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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
H02M3/28 C
H02M3/28 W
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019139202
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021023057
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】日本電産モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】北原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】諸星 拓也
(72)【発明者】
【氏名】川本 貴之
(72)【発明者】
【氏名】安田 政幸
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-008135(JP,A)
【文献】特開2015-089171(JP,A)
【文献】特開2010-148280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力された直流電圧を所定電圧値の直流電圧に変換する第1コンバータと、
前記入力端子に入力された直流電圧を前記所定電圧値と異なる電圧値の直流電圧に変換する第2コンバータと、
前記第1コンバータで変換された直流電圧が出力される第1出力端子と、
前記第2コンバータで変換された直流電圧が出力される第2出力端子と、
前記第1コンバータおよび前記第2コンバータのそれぞれの動作を制御する制御部と、
前記第1コンバータおよび前記制御部へ電源を供給する電源回路と、を備えたスイッチング電源装置において、
前記第1出力端子と前記制御部との間に設けられ、前記第1コンバータの出力電圧を検出する電圧検出回路と、
前記第2出力端子と前記電源回路との間に設けられ、前記制御部から出力されるバックアップ指令信号により動作して、前記第2コンバータの出力電圧をバックアップ用電源として前記電源回路へ供給するバックアップ制御回路と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1コンバータの出力電圧が前記第2コンバータの出力電圧より小さくなった時点では、前記バックアップ指令信号を出力せず、
前記第1コンバータの出力電圧が所定値未満となったことが前記電圧検出回路により検出されたことに基づいて、前記第1コンバータの動作を停止させ、
前記第1コンバータの動作が停止した時点またはその近傍の時点で、前記バックアップ指令信号を出力して前記バックアップ制御回路を動作させる、ことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、
前記電源回路は、
通常時は、前記バックアップ制御回路の非動作の下で、前記第1コンバータの出力電圧に基づいて、前記制御部へ電源を供給し、
前記第1コンバータの出力電圧が前記所定値未満になると、前記バックアップ制御回路の動作の下で、前記第2コンバータの出力電圧に基づいて、前記制御部および前記第1コンバータへ電源を供給する、ことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスイッチング電源装置において、
前記バックアップ制御回路は、
前記第2コンバータの出力電圧を前記電源回路へ供給する供給路を形成する第1スイッチング素子と、
前記制御部からの前記バックアップ指令信号によりオンして、第1スイッチング素子をオンさせる第2スイッチング素子と、を含むことを特徴とするスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を降圧または昇圧するDC-DCコンバータを備えたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば電気自動車やハイブリッドカーには、走行用モータを駆動するための高電圧バッテリが搭載されるとともに、このバッテリの電圧を降圧して各部へ供給するための電源装置が搭載される。この電源装置としては、直流電圧をスイッチングして交流電圧に変換し、この交流電圧を整流して所定の電圧値の直流電圧に変換するDC-DCコンバータを備えたスイッチング電源装置が一般に用いられている。このようなスイッチング電源装置は、たとえば特許文献1や特許文献2に記載されている。
【0003】
特許文献1のスイッチング電源装置は、スイッチング素子の駆動回路と、この駆動回路を制御する制御部と、駆動回路および制御部に電源電圧を供給する電源回路を備えている。電源回路は、高圧バッテリからの高電圧を、駆動回路の電源電圧である低電圧に変換して駆動回路へ供給するとともに、高圧バッテリからの高電圧および補機バッテリからの低電圧の少なくとも一方を、制御部の電源電圧である低電圧に変換して制御部へ供給する。
【0004】
特許文献2のスイッチング電源装置は、主電源とバックアップ電源とを備えている。主電源とバックアップ電源の設定電圧は同一となっている。通常時には、バックアップ電源は、主電源の出力よりも低い電圧で待機しており、負荷へ電力を供給しない。停電などで交流電圧の入力が停止した場合には、バックアップ電源を設定電圧で動作させて、負荷へ電力を供給するとともに、主電源を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-89171号公報
【文献】特開2011-24288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スイッチング電源装置には、異なる電圧を出力する2つのコンバータ(メインコンバータとサブコンバータ)を備え、通常時はメインコンバータの出力電圧を電源回路へ供給し、メインコンバータの出力電圧が低下すると、サブコンバータの出力電圧をバックアップ用電源として電源回路へ供給するようにしたものがある。このようなスイッチング電源装置においては、後で詳述するように、メインコンバータがスイッチング動作を行っている状態で、サブコンバータが電源のバックアップを行うと、サブコンバータでは出力電力が大きくなって発熱量が増大し、素子が熱破壊を起こすことがある。
【0007】
本発明の課題は、電源バックアップ時のコンバータの発熱を抑制して、素子の熱破壊を防止できるようにしたスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るスイッチング電源装置は、直流電圧が入力される入力端子と、この入力端子に入力された直流電圧を所定電圧値の直流電圧に変換する第1コンバータと、入力端子に入力された直流電圧を所定電圧値と異なる電圧値の直流電圧に変換する第2コンバータと、第1コンバータで変換された直流電圧が出力される第1出力端子と、第2コンバータで変換された直流電圧が出力される第2出力端子と、第1コンバータおよび第2コンバータのそれぞれの動作を制御する制御部と、第1コンバータおよび制御部へ電源を供給する電源回路と、第1出力端子と制御部との間に設けられ、第1コンバータの出力電圧を検出する電圧検出回路と、第2出力端子と電源回路との間に設けられ、制御部から出力されるバックアップ指令信号により動作して、第2コンバータの出力電圧をバックアップ用電源として電源回路へ供給するバックアップ制御回路とを備えている。制御部は、第1コンバータの出力電圧が第2コンバータの出力電圧より小さくなった時点では、バックアップ指令信号を出力せず、第1コンバータの出力電圧が所定値未満となったことが電圧検出回路により検出されたことに基づいて、第1コンバータの動作を停止させる。そして、この停止時点またはその近傍の時点で、制御部は、バックアップ指令信号を出力してバックアップ制御回路を動作させる。
【0009】
このようにすると、第1コンバータの出力電圧が第2コンバータの出力電圧未満となった時点では、第2コンバータによる電源バックアップは開始されず、その後に、第1コンバータがスイッチング動作を停止した時点(またはその近傍の時点)から、第2コンバータによる電源バックアップが開始される。このため、電源バックアップ時に、第2コンバータは、スイッチングのためのバックアップ用電源を第1コンバータへ供給する必要がないので、第2コンバータの出力電力を小さく抑えることができる。その結果、第2コンバータにおいては、発熱量が小さくなって、素子の熱破壊が生じるのを未然に防止することができる。
【0010】
本発明において、電源回路は、通常時は、バックアップ制御回路の非動作の下で、第1コンバータの出力電圧に基づいて制御部へ電源を供給し、第1コンバータの出力電圧が所定値未満になると、バックアップ制御回路の動作の下で、第2コンバータの出力電圧に基づいて制御部および第1コンバータへ電源を供給してもよい。
【0011】
本発明において、バックアップ制御回路は、第2コンバータの出力電圧を電源回路へ供給する供給路を形成する第1スイッチング素子と、制御部からのバックアップ指令信号によりオンして、第1スイッチング素子をオンさせる第2スイッチング素子とを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスイッチング電源装置によれば、電源バックアップ時のコンバータの発熱を抑制して、素子の熱破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のスイッチング電源装置の一例を示したブロック図である。
図2図1の要部の回路図である。
図3図2においてバックアップ指令信号が出力されていない場合の回路状態を示した図である。
図4図2においてバックアップ指令信号が出力されている場合の回路状態を示した図である。
図5】本発明における第1コンバータのスイッチング領域と、第2コンバータによる電源バックアップ領域との関係を示した図である。
図6】本発明のスイッチング電源装置の動作を示すタイムチャートである。
図7】同タイムチャートの他の例である。
図8】同タイムチャートの他の例である。
図9】従来のスイッチング電源装置の一例を示したブロック図である。
図10】従来における第1コンバータのスイッチング領域と、第2コンバータによる電源バックアップ領域との関係を示した図である。
図11】従来のスイッチング電源装置の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。以下では、自動四輪車などの車両に搭載されるスイッチング電源装置を例に挙げる。
【0015】
図1において、スイッチング電源装置100は、入力端子T1、T2と、出力端子T3、T4と、出力端子T5、T6と、第1コンバータ101と、第2コンバータ102とを備えている。
【0016】
第1コンバータ101は、メイン側のDC-DCコンバータ(メインコンバータ)であり、入力端子T1、T2に入力された直流電圧Viを所定電圧値の直流電圧V1に変換して、出力端子T3、T4へ出力する。第2コンバータ102は、サブ側のDC-DCコンバータ(サブコンバータ)であり、入力端子T1、T2に入力された直流電圧Viを前記所定電圧値と異なる電圧値の直流電圧V2に変換して、出力端子T5、T6へ出力する。出力端子T3、T4は、本発明における「第1出力端子」に相当し、出力端子T5、T6は、本発明における「第2出力端子」に相当する。
【0017】
一例として、入力端子T1、T2の入力電圧Viは200V、出力端子T3、T4の出力電圧V1は12V、出力端子T5、T6の出力電圧V2は10Vである。すなわち、本例の場合、第1コンバータ101と第2コンバータ102は、いずれも、高電圧を低電圧に変換する降圧型のDC-DCコンバータである。
【0018】
入力端子T1は、直流電圧Viを供給するバッテリ(図示省略)の正極に接続され、入力端子T2は、同バッテリの負極に接続される。出力端子T3、T4には、出力電圧V1を電源として作動する負荷や、出力電圧V1によって充電されるバッテリなどが接続される(図示省略)。出力端子T5、T6には、出力電圧V2を電源として作動する制御回路などが接続される(図示省略)。端子T1~T6のうち、出力端子T4と出力端子T6は、スイッチング電源装置100の外部において電気的に接続されて、共通のグランドに接地される(図示省略)。
【0019】
スイッチング電源装置100は、さらに、電圧検出回路6と、電源回路7と、バックアップ制御回路8と、制御部9と、ダイオードD1、D2とを備えている。
【0020】
電圧検出回路6は、出力端子T3と制御部9との間に設けられていて、第1コンバータ101の出力電圧V1を検出する。電源回路7は、バックアップ制御回路8と制御部9との間に設けられていて、通常時は、出力電圧V1に基づいて各コンバータ101、102と制御部9に電源電圧を供給する。バックアップ制御回路8は、出力端子T5と電源回路7との間に設けられていて、第1コンバータ101の出力電圧V1が、断線や故障により消失したり所定値未満まで低下したりした場合(異常時)に、第2コンバータ102の出力電圧V2を、バックアップ用電源として電源回路7へ供給する。
【0021】
ダイオードD1は、出力端子T3と電源回路7との間に設けられていて、通常時において、第1コンバータ101の出力電圧V1を電源回路7へ供給するための供給路を形成する。ダイオードD2は、バックアップ制御回路8と電源回路7との間に設けられていて、出力電圧V1の異常時に、バックアップ制御回路8からのバックアップ用電源(出力電圧V2)を電源回路7へ供給するための供給路を形成する。
【0022】
制御部9は、マイクロコンピュータから構成されており、第1コンバータ101、第2コンバータ102、およびバックアップ制御回路8の各動作を制御する。制御部9には、車載ECU(電子制御ユニット)などの外部装置から、外部信号として出力要求信号S1が入力される。この信号S1は、第2コンバータ102の動作を要求する信号である。また、制御部9は、出力要求信号S1を受けて、出力許可信号S2を第2コンバータ102へ出力する。この信号S2は、第2コンバータ102に対して動作を許可する信号である。さらに、制御部9は、出力電圧V1が所定値未満となったことが電圧検出回路6により検出された場合に、バックアップ指令信号S3をバックアップ制御回路8へ出力する。この信号S3は、バックアップ制御回路8に備わるスイッチング素子(後述)をオンさせるための信号である。
【0023】
メインコンバータである第1コンバータ101は、入力フィルタ1、スイッチング回路2、絶縁トランス3、整流回路4、および平滑回路5を備えている。これらの各部の構成は公知であり、また、第1コンバータ101自体は本発明と直接関係しないので、第1コンバータ101についての詳細な説明は割愛する。なお、本例の第1コンバータ101は、絶縁トランス3によって入力側と出力側が絶縁された、絶縁型のDC-DCコンバータである。
【0024】
サブコンバータである第2コンバータ102は、スイッチング回路20、絶縁トランス21、主巻線側の整流回路22、補助巻線側の整流回路23、絶縁回路26、PWM(Pulse Width Modulation)回路27、およびフィードバック回路28を備えている。第2コンバータ102は、前述したように、入力端子T1、T2に入力された直流電圧Viを降圧して出力する機能と、第1コンバータ101の出力異常時に制御部9へバックアップ用電源を供給する機能とを有している。本例の第2コンバータ102も、絶縁トランス21によって入力側と出力側が絶縁された、絶縁型のDC-DCコンバータである。なお、図1では、補助巻線側の整流回路23の後段の回路を省略してある。
【0025】
図2は、第2コンバータ102におけるスイッチング回路20、絶縁トランス21、および主巻線側の整流回路22の具体的な回路を示している。また、図2には、バックアップ制御回路8の具体的な回路も示されている。ここに示した回路は一例であって、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、図2においては、図1の第2コンバータ102を構成するブロックのうち、補助巻線側の整流回路23および絶縁回路26を省略してある。
【0026】
スイッチング回路20は、スイッチング素子Q3を有している。本例では、このスイッチング素子Q3はFET(電界効果トランジスタ)であり、絶縁トランス21の一次巻線Laとグランドとの間に接続されている。スイッチング素子Q3のゲートはPWM回路27に接続されており、PWM回路27からゲートに与えられるPWM信号により、スイッチング素子Q3はオンオフ動作を行う。
【0027】
絶縁トランス21は、一次巻線Laと、二次巻線Lb、Lcとを有している。二次巻線のうち、巻線Lbは主巻線であり、巻線Lcは補助巻線である。補助巻線Lcは本発明と直接関係しないため、巻線の後段の回路は省略してある。絶縁トランス21の一次側と二次側は、電気的に絶縁されている。一次巻線Laに印加される入力電圧Viは、スイッチング素子Q3のオンオフによりスイッチングされて交流電圧(パルス電圧)となり、絶縁トランス21の二次巻線Lb、Lcに伝達される。
【0028】
二次巻線Lbの後段に設けられた整流回路22は、ダイオードD4とコンデンサC1とを有している。ダイオードD4は、二次巻線Lbに生じる交流電圧を整流して、直流電圧にするための整流ダイオードである。コンデンサC1は、ダイオードD4で整流された直流電圧を平滑して、出力端子T5、T6から出力するための出力コンデンサである。ダイオードD4は、二次巻線Lbの一端と出力端子T5との間に接続されており、コンデンサC1は、出力端子T5、T6間に接続されている。
【0029】
バックアップ制御回路8は、第1トランジスタQ1と、第2トランジスタQ2と、抵抗R1とを有している。第1トランジスタQ1は、出力端子T5と電源回路7(図1)との間に設けられ、第2コンバータ102の出力電圧V2をバックアップ用電源として、電源回路7へ供給するための供給路を形成する。第2トランジスタQ2は、第1トランジスタQ1のベースとグランドとの間に設けられ、制御部9からのバックアップ指令信号S3によりオンして、第1トランジスタQ1をオンさせる。抵抗R1は、第1トランジスタQ1のベースに接続されたベース抵抗である。第1トランジスタQ1は、本発明における「第1スイッチング素子」に相当し、第2トランジスタQ2は、本発明における「第2スイッチング素子」に相当する。
【0030】
第1トランジスタQ1のエミッタは、出力端子T5に接続されている。第1トランジスタQ1のコレクタは、ダイオードD2を介して、電源回路7(図1)に接続されている。第1トランジスタQ1のベースは、抵抗R1を介して第2トランジスタQ2のコレクタに接続されている。第2トランジスタQ2のベースは、制御部9に接続されており、第2トランジスタQ2のエミッタは、グランドに接地されている。
【0031】
バックアップ制御回路8は、制御部9から出力されるバックアップ指令信号S3により動作する。詳しくは、図3に示すように、バックアップ指令信号S3が「L」(Low)の状態、すなわち制御部9からバックアップ指令信号S3が出力されていない場合は、バックアップ制御回路8の第2トランジスタQ2はオフであり、第1トランジスタQ1もオフとなっている。また、図4に示すように、バックアップ指令信号S3が「H」(High)の状態、すなわち制御部9からバックアップ指令信号S3が出力されている場合は、第2トランジスタQ2はオンとなり、第1トランジスタQ1もオンとなる。第1トランジスタQ1がオンすることにより、図4で太線の矢印で示すように、第2コンバータ102の出力電圧V2をバックアップ用電源として電源回路7へ供給する供給路(電源バックアップ経路)が形成される。電源バックアップの詳細については後述する。
【0032】
図1に戻って、絶縁回路26は、制御部9から出力された出力許可信号S2を電気的に絶縁しつつPWM回路27へ伝達する回路であって、アイソレータから構成される。
【0033】
PWM回路27は、絶縁回路26からの出力許可信号S2を受けて、所定のデューティを持ったPWM信号を生成し、これをスイッチング回路20へ出力する。このPWM信号は、前述のようにスイッチング素子Q3(図2)のゲートに与えられる。フィードバック回路28は、第2コンバータ102の出力電圧V2を目標値と比較し、出力電圧V2が目標値と一致するように、PWM回路27に対してフィードバック制御を行う。すなわち、出力電圧V2が目標値より高い場合は、PWM信号のデューティを下げ、出力電圧V2が目標値より低い場合は、PWM信号のデューティを上げるように、フィードバック制御が行われる。
【0034】
次に、以上の構成を備えたスイッチング電源装置100における、第2コンバータ102による電源バックアップの詳細について説明する。
【0035】
最初に、従来のスイッチング電源装置における電源バックアップ時の問題点を、図9図11に基づいて説明する。
【0036】
図9は、従来のスイッチング電源装置200の一例を示したブロック図である。図9において、図1と同一の部分または対応する部分には、図1と同一の符号を付してある。なお、図9では、第1コンバータ101と第2コンバータ102における各ブロックの図示を省略してある。
【0037】
図9のスイッチング電源装置200においては、電源回路7の入力側が、ダイオードD2を介して直接、出力端子T5に接続されており、本発明のようなバックアップ制御回路8(図1)は設けられていない。このため、第1コンバータ101の出力電圧V1が、第2コンバータ102の出力電圧V2未満になると(V1<V2)、ダイオードD2が順方向となって導通し、第2コンバータ102の出力電圧V2が、自動的にバックアップ用電源としてダイオードD2を介して電源回路7へ供給される。そして、電源回路7は、この出力電圧V2に基づいて、各コンバータ101、102のスイッチング動作に必要な電源と、制御部9の動作に必要な電源とを、バックアップ用電源として各コンバータ101、102および制御部9に供給する。スイッチング用電源の消費電力は、制御部用電源の消費電力に比べて、はるかに大きい。
【0038】
図10は、従来における第1コンバータ101のスイッチング領域と、第2コンバータ102による電源バックアップ領域との関係を示している。
【0039】
図10において、Vaは、第1コンバータ101がスイッチング動作を停止する場合の出力電圧の閾値を示し、Vbは、第1コンバータ101の出力電圧の上限値を示している。第1コンバータ101の出力電圧V1は、0~Vbの範囲で変動する。第1コンバータ101は、出力電圧V1がVa≦V1≦Vbの範囲にあるときは、スイッチング動作を行う。このときのスイッチング領域Va~Vbでは、スイッチング動作によって消費電力が大きくなる。
【0040】
一方、第2コンバータ102は、第1コンバータ101の出力電圧V1が第2コンバータ102の出力電圧V2未満になると(V1<V2)、ダイオードD2を介して、電源バックアップを行う。このときのバックアップ領域0~V2は、スイッチング領域Va~Vbの一部(Va~V2)と重複している。そして、この重複領域Va~V2では、電源回路7から第1コンバータ101へ供給されるバックアップ用電源は、第1コンバータ101のスイッチング動作に必要な電源なので、第2コンバータ102から電源回路7への供給電力が増大する。しかるに、サブコンバータである第2コンバータ102は、メインコンバータである第1コンバータ101とは異なり、もともと大電力を出力する仕様にはなっていない。このため、バックアップ用の供給電力が大きくなると、第2コンバータ102に大電流が流れて発熱量が増大し、素子が熱破壊するおそれがある。
【0041】
図11は、図9のスイッチング電源装置200の動作を示したタイムチャートである。図11において、(a)は第1コンバータ101と第2コンバータ102の各出力電圧V1、V2を示し、(b)は第1コンバータ101の消費電力を示し、(c)は第2コンバータ102の出力電力(バックアップ用)を示している。
【0042】
図11からわかるように、従来のスイッチング電源装置200では、第1コンバータ101の出力電圧V1が第2コンバータ102の出力電圧V2未満になった時点t1で、ダイオードD2(図9)が導通して第2コンバータ102による電源バックアップが開始される(図11(c))。そして、この時点t1から出力電圧V1が所定値Va未満となる時点t2までの間(t1~t2)は、第1コンバータ101がスイッチング動作を行うため、第1コンバータ101では消費電力の大きい状態が継続する(図11(b))。そして、この消費電力は、第2コンバータ102が供給するバックアップ用の電力で賄われるため、第2コンバータ102の出力電力も大きくなる(図11(c)の斜線部分)。t2の時点になると、第1コンバータ101のスイッチング動作が停止し、第1コンバータ101における消費電力が小さくなるので、第2コンバータ102の出力電力も小さくなる。
【0043】
このように、従来のスイッチング電源装置200の場合は、第2コンバータ102が電源バックアップを開始する時点t1では、第1コンバータ101がスイッチング動作を行っている状態にあるため、第1コンバータ101がスイッチング動作を停止するまでの間(t1~t2)、第2コンバータ102の出力電力が大きくなって、発熱による素子の熱破壊の問題が生じる。
【0044】
次に、本発明による上記問題点の解決策について、図5および図6を参照しながら説明する。
【0045】
本発明では、バックアップ制御回路8(図1)を設けることによって、図5に示すように、第2コンバータ102のバックアップ領域を、従来の0~V2(図10)から0~Vaに変更し、バックアップ領域が第1コンバータ101のスイッチング領域Va~Vbと重ならないようにしている。
【0046】
詳しくは、図6に示すように、第1コンバータ101の出力電圧V1が第2コンバータ102の出力電圧V2より小さくなった時点t1では、制御部9はバックアップ指令信号S3を出力せず、バックアップ指令信号S3は「L」となっている(図6(c))。したがって、図3に示すように、バックアップ制御回路8のトランジスタQ1、Q2はいずれもオフであり、バックアップ制御回路8は非動作状態であるので、第2コンバータ102の出力電圧V2は、バックアップ制御回路8を通って電源回路7へ供給されない。すなわち、第2コンバータ102は電源バックアップを行わない。このため、第1コンバータ101がスイッチング状態にあっても、第2コンバータ102の出力電力が増大することはない(図6(d))。
【0047】
その後、第1コンバータ101の出力電圧V1がさらに低下し続けて、一定時間X1後に、当該電圧V1が所定値Va未満となる時点t2に至ると、V1<Vaになったことが電圧検出回路6(図1)によって検出される。すると、制御部9は、図6(b)に示すように、第1コンバータ101のスイッチング動作を停止させると同時に、図6(c)に示すように、バックアップ指令信号S3を出力する。そして、バックアップ指令信号S3が「H」となることによって、図4に示すように、バックアップ制御回路8のトランジスタQ1、Q2がいずれもオンとなり、バックアップ制御回路8は動作状態となる。このため、第2コンバータ102の出力電圧V2は、図4に太線の矢印で示した電源バックアップ経路(第1トランジスタQ1およびダイオードD2)を通って、バックアップ用電源として図1の電源回路7へ供給される。
【0048】
図6において、電源バックアップが開始された時点t2以降は、第1コンバータ101がスイッチング動作を行わないため、図6(b)に示すように、第1コンバータ101の消費電力が小さくなり、これに応じて第2コンバータ102のバックアップ用の出力電力も、図6(d)に示すように小さくなる。
【0049】
このように、本発明のスイッチング電源装置100においては、バックアップ制御回路8によって、第1コンバータ101がスイッチング動作を停止した時点t2から、第2コンバータ102による電源バックアップが開始されるようにしている。このため、電源バックアップ時に、第2コンバータ102は、スイッチングのためのバックアップ用電源を第1コンバータ101へ供給する必要がないので、第2コンバータ102の出力電力を小さく抑えることができる。その結果、第2コンバータ102においては、発熱量が小さくなって、素子の熱破壊が生じるのを未然に防止することができる。
【0050】
本発明では、上述した実施形態以外にも、以下のような種々の実施形態を採用することができる。
【0051】
図6においては、V1<Vaとなった時点t2で、第1コンバータ101のスイッチング動作を停止させ、これと同時にバックアップ指令信号S3を出力するようにした(X1=t2-t1)。これに対して、図7(b)、(c)に示すように、V1<Vaとなった時点t2で、第1コンバータ101のスイッチング動作を停止させ、その直後にバックアップ指令信号S3を出力するようにしてもよい(X2>t2-t1)。また、図8(b)、(c)に示すように、第1コンバータ101のスイッチング動作が停止する時点t2の直前に、バックアップ指令信号S3を出力するようにしてもよい(X3<t2-t1)。すなわち、制御部9がバックアップ指令信号S3を出力するタイミングは、第1コンバータ101の動作が停止した時点か、その近傍の時点であればよい。
【0052】
前記実施形態では、第1コンバータ101と第2コンバータ102が共に降圧型のDC-DCコンバータである例を挙げたが、各コンバータ101、102は昇圧型のDC-DCコンバータであってもよい。また、各コンバータ101、102の一方が降圧型のDC-DCコンバータで、他方が昇圧型のDC-DCコンバータであってもよい。
【0053】
前記実施形態では、第1コンバータ101と第2コンバータ102が共に絶縁型のDC-DCコンバータである例を挙げたが、各コンバータ101、102は非絶縁型のDC-DCコンバータであってもよい。
【0054】
前記実施形態では、図1に示したように、電圧検出回路6と電源回路7が制御部9と別に設けられているが、電圧検出回路6と電源回路7を制御部9に組み込んでもよい。
【0055】
前記実施形態では、第1コンバータ101の電源と第2コンバータ102の電源を、ともに電源回路7から供給するようにしたが、第2コンバータ102の電源は、電源回路7とは別の電源回路から供給してもよい。
【0056】
前記実施形態では、スイッチング回路20を駆動する駆動回路として、PWM回路27を例に挙げたが、PWM以外の方式によりスイッチング回路20を駆動する駆動回路を設けてもよい。
【0057】
前記実施形態では、バックアップ制御回路8に備わるスイッチング素子として、トランジスタQ1、Q2を例に挙げたが、トランジスタに代えてFETやリレーなどを用いてもよい。
【0058】
前記実施形態では、車両に搭載されるスイッチング電源装置100を例に挙げたが、本発明のスイッチング電源装置は、車載以外の用途にも適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
6 電圧検出回路
7 電源回路
8 バックアップ制御回路
9 制御部
100 スイッチング電源装置
101 第1コンバータ
102 第2コンバータ
T1、T2 入力端子
T3、T4 出力端子(第1出力端子)
T5、T6 出力端子(第2出力端子)
Q1 第1トランジスタ(第1スイッチング素子)
Q2 第2トランジスタ(第2スイッチング素子)
S3 バックアップ指令信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11