(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】回転電機ステータコアの誘導加熱装置及び誘導加熱方法
(51)【国際特許分類】
H05B 6/10 20060101AFI20221129BHJP
H05B 6/36 20060101ALI20221129BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H05B6/10 331
H05B6/36 D
H02K15/02 F
(21)【出願番号】P 2019193117
(22)【出願日】2019-10-24
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦田 信也
(72)【発明者】
【氏名】大谷 裕子
(72)【発明者】
【氏名】前田 義隆
(72)【発明者】
【氏名】恒川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 隆久
(72)【発明者】
【氏名】谷口 寛和
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-155559(JP,A)
【文献】特開2017-110243(JP,A)
【文献】特開2019-170086(JP,A)
【文献】特開2015-084312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/00-6/10
H05B 6/14-6/44
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のヨークと、前記ヨークの周方向複数位置から径方向内側に延びる複数のティースとを備える回転電機ステータコアの誘導加熱装置であって、
前記回転電機ステータコアの内周側に配置され、励磁コイルが巻かれた柱状の中心コアと、
前記中心コアの軸方向両側に配置され、一部が前記ティースと軸方向に対向する2つの端部コアと、
前記端部コアと前記回転電機ステータコアとの間に配置された第1断熱部と、
前記励磁コイルの外周面と前記回転電機ステータコアとの間に配置された第2断熱部とを備える、
回転電機ステータコアの誘導加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機ステータコアの誘導加熱装置において、
前記2つの端部コアの外周側で、前記ヨークの軸方向両端面上の空間に、周方向に連続した金属環、または、巻き始めと巻き終わりを短絡させた短絡コイル、または前記励磁コイルに対して逆極性となるように接続された端面側逆極性コイルが配置される、
回転電機ステータコアの誘導加熱装置。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機ステータコアの誘導加熱装置において、
前記ヨークの外周側に、前記励磁コイルの巻き数の半分以下の巻き数で、前記励磁コイルと逆極性で接続された外周側逆極性コイルが配置される、
回転電機ステータコアの誘導加熱装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転電機ステータコアの誘導加熱装置において、
筒部の両端に前記筒部の両端開口を塞ぐように2つの板部が連結されるか、または断面が矩形のヨーク要素を含んで構成される外周ヨークが、前記中心コア及び前記2つの端部コアを覆って、前記2つの端部コアの軸方向外側面に対向して配置される、
回転電機ステータコアの誘導加熱装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転電機ステータコアの誘導加熱装置において、
前記中心コアと前記端部コアの中心部に、軸方向に貫通する孔が形成され、前記孔に冷却液が流通するか、または前記中心コア及び前記端部コアより熱伝導性が高い冷却用部材が挿入されることにより、前記中心コアが冷却される、
回転電機ステータコアの誘導加熱装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転電機ステータコアの誘導加熱装置を用いて前記回転電機ステータコアの前記ティースを誘導加熱する方法であって、
前記励磁コイルに交流電流を供給することで、前記中心コア及び前記2つの端部コアと前記2つの端部コアの間に配置された前記ティースに磁束を流し、前記ティースを誘導加熱する磁束発生ステップを含む、
回転電機ステータコアの誘導加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機ステータコアの誘導加熱装置及び誘導加熱方法に関し、特にティースを効率よく加熱することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からモータ、発電機等の回転電機は、ステータコアとロータコアとが径方向に対向して配置することにより構成される。ステータコアにおいて、加工硬化による内部の歪を取り除き、コアの損失である鉄損を低減させるために、焼鈍が行われる場合がある。ステータコアは、特にティースにおいて加工硬化により残留歪が発生するので、その部分を焼鈍する場合がある。
【0003】
例えば、ステータコアの全体に、軸方向一方側から高周波磁束を印加し、ステータコアの端部に面内渦電流を流して、それに起因するジュール損を利用してステータコアを加熱する方法が考えられる。
【0004】
また、特許文献1,2に記載された構成のように、誘導加熱を行うコイル(誘導加熱部)がステータコアの外周全体を近接して覆い、そのコイルに通電することで、ステータコアに誘導電流を流してそのステータコアを加熱する方法が知られている。
【0005】
また、特許文献3に記載された構成のように、コイルの内側に一次側ヨークを貫通させ、その一次側ヨークに磁気的に結合した二次側ヨークを、ステータコアの中心部に貫通させ、コイルへ交流電流を通電し、一次側ヨークによりステータコアの内側に軸方向の磁束を流す方法も知られている。この方法によれば、この軸方向の磁束によりステータコアに誘導電流を流して、ステータコアを加熱できる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-5553号
【文献】特開2012-5283号
【文献】特開2018-81896号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ステータコアの全体に、軸方向一方側から高周波磁束を印加する場合には、ステータコアにおける磁束の鎖交面積が大きいので渦電流による反磁界が大きくなり、無効電力が大きくなる。また、この場合には、特に焼鈍が必要なティース以外も多く加熱されるので、消費電力が大きい。
【0008】
また、特許文献1~3に記載された方法では、ステータコアの外周部における環状のヨーク部分にしか誘導電流が流れないので、そのヨーク部分のみしか加熱できない。
【0009】
本開示の回転電機ステータコアの誘導加熱装置及び誘導加熱方法の目的は、ティースを効率よく加熱することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の回転電機ステータコアの誘導加熱装置は、環状のヨークと、前記ヨークの周方向複数位置から径方向内側に延びる複数のティースとを備える回転電機ステータコアの誘導加熱装置であって、前記回転電機ステータコアの内周側に配置され、励磁コイルが巻かれた柱状の中心コアと、前記中心コアの軸方向両側に配置され、一部が前記ティースと軸方向に対向する2つの端部コアと、前記端部コアと前記回転電機ステータコアとの間に配置された第1断熱部と、前記励磁コイルの外周面と前記回転電機ステータコアとの間に配置された第2断熱部とを備える、回転電機ステータコアの誘導加熱装置である。
【0011】
本開示の回転電機ステータコアの誘導加熱方法は、本開示の回転電機ステータコアの誘導加熱装置を用いて前記回転電機ステータコアの前記ティースを誘導加熱する方法であって、前記励磁コイルに交流電流を供給することで、前記中心コア及び前記2つの端部コアと前記2つの端部コアの間に配置された前記ティースに磁束を流し、前記ティースを誘導加熱する磁束発生ステップを含む、回転電機ステータコアの誘導加熱方法である。
【発明の効果】
【0012】
本開示の回転電機ステータコアの誘導加熱装置及び誘導加熱方法によれば、ティースを効率よく加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の回転電機ステータコアの誘導加熱装置及び誘導加熱方法を用いて回転電機ステータコアを加熱する状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1の誘導加熱装置の中心軸を含む切断面図である。
【
図4】
図1から2つの端部コアを取り除いて示す斜視図である。
【
図6】
図2において、ティースが集中的に加熱される理由を説明するための図である。
【
図7】実施形態の別例の誘導加熱装置において、
図2に対応する図である。
【
図8A】実施形態の別例の誘導加熱装置において、
図2に対応する図である。
【
図8B】実施形態の別例の誘導加熱装置において、
図2に対応する図である。
【
図8C】実施形態の別例の誘導加熱装置において、
図2に対応する図である。
【
図9】実施形態の別例の誘導加熱装置において、
図2に対応する図である。
【
図10】実施形態の別例の誘導加熱装置において、
図2に対応する図である。
【
図12】実施形態の別例の誘導加熱装置において、
図11に対応する図である。
【
図13】実施形態の別例の誘導加熱装置において、
図11に対応する図である。
【
図14】実施形態の別例の誘導加熱装置において、
図2に対応する図である。
【
図15】実施形態の別例の誘導加熱装置において、
図2に対応する図である。
【
図16】実施形態の別例の誘導加熱装置の斜視図である。
【
図17】
図16において、2つの端部コアを取り除いて示す斜視図である。
【
図18】
図16の誘導加熱装置における端部コアの端面図である。
【
図19】実施形態の別例の誘導加熱装置における端部コアの端面図である。
【
図20】実施形態の誘導加熱装置により回転電機ステータコアを加熱する場合において、ティースとヨークにおける励磁コイルへの供給電流の周波数に対するジュール損を比較した図である。
【
図21】実施形態の誘導加熱装置により回転電機ステータコアを加熱する場合において、第1断熱部の厚みが小さい(1mmとした)場合における回転電機ステータコアの周方向一部におけるジュール損密度(W/m
3)の分布の解析結果を示す図である。
【
図22】実施形態の誘導加熱装置により回転電機ステータコアを加熱する場合において、第1断熱部の厚みが大きい(5mmとした)場合における回転電機ステータコアの周方向一部におけるジュール損密度(W/m
3)の分布の解析結果を示す図である。
【
図23】
図9に示した誘導加熱装置により回転電機ステータコアを加熱する場合において、第1断熱部の厚みが大きい(5mmとした)場合における回転電機ステータコアの周方向一部におけるジュール損密度(W/m
3)の分布の解析結果を示す図である。
【
図24】
図8Aに示した誘導加熱装置により回転電機ステータコアを加熱する場合において、第1断熱部の厚みが大きい(5mmとした)場合における回転電機ステータコアの周方向一部におけるジュール損密度(W/m
3)の分布の解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る回転電機ステータコアの誘導加熱装置及び誘導加熱方法の実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、数量等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、回転電機ステータコアまたは誘導加熱装置の仕様に合わせて適宜変更することができる。以下では、すべての図面において同様の要素には同一の符号を付して説明する。
【0015】
図1は、実施形態の回転電機ステータコア10の誘導加熱装置30及び誘導加熱方法を用いて回転電機ステータコア10を加熱する状態を示す斜視図である。
図2は、
図1の誘導加熱装置30の中心軸Oを含む切断面図である。
図3は、
図1において端部コア35の端面図である。
図4は、
図1から2つの端部コア35を取り除いて示す斜視図である。
図5は、
図4のA部拡大図である。
【0016】
図1、
図2、
図4、
図5を用いて、回転電機ステータコア10を説明する。以下では、回転電機ステータコア10は、ステータコア10と記載する。ステータコア10は、ステータコイル(図示せず)と共に、ステータを形成する。ステータは、ステータの内側に配置されたロータ(図示せず)と共に、回転電機を形成するために用いられる。
【0017】
ステータコア10は、環状の磁性体部品であり、例えば複数の珪素鋼鈑等の環状の電磁鋼板を軸方向(
図1の上下方向)に積層してなる積層体により形成される。
【0018】
ステータコア10は、環状で外周側に配置されるステータヨーク13と、ステータヨーク13の内周面の周方向複数位置から径方向内側に延びる複数のティース14(
図2、
図4、
図5)とを含む。複数のティース14は、周方向に互いに間隔をおいて配置される。隣り合う2つのティース14の間には溝であるスロット16(
図5)が形成される。
【0019】
ステータコイルは、U,V,W相の3相のコイルを有し、それぞれのコイルは、ステータコア10の周方向に離れた2つのスロット16にまたがるように複数のティース14に巻回される。
【0020】
回転電機を構成する場合には、ステータの径方向内側にロータが配置される。回転電機は、使用時に、3相のステータコイルに3相交流電流を供給することで駆動される。例えば、回転電機は、永久磁石型同期モータとして使用される。
【0021】
ステータコア10は、上記のように複数の電磁鋼板を積層することにより構成され、ステータヨーク13の内周面から複数のティース14が延びる。各電磁鋼板は、打ち抜き加工等により所定の形状に形成される。これにより、ティース14に加工硬化が生じて歪(残留歪)が発生しやすい。このため、このティース14において、焼鈍を行って内部の歪を取り除き、鉄損を低下させることが行われる。
【0022】
このために、実施形態では、ステータコア10の焼鈍を行うために、誘導加熱装置30を用いる。誘導加熱装置30は、ステータコア10の内周側に配置され、励磁コイル33(
図2、
図4、
図5)が巻かれた柱状の中心コア31と、2つの端部コア35と、2つの第1断熱部40(
図2)と、第2断熱部42(
図2)とを含んで構成される。なお、
図2では、
図1に示す形状に比べて、端部コア35の軸方向の厚みをステータコア10との関係で小さくし、中心コア31の直径をステータコア10との関係で小さくして模式化した形状を示している。また、
図1では、第1断熱部40及び第2断熱部42の図示を省略している。
【0023】
中心コア31は、磁性材料製であり、例えば円柱状に形成される。中心コア31は、ステータコア10の中心軸O上に中心軸Oに沿って配置される。2つの端部コア35は、それぞれ磁性材料により連続した塊状であり、円板状に形成される。2つの端部コア35は、中心コア31の軸方向両側に配置される。例えば、2つの端部コア35は、中心コア31の軸方向両端面にそれぞれの中心軸Oが一致するように、直接に固定される。このとき、2つの端部コア35の一方の端部コア35と中心コア31とが一体成形され、ステータコア10の内周側に中心コア31を挿入した後に、2つの端部コア35の他方の端部コア35と中心コア31とを結合してもよい。なお、中心コア31の軸方向両端面と各端部コア35とが、隙間を介して軸方向に離れて対向配置されてもよい。
【0024】
中心コア31の軸方向両側に端部コア35が配置された状態で、各端部コア35の一部である外周側部分はステータコア10のティース14と軸方向に対向する。また、ステータヨーク13のほとんどの部分が、2つの端部コア35の外周面から径方向(
図2の左右方向)について外側に配置される。
【0025】
中心コア31には、圧粉磁心やフェライトなど、絶縁性の高い粉体コアを用いてもよい。中心コア31を電磁鋼板により形成してもよい。このとき、中心コア31は、複数の電磁鋼板を積層した積層コアとしたり、1枚の電磁鋼板を渦巻状に巻いて円筒状の巻きコアとしたり、複数の電磁鋼板を半径方向に放射状に配置したラジアルコアとしてもよい。
【0026】
中心コアの中心軸Oに対し直交する平面で切断した場合の断面形状が矩形であれば、中心コアが、幅方向等の一辺に平行な方向に分割した複数の要素を含み、複数の要素を結合することにより形成されてもよい。中心コアが円筒状であれば、中心コアを周方向の複数位置で分割した複数の要素から形成してもよい。
【0027】
端部コア35は、軸方向と半径方向との両方に磁束を通過可能とする必要があるので、等方性の磁気特性を持つ圧粉磁心やフェライトなど、絶縁性の高い粉体コアを用いることが好ましい。端部コア35を複数の電磁鋼板で形成することもでき、その場合には、複数の電磁鋼板を半径方向に放射状に配置したラジアルコアとすることが好ましい。
【0028】
さらに、各第1断熱部40(
図2)は、リング形の円板状であり、中心コア31の外周側で端部コア35の軸方向内側面とステータコア10の複数のティース14の軸方向端面との間に配置される。第1断熱部40は、樹脂やセラミック等の断熱性を有する絶縁材料製のブロックとすることができる。端部コア35とステータコア10とを、第1断熱部40に接触させてもよい。なお、第1断熱部は、固体とせずに、高断熱性を有するガスや、空気層としてもよく、また、誘導加熱装置30及びステータコア10を真空状態で配置することで、端部コア35とステータコア10との間に形成される真空の隙間を第1断熱部としてもよい。端部コア35の軸方向内側面とステータコア10の軸方向端面との間に第1断熱部40が配置されることにより、ティース14の軸方向両端からの熱の逃げを抑制して、ティース14を効率的に加熱できる。
【0029】
さらに、第2断熱部42は、円筒状であり、励磁コイル33の外周面とステータコア10の内周面との間に配置される。第2断熱部42は、第1断熱部40と同様に、樹脂やセラミック等の断熱性を有する絶縁材料製としてもよい。ステータコア10の内周面と励磁コイル33の外周面とは、第2断熱部42に接触させてもよい。なお、第2断熱部は、固体とせずに、高断熱性を有するガスや、空気層としてもよく、また、誘導加熱装置30及びステータコア10を真空状態で配置することで、励磁コイル33の外周面とステータコア10の内周面との間に形成される真空の隙間を第2断熱部としてもよい。励磁コイル33の外周面とステータコア10の内周面との間に第2断熱部42が配置されることにより、励磁コイル33がステータコア10からの輻射熱で過度に加熱されることを防止できる。これにより、励磁コイル33の保護を図れると共に、励磁コイル33の性能低下を抑制できる。
【0030】
実施形態のステータコア10の誘導加熱方法は、上記の誘導加熱装置30を用いて、ステータコア10の複数のティース14を誘導加熱する。このとき、まず配置ステップとして、
図1、
図2に示すように、ステータコア10の内周側に、励磁コイル33が巻かれた中心コア31を挿入し、中心コア31の軸方向両側に2つの端部コア35を配置した状態で、ステータコア10のティース14の軸方向両端に端部コア35の軸方向内側面を対向させる。
【0031】
そして、磁束発生ステップとして、電源部(図示せず)から励磁コイル33に交流電流を供給することにより、
図2の実線矢印α方向または実線矢印αと反対方向に、中心コア31及び端部コア35と、ステータコア10のティース14とに磁束を流す。
図2の実線矢印α方向は、励磁コイル33の
図2の右側部分で紙面の表側に電流が流れ、左側部分で紙面の裏側に電流が流れる場合の磁束方向である。これにより、ティース14の軸方向に高周波磁束が流れることでティース14が誘導加熱されることにより焼鈍される。このとき、励磁コイル33に流す交流電流の周波数を、ステータコア10に流れる高周波磁束による渦電流に起因する表皮厚みがティース14の周方向幅の1/3以下となる周波数(下限周波数)とすることが好ましい。より好ましくは、交流電流周波数が、高周波磁束による渦電流に起因する表皮厚みが、ステータコア10を形成する電磁鋼板の板厚以上となる周波数(上限周波数)で、かつ、ティース14の周方向幅の1/3以下となる周波数(下限周波数)となることが好ましい。これにより、ステータコア10において加熱が必要なティース14及びその根元部分に電流を多く流すことができるので加熱が特に必要な部分をジュール損により集中的に加熱できる。
【0032】
図6は、
図2において、ティース14が集中的に加熱される理由を説明するための図である。
図2と同様に励磁コイル33に交流電流が供給されることで、ティース14の軸方向に高周波磁束が流れる。このとき、励磁コイル33の通電によって、
図6の実線矢印α方向または実線矢印αと反対方向に、中心コア31から端部コア35を介してティース14の軸方向に磁束が流れると共に、励磁コイル33の起磁力の一部がステータヨーク13の周方向に誘導電流を発生させる。誘導電流により、
図6の一点鎖線矢印β方向にステータヨーク13の周囲を流れる磁束が発生する。この磁束は、ティース14にも流れ、そのときの磁束方向は、実線矢印αの磁束方向と一致する。このため、ティース14を軸方向に流れる磁束の磁束密度を高く維持しやすくなるので、ティース14の内部に流れる渦電流の強さも高く維持しやすくなり、その渦電流のジュール損でティース14の加熱が促進される。
【0033】
上記のステータコア10の誘導加熱装置30及び誘導加熱方法によれば、ステータコア10の内周側に配置された中心コア31の周囲に巻かれた励磁コイル33に交流電流が供給されることで、2つの端部コア35の間に配置されたティース14に高周波磁束が流れてジュール損が高くなり、それによってティース14が加熱される。これにより、加熱が特に必要なティース14が集中的に加熱されるので、ティース14を効率よく加熱できる。このため、ティース14の加熱に必要な電力を小さく抑制できると共に、ティース14を短時間で加熱することが可能となる。また、ティース14の軸方向端部のみが集中して加熱されることを抑制できるので、過焼鈍による磁気特性悪化を防止できる。
【0034】
図7は、実施形態の別例の誘導加熱装置30aにおいて、
図2に対応する図である。本例の構成の場合には、各第1断熱部40aがティース14の軸方向端面だけではなく、ティース14及びステータヨーク13を含むステータコア10の軸方向端面の全体に対向するように配置される。
【0035】
上記の構成によれば、ステータヨーク13の軸方向端面からの熱の逃げを抑制できるので、ステータヨーク13の温度上昇によりティース14を加熱する効果を高くできる。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図6の構成と同様である。
【0036】
図8Aは、実施形態の別例の誘導加熱装置30bにおいて、
図2に対応する図である。本例の構成の場合には、誘導加熱装置30bにおいて、2つの端部コア35の外周側で、ステータヨーク13の軸方向両端面上の空間に、端面側補助コイル相当部材としての周方向に連続した2つの金属環44が配置される。金属環44は、例えば銅等の導電性の高い材料により形成され、端部コア35の外周側に端部コア35を囲うように配置される。金属環44の周方向に対し直交する断面は矩形であるが、断面を円形等の他の形状としてもよい。
【0037】
上記の構成によれば、ステータヨーク13の軸方向端面付近が過度に集中的に加熱されることを防止できるので、ステータヨーク13の過焼鈍や変形を抑制できる。具体的には、端部コア35の内側面とステータコア10の軸方向端面との間の第1断熱部40aの厚みを大きくする等によって、端部コア35の内側面とステータコア10の軸方向端面との間の軸方向における間隔が比較的大きくなる場合がある。この場合、励磁コイル33に交流電流が流れることにより、励磁コイル33の起磁力の一部がステータヨークの周方向に誘導電流を発生させる。この誘導電流の周方向についての方向は、励磁コイル33の電流方向と逆である。この誘導電流によって、
図8Aの一点鎖線矢印β方向にステータヨーク13の周囲を流れる磁束が発生する。この磁束によって、ステータヨーク13の軸方向端面付近に渦電流が増加し、ステータヨーク13の軸方向端部が過度に集中的に加熱される可能性がある。
【0038】
本例の構成によれば、金属環44に誘導電流が流れることによって、例えば、
図8Aの破線矢印γ方向に金属環44の周囲を流れる磁束を発生させることができる。その磁束の方向は、上記のステータヨーク13の軸方向端面付近の一点鎖線矢印β方向の磁束と逆になるので、その磁束によるステータヨーク13の軸方向端部の集中加熱を、金属環44を流れる誘導電流による磁束で相殺または緩和することができ、その集中加熱を抑制できる。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図6の構成、または
図7の構成と同様である。
【0039】
図8Bは、実施形態の別例の誘導加熱装置30cにおいて、
図2に対応する図である。本例の構成の場合には、誘導加熱装置30cにおいて、2つの端部コア35の外周側で、ステータヨーク13の軸方向両端面上の空間に、端面側補助コイルとして、巻き始めと巻き終わりを短絡させた2つの短絡コイル46が配置される。短絡コイル46の軸方向は、励磁コイル33の軸方向と一致させる。
【0040】
上記の構成の場合も、
図8Aの構成の金属環44の代わりに短絡コイル46に誘導電流が流れることによって、例えば、破線矢印δ方向に短絡コイル46の周囲を流れる磁束を発生させることができる。その磁束の方向は、上記のステータヨーク13の周方向に発生する誘導電流によってステータヨーク13の軸方向端部付近を流れる磁束の方向と逆になるので、その磁束によるステータヨーク13の軸方向端部の集中加熱を抑制できる。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図6の構成、または
図7の構成、または
図8Aの構成と同様である。なお、短絡コイル46の巻方向は、
図8Bのように励磁コイル33の巻方向と逆とすることができるが、励磁コイル33と同方向としてもよい。
【0041】
図8Cは、実施形態の別例の誘導加熱装置30dにおいて、
図2に対応する図である。本例の構成の場合には、誘導加熱装置30dにおいて、2つの端部コア35の外周側で、ステータヨーク13の軸方向両端面上の空間に、端面側補助コイルとして、励磁コイル33に対して逆極性となるように接続された2つの端面側逆極性コイル48が配置される。「逆極性」とは、誘導加熱装置30dの軸方向について2つのコイルの極性が逆となることである。端面側逆極性コイル48の軸方向は、励磁コイル33の軸方向と一致させる。例えば、端面側逆極性コイル48と励磁コイル33との巻方向を逆にする場合に、軸方向一方側(
図8Cの上側)の端面側逆極性コイル48の巻き終わり端を励磁コイル33の巻き始め端に接続し、励磁コイル33の巻き終わり端を軸方向他方側(
図8Cの下側)の端面側逆極性コイル48の巻き始め端に接続する。また、軸方向他方側の端面側逆極性コイル48の巻き終わり端を、電源部を介して軸方向一方側の端面側逆極性コイル48の巻き始め端に接続する。なお、端面側逆極性コイルの巻き方向は、励磁コイル33の巻き方向と同じにしてもよい。このとき、軸方向一方側の端面側逆極性コイルの巻き終わり端を励磁コイル33の巻き終わり端に接続し、励磁コイル33の巻き始め端を軸方向他方側の端面側逆極性コイルの巻き始め端に接続する。また、軸方向他方側の端面側逆極性コイルの巻き終わり端を、電源部を介して軸方向一方側の端面側逆極性コイルの巻き始め端に接続する。
【0042】
上記の構成の場合には、励磁コイル33に交流電流が供給されることで、2つの端面側逆極性コイル48にも交流電流が流れる。このとき、例えば、
図8Cの破線矢印δ方向に端面側逆極性コイル48の周囲を流れる磁束を発生させることができる。その磁束の方向は、ステータヨーク13の周方向に発生する誘導電流によってステータヨーク13の軸方向端部付近を流れる磁束の方向と逆になるので、その磁束によるステータヨーク13の軸方向端部の集中加熱を、端面側逆極性コイル48を流れる電流による磁束で相殺または緩和することができ、その集中加熱を抑制できる。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図6の構成、または
図7の構成、または
図8Aの構成と同様である。
【0043】
なお、
図8Cの構成において、2つの端面側逆極性コイル48の巻き数(ターン数)の合計は、励磁コイル33の巻き数の半分以下とすることが好ましい。
【0044】
図9は、実施形態の別例の誘導加熱装置30eにおいて、
図2に対応する図である。本例の構成の場合には、誘導加熱装置30eにおいて、ステータヨーク13の外周側に、励磁コイル33の巻き数の半分以下の巻き数で、励磁コイル33と逆極性で接続された外周側逆極性コイル50が配置される。「逆極性」とは、誘導加熱装置30eの軸方向について2つのコイルの極性が逆となることである。外周側逆極性コイル50の軸方向は、励磁コイル33の軸方向と一致する。外周側逆極性コイル50と励磁コイル33との巻方向を一致させる場合に、例えば、励磁コイル33の一端側(
図9の下側)の巻き終わり端を、外周側逆極性コイル50の一端側(
図9の下側)の巻き終わり端に接続する。また、励磁コイル33の他端側(
図9の上側)の巻き始め端を、電源部を介して、外周側逆極性コイル50の他端側(
図9の上側)の巻き始め端に接続する。外周側逆極性コイル50と励磁コイル33との巻方向を逆とする場合には、例えば、励磁コイル33の一端側(
図9の下側)の巻き終わり端を、外周側逆極性コイル50の他端側(
図9の上側)の巻き始め端に接続し、励磁コイル33の他端側(
図9の上側)の巻き始め端を、電源部を介して、外周側逆極性コイル50の一端側(
図9の下側)の巻き終わり端に接続する。
【0045】
さらに、外周側逆極性コイル50の内周面とステータコア10の外周面との間には、円筒状の第3断熱部52が配置される。第3断熱部52は、第2断熱部42と同様の構成で、第2断熱部42より直径が大きくなっている。第3断熱部52によって、ステータコア10の外周面からの輻射熱で外周側逆極性コイル50が過度に加熱されることを防止できるので、外周側逆極性コイル50の保護を図れると共に外周側逆極性コイル50の性能低下を抑制できる。
【0046】
上記の構成の場合も、
図8A~
図8Cの構成と同様に、ステータヨーク13の軸方向端部が過度に集中的に加熱されることを防止できることにより、ステータヨーク13の変形を抑制できる。具体的には、外周側逆極性コイル50がないと仮定した場合に、端部コア35の内側面とステータコア10の軸方向端面との間の軸方向における間隔が比較的大きくなる場合に、
図9に実線矢印αのうち、Xを付した実線矢印で示すように、励磁コイル33に交流電流が流れることにより励磁コイル33の起磁力の一部による磁束が、ステータヨーク13に広がって流れる。そして、ステータヨーク13の軸方向端部付近に流れる磁束によって、ステータヨーク13の軸方向端面付近に渦電流が増加する。このため、ステータヨーク13の軸方向端部が過度に集中的に加熱される可能性がある。本例の構成によれば、励磁コイル33に交流電流が供給されることで、外周側逆極性コイル50にも交流電流が流れる。このとき、例えば、
図9の一点鎖線矢印η方向に外周側逆極性コイル50の周囲を流れる磁束を発生させることができる。その磁束のうち、Xを付した一点鎖線矢印で示すように流れる磁束は、励磁コイル33の起磁力によってステータヨーク13の軸方向端部付近に流れる磁束の方向(Xを付した実線矢印方向)と逆になるので、その磁束によるステータヨーク13の軸方向端部の集中加熱を、外周側逆極性コイル50を流れる電流による磁束で相殺または緩和することができ、その集中加熱を抑制できる。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図6の構成、または
図7の構成と同様である。
【0047】
図10は、実施形態の別例の誘導加熱装置30fにおいて、
図2に対応する図である。
図11は、
図10を上から見た図である。本例の構成の場合には、
図7の誘導加熱装置30aと同様の構成において、外周ヨーク54が、ステータコア10、中心コア31、及び2つの端部コア35を覆うように配置されている。外周ヨーク54は、
図10に示すように中心軸を含む切断面で見た形状が矩形となるように、筒部55の両端に筒部55の両端開口を塞ぐように2つの板部56が連結される。筒部55は、円筒状であり、各板部56は円板状である。外周ヨーク54は、中心コア31の軸方向両端に、2つの板部56の軸方向内側面が面接触するように連結される。これにより、外周ヨーク54は、2つの端部コア35の軸方向外側面に対向して配置される。この状態で、外周ヨーク54の筒部55の内周面とステータコア10の外周面との間には隙間が形成される。外周ヨーク54は、磁性材製である。例えば外周ヨーク54には、中心コア31と同様に、圧粉磁心やフェライトなど、絶縁性の高い粉体コアを用いてもよい。外周ヨーク54を電磁鋼板の積層体により形成してもよい。
【0048】
上記の外周ヨーク54により、各端部コア35から誘導加熱装置30fの外側への漏れ磁束を抑制できる。2つの端部コア35の少なくとも一方の端部コア35の軸方向外側面と、外周ヨーク54の2つの板部56の軸方向内側面との間には、隙間が形成されてもよい。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図6の構成または
図7の構成と同様である。
【0049】
なお、
図10の構成において、外周ヨーク54の筒部は、円筒状以外、例えば四角筒状等としてもよい。例えば、四角筒状の筒部と、2つの四角形状の板部とにより外周ヨークが形成されてもよい。
【0050】
図12は、実施形態の別例の誘導加熱装置30gにおいて、
図11に対応する図である。本例の構成の場合には、外周ヨーク54aが、断面が矩形のヨーク要素57を含んで形成される。ヨーク要素57は、2つの平行な長方形状の板部57aの長手方向両端に2つの平行な長方形状の板部57bを連結してなる矩形枠状である。これにより、外周ヨーク54の幅方向(
図12の上下方向)中央で切断した断面形状は、
図10と同様の形状となる。上記の外周ヨーク54aを用いた誘導加熱装置30gの場合も、
図10、
図11の構成と同様に、各端部コア35から誘導加熱装置30gの外側への漏れ磁束を抑制できる。本例において、その他の構成及び作用は、
図10、
図11の構成と同様である。
【0051】
図13は、実施形態の別例の誘導加熱装置30hにおいて、
図11に対応する図である。本例の構成の場合には、外周ヨーク54bが、
図12の外周ヨーク54aの形状と同様の形状の第1ヨーク要素58の幅方向(
図13の上下方向)両端の長手方向中央に2つのゲート形状の第2ヨーク要素59が連結されて形成される。各第2ヨーク要素59は、2つの平行な長方形状の板部59aの長手方向の先端に長方形状の連結板部59bが板部59aに直交するように連結される。これにより、外周ヨーク54bの第1ヨーク要素58の幅方向(
図13の上下方向)中央で切断した断面形状と、第2ヨーク要素59の幅方向(
図13の左右方向)中央で切断した断面形状とは、いずれも
図10と同様の形状となる。
図13のように、外周ヨーク54bを軸方向一端から見た形状は、十字形となっている。上記の外周ヨーク54を用いた誘導加熱装置30hの場合も、
図10、
図11の構成、または
図12の構成と同様に、各端部コア35から誘導加熱装置30hの外側への漏れ磁束を抑制できる。本例において、その他の構成及び作用は、
図10、
図11の構成と同様である。
【0052】
図14は、実施形態の別例の誘導加熱装置60において、
図2に対応する図である。本例の構成の場合には、
図8Aと同様の構成において、
図10、
図11の構成と同様に、外周ヨーク54が、中心コア31及び2つの端部コア35を覆って、2つの端部コア35の軸方向外側面に対向して配置される。これにより、本例の構成により得られる作用は、
図8Aの構成の金属環44による作用と、
図10、
図11の構成の外周ヨーク54による作用とを組み合わせたものである。本例において、その他の構成及び作用は、
図8Aの構成、または
図10、
図11の構成と同様である。なお、本例の構成において、
図8Aの構成の代わりに、
図8Bの構成の短絡コイル46、または
図8Cの構成の端面側逆極性コイル48を組み合わせることもできる。
【0053】
図15は、実施形態の別例の誘導加熱装置60aにおいて、
図2に対応する図である。本例の構成の場合には、
図9と同様の構成において、
図10、
図11の構成と同様に、外周ヨーク54が、中心コア31及び2つの端部コア35を覆って、2つの端部コア35の軸方向外側面に対向して配置される。これにより、本例の構成により得られる作用は、
図9の構成の外周側逆極性コイル50による作用と、
図10、
図11の構成の外周ヨーク54による作用とを組み合わせたものである。本例において、その他の構成及び作用は、
図9の構成、または
図10、
図11の構成と同様である。
【0054】
【0055】
図16は、実施形態の別例の誘導加熱装置60bの斜視図である。
図17は、
図16において、2つの端部コア35aを取り除いて示す斜視図である。
図18は、
図16の誘導加熱装置60bにおける端部コア35aの端面図である。本例の構成の場合には、
図1~
図6の構成において、中心コア31a及び2つの端部コア35aの中心部に軸方向に貫通する孔61が形成される。このとき、各端部コア35は、中心コア31の軸方向両端に連結される。孔61には、冷却液配管(図示せず)が接続される。冷却液配管の上流側に接続された冷却液ポンプ(図示せず)の吐出口から油や水等の冷却液が孔61の上流端に供給され、孔61に冷却液が流通する。孔61の下流端から排出された冷却液は、冷却液ポンプの吸入口に戻される。これにより、中心コア31aが冷却される。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図6の構成と同様である。
【0056】
図19は、実施形態の別例の誘導加熱装置における端部コア35bの端面図である。本例の構成では、端部コア35bが、中心部に孔61が形成された円板部62と、円板部62の外周面の周方向複数位置から放射状に延びる径方向板部63とを含んで形成される。円板部62は、中心コア31の軸方向端面に連結される。径方向板部63の数は、ステータコア10のティース14(
図17参照)の数と一致する。複数の径方向板部63は、複数のティース14の軸方向端面に対向して配置される。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図6の構成、または
図16~
図18の構成と同様である。
【0057】
なお、
図16~
図18の構成、または
図19の構成において、孔61に冷却液を流通させるのではなく、中心コア31a及び端部コア35a、35bより熱伝導性が高い冷却用部材(図示せず)が孔61に挿入されてもよい。例えば冷却用部材は、棒状である。冷却用部材は、例えば、アルミニウム合金等の熱伝導性の高い金属により形成される。冷却用部材は、孔61の内面に接触させてもよい。冷却用部材の孔61から突出させた部分は、ヒートシンク等の冷却源(図示せず)に接続してもよい。このような構成によっても、中心コア31aを冷却できる。
【0058】
なお、
図19の構成で、
図1~
図6の構成と同様に、端部コア35b及び中心コアに孔が形成されない構成としてもよい。
【0059】
次に、実施形態の効果を確認するために行った解析結果を説明する。
図20は、
図1~
図6に示した実施形態の誘導加熱装置30によりステータコア10を加熱する場合において、ティース14とステータヨーク13における励磁コイル33への供給電流の周波数に対するジュール損を比較した図である。
【0060】
図20に示すように、実施形態によれば、励磁コイル33への供給電流の周波数の違いに関係なく、ティース14のジュール損をステータヨーク13より大幅に高くできるので、ティース14を集中的に加熱できることを確認できた。
【0061】
図21~
図24は、実施形態の誘導加熱装置によりステータコア10を加熱する場合におけるジュール損密度(W/m
3)の分布の解析結果を示している。
図21は、
図1~
図6の実施形態の誘導加熱装置30によりステータコア10を加熱する場合において、第1断熱部40(
図2)の厚みが小さい(1mmとした)場合におけるステータコア10の周方向一部におけるジュール損密度の分布の解析結果を示している。
図21において、ステータコア10において最もジュール損密度が低い部分を無地部で示している。そして、無地部、砂地部、斜線部、斜格子部の順にジュール損密度が高くなり、黒地部で最もジュール損密度が高くなることを示している。
【0062】
図21の解析結果から、実施形態により、ティース14のジュール損密度を高くできると共に、ステータヨーク13のジュール損密度を低くできるので、ティース14を集中的に加熱できることを確認できた。
【0063】
図22は、実施形態の誘導加熱装置によりステータコア10を加熱する場合において、第1断熱部40(
図2)の厚みが大きい(5mmとした)場合におけるステータコア10の周方向一部におけるジュール損密度の分布の解析結果を示している。
図22において、ステータコア10において最もジュール損密度が低い部分を無地部で示している。そして、無地部、砂地部、斜線部の順にジュール損密度が高くなり、黒地部で最もジュール損密度が高くなることを示している。
【0064】
図22の解析結果から、第1断熱部40の厚みを大きくした場合には、
図21の場合よりステータヨーク13の端面付近でジュール損密度が高くなることで、温度上昇が大きくなりやすいことが確認された。この理由として、励磁コイル33からの漏れ磁束により、ステータヨーク13の軸方向端部が集中的に加熱されやすいことが考えられる。
【0065】
一方、
図23は、
図9に示した誘導加熱装置30eによりステータコア10を加熱する場合において、第1断熱部40aの厚みが大きい(5mmとした)場合におけるステータコア10の周方向一部におけるジュール損密度の分布の解析結果を示している。
図23において、無地部、砂地部、斜線部、斜格子部、黒地部の意味は
図21の場合と同様である。
【0066】
図23の解析結果から、
図22の場合と同様に第1断熱部40aの厚みを大きくした場合でも、
図22の場合より、ステータヨーク13の端面付近でジュール損密度が低くなった。このことから、
図9の構成のように、誘導加熱装置30eに外周側逆極性コイル50を設ける場合には、励磁コイル33からの漏れ磁束により、ステータヨーク13の軸方向端部が集中的に加熱されることを抑制できることを確認できた。また、
図24は、
図8Aに示した誘導加熱装置30bによりステータコア10を加熱する場合において、第1断熱部40aの厚みが大きい(5mmとした)場合におけるステータコア10の周方向一部におけるジュール損密度の分布の解析結果を示している。
図8Aの構成のように、誘導加熱装置に金属環44を設けた場合には、
図24のような結果を得られた。これにより、第1断熱部40aの厚みを大きくした場合でも、ステータヨーク13の端面付近でジュール損密度が低くなる解析結果を得られた。誘導加熱装置に短絡コイル46、または端面側逆極性コイル48を設けた場合も、
図24に示すような解析結果と同様であった。
【符号の説明】
【0067】
10 回転電機ステータコア(ステータコア)、13 ステータヨーク、14 ティース、16 スロット、30,30a~30h 誘導加熱装置、31,31a 中心コア、33 励磁コイル、35,35a 端部コア、40,40a 第1断熱部、42 第2断熱部、44 金属環、46 短絡コイル、48 端面側逆極性コイル、50 外周側逆極性コイル、52 第3断熱部、54,54a,54b 外周ヨーク、55 筒部、56 板部、57 ヨーク要素、57a,57b 板部、58 第1ヨーク要素、59 第2ヨーク要素、60,60a,60b,60c 誘導加熱装置、61 孔、62 円板部、63 径方向板部。