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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20221129BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20221129BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221129BHJP
   B01J 35/04 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
F01N3/10 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J35/04 301L
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019235839
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104472
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎮西 勇夫
(72)【発明者】
【氏名】仲東 聖次
(72)【発明者】
【氏名】白川 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真秀
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昂大
(72)【発明者】
【氏名】島野 紀道
(72)【発明者】
【氏名】二橋 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】岡田 満克
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 敬
(72)【発明者】
【氏名】秋山 草多
(72)【発明者】
【氏名】内藤 功
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-083492(JP,A)
【文献】特開2015-182040(JP,A)
【文献】特開2019-150793(JP,A)
【文献】国際公開第2020/175142(WO,A1)
【文献】Catalysis Today,2016年07月16日,vol.281,p.490-499
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
F01N 3/10,3/28
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に形成された触媒コート層を有する排ガス浄化用触媒であって、
前記触媒コート層が、Rh微粒子と、Ce-Zr系複合酸化物及びCe酸化物を含まないZr系複合酸化物からなる助触媒とを含み、
前記Rh微粒子が、透過型電子顕微鏡観察により測定された平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり、且つ粒径の標準偏差σが0.8nm以下であり、
前記Rh微粒子が、前記Ce-Zr系複合酸化物及び前記Ce酸化物を含まないZr系複合酸化物のそれぞれに担持されている、排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれており、これらの有害成分は排ガス浄化用触媒によって浄化されてから大気中に放出されている。従来、この排ガス浄化用触媒には、CO、HCの酸化とNOxの還元とを同時に行う三元触媒が用いられており、三元触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属を触媒金属として用いたものが広く用いられている。
【0003】
また、排ガス浄化用触媒には、触媒金属とともに、酸素貯蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有する助触媒としてセリア-ジルコニア(Ce-Zr)系複合酸化物等も用いられている。このようなOSC材は、酸素を吸放出することによりミクロな空間で空燃比(A/F)を制御し、排ガス組成変動に伴う浄化率の低下を抑制する効果を有する。
【0004】
このような排ガス浄化用触媒として、特許文献1には、担体と、該担体上に形成された触媒層とからなる排ガス浄化用触媒であって、前記触媒層のうちで排ガスに直接接する最外層では、Ce-Zr系複合酸化物と、Ce酸化物を含まないZr系複合酸化物とからなるそれぞれの助触媒に貴金属触媒のRhが担持されている排ガス浄化用触媒が記載されている。
【0005】
ここで、近年、排ガス規制が厳しくなる一方で、資源リスクの観点から排ガス浄化用触媒に用いられる貴金属の使用量を低減することが求められている。貴金属の中でもRhはNOx還元活性を担っており、Rhを高活性化することにより、排ガス規制に対応しつつ、貴金属の使用量を低減することが期待できる。
【0006】
排ガス浄化用触媒において、貴金属の使用量を低減させる一つの方法として、貴金属を担体上に微細な粒子として担持して利用する方法が知られている。例えば、特許文献2には、酸化物担体に貴金属粒子を担持させて貴金属担持触媒とする工程と、還元雰囲気中で貴金属担持触媒を加熱処理して、貴金属の粒径を所定の範囲に制御する工程とを含む触媒の製造方法が開示されている。特許文献2の実施例には、酸化物担体上の貴金属粒子の粒径を2.8nm以上3.8nm以下の範囲に制御することができたことが記載されている。
【0007】
また、特許文献3には、酸化物担体に貴金属微粒子を担持させた触媒に対して、還元剤を作用させて小粒径の貴金属微粒子を肥大化させ、該貴金属微粒子の最小粒径を1nm以上にする工程を有する、触媒の製造方法が開示されている。特許文献3の実施例には、酸化物担体上の貴金属微粒子の粒径を3.0nm以上4.1nm以下に制御できたことが記載されている。
【0008】
しかし、粒径を制御したRh微粒子を用いた従来の触媒には、Rh微粒子が触媒反応中に凝集して劣化してしまい、触媒の耐久性が十分でない場合があった。
【0009】
また、これらの他にも、触媒金属の担持密度や担持部位についても検討されている。例えば、特許文献4には、基層側と表層側の貴金属担持密度を制御した触媒を用いた排気浄化装置が記載されている。また、特許文献5には、貴金属触媒の濃度が均一である触媒層と、貴金属触媒の濃度を表層から基材側に向かって変化させた触媒層を有する触媒コンバーターが記載されている。
【0010】
従来の排ガス浄化用触媒においては、Rh微粒子の粒径を制御することや、触媒金属の担持密度や担持部位を制御することにより、一定の性能の向上が見られたが、近年のより厳しい排ガス規制に対応するためには、より少ない貴金属量で触媒の排ガス浄化性能を向上させることが求められている。ここで、排ガス浄化用触媒の低温活性は貴金属量に大きく依存するため、低温活性を向上させることができれば貴金属の使用量の低減に繋がることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2014-83492号公報
【文献】特開2016-147256号公報
【文献】特開2007-38085号公報
【文献】特開2017-115690号公報
【文献】特開2017-104825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記の通り、従来の排ガス浄化用触媒には、低温活性を向上して、貴金属の使用量を低減することが求められていた。それ故、本発明は、低温活性が向上した排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、平均粒径及び粒径の標準偏差を特定の範囲に制御したRh微粒子を担体材料全体に担持することにより、低温活性が向上し、貴金属の使用量を低減できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)基材と、該基材上に形成された触媒コート層を有する排ガス浄化用触媒であって、
前記触媒コート層が、Rh微粒子と、Ce-Zr系複合酸化物及びCe酸化物を含まないZr系複合酸化物からなる助触媒とを含み、
前記Rh微粒子が、透過型電子顕微鏡観察により測定された平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり、且つ粒径の標準偏差σが0.8nm以下であり、
前記Rh微粒子が、前記Ce-Zr系複合酸化物及び前記Ce酸化物を含まないZr系複合酸化物のそれぞれに担持されている、排ガス浄化用触媒。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、低温活性が向上した排ガス浄化用触媒を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の排ガス浄化用触媒の第1の実施形態を示す断面模式図である。
図2図2は、本発明の排ガス浄化用触媒の第2の実施形態を示す断面模式図である。
図3図3は、本発明の排ガス浄化用触媒の一実施形態を示す断面模式図である。
図4図4は、本発明の排ガス浄化用触媒の一実施形態を示す断面模式図である。
図5図5は、実施例1及び比較例1~5の触媒のNOx50%浄化温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明の排ガス浄化用触媒は、基材と、該基材上に形成された触媒コート層を有する。
【0019】
本発明の排ガス浄化用触媒に用いる基材としては、特に限定されずに、一般的に用いられている多数のセルを有するハニカム形状の材料を使用することができる。基材の材質としては、コージェライト(2MgO・2Al・5SiO)、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等の耐熱性を有するセラミックス材料や、ステンレス鋼等の金属箔からなるメタル材料が挙げられるが、コストの観点からコージェライトが好ましい。
【0020】
本発明の排ガス浄化用触媒は、触媒コート層が、平均粒径及び粒径の標準偏差σが特定の範囲内に制御されたロジウム(Rh)微粒子(以下、粒径制御Rh微粒子又はRh微粒子とも記載する)と、助触媒とを含み、粒径制御Rh微粒子が助触媒全体に担持されている。
【0021】
Rh微粒子は、平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下である。本発明において、Rh微粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察において撮影した画像を元に、直接に投影面積円相当径を計測し、集合数100以上の粒子群を解析することによって得られた個数平均粒子径である。
【0022】
Rh微粒子の平均粒径を1.0nm以上とすることにより、触媒反応中に凝集して粗大化する要因となると考えられる粒径1.0nm未満の微細粒子の割合を低減することができるため、Rh微粒子の劣化を抑制し、触媒の耐久性を向上させることができる。一方、Rh微粒子の平均粒径を2.0nm以下とすることにより、Rh微粒子の表面積を大きくすることができ、触媒活性を高くすることができる。Rh微粒子の平均粒径は、好ましくは1.1nm以上、より好ましくは1.2nm以上である。また、Rh微粒子の平均粒径は、好ましくは1.9nm以下であり、より好ましくは1.8nm以下であり、特に好ましくは1.6nm以下である。Rh微粒子の平均粒径は、好ましくは1.1nm以上1.9nm以下であり、より好ましくは1.2nm以上1.8nm以下である。
【0023】
Rh微粒子は、透過型電子顕微鏡観察により測定された粒径の標準偏差σが、0.8nm以下である。Rh微粒子は、粒径の標準偏差σが0.8nm以下であるため、粒径分布がシャープであり、微細粒子及び粗大粒子の含有割合が低い。微細粒子が少ないことにより、触媒反応中のRh微粒子の凝集が抑制されるため、Rhの劣化が抑制され、触媒の耐久性が向上する。また、粗大粒子が少ないことにより、Rh微粒子の表面積が大きくなり、触媒活性が向上する。
【0024】
Rh微粒子の粒径の標準偏差σは、好ましくは0.7nm以下であり、より好ましくは0.6nm以下であり、特に好ましくは0.5nm以下である。Rh微粒子の粒径は単分散であってもよいが、標準偏差σが0.2nm以上、0.3nm以上又は0.4nm以上であっても、本発明の効果を奏することができる。
【0025】
Rh微粒子は、特に粒径1.0nm未満の微細粒子の割合が低減されている。粒径1.0nm末満の微細粒子の割合が少ないことにより、触媒反応中のRh微粒子の凝集が抑制されるため、Rhの劣化が抑制され、触媒の耐久性が向上する。Rh微粒子は、粒径1.0nm未満のRh微粒子の存在割合が、Rh微粒子の全重量に対して、好ましくは5重量%以下である。この値は、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下又は0.1重量%以下であってよく、これを全く含まなくてもよい。
【0026】
好ましい実施形態において、Rh微粒子は、透過型電子顕微鏡によって測定したときに、平均粒径が1.2nm以上1.8nm以下であり、且つ粒径1.0nm未満のRh微粒子の存在割合が、Rh微粒子の全重量に対して5.0重量%以下である。
【0027】
触媒コート層において、粒径制御Rh微粒子は、Ce-Zr系複合酸化物及びCe酸化物を含まないZr系複合酸化物からなる助触媒全体に担持されている。すなわち、粒径制御Rh微粒子は、Ce-Zr系複合酸化物及びCe酸化物を含まないZr系複合酸化物のそれぞれに担持されている。粒径制御Rh微粒子をCe-Zr系複合酸化物及びCe酸化物を含まないZr系複合酸化物のそれぞれに担持することにより、いずれか一方に担持した場合と比較して、触媒の耐久性が向上し、低温活性が向上する。
【0028】
本発明において、Ce-Zr系複合酸化物とは、CeO-ZrO化合物(CZ材又はZC材、セリア(酸化セリウム)-ジルコニア系複合酸化物等と称される)をいう。Ce-Zr系複合酸化物は、Ce及びZr以外の金属元素の酸化物を含んでいてもよい。Ce及びZr以外の金属元素としては、希土類元素(ただし、Ceを除く)が好ましい。希土類元素としては、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等を挙げることができる。これらのうち、Y、La、Pr、Nd、及びEuから選択される1種以上が好ましい。また、Ce-Zr系複合酸化物は、拡散障壁としてAlが導入されたAl-CeO-ZrO三元系複合酸化物(ACZ材)等であってもよい。好ましくは、Ce-Zr系複合酸化物は、ランタナ(La)及びイットリア(Y)との複合酸化物の形態で用いる。Ce-Zr系複合酸化物におけるセリアとジルコニアとの混合割合は、好ましくは重量基準でCeO/ZrO=0.2以上4.0以下である。
【0029】
Ce-Zr系複合酸化物に含まれるCeOは、その曝される排ガス中の酸素分圧に依拠してCe3+、Ce4+とその酸化数が変化し、電荷の過不足を補償するために酸素を吸放出する機能や酸素を貯蔵する機能(OSC)を有する。本発明において、Ce-Zr系複合酸化物はOSC材として用いられており、排ガスの雰囲気変動を吸収・緩和し、理論空燃比付近に保つことを可能としている。
【0030】
本発明において、Ce酸化物を含まないZr系複合酸化物は、ZrO単体のほか、Ce及びZr以外の金属元素の酸化物を含むものであってもよい。Ce及びZr以外の金属元素としては、希土類元素(ただし、Ceを除く)が好ましい。希土類元素としては、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等を挙げることができる。これらのうち、Y、La、Pr、Nd、及びEuから選択される1種以上が好ましい。Zr系複合酸化物は、好ましくは、ランタナ(La)、イットリア(Y)及びジルコニウムからなる複合酸化物の形態で用いる。
【0031】
Ce-Zr系複合酸化物及びCe酸化物を含まないZr系複合酸化物へのRh微粒子の担持は、これらの複合酸化物を、予め所定の粒径分布に制御されたRh微粒子前駆体を含有するRh微粒子前駆体分散液と接触させ、次いで焼成することによって行うことができる。
【0032】
Rh微粒子前駆体分散液は、例えば、以下のいずれかの方法によって製造することができる。
(1)反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器中で、Rh化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを反応させる方法(方法1)、及び
(2)Rh化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを混合して反応させた後、高速ミキサー中で撹拌処理する方法(方法2)。
【0033】
方法1では、Rh化合物(例えば、Rhの無機酸塩)の酸性溶液と、塩基性溶液(例えば、含窒素有機化合物の水溶液)とを反応させる際に、反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器を用いることにより、得られる分散液中に含まれるRh微粒子前駆体(例えばRhの水酸化物)の粒径及び粒径分布を制御することができる。
【0034】
反応器が有するクリアランス調節部材は、例えば、2枚の平板、平板と波状板との組み合わせ、細管等であってよい。反応場のクリアランスは、所望の粒径及び粒径分布に応じて適宜設定することができる。反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器としては、例えば、適当なクリアランス調節部材を有するマイクロリアクター等を用いることができる。
【0035】
方法2では、Rh化合物(例えば、Rhの無機酸塩)の酸性溶液と、塩基性溶液(例えば、含窒素有機化合物の水溶液)との反応によって、大粒径の粒子として生成したRh微粒子前駆体を高速ミキサー中で撹拌処理して、強い剪断力を与えて分散することにより、分散後のRh微粒子前駆体の平均粒径及び粒径分布を制御することができる。
【0036】
以上のようにして調製したRh微粒子前駆体分散液をCe-Zr系複合酸化物及びCe酸化物を含まないZr系複合酸化物と接触させ、次いで焼成することによって、Rh微粒子がCe-Zr系複合酸化物及びCe酸化物を含まないZr系複合酸化物のそれぞれに担持される。なお、Rh微粒子の担持は、Rh微粒子前駆体分散液をCe-Zr系複合酸化物及びCe酸化物を含まないZr系複合酸化物と混合してスラリーを得て、これを基材にコーティングし、焼成することによって、触媒コート層の調製と同時に行ってもよい。
【0037】
触媒コート層中のRh微粒子の含有量は、基材容量に対して、好ましくは0.01g/L以上0.7g/L以下であり、より好ましくは0.1g/L以上0.6g/L以下である。触媒コート層中のRh微粒子の含有量が0.01g/L以上0.7g/L以下であると、触媒の耐久性の向上及びRhの使用量の低減を両立することができる。
【0038】
触媒コート層中のCe-Zr系複合酸化物の含有量は、基材容量に対して、好ましくは1g/L以上75g/L以下であり、より好ましくは5g/L以上50g/L以下である。触媒コート層中のCe-Zr系複合酸化物の含有量が基材容量に対して1g/L以上75g/L以下であると、効果的に触媒の耐久性を向上させることができる。
【0039】
触媒コート層中のCe酸化物を含まないZr系複合酸化物の含有量は、基材容量に対して、好ましくは1g/L以上100g/L以下であり、より好ましくは5g/L以上75g/L以下である。
【0040】
触媒コート層において、Ce-Zr系複合酸化物及びCe酸化物を含まないZr系複合酸化物の合計含有量に対するCe-Zr系複合酸化物の含有量の割合は、好ましくは10重量%以上60重量%以下である。Ce-Zr系複合酸化物の含有量の割合がこの範囲内であると、高いOSC能及び高いNOx浄化性能を両立することができる。
【0041】
触媒コート層は、前記のRh微粒子以外の触媒金属を含んでいてもよい。触媒金属としては、Rh以外の白金族貴金属が好ましい。白金族貴金属としては、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)が挙げられ、Ptを用いることが好ましい。
【0042】
また、触媒コート層は、前記のRh微粒子、Ce-Zr系複合酸化物及びCe酸化物を含まないZr系複合酸化物以外の任意の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されずに、例えば、金属酸化物等が挙げられる。触媒コート層が他の成分を含む場合、その含有量は、基材容量に対して、好ましくは100g/L以下であり、より好ましくは50g/L以下である。また、前記のRh微粒子は、好ましくは他の成分に担持されている。
【0043】
金属酸化物は、特に限定されずに、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ルテチウム(Lu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)から選択される1種以上の金属の酸化物であってよい。金属酸化物としては、例えば、アルミナ(Al)又はAl及びランタナ(La)の複合酸化物等を用いることができる。
【0044】
本発明の排ガス浄化用触媒において、触媒コート層は、1層でもよく、また2層以上であってもよい。触媒コート層が2層以上である場合、前記の粒径制御Rh微粒子と、Ce-Zr系複合酸化物及びCe酸化物を含まないZr系複合酸化物からなる助触媒を触媒コート層の少なくとも1層に含んでいればよい。例えば、触媒コート層が、基材上に形成された下層と、下層上に形成された上層からなる2層構造を有する場合、上層及び下層の少なくとも1層が、助触媒全体に担持された前記の粒径制御Rh微粒子を含んでいれば本発明の効果が得られる。
【0045】
触媒コート層が2層以上である場合、前記の粒径制御Rh微粒子及び助触媒を含む層以外の触媒コート層は、好ましくは、触媒金属として白金族貴金属を含む。白金族貴金属としては、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)が挙げられ、Ptが好ましい。また、この触媒コート層は、触媒金属の他に、Ce-Zr系複合酸化物、Ce酸化物を含まないZr系複合酸化物や他の金属酸化物等を含んでいてもよい。
【0046】
図1に、本発明の排ガス浄化用触媒の第1の実施形態を示す。図1に示されるように、排ガス浄化用触媒10は、基材11と、基材11上に形成された触媒コート層12を有し、触媒コート層12は、粒径制御Rh微粒子及び助触媒を含む。
【0047】
図2に、本発明の排ガス浄化用触媒の第2の実施形態を示す。第2の実施形態において、排ガス浄化用触媒は、2層の触媒コート層を有する。図2に示されるように、排ガス浄化用触媒20は、基材21と、基材21上に形成された2層構造の触媒コート層24を有する。触媒コート層24は、上層22と下層23からなる。第2の実施形態において、上層22及び下層23の少なくとも1層が前記の粒径制御Rh微粒子及び助触媒を含んでいればよい。
【0048】
本発明の排ガス浄化用触媒の一実施形態において、2層構造の触媒コート層の上層が前記の粒径制御Rh微粒子及び助触媒を含む。これによって、触媒の耐久性が向上し、触媒の低温活性が向上する。この実施形態において、触媒コート層の上層は、排ガス流れ方向の下流側端面から基材全長の70%以上100%以下、80%以上100%以下の長さの範囲に形成されていることが好ましく、また、70%以上90%以下、80%以上90%以下の長さの範囲に形成されていてもよい。触媒コート層の上層が粒径制御Rh微粒子及び助触媒を含み、且つこの範囲に形成されていることによって、触媒の耐久性が向上し、触媒の低温(例えば250℃)における活性が高くなる。また、この実施形態において、触媒コート層の下層は、排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の100%以下の長さの範囲に形成されていればよいが、例えば、上流側端面から基材全長の40%以上100%以下、より好ましくは60%以上100%以下、特に好ましくは60%以上80%以下の長さの範囲に形成されている。下層がこの範囲に形成されていることによって、触媒の低温活性及び高温活性を両立することができる。
【0049】
図3に、2層構造の触媒コート層の上層が前記の粒径制御Rh微粒子及び助触媒を含む本発明の排ガス浄化用触媒の好ましい実施形態を示す。図3に示されるように、排ガス浄化用触媒30は、基材31と、基材31上に形成された2層構造の触媒コート層34を有する。触媒コート層34は、上層32と下層33からなる。この実施形態において、上層32は、排ガス流れ方向の下流側端面から基材全長の所定の長さの範囲に形成されており、下層33は、排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の所定の長さの範囲に形成されている。図3において、矢印は排ガス流れ方向を示す。
【0050】
本発明の排ガス浄化用触媒の一実施形態において、2層構造の触媒コート層の下層が前記の粒径制御Rh微粒子及び助触媒を含む。これによって、有害成分の一部が上層で浄化された排ガスが、粒径制御Rh微粒子を含む下層を通過するため、RhをNOxの浄化のために有効活用することができ、触媒のNOx浄化能が向上し、Rhの使用量を低減することができる。この実施形態において、触媒コート層の上層は、排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、特に好ましくは50%以下の長さの範囲に形成されている。また、この実施形態において、触媒コート層の下層は、下流側端面から基材全長の好ましくは60%以上100%以下の長さの範囲に形成されている。
【0051】
図4に、2層構造の触媒コート層の下層が前記の粒径制御Rh微粒子及び助触媒を含む本発明の排ガス浄化用触媒の好ましい実施形態を示す。図4に示されるように、排ガス浄化用触媒40は、基材41と、基材41上に形成された2層構造の触媒コート層44を有する。触媒コート層44は、上層42と下層43からなる。この実施形態において、上層42は、排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の所定の長さの範囲に形成されており、下層43は、排ガス流れ方向の下流側端面から基材全長の所定の長さの範囲に形成されている。図4において、矢印は排ガス流れ方向を示す。
【0052】
本発明の排ガス浄化用触媒は、当業者に公知の方法によって基材上に触媒コート層の成分を含むスラリーをコーティングすることにより、製造することができる。一実施形態において、例えば、粒径制御Rh微粒子、Ce-Zr系複合酸化物及びCe酸化物を含まないZr系複合酸化物を含むスラリーを公知の方法を用いてコーティングして、所定の温度及び時間にて乾燥及び焼成することにより、基材上に触媒コート層を形成する。
【実施例
【0053】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0054】
<触媒の調製>
使用原料
材料1:ZrO:6重量%-La、10重量%-Y複合化ZrO
材料2:ZC:21重量%-CeO、72重量%-ZrO、1.7重量%-La、5.3重量%-Y複合酸化物
材料3:硝酸Rh溶液
材料4:Rh/ZrO:Rhが材料1に担持された材料
材料5:Rh/ZC:Rhが材料2に担持された材料
材料6:粒径制御Rh分散液
材料7:粒径制御Rh/ZrO:材料6のRhが材料1に担持された材料
材料8:粒径制御Rh/ZC:材料6のRhが材料2に担持された材料
基材:875cc(400セル四角 壁厚4mil)のコージェライトハニカム基材
【0055】
材料4~材料8は以下のようにして調製した。
【0056】
材料4:Rh/ZrO
材料3と材料1とを接触させた後、焼成することにより、担持量0.2重量%のRhが材料1に担持された材料4を得た。透過型電子顕微鏡によって測定したRh微粒子の平均粒径は0.7nmであった。
【0057】
材料5:Rh/ZC
材料3と材料2とを接触させた後、焼成することにより、担持量0.2重量%のRhが材料2に担持された材料5を得た。透過型電子顕微鏡によって測定したRh微粒子の平均粒径は0.7nmであった。
【0058】
材料6:粒径制御Rh分散液
イオン交換水50mL中に硝酸Rh(III)0.2gを加えて溶解し、Rh化合物の酸性溶液(pH1.0)を調製した。
【0059】
有機塩基溶液として、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(濃度175g/L、pH14)を準備した。
【0060】
クリアランス調節部材としての2枚の平板を有する反応器(マイクロリアクター)を用い、クリアランスが10μmに設定された反応場に、前記のRh化合物の酸性溶液及び有機塩基溶液を導入する手法により、両液を水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)と硝酸Rh(RN)とのモル比(TEAH/RN)が18となる条件で反応させて、Rh微粒子前駆体分散液を調製した。得られたRh微粒子前駆体分散液のpHは14であった。また、得られたRh微粒子前駆体分散液に含まれるRh微粒子前駆体のメジアン径(D50)を動的光散乱法(DLS)によって測定したところ、2.0nmであった。
【0061】
材料7:粒径制御Rh/ZrO
材料6と材料1とを接触させた後、焼成することにより、担持量0.2重量%のRhが材料1に担持された材料7を得た。透過型電子顕微鏡によって測定したRh微粒子の平均粒径は1.4nmであり、粒径の標準偏差σは0.48nmであった。
【0062】
材料8:粒径制御Rh/ZC
材料6と材料2とを接触させた後、焼成することにより、担持量0.2重量%のRhが材料2に担持された材料8を得た。透過型電子顕微鏡によって測定したRh微粒子の平均粒径は1.4nmであり、粒径の標準偏差σは0.48nmであった。
【0063】
実施例1
蒸留水に、Rh量0.45g/Lの材料6と、次に材料1を順番に攪拌しながら投入した後、10分間攪拌した。次に、材料1及びAl系バインダーを投入し、約10分間攪拌した。その後、材料2を投入し、約10分間攪拌し、これらの材料が懸濁したスラリーを調製した。次に、調製したスラリーを基材へ流し込み、ブロアーで不要分を吹き払い、基材壁面に材料をコーティングした。コート量は、基材容量に対して、材料1が50g/L、材料2が30g/Lとなるようにした。最後に、120℃の乾燥機で2時間乾燥した後、電気炉で500℃にて2時間焼成し、基材上に触媒コート層を調製した。触媒コート層において、粒径制御Rhは材料1のZrO及び材料2のZCのそれぞれに担持されていた。透過型電子顕微鏡によって測定したRh微粒子の平均粒径は1.4nmであり、粒径の標準偏差σは0.48nmであった。
【0064】
比較例1
材料2及び材料6を材料5に置き換えた以外は、実施例1と同様にして比較例1の触媒を調製した。
【0065】
比較例2
材料2及び材料6を材料8に置き換えた以外は、実施例1と同様にして比較例2の触媒を調製した。
【0066】
比較例3
材料1及び材料6を材料4に置き換えた以外は、実施例1と同様にして比較例3の触媒を調製した。
【0067】
比較例4
材料1及び材料6を材料7に置き換えた以外は、実施例1と同様にして比較例4の触媒を調製した。
【0068】
比較例5
材料6を材料3に置き換えた以外は、実施例1と同様にして比較例5の触媒を調製した。透過型電子顕微鏡によって測定したRh微粒子の平均粒径は0.7nmであった。
【0069】
<耐久試験>
調製した実施例1及び比較例1~5の各排ガス浄化用触媒について、実際のエンジンを用いて耐久試験を実施した。具体的には、耐久試験は、各排ガス浄化用触媒をV型8気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、触媒床温900℃で50時間にわたり、ストイキ及びリーンの各雰囲気の排ガスを一定時間(3:1の比率)ずつ繰り返して流すことにより行った。
【0070】
<性能評価>
耐久試験を行った各排ガス浄化用触媒をL型4気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、空燃比(A/F)=14.4の排ガスを供給し、Ga=35g/sの条件において、触媒床温200~600℃(20℃/分)で昇温した。NOx浄化率50%の際の温度(NOx50%浄化温度)を測定し、低温活性を評価した。この値が低い程、低温活性に優れる。
【0071】
表1に、実施例1及び比較例1~5のRh微粒子の詳細及びNOx50%浄化温度を示す。表1において、Rh微粒子の欄には、Rh微粒子の調製に用いたRh種を示した。また、図5に、実施例1及び比較例1~5の触媒のNOx50%浄化温度を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1及び図5より、Rh微粒子をZrO及びZCのいずれか一方に担持した場合、粒径制御Rh微粒子を用いた触媒と、平均粒径が本発明の所定の範囲外であるRh微粒子を用いた触媒のNOx50%浄化温度は同等であった(比較例1と比較例2の比較、比較例3と比較例4の比較)。しかし、粒径制御Rh微粒子をZrO及びZCのそれぞれに担持した場合、平均粒径が本発明の所定の範囲外であるRh微粒子を用いた場合と比較して、NOx50%浄化温度が有意に低下し、触媒の低温活性が向上した(実施例1と比較例5の比較)。よって、Rh微粒子の粒径を所定の範囲内に制御することにより得られた、触媒の低温活性向上効果は、粒径制御Rh微粒子をZrO及びZCのそれぞれに担持した場合に特異的に得られる効果であることが示された。
【符号の説明】
【0074】
10:排ガス浄化用触媒、11:基材、12:触媒コート層
20:排ガス浄化用触媒、21:基材、22:上層、23:下層、24:触媒コート層
30:排ガス浄化用触媒、31:基材、32:上層、33:下層、34:触媒コート層
40:排ガス浄化用触媒、41:基材、42:上層、43:下層、44:触媒コート層
図1
図2
図3
図4
図5