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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E05C 9/14 20060101AFI20221129BHJP
   E05C 1/06 20060101ALI20221129BHJP
   E05C 9/02 20060101ALI20221129BHJP
   E05B 1/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
E05C9/14
E05C1/06 B
E05C9/02
E05B1/00 311A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018165671
(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公開番号】P2020037814
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木子 節
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-199869(JP,A)
【文献】特開2009-102856(JP,A)
【文献】実開平3-29677(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 9/14
E05C 1/06
E05C 9/02
E05B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延在する支軸を中心として回転可能、かつ前記支軸が見込み方向に延在する状態で障子を構成する框の見付け面に配設されたレバー部材と、
前記框の見込み面に長手の直線に沿って移動可能に配設されたスライド部材と、
これらレバー部材及びスライド部材の間に動力を伝達する動力伝達機構と
を備え、
前記動力伝達機構は、前記スライド部材とともに直線に沿って移動するように設けられた係合面と、前記係合面に当接した状態で前記レバー部材の回転に伴って変位する係合突部材とを備え、前記係合面が前記スライド部材の移動方向に対して直交する方向に延在し、
前記框の見付け面には、前記レバー部材よりも外周となる部位から室内に向けて突出した後、前記レバー部材を覆うように内周側に屈曲して延在する把手が設けられ、
前記レバー部材の回転により前記框に対して前記スライド部材が移動し、前記スライド部材に設けたロックピンがロック位置とアンロック位置とに切り替わることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記係合面は、前記スライド部材の移動方向に対して直交する方向に沿って溝状切欠を形成することにより構成されており、
前記係合突部材が前記溝状切欠に挿通されていることを特徴とする請求項1に記載の建具
【請求項3】
前記スライド部材には、前記スライド部材の移動方向に沿った相対移動が阻止された状態で連係部材が配設され、前記連係部材に前記係合面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具
【請求項4】
前記連係部材は、互いに交差する方向に沿って延在する第1係合片及び第2係合片を有し、前記第1係合片を介して前記スライド部材に配設され、前記第2係合片に前記係合面が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の建具
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支軸を中心として回転可能に配設したレバー部材と、直線に沿って移動可能に配設したスライド部材と、これらレバー部材及びスライド部材の間に動力を伝達する動力伝達機構とを備えた動作装置及び建具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建具の枠体と障子との間に設けられる施錠装置には、レバー部材とスライド部材とを備えて構成されたものがある。レバー部材は、支軸を中心として回転可能となる状態で障子の戸先に配置される框の見付け面に取り付けられている。レバー部材には、支軸の径方向に沿って長孔状の摺動溝が形成されている。スライド部材は、障子の框において外周側の見込み面に長手に沿って移動可能に配設されており、連動ピン及びロックピンを備えている。連動ピンは、レバー部材の長孔に挿通されており、長孔の両側内壁面に当接可能である。ロックピンは、スライド部材から枠体に向けて突出されたものである。このロックピンは、框に対してスライド部材が移動することにより、枠材に設けたロックプレートに対して見込み方向に対向するロック位置と、ロックプレートに対して見込み方向に非対向となるアンロック位置とに配置されるものである。
【0003】
上記のように構成された施錠装置では、レバー部材を回転させると、連動ピンを介してスライド部材が框に対して移動することになり、ロックピンの位置をロック位置とアンロック位置とに変更することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平3-29677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のレバー部材とスライド部材とを備えた施錠装置では、レバー部材の回転範囲を大きくとれないという問題がある。すなわち、長孔の内壁面が鉛直方向に沿った姿勢に配置された状態からは、レバー部材を回転させても連動ピンに対して水平方向に力が加えられるだけであり、スライド部材を框の長手に沿って上下に移動させることが困難となる。このため、スライド部材を確実に移動させるには、長孔の内壁面が鉛直方向に沿った姿勢を含まないようにレバー部材の回転範囲を制限する必要がある。
【0006】
なお、上述の問題は、施錠装置に限らず、支軸を中心として回転可能に配設したレバー部材と、直線に沿って移動可能に配設したスライド部材との間において動力を伝達する動作装置に同様に起こり得るものである。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、レバー部材の回転範囲をより大きくとることのできる動作装置及び建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、水平方向に延在する支軸を中心として回転可能、かつ前記支軸が見込み方向に延在する状態で障子を構成する框の見付け面に配設されたレバー部材と、前記框の見込み面に長手の直線に沿って移動可能に配設されたスライド部材と、これらレバー部材及びスライド部材の間に動力を伝達する動力伝達機構とを備え、前記動力伝達機構は、前記スライド部材とともに直線に沿って移動するように設けられた係合面と、前記係合面に当接した状態で前記レバー部材の回転に伴って変位する係合突部材とを備え、前記係合面が前記スライド部材の移動方向に対して直交する方向に延在し、前記框の見付け面には、前記レバー部材よりも外周となる部位から室内に向けて突出した後、前記レバー部材を覆うように内周側に屈曲して延在する把手が設けられ、前記レバー部材の回転により前記框に対して前記スライド部材が移動し、前記スライド部材に設けたロックピンがロック位置とアンロック位置とに切り替わることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スライド部材の移動方向に対して直交する方向に延在した係合面に係合突状部を当接させるようにしている。このため、例えばレバー部材がスライド部材の移動方向に沿った姿勢に配置された状態からもレバー部材を回転させることが可能であり、レバー部材の回転範囲が制限されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態である動作装置を施錠装置として適用した建具を室内側から見た図である。
図2図1に示した建具の要部を拡大して示す横断面図である。
図3図1に示した建具の要部を拡大して示すもので、(a)はレバー部材が鉛直下方に配置された状態の横断面図、(b)はレバー部材が水平方向に沿って配置された状態の横断面図である。
図4図1に示した建具に適用するレバーユニットを示すもので、(a)は室内側から見た図、(b)は建具の内周側から見た図、(c)は上方から見た図、(d)は室外側から見た図である。
図5図4に示したレバーユニットの分解斜視図である。
図6図4に示したレバーユニットの縦断面図である。
図7図4に示したレバーユニットを室外側から見たもので、(a)はレバー部材が鉛直下方に配置された状態の図、(b)はレバー部材が水平方向に沿って配置された状態の図、(c)はレバー部材が鉛直上方に配置された状態の図である。
図8図4に示したレバーユニットにおいてユニットケースから第2ケース部を取り外して室外側から見たもので、(a)はレバー部材が鉛直下方に配置された状態の図、(b)はレバー部材が水平方向に沿って配置された状態の図、(c)はレバー部材が鉛直上方に配置された状態の図である。
図9図4に示したレバーユニットにおいてレバー部材を鉛直下方から鉛直上方まで回転させた状態を室内側から順に示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る動作装置及び建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いて説明を行う。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った平面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、後述する横枠31,32のように左右に沿って配置される部材の場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向であり、縦枠33,34のように上下に沿って配置される部材の場合、見込み方向に直交した左右に沿う方向である。見付け方向に沿った平面については見付け面と称する場合がある。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態である動作装置を適用した建具を示したものである。ここで例示する建具は、家屋の玄関に設けられるドアであり、ドア枠10と、ヒンジ1を介してドア枠10に開閉可能に支持させたドアパネル20とを備えている。ドア枠10は、枠材11,12,13,14を四周枠組みすることによって構成したものである。ドアパネル20は、図2に示すように、四周枠組みした骨材(図示せず)の2つの表面にそれぞれ表面材21,22を配設することによって構成した、いわゆるフラッシュドアパネルと称されるものである。図からも明らかなように、本実施の形態では、表面材21,22のほぼ中央となる部位に採風用の縦すべり出し窓2を備えたドアパネル20を例示している。
【0013】
縦すべり出し窓2は、枠体30と、枠体30に対して開閉される障子40とを備えたものである。図には明示していないが、障子40は、リンク機構を介して枠体30に支持してあり、室内側に突出するように開くことが可能である。枠体30は、上下の横枠31,32及び左右の縦枠33,34を四周枠組みすることによって構成したもので、ドアパネル20の内部に収容することのできる寸法に構成してある。障子40は、矩形状を成す面材41の四周に上下の横框42,43及び左右の縦框44,45を装着することによって構成したものである。面材41は、複層ガラス等のように透光性を有し、ドアパネル20を閉じた状態でも室内に自然光を取り入れることができるものを適用している。
【0014】
図2からも明らかなように、障子40において戸先に配置される縦框(以下、戸先框44という)及び枠体30において戸先框44に隣接して配置される縦枠(以下、戸先枠33という)には、それぞれ戸先ヒレ部44a,33aが設けてある。戸先框44の戸先ヒレ部(以下、框ヒレ部44aという)は、室内側に位置する縁部から外周に向けて延在したもので、その先端部が戸先枠33において室内に臨む見付け面33bを覆っている。戸先枠33の戸先ヒレ部(以下、枠ヒレ部33aという)は、室外側に位置する縁部から内周に向けて延在したもので、その先端部が戸先框44において室内に臨む見付け面44bを覆っている。
【0015】
また、戸先框44と戸先枠33との間には、施錠装置50が設けてある。施錠装置50は、枠体30に対して障子40の開閉を制限するもので、図1図3に示すように、戸先枠33に配設したロックプレート51と、戸先框44に配設したスライド部材52及びレバーユニット60とを備えて構成してある。なお、以下においては便宜上、建具に取り付けられた状態の姿勢で施錠装置50の各構成要素についてそれぞれの方向を特定している。
【0016】
ロックプレート51は、戸先枠33の内周側に位置する見込み面33cから戸先框44に向けて突出したもので、室内側に位置する縁部の互いに高さの異なる複数箇所(実施の形態では上下2箇所)に固定してある。スライド部材52は、上下に沿って延在した長尺状部材である。このスライド部材52は、戸先框44の長手に沿って移動可能、かつ見込み方向へは移動が規制された状態で、外周側に位置する見込み面44fにおいて室外側に位置する縁部に配設してある。スライド部材52の戸先框44からの突出寸法は、障子40を開閉する際にロックプレート51と干渉することのない値に設定してある。
【0017】
スライド部材52には、戸先枠33に対向する面にロックピン53及び連動ピン(動力伝達機構)54が設けてある。これらロックピン53及び連動ピン54は、スライド部材52の移動に伴って上下に移動するようにスライド部材52に固定したものである。ロックピン53は、スライド部材52から戸先枠33に向けて突出した柱状部材であり、戸先枠33に設けたロックプレート51のそれぞれに対応して設けてある。より具体的に説明すると、それぞれのロックピン53は、スライド部材52が上方に移動した場合、図1に示すように、ロックプレート51よりも上方に位置し、見込み方向においてロックプレート51に非対向となる。スライド部材52が下方に移動した場合には、見込み方向においてロックプレート51に近接して対向するようにロックピン53がスライド部材52に配設してある。連動ピン54は、スライド部材52から戸先枠33に向けて突出した柱状部材であり、スライド部材52の上下方向において中間となる位置に唯一設けてある。この連動ピン54は、スライド部材52が上方に移動した状態から下方に移動した状態までの間、見込み方向においてロックプレート51に対向することはない。
【0018】
レバーユニット60は、戸先框44に対してスライド部材52を上下に移動させるための操作入力部となるもので、スライド部材52の連動ピン54に対応する高さ位置において戸先框44の室内に臨む見付け面44cに取り付けてある。本実施の形態のレバーユニット60は、図3図8に示すように、レバー部材61、駆動アーム(動力伝達機構)62、連係部材(動力伝達機構)63を備えて構成してある。
【0019】
レバー部材61は、先端部にノブ61aを備えた平板状部材である。このレバー部材61は、基端部が支軸64を介して支持部材65の基板部65aに支持され、支持部材65に対して支軸64の軸心を中心として回転することが可能である。支持部材65の基板部65aは、戸先框44の見付け面44cに対してほぼ平行となるように配置されるものである。支軸64は、見込み方向に沿ってほぼ水平となる状態で基板部65aを貫通している。図5に示すように、支軸64は、基板部65aに対応する部分が円柱状に形成してある一方、両端部が角筒状に構成してあり、基端側の角筒状を成す部分がレバー部材61の基端部に嵌合している。
【0020】
駆動アーム62は、外形が長円状を成す平板である。図からも明らかなように、駆動アーム62の長手に沿った寸法は、レバー部材61に対して十分に短い長さに形成してある。この駆動アーム62は、一方の端部が支軸64において先端側の角筒状を成す部分に嵌合してあり、レバー部材61が回転した場合に同一方向に同一の回転角度だけ回転することが可能である。駆動アーム62の他端部には、係合ピン(係合突部材)66が設けてある。係合ピン66は、先端部が太径の円柱状を成すもので、支軸64と平行となる状態で駆動アーム62から室外に向けて突出している。また、駆動アーム62の他端部には、円弧状の位置決め凹部62aが形成してある。
【0021】
これら支持部材65の基板部65aと駆動アーム62との間には、樹脂バネ部材67が配設してある。樹脂バネ部材67は、樹脂材によって形成した矩形の厚板状を成すもので、複数の係合突起67aを介して支持部材65の基板部65aに取り付けてある。
【0022】
この樹脂バネ部材67には、駆動アーム62よりも外周において支軸64の上下となる部位にそれぞれ位置決め突起67bが設けてある。位置決め突起67bは、図7及び図8に示すように、水平方向に延在する弾性片67cの中間部からそれぞれ支軸64の中心に向けて突出したもので、レバー部材61を回転させた場合にクリック感を付与するように機能する。
【0023】
すなわち、これらの位置決め突起67bは、駆動アーム62が回転すると、駆動アーム62の他端部が近接するに従って駆動アーム62の外周面によって押圧され、弾性片67cが弾性変形することによって外周側に移動する。その後、位置決め突起67bは、駆動アーム62が鉛直方向に沿って配置されると、位置決め凹部62aに対向するため、弾性片67cの弾性復元力によって内周側に移動し、位置決め凹部62aに嵌合、かつ押圧された状態となる。この状態は、弾性片67cを弾性変形させて位置決め突起67bを位置決め凹部62aから逸脱させるだけの操作力をレバー部材61に加えない限り継続されることになり、レバー部材61が不用意に回転することがない。本実施の形態では、支軸64の上下となる部位に位置決め突起67bが設けてあるため、レバー部材61の先端が鉛直上方となった状態及び鉛直下方となった状態において位置決め突起67bが位置決め凹部62aに嵌合することになる。
【0024】
連係部材63は、図3図5図8に示すように、第1係合片63a及び第2係合片63bを有して構成したものである。第1係合片63aは、支持部材65の基板部65aに対して平行となるように延在した平板状を成している。第2係合片63bは、第1係合片63aの戸先側に位置する縁部から室外側に向けてほぼ直角に屈曲した後、室外に向けて漸次戸先から離隔するように傾斜し、さらにその先端部が第1係合片63aに対してほぼ直角となるように屈曲したものである。第1係合片63aと第2係合片63bとは、金属板を適宜折り曲げることによって一体に成形してある。
【0025】
第1係合片63a及び第2係合片63bのそれぞれには、水平方向に沿って摺動溝63c,63dが形成してある。摺動溝63c,63dは、一定の幅を有した横長の溝状を成す切欠であり、それぞれ上下に位置する内壁面63c1,63d1についても水平方向に沿って延在している。第1係合片63aの摺動溝(以下、第1摺動溝(溝状切欠)63cという)には、駆動アーム62の係合ピン66の先端部が摺動可能に挿通し、かつ第2係合片63bの摺動溝(以下、第2摺動溝63dという)には、スライド部材52の連動ピン54が摺動可能に挿通している。つまり、駆動アーム62の係合ピン66には、第1摺動溝63cの内壁面(係合面)63c1が当接し、かつスライド部材52の連動ピン54には、第2摺動溝63dの内壁面63d1が当接可能となる。
【0026】
上述したレバーユニット60の構成要素のうち、支持部材65、樹脂バネ部材67、駆動アーム62については、戸先框44に取り付けたユニットケース70の内部に収容してあり、また連係部材63については、第1係合片63aのみがユニットケース70の内部に収容してある。ユニットケース70は、左右に分割可能となる第1ケース部(把手)70A及び第2ケース部70Bを有し、これら第1ケース部70Aと第2ケース部70Bの間に構成される空間に、支持部材65、樹脂バネ部材67、駆動アーム62及び連係部材63の第1係合片63aを収容している。
【0027】
連係部材63の第2係合片63bについては、第1ケース部70Aと第2ケース部70Bとの間に構成されるリニアガイド溝71を介してユニットケース70の外部に延出している。リニアガイド溝71は、上下方向に沿って延在した直線状を成し、ユニットケース70に対して第2係合片63bが上下方向に沿って移動するのを許容するものである。
【0028】
また、係合ピン66は、室外側に位置する先端部が第2ケース部70Bに設けた円弧ガイド溝72の内部に配置され、その移動が円弧ガイド溝72の範囲に規定されている。円弧ガイド溝72は、図4(d)に示すように、支軸64の軸心を中心とした円弧状を成すものである。本実施の形態では、支軸64の軸心に対して上方に位置する部分から下方に位置するまでの間を戸先側に凸となる半円弧状の円弧ガイド溝72が形成してある。つまり、ユニットケース70に対する係合ピン66の移動範囲は、支軸64の周囲において戸先側を経由した上方から下方までの180°の範囲に制限されることになる。
【0029】
さらに、支軸64の基端部は、第2ケース部70Bに形成した切欠溝73を介して外部に露出しており、この露出した部分にレバー部材61を支持している。支軸64の基端部及びレバー部材61は、第1ケース部70Aに設けた把手部74によって覆ってある。把手部74は、第1ケース部70Aの室内側に位置する部分から内周側に向けて延在したものである。把手部74の延在端部は、第2ケース部70Bを超える位置まで達している。把手部74の延在端部において室外に臨む面には、指掛け用の突条74aが設けてある。把手部74の上下両端面は、支軸64から等距離にあり、レバー部材61の先端が鉛直上方もしくは鉛直下方となった場合にノブ61aのみが外部に露出するように寸法が設定してある。
【0030】
このユニットケース70は、框ヒレ部44aの室外に臨む見付け面44dから第1ケース部70A及び支持部材65にネジSを螺合することにより、戸先框44の室内に臨む見付け面44cに固定してある。把手部74において第2ケース部70Bを超えて延在する部分と、戸先框44の見付け面44cとの間には、手指の先端を挿入することのできる隙間が確保されている。ユニットケース70から突出する63の第2係合片63bは、框ヒレ部44aに形成した切欠溝44eを介して室外側に延在し、第2摺動溝63dにスライド部材52の連動ピン54が摺動可能に挿通している。
【0031】
上記のように構成した施錠装置50を備える建具では、図7(a)及び図8(a)に示すように、レバー部材61の先端部が鉛直下方に向いた解錠状態となると、支軸64に対して係合ピン66が上方に位置した状態となる。従って、ユニットケース70に対して連係部材63が上方に移動した状態となり、連動ピン54を介して連係部材63に係合したスライド部材52が戸先框44に対して上方に移動した状態となる。このため、戸先枠33に設けたロックプレート51に対してスライド部材52のロックピン53がそれぞれアンロック位置に保持される。これにより、室内側から把手部74を介して障子40を室内側に引き寄せれば、枠体30に対して障子40を開くことができ、ドア枠10に対してドアパネル20を閉じた状態においても、室内の換気を行うことが可能となる。
【0032】
上述の状態からノブ61aを介してレバー部材61を上方に向けて回転させると、支軸64に対して係合ピン66が円弧に沿って移動しながらユニットケース70に対して漸次下方に移動することになる。このため、レバー部材61の先端部が鉛直上方に向いた施錠状態では、ユニットケース70に対して連係部材63が下方に移動し、連動ピン54を介して連係部材63に係合したスライド部材52が戸先框44に対して下方に移動した状態となる。これにより、戸先枠33に設けたロックプレート51に対してスライド部材52のロックピン53がロック位置に保持される。この状態からは、把手部74を介して障子40を室内側に引き寄せたとしても、ロックピン53がロックプレート51に当接するため、枠体30に対して障子40を開くことができない。以降、レバー部材61を適宜操作することにより、枠体30に対する障子40の開閉制御を行うことが可能となる。
【0033】
ここで、上述した建具によれば、図9に示すように、ユニットケース70に対して連係部材63が上下方向に沿ってのみ移動可能であり、第1係合片63aに設けた第1摺動溝63cが常に水平方向に沿って延在した状態となる。従って、レバー部材61の回転に伴って移動する係合ピン66と連係部材63とは、常に水平方向に沿った第1摺動溝63cの内壁面63c1に対して係合ピン66の外周面が当接することになる。このため、レバー部材61の回転姿勢が如何なる状態であっても、係合ピン66の周面からは内壁面63c1に対して上下方向に沿った力のみが作用することになる。これにより、例えばレバー部材61がスライド部材52の移動方向に沿って上下に延在する姿勢に配置された場合にも、これを回転操作することでスライド部材52を移動させることが可能であり、レバー部材61の回転範囲が制限されることがない。
【0034】
しかも、上述したように、係合ピン66からは第1摺動溝63cの内壁面63c1に対して左右方向の力が加えられることがないため、レバー部材61を操作する際の操作力が大きくなる事態を招来することがなく、操作性の点で極めて有利となる。
【0035】
さらに、スライド部材52のロックピン53がロック位置もしくはアンロック位置に配置された状態においては、レバー部材61が把手部74によって覆われ、ノブ61aのみが外部に露出するだけであるため、適用する建具の外観品質を低下させるおそれがない。
【0036】
なお、上述した実施の形態では、玄関用のドアパネル20に設けた採風用の縦すべり出し窓2において、枠体30と障子40との間の開閉制御を行う施錠装置50として用いられる動作装置を例示しているが、本発明はこれに限定されず、支軸を中心として回転可能に配設したレバー部材と、直線に沿って移動可能に配設したスライド部材と、これらレバー部材及びスライド部材の間に動力を伝達する動力伝達機構とを備えたものであれば、その他ものにも適用することが可能である。
【0037】
また、レバー部材61とスライド部材52との間に連係部材63を介在させ、連係部材63に第1摺動溝63cを設けて係合面となる内壁面63c1を構成するようにしているが、スライド部材に直接係合面を設けるようにしても良い。さらに、連係部材63を適用する場合に上述した実施の形態では、第1係合片63aと第2係合片63bとが互いに交差する方向に延在したものを適用しているため、スライド部材52の表面にレバー部材61を設ける必要がなく、設計の自由度を高めることが可能であるが、第1係合片と第2係合片とは互いに平行となるように延在していても構わない。また、スライド部材52の連動ピン54に対して連係部材63の第2摺動溝63dを挿通させるようにしているが、スライド部材52と連係部材63との間は直線に沿った相対移動が阻止されていれば十分であり、第2摺動溝は必ずしも必要ではない。
【0038】
以上のように、本発明に係る動作装置は、支軸を中心として回転可能に配設したレバー部材と、直線に沿って移動可能に配設したスライド部材と、これらレバー部材及びスライド部材の間に動力を伝達する動力伝達機構とを備えた動作装置であって、前記動力伝達機構は、前記スライド部材とともに直線に沿って移動するように設けられた係合面と、前記係合面に当接した状態で前記レバー部材の回転に伴って変位する係合突部材とを備え、前記係合面が前記スライド部材の移動方向に対して直交する方向に延在していることを特徴としている。
【0039】
この発明によれば、スライド部材の移動方向に対して直交する方向に延在した係合面に係合突状部を当接させるようにしている。このため、例えばレバー部材がスライド部材の移動方向に沿った姿勢に配置された状態からもレバー部材を回転させることが可能であり、レバー部材の回転範囲が制限されることがない。
【0040】
また本発明は、上述した動作装置において、前記係合面は、前記スライド部材の移動方向に対して直交する方向に沿って溝状切欠を形成することにより構成されており、前記係合突部材が前記溝状切欠に挿通されていることを特徴としている。
【0041】
この発明によれば、レバー部材の回転によりスライド部材を往復移動させることができる。
【0042】
また本発明は、上述した動作装置において、前記スライド部材には、前記スライド部材の移動方向に沿った相対移動が阻止された状態で連係部材が配設され、前記連係部材に前記係合面が設けられていることを特徴としている。
【0043】
この発明によれば、スライド部材に直接係合面を設ける必要がないため、スライド部材の寸法に制限が加えられることがない。
【0044】
また本発明は、上述した動作装置において、前記連係部材は、互いに交差する方向に沿って延在する第1係合片及び第2係合片を有し、前記第1係合片を介して前記スライド部材に配設され、前記第2係合片に前記係合面が設けられていることを特徴としている。
【0045】
この発明によれば、スライド部材の表面にレバー部材を設ける必要がなく、設計の自由度が高くなる。
【0046】
また、本発明に係る建具は、上述した動作装置のスライド部材が障子を構成する框の見込み面に長手に沿って移動可能に配設され、かつ前記動作装置のレバー部材が水平方向に延在する前記支軸を中心として回転可能となる状態で障子を構成する框の見付け面に配設されており、前記レバー部材の回転により前記框に対して前記スライド部材が移動し、前記スライド部材に設けたロックピンがロック位置とアンロック位置とに切り替わることを特徴としている。
【0047】
この発明によれば、大きな操作力を要することなくレバー部材を介した施解錠操作を行うことが可能となる。
【0048】
また本発明は、上述した建具において、前記支軸が見込み方向に延在する状態で前記レバー部材を前記框に配設し、前記框の見付け面には、前記レバー部材よりも外周となる部位から室内に向けて突出した後、前記レバー部材を覆うように内周側に屈曲して延在する把手が設けられていることを特徴としている。
【0049】
この発明によれば、レバー部材を把手によって覆うことが可能となり、適用する建具の外観品質を損なうおそれがなくなる。
【符号の説明】
【0050】
40 障子、44 戸先框、44c 戸先框の見付け面、44f 戸先框の見込み面、50 施錠装置、52 スライド部材、53 ロックピン、54 連動ピン、60 レバーユニット、61 レバー部材、62 駆動アーム、63 連係部材、63a 第1係合片、63b 第2係合片、63c 第1摺動溝、63c1 内壁面、64 支軸、66 係合ピン、70A 第1ケース部、74 把手部
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