(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
F15B 11/044 20060101AFI20221129BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20221129BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
F15B11/044
E02F9/22 Q
F15B11/00 Q
(21)【出願番号】P 2019177340
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大輔
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特許第5886976(JP,B2)
【文献】特開平10-147959(JP,A)
【文献】特開2018-048503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-11/22;21/14
E02F 3/43- 3/43; 3/84- 3/85; 9/20- 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータと、
原動機によって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータへの圧油の流れを制御するオープンセンタ型の制御弁と、
前記制御弁を操作する操作装置と、
前記操作装置の操作量を検出する操作量検出器と、
前記油圧ポンプの容量を可変制御するレギュレータと、
前記油圧ポンプから前記制御弁に供給された圧油をタンクに戻すブリードオフ管路に配置されたブリードオフ弁と、
前記操作量検出器で検出された前記操作装置の操作量に応じて、前記油圧ポンプの容量を制御するための第1指令電流を出力すると共に、前記ブリードオフ弁の開度を制御するための第2指令電流を出力するコントローラとを備えた作業機械において、
前記コントローラからの前記第2指令電流によって作動してブリードオフ制御圧を生成する電磁比例弁を備え、
前記ブリードオフ弁は、前記電磁比例弁からのブリードオフ制御圧によって作動し、前記ブリードオフ制御圧が大きくなるのに従って開口面積が減少しており、
前記コントローラは、
前記操作量検出器で検出された前記操作装置の操作量を用いて、前記操作量の減少速度を演算し、
前記操作量の減少速度が予め設定された所定値より大きい場合、前記操作量の減少速度が前記所定値以下である場合と比べて
前記ブリードオフ制御圧が小さくなるように、1より小さい減係数を乗算して前記第2指令電流を補正することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項
1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記操作量の減少速度が前記所定値より大きい場合、前記操作量の減少速度と前記所定値との差分が大きくなるのに従って前記減係数を低下させることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項
2に記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記減係数が上昇するときの速度を制限することを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
走行体と、前記走行体の上側に旋回可能に設けられた旋回体と、前記旋回体に連結された作業装置とを備え、
前記油圧アクチュエータは、複数であって、前記旋回体を旋回させる旋回モータを含むことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械は、油圧アクチュエータと、原動機によって駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの圧油の流れを制御する制御弁と、制御弁を操作する操作装置とを備える。操作装置は、例えば、オペレータが操作可能な操作レバーと、操作レバーの中立位置からの操作量に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁とを有し、パイロット弁で生成されたパイロット圧を制御弁の受圧部に出力する。これにより、制御弁を中立位置から切換位置へ切換える。その結果、油圧アクチュエータは、制御弁を介し圧油が給排されて駆動する。
【0003】
オープンセンタ型の制御弁は、油圧ポンプからの圧油を油圧アクチュエータに供給するためのメータイン開口と、油圧アクチュエータからの圧油をタンクに排出するためのメータアウト開口と、油圧ポンプからの圧油をタンクに戻すためのブリードオフ開口とを有する。制御弁の中立位置では、例えば、メータイン開口及びメータアウト開口が閉じると共に、ブリードオフ開口が開いて、油圧ポンプからの圧油をタンクに戻す。制御弁の切換位置では、例えば、上述したパイロット圧(すなわち、操作レバーの操作量)が大きくなるのに従って、メータイン開口及びメータアウト開口の面積が増加すると共に、ブリードオフ開口の面積が減少する。これにより、油圧アクチュエータに圧油を給排すると共に、その流量を制御する。
【0004】
特許文献1に記載の作業機械は、制御弁のブリードオフ開口からタンクに圧油を戻すブリードオフ管路に配置されたブリードオフ弁と、油圧ポンプの容量を可変制御するレギュレータと、パイロット圧(すなわち、操作装置の操作量)を検出する圧力センサと、圧力センサで検出されたパイロット圧に応じてブリードオフ弁及びレギュレータを制御するコントローラとを備える。
【0005】
コントローラは、パイロット圧が大きくなるのに従ってブリードオフ弁の開度(開口面積)が小さくなるように、ブリードオフ弁を制御する。また、コントローラは、パイロット圧に基づいて基準ポンプ流量を演算し、ブリードオフ弁の開度に基づいて基準ポンプ流量を補正し、補正した基準ポンプ流量に対応する油圧ポンプの容量となるように、レギュレータを制御する。これにより、基準ポンプ流量を補正しない場合と比べ、ポンプ流量が減少して、省エネルギを図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術には次のような改善の余地があった。例えば操作レバーを中立位置に素早く戻した場合に、制御弁のメータイン開口及びメータアウト開口面積が減少すると共にブリードオフ開口面積が増加し、これに遅れて、ブリードオフ弁の開口面積が増加する。そのため、ブリードオフ弁の開口面積が一時的に不十分となり、ポンプ圧のとじ込みが発生する。
【0008】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポンプ圧のとじ込みを防ぐことができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、油圧アクチュエータと、原動機によって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータへの圧油の流れを制御するオープンセンタ型の制御弁と、前記制御弁を操作する操作装置と、前記操作装置の操作量を検出する操作量検出器と、前記油圧ポンプの容量を可変制御するレギュレータと、前記油圧ポンプから前記制御弁に供給された圧油をタンクに戻すブリードオフ管路に配置されたブリードオフ弁と、前記操作量検出器で検出された前記操作装置の操作量に応じて、前記油圧ポンプの容量を制御するための第1指令電流を出力すると共に、前記ブリードオフ弁の開度を制御するための第2指令電流を出力するコントローラとを備えた作業機械において、前記コントローラからの前記第2指令電流によって作動してブリードオフ制御圧を生成する電磁比例弁を備え、前記ブリードオフ弁は、前記電磁比例弁からのブリードオフ制御圧によって作動し、前記ブリードオフ制御圧が大きくなるのに従って開口面積が減少しており、前記コントローラは、前記操作量検出器で検出された前記操作装置の操作量を用いて、前記操作量の減少速度を演算し、前記操作量の減少速度が予め設定された所定値より大きい場合、前記操作量の減少速度が前記所定値以下である場合と比べて前記ブリードオフ制御圧が小さくなるように、1より小さい減係数を乗算して前記第2指令電流を補正する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポンプ圧のとじ込みを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態における油圧ショベルの構造を表す側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態における油圧駆動装置の構成のうちの油圧ポンプ、油圧アクチュエータ、及び制御弁等を表す図である。
【
図3】本発明の一実施形態における油圧駆動装置の構成のうちの操作装置等を表す図である。
【
図4】本発明の一実施形態におけるコントローラの機能的構成を表すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態におけるコントローラのブリードオフ制御部の演算テーブルであって、パイロット圧とブリードオフ制御圧との関係を表す図である。
【
図6】本発明の一実施形態におけるブリードオフ弁の動作特性であって、ブリードオフ制御圧とブリードオフ弁の開口面積の関係を表す図である。
【
図7】本発明の一実施形態におけるコントローラの減係数演算部の演算テーブルであって、パイロット圧の減少速度と減係数との関係を表す図である。
【
図8】第1比較例の動作を表すタイムチャートであり、操作レバーが中立位置に戻された場合を示す。
【
図9】本発明の一実施形態の動作を表すタイムチャートであり、操作レバーが中立位置に戻された場合を示す。
【
図10】第2比較例の動作を表すタイムチャートであり、操作レバーが中立位置に戻された場合、且つ、減係数が一時的に上昇する場合を示す。
【
図11】本発明の一実施形態の動作を説明するための図であり、操作レバーが中立位置に戻された場合、且つ、減係数が一時的に上昇する場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は、本実施形態における油圧ショベルの構造を表す側面図である。なお、以降、油圧ショベルのキャブに搭乗したオペレータの前側(
図1の左側)、後側(
図1の右側)、左側(
図1の紙面に対して手前側)、右側(
図1の紙面に対して奥側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0014】
本実施形態の油圧ショベルは、走行可能な走行体1と、走行体1の上側に旋回可能に設けられた旋回体2と、旋回体2の前側に連結された作業装置3とを備える。走行体1は、左側の走行モータ4A及び右側の走行モータ4B(後述の
図2参照)の駆動によって走行する。旋回体2は、旋回モータ5(後述の
図2参照)の駆動によって旋回する。
【0015】
作業装置3は、旋回体2の前部に回動可能に連結されたブーム6と、ブーム6の先端部に回動可能に連結されたアーム7と、アーム7の先端部に回動可能に連結されたバケット8とを備える。ブーム6、アーム7、及びバケット8は、ブームシリンダ9、アームシリンダ10、及びバケットシリンダ11の駆動によってそれぞれ回動する。
【0016】
旋回体2の前部左側には、オペレータが搭乗するキャブ12が設けられている。キャブ12内には、オペレータが操作する複数の操作装置(詳細は後述)が設けられている。
【0017】
油圧ショベルは、複数の操作装置の操作に応じて複数の油圧アクチュエータ(詳細には、上述した走行モータ4A,4B、旋回モータ5、ブームシリンダ9、アームシリンダ10、及びバケットシリンダ11等)を駆動する油圧駆動装置を備える。この油圧駆動装置の構成を、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、本実施形態における油圧駆動装置の構成のうちの油圧ポンプ、油圧アクチュエータ、及び制御弁等を表す図である。
図3は、本実施形態における油圧駆動装置の構成のうちの操作装置等を表す図である。
【0018】
本実施形態の油圧駆動装置は、原動機13(詳細には、エンジン又は電動モータ)と、原動機13によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ14A,14Bと、油圧ポンプ14Aからの圧油によって駆動される走行モータ4A及びバケットシリンダ11と、油圧ポンプ14Bからの圧油によって駆動される走行モータ4B、旋回モータ5、及びオプション用油圧アクチュエータ15と、油圧ポンプ14A,14Bからの圧油によって駆動されるブームシリンダ9及びアームシリンダ10と、油圧ポンプ14Aから走行モータ4A、バケットシリンダ11、アームシリンダ10、及びブームシリンダ9への圧油の流れをそれぞれ制御する走行用制御弁16A、バケット用制御弁17、アーム用制御弁18A、及びブーム用制御弁19Aと、油圧ポンプ14Bから旋回モータ5、ブームシリンダ9、アームシリンダ10、オプション用油圧アクチュエータ15、及び走行モータ4Bへの圧油の流れをそれぞれ制御する旋回用制御弁20、ブーム用制御弁19B、アーム用制御弁18B、オプション用制御弁21、及び走行用制御弁16Bとを備える。
【0019】
各制御弁は、オープンセンタ型であって、油圧ポンプからの圧油を油圧アクチュエータに供給するためのメータイン開口と、油圧アクチュエータからの圧油をタンクに排出するためのメータアウト開口と、油圧ポンプからの圧油をタンクに戻すためのブリードオフ開口とを有する。制御弁の中立位置では、例えば、メータイン開口及びメータアウト開口が閉じると共に、ブリードオフ開口が開いて、油圧ポンプからの圧油をタンクに戻す。制御弁の切換位置では、例えば、後述するパイロット圧が大きくなるのに従って、メータイン開口及びメータアウト開口の面積が増加すると共に、ブリードオフ開口の面積が減少する。これにより、油圧アクチュエータに圧油を給排すると共に、その流量を制御する。
【0020】
本実施形態の油圧駆動装置は、走行用制御弁16Aを操作する走行用操作装置22Aと、走行用制御弁16Bを操作する走行用操作装置22Bと、ブーム用制御弁19A,19B及びバケット用制御弁17を操作する作業用操作装置23Aと、アーム用制御弁18A,18B及び旋回用制御弁20を操作する作業用操作装置23Bと、オプション用制御弁21を操作するオプション用操作装置24とを備える。
【0021】
走行用操作装置22Aは、図示しないものの、オペレータが前後方向に操作可能な操作レバーと、操作レバーの中立位置から前側の操作量に応じてパイロット圧を生成する第1パイロット弁と、操作レバーの中立位置から後側の操作量に応じてパイロット圧を生成する第2パイロット弁とを有する。そして、第1パイロット弁で生成されたパイロット圧を走行用制御弁16Aの一方側の受圧部に出力して、走行用制御弁16Aを中立位置から一方側の切換位置に切換える。あるいは、第2パイロット弁で生成されたパイロット圧を走行用制御弁16Aの他方側の受圧部に出力して、走行用制御弁16Aを中立位置から他方側の切換位置に切換える。その結果、走行モータ4Aは、圧油が給排されて駆動する。圧力センサ25A,25B(操作量検出器)は、走行用操作装置22Aの前側及び後側の操作量に対応する、第1パイロット弁及び第2パイロット弁のパイロット圧をそれぞれ検出する。
【0022】
走行用操作装置22Bは、図示しないものの、オペレータが前後方向に操作可能な操作レバーと、操作レバーの中立位置から前側の操作量に応じてパイロット圧を生成する第3パイロット弁と、操作レバーの中立位置から後側の操作量に応じてパイロット圧を生成する第4パイロット弁とを有する。そして、第3パイロット弁で生成されたパイロット圧を走行用制御弁16Bの一方側の受圧部に出力して、走行用制御弁16Bを中立位置から一方側の切換位置に切換える。あるいは、第4パイロット弁で生成されたパイロット圧を走行用制御弁16Bの他方側の受圧部に出力して、走行用制御弁16Bを中立位置から他方側の切換位置に切換える。その結果、走行モータ4Bは、圧油が給排されて駆動する。圧力センサ25C,25D(操作量検出器)は、走行用操作装置22Bの前側及び後側の操作量に対応する、第3パイロット弁及び第4パイロット弁のパイロット圧をそれぞれ検出する。
【0023】
作業用操作装置23Aは、図示しないものの、オペレータが前後方向及び左右方向に操作可能な操作レバーと、操作レバーの中立位置から前側の操作量に応じてパイロット圧を生成する第5パイロット弁と、操作レバーの中立位置から後側の操作量に応じてパイロット圧を生成する第6パイロット弁と、操作レバーの中立位置から左側の操作量に応じてパイロット圧を生成する第7パイロット弁と、操作レバーの中立位置から右側の操作量に応じてパイロット圧を生成する第8パイロット弁とを有する。そして、第5パイロット弁で生成されたパイロット圧をアーム用制御弁18A,18Bの一方側の受圧部に出力して、アーム用制御弁18A,18Bを中立位置から一方側の切換位置に切換える。あるいは、第6パイロット弁で生成されたパイロット圧をアーム用制御弁18A,18Bの他方側の受圧部に出力して、アーム用制御弁18A,18Bを中立位置から他方側の切換位置に切換える。その結果、アームシリンダ10は、圧油が給排されて駆動する。圧力センサ25E,25F(操作量検出器)は、作業用操作装置23Aの前側及び後側の操作量に対応する、第5パイロット弁及び第6パイロット弁のパイロット圧をそれぞれ検出する。
【0024】
作業用操作装置23Aは、第7パイロット弁で生成されたパイロット圧を旋回用制御弁20の一方側の受圧部に出力して、旋回用制御弁20を中立位置から一方側の切換位置に切換える。あるいは、第8パイロット弁で生成されたパイロット圧を旋回用制御弁20の他方側の受圧部に出力して、旋回用制御弁20を中立位置から他方側の切換位置に切換える。その結果、旋回モータ5は、圧油が給排されて駆動する。圧力センサ25G,25H(操作量検出器)は、作業用操作装置23Aの左側及び右側の操作量に対応する、第11パイロット弁及び第12パイロット弁のパイロット圧をそれぞれ検出する。
【0025】
作業用操作装置23Bは、図示しないものの、オペレータが前後方向及び左右方向に操作可能な操作レバーと、操作レバーの中立位置から前側の操作量に応じてパイロット圧を生成する第9パイロット弁と、操作レバーの中立位置から後側の操作量に応じてパイロット圧を生成する第10パイロット弁と、操作レバーの中立位置から左側の操作量に応じてパイロット圧を生成する第11パイロット弁と、操作レバーの中立位置から右側の操作量に応じてパイロット圧を生成する第12パイロット弁とを有する。そして、第9パイロット弁で生成されたパイロット圧をブーム用制御弁19A,19Bの一方側の受圧部に出力して、ブーム用制御弁19A,19Bを中立位置から一方側の切換位置に切換える。あるいは、第10パイロット弁で生成されたパイロット圧をブーム用制御弁19A,19Bの他方側の受圧部に出力して、ブーム用制御弁19A,19Bを中立位置から他方側の切換位置に切換える。その結果、ブームシリンダ9は、圧油が給排されて駆動する。圧力センサ25I,25J(操作量検出器)は、作業用操作装置23Bの前側及び後側の操作量に対応する、第9パイロット弁及び第10パイロット弁のパイロット圧をそれぞれ検出する。
【0026】
作業用操作装置23Bは、第11パイロット弁で生成されたパイロット圧をバケット用制御弁17の一方側の受圧部に出力して、バケット用制御弁17を中立位置から一方側の切換位置に切換える。あるいは、第12パイロット弁で生成されたパイロット圧をバケット用制御弁17の他方側の受圧部に出力して、バケット用制御弁17を中立位置から他方側の切換位置に切換える。その結果、バケットシリンダ11は、圧油が給排されて駆動する。圧力センサ25K,25L(操作量検出器)は、作業用操作装置23Bの左側及び右側の操作量に対応する、第11パイロット弁及び第12パイロット弁のパイロット圧をそれぞれ検出する。
【0027】
オプション用操作装置24は、図示しないものの、オペレータが操作可能な操作レバーと、操作レバーの中立位置から一方側の操作量に応じてパイロット圧を生成する第13パイロット弁と、操作レバーの中立位置から他方側の操作量に応じてパイロット圧を生成する第14パイロット弁とを有する。そして、第13パイロット弁で生成されたパイロット圧をオプション用制御弁21の一方側の受圧部に出力して、オプション用制御弁21を中立位置から一方側の切換位置に切換える。あるいは、第14パイロット弁で生成されたパイロット圧をオプション用制御弁21の他方側の受圧部に出力して、オプション用制御弁21を中立位置から他方側の切換位置に切換える。その結果、オプション用油圧アクチュエータは、圧油が給排されて駆動する。圧力センサ25M,25N(操作量検出器)は、オプション用操作装置24の一方側及び他方側の操作量に対応する、第13パイロット弁及び第14パイロット弁のパイロット圧をそれぞれ検出する。
【0028】
本実施形態の油圧駆動装置は、油圧ポンプ14A,14Bの容量を可変制御するレギュレータ26A,26Bと、油圧ポンプ14Aから制御弁16A,17,18A,19Aに供給された圧油をタンクに戻すブリードオフ管路27Aに配置されたブリードオフ弁28Aと、油圧ポンプ14Bから制御弁20,19B,18B,21,16Bに供給された圧油をタンクに戻すブリードオフ管路27Bに配置されたブリードオフ弁28Bと、レギュレータ26A,26Bを制御すると共に、電磁比例弁29A,29Bを介しブリードオフ弁28A,28Bを制御するコントローラ30とを備える。
【0029】
レギュレータ26Aは、図示のように、油圧ポンプ14Aの斜板の傾転角を可変させる傾転シリンダと、電磁弁とを有する。この電磁弁は、コントローラ30からのポンプ指令電流(第1指令電流)によって作動し、傾転シリンダの作動圧を制御する。これにより、油圧ポンプ14Aの容量を可変するようになっている。
【0030】
レギュレータ26Bは、図示のように、油圧ポンプ14Bの斜板の傾転角を可変させる傾転シリンダと、電磁弁とを有する。この電磁弁は、コントローラ30からのポンプ指令電流(第1指令電流)によって作動し、傾転シリンダの作動圧を制御する。これにより、油圧ポンプ14Bの容量を可変するようになっている。
【0031】
電磁比例弁29Aは、コントローラ30からのブリードオフ指令電流(第2指令電流)によって作動し、ブリードオフ制御圧を生成して出力する。ブリードオフ弁28Aは、電磁比例弁29Aからのブリードオフ制御圧によって作動し、開度(開口面積)が可変するようになっている。
【0032】
電磁比例弁29Bは、コントローラ30からのブリードオフ指令電流(第2指令電流)によって作動し、ブリードオフ制御圧を生成して出力する。ブリードオフ弁28Bは、電磁比例弁29Bからのブリードオフ制御圧によって作動し、開度(開口面積)が可変するようになっている。
【0033】
本実施形態の要部であるコントローラ30について、
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態におけるコントローラの機能的構成を表すブロック図である。
【0034】
コントローラ30は、図示しないものの、プログラムに基づいて演算処理や制御処理を実行する制御部(例えばCPU)と、プログラムや処理結果を記憶する記憶部(例えばROM、RAM)とを有する。コントローラ30は、機能的構成として、油圧ポンプ14Aに係わるポンプ制御部31A、ブリードオフ制御部32A、減係数演算部33A、及び出力部34Aと、油圧ポンプ14Bに係わるポンプ制御部31B、ブリードオフ制御部32B、減係数演算部33B、及び出力部34Bとを有する。
【0035】
まず、油圧ポンプ14Aに係わるポンプ制御部31A、ブリードオフ制御部32A、減係数演算部33A、及び出力部34Aについて説明する。
【0036】
ポンプ制御部31Aは、圧力センサ25A,25B,25K,25L及び圧力センサ25E,25F,25I,25Jで検出されたパイロット圧に基づいてポンプの目標流量(但し、ブリードオフ弁28Aの開度を考慮して補正されたポンプの目標流量)を演算し、演算した目標流量のうちの最大のものを選択し、このポンプ目標流量に対応するポンプ指令電流を生成してレギュレータ26Aの電磁弁に出力する。
【0037】
ブリードオフ制御部32Aは、圧力センサ25A,25B,25K,25L及び圧力センサ25E,25F,25I,25Jで検出されたパイロット圧に基づいて、例えば
図5で示す演算テーブルを用いて、パイロット圧からブリードオフ制御圧を演算する。そして、演算したブリードオフ制御圧のうちの最大のものを選択し、このブリードオフ制御圧に対応するブリードオフ指令電流を演算する。
【0038】
出力部34Aは、ブリードオフ制御部32Aで演算されたブリードオフ指令電流に対し、減係数演算部33Aで演算された減係数Cを乗算して補正する。例えば減係数C=1であれば、ブリードオフ制御部32Aで演算されたブリードオフ指令電流をそのままとして、電磁比例弁29Aに出力する。この場合、電磁比例弁29Aは、ブリードオフ制御部32Aで演算されたブリードオフ制御圧を生成する。ブリードオフ制御圧が大きくなるのに従って、ブリードオフ弁28Aの開口面積が減少する(
図6参照)。
【0039】
減係数演算部33Aは、圧力センサ25A,25B,25K,25L及び圧力センサ25E,25F,25I,25Jで検出されたパイロット圧のうちの最大のものを選択し、パイロット圧の減少速度(すなわち、操作装置の操作量の減少速度)を演算する。前回の時間taにてパイロット圧Paが選択され、今回の時間tbにてパイロット圧Pb(但し、Pb<Pa)が選択された場合、パイロット圧の減少速度は(Pa-Pb)/(tb-ta)となる。
【0040】
減係数演算部33Aは、例えば
図7で示す演算テーブルを用いて、パイロット圧の減少速度から減係数Cを演算する。詳しく説明すると、パイロット圧の減少速度が予め設定された所定値D以下である場合(言い換えれば、ブリードオフ弁28Aの応答遅れが大きくなる可能性がない場合)、減係数C=1となる。一方、パイロット圧の減少速度が所定値Dより大きい場合(言い換えれば、ブリードオフ弁28Aの応答遅れが大きくなる可能性がある場合)、0<C<1(本実施形態では、0.2≦C<1)となる。また、パイロット圧の減少速度と所定値Dとの差分が大きくなるのに従って減係数Cを低下させる。これにより、出力部34Aから電磁比例弁29Aに出力するブリードオフ指令電流を小さくして、電磁比例弁29Aで生成されるブリードオフ制御圧を小さくする。その結果、ブリードオフ弁28Aの応答遅れを補うように、ブリードオフ弁28Aの開度を大きくすることができる。
【0041】
減係数演算部33Aは、更に、減係数Cが上昇するときの速度を制限する。詳細には、減係数Cが上昇するときにローパスフィルタを使用し、減係数Cの上昇率が所定値以下となるように、減係数Cを制限する。これにより、ブリードオフ弁28Aの開度制御を安定させることができる。
【0042】
次に、油圧ポンプ14Bに係わるポンプ制御部31B、ブリードオフ制御部32B、減係数演算部33B、及び出力部34Bについて説明する。
【0043】
ポンプ制御部31Bは、圧力センサ25C,25D,25G,25H,25M,25N及び圧力センサ25E,25F,25I,25Jで検出されたパイロット圧に基づいてポンプの目標流量(但し、ブリードオフ弁28Aの開度を考慮して補正されたポンプの目標流量)を演算し、演算した目標流量のうちの最大のものを選択し、このポンプ目標流量に対応するポンプ指令電流を生成してレギュレータ26Bの電磁弁に出力する。
【0044】
ブリードオフ制御部32Bは、圧力センサ25C,25D,25G,25H,25M,25N及び圧力センサ25E,25F,25I,25Jで検出されたパイロット圧に基づいて、例えば
図5で示す演算テーブルを用いて、パイロット圧からブリードオフ制御圧を演算する。そして、演算したブリードオフ制御圧のうちの最大のものを選択し、このブリードオフ制御圧に対応するブリードオフ指令電流を演算する。
【0045】
出力部34Bは、ブリードオフ制御部32Bで演算されたブリードオフ指令電流に対し、減係数演算部33Bで演算された減係数Cを乗算して補正する。例えば減係数C=1であれば、ブリードオフ制御部32Bで演算されたブリードオフ指令電流をそのままとして、電磁比例弁29Bに出力する。この場合、電磁比例弁29Bは、ブリードオフ制御部32Bで演算されたブリードオフ制御圧を生成する。ブリードオフ制御圧が大きくなるのに従って、ブリードオフ弁28Bの開口面積が減少する(
図6参照)。
【0046】
減係数演算部33Bは、圧力センサ25C,25D,25G,25H,25M,25N及び圧力センサ25E,25F,25I,25Jで検出されたパイロット圧のうちの最大のものを選択し、パイロット圧の減少速度(すなわち、操作装置の操作量の減少速度)を演算する。そして、例えば
図7で示す演算テーブルを用いて、パイロット圧の減少速度から減係数Cを演算する。詳しく説明すると、パイロット圧の減少速度が予め設定された所定値D以下である場合、減係数C=1となる。一方、パイロット圧の減少速度が所定値Dより大きい場合、0<C<1(本実施形態では、0.2≦C<1)となる。また、パイロット圧の減少速度と所定値Dとの差分が大きくなるのに従って減係数Cを低下させる。これにより、出力部34Bから電磁比例弁29Bに出力するブリードオフ指令電流を小さくして、電磁比例弁29Bで生成されるブリードオフ制御圧を小さくする。その結果、ブリードオフ弁28Bの応答遅れを補うように、ブリードオフ弁28Bの開度を大きくすることができる。
【0047】
減係数演算部33Bは、更に、減係数Cが上昇するときの速度を制限する。詳細には、減係数Cが上昇するときにローパスフィルタを使用し、減係数Cの上昇率が所定値以下となるように、減係数Cを制限する。これにより、ブリードオフ弁28Bの開度制御を安定させることができる。
【0048】
以上のように本実施形態では、パイロット圧の減少速度(すなわち、操作装置の操作量の減少速度)が所定値より大きい場合、パイロット圧の減少速度が所定値以下である場合と比べてブリードオフ弁の開度が大きくなるように、ブリードオフ指令電流を補正する。これにより、ブリードオフ弁の応答遅れを改善して、ポンプ圧のとじ込みを防ぐことができる。その結果、油圧ポンプ等の油圧機器の耐久性を向上させることができる。また、油圧アクチュエータ(特に、旋回モータ5)の減速又は停止に対する悪影響を抑えることができる。
【0049】
また、減係数Cが上昇するときの速度を制限することにより、ブリードオフ弁の開度制御を安定させることができる。
【0050】
上述した本実施形態の効果を補足説明する。まず、ブリードオフ弁の応答遅れを改善して、ポンプ圧のとじ込みを防ぐことができる点について、
図8及び
図9を用いて説明する。
図8は、第1比較例(ブリードオフ指令電流を補正しない場合)におけるパイロット圧、ブリードオフ制御圧、及びブリードオフ弁の開度の経時変化を表す図である。
図9は、本実施形態におけるパイロット圧、ブリードオフ制御圧、及びブリードオフ弁の開度の経時変化を表す図である。
【0051】
時間t1~t2の間にて操作レバーが中立位置に戻されると、パイロット圧が減少する。コントローラ30のブリードオフ制御部で演算されるブリードオフ制御圧も、パイロット圧に比例して減少する。そして、
図8で示すように、ブリードオフ制御圧に対応する指令電流をそのままとして(言い換えれば、図示のように、ブリードオフ制御圧をそのままとして)、コントローラ30から電磁比例弁に出力すると、ブリードオフ弁の実開度がかなり遅れて増加する。そのため、ブリードオフ弁の開度(開口面積)が一時的に不十分となり、ポンプ圧のとじ込みが発生する。
【0052】
一方、
図9で示すように、時間t1~t3の間のパイロット圧の減少速度を演算し、このパイロット圧の減少速度に基づいて減係数を演算し、この減係数を用いてブリードオフ指令電流を補正して(言い換えれば、図示のように、ブリードオフ制御圧を補正して)、コントローラ30から電磁比例弁に指令電流を出力すると、ブリードオフ弁の応答遅れを改善することができる。そのため、ポンプ圧のとじ込みを防ぐことができる。
【0053】
次に、ブリードオフ弁の開度制御を安定させることができる点について、
図10及び
図11を用いて説明する。
図10は、第2比較例(減係数が上昇するときの速度を制限しない場合)におけるパイロット圧、減係数、ブリードオフ制御圧、及びブリードオフ弁の理論開度の経時変化を表す図である。
図11は、本実施形態におけるパイロット圧、減係数、ブリードオフ制御圧、及びブリードオフ弁の理論開度の経時変化を表す図である。
【0054】
時間t1~t3の間のパイロット圧の減少速度に基づいて減係数C1が演算され、時間t3~t4の間のパイロット圧の減少速度に基づいて減係数C2が演算され、時間t4~t5の間のパイロット圧の減少速度に基づいて減係数C3が演算され、時間t5~t6の間のパイロット圧の減少速度に基づいて減係数C4が演算され、C2>C4>C3>C1の関係となる場合を想定する。この場合、特に、時間t4にて、減係数C1から減係数C2へ著しく上昇する。そのため、
図10で示すように、減係数C2をそのまま用いてブリード指令電流を補正して、コントローラ30から電磁比例弁に出力すると、ブリードオフ弁の開度が不安定となる。一方、
図11で示すように、減係数C1から減係数C2へ上昇するときの速度を抑えることにより、ブリードオフ弁の開度を安定させることができる。
【0055】
なお、上記一実施形態において、コントローラ30は、パイロット圧の減少速度(すなわち、操作装置の操作量の減少速度)が所定値Dより大きい場合、1より小さい減係数Cを乗算してブリードオフ指令電流を補正する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば、コントローラは、パイロット圧の減少速度(すなわち、操作装置の操作量の減少速度)が所定値より大きい場合、0より大きい補正量を減算してブリードオフ指令電流を補正してもよい。この変形例では、パイロット圧の減少速度と所定値との差分が大きくなるのに従って補正量を増加させてもよい。また、補正量が減少するときの速度を制限してもよい。
【0056】
また、上記一実施形態において、油圧ショベルは、コントローラ30からのブリードオフ指令電流によって作動してブリードオフ制御圧を生成する電磁比例弁29A,29Bを備え、ブリードオフ弁28A,28Bは、電磁比例弁29A,29Bからのブリードオフ制御圧によって作動する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば、ブリードオフ弁は、コントローラからの指令電流によって作動してもよい。
【0057】
また、上記一実施形態において、油圧ショベルは、操作量検出器として、操作装置の操作量に対応するパイロット圧を検出する圧力センサを備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で変形が可能である。油圧ショベルは、操作量検出器として、例えば、操作レバーの操作量を検出する変位センサを備えてもよい。
【0058】
なお、以上においては、本発明の適用対象として油圧ショベルを例にとって説明したが、これに限られず、ホイールローダ等の他の作業機械であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 走行体
2 旋回体
3 作業装置
4A,4B 走行モータ
5 旋回モータ
9 ブームシリンダ
10 アームシリンダ
11 バケットシリンダ
13 原動機
14A,14B 油圧ポンプ
15 オプション用油圧アクチュエータ
16A,16B 走行用制御弁
17 バケット用制御弁
18A,18B アーム用制御弁
19A,19B ブーム用制御弁
20 旋回用制御弁
21 オプション用制御弁
22A,22B 走行用操作装置
23A,23B 作業用操作装置
24 オプション用操作装置
25A~25N 圧力センサ(操作量検出器)
26A,26B レギュレータ
27A,27B ブリードオフ管路
28A,28B ブリードオフ弁
29A,29B 電磁比例弁
30 コントローラ