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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】バッテリ冷却装置及びバッテリ冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6554 20140101AFI20221129BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20221129BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20221129BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20221129BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20221129BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20221129BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20221129BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20221129BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20221129BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20221129BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20221129BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20221129BHJP
   H01M 10/652 20140101ALI20221129BHJP
【FI】
H01M10/6554
B60K11/04 H
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/651
H01M10/6569
H01M10/6568
H01M10/6556
H01M10/653
H01M10/617
B60H1/32 611Z
H01M10/652
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019173652
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021051894
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】垣内 修司
(72)【発明者】
【氏名】井田 博之
(72)【発明者】
【氏名】茂木 博
(72)【発明者】
【氏名】林 直人
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-190675(JP,A)
【文献】特開2013-077432(JP,A)
【文献】国際公開第2015/019429(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60-10/667
B60K 11/04
B60K 1/04
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、車両走行用の電力を蓄えるバッテリ(10)を冷却するバッテリ冷却装置(20B)であって、
前記バッテリ(10)を冷却するための熱媒体が内部を通流する熱交換器(50)と、
前記熱交換器(50)のうち前記バッテリ(10)に面する側に配置され、前記バッテリ(10)の熱を前記熱交換器(50)に伝えることが可能な伝熱部材(60)と、を有し、
前記伝熱部材(60)の熱抵抗値は、前記熱媒体の流れ方向を基準として、下流側よりも上流側において高く、
前記伝熱部材(60)は、熱伝導率の低い低伝導部(61)と、この低伝導部(61)よりも熱伝導率の高い高伝導部(62)と、を含むと共に、これらの低伝導部(61)及び高伝導部(62)が重ね合わされて構成され、
前記低伝導部(61)は、上流側よりも下流側が薄く形成され、
前記高伝導部(62)は、上流側よりも下流側が厚く形成されていることを特徴とするバッテリ冷却装置。
【請求項2】
前記伝熱部材(60)は、それぞれ熱伝導率の異なる複数の素材によって構成されていることを特徴とする請求項1記載のバッテリ冷却装置。
【請求項3】
前記低伝導部(61)は、前記熱交換器(50)に密着していることを特徴とする請求項記載のバッテリ冷却装置。
【請求項4】
車両走行用の電力を蓄えるバッテリ(10)と、
前記バッテリ(10)に面して配置され、内部を通流する熱媒体によって前記バッテリ(10)を冷却する熱交換器(50)と、
前記バッテリ(10)と前記熱交換器(50)との間に配置され、前記バッテリ(10)の熱を前記熱交換器(50)に伝えることが可能な伝熱部材(60)と、を有し、
前記伝熱部材(60)の熱抵抗値は、前記熱媒体の流れ方向を基準として、下流側よりも上流側において高く、
前記伝熱部材(60)は、熱伝導率の低い低伝導部(61)と、この低伝導部(61)よりも熱伝導率の高い高伝導部(62)と、を含むと共に、これらの低伝導部(61)及び高伝導部(62)が重ね合わされて構成され、
前記低伝導部(61)は、上流側よりも下流側が薄く形成され、
前記高伝導部(62)は、上流側よりも下流側が厚く形成されていることを特徴とするバッテリ冷却構造。
【請求項5】
前記伝熱部材(60)は、それぞれ熱伝導率の異なる複数の素材によって構成されていることを特徴とする請求項4記載のバッテリ冷却構造。
【請求項6】
前記低伝導部(61)は、前記熱交換器(50)に密着していることを特徴とする請求項4記載のバッテリ冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温のバッテリを冷却する冷却技術に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両には、駆動源の一部または全部としてモータが用いられる。モータは、車体に搭載されたバッテリから通電され、作動する。バッテリは、モータの作動中において高温となる。このため、このような車両には、バッテリを冷却するためのバッテリ冷却装置を搭載することが知られている。従来技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1には、バッテリに沿って熱交換器が配置されることが開示されている。熱交換器内には熱媒体が流されており、バッテリは、熱媒体との熱交換によって冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-203535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱交換器内を流れる熱媒体は、バッテリとの熱交換により温度が上昇する。熱媒体の流れ方向を基準とした場合に、熱交換が行われる前の上流側では、バッテリと熱媒体との温度差が大きいため、バッテリを容易に冷却することができる。一方、熱媒体の温度が上昇している下流側では、バッテリと熱媒体との温度差が小さくなり、容易にバッテリを冷却することができない。バッテリを均等に冷却することのできる技術の提供が望まれる。
【0006】
本発明は、バッテリを均等に冷却することのできる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
本発明の一つの面によれば、車両に搭載され、車両走行用の電力を蓄えるバッテリ(10)を冷却するバッテリ冷却装置(20;20A;20B;20C;20D;20E)であって、
前記バッテリ(10)を冷却するための熱媒体が内部を通流する熱交換器(30;50)と、
前記熱交換器(30;50)のうち前記バッテリ(10)に面する側に配置され、前記バッテリ(10)の熱を前記熱交換器(30;50)に伝えることが可能な伝熱部材(40;60;70;80;90)と、を有し、
前記伝熱部材(40;60;70;80;90)の熱抵抗値は、前記熱媒体の流れ方向を基準として、下流側よりも上流側において高いことを特徴とするバッテリ冷却装置が提供される。
【0009】
好ましくは、前記伝熱部材(40;60;80;90)は、それぞれ熱伝導率の異なる複数の素材によって構成されている。
【0010】
好ましくは、前記伝熱部材(60)は、熱伝導率の低い低伝導部(61)と、この低伝導部(61)よりも熱伝導率の高い高伝導部(62)と、を含むと共に、これらの低伝導部(61)及び高伝導部(62)が重ね合わされて構成され、
前記低伝導部(61)は、上流側よりも下流側が薄く形成され、
前記高伝導部(62)は、上流側よりも下流側が厚く形成されている。
【0011】
好ましくは、前記低伝導部(61)は、前記熱交換器(50)に密着している。
【0012】
好ましくは、前記伝熱部材(70)は、空気よりも熱伝導率の高い伝熱部材基部(71)に複数の穴(72)が開けられて形成され、
前記穴(72)の面積は、下流側よりも上流側において広い。
【0013】
本発明の別の面によれば、車両走行用の電力を蓄えるバッテリ(10)と、
前記バッテリ(10)に面して配置され、内部を通流する熱媒体によって前記バッテリ(10)を冷却する熱交換器(30;50)と、
前記バッテリ(10)と前記熱交換器(30;50)との間に配置され、前記バッテリ(10)の熱を前記熱交換器(30;50)に伝えることが可能な伝熱部材(40;60;70;80;90)と、を有し、
前記伝熱部材(40;60;70;80;90)の熱抵抗値は、前記熱媒体の流れ方向を基準として、下流側よりも上流側において高いことを特徴とするバッテリ冷却構造が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、バッテリと熱交換器との間には、伝熱部材が配置されている。伝熱部材の熱抵抗値は、下流側よりも上流側において高く設定されている。このため、上流側において熱媒体の熱はバッテリに伝わりにくく、下流側において熱媒体の熱はバッテリに伝わりやすい。伝熱部材を配置することにより、単位面積当たりの伝熱量について下流側よりも上流側を抑制する。熱媒体が下流側に到達する前に過度に高温となることを防止し、下流側においてもバッテリを適切に冷却することができる。結果、よりバッテリを均等に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1によるバッテリ及びバッテリ冷却装置の分解斜視図である。
図2】実施例2によるバッテリ及びバッテリ冷却装置の分解斜視図である。
図3】実施例3によるバッテリ及びバッテリ冷却装置の正面図である。
図4図4Aは、実施例4によるバッテリ及びバッテリ冷却装置の分解斜視図、図4Bは、図4Aの4B部拡大図である。
図5】実施例5によるバッテリ及びバッテリ冷却装置の分解斜視図である。
図6】実施例6によるバッテリ及びバッテリ冷却装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図中Leは左、Riは右、Upは上、Dnは下を示している。
【0017】
<実施例1>
図1を参照する。図1には、電力が蓄えられる3つのバッテリ10と、これらのバッテリ10を冷却するためのバッテリ冷却装置20(以下、「冷却装置20」と略記する。)と、が示されている。これらのバッテリ10及び冷却装置20は、例えば、電力で走行用モータを駆動して走行する電気自動車や、動力源が内燃機関とモータとからなるハイブリッド車両に搭載される。
【0018】
バッテリ10は、車両走行用のモータに通電するために用いられるものであり、充電時に発熱し高温となる。冷却装置20は、バッテリ10に密着して設けられ、高温となったバッテリ10を冷却する。
【0019】
冷却装置20は、内部に熱媒体としての冷媒が流される熱交換器30と、この熱交換器30に一面が密着しバッテリ10の熱を熱交換器30に伝えることが可能な伝熱部材40と、からなる。
【0020】
熱交換器30は、例えば、アルミニウム合金や銅合金等の熱伝導率の高い材料によって構成される。熱交換器30は、筒状に形成され上下に延びる4本の支持部材31と、これらの支持部材31によって支持され内部に冷媒が流れる熱交換チューブ32と、最も左の支持部材31の上部に接続され冷媒が流入する流入部33と、最も右の支持部材31の下部に接続され冷媒が流出する流出部34と、を有する。
【0021】
熱交換器30は、支持部材31と、熱交換チューブ32と、流入部33と、流出部34と、をろう付けによって一体的に接合することが好ましい。これにより、高い剛性を確保することができる。
【0022】
熱交換チューブ32は、押出成形によって形成された扁平状の筒体である。内部には冷媒の流れ方向に沿って複数の壁を形成することもできる。
【0023】
流入部33から最も左側の支持部材31に導入された気液混合の冷媒は、上下に分かれてそれぞれの熱交換チューブ32に流れる。熱交換チューブ32を流れる冷媒は、伝熱部材40を介してバッテリ10と熱交換を行う。熱交換を終えた冷媒は、最も右側の支持部材31を介して流出部34から外部に排出される。流出部34から排出された冷媒は、図示しない熱交換器で冷却され流入部33へ戻される。
【0024】
伝熱部材40は、それぞれ素材の異なるシート状の第1~第3シート41~43によって構成される。シート状の伝熱部材40は、一面が熱交換チューブ32に密着し、他面がバッテリ10に密着している。
【0025】
例えば、第1シート41の素材は、シリコーンゴムであり、第2シート42の素材は、クロロプレンゴム(CR)であり、第3シート43の素材は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)である。これらのシート41~43は、それぞれ熱抵抗値が異なる。熱抵抗値は、第3シート43、第2シート42、第1シート41の順に低い。換言すれば、伝熱部材40の熱抵抗値は、熱媒体の流れ方向を基準として、下流側よりも上流側において高い。
【0026】
ここで、物質の熱の伝わりにくさを表す値である熱抵抗値は、次の式(1)によって表される。
熱抵抗値=伝熱部材40の厚さ/伝熱部材の熱伝導率…(1)
【0027】
(1)式より、伝熱部材40の厚さが同じである場合には、熱抵抗値の値は、伝熱部材の熱伝導率に反比例する。このため、シート41~43を、それぞれの厚さの等しい部材を配置するときは、第3シート43、第2シート42、第1シート41の順に熱伝導率が高い部材を選択するとよい。換言すれば、厚さの等しい伝熱部材40の熱伝導率を、熱媒体の流れ方向を基準として、下流側よりも上流側において低くなるように選択すればよい。
【0028】
あるいは、シート41~43を、それぞれの熱伝導率が等しい部材を配置するときは、第1シート41、第2シート42、第3シート43の順に伝熱部材の厚みが厚い部材を選択するとよい。換言すれば、熱伝導率の等しい伝熱部材40の厚みを、熱媒体の流れ方向を基準として、下流側よりも上流側において厚くなるように選択すればよい。
【0029】
さらには、第3シート43、第2シート42、第1シート41の順に熱抵抗値が高くなるように、各部材の厚みと熱伝導率とを選択することでもよい。
【0030】
冷媒の流れる方向を基準として、最も上流側のバッテリ10に第1シート41が密着し、この隣のバッテリ10に第2シート42が密着し、最も下流側のバッテリ10に第3シート43が密着している。伝熱部材40を構成するシート41~43の熱伝導率は、上流側よりも下流側において高い。
【0031】
なお、熱交換器30を流れる熱媒体は、冷媒の他に冷却水を採用することもできる。バッテリ10を冷却することができるものであれば、熱媒体の種類はこれらに限られない。
【0032】
以上に説明したバッテリ冷却装置20によれば、以下の効果を得ることができる。
【0033】
バッテリ10と熱交換器30との間には、伝熱部材40が配置されている。伝熱部材40の熱抵抗値は、下流側よりも上流側において高く設定されている。このため、上流側において熱媒体の熱はバッテリ10に伝わりにくく、下流側において熱媒体の熱はバッテリ10に伝わりやすい。伝熱部材40を配置することにより、単位面積当たりの伝熱量について下流側よりも上流側を抑制する。熱媒体が下流側に到達する前に過度に高温となることを防止し、下流側においてもバッテリ10を適切に冷却することができる。結果、よりバッテリ10を均等に冷却することができる。
【0034】
特に、熱媒体が冷媒である場合には、冷媒は、バッテリ10と熱の交換をしつつ下流側へと流れるとともに液体の比率が減少し、流出部34に到達するよりも上流側の位置で液体の比率がゼロ(湿り度がゼロ)となるおそれがある。そして、湿り度がゼロの冷媒がバッテリ10から熱を吸収すると過熱度を持つこととなり、バッテリ10の冷却を十分に行うことができないおそれや、上流側に配置されたバッテリ10との温度差が生じてバッテリ10の位置による劣化時期の相違が発生するおそれがある。この点、以上に説明したバッテリ冷却装置20によれば、冷媒が流出部34に到達するまでに湿り度がゼロとなるのを防止すること、あるいは流出部34よりも上流の位置で湿り度がゼロとなるとしても流出部34の近傍となるように下流側へと移行させることができ、適切に全てのバッテリ10を冷却することができる。
【0035】
伝熱部材40は、それぞれ熱伝導率の異なる複数の素材(第1~第3シート41~43)によって構成されている。複数の熱伝導率の異なる素材を選択することにより、それぞれの伝熱部材40の厚みを同じにすることができる。このため、第1~第3シート41~43を均等にバッテリ10に密着させることができ、より適切にバッテリ10を冷却することができる。
【0036】
<実施例2>
次に、実施例2による冷却装置20Aを図面に基づいて説明する。
【0037】
図2を参照する。実施例2による冷却装置20Aは、バッテリ10の下部に配置されていると共に、冷却水によってバッテリ10を冷却する。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0038】
冷却装置20Aは、バッテリ10を冷却するための熱交換器50と、この熱交換器50に載せられ上面にバッテリ10が載せられている伝熱部材40と、を有する。
【0039】
熱交換器50は、内部に冷却水が流される熱交換器本体51と、この熱交換器本体51に冷却水を導入する流入部53と、熱交換器本体51から冷却水を排出する流出部54と、を有する。
【0040】
熱交換器本体51は、3つのバッテリ10を載置することのできる大きさとされている。
【0041】
伝熱部材40は、1つの熱交換器本体51の上面に、第1シート41~第3シート43が載せられてなる。第1シート41~第3シート43のそれぞれに、1つずつバッテリ10が載せられている。
【0042】
以上に説明した冷却装置20Aも本発明所定の効果を奏する。
【0043】
<実施例3>
次に、実施例3による冷却装置20Bを図面に基づいて説明する。
【0044】
図3を参照する。実施例3による冷却装置20Bは、実施例1及び2による冷却装置とは、伝熱部材60が異なる。実施例1又は2と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0045】
冷却装置20Bは、熱交換器50と、この熱交換器50に載せられバッテリ10の熱を熱交換器50に伝えることが可能な伝熱部材60と、を有する。
【0046】
伝熱部材60は、熱伝導率の低い低伝導部61と、この低伝導部61よりも熱伝導率の高い高伝導部62と、を有する。伝熱部材60は、熱交換器50に密着している低伝導部61に、高伝導部62が重ね合わされて構成されている。
【0047】
例えば、低伝導部61の素材は、シリコーンゴムであり、高伝導部62の素材は、クロロプレンゴム(CR)やエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)である。又は、低伝導部61の素材は、クロロプレンゴム(CR)であり、高伝導部62の素材は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)である。低伝導部61よりも高伝導部62の熱伝導率が高く、また、バッテリ冷却装置に求められる高温耐久性や電気伝導性等の品質要件に適合するものであれば、これらの素材は、任意のものを選択することができる。
【0048】
低伝導部61は、熱媒体の流れ方向を基準として、上流側よりも下流側が薄く形成され、高伝導部62は、上流側よりも下流側が厚く形成されている。高伝導部62は、バッテリ10に密着している。
【0049】
なお、高伝導部62が熱交換器50に密着し、低伝導部61がバッテリ10に密着する構成を採用することもできる。この場合であっても、低伝導部61は、熱媒体の流れ方向を基準として、上流側よりも下流側が薄く形成され、高伝導部62は、上流側よりも下流側が厚く形成される。
【0050】
以上に説明した冷却装置20Bも本発明所定の効果を奏する。
【0051】
加えて、低伝導部61は、上流側よりも下流側が薄く形成され、高伝導部62は、上流側よりも下流側が厚く形成されている。上流側から下流側に向かって伝熱部材60の熱伝導率を連続的に変化させることができる。このため、より適切にバッテリ10を冷却することができる。
【0052】
さらに、低伝導部61は、熱交換器50に密着している。低伝導部61を熱交換器50に密着させることにより、高伝導部62を熱交換器50に密着させた場合に比べて、熱交換器50に入力される熱量の急激な変化を確実に抑制することができる。熱交換器50の保護性能を高めることができる。
【0053】
<実施例4>
次に、実施例4による冷却装置20Cを図面に基づいて説明する。
【0054】
図4A及び図4Bを参照する。実施例4による冷却装置20Cは、実施例1乃至3による冷却装置とは、伝熱部材70が異なる。実施例1、2又は3と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0055】
冷却装置20Cは、熱交換器50に一枚の伝熱部材70が載せられて構成されている。伝熱部材70は、バッテリ10の熱を熱交換器50に伝えることができる。
【0056】
伝熱部材70は、バッテリ10に密着している一枚板状の伝熱部材基部71に、複数の穴72が開けられてなる。伝熱部材70の素材には、シリコーンゴム、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等を用いることができる。これらの素材は、空気よりも熱伝導率が高い。例えば、伝熱部材基部71は、全体が同じ厚みとされている。
【0057】
穴72は、複数開けられており、より多くの穴72が上流側に開けられている。上流側に配置されているバッテリ10(図面左側のバッテリ10)の下方に位置する各穴72の面積の合計は、真ん中に配置されているバッテリ10の下方に位置する各穴72の面積の合計よりも大きく、且つ、下流側に配置されているバッテリ10(図面右側のバッテリ10)の下方に位置する各穴72の面積の合計よりも大きい。真ん中に配置されているバッテリ10の下方に位置する各穴72の面積の合計は、下流側に配置されているバッテリ10の下方に位置する各穴72の面積の合計よりも大きい。つまり、穴72の面積は、下流側よりも上流側において広い。上流側に配置されるバッテリ10に隣接する部位に形成された穴72の面積がより大きくなるよう、穴72は、形成されている、ということもできる。
【0058】
穴72の形成されている部位は、空気によって満たされている。空気の熱伝導率は、伝熱部材基部71の熱伝導率よりも低い。このため、上流側においてより熱伝導率が低くなる。
【0059】
各穴72の面積の合計は、下流側よりも上流側において広くなるように形成されるだけでなく、図4に示されるように、多数の、且つ小さな面積の穴72が、伝熱部材基部71の全体に分散されるように配置されていることが好ましい。バッテリ10の温度の不均一化を抑制することができる。
【0060】
以上に説明した冷却装置20Cも本発明所定の効果を奏する。
【0061】
加えて、伝熱部材70は、空気よりも熱伝導率の高い伝熱部材基部71に複数の穴72が開けられて形成されている。伝熱部材基部71に穴72をあけることにより伝熱部材70を構成する。1つの部材に穴をあけることにより伝熱部材70を構成することができるため、部品コストを安価にすることができる。
【0062】
<実施例5>
次に、実施例5による冷却装置20Dを図面に基づいて説明する。
【0063】
図5を参照する。実施例5による冷却装置20Dは、実施例1乃至4による冷却装置とは、伝熱部材80が異なる。実施例1、2、3又は4と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0064】
冷却装置20Dは、熱交換器50の上面にバッテリ10からの熱を伝える伝熱部材80が配置されてなる。
【0065】
伝熱部材80は、第1シート41~第3シート43と、これらの第1シート41~第3シート43の外周をそれぞれ囲っている外縁部84と、を有する。第1シート41~第3シート43、及び、外縁部84は、バッテリ10に密着している。
【0066】
外縁部84は、第1シート41~第3シート43の外周に亘って一体的に形成されている。外縁部84の熱伝導率は、第1シート41の熱伝導率より低くても良いし、第3シート43の熱伝導率より高くても良い。外縁部84の素材には、第1シート41~第3シート43よりも剛性の高い樹脂材(例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン6、ナイロン66、ABS樹脂など)を用いることが好ましい。生産時に、伝熱部材80の全体の取り扱いを容易化できる。
【0067】
バッテリ10は、外気に接触している外周部分に比べて、中央部分10aに熱が篭りやすい。少なくとも熱の篭りやすい中央部分10aに第1シート41~第3シート43を密着させる。バッテリ10のうち、熱媒体に大きな影響を与える中央部分10aに第1シート41~第3シート43を密着させることが重要である。
【0068】
以上に説明した冷却装置も本発明所定の効果を奏する。
【0069】
<実施例6>
次に、実施例6による冷却装置20Eを図面に基づいて説明する。
【0070】
図6を参照する。実施例6による冷却装置20Eは、実施例1乃至5による冷却装置とは、伝熱部材90が異なる。実施例1、2、3、4又は5と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0071】
冷却装置20Eは、熱交換器30の側面にバッテリ10からの熱を伝える伝熱部材90が配置されてなる。
【0072】
伝熱部材90は、第1シート41~第3シート43と、これらの第1シート41~第3シート43の両端にそれぞれ形成されている外縁部94と、を有する。第1シート41~第3シート43、及び、外縁部94は、バッテリ10に密着している。
【0073】
外縁部94の熱伝導率は、第1シート41の熱伝導率より低くても良いし、第3シート43の熱伝導率より高くても良い。外縁部94の素材には、一定の剛性を有する樹脂材(例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン6、ナイロン66、ABS樹脂など)を用いることが好ましい。外縁部94の形状を熱交換チューブ32に取り付け可能に設定することで、伝熱部材90を熱交換チューブ32に機械的に取り付けることが可能となり、冷却装置20Eの生産性を向上できる。
【0074】
バッテリ10は、外気に接触している外周部分に比べて、中央部分10aに熱が篭りやすい。少なくとも熱の篭りやすい中央部分10aに第1シート41~第3シート43を密着させる。バッテリ10のうち、熱媒体に大きな影響を与える中央部分10aに第1シート41~第3シート43を密着させることが重要である。
【0075】
以上に説明した冷却装置も本発明所定の効果を奏する。
【0076】
尚、本発明による冷却装置は、複数のバッテリを冷却するものに限られるものではない。1つのバッテリ10に対して熱伝導率の異なるシート41~43を密着させ、熱媒体の流れ方向を基準として、熱伝導率が下流側よりも上流側において低くなるよう設定しても良い。
【0077】
さらに、各実施例において、熱媒体は、冷媒又は冷却水のどちらかに限定されるものではなく、任意の熱媒体を選択することができる。加えて、バッテリ冷却装置の配置される場所は、バッテリの側方や下方に限らず上方にも配置することができる。また、実施例ではバッテリの下方に冷却装置が配置されているものであっても、バッテリの側方や上方に冷却装置を配置することも可能である。
【0078】
本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のバッテリ冷却装置は、電気自動車やハイブリッド車両に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0080】
10…バッテリ
20、20A、20B、20C、20D、20E…バッテリ冷却装置
30、50…熱交換器
40、60、70、80、90…伝熱部材
61…低伝導部
62…高伝導部
71…伝熱部材基部
72…穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6