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特許7184688HAPS通信システムにおけるマルチフィーダリンク間の干渉検知
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】HAPS通信システムにおけるマルチフィーダリンク間の干渉検知
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/185 20060101AFI20221129BHJP
   H04B 17/40 20150101ALI20221129BHJP
   H04B 17/391 20150101ALI20221129BHJP
   H04B 17/345 20150101ALI20221129BHJP
   H04W 84/00 20090101ALI20221129BHJP
   H04W 92/12 20090101ALI20221129BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20221129BHJP
【FI】
H04B7/185
H04B17/40
H04B17/391
H04B17/345
H04W84/00 110
H04W92/12
H04W16/26
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019057729
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020161916
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】318002806
【氏名又は名称】HAPSモバイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】平井 亮次
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/207612(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0046387(US,A1)
【文献】米国特許第9798329(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0126309(US,A1)
【文献】丸田 一輝 他,マルチセルMassive MIMOシステムにおけるパイロット汚染除去のための干渉抑圧方式,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2018年10月11日,Vol.118, No.254,第143-148頁
【文献】Iskandar et al.,Interference analysis of border area technology: HAPS and GEO satellite in EXT-C band,2017 3rd International Conference on Wireless and Telematics (ICWT),IEEE,2017年07月27日,pp.118-122
【文献】Alexander Hilario-Tacuri et al.,Probabilistic Model for the Interference Analysis from FWA-TDMA Systems Into HAPS,2019 42nd International Conference on Telecommunications and Signal Processing (TSP),IEEE,2019年07月01日,pp.286-289
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/185
H04B 17/40
H04B 17/391
H04B 17/345
H04W 84/00
H04W 92/12
H04W 16/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置の無線通信を中継する中継通信局を含む移動可能な複数の空中滞在型の通信中継装置のフィーダリンク間の干渉を検知する干渉検知システムであって、
前記複数の通信中継装置それぞれと無線通信する複数のゲートウェイ局の位置情報を記憶する情報記憶部と、
前記複数の通信中継装置の現在位置の位置情報を取得する情報取得部と、
前記複数の通信中継装置の位置情報と前記複数のゲートウェイ局の位置情報とに基づいて、前記複数の通信中継装置について、3次元空間モデルにおける前記通信中継装置の位置に対応するフィーダリンク受信点と前記ゲートウェイ局の位置に対応するフィーダリンク送信点と前記フィーダリンク受信点及び前記フィーダリンク送信点を互いに結ぶ線分とを結合した複数のフィーダリンクモデル要素を生成する生成部と、
前記3次元空間モデル上で互いに異なる前記複数のフィーダリンクモデル要素の間における前記線分と前記フィーダリンク受信点との距離に基づいて前記フィーダリンク間の干渉の発生を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする干渉検知システム。
【請求項2】
請求項1の干渉検知システムにおいて、
前記生成部は、前記フィーダリンク受信点を中心とした球体を更に結合して前記フィーダリンクモデル要素を生成し、
前記判定部は、前記3次元空間モデル上で互いに異なる前記複数のフィーダリンクモデル要素の間における前記線分と前記球体との接触に基づいて前記フィーダリンク間の干渉の発生を判定することを特徴とする干渉検知システム。
【請求項3】
請求項2の干渉検知システムにおいて、
前記生成部は、前記フィーダリンク間の干渉検知の要求感度に応じて、前記フィーダリンクモデル要素の球体の半径を変更することを特徴とする干渉検知システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの干渉検知システムにおいて、
前記線分は、前記ゲートウェイ局からのフィーダリンクの送信ビームに対応した形状を有することを特徴とする干渉検知システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの干渉検知システムにおいて、
前記フィーダリンク間の干渉発生の判定結果及び前記3次元空間モデルにおける前記複数のフィーダリンクモデル要素の少なくとも一方を出力する出力部を更に備えることを特徴とする干渉検知システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの干渉検知システムにおいて、
前記生成部は、前記通信中継装置の飛行予定情報、前記通信中継装置の飛行に影響する気象条件並びに前記通信中継装置の高度及び速度の少なくとも一つを含む飛行影響条件パラメータに基づいて、前記複数のフィーダリンクモデル要素の動きを予測して生成し、
前記判定部は、前記複数のフィーダリンクモデル要素の動きの予測結果に基づいて、前記フィーダリンク間の干渉の発生を予測することを特徴とする干渉検知システム。
【請求項7】
請求項6の干渉検知システムにおいて、
前記飛行影響条件パラメータと前記通信中継装置の飛行経路との関係を示す過去データに基づいて、前記複数のフィーダリンクモデル要素の動き又は前記フィーダリンク間の干渉発生を予測することを特徴とする干渉検知システム。
【請求項8】
端末装置の無線通信を中継する中継通信局を含む移動可能な複数の空中滞在型の通信中継装置のフィーダリンク間の干渉を検知する干渉検知方法であって、
前記複数の通信中継装置それぞれと無線通信する複数のゲートウェイ局の位置情報を記憶することと、
前記複数の通信中継装置の現在位置の位置情報を取得することと、
前記複数の通信中継装置の位置情報と前記複数のゲートウェイ局の位置情報とに基づいて、前記複数の通信中継装置について、3次元空間モデルにおける前記通信中継装置の位置に対応するフィーダリンク受信点と前記ゲートウェイ局の位置に対応するフィーダリンク送信点と前記フィーダリンク受信点及び前記フィーダリンク送信点を互いに結ぶ線分とを結合した複数のフィーダリンクモデル要素を生成することと、
前記3次元空間モデル上で互いに異なる前記複数のフィーダリンクモデル要素の間における前記線分と前記フィーダリンク受信点との距離に基づいて前記フィーダリンク間の干渉の発生を判定することと、
を含むことを特徴とする干渉検知方法。
【請求項9】
端末装置の無線通信を中継する中継通信局を含む移動可能な複数の空中滞在型の通信中継装置のフィーダリンク間の干渉を検知する干渉検知システムに設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
前記複数の通信中継装置の位置情報と、前記複数の通信中継装置それぞれと無線通信する複数のゲートウェイ局の位置情報とに基づいて、前記複数の通信中継装置について、3次元空間モデルにおける前記通信中継装置の位置に対応するフィーダリンク受信点と前記ゲートウェイ局の位置に対応するフィーダリンク送信点と前記フィーダリンク受信点及び前記フィーダリンク送信点を互いに結ぶ線分とを結合した複数のフィーダリンクモデル要素を生成するためのプログラムコードと、
前記3次元空間モデル上で互いに異なる前記複数のフィーダリンクモデル要素の間における前記線分と前記フィーダリンク受信点との距離に基づいて前記フィーダリンク間の干渉の発生を判定するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元化ネットワークの構築に適したHAPS等の空中浮揚型の無線中継装置のマルチフィーダリンク間の干渉の検知(事前予測を含む)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空中に浮揚して滞在可能な高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」ともいう。)等の通信中継装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この空中浮揚型の通信中継装置における通信回線は、その通信中継装置と移動通信網側のゲートウェイ(GW)局との間のフィーダリンクと、通信中継装置と端末装置との間のサービスリンクとで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2016/0046387号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動可能な空中浮揚型の通信中継装置が同じエリアに増えてくると、複数の通信中継装置のフィーダリンク間で干渉が発生し、フィーダリンクの無線通信品質が低下したり、フィーダリンクがきれたりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る干渉検知システムは、端末装置の無線通信を中継する中継通信局を含む移動可能な複数の空中滞在型の通信中継装置のフィーダリンク間の干渉を検知する干渉検知システムである。前記干渉検知システムは、前記複数の通信中継装置それぞれと無線通信する複数のゲートウェイ局の位置情報を記憶する情報記憶部と、前記複数の通信中継装置の現在位置の位置情報を取得する情報取得部と、前記複数の通信中継装置の位置情報と前記複数のゲートウェイ局の位置情報とに基づいて、前記複数の通信中継装置について、3次元空間モデルにおける前記通信中継装置の位置に対応するフィーダリンク受信点と前記ゲートウェイ局の位置に対応するフィーダリンク送信点と前記フィーダリンク受信点及び前記フィーダリンク送信点を互いに結ぶ線分とを結合した複数のフィーダリンクモデル要素を生成する生成部と、前記3次元空間モデル上で互いに異なる前記複数のフィーダリンクモデル要素の間における前記線分と前記フィーダリンク受信点との距離に基づいて前記フィーダリンク間の干渉の発生を判定する判定部と、を備える。
【0006】
前記干渉検知システムにおいて、前記生成部は、前記フィーダリンク受信点を中心とした球体を更に結合して前記フィーダリンクモデル要素を生成し、前記判定部は、前記3次元空間モデル上で互いに異なる前記複数のフィーダリンクモデル要素の間における前記線分と前記球体との接触に基づいて前記フィーダリンク間の干渉の発生を判定してもよい。
ここで、前記生成部は、前記フィーダリンク間の干渉検知の要求感度に応じて、前記フィーダリンクモデル要素の球体の半径を変更してもよい。
【0007】
前記干渉検知システムにおいて、前記線分は、前記ゲートウェイ局からのフィーダリンクの送信ビームに対応した形状を有してもよい。
【0008】
前記干渉検知システムにおいて、前記フィーダリンク間の干渉発生の判定結果及び前記3次元空間モデルにおける前記複数のフィーダリンクモデル要素の少なくとも一方を出力する出力部を更に備えてもよい。
【0009】
前記干渉検知システムにおいて、前記生成部は、前記通信中継装置の飛行予定情報、前記通信中継装置の飛行に影響する気象条件及び前記通信中継装置の高度の少なくとも一つを含む飛行影響条件パラメータに基づいて、前記複数のフィーダリンクモデル要素の動きを予測して生成し、前記判定部は、前記複数のフィーダリンクモデル要素の動きの予測結果に基づいて、前記フィーダリンク間の干渉の発生を予測してもよい。
ここで、前記飛行影響条件パラメータと前記通信中継装置の飛行経路との関係を示す過去データに基づいて、前記複数のフィーダリンクモデル要素の動き又は前記フィーダリンク間の干渉発生を予測してもよい。
【0010】
本発明の更に他の態様に係る干渉検知方法は、端末装置の無線通信を中継する中継通信局を含む移動可能な複数の空中滞在型の通信中継装置のフィーダリンク間の干渉を検知する干渉検知方法である。前記干渉検知方法は、前記複数の通信中継装置それぞれと無線通信する複数のゲートウェイ局の位置情報を記憶することと、前記複数の通信中継装置の現在位置の位置情報を取得することと、前記複数の通信中継装置の位置情報と前記複数のゲートウェイ局の位置情報とに基づいて、前記複数の通信中継装置について、3次元空間モデルにおける前記通信中継装置の位置に対応するフィーダリンク受信点と前記ゲートウェイ局の位置に対応するフィーダリンク送信点と前記フィーダリンク受信点及び前記フィーダリンク送信点を互いに結ぶ線分とを結合した複数のフィーダリンクモデル要素を生成することと、前記3次元空間モデル上で互いに異なる前記複数のフィーダリンクモデル要素の間における前記線分と前記フィーダリンク受信点との距離に基づいて前記フィーダリンク間の干渉の発生を判定することと、を含む。
【0011】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、端末装置の無線通信を中継する中継通信局を含む移動可能な複数の空中滞在型の通信中継装置のフィーダリンク間の干渉を検知する干渉検知システムに設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムである。前記プログラムは、前記複数の通信中継装置の位置情報と、前記複数の通信中継装置それぞれと無線通信する複数のゲートウェイ局の位置情報とに基づいて、前記複数の通信中継装置について、3次元空間モデルにおける前記通信中継装置の位置に対応するフィーダリンク受信点と前記ゲートウェイ局の位置に対応するフィーダリンク送信点と前記フィーダリンク受信点及び前記フィーダリンク送信点を互いに結ぶ線分とを結合した複数のフィーダリンクモデル要素を生成するためのプログラムコードと、前記3次元空間モデル上で互いに異なる前記複数のフィーダリンクモデル要素の間における前記線分と前記フィーダリンク受信点との距離に基づいて前記フィーダリンク間の干渉の発生を判定するためのプログラムコードと、を含む。
【0012】
本発明によれば、移動可能な空中浮揚型の通信中継装置が増えてきた場合に発生しやすい複数の通信中継装置のフィーダリンク間の干渉を検知(予測検知を含む)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る通信システムの一例を示す説明図。
図2】実施形態に係るHAPSの中継通信局の主要構成の一例を示すブロック図。
図3】実施形態に係る中央制御サーバの主要構成の一例を示す説明図。
図4】実施形態に係る中央制御サーバによる干渉検知の一例を示すフローチャート。
図5】(a)及び(b)は、図4の干渉検知に用いる3次元空間モデルにおける複数のHAPSに対応する複数のフィーダリンクモデル要素の一例を示す説明図。
図6】(a)~(c)は、図4の干渉検知に用いる3次元空間モデルにおける複数のHAPSに対応する複数のフィーダリンクモデル要素の他の例を示す説明図。
図7図6に例示するフィーダリンクモデル要素における球体の他の例を示す説明図。
図8図4の干渉検知に用いる3次元空間モデルにおける複数のHAPSに対応する複数のフィーダリンクモデル要素の更に他の例を示す説明図。
図9図4の干渉検知に用いる3次元空間モデルにおける複数のHAPSに対応する複数のフィーダリンクモデル要素の更に他の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムの一例を示す説明図である。本実施形態に係る通信システムは、多数の端末装置への同時接続や低遅延化などに対応する第5世代移動通信の3次元化ネットワークの実現に適する。
【0015】
図1に示すように、通信システムは、複数の空中浮揚型の通信中継装置(無線中継装置)としての複数の高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」、「成層圏プラットフォーム」ともいう。)20(1)~20(3)を備えている。HAPS20(1)~20(3)は、所定高度の空域に位置して、所定高度のセル形成目標空域に3次元セル(3次元エリア)を形成する。HAPS20(1)~20(3)は、自律制御又は外部から制御により地面又は海面から100[km]以下の高高度の空域(浮揚空域)に浮遊あるいは飛行して位置するように制御される浮揚体又は飛行体(例えば、飛行船、ソーラープレーン)に、中継通信局21(1)~21(3)が搭載されたものである。
【0016】
なお、図1の例では、HAPS20(1)及び20(2)が飛行船タイプのHAPSであり、ソーラープレーン型のHAPS(フィーダリンクなどの図示は省略)であり、3つのHAPS20(1)~20(3)が飛行している例を示しているが、HAPSの数は2又は4以上であってもよい。また、HAPSの種類は、飛行船及びソーラープレーンとは異なるタイプであってもよい。また、以下の説明において、複数のHAPS及びその中継通信局などを区別しない場合は、括弧付き数字を付けずにHAPS20、中継通信局21などと表記する。
【0017】
HAPS20の位置する空域は、例えば、地上(又は海や湖などの水上)の高度が11[km]以上及び50[km]以下の成層圏の空域である。この空域は、気象条件が比較的安定している高度15[km]以上25[km]以下の空域であってもよく、特に高度がほぼ20[km]の空域であってもよい。
【0018】
本実施形態の通信システムにおける1又は2以上のHAPS20で3次元セルを形成する目標の空域であるセル形成目標空域は、HAPS20が位置する空域と従来のマクロセル基地局等の基地局(例えばLTEのeNodeB)がカバーする地面近傍のセル形成領域との間に位置する、所定高度範囲(例えば、50[m]以上1000[m]以下の高度範囲)の空域である。
【0019】
なお、本実施形態の3次元セルが形成されるセル形成目標空域は、海、川又は湖の上空であってもよい。また、HAPS20で形成する3次元セルは、地上又は海上に位置する端末装置61との間でも通信できるよう地面又は海面に達するように形成してもよい。
【0020】
HAPS20の中継通信局21は、サービスリンク用アンテナ(以下「SLアンテナ」という。)により、移動局である端末装置61と無線通信するための複数のビームを地面に向けて形成する。端末装置61は、遠隔操縦可能な小型のヘリコプター等の航空機であるドローンに組み込まれた通信端末モジュールでもよいし、飛行機の中でユーザが使用するユーザ装置であってもよい。
【0021】
セル形成目標空域においてHAPS20が形成するサービスリンクのビームが通過する領域が3次元セルである。例えば、HAPS20(1)及び20(2)がそれぞれ形成するサービスリンクのビームが通過する領域が第1セル200C(1)及び第2セル200C(2)である。図1において、端末装置61(1)は第1セル200C(1)に在圏し、端末装置61(2)は第2セル200C(2)に在圏している。
【0022】
HAPS20の中継通信局21は、地上(又は海上)側の基地局75に接続された中継局(リピーター親機)としての複数のゲートウェイ局(「フィーダ局」ともいう。以下「GW局」という。)70と無線通信するリピーター子機である。例えば、HAPS20(1)の中継通信局21(1)は、基地局75(1)に接続されたGW局70(1)と無線通信するリピーター子機であり、HAPS20(2)の中継通信局21(2)は、基地局75(2)に接続されたGW局70(2)と無線通信するリピーター子機である。中継通信局21は、フィーダリンク用アンテナ(以下「FLアンテナ」という。)により無線通信可能な地上又は海上に設置されたGW局70及び基地局75を介して、移動通信網のコアネットワーク80に接続されている。各HAPSのGW局70は地上又は海上の互いに異なる地点に配置してもよいし、同一地点に配置してもよい。また、HAPS20の中継通信局21とGW局70との間のフィーダリンクの通信は、マイクロ波などの電波による無線通信で行ってもよいし、レーザ光などを用いた光通信で行ってもよい。
【0023】
GW局70は、空中で移動するHAPS20を追尾するように自局のアンテナ(以下「GWアンテナ」という。)71を制御してもよい。GWアンテナ71がHAPS20を追尾することにより、パラボラアンテナなどの高い指向性を有するGWアンテナ71を用いた場合でも、HAPS20の移動によるフィーダリンクの通信品質の低下を抑制できる。
【0024】
GWアンテナ71の指向性ビームの制御方式としては、ジンバル方式、電気方式(360度のビームフォーミング制御方式)、電気方式(角度限定のビームフォーミング制御方式+アンテナ切替)など、各種の方式を用いることができる。
【0025】
基地局75は、例えばLTEのeNodeBの場合、遠隔無線装置(RRH(Remote Radio Head)。RRU(Remote Radio Unit)ともいう。)76及びベースバンド処理装置(BBU(Base Band Unit))77で構成されている。なお、RRH76とBBU77とはそれぞれ、光ファイバー回線で接続し、互いに離して配置してもよい。また、複数のBBU77(1),77(2)は集約して一箇所に設けてもよい。
【0026】
RRH76は、例えば、直交変復調部と送信部と受信部と電力増幅器(PA(Power Amplifier))とローノイズ受信機(LNA(Low Noise Amplifier))とを備え、GW局70に接続されている。直交変復調部は、BBUで処理されるOFDM信号を直交変復調し、アナログ信号(RF信号)に変換する。送信部は、直交変復調部で生成されたRF信号の周波数を電波として送出する周波数に変換する。受信部は、受信した電波の高周波信号の周波数を直交変復調部で処理する周波数に変換する。電力増幅器(PA)は、送信部で生成したRF信号を電力増幅する。ローノイズ受信機(LNA)は、受信した微弱電波を増幅して受信部に渡す。
【0027】
BBU77は、例えば、基地局制御部と伝送路インターフェース部とタイミング制御部とベースバンド部とを備え、所定のインターフェース(例えば、S1インターフェース)を介して移動通信網のコアネットワーク80に接続されている。基地局制御部は、基地局全体の制御および呼制御のプロトコルや制御監視を行う。伝送路インターフェース部は、コアネットワーク等との間のイーサネット(登録商標)などのパケット伝送路が接続され、所定のプロトコルを処理してIPパケットの授受を行う。タイミング制御部は、パケット伝送路を介して受信した信号又は人工衛星からのGNSS(Global Navigation Satellite System)受信信号から抽出した基準クロックに基づいて基地局内部で使用する各種クロックを生成する。ベースバンド部は、伝送路インターフェース部を通して授受するIPパケットと無線信号であるOFDM信号(ベースバンド信号)の変換(変復調)を行う。
【0028】
HAPS20はそれぞれ、内部に組み込まれたコンピュータ等で構成された制御部が制御プログラムを実行することにより、HAPS自体の浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理を自律制御してもよい。例えば、HAPS20はそれぞれ、HAPS自体の現在位置情報(例えばGPS位置情報)、予め記憶した位置制御情報(例えば、飛行スケジュール情報)、周辺に位置する他のHAPSの位置情報などを取得し、それらの情報に基づいて浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理を自律制御してもよい。
【0029】
また、HAPS20それぞれの浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理は、移動通信網のコアネットワーク80に接続された通信センター等に設けられた遠隔制御装置としての中央制御サーバ85によって制御できるようにしてもよい。中央制御サーバ85は、例えば、プログラムを読み込んで実行可能なPCなどのコンピュータ装置やサーバ等で構成することができる。この場合、HAPS20は、中央制御サーバ85からの制御情報を受信したり中央制御サーバ85等の所定の送信先に監視情報などの各種情報を送信したりするための後述の制御通信部(例えば、移動通信モジュール)を備える。制御通信部は、中央制御サーバ85と間で通信できるように端末識別情報(例えば、IPアドレス、電話番号など)が割り当てられるようにしてもよい。HAPS20の制御通信部の識別には通信インターフェースのMACアドレスを用いてもよい。
【0030】
HAPS20と中央制御サーバ85との間の制御情報及び監視情報の送受信は、例えば、移動通信網のコアネットワーク80と基地局75とGW局70とを経由するLTEの通信回線を介して行うことができる。また、制御情報及び監視情報の送受信は、人工衛星を介した移動通信の衛星回線を用いて行ってもよいし、インターネット90と人工衛星とを介した衛星回線を用いて行ってもよい。
【0031】
HAPS20から送信する監視情報は、HAPS自体又は周辺のHAPSの浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理に関する情報、HAPS20がGW局70との間のフィーダリンクの受信電力を測定した受信モニタ情報、及び、HAPS20の状態に関する情報や各種センサなどで取得した観測データの情報の少なくとも一つを含んでもよい。また、監視情報は、HAPS20の現在位置及び姿勢情報、飛行経路情報(飛行スケジュール情報、飛行ルート履歴情報)、対気速度、対地速度及び推進方向、HAPS20の周辺の気流の風速及び風向、並びに、HAPS20の周辺の気圧及び気温の少なくとも一つの情報を含んでもよい。制御情報は、HAPS20の目標飛行ルート情報を含んでもよい。
【0032】
HAPS20及び中央制御サーバ85は、フィーダリンクの無線伝搬路を含むエリアの天気予報の情報、GW局70又は基地局75の保守予定情報、HAPS20で測定されたGW局70とのフィーダリンクの受信レベルモニタ情報、HAPS20の飛行経路情報、HAPS20の現在位置情報及び姿勢情報、並びにGW局70の位置情報を取得してもよい。これらの情報は、例えば、各情報を管理しているコアネットワーク(移動通信網)80のサーバ又はインターネット90のサーバから取得してもよい。また、中央制御サーバ85は、GW局70又は基地局75の保守予定情報を、所定のインターフェース(例えば、LTEのS1インターフェース)により移動通信網のコアネットワーク80を介してGW局70又は基地局75から取得してもよいし、GW局70又は基地局75を管理する管理サーバから取得してもよい。
【0033】
中継通信局21と端末装置61との無線通信の上りリンク及び下りリンクの複信方式は、特定の方式に限定されず、例えば、時分割複信(Time Division Duplex:TDD)方式でもよいし、周波数分割複信(Frequency Division Duplex:FDD)方式でもよい。また、中継通信局21と端末装置61との無線通信のアクセス方式は、特定の方式に限定されず、例えば、FDMA(Frequency Division Multiple Access)方式、TDMA(Time Division Multiple Access)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、又は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)であってもよい。また、前記無線通信には、ダイバーシティ・コーディング、送信ビームフォーミング、空間分割多重化(SDM:Spatial Division Multiplexing)等の機能を有し、送受信両方で複数のアンテナを同時に利用することにより、単位周波数当たりの伝送容量を増やすことができるMIMO(多入力多出力:Multi-Input and Multi-Output)技術を用いてもよい。また、前記MIMO技術は、1つの基地局が1つの端末装置と同一時刻・同一周波数で複数の信号を送信するSU-MIMO(Single-User MIMO)技術でもよいし、1つの基地局が複数の異なる端末装置に同一時刻・同一周波数で信号を送信又は複数の異なる基地局が1つの端末装置に同一時刻・同一周波数で信号を送信するMU-MIMO(Multi-User MIMO)技術であってもよい。
【0034】
なお、以下の実施形態では、端末装置61と無線通信する中継通信局21を有する通信中継装置が、無人飛行船タイプのHAPS20の場合について図示して説明するが、通信中継装置はソーラープレーンタイプのHAPSであってもよい。また、以下の実施形態は、HAPS以外の他の空中浮揚型の通信中継装置にも同様に適用できる。
【0035】
また、HAPS20とGW局70を介した基地局75との間のリンクを「フィーダリンク(FL)」といい、HAPS10と端末装置61との間のリンクを「サービスリンク(SL)」という。特に、HAPS20とGW局70との間の区間を「フィーダリンクの無線区間」という。また、GW局70からHAPS20を経由して端末装置61に向かう通信のダウンリンクを「フォワードリンク」といい、端末装置61からHAPS20を経由してGW局70に向かう通信のアップリンクを「リバースリンク」ともいう。
【0036】
図1において、HAPS20は、例えば高度が約20kmの成層圏に位置し、一つのGW局70との間に一つのフィーダリンクを形成し、HAPS20が一つのセル200Cを形成し、そのセル200Cのフットプリント200Fからなるサービスエリアの直径は例えば100~200kmであるが、これらに限定されるものではない。例えば、HAPS20で形成するセルの数は2以上であってもよい。また、HAPS20は、複数のGW局70との間に複数のフィーダリンクを形成してもよい。
【0037】
上記構成の本実施形態の通信システムにおいて、上空を移動可能なHAPS20が同じ共通エリアに増えてくると、各HAPS20の飛行経路及び利用周波数によっては、複数のHAPS20のフィーダリンク間で干渉が発生するおそれがある。例えば、共通エリアを飛行する複数のHAPS20のある一つのHAPSのフィーダリンク受信部が他のHAPS向けのフィーダリンクの信号も受信した場合、フィーダリンク間の干渉が発生するおそれがある。フィーダリンク間の干渉が発生すると、HAPS20フィーダリンクの無線通信品質が低下したり、フィーダリンクがきれたりするおそれがある。
【0038】
そこで、本実施形態の通信システムは、HAPS20及びGW局70の位置情報に基づいてHAPS20のフィーダリンク間の干渉の発生を検知(その干渉の予測検知の場合を含む)する干渉検知システムを備えている。なお、本実施形態では、中央制御サーバ85が干渉検知システムの機能を有している場合について説明するが、中央制御サーバ85とは別に、単一又は複数のコンピュータ装置からなる干渉検知システムを設けてもよい。また、干渉検知システムの機能は、HAPS20、GW局70及び基地局75のいずれかに組み込んでもよい。
【0039】
図2は、実施形態に係るHAPS20の中継通信局21の主要構成の一例を示す説明図である。図2において、中継通信局21は、フィーダリンク通信部221とサービスリンク通信部222と周波数変換部223と各部を制御する制御部224と制御通信部226を備える。
【0040】
フィーダリンク通信部221は、FLアンテナ211を介してGW局70との間でフィーダリンク周波数FFLの無線信号を送受信する。サービスリンク通信部222は、SLアンテナ115を介して端末装置61との間でサービスリンク周波数FSLの無線信号を送受信する。
【0041】
制御部224は、GW局70を追尾するようにFLアンテナ215を制御してもよい。FLアンテナ215がGW局70を追尾することにより、HAPS20の移動によるフィーダリンクの通信品質の低下を抑制できる。FLアンテナ215の指向性ビームの制御方式としては、ジンバル方式、電気方式(360度のビームフォーミング制御方式)、電気方式(角度限定のビームフォーミング制御方式+アンテナ切替)など、各種の方式を用いることができる。
【0042】
周波数変換部223は、フィーダリンク通信部221とサービスリンク通信部222との間でフィーダリンク周波数FFL図2中のF1)とサービスリンク周波数FSL図2中のF2)との周波数変換を行う。中継通信局21で中継される無線信号は、例えば、LTE又はLTE-Advancedの標準規格に準拠したOFMDA通信方式を用いて送受信してもよい。この場合は、無線信号の遅延が異なるマルチパスが発生しても良好な通信品質を維持できる。
【0043】
制御部224は、予め組み込まれたプログラムを実行することにより各部を制御することができる。
【0044】
制御通信部226は、例えば、LTE又は次世代(例えば第5世代)の通信機能、衛星通信機能又はその両方の通信機能を有する移動通信モジュールで構成され、中央制御サーバ85と間で通信できるように端末識別情報(例えば、IPアドレス、電話番号など)が割り当てられる。制御通信部226の識別には通信インターフェースのMACアドレスを用いてもよい。
【0045】
図3は、実施形態に係る中央制御サーバ85の主要構成の一例を示す説明図である。図3において、中央制御サーバ85は、情報記憶部851と情報取得部852と情報処理部853と出力部854とを備える。
【0046】
情報記憶部851は、複数のHAPS20それぞれと無線通信する複数のGW局70の位置情報を記憶する。
【0047】
情報取得部852は、複数のHAPS20の現在位置の位置情報を取得する。HAPS20からの情報の取得は、例えば、移動通信網のコアネットワーク80と基地局75とGW局70とを経由するLTEの通信回線を介して行うことができる。また、HAPS20からの情報の取得は、人工衛星を介した移動通信の衛星回線を用いて行ってもよいし、インターネット90と人工衛星とを介した衛星回線を用いて行ってもよい。また、HAPS20の位置情報は、コアネットワーク(移動通信網)80のサーバ又はインターネット90のサーバから取得してもよい。
【0048】
GW局70の位置情報及びHAPS20の位置情報は、例えば、座標原点を地球重心に置いた3次元直交座標系(例えば、ITRF(国際地球基準座標系))における座標(x,y,z)の情報である。位置情報は、所定の地球楕円体を基準とした地球座標系(「測地座標系」ともいう。)における経度、緯度、高さの情報であってもよいし、座標原点を地球重心に置いた極座標系における座標(r,θ,φ)の情報であってもよい。これらの複数種類の座標系の座標は相互に変換することができる。
【0049】
情報処理部853は、情報記憶部851に記憶されている情報と情報取得部852で取得された情報とに基づいて、複数のHAPS20のフィーダリンク間の干渉をリアルタイム検知(現在発生している干渉の検知)又は予測検知(発生が予測される干渉の検知)を行う。
【0050】
情報処理部853は、例えば、FLモデル要素生成部8531と、干渉判定部8532とを有する。FLモデル要素生成部8531は、複数のHAPS20の位置情報と複数のGW局70の位置情報とに基づいて、3次元空間モデルにおける複数のHAPS20に対応する複数のフィーダリンクモデル要素MEを計算して生成する。フィーダリンクモデル要素MEは、3次元空間モデルにおけるHAPS20の位置に対応するフィーダリンク受信点P21と、GW局70の位置に対応するフィーダリンク送信点P70と、フィーダリンク受信点P21及びフィーダリンク送信点P70を互いに結ぶ線分LSとを結合したモデル要素である。
【0051】
3次元空間モデルは、例えば、3次元直交座標系上で定義される空間モデルである。3次元空間モデルは、前述の地球座標系(測地座標系)又は極座標系で定義される空間モデルであってもよい。
【0052】
干渉判定部8532は、3次元空間モデル上で互いに異なる複数のフィーダリンクモデル要素(ME)の間における線分LSとフィーダリンク受信点P21との距離Dに基づいて、フィーダリンクFL間の干渉の発生を判定する。例えば、上記距離Dが所定の距離(例えば100m)以下になったときに、フィーダリンクFL間の干渉が発生している又は発生するおそれがあると判定する。
【0053】
出力部854は、干渉判定部8532での判定結果を表示部(例えば液晶ディスプレイ)などに出力する。出力部854は、上記複数のフィーダリンクモデル要素(ME)を有する3次元空間モデル及び干渉の発生状況などを表示部(例えば液晶ディスプレイ)などに出力して可視化したり、予め設定したオペレータの端末装置に送信して通知したりしてもよい。
【0054】
図4は、実施形態に係る中央制御サーバ85による干渉検知の一例を示すフローチャートである。図5(a)及び(b)は、図4の干渉検知に用いる3次元空間モデルにおける複数のHAPS20(1)及び20(2)に対応する複数のフィーダリンクモデル要素ME(1)及びME(2)の一例を示す説明図である。なお、図4及び図5は、HAPS及びフィーダリンクモデル要素の数が2の場合の例であるが、HAPS及びフィーダリンクモデル要素の数は3以上であってもよい。
【0055】
図4において、中央制御サーバ85は、GW局70(1)及び70(2)それぞれの位置情報を予め取得して記憶している。中央制御サーバ85は、所定のタイミングで定期的に又は非定期に、HAPS20(1)及び20(2)それぞれの現在位置の位置情報を取得して記憶する(S101)。
【0056】
次に、中央制御サーバ85は、GW局70(1)及び70(2)の位置情報と、HAPS20(1)及び20(2)の位置情報とに基づいて、例えば図5(a)及び(b)に示すように、3次元空間モデルにおける複数のHAPS20(1)及び20(2)に対応する複数のフィーダリンクモデル要素ME(1)及びME(2)を生成する(S102)。複数のフィーダリンクモデル要素ME(1),ME(2)はそれぞれ、HAPS20(1),20(2)の位置に対応するフィーダリンク受信点P21(1),P21(2)と、GW局70(1),70(2)の位置に対応するフィーダリンク送信点P70(1),P70(2)と、フィーダリンク受信点及びフィーダリンク送信点を互いに結ぶ線分LS(1),LS(2)とを結合したモデルエレメントである。
【0057】
次に、中央制御サーバ85は、3次元空間モデル上で互いに異なる複数のフィーダリンクモデル要素ME(1),ME(2)の間における線分LS(1),LS(2)とフィーダリンク受信点P21(1),P21(2)との距離に基づいてフィーダリンク間の干渉の発生を判定する(S103)。
【0058】
例えば、図5(a)の例では、フィーダリンクモデル要素ME(1),ME(2)の線分LS(1),LS(2)は互いに交差しているが、HAPS20(1)に対応する線分LS(1)はHAPS20(2)に対応するフィーダリンク受信点P21(2)に接触せず、HAPS20(2)に対応する線分LS(2)はHAPS20(1)に対応するフィーダリンク受信点P21(1)に接触していないので、フィーダリンク間の干渉は発生していないと判定する。
【0059】
一方、図5(b)の例では、HAPS20(1)に対応する線分LS(1)がHAPS20(2)に対応するフィーダリンク受信点P21(2)に接触しているので、フィーダリンク間の干渉が発生していると判定する。
【0060】
次に、中央制御サーバ85は、上記フィーダリンク間の干渉の発生の判定結果を出力する(S104)。例えば、上記複数のフィーダリンクモデル要素ME(1),ME(2)を有する3次元空間モデル及び干渉の発生の判定結果状況などを表示部(例えば液晶ディスプレイ)などに出力して可視化したり、予め設定したオペレータの端末装置に送信して通知したりする。
【0061】
図6(a)~(c)は、図4の干渉検知に用いる3次元空間モデルにおける複数のHAPS20(1)及び20(2)に対応する複数のフィーダリンクモデル要素ME(1)及びME(2)の他の例を示す説明図である。図示の例では、3次元空間モデルにおけるフィーダリンクモデル要素ME(1),ME(2)を、フィーダリンク受信点P21(1),P21(2)、フィーダリンク送信点P70(1),P70(2)及び線分LS(1),LS(2)に、フィーダリンク受信点P21(1),P21(2)を中心とした球体S21(1),S21(2)を更に結合して生成している。
【0062】
例えば、図6(a)の例では、フィーダリンクモデル要素ME(1),ME(2)の線分LS(1),LS(2)は互いに交差しているが、HAPS20(1)に対応する線分LS(1)及び球体S21(1)はHAPS20(2)に対応する球体S21(2)に接触せず、HAPS20(2)に対応する線分LS(2)及び球体S21(2)はHAPS20(1)に対応する球体S21(1)に接触していないので、フィーダリンク間の干渉は発生していないと判定する。
【0063】
図6(b)の例では、HAPS20(1)に対応する球体S21(1)がHAPS20(2)に対応する球体S21(2)に接触しているので、フィーダリンク間の干渉が発生していると判定する。また、図6(c)の例では、HAPS20(2)に対応する線分LS(2)がHAPS20(1)に対応する球体S21(1)に接触しているので、フィーダリンク間の干渉が発生していると判定する。
【0064】
図6(a)~(c)に例示する球体S21(1),S21(2)を有するフィーダリンクモデル要素ME(1)及びME(2)を用いることにより、フィーダリンク間の干渉を早期に検知することができる。
【0065】
図7は、図6(a)~(c)に例示するフィーダリンクモデル要素における球体の他の例を示す説明図である。図7の例では、球体S21(1),S21(1)’及びS21(1)’’に示すように、フィーダリンク間の干渉検知の要求感度に応じて、フィーダリンクモデル要素ME(1)の球体S21(1)の半径を変更している。例えば、フィーダリンク間の干渉検知の要求感度が標準的な感度の場合は、図中の標準的な半径(例えば100m)の球体S21(1)を有するフィーダリンクモデル要素ME(1)を生成し、より高い感度でフィーダリンク間の干渉を検知する場合は、標準的な球体S21(1)よりも大きな半径(例えば500m)の球体S21(1)’を有するフィーダリンクモデル要素ME(1)を生成する。一方、フィーダリンク間の干渉検知の感度を低くする場合は、標準的な球体S21(1)よりも小さな半径(例えば50m)の球体S21(1)’’を有するフィーダリンクモデル要素ME(1)又は球体を結合していないフィーダリンクモデル要素ME(1)を生成する。
【0066】
図8及び図9はそれぞれ、図4の干渉検知に用いる3次元空間モデルにおける複数のHAPS20(1)及び20(2)に対応する複数のフィーダリンクモデル要素ME(1),ME(2)の更に他の例を示す説明図である。フィーダリンクモデル要素ME(1),ME(2)の線分LS(1),LS(2)がそれぞれ、GW局70(1),70(2)からのフィーダリンクFL(1)、FL(2)の送信ビームに対応した形状を有することにより、フィーダリンク間の干渉発生の判定制度を高めることができる。
【0067】
例えば図8に示すように、フィーダリンクモデル要素ME(1),ME(2)の線分LS(1),LS(2)は、所定半径の円柱形状を有し、その中心軸の両端がそれぞれフィーダリンク受信点P21(1),P21(2)及びフィーダリンク送信点P70(1),P720(2)に位置するものであってもよい。図8の例では、HAPS20(2)に対応する円柱形状の線分LS(2)の外周面がHAPS20(1)に対応する球体S21(1)に接触しているので、フィーダリンク間の干渉が発生していると判定される。
【0068】
また、図9に示すように、フィーダリンクモデル要素ME(1),ME(2)の線分LS(1),LS(2)は、円錐形状(テーパー形状)を有し、その頂点がフィーダリンク送信点P70(1),P70(2)に位置し、その底面がフィーダリンク受信点P21(1),P21(2)に位置するものであってもよい。図9の例では、HAPS20(2)に対応する円錐形状(テーパー形状)の線分LS(2)の外周斜面がHAPS20(1)に対応する球体S21(1)に接触しているので、フィーダリンク間の干渉が発生していると判定される。
【0069】
なお、本実施形態において、中央制御サーバ85の情報処理部853におけるFLモデル要素生成部8531は、各HAPS20の飛行予定情報(飛行スケジュール情報、フライトプラン)、各HAPS20の飛行に影響する気象条件並びに各HAPS20の高度及び速度の少なくとも一つを含む飛行影響条件パラメータに基づいて、上記3次元空間モデルにおける複数のフィーダリンクモデル要素MEの動きを予測して生成してもよい。そして、干渉判定部8532は、複数のフィーダリンクモデル要素MEの動きの予測結果に基づいて、フィーダリンクFL間の干渉の発生を予測してもよい(干渉予測検知)。
【0070】
また、本実施形態において、中央制御サーバ85の情報処理部853におけるFLモデル要素生成部8531は、前記飛行影響条件パラメータとHAPS20の飛行経路(飛行スケジュール情報、フライトプラン等の飛行予定情報及び実際に飛行した飛行ルート情報)との関係を示す過去データに基づいて、複数のHAPSのフィーダリンクモデル要素MEの動きを予測して生成してもよい。例えば、飛行影響条件パラメータ(例えば、気象条件、各HAPS20の高度及び速度など)とHAPS20の飛行経路(目標飛行ルート情報及び実際に飛行した飛行ルート情報)との関係を示す多数の過去データを機械学習する。そして、機械学習で得られた学習済みモデルと、HAPS20の現在位置の情報と、現在の飛行影響条件パラメータと、HAPS20の飛行予定情報(飛行スケジュール情報、フライトプラン等)とに基づいて、複数のHAPSのフィーダリンクモデル要素MEの動きを予測して生成したり、上記フィーダリンク間の干渉発生の判定を行ったりしてもよい。機械学習のアルゴリズムとしては、例えば、教師あり学習、教師なし学習又は強化学習のアルゴリズムを用いることができる。また、機械学習のアルゴリズムは、サポートベクタマシン、ランダムフォレスト等の決定木、ニューラルネットワーク、深層学習などのアルゴリズムであってもよい。
【0071】
以上、本実施形態によれば、上空で移動するHAPS20が増えてきた場合に発生しやすい複数のHAPS20のフィーダリンクFL間の干渉を検知することができる。
【0072】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにHAPS等の通信中継装置の中継通信局、フィーダ局、ゲートウェイ局、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、基地局、基地局装置、RRH及びBBUの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0073】
ハードウェア実装については、実体(例えば、無線中継局、フィーダ局、ゲートウェイ局、基地局、基地局装置、無線中継局装置、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0074】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0075】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であれよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0076】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0077】
20 HAPS(通信中継装置)
21 中継通信局
61,61(1),61(2) 端末装置
70,70(1),70(2) ゲートウェイ局(GW局)
71,71(1),71(2) フィーダリンク用アンテナ(GWアンテナ)
75,75(1),75(2) 基地局
76,76(1),76(2) 遠隔無線装置(RRH)
77,77(1),77(2) ベースバンド処理装置(BBU)
85 中央制御サーバ
200C,200C(1),200C(2) 3次元セル
200F,200F(1),200F(2) フットプリント
211 フィーダリンク用アンテナ(FLアンテナ)
215 サービスリンク用アンテナ(SLアンテナ)
221 フィーダリンク通信部
222 サービスリンク通信部
223 周波数変換部
224 制御部
226 制御通信部
851 情報記憶部
852 情報取得部
853 情報処理部
8531 フィーダリンク(FL)モデル要素生成部
8532 干渉判定部
854 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9