(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】超音波流量計および超音波流量計におけるピーク高さ情報取得方法
(51)【国際特許分類】
G01F 1/66 20220101AFI20221129BHJP
G01F 1/00 20220101ALI20221129BHJP
【FI】
G01F1/66 Z
G01F1/66 101
G01F1/00 F
(21)【出願番号】P 2018203539
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 宏
(72)【発明者】
【氏名】小原 太輔
(72)【発明者】
【氏名】夏 園
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-187506(JP,A)
【文献】特開2014-006170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0055171(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00
G01F 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の流体が流れる配管と、この配管の上流側に配置された第1の超音波送受信器と、前記配管の下流側に配置された第2の超音波送受信器とを備え、前記第1の超音波送受信器と前記第2の超音波送受信器との間で前記流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測工程を複数回実施し、これら計測工程毎に得られた前記両方向における前記超音波信号の伝播時間差に基づいて、前記流体の流量を計測するように構成された超音波流量計において、
前記超音波信号の受信波形を計測するように構成された受信波形計測部と、
前記受信波形の振幅方向に部分的に、その受信波形の所定番目の波の予測される振幅値を含む所定幅の探索範囲を設定し、この探索範囲内で閾値を変えながら前記受信波形計測部による前記受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が前記閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて前記所定番目の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得するように構成されたピーク高さ情報取得部と、を備え、
前記ピーク高さ情報取得部は、
前記受信波形の振幅方向に部分的に、その受信波形における前記ピーク高さ情報の取得の対象となる波のうち、最小の振幅の波の予測される振幅値を含む所定幅の探索範囲を設定し、この探索範囲内で閾値を変えながら前記受信波形計測部による前記受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が前記閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて前記最小の振幅の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得し、
この取得したピーク高さ情報から予測される次の波の振幅値を含む所定幅の探索範囲を前記受信波形の振幅方向に部分的に設定し、この探索範囲内で閾値を変えながら前記受信波形計測部による前記受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が前記閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて前記次の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得する
ことを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
測定対象の流体が流れる配管と、この配管の上流側に配置された第1の超音波送受信器と、前記配管の下流側に配置された第2の超音波送受信器とを備え、前記第1の超音波送受信器と前記第2の超音波送受信器との間で前記流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測工程を複数回実施し、これら計測工程毎に得られた前記両方向における前記超音波信号の伝播時間差に基づいて、前記流体の流量を計測するように構成された超音波流量計において、
前記超音波信号の受信波形を計測するように構成された受信波形計測部と、
前記受信波形の振幅方向に部分的に、その受信波形の所定番目の波の予測される振幅値を含む所定幅の探索範囲を設定し、この探索範囲内で閾値を変えながら前記受信波形計測部による前記受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が前記閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて前記所定番目の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得するように構成されたピーク高さ情報取得部と、を備え、
前記ピーク高さ情報取得部は、
前記受信波形計測部によって計測された前記受信波形の振幅の代表値を求め、この振幅の代表値から予測される前記受信波形における所定番目の波の振幅値を含む所定幅の探索範囲を前記受信波形の振幅方向に部分的に設定し、この探索範囲内で閾値を変えながら前記受信波形計測部による前記受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が前記閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて前記所定番目の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得し、
この取得したピーク高さ情報から予測される次の波の振幅値を含む所定幅の探索範囲を前記受信波形の振幅方向に部分的に設定し、この探索範囲内で閾値を変えながら前記受信波形計測部による前記受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が前記閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて前記次の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得する
ことを特徴とする超音波流量計。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載された超音波流量計において、
前記ピーク高さ情報取得部は、
前記受信波形が前記閾値と最初に交叉するタイミングを求め、このタイミングを過ぎた
後の次にゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻として検出し、この検出したゼロクロス時刻に基づいて前記ピーク高さ情報を取得する
ことを特徴とする超音波流量計。
【請求項4】
測定対象の流体が流れる配管と、この配管の上流側に配置された第1の超音波送受信器と、前記配管の下流側に配置された第2の超音波送受信器とを備え、前記第1の超音波送受信器と前記第2の超音波送受信器との間で前記流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測工程を複数回実施し、これら計測工程毎に得られた前記両方向における前記超音波信号の伝播時間差に基づいて、前記流体の流量を計測する超音波流量計におけるピーク高さ情報取得方法であって、
前記超音波信号の受信波形を計測する受信波形計測ステップと、
前記受信波形の振幅方向に部分的に、その受信波形における所定番目の波の予測される振幅値を含む所定幅の探索範囲を設定し、この探索範囲内で閾値を変えながら前記受信波形計測ステップによる前記受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が前記閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて前記所定番目の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得するピーク高さ情報取得ステップと、を備え、
前記ピーク高さ情報取得ステップは、
前記受信波形の振幅方向に部分的に、その受信波形における前記ピーク高さ情報の取得の対象となる波のうち、最小の振幅の波の予測される振幅値を含む所定幅の探索範囲を設定し、この探索範囲内で閾値を変えながら前記受信波形計測ステップによる前記受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が前記閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて前記最小の振幅の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得し、
この取得したピーク高さ情報から予測される次の波の振幅値を含む所定幅の探索範囲を前記受信波形の振幅方向に部分的に設定し、この探索範囲内で閾値を変えながら前記受信波形計測ステップによる前記受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が前記閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて前記次の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得する
ことを特徴とする超音波流量計におけるピーク高さ情報取得方法。
【請求項5】
測定対象の流体が流れる配管と、この配管の上流側に配置された第1の超音波送受信器と、前記配管の下流側に配置された第2の超音波送受信器とを備え、前記第1の超音波送受信器と前記第2の超音波送受信器との間で前記流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測工程を複数回実施し、これら計測工程毎に得られた前記両方向における前記超音波信号の伝播時間差に基づいて、前記流体の流量を計測する超音波流量計におけるピーク高さ情報取得方法であって、
前記超音波信号の受信波形を計測する受信波形計測ステップと、
前記受信波形の振幅方向に部分的に、その受信波形における所定番目の波の予測される振幅値を含む所定幅の探索範囲を設定し、この探索範囲内で閾値を変えながら前記受信波形計測ステップによる前記受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が前記閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて前記所定番目の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得するピーク高さ情報取得ステップと、を備え、
前記ピーク高さ情報取得ステップは、
前記受信波形計測ステップによって計測された前記受信波形の振幅の代表値を求め、この振幅の代表値から予測される前記受信波形における所定番目の波の振幅値を含む所定幅の探索範囲を前記受信波形の振幅方向に部分的に設定し、この探索範囲内で閾値を変えながら前記受信波形計測ステップによる前記受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が前記閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて前記所定番目の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得し、
この取得したピーク高さ情報から予測される次の波の振幅値を含む所定幅の探索範囲を前記受信波形の振幅方向に部分的に設定し、この探索範囲内で閾値を変えながら前記受信波形計測ステップによる前記受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が前記閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて前記次の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得する
ことを特徴とする超音波流量計におけるピーク高さ情報取得方法。
【請求項6】
請求項
4又は5に記載された超音波流量計におけるピーク高さ情報取得方法において、
前記ピーク高さ情報取得ステップは、前記受信波形が前記閾値と最初に交叉するタイミングを求め、このタイミングを過ぎた後の次にゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻として検出し、この検出したゼロクロス時刻に基づいて前記ピーク高さ情報を取得する
ことを特徴とする超音波流量計におけるピーク高さ情報取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて流体の流量を計測する超音波流量計およびその超音波流量計におけるピーク高さ情報取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、流体の流量を計測する流量計として、超音波を用いて流体の流量を計測する超音波流量計が用いられている。
【0003】
この超音波流量計では、
図12にその模式図を示すように、測定対象の流体が流れる配管1の上流側の外周面に第1の超音波送受信器(上流側トランスデューサ)2を配置し、下流側の外周面に第2の超音波送受信器(下流側トランスデューサ)3を配置し、第1の超音波送受信器2と第2の超音波送受信器3との間で流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測工程を複数回実施し、これら計測工程毎に得られた両方向における超音波信号の伝播時間差に基づいて流体の流速vを測定し、この測定した流速vと配管1の断面積Sとから流体の流量Qを求めるようにする(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図12において、θは配管1の軸と超音波信号の伝播方向とのなす角である。第1の超音波送受信器2から発射されて第2の超音波送受信器3で受信される超音波信号(上流側から下流側へと伝播する超音波信号(順方向に伝播する超音波信号))の伝播時間t1(順方向伝播時間)は、下記(1)式のように表される。
t1=L/(c+vcosθ) ・・・・(1)
ここで、Lは超音波信号の伝播距離〔m〕、cは流体中の音速〔m/s〕である。超音波は流体の流れに乗って伝播するため、流れが速いほど短い時間で伝播する。
【0005】
同様に、第2の超音波送受信器3から発射されて第1の超音波送受信器2で受信される超音波信号(下流側から上流側へと伝播する超音波信号(逆方向に伝播する超音波信号))の伝播時間t2(逆方向伝播時間)は、下記(2)式のように表される。
t2=L/(c-vcosθ) ・・・・(2)
超音波は流体の流れに逆らって伝播するため、流れが速いほど長い時間をかけて伝播する。
【0006】
上記(1)式および(2)式より、
Δt=t2-t1=L/(c-vcosθ)-L/(c+vcosθ)=2vLcosθ/(c2-v2cos2θ)≒2vLcosθ/c2 ・・・・(3)
したがって、
v≒(c2/2Lcosθ)・(t2-t1)=(c2/2Lcosθ)・Δt ・・・・(4)
となる。
この流速vと配管1の断面積Sとから流体の流量Qを求めることができる。
【0007】
図13(a)に、第2の超音波送受信器3から出力される受信信号(順方向の受信信号)の波形図(模式図)を示し、
図26(b)に、第1の超音波送受信器2から出力される受信信号(逆方向の受信信号)の波形図(模式図)を示す。
【0008】
図12において、第1の超音波送受信器2と第2の超音波送受信器3は、交互に一定時間パルス駆動される。これにより、第1の超音波送受信器2から発射されたパルス状の超音波信号(順方向の送信信号)が流体を介して第2の超音波送受信器3で受信され、第2の超音波送受信器3から発射されたパルス状の超音波信号(逆方向の送信信号)が流体を介して第1の超音波送受信器2で受信される。
【0009】
図14(a)に、超音波送受信器2,3から出力される送信信号を示し、
図14(b)に、超音波送受信器2,3から出力される受信信号を示す。なお、
図14(a)において、横軸は縮小して示している。また、
図14(a)において、tuは送信信号の周期を示している。
【0010】
パルス状の超音波信号を発射した後、最初のパルス状の超音波信号の受信タイミングtrでは、受信信号がまだ小さいため、ノイズなどの存在により現実には計測できない。そこで、受信タイミングtrから少し時間を経て、受信信号がある程度大きくなったところで、予め定められた閾値電圧(基準電圧)Vsを超えた後の次のゼロクロスするタイミングを目的とするゼロクロス時刻Zとし、このゼロクロス時刻Zを使って超音波信号の送信開始タイミングtsから受信タイミングtrまでの伝播時間t(=t1 or t2)を算出するということがよく行われている。
【0011】
ゼロクロス時刻Zは、受信タイミングtrに対して所定の時間dly遅れて存在すると考えられる。したがって、ゼロクロス時刻Zから所定の時間dlyを差し引くことにより、伝播時間tが求められる。
t=Z-dly ・・・・(5)
【0012】
なお、所定の時間dlyは、本来あるべき伝播時間(伝播経路長を音速で割って算出)と目的とするゼロクロス時刻Zとの差として、あらかじめ計算しておく。
【0013】
また、
図14に示した例では、受信信号の信号値の変化を示す波形(受信波形)における3番目の波S3の振幅値P3を目標ピークとし、この目標ピークと受信波形における2番目の波S2の振幅値(目標前ピーク)P2との間に伝播時間計測用の閾値電圧Vsを定めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、このような超音波流量計では、強度に個体差がある目標ピークに対して、適切なレベルの閾値電圧Vsを設定することに手間がかかるという問題があった。
【0016】
すなわち、実際の受信波形は、流体や素子の個体差等の影響を受け、信号強度に偏りが生じるために、モデル波形と完全には一致せず、それぞれ異なる。そのため、受信波形を実測しないと、目標ピークの位置が分からず、それに応じた正しい閾値電圧Vsを設定することができない。手作業で、目標ピークを把握し、閾値電圧Vsを設定するのは煩雑で手間がかかる。
【0017】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、効率的に目標ピークを把握することが可能な超音波流量計および超音波流量計におけるピーク高さ情報取得方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような目的を達成するために本発明は、測定対象の流体が流れる配管(1)と、この配管の上流側に配置された第1の超音波送受信器(2)と、配管の下流側に配置された第2の超音波送受信器(3)とを備え、第1の超音波送受信器と第2の超音波送受信器との間で流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測工程を複数回実施し、これら計測工程毎に得られた両方向における超音波信号の伝播時間差に基づいて、流体の流量を計測するように構成された超音波流量計(100)において、超音波信号の受信波形を計測するように構成された受信波形計測部(41)と、受信波形の振幅方向に部分的に、その受信波形における所定番目の波(S)の予測される振幅値(P)を含む所定幅の探索範囲(W)を設定し、この探索範囲内で閾値(Vth)を変えながら受信波形計測部による受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて所定番目の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得するように構成されたピーク高さ情報取得部(42)を備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、測定対象の流体が流れる配管(1)と、この配管の上流側に配置された第1の超音波送受信器(2)と、配管の下流側に配置された第2の超音波送受信器(3)とを備え、第1の超音波送受信器と第2の超音波送受信器との間で流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測工程を複数回実施し、これら計測工程毎に得られた両方向における超音波信号の伝播時間差に基づいて、流体の流量を計測するように構成された超音波流量計(100)におけるピーク高さ情報取得方法であって、超音波信号の受信波形を計測する受信波形計測ステップ(ステップS103)と、受信波形の振幅方向に部分的に、その受信波形における所定番目の波(S)の予測される振幅値(P)を含む所定幅の探索範囲(W)を設定し、この探索範囲内で閾値(Vth)を変えながら受信波形計測ステップによる受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて所定番目の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得するピーク高さ情報取得ステップ(S101~S108)を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明では、受信波形の振幅方向に部分的に、その受信波形における所定番目の波の予測される振幅値を含む所定幅の探索範囲を設定し、この探索範囲内で閾値を変えながら受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて所定番目の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得する。
【0021】
すなわち、本発明では、受信波形の振幅方向の全範囲ではなく、受信波形の振幅方向に部分的に設定される所定幅の探索範囲内だけで、閾値を変えながら受信波形の計測を繰り返し実行させ、受信波形が計測される毎にその受信波形が閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて所定番目の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得する。
【0022】
これにより、受信波形の振幅方向の全範囲を探索範囲とするような方法と比べ、閾値を変える範囲(閾値を設定する範囲)を狭くし、閾値を変える回数(設定する閾値の数)を少なくして、また受信波形の計測回数を少なくして、効率的に目標ピークを把握することが可能となる。
【0023】
本発明では、例えば、受信波形の振幅方向に部分的に、その受信波形におけるピーク高さ情報の取得の対象となる波のうち、最小の振幅の波(S1)の予測される振幅値(P1)を含む所定幅の探索範囲(W1)を設定し、この探索範囲内で閾値(Vth)を変えながら受信波形計測部による受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて最小の振幅の波(S1)の振幅値(P1)の実値をピーク高さ情報として取得し、この取得したピーク高さ情報から予測される次の波(S2)の振幅値(P2)を含む所定幅の探索範囲(W2)を受信波形の振幅方向に部分的に設定し、この探索範囲内で閾値(Vth)を変えながら受信波形計測部による受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて次の波(S2)の振幅値(P1)の実値をピーク高さ情報として取得するようにする。
【0024】
これにより、同様にして、以降の波(S)についても振幅値(P)の実値をピーク高さ情報として取得するようにして、目標とする波(S3)の振幅値(目標ピーク)を把握し、この把握した目標ピークと目標とする波の前の波(S2)の振幅値(目標前ピーク)との間に、最適な伝播時間計測用の閾値電圧(Vs)を設定するようにすることが可能となる。
【0025】
また、本発明では、例えば、受信波形計測部によって計測された受信波形の振幅の代表値(例えば、Pmax)を求め、この振幅の代表値から予測される受信波形における所定番目の波(S2)の振幅値(P2)を含む所定幅の探索範囲(W2)を受信波形の振幅方向に部分的に設定し、この探索範囲内で閾値(Vth)を変えながら受信波形計測部による受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて所定番目の波(S2)の振幅値(P2)の実値をピーク高さ情報として取得し、この取得したピーク高さ情報から予測される次の波(S3)の振幅値(P3)を含む所定幅の探索範囲(W3)を受信波形の振幅方向に部分的に設定し、この探索範囲内で閾値(Vth)を変えながら受信波形計測部による受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて次の波(S3)の振幅値(P3)の実値をピーク高さ情報として取得するようにする。
【0026】
これにより、例えば、所定番目の波(S2)を目標とする波の前の波、次の波(S3)を目標とする波とするようにして、目標とする波(S3)の振幅値(目標ピーク)を把握し、目標ピークと目標とする波の前の波(S2)の振幅値(目標前ピーク)との間に、最適な伝播時間計測用の閾値電圧(Vs)を設定するようにすることが可能となる。
【0027】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の構成要素を、括弧を付した参照符号によって示している。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、受信波形の振幅方向に部分的に、その受信波形における所定番目の波の予測される振幅値を含む所定幅の探索範囲を設定し、この探索範囲内で閾値を変えながら受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が閾値と最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて所定番目の波の振幅値の実値をピーク高さ情報として取得するようにしたので、受信波形の振幅方向の全範囲を探索範囲とするような方法と比べ、閾値を設定する範囲を狭くし、設定する閾値の数を少なくして、また受信波形の計測回数を少なくして、効率的に目標ピークを把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の第1例の原理を説明する図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2例の原理を説明する図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の要部を示す図である。
【
図4】
図4は、この超音波流量計における流量演算装置のハードウェア構成の概略を示す図である。
【
図5】
図5は、この超音波流量計における流量演算装置のCPUが実行する処理動作の第1例(実施の形態1)を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図7は、この超音波流量計における流量演算装置のCPUが実行する処理動作の第2例(実施の形態2)を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、この超音波流量計における流量演算装置の要部の機能ブロック図である。
【
図10】
図10は、実施の形態1の超音波流量計の流量演算装置におけるピーク高さ情報取得部の要部の機能ブロック図である。
【
図11】
図11は、実施の形態2の超音波流量計の流量演算装置におけるピーク高さ情報取得部の要部の機能ブロック図である。
【
図13】
図13は、超音波送受信器から出力される順方向および逆方向の受信信号の波形図(模式図)である。
【
図14】
図14は、超音波送受信器から出力される送信信号および受信信号を示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の前段となる技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。先ず、実施の形態の説明に入る前に、
図15を用いて本発明の前段となる技術について説明する。
【0031】
〔本発明の前段となる技術〕
超音波流量計では、
図12を用いて説明したように、第1の超音波送受信器2と第2の超音波送受信器3との間で流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測工程を複数回実施し、これら計測工程毎に得られた両方向における超音波信号の伝播時間差に基づいて流量Qを求める。この場合、複数回実施される計測工程毎に、順方向/逆方向ともに、
図15に示すような受信波形が計測される。
【0032】
本発明の前段となる技術では、この超音波流量計において、受信波形の振幅方向の全範囲(
図15に示した例では、プラス側の振幅方向の全範囲)を探索範囲とし、受信波形の計測を閾値Vthを変えながら繰り返し、受信波形が閾値Vthと最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて受信波形における波Sの振幅値Pを求めるようにする。
【0033】
この場合、受信波形が計測される毎に閾値Vthを少しずつ大きくして行き、受信波形が閾値Vthと最初に交叉するタイミングを求め、このタイミングを過ぎた後の次にゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻Zとして検出し、ゼロクロス時刻Zが大きくシフトした点の閾値Vthを受信波形における波Sの振幅値Pとして取得する。
【0034】
図15に示した例では、最初にゼロクロス時刻Zが大きくシフトした点の閾値Vthが最初の波S1の振幅値P1として取得され、次にゼロクロス時刻Zが大きくシフトした点の閾値Vthが2番目の波S2の振幅値P2として取得される。同様にして、次にゼロクロス時刻Zが大きくシフトした点の閾値Vthが3番目の波S3の振幅値P3として取得され、次にゼロクロス時刻Zが大きくシフトした点の閾値Vthが4番目の波S4の振幅値P4として取得される。
【0035】
このようにして、受信波形における波S1~S4の振幅値P1~P4を取得した後、この取得した波S1~S4の振幅値P1~P4から伝播時間計測用の閾値電圧Vsを定める。この例では、受信波形における3番目の波S3の振幅値P3を目標ピークとし、受信波形における2番目の波S2の振幅値P3を目標前ピークとし、目標ピークP3と目標前ピークP2との間に最適な伝播時間計測用の閾値電圧Vsを定める。
【0036】
〔本発明の前段となる技術の問題〕
しかしながら、この技術では、受信波形の振幅方向の全範囲を探索範囲としているので、閾値Vthを設定する範囲が広く、設定する閾値Vthの数が多くなり、また受信波形の計測回数も多く必要とする。このため、目標ピークを把握するまでに時間がかかり、電力の消費量も増大する。
【0037】
〔本発明の原理〕
次に、本発明の原理について説明する。本発明では、受信波形の振幅方向に部分的に、その受信波形における所定番目の波Sの予測される振幅値を含む所定幅の探索範囲Wを設定し、この探索範囲W内で閾値Vthを変えながら受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が閾値Vthと最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて所定番目の波Sの振幅値Pの実値をピーク高さ情報として取得するようにする。
【0038】
すなわち、本発明では、受信波形の振幅方向の全範囲ではなく、受信波形の振幅方向に部分的に設定される探索範囲W内だけで閾値Vthを変えながら、受信波形の計測を繰り返し実行させ、受信波形が計測される毎にその受信波形が閾値Vthと最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて所定番目の波Sの振幅値Pの実値をピーク高さ情報として取得する。
【0039】
これにより、受信波形の振幅方向の全範囲を探索範囲とするような方法と比べ、閾値Vthを変える範囲(閾値を設定する範囲)を狭くし、閾値Vthを変える回数(設定する閾値Vthの数)を少なくして、また受信波形の計測回数を少なくして、効率的に目標ピークを把握することができるようになり、簡単かつ短時間に、しかも低消費電力で、伝播時間計測用の閾値電圧Vsを設定することが可能となる。また、受信信号の実際の形状を確認し、超音波流量計の個別の特性差に合わせた閾値電圧Vsを設定することで、正しい伝播時間の計測を行うことが可能となり、正確な流量が得られる超音波流量計を実現することができるようになる。
【0040】
〔本発明の第1例〕
本発明では、例えば第1例として、
図1に示すように、受信波形の振幅方向に部分的に、その受信波形における最初の波(1番目の波:ピーク高さ情報の取得の対象となる波のうち、最小の振幅の波)S1の予測される振幅値P1含む所定幅の探索範囲W1を設定し、この探索範囲W1内で閾値Vthを変えながら受信波形の計測を繰り返し実行させ、受信波形が計測される毎にその受信波形が閾値Vthと最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて最初の波S1の振幅値P1の実値をピーク高さ情報として取得する。
【0041】
そして、この取得したピーク高さ情報(振幅値P1の実値)から予測される次の波(2番目の波)S2の振幅値P2を含む所定幅の探索範囲W2を受信波形の振幅方向に部分的に設定し、この探索範囲W2内で閾値Vthを変えながら受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が閾値Vthと最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて次の波S2の振幅値P2の実値をピーク高さ情報として取得する。
【0042】
これにより、同様にして、以降の波S(S3,S4)についても振幅値P(P3,P4)の実値をピーク高さ情報として取得するようにして、3番目の波S3の振幅値P3の実値を目標とする波の振幅値(目標ピーク)、2番目の波S2の振幅値P2の実値を目標とする波の前の波の振幅値(目標前ピーク)とし、目標ピーク(振幅値P3の実値)と目標前ピーク(振幅値P2の実値)との間に、最適な伝播時間計測用の閾値電圧Vsを設定することが可能となる。
【0043】
〔本発明の第2例〕
本発明では、例えば第2例として、
図2に示すように、受信波形の振幅の代表値として最大振幅Pmax(この例では、P4=Pmax)を求め、この最大振幅Pmaxから予測される受信波形における2番目の波S2の振幅値P2を含む所定幅の探索範囲W2を受信波形の振幅方向に部分的に設定し、この探索範囲W2内で閾値Vthを変えながら受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が閾値Vthと最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて2番目の波S2の振幅値P2の実値をピーク高さ情報として取得する。
【0044】
そして、この取得したピーク高さ情報(振幅値P2の実値)から予測される次の波(3番目の波)S3の振幅値P3を含む所定幅の探索範囲W3を受信波形の振幅方向に部分的に設定し、この探索範囲W3内で閾値Vthを変えながら受信波形の計測を繰り返し実行させ、この受信波形の計測が行われる毎にその受信波形が閾値Vthと最初に交叉するタイミングを求め、この求めたタイミングに基づいて3番目の波S3の振幅値P3の実値をピーク高さ情報として取得する。
【0045】
これにより、3番目の波S3の振幅値P3の実値を目標とする波の振幅値(目標ピーク)、2番目の波S2の振幅値P2の実値を目標とする波の前の波の振幅値(目標前ピーク)とするようにして、目標ピーク(振幅値P3の実値)と目標前ピーク(振幅値P2の実値)との間に、最適な伝播時間計測用の閾値電圧Vsを設定することが可能となる。
【0046】
本発明では、受信波形が閾値Vthと最初に交叉するタイミングに基づいて、所定番目の波Sの振幅値Pの実値をピーク高さ情報として取得する。この場合、受信波形が閾値Vthと最初に交叉するタイミングを求め、このタイミングを過ぎた後の次にゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻Zとして検出し、このゼロクロス時刻Zが大きくシフトした点の閾値Vthを波Sの振幅値Pとして取得するようにしてもよいし、受信波形が閾値Vthと最初に交叉するタイミングを求め、このタイミングが大きくシフトした点の閾値Vthを波Sの振幅値Pとして取得するようにしてもよい。
【0047】
また、本発明において、探索範囲W内でのピーク高さ情報の探索法としては、極値、境界探索の一般的な手法である「2分探索法」や「三分探索法」や「黄金分割法」などを用いることが可能である。
【0048】
最もシンプルな「2分探索法」では、探索範囲Wの両端と、その中央の合計3つの値に閾値Vthを設定して、閾値Vthと受信波形が交叉するタイミングを比較し、分割された2つの領域のどちらにピークがあるか否かを判断し、ピークがある側の領域に対して同様の動作を充分な精度になるまで繰り返し行うことで、ピーク頂点の電圧を明らかにする。
【0049】
また、本発明では、受信波形の振幅方向に部分的に探索範囲Wを設定するが、受信波形の振幅方向はプラス側であっても、マイナス側であってもよい。また、プラス側とマイナス側の両方の振幅方向であっても構わない。すなわち、ピーク高さ情報の取得は、プラス側の波の振幅値であってもよく、マイナス側の波の振幅値であってもよく、プラス側/マイナス側両方の波の振幅値であってもよい。
【0050】
また、本発明では、受信波形の振幅方向に部分的に探索範囲Wを設定して、所定番目の波Sの振幅値Pの実値をピーク高さ情報として取得するが、この取得したピーク高さ情報は必ずしも伝播時間計測用の閾値電圧Vsの設定に利用しなくてもよく、他のパラメータの設定などに利用してもよい。
【0051】
〔実施の形態〕
図3に、本発明の実施の形態に係る超音波流量計100の要部を示す。同図において、
図12と同一符号は
図12を参照して説明した構成要素と同一或いは同等の構成要素を示し、その説明は省略する。
【0052】
この超音波流量計100において、第1の超音波送受信器(上流側トランスデューサ)2および第2の超音波送受信器(下流側トランスデューサ)3に対しては、「第1の超音波送受信器2と第2の超音波送受信器3との間で流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測工程を複数回実施し、これら計測工程毎に得られた両方向における超音波信号の伝播時間差に基づいて流体の流速vを測定し、この測定した流速vと配管1の断面積Sとから流体の流量Qを求める流量演算装置4」が設けられている。
【0053】
流量演算装置4は、
図4に示すように、中央演算処理装置(CPU)4-1と、ランダムアクセスメモリ(RAM)4-2と、読み出し専用メモリ(ROM)4-3と、ハードディスクなどの記憶装置4-4と、入出力用のインタフェース4-5,4-6と、これらを接続する母線4-7とを備えている。
【0054】
この流量演算装置4には、本実施の形態特有のプログラムとして、閾値電圧設定プログラムがインストールされている。この閾値電圧設定プログラムは、例えばCD-ROMなどの記録媒体に記録された状態で提供され、この記録媒体から読み出されて記憶装置4-4に記録され、使用可能な状態として流量演算装置4にインストールされている。
【0055】
この流量演算装置4において、CPU4-1は、インタフェース4-5を介する入力情報を処理することで、RAM4-2やROM4-3、記憶装置4-4にアクセスしながら、流量演算装置4にインストールされている閾値電圧設定プログラムに従って動作する。以下、この閾値電圧設定プログラムに従ってCPU4-1が実行する処理動作の第1例(実施の形態1)について、
図5および
図6に分割して示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0056】
〔実施の形態1〕
CPU4-1は、先ず、受信波形(
図1参照)の振幅方向に部分的に、その受信波形における最初の波(1番目の波)S1の予測される振幅値P1を含む所定幅の探索範囲W1を設定する(ステップS101)。
【0057】
そして、CPU4-1は、この探索範囲W1内に振幅値P1の予測値よりも低い値として閾値Vthを設定し(ステップS102)、この設定した閾値Vthと比較しながら、受信波形の計測を行う(ステップS103,S104)。
【0058】
この受信波形の計測において、受信波形が閾値Vthを超えた場合、すなわち受信波形が閾値Vthと最初に交叉した場合(ステップS104のYES)、CPU4-1は、その後の次にゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻Zとして検出する(ステップS105)。
【0059】
CPU4-1は、今回検出されたゼロクロス時刻Zが前回検出されたゼロクロス時刻Zに対して大きく変化していなければ(ステップS106のNO)、閾値Vth=Vth+αとして(ステップS107)、ステップS102~S106の処理を繰り返す。探索範囲W1内での最初の閾値Vthとの比較に際しては、今回検出されたゼロクロス時刻Zと前回検出されたゼロクロス時刻Zとは同じとし(ステップS106のNO)、ステップS107を経て、ステップS102に戻る。
【0060】
CPU4-1は、ステップS102~S106の処理の繰り返し中、今回検出されたゼロクロス時刻Zが前回検出されたゼロクロス時刻Zに対して大きく変化したことを確認すると(ステップS106のYES)、その時の閾値Vthを最初の波S1の振幅値P1の実値とする(ステップS108)。
【0061】
そして、CPU4-1は、N=1とし(ステップS109)、ステップS108で得た最初の波S1の振幅値P1から予測される次の波(2番目の波)S2の振幅値P2を含む所定幅の探索範囲W2を、受信波形の振幅方向に部分的に設定する(ステップS110)。
【0062】
そして、CPU4-1は、この探索範囲W2内に閾値Vthを振幅値P2の予測値よりも低い値として設定し(ステップS111)、この設定した閾値Vthと比較しながら、受信波形の計測を行う(ステップS112,S113)。
【0063】
この受信波形の計測において、受信波形が閾値Vthを超えた場合、すなわち受信波形が閾値Vthと最初に交叉した場合(ステップS113のYES)、CPU4-1は、その後の次にゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻Zとして検出する(ステップS114)。
【0064】
CPU4-1は、今回検出されたゼロクロス時刻Zが前回検出されたゼロクロス時刻Zに対して大きく変化していなければ(ステップS115のNO)、閾値Vth=Vth+αとして(ステップS116)、ステップS111~S115の処理を繰り返す。探索範囲W2内での最初の閾値Vthとの比較に際しては、今回検出されたゼロクロス時刻Zと前回検出されたゼロクロス時刻Zとは同じとし(ステップS115のNO)、ステップS116を経て、ステップS111に戻る。
【0065】
CPU4-1は、ステップS111~S115の処理の繰り返し中、今回検出されたゼロクロス時刻Zが前回検出されたゼロクロス時刻Zに対して大きく変化したことを確認すると(ステップS115のYES)、その時の閾値Vthを2番目の波S2の振幅値P2の実値とする(ステップS117)。
【0066】
そして、CPU4-1は、N=N+1とし(ステップS118)、ステップS119でN=4となったことが確認されるまで、ステップS110~S118の処理を繰り返す。すなわち、次の波(3番目の波)S3、その次の波(4番目の波)S4に対し、振幅値P2,P3の実値から予測される振幅値P3,P4を含む所定幅の探索範囲W3,W4を設定し、この探索範囲W3,W4内で閾値Vthを変えながら、受信波形を計測する毎に、その受信波形が閾値Vthと最初に交叉するタイミングを求めてゼロクロス時刻Zを検出し、この検出したゼロクロス時刻Zに基づいて3番目の波S3の振幅値P3の実値、4番目の波S4の振幅値P4の実値を求める。
【0067】
そして、CPU4-1は、N=4となったことを確認すると(ステップS119のYES)、振幅値P3の実値を目標ピークとし、振幅値P2の実値を目標前ピークとし(ステップS120)、目標ピーク(振幅値P3の実値)と目標前ピーク(振幅値P2の実値)との間に、最適な伝播時間計測用の閾値電圧Vsを設定する(ステップS121)。
【0068】
〔実施の形態2〕
次に、閾値電圧設定プログラムに従ってCPU4-1が実行する処理動作の第2例(実施の形態2)について、
図7および
図8に分割して示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0069】
CPU4-1は、先ず、受信波形(
図2参照)を計測し(ステップS201)、この計測した受信波形の最大振幅Pmaxを求める(ステップS202)。そして、この最大振幅Pmaxから予測される受信波形における2番目の波S2の振幅値P2を含む所定幅の探索範囲W2を受信波形の振幅方向に部分的に設定する(ステップS203)。
【0070】
そして、CPU4-1は、この探索範囲W2内に閾値Vthを振幅値P2の予測値よりも低い値として設定し(ステップS204)、この設定した閾値Vthと比較しながら、受信波形の計測を行う(ステップS205,S206)。
【0071】
この受信波形の計測において、受信波形が閾値Vthを超えた場合、すなわち受信波形が閾値Vthと最初に交叉した場合(ステップS206のYES)、CPU4-1は、その後の次にゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻Zとして検出する(ステップS207)。
【0072】
CPU4-1は、今回検出されたゼロクロス時刻Zが前回検出されたゼロクロス時刻Zに対して大きく変化していなければ(ステップS208のNO)、閾値Vth=Vth+αとして(ステップS209)、ステップS204~S208の処理を繰り返す。探索範囲W2内での最初の閾値Vthとの比較に際しては、今回検出されたゼロクロス時刻Zと前回検出されたゼロクロス時刻Zとは同じとし(ステップS208のNO)、ステップS209を経て、ステップS204に戻る。
【0073】
CPU4-1は、ステップS204~S208の処理の繰り返し中、今回検出されたゼロクロス時刻Zが前回検出されたゼロクロス時刻Zに対して大きく変化したことを確認すると(ステップS208のYES)、その時の閾値Vthを2番目の波S2の振幅値P2の実値とする(ステップS210)。
【0074】
そして、CPU4-1は、ステップS210で得た2番目の波S2の振幅値P2から予測される次の波(3番目の波)S3の振幅値P3を含む所定幅の探索範囲W3を、受信波形の振幅方向に部分的に設定する(ステップS211)。
【0075】
そして、CPU4-1は、この探索範囲W3内に閾値Vthを振幅値P3の予測値よりも低い値として設定し(ステップS212)、この設定した閾値Vthと比較しながら、受信波形の計測を行う(ステップS213,S214)。
【0076】
この受信波形の計測において、受信波形が閾値Vthを超えた場合、すなわち受信波形が閾値Vthと最初に交叉した場合(ステップS214のYES)、CPU4-1は、その後の次にゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻Zとして検出する(ステップS215)。
【0077】
CPU4-1は、今回検出されたゼロクロス時刻Zが前回検出されたゼロクロス時刻Zに対して大きく変化していなければ(ステップS216のNO)、閾値Vth=Vth+αとして(ステップS217)、ステップS212~S216の処理を繰り返す。探索範囲W3内での最初の閾値Vthとの比較に際しては、今回検出されたゼロクロス時刻Zと前回検出されたゼロクロス時刻Zとは同じとし(ステップS216のNO)、ステップS217を経て、ステップS212に戻る。
【0078】
CPU4-1は、ステップS212~S216の処理の繰り返し中、今回検出されたゼロクロス時刻Zが前回検出されたゼロクロス時刻Zに対して大きく変化したことを確認すると(ステップS216のYES)、その時の閾値Vthを3番目の波S3の振幅値P3の実値とする(ステップS218)。
【0079】
そして、CPU4-1は、振幅値P3の実値を目標ピークとし、振幅値P2の実値を目標前ピークとし(ステップS219)、目標ピーク(振幅値P3の実値)と目標前ピーク(振幅値P2の実値)との間に、最適な伝播時間計測用の閾値電圧Vsを設定する(ステップS220)。
【0080】
図9に、超音波流量計100における流量演算装置4の要部の機能ブロック図を示す。この流量演算装置4は、CPU4-1の処理機能として、受信波形計測部41と、ピーク高さ情報取得部42と、伝播時間計測用閾値電圧決定部43とを備えている。なお、この受信波形計測部41、ピーク高さ情報取得部42、伝播時間計測用閾値電圧決定部43は、順方向/逆方向の受信信号のそれぞれに対して設けられている。
【0081】
この流量演算装置4において、受信波形計測部41は、超音波信号の受信波形を計測し、ピーク高さ情報取得部42は、受信波形計測部41によって計測された受信波形における少なくとも2番目の波S2の振幅値P2の実値と3番目の波S3の振幅値P3の実値をピーク高さ情報として検出し、伝播時間計測用閾値電圧決定部43は、ピーク高さ情報取得部42によって取得されたピーク高さ情報に基づいて最適な伝播時間計測用の閾値電圧Vsを決定する。
【0082】
図10に、実施の形態1におけるピーク高さ情報取得部42(42A)の要部の機能ブロック図を示す。このピーク高さ情報取得部42Aは、探索範囲設定部42A_1と、閾値設定部42A_2と、閾値比較部42A_3と、ゼロクロス時刻検出部42A_4と、前回のゼロクロス時刻記憶部42A_5と、ゼロクロス時刻比較部42A_6と、振幅値実値決定部42A_7とを備えている。
【0083】
このピーク高さ情報取得部42Aにおいて、探索範囲設定部42A_1は、受信波形の振幅方向に部分的に、その受信波形における最初の波(1番目の波)S1の予測される振幅値P1を含む所定幅の探索範囲W1を設定し、その設定した探索範囲W1を閾値設定部42A_2に送る。
【0084】
閾値設定部42A_2は、探索範囲設定部42A_1からの探索範囲W1内に振幅値P1の予測値よりも低い値として閾値Vthを定め、閾値比較部42A_3へ設定する。閾値比較部42A_3は、閾値Vthが設定されると、受信波形計測部41に受信波形の計測を開始させるとともに、計測される受信波形(刻々と変化する受信波形)と閾値Vthとの比較を行う。
【0085】
閾値比較部42A_3は、受信波形が閾値Vthを超えると、すなわち受信波形が閾値Vthと最初に交叉すると、その旨をゼロクロス時刻検出部42A_4へ知らせる。ゼロクロス時刻検出部42A_4は、閾値比較部42A_3からの知らせを受けて、この知らせを受けた後の次にゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻Zとして検出する。
【0086】
このゼロクロス時刻検出部42A_4で検出されたゼロクロス時刻Zは、今回のゼロクロス時刻Zとしてゼロクロス時刻比較部42A_6へ送られ、前回のゼロクロス時刻記憶部42A_5に記憶されている前回のゼロクロス時刻Zと比較される。
【0087】
なお、ゼロクロス時刻記憶部42A_5には、探索範囲設定部42A_1における探索範囲の設定が行われた時に限り、ゼロクロス時刻検出部42A_4で検出された今回のゼロクロス時刻Zが前回のゼロクロス時刻Zとして記憶される。その後は、ゼロクロス時刻検出部42A_4で検出された1回前のゼロクロス時刻Zが前回のゼロクロス時刻Zとして記憶される。
【0088】
ゼロクロス時刻比較部42A_6は、ゼロクロス時刻検出部42A_4で検出された今回のゼロクロス時刻Zとゼロクロス時刻記憶部42A_5に記憶されている前回のゼロクロス時刻Zとを比較し、今回のゼロクロス時刻Zが前回のゼロクロス時刻Zに対して大きく変化していない場合(変化小)、閾値設定部42A_2からの閾値比較部42A_3への閾値VthをVth=Vth+αに変更する。
【0089】
閾値比較部42A_3は、閾値Vthが変更されると、受信波形計測部41に受信波形の計測を開始させるとともに、計測される受信波形(刻々と変化する受信波形)と変更後の閾値Vthとの比較を行う。そして、受信波形が閾値Vthを超えると、その旨をゼロクロス時刻検出部42A_4へ知らせる。これにより、ゼロクロス時刻検出部42A_4でのゼロクロス時刻Zの検出、ゼロクロス時刻比較部42A_6でのゼロクロス時刻Zの比較、閾値設定部42A_2での閾値Vthの変更が繰り返される。
【0090】
ゼロクロス時刻比較部42A_6は、今回のゼロクロス時刻Zが前回のゼロクロス時刻Zに対して大きく変化(変化大)すると、その旨を振幅値実値決定部42A_7へ知らせる。振幅値実値決定部42A_7は、ゼロクロス時刻比較部42A_6からの「変化大」の知らせを受けて、その時の閾値設定部42A_2における閾値Vthを最初の波S1の振幅値P1の実値として決定する。
【0091】
この振幅値実値決定部42A_7で決定された最初の波S1の振幅値P1の実値は探索範囲設定部42A_1へ送られる。探索範囲設定部42A_1は、受信波形の振幅方向に部分的に、最初の波S1の振幅値P1の実値から予測される次の波(2番目の波)S2の振幅値P2を含む所定幅の探索範囲W2を設定し、その設定した探索範囲W2を閾値設定部42A_2に送る。
【0092】
閾値設定部42A_2は、探索範囲設定部42A_1からの探索範囲W2内に振幅値P2の予測値よりも低い値として閾値Vthを定め、閾値比較部42A_3へ設定する。閾値比較部42A_3は、閾値Vthが設定されると、受信波形計測部41に受信波形の計測を開始させるとともに、計測される受信波形(刻々と変化する受信波形)と閾値Vthとの比較を行う。
【0093】
その後、探索範囲W1と同様にして、ゼロクロス時刻検出部42A_4でのゼロクロス時刻Zの検出、ゼロクロス時刻比較部42A_6でのゼロクロス時刻Zの比較、閾値設定部42A_2での閾値Vthの変更が繰り返され、振幅値実値決定部42A_7において2番目の波S2の振幅値P2の実値が決定される。
【0094】
以下、同様にして、探索範囲設定部42A_1での探索範囲W3,W4の設定が行われ、その探索範囲W3,W4内で閾値Vthを変えながら、ゼロクロス時刻Zの検出が繰り返され、振幅値実値決定部42A_7での3番目の波S3の振幅値P3の実値、4番目の波S4の振幅値P4の実値が決定される。
【0095】
図11に、実施の形態2におけるピーク高さ情報取得部42(42B)の要部の機能ブロック図を示す。このピーク高さ情報取得部42Bは、探索範囲設定部42B_1と、閾値設定部42B_2と、閾値比較部42B_3と、ゼロクロス時刻検出部42B_4と、前回のゼロクロス時刻記憶部42B_5と、ゼロクロス時刻比較部42B_6と、振幅値実値決定部42B_7と、最大振幅取得部42B_8とを備えている。
【0096】
このピーク高さ情報取得部42Bにおいて、最大振幅取得部42B_8は、受信波形計測部41に受信波形の計測を行わせ、これによって計測された受信波形の最大振幅Pmaxを求める。この最大振幅取得部42B_8によって求められた受信波形の最大振幅Pmaxは探索範囲設定部42B_1へ送られる。
【0097】
探索範囲設定部42B_1は、最大振幅取得部42B_8からの最大振幅Pmaxから受信波形における2番目の波S2の振幅値P2を予測し、この予測される受信波形における2番目の波S2の振幅値P2を含む所定幅の探索範囲W2を受信波形の振幅方向に部分的に設定し、その設定した探索範囲W2を閾値設定部42B_2に送る。
【0098】
閾値設定部42B_2は、探索範囲設定部42B_1からの探索範囲W2内に振幅値P2の予測値よりも低い値として閾値Vthを定め、閾値比較部42B_3へ設定する。閾値比較部42B_3は、閾値Vthが設定されると、受信波形計測部41に受信波形の計測を開始させるとともに、計測される受信波形(刻々と変化する受信波形)と閾値Vthとの比較を行う。
【0099】
閾値比較部42B_3は、受信波形が閾値Vthを超えると、すなわち受信波形が閾値Vthと最初に交叉すると、その旨をゼロクロス時刻検出部42B_4へ知らせる。ゼロクロス時刻検出部42B_4は、閾値比較部42B_3からの知らせを受けて、この知らせを受けた後の次にゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻Zとして検出する。
【0100】
このゼロクロス時刻検出部42B_4で検出されたゼロクロス時刻Zは、今回のゼロクロス時刻Zとしてゼロクロス時刻比較部42B_6へ送られ、前回のゼロクロス時刻記憶部42B_5に記憶されている前回のゼロクロス時刻Zと比較される。
【0101】
なお、ゼロクロス時刻記憶部42B_5には、探索範囲設定部42B_1における探索範囲の設定が行われた時に限り、ゼロクロス時刻検出部42B_4で検出された今回のゼロクロス時刻Zが前回のゼロクロス時刻Zとして記憶される。その後は、ゼロクロス時刻検出部42B_4で検出された1回前のゼロクロス時刻Zが前回のゼロクロス時刻Zとして記憶される。
【0102】
ゼロクロス時刻比較部42B_6は、ゼロクロス時刻検出部42B_4で検出された今回のゼロクロス時刻Zとゼロクロス時刻記憶部42B_5に記憶されている前回のゼロクロス時刻Zとを比較し、今回のゼロクロス時刻Zが前回のゼロクロス時刻Zに対して大きく変化していない場合(変化小)、閾値設定部42B_2からの閾値比較部42B_3への閾値VthをVth=Vth+αに変更する。
【0103】
閾値比較部42B_3は、閾値Vthが変更されると、受信波形計測部41に受信波形の計測を開始させるとともに、計測される受信波形(刻々と変化する受信波形)と変更後の閾値Vthとの比較を行う。そして、受信波形が閾値Vthを超えると、その旨をゼロクロス時刻検出部42B_4へ知らせる。これにより、ゼロクロス時刻検出部42B_4でのゼロクロス時刻Zの検出、ゼロクロス時刻比較部42B_6でのゼロクロス時刻Zの比較、閾値設定部42B_2での閾値Vthの変更が繰り返される。
【0104】
ゼロクロス時刻比較部42B_6は、今回のゼロクロス時刻Zが前回のゼロクロス時刻Zに対して大きく変化(変化大)すると、その旨を振幅値実値決定部42B_7へ送る。振幅値実値決定部42B_7は、ゼロクロス時刻比較部42B_6からの「変化大」の知らせを受けて、その時の閾値設定部42B_2における閾値Vthを2番目の波S2の振幅値P2の実値として決定する。
【0105】
この振幅値実値決定部42B_7で決定された2番目の波S2の振幅値P2の実値は探索範囲設定部42B_1へ送られる。探索範囲設定部42B_1は、受信波形の振幅方向に部分的に、2番目の波S2の振幅値P2の実値から予測される次の波(3番目の波)S3の振幅値P3を含む所定幅の探索範囲W3を設定し、その設定した探索範囲W3を閾値設定部42B_2に送る。
【0106】
閾値設定部42B_2は、探索範囲設定部42B_1からの探索範囲W3内に振幅値P3の予測値よりも低い値として閾値Vthを定め、閾値比較部42B_3へ設定する。閾値比較部42B_3は、閾値Vthが設定されると、受信波形計測部41に受信波形の計測を開始させるとともに、計測される受信波形(刻々と変化する受信波形)と閾値Vthとの比較を行う。
【0107】
その後、探索範囲W2と同様にして、ゼロクロス時刻検出部42B_4でのゼロクロス時刻Zの検出、ゼロクロス時刻比較部42B_6でのゼロクロス時刻Zの比較、閾値設定部42B_2での閾値Vthの変更が繰り返され、振幅値実値決定部42B_7において3番目の波S3の振幅値P3の実値が決定される。
【0108】
なお、
図1や
図2に示した例では、探索範囲W1,W2,W3,W4の幅を同じとしているが、必ずしも同じ幅である必要はなく、受信波形の振幅方向にその幅を徐々に狭めて行くようにしたりしてもよい。また、探索範囲W1,W2,W3,W4は出荷検査時などの受信波形の形状に合わせて事前に記憶した値を使用してもよい。また、受信波形の振幅の代表値を計測し、これに受信波形の形状を変化させる要因である、温度計測情報や音速の影響を加味して、探索範囲を決定するようにしてもよい。
【0109】
また、上述したピーク高さ情報を取得しての伝播時間計測用の閾値電圧Vsの設定は、超音波流量計100の工場出荷時に行わせるようにしてもよく、現場への設置後の通常の流量計測の間の空き時間に行わせるようにしてもよい。
【0110】
また、通常の流量計測中に、受信波の中の伝播時間計測の基準となるピークを追従対象ピークとして認識し、追従対象ピークの高さを流量計測中に把握できる超音波流量計の場合、追従対象ピークの高さに基づき、追従対象ピークに隣接するピーク(追従対象ピークの直前のピークと直後のピーク)に対して探索範囲を設定し、追従対象ピークに隣接するピークの高さを把握するようにしてもよい。これにより、通常の流量計測中などに、短時間で受信波形の形状を把握でき、実際の隣接ピーク高さに合わせて閾値の値などを調整することで、メンテナンスの手間を低減し、作業の手間を削減することが可能となる。
【0111】
また、±閾値との組み合わせで計測する場合に、通常の流量計測で、プラス側のピークの高さが把握できていたら、それに応じて隣接するマイナス側のピーク探索範囲を設定し、隣接するマイナス側ピークの高さを把握するようにしてもよい。
【0112】
また、通常の流量計測の間の空き時間に、現在追従しているピーク(追従対象ピーク)の高さを基に隣接するピークの探索範囲を設定し、ピーク探索動作によるピーク高さを確認することで、追従対象ピークとそれに隣接するピークの高さを把握するようにしてもよい。この探索動作中に、流量や温度や伝播時間の急激な変化がない場合、正しいピーク把握ができたと判定し、以降の伝播時間計測用の閾値電圧の設定などに情報を利用する(定期的な自動キャリブレーション)。
【0113】
また、流量の計測中に、追従対象ピークの高さが、直前までの計測で分かっていて、位置を見失ったような場合、ピーク高さと受信波形の最大振幅から、追従対象ピークの探索範囲を設定し、追従対象ピークを探索するようにしてもよい。
【0114】
また、受信波形の強度にバラツキがある場合、閾値Vth超えの発生頻度を用いて、ある閾値でのスコアを、受信波形が閾値Vthを超えたか超えていないかという2値ではなく、例えば同じ閾値Vthで10回計測し、そのうち何回閾値交叉タイミングがシフトしたかという連続値としてのスコアを求め、山登り法などを用いて探索するようにしてもよい。
【0115】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0116】
1…配管、2…第1の超音波送受信器(上流側トランスデューサ)、3…第2の超音波送受信器(下流側トランスデューサ)、4…流量演算装置、4-1…中央演算処理装置(CPU)、4-2…ランダムアクセスメモリ(RAM)、4-3…専用メモリ(ROM)、4-4…記憶装置、4-5,4-6…インタフェース、4-7…母線、41…受信波形計測部、42(42A,42B)…ピーク高さ情報取得部、42A…ピーク高さ情報取得部、42A_1,42B_1…探索範囲設定部、42A_2,42B_2…閾値設定部、42A_3,42B_3…閾値比較部、42A_4,42B_4…ゼロクロス時刻検出部、42A_5,42B_5…ゼロクロス時刻記憶部、42A_6,42B_6…ゼロクロス時刻比較部、42A_7,42B_7…振幅値実値決定部、42B_8…最大振幅取得部、43…伝播時間計測用閾値電圧決定部、100…超音波流量計。