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特許7184610継手融着システム、電気融着装置、融着可否判定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】継手融着システム、電気融着装置、融着可否判定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/34 20060101AFI20221129BHJP
   F16L 47/03 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B29C65/34
F16L47/03
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018219599
(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公開番号】P2020082494
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】平山 雄基
(72)【発明者】
【氏名】大籔 直孝
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-337237(JP,A)
【文献】特開2015-98124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/34
F16L 47/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気融着装置により電気融着継手が備える電熱線への通電を実行させることによって前記電気融着継手と管とを融着させる継手融着システムであって、
前記管は、所定の日付の特定に用いられる日付情報を少なくとも含む第1情報が記録された第1情報媒体を備え、
前記電気融着装置は、
情報媒体に記録された情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部により前記第1情報媒体から取得された第1情報に含まれる日付情報に基づいて前記通電の可否を判定する通電判定部とを備え
前記通電判定部は、
前記情報取得部により取得された第1情報に含まれる日付情報により特定される日である第1日付と、前記情報取得部により前記第1情報が取得された日である第2日付とに基づいて前記通電の可否を判定し、
前記第1日付と前記第2日付とに基づいて通電不可と判定した後において、前記第1情報媒体に記録された第1情報が対応する管の所定部位の表面が切削されたことを示す第2情報が前記情報取得部によって第2情報媒体から取得された場合には、通電可能との判定に変更する
継手融着システム。
【請求項2】
前記通電判定部は、前記情報取得部によって取得された第1情報を、前記情報取得部によって取得された第2情報で更新することにより、通電可能との判定に変更する
請求項1に記載の継手融着システム。
【請求項3】
前記第1日付は、前記第1情報媒体を備える管の所定部位の表面を切削することなく通電による融着が可能な期日であり、
前記通電判定部は、前記第2日付が前記第1日付を経過しているか否かに基づいて、前記通電の可否を判定する
請求項1または2に記載の継手融着システム。
【請求項4】
前記第1日付は、前記第1情報媒体を備える管の製造日または出荷日であり、
前記通電判定部は、前記製造日または前記出荷日から所定期間の満了に対応する日付を前記第2日付が経過しているか否かに基づいて、前記通電の可否を判定する
請求項1または2に記載の継手融着システム。
【請求項5】
前記通電判定部は、これまでに融着された管の履歴情報に含まれる、前記融着された管ごとの管識別子のうちで、今回の融着対象の管に対応する情報媒体に記録された情報において示される管識別子と一致するものがあるか否かに基づいて、前記通電の可否を判定する
請求項1から4のいずれか一項に記載の継手融着システム。
【請求項6】
電気融着継手が備える電熱線への通電を実行させることによって前記電気融着継手と管とを融着させる電気融着装置であって、
情報媒体に記録された情報を取得する情報取得部と、
前記管に備えられる情報媒体から前記情報取得部が取得した情報に含まれ、所定の日付の特定に用いられる日付情報に基づいて前記通電の可否を判定する通電判定部とを備え
前記通電判定部は、
前記情報取得部により第1情報媒体から取得された第1情報に含まれる日付情報により特定される日である第1日付と、前記情報取得部により前記第1情報が取得された日である第2日付とに基づいて前記通電の可否を判定し、
前記第1日付と前記第2日付とに基づいて通電不可と判定した後において、前記第1情報媒体に記録された第1情報が対応する管の所定部位の表面が切削されたことを示す第2情報が前記情報取得部によって第2情報媒体から取得された場合には、通電可能との判定に変更する
電気融着装置。
【請求項7】
電気融着継手が備える電熱線への通電を実行させることによって前記電気融着継手と管とを融着させる電気融着装置における融着可否判定方法であって、
情報取得部が、情報媒体に記録された情報を取得する情報取得ステップと、
通電判定部が、前記管に備えられる情報媒体から前記情報取得部が取得した情報に含まれ、所定の日付の特定に用いられる日付情報に基づいて前記通電の可否を判定する通電判定ステップとを備え
前記通電判定ステップは、
前記情報取得ステップにより第1情報媒体から取得された第1情報に含まれる日付情報により特定される日である第1日付と、前記情報取得部により前記第1情報が取得された日である第2日付とに基づいて前記通電の可否を判定し、
前記第1日付と前記第2日付とに基づいて通電不可と判定した後において、前記第1情報媒体に記録された第1情報が対応する管の所定部位の表面が切削されたことを示す第2情報が前記情報取得部によって第2情報媒体から取得された場合には、通電可能との判定に変更する
融着可否判定方法。
【請求項8】
電気融着継手が備える電熱線への通電を実行させることによって前記電気融着継手と管とを融着させる電気融着装置としてのコンピュータを、
情報媒体に記録された情報を取得する情報取得部、
前記管に備えられる情報媒体から前記情報取得部が取得した情報に含まれ、所定の日付の特定に用いられる日付情報に基づいて前記通電の可否を判定する通電判定部として機能させるためのプログラムであって、
前記通電判定部は、
前記情報取得部により第1情報媒体から取得された第1情報に含まれる日付情報により特定される日である第1日付と、前記情報取得部により前記第1情報が取得された日である第2日付とに基づいて前記通電の可否を判定し、
前記第1日付と前記第2日付とに基づいて通電不可と判定した後において、前記第1情報媒体に記録された第1情報が対応する管の所定部位の表面が切削されたことを示す第2情報が前記情報取得部によって第2情報媒体から取得された場合には、通電可能との判定に変更する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手融着システム、電気融着装置、融着可否判定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
管と継手とを接合するにあたり、ポリエチレンなどの熱可塑性を有する材質の管と電気融着継手とを用い、電気融着装置により電気融着継手に通電を行うことで、電気融着によって管と電気融着継手とを接合できるようにした技術が知られている。
【0003】
管と電気融着継手との互いの接合面において酸化膜が存在すると、相互の融着した樹脂どうしの混合が酸化膜によって阻害され、接合状態が不良となる場合がある。
管の酸化膜は徐々に成長していくものであることから、製造後から或る一定期間においては良好な接合状態を維持できる。一方で、一定期間を経過した管については、酸化膜の除去することが必要になる。酸化膜を除去するにあたっては、例えば電気融着継手と接合される面をスクレーパーによって切削する作業が行われる。このような作業はスクレープと呼ばれる。スクレープが施された管は、さらに一定期間にわたって良好な接合状態を維持できる。
【0004】
このため、管には、スクレープを行わなくとも電気融着継手と融着させることが可能な期間(融着可能期間)があることになる。このような融着可能期間については、作業者が把握できるようにすることが好ましい。
そこで、管の外周面にスクレープを行わなくても電気融着が可能なことを示す管製造時期等を示す表示部を設けるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-337237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される技術は、管に表示部を設けるというものであるため、例えば作業者が管と電気融着継手とを融着させる際に、管の表示部において示される管製造時期等を目視により確認して、スクレープが必要か否かを判断することになる。このように、特許文献1に記載される技術では、スクレープが必要か否かの判断が人に委ねられることから、判断ミスを完全に避けることも難しい。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、スクレープが必要な状態の管を、スクレープせずに電気融着継手と接合してしまうことが的確に防止されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する本発明の一態様は、電気融着装置により電気融着継手が備える電熱線への通電を実行させることによって前記電気融着継手と管とを融着させる継手融着システムであって、前記管は、所定の日付の特定に用いられる日付情報を少なくとも含む第1情報が記録された第1情報媒体を備え、前記電気融着装置は、情報媒体に記録された情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部により前記第1情報媒体から取得された第1情報に含まれる日付情報に基づいて前記通電の可否を判定する通電判定部とを備える継手融着システムである。
【0009】
また、本発明の一態様は、電気融着継手が備える電熱線への通電を実行させることによって前記電気融着継手と管とを融着させる電気融着装置であって、情報媒体に記録された情報を取得する情報取得部と、前記管に備えられる情報媒体から前記情報取得部が取得した情報に含まれ、所定の日付の特定に用いられる日付情報に基づいて前記通電の可否を判定する通電判定部とを備える電気融着装置である。
【0010】
また、本発明の一態様は、電気融着継手が備える電熱線への通電を実行させることによって前記電気融着継手と管とを融着させる電気融着装置における融着可否判定方法であって、情報取得部が、情報媒体に記録された情報を取得する情報取得ステップと、通電判定部が、前記管に備えられる情報媒体から前記情報取得部が取得した情報に含まれ、所定の日付の特定に用いられる日付情報に基づいて前記通電の可否を判定する通電判定ステップとを備える融着可否判定方法である。
【0011】
また、本発明の一態様は、電気融着継手が備える電熱線への通電を実行させることによって前記電気融着継手と管とを融着させる電気融着装置としてのコンピュータを、情報媒体に記録された情報を取得する情報取得部、前記管に備えられる情報媒体から前記情報取得部が取得した情報に含まれ、所定の日付の特定に用いられる日付情報に基づいて前記通電の可否を判定する通電判定部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、スクレープが必要な状態の管を、スクレープせずに電気融着継手と接合してしまうことが的確に防止されるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態における継手融着システムの構成例を示す図である。
図2】本実施形態における電気融着継手と管とを示す図である。
図3】本実施形態における継手バーコードデータのフォーマットの一例を示す図である。
図4】本実施形態における期限管理バーコードデータのフォーマットの一例を示す図である。
図5】本実施形態における現場確認用バーコードデータのフォーマットの一例を示す図である。
図6】本実施形態における電気融着装置の構成例を示す図である。
図7】本実施形態における電気融着装置が実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施形態における継手融着システムの構成例を示している。同図においては、電気融着装置100、管300、及び電気融着継手400が示されている。
【0015】
電気融着装置100は、管300、300同士を電気融着継手400で継いで連結させるにあたり、管300、300のそれぞれと電気融着継手400とを融着させるために電気融着継手400に通電を行う装置である。
【0016】
電気融着継手400は、管300の一端が差し込まれる受口となる管部401の内周側において電熱線402が設けられている。電熱線402は、電気融着継手400によって融着される2本の管300ごとに対応させて、電気融着継手400において対となるように設けられる。電熱線402は電極403と接続されている。電極403は、管部401に形成される一対の突起部401aから一方の端部が表出するように設けられる。
【0017】
電気融着装置100の本体100aからは、ケーブルCB、CBを介して一対のコネクタCN、CNが引き出されており、コネクタCN、CNは、それぞれ、電気融着継手400における突起部401a、401aに嵌め込まれる。これにより、一対のコネクタCNと電極403とのそれぞれが接続され、電気融着装置100から電気融着継手400の電熱線402に通電が可能な状態となる。
【0018】
電気融着装置100は、バーコードリーダ101を備える。バーコードリーダ101は、本体100aに接続された態様で設けられる。バーコードリーダ101は、バーコードとして記録されたデータ(バーコードデータ)を読み込む。
【0019】
図2は、電気融着継手400と、電気融着継手400によって連結される2本の管300、300が示されている。
同図に示されるように、電気融着継手400には、継手バーコード410が設けられる。継手バーコード410は例えばラベル用紙に印刷されており、そのラベル用紙が管部401の表面に貼り付けられている。
また、管300には、期限管理バーコード310(第1情報媒体の一例)が設けられる。期限管理バーコード310も例えばラベル用紙に印刷されており、用紙が管300の外周面に貼り付けられるようにして設けられる。
【0020】
図3は、電気融着継手400の継手バーコード410に記録されるバーコードデータ(継手バーコードデータ)のフォーマットの一例を示している。同図の継手バーコードデータは、第1桁~第32桁による32桁である場合の例を示している。
継手バーコードデータにおいて、第1桁~第4桁の4桁は、電気融着継手400の製造者、接合方式を示す。
第5桁~第6桁の2桁は、例えばソケットやチーズなど電気融着継手400の種別(継手種別)を示す。
第7桁~第9桁の3桁は、口径など電気融着継手400のサイズ(継手サイズ)を示す。
第10桁~第15桁の6桁は、電気融着継手400について製造者が付与した製造者管理番号を示す。製造者管理番号は、例えば電気融着継手400のロットを示すロット番号等であってよい。
第16桁の1桁は、SDR値(外形肉厚の係数)を示す。
第17桁~第19桁の3桁は、電気融着継手400の原料種別を示す。
第20桁~第21桁の2桁は、通電電圧、通電電流を示す。
第22桁~第23桁の2桁は、電熱線402の標準抵抗値を示す。
第24桁~第25桁の2桁は、未使用である。
第26桁~第27桁の2桁は、電熱線402の温度特性を示す。
第28桁~第29桁の2桁は、所定の標準温度での通電時間を示す。
第30桁~第31桁の2桁は、温度補正係数を示す。
第32桁の1桁は、チェックディジット(C/D)を示す。
【0021】
このように、継手バーコードデータは、製造者、電気融着継手の種類、サイズ、製造者管理番号、SDR値、原料種別などの電気融着継手400に関する情報を含む。また、継手バーコード410には、電熱線402の通電電圧、標準抵抗値、抵抗許容差、通電時間、温度補正係数などのように通電条件を表す所定の情報を含む。
【0022】
電気融着装置100は、バーコードリーダ101により読み込まれた継手バーコード410のバーコードデータに含まれる通電条件に従って電気融着継手400に対して通電を行う。これにより、電気融着継手400は最適な通電条件によって通電が行われ、管300、300と融着される。
【0023】
図4は、管300の期限管理バーコード310に記録されるバーコードデータ(期限管理バーコードデータ(第1情報の一例))のフォーマットの一例を示している。同図の期限管理バーコードデータは、第1桁~第32桁による32桁である場合の例を示している。
期限管理バーコードデータにおいて、第1桁~第4桁の4桁は、管300の製造者、接合方式を示す。
第5桁~第6桁の2桁は、管300の種別(管種別)を示す。
第7桁~第9桁の3桁は、口径など管300の管サイズを示す。
第10桁~第15桁の6桁は、管300について製造者が付与した製造者管理番号を示す。製造者管理番号は、例えば管300のロットを示すロット番号等であってよい。
第16桁の1桁は、SDR値(外形肉厚の係数)を示す。
第17桁~第19桁の3桁は、管300の原料種別を示す。
第20桁~第26桁の7桁は、期限特定情報を示す。期限特定情報は、対応の管300についてスクレープを要することなく融着させることが可能な期限の特定に用いられる情報である。期限特定情報は、例えば製造後において一度もスクレープが行われていない新品の管300の場合には、融着可能期日であってよい。あるいは、新品の管300の期限特定情報は、製造日、出荷日等であってよい。融着可能期日(第1日付の一例)とは、スクレープを施すことなく融着が可能な期日であり、製造日または出荷日から起算して融着可能期間(所定期間の一例)の満了に対応する日となる。また、期限特定情報は、スクレープが行われたことのある管300の場合には、最後にスクレープが行われた日付、または当該日付を起算日とする融着可能期日であってもよい。
第27桁~第30桁の4桁は、施工管理番号(管識別子の一例)を示す。施工管理番号は、管300ごとに一意となるように付与された番号である。なお、施工管理番号は、例えば一定範囲の同じ現場にて用いられる管300ごとに一意となるように割り当てられてよい。
第31桁の1桁は、未使用である。
第32桁の1桁は、チェックディジット(C/D)を示す。
【0024】
また、本実施形態においては、現場での施工に用いられる管300ごとに対応する現場確認用バーコードデータ(第2情報の一例)が記録された現場確認用バーコード(第2情報媒体の一例)を印刷したバーコード帳が用意される。このような現場確認用バーコードのバーコード帳は、例えば、電気融着装置100を用いた管300の接合作業の管理者が所持するようにされる。現場確認用バーコードは、融着可能期日を超過していることで使用不可とされた管300について、改めてスクレープを施して使用可能な状態に復帰させた場合、管300の復帰確認に際して使用されるものである。
【0025】
図5は、現場確認用バーコードデータの一例を示している。同図の現場確認用バーコードデータは、第1桁~第32桁による32桁である場合の例を示している。
現場確認用バーコードデータにおいて、第31桁以外の桁部分については、図4の期限管理バーコードデータと同様となる。
そして、第31桁の1桁は、確認コードを示す。確認コードは、管300の復帰についての確認が行われたことを証明するコードである。
【0026】
[電気融着装置の構成例]
図6は、電気融着装置100の構成例を示している。同図に示す電気融着装置100は、バーコードリーダ101、表示部102、操作部103、制御部104、及びコネクタCN、CNを備える。なお、同図においては図示を省略しているが、コネクタCN、CNは、それぞれケーブルCB、CB(図1)を介して電気融着装置100の本体から引き出されるように設けられている。
【0027】
バーコードリーダ101は、バーコードとして記録されたバーコードデータを光学的に読み込む。
表示部102は、制御部104の制御に応じて所定の表示を行う。表示部102においては、例えば通電のための操作の案内や、通電に関する動作などに応じた所定の表示が行われる。
操作部103は、電気融着装置100における各種の操作子を一括して示す。制御部104は、操作部103に対して行われた操作に応じて、通電に関連する所定の処理を適宜実行する。
【0028】
制御部104は、電気融着装置100における各種の制御を実行する。制御部104としての機能は、電気融着装置100において備えられるCPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することによって実現される。
制御部104は、情報取得部141、通電判定部142、及び通電制御部143を備える。
情報取得部141は、バーコードリーダ101から出力されるバーコードデータを取得する。この際、例えばバーコードリーダ101からバーコードデータ化される以前の処理段階の信号が出力される場合には、情報取得部141は、バーコードリーダ101から出力される信号についてバーコードデータに変換する処理を行うことで、バーコードデータを取得してよい。
通電判定部142は、情報取得部により取得された情報に含まれる日付情報に基づいて、電気融着装置100への通電の可否を判定する。
【0029】
通電制御部143は、電気融着継手400により管300、300を融着するための電気融着継手400に対する通電に関する制御を実行する。
通電制御部143は、バーコードリーダ101により継手バーコードから読み込まれた継手バーコードデータが示す通電条件に従って各種の通電制御パラメータ(通電時間、通電電圧など)を設定し、設定した通電制御パラメータにより通電を行う。
通電制御パラメータとしての通電時間、通電電圧などは、継手バーコードデータにおいて通電条件として示される通電時間、通電電圧などを、例えば周囲温度などに対応させて、継手バーコードデータにおいて同じ通電条件として示される温度補正係数などを利用して補正することによって求められる。
【0030】
通電制御部143は、電気融着継手400の突起部401a、401aに取り付けられたコネクタCN、CN間に電流を流すことで通電を行う。これにより、電熱線402に電流が流れて電熱線402が加熱され、電熱線402の熱により電気融着継手400と管300とが溶融して接合される状態となる。このようにして電気融着継手400と管300とは融着によって接合される。
【0031】
また、通電制御部143は、通電判定部142が通電可能と判定した場合には、電気融着継手400への通電を許可する。通電を許可する態様として、通電制御部143は、例えば、通電実行指示の操作を受付可能な状態で待機し、通電実行指示の操作が行われることに応じて通電を実行するようにされてよい。あるいは、通電を許可する態様として、通電制御部143は、通電判定部142が通電可能と判定したことに応じて、通電を実行するようにされてもよい。この場合には、通電判定部142が通電可能か否かの判定を行う前の段階において、コネクタCNと電極403とを接続しておいて、通電が実行されてもよい状態としておくようにする。
一方、通電制御部143は、通電判定部142が通電不可と判定した場合には、電気融着継手400への通電を不可(禁止)とする。通電を不可とする態様として、例えば、通電判定部142は、施工者による通電に関する所定の操作が行われたとしても、当該操作をキャンセルして、通電を実行しないようにする。
【0032】
記憶部105は、電気融着装置100に対応する各種の情報を記憶する。
【0033】
上記構成による本実施形態の継手融着システムを用いた融着作業の運用例について説明する。
本実施形態対応する融着作業の運用のもとでは、現場で用いる管300としては、以下の条件のいずれかを満たしたものであることが要求される。条件の1つは、一度もスクレープが行われていない新品の管300である場合には、製造日もしくは出荷日を起算日とする融着可能期間を経過していないものであること、というものである。通常、現場においては、一度もスクレープが行われていない管300を使用するようにされている。
しかしながら、例えば管300を製造するメーカ側で保管していた新品の管300が、使用されることなく融着可能期間を経過してしまうことがある。このような管300については、例えば事前にスクレープをしたうえで現場に搬入される場合もある。このような場合に対応して、もう1つの条件は、スクレープが行われたことのある管300である場合には、最後にスクレープが行われた日を起算日とする融着可能期間を経過していないものであること、というものである。
つまり、現場で用いられる管300は、現場でのスクレープ作業を行わなくとも融着が可能なものであることが求められる。このような管300を現場で用いることで、現場にてスクレープ作業を行う必要がなくなることから、融着作業の効率の向上を図ることができる。
このような運用に対応して、例えばメーカは、現場で使用される管300として、一度もスクレープが行われておらず、製造日もしくは出荷日を起算日とする融着可能期日を経過していない、新品の管300を供給する。さらに、メーカは、事前にスクレープを施したうえで、スクレープされた日を起算日とする融着可能期日を経過していない管300を現場に供給する場合があってもよい。
【0034】
上記のように、現場では、メーカから供給され、新品の管300やスクレープが施された管300のように現場でのスクレープが不要な管300が使用される。そのうえで、本実施形態では、メーカから供給されるスクレープが不要な管300に加えて、ごく一部ではあるが、以下のような管300を現場にて使用することが許容される。
例えば、施工業者、代理店、小売店等がメーカから引き取って保管している管300について、融着可能期日が経過してしまう場合がある。融着可能期日が経過してしまう原因としては、例えば以下のようなものを挙げることができる。1つには、何らかの事情で現場での工期が延長されたことで、当初想定していたスケジュールで管300が使用されることなく保管されているうちに融着可能期日を経過してしまった、というものである。また、1つには、代理店、小売店等が発注等の見込み違い等により管300の在庫を抱えてしまい、在庫として保管されているうちに融着可能期日を経過してしまった、というものである。
上記のように融着可能期日を経過してしまった管300については、スクレープを行えば現場で使用することができる。そこで、本実施形態の現場では、施工業者、代理店、小売店等が管理している、融着可能期日を経過した管300については、スクレープを行うことを条件に現場での使用が許容される運用としている。このような融着可能期日が経過した管300については、施工業者が現場に搬入し(融着可能期日が経過した管300のうち代理店、小売店等が保管していたものについては、例えば施工業者に一旦納入されるようにすればよい)、現場にてスクレープを行ったうえで使用する、というように運用される。
【0035】
メーカは、現場でのスクレープが不要な管300ごとに期限管理バーコード310を発行する。期限管理バーコード310の発行は、例えばメーカが使用する端末によって行われてよい。つまり、メーカが使用する端末は、現場に供給される管300に対応する期限管理バーコードデータを生成する。メーカが使用する端末は、現場に供給する管300ごとに対応して生成された期限管理バーコードデータごとの期限管理バーコード310をラベル用紙等に印刷する。メーカでは、期限管理バーコード310が印刷されたラベルを対応の管300に貼り付けたうえで、現場に管300が供給されるように出荷する。
また、施工業者は、融着可能期日が経過しており、現場でのスクレープが必要な管300について、現場確認用バーコードを発行する。現場確認用バーコードの発行は、施工業者が使用する端末によって行われてよい。施工業者が使用する端末は、現場でのスクレープが必要な管300であって現場に搬入するものごとに対応させて現場確認用バーコードデータを生成する。
施工業者は、生成された現場確認用バーコードデータごとに対応する現場確認用バーコードを、例えば1ページごとに一定数を割り振るようにして用紙に印刷する。このようにして現場確認用バーコードが印刷された用紙をまとめたものが、現場確認用バーコードのバーコード帳となる。バーコード帳は、例えば施工業者の管理者が入手し、現場に持ち込むようにされてよい。
ここで、現場でのスクレープが必要な管300に設けられる期限管理バーコード310の用紙には、対応の施工管理番号を示す数字列が併せて印刷されるようにするとともに、バーコード帳に印刷された現場確認用バーコードごとにも対応して施工管理番号を示す数字列が併せて印刷されるようにしてよい。これにより、管理者は、現場にて、管300に設けられた期限管理バーコード310にて示される数字列と、バーコード帳に印刷される数字列とを照らし合わせて、管300にいずれの現場確認用バーコードが対応するのかを把握できる。
【0036】
現場において、施工者は、上記のようにして期限管理バーコード310が貼り付けられた管300を用いて配管を行う。そして、施工者は、2本の管300、300を連結するにあたり、電気融着装置100により電気融着継手400に通電を行って、電気融着継手400と管300とを融着により接合させる作業を行う。
【0037】
以下に、施工者が電気融着装置100を利用して行う、電気融着継手400と管300との接合の作業手順例について説明する。ここでは、電気融着継手400と管300との接合の作業手順例ととともに、施工者の作業に応じた電気融着装置100の動作例を併せて説明する。以下の説明にあたっては、図7のフローチャートを参照する。同図のフローチャートは、2本の管300、300を電気融着継手400により継ぐために施工者が行う作業手順に応じて電気融着装置100が実行する処理手順例を示している。
【0038】
ステップS101:施工者は、電気融着継手400により管300、300を継ぐための作業を行うにあたり、施工者は、電気融着装置100の電源をオンとする操作を行う。この際、施工者は、電気融着継手400に管300、300を挿入したうえで、コネクタCN、CNを電気融着継手400の突起部401a、401aに装着した準備状態としておいてよい。
電気融着装置100は、電源がオンとされて起動したことに応じて、表示部102にて、例えば、今回の管300との接合に用いる電気融着継手400の継手バーコードデータの入力のための操作を行ってもらうことを案内する表示を行う。
そこで、施工者は、電気融着装置100のバーコードリーダ101により、今回の管300との接合に用いる電気融着継手400に設けられた継手バーコード410から継手バーコードデータを読み取らせる操作を行う。電気融着装置100における情報取得部141は、バーコードリーダ101により読み取られた継手バーコードデータを取得する。
【0039】
ステップS102:継手バーコードデータが取得されると、電気融着装置100は、表示部102において、電気融着継手400と接合させる管300の期限管理バーコードデータの入力のための操作を行ってもらうことを案内する表示を行う。
そこで、施工者は、電気融着装置100のバーコードリーダ101により、電気融着継手400と接合させる管300、300のうちの一方に設けられた期限管理バーコード310から期限管理バーコードデータを読み取らせる操作を行う。情報取得部141は、バーコードリーダ101により読み取られた期限管理バーコードデータを取得する。
【0040】
ステップS103:次に、通電判定部142は、ステップS101により取得された継手バーコードデータと、ステップS102により取得された期限管理バーコードデータとを利用して、今回の施工対象とされている電気融着継手400と管300とが整合しているか否かの整合確認を実行する。ここでの整合確認とは、電気融着継手400と管300とについて互いに融着が可能な仕様条件を満たしているか否かを判定することである。
具体例として、通電判定部142は、整合確認として、継手バーコードデータの第1桁~第19桁と、期限管理バーコードデータの第1桁~第19桁とが一致しているか否かについて判定してよい。この場合、通電判定部142は、以下の条件1~6の全てが満たされているか否かにより、整合確認を行う。
【0041】
条件1:電気融着継手400の製造者、接合方式と管300の製造者、接合方式とが互いに融着可能な組み合わせであること。
具体的に、通電判定部142は、条件1が成立しているか否かについて、例えば電気融着継手400の製造者、接合方式と管300の製造者、接合方式とが一致しているか否かについて判定してよい。
あるいは、記憶部105に、電気融着継手400と管300とを融着可能な製造者、接合方式の組み合わせを格納する製造者、接合方式テーブルを記憶させておく。そのうえで、通電判定部142は、条件1が成立しているか否かについて、電気融着継手400の製造者、接合方式と管300の製造者、接合方式との組み合わせが、製造者、接合方式テーブルに格納されているか否かについて判定するようにしてもよい。
【0042】
条件2:電気融着継手400の継手種別と管300の管種別とが融着可能な組み合わせであること。
具体的に、例えば、継手種別と管種別とについて互いに融着可能な種別のものについて同一の値を設定するようにしておく。そのうえで、通電判定部142は、条件2が成立しているか否かについて、例えば電気融着継手400の継手種別を示す値と管300の管種別を示す値とが一致しているか否かについて判定してよい。
あるいは、記憶部105に、電気融着継手400と管300とを融着可能な継手種別と管種別の組み合わせを格納する種別テーブルを記憶させておく。そのうえで、通電判定部142は、条件2が成立しているか否かについて、電気融着継手400の継手種別の値と管300の管種別の値との組み合わせが、種別テーブルに格納されているか否かについて判定するようにしてもよい。
【0043】
条件3:電気融着継手400のサイズと管300のサイズとが融着可能な組み合わせであること。
具体的に、例えば通電判定部142は、記憶部105に、電気融着継手400と管300とを融着可能なサイズの組み合わせを格納するサイズテーブルを記憶させておく。そのうえで、通電判定部142は、条件3が成立しているか否かについて、電気融着継手400の継手種別のサイズと管300の管種別のサイズとの組み合わせが、サイズテーブルに格納されているか否かについて判定するようにしてもよい。
【0044】
条件4:電気融着継手400の製造者管理番号と管300の製造者管理番号とが融着可能な組み合わせであること。
具体的に、例えば、電気融着継手400と管300との製造者管理番号が互いに一致している場合に融着が可能であるとする運用の場合には、通電判定部142は、条件4が成立しているか否かについて、例えば電気融着継手400の製造者管理番号と管300の製造者管理番号とが一致しているか否かについて判定してよい。
また、記憶部105に、電気融着継手400と管300とを融着可能な製造者管理番号の組み合わせを格納する製造者管理番号テーブルを記憶させておく。そのうえで、通電判定部142は、条件4が成立しているか否かについて、電気融着継手400の製造者管理番号と管300の製造者管理番号との組み合わせが、製造者管理番号テーブルに格納されているか否かについて判定するようにしてもよい。
【0045】
条件5:電気融着継手400のSDR値と管300のSDR値とが融着可能な組み合わせであること。
具体的に、例えば、電気融着継手400と管300とのSDR値が互いに一致している場合に融着が可能であるとする運用の場合には、通電判定部142は、条件5が成立しているか否かについて、例えば電気融着継手400のSDR値と管300のSDR値とが一致しているか否かについて判定してよい。
また、記憶部105に、電気融着継手400と管300とを融着可能なSDR値の組み合わせを格納するSDR値テーブルを記憶させておく。そのうえで、通電判定部142は、条件5が成立しているか否かについて、電気融着継手400のSDR値と管300のSDR値との組み合わせが、製造者管理番号テーブルに格納されているか否かについて判定するようにしてもよい。
【0046】
条件6:電気融着継手の原料種別と管300の原料種別とが融着可能な組み合わせであること。
具体的に、例えば、電気融着継手400と管300との原料種別が互いに一致している場合に融着が可能であるとする運用の場合には、通電判定部142は、条件6が成立しているか否かについて、電気融着継手400と管300との原料種別が一致しているか否かについて判定してよい。
また、記憶部105に、電気融着継手400と管300とを融着可能な原料種別の組み合わせを格納する原料種別テーブルを記憶させておく。そのうえで、通電判定部142は、条件6が成立しているか否かについて、電気融着継手400の原料種別と管300の原料種別との組み合わせが、製造者管理番号テーブルに格納されているか否かについて判定するようにしてもよい。
【0047】
ステップS104:通電判定部142は、ステップS103により、電気融着継手400と管300とが整合していると判定されたか否かについて判定する。
【0048】
ステップS105:ステップS104にて電気融着継手400と管300とが整合していないと判定された場合、通電判定部142は、通電不可報知を実行する。通電不可報知は、表示部102における表示により行われる。また、通電不可報知は、例えば音による報知を伴ってもよい。
この場合の通電不可報知は、例えば、電気融着継手400に対して管300が整合していないことから、電気融着継手400への通電を不可に設定したことを、施工者に報知する内容を有する。即ち、通電不可報知は、通電判定部142が、通電が不可であると判定したことに対応して実行される処理となる。また、このように通電判定部142により通電が不可であると判定された場合、通電制御部143は、施工者により通電に関する操作が行われたとしても、当該操作を受け付けないようにする。つまり、通電制御部143による通電は禁止される。
また、この場合の通電不可報知においては、施工者に向けて、電気融着継手400と整合する管300に交換して、再度、期限管理バーコードデータの入力を行うように案内するメッセージが表示されてよい。
施工者が、バーコードリーダ101を操作して、交換した管300に設けられた期限管理バーコード310から期限管理バーコードを読み取らせると、ステップS105からステップS102に処理が戻されることになる。
【0049】
ステップS106:ステップS104にて電気融着継手400と管300とが整合していると判定された場合、通電判定部142は、さらに管300について、現在日時によって示される日付(第2日付の一例)について融着可能期日を経過しているか否かについて判定する。なお、通電判定部142は、当該ステップS106にて使用する現在日時については、電気融着装置100が有する時計機能によって計時されている現在日時を取得すればよい。
この場合、通電判定部142は、まず管300の融着可能期日を、ステップS102にて取得された期限管理バーコードデータの期限特定情報に基づいて取得する。
期限特定情報がそのまま融着可能期日を示している場合、通電判定部142は、期限特定情報としての融着可能期日を取得する。
【0050】
なお、前述もしたように、本実施形態の期限特定情報は、新品の管300の場合には、製造日、出荷日であってもよい。また、期限特定情報は、現場への搬入前の段階でスクレープが施された管300については、最後にスクレープが行われた日付であってよい。通電判定部142は、期限特定情報としての製造日、出荷日、または最後にスクレープが行われた日付を起算日として、融着可能期間が満了する日付を融着可能期日として算出する。
【0051】
なお、融着可能期間については、予め記憶部105に記憶させておいてよい。この場合において、融着可能期間の情報は、例えば管種別に共通とされた情報が記憶部105に記憶されるようにしてもよいし、管種別ごとに対応させて異なる情報が記憶されるようにしてもよい。
通電判定部142は、このように取得した融着可能期日に対して現在日時が経過しているか否かの確認を行う。
【0052】
ステップS107:通電判定部142は、ステップS106による確認結果として、融着可能期日を経過しているか否かについて判定する。
【0053】
ステップS108:ステップS107にて、融着可能期日を経過していると判定された場合には、ステップS102に対応して期限管理バーコードデータを読み取った管300をそのままでは使用できないことになる。しかしながら、この場合の管300は、既に電気融着継手400と整合していることの確認は得られていることから、現場にて改めてスクレープ作業を行えば、その場で使用することができる。現場での運用としては、原則は、融着可能期日を経過していない管300を使用することで、現場でのスクレープ作業は行わないというものである。しかしながら、スクレープを行えば使用可能な状態に復帰させることができる管300については、その場でスクレープを行って融着させることが許容されている。
この場合の通電判定部142は、まず、通電不可通知を実行する。この場合の通電不可通知も表示部102における表示として行われてよい。また、通電不可通知は音により報知を伴ってもよい。この場合の通電不可通知は、融着可能期日を経過しているために、通電が不可に設定されたことを施工者に報知する内容を有する。そのうえで、この場合の通電不可通知においては、施工者に、管300をスクレープして使用可能な状態としてもらうようにすることを案内するメッセージが含まれてよい。
【0054】
ステップS109:そこで、この場合の施工者は、管300に対してスクレープ作業を行う。施工管理を行う管理者は、スクレープが適正に行われたか否かを確認する。スクレープが適正に行われたことを確認すると、管理者は、例えば現場の管理者が所持するバーコード帳に印刷された現場確認用バーコードのうちから、スクレープを施した管300に該当する現場確認用バーコードを確認する。管理者は、確認した現場確認用バーコードから現場確認用バーコードデータをバーコードリーダ101により読み取らせる操作を行う。情報取得部141は、バーコードリーダ101により読み取られた現場確認用バーコードデータを取得する。
【0055】
ステップS110:通電判定部142は、ステップS109により取得された現場確認用バーコードデータと、ステップS102により取得した期限管理バーコードデータとを照合する。ここでの照合として、通電判定部142は、現場確認用バーコードデータと期限管理バーコードデータとのそれぞれの第1桁~第30桁の値が一致しているか否かについての判定を行えばよい。
【0056】
ステップS111:次に、通電判定部142は、ステップS110により一致しているとの照合結果が得られたか否かについて判定する。
一致しているとの照合結果が得られていないと判定された場合には、誤って他の管300と対応する現場確認用バーコードデータが取得されたものとして扱われる。この場合、通電判定部142は、ステップS108に処理を戻し、再度、通電不可報知を行う。このようにステップS111からステップS108に至った場合、通電不可報知においては、入力された現場確認用バーコードが他の管300に対応するものであるため、スクレープを施した管300に対応する現場確認用バーコードを入力するように案内するメッセージが含まれてよい。この場合、施工者は、スクレープを施した管300に対応する正しい現場確認用バーコードの現場確認用バーコードデータを読み取らせる操作を行う。
【0057】
ステップS112:ステップS111にて現場確認用バーコードデータと期限管理バーコードデータとが一致したとの照合結果が得られた場合、通電判定部142は、対応の管300に対応してステップS102にて取得した期限管理バーコードデータの内容を、最後のステップS109にて取得した現場確認用バーコードデータの内容で更新する。これにより、施工(融着)対象の管300に対応して電気融着装置100が管理する期限管理バーコードデータの第31桁には、確認コードが格納されることになる。このように確認コードが格納された期限管理バーコードデータが対応付けられた施工対象の管300は、融着可能期日を経過していても融着が可能なように復帰されたものであるとして扱われる。
【0058】
ステップS113:ステップS112の処理の後、あるいはステップS107にて融着可能期日を経過しているとの確認結果が得られたと判定された場合、通電判定部142は、施工管理番号重複確認を行う。
現場での運用として、一度融着を行った管300については、再び融着に使用されても十分な接合強度を維持できない可能性があることから、再使用が不可とされている。
例えば、或る管300について、電気融着継手400と融着されたのであるが、その後において、管300に不具合のあることが分かり、この管300については廃棄材に分類して保管した。しかしながら、現場において何らかの原因で廃棄材として保管していた管300が使用可能なものに分類されてしまうという可能性がある。このような融着済みの管300が再び融着に用いらないようにすることが求められる。ステップS113の施工管理番号重複確認は、施工対象の管300が融着済みの管300であるか否かについて確認するための処理となる。
施工管理番号重複確認として、通電判定部142は、通電履歴情報として記憶部105に記憶されている施工管理番号のうちで、現在の施工対象の管300に対応する期限管理バーコードデータに含まれる施工管理番号と重複するものがあるか否かについて判定する。
記憶部105に記憶される通電履歴情報は、現場においてこれまでに融着が行われた管300についての履歴を示す情報である。通電履歴情報は、融着が行われた管300に対応する期限管理バーコードデータを含んでよい。期限管理バーコードデータには、施工管理番号が含まれる。なお、通電履歴情報は、期限管理バーコードデータから抽出した施工管理番号を含むものであってもよい。
【0059】
ステップS114:通電判定部142は、ステップS113による施工管理番号重複確認により重複しているとの確認結果が得られた否かについて判定する。
重複しているとの確認結果が得られた場合には、ステップS105により表示部102にて通電不可通知が行われる。この場合の通電不可通知においては、管300が既に過去に融着されたことがあるので使用しないで、他の使用可能な管300に交換してもらうようにすることを施工者に案内する内容を含んでよい。また、この場合にも通電不可通知は、音の出力を伴ってよい。
【0060】
ステップS115:ステップS114にて重複しているとの確認結果が得られていないことが判定された場合、これまでのステップS102~S114の処理の対象とされた管300は、融着のための通電が可能であるということになる。ただし、これまでのステップS102~S114の処理が、2本ある管300のうちの1本目に関するものであった場合には、さらに同じ手順で2本目の管300についてステップS102~S114の処理を行って通電の可否判定を行う必要がある。
そこで、この場合の通電判定部142は、現段階において2本目の管300についての可否判定が終了しているか否かについて判定する。
まだ、2本目の管300についての可否判定が終了していないと判定された場合には、ステップS102に処理が戻される。
【0061】
ステップS116:ステップS115にて2本目の管300についての可否判定が終了していると判定された場合には、施工対象の2本の管300のいずれについても通電が可能であるとの判定結果が得られたことになる。
そこで、この場合の通電制御部143は、施工者による操作に応じた通電を許可し、通電に対応する制御(通電制御)を実行する。
通電制御として、通電制御部143は、例えば施工者に通電開始指示操作を行ってもらうことを案内する表示を表示部102にて行い、通電開始指示操作を待機する。施工者が通電開始を指示する操作を電気融着装置100に対して行ったことに応じて、通電制御部143は、継手バーコードデータにより示される通電条件に従って通電を開始させる。通電制御部143は、通電を終了させると、通電が終了したことの報知を表示部102にて行わせる。このように通電制御部143により通電が行われることに応じて、電気融着継手400が管300、300と融着される。
【0062】
ステップS117:通電制御部143は、通電を終了させたことに応じて、今回の施工対象とされた2本の管300、300それぞれの期限管理バーコードデータを含む通電履歴情報を記憶部105に記憶させる。
【0063】
なお、上記の例では、現場にて1つの電気融着装置100を稼働させる運用である場合を例に挙げている。しかしながら、現場においては、複数の電気融着装置100を稼働させる運用とされてよい。
ただし、現場にて複数の電気融着装置100を稼働させる運用とする場合には、以下の対応をとることが好ましい。つまり、或る1つの電気融着装置100で図7のステップS113の施工管理番号重複確認を行う場合には、自己が融着した管300の施工管理番号だけではなく、他の電気融着装置100にて融着された管300の施工管理番号との重複も確認することが好ましい。
このためには、例えば、複数の電気融着装置100の間で有線または無線により通信が可能なようにする。そして、1つの電気融着装置100は、所定のタイミングで他の電気融着装置100と通信を行う。有線による通信の場合には、施工者が作業中における所定の機会において、電気融着装置100同志を通信用ケーブルで接続して通信可能なようにしてよい。また、無線による通信の場合には、予め定められた時刻、一定時間ごと、もしくは通電の終了に応じたタイミングで、他の電気融着装置100に問合せを行って通信可能に接続し、接続された他のケーブルで接続して通信可能なようにしてよい。
通信が可能に接続された電気融着装置100は、相互に通信相手の電気融着装置100の通電履歴情報を取得し、記憶部105に記憶させるようにする。これにより、電気融着装置100間で、現場にて融着された管300の通電履歴情報が共有される。このように電気融着装置100間で、現場にて融着された管300の通電履歴情報を共有させる制御は、電気融着装置100の各々と接続される上位装置によって行われるようにされてよい。
これにより、通電判定部142は、ステップS113の施工管理番号重複確認に際しては、記憶部105に記憶された、自機に対応する通電履歴情報と他の電気融着装置100の通電履歴情報とを対象として、施工管理番号の重複の確認を行うことができる。つまり、現場において、1つの電気融着装置100は、自己が通電を行って融着させた管300に加えて、他の電気融着装置100が通電を行って融着させた管300も対象として、施工対象の管300との施工管理番号重複確認を行える。
【0064】
また、通電可否判定を行う通電可否判定装置(サーバ)を設け、電気融着装置100と通電可否判定装置とを通信可能に接続した構成としてもよい。この場合、電気融着装置100の情報取得部141は、継手バーコードデータ、期限管理バーコードデータ、現場確認用バーコードデータ等のバーコードデータを取得したことに応じて、取得されたバーコードデータを、通電可否判定装置に送信する。通電可否判定装置は、受信されたバーコードデータを利用して、通電判定部142と同様の通電可否判定の処理を実行し、判定結果を電気融着装置100に送信する。電気融着装置100は、受信された判定結果に応じて、通電不可報知や通電制御を実行する。
また、このような構成の場合には、電気融着装置100は、通電の終了に応じて通電履歴情報を通電可否判定装置に送信し、通電可否判定装置は受信された通電履歴情報を記憶し、施工管理番号重複確認の処理を実行する際に、記憶された通電履歴情報を利用してよい。
【0065】
なお、上述の電気融着装置100としての機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の電気融着装置100としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
100 電気融着装置、101 バーコードリーダ、101a 本体、102 表示部、103 操作部、104 制御部、105 記憶部、141 情報取得部、142 通電判定部、143 通電制御部、300 管、310 期限管理バーコード、400 電気融着継手、401 管部、401a 突起部、402 電熱線、403 電極、410 継手バーコード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7