれる日付や時刻に関する情報に基づき、時計内部に保持される内部時刻を修正する機能を有している衛星電波腕時計を示す。ただし、これに限られるものではなく、一般的な標準電波を受信して内部時刻を修正する電波時計であってもよいし、こうした時刻修正機能を備えない時計であってもよい。
【0023】
図2に示すように、太陽電池付き時計1は、文字板14を覆うようにガラス等の透明材料により形成された風防32を有し、風防32は胴10に取り付けられている。また、風防32の反対側においては裏蓋36が胴10に取り付けられている。本明細書では、以降、時計の風防32が配置される側(図1における紙面手前側)を上側、裏蓋36が配置される側(図1における紙面奥側)を下側と呼ぶ。
【0024】
文字板14の下側には、太陽電池30が配置されており、文字板14を透過して上側から太陽電池30に入射される光により発電がなされる。そのため、文字板14はある程度光線を透過する材質で形成される。例えば、文字板14はポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂からなるとよい。また、それら樹脂に限らず、透明な樹脂であれば良く、例えば、フッ化樹脂やエチレン系樹脂等を使用しても良い。
【0025】
本実施形態においては、図1の破線で示すように、太陽電池30は概略円形をなし、10時方向から2時方向が扇状に切り欠かれている。そして、文字板14の下側において、この切り欠かれた部分(太陽電池30が存在しない領域)に衛星信号を受信するためのパッチアンテナ20が配置されている。このように、パッチアンテナ20を、平面視において太陽電池30と重ならないように配置することにより、太陽電池30に含まれる電極によるパッチアンテナ20の受信感度への影響を抑制することができる。なお、太陽電池の形状は扇形の切り欠きが形成されるものに限られるものではない。例えば、中央部が切りかかれたリング形状(ドーナツ形状)の太陽電池であってもよいし、リング形状の一部が切りかかれたC字形状の太陽電池であってもよい。さらに、外形が円状のものに限られるものでもなく、角型の外形を有する太陽電池であっても構わない。
【0026】
図2に示すように、太陽電池付き時計1は、さらに、文字板14と太陽電池30の間に設けられる半透過反射板47、太陽電池30の下側に設けられるムーブメント38を有する。ムーブメント38は、指針を駆動するための輪列とモータ、時刻を計時する水晶振動子を含む時計回路、太陽電池付き時計1全体を制御するコントローラ等を地板と呼ばれる枠に一体に組み付けたものである。ムーブメント38は、ムーブメント38に取り付けられた蓄電池から電力を得て動作する。蓄電池は、ムーブメント38に電力を供給すると同時に、太陽電池30により発電された電力を蓄積するものであり、例えば、ボタン型のリチウム二次電池である。
【0027】
本実施形態においては、太陽電池30は、ムーブメント38に一体的に設けられている。また、ムーブメント38には指針軸が文字板14の上面から突出するように設けられており、その先端に秒針17、分針16、時針15が取り付けられている。そして、それらを覆うようにして風防32が胴10に固定されている。
【0028】
次に、図3図4を参照して、本実施形態の文字板14の構成について説明する。図3は、本実施形態の文字板及び太陽電池の概要を示す断面図である。図4は、本実施形態の文字板を下面側から見た平面図である。
【0029】
なお、文字板14と太陽電池30との間には、図2で示したように、入射光を適度に透過、反射させるために半透過性反射板47が設けられるとよいが、必須の構成ではないため、図3においては、半透過性反射版47の図示は省略する。また、図3においては、図が複雑になるのを避けるためハッチングを省略する。また、図3に示すように、文字板14の下面と太陽電池30との間の空間は空気層24となっている。文字板14と空気層24とでは屈折率が異なるため、文字板14の下面と空気層24との界面において、光は屈折又は反射することとなる。
【0030】
本実施形態においては、文字板14の下面には、上側に窪んだ谷条部141と、谷条部141に隣接して下側に突出した山条部142とからなる凹凸が形成されている。このように文字板14の下面に凹凸を形成する理由は、文字板14の下面と空気層24との界面において光を反射させることにより外部から見て太陽電池30等の文字板14の下側に設けられる内部構造を目立たないようにするためである。凹凸の高さやピッチは数十μm~百数十μm程度であるとよい。
【0031】
なお、本実施形態においては、文字板14の下面のうち、最も窪んだ箇所を底部141aと呼び、最も出っ張った箇所を頂部142aと呼ぶこととする。また、本実施形態においては、谷条部141は、文字板14の厚み方向における底部141aと頂部142aとの中間よりも上側の部分であり、山条部142は、文字板14の厚み方向における底部141aと頂部142aとの中間よりも下側の部分であると定義する。すなわち、本実施形態においては、文字板14の厚み方向における、谷条部141の深さと山条部142の高さは等しい。なお、谷条部141と山条部142の定義の詳細については、図9を参照して後述する。
【0032】
また、本実施形態においては、図3に示すように、断面視における谷条部141の底部141aが、山条部142の頂部142aよりも大きく丸みを帯びるように凹凸を形成した。言い換えると、断面視における谷条部141の底部141aの曲率半径が、山条部142の頂部142aの曲率半径よりも大きくなるように凹凸を形成した。
【0033】
凹凸は、文字板14の下面に、図4(a)に示すように同心円状に形成されてもよいし、図4(b)に示すように渦巻き状に形成されてもよい。なお、図4(a)、図4(b)においては、実線が山条部142の頂部142aを示しており、実線の間の部分が谷条部141の底部141aを示している。ただし、図4(a)、図4(b)に示す凹凸の形状は一例であり、例えばストライプ状や放射状に形成されてもよし、また、一様な模様に限られるものでもなく、装飾的な模様が形成されるものであってもよい。また、図4(a)、図4(b)においては、文字板14の全領域に凹凸が形成される例について示すが、これに限られるものではなく、少なくとも平面視において太陽電池30と重なる領域に凹凸が形成されていればよい。すなわち、例えば、図1に示すパッチアンテナ20が配置される領域と重なる領域においては、文字板14の下面に凹凸は形成されていなくてもよい。
【0034】
さらに、図5図7を参照して、文字板14に形成される凹凸における光の透過の詳細について説明する。図5は、従来例の文字板に形成される凹凸の谷条部における光の透過と、本実施形態の文字板に形成される凹凸の谷条部における光の透過との比較について説明する模式図である。図6は、本実施形態の文字板に形成される凹凸の谷条部における光の透過について説明する模式図である。図7は、本実施形態の文字板に形成される凹凸の山条部における光の透過について説明する模式図である。
【0035】
文字板14の下面と空気層24との界面において光を反射させるために、文字板14の下面に凹凸を形成することは従来より行われていたが、凹凸の断面形状は、底部と頂部が直角等の角形であった。図5の一点鎖線は、従来例における谷条部の底部を示す。また、図5の破線矢印は、従来例における光の光路を示しており、文字板14の下面と空気層24との界面に入射される入射光l1と、その界面における透過光(屈折光)l2、反射光l3を示している。また、図5の実線矢印は、本実施形態における光の光路であって、文字板14の下面と空気層24との界面に入射される入射光L1と、その界面における透過光(屈折光)L2を示している。
【0036】
ここで、光の反射率は、入射角に依存することが知られている(フレネルの式)。具体的には、界面に入射される光の入射角が大きい程、反射率が大きくなり、入射角が小さい程、反射率が小さくなることが知られている。言い換えると、界面に入射される光の入射角が大きい程、透過率が小さくなり、入射角が小さい程、透過率が大きくなることが知られている。すなわち、界面に垂直に入射される光(入射角0度)の透過率が最も高い。なお、ここで、反射率とは、屈折率が異なる物質間の界面に入射される光束に対する反射される光束の割合である。また、透過率とは、異なる物質間の界面に入射される光束に対する透過される光束の割合である。
【0037】
図5においては、説明を簡易にするため、文字板14の上面145に対して垂直(90度)に入射される光が、谷条部141の底部141aにおける文字板14の下面と空気層24との界面において反射、透過する例について示している。なお、本実施形態においては、文字板14の上面145を平面とした。
【0038】
ここで、従来例においては、谷条部の底部の断面形状は角形となっており、上面145に対して所定の角度で傾斜する斜面が形成される構成となっている。文字板14の上面145に対して垂直に入射される光l1は、底部を形成する斜面に対して、所定の入射角で入射し、その一部が反射される。
【0039】
一方、本実施形態においては、谷条部141の底部141aの断面形状を、丸みを帯びた形状とした。そのため、谷条部141の底部141aの断面形状は、従来例の構成と比較して、文字板14の上面145に対する傾斜が小さい(上面145に対して平行に近い)。したがって、本実施形態においては、従来例と比較して、谷条部141の底部141aと空気層24との界面に入射される光の入射角が小さくなっている。このような構成のため、本実施形態においては、従来例と比較して、谷条部141の底部141aと空気層24との界面における光の反射率が小さく、透過率が大きい。そのため、本実施形態においては、文字板14の下側に配置される太陽電池30まで届く光の量が従来例に比較して多く、太陽電池30における発電量が多い。
【0040】
上記のように、谷条部141の底部141aの断面形状を、丸みを帯びた形状にすることにより、光の透過率を向上させ、太陽電池30における発電量を向上することができるのと同様に、山条部142の頂部142aの断面形状を、丸みを帯びた形状にすることにより、光の透過率を向上させ、太陽電池30における発電量を多くすることができる。しかしながら、以下で説明するように、山条部142の頂部142aの断面形状を、丸みを帯びた形状にすることよりも、谷条部141の底部142aの断面形状を、丸みを帯びた形状にする方が、より発電量の向上を期待できる。そこで、本実施形態においては、断面視における谷条部141の底部141aが、山条部142の頂部142aよりも大きく丸みを帯びるように凹凸を形成した。
【0041】
図6に示すように、谷条部141の底部141aと空気層24との界面には、文字板14の上面145に略平行に進む光も含めて、多方向からの光が入射され、それら光は谷条部141と空気層24との界面を透過する。
【0042】
一方、図7に示すように、山条部142の頂部142aにおいては、頂部142aに対して小さい傾斜角で入射される光(図7中の点線矢印)については、山条部142と空気層24との界面を透過する透過光ではない。図7中の点線矢印で示す光は文字板14の外部から文字板14へ入射されるものであるためである。このように図7中の点線矢印で示す光が、界面における透過光として関与しない分、頂部142aの断面形状を、丸みを帯びた形状とすることによる透過率の向上は、底部141aの断面形状を、丸みを帯びた形状とすることによる透過率の向上よりも効果が小さいといえる。
【0043】
したがって、本実施形態においては、より透過率の向上が見込まれる谷条部141の底部141aの断面形状を、大きく丸みを帯びた形状とした。なお、本実施形態においては、山条部142の頂部142aの断面形状も丸みを帯びた形状としたが、これに限られるものではなく、頂部142aの断面形状については従来例で示したように直角などの角形であっても構わない。また、谷条部141の底部141aは必ずしも丸みを帯びた形状である必要はなく、上面145に対する傾斜が小さい面を有するものであればよい。すなわち、底部141aは、例えば、上面145に平行な平面を含むものであってもよい。
【0044】
さらに、図8図10を参照して、太陽電池30の視認性について説明する。上述のように、文字板14における透過率が高いほど、太陽電池30に多くの光が入射され、発電量が大きくなる。一方で、太陽電池30の表面で反射された反射光の、文字板14における透過率に応じて、ユーザは、文字板14を介して太陽電池30を視認することとなる。ここで、太陽電池30は独特の濃紫色を有しているため、外部から目立たない方が美観上好ましい。また、太陽電池30は、図1で示したように一部が切り欠かれた形状であり、そのような形状が文字板14から透けて視認されるのは美観上好ましくない。また、太陽電池30としてはセル毎に分割されるものがあり、そのような太陽電池30を用いた場合、セル間の分割線が文字板14から透けて見えると美観上好ましくない。すなわち、太陽電池30における反射光が、文字板14を透過しにくい構成の方が、美観上好ましいといえる。
【0045】
図8は、本実施形態における光の反射、透過について説明する模式図である。図8においては、谷条部141の底部141aを透過した透過光L11、山条部142の頂部142aを透過した透過光L12、太陽電池30に入射された透過光のうち太陽電池30で反射された反射光L13、反射光L13のうち谷条部141の底部141aを透過した透過光L14、反射光L13のうち山条部142の頂部142aを透過した透過光L15を示す。なお、図8中の矢印の長さは、相対的な光の量を模式的に表している。
【0046】
透過光L11と透過光L12は、太陽電池30に入射される。それにより太陽電池30において発電が行われると共に、一部が反射光L13として、文字板14側へ反射される。この反射光L13により、ユーザは太陽電池30を視認することとなる。
【0047】
ここで、反射光L13は、文字板14の下面と空気層24との界面に対する入射角が小さい程、透過率が高くなる。そして、反射光L13は、山条部142の頂部142aに対して最も多方向から入射されるため、頂部142aの断面形状が文字板14の上面145に対する傾斜が小さい程、透過率が高くなる。この点に関して、本実施形態においては、山条部142の頂部142aの断面形状は、谷条部141の底部141aの断面形状よりも丸みを帯びていない。そのため、本実施形態においては、反射光L13の文字板14に対する透過率はそれほど大きくなく、太陽電池30は外部から視認しにくく目立たないようになっている。
【0048】
以上述べたように、本実施形態の太陽電池付き時計1の構成によると、文字板14の上面145側から入射される光の透過率が高く、太陽電池30における発電量が向上する。また、本実施形態の太陽電池付き時計1の構成によると、太陽電池30で反射されて文字板14の下面側から上面145側へ向かう光における、文字板14の下面と空気層24との界面における透過率はそれほど高くなく、太陽電池30が外部から目立ちにくい。
【0049】
さらに、図9図11を参照して、本実施形態の文字板14の下面の凹凸の形状の詳細について説明する。図9図11は、本実施形態の文字板の下面の凹凸の形状の詳細を説明するための模式図である。
【0050】
上述のように、従来例の凹凸においては、谷条部の底部と山条部の頂部の断面形状が角形であり、かつ谷条部と山条部とが略同等の外形となっている。本実施形態においては、従来例の角形に丸みを帯びさせた形状を採用するとよい。そして、本実施形態においては、谷条部141の底部141aを、山条部142の頂部142aよりも大きく丸みを帯びた形状とした。図9の実線は、本実施形態の谷条部141と山条部142を示しており、破線は、従来例の谷条部の底部と山条部の頂部を示している。
【0051】
また、上述したように、文字板14の厚み方向における、谷条部141の深さと山条部142の高さが等しいと定義した。従来例においては、図9に示すように、底部と頂部との中間C1を境に、上側の部分が谷条部であり、下側の部分が山条部と定義される。一方、本実施形態においては、底部141aと頂部142aとの中間C2を境に上側の部分が谷条部141であり、下側の部分が山条部142と定義される。谷条部141の丸みが大きい分、中間C2は、中間C1よりも下側に位置することとなる。したがって、図9に示すように、本実施形態において、文字板14の厚み方向に直交(交差)する方向における谷条部141の幅W1は、山条部142の幅W2よりも大きくなっている。
【0052】
また、本実施形態における、谷条部141の底部141aと、山条部142の頂部142aとの関係を別の観点から説明すると、図10に示すように、断面視における、上面145に対する谷条部141の底部141aの最大傾斜角度θ1は、上面145に対する山条部142の頂部142aの最大傾斜角度θ2よりも小さいといえる。なお、ここで、底部141aは、最も窪んだ箇所から所定の長さx1までの領域を示し、頂部142aは、最も出っ張った箇所から所定の長さx2までの領域を示すこととし、x1とx2とは等しい長さであるとする。
【0053】
さらに、本実施形態における、谷条部141の底部141aと、山条部142の頂部142aとの関係を別の観点から説明すると、図11に示すように、断面視における、谷条部141の底部141aの曲率半径R1は、山条部142の頂部142aの曲率半径R2よりも大きいといえる。本出願の発明者の知見によると、曲率半径が大きいほど光の透過率は高くなり、特に底部141aの曲率半径を大きくすることで透過率をより向上することができる。
【0054】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、この実施形態に示した具体的な構成は一例として示したものであり、本発明の技術的範囲をこれに限定することは意図されていない。当業者は、これら開示された実施形態を適宜変形してもよく、本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。
【符号の説明】
【0055】
1 太陽電池付き時計、10 胴、11 バンド固定部、12 ボタン、13 竜頭、14 文字板、141 谷条部、141a 底部、142 山条部、142a 頂部、145 上面、15 時針、16 分針、17 秒針、20 パッチアンテナ、30 太陽電池、32 風防、36 裏蓋、38 ムーブメント、47 半透過反射板、49 時字。
図1
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図11