(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】エンハンスメントモードトランジスタ用ゲート
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20221129BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20221129BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H01L29/80 M
H01L29/80 H
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018151555
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-04-23
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514156563
【氏名又は名称】アイメック・ヴェーゼットウェー
【氏名又は名称原語表記】IMEC VZW
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴ・ストッフェルス
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-029247(JP,A)
【文献】特開2007-042886(JP,A)
【文献】特開平08-097471(JP,A)
【文献】特開平06-232451(JP,A)
【文献】特開2008-091392(JP,A)
【文献】特表2012-523700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンハンスメントモードトランジスタのゲート(1、2)を形成するための方法に関し、この方法は、
a.エンハンスメントモードトランジスタのAl
x’Ga
y’In
z’Nチャネル層(4)の上に、積み重なった第1部分(2a)と第2部分(2b)からなる、pドープAl
xGa
yIn
zNゲート層を、x+y+zが1で、x’+y’+z’が1である条件で提供する工程と、
b.pドープAl
xGa
yIn
zNゲート層(2)の第2部分(2b)の上部表面の上に金属ゲート層(1)を提供する工程であって、金属ゲート層(1)は、pドープAl
xGa
yIn
zNゲート層(2)の第2部分(2b)とショットキバリアを形成するような金属から形成される工程と、
を含み、
pドープAl
xGa
yIn
zNゲート層(2)を提供する工程は、
a1.製造中のエンハンスメントモードトランジスタのAl
x’Ga
y’In
z’Nチャネル層(4)の上に、第1部分(2a)が少なくとも3nmの膜厚に到達するまで、pドープAlxGayInzNゲート層の第1部分(2a)を成長する工程であって、第1部分(2a)は多くて3×10
19原子/cm
3の平均Mg濃度を有する工程と、
a2.pドープAl
xGa
yIn
zNゲート層(2)の第1部分(2a)の上に、pドープAl
xGa
yIn
zNゲート層(2)の第2部分(2b)を成長する工程であって、第2部分(2b)は3×10
19原子/cm
3より高い平均Mg濃度を有し、6×10
19原子/cm
3より高いMg濃度を有する上部表面を有する工程と
、を含み、
工程aは、堆積チャンバ中で行われ、工程a2は、
(i)第1部分(2a)の成長を止める工程と、続いて、
(ii)チャンバに、Mg前駆体ガスの流量を供給し、Ga、InおよびAl前駆体ガスの流量を供給しない、および/またはN前駆体ガスの流量を供給しない工程と、続いて、
(iii)そこに含まれるMg前駆体をチャンバから洗浄せずに、Mg前駆体ガスの流量、Ga、InおよびAl前駆体ガスから選択される1またはそれ以上の前駆体ガスの流量、およびN前駆体ガスの流量をチャンバに供給し、第2部分(2b)を成長する工程と、を含み、
工程(ii)は、5秒から15秒間、好適には8秒から12秒間行われる方法。
【請求項2】
エンハンスメントモードトランジスタのゲート(1、2)を形成するための方法に関し、この方法は、
a.エンハンスメントモードトランジスタのAl
x’
Ga
y’
In
z’
Nチャネル層(4)の上に、積み重なった第1部分(2a)と第2部分(2b)からなる、pドープAl
x
Ga
y
In
z
Nゲート層を、x+y+zが1で、x’+y’+z’が1である条件で提供する工程と、
b.pドープAl
x
Ga
y
In
z
Nゲート層(2)の第2部分(2b)の上部表面の上に金属ゲート層(1)を提供する工程であって、金属ゲート層(1)は、pドープAl
x
Ga
y
In
z
Nゲート層(2)の第2部分(2b)とショットキバリアを形成するような金属から形成される工程と、
を含み、
pドープAl
x
Ga
y
In
z
Nゲート層(2)を提供する工程は、
a1.製造中のエンハンスメントモードトランジスタのAl
x’
Ga
y’
In
z’
Nチャネル層(4)の上に、第1部分(2a)が少なくとも3nmの膜厚に到達するまで、pドープAlxGayInzNゲート層の第1部分(2a)を成長する工程であって、第1部分(2a)は多くて3×10
19
原子/cm
3
の平均Mg濃度を有する工程と、
a2.pドープAl
x
Ga
y
In
z
Nゲート層(2)の第1部分(2a)の上に、pドープAl
x
Ga
y
In
z
Nゲート層(2)の第2部分(2b)を成長する工程であって、第2部分(2b)は3×10
19
原子/cm
3
より高い平均Mg濃度を有し、6×10
19
原子/cm
3
より高いMg濃度を有する上部表面を有する工程と、を含み、
工程aは、堆積チャンバ中で行われ、工程a2は、
(i)第1部分(2a)の成長を止める工程と、続いて、
(ii)チャンバに、Mg前駆体ガスの流量を供給し、Ga、InおよびAl前駆体ガスの流量を供給しない、および/またはN前駆体ガスの流量を供給しない工程と、続いて、
(iii)そこに含まれるMg前駆体をチャンバから洗浄せずに、Mg前駆体ガスの流量、Ga、InおよびAl前駆体ガスから選択される1またはそれ以上の前駆体ガスの流量、およびN前駆体ガスの流量をチャンバに供給し、第2部分(2b)を成長する工程と、を含み
工程(ii)および任意的に工程(iii)は、900℃から1000℃の温度、好適には930℃から970℃の温度で行われる方法。
【請求項3】
工程aは、化学気相堆積により行われる請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(ii)は、チャンバの雰囲気をMg前駆体で飽和させる方法で行われる請求項
1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程a2の工程(ii)中のMg前駆体ガスの流量は、工程a1で第1部分(2a)の成長に使用されるMg前駆体ガスの流量より多い請求項
1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程a1は、pドープAl
xGa
yIn
zNゲート層の第1部分(2a)が、10nmから60nmの膜厚に到達するまで行われる請求項1~
5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
第2部分(2b)から離れた第1部分(2a)の底部のMg濃度は、第2部分(2b)との界面における、第1部分(2a)の上部の濃度より低い請求項1~
6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
さらに、Al
x’Ga
y’In
z’Nチャネル層(4)の上の、Al
x”Ga
y”In
z”Nバリア層(3)を提供する工程を含み、pドープAl
xGa
yIn
zNゲート層(2)はAl
x”Ga
y”In
z”Nバリア層の上に提供され、x”+y”+z”が1であり、x<x”>x’である請求項1~
7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
pドープAl
xGa
yIn
zNゲート層(2)の第2部分(2b)は、4×10
19原子/cm
3より高い、好適には5×10
19原子/cm
3より高い平均Mg濃度を有する請求項1~
8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
pドープAl
xGa
yIn
zNゲート層の第2部分の上部表面(5)は、7×10
19原子/cm
3より高い、好適には7.5×10
19原子/cm
3より高いMg濃度を有する請求項1~
9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
pドープAl
xGa
yIn
zNゲート層(2)の第1部分(2a)は、チャネル層(3)近傍で、は2×10
19原子/cm
3より低いMg濃度を有する底部表面を有する請求項1~
10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
工程a2は、pドープAl
xGa
yIn
zNゲート層の第2部分(2b)が、少なくとも20nm、好適には少なくとも30nmの膜厚に到達するまで行われる請求項1~
11のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンハンスメントモードトランジスタの分野に関する。特に、本発明は、エンハンスメントモードトランジスタ中にゲートを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)系の半導体デバイスは、高電圧を支持し、大電流を運ぶことができる。これは、高電力/高周波への応用を目的としたパワー半導体デバイスへの立候補を約束する。そのような応用のために作製されたデバイスは、高い電子移動度を示し、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、ヘテロ接合トランジスタ(HFET)、または変調ドープ電界効果トランジスタ(MODFET)のように呼ばれる。これらのタイプのデバイスは、一般に、高周波(例えば100kHz~10GHz)で動作し、一般に、例えば100Vのような高電圧に耐えることができる。
【0003】
GaNHEMTデバイスは、一般に、GaN層に隣接したAlGaNバリア層を含む。それらの2つの層の材料の違いは、2つの層の接合近傍で、よりバンドギャップの小さい層の中での、導電性の2次元電子ガス(2DEG)に貢献する。この2DEGは、デバイスを通って電荷が流れるのを可能にする。これは、そのようなデバイスを、ゲートにバイアスがかからない場合にノーマリ「オン」であるデプレッションモードのデバイスにする。エンハンスメントモード(e-モード、ノーマリ「オフ」)デバイスは、一般に、それらが安全で容易に制御できるために、一般にはより興味を持たれている。エンハンスメントモードデバイスは、電流を流すために、ゲートに正のバイアスを適用することが必要である。
【0004】
しかしながら、エンハンスメントモードデバイスとして働くGaNHEMTデバイスのためには、2DEG領域は空乏化しなければいけない。
【0005】
GaNHEMTトランジスタのためにノーマリオフ(e-モード)を達成するための1つの解決方法は、ゲート領域に、例えば正にドープされたGaN層のような、p-GaN層を用いることである。p-GaN層中のフェルミレベルは、価電子帯に向かって引っ張られ、GaNチャネル領域のバンドダイアグラムを引き上げて、必要なe-モード動作を達成する。この解決方法の欠点は、p-GaNゲートは、ジャンクションタイプのゲートであり、それゆえに高いゲートリークが起きることである。ゲートリークを低減するための解決方法は、ゲート金属を用いることであり、これによりp-GaNに向かってショットキコンタクトを形成する。
図1に示す断面図では、ショットキ金属はTiNである。しかしながら、ショットキ金属のリークは、p-GaN層中の活性なMg濃度により殆ど決定され、濃度が高いほど、より高いゲートリークとなる。これは、閾値電圧とゲートリークとの間のトレードオフをもたらす。なぜならば、高い閾値電圧を達成するためには、高いMg濃度が必要だからである。しかしながら、これは、また、リークの増加に繋がる。
【0006】
US2010/0258841は、エンハンスメントモードGaNトランジスタに関し、ゲートコンタクトに正電圧を印加してトランジスタをオンにした場合の、高いゲートリークの問題を取り扱う。US2010/0258841は、p-GaN層の成長中に、Mg原子が成長面に拡散することに言及している。それゆえに、成長を終了した場合に、高ドープ層が表面に存在し、正バイアスをゲートコンタクトに印加した場合に、この層の上が高ドープであるため、大きな電流が形成される。US2010/0258841は、ゲートコンタクト近傍でMg濃度を約1016/cm3に低減して、ゲートコンタクトとp型GaNとの間にショットキコンタクトを形成できることにより、この電流リークの問題の解決を提案する。ゲートコンタクト近傍のMg濃度の低減に加えて、US2010/0258841は、更に正孔密度を減らすために、ゲートコンタクト近傍のSi原子を加えることにより、p-GaNゲート層にn-ドープすることを提案する。しかしながら、US2010/0258841は、ゲートコンタクト近傍のMg濃度の低減を可能にする実験的方法を提案していない。実際、MOCVE成長の動力学により、表面ピークMg濃度は一般に上面の近傍に存在するため、そのような低減を行うことは非常に困難である。さらに、Mg濃度に正確に合わせることが必要で、それゆえに全体のカウンタードープが必要となるため、Siカウンタードープは容易ではない。もちろん、もしカウンタードープが不十分であれば、ゲートリークが期待され、もしカウンタードープが過剰であれば、デバイスの上面近傍に高ドープn層を形成する。
【0007】
それゆえに、高いゲートリークの問題を取り扱う、この分野での新しい方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、制限されたゲートリークを示す、エンハンスメントモードのトランジスタのゲートを形成する良好な方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、そのようなゲートを含むエンハンスメントモードのトランジスタを提供することである。
【0009】
本発明の具体例の長所は、金属ゲート層との界面に空乏領域が形成でき、これによりショットキバリアの形成を可能にすることである。
【0010】
本発明の具体例の長所は、空乏領域が比較的均一にできることである。
【0011】
本発明の具体例の長所は、この空乏領域の大きさとその正孔濃度が容易に制御できることである。
【0012】
本発明の具体例の長所は、この空乏領域の正孔濃度が、比較的容易に所定の値に設定できることである。
【0013】
上述の目的は、本発明にかかる方法およびデバイスにより達成される。
【0014】
第1の形態では、本発明はエンハンスメントモードトランジスタのゲートを形成するための方法に関し、この方法は、
a.エンハンスメントモードトランジスタのAlx’Gay’Inz’Nチャネル層の上に、積み重なった第1部分と第2部分からなる、pドープAlxGayInzNゲート層を、x+y+zが1で、x’+y’+z’が1である条件で提供する工程と、
b.pドープAlxGayInzNゲート層の第2部分の上部表面の上に金属ゲート層を提供する工程であって、金属ゲート層は、pドープAlxGayInzNゲート層の第2部分とショットキバリアを形成するような金属から形成される工程と、
を含み、
pドープAlxGayInzNゲート層を提供する工程は、
a1.製造中のエンハンスメントモードトランジスタのAlx’Gay’Inz’Nチャネル層の上に、第1部分が少なくとも3nmの膜厚に到達するまで、pドープAlxGayInzNゲート層の第1部分を成長する工程であって、第1部分は多くて3×1019原子/cm3の平均Mg濃度を有する工程と、
a2.pドープAlxGayInzNゲート層の第1部分の上に、pドープAlxGayInzNゲート層の第2部分を成長する工程であって、第2部分は3×1019原子/cm3より高い平均Mg濃度を有し、6×1019原子/cm3より高いMg濃度を有する上部表面を有する工程と、を含む。
【0015】
第2の形態では、本発明は、第1の形態に方法により得られるゲートを含むエンハンスメントモードトランジスタに関する。特に、これは、
a.Alx’Gay’Inz’Nチャネル層の上の、積み重なった第1部分と第2部分からなるpドープAlxGayInzNゲート層であって、x+y+zが1で、x’+y’+z’が1であるゲート層と、
b.pドープAlxGayInzNゲート層の第2部分の上部表面の上の金属ゲート層であって、pドープAlxGayInzNゲート層の第2部分とショットキバリアを形成するような金属から形成される金属ゲート層と、を含むエンハンスメントモードトランジスタであって、
pドープAlxGayInzNゲート層の第1部分は、多くて3×1019原子/cm3の平均Mg濃度を有し、第1部分の上にあり金属ゲート層と物理的にコンタクトするpドープAlxGayInzNゲート層の第2部分は、3×1019原子/cm3より高い平均Mg濃度を有し、上部表面は6×1019原子/cm3より高いMg濃度を有する。
【0016】
本発明の特別で好適な形態は、添付の独立請求項および従属請求項に開示される。従属請求項の特徴は、適当に、単に請求項に明白に記載されたされたものでなく、独立請求項の特徴および他の従属請求項の特徴と組み合わせても良い。
【0017】
この分野ではデバイスの一定の改良、変化、および進化があるが、本概念は、本質的に新しく、新規な改良であり、従来の実線からの出発を含み、より効果的で、安定し、信頼のあるこの性能のデバイスを提供できる。
【0018】
本発明の、上述のおよび他の特徴、性質、および長所は、本発明の原理を例示の方法で示す添付の図面と共に、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。この説明は、単に例示を目的として与えられ、本発明の範囲を限定するものではない。以下で引用される参照符号は、添付の図面について言及する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の具体例にかかる方法により得られた、エンハンスメントモードGaNトランジスタに含まれる積層の断面の模式図である。
【
図2】従来技術で知られたp-GaN中の、正孔濃度とMg濃度との関係を示すグラフである。
【
図3】従来技術で得られる典型的なMg濃度分布(下)と、本発明の具体例にかかる方法で得られるエンハンスメントモードGaNトランジスタ中の典型的なMg濃度分布(上)との模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、特定の具体例について、所定の図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定されるものである。記載された図面は、単に模式的であり、限定するものではない。図面において、図示目的で、いくつかの要素の大きさは拡張され、縮尺通りに記載されていない。寸法と相対寸法は、本発明の実施の実際の縮小には対応していない。
【0021】
更に、記載や請求の範囲中の、第1、第2、第3等の用語は、類似の要素の間で区別するために使用され、一時的、空間的な、ランキングまたは他の方法による順序を表す必要はない。そのように使用される用語は、適当な状況下で入替え可能であり、ここに記載された発明の具体例は、ここに記載や図示されたものと異なる順序によっても操作できることを理解すべきである。
【0022】
また、記載や請求の範囲中の、上、下、上に、下に等の用語は、記載目的のために使用され、相対的な位置を示すものではない。そのように使用される用語は、適当な状況下で入替え可能であり、ここに記載された発明は、ここに記載や図示されたものと異なる位置でも操作できることを理解すべきである。
【0023】
請求の範囲で使用される「含む(comprising)」の用語は、それ以降に示される要素に限定するものと解釈すべきではなく、他の要素や工程を排除しないことに注意すべきである。このように、言及された特徴、数字、工程、または成分は、その通りに解釈され、1またはそれ以上の他の特徴、数字、工程、または成分、またはこれらの組み合わせの存在または追加を排除してはならない。このように、「手段AおよびBを含むデバイス」の表現の範囲は、構成要素AとBのみからなるデバイスに限定されるべきではない。本発明では、単にデバイスに関連した構成要素がAとBであることを意味する。
【0024】
この明細書を通じて参照される「一の具体例(one embodiment)」または「ある具体例(an embodiment)」は、この具体例に関係して記載された特定の長所、構造、または特徴は、本発明の少なくとも1つの具体例に含まれることを意味する。このように、この明細書を通して多くの場所の「一の具体例(one embodiment)」または「ある具体例(an embodiment)」の語句の表現は、同じ具体例を表す必要はなく、表しても構わない。更に、特定の長所、構造、または特徴は、この記載から当業者に明らかなように、1またはそれ以上の具体例中で適当な方法で組み合わせることができる。
【0025】
同様に、本発明の例示の記載中において、能率的に開示し、様々な発明の形態の1またはそれ以上の理解を助ける目的で、本発明の様々な長所は、時には1つの具体例、図面、またはその記載中にまとめられることを評価すべきである。しかしながら、この開示の方法は、請求される発明がそれぞれの請求項に記載されたものより多くの特徴を必要とすることを意図して表されていると解釈すべきではない。むしろ、以下の請求項が表すように、発明の態様は、1つの記載された具体例の全ての長所より少なくなる。このように詳細な説明に続く請求の範囲は、これにより詳細な説明中に明確に含まれ、それぞれの請求項は、この発明の別々の具体例としてそれ自身で成立する。
【0026】
更に、ここで記載された幾つかの具体例は幾つかの特徴で、他の具体例に含まれる以外の特徴を含み、異なった具体例の長所の組み合わせは、本発明の範囲に入ることを意味し、当業者に理解されるように異なった具体例を形成する。例えば、以下の請求の範囲では、請求された具体例のいくつかは、他の組み合わせにおいても使用することができる。
【0027】
ここで与えられる記載において、多くの特別な細部が示される。しかしながら、本発明の具体例はそれらの特別な細部無しに実施できることを理解すべきである。他の例では、公知の方法、構造、および技術は、この記載の理解をわかりにくくしないために、詳細には示されていない。
【0028】
以下の用語は、本発明の理解を助けるためにのみ提供される。
【0029】
原子/cm3のMg濃度は、2次イオン質量分析(SIMS)により測定することができる。
【0030】
本発明は、本発明の様々な具体例の詳細な記載により開示される。本発明の他の具体例が、本発明の技術的な教示から離れることなく、当業者の知識に従って形成できることは明らかであり、本発明は添付の請求の範囲の用語によってのみ限定される。
【0031】
トランジスタを参照する。それらは、ドレインのような第1主電極、ソースのような第2主電極、および第1および第2の主電極の間で電荷の流れを制御するためのゲートのような制御電極を有するデバイスである。
【0032】
理論に縛られることなく、本発明は、Mg濃度が所定の閾値濃度を超えた場合に起きる自己補償により働くものと信じられる。閾値濃度は、約3×1019原子/cm3である。この閾値より下では、p-GaN層中のMg濃度の増加は、この層の正孔濃度の増加となる。閾値より上では、最初は正孔濃度は停滞し、少なくとも6×1019原子/cm3の値に到達した場合に急激に減少する。機械論的な用語では、この効果は、閾値の上では、追加のMg原子が、すでに存在するMgを補償する点欠陥(Mg侵入、窒素空孔)を形成し、これにより正孔濃度を増加させる代わりに減少させるという事実により説明できる。本発明は、Mg濃度を減少させる代わりに直観に反して増加させることで、金属ゲート層近傍のp-GaN層中で、制御可能な低いMg濃度の達成の困難さを回避するために、この特性を使用する。最終結果が、金属ゲート層に近いp-GaN層中で低い正孔濃度となる。
【0033】
本発明の第1の形態は、エンハンスメントモードトランジスタのゲートの形成方法に関する。ゲートは、金属ゲート層をその上に有するpドープAlxGayInzNゲート層を含み、典型的にはこれからなる。
【0034】
pドープAlxGayInzNゲート層は、MgがドープされたAlxGayInzNゲート層である。
【0035】
pドープAlxGayInzNゲート層は、積層した第1および第2の部分からなる。第2部分は、連続のまたは不連続の成長プロセス中に、第1部分の上にエピタキシャル成長される。第1部分は、多くて3×1019原子/cm3の平均Mg濃度を有し、第2部分は、3×1019原子/cm3より高い平均Mg濃度を有し、上部表面は6×1019原子/cm3より高いMg濃度を有する。
【0036】
「ノーマリオフ」モードを達成するための、十分に高い正孔濃度とするために、第1部分中の平均Mg濃度は、好適には0.5×1019原子/cm3より高く、好適には1×1019原子/cm3より高く、より好適には2×1019原子/cm3より高い。第1部分のMg濃度として3×1019原子/cm3が最も好ましい。
【0037】
具体例では、pドープAlxGayInzNゲート層の第2部分は、4×1019原子/cm3より高い平均Mg濃度、好適には5×1019原子/cm3より高い平均Mg濃度を有しても良い。これは、第2部分の正孔濃度を低減し、電流リークの低減を助ける。
【0038】
Mg濃度は、一般には、それぞれに部分の膜厚方向で一定ではない。なぜならば、部分のより深い部分より、部分の成長表面においてより高くなる傾向にあるからである。それゆえに、この濃度は、上部近傍でより高くなり、部分の底部近傍でより低くなる。
【0039】
第1部分の上部のMg濃度は、好適には4×1019原子/cm3より低く、より好適には3.5×1019原子/cm3より低く、さらに好適には3×1019原子/cm3より低い。
【0040】
第2部分の底部でのMg濃度は、第1部分の上部のMg濃度以上である。もし、連続pドープAlxGayInzNゲート成長プロセスが用いられた場合は、それが略等しいか僅かに高くなり、もし、不連続pドープAlxGayInzNゲート成長プロセスが用いられた場合、およびpドープAlxGayInzNゲート成長を再開する前に成長雰囲気でGa、In、およびAlの前駆体無しで、および/またはN前駆体無しで、Mg前駆体のみを流すpドープAlxGayInzNゲート成長プロセス中の中断が用いられた場合は、それはより高くなる。
【0041】
第2部分の上部のMg濃度は、6×1019原子/cm3より高い。
【0042】
具体例では、pドープAlxGayInzNゲート層の第2部分の上部表面は、7×1019原子/cm3より高い、好適には7.5×1019原子/cm3より高いMg濃度を有しても良い。これは、第2部分において正孔濃度の低減に大きく貢献し、電流リークの低減を助ける。
【0043】
具体例では、pドープAlxGayInzNゲート層の第1部分は、チャネル層に最も近い、2×1019原子/cm3より低いMg濃度を有する底面を有しても良い。
【0044】
具体例では、第一部分の膜厚は、10nmから60nmでも良い。具体例では、第2部分の膜厚は、少なくとも20nm、好適には少なくとも30nmでも良い。好適には、第2部分の上部10nmは、6×1019原子/cm3より高い平均Mg濃度を有する。
【0045】
pドープAlxGayInzNゲート層を形成する工程は、一般には、化学気相堆積(CVD)、より正確には、有機金属化学気相堆積(MOCVD)、即ち1またはそれ以上の有機金属前駆体の使用を含むCVD方法で行われる。一般には、前駆体ガスを流す工程を含む全ての工程は、キャリアガスの存在下、好適には、N2/H2混合ガスのような還元性の混合ガスの存在下で行われる。
【0046】
pドープAlxGayInzNゲート層中で、x、yおよびzの合計は1である。好適には、yは少なくとも0.5である。より好適には、yは少なくとも0.8である。さらに好適には、yは少なくとも0.9である、最も好適には、yは1に等しい。
【0047】
その上にAlxGayInzNゲート層が形成されるAlx’Gay’Inz’Nチャネル層も、一般には化学気相堆積で、基板上に形成される。一般には、Alx’Gay’Inz’Nチャネル層とAlxGayInzNゲート層との間に存在するAlx”Gay”Inz”Nバリア層、x”+y”+z”=1もまた、一般には化学気相堆積により形成される。このように、一般には、Alx’Gay’Inz’Nチャネル層は基板上にエピタキシャル成長され、Alx”Gay”Inz”Nバリア層はAlx’Gay’Inz’Nチャネル層の上にエピタキシャル成長され、pドープAlxGayInzNゲート層の第1部分が(Alx”Gay”Inz”Nバリア層の上に)形成され、pドープAlxGayInzNゲート層の第2部分がpドープAlxGayInzN層の第1部分の上にエピタキシャル成長される。
【0048】
Alx’Gay’Inz’Nチャネル層では、x’、y’およびz’の合計は1である。好適には、y’は少なくとも0.5である。より好適には、y’は少なくとも0.8である。さらに好適には、y’は少なくとも0.9である。最も好適には、y’は1に等しい。好適には、必ずしも必要ではないが、x=x’、y=y’およびz=z’である。
【0049】
チャネル層中の平均Mg濃度は、好適には0.5×1019原子/cm3より低く、より好適には1×1018原子/cm3である。具体例では、Alx’Gay’Inz’Nチャネル層はドープされない。
【0050】
一般に、工程aおよび工程bは、堆積チャンバ(例えばCVD堆積チャンバ)中で行われ、より好適には同じ堆積チャンバ中で行われる。工程a1と工程a2は、一般には同じ堆積チャンバ中で行われる。
【0051】
本発明の第1形態の方法の具体例では、工程は堆積チャンバ中で行われ、工程a2は、
(i)第1部分の成長を止める工程、続いて、
(ii)チャンバに、Mg前駆体ガスの流量を供給し、Ga、InおよびAl前駆体ガスの流量を供給しない(即ち、Ga前駆体ガスの供給無し、In前駆体ガスの供給無し、およびAl前駆体ガスの供給無し)および/またはN前駆体ガスの流量を供給しない工程と、続いて、
(iii)そこに含まれるMg前駆体をチャンバから洗浄せずに、Mg前駆体ガスの流量、Ga、InおよびAl前駆体ガスから選択される1またはそれ以上の前駆体ガスの流量、およびN前駆体ガスの流量をチャンバに供給し、第2部分を成長する工程と、
を含んでも良い。
【0052】
好適には、Ga、InおよびAl前駆体ガスから選択される1またはそれ以上の前駆体ガスの流量に対して、Gaの流量は、少なくとも50%、好適には少なくとも80%、より好適には90%、基も好適には100%である。
【0053】
Nおよび/またはGa、InおよびAlの前駆体の供給の中断工程を含む不連続成長プロセスが行われるこの具体例は特徴的である。なぜならば、pドープAlxGayInzNゲート層の成長中のMg濃度が、Mgの流量の増加と反応して、一般には非常にゆっくり増加するからである。Nおよび/またはGa、InおよびAlの流量の中断は、pドープAlxGayInzNゲート層の再成長前に、チャンバ中および積層する第1部分の上でMgの量を許容し、これにより、pドープAlxGayInzNゲート層中の比較的低いMg濃度から、pドープAlxGayInzNゲート層の第2部分中の比較的高いMg濃度まで、より急峻な変化を可能とする。
【0054】
第1部分の成長を止める工程(i)は、一般には、Ga、InおよびAlの前駆体および/またはNの前駆体の流量を止める工程を含む。この目的のために、Ga、InおよびAlの前駆体の流量、およびNの前駆体の流量の少なくとも1つが止められ、好適にはそれらの全てが止められる。具体例では、工程(i)および工程(ii)は、Ga、InおよびAlの前駆体および/またはNの前駆体の流量を止める工程と、Mgの前駆体の流量(例えば、同じ流量およびより高い流量)を維持する工程との組み合わせでも良い。工程(ii)の終わりに、チャンバはその雰囲気中に、一般には壁面の上にMg前駆体を含む。工程(iii)は、それらの前駆体からチャンバを洗浄することなく行われる。工程(iii)におけるMg前駆体ガスの供給工程は、幾つかの具体例では、工程(ii)で供給されるMg前駆体の流量を維持または増加させることにより行われる。具体例では、工程(i)と工程(ii)との間の遷移は、それゆえに、Ga、InおよびAlの前駆体およびNの前駆体の1またはそれ以上の流量を提供し、一方、Mg前駆体の流量を維持または増加させることで達成される。
【0055】
具体例では、工程(ii)は、チャンバの雰囲気がMg前駆体で飽和するように行われる。これは、pドープAlxGayInzNゲート層の第2部分中に、Mg前駆体を可能な限り多く取り込むのに貢献し、第2部分の正孔濃度を可能な限り低くするため、有利である。
【0056】
それぞれの工程中のそれぞれの前駆体の流量は、所望のMg濃度が達成できるように適用される。
【0057】
特別なMg濃度の達成は、所望の濃度を達成するために、一方のMg前駆体の流量と、他方のAl、GaおよびIn前駆体の流量との間の流量比を調整することで行える。
【0058】
例えば、所望のMg濃度の達成は、所望の濃度を達成するようにMg前駆体の流量を調整することにより行える。
【0059】
得られた流量の特定の選択のためのMg濃度分布は、装置、温度、および圧力に依存し、試行錯誤により直接的に決定できる。
【0060】
具体例では、工程a2の工程(ii)中のMg前駆体ガスの流量は、工程a1で第1部分の成長に使用されるMg前駆体ガスの流量より多くても良い。pドープAlxGayInzNゲート層の第2部分中で可能な限り多くのMg前駆体を取り込み、正孔濃度を好ましい程度に低くするのに貢献するため、これは有利である。
【0061】
具体例では、工程(ii)は、5秒から15秒行われ、好適には8秒から12秒行われる。これは、一般には、3×1019原子/cm3より高い平均Mg濃度を有し、6×1019原子/cm3より高いMg濃度を有する上部表面を有するpドープAlxGayInzNゲート層の第2部分を得るのに十分な程度にチャンバを確実にMgリッチとし、一方で、同時にプロセスを不必要に長くすることのない程度に十分な長さである。より長い時間でももちろん機能するが、有利さは少なくなる。
【0062】
具体例では、工程a1は、pドープAlxGayInzNゲート層のp第1部分の成長が可能な何れの温度で行っても良い。例えば、900℃から1050℃の温度を使用しても良い。
【0063】
具体例では、工程a2の工程(ii)および任意的に工程a2の工程(iii)は、900℃から1000℃の温度、好適には930℃から970℃の温度で行っても良い。工程a1よる工程a2のためにより低い温度を使用すると、第2部分の形成中に、第1部分にMgが移動する傾向を低減することができる。
【0064】
具体例では、工程a1は、pドープAlxGayInzNゲート層の第1部分が、3nmから60nm、好適には5nmから60nm、より好適には10nmから60nmの膜厚に達するまで行っても良い。閾値電圧に負の影響を与えないのに十分な膜厚であるため、この膜厚範囲の第1部分を有することは有利である。
【0065】
具体例では、工程a2は、pドープAlxGayInzNゲート層の第2部分が、少なくとも20nm、好適には少なくとも30nmに達するまで行われても良い。ゲート金属近傍の、そのような膜厚の低正孔濃度のpドープAlxGayInzNは、良好なショットキコンタクトと低リーク電流に貢献する。
【0066】
工程bでは、金属ゲート層の材料は、pドープAlxGayInzNゲート層の第2部分とショットキバリアを形成する材料である。これは、一般には、平衡状態において、pドープAlxGayInzNゲート層のバンドギャップ中で、その価電子帯端より上に、そのフェルミレベルが位置するように、金属ゲート層を形成する材料を選択することにより行われる。
【0067】
Mg前駆体は、CVD中にpドープAlxGayInzN層をドーピングするために、当業者に知られた、いずれかの前駆体、またはその組み合わせでも良い。例えば、ビス・シクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)でも良い。
【0068】
N前駆体は、pドープAlxGayInzN層を形成するために、当業者に知られた、いずれかのN前駆体、またはその組み合わせでも良い。例えば、NH3、フェニルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、またはブチルアミン-tでも良い。
【0069】
Ga前駆体は、pドープAlxGayInzN層を形成するために、当業者に知られた、いずれかのGa前駆体、またはその組み合わせでも良い。例えば、トリメチルガリウム、またはトリエチルガリウムである。
【0070】
具体例では、この方法は、さらにAlx’Gay’Inz’Nチャネル層の上にAlx”Gay”Inz”Nバリア層を提供する工程を含み、その上に、例えばAlx”Gay”Inz”Nバリア層の上に、pドープAlxGayInzNゲート層が形成され、ここではx”+y”+z”が1である。バリア層は、一般には、チャネル層より広いバンドギャップを有する層である。pドープAlxGayInzNゲート層がAlx”Gay”Inz”Nバリア層の(上ではなく)上方に供給される具体例では、Alx’Gay’Inz’Nチャネル層とpドープAlxGayInzNゲート層との間に1層以上が存在する。チャネル層とゲート層との間に存在するこの複数の層は、まとめてバリアと呼んでも良い。バリアは、ここでは底部層と呼ばれるバリア層を含む。より大きなバンドギャップを達成するために、具体例では、x”がx’より大きくても良い。好適には、x<x”>x’である。もちろん、x”を増加させることは、Alx”Gay”Inz”Nバリア層のバンドギャップを大きくする傾向にある。より影響は少ないが、y”/z”の比は、y’/z’の比より大きくても良い。好適には、(y/z)<(y”/z”)>(y’/z’)である。もちろん、このy”/z”の比が大きくなると、同じx”におけるバンドギャップはより大きくなる。
【0071】
好適には、バリア層の(自然なおよび圧電的な)分極は、チャネルの分極より大きくても良い。これによりチャネル中の2DEGの形成が促進されるので、有利である。より大きな分極を達成するために、具体例では、x”はx’より大きくても良い。好適には、x<x”>x’である。もちろん、x”を増加させることは、Alx”Gay”Inz”Nバリア層の分極は大きくなる傾向にある。より影響は少ないが、y”/z”の比は、y’/z’の比より大きくても良い。好適には、(y/z)<(y”/z”)>(y’/z’)である。もちろん、このy”/z”の比が大きくなると、同じx”におけるバンドギャップはより大きくなる。
【0072】
y”を超えてx”を増加させることにより、バンドギャップは最も効果的に増加するため、およびz”を超えてx”を増加させること、およびy”を超えてz”を増加させることにより、分極は最も効果的に増加するため、x<x”>x’は、バンドギャップの増加と分極の増加の双方のために有利である。一方、y”/z”の比が、チャネル材料に比較してバリア中で増加するのが良いか、減少するのが良いかは、製造中のデバイス中のバンドギャップの増加と分極の増加に対する相対的な必要性に依存する。
【0073】
幾つかの具体例では、xおよびx’は0であり、x”は0より大きい。より好適な具体例では、x=x’=z=z”=0で、x”は0より大きく好適には0.15から0.30、より好適には0.20から0.25である。
【0074】
具体例では、pドープゲート層の格子定数は、チャネル層の格子定数と一致しても良い。好適には、pドープゲート層の格子定数は、バリア層の格子定数と一致しても良い。好適には、pドープゲート層の格子定数は、チャネル層およびバリア層の格子定数と一致しても良い。他の具体例では、チャネル層中に歪を誘起するために、チャネル層の格子定数は、バリア層の格子定数と異なっても良い。
【0075】
バリア層の形成のために好適なAl前駆体は、例えば、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)である。窒素前駆体およびガリウム前駆体は、例えば、先に述べたのものでも良い。
【0076】
第2の形態では、本発明は、第1の形態にかかる方法で得ることができるゲートを含むエンハンスメントモードトランジスタに関する。特に、
a.Alx’Gay’Inz’Nチャネル層の上の、積み重なった第1部分と第2部分からなるpドープAlxGayInzNゲート層であって、x+y+zが1で、x’+y’+z’が1であるゲート層と、
b.pドープAlxGayInzNゲート層の第2部分の上部表面の上の金属ゲート層であって、pドープAlxGayInzNゲート層の第2部分とショットキバリアを形成するような金属から形成される金属ゲート層と、
を含むエンハンスメントモードトランジスタであって、
pドープAlxGayInzNゲート層の第1部分は、多くて3×1019原子/cm3の平均Mg濃度を有し、第1部分の上にあり金属ゲート層と物理的にコンタクトするpドープAlxGayInzNゲート層の第2部分は、3×1019原子/cm3より高い平均Mg濃度を有し、上部表面は6×1019原子/cm3より高いMg濃度を有する。
【0077】
第2の形態のいくつかの特徴は、第1の形態の特徴に対応して記載されたものと同じである。
【0078】
図2は、従来から知られたp-GaNゲートの300Kにおける、正孔濃度とMg濃度との関係を示すグラフである。実験による点は白丸である。それらは破線により結ばれている。理論的な線が、実験結果に挿入されている。図からわかるように、所定のMg濃度より上で、正孔濃度が低下し始める。これが、p-GaNゲート層の第2部分の正孔濃度を低減するために、本発明の具体例で使用される効果である。
【0079】
図3は、従来技術で得られる典型的なMg濃度分布(下)と、本発明の具体例にかかる方法で得られるエンハンスメントモードGaNトランジスタ中の典型的なMg濃度分布(上)との模式図である。図から分かるように、本発明は、直観に反した方法で、p-GaNゲート層の表面近傍において、従来技術よりずっと高いMg濃度を目指す。破線は、p-GaNゲート層の第1部分と第2部分とを分ける。この分離の正確な位置は重要ではない。問題は、第2部分の上部表面が、6×10
19原子/cm
3より高いMg濃度を有し(それゆえに、第2部分は深さ0を含む)、その平均濃度は、3×10
19原子/cm
3より高く、第1部分(2a)は、多くて3×10
19原子/cm
3の平均Mg濃度と少なくとも3nmの膜厚を有することである。
【0080】
例1:2つの連続するCp2Mg流によるp-GaN層の連続成長を含むエンハンスメントモードGaNトランジスタのゲートの製造方法
【0081】
ここでは
図1を参照する。製造中のエンハンスメントモードGaNトランジスタは、化学気相堆積チャンバ中に供給された。トランジスタは、GaNチャネル層(4)およびその上のAlGaNバリア層(3)を含む。続いてp-GaN層(2)を、以下のようにAlGaNバリア層(3)の上にエピタキシャル成長させた。チャンバは、圧力200torr、温度1010℃に設定された。64slm(standard liter per minute)のN
2および120slmのH
2が、雰囲気ガスとしてチャンバ中に流された。続いて、192秒の間、50slmのNH
3、92sccm(standard cubic centimeters per minute)のトリエチルガリウム(TMGa)、および500sccmのビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(Cp2Mg)が、N
2ガスおよびH
2ガスに加えて、チャンバに流され、40nm膜厚のMgドープGaN層(2a)が形成された。この第1p-GaN層(2a)は、比較的低いMg濃度を有する。続いて、中断することなく、Cp2Mgの流量が、第2の期間である384秒間、750sccmに上げられ、一方でNH
3はその流量が維持され、TMGaの流量は46sccmまで減らされ、これにより、第1のp-GaN層(2a)の上に、第2の40nm膜厚のMgドープGaN層(2b)がエピタキシャル成長された。この第2p-GaN層(2b)は、p-GaN層中の正孔濃度を減少させる程度に高いMg濃度を有する。続いてTiN層(1)がp-GaN層(2b)の上に堆積させ、これにより第2p-GaN層(2b)とショットキバリアを形成した。また、最も高いMg濃度が存在する第2p-GaN層(2b)の上部表面(5)が、
図1に見られる。
【0082】
例2:第1p-Ga成長工程、Cp2Mg流のみが存在する中断、および第2p-GaN成長工程を含むp-GaN層の不連続成長を含むエンハンスメントモードGaNトランジスタのゲートの製造方法
【0083】
この例は、本発明の具体例にかかるゲートを形成するための代わりの方法を提供する。
図1を参照する。作製中のエンハンスメントモードGaNトランジスタがチャンバ中に提供された。これは、GaNチャネル層(4)およびその上のAlGaNバリア層(3)を含む。続いてp-GaN層(2)を、以下のようにAlGaNバリア層(3)の上にエピタキシャル成長させた。チャンバは、圧力200torr、温度1010℃に設定された。64slm(standard liter per minute)のN
2および120slmのH
2が、雰囲気ガスとしてチャンバ中に流された。続いて、192秒の間、50slmのNH
3、92sccmのTMGa、および500sccmのCp2Mgが、N
2ガスおよびH
2ガスに加えて、チャンバに流され、40nm膜厚のMgドープGaN層(2a)が形成された。この第1p-GaN層(2a)は、比較的低いMg濃度を有した。続いて、NH
3およびTMGaの流れが10秒間中断され、その間にCp2Mgの流量が750sccmまで増やされた、次に、384秒間の第2p-GaN層の成長が、750sccmのCp2Mgの流量を維持しつつ、50smlのNH
3の流量および46slmのTMGaの流量を再開することで行われ、これにより、第1p-GaN層(2a)の上にエピタキシャル成長させた、40nm膜厚の第2p-GaN層(2b)が形成された。この第2p-GaN層(2b)は、p-GaN層(2)中の正孔濃度を減少させる程度に高いMg濃度を有する。続いてTiN層(1)がp-GaN層の上に堆積させ、これにより第2p-GaN層とショットキバリアを形成した。
【0084】
好適な具体例、特定の構造および構成は、材料とともに、本発明にかかるデバイスについてここで検討したが、形状や細部における様々な変化または変形は、本発明の範囲から離れることなく行える。例えば、上述の処方は、使用して良い手続の単なる例示である。本発明の範囲内において、記載された方法に、工程が加えられても、削除されても良い。