(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】導電材料、導電材料の保管方法、導電材料の製造方法及び接続構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 35/14 20060101AFI20221129BHJP
B23K 35/22 20060101ALI20221129BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20221129BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20221129BHJP
H01B 5/00 20060101ALI20221129BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20221129BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20221129BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20221129BHJP
C22C 12/00 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
B23K35/14 Z
B23K35/22 310A
H01B1/00 D
H01B1/22 A
H01B5/00 D
H01B5/16
H01B13/00 Z
B23K35/26 310C
C22C12/00
(21)【出願番号】P 2019515675
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2018047055
(87)【国際公開番号】W WO2019124512
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2017246176
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宋 士輝
(72)【発明者】
【氏名】定永 周治郎
(72)【発明者】
【氏名】山中 雄太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 諭
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/031067(WO,A1)
【文献】特開2017-100145(JP,A)
【文献】特開2013-202632(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125778(WO,A1)
【文献】特開平06-155070(JP,A)
【文献】特開2000-094179(JP,A)
【文献】国際公開第2016/140326(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00-35/40
H01B 5/00
H01B 1/22
H01B 5/16
H01B 1/00
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性成分と、複数のはんだ粒子とを含み、
前記はんだ粒子が、はんだ粒子本体と、前記はんだ粒子本体の外表面上に配置された酸化皮膜とを有し、
前記はんだ粒子の粒子径が、1μm以上15μm以下であり、
前記はんだ粒子を、空気雰囲気下において120℃で10時間加熱したときに、加熱前の前記酸化皮膜の平均厚みの、加熱後の酸化皮膜の平均厚みに対する比が、2/3以下であ
り、
E型粘度計を用いて25℃及び0.5rpmの条件で測定した導電材料の粘度を、E型粘度計を用いて25℃及び5rpmの条件で測定した導電材料の粘度で除したチクソトロピックインデックスが、1.1以上5以下である、導電材料。
【請求項2】
25℃における粘度が、10Pa・s以上600Pa・s以下である、請求項
1に記載の導電材料。
【請求項3】
示差走査熱量測定により前記はんだ粒子の発熱量を求めたときに、
前記はんだ粒子の200℃以上における発熱量の絶対値が、100mJ/mg以上である、請求項
1又は2に記載の導電材料。
【請求項4】
導電ペーストである、請求項
1~
3のいずれか1項に記載の導電材料。
【請求項5】
請求項
1~
4のいずれか1項に記載の導電材料の保管方法であり、
前記導電材料を保管容器に入れて、-40℃以上10℃以下の条件で保管するか、又は、前記導電材料を保管容器に入れて、不活性ガス雰囲気下で保管する、導電材料の保管方法。
【請求項6】
熱硬化性成分と、複数のはんだ粒子とを混合し、導電材料を得る混合工程を備え、
前記はんだ粒子が、はんだ粒子本体と、前記はんだ粒子本体の外表面上に配置された酸化皮膜とを有し、前記はんだ粒子の粒子径が、1μm以上15μm以下であり、前記はんだ粒子を、空気雰囲気下において120℃で10時間加熱したときに、加熱前の前記酸化皮膜の平均厚みの、加熱後の酸化皮膜の平均厚みに対する比が、2/3以下であ
り、
E型粘度計を用いて25℃及び0.5rpmの条件で測定した前記導電材料の粘度を、E型粘度計を用いて25℃及び5rpmの条件で測定した前記導電材料の粘度で除したチクソトロピックインデックスが、1.1以上5以下である導電材料を得る、導電材料の製造方法。
【請求項7】
前記はんだ粒子を保管する保管工程をさらに備え、
前記保管工程が、前記はんだ粒子を保管容器に入れて、不活性ガス雰囲気下で保管する工程であるか、又は、前記はんだ粒子を保管容器に入れて、1×10
2Pa以下の条件で真空保管する工程であり、
前記はんだ粒子が、前記保管工程により保管されたはんだ粒子である、請求項
6に記載の導電材料の製造方法。
【請求項8】
請求項
1~
4のいずれか1項に記載の導電材料を用いて、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、前記導電材料を配置する工程と、
前記導電材料の前記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように配置する工程と、
前記はんだ粒子の融点以上に前記導電材料を加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、前記導電材料により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続する工程とを備える、接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電極間の電気的な接続に用いることができるはんだ粒子及びはんだ粒子の保管方法に関する。また、本発明は、上記はんだ粒子を含む導電材料、導電材料の保管方法及び導電材料の製造方法に関する。また、本発明は、上記はんだ粒子又は上記導電材料を用いた接続構造体及び接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等の異方性導電材料が広く知られている。上記異方性導電材料では、バインダー中に導電性粒子が分散されている。上記導電性粒子として、はんだ粒子が広く用いられている。
【0003】
上記異方性導電材料は、各種の接続構造体を得るために使用されている。上記異方性導電材料による接続としては、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等が挙げられる。
【0004】
上記異方性導電材料により、例えば、フレキシブルプリント基板の電極とガラスエポキシ基板の電極とを電気的に接続する際には、ガラスエポキシ基板上に、導電性粒子を含む異方性導電材料を配置する。次に、フレキシブルプリント基板を積層して、加熱及び加圧する。これにより、異方性導電材料を硬化させて、導電性粒子を介して電極間を電気的に接続して、接続構造体を得る。
【0005】
上記異方性導電材料の一例として、下記の特許文献1には、導電性粒子と、該導電性粒子の融点で硬化が完了しない樹脂成分とを含む異方性導電材料が記載されている。上記導電性粒子としては、具体的には、錫(Sn)、インジウム(In)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、ガリウム(Ga)及びタリウム(Tl)等の金属や、これらの金属の合金が挙げられている。
【0006】
特許文献1では、上記導電性粒子の融点よりも高く、かつ上記樹脂成分の硬化が完了しない温度に、異方性導電樹脂を加熱する樹脂加熱ステップと、上記樹脂成分を硬化させる樹脂成分硬化ステップとを経て、電極間を電気的に接続することが記載されている。また、特許文献1には、特許文献1の
図8に示された温度プロファイルで実装を行うことが記載されている。特許文献1では、異方性導電樹脂が加熱される温度にて硬化が完了しない樹脂成分内で、導電性粒子が溶融する。
【0007】
下記の特許文献2には、はんだ層と、上記はんだ層の表面を被覆する被覆層とを備えるはんだ材料が開示されている。上記はんだ層は、Snの含有量が40%以上の合金から構成されている金属材料又はSnの含有量が100%である金属材料から構成されている。上記被覆層は、SnO膜とSnO2膜とから構成されている。上記SnO膜は、上記はんだ層の外表面側に形成されている。上記SnO2膜は、上記SnO膜の外表面側に形成されている。上記被覆層の厚みは、0nmより大きく4.5nm以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-260131号公報
【文献】WO2016/031067A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、プリント配線板等における配線のファインピッチ化が進行している。これに伴って、はんだ粒子又ははんだを表面に有する導電性粒子を含む導電材料では、はんだ粒子又ははんだを表面に有する導電性粒子の微小化及び小粒子径化が進行している。
【0010】
はんだ粒子等を小粒子径化した場合には、導電材料を用いた導電接続時に、接続されるべき上下の電極間にはんだ粒子等を効率的に凝集させることが困難なことがある。特に、導電材料を加熱硬化させる際に、はんだ粒子等が電極上に十分に移動する前に、導電材料の粘度が上昇し、はんだ粒子等が電極のない領域に残存する場合がある。結果として、接続されるべき電極間の導通信頼性及び接続されてはならない隣接する電極間の絶縁信頼性を十分に高めることができない場合がある。
【0011】
また、はんだ粒子等の小粒子径化に伴い、はんだ粒子等の表面積が増加するため、はんだ粒子等の表面の酸化皮膜の含有量も増加する。はんだ粒子等の表面に酸化皮膜が存在すると、はんだ粒子等を電極上に効率的に凝集させることができないため、従来の導電材料では、導電材料中のフラックスの含有量を増加させる等の対策が必要となる。しかしながら、導電材料中のフラックスの含有量を増加させると、フラックスと導電材料中の熱硬化性成分とが反応して、導電材料の保存安定性が低下したり、導電材料の硬化物の耐熱性が低下したりすることがある。また、導電材料中のフラックスの含有量を増加させると、導電材料の硬化物中にボイドが発生したり、導電材料の硬化不良が発生したりすることがある。
【0012】
従来の導電材料では、導電接続時のはんだの凝集性を高めることと、導電材料の保存安定性を高めることと、導電材料の硬化物の耐熱性を高めることとの、これらの全ての要求を満足させることは困難である。
【0013】
本発明の目的は、導電接続時のはんだの凝集性を効果的に高めることができるはんだ粒子及びはんだ粒子の保管方法を提供することである。また、本発明の目的は、上記はんだ粒子を含む導電材料、導電材料の保管方法及び導電材料の製造方法を提供することである。また、本発明の目的は、上記はんだ粒子又は上記導電材料を用いた接続構造体及び接続構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の広い局面によれば、はんだ粒子本体と、前記はんだ粒子本体の外表面上に配置された酸化皮膜とを有するはんだ粒子であり、前記はんだ粒子の粒子径が、1μm以上15μm以下であり、前記はんだ粒子を、空気雰囲気下において120℃で10時間加熱したときに、加熱前の前記酸化皮膜の平均厚みの、加熱後の酸化皮膜の平均厚みに対する比が、2/3以下である、はんだ粒子が提供される。
【0015】
本発明に係るはんだ粒子のある特定の局面では、200℃以上における発熱量の絶対値が、100mJ/mg以上である。
【0016】
本発明の広い局面によれば、熱硬化性成分と、複数のはんだ粒子とを含み、前記はんだ粒子が、はんだ粒子本体と、前記はんだ粒子本体の外表面上に配置された酸化皮膜とを有し、前記はんだ粒子の粒子径が、1μm以上15μm以下であり、前記はんだ粒子を、空気雰囲気下において120℃で10時間加熱したときに、加熱前の前記酸化皮膜の平均厚みの、加熱後の酸化皮膜の平均厚みに対する比が、2/3以下である、導電材料が提供される。
【0017】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、25℃における粘度が、10Pa・s以上600Pa・s以下である。
【0018】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、E型粘度計を用いて25℃及び0.5rpmの条件で測定した粘度を、E型粘度計を用いて25℃及び5rpmの条件で測定した粘度で除したチクソトロピックインデックスが、1.1以上、5以下である。
【0019】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、前記はんだ粒子の200℃以上における発熱量の絶対値が、100mJ/mg以上である。
【0020】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、前記導電材料が、導電ペーストである。
【0021】
本発明の広い局面によれば、上述したはんだ粒子の保管方法であり、前記はんだ粒子を保管容器に入れて、不活性ガス雰囲気下で保管するか、又は、前記はんだ粒子を保管容器に入れて、1×102Pa以下の条件で真空保管する、はんだ粒子の保管方法が提供される。
【0022】
本発明の広い局面によれば、上述した導電材料の保管方法であり、前記導電材料を保管容器に入れて、-40℃以上10℃以下の条件で保管するか、又は、前記導電材料を保管容器に入れて、不活性ガス雰囲気下で保管する、導電材料の保管方法が提供される。
【0023】
本発明の広い局面によれば、熱硬化性成分と、複数のはんだ粒子とを混合し、導電材料を得る混合工程を備え、前記はんだ粒子が、はんだ粒子本体と、前記はんだ粒子本体の外表面上に配置された酸化皮膜とを有し、前記はんだ粒子の粒子径が、1μm以上15μm以下であり、前記はんだ粒子を、空気雰囲気下において120℃で10時間加熱したときに、加熱前の前記酸化皮膜の平均厚みの、加熱後の酸化皮膜の平均厚みに対する比が、2/3以下である導電材料を得る、導電材料の製造方法が提供される。
【0024】
本発明に係る導電材料の製造方法のある特定の局面では、前記はんだ粒子を保管する保管工程をさらに備え、前記保管工程が、前記はんだ粒子を保管容器に入れて、不活性ガス雰囲気下で保管する工程であるか、又は、前記はんだ粒子を保管容器に入れて、1×102Pa以下の条件で真空保管する工程であり、前記はんだ粒子が、前記保管工程により保管されたはんだ粒子である。
【0025】
本発明の広い局面によれば、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、前記接続部の材料が、上述したはんだ粒子を含み、前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続されている、接続構造体が提供される。
【0026】
本発明の広い局面によれば、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、前記接続部の材料が、上述した導電材料であり、前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続されている、接続構造体が提供される。
【0027】
本発明の広い局面によれば、上述したはんだ粒子を含む導電材料を用いて、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、前記導電材料を配置する工程と、前記導電材料の前記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように配置する工程と、前記はんだ粒子の融点以上に前記導電材料を加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、前記導電材料により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続する工程とを備える、接続構造体の製造方法が提供される。
【0028】
本発明の広い局面によれば、上述した導電材料を用いて、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、前記導電材料を配置する工程と、前記導電材料の前記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように配置する工程と、前記はんだ粒子の融点以上に前記導電材料を加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、前記導電材料により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続する工程とを備える、接続構造体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るはんだ粒子は、はんだ粒子本体と、上記はんだ粒子本体の外表面上に配置された酸化皮膜とを有する。本発明に係るはんだ粒子では、上記はんだ粒子の粒子径が、1μm以上15μm以下である。本発明に係るはんだ粒子では、上記はんだ粒子を、空気雰囲気下において120℃で10時間加熱したときに、加熱前の上記酸化皮膜の平均厚みの、加熱後の酸化皮膜の平均厚みに対する比が、2/3以下である。本発明に係るはんだ粒子では、上記の構成が備えられているので、導電接続時のはんだの凝集性を効果的に高めることができる。
【0030】
本発明に係る導電材料は、熱硬化性成分と、複数のはんだ粒子とを含む。本発明に係る導電材料では、上記はんだ粒子が、はんだ粒子本体と、上記はんだ粒子本体の外表面上に配置された酸化皮膜とを有する。本発明に係る導電材料では、上記はんだ粒子の粒子径が、1μm以上15μm以下である。本発明に係る導電材料では、上記はんだ粒子を、空気雰囲気下において120℃で10時間加熱したときに、加熱前の上記酸化皮膜の平均厚みの、加熱後の酸化皮膜の平均厚みに対する比が、2/3以下である。本発明に係る導電材料では、上記の構成が備えられているので、導電接続時のはんだの凝集性を効果的に高めることができる。
【0031】
本発明に係る導電材料の製造方法は、熱硬化性成分と、複数のはんだ粒子とを混合し、導電材料を得る混合工程を備える。本発明に係る導電材料の製造方法では、上記はんだ粒子が、はんだ粒子本体と、上記はんだ粒子本体の外表面上に配置された酸化皮膜とを有する。本発明に係る導電材料の製造方法では、上記はんだ粒子の粒子径が、1μm以上15μm以下である。本発明に係る導電材料の製造方法では、上記はんだ粒子を、空気雰囲気下において120℃で10時間加熱したときに、加熱前の上記酸化皮膜の平均厚みの、加熱後の酸化皮膜の平均厚みに対する比が、2/3以下である導電材料を得る。本発明に係る導電材料の製造方法では、上記の構成が備えられているので、導電接続時のはんだの凝集性を効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る導電材料を用いて得られる接続構造体を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2(a)~(c)は、本発明の一実施形態に係る導電材料を用いて、接続構造体を製造する方法の一例の各工程を説明するための断面図である。
【
図3】
図3は、接続構造体の変形例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、導電材料に使用可能なはんだ粒子の例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、はんだ粒子の凝集性を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0034】
(はんだ粒子)
本発明に係るはんだ粒子は、はんだ粒子本体と、上記はんだ粒子本体の外表面上に配置された酸化皮膜とを有する。本発明に係るはんだ粒子では、上記はんだ粒子の粒子径が、1μm以上15μm以下である。本発明に係るはんだ粒子では、上記はんだ粒子を、空気雰囲気下において120℃で10時間加熱したときに、加熱前の上記酸化皮膜の平均厚みの、加熱後の酸化皮膜の平均厚みに対する比が、2/3以下である。
【0035】
本発明に係るはんだ粒子では、上記の構成が備えられているので、導電接続時のはんだの凝集性を効果的に高めることができる。
【0036】
はんだ粒子の粒子径が35μm程度のはんだ粒子を含む従来の導電材料と比較して、はんだ粒子の粒子径が10μm以下のはんだ粒子を含む導電材料では、導電接続時に、接続されるべき上下の電極間にはんだ粒子を効率的に凝集させることができないという課題があった。本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、はんだ粒子の小粒子径化に伴い、はんだ粒子の表面に存在する酸化皮膜が相対的に厚くなること、及びはんだ粒子の表面積の増加により、はんだ粒子の表面に存在する酸化皮膜の含有量が増加することが、上記課題の原因であることを見出した。さらに、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、はんだ粒子の表面に存在する酸化皮膜を特定の厚みに制御することで、上記課題を解決できることを見出した。本発明では、はんだ粒子を小粒子径化しているにもかかわらず、上記はんだ粒子の電極上への移動が十分に進行し、接続されるべき電極間に、はんだを効率的に凝集させることができ、導通信頼性及び絶縁信頼性を高めることができる。
【0037】
図5は、はんだ粒子の凝集性を説明するための図である。
図5は、各条件(4種類の粒子径及び酸化皮膜の厚みの制御の有無)のはんだ粒子を加熱して、はんだ粒子が凝集するか否かを確認したときの図である。
【0038】
図5の酸化皮膜の厚みを制御していないはんだ粒子に関しては、はんだ粒子の粒子径が小さくなるほど、はんだ粒子が凝集していないことが理解できる。これは、はんだ粒子の小粒子径化に伴い、はんだ粒子の表面に存在する酸化皮膜が相対的に厚くなるため、及びはんだ粒子の表面積の増加により、はんだ粒子の表面に存在する酸化皮膜の含有量が増加するためである。
【0039】
酸化皮膜の厚みを制御していないはんだ粒子に関して、はんだ粒子の粒子径が35μmのはんだ粒子では、はんだ粒子が凝集し、1つの大きなはんだの凝集物を形成していることが確認できる。はんだ粒子の粒子径が10μmのはんだ粒子では、はんだ粒子が凝集し、はんだの凝集物を形成しているものの、はんだの凝集物の周囲に凝集していないはんだ粒子が確認できる。はんだ粒子の粒子径が2μm及び5μmのはんだ粒子では、はんだ粒子が一切凝集しておらず、はんだの凝集物が形成されていないことが確認できる。
【0040】
一方、
図5の酸化皮膜の厚みを制御しているはんだ粒子に関しては、はんだ粒子の粒子径にかかわらず、はんだ粒子が凝集し、1つの大きなはんだの凝集物を形成していることが確認できる。はんだ粒子の表面に存在する酸化皮膜を特定の厚みに制御することは、はんだ粒子の凝集性を高めるために重要であることが理解できる。
【0041】
また、本発明では、はんだ粒子の表面に存在する酸化皮膜を特定の厚みに制御することによって、はんだ粒子を電極上に効率的に凝集させることができるので、導電材料中のフラックスの含有量を過度に増加させる必要がない。結果として、導電材料中における熱硬化性成分とフラックスとの反応を効果的に抑制することができ、導電材料の保存安定性を効果的に高めることができる。
【0042】
また、導電材料中におけるフラックスの融点(活性温度)は、導電材料中における熱硬化性成分のTgよりも低い場合が多く、導電材料中におけるフラックスの含有量が多くなるほど、導電材料の硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。本発明では、導電材料中におけるフラックスの含有量を過度に増加させる必要がないので、導電材料の硬化物の耐熱性を効果的に高めることができる。また、本発明では、導電材料中におけるフラックスの含有量を過度に増加させる必要がないので、導電材料の硬化物中のボイドの発生を効果的に抑制でき、導電材料の硬化不良の発生を効果的に抑制することができる。
【0043】
本発明では、上記の構成が備えられているので、導電接続時のはんだの凝集性を高めることと、導電材料の保存安定性を高めることと、導電材料の硬化物の耐熱性を高めることとの、これらの全ての要求を満足させることができる。
【0044】
本発明では、上記のような効果を得るために、はんだ粒子の表面に存在する酸化皮膜を特定の厚みに制御することは大きく寄与する。
【0045】
上記はんだ粒子は、はんだ粒子本体と、上記はんだ粒子本体の外表面上に配置された酸化皮膜とを有する。上記はんだ粒子本体は、中心部分及び外表面のいずれもがはんだにより形成されている。上記はんだ粒子本体は、中心部分及び外表面のいずれもがはんだである粒子である。上記酸化皮膜は、上記はんだ粒子本体の外表面が空気中の酸素により酸化されることで形成される。上記酸化皮膜は、酸化錫等により構成される。一般に、市販のはんだ粒子は、外表面が空気中の酸素により酸化されており、酸化皮膜を有する。
【0046】
上記はんだ粒子の代わりに、はんだ以外の材料から形成された基材粒子と該基材粒子の表面上に配置されたはんだ部とを備える導電性粒子を用いた場合には、電極上に導電性粒子が集まり難くなる。また、上記導電性粒子では、導電性粒子同士のはんだ接合性が低いために、電極上に移動した導電性粒子が電極外に移動しやすくなる傾向があり、電極間の位置ずれの抑制効果も低くなる傾向がある。
【0047】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。なお、以下の図面において、大きさ、厚み、及び形状等は、図示の便宜上、実際の大きさ、厚み、及び形状等と異なる場合がある。
【0048】
図4は、導電材料に使用可能なはんだ粒子の例を示す断面図である。
【0049】
図4に示すはんだ粒子21は、はんだ粒子本体22と、はんだ粒子本体22の外表面上に配置された酸化皮膜23とを有する。はんだ粒子本体22と酸化皮膜23とは接している。はんだ粒子本体22は、全体がはんだにより形成されている。はんだ粒子本体22は、基材粒子をコアに有さず、コアシェル粒子ではない。はんだ粒子本体22は、中心部分及び外表面のいずれも、はんだにより形成されている。
【0050】
上記はんだは、融点が450℃以下である金属(低融点金属)であることが好ましい。上記はんだ粒子は、融点が450℃以下である金属粒子(低融点金属粒子)であることが好ましい。上記低融点金属粒子は、低融点金属を含む粒子である。該低融点金属とは、融点が450℃以下の金属を示す。低融点金属の融点は好ましくは300℃以下、より好ましくは160℃以下である。上記はんだ粒子は、融点が150℃未満の低融点はんだであることが好ましい。
【0051】
上記はんだ粒子の融点は、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。示差走査熱量測定(DSC)装置としては、SII社製「EXSTAR DSC7020」等が挙げられる。
【0052】
また、上記はんだ粒子は錫を含むことが好ましい。上記はんだ粒子に含まれる金属100重量%中、錫の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記はんだ粒子における錫の含有量が、上記下限以上であると、はんだ部と電極との接続信頼性がより一層高くなる。
【0053】
なお、上記錫の含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(堀場製作所社製「ICP-AES」)、又は蛍光X線分析装置(島津製作所社製「EDX-800HS」)等を用いて測定することができる。
【0054】
上記はんだ粒子を用いることで、はんだが溶融して電極に接合し、はんだが固化してはんだ部が形成され、該はんだ部が電極間を導通させる。例えば、はんだ部と電極とが点接触ではなく面接触しやすいため、接続抵抗が低くなる。また、上記はんだ粒子の使用により、はんだ部と電極との接合強度が高くなる結果、はんだ部と電極との剥離がより一層生じ難くなり、導通信頼性及び接続信頼性がより一層高くなる。
【0055】
上記はんだ粒子を構成する金属は特に限定されない。該金属は、錫、又は錫を含む合金であることが好ましい。該合金は、錫-銀合金、錫-銅合金、錫-銀-銅合金、錫-ビスマス合金、錫-亜鉛合金、錫-インジウム合金等が挙げられる。電極に対する濡れ性に優れることから、上記金属は、錫、錫-銀合金、錫-銀-銅合金、錫-ビスマス合金、錫-インジウム合金であることが好ましい。錫-ビスマス合金、錫-インジウム合金であることがより好ましい。
【0056】
上記はんだ粒子は、JIS Z3001:溶接用語に基づき、液相線が450℃以下である溶加材であることが好ましい。上記はんだ粒子の組成としては、例えば亜鉛、金、銀、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウム等を含む金属組成が挙げられる。低融点で鉛フリーである錫-インジウム系(117℃共晶)、又は錫-ビスマス系(139℃共晶)が好ましい。すなわち、上記はんだ粒子は、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むか、又は錫とビスマスとを含むことが好ましい。
【0057】
はんだ部と電極との接合強度をより一層高めるために、上記はんだ粒子は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、コバルト、ビスマス、マンガン、クロム、モリブデン、パラジウム等の金属を含んでいてもよい。また、はんだ部と電極との接合強度をさらに一層高める観点からは、上記はんだ粒子は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム又は亜鉛を含むことが好ましい。はんだ部と電極との接合強度をより一層高める観点からは、接合強度を高めるためのこれらの金属の含有量は、はんだ粒子100重量%中、好ましくは0.0001重量%以上、好ましくは1重量%以下である。
【0058】
本発明に係るはんだ粒子では、上記はんだ粒子の粒子径は、1μm以上15μm以下である。上記はんだ粒子の粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。上記はんだ粒子の粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高めることができる。上記はんだ粒子の粒子径は、2μm以上5μm以下であることが特に好ましい。
【0059】
上記はんだ粒子の粒子径は、平均粒子径であることが好ましく、数平均粒子径であることが好ましい。はんだ粒子の粒子径は、例えば、任意のはんだ粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各はんだ粒子の粒子径の平均値を算出することや、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察では、1個当たりのはんだ粒子の粒子径は、円相当径での粒子径として求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察において、任意のはんだ粒子50個の円相当径での平均粒子径は、球相当径での平均粒子径とほぼ等しくなる。レーザー回折式粒度分布測定では、1個当たりのはんだ粒子の粒子径は、球相当径での粒子径として求められる。上記はんだ粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定により算出することが好ましい。
【0060】
上記はんだ粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上であり、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。上記はんだ粒子の粒子径の変動係数が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだをより一層均一に配置することができる。但し、上記はんだ粒子の粒子径のCV値は、5%未満であってもよい。
【0061】
上記変動係数(CV値)は、以下のようにして測定できる。
【0062】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:はんだ粒子の粒子径の標準偏差
Dn:はんだ粒子の粒子径の平均値
【0063】
上記はんだ粒子の形状は特に限定されない。上記はんだ粒子の形状は、球状であってもよく、扁平状等の球形状以外の形状であってもよい。
【0064】
本発明に係るはんだ粒子では、上記はんだ粒子を、空気雰囲気下において120℃で10時間加熱したときに、加熱前の上記酸化皮膜の平均厚み(平均厚みA)の、加熱後の酸化皮膜の平均厚み(平均厚みB)に対する比(平均厚みA/平均厚みB)が、2/3以下である。上記比(平均厚みA/平均厚みB)は、好ましくは1/2以下である。上記比(平均厚みA/平均厚みB)の下限は特に限定されない。上記比(平均厚みA/平均厚みB)は、1/100以上であってもよく、1/50以上であってもよく、1/10以上であってもよい。上記比(平均厚みA/平均厚みB)が、上記上限以下であると、導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高めることができる。上記比(平均厚みA/平均厚みB)が、上記上限以下であると、導電材料の保存安定性をより一層効果的に高めることができ、さらに、導電材料の硬化物の耐熱性をより一層効果的に高めることができる。また、上記比(平均厚みA/平均厚みB)が、上記上限以下であると、導電材料の用途に好適に用いることができる。また、上記比(平均厚みA/平均厚みB)が、上記下限以上であると、上記はんだ粒子を含む導電材料のハンドリング性をより一層効果的に高めることができる。また、上記比(平均厚みA/平均厚みB)を、上記下限以上及び上記上限以下とすることによって、加熱時のはんだ粒子の表面における溶融性を適切に制御することができるため、導電接続時のはんだの凝集性がより一層効果的に高くなると考えられる。
【0065】
本発明に係るはんだ粒子では、加熱前の酸化皮膜を特定の厚みに制御している(酸化皮膜が比較的薄い)ために、空気雰囲気下において120℃で10時間加熱することで、酸化皮膜の厚みが増加して上記比(平均厚みA/平均厚みB)を満足することができる。従来のはんだ粒子では、加熱前の酸化皮膜が比較的厚いため、酸化される余地が乏しく、空気雰囲気下において120℃で10時間加熱しても、酸化皮膜の厚みがさほど増加せず、上記比(平均厚みA/平均厚みB)を満足しない。
【0066】
加熱前の上記酸化皮膜の平均厚み(平均厚みA)は、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、好ましくは5nm以下、より好ましくは4nm以下である。加熱前の上記酸化皮膜の平均厚み(平均厚みA)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高めることができる。また、加熱前の上記酸化皮膜の平均厚み(平均厚みA)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電材料の保存安定性をより一層効果的に高めることができ、さらに、導電材料の硬化物の耐熱性をより一層効果的に高めることができる。また、加熱前の上記酸化皮膜の平均厚み(平均厚みA)が、上記下限以上であると、導電材料の用途に好適に用いることができる。
【0067】
加熱前の上記酸化皮膜の平均厚み(平均厚みA)は、例えば、透過型電子顕微鏡を用いて、はんだ粒子の断面を観察することにより求めることができる。加熱前の上記酸化皮膜の平均厚み(平均厚みA)は、例えば、任意に選択した10箇所の酸化皮膜の厚みの平均値から算出することができる。
【0068】
加熱前の上記酸化皮膜の平均厚み(平均厚みA)の、上記はんだ粒子の粒子径に対する比(平均厚みA/はんだ粒子の粒子径)は、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.0005以上、さらに好ましくは0.001以上であり、好ましくは0.01以下、より好ましくは0.008以下、さらに好ましくは0.005以下である。上記比(平均厚みA/はんだ粒子の粒子径)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高めることができる。また、上記比(平均厚みA/はんだ粒子の粒子径)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電材料の保存安定性をより一層効果的に高めることができ、さらに、導電材料の硬化物の耐熱性をより一層効果的に高めることができる。
【0069】
上記はんだ粒子100体積%中、上記酸化皮膜の含有量は、好ましくは0.1体積%以上、より好ましくは0.5体積%以上であり、好ましくは10体積%以下、より好ましくは8体積%以下、さらに好ましくは5体積%以下である。上記酸化皮膜の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高めることができる。また、上記酸化皮膜の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電材料の保存安定性をより一層効果的に高めることができ、さらに、導電材料の硬化物の耐熱性をより一層効果的に高めることができる。
【0070】
上記酸化皮膜の含有量は、酸化皮膜除去前後のはんだ粒子の重量から算出することができる。
【0071】
上記はんだ粒子の200℃以上における発熱量の絶対値は、好ましくは100mJ/mg以上、より好ましくは200mJ/mg以上であり、好ましくは400mJ/mg以下、より好ましくは300mJ/mg以下である。上記はんだ粒子の200℃以上における発熱量の絶対値は、はんだ粒子表面の酸化被膜の厚み等により変化すると考えられる。上記200℃以上における発熱量の絶対値が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高めることができる。
【0072】
上記はんだ粒子の200℃以上における発熱量は、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。示差走査熱量測定(DSC)装置としては、SII社製「EXSTAR DSC7020」等が挙げられる。
【0073】
上記はんだ粒子は、例えば、市販のはんだ粒子を酸処理することにより得ることができる。上記酸処理により、上記はんだ粒子の表面に存在する酸化皮膜の厚みを制御することが好ましい。市販のはんだ粒子としては、三井金属鉱業社製「DS10」、三井金属鉱業社製「ST-5」及び三井金属鉱業社製「ST-2」等が挙げられる。上記酸処理で用いる酸としては、有機酸等が挙げられる。
【0074】
(はんだ粒子の保管方法)
本発明に係るはんだ粒子の保管方法は、上述したはんだ粒子を保管するための方法であることが好ましい。上述したはんだ粒子は、本発明に係るはんだ粒子の保管方法により保管されることが好ましい。上記はんだ粒子を保管容器に入れて、不活性ガス雰囲気下で保管するか、又は、上記はんだ粒子を保管容器に入れて、1×102Pa以下の条件で真空保管することが好ましい。
【0075】
導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記はんだ粒子の保管方法は、冷蔵保管であってもよく、冷凍保管であってもよい。
【0076】
但し、本発明に係るはんだ粒子は、例えば、はんだ粒子を保管容器に入れて、10℃以上50℃以下の条件で保管してもよい。本発明に係るはんだ粒子は、10℃以上45℃以下で保管してもよく、20℃以上で保管してもよく、25℃以上で保管してもよく、40℃以下で保管してもよく、30℃以下で保管してもよい。上記はんだ粒子の保管方法は、常温以下での保管であることが好ましく、常温未満での保管であることが好ましい。
【0077】
上記はんだ粒子を、上記の温度条件で保管するために、恒温槽等を用いることができる。上記はんだ粒子を入れた保管容器を、上記の好ましい温度条件に設定した恒温槽内で保管することが好ましい。
【0078】
導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記はんだ粒子の保管方法に関しては、上記はんだ粒子を保管容器に入れて、不活性ガス雰囲気下で保管することが好ましい。
【0079】
上記不活性ガスとしては、アルゴンガス及び窒素ガス等が挙げられる。
【0080】
導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記はんだ粒子の保管方法に関しては、上記はんだ粒子を保管容器に入れて、0.8×102Pa以下の条件で真空保管することが好ましく、0.5×102Pa以下の条件で真空保管することがより好ましい。
【0081】
上記はんだ粒子を、上記の真空条件で保管するために、真空ポンプ等を用いて上記保管容器内を減圧して保管することが好ましい。
【0082】
上記保管容器は、冷蔵保管、冷凍保管、及び真空保管に耐えることができる容器であれば特に限定されない。導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記保管容器は、酸素の侵入を防止できる容器であることが好ましく、密閉性の良い容器であることが好ましい。上記保管容器としては、アルミパック等が挙げられる。
【0083】
導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記保管容器内の酸素濃度が制御されていることが好ましい。導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記保管容器内の酸素濃度は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。上記保管容器内の酸素濃度を制御する方法としては、上記保管容器内を窒素置換する方法等が挙げられる。
【0084】
上記保管容器内の酸素濃度は、酸素濃度計を用いて求めることができる。酸素濃度計としては、新コスモス電機社製「XO-326IIsA」等が挙げられる。
【0085】
(導電材料及び導電材料の製造方法)
本発明に係る導電材料は、熱硬化性成分と、複数のはんだ粒子とを含む。本発明に係る導電材料では、上記はんだ粒子が、はんだ粒子本体と、上記はんだ粒子本体の外表面上に配置された酸化皮膜とを有する。本発明に係る導電材料では、上記はんだ粒子の粒子径が、1μm以上15μm以下である。本発明に係る導電材料では、上記はんだ粒子を、空気雰囲気下において120℃で10時間加熱したときに、加熱前の上記酸化皮膜の平均厚みの、加熱後の酸化皮膜の平均厚みに対する比が、2/3以下である。
【0086】
本発明に係る導電材料の製造方法は、熱硬化性成分と、複数のはんだ粒子とを混合し、導電材料を得る混合工程を備える。本発明に係る導電材料の製造方法では、上記はんだ粒子が、はんだ粒子本体と、上記はんだ粒子本体の外表面上に配置された酸化皮膜とを有する。本発明に係る導電材料の製造方法では、上記はんだ粒子の粒子径が、1μm以上15μm以下である。本発明に係る導電材料の製造方法では、上記はんだ粒子を、空気雰囲気下において120℃で10時間加熱したときに、加熱前の上記酸化皮膜の平均厚みの、加熱後の酸化皮膜の平均厚みに対する比が、2/3以下である導電材料を得る。
【0087】
本発明に係る導電材料及び本発明に係る導電材料の製造方法では、はんだ粒子が用いられる。上記はんだ粒子は、上述したはんだ粒子であることが好ましい。本発明に係る導電材料及び本発明に係る導電材料の製造方法では、上述したはんだ粒子が用いられることが好ましい。
【0088】
本発明に係る導電材料及び本発明に係る導電材料の製造方法では、上記の構成が備えられているので、導電接続時のはんだの凝集性を効果的に高めることができる。
【0089】
はんだ粒子の粒子径が35μm程度のはんだ粒子を含む従来の導電材料と比較して、はんだ粒子の粒子径が10μm以下のはんだ粒子を含む導電材料では、導電接続時に、接続されるべき上下の電極間にはんだ粒子を効率的に凝集させることができないという課題があった。本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、はんだ粒子の小粒子径化に伴い、はんだ粒子の表面に存在する酸化皮膜が相対的に厚くなること、及びはんだ粒子の表面積の増加によるはんだ粒子の表面に存在する酸化皮膜の含有量が増加することが、上記課題の原因であることを見出した。さらに、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、はんだ粒子の表面に存在する酸化皮膜を特定の厚みに制御することで、上記課題を解決できることを見出した。本発明では、はんだ粒子を小粒子径化しているにもかかわらず、上記はんだ粒子の電極上への移動が十分に進行し、接続されるべき電極間に、はんだを効率的に凝集させることができ、導通信頼性及び絶縁信頼性を高めることができる。
【0090】
また、本発明では、はんだ粒子の表面に存在する酸化皮膜を特定の厚みに制御することによって、はんだ粒子を電極上に効率的に凝集させることができるので、導電材料中のフラックスの含有量を過度に増加させる必要がない。結果として、導電材料中における熱硬化性成分とフラックスとの反応を効果的に抑制することができ、導電材料の保存安定性を効果的に高めることができる。
【0091】
また、導電材料中におけるフラックスの融点(活性温度)は、導電材料中における熱硬化性成分のTgよりも低い場合が多く、導電材料中におけるフラックスの含有量が多くなるほど、導電材料の硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。本発明では、導電材料中におけるフラックスの含有量を過度に増加させる必要がないので、導電材料の硬化物の耐熱性を効果的に高めることができる。また、本発明では、導電材料中におけるフラックスの含有量を過度に増加させる必要がないので、導電材料の硬化物中のボイドの発生を効果的に抑制でき、導電材料の硬化不良の発生を効果的に抑制することができる。
【0092】
本発明では、上記の構成が備えられているので、導電接続時のはんだの凝集性を高めることと、導電材料の保存安定性を高めることと、導電材料の硬化物の耐熱性を高めることとの、これらの全ての要求を満足させることができる。
【0093】
本発明では、上記のような効果を得るために、はんだ粒子の表面に存在する酸化皮膜を特定の厚みに制御することは大きく寄与する。
【0094】
さらに、本発明では、電極間の位置ずれを防ぐことができる。本発明では、導電材料を上面に配置した第1の接続対象部材に、第2の接続対象部材を重ね合わせる際に、第1の接続対象部材の電極と第2の接続対象部材の電極とのアライメントがずれた状態でも、そのずれを補正して電極同士を接続させることができる(セルフアライメント効果)。
【0095】
導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記導電材料は、25℃で液状であることが好ましく、導電ペーストであることが好ましい。
【0096】
導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記導電材料の25℃及び5rpmでの粘度(η25(5rpm))は、好ましくは10Pa・s以上、より好ましくは30Pa・s以上、さらに好ましくは50Pa・s以上、特に好ましくは100Pa・s以上である。導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記導電材料の25℃、5rpmでの粘度(η25(5rpm))は、好ましくは600Pa・s以下、より好ましくは400Pa・s以下、さらに好ましくは300Pa・s以下、さらに一層好ましくは250Pa・s以下、特に好ましく200Pa・s以下である。上記粘度(η25(5rpm))は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。
【0097】
上記粘度(η25(5rpm))は、例えば、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)等を用いて、25℃及び5rpmの条件で測定することができる。
【0098】
導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記導電材料の20℃及び5rpmでの粘度(η20(5rpm))は、好ましくは10Pa・s以上、より好ましくは30Pa・s以上であり、好ましくは600Pa・s以下、より好ましくは400Pa・s以下である。上記粘度(η20(5rpm))は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。
【0099】
上記粘度(η20(5rpm))は、例えば、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)等を用いて、20℃及び5rpmの条件で測定することができる。
【0100】
導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、E型粘度計を用いて25℃及び0.5rpmの条件で測定した上記導電材料の粘度(η25(0.5rpm))は、好ましくは50Pa・s以上、より好ましくは100Pa・s以上であり、好ましくは400Pa・s以下、より好ましくは300Pa・s以下である。上記粘度(η25(0.5rpm))は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。
【0101】
導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、E型粘度計を用いて25℃及び5rpmの条件で測定した上記導電材料の粘度(η25(5rpm))は、好ましくは50Pa・s以上、より好ましくは100Pa・s以上であり、好ましくは250Pa・s以下、より好ましくは200Pa・s以下である。上記粘度(η25(5rpm))は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。
【0102】
上記E型粘度計としては、東機産業社製「TVE22L」等が挙げられる。
【0103】
E型粘度計を用いて25℃及び0.5rpmの条件で測定した上記導電材料の粘度を、E型粘度計を用いて25℃及び5rpmの条件で測定した上記導電材料の粘度で除したチクソトロピックインデックス(η25(0.5rpm)/η25(5rpm))は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.5以上である。E型粘度計を用いて25℃及び0.5rpmの条件で測定した上記導電材料の粘度を、E型粘度計を用いて25℃及び5rpmの条件で測定した上記導電材料の粘度で除したチクソトロピックインデックス(η25(0.5rpm)/η25(5rpm))は、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。上記チクソトロピックインデックス(η25(0.5rpm)/η25(5rpm))が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高めることができる。
【0104】
上記導電材料は、導電ペースト及び導電フィルム等として使用され得る。上記導電ペーストは異方性導電ペーストであることが好ましく、上記導電フィルムは異方性導電フィルムであることが好ましい。導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記導電材料は、導電ペーストであることが好ましい。上記導電材料は、電極の電気的な接続に好適に用いられる。上記導電材料は、回路接続材料であることが好ましい。
【0105】
本発明に係る導電材料の製造方法は、熱硬化性成分と、複数のはんだ粒子とを混合し、導電材料を得る混合工程を備える。本発明に係る導電材料の製造方法は、上記はんだ粒子を保管する保管工程をさらに備えることが好ましい。本発明に係る導電材料の製造方法では、上記保管工程は、上記はんだ粒子を保管容器に入れて、不活性ガス雰囲気下で保管する工程であることが好ましい。本発明に係る導電材料の製造方法では、上記保管工程は、上記はんだ粒子を保管容器に入れて、1×102Pa以下の条件で真空保管する工程であることが好ましい。本発明に係る導電材料の製造方法では、上記はんだ粒子は、上記保管工程により保管されたはんだ粒子であることが好ましい。
【0106】
導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記はんだ粒子の保管方法は、冷蔵保管であってもよく、冷凍保管であってもよい。
【0107】
但し、本発明に係るはんだ粒子は、例えば、はんだ粒子を保管容器に入れて、10℃以上50℃以下の条件で保管してもよい。本発明に係るはんだ粒子は、10℃以上45℃以下で保管してもよく、20℃以上で保管してもよく、25℃以上で保管してもよく、40℃以下で保管してもよく、30℃以下で保管してもよい。上記はんだ粒子の保管方法は、常温以下での保管であることが好ましく、常温未満での保管であることが好ましい。
【0108】
本発明に係る導電材料の製造方法では、上記はんだ粒子は、上述したはんだ粒子であることが好ましい。本発明に係る導電材料の製造方法では、上記はんだ粒子は、上述したはんだ粒子の保管方法により保管されたはんだ粒子であってもよい。
【0109】
上記混合工程において、上記熱硬化性成分と、上記はんだ粒子とを混合する方法は、従来公知の分散方法を用いることができ、特に限定されない。上記熱硬化性成分に上記はんだ粒子を分散させる方法としては、以下の方法が挙げられる。上記熱硬化性成分中に上記はんだ粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法。上記はんだ粒子を水又は有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、上記熱硬化性成分中に添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法。上記熱硬化性成分を水又は有機溶剤等で希釈した後、上記はんだ粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法。
【0110】
導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記混合工程では、上記はんだ粒子が過度に酸化されないように、酸素濃度が制御されていることが好ましい。上記酸素濃度を制御する方法としては、上記混合工程を窒素雰囲気中で実施する方法等が挙げられる。導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記混合工程における酸素濃度は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。
【0111】
上記混合工程における酸素濃度は、酸素濃度計を用いて求めることができる。酸素濃度計としては、新コスモス電機社製「XO-326IIsA」等が挙げられる。
【0112】
導電材料100重量%中、上記はんだ粒子の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記はんだ粒子の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだをより一層効率的に配置することが容易であり、導通信頼性がより一層効果的に高くなる。導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記はんだ粒子の含有量は多い方が好ましい。
【0113】
(導電材料の保管方法)
本発明に係る導電材料の保管方法は、上述した導電材料を保管するための方法であることが好ましい。上述した導電材料は、本発明に係る導電材料の保管方法により保管されることが好ましい。
【0114】
導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記導電材料の保管方法に関しては、上記導電材料を保管容器に入れて、-40℃以上10℃以下の条件で保管するか、又は、上記導電材料を保管容器に入れて、不活性ガス雰囲気下で保管することが好ましい。
【0115】
導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記導電材料の保管方法は、冷蔵保管であってもよく、冷凍保管であってもよい。
【0116】
但し、本発明に係る導電材料は、10℃以上45℃以下で保管してもよく、20℃以上で保管してもよく、25℃以上で保管してもよく、40℃以下で保管してもよく、30℃以下で保管してもよい。本発明に係る導電材料は、-20℃以上で保管してもよく、-10℃以上で保管してもよく、50℃以下で保管してもよく、10℃以下で保管してもよい。上記導電材料の保管方法は、常温以下での保管であることが好ましく、常温未満での保管であることが好ましい。
【0117】
上記導電材料を、上記の温度条件で保管するために、冷蔵庫、冷凍庫、及び恒温槽等を用いることができる。上記導電材料を入れた保管容器を、上記の好ましい温度条件に設定した恒温槽内で保管することが好ましい。
【0118】
導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記導電材料の保管方法に関しては、上記導電材料を保管容器に入れて、不活性ガス雰囲気下で保管することが好ましい。
【0119】
上記不活性ガスとしては、アルゴンガス及び窒素ガス等が挙げられる。
【0120】
導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記導電材料の保管方法に関しては、上記導電材料を保管容器に入れて、0.8×102Pa以下の条件で真空保管することが好ましく、0.5×102Pa以下の条件で真空保管することがより好ましい。
【0121】
上記導電材料を、上記の真空条件で保管するために、真空ポンプ等を用いて上記保管容器内を減圧して保管することが好ましい。
【0122】
上記保管容器は、冷蔵保管、及び冷凍保管に耐えることができる容器であれば特に限定されない。導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記保管容器は、酸素の侵入を防止できる容器であることが好ましく、密閉性の良い容器であることが好ましい。上記保管容器としては、アルミパック等が挙げられる。
【0123】
導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記保管容器内の酸素濃度が制御されていることが好ましい。導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記保管容器内の酸素濃度は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。上記保管容器内の酸素濃度を制御する方法としては、上記保管容器内を窒素置換する方法等が挙げられる。
【0124】
上記保管容器内の酸素濃度は、酸素濃度計を用いて求めることができる。酸素濃度計としては、新コスモス電機社製「XO-326IIsA」等が挙げられる。
【0125】
以下、導電材料の他の詳細を説明する。
【0126】
(熱硬化性成分)
上記熱硬化性成分は特に限定されない。上記熱硬化性成分は、加熱により硬化可能な熱硬化性化合物と、熱硬化剤とを含んでいてもよい。
【0127】
(熱硬化性成分:熱硬化性化合物)
上記熱硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。導電材料の硬化性及び粘度をより一層良好にする観点、導通信頼性をより一層効果的に高める観点、及び絶縁信頼性をより一層効果的に高める観点からは、エポキシ化合物又はエピスルフィド化合物が好ましく、エポキシ化合物がより好ましい。上記熱硬化性成分は、エポキシ化合物を含むことが好ましい。上記熱硬化性成分は、エポキシ化合物と、硬化剤とを含むことが好ましい。上記熱硬化性成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0128】
上記エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物である。上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、ベンゾフェノン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。上記エポキシ化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0129】
上記エポキシ化合物としては、レゾルシノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ベンゾフェノン型エポキシ化合物、及びフェノールノボラック型エポキシ化合物等の芳香族エポキシ化合物が好ましい。上記エポキシ化合物の溶融温度は、はんだの融点以下であることが好ましい。上記エポキシ化合物の溶融温度は、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。上記の好ましいエポキシ化合物を用いることで、接続対象部材を貼り合わせた段階では、粘度が高く、搬送等の衝撃により加速度が付与された際に、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材との位置ずれを抑制することができる。さらに、硬化時の熱により、粘度を大きく低下させることができ、導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高めることができる。
【0130】
硬化物の耐熱性をより一層効果的に高める観点からは、上記熱硬化性成分は、イソシアヌル骨格を有する熱硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0131】
上記イソシアヌル骨格を有する熱硬化性化合物としてはトリイソシアヌレート型エポキシ化合物等が挙げられ、日産化学工業社製TEPICシリーズ(TEPIC-G、TEPIC-S、TEPIC-SS、TEPIC-HP、TEPIC-L、TEPIC-PAS、TEPIC-VL、TEPIC-UC)等が挙げられる。
【0132】
導電材料100重量%中、上記熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは98重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。上記熱硬化性化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高めることができ、導電材料の硬化物の耐熱性をより一層効果的に高めることができる。耐衝撃性をより一層効果的に高める観点からは、上記熱硬化性化合物の含有量は多い方が好ましい。
【0133】
導電材料100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは98重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。上記エポキシ化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高めることができ、導電材料の硬化物の耐熱性をより一層効果的に高めることができる。耐衝撃性をより一層高める観点からは、上記エポキシ化合物の含有量は多い方が好ましい。
【0134】
(熱硬化性成分:熱硬化剤)
上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤は、上記熱硬化性化合物を熱硬化させる。上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤等のチオール硬化剤、ホスホニウム塩、酸無水物硬化剤、熱カチオン開始剤(熱カチオン硬化剤)及び熱ラジカル発生剤等が挙げられる。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0135】
導電材料を低温でより一層速やかに硬化可能とする観点からは、上記熱硬化剤は、イミダゾール硬化剤、チオール硬化剤、又はアミン硬化剤であることが好ましい。また、上記熱硬化性化合物と上記熱硬化剤とを混合したときの保存安定性を高める観点からは、上記熱硬化剤は、潜在性の熱硬化剤であることが好ましい。潜在性の熱硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性チオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。なお、上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
【0136】
上記イミダゾール硬化剤は特に限定されない。上記イミダゾール硬化剤としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン及び2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ベンジル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-パラトルイル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-メタトルイル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-メタトルイル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-パラトルイル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等における1H-イミダゾールの5位の水素をヒドロキシメチル基で、かつ、2位の水素をフェニル基またはトルイル基で置換したイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0137】
上記チオール硬化剤は特に限定されない。上記チオール硬化剤としては、トリメチロールプロパントリス-3-メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトールヘキサ-3-メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0138】
上記アミン硬化剤は特に限定されない。上記アミン硬化剤としては、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0139】
上記ホスホニウム塩は特に限定されない。上記ホスホニウム塩としては、テトラノルマルブチルホスホニウムブロマイド、テトラノルマルブチルホスホニウムO-Oジエチルジチオリン酸、メチルトリブチルホスホニウムジメチルリン酸塩、テトラノルマルブチルホスホニウムベンゾトリアゾール、テトラノルマルブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、及びテトラノルマルブチルホスホニウムテトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0140】
上記酸無水物硬化剤は特に限定されず、エポキシ化合物等の熱硬化性化合物の硬化剤として用いられる酸無水物であれば広く用いることができる。上記酸無水物硬化剤としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、フタル酸誘導体の無水物、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水グルタル酸、無水コハク酸、グリセリンビス無水トリメリット酸モノアセテート、及びエチレングリコールビス無水トリメリット酸等の2官能の酸無水物硬化剤、無水トリメリット酸等の3官能の酸無水物硬化剤、並びに、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、及びポリアゼライン酸無水物等の4官能以上の酸無水物硬化剤等が挙げられる。
【0141】
上記熱カチオン開始剤(熱カチオン硬化剤)は特に限定されない。上記熱カチオン開始剤(熱カチオン硬化剤)としては、ヨードニウム系カチオン硬化剤、オキソニウム系カチオン硬化剤及びスルホニウム系カチオン硬化剤等が挙げられる。上記ヨードニウム系カチオン硬化剤としては、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。上記オキソニウム系カチオン硬化剤としては、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボラート等が挙げられる。上記スルホニウム系カチオン硬化剤としては、トリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
【0142】
上記熱ラジカル発生剤は特に限定されない。上記熱ラジカル発生剤としては、アゾ化合物及び有機過酸化物等が挙げられる。上記アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。上記有機過酸化物としては、ジ-tert-ブチルペルオキシド及びメチルエチルケトンペルオキシド等が挙げられる。
【0143】
上記熱硬化剤の反応開始温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下、特に好ましくは140℃以下である。上記熱硬化剤の反応開始温度が、上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだが電極上により一層効率的に配置される。上記熱硬化剤の反応開始温度は、80℃以上140℃以下であることが特に好ましい。
【0144】
はんだを電極上により一層効率的に配置する観点からは、上記熱硬化剤の反応開始温度は、上記はんだ粒子におけるはんだの融点よりも、高いことが好ましく、5℃以上高いことがより好ましく、10℃以上高いことがさらに好ましい。
【0145】
上記熱硬化剤の反応開始温度は、DSCでの発熱ピークの立ち上がり開始の温度を意味する。
【0146】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは1重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは75重量部以下である。熱硬化剤の含有量が、上記下限以上であると、導電材料を十分に硬化させることが容易である。熱硬化剤の含有量が、上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の熱硬化剤が残存し難くなり、かつ硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0147】
(フラックス)
上記導電材料は、フラックスを含んでいてもよい。フラックスを用いることで、はんだを電極上により一層効率的に配置することができる。上記フラックスは特に限定されない。上記フラックスとして、はんだ接合等に一般的に用いられているフラックスを用いることができる。
【0148】
上記フラックスとしては、塩化亜鉛、塩化亜鉛と無機ハロゲン化物との混合物、塩化亜鉛と無機酸との混合物、溶融塩、リン酸、リン酸の誘導体、有機ハロゲン化物、ヒドラジン、アミン化合物、有機酸及び松脂等が挙げられる。上記フラックスは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0149】
上記溶融塩としては、塩化アンモニウム等が挙げられる。上記有機酸としては、乳酸、クエン酸、ステアリン酸、グルタミン酸及びグルタル酸等が挙げられる。上記松脂としては、活性化松脂及び非活性化松脂等が挙げられる。上記フラックスは、カルボキシル基を2個以上有する有機酸、又は松脂であることが好ましい。上記フラックスは、カルボキシル基を2個以上有する有機酸であってもよく、松脂であってもよい。カルボキシル基を2個以上有する有機酸、松脂の使用により、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
【0150】
上記カルボキシル基を2個以上有する有機酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸等が挙げられる。
【0151】
上記アミン化合物としては、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ベンズヒドリルアミン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、フェニルイミダゾール、カルボキシベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、及びカルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0152】
上記松脂はアビエチン酸を主成分とするロジン類である。上記ロジン類としては、アビエチン酸、及びアクリル変性ロジン等が挙げられる。フラックスはロジン類であることが好ましく、アビエチン酸であることがより好ましい。この好ましいフラックスの使用により、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
【0153】
上記フラックスの活性温度(融点)は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、より一層好ましくは160℃以下、さらに好ましくは150℃以下、更に一層好ましくは140℃以下である。上記フラックスの活性温度が、上記下限以上及び上記上限以下であると、フラックス効果がより一層効果的に発揮され、はんだが電極上により一層均一に配置される。上記フラックスの活性温度(融点)は80℃以上190℃以下であることが好ましい。上記フラックスの活性温度(融点)は80℃以上140℃以下であることが特に好ましい。
【0154】
フラックスの活性温度(融点)が80℃以上190℃以下である上記フラックスとしては、コハク酸(融点186℃)、グルタル酸(融点96℃)、アジピン酸(融点152℃)、ピメリン酸(融点104℃)、スベリン酸(融点142℃)等のジカルボン酸、安息香酸(融点122℃)、リンゴ酸(融点130℃)等が挙げられる。
【0155】
また、上記フラックスの沸点は200℃以下であることが好ましい。
【0156】
はんだを電極上により一層効率的に配置する観点からは、上記フラックスの融点は、上記はんだ粒子におけるはんだの融点よりも、高いことが好ましく、5℃以上高いことがより好ましく、10℃以上高いことが更に好ましい。
【0157】
はんだを電極上により一層効率的に配置する観点からは、上記フラックスの融点は、上記熱硬化剤の反応開始温度よりも、高いことが好ましく、5℃以上高いことがより好ましく、10℃以上高いことが更に好ましい。
【0158】
上記フラックスは、導電材料中に分散されていてもよく、上記はんだ粒子の表面上に付着していてもよい。
【0159】
フラックスの融点が、はんだの融点より高いことにより、電極部分にはんだ粒子を効率的に凝集させることができる。これは、接合時に熱を付与した場合、接続対象部材上に形成された電極と、電極周辺の接続対象部材の部分とを比較すると、電極部分の熱伝導率が電極周辺の接続対象部材部分の熱伝導率よりも高いことにより、電極部分の昇温が速いことに起因する。はんだ粒子の融点を超えた段階では、はんだ粒子の内部は溶解するが、表面に形成された酸化被膜は、フラックスの融点(活性温度)に達していないので、除去されない。この状態で、電極部分の温度が先に、フラックスの融点(活性温度)に達するため、優先的に電極上に移動したはんだ粒子の表面の酸化被膜が除去され、はんだ粒子が電極の表面上に濡れ拡がることができる。これにより、電極上に効率的にはんだ粒子を凝集させることができる。
【0160】
上記フラックスは、加熱によりカチオンを放出するフラックスであることが好ましい。加熱によりカチオンを放出するフラックスの使用により、はんだを電極上により一層効率的に配置することができる。
【0161】
上記加熱によりカチオンを放出するフラックスとしては、上記熱カチオン開始剤(熱カチオン硬化剤)が挙げられる。
【0162】
電極上にはんだをより一層効率的に配置する観点、絶縁信頼性をより一層効果的に高める観点、及び導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記フラックスは、酸化合物と塩基化合物との塩であることが好ましい。
【0163】
上記酸化合物は、カルボキシル基を有する有機化合物であることが好ましい。上記酸化合物としては、脂肪族系カルボン酸であるマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、クエン酸、リンゴ酸、環状脂肪族カルボン酸であるシクロヘキシルカルボン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、芳香族カルボン酸であるイソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、及びエチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。電極上にはんだをより一層効率的に配置する観点、絶縁信頼性をより一層効果的に高める観点、及び導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記酸化合物は、グルタル酸、シクロヘキシルカルボン酸、又はアジピン酸であることが好ましい。
【0164】
上記塩基化合物は、アミノ基を有する有機化合物であることが好ましい。上記塩基化合物としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ベンズヒドリルアミン、2-メチルベンジルアミン、3-メチルベンジルアミン、4-tert-ブチルベンジルアミン、N-メチルベンジルアミン、N-エチルベンジルアミン、N-フェニルベンジルアミン、N-tert-ブチルベンジルアミン、N-イソプロピルベンジルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、イミダゾール化合物、及びトリアゾール化合物が挙げられる。電極上にはんだをより一層効率的に配置する観点、絶縁信頼性をより一層効果的に高める観点、及び導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記塩基化合物は、ベンジルアミンであることが好ましい。
【0165】
導電材料100重量%中、上記フラックスの含有量は、好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。上記導電材料は、フラックスを含んでいなくてもよい。上記フラックスの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだ及び電極の表面に酸化被膜がより一層形成され難くなり、更に、はんだ及び電極の表面に形成された酸化被膜をより一層効果的に除去できる。
【0166】
(フィラー)
本発明に係る導電材料は、フィラーを含んでいてもよい。フィラーは、有機フィラーであってもよく、無機フィラーであってもよい。上記導電材料がフィラーを含むことにより、基板の全電極上に対して、はんだを均一に凝集させることができる。
【0167】
上記導電材料は、上記フィラーを含まないか、又は上記フィラーを5重量%以下で含むことが好ましい。上記熱硬化性化合物を用いている場合には、フィラーの含有量が少ないほど、電極上にはんだが移動しやすくなる。
【0168】
導電材料100重量%中、上記フィラーの含有量は、好ましくは0重量%(未含有)以上であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下である。上記フィラーの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだが電極上により一層効率的に配置される。
【0169】
(他の成分)
上記導電材料は、必要に応じて、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、チキソ剤、レベリング剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0170】
(接続構造体及び接続構造体の製造方法)
本発明に係る接続構造体は、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、上記第1の接続対象部材と、上記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備える。本発明に係る接続構造体では、上記接続部の材料が、上述したはんだ粒子を含む。本発明に係る接続構造体では、上記接続部の材料が、上述した導電材料である。本発明に係る接続構造体では、上記第1の電極と上記第2の電極とが、上記接続部中のはんだ部により電気的に接続されている。
【0171】
本発明に係る接続構造体の製造方法は、上述したはんだ粒子を含む導電材料又は上述した導電材料を用いて、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、上記導電材料を配置する工程を備える。本発明に係る接続構造体の製造方法は、上記導電材料の上記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、上記第1の電極と上記第2の電極とが対向するように配置する工程を備える。本発明に係る接続構造体の製造方法は、上記はんだ粒子の融点以上に上記導電材料を加熱することで、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、上記導電材料により形成し、かつ、上記第1の電極と上記第2の電極とを、上記接続部中のはんだ部により電気的に接続する工程を備える。
【0172】
本発明に係る接続構造体及び接続構造体の製造方法では、特定のはんだ粒子又は特定の導電材料を用いているので、はんだ粒子を電極上に効率的に配置することができ、第1の電極と第2の電極との間に集まりやすく、はんだ粒子を電極(ライン)上に効率的に凝集させることができる。また、はんだ粒子の一部が、電極が形成されていない領域(スペース)に配置され難く、電極が形成されていない領域に配置されるはんだ粒子の量をかなり少なくすることができる。従って、第1の電極と第2の電極との間の導通信頼性を高めることができる。しかも、接続されてはならない横方向に隣接する電極間の電気的な接続を防ぐことができ、絶縁信頼性を高めることができる。
【0173】
また、電極上にはんだを効率的に配置し、かつ電極が形成されていない領域に配置されるはんだの量をかなり少なくするためには、上記導電材料は、導電フィルムではなく、導電ペーストを用いることが好ましい。
【0174】
電極間でのはんだ部の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。電極の表面上のはんだ濡れ面積(電極の露出した面積100%中のはんだが接している面積)は、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上であり、好ましくは100%以下である。
【0175】
本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記第2の接続対象部材を配置する工程及び上記接続部を形成する工程において、加圧を行わず、上記導電材料には、上記第2の接続対象部材の重量が加わることが好ましい。本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記第2の接続対象部材を配置する工程及び上記接続部を形成する工程において、上記導電材料には、上記第2の接続対象部材の重量の力を超える加圧圧力は加わらないことが好ましい。これらの場合には、複数のはんだ部において、はんだ量の均一性をより一層高めることができる。さらに、はんだ部の厚みをより一層効果的に厚くすることができ、複数のはんだ粒子が電極間に多く集まりやすくなり、複数のはんだ粒子を電極(ライン)上により一層効率的に配置することができる。また、複数のはんだ粒子の一部が、電極が形成されていない領域(スペース)に配置され難く、電極が形成されていない領域に配置されるはんだ粒子におけるはんだの量をより一層少なくすることができる。従って、電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。しかも、接続されてはならない横方向に隣接する電極間の電気的な接続をより一層防ぐことができ、絶縁信頼性をより一層高めることができる。
【0176】
また、導電フィルムではなく、導電ペーストを用いれば、導電ペーストの塗布量によって、接続部及びはんだ部の厚みを調整することが容易になる。一方で、導電フィルムでは、接続部の厚みを変更したり、調整したりするためには、異なる厚みの導電フィルムを用意したり、所定の厚みの導電フィルムを用意したりしなければならないという問題がある。また、導電フィルムでは、導電ペーストと比べて、はんだの溶融温度で、導電フィルムの溶融粘度を十分に下げることができず、はんだ粒子の凝集が阻害されやすい傾向がある。
【0177】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0178】
図1は、本発明の一実施形態に係る導電材料を用いて得られる接続構造体を模式的に示す断面図である。
【0179】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材3と、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とを接続している接続部4とを備える。接続部4は、上述した導電材料により形成されている。本実施形態では、上記導電材料は、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、はんだ粒子とを含む。本実施形態では、導電材料として、導電ペーストが用いられている。
【0180】
接続部4は、複数のはんだ粒子が集まり互いに接合したはんだ部4Aと、熱硬化性化合物が熱硬化された硬化物部4Bとを有する。
【0181】
第1の接続対象部材2は表面(上面)に、複数の第1の電極2aを有する。第2の接続対象部材3は表面(下面)に、複数の第2の電極3aを有する。第1の電極2aと第2の電極3aとが、はんだ部4Aにより電気的に接続されている。従って、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とが、はんだ部4Aにより電気的に接続されている。なお、接続部4において、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まったはんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)では、はんだ粒子は存在しない。はんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)では、はんだ部4Aと離れたはんだ粒子は存在しない。なお、少量であれば、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まったはんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)に、はんだ粒子が存在していてもよい。
【0182】
図1に示すように、接続構造体1では、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に、複数のはんだ粒子が集まり、複数のはんだ粒子が溶融した後、はんだ粒子の溶融物が電極の表面を濡れ拡がった後に固化して、はんだ部4Aが形成されている。このため、はんだ部4Aと第1の電極2a、並びにはんだ部4Aと第2の電極3aとの接続面積が大きくなる。すなわち、はんだ粒子を用いることにより、導電性の外表面がニッケル、金又は銅等の金属である導電性粒子を用いた場合と比較して、はんだ部4Aと第1の電極2a、並びにはんだ部4Aと第2の電極3aとの接触面積が大きくなる。このことによっても、接続構造体1における導通信頼性及び接続信頼性が高くなる。なお、導電材料にフラックスが含まれる場合に、フラックスは、一般に、加熱により次第に失活する。
【0183】
なお、
図1に示す接続構造体1では、はんだ部4Aの全てが、第1,第2の電極2a,3a間の対向している領域に位置している。
図3に示す変形例の接続構造体1Xは、接続部4Xのみが、
図1に示す接続構造体1と異なる。接続部4Xは、はんだ部4XAと硬化物部4XBとを有する。接続構造体1Xのように、はんだ部4XAの多くが、第1,第2の電極2a,3aの対向している領域に位置しており、はんだ部4XAの一部が第1,第2の電極2a,3aの対向している領域から側方にはみ出していてもよい。第1,第2の電極2a,3aの対向している領域から側方にはみ出しているはんだ部4XAは、はんだ部4XAの一部であり、はんだ部4XAから離れたはんだ粒子ではない。なお、本実施形態では、はんだ部から離れたはんだ粒子の量を少なくすることができるが、はんだ部から離れたはんだ粒子が硬化物部中に存在していてもよい。
【0184】
はんだ粒子の使用量を少なくすれば、接続構造体1を得ることが容易になる。はんだ粒子の使用量を多くすれば、接続構造体1Xを得ることが容易になる。
【0185】
接続構造体1,1Xでは、第1の電極2aと接続部4,4Xと第2の電極3aとの積層方向に第1の電極2aと第2の電極3aとの対向し合う部分をみたときに、第1の電極2aと第2の電極3aとの対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、接続部4,4X中のはんだ部4A,4XAが配置されていることが好ましい。接続部4,4X中のはんだ部4A,4XAが、上記の好ましい態様を満足することで、導通信頼性をより一層高めることができる。
【0186】
上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の60%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることがより好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の70%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることがさらに好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の80%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが特に好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の90%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが最も好ましい。上記接続部中のはんだ部が、上記の好ましい態様を満足することで、導通信頼性をより一層高めることができる。
【0187】
上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向と直交する方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分に、上記接続部中のはんだ部の60%以上が配置されていることが好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向と直交する方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分に、上記接続部中のはんだ部の70%以上が配置されていることがより好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向と直交する方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分に、上記接続部中のはんだ部の90%以上が配置されていることがさらに好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向と直交する方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分に、上記接続部中のはんだ部の95%以上が配置されていることが特に好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向と直交する方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分に、上記接続部中のはんだ部の99%以上が配置されていることが最も好ましい。上記接続部中のはんだ部が、上記の好ましい態様を満足することで、導通信頼性をより一層高めることができる。
【0188】
次に、
図2では、本発明の一実施形態に係る導電材料を用いて、接続構造体1を製造する方法の一例を説明する。
【0189】
先ず、第1の電極2aを表面(上面)に有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、
図2(a)に示すように、第1の接続対象部材2の表面上に、熱硬化性成分11Bと、複数のはんだ粒子11Aとを含む導電材料11を配置する(第1の工程)。用いた導電材料11は、熱硬化性成分11Bとして、熱硬化性化合物と熱硬化剤とを含む。
【0190】
第1の接続対象部材2の第1の電極2aが設けられた表面上に、導電材料11を配置する。導電材料11の配置の後に、はんだ粒子11Aは、第1の電極2a(ライン)上と、第1の電極2aが形成されていない領域(スペース)上との双方に配置されている。
【0191】
導電材料11の配置方法としては、特に限定されないが、ディスペンサーによる塗布、スクリーン印刷、及びインクジェット装置による吐出等が挙げられる。
【0192】
また、第2の電極3aを表面(下面)に有する第2の接続対象部材3を用意する。次に、
図2(b)に示すように、第1の接続対象部材2の表面上の導電材料11において、導電材料11の第1の接続対象部材2側とは反対側の表面上に、第2の接続対象部材3を配置する(第2の工程)。導電材料11の表面上に、第2の電極3a側から、第2の接続対象部材3を配置する。このとき、第1の電極2aと第2の電極3aとを対向させる。
【0193】
次に、はんだ粒子11Aの融点以上に導電材料11を加熱する(第3の工程)。好ましくは、熱硬化性成分11B(熱硬化性化合物)の硬化温度以上に導電材料11を加熱する。この加熱時には、電極が形成されていない領域に存在していたはんだ粒子11Aは、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まる(自己凝集効果)。導電フィルムではなく、導電ペーストを用いた場合には、はんだ粒子11Aが、第1の電極2aと第2の電極3aとの間により一層効果的に集まる。また、はんだ粒子11Aは溶融し、互いに接合する。また、熱硬化性成分11Bは熱硬化する。この結果、
図2(c)に示すように、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とを接続している接続部4が、導電材料11により形成される。導電材料11により接続部4が形成され、複数のはんだ粒子11Aが接合することによってはんだ部4Aが形成され、熱硬化性成分11Bが熱硬化することによって硬化物部4Bが形成される。はんだ粒子11Aが十分に移動すれば、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に位置していないはんだ粒子11Aの移動が開始してから、第1の電極2aと第2の電極3aとの間にはんだ粒子11Aの移動が完了するまでに、温度を一定に保持しなくてもよい。
【0194】
本実施形態では、上記第2の工程及び上記第3の工程において、加圧を行わない方が好ましい。この場合には、導電材料11には、第2の接続対象部材3の重量が加わる。このため、接続部4の形成時に、はんだ粒子11Aが、第1の電極2aと第2の電極3aとの間により一層効果的に集まる。なお、上記第2の工程及び上記第3の工程の内の少なくとも一方において、加圧を行えば、はんだ粒子11Aが第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まろうとする作用が阻害される傾向が高くなる。
【0195】
また、本実施形態では、加圧を行っていないため、第1の電極2aと第2の電極3aとのアライメントがずれた状態で、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とが重ね合わされた場合でも、そのずれを補正して、第1の電極2aと第2の電極3aとを接続させることができる(セルフアライメント効果)。これは、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に自己凝集している溶融したはんだが、第1の電極2aと第2の電極3aとの間のはんだと導電材料のその他の成分とが接する面積が最小となる方がエネルギー的に安定になるため、その最小の面積となる接続構造であるアライメントのあった接続構造にする力が働くためである。この際、導電材料が硬化していないこと、及び、その温度、時間にて、導電材料のはんだ粒子以外の成分の粘度が十分低いことが望ましい。
【0196】
はんだ粒子の融点での導電材料の粘度(ηmp)は、好ましくは50Pa・s以下、より好ましくは10Pa・s以下、さらに好ましくは1Pa・s以下であり、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.2Pa・s以上である。上記粘度(ηmp)が、上記上限以下であれば、はんだ粒子を効率的に凝集させることができる。上記粘度(ηmp)が、上記下限以上であれば、接続部でのボイドを抑制し、接続部以外への導電材料のはみだしを抑制することができる。
【0197】
上記はんだ粒子の融点での導電材料の粘度(ηmp)は、STRESSTECH(REOLOGICA社製)等を用いて、歪制御1rad、周波数1Hz、昇温速度20℃/分、測定温度範囲25~200℃(但し、はんだ粒子の融点が200℃を超える場合には温度上限をはんだ粒子の融点とする)の条件で測定可能である。測定結果から、はんだ粒子の融点(℃)での粘度が評価される。
【0198】
このようにして、
図1に示す接続構造体1が得られる。なお、上記第2の工程と上記第3の工程とは連続して行われてもよい。また、上記第2の工程を行った後に、得られる第1の接続対象部材2と導電材料11と第2の接続対象部材3との積層体を、加熱部に移動させて、上記第3の工程を行ってもよい。上記加熱を行うために、加熱部材上に上記積層体を配置してもよく、加熱された空間内に上記積層体を配置してもよい。
【0199】
上記第3の工程における上記加熱温度は、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上であり、好ましくは450℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。
【0200】
上記第3の工程における加熱方法としては、はんだ粒子の融点以上及び熱硬化性成分の硬化温度以上に、接続構造体全体を、リフロー炉を用いて又はオーブンを用いて加熱する方法や、接続構造体の接続部のみを局所的に加熱する方法が挙げられる。
【0201】
局所的に加熱する方法に用いる器具としては、ホットプレート、熱風を付与するヒートガン、はんだゴテ、及び赤外線ヒーター等が挙げられる。
【0202】
また、ホットプレートにて局所的に加熱する際、接続部直下は、熱伝導性の高い金属にて、その他の加熱することが好ましくない個所は、フッ素樹脂等の熱伝導性の低い材質にて、ホットプレート上面を形成することが好ましい。
【0203】
上記第1,第2の接続対象部材は、特に限定されない。上記第1,第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、半導体パッケージ、LEDチップ、LEDパッケージ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びに樹脂フィルム、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル、リジッドフレキシブル基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板等の電子部品等が挙げられる。上記第1,第2の接続対象部材は、電子部品であることが好ましい。
【0204】
上記第1の接続対象部材及び上記第2の接続対象部材の内の少なくとも一方が、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板であることが好ましい。上記第2の接続対象部材が、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板であることが好ましい。樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル及びリジッドフレキシブル基板は、柔軟性が高く、比較的軽量であるという性質を有する。このような接続対象部材の接続に導電フィルムを用いた場合には、はんだ粒子が電極上に集まりにくい傾向がある。これに対して、導電ペーストを用いることで、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板を用いたとしても、はんだ粒子を電極上に効率的に集めることで、電極間の導通信頼性を十分に高めることができる。樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板を用いる場合に、半導体チップ等の他の接続対象部材を用いた場合と比べて、加圧を行わないことによる電極間の導通信頼性の向上効果がより一層効果的に得られる。
【0205】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極、SUS電極、及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極、銀電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0206】
本発明に係る接続構造体では、上記第1の電極及び上記第2の電極は、エリアアレイ又はペリフェラルにて配置されていることが好ましい。上記第1の電極及び上記第2の電極が、エリアアレイ又はペリフェラルにて配置されている場合において、本発明の効果がより一層効果的に発揮される。上記エリアアレイとは、接続対象部材の電極が配置されている面にて、格子状に電極が配置されている構造のことである。上記ペリフェラルとは、接続対象部材の外周部に電極が配置されている構造のことである。電極が櫛型に並んでいる構造の場合は、櫛に垂直な方向に沿ってはんだ粒子が凝集すればよいのに対して、上記エリアアレイ又はペリフェラル構造では電極が配置されている面において、全面にて均一にはんだ粒子が凝集する必要がある。そのため、従来の方法では、はんだ量が不均一になりやすいのに対して、本発明の方法では、本発明の効果がより一層効果的に発揮される。
【0207】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0208】
熱硬化性成分(熱硬化性化合物):
熱硬化性化合物1:ダウ・ケミカル社製「D.E.N-431」、エポキシ樹脂
熱硬化性化合物2:三菱ケミカル社製「jER152」、エポキシ樹脂
【0209】
熱硬化性成分(熱硬化剤):
熱硬化剤1:東京化成工業社製「BF3-MEA」、三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体
熱硬化剤2:四国化成工業社製「2PZ-CN」、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール
【0210】
はんだ粒子:
はんだ粒子1:Sn42Bi58はんだ粒子、融点138℃、粒子径:10μm、酸化皮膜の平均厚み:3nm
はんだ粒子2:Sn42Bi58はんだ粒子、融点138℃、粒子径:5μm、酸化皮膜の平均厚み:5nm
はんだ粒子3:Sn42Bi58はんだ粒子、融点138℃、粒子径:2μm、酸化皮膜の平均厚み:2nm
はんだ粒子4:Sn42Bi58はんだ粒子、融点138℃、粒子径:10μm、酸化皮膜の平均厚み:6nm
はんだ粒子5:Sn42Bi58はんだ粒子、融点138℃、粒子径:5μm、酸化皮膜の平均厚み:12nm
はんだ粒子6:Sn42Bi58はんだ粒子、融点138℃、粒子径:2μm、酸化皮膜の平均厚み:4nm
【0211】
フラックス:
フラックス1:「グルタル酸ベンジルアミン塩」、融点108℃
【0212】
フラックス1の作製方法:
ガラスビンに、反応溶媒である水24gと、グルタル酸(和光純薬工業社製)13.212gとを入れ、室温で均一になるまで溶解させた。その後、ベンジルアミン(和光純薬工業社製)10.715gを入れて、約5分間撹拌し、混合液を得た。得られた混合液を5~10℃の冷蔵庫に入れて、一晩放置した。析出した結晶をろ過により分取し、水で洗浄し、真空乾燥し、フラックス1を得た。
【0213】
(実施例1~6及び比較例1~6)
(1)導電材料(異方性導電ペースト)の作製
下記の表1,2に示す成分を下記の表1,2に示す配合量で配合して、導電材料(異方性導電ペースト)を得た。
【0214】
(2)接続構造体(L/S=100μm/100μm)の作製
作製直後の導電材料(異方性導電ペースト)を用いて、以下のようにして、接続構造体を作製した。
【0215】
L/Sが100μm/100μm、電極長さ3mmの銅電極パターン(銅電極の厚み12μm)を上面に有するガラスエポキシ基板(FR-4基板)(第1の接続対象部材)を用意した。また、L/Sが100μm/100μm、電極長さ3mmの銅電極パターン(銅電極の厚み12μm)を下面に有するフレキシブルプリント基板(第2の接続対象部材)を用意した。
【0216】
上記ガラスエポキシ基板と上記フレキシブルプリント基板との重ね合わせ面積は、1.5cm×3mmとし、接続した電極数は75対とした。
【0217】
上記ガラスエポキシ基板の上面に、作製直後の導電材料(異方性導電ペースト)を、ガラスエポキシ基板の電極上で厚さ100μmとなるように、メタルマスクを用い、スクリーン印刷にて塗工し、導電材料(異方性導電ペースト)層を形成した。次に、導電材料(異方性導電ペースト)層の上面に上記フレキシブルプリント基板を、電極同士が対向するように積層した。このとき、加圧を行わなかった。導電材料(異方性導電ペースト)層には、上記フレキシブルプリント基板の重量は加わる。その状態から、導電材料(異方性導電ペースト)層の温度が、昇温開始から5秒後にはんだの融点となるように加熱した。さらに、昇温開始から15秒後に、導電材料(異方性導電ペースト)層の温度が160℃となるように加熱し、導電材料(異方性導電ペースト)層を硬化させ、接続構造体を得た。加熱時には、加圧を行わなかった。
【0218】
(評価)
(1)はんだ粒子の粒子径及び酸化皮膜の平均厚み
はんだ粒子の粒子径を、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製「LA-920」)を用いて測定した。
【0219】
また、はんだ粒子を、空気雰囲気下において120℃で10時間加熱した。加熱前の酸化皮膜の平均厚み(平均厚みA)及び加熱後の酸化皮膜の平均厚み(平均厚みB)を、透過型電子顕微鏡を用いて、加熱前のはんだ粒子又は加熱後のはんだ粒子の断面を観察し、任意に選択した10箇所の酸化皮膜の厚みの平均値から算出した。
【0220】
はんだ粒子の粒子径及び加熱前のはんだ粒子の酸化皮膜の平均厚み(平均厚みA)の測定結果から、加熱前のはんだ粒子の酸化皮膜の平均厚み(平均厚みA)の、はんだ粒子の粒子径に対する比(平均厚みA/はんだ粒子の粒子径)を算出した。また、加熱前後のはんだ粒子の酸化皮膜の平均厚み(平均厚みA及び平均厚みB)の測定結果から、加熱前のはんだ粒子の酸化皮膜の平均厚み(平均厚みA)の、加熱後のはんだ粒子の酸化皮膜の平均厚み(平均厚みB)に対する比(平均厚みA/平均厚みB)を算出した。
【0221】
(2)はんだ粒子100体積%中の酸化皮膜の含有量
はんだ粒子100体積%中の酸化皮膜の含有量を、酸化皮膜除去前後のはんだ粒子の重量から算出した。
【0222】
(3)はんだ粒子の200℃以上における発熱量の絶対値
はんだ粒子の200℃以上における発熱量を、示差走査熱量測定(DSC)装置(SII社製「EXSTAR DSC7020」)を用いて測定した。
【0223】
(4)25℃における導電材料の粘度(η25(5rpm))
得られた導電材料(異方性導電ペースト)の25℃における導電材料の粘度(η25(5rpm))を、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)を用いて、25℃及び5rpmの条件で測定した。
【0224】
(5)チクソトロピックインデックス
得られた導電材料(異方性導電ペースト)の粘度(η25(0.5rpm))を、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)を用いて25℃及び0.5rpmの条件で測定した。得られた導電材料(異方性導電ペースト)の粘度(η25(5rpm))を、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)を用いて25℃及び5rpmの条件で測定した。
【0225】
測定結果から、E型粘度計を用いて25℃及び0.5rpmの条件で測定した導電材料(異方性導電ペースト)の粘度を、E型粘度計を用いて25℃及び5rpmの条件で測定した導電材料(異方性導電ペースト)の粘度で除したチクソトロピックインデックス(η25(0.5rpm)/η25(5rpm))を算出した。
【0226】
(6)電極上のはんだの配置精度(はんだの凝集性)
得られた接続構造体において、第1の電極と接続部と第2の電極との積層方向に第1の電極と第2の電極との対向し合う部分をみたときに、第1の電極と第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の、接続部中のはんだ部が配置されている面積の割合Xを評価した。電極上のはんだの配置精度(はんだの凝集性)を下記の基準で判定した。
【0227】
[電極上のはんだの配置精度(はんだの凝集性)の判定基準]
○○:割合Xが70%以上
○:割合Xが60%以上70%未満
△:割合Xが50%以上60%未満
×:割合Xが50%未満
【0228】
(7)上下の電極間の導通信頼性
得られた接続構造体(n=15個)において、上下の電極間の1接続箇所当たりの接続抵抗をそれぞれ、4端子法により、測定した。接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。導通信頼性を下記の基準で判定した。
【0229】
[導通信頼性の判定基準]
○○:接続抵抗の平均値が50mΩ以下
○:接続抵抗の平均値が50mΩを超え70mΩ以下
△:接続抵抗の平均値が70mΩを超え100mΩ以下
×:接続抵抗の平均値が100mΩを超える、又は接続不良が生じている
【0230】
(8)横方向に隣接する電極間の絶縁信頼性
得られた接続構造体(n=15個)において、85℃、湿度85%の雰囲気中に100時間放置後、横方向に隣接する電極間に、5Vを印加し、抵抗値を25箇所で測定した。絶縁信頼性を下記の基準で判定した。
【0231】
[絶縁信頼性の判定基準]
○○:接続抵抗の平均値が107Ω以上
○:接続抵抗の平均値が106Ω以上107Ω未満
△:接続抵抗の平均値が105Ω以上106Ω未満
×:接続抵抗の平均値が105Ω未満
【0232】
結果を下記の表1,2に示す。
【0233】
【0234】
【0235】
フレキシブルプリント基板、樹脂フィルム、フレキシブルフラットケーブル及びリジッドフレキシブル基板を用いた場合でも、同様の傾向が見られた。
【符号の説明】
【0236】
1,1X…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…第1の電極
3…第2の接続対象部材
3a…第2の電極
4,4X…接続部
4A,4XA…はんだ部
4B,4XB…硬化物部
11…導電材料
11A…はんだ粒子
11B…熱硬化性成分
21…はんだ粒子
22…はんだ粒子本体
23…酸化皮膜