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特許7184712半導体製造装置用セラミック部品、および静電チャック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】半導体製造装置用セラミック部品、および静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20221129BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20221129BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20221129BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H02N13/00 D
H05H1/46 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019139660
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021022690
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100144510
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 真由
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-523042(JP,A)
【文献】特開2016-108371(JP,A)
【文献】特開2007-254164(JP,A)
【文献】特開2004-281680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H02N 13/00
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置用セラミック部品であって、
セラミックを主成分とし、プラズマが照射される被照射面を有する第1セラミック部と、
前記セラミックを主成分とし、第1の方向において、前記第1セラミック部に対して、前記第1セラミック部の前記被照射面とは反対側に配置された第2セラミック部と、
前記セラミックを主成分とし、前記第1セラミック部と前記第2セラミック部との間に配置された第3セラミック部であって、プラズマが照射されることにより変色するプラズマ検出部が少なくとも一部に形成された第3セラミック部と、
を備え、
前記プラズマ検出部は、
前記セラミックを主成分とするセラミック粒子と、前記セラミック粒子間の粒界に存在する金属酸化物粒子と、を有し、
前記金属酸化物粒子は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、スズ(Sn)、バナジウム(V)、セリウム(Ce)、テルル(Te)およびビスマス(Bi)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物を含むことを特徴とする、
半導体製造装置用セラミック部品。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体製造装置用セラミック部品であって、
前記金属酸化物粒子の平均粒径が10μm以下であることを特徴とする、
半導体製造装置用セラミック部品。
【請求項3】
請求項1および請求項2のいずれか一項に記載の半導体製造装置用セラミック部品であって、
前記セラミック粒子の平均粒径が5μm以下であることを特徴とする、
半導体製造装置用セラミック部品。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体製造装置用セラミック部品であって、
前記第1セラミック部のセラミック純度は、前記第3セラミック部のセラミック純度より高いことを特徴とする、
半導体製造装置用セラミック部品。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体製造装置用セラミック部品であって、
前記プラズマ検出部は、前記第3セラミック部のうち、前記第1の方向に対して略直交する方向である第2の方向における周縁から所定の距離を離して形成されていることを特徴とする、
半導体製造装置用セラミック部品。
【請求項6】
静電チャックであって、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の半導体製造装置用セラミック部品と、
前記半導体製造装置用セラミック部品に対して、前記第1の方向において、前記第1セラミック部の前記被照射面とは反対側に接合された金属部と、
前記半導体製造装置用セラミック部品の前記第2セラミック部の内部に配置されたチャック電極と、
を備えることを特徴とする、
静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用セラミック部品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置用部品は、半導体ウェハにエッチング加工を行う際に、プラズマ環境で使われるため、使用とともに劣化する。そのため、半導体製造装置用部品の劣化を検知して、交換時期を把握することが求められている。これに対し、従来、半導体製造装置用部品の劣化を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2010/021317号
【文献】特表2007-520077号公報
【文献】特表2007-511089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載の技術では、測定装置の使用等による高コスト化、劣化検出の煩雑化の虞がある。そのため、例えば、目視のように簡便な手法で劣化を検出し交換時期を把握する技術が望まれている。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、半導体製造装置用部品の劣化を容易に検出可能な他の技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、半導体製造装置用セラミック部品が提供される。この半導体製造装置用セラミック部品は、セラミックを主成分とし、プラズマが照射される被照射面を有する第1セラミック部と、前記セラミックを主成分とし、第1の方向において、前記第1セラミック部に対して、前記第1セラミック部の前記被照射面とは反対側に配置された第2セラミック部と、前記セラミックを主成分とし、前記第1セラミック部と前記第2セラミック部との間に配置された第3セラミック部であって、プラズマが照射されることにより変色するプラズマ検出部が少なくとも一部に形成された第3セラミック部と、を備え、前記プラズマ検出部は、前記セラミックを主成分とするセラミック粒子と、前記セラミック粒子間の粒界に存在する金属酸化物粒子と、を有し、前記金属酸化物粒子は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、スズ(Sn)、バナジウム(V)、セリウム(Ce)、テルル(Te)およびビスマス(Bi)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物を含む。
【0008】
この構成によれば、第1セラミック部の被照射面とは反対側に、プラズマ検出部を備える第3セラミック部が配置されるため、被照射面にプラズマが照射されることにより第1セラミック部が劣化、摩耗すると、プラズマ検出部が露出する。プラズマ検出部は、プラズマが照射されることにより変色するため、使用者は、目視により半導体製造装置用セラミック部品の劣化(割れ、欠け等の発生)、摩耗を、容易に検出することができる。そのため、半導体製造装置用セラミック部品の交換時期を、容易に判定することができる。また、プラズマ検出部において、金属酸化物粒子が、セラミック粒子間の粒界に存在するため、金属酸化物粒子が粉の状態で、例えば、第1セラミック部の表面に存在する場合と比較して揮散しにくく、半導体製造装置内部への揮散と、半導体ウェハ等の汚染を抑制することができる。
【0009】
(2)上記形態の半導体製造装置用セラミック部品であって、前記金属酸化物粒子の平均粒径が10μm以下でもよい。このようにすると、金属酸化物粒子の比表面積が大きくでき、変色の度合いが大きくなるため、少量の金属酸化物粒子でも、変色を判別し易くなる。そのため、金属酸化物粒子の含有量を低減させることができる。
【0010】
(3)上記形態の半導体製造装置用セラミック部品であって、前記セラミック粒子の平均粒径が5μm以下でもよい。このようにすると、気孔の少ない緻密体を得ることができるため、半導体製造装置用セラミック部品の耐摩耗性を向上させることができる。
【0011】
(4)上記形態の半導体製造装置用セラミック部品であって、前記第1セラミック部のセラミック純度は、前記第3セラミック部のセラミック純度より高くてもよい。このようにすると、プラズマが照射される被照射面を有する第1セラミック部の耐久性がより高くなるため、半導体製造装置用セラミック部品の劣化、摩耗を、より抑制することができる。そして半導体製造装置用セラミック部品からの微小なセラミック粒子であるパーティクルの発生が少なくなり、半導体製造装置内部への揮散と、半導体ウェハ等の汚染を抑制することができる。
【0012】
(5)上記形態の半導体製造装置用セラミック部品であって、前記プラズマ検出部は、前記第3セラミック部のうち、前記第1の方向に対して略直交する方向である第2の方向における周縁から所定の距離を離して形成されていてもよい。このようにすると、半導体製造装置用セラミック部品の周縁部の劣化、摩耗も検出することができる。
【0013】
(6)本発明の他の形態によれば静電チャックが提供される。この静電チャックは、上記形態の半導体製造装置用セラミック部品と、前記半導体製造装置用セラミック部品に対して、前記第1の方向において、前記第1セラミック部の前記被照射面とは反対側に接合された金属部と、前記半導体製造装置用セラミック部品の前記第2セラミック部の内部に配置されたチャック電極と、を備える。この構成によれば、静電チャックが備える半導体製造装置用セラミック部品の劣化、摩耗を、容易に検出することができる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、半導体製造装置用セラミック部品を含む半導体製造装置、半導体製造装置用セラミック部品の製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態における静電チャックの外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2】実施形態におけるセラミック部品のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図3】プラズマ検出部の断面構成を模式的に示す説明図である。
図4】金属酸化物の変色の一例を示す図である。
図5】インターセプト法を説明するためのプラズマ検出部の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像の模式図である。
図6】インターセプト法を説明するための説明図である。
図7】第2実施形態におけるセラミック部品のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図8】第3セラミック部の平面構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態における静電チャック10の外観構成を概略的に示す斜視図である。図1には、方向を特定するために、互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック10は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。また、以下の説明において、Z軸方向を第1の方向、X軸方向を第2の方向とも呼ぶ。
【0017】
静電チャック10は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック10は、第1の方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置されたセラミック部品100および金属部200を備える。セラミック部品100と金属部200とは、セラミック部100の下面S2(後述する図2参照)と金属部200の上面S3とが第1の方向に対向するように配置される。セラミック部品100と金属部200とは、接着層300によって互いに接合されている。本実施形態におけるセラミック部品100を、「半導体製造装置用セラミック部品」とも呼ぶ。
【0018】
セラミック部品100は、略円形平面状の被照射面S1を有する板状部材であり、主に、セラミック(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。セラミック部品100の直径は、例えば、50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、セラミック部品100の厚さは例えば1mm~10mm程度である。
【0019】
金属部200は、セラミック部品100より径が大きい略円形平面の板状部材であり、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等により形成されている。金属部200の直径は、例えば、220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、金属部200の厚さは、例えば、20mm~40mm程度である。
【0020】
金属部200の内部には冷媒流路(不図示)が形成されている。冷媒流路に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、金属部200が冷却され、接着層300を介した金属部200とセラミック部品100との間の伝熱によりセラミック部品100が冷却され、セラミック部品100の被照射面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度制御が実現される。
【0021】
セラミック部品100と金属部200とは、上述の通り、セラミック部品100の下面S2と金属部200の上面S3との間に配置された接着層300によって互いに接合されている。接着層300は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。接着層300の厚さは、例えば0.1mm~1mm程度である。
【0022】
図2は、実施形態におけるセラミック部品100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。図2において、Y軸正方向は、紙面裏側に向かう方向である。セラミック部品100は、被照射面S1を有する第1セラミック部102と、第1の方向(図2におけるZ軸方向)において、第1セラミック部102に対して、第1セラミック部102の被照射面S1とは反対側に配置された第2セラミック部104と、第1セラミック部102と第2セラミック部104との間に配置された第3セラミック部108と、を備える。第1セラミック部102、第2セラミック部104、および第3セラミック部108は、それぞれ、同一のセラミックを主成分とする材料から形成された略円形平面の板状部材である。
【0023】
第2セラミック部104の内部には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成されたチャック電極400が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極400の形状は、例えば略円形である。チャック電極400に電源(不図示)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWがセラミック部品100の被照射面S1に吸着固定される。
【0024】
第3セラミック部108は、プラズマが照射されることにより変色するプラズマ検出部106が、その全部に、形成されている。換言すると、第3セラミック部108は、プラズマ検出部106である。
【0025】
第1セラミック部102の厚さT1は、5μm以上100μm以下が好ましい。セラミック部品100において、被照射面S1から5μm以上(図2におけるZ軸負の方向)の範囲の劣化、摩耗が生じると、不具合が生じる可能性が高いため、5μm以上の劣化を早期に検出したいという要望があるためである。また、第1セラミック部102の厚さT1を100μm以上とすると、セラミック部品100が被照射面S1から100μm以上摩耗しなければ検出できないためである。
【0026】
プラズマ検出部106(第3セラミック部108)の厚さT2は、5μm以上が好ましい。プラズマ検出部106の厚さT2を、5μm以上とすると、プラズマ検出部106を容易に作製可能であり、また、変色を容易に判別することができる。また、プラズマ検出部106の厚さT2が100μmあれば、十分の変色を判別することができるため、プラズマ検出部106の厚さT2を、100μm以下にするのが好ましい。
【0027】
本実施形態のセラミック部品100において、第1セラミック部102のセラミック純度は、第3セラミック部108のセラミック純度より高い。プラズマが照射される被照射面S1を有する第1セラミック部102の硬度がより高くなるため、セラミック部品100の劣化、摩耗を抑制することができる。
【0028】
図3は、プラズマ検出部106の断面構成を模式的に示す説明図である。図示するように、プラズマ検出部106は、第1セラミック部102の主成分のセラミックと同一のセラミック(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)を主成分とするセラミック粒子116と、セラミック粒子間の粒界に存在する金属酸化物粒子126と、を有する。図3において、複数のセラミック粒子116および複数の金属酸化物粒子126のうち、一部に符号を付して、符号の記載を省略している。図3において、黒塗りの粒子が金属酸化物粒子126であり、他の粒子がセラミック粒子116である。金属酸化物粒子126は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、スズ(Sn)、バナジウム(V)、セリウム(Ce)、テルル(Te)およびビスマス(Bi)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物を含む。これらの金属酸化物にプラズマが照射されると、金属酸化物の価数が変化することにより化学的に変色する。そのため、金属酸化物粒子126が含有されたプラズマ検出部106に、プラズマが照射されると、プラズマ検出部106が変色する。なお、モリブデン(Mo)、およびタングステン(W)は、導体層に用いられるため、スズ(Sn)、バナジウム(V)、セリウム(Ce)、テルル(Te)およびビスマス(Bi)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物を用いるのが好ましい。
【0029】
図4は、金属酸化物の変色の一例を示す図である。図4では、各金属酸化物の変色前の色と変色後の色を示している。変色後の色としては、金属酸化物が部分的に変色することによる変色前の色との混色の可能性もある。セラミック部品100の製造において、配線、チャック電極などの導体層を同時焼成するために還元雰囲気で焼成するため、金属酸化物中の各元素は、低価数が多い状態で存在する。金属酸化物にプラズマが照射されると、金属酸化物中の元素の価数が高価数に変化することにより、図示するように変色する。セラミック部品100の主成分のセラミックの色は、例えば、アルミナは白、窒化アルミニウムは灰白色である。そのため、変色後の色と、第1セラミック部102の色とを、区別することができる。
【0030】
プラズマ検出部106のセラミック粒子116の平均粒径は、5μm以下である。そのため、プラズマ検出部106を気孔が少ない緻密体とすることができ、耐摩耗性を向上させることができる。同様に、第1セラミック部102および第2セラミック部104を構成するセラミック粒子も、その平均粒径は、5μm以下である。そのため、セラミック部品100の耐摩耗性を向上させることができる。
【0031】
プラズマ検出部106の金属酸化物粒子126の平均粒径は、1μm以下である。金属酸化物粒子126の平均粒径が小さいと、比表面積が大きくなり、変色の度合いが大きくなるため、少量の金属酸化物粒子で半導体製造装置用セラミック部品の劣化を検出することができる。そのため、金属酸化物粒子の含有量を低減させることができる。以下に、図5図6を用いて、セラミック粒子の平均粒径、および金属酸化物粒子の平均粒径の算出方法を説明する。
【0032】
図5は、インターセプト法を説明するためのプラズマ検出部の断面のSEM画像の模式図である。図6は、インターセプト法を説明するための説明図である。本実施形態のプラズマ検出部106に相当する測定用セラミックを破断し、その破断面を用いて、以下の方法で、平均粒径を算出した。
【0033】
まず、測定用セラミックの破断面を鏡面研磨した後、焼結温度以下の温度で熱エッチングを行った。その後、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて、破断面を観察した。熱エッチングにより、界面エネルギーに起因して粒界に沿って溝が形成され、粒子が明瞭に観察できるようになる。熱エッチングの温度が、焼成温度より高いと、焼結による粒成長が起こる可能性もあるため、焼成温度より低い温度で熱エッチングをするのが好ましい。例えば1550℃で焼成した場合は、1350℃で熱エッチングをすることができる。
【0034】
観察したSEM画像からインターセプト法に基づいて、金属酸化物粒子の平均粒径と、セラミック粒子116の平均粒径を算出した。以下、インターセプト法について詳述する。まず、取得したSEM画像において、複数の基準線L1を設定する(図5)。次に、設定した基準線L1が各粒子を横切る長さ(以下、コード長さL2とも呼ぶ)を、SEM画像に表示されるスケールを基準にして測定する。図6に、コード長さL2の一例を示す。基準線L1上のすべての粒子についてコード長さL2を測定し、その長さの合計を、測定したコードの数で除することによりコード長さL2の平均値を算出する。粒子をいずれも略球形状であると仮定し、コード長さの平均値を1.5倍することで得られた値を、セラミック粒子116および金属酸化物粒子126それぞれの平均粒径とする。本実施形態では、観察視野13μm×10μm(図5)に含まれる粒子を用いて、平均粒径を算出した。
【0035】
プラズマにより変色する金属酸化物成分を含む粒子と、その金属酸化物を含まない粒子の区別は、SEM画像での明るさの違いにより判別することができる。SEM画像のうち、二次電子像により取得した画像よりも反射電子像により取得した画像の方がより容易に、金属酸化物を含む粒子と、金属酸化物を含まない粒子とを区別可能である。反射電子は試料を構成する元素により発生量が異なり、原子番号が大きいほど発生量が多くなる性質を持っているため、明るく観察されるためである。明るさが不明瞭な場合は、プラズマにより変色する金属成分の特性X線の面分析を行うことで、成分を含む粒子と含まない粒子を区別してもよい。
【0036】
本実施形態のセラミック部品100は、グリーンシートの積層、ホットプレス、ゲルキャスト成形、顆粒のプレス、またはこれらの組み合わせなど、公知の種々の製造方法によって製造することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の静電チャック10によれば、セラミック部品100において、第1セラミック部102の被照射面S1とは反対側に、プラズマ検出部106を備える第3セラミック部108が配置されるため、被照射面S1にプラズマが照射されることにより第1セラミック部102が劣化、摩耗すると、プラズマ検出部106が露出する。プラズマ検出部106は、プラズマが照射されることにより変色するため、使用者は、目視によりセラミック部品100の劣化(割れ、欠け等の発生)、摩耗を検出することができる。そのため、セラミック部品100の交換時期を、容易に判定することができる。
【0038】
セラミック部品100の表面(被照射面S1)にプラズマが照射されることにより、セラミック(例えば、アルミナ)の脱落、摩耗が生じ、表面の平坦性が変化すると、以下の不具合が生じる虞がある。本実施形態のセラミック部品100を用いると、上記の通り、セラミック部品100の交換時期を容易に判断することができるため、適時にセラミック部品100を交換することにより、下記の不具合の発生を抑制することができる。
・セラミック部品100の温度分布の不均一化
・ウェハW(載置物)とセラミック部品100との間の密着性の面内ばらつきの増加によるガスのリーク量の増加
・ウェハW(載置物)とセラミック部品100との間の密着性の面内ばらつきの増加による、ウェハWとセラミック部品100との間の熱伝達の変化と面内での不均一化、ひいてはウェハ温度の変化と面内での不均一化、ウェハ加工速度の変化と面内ばらつきの増加(いずれも平均値が変化し、ばらつきも増加してしまう)
・セラミック部品100へのウェハWの吸着力の変化
・ウェハWを静電チャック10から取り外す時の静電気除去の遅れによる、交換に要する時間の増加
【0039】
また、プラズマ検出部106において、金属酸化物粒子126が、セラミック粒子116間の粒界に存在する。そのため、金属酸化物粒子が粉の状態で存在する場合、例えば、第1セラミック部102の下面(図2において、第3セラミック部108と接触する面)に金属酸化物粒子を塗布する場合等と比較して、金属酸化物粒子126が揮散しにくく、半導体装置内部への揮散と、ウェハW等の汚染を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態のセラミック部品100において、プラズマ検出部106に含まれる金属酸化物粒子126の平均粒径が1μm以下であるため、金属酸化物粒子126の比表面積が大きく、変色の度合いが大きい。そのため、少量の金属酸化物粒子126でも、変色を判別し易いため、金属酸化物粒子126の含有量を低減させることができる。
【0041】
また、プラズマ検出部106に含まれるセラミック粒子116の平均粒径が5μm以下であるため、プラズマ検出部106を気孔の少ない緻密体にすることができ、耐摩耗性を向上させることができる。また、同様に、第1セラミック部102および第2セラミック部104を構成するセラミック粒子も、その平均粒径は、5μm以下であるため、セラミック部品100の耐摩耗性を向上させることができる。
【0042】
また、プラズマ検出部106に含まれる金属元素は、磁化率が金属元素ごとに異なるため、セラミック部品100の最表面(プラズマが照射される面)にプラズマ検出部106が配置されると、プラズマの状態に影響するおそれがある。これに対し、本実施形態のセラミック部品100によれば、プラズマ検出部106(第3セラミック部108)が、第1セラミック部102と第2セラミック部104の間に配置されているため、プラズマの状態への影響を抑制することができる。
【0043】
また、プラズマ検出部106が、第1セラミック部102と第2セラミック部104の間に配置されているため、導電性の金属酸化物粒子が加工中のウェハWに付着することによる、ショート等の不良を抑制することができる。図4記載の金属酸化物の中には、例えばSnO2のように導電性を示すものも存在する。
【0044】
また、第1セラミック部102のセラミック純度が、第3セラミック部108のセラミック純度より高いため、プラズマが照射される被照射面S1を有する第1セラミック部102の耐久性がより高くなり、セラミック部品100の劣化、摩耗を抑制することができる。そして、セラミック部品100からのパーティクルの発生が少なくなり、半導体製造装置内部への揮散と、ウェハW等の汚染を抑制することができる。
【0045】
また、例えば、チャック電極400が第3セラミック部108より被照射面S1側にある場合には、第1セラミック部102が被照射面S1側から劣化、摩耗していくと、プラズマ検出部106よりもチャック電極400が先に露出するため、半導体製造装置として機能しなくなってしまう。これに対し、本実施形態の静電チャック10によれば、第1セラミック部102ではなく、第2セラミック部104にチャック電極400を入れているため、半導体製造装置としての機能を維持しつつ、セラミック部品100の劣化を検出することができる。
【0046】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態におけるセラミック部品100AのXZ断面構成を概略的に示す説明図である。図7において、Y軸正方向は、紙面裏側に向かう方向である。図8は、第3セラミック部108Aの平面構成を概略的に示す説明図である。図8において、Z軸正方向は、紙面表側に向かう方向である。本実施形態のセラミック部品100Aは、第1実施形態の第3セラミック部108に換えて第3セラミック部108Aを用いている。第1実施形態のセラミック部品100と同一の構成には同一の符号付し、先行する説明を参照する。
【0047】
図示するように、本実施形態の第3セラミック部108Aは、その一部にプラズマ検出部106Aが形成されている。プラズマ検出部106Aは、第3セラミック部108Aのうち、第2の方向(図7図8におけるX軸方向)における周縁108AR(図7図8)から距離L3を離して形成されている。すなわち、プラズマ検出部106は、第3セラミック部108Aより径が小さい略円形平面の板状部材である。プラズマ検出部106Aは、第1実施形態のプラズマ検出部106と、形状(大きさ)が異なるものの、その構成は、第1実施形態のプラズマ検出部106と同様である。
【0048】
半導体製造装置用セラミック部品は、被照射面だけでなく周縁部もわずかながら劣化することが知られている。本実施形態の第3セラミック部108Aによれば、プラズマ検出部106Aが第3セラミック部108Aの周縁108ARから距離L3を離して形成されているため、さらに、セラミック部品100Aの周縁部の劣化、摩耗も検出することができる。そのため、セラミック部品100Aを適時に交換することが可能となる。かつ、セラミック部品100Aの側面から半導体製造装置内部への金属酸化物微粒子の揮散と、ウェハW等の汚染を抑制することができる。
【0049】
距離L3は、5μm以上100μm以下が好ましい。セラミック部品100Aにおいて、周縁108ARから5μm以上の範囲(図7図8における周縁108ARから中心への方向)において劣化、摩耗が生じると、不具合が生じる可能性が高いため、5μm以上の劣化を早期に検出したいという要望があるためである。また、距離L3を100μm以上とすると、セラミック部品100が周縁108ARから100μm以上摩耗しなければ検出できないためである。
【0050】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0051】
・上記実施形態の静電チャック10において、さらに、セラミック部品100の内部に、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成された抵抗発熱体で構成された複数のヒータ電極を備える構成にしてもよい。このようにすると、ヒータ電極が発熱することによってセラミック部品100が温められ、セラミック部品100の被照射面S1に保持されたウェハWを温めることができる。これにより、ウェハWの温度制御を行うことができる。
【0052】
・セラミック粒子、および金属酸化物粒子の平均粒径は、上記実施形態に限定されない。但し、セラミック粒子の平均粒径は、5μm以下であると、気孔の少ない緻密体を得ることができ、耐摩耗性を向上させることができるため、好ましい。また、金属酸化物粒子は、10μm以下にすると、変色の度合いを大きくすることができ、含有量を少なくすることができるため、好ましい。金属酸化物粒子は、5μm以下にすると、さらに、好ましい。なお、金属酸化物粒子は、セラミック粒子間の粒界に存在するため、一般的に、セラミック粒子の平均粒径より小さくなる。また、第1セラミック部102、第2セラミック部104、および第3セラミック部108は、それぞれ、互いにセラミック粒子の平均粒径が異なってもよい。
【0053】
・第1セラミック部102のセラミック純度は、第3セラミック部108のセラミック純度と同じでもよいし、第3セラミック部108のセラミック純度より低くてもよい。第1セラミック部102のセラミック純度が、第3セラミック部108のセラミック純度より高いと、プラズマが照射される被照射面S1を有する第1セラミック部102の耐久性がより高くなるため、セラミック部品100の劣化、摩耗を抑制することができる。
【0054】
・また、第1セラミック部102のセラミック純度は、第2セラミック部104のセラミック純度より高くてもよい。第1セラミック部102のセラミック純度が、第2セラミック部104のセラミック純度より高いと、プラズマが照射される被照射面S1を有する第1セラミック部102の耐久性がより高くなるため、セラミック部品100の劣化、摩耗を抑制することができる。
【0055】
・上記実施形態において、半導体製造装置用セラミック部品として、静電チャックに用いられるセラミック部品を例示したが、例えば、フォーカスリング、ヒータ、ドーム、搬送用治具など、種々のセラミック部品に、本発明を適用することができる。
【0056】
図2および図7において、説明のために、第1セラミック部102、第2セラミック部104、および第3セラミック部108の境界を明瞭に図示したが、実際には、境界が明確に視認できなくてもよい。
【0057】
・上記実施形態において、略円形平面の板状部材であるセラミック部品100を例示したが、セラミック部品100の平面形状は上記実施形態に限定されない。例えば、矩形平面、多角形平面等の板状部材であってもよい。
【0058】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0059】
10…静電チャック
100、100A…セラミック部品
102…第1セラミック部
104…第2セラミック部
106、106A…プラズマ検出部
108、108A…第3セラミック部
108AR…周縁
116…セラミック粒子
126…金属酸化物粒子
200…金属部
300…接着層
400…チャック電極
S1…被照射面
W…ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8