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  • 特許-炭化水素の変換用プロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】炭化水素の変換用プロセス
(51)【国際特許分類】
   C10G 47/00 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
C10G47/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019515610
(86)(22)【出願日】2017-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 IB2017055689
(87)【国際公開番号】W WO2018055519
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-11
(31)【優先権主張番号】201621032242
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】317004494
【氏名又は名称】ヒンドゥスタン ペトロリアム コーポレーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】ラジャ、 カヌーパーシー、 ナーガ
(72)【発明者】
【氏名】プディ、 サチャナラヤナ マーティ
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、 バベシュ
(72)【発明者】
【氏名】ペディ、 ベンカタ チャラパティ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】ネッテム、 ベンカテスワルル チョーダリー
(72)【発明者】
【氏名】ガンダム、 スリガネッシュ
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0275676(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0221709(US,A1)
【文献】特開平07-090282(JP,A)
【文献】特表2008-540773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素の変換プロセスであって、以下の工程:
i 炭化水素材料、水素、触媒をミキサーで混合して混成材料を得る工程であって、前記炭化水素材料のAPI度は7~50の範囲内である工程、
ii 前記の混成材料を予熱装置で予熱し、予熱材料を得る工程、
iii 前記の予熱材料を水素化分解装置内の水素雰囲気下で温度範囲300℃~500℃、圧力範囲2bar~80barにおいて水素化分解して水素化分解生成物を得る工程であって、前記水素化分解が15分から4時間掛けて実行される工程、
iv 前記の水素化分解生成物を分画して最上層留分、中層留分、下層留分を含む留分に分離する工程であって、前記の最上層留分が180℃未満の沸点を有し、中層留分が180℃~370℃の沸点を有し、下層留分が370℃超の沸点を有する工程
v 前記の下層留分の少なくとも一部を工程(iii)の前記の水素化分解装置へ還流する工程、
vi 前記の中層留分と前記の下層留分の残りの一部を処理し、軽質留分と重質留分を得る工程、
vii 前記の重質留分を前記の工程(iii)の水素化分解装置へ還流する工程
を含むプロセス。
【請求項2】
前記の炭化水素材料が、原油、油砂、瀝青油、オイルサンドビチューメン、シェールオイルからなる群から選択される少なくとも一つの材料を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記の触媒が、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、タングステン、ルテニウム、ロジウム、錫、タンタルからなる群から選択される少なくとも一つの金属または前記金属の化合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記工程(i)で添加される前記触媒の量は前記炭化水素材料の内0.001wt%~10wt%の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記の処理を、常圧蒸留装置、真空蒸留装置、異性化装置、改質装置、アルキル化装置、水素処理装置、水素化分解装置、流動接触分解装置、ビスブレーカー、重質油熱分解装置からなる群から選択する少なくとも一つの装置で実行する、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は炭化水素の変換に関する。
【0002】
用語の定義
本発明で使用される以下の用語は一般的に次の定義の意味を持つものとして意図されており、文脈上別段の意味を示す場合を除く。
【0003】
水素化処理: 本発明の水素化処理は水素処理と水素化分解から選択する少なくとも一つのプロセスを含む。
【0004】
SIMDIST: SIMDISTとは、石油製品の定性を行うためにガスクロマトグラフィー(GC)を利用した方式である蒸留シミュレーションを意味する。
【0005】
ASTM D-7169: ASTM D-7169は高温ガスクロマトグラフィーを利用した原油及び残留物の沸点分布と留分境界点の間隔を決定するテストである。
【0006】
ボンベイハイ油田: ボンベイハイ油田はインドのムンバイ沖にある油田を指す。
【0007】
アラブエキストラライト原油: アラブエキストラライト原油はアブケイクやベリ油田などのオフショア油田産原油である。
【背景技術】
【0008】
発明技術の背景
従来、石油精製所において蒸留装置を使用して原油を異なる沸点留分の貴重な燃料製品に点検する。これらの直接転換された製品を様々なプロセスで分離して処理し、市販可能な製品品質を得ている。従来のプロセスでは原油の変換は蒸留塔などの処理装置数を増やすことで増産してきた。しかしこれではプロセス全体の複雑度が増す。
【0009】
蒸留生成物に対する世界需要は指数的に急増している。こうした蒸留生成物の歩留まりを最大化するため、水素化分解プロセスを通して重質炭化水素を付加価値のある蒸留生成物に水素雰囲気下で変換する。水素化処理あるいは水素化分解は原油を直接投入可能な製品まで分離した後に蒸留塔などの下流処理施設で実行している。水素化処理においては、ナフサや軽油、サイクルオイルなどの炭化水素を処理して硫黄と窒素成分を炭化水素から除去したり改質してオクタン価の高い軽質炭化水素を取得する。
【0010】
従来精製所では、原油を様々な留分に分離し、留分を別個の水素化処理施設で個別に処理しているので、エネルギー消費が増大し、全行程が不経済となる。さらに、環境基準が厳格になったので省エネ製品を取得するための水素化処理技術に焦点が集まる。
【0011】
このため貴重な石油留分の歩留まりを高めるプロセスが必要であると思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明の目的
本発明の目的の一部は少なくとも1つの実施例を本明細書において取り上げることでじゅうぶんであるが、以下のものである。
【0013】
先行技術の持つ一つまたは複数の課題を改善するかまたは少なくとも有用な代替手段を提供することが本発明の目的である。
【0014】
炭化水素の変換用プロセスを提供することが本発明の目的である。
【0015】
炭化水素の歩留まりが改善された高品質炭化水素製品を生産する炭化水素の変換用プロセスを提供することが本発明のもう一つの目的である。
【0016】
本発明のその他の目的と優位性は本発明の範囲をこれに限定することは意図されていない次の悦明によってさらに明らかとなる。
【0017】
発明の要約:
本発明により炭化水素の変換プロセスを提供する。本発明のプロセスは炭化水素材料及び水素と触媒を混合して混成材料を取得することから成る。この混成材料を予熱し、予熱材料を得る。この予熱材料を水素化分解装置に通し、温度範囲300 ℃~500 ℃、優先的に320 ℃~480 ℃、圧力範囲2 bar~80 bar、優先的に15 bar~50 barで水素化分解して水素化分解生成物を得る。この水素化分解生成物を水素化分解装置から分留装置へ送り、沸点180 ℃未満の最上層留分及び沸点範囲180 ℃~370 ℃の中層留分、沸点370 ℃超の下層留分を得る。中層留分とともに一部の下層留分を異性化装置、改質装置、アルキル化装置、水素処理装置、水素化分解装置、常圧蒸留装置、真空蒸留装置、流動接触分解装置、重質油熱分解装置、ビスブレーカー等の処理装置で処理し、沸点370 ℃未満の軽質留分、沸点370 ℃超の重質留分を得る。下層留分の一部を水素化分解装置へ還流する。
【0018】
炭化水素材料は原油、油砂、瀝青油、オイルサンドビチューメン、頁岩(シェール)などの地層から採取される非在来型の原油、シェールオイルからなる群から選択する少なくとも一つの材料からなる。
【0019】
本発明の触媒はクロム、マンガン、鉄、コバルト、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、タングステン、ルテニウム、ロジウム、錫、タンタルからなる群から選択する少なくとも一つの金属または金属化合物からなる。
【0020】
触媒の量は炭化水素材料に対して0.001 wt%~10 wt%の範囲である。
【0021】
水素化分解の工程は水素化分解装置の中で15分~3時の範囲で実行しうる。
【0022】
本発明の下流処理装置は異性化装置、改質装置、アルキル化装置、水素処理装置、水素化分解装置、常圧蒸留装置、真空蒸留装置、流動接触分解装置、重質油熱分解装置、ビスブレーカーからなる群から選択する少なくとも一つの装置である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明を付帯図面を用いて説明する。図面は以下の通りである:
【0024】
図1図1は本発明のプロセスを実行するために使用するシステムの概念図である。
【0025】
参照番号: 要素
1: 炭化水素材料
2: 触媒ストック
2a: 触媒
3: 水素ストック
3a: 水素
4: 水素化分解装置
4a: 水素化分解生成物
5: 分留装置
5a: 最上層留分
5b: 中層留分
5c: 下層留分
6: 処理装置
6a: 軽質留分
6b: 重質留分
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
従来においては、原油を個別の留分に分離してから、個別の水素化処理装置で別個処理してきた。このため石油精製所が複雑化し、原油から得た個々の留分の水素処理に多大な費用を要した。
【0027】
従って、本発明は能率がよく経済的でもある炭化水素の変換用プロセスを提供する。
【0028】
本発明の一側面に従い、炭化水素の変換プロセスを提供する。同プロセスは以下の段階から成る:
【0029】
最初に、炭化水素材料をミキサー内で水素と触媒と混合し、混成材料を得る。この混成材料を予熱装置で予熱し、予熱材料を得る。予熱材料の温度は350 ℃未満を維持する。
【0030】
次に、予熱材料を水素化分解装置に通し、予熱材料の水素化分解を水素雰囲気下で温度範囲300 ℃~500 ℃、優先的に320 ℃~480 ℃、圧力範囲20 bar~80 bar、優先的に15 bar~50 barで水素化分解して水素化分解生成物を得る。水素化分解工程を15分~3時の範囲で実行する。水素雰囲気は、予熱材料を水素と混合することによって達成される。
【0031】
本発明の一実施形態に従い、ポリメチルシロキサンのようなシリコーン系消泡剤、腐食阻害剤、生体界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤を炭化水素材料に添加し、次に水素化分解装置に投入する。
【0032】
水素化分解後、水素化分解装置で取得した水素化分解生成物を分留装置へ送りそこで水素化分解生成物を留分に分離して沸点180 ℃未満の最上層留分及び沸点範囲180 ℃~370 ℃の中層留分、沸点370 ℃超の下層留分を得る。
【0033】
本発明の一実施形態に従い、最上層留分は水素を含み、これが処理及び浄化後に水素化分解装置へ還流する。
【0034】
本発明の実施形態に従い、下層留分の一部が水素化分解装置へ還流する。
中層留分及び一部の下層留分は下流処理へ供給されてさらに処理され、沸点370 ℃未満の軽質留分及び沸点370 ℃超の重質留分からなる蒸留生成物を得る。
【0035】
本発明の実施形態に従い、重質留分の一部は水素化分解装置へ還流する。
【0036】
本発明の実施形態に従い、炭化水素材料は原油、油砂、瀝青油、オイルサンドビチューメン、頁岩(シェール)などの地層から採取される非在来型の原油、シェールオイルからなる群から選択する少なくとも一つの材料を含む。炭化水素材料のAPI度は範囲7~50、優先的に10~40である。炭化水素材料の硫分は範囲0.05~5 wt%、優先的に0.1~3.5 wt%である。炭化水素材料の窒素成分は範囲0.1~1 wt%、優先的に0.2~0.5 wt%である。炭化水素材料の酸価は範囲0.01~0.1 mgKOH/g、優先的に0.12~0.5 mgKOH/gである。炭化水素材料の水分は1.5 wt%未満、優先的に0.1 wt%未満である。炭化水素材料のCCRは範囲1~30 %、優先的に1~20 wt%である。
【0037】
本発明の実施形態に従い、触媒はコロイド分散ブツまたはスラリー相分散触媒または油溶性触媒または水素化処理触媒であってよい。触媒はクロム、マンガン、鉄、コバルト、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、タングステン、ルテニウム、ロジウム、錫、タンタルからなる群から選択する少なくとも一つの金属または金属化合物からなる。
【0038】
本発明の実施形態に従い、下流処理は異性化装置、改質装置、アルキル化装置、水素処理装置、水素化分解装置、常圧蒸留装置、真空蒸留装置、流動接触分解装置、重質油熱分解装置、ビスブレーカーから成る群から選択する少なくとも一つの装置において実行される。
【0039】
本発明の実施形態に従い、炭化水素材少なくとも大幅な度合いまで水素化分解されると同時に触媒の存在下で水素処理し、異なる炭化水素製品を得、これらを適切に継続処理し、付加価値の付いた炭化水素製品を得る。
本発明のプロセスは図1に示すシステムを用いて実行できる。
【0040】
重質炭化水素材料1(限定せずにその例としては原油、油砂、瀝青油、オイルサンドビチューメン、シェールオイルがある)を水素ストック 3から投入する水素3a及び触媒ストック 2から投入する触媒2aと混合し、混成材料を得る。このようにして取得した混成材料を水素化分解装置4へ送りそこで重質炭化水素材料1が水素化分解処理される。混成材料を予熱装置で予熱し(図示されていない)、予熱材料を取得し、次にこれを水素化分解する。ある実施形態において、水素化分解を温度範囲300 ℃~500 ℃、優先的に320 ℃~480 ℃及び圧力範囲2 bar~80 bar、優先的に15 bar~50 barで実行し、 水素化分解生成物(4a)を得る。
【0041】
一つの実施形態において、水素化分解装置4は連続攪拌タンク反応器、固定床反応器、沸騰床反応器、スラリー気ほう塔反応器、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選択する。その他の反応器も視野に入る。
【0042】
使用する触媒の形態はさまざまあって構わず、その限定されない例としてはコロイド分散、スラリー状、油溶性が挙げられる。触媒の限定されない例にはクロム、マンガン、鉄、コバルト、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、タングステン、ルテニウム、ロジウム、錫、タンタルからなる群から選択する少なくとも一つの金属または金属の化合物からなる。その他の水素化処理触媒も視野に入る。
【0043】
典型的に、触媒の量は炭化水素材料に対いて範囲0.001wt%~10 wt%であってよい。
【0044】
水素化分解装置4において、重質炭化水素材料1を少なくともかなりの程度まで水素化分解に掛けて軽質炭化水素製品を得ると同時に重質炭化水素材料1と軽質炭化水素製品を水素処理する。水素処理においては、炭化水素(重質炭化水素材料1及び軽質炭化水素製品)から脱硫、脱金属、脱窒素するほか、その他汚染物質を除去する。
【0045】
次に、水素化分解装置4から出た生成物4aは分留装置5で個々の製品留分-5a、5b、5cに分離される。ある実施形態において、分留装置5は常圧蒸留塔であってよい。製品留分は沸点範囲別に分離される。製品留分5aの可能な構成は乾性ガス、LPG、ナフサ、5bは灯油及びディーゼル、製品留分5cの構成は軽油及び常圧残留物でありうる。
【0046】
製品留分5aの乾性ガスをさらに処理して汚染物質をLPG及び水素から分離する。水素はLPGから分離して継続浄化した後水素化分解装置4へ還流する。
【0047】
5c (図示されていない)の一部と共に様々な蒸留生成物から構成される生成物5bを限定することなく例示するなれば従来式精製所に見られる典型的装置である常圧蒸留装置、真空蒸留装置、異性化装置、改質装置、アルキル化装置、水素処理装置、水素化分解装置、流動接触分解装置、ビスブレーカー、重質油熱分解装置等の処理装置6へ投入され、そこでさらに変換お寄り製品処理が実行される。
【0048】
沸点370 ℃超の常圧残留物から成る一部の生成物5cを水素化分解装置4へ還流する。生成された水素を最上層留分から分離し、浄化後に水素化分解装置へ還流させる。
【0049】
下流処理装置6から来る生成物6aを混合及び貯蔵タンクへ送る。沸点370 ℃超の重質沸点留分から成る重質成分6bは水素化分解装置4へ還流する。
【0050】
本発明を以下の限定されることのない以下の実験室における実験に基づいてさらに説明するが、以下の例は説明のためにのみ既述されており、本発明の範囲を限定するものとは解釈されてはならない。以下の実験は大規模化して工業/商業スケールに拡大でき、得られる結果は工業スケールまで外挿することができる。
【0051】
実験
実験1:原油の水素化分解(ボンベイハイ原油)
水素化分解実験装置に原油100 gと3000 ppmのモリブデン含有触媒スラリーを投入した。水素化分解実験装置を窒素でパージして内部から空気を除去し、水素で15 barまで加圧して混成材料を得た。混成材料を予熱し予熱材料を得た。
水素化分解実験装置に入れた予熱材料を連続的に速度1000 rpmで攪拌しながら420 ℃まで加熱した。
【0052】
原油水素化分解は温度が350 ℃を超えると水素の存在下において始まった。加熱し続けると同時に温度を420 ℃に20分維持して水素化分解生成物を得た。水素化分解生成物を30 ℃未満まで冷却した。水素化分解生成物をASTM D86に従い実験的分留装置へ投入し、そこで最上層留分(< 180 ℃)、中層留分(180 ℃~370 ℃)、下層留分(> 370 ℃)の異なる留分を沸点別に分離した。実験的分留装置から得た気体及び液体の生成物を別個に回収し、GC-SIMDISTを使用してASTM D-7169に従い分析した。
【0053】
表1は水素化分解装置から得られた製品の留分別歩留まり比較である。
【0054】
【表1】
【0055】
中層留分及び一部の下層留分を水素化分解して軽質留分と重質留分を得て、形質蒸留生成物の歩留まりが改善された。重質留分を水素化分解装置へ還流させた。
【0056】
水素化分解原油からは上層と中層留分の歩留まりが高くなり、下層留分の歩留まりが減ることがわかった。歩留まり差を見ると重質炭化水素の変換により蒸留生成物の全体的歩留まりが8.18 wt%改善されたことがわかる。
【0057】
実験2:原油の水素化分解(アラブエキストラライト原油)
水素化分解実験装置に原油100 gと3000 ppmのモリブデン含有触媒スラリーを投入した。水素化分解実験装置を窒素でパージして内部から空気を除去し、水素で15 barに加圧して混成材料を得た。混成材料を予熱して予熱材料を得た。
【0058】
水素化分解実験装置に入れた予熱材料を連続的に速度1000 rpmで攪拌しながら420 ℃まで加熱した。
原油水素化分解は温度が350 ℃を超えると水素の存在下において始まった。加熱し続けると同時に、温度を420 ℃に20分維持して水素化分解生成物を得た。水素化分解された気体生成物を精製ガスアナライザーで分析し液体生成物はGC-SIMDISTを使ってASTM D-7169に準じて分析し、異なる留分境界点、最上層留分(< 180 ℃)、中層留分(180 ℃~370 ℃)、下層留分(> 370 ℃)を計測した。
【0059】
さらに個々の生成物別境界点をASTM D86に従い分離した結果を表2に示す
表2は水素化分解装置から得られた製品の留分別歩留まり比較である
【0060】
【表2】
【0061】
中層留分をさらに水素処理して硫黄と窒素を減らした処理製品を得た。
【0062】
水素化分解原油では最上層と中層留分の歩留まりが増加、重質留分の歩留まりは減少することが観察された。歩留まり差を見ると重質炭化水素の変換により蒸留生成物の全体的歩留まりが13.8 wt%改善されたことがわかる。
【0063】
実験結果を基に開示されているプロセスのパイロットスケール及び/または工業規模を推定することは可能である。
【0064】
技術進歩
上記に説明された本発明は
- 経済的で効率よくかつ
- 軽質炭化水素製品の割合を高めた炭化水素変換プロセスの実現に限定されることなく、いくつかの技術進歩を有する。
【0065】
本明細書を一貫して用語「成す」「構成する」やその類語としての「組成する」または「なしている」は記載されている要素、整数または手順または要素、整数または手順の群を含むがその他の要素、整数または手順またはその他の要素、整数または手順の群を除くことなくこれらを含むことを含意している。
【0066】
「少なくとも」または「少なくとも1つの」という表現の使用は、1つまたは複数の目的物質または結果を得るために、本発明の実施例において使用される場合があることに従い、1つまたは複数の要素または成分または数量の使用を示唆している。本発明のいくつかの実施形態が説明されたが、これらの実施形態は例までとしてのみ記載されているのであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の調製に関する処方または変更は、本発明の範囲内である限り、本発明を検討すれば直ちに、当分野に関する技能を有する者には可能でありうる。このような変種や変更は本発明の意図する範囲に含まれる。
【0067】
異なる物理パラメータ、寸法や数量を表す数値は概数であって、物理パラメータ、寸法や数量に代入された数値より高い値は本発明の範囲に含まれることが意図されている。但し、明細書に逆の記載がなされている場合はこの限りではない。
【0068】
本発明の特定の特長を相当強調してきたが、異なる修正を行うことができ、また、発明の原理から乖離することなく優先実施形態には多くの追加が可能である。本発明または優先実施形態の特質を修正できることは、本発明分野の専門的技能を有する者には明らかであって、この際、以上の説明内容が単に本発明を説明するためのものであり、限定的なものとして解釈されてはならないことを明確に理解する必要がある。

図1