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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ノズル及び積層造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/209 20170101AFI20221129BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20221129BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221129BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221129BHJP
   B22F 10/25 20210101ALI20221129BHJP
   B22F 12/53 20210101ALI20221129BHJP
【FI】
B29C64/209
B29C64/153
B33Y10/00
B33Y30/00
B22F10/25
B22F12/53
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019141158
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021024111
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-05-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度~平成30年度 経済産業省「次世代型産業用3Dプリンタの造形技術開発・実用化事業」助成事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】514227988
【氏名又は名称】技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 晋平
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 泰志
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-196249(JP,A)
【文献】特表平10-501463(JP,A)
【文献】国際公開第2016/151781(WO,A1)
【文献】特開2017-019018(JP,A)
【文献】国際公開第2016/151713(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B22F 10/00 - 12/90
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向における端部を有し、エネルギー線を前記端部から出射させる第1の通路と、前記第1の通路を囲むとともに粉体及び流体を前記端部から吐出する第2の通路と、前記端部から前記第1の方向の反対の第2の方向に離間し、前記第2の通路に前記粉体及び前記流体を供給する拡散室と、前記拡散室に前記粉体及び前記流体を供給する供給路と、が設けられた、ノズル部材と、
前記ノズル部材に設けられ、前記端部に近いほど径が短い円錐状の第1の曲面を含む、第1の内面と、
前記ノズル部材に設けられ、間隔を介して前記第1の内面に向き、前記端部に近いほど径が短い円錐状の第2の曲面を含み、前記第1の曲面と前記第2の曲面との間に前記第2の通路を形成し、前記第1の内面との間に前記拡散室を形成する、第2の内面と、
を具備し、
前記拡散室における前記第1の内面と前記第2の内面との間の距離は、前記第2の通路における前記第1の曲面と前記第2の曲面との間の距離よりも長い、
ノズル。
【請求項2】
前記拡散室は、互いに離間するとともに前記第1の方向に延びる前記ノズル部材の中心軸の周方向に等間隔に配置された複数の空間を含み、
前記供給路は、前記複数の空間にそれぞれ連通する複数の供給孔を含む、
請求項1のノズル。
【請求項3】
前記複数の供給孔は、前記周方向に等間隔に配置される、請求項2のノズル。
【請求項4】
前記複数の空間の間に前記第2の通路の一部が位置する、請求項2又は請求項3のノズル。
【請求項5】
前記ノズル部材は、前記複数の空間の間に位置し、前記第1の内面及び前記第2の内面のうち少なくとも一方に接続された複数の第1の仕切を有する、請求項2乃至請求項4のいずれか一つのノズル。
【請求項6】
前記拡散室において、前記端部に近いほど前記第1の内面と前記第2の内面との間の距離が短い、請求項1乃至請求項5のいずれか一つのノズル。
【請求項7】
前記供給路は、前記第2の通路と平行な方向に前記粉体及び前記流体を前記拡散室に供給する、請求項1乃至請求項6のいずれか一つのノズル。
【請求項8】
前記供給路は、前記第1の方向に延びる前記ノズル部材の中心軸に対して捩れの位置にある、請求項1乃至請求項6のいずれか一つのノズル。
【請求項9】
前記ノズル部材は、前記第1の内面及び前記第2の内面のうち少なくとも一方に接続され、前記端部から延び、前記第1の方向に延びる前記ノズル部材の中心軸の周方向に間隔を介して配置される、複数の第2の仕切を有する、請求項1乃至請求項8のいずれか一つのノズル。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一つのノズルと、
前記第1の通路に前記エネルギー線を供給する出射装置と、
前記供給路に前記粉体及び前記流体を供給する供給装置と、
を具備し、
前記ノズルは、前記端部から吐出された前記粉体を前記エネルギー線により溶融又は焼結させる、
積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ノズル及び積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから粉末状の材料を供給するとともに、レーザ光を照射することで当該材料を固化させ、固化した材料の層を形成する積層造形装置が知られる。固化した材料の層が積層されることで、立体形状の物体が積層造形される。
【0003】
ノズルは、鉛直下方に限らず、斜めや水平に向けられることがある。ノズルが吐出する材料が重力により偏ることを防ぐため、例えば、材料を吐出する多数の孔がノズルに設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-219060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粉末状の材料が多数の孔から吐出される場合、各孔の断面積が小さくなる。このため、ノズルの内部で材料が詰まる虞がある。
【0006】
本発明が解決する課題の一例は、粉体の詰まりを抑制可能なノズル及び積層造形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態に係るノズルは、ノズル部材と、第1の内面と、第2の内面と、を備える。前記ノズル部材は、第1の方向における端部を有し、エネルギー線を前記端部から出射させる第1の通路と、前記第1の通路を囲むとともに粉体及び流体を前記端部から吐出する第2の通路と、前記端部から前記第1の方向の反対の第2の方向に離間し、前記第2の通路に前記粉体及び前記流体を供給する拡散室と、前記拡散室に前記粉体及び前記流体を供給する供給路と、が設けられる。前記第1の内面は、前記ノズル部材に設けられ、前記端部に近いほど径が短い円錐状の第1の曲面を含む。前記第2の内面は、前記ノズル部材に設けられ、間隔を介して前記第1の内面に向き、前記端部に近いほど径が短い円錐状の第2の曲面を含み、前記第1の曲面と前記第2の曲面との間に前記第2の通路を形成し、前記第1の内面との間に前記拡散室を形成する。前記拡散室における前記第1の内面と前記第2の内面との間の距離は、前記第2の通路における前記第1の曲面と前記第2の曲面との間の距離よりも長い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る積層造形システムを模式的に示す例示的な斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態の積層造形システムの一部及び物体を模式的に示す例示的な断面図である。
図3図3は、第1の実施形態のノズルヘッドを分解して模式的に示す例示的な斜視図である。
図4図4は、第1の実施形態のノズルヘッドを図2のF4-F4線に沿って示す例示的な断面図である。
図5図5は、第1の実施形態のノズルヘッドと吐出される材料とを模式的に示す例示的な断面図である。
図6図6は、第2の実施形態に係るノズルヘッドを示す例示的な断面図である。
図7図7は、第2の実施形態のノズルヘッドの先端を示す例示的な底面図である。
図8図8は、第2の実施形態のノズルヘッドと吐出される材料とを模式的に示す例示的な断面図である。
図9図9は、第2の実施形態の変形例に係るノズルヘッドの先端を示す例示的な底面図である。
図10図10は、第3の実施形態に係るノズルヘッドと吐出される材料とを模式的に示す例示的な断面図である。
図11図11は、第4の実施形態に係るノズルヘッドを模式的に示す例示的な断面図である。
図12図12は、第4の実施形態のノズルヘッドの先端を示す例示的な底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、図1乃至図5を参照して説明する。なお、本明細書においては基本的に、鉛直上方を上方向、鉛直下方を下方向と定義する。また、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称で特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によって説明され得る。
【0010】
図1は、第1の実施形態に係る積層造形システム1を模式的に示す例示的な斜視図である。積層造形システム1は、積層造形装置の一例である。積層造形システム1は、いわゆる指向性エネルギー堆積方式(Directed Energy Deposition:DED)又はレーザーメタルデポジション方式(Laser Metal Deposition:LMD)の三次元プリンタを含むシステムである。なお、積層造形システム1はこの例に限らない。
【0011】
図1に示されるように、本明細書において、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。Z軸は、例えば鉛直方向に延びる。X軸及びY軸は、例えば水平方向に延びる。なお、積層造形システム1は、Z軸が鉛直方向と斜めに交差するように配置されても良い。
【0012】
図2は、第1の実施形態の積層造形システム1の一部及び物体3を模式的に示す例示的な断面図である。積層造形システム1は、例えば、粉末状の材料Mを層状に積み重ねることにより、所定の形状の物体3を積層造形(付加製造)する。材料Mは、粉体の一例である。
【0013】
図1に示すように、積層造形システム1は、テーブル11と、造形部12と、制御部14と、複数の信号線16とを有する。テーブル11、造形部12、及び制御部14は、例えば、積層造形システム1の筐体の内部、又は造形のための部屋の内部に配置される。
【0014】
テーブル11は、支持面11aを有する。支持面11aは、略平坦に形成され、+Z方向(Z軸の矢印が示す方向、上方向)に向く。支持面11aは、積層造形された物体3や、物体3の仕掛品や、材料Mを積層させるためのベースを支持する。以下の説明において、物体3は、積層造形が完了した物体3、物体3の仕掛品、及びベースを含む。テーブル11は、当該テーブル11の少なくとも一部が回転することにより、支持面11aに支持された物体3をZ軸に平行な回転中心まわりに回転させることが可能である。
【0015】
テーブル11は、物体3をX方向、Y方向、及びZ方向に移動させても良い。また、テーブル11は物体3を、Y軸に平行な回転中心や、X軸に平行な回転中心まわりにさらに回転させても良い。
【0016】
造形部12は、材料Mを供給し、支持面11a、又は支持面11aに支持されたベースの上に積み重ねる。材料Mは、例えば、チタンのような金属の粉末である。なお、材料Mはこれに限られず、他の金属、合成樹脂、及びセラミックスのような他の材料であっても良い。積層造形システム1は、複数種類の材料Mにより、物体3を積層造形しても良い。
【0017】
造形部12は、ノズル21と、供給装置22と、移動装置23とを有する。ノズル21は、テーブル11の支持面11a、又は支持面11aの上の物体3に材料Mを吐出する。また、図2に示すように、エネルギー線Eが、ノズル21から、吐出された材料Mや支持面11aの上の物体3に照射される。エネルギー線Eは、例えば、レーザ光である。
【0018】
エネルギー線Eとしてのレーザ光が、材料Mの供給と並行してノズル21から照射される。ノズル21から、レーザ光に限らず、他のエネルギー線Eが照射されても良い。エネルギー線Eは、レーザ光のように材料Mを溶融又は焼結できるものであれば良く、例えば、電子ビームや、マイクロ波乃至紫外線領域の電磁波であっても良い。
【0019】
造形部12は、ベースや吐出された材料Mをエネルギー線Eにより加熱し、溶融領域(ビード)3aを形成する。ノズル21は、溶融領域3aにおいて、材料Mにエネルギー線Eを照射して溶融又は焼結させ、材料Mを集合させる。このように、溶融領域3aは、供給された材料Mのみならず、エネルギー線Eを照射されたベースや物体3の一部を含み得る。また、溶融領域3aは、完全に溶融した材料Mのみならず、部分的に溶融した材料M同士が結合したものであっても良い。
【0020】
溶融領域3aが固化することで、ベースや物体3の上に、層状又は薄膜状等の材料Mの集合としての層3bが形成される。なお、材料Mは、材料Mの集合への伝熱によって冷却されることにより、粒状で積層され、粒状の集合(層)となっても良い。
【0021】
造形部12は、ノズル21から、材料Mの集合にエネルギー線Eを照射することで、アニール処理を行っても良い。材料Mの集合は、エネルギー線Eにより再溶融又は再焼結され、固化することにより層3bになる。
【0022】
造形部12は、層3bを反復的に積み重ねることにより、物体3を積層造形する。このように、造形部12のノズル21は、エネルギー線Eを照射して材料Mを溶融又は焼結させて層3bを造形し、層3bの造形を繰り返し行うことで、支持面11aに支持された物体3を積層造形する。
【0023】
ノズル21は、ノズルヘッド31を有する。ノズルヘッド31は、ノズル部材の一例である。ノズルヘッド31の先端31aは、間隔を介して物体3に向く。先端31aは、端部の一例である。
【0024】
ノズルヘッド31に、出射路32及び吐出路33が設けられる。出射路32は、第1の通路の一例である。吐出路33は、第2の通路の一例である。出射路32及び吐出路33は、例えば、先端31aに開口する。
【0025】
出射路32は、略円形の断面を有する孔である。エネルギー線Eが、出射路32を通り、ノズルヘッド31の外部に出射される。言い換えると、出射路32は、エネルギー線Eを先端31aから出射させる。
【0026】
吐出路33は、出射路32を囲む略円環状の断面を有する孔である。材料M及びキャリアガスGが、吐出路33を通り、ノズルヘッド31の外部に吐出される。言い換えると、吐出路33は、材料M及びキャリアガスGを先端31aから吐出する。キャリアガスGは、流体の一例であり、例えば、窒素やアルゴンのような不活性ガスである。キャリアガスGは、他の流体であっても良い。
【0027】
ノズル21は、シールドガスを吐出する通路をさらに有しても良い。当該通路は、吐出路33を囲み、先端31a又はノズルヘッド31の他の部分からシールドガスを吐出する。シールドガスは、例えば、窒素やアルゴンのような不活性ガスである。
【0028】
図1に示すように、供給装置22は、出射装置41と、材料供給装置42とを有する。出射装置41は、例えば、光学装置であり、光源及び光学系を有する。光源は、発振素子を有し、発振素子の発振によりエネルギー線Eとしてのレーザ光を出射する。光源は、出射されるエネルギー線Eの出力(パワー)を変更可能である。
【0029】
光源は、出射されたエネルギー線Eを光学系に入射させる。エネルギー線Eは、光学系を経てノズル21に入る。光学系は、エネルギー線Eの照射径を変更可能である。出射装置41は、ノズル21の出射路32にエネルギー線Eを供給し、出射路32からエネルギー線Eを出射させる。なお、出射装置41は、レーザ光を出射可能な光学装置に限らず、他のエネルギー線Eを発生させる装置であっても良い。
【0030】
ノズル21は、エネルギー線Eの照射によって、吐出された材料Mを加熱することにより、材料Mの層3bを形成するとともにアニール処理を行うことができる。また、ノズル21は、物体3の不要な部位をエネルギー線Eの照射によって除去することができる。
【0031】
材料供給装置42は、材料供給部42aと、材料タンク42bと、ガスタンク42cとを有する。材料タンク42bは、材料Mを収容する。材料供給装置42は、互いに異なる種類の材料Mを収容する複数の材料タンク42bを有しても良い。ガスタンク42cは、キャリアガスGを収容する。
【0032】
材料供給部42aは、材料タンク42bの材料Mを、ガスタンク42cのキャリアガスGにより、供給管21aを介してノズル21へ供給する。これにより、ノズル21は、吐出路33から材料M及びキャリアガスGを吐出する。材料供給部42aは、単位時間あたりにノズル21から吐出される材料Mの量と、吐出される材料Mの速度と、を変更可能である。
【0033】
材料供給部42aは、例えば、ガスタンク42cのキャリアガスGを供給管21aへ流す圧縮機と、キャリアガスGの流れに材料タンク42bの材料Mを供給する装置と、を有する。なお、材料供給部42aは、他の手段により材料Mをノズル21へ供給しても良い。
【0034】
供給管21aは、ノズル21と、出射装置41及び材料供給装置42と、を接続する。供給管21aは、材料M及びキャリアガスGが通る管と、エネルギー線Eが通るケーブルと、を包含している。
【0035】
移動装置23は、ノズル21を移動及び回動させる。例えば、移動装置23は、ノズル21を、X方向、Y方向、及びZ方向に平行移動させるとともに、X軸に平行な回転中心まわりに回転させることが可能である。
【0036】
移動装置23は、ノズル21を支持面11aに対して相対的に移動させ、ノズル21の向きを変化させることが可能である。移動装置23は、支持面11aに対するノズル21の移動速度を変更可能である。なお、テーブル11が移動及び回動することで、ノズル21が支持面11aに対して相対的に移動し、支持面11aに対するノズル21の向きが変化しても良い。
【0037】
制御部14は、テーブル11及び造形部12に、信号線16を介して電気的に接続される。制御部14は、例えば、造形部12と一体的に設けられた制御部であっても良いし、造形部12とは別に設けられたコンピュータであっても良い。
【0038】
制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)14aのような制御装置と、ROM(Read Only Memorry)14bと、RAM(Random Access Memorry)14cと、外部記憶装置14dと、出力装置14eと、入力装置14fとを有し、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。CPU14a、ROM14b、RAM14c、外部記憶装置14d、出力装置14e、及び入力装置14fは、バスにより、又はインターフェースを介して、互いに接続されている。
【0039】
CPU14aがROM14b又は外部記憶装置14dに組み込まれたNCプログラムのようなプログラムを実行することで、制御部14は、積層造形システム1の各部を制御する。例えば、制御部14は、テーブル11と、造形部12のノズル21、移動装置23、出射装置41、及び材料供給装置42とを制御する。
【0040】
ROM14bは、プログラム及びプログラムの実行に必要なデータを格納している。RAM14cは、プログラムの実行時に作業領域として機能する。外部記憶装置14dは、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)のような、データを記憶、変更、削除可能な装置である。出力装置14eは、例えば、ディスプレイやスピーカである。入力装置14fは、例えば、キーボードやマウスである。
【0041】
以下、ノズル21について詳しく説明する。図2に示すように、ノズルヘッド31は、中心軸Axを有する。本実施形態における中心軸Axは、出射路32及び吐出路33の仮想的な中心軸である。すなわち、出射路32及び吐出路33は、中心軸Ax上又は中心軸Axのまわりに同軸上に配置される。
【0042】
中心軸Axは、出射路32及び吐出路33の回転対称な部分の仮想的な中心軸である。このため、出射路32及び吐出路33に、突起や窪みのような非対称な部分が設けられたとしても、中心軸Axは出射路32及び吐出路33の回転対称な部分の中心軸のままである。
【0043】
以下、中心軸Axに沿う一つの方向を+A方向、+A方向の反対方向を-A方向と定義する。+A方向は、第1の方向の一例である。-A方向は、第2の方向の一例である。また、以下、中心軸Axと直交する方向を径方向、中心軸Axまわりに回転する方向を周方向と定義する。別の表現によれば、中心軸Axは、+A方向及び/又は-A方向に延びている。
【0044】
ノズルヘッド31の先端31aは、+A方向に向く。先端31aは、+A方向におけるノズルヘッド31の端部である。上述のように、ノズル21の向きは、移動装置23によって変化させられる。このため、+A方向及び-A方向は、X軸、Y軸、及びZ軸に対して変化し得る。図2の例では、先端31aが下に向き、+A方向が-Z方向(Z軸の矢印の反対方向、下方向)と一致している。移動装置23により、先端31aは、+Z方向、X方向、Y方向、又は他の方向に向くことができる。
【0045】
ノズルヘッド31は、第1の筒壁51と、第2の筒壁52と、基部53とを有する。第1の筒壁51、第2の筒壁52、及び基部53は、一体に作られても良いし、個別に作られても良い。第1の筒壁51、第2の筒壁52、及び基部53は、例えば、金属によって作られるが、樹脂又はセラミックのような他の材料によって作られても良い。
【0046】
第1の筒壁51は、中心軸Axに沿って延びる略円筒状に形成される。第1の筒壁51は、基端61と、先端62と、内面63と、第1の形成面64とを有する。第1の形成面64は、第1の内面の一例である。
【0047】
基端61は、-A方向における第1の筒壁51の端である。基端61は、例えば、-A方向に向く略平坦な略円環状の面である。先端62は、+A方向における第1の筒壁51の端である。先端62は、例えば、+A方向に向く略平坦な略円環状の面である。先端62は、ノズルヘッド31の先端31aの一部を形成する。なお、先端62は、ノズルヘッド31の先端31aとは異なっても良い。
【0048】
内面63は、中心軸Axに向く略円錐状の曲面である。なお、本実施形態において、円錐状の曲面とは、中心軸に沿う一方向に向かって径が減少する円筒状の面であり、円錐の側面のような最小の径が0となる曲面と、円錐台の側面のような最小の径が0より大きい曲面と、を含む。内面63は、径方向の内側における基端61の縁と先端62の縁との間で延びる。内面63は、出射路32の一部を形成する。別の表現によれば、出射路32の一部は、内面63の内側に形成される。
【0049】
本実施形態において、内面63は、先端62(先端31a)に近いほど径が短い円錐状の曲面である。すなわち、径方向の内側における基端61の縁の径は、径方向の内側における先端62の縁の径よりも大きい。内面63の径は、この例に限らず、例えば、一定であっても良いし、先端62に近いほど長くても良い。
【0050】
第1の形成面64は、略円筒状の第1の筒壁51の外面であり、内面63の反対側に位置する。第1の形成面64は、径方向の外側における基端61の縁と先端62の縁との間で延びる。第1の形成面64は、円錐面64aと、複数の凹面64bとを含む。円錐面64aと凹面64bとは、互いに接続され、連続している。なお、円錐面64aと凹面64bとの間に他の部分が設けられても良い。
【0051】
円錐面64aは、先端62(先端31a)に近いほど径が短い円錐状の曲面である。円錐面64aは、径方向の外側における基端61の縁と先端62(先端31a)の縁との間で延びる。径方向の外側における基端61の縁の径は、径方向の外側における先端62の縁の径よりも大きい。なお、円錐面64aは、先端62(先端31a)から延びて基端61から離間していても良い。
【0052】
凹面64bは、例えば、径方向の外側に向く略平坦な面である。凹面64bは、径方向の外側に突出する曲面であっても良いし、径方向の内側に窪む曲面であっても良い。凹面64bが径方向の外側に突出する場合、凹面64bの曲率半径は、円錐面64aの径よりも長い。すなわち、凹面64bは、円錐面64aから径方向の内側に窪んでいる。凹面64bは、この例に限られない。
【0053】
図3は、第1の実施形態のノズルヘッド31を分解して模式的に示す例示的な斜視図である。図3に示すように、複数の凹面64bはそれぞれ、径方向の外側における基端61の縁から延び、先端62(先端31a)から-A方向に離間している。複数の凹面64bは、互いに離間するとともに、周方向に略等間隔に並べられる。なお、凹面64bは、この例に限られない。
【0054】
第2の筒壁52は、中心軸Axに沿って延びる略円筒状に形成される。第2の筒壁52は、基端71と、先端72と、第2の形成面73と、外面74とを有する。第2の筒壁52の第2の形成面73は、第2の内面及び第2の曲面の一例である。
【0055】
基端71は、-A方向における第2の筒壁52の端である。基端71は、例えば、-A方向に向く略平坦な略円環状の面である。先端72は、+A方向における第2の筒壁52の端である。先端72は、例えば、+A方向に向く略平坦な略円環状の面である。先端72は、第1の筒壁51の先端62と共に、ノズルヘッド31の先端31aの一部を形成する。なお、先端72は、ノズルヘッド31の先端31aとは異なっても良い。
【0056】
第2の形成面73は、略円筒状の第2の筒壁52の内面であり、中心軸Axに向く略円錐状の曲面である。第2の形成面73は、径方向の内側における基端71の縁と先端72の縁との間で延びる。第2の形成面73は、先端72(先端31a)に近いほど径が短い円錐状の曲面である。すなわち、径方向の内側における基端71の縁の径は、径方向の内側における先端72の縁の径よりも大きい。第2の形成面73は、先端72(先端31a)に近いほど径が短い円錐状の曲面と、他の面とを含んでも良い。
【0057】
外面74は、第2の形成面73の反対側に位置する略円錐状の曲面である。外面74は、径方向の外側における基端71の縁と先端72の縁との間で延びる。外面74は、先端72(先端31a)に近いほど径が短い円錐状の曲面である。すなわち、径方向の外側における基端71の縁の径は、径方向の外側における先端72の縁の径よりも大きい。外面74の径は、この例に限らず、例えば、一定であっても良いし、先端72に近いほど増加しても良い。
【0058】
第2の形成面73は、間隔を介して第1の筒壁51の第1の形成面64に向く。すなわち、第2の形成面73は、間隔を介して円錐面64aに向くとともに、間隔を介して四つの凹面64bに向く。
【0059】
ノズルヘッド31に設けられた第2の形成面73と円錐面64aとの間に、吐出路33が形成される。このため、吐出路33は、周方向に延び、略円環状である中心軸Axと直交する断面を有する。
【0060】
円錐面64aと、第2の形成面73との間の距離(間隔)は、略一定である。なお、円錐面64aと第2の形成面73との間の距離は、例えば、先端31aに近いほど短くなっても良い。
【0061】
ノズルヘッド31に設けられた第2の形成面73と凹面64bとの間に、拡散室81が形成される。拡散室81は、複数の拡散空間85を含む。拡散空間85は、空間の一例である。
【0062】
本実施形態では、第2の形成面73と、四つの凹面64bとによって、四つの拡散空間85が形成される。なお、拡散空間85の数は、この例に限られず、三つ、六つ、八つ、又は他の数であっても良い。また、ノズルヘッド31に一つの拡散空間85(拡散室81)のみが設けられても良い。四つの拡散空間85は、互いに離間するとともに、周方向に略等間隔に配置される。
【0063】
凹面64bと第2の形成面73とによって形成される拡散空間85(拡散室81)は、ノズルヘッド31の先端31aから-A方向に離間している。円錐面64aと凹面64bとが連続するため、拡散空間85と吐出路33とは、互いに連通する。このため、拡散空間85と先端31aとの間に、吐出路33が介在している。
【0064】
周方向において、複数の拡散空間85の間に、吐出路33が位置する。別の表現によれば、隣接する二つの拡散空間85は、互いに吐出路33を介して接続されている。なお、二つの拡散空間85の間に、壁や突起が介在しても良い。
【0065】
図4は、第1の実施形態のノズルヘッド31を図2のF4-F4線に沿って示す例示的な断面図である。図4に示すように、拡散空間85における第1の形成面64(凹面64b)と第2の形成面73との間の距離Leは、吐出路33における第1の形成面64(円錐面64a)と第2の形成面73との間の距離Lpよりも長い。
【0066】
距離Le,Lpは、例えば、径方向の距離である。なお、距離Leは、凹面64b上の一点と、当該一点に最も近い第2の形成面73上の一点との間の距離であっても良い。また、距離Lpは、円錐面64a上の一点と、当該一点に最も近い第2の形成面73上の一点との間の距離であっても良い。
【0067】
本実施形態において、拡散空間85と吐出路33とが接続される部分において、距離Leと距離Lpとは略等しい。しかし、少なくとも、拡散空間85における凹面64bと第2の形成面73との間の最大の距離Leが、吐出路33における円錐面64aと第2の形成面73との間の最大の距離Lpよりも長い。また、拡散空間85と吐出路33とが接続される部分から離間した位置における拡散空間85の凹面64bと第2の形成面73との間の距離Leが、吐出路33における円錐面64aと第2の形成面73との間の距離Lpよりも長い。なお、本実施形態では、距離Lpは略一定である。
【0068】
図2に示すように、拡散空間85(拡散室81)において、ノズルヘッド31の先端31aに近いほど、周方向における略同一位置における凹面64bと第2の形成面73との間の距離Leが短い。別の表現によれば、中心軸Axと直交する拡散空間85の断面積は、ノズルヘッド31の先端31aに近いほど小さい。なお、拡散空間85(拡散室81)は、この例に限られない。
【0069】
基部53は、第1の筒壁51及び第2の筒壁52に接続される。基部53は、中心軸Axに沿って延びる略円筒状に形成される。なお、基部53は、他の形状に形成されても良い。基部53は、接続面91と、内面92とを有する。
【0070】
接続面91は、+A方向に向く、円環状の略平坦な面である。なお、接続面91は、他の形状を有しても良い。接続面91は、第1の筒壁51の基端61及び第2の筒壁52の基端71に接続されている。このため、接続面91は、吐出路33と拡散室81の拡散空間85との底面を形成する。
【0071】
内面92は、中心軸Axに向く略円筒状の曲面である。内面92は、径方向の内側における接続面91の縁から-A方向に延びる。内面92は、-A方向における第1の筒壁51の内面63と連続する。内面92は、出射路32の一部を形成する。別の表現によれば、出射路32の一部は、内面92の内側に形成される。
【0072】
基部53に、供給路93が設けられる。供給路93は、複数の供給孔95を含む。本実施形態では、基部53に四つの供給孔95が設けられる。すなわち、供給孔95の数は、拡散空間85の数と等しい。なお、供給孔95の数は、拡散空間85の数と異なっても良い。
【0073】
供給孔95は、接続面91に開口する。四つの供給孔95は、周方向に等間隔に配置され、四つの拡散空間85にそれぞれ連通する。供給孔95は、周方向における拡散空間85の略中央に連通する。なお、供給孔95は、この例に限らず、周方向における拡散空間85の端に連通しても良い。また、本実施形態において、供給孔95は、中心軸Axと平行に延びている。なお、供給孔95は、他の方向に延びても良い。
【0074】
供給孔95(供給路93)は、図1の供給管21aを介して、拡散空間85(拡散室81)と材料供給装置42とを接続する。材料供給装置42は、供給管21aを介して、供給孔95に材料M及びキャリアガスGを供給する。これにより、供給孔95は、拡散空間85に材料M及びキャリアガスGを供給する。
【0075】
四つの拡散空間85と材料供給装置42との間の流路の長さは、互いに略等しい。このため、四つの供給孔95から、四つの拡散室81に、略均等に材料M及びキャリアガスGが供給される。
【0076】
図5は、第1の実施形態のノズルヘッド31と吐出される材料Mとを模式的に示す例示的な断面図である。図5において、三つの供給孔95が示されるように基部53の断面が示される。また、図5において、第1の筒壁51は、断面図ではなく、側面図として示される。
【0077】
中心軸Axと直交する拡散空間85の断面は、供給孔95の断面よりも大きい。このため、供給孔95から拡散空間85に供給された材料M及びキャリアガスGは、拡散空間85において拡散する。
【0078】
上述のように、吐出路33において流体に作用する抵抗は、拡散空間85において流体に作用する抵抗よりも大きい。このため、材料M及びキャリアガスGは、吐出路33に移動する前に、拡散空間85で拡散する。
【0079】
材料M及びキャリアガスGは、拡散空間85で大よそ均一に分散した状態で、吐出路33に流入する。言い換えると、拡散空間85(拡散室81)は、吐出路33に材料M及びキャリアガスGを供給する。
【0080】
中心軸Axと直交する拡散空間85の断面は、ノズルヘッド31の先端31aに近いほど小さい。また、凹面64bと第2の形成面73との間の距離Leの変化は、ノズルヘッド31の先端31aに近いほど緩やかである。このため、拡散空間85と吐出路33との間における抵抗の差が、先端31aに近いほど小さくなる。これにより、拡散空間85から吐出路33に供給される材料M及びキャリアガスGのうち、先端31aへ向かうものの割合が多くなる。
【0081】
吐出路33に供給された材料M及びキャリアガスGは、ノズルヘッド31の先端31aから、例えば物体3のビード3aに向かって吐出される。ノズル21が斜め方向や水平方向に向く場合、重力が材料Mを下方向に移動させようとする。しかし、材料M及びキャリアガスGは、周方向に略均等に配置された拡散空間85から、吐出路33へ供給される。このため、ノズル21が斜め方向や水平方向に向いた場合であっても、周方向において、材料M及びキャリアガスGは大よそ均一に分布する。
【0082】
ノズル21は、ノズルヘッド31の先端31aから吐出された材料Mを、エネルギー線Eにより溶融又は焼結させる。周方向における材料Mの分布が大よそ均一であるため、ノズル21の向きの変化により物体3における材料Mの密度が変化することが抑制される。
【0083】
材料M及びキャリアガスGは、拡散空間85(拡散室81)で拡散された後に、吐出路33に供給される。このため、材料Mの偏在による材料Mの詰まりの発生が抑制される。また、吐出路33は、円形や矩形の孔ではなく、円錐状の円錐面64aと第2の形成面73との間でスリット状に形成される。すなわち、拡散空間85から吐出路33への入口としての、拡散空間85と吐出路33との接続部分が、線状に延びている。このため、材料Mの集中による材料Mの詰まりの発生が抑制される。
【0084】
以上のように、ノズル21は、ノズル21の向きの変化による材料Mの分布の変化を抑制できるとともに、ノズル21における材料Mの詰まりの発生を抑制できる。積層造形システム1は、当該ノズル21を使用することで、単位時間あたりに吐出する材料Mの量を多くすることができ、ひいては物体3の造形に係る時間を短くすることができる。
【0085】
以上説明された第1の実施形態に係る積層造形システム1において、ノズル21に設けられる第1の形成面64は、円錐状の円錐面64aを含む。ノズル21に設けられる第2の形成面73は、間隔を介して第1の形成面64に向くとともに、円錐状の曲面を含む。材料M及びキャリアガスGを先端31aから吐出する吐出路33が、円錐面64aと第2の形成面73との間に形成される。吐出路33に材料M及びキャリアガスGを供給する拡散室81が、第1の形成面64と第2の形成面73との間に形成される。拡散室81における第1の形成面64と第2の形成面73との間の距離Leは、吐出路33における円錐面64aと第2の形成面73との間の距離Lpよりも長い。このため、拡散室81における抵抗は、吐出路33における抵抗よりも低い。拡散室81に供給された材料M及びキャリアガスGは、抵抗の差により、拡散室81で拡散された後に吐出路33に供給される。また、吐出路33は、円錐状の円錐面64a及び第2の形成面73の間に設けられるため、ノズル21の中心軸Axの周方向に延びるスリット状に形成される。従って、拡散室81から吐出路33に供給される材料M及びキャリアガスGの分布が不均一になることが抑制され、ひいてはノズル21の向きの変化により吐出される材料M及びキャリアガスGの分布(供給密度)が変化することが抑制される。さらに、ノズルヘッド31の内部で材料Mが詰まることが抑制される。材料Mの詰まりが抑制されることで、ノズル21が長時間に亘って安定して吐出可能な材料Mの量が増大し、ノズル21による積層造形の造形速度が速くなる。さらに、吐出路33の断面積が拡散室81の断面積よりも小さくなるため、吐出される材料M及びキャリアガスGの速度が、拡散室81における材料M及びキャリアガスGの速度よりも速くなる。このため、ノズル21の向きの変化により吐出される材料M及びキャリアガスGの分布が変化することが抑制されるとともに、吐出された材料Mが収束しやすくなる。
【0086】
拡散室81は、互いに離間するとともに中心軸Axの周方向に等間隔に配置された複数の拡散空間85を含む。供給路93は、複数の拡散空間85にそれぞれ連通する複数の供給孔95を含む。これにより、それぞれの拡散空間85において材料M及びキャリアガスGが拡散される。従って、ノズル21の向きにより拡散室81の内部で材料M及びキャリアガスGの分布が不均一になることが抑制され、ひいてはノズル21の向きの変化により吐出される材料M及びキャリアガスGの分布が変化することが抑制される。
【0087】
複数の供給孔95は、周方向に等間隔に配置される。これにより、複数の拡散空間85において材料M及びキャリアガスGの分布が不均一になることが抑制され、ひいてはノズル21の向きの変化により吐出される材料M及びキャリアガスGの分布が変化することが抑制される。
【0088】
複数の拡散空間85の間に、吐出路33の一部が位置する。これにより、材料M及びキャリアガスGが通行可能な拡散室81と吐出路33との接続部分が大きくなる。従って、ノズルヘッド31の内部で材料Mが詰まることが抑制される。
【0089】
拡散室81において、先端31aに近いほど第1の形成面64と第2の形成面73との間の距離Leが短い。このため、拡散室81の断面積が先端31aに近いほど小さく、拡散室81と吐出路33との間における抵抗の差が先端31aに近いほど小さい。従って、拡散室81から吐出路33に供給される材料M及びキャリアガスGのうち、先端31aへ向かうものの割合が多くなり、先端31aから吐出される材料M及びキャリアガスGの速度が低下することが抑制される。吐出される材料M及びキャリアガスGの速度が増加することで、吐出された材料Mが収束しやすくなる。
【0090】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について、図6乃至図9を参照して説明する。なお、以下の複数の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0091】
図6は、第2の実施形態に係るノズルヘッド31を示す例示的な断面図である。図7は、第2の実施形態のノズルヘッド31の先端31aを示す例示的な底面図である。図6及び図7に示すように、第2の実施形態の第1の筒壁51は、複数の第1の突出部101を有する。第1の突出部101は、第1の仕切の一例である。第1の突出部101は、円錐面64aから径方向に突出する。言い換えると、第1の突出部101は、円錐面64aに接続されている。
【0092】
第1の突出部101は、+A方向における円錐面64aの端と、-A方向における円錐面64aの端との間で延びる。本実施形態では、周方向における第1の突出部101の幅は略一定である。また、本実施形態では、第1の突出部101は直線状に延びる。しかし、第1の突出部101は、この例に限らず、例えば螺旋状に延びても良い。
【0093】
本実施形態では、第1の筒壁51は、周方向に略等間隔に配置された四つの第1の突出部101を有する。すなわち、第1の突出部101の数は、拡散空間85の数と等しい。なお、第1の突出部101の数と拡散空間85の数とが異なっても良い。
【0094】
周方向において、第1の突出部101は、隣り合う二つの凹面64bの間に位置する。このため、周方向において、第1の突出部101は、隣り合う二つの拡散空間85の間に位置する。
【0095】
第2の実施形態の第2の筒壁52は、複数の第2の突出部102を有する。第2の突出部102は、第1の仕切の一例である。第2の突出部102は、第2の形成面73から径方向に突出する。言い換えると、第2の突出部102は、第2の形成面73に接続されている。
【0096】
第2の突出部102は、+A方向における第2の形成面73の端と、-A方向における第2の形成面73の端との間で延びる。本実施形態では、周方向における第2の突出部102の幅は略一定である。また、本実施形態では、第2の突出部102は直線状に延びる。しかし、第2の突出部102は、この例に限らず、例えば螺旋状に延びても良い。
【0097】
本実施形態では、第2の筒壁52は、周方向に略等間隔に配置された四つの第2の突出部102を有する。すなわち、第2の突出部102の数は、拡散空間85の数と等しい。なお、第2の突出部102の数と拡散空間85の数とが異なっても良い。
【0098】
周方向において、第2の突出部102は、隣り合う二つの拡散空間85の間に位置する。また、周方向において、四つの第1の突出部101と四つの第2の突出部102とは、略同一位置に配置される。
【0099】
第1の突出部101と第2の突出部102とは、互いに接触する。第1の突出部101及び第2の突出部102は、吐出路33を、四つの分割吐出路105に区切る。なお、第1の突出部101と第2の突出部102とは、互いに離間しても良い。
【0100】
分割吐出路105はそれぞれ、対応する拡散空間85に連通している。このため、拡散空間85は、対応する分割吐出路105に材料M及びキャリアガスGを供給する。分割吐出路105はそれぞれ、材料M及びキャリアガスGをノズルヘッド31の先端31aから吐出する。
【0101】
図8は、第2の実施形態のノズルヘッド31と吐出される材料Mとを模式的に示す例示的な断面図である。図8に示すように、第2の実施形態において、供給孔95(供給路93)は、吐出路33と略平行な方向に、材料M及びキャリアガスGを拡散空間85(拡散室81)に供給する。このため、供給孔95は、ノズルヘッド31の先端31aに向かう方向に、材料M及びキャリアガスGを供給する。
【0102】
別の表現によれば、供給孔95は、吐出路33が延びる方向に、材料M及びキャリアガスGを拡散空間85に供給する。さらに、別の表現によれば、供給孔95は、先端31aに近づくほど中心軸Axに近づくように、材料M及びキャリアガスGを拡散空間85に供給する。
【0103】
以上説明された第2の実施形態の積層造形システム1において、複数の第1の突出部101及び第2の突出部102は、複数の拡散空間85の間に位置し、円錐面64a及び第2の形成面73に接続される。これにより、一つの拡散空間85から吐出路33に供給された材料M及びキャリアガスGが周方向において不均一になるように移動することが抑制される。従って、ノズル21の向きにより拡散室81の内部で材料M及びキャリアガスGの分布が不均一になることが抑制され、ひいてはノズル21の向きの変化により吐出される材料M及びキャリアガスGの分布が変化することが抑制される。
【0104】
供給路93は、吐出路33と平行な方向に材料M及びキャリアガスGを拡散室81に供給する。これにより、拡散室81から吐出路33に供給される材料M及びキャリアガスGのうち、先端31aへ向かうものの割合が多くなり、先端31aから吐出される材料M及びキャリアガスGの速度が低下することが抑制される。吐出される材料M及びキャリアガスGの速度が増加することで、吐出された材料Mが収束しやすくなる。
【0105】
図9は、第2の実施形態の変形例に係るノズルヘッド31の先端31aを示す例示的な底面図である。図9に示すように、第2の実施形態の第1の変形例において、周方向における第1の突出部101及び第2の突出部102の幅は、ノズルヘッド31の先端31aに近いほど短くなる。このように、第1の突出部101及び第2の突出部102の幅は、一定でなくても良い。
【0106】
さらに、第2の実施形態では、ノズルヘッド31が第1の突出部101及び第2の突出部102の両方を有している。しかし、ノズルヘッド31は、第1の突出部101及び第2の突出部102のうちいずれか一方を有しても良い。
【0107】
ノズルヘッド31が第1の突出部101を有する場合、第1の突出部101は、第2の形成面73に接触する。第1の突出部101は、吐出路33を、四つの分割吐出路105に区切る。なお、第1の突出部101は、第2の形成面73から離間しても良い。この場合、第1の突出部101と第2の形成面73との間の距離は、円錐面64aと第2の形成面73との間の距離Lpよりも短い。
【0108】
ノズルヘッド31が第2の突出部102を有する場合、第2の突出部102は、円錐面64aに接触する。第2の突出部102は、吐出路33を、四つの分割吐出路105に区切る。なお、第2の突出部102は、円錐面64aから離間しても良い。この場合、第2の突出部102と円錐面64aとの間の距離は、円錐面64aと第2の形成面73との間の距離Lpよりも短い。
【0109】
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態について、図10を参照して説明する。図10は、第3の実施形態に係るノズルヘッド31と吐出される材料Mとを模式的に示す例示的な断面図である。図10に示すように、第3の実施形態のノズルヘッド31は、供給孔95の向きを除けば第2の実施形態のノズルヘッド31と同一である。
【0110】
第3の実施形態において、供給孔95(供給路93)は、ノズルヘッド31の中心軸Axに対して捩れの位置にある。このため、供給孔95は、中心軸Axと平行ではなく、且つ中心軸Axと交差もしない方向に、材料M及びキャリアガスGを供給する。
【0111】
供給孔95は、ノズルヘッド31の先端31aに向かう方向とは異なる方向に、材料M及びキャリアガスGを供給する。このため、供給孔95から供給された材料M及びキャリアガスGが、+A方向における拡散空間85の端部に集中することが抑制される。材料M及びキャリアガスGは、拡散空間85においてより均一に分散することができる。
【0112】
以上説明された第3の実施形態の積層造形システム1において、供給路93は、+A方向に延びるノズルヘッド31の中心軸Axに対して捩れの位置にある。これにより、拡散室81に供給された材料M及びキャリアガスGの速度のうち、先端31aへ向かう速度成分が低減される。従って、拡散室81に供給された材料M及びキャリアガスGが拡散室81でより均一に拡散し、ひいてはノズル21の向きの変化により吐出される材料M及びキャリアガスGの分布が変化することが抑制される。
【0113】
(第4の実施形態)
以下に、第4の実施形態について、図11及び図12を参照して説明する。図11は、第4の実施形態に係るノズルヘッド31を模式的に示す例示的な断面図である。図11に示すように、第4の実施形態の第1の筒壁51は、第1の仕切111と、第2の仕切112とを有する。
【0114】
第1の仕切111は、円錐面64aから径方向に突出する。言い換えると、第1の仕切111は、円錐面64aに接続されている。第1の仕切111は、-A方向における円錐面64aの端から延びる。さらに、第1の仕切111は、ノズルヘッド31の先端31aから-A方向に離間している。
【0115】
本実施形態では、周方向における第1の仕切111の幅と、径方向における第1の仕切111の長さは、先端31aに近いほど短い。また、本実施形態では、第1の仕切111は直線状に延びる。しかし、第1の仕切111は、この例に限らず、例えば螺旋状に延びても良い。
【0116】
本実施形態では、第1の筒壁51は、周方向に略等間隔に配置された四つの第1の仕切111を有する。すなわち、第1の仕切111の数は、拡散空間85の数と等しい。なお、第1の仕切111の数と拡散空間85の数とが異なっても良い。
【0117】
周方向において、第1の仕切111は、隣り合う二つの凹面64bの間に位置する。このため、周方向において、第1の仕切111は、隣り合う二つの拡散空間85の間に位置する。四つの第1の仕切111は、吐出路33を、四つの分割吐出路115に区切る。
【0118】
図12は、第4の実施形態のノズルヘッド31の先端31aを示す例示的な底面図である。図12に示すように、第2の仕切112は、円錐面64aから径方向に突出する。言い換えると、第2の仕切112は、円錐面64aに接続されている。
【0119】
図11に示すように、第2の仕切112は、+A方向における円錐面64aの端から延びる。さらに、第2の仕切112は、-A方向における円錐面64aの端から+A方向に離間している。本実施形態では、周方向における第2の仕切112の幅は略一定である。また、本実施形態では、第2の仕切112は直線状に延びる。しかし、第2の仕切112は、この例に限らず、例えば螺旋状に延びても良い。
【0120】
本実施形態では、第1の筒壁51は、周方向に間隔を介して略等間隔に配置された四つの第2の仕切112を有する。すなわち、第2の仕切112の数は、拡散空間85の数と等しい。なお、第2の仕切112の数と拡散空間85の数とが異なっても良い。
【0121】
周方向において、第2の仕切112は、隣り合う二つの第1の仕切111の間に位置する。例えば、第2の仕切112は、凹面64bと+A方向に隣接する。なお、第2の仕切112の位置は、この例に限られない。
【0122】
第4の実施形態の第2の筒壁52は、複数の第3の仕切113を有する。第3の仕切113は、第2の仕切の一例である。第3の仕切113は、第2の形成面73から径方向に突出する。言い換えると、第3の仕切113は、第2の形成面73に接続されている。第3の仕切113は、+A方向における第2の形成面73の端から延びる。さらに、第3の仕切113は、-A方向における第2の形成面73の端から+A方向に離間している。本実施形態では、周方向における第3の仕切113の幅は略一定である。また、本実施形態では、第3の仕切113は直線状に延びる。しかし、第3の仕切113は、この例に限らず、例えば螺旋状に延びても良い。
【0123】
本実施形態では、第2の筒壁52は、周方向に間隔を介して略等間隔に配置された四つの第3の仕切113を有する。すなわち、第3の仕切113の数は、拡散空間85の数と等しい。なお、第3の仕切113の数と拡散空間85の数とが異なっても良い。
【0124】
周方向において、第3の仕切113は、隣り合う二つの第1の仕切111の間に位置する。例えば、第2の仕切112は、拡散空間85と+A方向に隣接する。また、周方向において、四つの第2の仕切112と四つの第3の仕切113とは、略同一位置に配置される。なお、第3の仕切113の位置は、この例に限られない。
【0125】
第2の仕切112と第3の仕切113とは、互いに接触する。第2の仕切112及び第3の仕切113は、吐出路33を、四つの分割吐出路116に区切る。なお、第2の仕切112と第3の仕切113とは、互いに離間しても良い。
【0126】
第1の仕切111によって形成される分割吐出路115と、第2の仕切112及び第3の仕切113によって形成される分割吐出路116とは、重複しても良い。すなわち、吐出路33の一部が、第1の仕切111、第2の仕切112、及び第3の仕切113によって、八つの分割吐出路に区切られても良い。
【0127】
以上説明された第4の実施形態の積層造形システム1において、複数の第2の仕切112及び第3の仕切113は、円錐面64a及び第2の形成面73に接続され、先端31aから延び、中心軸Axの周方向に間隔を介して配置される。従って、ノズル21の向きにより吐出路33の内部で材料M及びキャリアガスGの分布が不均一になることが抑制され、ひいてはノズル21の向きの変化により吐出される材料M及びキャリアガスGの分布が変化することが抑制される。
【0128】
第4の実施形態では、ノズルヘッド31が第2の仕切112及び第3の仕切113の両方を有している。しかし、ノズルヘッド31は、第2の仕切112及び第3の仕切113のうちいずれか一方を有しても良い。
【0129】
ノズルヘッド31が第2の仕切112を有する場合、第2の仕切112は、第2の形成面73に接触する。第2の仕切112は、吐出路33を、四つの分割吐出路116に区切る。なお、第2の仕切112は、第2の形成面73から離間しても良い。この場合、第2の仕切112と第2の形成面73との間の距離は、円錐面64aと第2の形成面73との間の距離Lpよりも短い。
【0130】
ノズルヘッド31が第3の仕切113を有する場合、第3の仕切113は、円錐面64aに接触する。第3の仕切113は、吐出路33を、四つの分割吐出路116に区切る。なお、第3の仕切113は、円錐面64aから離間しても良い。この場合、第3の仕切113と円錐面64aとの間の距離は、円錐面64aと第2の形成面73との間の距離Lpよりも短い。
【0131】
以上説明された少なくとも一つの実施形態によれば、ノズルに設けられる第1の内面は、円錐状の第1の曲面を含む。ノズルに設けられる第2の内面は、間隔を介して第1の内面に向くとともに、円錐状の第2の曲面を含む。粉体及び流体を端部から吐出する第2の通路が、第1の曲面と第2の曲面との間に形成される。第2の通路に粉体及び流体を供給する拡散室が、第1の内面と第2の内面との間に形成される。拡散室における第1の内面と第2の内面との間の距離は、第2の通路における第1の曲面と第2の曲面との間の距離よりも長い。このため、拡散室における抵抗は、第2の通路における抵抗よりも低い。拡散室に供給された粉体及び流体は、抵抗の差により、拡散室で拡散された後に第2の通路に供給される。また、第2の通路は、円錐状の第1の曲面及び第2の曲面の間に設けられるため、ノズルの中心軸の周方向に延びるスリット状に形成される。従って、拡散室から第2の通路に供給される粉体及び流体の分布が不均一になることが抑制され、ひいてはノズルの向きの変化により吐出される粉体及び流体の分布が変化することが抑制される。さらに、ノズル部材の内部で粉体が詰まることが抑制される。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0133】
1…積層造形システム、21…ノズル、22…供給装置、31…ノズルヘッド、31a…先端、32…出射路、33…吐出路、41…出射装置、42…材料供給装置、64…第1の形成面、64a…円錐面、73…第2の形成面、81…拡散室、85…拡散空間、93…供給路、95…供給孔、101…第1の突出部、102…第2の突出部、111…第1の仕切、112…第2の仕切、113…第3の仕切、M…材料、E…エネルギー線、G…キャリアガス、Ax…中心軸、Le,Lp…距離。
図1
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図12