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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】水性顔料組成物および塗布具
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20221129BHJP
   C09C 1/36 20060101ALI20221129BHJP
   C09C 3/10 20060101ALI20221129BHJP
   C09D 11/17 20140101ALI20221129BHJP
【FI】
C09D17/00
C09C1/36
C09C3/10
C09D11/17
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018235370
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020097646
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】中田 有亮
(72)【発明者】
【氏名】神谷 俊史
(72)【発明者】
【氏名】井上 賢亮
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-176456(JP,A)
【文献】特開2001-064537(JP,A)
【文献】特開平08-092501(JP,A)
【文献】特開平09-221604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00-3/12
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン粒子と、酸化チタン粒子の表面に付着して該表面の一部または全部を覆う酸化チタン粒子よりも粒子径の小さい樹脂粒子との複合化粒子を含有し、
前記複合化粒子における、酸化チタン粒子と樹脂粒子との平均粒子径の比率が、酸化チタン粒子/樹脂粒子=1.1~10であり、
筆記具用水性顔料組成物全量中に含まれる複合化粒子の含有量が1~60質量%であ筆記具用水性顔料組成物。
【請求項2】
筆記具用水性顔料組成物全量中に含まれる酸化チタンの含有量が0.1~35質量%である請求項1に記載の筆記具用水性顔料組成物。
【請求項3】
前記複合化粒子において、酸化チタンと樹脂粒子との配合比が質量比で1.5/1.0~6.0/1.0である請求項1又は2に記載の筆記具用水性顔料組成物。
【請求項4】
前記複合化粒子を構成する樹脂粒子の平均粒子径が40~900nmの範囲である請求項1~3のいずれか一項に記載の筆記具用水性顔料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高隠蔽性の水性白色顔料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン(TiO2)は、その優れた光散乱効果により、白色度および隠蔽性(基材を隠蔽する性質)を付与することができる顔料であり、水や有機溶媒からなる液体媒体中に、酸化チタンまたは酸化チタンを含む複合化粒子もしくは中空粒子などの隠蔽剤を分散させた水性又は油性などのインク組成物は、修正液や筆記具用インクなどに使用されている。
【0003】
一方、酸化チタンは比重が3.8~4.1と大きく、インク中で沈降または分離するという課題がある。そのため、描線の乾燥中に、インク中に分散されていた酸化チタン同士が凝集して、散乱体積が小さくなって隠蔽性が低下したり、例えば黒紙などの繊維質材料の吸収面に筆記した場合には、繊維間に酸化チタンが沈み込み、紙表面が露出して隠蔽性が低下するという課題があった。
【0004】
隠蔽率を高くするため、酸化チタンの配合量を多くすると、酸化チタン粒子がより沈降しやすくなって分散のバランスが低下するほか、インク組成物の粘度が高くなり、ペン先からのインク吐出性が低下したり、ペン先部でインクが固化して描線がかすれる(ノンドライ性の低下)といった不具合が生じる。また、酸化チタンの配合量を多くすることで高コストにも繋がる。
【0005】
これまで、酸化チタンを含むインク組成物では、酸化チタンの比重が大きいために、例えば、粒子径を小さくしても、沈降または分離の発生を十分に抑制することができなかった。酸化チタンの沈殿が進行すると、沈降分がハードケーキ化して再分散が困難となる。このような問題を解消するため、等電点がインクのpHよりも大きい酸化チタンと、樹脂粒子と、結合剤と、水とを含む水性顔料組成物が報告されている(特許文献1)。特許文献1の水性顔料組成物では、インクのpHより等電点の大きい酸化チタンを用いることによって、水より誘電率の低い樹脂粒子は負に帯電し、インク中で正に帯電した酸化チタンと、負に帯電した樹脂粒子とが電気的に結合し、時間の経過とともに酸化チタンと樹脂粒子が沈降しても、その沈殿物はハードケーキ化しにくく、容易に再分散できる。
【0006】
しかしながら、酸化チタンや樹脂粒子の粒子径や配合比によってインク性能に影響があり、例えば、酸化チタンの粒子径に対して樹脂粒子の粒子径が大きい場合、樹脂粒子が嵩高いため、樹脂粒子1つ当たりの酸化チタンへの接触面積が小さく、酸化チタンと樹脂粒子とが電気的に結合したとしても、吸着力が弱く、脱離しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-343443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、酸化チタン粒子を含有する水性白色顔料組成物であって、酸化チタン粒子の分散性を向上させることにより、隠蔽性に優れ、長時間空気中に晒してもカスレがなく良好に筆記できる水性顔料組成物および前記水性顔料組成物を用いた塗布具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の水性顔料組成物は、酸化チタン(TiO2)粒子と、酸化チタン粒子の表面に付着して該表面の一部または全部を覆う、酸化チタン粒子よりも粒子径の小さい樹脂粒子との複合化粒子を含有する。
前記複合化粒子において、酸化チタン粒子と樹脂粒子との平均粒子径の比率が、酸化チタン粒子/樹脂粒子=1.1~10であることが好ましい。
前記複合化粒子を構成する樹脂粒子の平均粒子径が40~900nmの範囲であることが好ましい。
塗布具は、前記水性顔料組成物を用いたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水性顔料組成物は、高い隠蔽率を有し、カスレがなく良好に筆記できる。また、ペン先のノンドライ性、すなわち、キャップオフ性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の水性顔料組成物に含まれる複合化粒子1のSEM画像である。
図2図2は、複合化粒子1を拡大した模式図である。
図3図3は、本発明の水性顔料組成物中で複合化粒子1が均一に分散した状態を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水性顔料組成物は、酸化チタン粒子と、酸化チタン粒子の表面に付着して該表面の一部または全部を覆う、酸化チタン粒子よりも粒子径の小さい樹脂粒子との複合化粒子を含有する。図1および2は、前記水性顔料組成物に含まれる複合化粒子のSEM画像および該複合化粒子を拡大した図を表す。以下、本発明の水性顔料組成物について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0013】
酸化チタンには、一酸化チタン(TiO)、三酸化二チタン(Ti23)および二酸化チタン(TiO2)があるが、4価の二酸化チタン(TiO2)が最も一般的であり、本発明では、酸化チタン粒子3とはTiO2を指す。TiO2にはルチル型およびアナターゼ型などがあり、ルチル型が好ましい。なお、酸化チタン粒子3は、以下単に酸化チタン3またはTiO2とも記す。
本発明で用いる酸化チタン粒子3の平均粒子径は、通常50~1000nm、好ましくは100~500nm、更に好ましくは200~400nmである。なお、ここで言う平均粒子径は、複合化粒子1分散体の画像解析から、酸化チタン3と樹脂粒子2、それぞれのHeywood径を基にした体積基準算術平均径である。なお、酸化チタン3は一次粒子のみでなく、二次粒子を含む場合もある。
【0014】
一次粒子とは、相当な機械的応力によっても分解されることのない、単一粒子のことであり、二次粒子とは、一次粒子が集合した凝集物のことである。酸化チタン3は凝集性があるため、市販品は通常、一次粒子だけでなく、二次粒子を含んでいる。市販の酸化チタンの平均粒子径は、通常0.15~3μmである。
本発明で用いる酸化チタン3には、例えば、KR-380(チタン工業社製、平均粒子径0.5μm、親油性処理TiO2)、ITT-2 CR-50(日光ケミカルズ社製、平均粒子径0.3μm、有機チタネート処理TiO2)、およびITT-7 TTO-S-3(日光ケミカルズ社製、平均粒子径0.05μm、有機チタネート処理)などがある。
【0015】
樹脂粒子2には、酸化チタン3よりも粒子径の小さいものが用いられる。樹脂粒子2の粒子径は通常40~900nm、好ましくは40~500nm、更に好ましくは40~300nmである。樹脂粒子2の粒子径が40nm未満のとき、乾燥する過程で酸化チタン3同士の距離が十分にとれず、光散乱体積が減少することで隠蔽性が低下する。一方、樹脂粒子2の粒子径が900nmを超えると、1個の樹脂粒子2に酸化チタン3に接触する面積が小さく、脱離しやすくなる。
樹脂粒子2には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタン・アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ナイロン系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、およびポリアミドイミド系樹脂などが用いられる。これらは一種単独で使用してもよいし、二種以上混合して使用してもよい。
これらの樹脂粒子2のうち、本発明ではアクリル系樹脂が好ましい。前記アクリル系樹脂は合成してもよいし、エポスターMXシリーズ(日本触媒社製)やファインスフェアシリーズ(日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製)などの市販品を用いてもよい。
また、樹脂粒子2の形状は、酸化チタン3よりも粒子径が小さいものであれば制限はなく、球状、異形または中空など、いずれでもよい。
【0016】
本発明の水性顔料組成物中では、酸化チタン3および樹脂粒子2は複合化粒子1を形成している。図1は、酸化チタン3および樹脂粒子2からなり、該酸化チタン3表面の一部または全部に樹脂粒子2が付着した複合化粒子1を示している。複合化粒子1がこのような構造を有することで、酸化チタン3同士が接触して凝集することがなく、水性顔料組成物中で複合化粒子1を効果的に分散させることができ、高い隠蔽性に繋がる。
このような複合化粒子1において、酸化チタン3および樹脂粒子2の配合比は、質量比で通常1.5/1.0~6.0/1.0、好ましくは2.0/1.0~4.0/1.0である。前記配合比が6.0/1.0を超えると、酸化チタン3を分散するための樹脂粒子2の付着量が不足し、分散が十分に進まない。また、複合化粒子1の比重が大きいために、沈降することがある。一方、前記配合比が1.5/1.0未満であると、複合粒子化に関与しない余剰の樹脂粒子2が多くなることで固形分量が高くなり、水性顔料組成物の粘度が必要以上に増加する。
複合化粒子1の含有量は、水性顔料組成物の全量に対して、通常1~60質量%である。本発明では、複合化粒子1の分散性を向上させることで、水性顔料組成物中の複合化粒子1の含有量を前記範囲にしても、高い隠蔽性を維持することができる。このような水性顔料組成物を筆記具に用いた場合、インク粘度が高すぎず、長時間筆記していてもカスレが生じないため、インク吐出性能の向上に資する。また、ペン先に残った水性顔料組成物が固化しにくく、ノンドライ性能も向上する。なお、酸化チタン3の含有量は、水性顔料組成物の全量に対して、通常0.1~35質量%、好ましくは1~30質量%である。
【0017】
また、複合化粒子1の平均粒子径は、通常150~3000nm、好ましくは200~1000nm、更に好ましくは300~600nmである。複合化粒子1が前記の粒子径を有することで、隠蔽性の向上、インク吐出性の向上、再分散性の向上の効果が得られる。また、複合化粒子において、酸化チタン粒子3の平均粒子径と樹脂粒子2の平均粒子径の比率は、酸化チタン粒子3/樹脂粒子2=1.1~10が好ましく、2~6がより好ましい。
平均粒子径は、前記同様に複合化粒子1分散体の画像解析から、酸化チタン3と樹脂粒子2、それぞれのHeywood径から求めたものである。なお、酸化チタン3は一次粒子のみでなく、二次粒子を含む場合もある。
【0018】
本発明の水性顔料組成物は、酸化チタン粒子3および樹脂粒子2以外に、水、水溶性有機溶剤、pH調整剤、界面活性剤、防腐剤および防黴剤などを含んでいてもよい。
水には、水道水、蒸留水、イオン交換水および純水などが用いられる。
水溶性有機溶剤には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールおよびヘキシレングリコールなどのグリコール類、グリセリンおよびジグリセリンなどのグリセリン類、ならびに、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールなどのグリコールエーテルなどが用いられる。
【0019】
pH調整剤としては、アミノメチルプロパノールおよびトリエタノールアミンなどの従来公知のものが、pH調整の必要性に応じて用いることができる。
【0020】
界面活性剤は、インクの表面張力を低下させるものであれば制限はなく、ノニオン系、カチオン系およびアニオン系のいずれの界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤の含有量は、水性顔料組成物の全量に対して、通常0.001~0.5質量%である。
【0021】
防腐剤および防黴剤には、ハロゲン系、イミダゾール系、チアゾール系、ピリジン系、トリアジン系、イミド系およびカルボン酸系などの化合物が用いられる。
防腐剤および防黴剤の含有量は、水性顔料組成物の全量に対して、通常0.01~0.5質量%である。
【0022】
前記水性顔料組成物は、前記した成分以外に、必要に応じて、例えば、着色剤、消泡剤、乾燥防止剤および脱酸素剤などを添加してもよい。
【0023】
本発明の水性顔料組成物の調製方法の一例を示す。酸化チタン3、樹脂粒子2および必要に応じてpH調整剤を混合して、酸化チタン3の表面に樹脂粒子2を吸着させる。このためには酸化チタン3と樹脂粒子2の表面電位が異なるように分散体のpHを調整する必要がある(例えば酸化チタン3を正に帯電させ、樹脂粒子2を負に帯電させる)。酸化チタン3の等電点は、アルミナおよびシリカといった表面処理剤の種類や、処理量、処理比率により大きく影響される(例えば、アルミナの等電点はpH9であり、シリカの等電点はpH2である)。
このような方法を用いることで酸化チタン3に樹脂粒子2が電気的に吸着し、粒子径の大きい酸化チタン3表面の一部または全部を樹脂粒子2が覆い、複合化粒子1を形成する。複合化粒子1同士は電子反発により一定以上の距離を保つため、凝集体を生じずに図3に示すような良好な分散性を維持することができる。次いで、水性顔料組成物の調製に必要な他の成分、水、水溶性有機溶剤および界面活性剤を添加し、攪拌することにより、本発明の水性顔料組成物を調製することができる。
【0024】
本発明の水性顔料組成物は、酸化チタン3の良好な分散性により、隠蔽性に優れる。また、隠蔽性に優れるため、酸化チタン3の量を多くする必要がない。そのため、例えば、サインペンのように、ポリエステルのペン先を有する筆記具のインクに使用しても、長時間曝露しながら筆記してもカスレが生じ難い。このような水性顔料組成物は、筆記具用インクのみならず、液体化粧料などの化粧品、その他の文具や、日用品に使用される塗布具などに広く適用することができる。
【実施例
【0025】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により制限されるものではない。
〔実施例1〕
[水性顔料組成物の調製]
酸化チタン(TiO2)粒子(製品名 JR-600A(粒子径250nm);テイカ社製)30質量%、樹脂粒子(製品名 MX030W(アクリル系、粒子径40nm、10%分散体);日本触媒社製)50重量%を混合して、直径0.3mmのジルコニアビーズをメディアとして、ビーズミル(DYNO-MILL、KDL型、ウィリー・エ・バッコーフェン社製)により1500rpmで1時間処理をして酸化チタン粒子の表面に樹脂粒子を吸着させた。次いで、前記混合物に、トリエタノールアミン0.5質量%、サーフロンS-211(フッ素系界面活性剤;AGCセイミケミカル社製)0.2質量%、バイオデンS(防腐剤;大和化学工業社製)0.3質量%、プロピレングリコール5質量%、およびイオン交換水14質量%を添加して混合し、水性顔料組成物を調製した。複合化粒子の画像から平均粒子径を求めた結果、酸化チタン250nm、樹脂粒子40nmであった。
【0026】
[水性顔料組成物の評価]
(1)隠蔽性
黒紙(吸収面:長門屋商店カラーペーパー中厚口)に50μmのアプリケーターで塗膜を引き、乾燥後、カラーコンピュータ(スガ試験機社製SC-P)にて明度L*を測定した。下記の基準に基づいてA~Cで評価した。
A・・・L*が85%超
B・・・L*が80~85%
C・・・L*が80%未満
【0027】
(2)インク吐出性能
三菱鉛筆社製PC-5Mのペン体に各水性顔料組成物を詰め、気温25℃、湿度65%の環境下において、黒紙に幅15mmの螺旋を筆記し、筆記後の描線を下記のようにA~Cで評価した。
A・・・8.0m/minの筆記速度で全くカスレは発生せず、良好に筆記できる。
B・・・8.0m/minの筆記速度ではカスレが発生するが、4.0m/minでは全くカスレは発生せず、良好に筆記できる。
C・・・4.0m/minの筆記速度でカスレが発生する。
【0028】
(3)ノンドライ性能
三菱鉛筆社製PC-3Mのペン体に各水性顔料組成物を詰め、気温25℃、湿度65%の環境下において、ポリプロピレン製のキャップをはずし、1時間放置した。その後、黒紙に幅15mmの螺旋を筆記し、下記のA~Cの評価基準でノンドライ性を目視評価した。
A・・・カスレなく、良好に筆記できる。
B・・・最初の1~2周はカスレがあるが、3周目以降は良好に筆記できる。
C・・・3周目以降もカスレが見られる。
水性顔料組成物の調製条件および評価の結果を表1に示す。
【0029】
〔実施例2〕
実施例1において、酸化チタン(TiO2)粒子の種類をJR-600A(粒子径250nm)からJR-301(粒子径300nm;テイカ社製)に変更し、樹脂粒子の種類および量をMX030W(アクリル系、粒子径40nm、10%分散体)50質量%からFS-101(アクリル系、粒子径100nm;日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製)15質量%に変更し、イオン交換水の量を14質量%から49質量%に変更し、それ以外は、実施例1と同様にして、水性顔料組成物を調製した。
複合化粒子の画像から平均粒子径を求めた結果、酸化チタン300nm、樹脂粒子100nmであった。
実施例1と同様にして水性顔料組成物を評価した。
結果を表1に示す。
【0030】
〔実施例3〕
実施例1において、酸化チタン(TiO2)粒子の種類をJR-600A(粒子径250nm)から、R-902+(粒子径400nm;ケマーズ社製)に変更し、樹脂粒子の種類および量をMX030W(アクリル系、粒子径40nm、10%分散体)50質量%からMM-101SWA(ウレタン系、粒子径150nm、30%分散体;根上工業社製)60質量%に変更し、およびイオン交換水の量を14質量%から4質量%に変更し、それ以外は、実施例1と同様にして、水性顔料組成物を調製した。
複合化粒子の画像から平均粒子径を求めた結果、酸化チタン400nm、樹脂粒子150nmであった。
実施例1と同様にして水性顔料組成物を評価した。
結果を表1に示す。
【0031】
〔実施例4〕
実施例3において、樹脂粒子の種類および量をMM-101SWA(ウレタン系、粒子径150nm、30%分散体)60質量%からFS(メラミン系、粒子径200nm;日本触媒社製)20質量%に変更し、イオン交換水の量を14質量%から44質量%に変更し、それ以外は、実施例3と同様にして、水性顔料組成物を調製した。
複合化粒子の画像から平均粒子径を求めた結果、酸化チタン400nm、樹脂粒子200nmであった。
実施例1と同様にして水性顔料組成物を評価した。
結果を表1に示す。
【0032】
〔実施例5〕
実施例1において、樹脂粒子の種類および量をMX030W(粒径40nm)50質量%からMM-101SWA(ウレタン系、粒子径150nm、30%分散体;根上工業社製)60質量%に変更し、イオン交換水の量を14質量%から4質量%に変更し、それ以外は、実施例1と同様にして、水性顔料組成物を調製した。
複合化粒子の画像から平均粒子径を求めた結果、酸化チタン250nm、樹脂粒子150nmであった。
実施例1と同様にして水性顔料組成物を評価した。
結果を表1に示す。
【0033】
〔実施例6〕
実施例3において、樹脂粒子の種類および量をMM-101SWA(ウレタン系、粒子径150nm、30%分散体)60質量%からMX030W(アクリル系、粒子径40nm、10%分散体;日本触媒社製)40質量%に変更し、イオン交換水の量を4質量%から24質量%に変更し、それ以外は、実施例3と同様にして、水性顔料組成物を調製した。
複合化粒子の画像から平均粒子径を求めた結果、酸化チタン400nm、樹脂粒子40nmであった。
実施例1と同様にして水性顔料組成物を評価した。
結果を表1に示す。
【0034】
〔比較例1〕
実施例1において、樹脂粒子の種類をMX030W(粒径40nm)からMX-200W(粒径350nm;日本触媒社製)に変更し、それ以外は、実施例1と同様にして、水性顔料組成物を調製した。複合化粒子の画像から平均粒子径を求めた結果、酸化チタン250nm、樹脂粒子350nmであった。
実施例1と同様にして水性顔料組成物を評価した。
酸化チタン粒子と、酸化チタン粒子よりも粒子径の大きい樹脂粒子との複合化粒子を用いた比較例1では、隠蔽性、インク吐出性およびノンドライ性のいずれも劣っていた。
結果を表1に示す。
【0035】
〔比較例2〕
実施例2において、樹脂粒子の種類をFS-101(アクリル系、粒子径100nm、粉体)からS6(メラミン系、粒径400nm、粉体;日本触媒社製)に変更し、それ以外は、実施例2と同様にして、水性顔料組成物を調製した。
複合化粒子の画像から平均粒子径を求めた結果、酸化チタン300nm、樹脂粒子400nmであった。
実施例1と同様にして水性顔料組成物を評価した。
酸化チタン粒子よりも粒子径の大きい樹脂粒子を用いた場合、比較例1と同様に、隠蔽性、インク吐出性およびノンドライ性のいずれも劣ることがわかった。
結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【符号の説明】
【0037】
1 複合化粒子
2 樹脂粒子
3 酸化チタン粒子
図1
図2
図3