(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】テープ、ケーブル、及び、ケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 7/18 20060101AFI20221129BHJP
H01B 13/26 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H01B7/18 C
H01B13/26
(21)【出願番号】P 2018214322
(22)【出願日】2018-11-15
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 由祐
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-205763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/18
H01B 13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の絶縁線心の外側に一括して螺旋状に重ね部を有するように巻き付けられるテープであり、
当該テープは、この外面に識別部が
4つ形成され、
該識別部は、それぞれ、当該テープの幅方向の一端側において当該テープの幅方向に所定の幅を有するとともに当該テープの長手方向に延在し、且つ、
4つの前記識別部が、当該テープの幅方向の一端側の端から前記テープの幅の1/4までの範囲に亘って当該テープの幅方向に連続するようにして配置され、
さらに、前記識別部は、前記重ね部の所望の重ね幅に応じて各識別部のうち隣り合う少なくとも2つの識別部が任意に選択されるものであり、
前記隣り合う少なくとも2つの識別部を前記所望の重ね幅の変動を許容する変動許容範囲としたとき、前記重ね部は、当該テープの幅方向の他端が前記変動許容範囲内に配置されるようにして形成される
ことを特徴とするテープ。
【請求項2】
請求項1に記載のテープにおいて、
前記識別部は、それぞれ、前記外面の地色と異なり、且つ、前記各識別部同士互いに異なる着色が施されている
ことを特徴とするテープ。
【請求項3】
複数本の絶縁線心と、
該複数本の絶縁線心の外側に一括して螺旋状に重ね部を有するように巻き付けられるテープと、
該テープの外側に被覆してなるシースと、
を備え、
前記テープは、この外面に識別部が
4つ形成され、
該識別部は、それぞれ、前記テープの幅方向の一端側において前記テープの幅方向に所定の幅を有するとともに該テープの長手方向に延在し、且つ、
4つの前記識別部が、当該テープの幅方向の一端側の端から前記テープの幅の1/4までの範囲に亘って前記テープの幅方向に連続するようにして配置され、
さらに、前記識別部は、前記重ね部の所望の重ね幅に応じて各識別部のうち隣り合う少なくとも2つの識別部が任意に選択されるものであり、
前記隣り合う少なくとも2つの識別部を前記所望の重ね幅の変動を許容する変動許容範囲としたとき、前記重ね部は、前記テープの幅方向の他端が前記変動許容範囲内に配置されるようにして形成される
ことを特徴とするケーブル。
【請求項4】
請求項3に記載のケーブルにおいて、
前記識別部は、それぞれ、前記外面の地色と異なり、且つ、前記各識別部同士互いに異なる着色が施されている
ことを特徴とするケーブル。
【請求項5】
複数本の絶縁線心の外側にテープを一括して螺旋状に重ね部を有するように巻き付けるテープ巻き付け工程と、
該テープ巻き付け工程後の前記テープの外側にシースを被覆するシース被覆工程と、
を含み、
前記テープとして、この外面に識別部が
4つ形成され、且つ、該識別部それぞれが前記テープの幅方向の一端側において前記テープの幅方向に所定の幅を有するとともに該テープの長手方向に延在し、且つ、
4つの前記識別部が、当該テープの幅方向の一端側の端から前記テープの幅の1/4までの範囲に亘って前記テープの幅方向に連続するようにして配置されるものを採用し、
前記テープ巻き付け工程前に、予め、前記重ね部の所望の重ね幅に応じて各識別部のうち隣り合う少なくとも2つの識別部を任意に選択し、
前記テープ巻き付け工程では、前記隣り合う少なくとも2つの識別部を前記所望の重ね幅の変動を許容する変動許容範囲としたとき、前記テープの幅方向の他端が前記変動許容範囲内に配置されるようにして前記重ね部を形成する
ことを特徴とするケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の絶縁線心の外側に巻き付けられるテープ、このテープを備えて構成されるケーブル、及び、このケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数本の絶縁線心の外側に一括して螺旋状に重ね部を有するように巻き付けられるテープとして、例えば、特許文献1に示すようなものが知られている。特許文献1の
図1に図示する電線巻付粘着テープ1は、テープ本体5を備えており、このテープ本体5の表面に第1の目印ライン3と第2の目印ライン4とが形成されている。第1の目印ライン3は、テープ本体5の幅方向の中央部においてテープ本体5の長さ方向に延在する。また、第2の目印ライン4は、テープ本体5の幅方向の中央部において第1の目印ライン3と平行に離間して延在する。
【0003】
電線巻付粘着テープ1を、複数本の絶縁線心の外側に一括して螺旋状に重ね部を有するように巻き付ける場合に、第1の目印ラインを隠すように、且つ、第2の目印ラインを越えないように巻き付けることによって、重ね足りない部分が無いように、且つ、重ね過ぎの部分が無いように、適切な重ね幅にてテープ同士を重ねて巻き付けることができる。この結果、電線巻付粘着テープ1の消費量を必要最低限にすることができ、電線巻付粘着テープ1の消費量が増大するのを防止することができる。
【0004】
特許文献1に示すような、適切な重ね幅にてテープ同士を重ねて巻き付けることができる技術は、例えば、ケーブルにシールド機能を持たせるための金属テープに適用することも考えられる。このようなケーブルに関する技術としては、
図4及び
図5に図示するような技術(以下、「従来技術」という)が一般的に知られている。
図4及び
図5に図示するケーブル100は、複数本の絶縁線心101と、複数本の絶縁線心101間に存在する介在物102と、複数の絶縁線心101及び介在物102の外側に巻き付けられる金属テープ103と、金属テープ103の外側に被覆してなるシース104とを備えて構成されている。
【0005】
上記金属テープ103は、接地や静電遮蔽、その他、外部からの衝撃から絶縁線心101を保護するための部材であり、複数の絶縁線心101の外側に一括して螺旋状に重ね部108を有するように巻き付けられている。したがって、重ね部108における金属テープ103の重なりが外れてしまうと上記特性が十分に得られなくなってしまうという虞があった。
【0006】
そこで、従来技術では、金属テープ103としては、
図6に図示するように、この外面105に識別部106、107が形成されたものを採用している。識別部106、107は、それぞれ、金属テープ103の幅方向(
図6に図示する矢印Xの指示する方向)の一端109側において金属テープ103の幅方向に所定の幅を有するとともに金属テープ103の長手方向(
図6に図示する矢印Yの指示する方向)に延在し、且つ、金属テープ103の幅方向に連続するようにして配置されている。ここで、識別部106は、斜線にて図示されているが、実際には赤色に着色されている。また、識別部107は、ドットにて図示されているが、実際には青色に着色されている。
【0007】
識別部106、107は、重ね部108の所望の重ね幅の変動を許容する「変動許容範囲」とされている。そして、重ね部108は、金属テープ103の他端110が少なくとも変動許容範囲内(すなわち、識別部106、107の範囲内)に配置されるようにして形成されている。
【0008】
このような従来技術によれば、
図4に図示するように、金属テープ103の他端110が変動許容範囲内に配置されている状態(重ね部108の重ね幅が変動許容範囲内にある状態)や、
図5に図示するように、金属テープ103の他端110が変動許容範囲外に配置されている状態(重ね部108の重ね幅が変動許容範囲から外れた状態)を、ケーブル100の製造に係る作業者(以下、本明細書において、ケーブルの製造に係る作業者を、「製造作業者」という)が識別部106、107の色により目視にて確認することができるようになる。したがって、ケーブル100の製造時に、重ね部108における金属テープ103の重ね幅の変動や、金属テープ103の重なりの外れの発生を見逃し難くすることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、従来技術では、金属テープ103は、様々な品種、サイズのケーブルに用いられるため、ケーブル毎に上記所望の重ね幅が異なるものとなっている。したがって、上記所望の重ね幅毎に金属テープ103を用意する必要があるため、金属テープ103の準備工数が増えてしまい、ケーブルの製造コストが嵩んでしまうというような問題点があった。なお、従来技術では、金属テープ103を具体例として挙げて説明しているが、他のテープ(例えば、押さえ巻きテープ等)を用いた場合であっても、上記と同様の問題点があった。
【0011】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、製造時に、重ね部におけるテープの重ね幅の変動や、テープの重なりの外れの発生を見逃し難くしつつ、テープの準備工数を低減させケーブルの製造コストの削減を図ることができるテープ、このテープを備えるケーブル、及び、このケーブルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のテープは、複数本の絶縁線心の外側に一括して螺旋状に重ね部を有するように巻き付けられるテープであり、当該テープは、この外面に識別部が4つ形成され、該識別部は、それぞれ、当該テープの幅方向の一端側において当該テープの幅方向に所定の幅を有するとともに当該テープの長手方向に延在し、且つ、4つの前記識別部が、当該テープの幅方向の一端側の端から前記テープの幅の1/4までの範囲に亘って当該テープの幅方向に連続するようにして配置され、さらに、前記識別部は、前記重ね部の所望の重ね幅に応じて各識別部のうち隣り合う少なくとも2つの識別部が任意に選択されるものであり、前記隣り合う少なくとも2つの識別部を前記所望の重ね幅の変動を許容する変動許容範囲としたとき、前記重ね部は、当該テープの幅方向の他端が前記変動許容範囲内に配置されるようにして形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の本発明のテープは、請求項1に記載のテープにおいて、前記識別部は、それぞれ、前記外面の地色と異なり、且つ、前記各識別部同士互いに異なる着色が施されていることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するためになされた請求項3記載の本発明のケーブルは、複数本の絶縁線心と、該複数本の絶縁線心の外側に一括して螺旋状に重ね部を有するように巻き付けられるテープと、該テープの外側に被覆してなるシースと、を備え、前記テープは、この外面に識別部が4つ形成され、該識別部は、それぞれ、前記テープの幅方向の一端側において前記テープの幅方向に所定の幅を有するとともに該テープの長手方向に延在し、且つ、4つの前記識別部が、当該テープの幅方向の一端側の端から前記テープの幅の1/4までの範囲に亘って前記テープの幅方向に連続するようにして配置され、さらに、前記識別部は、前記重ね部の所望の重ね幅に応じて各識別部のうち隣り合う少なくとも2つの識別部が任意に選択されるものであり、前記隣り合う少なくとも2つの識別部を前記所望の重ね幅の変動を許容する変動許容範囲としたとき、前記重ね部は、前記テープの幅方向の他端が前記変動許容範囲内に配置されるようにして形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の本発明のケーブルは、請求項3に記載のケーブルにおいて、前記識別部は、それぞれ、前記外面の地色と異なり、且つ、前記各識別部同士互いに異なる着色が施されていることを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するためになされた請求項5記載の本発明のケーブルの製造方法は、複数本の絶縁線心の外側にテープを一括して螺旋状に重ね部を有するように巻き付けるテープ巻き付け工程と、該テープ巻き付け工程後の前記テープの外側にシースを被覆するシース被覆工程と、を含み、前記テープとして、この外面に識別部が4つ形成され、且つ、該識別部それぞれが前記テープの幅方向の一端側において前記テープの幅方向に所定の幅を有するとともに該テープの長手方向に延在し、且つ、4つの前記識別部が、当該テープの幅方向の一端側の端から前記テープの幅の1/4までの範囲に亘って前記テープの幅方向に連続するようにして配置されるものを採用し、前記テープ巻き付け工程前に、予め、前記重ね部の所望の重ね幅に応じて各識別部のうち隣り合う少なくとも2つの識別部を任意に選択し、前記テープ巻き付け工程では、前記隣り合う少なくとも2つの識別部を前記所望の重ね幅の変動を許容する変動許容範囲としたとき、前記テープの幅方向の他端が前記変動許容範囲内に配置されるようにして前記重ね部を形成することを特徴とする。
【0017】
以上のような特徴を有する本発明によれば、重ね部の所望の重ね幅に応じて任意に選択された隣り合う少なくとも2つの識別部を所望の重ね幅の変動許容範囲とし、テープの幅方向の他端を変動許容範囲内に配置するようにして重ね部が形成されることになるため、製造作業者は、重ね部の重ね幅が変動許容範囲内にある状態や変動許容範囲から外れた状態を目視にて確認することができる。また、本発明によれば、製造作業者は、常にテープの重ね幅が変動許容範囲内にあるか否かを目視にて確認することができることから、テープの重ね幅の変動を考慮した適切な製造条件にて製造することができる。また、本発明によれば、変動許容範囲は、重ね部の所望の重ね幅に応じて変更することができることから、1種類のテープにて複数の種類のケーブルに適用することができる。
【0018】
また、本発明によれば、識別部それぞれに、テープの外面の地色と異なり、且つ、各識別部同士互いに異なる着色が施されるため、製造作業者は、重ね部の重ね幅が変動許容範囲内にある状態や変動許容範囲から外れた状態を識別部の色により目視にて確認することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、製造作業者は、重ね部の重ね幅が変動許容範囲内にある状態や変動許容範囲から外れた状態を目視により確認することができるため、ケーブルの製造時に、重ね部におけるテープの重ね幅の変動やテープの重なりの外れの発生を見逃し難くすることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、製造作業者は、目視で、テープの重ね幅を確認することができるため、テープの重ね幅の変動を考慮した適切な製造条件にて製造することが可能になり、テープの使用量を削減しケーブルの製造コストの削減を図ることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、所望の重ね幅の許容範囲毎にテープを製造及び保管する必要が無く、異なる品種、サイズのケーブルを製造する際にテープの準備工数を低減させケーブルの製造コストの削減を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のケーブルの実施例を示す図であって、重ね部の重ね幅が変動許容範囲内にある1つの例を示す斜視図である。
【
図2】本発明のケーブルの実施例を示す図であって、重ね部の重ね幅が変動許容範囲内にある他の例を示す斜視図である。
【
図3】金属テープを示す図であって、(a)は複数の絶縁線心に巻き付ける前の一巻の金属テープを示す斜視図、(b)は(a)に図示する矢印Aの指示する一点鎖線に囲まれた部分の拡大図である。
【
図4】従来技術のケーブルの図であって、重ね部の重ね幅が変動許容範囲内にある状態を示す斜視図である。
【
図5】従来技術のケーブルの図であって、重ね部の重ね幅が変動許容範囲から外れた状態を示す斜視図である。
【
図6】従来技術における金属テープを示す図であって、(a)は複数の絶縁線心に巻き付ける前の一巻の金属テープを示す斜視図、(b)は(a)に図示する矢印Bの指示する一点鎖線に囲まれた部分の拡大図である。である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1-
図3を参照しながら、本発明に係るテープと、このテープを備えるケーブルの実施例について説明する。
【実施例】
【0022】
図1は本発明のケーブルの実施例を示す図であって、重ね部の重ね幅が変動許容範囲内にある1つの例を示す斜視図、
図2は本発明のケーブルの実施例を示す図であって、重ね部の重ね幅が変動許容範囲内にある他の例を示す斜視図、
図3は金属テープを示す図であって、(a)は複数の絶縁線心に巻き付ける前の一巻の金属テープを示す斜視図、(b)は(a)に図示する矢印Aの指示する一点鎖線に囲まれた部分の拡大図である。
なお、
図3に図示する矢印Xは金属テープの幅方向を、矢印Yは金属テープの長さ方向を、それぞれ、示している(矢印の各方向は一例であるものとする)。
【0023】
図1及び
図2において、引用符号1は、本発明に係るケーブルの実施例を示している。ケーブル1は、複数本の絶縁線心2と、介在物3と、金属テープ4と、シース5とを備えて構成されている。以下、ケーブル1の各構成について説明する。
【0024】
まず、絶縁線心2について説明する。
図1及び
図2に図示する絶縁線心2は、先に説明した通り、複数本備えている。本実施例では、ケーブル1は、絶縁線心2を2本備えて構成されているが、これに限定されるものではない。絶縁線心2は、導体6と、絶縁体7とを有している。絶縁線心2は、電流供給を行うものであり、公知のものが採用されている。
【0025】
つぎに、介在物3について説明する。
図1及び
図2に図示する介在物3は、2本の絶縁線心2間に存在するものである。介在物3は、絶縁線心2を2本撚り合わせる際に、各絶縁線心2間に添えてケーブル1が断面略円形になるようにするためのものである。介在物3の材料としては、例えば、紙、ジュート、PP解繊糸等が採用されている。
【0026】
つぎに、金属テープ4について説明する。
図1及び
図2に図示する金属テープ4は、特許請求の範囲に記載される「テープ」に相当するものである。本実施例では、特許請求の範囲に記載される「テープ」の具体例として、金属テープ4を挙げて説明するが、これに限定されるものではない。金属テープ4は、ケーブル1にシールド機能を持たせるためのシールド部材であり、複数本の絶縁線心2を外部からの衝撃から保護するための保護部材でもある。金属テープ4は、複数本の絶縁線心2及び介在物3の外側に一括して螺旋状に重ね部8を有するように巻き付けられている。ここで、「重ね部」とは、金属テープ4を上記の通り巻き付けた際に形成される金属テープ4同士が重なり合う部分のことをいうものとする。金属テープ4は、金属箔層を含む極薄で可撓性を有するシート状に形成されている。金属テープ4は、平面的に視たときの形状が帯状に形成されている。金属箔層は、導電性を有する金属からなり、例えば、銅又は銅合金、或いは、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含んでいる。
【0027】
金属テープ4は、
図3に図示するように、この外面9に複数条の識別部10(10a~10d)が形成されている。本実施例では、識別部10(10a~10d)が少なくとも4つ形成されているが、これに限定されるものではない。本実施例のように、金属テープ4は、識別部10(10a~10d)を4つ形成することにより複数の重ね幅に適用することができる。ここで、「重ね幅」とは、重ね部8において金属テープ4同士が重なり合う幅のことをいうものとする。識別部10(10a~10d)は、それぞれ、金属テープ4の幅方向の一端11側において金属テープ4の幅方向に所定の幅を有するとともに金属テープ4の長手方向に延在するように形成されている。識別部10(10a~10d)は、金属テープ4の幅方向に連続するようにして配置されている。
【0028】
本実施例では、
図3に図示するように、各識別部10(10a~10d)のうち、金属テープ4の幅方向の最も一端11側に配置されているものから順に「第1の識別部10a」、「第2の識別部10b」、「第3の識別部10c」、「第4の識別部10d」というものとする。
【0029】
本実施例では、
図3に図示するように、第1の識別部10aは、金属テープ4の幅の0/10から1/10までの範囲で形成されている。第2の識別部10bは、金属テープ4の幅の1/10から1/7までの範囲で形成されている。第3の識別部10cは、金属テープ4の幅の1/7から1/5までの範囲で形成されている。第4の識別部10dは、金属テープ4の幅の1/5から1/4までの範囲で形成されている。
【0030】
識別部10(10a~10d)は、それぞれ、金属テープ4の外面9の地色と異なり、且つ、各識別部10(10a~10d)同士互いに異なる着色が施されている。具体的には、
図3において、第1の識別部10aは、ドットにて図示されているが、実際には緑色に着色されている。また、第2の識別部10bは、格子柄にて図示されているが、実際には黄色に着色されている。また、第3の識別部10cは、第1の識別部10aよりも大きなドットにて図示されているが、実際には青色に着色されている。また、第4の識別部10dは、斜線にて図示されているが、実際には赤色に着色されている。
【0031】
各識別部10(10a~10d)の上記着色は、一例であるものとする。その他、識別部10(10a~10d)は、それぞれ、金属テープ4の外面9の地色と異なり、且つ、各識別部10(10a~10d)同士互いに異なる着色が施されていれば、他の着色であってもよいものとする。
【0032】
本実施例では、重ね部8の所望の重ね幅に応じて各識別部10(10a~10d)のうち隣り合う少なくとも2つの識別部10が任意に選択されている。ここで、「所望の重ね幅」とは、
図1及び
図2に図示するように、金属テープ4を絶縁線心2の外側に一括して螺旋状に重ね部8を有するように巻き付けた状態において、ケーブル1のシールド機能及び外部からの衝撃から絶縁線心2を保護する保護機能とを確保することができるような重ね部8の重ね幅のことをいうものとする。所望の重ね幅は、ケーブル1の品種、サイズによって異なるものとする。
【0033】
上記隣り合う少なくとも2つの識別部10を所望の重ね幅の変動を許容する「変動許容範囲」としたとき、重ね部8は、金属テープ4の幅方向の他端12が変動許容範囲内に配置されるようにして形成されている。この変動許容範囲は、ケーブル1の品種、サイズに合わせて変更することが可能である。以下、第1及び第2の具体例を挙げて説明する。
【0034】
まず、第1の具体例について説明する。
例えば、所望の重ね幅の狙い値が金属テープ4の幅の1/10である場合、金属テープ4の幅の0/10から1/10までの範囲で形成される第1の識別部10aと、この第1の識別部10aに隣り合う第2の識別部10bとを選択する。そして、第1の識別部10aと第2の識別部10bとを変動許容範囲としたとき、
図1に図示するように、重ね部8は、金属テープ4の幅方向の他端12が変動許容範囲内(すなわち、第1の識別部10aと第2の識別部10bの範囲内)に配置されるようにして形成されている。なお、
図1では、金属テープ8の幅方向の他端12が所望の重ね幅の狙い値である金属テープ4の幅の1/10の位置に配置され重ね幅の変動がない状態となっている(重ね部8は、この重ね幅が金属テープ4の幅の0/10から1/10までとなるように形成されている)。
【0035】
上記第1の具体例において、所望の重ね幅の狙い値(金属テープ4の幅の1/10の位置)から重ね幅の変動を許容する上限値を金属テープ4の幅の1/7の位置までとし、下限値を金属テープ4の幅の0/10の位置までとする。
【0036】
つぎに、第2の具体例について説明する。
例えば、所望の重ね幅の狙い値が金属テープ4の幅の1/5である場合、金属テープ4の幅の1/7から1/5までの範囲で形成される第3の識別部10cと、この第3の識別部10cに隣り合う第4の識別部10dとを選択する。そして、第3の識別部10cと第4の識別部10dとを変動許容範囲としたとき、
図2に図示するように、重ね部8は、金属テープ8の幅方向の他端12が変動許容範囲内(すなわち、第3の識別部10cと第4の識別部10dの範囲内)に配置されるようにして形成されている。なお、
図2では、金属テープ4の幅方向の他端12が所望の重ね幅の狙い値である金属テープ4の幅の1/5の位置に配置され重ね幅の変動がない状態となっている(重ね部8は、この重ね幅が金属テープ4の幅の0/10から1/5までとなるように形成されている)。
【0037】
上記第2の具体例において、所望の重ね幅の狙い値(金属テープ4の幅の1/5の位置)から重ね幅の変動を許容する上限値を金属テープ4の幅の1/4の位置までとし、下限値を金属テープ4の幅の1/7の位置までとする。
【0038】
つぎに、シース5について説明する。
図1及び
図2に図示するシース5は、絶縁性を有する樹脂材料を金属テープ4の外側に押し出し成形することにより形成されている。上記樹脂材料は、公知のものが採用されている。
【0039】
つぎに、本発明のケーブル1の製造方法について説明する。
まず、絶縁線心撚り合わせ工程において、複数本(本実施例では、2本)の絶縁線心2の撚り合わせを行う。当該工程では、この撚り合わせの際に、各絶縁線心2間に介在物3を添えてケーブル1が断面略円形になるようにする。
【0040】
つぎに、テープ巻き付け工程において、複数の絶縁線心2及び介在物3の外側に金属テープ4を一括して螺旋状に重ね部8を有するように巻き付ける。なお、当該工程の前に、ケーブル1の製造作業者は、予め、重ね部8の所望の重ね幅に応じて各識別部10(10a~10d)のうち隣り合う少なくとも2つの識別部10を任意に選択しておくものとする。例えば、所望の重ね幅の狙い値が金属テープ4の幅の1/10である場合、金属テープ4の幅の0/10から1/10までの範囲で形成される第1の識別部10aと、この第1の識別部10aに隣り合う第2の識別部10bとを選択する。
【0041】
しかる後、テープ巻き付け工程において、第1の識別部10aと第2の識別部10bとを変動許容範囲としたとき、
図1に図示するように、金属テープ4の幅方向の他端12が変動許容範囲内(すなわち、第1の識別部10aと第2の識別部10bの範囲内)に配置されるようにして金属テープ4を巻き付けて重ね部8を形成する(重ね部8の形成については、先に説明したため、ここでの詳細な説明は省略する)。
【0042】
つぎに、シース被覆工程において、テープ巻き付け工程後の金属テープ4の外側に樹脂材料を押出成形することによりシース5を形成する。
以上により、本発明のケーブル1の製造が完了する。
【0043】
本発明のケーブル1、及び、金属テープ4の作用について説明する。
本発明のケーブル1、及び、金属テープ4によれば、重ね部8の所望の重ね幅に応じて任意に選択された隣り合う少なくとも2つの識別部10を所望の重ね幅の変動許容範囲とし、金属テープ4の幅方向の他端12を変動許容範囲内に配置するようにして重ね部8が形成されることになるため、製造作業者は、重ね部8の重ね幅が変動許容範囲内にある状態や変動許容範囲から外れた状態を目視にて確認することができる。
【0044】
ここで、上記作用について、
図1に図示するケーブル1を例に、より詳細に説明する。
製造作業者は、
図1に図示するように、金属テープ4の幅方向の他端12が所望の重ね幅の狙い値(金属テープ4の幅の1/10の位置)にあることを目視にて確認することができる。また、金属テープ4の幅方向の他端12が所望の重ね幅の狙い値から外れた場合であっても変動許容範囲内にある状態を目視にて確認することができる。また、金属テープ4の幅方向の他端12が変動許容範囲の上限値(金属テープ4の幅の1/7の位置)又は変動許容範囲の下限値(金属テープ4の幅の0/10の位置)を超えた場合、これを目視にて確認することができる。
【0045】
また、上記作用について、
図2に図示するケーブル1を例に、より詳細に説明する。
製造作業者は、
図2に図示するように、金属テープ4の幅方向の他端12が所望の重ね幅の狙い値(金属テープ4の幅の1/5の位置)にあることを目視にて確認することができる。また、金属テープ4の幅方向の他端12が所望の重ね幅の狙い値から外れた場合であっても変動許容範囲内にある状態を目視にて確認することができる。また、金属テープ4の幅方向の他端12が変動許容範囲の上限値(金属テープ4の幅の1/4の位置)又は変動許容範囲の下限値(金属テープ4の幅の1/7の位置)を超えた場合、これを目視にて確認することができる。
【0046】
以上のような本発明のケーブル1、及び、金属テープ4によれば、上記作用から、金属テープ4の重ね幅の変動を考慮した適切な製造条件にて製造することができる。また、本発明のケーブル1、及び、金属テープ4によれば、変動許容範囲は、
図1及び
図2に図示するように、重ね部8の所望の重ね幅に応じて変更することができることから、1種類の金属テープ4にて複数の種類のケーブルに適用することができる。
【0047】
なお、背景技術の欄に記載した特許文献1に開示された技術をケーブルに適用することも考えられる。しかしながら、ケーブルには、様々な品種、サイズのものが存在し、ケーブル毎に重ね部の所望の重ね幅や所望の重ね幅の変動許容範囲が異なるものとなっているため、特許文献1に開示された技術をケーブルに適用する場合、所望の重ね幅、及び、変動許容範囲毎にテープを用意する必要がある。このため、本発明のように1種類のテープにて複数の種類のケーブルに適用するということができない。したがって、特許文献1に開示された技術をケーブルに適用した場合、従来技術(
図4-
図6参照)と同様、テープの準備工数が増えてしまい、ケーブルの製造コストが嵩んでしまう。以上より、本発明は、特許文献1に開示された技術に比べて、有効であるといえる。
【0048】
また、本発明のケーブル1、及び、金属テープ4によれば、識別部10(10a~10d)それぞれに、金属テープ4の外面9の地色と異なり、且つ、各識別部10(10a~10d)同士互いに異なる着色が施されるため、製造作業者は、重ね部8の重ね幅が変動許容範囲内にある状態や変動許容範囲から外れた状態を識別部10(10a~10d)の色により目視にて確認することができる。
【0049】
つぎに、本発明のケーブル1、及び、金属テープ4の効果について説明する。
以上、
図1-
図3を参照しながら説明してきたように、本発明のケーブル1、及び、金属テープ4によれば、製造作業者は、重ね部8の重ね幅が変動許容範囲内にある状態や変動許容範囲から外れた状態を目視により確認することができるため、ケーブル1の製造時に、重ね部8における金属テープ4の重ね幅の変動や金属テープ4の重なりの外れの発生を見逃し難くすることができるという効果を奏する。
【0050】
また、本発明のケーブル1、及び、金属テープ4によれば、製造作業者は、目視で、金属テープ4の重ね幅を確認することができるため、金属テープ4の重ね幅の変動を考慮した適切な製造条件にて製造することが可能になり、金属テープ4の使用量を削減しケーブル1の製造コストの削減を図ることができるという効果を奏する。
【0051】
また、本発明のケーブル1、及び、金属テープ4によれば、所望の重ね幅の許容範囲毎に金属テープ4を製造及び保管する必要が無く、異なる品種、サイズのケーブル1を製造する際に金属テープの準備工数を低減させケーブル1の製造コストの削減を図ることができるという効果を奏する。
【0052】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【0053】
上記説明では、特許請求の範囲に記載される「テープ」の具体例として、金属テープ4を挙げているが、これに限らず、つぎのような構成にしてもよいものとする。
【0054】
すなわち、特に図示しないが、ケーブル1は、金属テープ4に換えて、他のテープを備えて構成されるものであってもよいものとする。上記他のテープとしては、例えば、押さえ巻きテープや耐火テープ等が挙げられる。押さえ巻きテープや耐火テープ等を用いる場合、これらは、金属テープ4と同様の構成を備えているものとする(すなわち、外面に
図3に図示するような複数条の識別部が形成されるものとする)。
【0055】
1…ケーブル、 2…絶縁線心、 3…介在物、 4…金属テープ(テープ)、 5…シース、 6…導体、 7…絶縁体、 8…重ね部、 9…外面、 10…識別部、 10a…第1の識別部、 10b…第2の識別部、 10c…第3の識別部、 10d…第4の識別部、 11…一端、 12…他端