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特許7184591車両用画像処理装置、車両用画像処理方法、プログラムおよび記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】車両用画像処理装置、車両用画像処理方法、プログラムおよび記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/20 20060101AFI20221129BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20221129BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221129BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G06T1/20 A
G06T1/00 330Z
G06T7/00 650Z
G08G1/16 C
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2018194136
(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公開番号】P2020064341
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中尾 健太
(72)【発明者】
【氏名】杉本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】松本 知浩
(72)【発明者】
【氏名】二橋 謙介
【審査官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-148327(JP,A)
【文献】特開2007-214769(JP,A)
【文献】特開2006-311003(JP,A)
【文献】特開2017-151541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/20
G06T 1/00
G06T 7/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置された複数のカメラからそれぞれ逐次入力される画像データを前記複数のカメラと対応付けて蓄積するよう構成された複数のバッファと、
前記車両の状態情報に基づいて選択する前記バッファから前記画像データを取得して画像処理を実行するよう構成されたプロセッサと、
前記複数のバッファの各々の前記画像データを前記プロセッサに転送するための信号線と、
前記プロセッサから要求された前記バッファの前記画像データを前記信号線に出力するよう構成された転送コントローラと、を備え
前記状態情報は車速を含んでおり、
前記プロセッサは、前記車速と閾値との比較に基づいて、前記バッファの選択を実行し、
前記複数のカメラは、前記車両の進行方向における遠距離を撮影するための遠距離カメラ、および前記車両の進行方向を撮影するための、前記遠距離カメラよりも画角が広くかつ近距離を撮影するための近距離カメラを含み、
前記閾値は、第2閾値を含み、
前記プロセッサは、前記車速が前記第2閾値以上の場合には前記遠距離カメラで撮影された前記画像データが蓄積される前記バッファを選択し、前記車速が前記第2閾値よりも小さい場合には前記近距離カメラで撮影された前記画像データが蓄積される前記バッファを選択する
ことを特徴とする車両用画像処理装置。
【請求項2】
車両に設置された複数のカメラからそれぞれ逐次入力される画像データを前記複数のカメラと対応付けて蓄積するよう構成された複数のバッファと、
前記車両の状態情報に基づいて選択する前記バッファから前記画像データを取得して画像処理を実行するよう構成されたプロセッサと、
前記複数のバッファの各々の前記画像データを前記プロセッサに転送するための信号線と、
前記プロセッサから要求された前記バッファの前記画像データを前記信号線に出力するよう構成された転送コントローラと、を備え、
前記状態情報は車速を含んでおり、
前記プロセッサは、前記車速と閾値との比較に基づいて、前記バッファの選択を実行し、
前記閾値は、切替開始閾値、および前記切替開始閾値との差が第1値となる切替完了閾値を含み、
前記プロセッサは、
単位時間当たり所定数の前記画像データの前記画像処理を実行するよう構成されると共に、
前記切替開始閾値と前記切替完了閾値との間に前記車速がある場合には、前記単位時間当たりに前記画像処理する前記所定数の画像データが、前記車速が前記切替開始閾値から前記切替完了閾値に近づくほど、前記切替開始閾値になる前のものから前記切替完了閾値になった場合のものに置き換わるように、選択する前記バッファを切り替える
ことを特徴とする車両用画像処理装置。
【請求項3】
車両に設置された複数のカメラからそれぞれ逐次入力される画像データを前記複数のカメラと対応付けて蓄積するよう構成された複数のバッファと、
前記車両の状態情報に基づいて選択する前記バッファから前記画像データを取得して画像処理を実行するよう構成されたプロセッサと、
前記複数のバッファの各々の前記画像データを前記プロセッサに転送するための信号線と、
前記プロセッサから要求された前記バッファの前記画像データを前記信号線に出力するよう構成された転送コントローラと、を備え、
前記車両は産業用車両であり、
前記状態情報は、車速および操舵角を含んでおり、
前記プロセッサは、前記状態情報に基づいて前記車両の旋回が右旋回か左旋回かを判定すると共に、前記右旋回時には進行方向に向かって少なくとも前方右側および後方左側が撮影される前記画像データが蓄積される前記バッファを選択し、前記左旋回時には進行方向に向かって少なくとも前方左側および後方右側が撮影される前記画像データが蓄積される前記バッファを選択する
ことを特徴とする車両用画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記状態情報に基づいて、前記複数のバッファのうちの少なくとも1つの前記バッファを選択対象として決定し、前記選択対象に含まれる前記バッファの選択頻度を他のバッファの選択頻度よりも高くすることにより、前記選択対象に含まれる前記1以上の前記バッファを逐次選択するよう構成されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用画像処理装置。
【請求項5】
前記複数のバッファおよび前記転送コントローラが設けられたキャプチャユニットと、
前記転送コントローラによって前記信号線に出力される、前記プロセッサが前記画像処理を実行する前記画像データを保持するよう構成されたワークバッファと、
前記プロセッサおよび前記ワークバッファが設けられたプロセッサユニットと、をさらに備え、
前記信号線は、前記キャプチャユニットの前記複数のバッファと、前記プロセッサユニットの前記ワークバッファとを相互に接続することが可能に構成されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用画像処理装置。
【請求項6】
前記状態情報は車速を含んでおり、
前記プロセッサは、前記車速と閾値との比較に基づいて、前記バッファの選択を実行することを特徴とする請求項3に記載の車両用画像処理装置。
【請求項7】
前記複数のカメラは、前記車両の周囲を1台以上で撮影するための前記1台以上のカメラを含み、
前記閾値は、第1閾値を含み、
前記プロセッサは、前記車速が前記第1閾値よりも小さい場合には、前記車両の全周囲を撮影するための前記1台以上のカメラで撮影された前記画像データが蓄積される前記バッファを選択することを特徴とする請求項1、2、6のいずれか1項に記載の車両用画像処理装置。
【請求項8】
前記複数のカメラは、前記車両の前方および後方をそれぞれ撮影するためのカメラを含み、
前記状態情報は、前記車両のギアのシフトポジションをさらに含み、
前記閾値は、第1閾値、および前記第1閾値よりも大きい第2閾値を含み、
前記プロセッサは、前記車速が前記第1閾値以上で、かつ、前記第2閾値よりも小さい場合において、前記シフトポジションが前進を示す場合には、前記車両の前方を撮影するための前記カメラで撮影された前記画像データが蓄積される前記バッファのみを選択し、前記シフトポジションが後退を示す場合には、前記車両の後方を撮影するための前記カメラで撮影された前記画像データが蓄積される前記バッファのみを選択することを特徴とする請求項1、2、6、7のいずれか1項に記載の車両用画像処理装置。
【請求項9】
前記複数のカメラは、前記車両の進行方向における遠距離を撮影するための遠距離カメラ、および前記車両の進行方向を撮影するための、前記遠距離カメラよりも画角が広くかつ近距離を撮影するための近距離カメラを含み、
前記閾値は、第2閾値を含み、
前記プロセッサは、前記車速が前記第2閾値以上の場合には前記遠距離カメラで撮影された前記画像データが蓄積される前記バッファを選択し、前記車速が前記第2閾値よりも小さい場合には前記近距離カメラで撮影された前記画像データが蓄積される前記バッファを選択することを特徴とする請求項2、6、7、8のいずれか1項に記載の車両用画像処理装置。
【請求項10】
前記閾値は、切替開始閾値、および前記切替開始閾値との差が第1値となる切替完了閾値を含み、
前記プロセッサは、
単位時間当たり所定数の前記画像データの前記画像処理を実行するよう構成されると共に、
前記切替開始閾値と前記切替完了閾値との間に前記車速がある場合には、前記単位時間当たりに前記画像処理する前記所定数の画像データが、前記車速が前記切替開始閾値から前記切替完了閾値に近づくほど、前記切替開始閾値になる前のものから前記切替完了閾値になった場合のものに置き換わるように、選択する前記バッファを切り替えることを特徴とする請求項1、6、7~9のいずれか1項に記載の車両用画像処理装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記車速が前記切替開始閾値になった場合には、前記切替完了閾値になった場合に選択すべき前記バッファに対応する前記カメラと、撮影方向において最も関連のない前記カメラに対応する前記バッファから切り替えることを特徴とする請求項2または10に記載の車両用画像処理装置。
【請求項12】
特定場所における監視方向の指示を含む特性情報を取得する取得部を、さらに備え、
前記プロセッサは、前記走行位置および前記特性情報に基づいて前記複数のバッファの少なくとも1つを選択することを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の車両用画像処理装置。
【請求項13】
前記車両は産業用車両であり、
前記状態情報は、車速および操舵角を含んでおり、
前記プロセッサは、前記状態情報に基づいて前記車両の旋回が右旋回か左旋回かを判定すると共に、前記右旋回時には進行方向に向かって少なくとも前方右側および後方左側が撮影される前記画像データが蓄積される前記バッファを選択し、前記左旋回時には進行方向に向かって少なくとも前方左側および後方右側が撮影される前記画像データが蓄積される前記バッファを選択することを特徴とする請求項1、2、4、5、7~12のいずれか1項に記載の車両用画像処理装置。
【請求項14】
前記複数のカメラは、前記車両の右側を撮影するための右側撮影カメラ、および左側を撮影するための左側撮影カメラを含み、
前記プロセッサは、右旋回時には、前記右側撮影カメラおよび前記左側撮影カメラでそれぞれ撮影された前記画像データの左側の一部の領域に対して前記画像処理を実行し、前記左旋回時には、前記右側撮影カメラおよび前記左側撮影カメラでそれぞれ撮影された前記画像データの右側の一部の領域に対して前記画像処理を実行することを特徴とする請求項3または13に記載の車両用画像処理装置。
【請求項15】
前記状態情報は、操舵角と、前記車両のギアのシフトポジションと、を含み、
前記プロセッサは、前記操舵角および前記シフトポジションに基づいて前記車両が走行する経路を推定すると共に、前記推定結果に基づいて、前記バッファから取得した前記画像データに含まれる一部の領域に対して前記画像処理を実行することを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の車両用画像処理装置。
【請求項16】
前記複数のカメラは、前記車両の第1方向を撮影するための第1カメラ、および前記第1方向とは異なる方向を撮影するための第2カメラを含み、
前記第1カメラおよび前記第2カメラによりそれぞれ撮影された前記画像データの輝度に基づいて、前記複数のカメラの各々の撮影パラメータを調節する調節部を、さらに備えることを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載の車両用画像処理装置。
【請求項17】
車両に設置された複数のカメラからそれぞれ逐次入力される画像データを前記複数のカメラと対応付けて蓄積するよう構成された複数のバッファと、
車速を含む前記車両の状態情報に基づいて選択する前記バッファから前記画像データを取得して画像処理を実行するよう構成されたプロセッサと、
前記複数のバッファの各々の前記画像データを前記プロセッサに転送するための信号線と、
前記プロセッサから要求された前記バッファの前記画像データを前記信号線に出力するよう構成された転送コントローラと、を有するコンピュータの前記プロセッサに実行させる車両用画像処理方法であって、
前記車速と閾値との比較に基づいて、前記バッファの選択を実行するステップを、備え
前記複数のカメラは、前記車両の進行方向における遠距離を撮影するための遠距離カメラ、および前記車両の進行方向を撮影するための、前記遠距離カメラよりも画角が広くかつ近距離を撮影するための近距離カメラを含み、
前記閾値は、第2閾値を含み、
前記プロセッサは、前記車速が前記第2閾値以上の場合には前記遠距離カメラで撮影された前記画像データが蓄積される前記バッファを選択し、前記車速が前記第2閾値よりも小さい場合には前記近距離カメラで撮影された前記画像データが蓄積される前記バッファを選択する
ことを特徴とする車両用画像処理方法。
【請求項18】
車両に設置された複数のカメラからそれぞれ逐次入力される画像データを前記複数のカメラと対応付けて蓄積するよう構成された複数のバッファと、
車速を含む前記車両の状態情報に基づいて選択する前記バッファから前記画像データを取得して画像処理を実行するよう構成されたプロセッサと、
前記複数のバッファの各々の前記画像データを前記プロセッサに転送するための信号線と、
前記プロセッサから要求された前記バッファの前記画像データを前記信号線に出力するよう構成された転送コントローラと、を有するコンピュータの前記プロセッサに実行させる車両用画像処理方法であって、
前記車速と閾値との比較に基づいて、前記バッファの選択を実行するステップを、備え、
前記閾値は、切替開始閾値、および前記切替開始閾値との差が第1値となる切替完了閾値を含み、
前記プロセッサは、
単位時間当たり所定数の前記画像データの前記画像処理を実行するよう構成されると共に、
前記切替開始閾値と前記切替完了閾値との間に前記車速がある場合には、前記単位時間当たりに前記画像処理する前記所定数の画像データが、前記車速が前記切替開始閾値から前記切替完了閾値に近づくほど、前記切替開始閾値になる前のものから前記切替完了閾値になった場合のものに置き換わるように、選択する前記バッファを切り替える
ことを特徴とする車両用画像処理方法。
【請求項19】
車両に設置された複数のカメラからそれぞれ逐次入力される画像データを前記複数のカメラと対応付けて蓄積するよう構成された複数のバッファと、
車速を含む前記車両の状態情報に基づいて選択する前記バッファから前記画像データを取得して画像処理を実行するよう構成されたプロセッサと、
前記複数のバッファの各々の前記画像データを前記プロセッサに転送するための信号線と、
前記プロセッサから要求された前記バッファの前記画像データを前記信号線に出力するよう構成された転送コントローラと、を有するコンピュータの前記プロセッサに実行させる車両用画像処理方法であって、
前記車速と閾値との比較に基づいて、前記バッファの選択を実行するステップを、備え、
前記車両は産業用車両であり、
前記状態情報は、車速および操舵角を含んでおり、
前記プロセッサは、前記状態情報に基づいて前記車両の旋回が右旋回か左旋回かを判定すると共に、前記右旋回時には進行方向に向かって少なくとも前方右側および後方左側が撮影される前記画像データが蓄積される前記バッファを選択し、前記左旋回時には進行方向に向かって少なくとも前方左側および後方右側が撮影される前記画像データが蓄積される前記バッファを選択する
ことを特徴とする車両用画像処理方法。
【請求項20】
車両に設置された複数のカメラからそれぞれ逐次入力される画像データを前記複数のカメラと対応付けて蓄積するよう構成された複数のバッファと、
車速を含む前記車両の状態情報に基づいて選択する前記バッファから前記画像データを取得して画像処理を実行するよう構成されたプロセッサと、
前記複数のバッファの各々の前記画像データを前記プロセッサに転送するための信号線と、
前記プロセッサから要求された前記バッファの前記画像データを前記信号線に出力するよう構成された転送コントローラと、を備えたコンピュータの前記プロセッサに、
前記車速と閾値との比較に基づいて、前記バッファの選択を実行するステップを、実行させる車両用画像処理プログラムであって、
前記複数のカメラは、前記車両の進行方向における遠距離を撮影するための遠距離カメラ、および前記車両の進行方向を撮影するための、前記遠距離カメラよりも画角が広くかつ近距離を撮影するための近距離カメラを含み、
前記閾値は、第2閾値を含み、
前記プロセッサは、前記車速が前記第2閾値以上の場合には前記遠距離カメラで撮影された前記画像データが蓄積される前記バッファを選択し、前記車速が前記第2閾値よりも小さい場合には前記近距離カメラで撮影された前記画像データが蓄積される前記バッファを選択する
ことを特徴とする車両用画像処理プログラム。
【請求項21】
車両に設置された複数のカメラからそれぞれ逐次入力される画像データを前記複数のカメラと対応付けて蓄積するよう構成された複数のバッファと、
車速を含む前記車両の状態情報に基づいて選択する前記バッファから前記画像データを取得して画像処理を実行するよう構成されたプロセッサと、
前記複数のバッファの各々の前記画像データを前記プロセッサに転送するための信号線と、
前記プロセッサから要求された前記バッファの前記画像データを前記信号線に出力するよう構成された転送コントローラと、を備えたコンピュータの前記プロセッサに、
前記車速と閾値との比較に基づいて、前記バッファの選択を実行するステップを、実行させる車両用画像処理プログラムであって、
前記閾値は、切替開始閾値、および前記切替開始閾値との差が第1値となる切替完了閾値を含み、
前記プロセッサは、
単位時間当たり所定数の前記画像データの前記画像処理を実行するよう構成されると共に、
前記切替開始閾値と前記切替完了閾値との間に前記車速がある場合には、前記単位時間当たりに前記画像処理する前記所定数の画像データが、前記車速が前記切替開始閾値から前記切替完了閾値に近づくほど、前記切替開始閾値になる前のものから前記切替完了閾値になった場合のものに置き換わるように、選択する前記バッファを切り替える
ことを特徴とする車両用画像処理プログラム。
【請求項22】
車両に設置された複数のカメラからそれぞれ逐次入力される画像データを前記複数のカメラと対応付けて蓄積するよう構成された複数のバッファと、
車速を含む前記車両の状態情報に基づいて選択する前記バッファから前記画像データを取得して画像処理を実行するよう構成されたプロセッサと、
前記複数のバッファの各々の前記画像データを前記プロセッサに転送するための信号線と、
前記プロセッサから要求された前記バッファの前記画像データを前記信号線に出力するよう構成された転送コントローラと、を備えたコンピュータの前記プロセッサに、
前記車速と閾値との比較に基づいて、前記バッファの選択を実行するステップを、実行させる車両用画像処理プログラムであって、
前記車両は産業用車両であり、
前記状態情報は、車速および操舵角を含んでおり、
前記プロセッサは、前記状態情報に基づいて前記車両の旋回が右旋回か左旋回かを判定すると共に、前記右旋回時には進行方向に向かって少なくとも前方右側および後方左側が撮影される前記画像データが蓄積される前記バッファを選択し、前記左旋回時には進行方向に向かって少なくとも前方左側および後方右側が撮影される前記画像データが蓄積される前記バッファを選択する
ことを特徴とする車両用画像処理プログラム。
【請求項23】
請求項20~22のいずれか1項に記載の車両用画像処理プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に設置された複数のカメラによる周囲環境認識に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に設置された複数のカメラを用いて車両の周囲環境認識を行い、状況に応じて自動的に車両を制動するといった技術が多く開発されており、車両の運転支援や自動運転化が進んできている。このような技術は、自車両のみならず、その周囲の人や他の車両などが移動することから、周囲環境認識から警報、制動等の制御へのフィードバックを考慮してカメラによる撮影画像をリアルタイムに処理する必要があるが、複数のカメラの各々毎にプロセッサを設けると車両のコストが膨大になる。
【0003】
このような課題に対して、特許文献1には、複数のステレオカメラがそれぞれI/Oに接続され、撮影された画像データをCPU(画像処理IC)がRAMを用いて適宜画像処理する構成において、状況判断・画像選択部が、複数のステレオカメラで撮影された画像のうちどの画像を画像処理部に出力するかを支援の態様により決定し、画像処理部(前処理部以降)が画像処理を行うことが開示されている。これによって、処理能力の高い演算装置等を不要とでき、コストを低減することが可能とされる。
【0004】
同様に、特許文献2には、入力部に入力されたフロントカメラの画像情報を対象とする前方認識処理、およびリアカメラの画像情報を対象とする後方認識処理を実行可能なCPU(演算部)が、自車両の状態情報(前進及び後退、走行状態を示す情報)に基づいて、前方認識処理及び後方認識処理としてそれぞれ実行される処理を選別して行うことが開示されている。これによって、前方認識処理及び後方認識処理に対して別々のCPUを設けた場合と比較して、構成を簡素にできるとされる。
【0005】
その他、特許文献3には、車両の周囲環境を撮像した撮像画像の一部を、車両の走行環境や走行状態を含む車両状況に応じて対象領域として選択し、その選択した対象領域について画像処理を行うことで、撮像画像全体を画像処理することに比較して処理負荷の抑制が図ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-93013号公報
【文献】特開2018-95067号公報
【文献】特開2015-210584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、状況判断・画像選択部による画像選択のために、複数のステレオカメラの各々による撮影で生成された全ての画像データはCPUに一旦入力される。このため、CPUは、上記の画像選択の前段階において全ての画像データを取り込むための処理を行う必要があり、その分だけ、画像処理に割り当てる稼働時間が少なくなる。同様に、特許文献2でも、CPUは、フロントカメラおよびリアカメラの各々の画像情報が全て入力され、入力された全ての画像情報に対して補正処理(歪み補正)を行った後に、上記の選別を行う。よって、CPUは、全ての画像データを取り込むための処理や、選別外の画像情報に対しても処理を行う必要があるなど、その分だけ、画像処理に割り当てる稼働時間が少なくなる。このように、画像処理のためのプロセッサが行う処理が多くなると、撮影画像をリアルタイムに処理するためにプロセッサにはその分だけ高い処理能力が求められるので、車両のコストの低減が十分にできない可能性がある。
【0008】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、車両のコストを抑制しつつ、複数のカメラの撮影画像をより高速に画像処理することが可能な車両用画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る車両用画像処理装置は、
車両に設置された複数のカメラからそれぞれ逐次入力される画像データを前記複数のカメラと対応付けて蓄積するよう構成された複数のバッファと、
前記車両の状態情報に基づいて選択する前記バッファから前記画像データを取得して画像処理を実行するよう構成されたプロセッサと、
前記複数のバッファの各々の前記画像データを前記プロセッサに転送するための信号線と、
前記プロセッサから要求された前記バッファの前記画像データを前記信号線に出力するよう構成された転送コントローラと、を備える。
【0010】
上記(1)の構成によれば、画像処理のためのプロセッサは、複数のカメラでそれぞれ撮影された画像データが蓄積されるバッファから、転送コントローラにより画像データが転送されるまでは画像データに対するなんらの処理も行わず、転送されることで取得された画像データに対してのみ画像処理を行う。これによって、プロセッサの負荷を軽減でき、より多くの稼働時間を画像処理に割り当てることができる。また、プロセッサは、複数のバッファにそれぞれ蓄積されたカメラ毎の画像データのうち、例えば車速やシフトポジションなどの車両の状態情報に基づいて画像処理の対象とすべきバッファを決定するなどして、画像処理の対象とするカメラを複数の中の少なくとも一部に絞ることで、単位時間に処理すべき画像データ数を削減することができる。
【0011】
このように、画像処理のためのプロセッサは、車両の状態情報に基づいて決定したカメラの画像データを画像処理の対象としつつ、そのような対象の画像データを取得するまでは処理を行わないことにより、複数のカメラを通した車両の周囲の環境認識(人や物の移動検知)をより高速(迅速)に行うことができる。したがって、複数のカメラの各々毎にプロセッサを設けることや、より処理能力に優れた高価なプロセッサの使用を回避できるので、車両のコストを低減することができる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記プロセッサは、
前記状態情報に基づいて、前記複数のバッファのうちの少なくとも1つの前記バッファを選択対象として決定し、前記選択対象に含まれる前記バッファの選択頻度を他のバッファの選択頻度よりも高くすることにより、前記選択対象に含まれる前記1以上の前記バッファを逐次選択するよう構成される。
【0013】
上記(2)の構成によれば、プロセッサは、複数のカメラのうちから画像処理の対象とするカメラ(バッファ)を決定し、決定した1以上のカメラに対応するバッファから順番に画像データを取得して画像処理することにより、単位時間当たりに所定数の画像データの画像処理を実行する。このように、画像処理の対象とするカメラを複数の中の少なくとも一部に絞ることによって単位時間に処理すべき画像データ数を削減することができ、複数のカメラを通した車両の周囲の環境認識(人や物の移動検知)をリアルタイム性良く行うことができる。
【0014】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)~(2)の構成において、
前記複数のバッファおよび前記転送コントローラが設けられたキャプチャユニットと、
前記転送コントローラによって前記信号線に出力される、前記プロセッサが前記画像処理を実行する前記画像データを保持するよう構成されたワークバッファと、
前記プロセッサおよび前記ワークバッファが設けられたプロセッサユニットと、をさらに備え、
前記信号線は、前記キャプチャユニットの前記複数のバッファと、前記プロセッサユニットの前記ワークバッファとを相互に接続することが可能に構成される。
【0015】
上記(3)の構成によれば、複数のバッファで管理されている複数のカメラの各々の画像データは、キャプチャユニットとプロセッサユニットとを接続する信号線を通って、プロセッサユニットに設けられたワークバッファに転送されることで、プロセッサで画像処理されるように構成される。このように、キャプチャユニットにおける複数のバッファの管理や転送処理と、プロセッサユニットにおける画像処理とをハードウェア的に分離することで、上述のように、複数のカメラを通した車両の周囲の環境認識(人や物の検知)をリアルタイム性良く行うことができる。
【0016】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)~(3)の構成において、
前記状態情報は車速を含んでおり、
前記プロセッサは、前記車速と閾値との比較に基づいて、前記バッファの選択を実行する。
【0017】
一般に、プロセッサが単位時間当たり画像処理できる画像データ数には上限がある。したがって、複数のカメラの画像データを順次処理していった場合、カメラ(バッファ)の数が多いほど、単位時間に画像処理されるカメラ当たりの画像データ数は少なくなる。そして、この数が少なくなると、その分だけ、各カメラから順次送られてくる画像データの画像処理に遅れが生じるので、当該カメラの画像処理を通した環境認識のタイムラグが大きくなる。
【0018】
上記(4)の構成によれば、プロセッサは、車速と閾値との比較に基づいて、画像処理の対象とするバッファを決定するなどして選択する。画像処理を通した環境認識におけるタイムラグは、車速が速いほど致命的になり易い反面、車速が遅いと許容範囲となり易い。よって、車速が遅いほどより多くのカメラを画像処理の対象としても、車両の運転支援を適切に行うことが可能である。したがって、車速との関係で画像処理の対象とするカメラを選択することにより、処理能力が比較的劣るプロセッサであっても、複数のカメラによる環境認識を通した車両の運転支援を、リアルタイム性良く適切に実行することができる。
【0019】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記複数のカメラは、前記車両の周囲を1台以上で撮影するための前記1台以上のカメラを含み、
前記閾値は、第1閾値を含み、
前記プロセッサは、前記車速が前記第1閾値よりも小さい場合には、前記車両の全周囲を撮影するための前記1台以上のカメラで撮影された前記画像データが蓄積される前記バッファを選択する。
【0020】
例えば車両が動き出す前の停止時や、車両がクリープ現象等によって非常に低速に移動している状態(発進時状態)では、車両は操舵角次第で様々な位置に移動することが可能である。このため、画角が比較的広く、近距離を適切に撮影することが可能な近距離カメラなどを用いて自車両の全周囲(少なくとも水平方向の全方位)を監視する必要がある。
【0021】
上記(5)の構成によれば、プロセッサは、上述したような状態(発進時状態)を第1閾値により検知した場合には、車両の周囲(全方位)の画像を得るために必要となるな1台以上のカメラ(1台以上の近距離カメラなど)の撮影画像を画像処理の対象にする。これによって、複数のカメラによる監視を通した車両の状況に応じた運転支援を、リアルタイム性良く適切に実行することができる。
【0022】
例えば、車両に設置される複数のカメラが、車両の前後左右の各々を撮影するための合計で4台の近距離カメラが車両に設置されている場合など、全周囲を得るためには画像処理の対象となるカメラ数が多くなり易い。よって、複数のカメラの画像を1画像ずつ順番に切り替えて画像処理を実行した場合、カメラの数が多いほど、各カメラ(各バッファ)あたりの画像データの処理周期は長期化する。しかし、車両が非常に低速であることから、車両の運転支援として許容される(問題ない)レベルで、各カメラの撮影画像の画像処理を実行することが可能である。
【0023】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)~(5)の構成において、
前記複数のカメラは、前記車両の前方および後方をそれぞれ撮影するためのカメラを含み、
前記状態情報は、前記車両のギアのシフトポジションをさらに含み、
前記閾値は、第1閾値、および前記第1閾値よりも大きい第2閾値を含み、
前記プロセッサは、前記車速が前記第1閾値以上で、かつ、前記第2閾値よりも小さい場合において、前記シフトポジションが前進を示す場合には、前記車両の前方を撮影するための前記カメラで撮影された前記画像データが蓄積される前記バッファのみを選択し、前記シフトポジションが後退を示す場合には、前記車両の後方を撮影するための前記カメラで撮影された前記画像データが蓄積される前記バッファのみを選択する。
【0024】
例えば車両の進行方向に対する左右方向への急な移動が操舵角次第で可能となるような状態(低速走行状態)では、近距離カメラ(前述)などを用いて自車両の進行方向を広範囲に監視する必要がある。
上記(6)の構成によれば、プロセッサは、上述したような状態(低速走行状態)を第1閾値および第2閾値により検知した場合には、車両の進行方向の画像を撮影するカメラの撮影画像を画像処理の対象にする。これによって、複数のカメラによる監視を通した車両の状況に応じた運転支援を、リアルタイム性良く適切に実行することができる。
【0025】
(7)幾つかの実施形態では、上記(4)~(6)の構成において、
前記複数のカメラは、前記車両の進行方向における遠距離を撮影するための遠距離カメラ、および前記車両の進行方向を撮影するための、前記遠距離カメラよりも画角が広くかつ近距離を撮影するための近距離カメラを含み、
前記閾値は、第2閾値を含み、
前記プロセッサは、前記車速が前記第2閾値以上の場合には前記遠距離カメラで撮影された前記画像データが蓄積される前記バッファを選択し、前記車速が前記第2閾値よりも小さい場合には前記近距離カメラで撮影された前記画像データが蓄積される前記バッファを選択する。
【0026】
操舵による車両の急な方向転換ができないよう比較的車速が速い走行状態では、画像処理を通した環境認識(人や物の検知)から車両の運転者などへのフィードバック(例えば車両の自動制動や運転者への警報など)に許容される時間がより短くなってしまう。このため、車両の遠方を監視することにより、遠方における対象物(人や物)の検知をより早期に行う必要がある。
【0027】
上記(7)の構成によれば、プロセッサは、上述したような走行状態を第2閾値により検知した場合には、車両の進行方向の遠方を撮影する遠距離カメラの撮影画像を画像処理の対象にする。このように、例えば1台などの少ない数のカメラの撮影画像を画像処理の対象とすることにより、複数のカメラによる監視を通した車両の状況に応じた運転支援を、リアルタイム性良く適切に実行することができる。
【0028】
(8)幾つかの実施形態では、上記(4)~(7)の構成において、
前記閾値は、切替開始閾値、および前記切替開始閾値との差が第1値となる切替完了閾値を含み、
前記プロセッサは、
単位時間当たり所定数の前記画像データの前記画像処理を実行するよう構成されると共に、
前記切替開始閾値と前記切替完了閾値との間に前記車速がある場合には、前記単位時間当たりに前記画像処理する前記所定数の画像データが、前記車速が前記切替開始閾値から前記切替完了閾値に近づくほど、前記切替開始閾値になる前のものから前記切替完了閾値になった場合のものに置き換わるように、選択する前記バッファを切り替える。
【0029】
画像処理の対象とするカメラ(バッファ)を所定閾値で厳密に切り変えると、車両から得られる車速に誤差が含まれる場合などに、閾値付近において車速に応じた適切なバッファが選択されず、適切な環境認識が行われない場合が生じる虞がある。
上記(8)の構成によれば、プロセッサの画像処理の対象とするカメラ(バッファ)が所定の閾値(上記の第1閾値や第2閾値など)で完全に切り替わるように、その前段階から徐々に切り替える。これによって、車両から取得する車速に誤差がある場合であっても、車両の周囲環境認識を適切に行うことができる。
【0030】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記プロセッサは、
前記車速が前記切替開始閾値になった場合には、前記切替完了閾値になった場合に選択すべき前記バッファに対応する前記カメラと、撮影方向において最も関連のない前記カメラに対応する前記バッファから切り替える。
【0031】
上記(9)の構成によれば、車両から取得する車速に誤差がある場合であっても、車両の周囲環境認識を適切に行うことができる。
【0032】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)~(9)の構成において、
特定場所における監視方向の指示を含む特性情報を取得する取得部を、さらに備え、
前記プロセッサは、前記走行位置および前記特性情報に基づいて前記バッファを選択する。
【0033】
上記(10)の構成によれば、プロセッサは、特性情報によって指示される監視方向を撮影するカメラの画像データを画像処理の対象とする。様々な場所を走行する車両においては、例えば事故が多い場所などで、特定の方向を重点的に監視する必要が出てくる場合があるが、特性情報に基づいて画像処理の対象とするカメラを切り替えることで、より安全性の高い運転支援を行うことができる。
【0034】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)~(10)の構成において、
前記車両は産業用車両であり、
前記状態情報は、車速および操舵角を含んでおり、
前記プロセッサは、前記状態情報に基づいて前記車両の旋回が右旋回か左旋回かを判定すると共に、前記右旋回時には進行方向に向かって少なくとも前方右側および後方左側が撮影される前記画像データが蓄積される前記バッファを選択し、前記左旋回時には進行方向に向かって少なくとも前方左側および後方右側が撮影される前記画像データが蓄積される前記バッファを選択する。
【0035】
例えばフォークリフトなどの産業用車両はホイールベースが短く操舵角も大きいため、ハンドルを切った状態での発進時などは、進行方向の前方よりも左右方向に十分注意を払う必要がある。具体的には、右旋回時には進行方向における前方右側だけでなくその後方左側も、左旋回時には進行方向における前方左側だけでなく後方右側も同時に監視しておく必要がある。
【0036】
上記(11)の構成によれば、プロセッサは、車速および操舵角に基づいて旋回方向を判定し、その判定結果に基づいて、画像処理の対象とするカメラを選択する。このように、車両の旋回方向(操舵角)に応じて右側などの一方の側だけでなくその反対側(左側)の画像データも画像処理の対象とすることで、左右の旋回時には進行方向と反対側にも注意を払いつつ、人や物の検知を行うなどを行うことで、より安全性の高い運転支援を行うことができる。
【0037】
(12)幾つかの実施形態では、上記(11)の構成において、
前記複数のカメラは、前記車両の右側を撮影するための右側撮影カメラ、および左側を撮影するための左側撮影カメラを含み、
前記プロセッサは、右旋回時には、前記右側撮影カメラおよび前記左側撮影カメラでそれぞれ撮影された前記画像データの左側の一部の領域に対して前記画像処理を実行し、前記左旋回時には、前記右側撮影カメラおよび前記左側撮影カメラでそれぞれ撮影された前記画像データの右側の一部の領域に対して前記画像処理を実行する。
【0038】
車両の旋回方向(操舵角)に応じて右側などの一方の側だけでなくその反対側(左側)の画像データも画像処理の対象とすると、画像処理の対象とするカメラの台数が増加するため、各バッファ(カメラ)に蓄積されている画像データのプロセッサによる画像処理の頻度が小さくなる(周期が遅くなる)。
【0039】
上記(12)の構成によれば、プロセッサは、車両の旋回時に取得した各画像データの一部の領域を画像処理する。操舵角に応じて、右旋回時の右側のカメラは車両前方側のみの領域(画像左側)を、左側のカメラは車両後方側のみの領域(画像左側)に限定して処理を行うなど、一部領域のみを画像処理するようにするので、各バッファからの画像データの取得周期の長期化を抑制することができる。これによって、カメラの台数が増えた場合であっても、より安全性の高い運転支援をリアルタイム性良く行うことができる。
【0040】
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)~(12)の構成において、
前記状態情報は、操舵角と、前記車両のギアのシフトポジションと、を含み、
前記プロセッサは、前記操舵角および前記シフトポジションに基づいて、前記バッファから取得した前記画像データに含まれる一部の領域に対して前記画像処理を実行する。
【0041】
上記(13)の構成によれば、操舵角およびシフトポジションに基づいて、各画像データの一部を抽出し画像処理の対象とする。これによって、各画像データにおいて、操舵角およびシフトポジションに基づいて予測される車両の走行経路が含まれないような部分領域に対する画像処理を省略することができる。よって、各画像データに対する画像処理の負荷を低減することができ、単位時間当たりに画像処理が可能な画像データ数の増大を図ることができる。よって、高速な車速などでの要求実行時間に対応することもできる。
【0042】
(14)幾つかの実施形態では、上記(1)~(13)の構成において、
前記複数のカメラは、前記車両の第1方向を撮影するための第1カメラ、および前記第1方向とは異なる方向を撮影するための第2カメラを含み、
前記第1カメラおよび前記第2カメラによりそれぞれ撮影された前記画像データの輝度に基づいて、前記複数のカメラの各々の撮影パラメータを調節する調節部を、さらに備える。
【0043】
上記(14)の構成によれば、画像処理の対象となるカメラの順光や逆光を検知し、カメラの撮影パラメータを調節することで、太陽光による明るさの変動の影響を最小限にすることができ、安定した環境認識を行うことができる。
【0044】
(15)本発明の少なくとも一実施形態に係る車両用画像処理方法は、
車両に設置された複数のカメラからそれぞれ逐次入力される画像データを前記複数のカメラと対応付けて蓄積するよう構成された複数のバッファと、
車速を含む前記車両の状態情報に基づいて選択する前記バッファから前記画像データを取得して画像処理を実行するよう構成されたプロセッサと、
前記複数のバッファの各々の前記画像データを前記プロセッサに転送するための信号線と、
前記プロセッサから要求された前記バッファの前記画像データを前記信号線に出力するよう構成された転送コントローラと、を有するコンピュータの前記プロセッサに実行させる車両用画像処理方法であって、
前記車速と閾値との比較に基づいて、前記バッファの選択を実行するステップを、備える。
上記(15)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏する。
【0045】
(16)本発明の少なくとも一実施形態に係る車両用画像処理プログラムは、
車両に設置された複数のカメラからそれぞれ逐次入力される画像データを前記複数のカメラと対応付けて蓄積するよう構成された複数のバッファと、
車速を含む前記車両の状態情報に基づいて選択する前記バッファから前記画像データを取得して画像処理を実行するよう構成されたプロセッサと、
前記複数のバッファの各々の前記画像データを前記プロセッサに転送するための信号線と、
前記プロセッサから要求された前記バッファの前記画像データを前記信号線に出力するよう構成された転送コントローラと、を備えたコンピュータの前記プロセッサに、
前記車速と閾値との比較に基づいて、前記バッファの選択を実行するステップを、実行させる。
上記(16)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏する。
【0046】
(17)本発明の少なくとも一実施形態に係る記憶媒体は、
上記(16)に記載の車両用画像処理プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。
上記(17)の構成によれば、記憶媒体に記憶された車両用画像処理プログラムを実行させることにより、上記(1)と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0047】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、車両のコストを抑制しつつ、複数のカメラの撮影画像をより高速に画像処理することが可能な車両用画像処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用画像処理装置のハードウェア構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る複数のカメラの車両への設置例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る車両用画像処理装置の機能ブロックを示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る選択対象のバッファの決定手法を示すフロー図であり、車速に応じてカメラを選択する。
図5】本発明の一実施形態に係る車速が第1閾値よりも小さい場合(V<L1)のバッファ(カメラ)の選択順序を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る車速が第1閾値以上かつ第2閾値未満の場合(L1≦V<L2)のバッファ(カメラ)の選択順序を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る車速が第2閾値以上の場合(L2≦V)のバッファ(カメラ)の選択順序を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る車速の増大時における第1閾値付近でのバッファの段階的な切替を説明するための図である。
図9】本発明の一実施形態に係る車速の増大時における第2閾値付近でのバッファの段階的な切替を説明するための図である。
図10】本発明の一実施形態に係るフォークリフト車両の旋回時に監視する方向および領域を示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係るフォークリフト車両の旋回時のバッファの決定手法を示すフロー図である。
図12】本発明の一実施形態に係る画像処理の対象とする画像データにおける走行経路を示す図である。
図13】本発明の一実施形態に係る車両用画像処理装置が車両の逆光状態を判定する場合を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0050】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用画像処理装置1のハードウェア構成を模式的に示す図である。図2は、本発明の一実施形態に係る複数のカメラ8の車両9への設置例を示す図である。図3は、本発明の一実施形態に係る車両用画像処理装置1の機能ブロックを示す図である。
【0051】
車両用画像処理装置1(以下、適宜、画像処理装置1)は、一般自動車や、フォークリフトなどの産業用車両である車両9に設置(搭載)された複数(複数台)のカメラ8でそれぞれ撮影される撮影画像(画像データG)の画像処理を行うための装置である。図1に示すように、画像処理装置1には、複数のカメラ8が個別の配線などによりそれぞれ接続されており、複数のカメラ8の各々より撮影された撮影画像は、画像処理装置1に入力される。この複数のカメラ8の数は任意であり、その目的やカメラの仕様(画角や撮影可能距離など)に応じて定められれば良い。また、複数のカメラ8の各々は、複数のカメラ8の各々で撮影される画像が、画像処理装置1に対して連続的に入力される。
【0052】
図1図2に示す実施形態では、各カメラ8は、1秒間に所定数の画像を生成するようになっている。また、本実施形態では、図2に示すように、車両9には合計で6台のカメラ8が設置されており、その各々が車両9の外周方向を撮影するように設置されている。より詳細には、6台のカメラ8のうち、4台が近距離撮影用の近距離カメラ81であり、2台が遠距離撮影用の遠距離カメラ82となっている。近距離カメラ81は、遠距離カメラよりも、画角(視野角)が広く、相対的に近い距離を適切に撮影可能なカメラである。逆に言うと、遠距離カメラ82は、近距離カメラ81よりも、画角が狭く、相対的に遠方距離を適切に撮影可能なカメラである。このため、4台の近距離カメラ81は、車両9の前後左右の4箇所に分けてそれぞれ設置されることで、4台の近距離カメラ81により車両9の全周を網羅的に撮影するようになっている。また、2台の遠距離カメラ82は、車両9の前(運転席があるフロント)と後ろ(リア)の2箇所に分けてそれぞれ設置されることで、車両9の前方および後方の各々の遠方を撮影ように設定されている。
【0053】
そして、画像処理装置1は、上記のように車両9に設置された複数のカメラ8から順次入力される撮影画像をリアルタイムに処理するために、図1に示すように、複数のバッファ2と、プロセッサ3と、信号線4と、転送コントローラ5と、を備える。
これらの構成について、それぞれ説明する。
【0054】
複数のバッファ2は、車両9に設置された複数のカメラ8からそれぞれ逐次入力される画像データGを複数のカメラ8の各々毎に蓄積するよう構成される記憶部である。図1に示すように、各カメラ8に対して専用のバッファ2が設けられており、カメラ8毎に画像データGが管理(記憶)される。図1に示す実施形態では、各バッファ2はキュー(FIFO)であり、バッファ2への入力順に取り出されるようになっている。各バッファ2はリングバッファ構造を有していても良い。また、各バッファ2を少数の画像データGのみ記憶可能なような容量としても良く、より容量が小さいメモリを用いることにより、コストの低減が図れる。図1に示す実施形態では、A/D変換部22により、各カメラ8からのアナログの撮影画像の情報がデジタルに変換されて、画像データGが各バッファ2に蓄積されるようになっている。また、後述する転送コントローラ5によって各バッファ2が管理されることで、画像データGの各バッファ2への蓄積(記憶)がなされるようになっている。
【0055】
プロセッサ3は、上記の複数のバッファ2のうち、例えば車速VやシフトポジションSpなどの車両9の状態情報Sに基づいて選択するバッファ2から画像データGを取得して画像処理を実行するよう構成される。具体的には、各プロセッサ3は、主記憶装置にロードされたプログラム(画像処理プログラム)の命令に従って動作(データの演算など)することで、順次、複数のバッファ2のいずれかから画像データGを取得すると共に、取得した各画像データGに対して画像処理(人、物の検知など)を実行する。また、図1に示すように、プロセッサ3の数は、車両9のコストを低減するために、複数のバッファ2の数よりも少ない。図1に示す実施形態では、画像処理装置1が備えるプロセッサ3は、図示されたCPUの1台である。
【0056】
より詳細には、プロセッサ3は、図3に示すような機能を備える画像処理プログラムに従って動作することにより、車両9の状態情報Sに基づいて、複数のバッファ2のうちの少なくとも1つのバッファ2を選択対象として決定し、この選択対象に含まれるバッファ2の選択頻度を、選択対象に含まれない他のバッファ2の選択頻度よりも高くすることにより、選択対象に含まれる1以上のバッファ2を逐次選択するよう構成される。具体的には、選択対象に含まれないバッファ2の選択頻度を0など非常に小さくするなど、プロセッサ3によって選択されないようにしても良い。図3に示す実施形態では、画像処理プログラムは、コンピュータに、選択対象のバッファ2を決定する選択対象バッファ決定部71と、決定された選択対象に含まれる1以上のバッファ2を順次選択し、選択したバッファ2の画像データGを取得する画像データ取得部72と、取得した画像データGの画像処理を実行する画像処理部73と、を実現させるようになっている。
【0057】
通常、1つのプロセッサ3によって、単位時間当たりに画像処理可能な画像データGの数には限りがあるため、全てのカメラ8からの画像データGをリアルタイムに監視しようとすると、処理能力の優れたプロセッサ3や、カメラ8毎にプロセッサ3を設ける必要性などが生じる。しかし、一般には、走行時には、進行方向の逆方向を監視する必要性は乏しいなど、走行状況に応じて監視すべき方向には優先度(重要度)がある。よって、車両9の状態情報Sに基づいて、車両9の走行状況を判定し、その時々で実行する運転支援の内容に応じて、画像処理の対象とすべきカメラ8を、車両9に設置された複数のカメラ8の中の少なくとも一部に限定して、プロセッサ3に画像処理させるようにする。これによって、選択対象に複数のバッファ2が含まれるとしても、画像処理の対象となるバッファ2の数がより少なくなるようにされるので、プロセッサ3が画像データGを取得する頻度がバッファ2毎に高くなり(画像処理される周期が短くなり)、各カメラ8を通した環境認識のリアルタイム性を確保することが可能となる。
【0058】
信号線4は、上述した複数のバッファ2の各々の画像データGをプロセッサ3に転送するための転送路である。信号線4は、画像データGをシリアル転送するよう構成されても良いし、パラレル転送するように構成されても良い。よって、複数のバッファ2の各画像データGは、信号線4を通って、プロセッサ3に転送される。
【0059】
転送コントローラ5は、上述した画像処理用のプロセッサ3と通信可能に構成され、
複数のバッファ2における画像データGの蓄積を管理すると共に、プロセッサ3から要求されたバッファ2の画像データGを信号線4に出力するよう構成される。つまり、転送コントローラ5は、各カメラ8との通信や、通信された画像データGが各バッファ2に適切に記憶されるようにメモリアドレスの管理をしつつ、各バッファ2に画像データGを適切に記憶させる。上述したように、プロセッサ3は、車両9の状態情報Sに基づいて、選択対象とするバッファ2を決定し、その中のバッファ2を順次選択する度に、選択したバッファ2の画像データGを取得する。この際、プロセッサ3が、転送コントローラ5に対して、取得すべきバッファ2を指定して画像データGを要求すると、転送コントローラ5は、要求されたバッファ2の画像データGを信号線4に出力することで、プロセッサ3に転送する。プロセッサ3は、転送コントローラ5に対する上記の要求(制御信号)を上記の信号線4を介して行っても良いし、別途設けた制御用の信号線を介して行っても良い。
【0060】
このように、画像データGのプロセッサ3への転送は転送コントローラ5が行うため、プロセッサ3は、画像データGの転送処理を行うことなく、その間に画像処理のために稼働時間を割り当てることが可能となる。よって、プロセッサ3は、処理能力のより多くを画像処理に割りあてることができ、処理能力が比較的低くても、各カメラ8を通した運転支援が適切にできるほどのリアルタイム性を確保することが可能となる。
【0061】
要するに、上記の構成を備える画像処理装置1においては、画像処理のためのプロセッサ3は、転送コントローラ5が画像データGの転送処理を行うので、複数のカメラ8でそれぞれ撮影された画像データGが蓄積されるバッファ2から、転送コントローラ5により画像データGが転送されるまでは画像データGに対するなんらの処理も行わず、転送されることで取得された画像データGに対してのみ画像処理を行う。しかも、プロセッサ3は、複数のバッファ2にそれぞれ蓄積されたカメラ8毎の画像データGのうち、車両9の状態情報Sに基づいて画像処理の対象とすべきバッファ2を決定するなどして、画像処理の対象とするカメラ8を複数の中の少なくとも一部に絞ることで、単位時間に処理すべき画像データ数を削減する。
【0062】
このように、プロセッサ3は、車両9の状態情報Sに基づいて決定したカメラ8の画像データGを画像処理の対象としつつ、そのような対象の画像データGを取得するまでは処理を行わないことにより、複数のカメラ8を通した車両9の周囲の環境認識(人や物の検知)をより迅速に行うことができる。したがって、複数のカメラ8の各々毎にプロセッサ3を設けることや、より処理能力に優れた高価なプロセッサ3の使用を回避できるので、車両9のコストを低減することができる。
【0063】
幾つかの実施形態では、図1に示すように、画像処理装置1は、上述した複数のバッファ2および転送コントローラ5が設けられたキャプチャユニット11(ボード)と、転送コントローラ5によって信号線4に出力される、プロセッサが3画像処理を実行する画像データGを保持するよう構成された画像処理バッファ6(ワークバッファ)と、プロセッサ3および画像処理バッファ6が設けられたプロセッサユニット12(ボード)と、をさらに備えても良い。この場合、上記の信号線4は、キャプチャユニット11の複数のバッファ2と、プロセッサユニット12の画像処理バッファ6とを相互に接続することが可能に構成される。なお、上記のキャプチャユニット11はFPGA等のプログラマブルロジックデバイスで構築されても良い。
【0064】
つまり、転送コントローラ5がプロセッサ3の要求に応じて転送した画像データGは、プロセッサユニット12に設けられた画像処理バッファ6に記憶される。そして、プロセッサ3は、画像処理バッファ6に格納された画像データGに対して画像処理を実行する。図1に示す実施形態の画像処理バッファ6はキュー(FIFO)であり、プロセッサ3は、画像処理バッファ6へ記憶されている1以上の画像データGを、画像処理バッファ6へ記憶された順番で画像処理するようになっている。
【0065】
また、図1に示す実施形態では、画像処理装置1は、上記の車両9の状態情報Sを、車両9に設置されたECUなどの車両状態監視部14から取得するようになっている。より詳細には、車両状態監視部14は、車両9に設置された車両ネットワーク15(CANなど)を介して車速Vや、シフトポジションSpなどを含む車両9の状態情報Sを収集し、プロセッサユニット12に設けられている状態情報Sを記憶するためのバッファ(状態情報バッファ62)に格納する。この車両状態監視部14による状態情報Sの収集と、状態情報バッファ62への状態情報Sの格納は周期的に行われ、最新の状態情報Sが状態情報バッファ62に記憶される。よって、プロセッサ3は、上記の状態情報バッファ62にアクセスすることにより、車両9の最新の状態情報Sを取得することが可能となっており、取得した状態情報Sに基づいて、これから選択対象とするバッファ2を決定する。
【0066】
なお、図1に示す実施形態では、車両状態監視部14は、車両側の他のユニット(制御ユニット13)に設けられているが、この制御ユニット13とプロセッサユニット12とは、車両ネットワーク15によって接続されても良いし、個別の配線で接続されていても良い。
【0067】
上記の構成によれば、複数のバッファ2で管理されている複数のカメラ8の各々の画像データGは、キャプチャユニット11とプロセッサユニット12とを接続する信号線4を通って、プロセッサユニット12に設けられた画像処理バッファ6に転送されることで、プロセッサ3で画像処理されるように構成される。このように、キャプチャユニット11における複数のバッファ2の管理や転送処理と、プロセッサユニット12における画像処理とをハードウェア的に分離することで、上述のように、複数のカメラ8を通した車両9の周囲の環境認識(人や物の移動検知)をリアルタイム性良く行うことができる。
【0068】
次に、上述した選択対象のバッファ2の決定手法に関する幾つかの実施形態について、図4図10を用いて説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る選択対象のバッファ2の決定手法を示すフロー図であり、車速Vに応じてカメラ8を選択する。図5は、本発明の一実施形態に係る車速Vが第1閾値L1よりも小さい場合(V<L1)のバッファ2(カメラ8)の選択順序を示す図である。図6は、本発明の一実施形態に係る車速Vが第1閾値L1以上かつ第2閾値L2未満の場合(L1≦V<L2)のバッファ2(カメラ8)の選択順序を示す図である。図7は、本発明の一実施形態に係る車速Vが第2閾値L2以上の場合(L2≦V)のバッファ2(カメラ8)の選択順序を示す図である。図8は、本発明の一実施形態に係る車速Vの増大時における第1閾値L1付近でのバッファの段階的な切替を説明するための図である。図9は、本発明の一実施形態に係る車速Vの増大時における第2閾値L2付近でのバッファの段階的な切替を説明するための図である。図10は、本発明の一実施形態に係るフォークリフト車両の旋回時に監視する方向および領域を示す図である。また、図11は、本発明の一実施形態に係るフォークリフト車両の旋回時のバッファ2の決定手法を示すフロー図である。
【0069】
なお、以下の説明では、上述した画像処理プログラムの命令に従ってプロセッサ3が動作することで、実現されるものとする。また、後述する第1閾値L1、第2閾値L2、第3閾値L3は、L1<L2<L3の関係にあるものとする。
【0070】
幾つかの実施形態では、車両9の状態情報Sは車速Vを含んでいる。そして、図4に示すように、プロセッサ3は、車速Vと、予め定めた閾値Lとの比較に基づいて、上述したバッファ2の選択を実行しても良い。図1図4に示す実施形態では、プロセッサ3は、画像処理プログラムの選択対象バッファ決定部71の命令に従って、車速Vと複数の閾値L(L1~L3)との比較に基づいて、上述した選択対象となる1以上のバッファ2を決定する。具体的には、図4のステップS1において、プロセッサ3(選択対象バッファ決定部71)は、運転者が車両9を動かす意思があることを、シフトポジションSpがパーキングではないことで確認する。そして、選択対象バッファ決定部71および画像データ取得部72の命令に従って、シフトポジションSpがパーキング(P)ではない場合に、ステップS2以降で車速Vに応じた、カメラ8(バッファ2)の選択を行うようになっている。
【0071】
一般に、プロセッサが単位時間当たり画像処理できる画像データ数には上限がある。したがって、複数のカメラ8の画像データGを順次処理していった場合、カメラ8(バッファ2)の数が多いほど、単位時間に画像処理されるカメラ8当たりの画像データ数は少なくなる。そして、この数が少なくなると、その分だけ、各カメラ8から順次送られてくる画像データGの画像処理に遅れが生じるので、当該カメラの画像処理を通した環境認識のタイムラグが大きくなる。しかしながら、画像処理を通した環境認識におけるタイムラグは、車速Vが速いほど致命的になり易い反面、車速Vが遅いと許容範囲となり易い。つまり、車速Vが遅いほどより多くのカメラ8を画像処理の対象としても、車両9の運転支援を適切に行うことが可能である。このことから、本実施形態では、車速Vに応じて、複数のバッファ2を切り替えることで、車両9に設置された複数のカメラ8のうちから、運転支援に応じた優先度の高いカメラ8の撮影画像の画像処理を実行する。
【0072】
具体的には、例えば車両9が動き出す前の停止時や、車両9がクリープ現象等によって非常に低速に移動している状態(発進時状態)では、車両9は操舵角次第で様々な位置に移動することが可能である。このため、画角が比較的広く、近距離を適切に撮影することが可能な近距離カメラ81などを用いて自車両の全周囲を監視する必要があると考えられる。
【0073】
よって、幾つかの実施形態では、図2に示すように、複数のカメラ8は、車両9の周囲を1台以上で撮影するための1台以上のカメラ8(図2では4台の近距離カメラ81)を含む。また、車速Vと比較される上記の閾値Lは、第1閾値L1を含む。この場合においては、図4に示すように、プロセッサ3は、車速Vが第1閾値L1よりも小さい場合(V<L1)には、車両の全周囲を撮影するための上記の1台以上のカメラ8で撮影された画像データGが蓄積されるバッファ2を選択しても良い。
【0074】
図4に示す実施形態では、ステップS2においてV<L1の場合には、ステップS3において、図5に示すような、近距離カメラ81の画像データGの画像処理による周辺環境認識を実行する。すなわち、プロセッサ3は、4台の近距離カメラ81の各々から入力される画像データGが蓄積される4つのバッファ2(2a~2d)を選択対象とする。この際、選択対象となる複数のバッファ2の選択順序は任意であるが、例えば図5に示すように行っても良い。図5に示す実施形態では、プロセッサ3は、第1近距離カメラ81a(車両9の前)、第2近距離カメラ81b(車両9の右横)、第3近距離カメラ81c(車両9の後ろ)、第4近距離カメラ81d(車両9の左横)の順番で、これらの近距離カメラ81の撮影により得られた画像データGを画像処理するようになっているので(図5のS31~S34参照)、第1バッファ2a、第2バッファ2b、第3バッファ2c、第4バッファ2d、第1バッファ2a・・・の順でバッファ2を選択しつつ、画像データGを順次取得するようになっている。
【0075】
なお、図1に示す実施形態のように、全周囲を得るためには画像処理の対象となるカメラ数が多くなり易い。よって、複数のカメラ8の画像を1画像ずつ順番に切り替えて画像処理を実行した場合、カメラ8の数が多いほど、各カメラ8(各バッファ2)あたりの画像データGの処理周期は長期化する。しかし、車両9が非常に低速であることから、車両9の運転支援として許容される(問題ない)レベルで、各カメラ8の撮影画像の画像処理を実行することが可能である。
【0076】
また、車速Vが上記の第1閾値L1以上の場合でも、例えば車両9の進行方向に対する左右方向への急な移動が操舵角次第で可能となるような状態(低速走行状態)では、近距離カメラ81などを用いて自車両の進行方向を広範囲に監視する必要があると考えられる。
【0077】
よって、他の幾つかの実施形態では、図2に示すように、複数のカメラ8は、少なくとも、車両9の前方および後方をそれぞれ撮影するためのカメラ8(図2では車両9の前後に設置された2台の近距離カメラ81)を含む。また、車両9の状態情報Sは、車両9のギアのシフトポジションSpをさらに含む。車速Vと比較される上記の閾値Lは、第1閾値L1、および第1閾値L1よりも大きい第2閾値L2を含む。この場合においては、図4図6に示すように、プロセッサ3は、車速Vが第1閾値L1以上で、かつ、第2閾値L2よりも小さい場合(L1≦V<L2)において、シフトポジションSpが前進を示す場合には、車両9の前方を撮影するためのカメラ8(図2では第1近距離カメラ81a)で撮影された画像データGが蓄積されるバッファ2を選択し、シフトポジションSpが後退を示す場合には、車両9の後方を撮影するためのカメラ8(図2では第3近距離カメラ81c)で撮影された画像データGが蓄積されるバッファ2を選択しても良い。
【0078】
図4に示す実施形態では、上述したステップS2においてV<L1ではなく、次のステップS4でL1≦V<L2の場合には、ステップS5において、上記のステップS3とは異なる近距離カメラ81の画像データGの画像処理による周辺環境認識を実行する。具体的には、図6に示すように、プロセッサ3(選択対象バッファ決定部71)は、ステップS61において、シフトポジションSpを確認する。そして、シフトポジションSpが前進の場合には、ステップS62において、車両9の前方の近距離を撮影する第1近距離カメラ81aの画像データGが蓄積される第1バッファ2aを選択対象とする。逆に、シフトポジションSpが後退の場合には、ステップS63において、車両9の後方の近距離を撮影する第3近距離カメラ81cの画像データGが蓄積される第3バッファ2cを選択対象とする。
【0079】
逆に、操舵による車両9の急な方向転換ができないよう比較的車速が速い走行状態では、画像処理を通した環境認識(人や物の検知)から車両9の運転者などへのフィードバック(例えば車両9の自動制動や運転者への警報など)に許容される時間がより短くなってしまう。このため、車両9の遠方を監視することにより、遠方における対象物(人や物)の検知をより早期に行う必要があると考えられる。
【0080】
よって、幾つかの実施形態では、図2に示すように、複数のカメラ8は、車両9の進行方向における遠距離を撮影するための遠距離カメラ82、および車両9の進行方向を撮影するための、遠距離カメラ82よりも画角が広くかつ近距離を撮影するための近距離カメラ81を含む。また、車速Vと比較される上記の閾値Lは、第2閾値L2を含む。そして、図4図7に示すように、プロセッサ3は、車速Vが第2閾値L2以上の場合には遠距離カメラ82で撮影された画像データGが蓄積されるバッファ2(図1の2e~2f)を選択し、車速Vが第2閾値L2よりも小さい場合には近距離カメラ81で撮影された画像データGが蓄積されるバッファ2(図1の2a~2d)を選択しても良い。
【0081】
図4に示す実施形態では、上述したステップS4においてV<L2ではなく、次のステップS6でL2≦V<L3(L2≦Vでも良い)の場合には、ステップS7において、遠距離カメラ82の画像データGの画像処理による周辺環境認識を実行する。具体的には、図7に示すように、プロセッサ3(選択対象バッファ決定部71)は、ステップS71において、シフトポジションSpを確認する。そして、シフトポジションSpが前進の場合には、ステップS72において、プロセッサ3(同上)は、車両9の前方の遠距離を撮影する第1遠距離カメラ82aの画像データGが蓄積される第5バッファ2eを選択対象とする。逆に、シフトポジションSpが後退の場合には、ステップS73において、車両9の後方の遠距離を撮影する第2遠距離カメラ82bの画像データGが蓄積される第6バッファ2fを選択対象とする。
【0082】
上記の構成によれば、プロセッサ3は、車速Vと閾値Lとの比較に基づいて、画像処理の対象とするバッファ2を決定するなどして選択する。このように、車速Vとの関係で画像処理の対象とするカメラ8(バッファ2)を選択することにより、処理能力が比較的劣るプロセッサ3であっても、複数のカメラ8による環境認識を通した車両の運転支援を、リアルタイム性良く適切に実行することが可能となる。
【0083】
また、幾つかの実施形態では、図8図9に示すように、車速Vと比較される上記の閾値Lは、切替開始閾値Ls、およびこの切替開始閾値Lsとの差が第1値Wとなる切替完了閾値Leを含んでも良い。この場合、プロセッサ3は、切替開始閾値Lsと切替完了閾値Leとの間に車速Vがある場合には、単位時間当たりに画像処理する所定数の画像データGが、車速Vが切替開始閾値Lsから切替完了閾値Leに近づくほど、切替開始閾値Lsになる前のものから切替完了閾値Leになった場合のものに置き換わるように、選択するバッファ2を切り替えても良い。換言すれば、車速Vに応じて優先度(重要度)が高いものとなるカメラ8(図8では第1近距離カメラ81a)の割合を徐々に増加する。
【0084】
プロセッサ3の画像処理の対象とするカメラ8(バッファ2)を所定の閾値L(第1閾値L1や第2閾値L2)で厳密に切り変えると、車両9から得られる車速Vに誤差が含まれる場合などに、閾値L付近において車速Vに応じた適切なバッファ2が選択されず、適切な環境認識が行われない場合が生じる虞がある。よって、本実施形態では、選択対象とするバッファ2を徐々に切り替えるようにする。
【0085】
ここで、プロセッサ3は、単位時間当たりに所定数の画像データGに対して画像処理を実行するので、この所定数の画像データGは、選択対象の1以上のバッファ2から取得される画像データGで構成される。切替開始閾値Lsは、この所定数を構成する画像データGが取得されるバッファ2の一部を、切替完了閾値Leに車速Vがなった場合にプロセッサ3が選択することになる1以上のバッファ2のいずれかに切り替える契機を与える閾値Lである。また、切替完了閾値Leは、例えば上述した第1閾値L1あるいは第2閾値L2であり、切替開始閾値Lsは、切替完了閾値Leから第1値Wだけプラス又はマイナスされた値となる。具体的には、例えば切替完了閾値Leが上述した第1閾値L1である場合には、切替開始閾値Lsは、Le+W(ただし、Le+W<L2)またはLe-Wである。例えば切替完了閾値Leが上述した第2閾値L2である場合には、切替開始閾値Lsは、Le+WまたはLe-W(ただし、Le-W>L1)である。切替開始閾値Lsと切替完了閾値Leとの間には、図8図9に示すように、上記の切り替えをより段階的に行うために、さらに1以上の閾値(段階閾値Lm)が設けられても良い。
【0086】
図8に示す実施形態では、切替完了閾値Leが上記の第1閾値L1であり、切替開始閾値Lsがこの第1閾値L1よりも第1値Wだけ小さい場合(Ls=Le-W)である。この場合、図1図3に示す実施形態では、プロセッサ3は、第1閾値L1(Le)より車速Vが小さいと、4台の近距離カメラ81に対応する4つのバッファ2(2a~2d)を順次選択し(図5参照)、車速Vが第1閾値L1以上となると、車両9の前方を撮影する第1近距離カメラ81aに対応する第1バッファ2aのみを選択するようになっている(図6参照)。
【0087】
よって、シフトポジションSpが前進で、車速Vが0から順次増大されていく場合、車速Vが切替開始閾値Lsよりも小さい場合(V<Ls)には、プロセッサ3(画像データ取得部72)は、第1バッファ2a、第2バッファ2b、第3バッファ2c、第4バッファ2dと順次選択した後に、再度第1バッファ2aに戻って同じ順番での選択を繰返している。その後、車速Vが切替開始閾値Lsになると、プロセッサ3(同上)は、それまでに選択対象に含まれていたバッファ2(2a~2d)のうち、第2バッファ2b、第3バッファ2c、第4バッファ2dのうちの少なくとも1つを第1バッファ2aに置き換える。
【0088】
この際、図8に示すように、プロセッサ3は、車速Vが切替開始閾値Lsになった場合には、切替完了閾値Leになった場合に選択すべきバッファ2(図8では第1バッファ2aのみ)に対応するカメラ8(図8では前方撮影用の第1近距離カメラ81a)と、撮影方向において最も関連のないカメラ8(図8では後方撮影用の第3近距離カメラ81c)に対応するバッファ2(図8では第3バッファ2c)から切り替えても良い。
【0089】
図8に示す実施形態では、プロセッサ3は、車両9の後方を撮影する第3近距離カメラ81cに対応する第3バッファ2cを、第1バッファ2aに切り替えている。つまり、切替完了閾値Le(第1閾値L1)になると、それまで車両9の前後左右の4方向の画像データGを画像処理の対象としていたところから前方のみを監視するようになることからすると、後方は、前方に対して逆方向なので、画像データGが車両9の左、右、後ろのうちで最も重要度が低いといえる。よって、プロセッサ3は、切替開始閾値Lsでは第3バッファ2cを切り替えている。
【0090】
また、図8に示す実施形態では、切替開始閾値Lsと切替完了閾値Leとの間に段階閾値Lmが設けられており、車速Vが切替開始閾値Lsから増大して段階閾値Lmになると(V=Lm)、車両9の右を撮影する第2近距離カメラ81bに対応する第2バッファ2bを、第1バッファ2aに切り替えている。そして、車速Vがさらに増大されて、切替完了閾値Leになると(V=Le)、プロセッサ3は、車両9の左を撮影する第4近距離カメラ81dに対応する第4バッファ2dを、第1バッファ2aに切り替えている。これによって、プロセッサ3は、第1閾値L1では第1近距離カメラ81aに対応する第1バッファ2aを選択対象として、画像処理を行うようになる。このようにして、車速Vに応じて重要性が高いものとなるカメラ8(図8では第1近距離カメラ81a)の割合が徐々に増加される。
【0091】
他方、図9に示す実施形態では、切替完了閾値Leが上記の第2閾値L2であり、切替開始閾値Lsがこの第2閾値L2よりも第1値Wだけ小さい場合(Ls=Le-W)である。この場合、図1図3に示す実施形態では、上述したように、プロセッサ3は、車速Vが第1閾値L1以上、第2閾値L2未満では、車両9の前方を撮影する第1近距離カメラ81aに対応する第1バッファ2aのみを選択し(図6参照)、車速Vが第2閾値L2以上になると、車両9の前方を撮影する第1遠距離カメラ82aに対応する第5バッファ2eのみを選択するようになっている(図7参照)。
【0092】
よって、シフトポジションSpが前進で、車速Vが第1閾値L1から順次増大されていく場合、車速Vが切替開始閾値Lsよりも小さい場合(V<Ls)には、プロセッサ3は第1バッファ2aのみを選択する。その後、車速Vが切替開始閾値Lsになると、プロセッサ3は、それまでの選択対象に第5バッファ2eを含める(追加する)と共に、それまでの選択対象であった第1バッファ2aの選択頻度を少なくする。図9に示す実施形態では、画像処理される連続する3つの画像データGのうちの最後の第1バッファ2aが第5バッファ2eに置き換えられることで、第1バッファ2aの選択頻度が下げられている。さらに車速Vが増大され、段階閾値Lmになると、連続する3つの画像データGのうちの最後から2つ目までが第5バッファ2eに置き換えられている。さらに車速Vが増大され、切替完了閾値Leになると、第5バッファ2eのみ選択するなっている。このようにして、車速Vに応じて重要性が高いものとなるカメラ8(図9では第1遠距離カメラ82a)の割合が徐々に増加される。
【0093】
なお、上記の説明は、車速Vが増大する場合について説明したが、車速Vが減速していく際に、切替開始閾値Ls、段階閾値Lm、切替完了閾値Leの順を通過する場合についても同様である。
【0094】
上記の構成によれば、プロセッサ3の画像処理の対象とするカメラ8(バッファ2)が所定の閾値L(上記の第1閾値L1や第2閾値L2など)で完全に切り替わるように、その前段階から徐々に切り替える。これによって、車両9から取得する車速Vに誤差がある場合であっても、車両9の周囲環境認識を適切に行うことができる。
【0095】
また、幾つかの実施形態では、画像処理装置1は、特定場所における監視方向の指示を含む特性情報を取得する特性情報取得部74(取得部)を、さらに備え、プロセッサ3は、特性情報に基づいてバッファ2を選択しても良い。様々な場所を走行する車両9においては、例えば右方向からの飛び出し事故が多いなど、特定方向を重点的に監視するのが運転支援として望ましいような場所(特定場所)がある。そこで、画像処理装置1は、上記の特性情報を取得し、特性情報で指示される監視方向を撮影するカメラ8に対応するバッファ2を選択対象に含めるようにする。この際、特性情報で指示される監視方向を撮影するカメラ8に対応するバッファ2の選択頻度を、同様に選択対象に含まれている他のバッファ2よりも高くしても良い。
【0096】
より詳細には、画像処理装置1(画像処理プログラム)は、図3に示すように、上記の特性情報取得部74に加えて、車両9の走行位置を取得する位置取得部75を、さらに備えていても良い。図3に示す実施形態では、上記の各特性情報は特定場所に対応付けられており、車両9の走行位置が、特性情報に対応付けられている特定場所になった場合には、特性情報で指示される監視方向を撮影するカメラ8に対応するバッファ2を選択対象に含めるようにしている。これら、特性情報取得部74および位置取得部75は、上記のプロセッサ3が画像処理プログラムの命令に従って動作することで実現されても良いし、他のハードウェアを用いて実現されても良い。図3に示す実施形態では、監視方向の指示が選択対象バッファ決定部71に入力されることにより、監視方向を撮影するカメラ8に対応したバッファ2が選択対象に含まれるようになっている。
【0097】
なお、車両9の走行位置は、GPS(Global Positioning System)やSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などの自己位置認識技術により取得しても良いし、道路に設置されるビーコン局との通信や、移動体通信ネットワークの基地局との通信や、RFID(Radio Frequency IDentification)による近距離無線通信などの無線通信技術を用いて外部と通信することにより、外部から走行位置(位置情報)を取得しても良い。また、特定場所および特性情報は予めデータベース化されており、外部との通信を適宜行うことにより、それらの情報を取得しても良いし、画像処理装置1がこのデータベースを保持していても良い。あるいは、画像処理装置1は、ビーコン局などの機器が特定場所の付近に設置され、ビーコン局などの機器からの通信を受信すると、この通信により得られる特性情報に含まれる監視方向の情報に基づいて、その方向を撮影するカメラ8に対応するバッファ2を選択対象に含めるようにしても良い。
【0098】
上記の構成によれば、プロセッサ3は、特性情報によって指示される監視方向を撮影するカメラ8の画像データGを画像処理の対象とする。様々な場所を走行する車両9においては、例えば事故が多い場所などで、特定の方向を重点的に監視する必要が出てくる場合があるが、特性情報に基づいて画像処理の対象とするカメラ8を切り替えることで、より安全性の高い運転支援を行うことができる。
【0099】
また、幾つかの実施形態では、車両9が産業用車両である場合などには、車両9の状態情報Sは、車速Vおよび操舵角Aを含んでおり、プロセッサ3は、状態情報Sに基づいて車両9の旋回が右旋回か左旋回かを判定しても良い。そして、プロセッサ3は、車両9が右旋回時には進行方向に向かって少なくとも前方右側および後方左側が撮影される画像データGが蓄積されるバッファ2を選択し、左旋回時には進行方向に向かって少なくとも前方左側および後方右側が撮影される画像データGが蓄積されるバッファ2を選択しても良い。
【0100】
図10に示すように、例えばフォークリフトなどの産業用車両はホイールベースが短く操舵角も大きいため、ハンドルを切った状態での発進時などは、進行方向の前方よりも左右方向に十分注意を払う必要がある。具体的には、右旋回時には進行方向における前方右側だけでなくその後方左側も、左旋回時には進行方向における前方左側だけでなく後方右側も同時に監視しておく必要がある。
ただし、上記のように進行方向の逆方向側を撮影した画像データGまで画像処理の対象とすると、プロセッサ3が画像処理の対象とするカメラ8の台数が単純に増加するので、選択対象に含まれる各バッファ2の各々の選択頻度が少なくなる(選択する周期が長くなる)。
【0101】
そこで、幾つかの実施形態では、図10図11に示すように、複数のカメラ8は、車両9の右側を撮影するための右側撮影カメラ(図2では第2近距離カメラ81b)、および左側を撮影するための左側撮影カメラ(図2では第4近距離カメラ81d)を含む。そして、プロセッサ3は、画像処理プログラムの画像処理部73の命令に従って動作することにより、右旋回時には、上記の右側撮影カメラおよび左側撮影カメラでそれぞれ撮影された画像データGの左側の一部の領域(部分領域Gp。図10では画像データGの左半分)に対して画像処理を実行し、左旋回時には、上記の右側撮影カメラおよび左側撮影カメラでそれぞれ撮影された画像データGの右側の部分領域Gp(図10では画像データGの右半分)域に対して画像処理を実行しても良い。これによって、より安全性の高い運転支援をリアルタイム性良く行うことができる。
【0102】
図11は、図4のステップS2からステップS3への遷移に対応しており、図4のステップS2において車速Vが上記の第1閾値L1よりも小さい場合(V<L1)には、図11のステップS21において操舵角Aを確認し、操舵角Aが舵角閾値At以下の場合(A≦At)には、既に説明した図4ステップS3に進む。逆に、図11のステップS21において、操舵角Aが舵角閾値Atよりも大きい場合(A>At)には、ステップS22において操舵角Aを確認する。そして、操舵角Aが右旋回を示す場合には、ステップS23において上記の右側撮影カメラおよび左側撮影カメラでそれぞれ撮影された画像データGの左半分の領域に対して画像処理を実行する。逆に、操舵角Aが左旋回を示す場合には、ステップS24において上記の右側撮影カメラおよび左側撮影カメラでそれぞれ撮影された画像データGの右半分の領域に対して画像処理を実行する。
【0103】
上記の構成によれば、プロセッサ3は、車速Vおよび操舵角Aに基づいて旋回方向を判定し、その判定結果に基づいて、画像処理の対象とするカメラ8を選択する。このように、車両の旋回方向(操舵角)に応じて右側などの一方の側だけでなくその反対側(左側)の画像データGも画像処理の対象とすることで、左右の旋回時には進行方向と反対側にも注意を払いつつ、人や物の検知を行うなどを行うことで、より安全性の高い運転支援を行うことができる。
【0104】
次に、その他の実施形態について、図12図13を用いて説明する。図12は、本発明の一実施形態に係る画像処理の対象となる画像データGにおける走行経路を示す図である。また、図13は、本発明の一実施形態に係る車両用画像処理装置1が車両9の逆光状態を判定する場合を説明するための図である。
【0105】
幾つかの実施形態では、上述した車両9の状態情報Sは、操舵角Aと、シフトポジションSpと、を含む。そして、図12に示すように、プロセッサ3は、画像処理プログラムの画像処理部73の命令に従って動作することにより、操舵角AおよびシフトポジションSpに基づいて、バッファ2から取得した画像データGに含まれる一部の領域(部分領域Gp)に対して画像処理を実行する。図12に示すカメラ画像には、遠くに地平線hが写っており、道路rが右方向へカーブしているが、車両9が道路rに沿って走行する場合には、走行経路以外の領域を対象とした自動検知処理の必要性は高くないと考えられる。このように画像データGの部分領域Gpのみに対して画像処理を実行することによって、画像処理を行う各画像データGの情報量を小さくすることができ、1つの画像データGの画像処理の実行時間を短くすることができる。
【0106】
例えば、幾つかの実施形態では、図12に示すように、操舵角AおよびシフトポジションSpに基づいて、車両9が走行する経路を推定すると共に、推定結果に基づいて画像データGの上記の部分領域Gpを決定しても良い。図12に示す実施形態では、プロセッサ3は、推定した走行経路の画像処理を実行するようになっており、推定した走行経路のみを対象に自動検知処理などを実行する。例えば、上記の車速Vと比較される閾値Lが第3閾値L3を含み、図4に示すように、プロセッサ3は、車速Vが第3閾値L3以上になると、操舵角AおよびシフトポジションSpに基づく走行経路の予測結果に基づいて、バッファ2から取得した画像データGに含まれる部分領域Gpに対して画像処理を実行しても良い。この走行経路の予測は周知の手法により行えば良いが、自車両のサイズやカメラ8の取り付け位置や取付角度(光軸角度)、カメラ8の内部パラメータを考慮しても良い。これによって、車速Vが第2閾値L2を超えてさらに速くなった場合などに、画像処理の対象となるカメラ8の数を絞るだけでなく、取得した各画像データGの画像処理の対象領域を小さくするようにすれば、プロセッサ3が単位時間に実行可能な画像データGの数を増大することで、リアルタイムの環境認識を可能にすることができる。
【0107】
他の幾つかの実施形態では、車速Vおよび操舵角Aに応じて定めた画像データGの例えば上部や左右の一部の領域を画像処理の対象から外すなど、車速V、操舵角AおよびシフトポジションSpに基づいて、画像データGにおける画像処理すべき部分領域Gpが定まるようにしておいても良い。例えば図12では、操舵角Aから車両9が右にカーブして走行することが分かるので、車速Vを考慮しつつ、撮影画像の上部や左側のあるサイズの領域を、画像処理の対象から外しても良い。
【0108】
上記の構成によれば、操舵角AおよびシフトポジションSpに基づいて、各画像データGの一部を抽出し画像処理の対象とする。これによって、各画像データGにおいて、操舵角AおよびシフトポジションSpに基づいて予測される車両の走行経路が含まれないような部分領域に対する画像処理を省略することができる。よって、各画像データGに対する画像処理の負荷を低減することができ、単位時間当たりに画像処理が可能な画像データG数の増大を図ることができる。よって、高速な車速Vなどでの要求実行時間に対応することもできる。
【0109】
また、幾つかの実施形態では、図13に示すように、複数のカメラ8は、車両9の一方方向を撮影するための第1カメラ8aおよび、この一方向とは異なる方向を撮影するための第2カメラ8bを含む。そして、図3に示すように画像処理装置1は、上記の第1カメラ8aおよび第2カメラ8bによりそれぞれ撮影された画像データGの輝度に基づいて、複数のカメラ8の各々の撮影パラメータを調節する調節部76を、さらに備えても良い。調節部76は、上記のプロセッサ3が画像処理プログラムの命令に従って動作することで実現されても良いし、他のハードウェアを用いて実現されても良い。図13に示す実施形態では、第1カメラ8aは第1遠距離カメラ82aであり、第2カメラ8bは第1カメラ8aが撮影する一方向とは逆方向を撮影する第2遠距離カメラ82bとなっている。ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、第1カメラ8aが遠距離カメラ82、第2カメラ8bが近距離カメラであるなど、第1カメラ8aと第2カメラ8bとは撮影方向が異なれば、同種のものでなくても良い。
【0110】
上述したように、車両9の全周囲をカメラ8で撮影していることから、屋外では太陽光との位置関係によって、あるカメラ8では逆光、あるカメラ8では順光となり、全てのカメラの撮影パラメータが同じであると、適切な画質(例えば明るさ)の画像が得られないカメラが存在する可能性がある。そこで、本実施形態では、その時々の画像処理の対象となるカメラ8以外のカメラ8を一時的に選択対象に含めるなどすることで、画像データGの明るさを評価することで光などに関する周囲環境を推定し、必要に応じてカメラ8の撮影パラメータを自動調節し、どのような環境でも適切な画質の画像データGが各カメラ8から得られるようにする。
【0111】
具体的には、上述した実施形態では、車速Vが第1閾値L1以上である場合には、進行方向を撮影するためのカメラ8(第1近距離カメラ81aや、第1遠距離カメラ82a)のみで環境認識を行っており、例えばこのカメラ8が上記の第1カメラ8aとなる。この際、プロセッサ3は、例えば周期的(10秒に1回など)に、進行方向の逆方向などを撮影するためのカメラ8(第3近距離カメラ81cや、第2遠距離カメラ82b)で撮影される画像データGを取得する。例えばこのカメラ8が上記の第2カメラ8bとなる。そして、第1カメラ8aおよび第2カメラ8bの各々の画像データのGの輝度を評価する。
【0112】
その後、例えば、第1カメラ8aの撮影画像のみで構成される複数の画像データGの平均輝度(第1平均輝度I1)、および、第1カメラ8aおよび第2カメラ8bの各々の撮影画像で構成される複数の画像データGの平均輝度(第2平均輝度I2)をそれぞれ評価しても良い。例えば、時間に沿って連続して取得する画像データGのうち、進行方向の逆方向を撮影した画像データGを含む連続した複数の画像データGの第2平均輝度I2を評価すると共に、この逆方向の画像データGを含まない複数の連続の画像データGの第1平均輝度I1を評価しても良い。そして、I1<I2ならその時の進行方向を撮影するカメラ8は逆光状態にあると判断し、逆光状態のカメラ8が生成する画像データGが明るくなるようにするなど、適切に撮影できるように第1カメラ8aの撮影パラメータの設定を変更する。I1>I2の場合は、逆に、第1カメラ8aの明るさを下げるよう設定を変更する。
【0113】
図13に示す実施形態では、第1カメラ8aの画像データGの輝度は逆光のため相対的に低く、第2カメラ8bの画像データGの輝度は順光のため相対的に高い。よって、I1<I2となるので、調節部76は、進行方向の第1カメラ8aは逆光と判断して、第1カメラ8aの画像データGが明るくなるように、撮影パラメータの設定変更を行う。
【0114】
上記の構成によれば、画像処理の対象となるカメラ8の順光や逆光を検知し、カメラ8の撮影パラメータを調節することで、太陽光による明るさの変動の影響を最小限にすることができ、安定した環境認識を行うことができる。
【0115】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
なお、上記の特性情報取得部74は取得部の一例である。
また、上記のプログラムは、コンピュータに後述する各機能部を実現させるためのソフトウェアであり、コンピュータによる読み込みが可能な記憶媒体に記憶されても良い。
【符号の説明】
【0116】
1 車両用画像処理装置(画像処理装置)
11 キャプチャユニット
12 プロセッサユニット
13 制御ユニット
14 車両状態監視部
15 車両ネットワーク
2 バッファ
2a 第1バッファ
2b 第2バッファ
2c 第3バッファ
2d 第4バッファ
2e 第5バッファ
2f 第6バッファ
22 A/D変換部
3 プロセッサ
4 信号線
5 転送コントローラ
6 ワークバッファ(画像処理バッファ)
62 状態情報バッファ
71 選択対象バッファ決定部
72 画像データ取得部
73 画像処理部
74 特性情報取得部(取得部)
75 位置取得部
76 調節部
8 カメラ
8a 第1カメラ
8b 第2カメラ
81 近距離カメラ
81a 第1近距離カメラ
81b 第2近距離カメラ
81c 第3近距離カメラ
81d 第4近距離カメラ
82 遠距離カメラ
82a 第1遠距離カメラ
82b 第2遠距離カメラ
9 車両

G 画像データ
Gp 部分領域
r 道路
h 地平線
L 閾値
L1 第1閾値
L2 第2閾値
L3 第3閾値
Le 切替完了閾値
Lm 段階閾値
Ls 切替開始閾値
S 車両の状態情報
V 車速
Sp シフトポジション
A 操舵角
W 第1値
I1 第1平均輝度
I2 第2平均輝度
図1
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図13