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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】真皮シミ改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/899 20060101AFI20221129BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221129BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20221129BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20221129BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20221129BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
A61K36/899
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P17/00
A61K8/9794
A61Q19/02
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
A61K131:00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018197298
(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公開番号】P2020063219
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(72)【発明者】
【氏名】仲村 彩
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 浩子
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-044485(JP,A)
【文献】特開2004-345969(JP,A)
【文献】特開2011-126850(JP,A)
【文献】特開2013-249265(JP,A)
【文献】特開2015-010070(JP,A)
【文献】有色米オリザノール成分の分析-黒米のオリザノールの特徴-, [online], 農研機構, [2022.06.17検索], インターネット, <https://www.naro.go.jp/laboratory/nfri/seikatenji/seika2017/2017_poster054.pdf>
【文献】食品研究部門 研究成果展示会 2017年 展示内容, [online], 農研機構, [2022.06.17検索], インターネット, <https://www.naro.go.jp/laboratory/nfri/seikatenji/2017.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61P 1/00-43/00
G01N 33/00-33/46
G01N 33/48-33/98
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
REGISTRY/CASREACCT/MARPAT/KOSMET/GSTA/RDISCLOSURE/ReaxysFile/CHEMCATS/AGRICOLA/BIOTEHNO/ CABA/SCISEARCH/TOXCENTER(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有色米ヌカ抽出物を含む、メラノソームを貪食した線維芽細胞へのマクロファージ誘引活性化剤
【請求項2】
有色米ヌカ抽出物を含む、真皮に存在するメラニン分解剤
【請求項3】
有色米ヌカ抽出物を含む、真皮シミ改善剤
【請求項4】
(1) マクロファージ群と、メラノソームを貪食した線維芽細胞を含む線維芽細胞群を隔離して同一培養系内で培養する工程
(2) 被験物質を培地に添加する工程
(3) メラノソームを貪食した線維芽細胞を含む線維芽細胞に対するマクロファージの移動速度及び/又は数を指標とし、コントロールと比較してマクロファージの移動速度が速い被験物質及び/又は
マクロファージの数が多い被験物質を有効物質と判定する工程
を含むメラノソームを貪食した線維芽細胞へのマクロファージの誘引活性化剤のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、真皮シミ改善剤に関し、更に詳しくは、マクロファージを所望の部位に誘引し、所望の部位でマクロファージによるメラノソームの貪食を促進することによって、真皮シミを予防・改善する発明に関する。
【0002】
私たちの肌は常に外的環境から様々なストレスを受けている。特に紫外線による皮膚への傷害は、シミ、そばかす、日焼けの大きな原因になっている。
紫外線照射などにより、基底層で産生されたメラニンは、表皮細胞に移行して角層に到達し、垢となって排出される。しかしながら、シミ部位の皮膚臨床所見では真皮においてもメラニンが検出されており、ターンオーバーが活発ではない真皮にメラニンが長期間留まり、改善しにくいシミの原因となっていた。
【0003】
従来の美白剤は、メラニン産生に影響を及ぼす酵素であるチロシナーゼを阻害する物質や、表皮のターンオーバーを活性化する物質を有効成分として配合したものが主流であった。しかしながら、これらの美白剤は表皮のメラニンに作用するものであり、真皮のメラニンに対して作用を及ぼすものはなかった。
【0004】
一方、マクロファージは貪食能が高い細胞と定義され、体に生じた廃棄物の処理が主な役割であり、古くなった細胞や死滅した細胞の処理を行っていることが知られている。この性質を利用して、真皮に存在するメラニンを除去することを目的としたマクロファージ活性化剤の提案がされている(特許文献1)。一方で、真皮の細胞である線維芽細胞はメラニンを集める性質があることが分かってきた(特許文献2)。先行特許は、真皮に単体で存在するメラニン(メラノソームを含む。以下同じ。)の貪食を促進するものであるため、特定の線維芽細胞に貪食されたメラニンを効率的に除去することは困難であった。
【0005】
マクロファージは走化性因子、例えばMCP-1(CCL2)の濃度勾配に従って移動して、死滅した細胞や菌、メラニンなどの異物を貪食することが知られている(非特許文献1、2)。しかし、化粧料に直接MCP-1を配合しても、皮膚表層から深層への拡散による濃度勾配が形成されるのみで、標的部位であるメラニンを貪食した特定の線維芽細胞に対して、マクロファージを選択的に誘引することはできない。
【0006】
有色米由来の抽出物には、各種の効果が見出されている。例えば、親水性の溶媒で抽出された有色米の抽出物にメラニン生成抑制作用があることが知られている(特許文献3)。また、米ヌカ米胚芽等から得られたスフィンゴ糖脂質によりマクロファージの貪食能を促進する効果が報告されている(特許文献4)。
しかしながら、メラニンを効率的に除去するためには、マクロファージの貪食能を促進するだけでなく、マクロファージが所望する部位、即ち線維芽細胞がメラニンを集めている部位にまで素早くマクロファージを誘引させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-281205号
【文献】特開2018-72098号
【文献】特開平10-287525号
【文献】特開2010-270104号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Essential Contribution of Monocyte Chemoattractant Protein-1/C-C Chemokine Ligand-2 to Resolution and Repair Processes in Acute Bacterial Pneumonia. Hideaki Amano, Kounosuke Morimoto. J Immunol 2004; 172: 398-409
【文献】Monocyte chemotactic protein-1 (MCP-1), -2, and -3 are chemotactic for human T lymphocytes. Carr MW1, Roth SJ, Luther E, Rose SS, Springer TA, Proc Natl Acad Sci USA. 1994; 91 (9): 3652-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、真皮に存在するメラニンによるシミ(以下、「真皮シミ」という場合がある。)の改善することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
有色米ヌカの抽出物を用いることにより、上記問題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、真皮に存在するメラニンを蓄積した線維芽細胞に、マクロファージを誘引させ、メラニンを貪食させることにより、真皮に存在するメラニンによるシミを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】メラノソームを貪食した線維芽細胞およびマクロファージの共培養経過写真。hは時間を示す。以下の図面において同じ。
図2図1における写真(0h、132h)の二値化画像
図3】マクロファージ誘引作用の比較
図4】紫玄米ヌカ抽出物を添加した場合の、メラノソームを貪食した線維芽細胞およびマクロファージの共培養経過写真。
図5】PBS(-)を添加した場合の、メラノソームを貪食した線維芽細胞およびマクロファージの共培養経過写真。
【0013】
本発明の有色米ヌカ抽出物は、イネ科(Poaceae)イネ属(Oryza)イネ(学名:Oryza sativa)のヌカから抽出することができる。ここで、有色米とは玄米中の種皮、糊粉層またはでんぷん層の一部または全部に色素を含有する品種の米であり、これらの米の色調により、黒米、赤米等が挙げられる。黒米は、中国原産の古代米の一種で、紫黒米、紫米とも呼ばれる。その玄米の表面は黒色で、果皮・種皮および胚芽の部分に紫黒色系色素(アントシアニン系)を含む。赤米は、野生稲の大部分が赤米であることから、赤米は米のルーツとされる。玄米の色が赤褐色で果皮、種皮の部分に赤色系色素(タンニン系)を含む。ヌカ層を有する状態の紫玄米は紫黒色を呈し、褐色を呈する一般的な白米の玄米とは外観によって容易に識別が可能である。また、紫玄米を搗精する際に生じるヌカも、一般的な白米のヌカとは外観によって容易に識別が可能である。
【0014】
本発明の有色米ヌカ抽出物の調製も特に限定されるものではない。例えば、水、種々適当な有機溶媒、及びこれらの混合溶媒のいずれかに投入し、低温下及び/又は加温下で抽出された物が使用できる。
【0015】
有色米ヌカ抽出物の各剤の組成物全体に対する配合量は、有効量であれば特に限定されないが、乾燥質量に換算して0.001~10質量%が好ましく、より好ましくは0.001~1.0質量%である。
【0016】
抽出溶媒としては、特に限定はされないが例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール等の低級1価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の液状多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸エチルなどのアルキルエステル;ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素;ジエチルエーテル等のエーテル類;ジクロルメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルカン等の1種または2種以上を用いることができる。就中、水、エチルアルコール、1,3-ブチレングリコールの1種または2種以上の混合溶媒が特に好適である。
【0017】
以上のような条件で得られる有色米ヌカ抽出物は、抽出された溶液のまま用いても良いが、さらに必要により濾過等の処理をして、濃縮、粉末化したものを適宜使い分けて用いることができる。また、市販品を用いることができ、丸善製薬社製の紫玄米ヌカエキスBG等を用いることができる。
【0018】
本発明におけるマクロファージ誘引剤とは有効成分がマクロファージに直接的に作用して、マクロファージを誘引するものをさし、マクロファージ誘引活性剤とは有効成分が細胞等に作用して、マクロファージを間接的に誘引するものをさす。
【0019】
以下、本発明における有色米ヌカ抽出物の調製、効果試験等の実施例を示すが、ここに記載された実施例に限定されないのは言うまでもない。
【0020】
<試料の調製>
有色米ヌカ抽出物は、丸善製薬社製の紫玄米ヌカエキスBG、米ヌカ抽出物は、丸善製薬社製のコメヌカ抽出液BG、アントシアニンは、和光純薬製の塩化デルフィニジンを用いた。
【0021】
<メラノソームの調製>
ヒト由来メラノーマ細胞HM3KOを5%CO下、37℃のインキュベーター内で、10%FBSを含むD-MEM培地(Invitrogen社製Gibco)を用いて培養した。
100%コンフルエント近くになりメラニン産生が進んだ細胞を、トリプシンを用いて7.0×10cells/ tubeになるようにエッペンドルフチューブに回収、遠心(1000g、4℃、3分)によって細胞ペレットを作成した。その後ペレットをPBS(-)にて洗浄した。
【0022】
細胞ペレットに対し、1mLのcold lysis buffer(1% octylphenoxy poly (ethyleneoxy)ethanol(IGEPAL CA-630)、0.01% SDS含有0.1M Tris-HCl溶液pH7.5)を添加した。これを10分ごとに攪拌しながら、20分室温にて静置した。この分散溶液を遠心分離し(1000g、4℃、3分)、不要物を沈殿させ、メラノソームを含む上清を回収した。回収した上清を再度、遠心分離し(1000g、4℃、3分)、上清を回収した。この上清を遠心分離し(20000g、4℃、3分)、得られた沈殿をメラノソームリッチ画分とした。上清を吸引除去し、メラノソームのペレットをPBSにて2度洗浄した。(20000g、4℃、3分)これにPBSを添加し、50回以上ピペッティングすることによってメラノソームを分散させた。このメラノソーム懸濁液をメラノソームとした。
【0023】
<アントシアニン量の調製>
紫玄米に含まれるアントシアニンの量は収穫年度や品種によって異なるが、各紫玄米1gあたりのアントシアニン量が、朝紫は1-6mg、おくのむらさきは0-0.5mgであった。
これらの数値より、紫玄米に含まれる平均のアントシアニン量を算出し、0.03mg/mLのアントシアニンを1000ppm紫玄米ヌカ抽出物の比較例として用いた。
【0024】
-マクロファージの貪食能確認試験-
線維芽細胞を1.0×10cell/mLおよび単球細胞を1.0×10cell/mLになるように5%FBSを含むRPMI1640培地(Invitrogen社製Gibco)にそれぞれ懸濁し、各細胞を70μLずつculture-Insert in μ-Dish 35 mm, high, ibiTreat(ibidi)のウェルに播種した。5%のCO下、37℃のインキュベーター内で24時間培養した。培養後線維芽細胞のウェルにはメラノソーム10μLを添加し、単球細胞のウェルには、単球細胞をマクロファージに分化させるために、3.2mM PMAをそれぞれ添加した。5%のCO下、37℃のインキュベーター内で72時間培養した。各ウェル内をPBS(―)で洗浄した後に、インサートを除去して共培養を開始し、マクロファージの貪食能について確認を行った。
【0025】
<分析条件>
画像解析ソフト(WinROOF:三谷商事株式会社)を用いて、メラノソームによって黒く見える部分とそれ以外を二値化し、メラノソームの存在する面積を算出した。
【0026】
図1は、共培養開始直後(0時間)、共培養開始から132時間後まで24時間ごとに撮影した写真である(BZ-X700、KEYENCE、明視野10倍レンズ)。共培養開始直後には左側にマクロファージ、右側にメラノソームを貪食した線維芽細胞が位置していたが、共培養開始24時間後あたりからマクロファージが線維芽細胞の方に誘引され始めた。その後、マクロファージがメラノソームを貪食し始め、共培養開始132時間後では、画面上のメラノソームの量が減少していることが目視で明らかである。メラノソーム部分の面積を計測したところ、メラノソーム添加直後を1とすると、132時間後は0.302にまで減少した(図2)。これにより、マクロファージは線維芽細胞に取り込まれたメラノソームも貪食できることを確認した。
【0027】
CytoSelect 96-well Cell Migration Assay、5μm、Fluorometric Format(CBA-105、セルバイオラボ)の下層のウェルに5%FBSを含むRPMI1640培地および1000ppmのスクリーニングサンプルを加えた。なお、ポジティブコントロールとしてMCP-1 100ng/mL、ネガティブコントロールとしてPBS(―)を添加した。
上層のメンブレンチャンバーを下層のウェルにセットし、一晩FBSを除いたRPMI1640培地で培養を行った単球細胞懸濁液(5.0×10cell/mL)を100μL添加した。フタをして5%のCO下、37℃のインキュベーター内で4時間インキュベートした。150μLの Cell detachment Solutionを96-well Cell Harvesting Trayに添加し、その上に単球細胞懸濁液を除いたメンブレンチャンバーをのせて5%のCO下、37℃のインキュベーター内で30分間インキュベートした。新しい96ウェルプレートに下層に誘引された単球細胞懸濁液75μLおよびDetachment Solution75μLを合わせた。そこに4xLysis buffer/Cyquant GR Dye Solution(75:1)を作製し、先ほどの誘引されたマクロファージを合わせた150μLの懸濁液の中に50μLずつ添加した。この溶液150μLを新しい96ウェルプレートに移し、蛍光プレートリーダー(infinite F200Pro、TECAN)で480nm/520nmで測定を行った。コントロールよりも誘引作用が高ければ、誘引作用があると言えるが、ポジティブコントロールであるMCP-1よりも高い誘引性作用があれば、著しく高い誘引作用があると言える。
【0028】
図3に示したマクロファージ誘引試験結果より、米ヌカ抽出物およびアントシアニンには誘引作用がなく、紫玄米ヌカ抽出物には著しく高い誘引作用が認められた。
【0029】
以上の結果より、有色米である紫玄米のヌカ抽出物にマクロファージ誘引作用があることが見出されたが、有色米ではない通常の米ヌカ抽出物には誘引作用がないことが分かった。また、アントシアニンには誘引作用が見られなかった。このことから、本誘引効果は、アントシアニン以外の成分によるものであることが分かった。
そこで、次に有色米ヌカ抽出物によって、メラノソームを取り込んでいる線維芽細胞部分にマクロファージを誘引できるかを確認した。
【0030】
線維芽細胞を1.0×10cell/mLおよび単球細胞を1.0×10cell/mLになるように5%FBSを含むRPMI1640培地(Invitrogen社製Gibco)に懸濁し、それぞれの細胞を70μLずつculture-Insert in μ-Dish 35 mm, high, ibiTreat(ibidi)のウェルに播種した。5%のCO下、37℃のインキュベーター内で24時間培養した。培養後線維芽細胞のウェルにはメラノソーム10μLを添加し、単球細胞のウェルには、単球細胞をマクロファージに分化させるために、3.2mM PMAをそれぞれ添加した。5%のCO下、37℃のインキュベーター内で72時間培養した。各ウェル内をPBS(―)で洗浄した後にインサートを除去して共培養を開始した。なお、72時間培養後に共培養を開始したのは、メラノソームを添加した線維芽細胞が特定の線維芽細胞にメラノソームを移送終了するのが概ね72時間後であることからである。共培養開始直後に紫玄米ヌカ抽出物1000ppmおよびコントロールとして同量のPBS(-)を培地に添加後試料添加による濃度勾配ができないよう培地を十分攪拌した。培養直後からタイムラプス動画撮影を行った。コントロールの結果と比較して、誘引されたマクロファージの数が多い、あるいは早さが早ければ、誘引活性化作用があると判断できる。
【0031】
図4(紫玄米ヌカ抽出物を添加)および図5(コントロールとしてPBS(-)を添加)は、共培養開始直後(0時間)、共培養開始から72時間後まで24時間ごとに撮影した写真である(BZ-X700、KEYENCE、明視野10倍レンズ)。共培養開始直後には左側にマクロファージ、右側にメラノソームを貪食した線維芽細胞が位置していたが、紫玄米ヌカ抽出物を添加した方では、共培養開始24時間後あたりからマクロファージが線維芽細胞の方に誘引され始めた。一方、コントロールであるPBS(-)を添加した方では、共培養開始24時間後にはまだマクロファージは線維芽細胞の方に誘引されていない。また、共培養開始72時間後を比較すると、明らかに有色米である紫玄米ヌカ抽出物を添加した方が、マクロファージが多く誘引されている。
この結果より、有色米ヌカ抽出物にはマクロファージ誘引活性化作用があることが確認され、また、線維芽細胞の方に誘引されるマクロファージの様子をリアルタイムで確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、シミ部位等の所望部位にマクロファージを誘引させることができ、マクロファージにより真皮に落ち込んだメラニン(メラノソーム含む)を貪食させることによって、できたシミを改善することができる。また、本発明のシミ改善剤を用いれば、メラニンが真皮に落ち込んだ後停滞する前にメラニンを貪食させれば、シミ予防も期待できる。
図1
図2
図3
図4
図5