(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】一体型ナイフを含むステープラカートリッジ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/072 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
A61B17/072
(21)【出願番号】P 2019518264
(86)(22)【出願日】2017-10-11
(86)【国際出願番号】 US2017056075
(87)【国際公開番号】W WO2018071497
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-10-02
(32)【優先日】2016-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】バーバンク,ウィリアム エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィクシー,マシュー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ラゴスタ,ニコラス
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-336540(JP,A)
【文献】特表2015-532150(JP,A)
【文献】特開2004-305740(JP,A)
【文献】特表2014-534863(JP,A)
【文献】米国特許第08167898(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/068-17/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステープラカートリッジであって、当該ステープラカートリッジは、
ステープル押出しシャトルと、
該ステープル押出しシャトルに摺動可能に結合されるナイフ部材であって、切れ刃と、第1の案内トラック係合機構と、該第1の案内トラック係合機構に対して前記ナイフ部材の反対側に配置された第2の案内トラック係合機構とを含むナイフ部材と、
基端部と先端部とを有するカートリッジ本体であって、前記ステープル押出しシャトルは前記カートリッジ本体に摺動可能に結合され、該カートリッジ本体は、前記ステープル押出しシャトルの先端方向の移動によってステープルを射出するための複数の開口部を上面に含んでおり、前記カートリッジ本体は、前記第1の案内トラック係合機構によって係合した第1の案内トラック及び前記第2の案内トラック係合機構によって係合した第2の案内トラックを含み、前記第1の案内トラックは、第1のトラックセグメント及び第1の傾斜移行部を含み、前記第1のトラックセグメントは、前記ステープル押出しシャトルの前記先端方向の移動の第1の部分の間に前記切れ刃が前記カートリッジ本体から突出するように構成され、前記第1の傾斜移行部は、前記第1のトラックセグメントから延びており、且つ前記ステープル押出しシャトルの前記先端方向の移動の第2の部分の間に前記切れ刃が前記カートリッジ本体内に引き込まれるように構成され、前記第2の案内トラックは、第2のトラックセグメント及び第2の傾斜移行部を含み、前記第2のトラックセグメントは、前記ステープル押出しシャトルの前記先端方向の移動の前記第1の部分の間に前記切れ刃が前記カートリッジ本体から突出するように構成され、前記第2の傾斜移行部は、前記第2のトラックセグメントから延びており、且つ前記ステープル押出しシャトルの前記先端方向の移動の前記第2の部分の間に前記切れ刃が前記カートリッジ本体内に引き込まれるように構成される、カートリッジ本体と、を有する、
ステープラカートリッジ。
【請求項2】
前記ステープル押出しシャトルは、前記ナイフ部材が摺動可能に配置されるナイフ用チャネルを含む、請求項1に記載のステープラカートリッジ。
【請求項3】
前記第1の案内トラック係合機構及び前記第2の案内トラック係合機構のそれぞれは、前記ステープル押出しシャトルに対する前記ナイフ部材の位置及び/又は向きを安定させるために前記ステープル押出しシャトルの垂直リブと連結するように先端方向に突出する、請求項1に記載のステープラカートリッジ。
【請求項4】
前記第1の案内トラック係合機構及び前記第2の案内トラック係合機構のそれぞれは、前記垂直リブと摺動可能に連結する、請求項
3に記載のステープラカートリッジ。
【請求項5】
前記カートリッジ本体は、前記ステープル押出しシャトルを前記カートリッジ本体の前記先端部に保持する保持機構を含む、請求項1に記載のステープラカートリッジ。
【請求項6】
前記保持機構は、前記ステープル押出しシャトルを前記カートリッジ本体の前記先端部に保持するために前記ステープル押出しシャトルと係合する可撓性タブを含む、請求項
5に記載のステープラカートリッジ。
【請求項7】
前記カートリッジ本体は、前記基端部に近接する取付け機構を含み、該取付け機構は、上顎を含むエンドエフェクタと取り外し可能に結合するように構成される、請求項1に記載のステープラカートリッジ。
【請求項8】
前記カートリッジは、前記エンドエフェクタの下顎を形成する、請求項
7に記載のステープラカートリッジ。
【請求項9】
手術用装置であって、当該手術用装置は、
細長いシャフトと、
該シャフトに移動可能に結合されるエンドエフェクタであって、上顎を含むエンドエフェクタと、
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載のステープラカートリッジであって、前記エンドエフェクタに取り外し可能に取り付けられるステープラカートリッジと、を有する、
手術用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データへの相互参照
本願は、2016年10月11日に出願された米国仮出願第62/406,845号の利益を主張するものであり、この文献の全開示は、その全体が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、一体型ナイフを含むステープラ(stapler)カートリッジに関する。
【背景技術】
【0003】
低侵襲性手術技術は、診断的又は外科的処置中に損傷を受ける無関係な組織の量を減らし、それによって患者の回復時間、不快感、及び有害な副作用を減らすことを目的としている。結果として、標準的な手術に関する入院期間の平均長さは、低侵襲性手術技術を使用して著しく短縮され得る。また、患者の回復時間、患者の不快感、外科的副作用、及び仕事から離れる時間も、低侵襲性手術で減らすこともできる。
【0004】
低侵襲性手術の一般的な形態は内視鏡検査であり、内視鏡検査の一般的な形態は腹腔鏡検査であり、この腹腔鏡検査は腹腔内での低侵襲性検査及び/又は手術である。再装填可能なステープル留め(stapling)装置は、これらの手術と併せて使用することができる。多くの場合に、そのような装置は、組織のステープル留め後にステープル留めされた組織を切断するためのナイフ等の共通の機構を有しており、そのナイフは基端部から先端部に並進する。従来の装置は、ナイフが手術用器具に一体化されており、カートリッジが主にステープルを収容するような交換可能なカートリッジを使用していた。こうして、ナイフは複数のステープル留めカートリッジと共に使用される。そのような設計の主な欠点は、ナイフが使用毎に鈍くなることである。
【0005】
他のカートリッジ設計は、カートリッジと一体化され、且つ使用済みカートリッジと共に廃棄されるナイフを有する。これは、ステープル留め操作毎に新しいナイフであるという利点を提供する。しかしながら、今日まで、そのような従来の設計はナイフ及びナイフ駆動機構に関して複雑であり、その設計はナイフをその開始位置に戻すのを必要とする可能性がある。そのような設計は、望ましくない障害モードを有する可能性がある。こうして、既知のナイフ一体型カートリッジを使用することの費用及び危険性は全く法外なものとなる可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に開示される実施形態は、一体型ナイフ部材を含むステープル留めカートリッジに関する。いくつかの実施形態では、ステープル留めカートリッジは、カートリッジ本体と、作動アセンブリによってカートリッジ本体の基端部からカートリッジ本体の先端部へと押されるステープル押出しシャトル及びナイフのアセンブリとを含む。多くの実施形態では、ステープル押出しシャトル及びナイフのアセンブリは、先端部に留まり、作動アセンブリは、引き込まれ、それによりステープル押出しシャトル及びナイフのアセンブリから分離する。いくつかの実施形態では、ナイフ部材は、基端部から先端部への移動の第1のセグメントの間に、ステープル押出しシャトルに対してナイフ部材を展開した切断位置に拘束する案内トラックと係合する。基端部から先端部への移動の終わりの近くで、案内トラックは、ナイフ部材をカートリッジ本体内に引き込ませるために、ステープル押出しシャトルに対してナイフ部材を相対的に低い位置(収容位置)に引き込ませるように形成されており(shaped)、それにより使用後にナイフ部材に不意に触れないようにする。多くの実施形態では、ナイフ部材がステープル留めカートリッジと一体化されているため、ナイフ部材は一度使用された後にステープ留めカートリッジと共に廃棄され、それにより使用毎に鋭いナイフが保証される。対照的に、ナイフが交換可能なステープル留めカートリッジの代わりに手術用器具に一体化される従来の設計では、ナイフ部材は、何回かの使用後に比較的鈍くなる可能性がある。ナイフをカートリッジの先端部で露出されていない収容位置に引き込ませ、且つステープル押出しシャトル及びナイフ部材のアセンブリをカートリッジの先端部に保持することによって、作動機構を、ナイフをカートリッジの基端部に再び戻す作動機構に対して単純化することができる。作動機構を単純化することができるので、手術用器具及び/又はステープル留めカートリッジのコストを削減することができ、そしてステープル留めカートリッジの全長を短くすることができ、それにより手術用アクセスの増大を可能にする。
【0007】
こうして、一態様では、ステープラカートリッジは、ステープル押出しシャトルと、ナイフ部材と、カートリッジ本体とを含む。ナイフ部材は、ステープル押出しシャトルに摺動可能に結合される。ナイフ部材は、切れ刃と、第1の案内トラック係合機構とを含む。カートリッジ本体は、基端部と先端部とを有する。ステープル押出しシャトルは、カートリッジ本体に摺動可能に結合される。カートリッジ本体は、ステープル押出しシャトルの先端方向の移動によってステープルを射出するための複数の開口部を上面に含む。カートリッジ本体は、第1の案内トラック係合機構によって係合される第1の案内トラックを含む。第1の案内トラックは、ステープル押出しシャトルの先端方向の移動の第1の部分の間に切れ刃がカートリッジ本体から突出し、且つステープル押出しシャトルの先端方向の移動の第2の部分の間に切れ刃がカートリッジ本体内に引き込まれるように構成される。
【0008】
ステープラカートリッジの多くの実施形態では、第1の案内トラックは、ステープル押出しシャトルの先端方向の移動の第2の部分の間にナイフ部材の切れ刃のカートリッジ本体内への引込みを誘導するセクションを含む。例えば、ステープラカートリッジの多くの実施形態では、第1の案内トラックは、切れ刃のカートリッジ本体内への引込みを誘導するようにカートリッジ本体の上面に対して傾斜したセクションを含む。
【0009】
ステープラカートリッジの多くの実施形態では、ナイフ部材は、ステープル押出しシャトルに摺動可能に取り付けられる。例えば、ステープラカートリッジの多くの実施形態では、ステープル押出しシャトルは、ナイフ部材が摺動可能に配置されるナイフ用チャネルを含む。
【0010】
ステープラカートリッジの多くの実施形態では、カートリッジ本体は、ナイフ部材がそれに沿って移動する中央に配置されたスロットと、この中央に配置されたスロットの両側にある案内トラックとを含む。各案内トラックは、ステープル押出しシャトル及びナイフ部材の先端方向の移動の全体を通して、ステープル押出しシャトルに対するナイフ部材の位置を制御するためにナイフ部材によって係合される。例えば、ステープラカートリッジの多くの実施形態では、ナイフ部材は第2の案内トラック係合機構をさらに含み、カートリッジ本体は第2の案内トラックをさらに含む。第2の案内トラック係合機構は、第1の案内トラック係合機構に対してナイフ部材の反対側に配置される。第2の案内トラックは、第2の案内トラック係合機構によって係合され、ステープル押出しシャトルの先端方向の移動の第1の部分の間に切れ刃がカートリッジ本体から突出し、且つステープル押出しシャトルの先端方向の移動の第2の部分の間に切れ刃がカートリッジ本体内に引き込まれるように構成される。
【0011】
ステープラカートリッジの多くの実施形態では、ナイフ部材は、ステープル押出しシャトルに対するナイフ部材の全位置について、ステープル押出しシャトルに対してナイフ部材を安定させるように、ステープル押出しシャトルの垂直リブの両側と摺動可能に連結する。例えば、ステープラカートリッジのいくつかの実施形態では、第1の案内トラック係合機構及び第2の案内トラック係合機構のそれぞれは、ステープル押出しシャトルに対するナイフ部材の位置及び/又は向きを安定させるために、ステープル押出しシャトルの垂直リブと連結するように先端方向に突出する。ステープラカートリッジのいくつかの実施形態では、第1の案内トラック係合機構及び第2の案内トラック係合機構のそれぞれは、垂直リブと摺動可能に連結する。
【0012】
ステープラカートリッジの多くの実施形態では、ステープル押出しシャトル及びナイフ部材は、カートリッジ本体の基端部からカートリッジ本体の先端部へと移動した後に、カートリッジ本体の先端部に留まる。例えば、ステープラカートリッジのいくつかの実施形態では、カートリッジ本体は、ステープル押出しシャトルをカートリッジ本体の先端部に保持する保持機構を含む。ステープラカートリッジのいくつかの実施形態では、保持機構は、ステープル押出しシャトルをカートリッジ本体の先端部に保持するためにステープル押出しシャトルと係合する可撓性タブを含む。
【0013】
ステープラカートリッジの多くの実施形態では、カートリッジ本体はエンドエフェクタに旋回可能に(pivotally)取り付け可能である。例えば、ステープラカートリッジのいくつかの実施形態では、カートリッジ本体は、基端部に近接し、且つ上顎を含むエンドエフェクタと取り外し可能に結合するように構成される取付け機構を含む。ステープラカートリッジの多くの実施形態では、ステープラカートリッジはエンドエフェクタの下顎を形成する。
【0014】
別の態様では、手術用装置は、細長いシャフトと、シャフトに移動可能に結合されるエンドエフェクタと、エンドエフェクタに取り外し可能に取り付けられるステープラカートリッジとを含む。エンドエフェクタは、上顎と梁部材とを含む。梁部材は、第1の部分と第2の部分とを含む。第1の部分は上顎と摺動可能に連結する。ステープラカートリッジは、ヒンジ付き下顎を形成する。ステープラカートリッジは、ステープル押出しシャトルと、ナイフ部材と、カートリッジ本体とを含む。ナイフ部材は、ステープル押出しシャトルに摺動可能に結合される。ナイフ部材は、切れ刃と、第1の案内トラック係合機構とを含む。カートリッジ本体は、基端部と先端部とを有する。ステープル押出しシャトルは、カートリッジ本体に摺動可能に結合される。カートリッジ本体は、ステープル押出しシャトルの先端方向の移動によってステープルを射出するための複数の開口部を上面に含む。カートリッジ本体は、第1の案内トラック係合機構によって係合される第1の案内トラックを含む。第1の案内トラックは、ステープル押出しシャトルの先端方向の移動の第1の部分の間に切れ刃がカートリッジ本体から突出し、且つステープル押出しシャトルの先端方向の移動の第2の部分の間に切れ刃がカートリッジ本体内に引き込まれるように構成される。
【0015】
手術用装置の多くの実施形態では、第1の案内トラックは、ステープル押出しシャトルの先端方向の移動の第2の部分の間にナイフ部材の切れ刃のカートリッジ本体内への引込みを誘導するセクションを含む。例えば、手術用装置の多くの実施形態では、第1の案内トラックは、切れ刃のカートリッジ本体内への引込みを誘導するためにカートリッジ本体の上面に対して傾斜したセクションを含む。
【0016】
手術用装置の多くの実施形態では、ナイフ部材は、ステープル押出しシャトルに摺動可能に取り付けられる。例えば、手術用装置の多くの実施形態では、ステープル押出しシャトルは、ナイフ部材が摺動可能に配置されるナイフ用チャネルを含む。
【0017】
手術用装置の多くの実施形態では、カートリッジ本体は、ナイフ部材がそれに沿って移動する中央に配置されたスロットと、この中央に配置されたスロットの両側にある案内トラックとを含む。各案内トラックは、ステープル押出しシャトル及びナイフ部材の先端方向の移動の全体を通して、ステープル押出しシャトルに対するナイフ部材の位置を制御するためにナイフ部材によって係合される。例えば、手術用装置の多くの実施形態では、ナイフ部材は第2の案内トラック係合機構をさらに含み、カートリッジ本体は第2の案内トラックをさらに含む。第2の案内トラック係合機構は、第1の案内トラック係合機構に対してナイフ部材の反対側に配置される。第2の案内トラックは、第2の案内トラック係合機構によって係合され、ステープル押出しシャトルの先端方向の移動の第1の部分の間に切れ刃がカートリッジ本体から突出し、且つステープル押出しシャトルの先端方向の移動の第2の部分の間に切れ刃がカートリッジ本体内に引き込まれるように構成される。
【0018】
手術用装置の多くの実施形態では、ナイフ部材は、ステープル押出しシャトルに対するナイフ部材の全位置について、ステープル押出しシャトルに対してナイフ部材を安定させるように、ステープル押出しシャトルの垂直リブの両側と摺動可能に連結する。例えば、手術用装置のいくつかの実施形態では、第1の案内トラック係合機構及び第2の案内トラック係合機構のそれぞれは、ステープル押出しシャトルに対するナイフ部材の位置及び/又は向きを安定させるために、ステープル押出しシャトルの垂直リブと連結するように先端方向に突出する。手術用装置のいくつかの実施形態では、第1の案内トラック係合機構及び第2の案内トラック係合機構はそれぞれ、垂直リブと摺動可能に連結する。
【0019】
手術用装置の多くの実施形態では、ステープル押出しシャトル及びナイフ部材は、カートリッジ本体の基端部からカートリッジ本体の先端部へと移動した後に、カートリッジ本体の先端部に留まる。例えば、手術用装置のいくつかの実施形態では、カートリッジ本体は、ステープル押出しシャトルをカートリッジ本体の先端部に保持する保持機構を含む。手術用装置のいくつかの実施形態では、保持機構は、ステープル押出しシャトルをカートリッジ本体の先端部に保持するためにステープル押出しシャトルと係合する可撓性タブを含む。
【0020】
手術用装置の多くの実施形態では、カートリッジ本体はエンドエフェクタに旋回可能に取り付け可能である。例えば、手術用装置のいくつかの実施形態では、カートリッジ本体は、基端部に近接し、且つ上顎を含むエンドエフェクタと取り外し可能に結合するように構成される取付け機構を含む。手術用装置の多くの実施形態では、ステープラカートリッジはエンドエフェクタの下顎を形成する。
【0021】
1つ又は複数の実施態様の詳細は、添付図面及び以下の詳細な説明に記載されている。他の特徴は、詳細な説明及び図面から、そして特許請求の範囲から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】いくつかの実施形態による手術用ツールを示す。
【
図2A】いくつかの実施形態によるステープル留めカートリッジを示す。
【
図2B】いくつかの実施形態による、
図2Aのステープル留めカートリッジのステープル押出しシャトル及びナイフ部材のアセンブリを示す。
【
図3A】いくつかの実施形態による、
図2Aのステープル留めカートリッジの断面図を示す。
【
図3B】いくつかの実施形態による、
図2Aのステープル留めカートリッジの断面図を示す。
【
図3C】いくつかの実施形態による、
図2Aのステープル留めカートリッジの断面図を示す。
【
図4A】
図2Bのステープル押出しシャトル及びナイフ部材のアセンブリのナイフ部材を示す。
【
図4B】
図2Bのステープル押出しシャトル及びナイフ部材のアセンブリを示す。
【
図5A】いくつかの実施形態による、
図1の手術用ツールの断面図を示す。
【
図5B】いくつかの実施形態による、
図1の手術用ツールの断面図を示す。
【
図5C】いくつかの実施形態による、
図1の手術用ツールの断面図を示す。
【
図5D】いくつかの実施形態による、
図1の手術用ツールの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、基端側シャシ12、器具シャフト14、組織を把持するように関節運動させることができる先端側エンドエフェクタ16、及び手首アセンブリ18を含む手術用ツール10を示す。基端側シャシ12は、入力カプラを含むことができ、この入力カプラは、米国特許出願公開第2014/0183244号明細書内に開示されるシステム等の遠隔手術システムの対応する出力カプラと連結し(interface with)且つその出力カプラによって駆動され、その文献は、参照により本明細書に組み込まれる。入力カプラは、器具シャフト14内に配置される1つ又は複数の作動部材と駆動結合することができる。作動部材は、エンドエフェクタ16と駆動結合される。
【0024】
エンドエフェクタ16は、手首アセンブリ18によって器具シャフト14に移動可能に接続される。手首アセンブリ18は、少なくとも2つの自由度を有しており、且つエンドエフェクタ16を細長い器具シャフト14に取り付けて、器具シャフト14に対してエンドエフェクタ16を2つの直交軸線の周りに関節運動させることを提供する。エンドエフェクタ16は、上顎20及び下顎22を含む。上顎20及び/又は下顎22は、関節運動して組織を把持するように構成することができる。下顎22の全部又は一部は、エンドエフェクタ16から取り外すことができるカートリッジの形態をとる。下顎22は、切断される組織をステープル留めするための手術用ステープルだけでなく、カートリッジ内に単独で収容される切断機構も収容することができる。
【0025】
図2Aは、手術用ツール10の下顎22又は下顎22の一部として使用することができるカートリッジ100の図を示す。カートリッジ100は、説明を容易にするためにいくつかの構成要素がない状態で示されている。
図2Aに示されていないカートリッジ100の構成要素について以下に説明する。カートリッジ100は、エンドエフェクタ16にヒンジ式に結合することができる基端部104と、エンドエフェクタ16の対応する先端部に配置される先端部106とを含むカートリッジ本体102を有する。いくつかの実施形態では、カートリッジ100の全長は、45mmより大きく、例えば60mmを超える。カートリッジ本体102は、カートリッジ本体102の上面107に長手方向スロット110と、複数列のステープル開口部108とを含む。いくつかの実施形態では、ステープル開口部108の各々にステープル開口部108から展開させるためにステープルが配置される。カートリッジ100は、下顎22全体で構成され得るか、又はいくつかの実施形態では下顎22の枠組みに取り付けられ得る。後者の場合に、カートリッジ本体102は、下顎22の保持機構に固定されるように適合される機構も含み得る。
【0026】
図2Bは、カートリッジ本体102内に収容されたステープル押出しシャトル及びナイフ部材のアセンブリ111の図を示す。アセンブリ111は、ステープル押出しシャトル112と、ナイフ部材122とを含む。ステープル押出しシャトル112は、ステープル押出し機116と連結し、次にステープル118に連結するように構成された傾斜部114を含む。ステープル押出しシャトル112は、カートリッジ本体102と摺動可能に連結する。ステープル押出しシャトル112がカートリッジ本体102の先端部106に向けて移動すると、ステープル押出しシャトル112の傾斜部114によってステープル押出し機116の係合が生じ、カートリッジ本体102に対してステープル押出し機116を上方に駆動させ、ステープル押出しシャトル112がカートリッジの先端部106に向けて移動する際に、ステープル118をステープル開口部から外に展開させる。
【0027】
ステープル押出しシャトル112は、カートリッジ本体102の長手方向スロット110と整列するナイフ用スロット120を含む。ナイフ部材122は、ナイフ用スロット120内に摺動可能に配置される。ナイフ用スロット120内のナイフ部材122の位置は、カートリッジ本体102の基端部104からカートリッジ本体102の先端部106へのステープル押出しシャトル112の移動の第1の部分の間に、ナイフ部材122の切れ刃が、ナイフ用スロット120及び長手方向スロット110より上に延びるように制御される。ステープル押出しシャトル及びナイフのアセンブリ111の初期の基端位置において、ナイフ部材122は、カートリッジ本体102の基端側ガレージ124(
図3A及び
図3Bに示される)内に収容される。アセンブリ111が基端側ガレージ124からカートリッジ本体102の先端部106に向けて移動するときに、ナイフ用スロット120と長手方向スロット110との両方がナイフ部材122の切れ刃を収容する。ステープル押出しシャトル112は、案内部材126も含み、案内部材126は、図示の実施形態では円筒形の外面を有する。案内部材126は、カートリッジ本体102の同様の形状の表面と協働する支承面を提供し、こうしてステープル押出しシャトル102の移動を案内する。案内部材126は、ステープル押出しシャトル112の垂直リブ部材127から延びており、垂直リブ部材127は、ステープル押出しシャトル112の中央部分を形成し、且つナイフ部材122のための垂直方向インターフェイスを提供する。ナイフ用スロット120は、アセンブリ111の移動中にナイフ部材122を安定させるのを助けるために案内部材126内に形成される。
【0028】
動作中に、ステープル118は、カートリッジ基端部104で開始してカートリッジ先端部106に進む際に順次展開される。図示の実施形態では、ナイフ部材122は、ステープル押出しシャトル112の傾斜部114に対して先端側に位置付けされ、それにより、完全にステープル留めされた組織のみが切断される。ナイフ部材122、又は少なくともその切れ刃は、アセンブリ111がカートリッジ本体102の先端部106に隣接するその最も先端側の位置に達する前に、カートリッジ本体102の上面107より下に引き込まれる。ナイフ部材112の切れ刃がカートリッジ本体102の上面107より下に配置された状態で、アセンブリ111がその最も先端側の位置にあるときに、ナイフ部材122の切れ刃によってオペレータを切ってしまう危険性なしにカートリッジ100を手術用ツールから安全に取り外すことができる。ナイフ部材122の切れ刃の上面107より下への引込みについて以下でさらに詳細に説明する。
【0029】
図3A~
図3Cは、カートリッジ100の断面図を示している。
図3Bに示されるように、ステープル押出しシャトル及びナイフ部材のアセンブリ111は、最初に、ナイフ部材122が上面107を越えて突出した状態で基端側ガレージ124に配置される。この位置では、ナイフ部材122は基端側ガレージ124によって隠されており、カートリッジ100の取扱い及び設置中にナイフ部材122を接触することによりけがすることを防ぐ。ステープル押出しシャトル112の案内部材126は、カートリッジ本体102内に形成された細長い管腔128に沿って並進するように配置される。細長い管腔128は、円筒形状の案内部材126の形状に一致する円形のプロファイルを有する。もっとも、案内部材126及び細長い管腔128のプロファイルは、円形に限定されるものではない。従って、案内部材126及び細長い管腔128のプロファイルは、例えば矩形又は六角形等の任意の適切な形状を有することができる。
【0030】
ナイフ部材122の1つ又は複数の摺動式案内トラック係合機構(以下でより詳細に説明する)は、カートリッジ本体102内に形成された1つ又は複数の案内トラックに沿って摺動するように位置付けされる。いくつかの実施形態では、第1の案内トラックが、長手方向スロット110の一方の側に配置される。いくつかの実施形態では、第2の案内トラックが、長手方向スロット110の他方の側に配置される。第1の案内トラック及び第2の案内トラックのそれぞれは、第1のトラックセグメント130を有することができる。第1のトラックセグメント130は、カートリッジ本体102内で細長くされ、且つ細長い管腔128に沿って延びる。一般に、第1のトラックセグメント130は、ナイフ部材122の摺動式案内トラック係合機構がそれに沿って並進するための少なくとも1つの支承面を含む。いくつかの実施形態では、第1のトラックセグメント130は、カートリッジ本体102の基端部104からカートリッジ本体102の先端部106の近くに配置された傾斜移行部132まで延びる。いくつかの実施形態では、第1のトラックセグメント130は、上面107に対して平行に延びる。傾斜移行部132は、第1のトラックセグメント130を、第1のトラックセグメント130よりも上面107からさらに離れた第2のトラックセグメント134に接合する。1つ又は複数の摺動式案内トラック係合機構がアセンブリ111の先端方向の移動中に傾斜移行部132に係合するときに、
図3Cに示されるように、ナイフ部材122は上面107より下の位置に引き込まれる。この引込み位置では、ナイフ部材122は安全に収納されているので、ナイフ部材122によってオペレータを切ってしまう危険性なしにカートリッジ100を手術用ツールから安全に取り外すことができる。
【0031】
図4Aは、組織を切断するための切れ刃136を含むナイフ部材122の図を示す。切れ刃136は、第1の案内トラック及び第2の案内トラックに沿って摺動するように構成された案内トラック係合アセンブリ138より上に配置される。案内トラック係合アセンブリ138は、第1の案内トラック係合機構140及び第2の案内トラック係合機構142を含む。
図4Bに示されるように、第1の案内トラック係合機構140及び第2の案内トラック係合機構142は、共通の底面を共有し、且つナイフ部材122から横方向に延びており、これにより、案内部材126に対するストッパとして作用する。第1の案内トラック係合機構140及び第2の案内トラック係合機構142のそれぞれは、ステープル押出しシャトル112に対するナイフ部材122の位置及び/又は向きを安定させるために、ステープル押出しシャトル112の垂直リブ127と連結するように先端方向に突出する。第1の案内トラック機構140と第2の案内トラック機構142との間の先端方向の間隔は、ギャップ143を規定する。ギャップ143は、ナイフ部材122がステープル押出しシャトル112に対して移動するときに、ステープル押出しシャトル112の垂直リブ127を収容する。このようにして、ギャップ143は、アセンブリ111の先端方向の移動中に、及び(アセンブリ111の先端方向の移動の終わり近くで生じる)ナイフ部材122の上面107より下への引込み中に、ナイフ部材122を安定させるのに役立つ。
【0032】
図5A~
図5Dに示されるように、アセンブリ111の先端方向の移動及び下顎22の作動は、駆動部材144の移動によって制御される。駆動部材144は、
図1のシャフト14内に収容されている細長く可撓性のケーブルによって駆動することができる。駆動部材144は、上顎20のレール機構148内に捕捉されて摺動する上側フランジ146を含む。駆動部材144は、カートリッジ100の底面と協働する下側フランジ150も含む。カートリッジ100がヒンジ接続によって取り付けられているので、駆動部材144の先端方向の移動は、下側フランジ150にカートリッジを上顎20に向けて強制的に作動させ、いくつかの実施形態ではこれは固定される。駆動部材144はまた、アセンブリ111を先端方向に押して、ステープル118を組織及び上顎20のアンビル面内に射出させてステープルを平らにする。駆動部材144によるアセンブリ111の作動はまた、ナイフ部材122を先端方向に移動させ、そしてステープル留めされた組織を切断する。
【0033】
図5Aに示されるように、カートリッジ100は、上顎20より下で且つ駆動部材144の周りにヒンジ式に結合される細長い取付け機構152によって、手術用ツール10に取り付け及びこれから取り外すことができる。
図5Bに示されるように、駆動部材144による先端方向の移動は、下側フランジ150をカートリッジ100の基端部分の下に移動させ、カートリッジ100を上顎20に向けて強制的に作動させる。駆動部材144の先端方向の更なる移動は、アセンブリ111をカートリッジ100の先端部に向けてさらに押して、アセンブリ111が
図5Cに示される位置に達するまで、組織111をステープル留めしてステープル留めされた組織を切断する。
図5Cに示される構成では、ナイフ部材122は、案内トラック係合アセンブリ138と傾斜移行部134との相互作用によって部分的に引き込まれる。
【0034】
図5Dに示される構成では、アセンブリ111は、ナイフ部材122が上面107より下に引き込まれる位置まで前進される。次に、駆動部材144を基端方向に引き込み、
図5Cに示される構成にすることができ、そして、アセンブリ111は先端部に留まる。タブ154等の1つ又は複数の保持機構を使用して、アセンブリ111をカートリッジ100の先端部に保持することができる。駆動部材144がカートリッジ100の下面ともはや係合しない位置まで駆動部材144を基端方向に引き込んだ後に、次にカートリッジ100を取り外して新しいカートリッジ100と交換することができる。
【0035】
他の変形形態は本発明の精神の範囲内にある。説明した実施形態の様々な態様、実施形態、実施態様、又は特徴は、別々に又は任意の組合せで使用することができる。遠隔手術ツールの動作に関連して説明した実施形態の様々な態様は、ソフトウェア、ハードウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの組合せによって実施することができる。こうして、本発明は様々な修正及び代替的な構成を受け入れる余地があるが、その特定の例示の実施形態は図面に示されており、上で詳細に説明している。もっとも、開示された特定の形態に本発明を限定する意図はなく、むしろ、その意図は、添付の特許請求の範囲に規定されるような本発明の精神及び範囲内にある全ての修正、代替的な構成、及び均等物を網羅することであることを理解されたい。
【0036】
本発明を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)用語「1つの(a, an)」及び「その(the)」及び同様の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がない限り又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形と複数形との両方を網羅すると解釈すべきである。用語「備える、有する、含む(comprising)」、「有する、含む(having)」、「含む、有する(including)」、及び「含む(containing)」は、特に断りのない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含む、有する(including)」を意味するが、これに限定されない)として解釈すべきである。「接続された(connected)」という用語は、たとえ介在するものがあったとしても、部分的に又は全体的にその中に含まれる、それに取り付けられる、又は一緒に接合されると解釈すべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、単にその範囲内に含まれる各個別の値を個々に指す簡潔な方法として機能することを意図しており、各個別の値は、本明細書に個別に列挙されているかのうように、明細書に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書に提供されるありとあらゆる例、又は例示的な言語(例えば、「等」)の使用は、単に本発明の実施形態をよりよく明らかにすることを意図しており、別段要求しない限り本発明の範囲を限定しない。本明細書中のいかなる言語も、特許請求の範囲に記載されていない要素を本発明の実施に必須であると示すと解釈すべきではない。
【0037】
本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態を本明細書に記載する。これらの好ましい実施形態の変形形態は、前述の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。本発明者らは、当業者がそのような変形形態を適切に使用することを期待し、そして本発明者らは本明細書に具体的に記載されたものとは別の方法で本発明を実施できることを意図する。従って、本発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙されている主題の全ての修正及び均等物を含む。さらに、その全ての可能な変形形態における上記の要素の任意の組合せは、本明細書中に別段の指示がない限り又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。