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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】伸縮継手及び伸縮配管構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/12 20060101AFI20221129BHJP
   F16L 59/18 20060101ALI20221129BHJP
   F16L 21/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
F16L27/12 E
F16L59/18
F16L21/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018180598
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020051502
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】花木 博章
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-109194(JP,A)
【文献】特開2013-060970(JP,A)
【文献】特開2012-107669(JP,A)
【文献】特開平09-123214(JP,A)
【文献】特開平11-201382(JP,A)
【文献】特開2001-047466(JP,A)
【文献】特開2001-050466(JP,A)
【文献】特開2000-002389(JP,A)
【文献】特開2011-106594(JP,A)
【文献】実開昭58-144173(JP,U)
【文献】特開2018-173150(JP,A)
【文献】特開2019-065955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/18
F16L 27/12
F16L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された胴部を有する継手本体と、
前記継手本体の第1端部に形成された受口部と、
を備え、
前記受口部に配管部材の管端部が挿入され、前記管端部が前記継手本体の管軸方向に沿って伸縮可能とされた伸縮継手であって、
前記胴部の内部には、
全周にわたって発泡樹脂が埋設された発泡樹脂層を備え
前記継手本体の管軸方向における前記発泡樹脂層が埋設された範囲の全長にわたってバリ除去痕が形成されていることを特徴とする伸縮継手。
【請求項2】
請求項1に記載の伸縮継手であって、
前記発泡樹脂層は、
前記受口部に挿入された配管部材の伸縮にともなって前記配管部材の管端が移動する前記継手本体の管軸方向における全長にわたって形成されている
ことを特徴とする伸縮継手。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の伸縮継手であって、
前記継手本体の胴部の肉厚は6.5mm以上13mm以下に形成され、
前記発泡樹脂層の肉厚は、
前記胴部の肉厚の50%以上85%以下に形成されている
ことを特徴とする伸縮継手。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の伸縮継手と、
配管部材と、
を備え、
前記受口部に前記配管部材の管端部が挿入され、前記管端部が前記継手本体の管軸方向に沿って伸縮可能とされていることを特徴とする伸縮配管構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温度変化にともなって伸縮する配管部材が挿入される伸縮継手及び伸縮配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、建築物の上層階から下層階に向けて水を流すための縦管路部に適用される配管部材は、一般的に寸法が大きく季節要因や内部を流れる水の温度変化によって配管部材の全長が大きく変化する。
【0003】
そこで、縦管路部に適用される配管部材が伸縮しても縦管路部内の水が外部に漏れることなく安定して流れるように、縦管路部に用いる配管部材の下側管端部を継手の受口部に挿入し、配管部材が伸縮しても、下側管端部が継手内で移動することで配管内部の水が接続部から漏れるのを抑制する伸縮継手(例えば、差込みソケット)を備えた伸縮配管構造が広く用いられている(例えば、非特許文献1(P99、差込ソケット)参照。)
【0004】
ところで、ビル等では、各階に多数の空調装置が設置されており、空調装置で生じたドレン(凝縮水)を排出するためにドレン配管を設けることが一般的である。
このようなドレン配管は、各階の空調装置で生じたドレンを横管路部で集めて、集めたドレンを縦管路部によって下層階に流している。
【0005】
このような空調装置で生じたドレンを流す伸縮配管構造では、例えば、図9に示すように、外周面層521、531及び内周面層522、532が硬質な樹脂で形成され内部に断熱層523、533が形成された断熱配管520、530を立て配管として適用し、これらが継手510に挿入される。
【0006】
しかしながら、このような伸縮配管構造では、温度変化により立て配管が収縮すると、内部を流れる低温の水が継手(伸縮継手)510の内面に直接接触して継手510の外面が冷却されて結露する。
そこで、空調装置で生じたドレンを流す場合、継手の外周面に保温材(断熱材)や保温材テープ等540を巻き付けて、結露を防止可能な伸縮配管構造500とすることが一般的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】URL:http://www.sekisui-kenzai.com/common/pdf/amatoi_building/ltk1299_1303_18.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、伸縮継手の外周面に保温材や保温テープ等を巻き付ける作業は、伸縮配管構造を施工した後に現場で行う必要があることから、手間がかかり工期延長につながる。また、施工には熟練が必要とされうえ、外部に巻き付けた保温材は経時劣化しやすく脱落等により長期間維持することが困難であるという問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、伸縮継手に挿入された配管部材が伸縮しても伸縮継手の外面が結露するのを抑制することが可能な伸縮継手及び伸縮配管構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、筒状に形成された胴部を有する継手本体と、前記継手本体の第1端部に形成された受口部と、を備え、前記受口部に配管部材の管端部が挿入され、前記管端部が前記継手本体の管軸方向に沿って伸縮可能とされた伸縮継手であって、前記胴部の内部には、全周にわたって発泡樹脂が埋設された発泡樹脂層を備え、前記継手本体の管軸方向における前記発泡樹脂層が埋設された範囲の全長にわたってバリ除去痕が形成されていることを特徴とする。
【0011】
この発明に係る伸縮継手によれば、胴部内部の全周にわたって発泡樹脂が埋設された発泡樹脂層を備えているので、配管部材が収縮して配管部材内を流れる低温の水が伸縮継手と直接接触したとしても、伸縮継手の外面が冷却されるのが抑制される。
その結果、伸縮継手に挿入された配管部材が伸縮しても伸縮継手の外面が結露するのを抑制することができる。
この発明に係る伸縮継手によれば、管軸方向における発泡樹脂層が埋設された範囲の全長にわたってバリ除去痕が形成されているので、継手本体の軸方向における発泡樹脂層が埋設された範囲の全長にわたって胴部内部の全周に発泡樹脂層を安定して埋設させることができる。
また、発泡樹脂層が埋設された範囲の全長にわたって胴部内部の全周に発泡樹脂層が形成されているかどうかを効率的に検査することができる。
また、配管施工時に発泡樹脂層が形成された範囲を容易に確認することで効率的に施工することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の伸縮継手であって、前記発泡樹脂層は、前記受口部に挿入された配管部材の伸縮にともなって前記配管部材の管端が移動する前記継手本体の管軸方向における全長にわたって形成されていることを特徴とする。
【0013】
この発明に係る伸縮継手によれば、発泡樹脂層が、配管部材の管端が配管部材の伸縮にともなって移動する管軸方向における全長にわたって形成されているので、配管部材が伸縮しても、配管部材の断熱層か伸縮継手の発泡樹脂層により低温の水の熱が伸縮継手の外部に熱伝導するのが抑制される。
その結果、伸縮継手外面における結露を確実に抑制することができる。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の伸縮継手であって、前記継手本体の胴部の肉厚は6.5mm以上13mm以下に形成され、前記発泡樹脂層の肉厚は、前記胴部の肉厚の50%以上85%以下に形成されていることを特徴とする。
【0017】
この発明に係る伸縮継手によれば、胴部の肉厚は6.5mm以上13mm以下に形成され、前記発泡樹脂層の肉厚は、前記胴部の肉厚の50%以上85%以下に形成されているので、断熱効果を効率的に確保することができる。
また、従前の配管部材や取付け金具を効率的に利用することができる。
【0018】
請求項に記載の発明は、伸縮配管構造であって、請求項1~のいずれか一項に記載の伸縮継手と、配管部材と、を備え、前記受口部に前記配管部材の管端部が挿入され、前記管端部が前記継手本体の管軸方向に沿って伸縮可能とされていることを特徴とする。
【0019】
この発明に係る伸縮配管構造によれば、伸縮継手は、継手本体に胴部内部の全周にわたって発泡樹脂が埋設された発泡樹脂層を備えているので、配管部材が収縮して配管部材内を流れる低温の水が伸縮継手と直接接触したとしても、伸縮継手の外面が冷却されるのが抑制される。
その結果、伸縮継手に挿入された配管部材が伸縮しても伸縮継手の外面が結露するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明に係る伸縮継手及び伸縮配管構造によれば、伸縮継手に挿入された配管部材が伸縮しても伸縮継手の外面が結露するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る伸縮配管構造の概略構成を説明する縦断面図である。
図2】第1実施形態に係る伸縮継手の概略構成を説明する斜視図である。
図3】第1実施形態に係る伸縮継手の概略構成の一例を説明する図2に矢視III-IIIで示す縦断面図である。
図4A】第1実施形態に係る伸縮配管構造の作用の概略を説明する図であり、上側立て配管が収縮した状態を示す概念図である。
図4B】第1実施形態に係る伸縮配管構造の作用の概略を説明する図であり、上側立て配管が伸びた状態を示す概念図である。
図5】第1実施形態に係る伸縮継手の製造方法を説明する図であり、射出成形金型の概略構成を説明する縦断面図である。
図6A】第1実施形態に係る伸縮継手の製造方法の概略を説明する図であり、第1射出工程における管軸方向に沿って見た伸縮継手の胴部の断面を示す概念図である。
図6B】第1実施形態に係る伸縮継手の製造方法の概略を説明する図であり、第2射出工程における管軸方向に沿って見た伸縮継手の胴部の断面を示す概念図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る伸縮継手の概略構成を説明する斜視図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る伸縮継手の概略構成を説明する斜視図である。
図9】従来の伸縮継手の概略構成を説明する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
以下、図1図4を参照し、本発明の第1実施形態に係る伸縮配管構造及び伸縮継手について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る伸縮配管構造の概略構成を説明する縦断面図である。また、図2は、第1実施形態に係る伸縮継手の概略構成を説明する斜視図であり、図3は、伸縮継手の概略構成を説明する縦断面図である。図において、符号100は伸縮配管構造を、符号10は伸縮継手を、符号110は上側立て配管(配管部材)を、符号120は下側立て配管を示している。
【0023】
伸縮配管構造100は、図1に示すように、例えば、伸縮継手10と、シール部材20と、上側立て配管(配管部材)110と、下側立て配管120とを備えている。
この実施形態において、伸縮配管構造100は、例えば、ビルの上層階から下層階に向かって、空調装置で生じたドレンを流すドレン配管とされている。
【0024】
上側立て配管(配管部材)110は、外周面をなす外壁部11Aと、内周面をなす内壁部11Bと、外壁部11Aと内壁部11Bの間に形成された断熱層11Cとを備えている。また、上側立て配管(配管部材)110は、その管端部がシール部材20を介して伸縮継手10の上側(第1管端部)の受口部11Hに挿入され、管端110Tが継手10の管軸O方向に沿って矢印T方向に伸縮可能とされている。
【0025】
外壁部11A、内壁部11Bは、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の非発泡樹脂からなる硬質な非発泡樹脂層により形成されている。
また、断熱層11Cは、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の発泡樹脂層により形成されている。
なお、外壁部11A、内壁部11B、断熱層11Cの材質については任意に設定することができる。
【0026】
下側立て配管(配管部材)120は、外周面をなす外壁部12Aと、内周面をなす内壁部12Bと、外壁部11Aと内壁部12Bの間に形成された断熱層12Cとを備えている。また、下側立て配管(配管部材)120は、その管端部が伸縮継手10の下側(第2管端部)の受口部13Hに挿入され、管端部が継手10内の所定位置に管端が当接して固定されている。
なお、外壁部12A、内壁部12B、断熱層12Cの材質については上側立て配管(配管部材)110と同様であるので説明を省略する。
【0027】
シール部材20は、図1に示すように、管軸Oに向かって突出する突出部と突出部の外縁部から管軸Oに沿って下方に延在するスカート部とを有し管軸Oを含む断面が逆L字形に形成されたシール部本体保持部21と、シール部本体保持部21の内方に取付けられるシール本体22と、を備え、伸縮継手10の上部に装着されている。
【0028】
そして、シール本体22の先端側から管軸O側に形成され管軸O方向に弾性変形可能に形成されたリップ部が、上側立て配管(配管部材)110の外周面と摺接するようになっている。
【0029】
伸縮継手10は、図1図3に示すように、例えば、胴部11と、シール取付部12と、下部管端部13と、接続部14と、を備えている。また、シール取付部12には、シール部材20が装着される。
【0030】
胴部11は、例えば、伸縮継手10の上側(第1管端部)に配置され管軸Oに沿って形成された円筒形状とされていて、内方に受口部11Hが形成されている。
また、胴部11には、伸縮継手10を建築物に取付けるための取付け金具を装着する複数の取付けリブ16が、管軸O方向に間隔をあけて周方向に形成されている。
【0031】
また、胴部11は、図1図3に示すように、例えば、厚さ方向に配置され、壁部をなす非発泡樹脂層111と、内壁部をなす非発泡樹脂層112と、非発泡樹脂層111と非発泡樹脂層112の間に形成され断熱層を構成する発泡樹脂層113と、を備えている。
また、胴部11は、肉厚が6.5mm以上13mm以下に形成されていることが好適である。
【0032】
接続部14は、胴部11と下部管端部13とを接続していて、胴部11から下部管端部13に向かって漸次縮径されている。
また、接続部14は、胴部11から接続された非発泡樹脂層111と、非発泡樹脂層112と、発泡樹脂層113と、を備えている。
【0033】
発泡樹脂層113は、図1に示すように、例えば、上側(第1管端部側)に位置される発泡樹脂層上端部P1と下側(第2管端部側)に位置される発泡樹脂層下端部P2の間に形成されている。
また、発泡樹脂層113は、間軸O方向において全長がL0に設定されている。この全長がL0は、上側立て配管(配管部材)110が管軸O方向において移動する上限LAより上側及び下限LBより下側まで設定されている。
【0034】
また、発泡樹脂層113は、発泡樹脂層上端部P1と発泡樹脂層下端部P2の間で、胴部11及び接続部14の全周にわたって形成されている。
また、発泡樹脂層113の肉厚は、胴部11の肉厚に対して50%以上85%以下に設定されていることが好適である。
【0035】
また、胴部11及び接続部14の外周面には、発泡樹脂層上端部P1と発泡樹脂層下端部P2の間(管軸O方向における発泡樹脂層と対応する範囲)にバリ113Vが形成されている。
【0036】
また、バリ113Vの取付けリブ16の外周部に位置される部分には、樹脂溜まり部(不図示)を除去する際に、バリ113Vの端面(除去面)に形成されたバリ除去痕113Aが管軸O方向に沿って形成(露出)されている。
ここで、バリ除去痕113Vは、少なくとも一部に発泡樹脂が露出していることが好適である。
【0037】
下部管端部13は、伸縮継手10の下側(第2管端部)に配置され管軸Oに沿って形成された円筒形状とされていて、内方に受口部13Hが形成されている。
この実施形態において、受口部13Hは、受口部11Hと同じ内径に形成されている。
【0038】
また、下部管端部13の接続部14側の端部には段差部15が形成されていて、段差部15には、下側立て配管(配管部材)120の管端を当接して封止するためのシール部材17が配置されている。
【0039】
<伸縮継手の作用>
以下、図4A図4Bを参照して、伸縮配管構造100における伸縮継手10の作用について説明する。図4A図4Bは、第1実施形態に係る伸縮配管構造の作用の概略を説明する図であり、図4Aは上側立て配管が収縮した状態を、図4Bは上側立て配管が伸びた状態を示す概念図である。図において、符号LAは上側立て配管110の管端110Tの上限を、及び符号LBは管端110Tの下限を示している。
【0040】
まず、上側立て配管110が収縮した状態について説明する。
例えば、外気温度が低下すると、上側立て配管110は収縮して管端110Tが矢印T1方向に移動する。
発泡樹脂層上端部P1は、例えば、上側立て配管110が収縮したときの管端110Tの上限LAが、発泡樹脂層上端部P1よりも下方に位置されるように設定されている。
【0041】
したがって、上側立て配管110が収縮して、例えば、伸縮配管構造100を流れる水が伸縮継手10の内面に直接接触したとしても、発泡樹脂層113によって伸縮継手10の内面から外面に熱伝導するのが抑制される。その結果、伸縮継手10に結露が生じるのを抑制することができる。
【0042】
次に、上側立て配管110が伸びた状態について説明する。
例えば、外気温度が上昇すると、上側立て配管110が伸びて管端110Tが矢印T2方向に移動する。
発泡樹脂層下端部P2は、例えば、上側立て配管110が伸びたときの管端110Tの下限LBが、発泡樹脂層下端部P2よりも上方に位置されるように設定されている。
【0043】
したがって、上側立て配管110が伸びても、発泡樹脂層113によって伸縮継手10の内面から外面に熱伝導するのが抑制される。その結果、伸縮継手10に結露が生じるのを抑制することができる。
【0044】
<伸縮継手の製造方法>
以下、図5図6A図6Bを参照して、第1実施形態に係る伸縮継手の製造方法の概略について説明する。この実施形態において、伸縮継手は、例えば、射出成形により製造されている。
【0045】
射出成形では、例えば、第1射出工程で、加熱溶融した非発泡性樹脂組成物をなす第1樹脂を射出成形金型内に射出し、その後、第2射出工程で、加熱溶融した発泡性樹脂組成物をなす第1樹脂を射出成形金型内に射出して、冷却後に射出成形金型から取り出す。
【0046】
射出成形において、射出成形金型内に射出される直前の発泡性樹脂組成物の温度(成形温度)は200℃以上280℃以下が好ましく、220℃以上260℃以下がより好ましい。成形温度が前記範囲内であると熱可塑性樹脂の熱分解を抑えて透明性の低下を防ぎ、また、充分に溶融させて、発泡性樹脂組成物の良好な流動性が得られる。
金型で成形するときの時間は、1分以上10分以下が好ましい。前記下限値以上であれば、十分に硬化させることができ、前記上限値以下であれば、発泡樹脂成形品の生産性を向上しやすい。
【0047】
第1射出工程、第2射出工程では、射出後に加熱してもよい。第1射出工程、第2射出工程において、加熱する場合の加熱時間、加熱温度は適宜設定することが可能である。また、冷却時間、冷却速度についても適宜設定することが可能である。
【0048】
以下、図5を参照して、第1実施形態に係る伸縮継手を製造するための射出成形金型の概略構成について説明する。図5は、射出成形金型の概略構成を説明する縦断面図である。なお、図5は、図2に矢視III-IIIで示した断面と対応する立て断面である。図5において、符号200は射出成形金型を、符号C200はキャビティーを、符号C201は樹脂溜まり部を、符号C202は樹脂逃がし溝を、符号210はインサートコア(中子)を、符号220は外金型を示している。
【0049】
射出成形金型200は、図5に示すように、例えば、インサートコア(中子)210と、外金型220とを備えている。そして、インサートコア(中子)210と外金型220の間に伸縮継手と対応するキャビティーC200が形成されるように構成されている。
【0050】
インサートコア(中子)210は、例えば、受口部11Hと対応し軸線O1に沿って進退可能に構成される第1インサートコア(中子)210Aと、受口部13Hと対応し軸線O1に沿って進退可能に構成される第2インサートコア(中子)210Bと、を備えている。第1インサートコア210A、第2インサートコア210Bは、型締め状態において、互いの先端部が当接するとともに、それぞれの基端部が、外金型220と協働してキャビティーC200を外部に対して封止する。
【0051】
外金型220は、例えば、図5に示す断面を型合わせ面にして、左右(図5における手前側と向こう側)に分割可能に構成され型合わせ面に鏡対称の一対の金型部材220Aと、金型部材220Bとを備えている。
【0052】
また、外金型220は、例えば、型合わせ面に、射出ノズル200Jと、樹脂溜まり部C201と、キャビティーC200と樹脂溜まり部C201とを接続する樹脂逃がし溝C202が形成されている。
樹脂逃がし溝C202は、例えば、樹脂溜まり部202よりも薄肉(小さな間隔)に形成され、取付けリブ16よりも外周側まで形成することが好適である。
【0053】
かかる構成により、樹脂逃がし溝C202によって形成された薄肉のバリ113Vを、射出成形後に容易に折ることができ、複雑な加工をせずに、胴部11及び接続部14の全周に発泡樹脂層113を形成させることができる。
【0054】
樹脂溜まり部C201は、射出ノズル200Jと反対側に形成されていて、発泡樹脂層を形成するための第2樹脂が、伸縮継手10の胴体11の周方向全周に安定して充填されるように構成されている。
なお、樹脂溜まり部C201、樹脂逃がし溝C202は、一対の金型部材220A、220Bの一方の側のみに形成されていてもよい。
【0055】
次に、図6A図6Bを参照して、伸縮継手の製造方法の概略について説明する。
図6A図6Bは、伸縮継手の製造方法の概略を説明する図であり、図6Aは第1射出工程、図6Bは第2射出工程における管軸方向に沿って見た伸縮継手の胴部の断面を示す概念図である。
【0056】
(1)第1射出工程
まず、成形金型200に射出ノズル(不図示)を装着する。そして、キャビティーC200に非発泡樹脂層を形成する第1樹脂J1を射出する。
キャビティーC200に射出した第1樹脂J1は、図6Aに示すように、例えば、キャビティーC200の途中まで充填される。第1樹脂J1の充填量については、適宜設定することが可能である。
【0057】
〔非発泡性樹脂組成物〕
非発泡樹脂層を形成する非発泡性樹脂組成物は、この実施形態において、例えば、ABS樹脂とAES樹脂とから選択される1種以上の第1樹脂を含んで構成されている。
【0058】
第1樹脂J1は、シアン化ビニルモノマーに由来する単位の含有量が、第1樹脂J1の総質量に対して10質量%以上50質量%以下が好ましく、15質量%以上45質量%以下がより好ましい。シアン化ビニルモノマーに由来する単位の含有量が上記下限値以上であると、引張強さを向上させることができる。シアン化ビニルモノマーに由来する単位の含有量が上記上限値以下であると、衝撃強さを向上させることができる。
【0059】
第1樹脂J1は、ゴム成分の含有量が、第1樹脂J1の総質量に対して1質量%以上15質量%以下であり、3質量%以上13質量%以下が好ましく、5質量%以上12質量%以下がより好ましく、5質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。ゴム成分の含有量が上記下限値以上であると強度を高めやすい。ゴム成分の含有量が上記上限値以下であると、耐薬品性をより向上しやすい。
【0060】
第1樹脂J1は、芳香族ビニルモノマーに由来する単位の含有量が、第1樹脂J1の総質量に対して15質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上50質量%以下がより好ましい。芳香族ビニルモノマーに由来する単位の含有量が上記下限値以上であると、押込み硬さを向上させることができる。芳香族ビニルモノマーに由来する単位の含有量が上記上限値以下であると、衝撃強さを向上させることができる。
【0061】
第1樹脂J1における各成分の含有量は、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)を用いた分析により求められる。
以下にPGC/MSを用いた測定条件の例を示す。
[測定条件]
・装置
熱分解装置:PY-2020iD(フロンティア・ラボ)。
ガスクロマトグラフ:GC 2010(島津製作所)。
質量分析装置:GCMS-QP 2010(島津製作所)。
・熱分解条件
熱分解温度:550℃。
インターフェース温度:250℃。
・ガスクロマトグラフ条件。
キャリアー流量:1ml/min(He)。
スプリット比:100:1。
分離カラム:DB-1(1.00μm、0.25mmφ×30m)。
オーブン温度:40℃(3min)-320℃(10min)。
・質量分析条件
インターフェース温度:250℃。
イオン化温度:220℃。
マスレンジ:28~700m/z。
電圧:1.2kV。
【0062】
PGC/MSの測定により第1樹脂J1における各成分の含有量を算出する方法について説明する。
まず、第1樹脂J1を構成する各成分を熱分解ガスクロマトグラフィーにより熱分解・分離し、各成分がピークとして記録された熱分解パターン(パイログラム)を得る。次に、熱分解パターンの各ピークについて、質量分析装置により得られるマススペクトルによってアクリロニトリル、ゴム成分、スチレンの各成分を特定する。
ここで、アクリロニトリル、ゴム成分、スチレンの各成分は熱分解による解重合率(重合体が単量体に分解する割合)が異なるため、各成分のピークの面積(X)を、熱分解による各成分の解重合率(Y)で割ったものを各成分のピーク面積(Z)とする。各成分の解重合率(Y)は、アクリロニトリル:0.15、ゴム成分:0.10、スチレン:1.0である。
そして、熱分解パターンの各成分のピーク面積(Z)の総和(T)に対する比率(Z/T)を、第1樹脂J1における各成分の含有量とする。
【0063】
非発泡性樹脂組成物において、非発泡性樹脂組成物の総質量に対する第1樹脂J1の含有量は、45質量%以上90質量%以下が好ましく、50質量%以上85質量%以下がより好ましい。
【0064】
本実施形態の非発泡性樹脂組成物は、第1樹脂J1以外の他の樹脂を含有してもよい。
他の樹脂としては、例えば、ポリビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されても良い。
【0065】
本実施形態の非発泡性樹脂組成物は、ポリアクリル樹脂をさらに含有することが好ましい。ポリアクリル樹脂としては、例えば、アクリル酸エステルの重合体やメタクリル酸エステルの重合体が挙げられる。アクリル酸エステルの重合体としては、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸グリシジル等が挙げられる。メタクリル酸エステルの重合体としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
ポリアクリル樹脂の含有量は、非発泡性樹脂組成物中の樹脂の総質量に対して、20質量%以上60質量%以下が好ましく、30質量%以上50質量%以下がより好ましい。ポリアクリル樹脂の含有量が上記数値範囲内であると、発泡樹脂成形品の強度及び透明度を高めやすい。
ポリアクリル樹脂の含有量は、非発泡性樹脂組成物の総質量に対して、10質量%以上55質量%以下が好ましく、20質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0066】
第1樹脂J1とその他の樹脂を含有する非発泡性樹脂組成物における各成分の含有量は、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)を用いた分析により求められる。測定条件としては、第一の樹脂と同様の条件で測定できる。第1樹脂J1における各成分の含有量は、第一の樹脂における各成分の含有量と同一の算出方法で算出できる。
なお、アクリロニトリル、ゴム成分、スチレン、ポリアクリル樹脂の解重合率は、アクリロニトリル:0.15、ゴム成分:0.10、スチレン:1.0、ポリアクリル樹脂:1.0である。
【0067】
非発泡性樹脂組成物において、第1樹脂J1の含有量は、非発泡性樹脂組成物中の樹脂の総質量に対して、40質量%以上100質量%以下が好ましく、45質量%以上100質量%以下がより好ましく、50質量%以上100質量%以下がさらに好ましい。
【0068】
本実施形態の非発泡性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、第1樹脂J1以外の他の成分(任意成分)を含んでもよい。
【0069】
なお、任意成分の含有量は、第1樹脂J1の100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
【0070】
本実施形態の非発泡性樹脂組成物は、第1樹脂J1及び任意成分を含むことができる。非発泡性樹脂組成物は、全成分が予め混合された混合物でもよく、全成分の一部又は全部を成形機内で混合する形態でもよい。全成分を予め混合した混合物は粉状でもよく、ペレット状でもよい。
本実施形態の非発泡性樹脂組成物は、非発泡樹脂層を形成し、本発明の発泡樹脂成形品の外表面を覆っている。加えて、本実施形態の非発泡性樹脂組成物は、第1樹脂J1におけるゴム成分の含有量が、第1樹脂J1の総質量に対して1質量%以上15質量%以下である。そのため、非発泡樹脂層は耐薬品性に優れ、本発明の発泡樹脂成形品は耐薬品性に優れる。
【0071】
(2)第2射出工程
次に、成形金型200に射出ノズル(不図示)を装着して、キャビティーC200内に発泡樹脂層を形成する発第2樹脂J2を射出する。
射出した第2樹脂J2は、図6Bに示すように、例えば、第1射出工程で充填された第1樹脂J1を押しのけながら第1樹脂J1内を進行して第1樹脂J1内に充填されるとともに、キャビティーC200内で第1樹脂J1を樹脂溜まり部C201に向かって移動させる。このとき、インサートコア210、外金型220で冷却された第1樹脂J1は非発泡樹脂層111、112を形成する。そして、第2樹脂J2は、第1樹脂J1を樹脂逃がし溝C202を介して樹脂溜まり部C201に押し込むことで樹脂逃がし溝C202側で合流する。
なお、第2射出工程では、第1樹脂J1のみが樹脂溜まり部C201に移動してもよいし、第1樹脂J1及び第2樹脂J2の両方が樹脂溜まり部C201に充填されてもよい。
その結果、第2樹脂J2は、非発泡樹脂層111及び非発泡樹脂層112の間に安定して充填され、伸縮継手本体の胴部11及び接続部14の全周にわたって発泡樹脂層113が形成される。
第2射出成形工程における伸縮継手10の射出成形品(中間製品)の成形、冷却が完了したら射出成形金型200からバリ及び樹脂溜まり部が付いた状態の射出成形品を取り出す。
【0072】
〔発泡性樹脂組成物〕
発泡樹脂層を形成する発泡性樹脂組成物は、この実施形態において、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体とアクリロニトリル-エチレンプロピレンジエン-スチレン共重合体とから選択される1種以上の第2樹脂J2と発泡剤とを含む。
【0073】
第2樹脂J2は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(以下、ABS樹脂ともいう。)とアクリロニトリル-エチレンプロピレンジエン-スチレン共重合体(以下、AES樹脂ともいう。)とから選択される1種以上である。
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体及びアクリロニトリル-エチレンプロピレンジエン-スチレン共重合体は、ゴム成分の存在下で、芳香族ビニルモノマーとシアン化ビニルモノマーとを重合して得られる樹脂である。
本明細書において、ゴム成分とは、ポリブタジエンやポリイソプレン等のジエン系ゴムの原料となるモノマー成分のことをいう。
ゴム成分としては、ブタジエン、イソプレン、エチレン、プロピレン等が挙げられる。
芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
シアン化ビニルモノマーとしては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどが挙げられる。
【0074】
第2樹脂J2は、シアン化ビニルモノマーに由来する単位の含有量が、第2樹脂J2の総質量に対して10質量%以上50質量%以下が好ましく、15質量%以上45質量%以下がより好ましい。シアン化ビニルモノマーに由来する単位の含有量が上記下限値以上であると、引張強さを向上させることができる。シアン化ビニルモノマーに由来する単位の含有量が上記上限値以下であると、衝撃強さを向上させることができる。
【0075】
第2樹脂J2のゴム成分の含有量は、特に限定されず、第2樹脂J2の総質量に対して1質量%以上20質量%以下が好ましい。
【0076】
第2樹脂J2は、芳香族ビニルモノマーに由来する単位の含有量が、第2樹脂J2の総質量に対して15質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上50質量%以下がより好ましい。芳香族ビニルモノマーに由来する単位の含有量が上記下限値以上であると、押込み硬さを向上させることができる。芳香族ビニルモノマーに由来する単位の含有量が上記上限値以下であると、衝撃強さを向上させることができる。
【0077】
第2樹脂J2における各成分の含有量は、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)を用いた分析により求められる。測定条件としては、第1樹脂J1と同様の条件で測定できる。
【0078】
発泡性樹脂組成物において、発泡性樹脂組成物の総質量に対する第2樹脂J2の含有量は、45質量%以上90質量%以下が好ましく、50質量%以上85質量%以下がより好ましい。
【0079】
本実施形態の発泡性樹脂組成物は、第2樹脂J2以外の他の樹脂を含有してもよい。
他の樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸グリシジル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸グリシジル等のポリアクリル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されても良い。
【0080】
発泡性樹脂組成物において、第2樹脂J2の含有量は、発泡性樹脂組成物中の樹脂の総質量に対して、70質量%以上100質量%以下が好ましく、85質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0081】
〔発泡剤〕
発泡剤としては、揮発性発泡剤、分解型発泡剤のいずれを使用してもよい。
揮発性発泡剤としては、例えば脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、ケトン等が挙げられる。このうち脂肪族炭化水素としては、例えばプロパン、ブタン(ノルマルブタン、イソブタン)、ペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタンなど)等が挙げられ、脂環族炭化水素としては、例えばシクロペンタン、シクロへキサン等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、例えばトリクロロフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素などの1種または2種以上が挙げられる。さらにエーテルとしては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル等が挙げられ、ケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0082】
分解型発泡剤としては、例えば重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウムなどの無機系発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどの有機系発泡剤が挙げられる。
その他、炭酸ガス、窒素、空気等のガスを発泡剤として用いてもよい。
発泡性能に優れる観点から、分解型発泡剤が好ましく、中でも重曹、アゾジカルボンアミドがより好ましい。
これらは単独で用いられても良く、2種以上が併用されてもよい。
発泡剤の含有量は、第2樹脂J2の100質量部に対して、0.1質量部以上8質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下がより好ましく、1質量部以上3質量部以下がさらに好ましい。
【0083】
本発明の発泡性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、第2樹脂J2、発泡剤、以外の他の成分(任意成分)を含んでもよい。
【0084】
任意成分の含有量は、第2樹脂J2の100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
【0085】
本発明の発泡性樹脂組成物は、第2樹脂J2、発泡剤、及び任意成分を含むことができる。発泡性樹脂組成物は、全成分が予め混合された混合物でもよく、全成分の一部又は全部を成形機内で混合する形態でもよい。全成分を予め混合した混合物は粉状でもよく、ペレット状でもよい。
【0086】
次に、射出成形金型から取り出した射出成形品を、例えばトリミングプレス工程や切断工程に移行して、バリ及び樹脂溜まり部を除去する。
その結果、バリの端面にバリ除去痕が形成される。なお、例えば、研削工程等において、バリ除去痕を表面処理してもよい。
【0087】
第1実施形態に係る伸縮継手10及び伸縮配管構造100によれば、継手本体の胴部11及び接続部14内部の全周にわたって形成された発泡樹脂層113を備えているので、上側断熱配管(配管部材)110が収縮して、低温の水が伸縮継手10の内面に直接接触したとしても、伸縮継手10の外面が冷却されるのが抑制される。
その結果、伸縮継手10の外面が結露するのを抑制することができる。
【0088】
また、第1実施形態に係る伸縮継手10によれば、発泡樹脂層113が上側断熱配管110の管端110Tが、管軸O方向に沿って移動する全長(<L)にわたって形成されているので、上側断熱配管110が伸縮しても伸縮継手10の外部が結露するのが抑制される。
【0089】
また、第1実施形態に係る伸縮継手10によれば、管軸O方向における発泡樹脂層113が埋設された範囲(P1~P2)の全長L0にわたってバリ除去痕113Aが形成されているので、軸方向における対象範囲全長Lにわたり胴部11内部の全周にわたって発泡樹脂層113を安定して埋設することができる。
また、対象範囲の全長にわたって発泡樹脂層が形成されているかどうかを効率的に検査することができる。
また、配管施工時に発泡樹脂層が形成された範囲を容易に確認することで効率的に施工することができる。
【0090】
第1実施形態に係る伸縮継手10によれば、胴部11の肉厚は6.5mm以上13mm以下に形成され、発泡樹脂層113の肉厚は胴部11の肉厚の50%以上85%以下に形成されているので断熱効果を効率的に確保することができる。
【0091】
<第2実施形態>
次に、図7を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
図7は、本発明の第2実施形態に係る伸縮継手の概略構成を説明する斜視図である。図7において、符号10Aは伸縮継手を、符号113Bはバリ除去痕を示している。
【0092】
伸縮継手10Aは、図7に示すように、胴部11と、シール取付部12と、下部管端部13と、接続部14と、を備えている。また、胴部11の下部には下部管端部13に向かって縮径される接続部14が形成されている。
【0093】
また、胴部11には、周方向全周にわたって形成された複数の取付け用リブ16が、管軸O方向に間隔をあけて配置されている。
また、胴部11には、管軸O方向において、発泡樹脂層(不図示)が埋設された範囲の全長にわたってバリ除去痕113Aが形成されている。
第3実施形態に係る伸縮継手10Aが第1実施形態に係る伸縮継手10と異なるのは、樹脂逃がし溝によって形成されたバリ113Vが、取付けリブ16の外径に沿って除去され、バリ除去痕113Aが取付けリブ16の凹凸にしたがって形成されている点であり、その他は第1実施形態と同様であるので同じ符号を付して説明を省略する。
【0094】
<第3実施形態>
次に、図8を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
図8は、本発明の第3実施形態に係る伸縮継手の概略構成を説明する斜視図である。図8において、符号10Bは伸縮継手を、符号113Cはバリ除去痕を示している。
【0095】
伸縮継手10Bは、図8に示すように、胴部11と、シール取付部12と、下部管端部13と、接続部14と、を備えている。
【0096】
また、胴部11には、管軸O方向において、発泡樹脂層(不図示)が埋設された範囲の全長にわたってバリ除去痕113Cが形成されている。
第3実施形態に係る伸縮継手10Bが第1実施形態に係る伸縮継手10と異なるのは、胴部11に取付けリブが形成されていない点であり、の他は第1実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0097】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
【0098】
例えば、上記実施形態においては、伸縮継手10の胴部11及び接続部14の全長にわたって発泡樹脂層113が形成されている場合について説明したが、例えば、発泡樹脂層113が管軸O方向における胴部11の一部の範囲に形成されていてもよい。
【0099】
また、上記実施形態においては、伸縮継手10が、空調装置のドレンを排出する伸縮配管構造100に適用される場合について説明したが、空調装置のドレンを排出する目的に適用してもよい。
【0100】
また、上記実施形態においては、バリ及びバリ除去痕が、発泡樹脂層113の全長にわたって形成される場合について説明したが、継手本体の発泡樹脂層と対応する部位にバリを形成するかどうかは適宜設定することが可能であり、バリを形成する場合にバリ及びバリ除去痕を管軸O方向におけるどの範囲に設定するかは適宜設定可能である。
【0101】
また、上記実施形態においては、上側断熱配管110、下側断熱配管120の外壁部、内壁部を構成する樹脂が、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレンの非発泡樹脂である場合について説明したが、上側断熱配管110、下側断熱配管120の外壁部、内壁部を構成する樹脂は適宜設定することが可能である。
【0102】
また、上記実施形態においては、上側断熱配管110、下側断熱配管120の断熱層を構成する樹脂が、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレンの発泡樹脂である場合について説明したが、上側断熱配管110、下側断熱配管120の断熱層を構成する樹脂は適宜設定することが可能である。
【0103】
また、上記実施形態においては、伸縮継手10において非発泡樹脂層111、112を構成する樹脂が、例えば、ABS樹脂とAES樹脂とから選択される1種以上の第1樹脂を含んで構成される場合について説明したが、伸縮継手10を形成する樹脂は適宜設定することが可能である。
【0104】
また、上記実施形態においては、伸縮継手10において発泡樹脂層113を構成する樹脂が、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体とアクリロニトリル-エチレンプロピレンジエン-スチレン共重合体とから選択される1種以上の第2樹脂J2と発泡剤とを含む場合について説明したが、発泡樹脂層113を構成する樹脂は適宜設定することが可能である。
また、発泡樹脂層113と非発泡樹脂層111、112を構成する樹脂を異なる材質としてもよい。
【0105】
また、上記実施形態においては、伸縮継手10は、胴部11の肉厚は6.5mm以上13mm以下に形成され、発泡樹脂層113の肉厚が胴部11の肉厚の50%以上85%以下に形成されている場合について説明したが、胴部11の肉厚、発泡樹脂層113の肉厚については、適宜設定することが可能である。
【0106】
また、上記実施形態においては、伸縮継手10が下側管端部(第2管端部)が受口部13Hである場合について説明したが、例えば、下側管端部(第2管端部)が差込み部とされていてもよい。
【0107】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態を適宜組み合わせて適用してもよい。
【符号の説明】
【0108】
P1 発泡樹脂層上端部
P2 発泡樹脂層下端部
10、10A、10B 伸縮継手
11 胴部
11H 受口部
12 シール取付け部
13 下側管端部(第2管端部)
13H 受口部
14 接続部
15 段差部
16 取付けリブ
17 シール部材
110 上側断熱配管(配管部材)
120 下側断熱配管(配管部材)
100 伸縮配管構造
111、112 非発泡樹脂層
113 発泡樹脂層
113A、113B、113C バリ除去痕
C201 樹脂溜まり部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9