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特許7184770血糖値測定チップ及び血糖値測定装置セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】血糖値測定チップ及び血糖値測定装置セット
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20221129BHJP
   C12Q 1/54 20060101ALI20221129BHJP
   C12Q 1/32 20060101ALI20221129BHJP
   G01N 33/66 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C12M1/34 E
C12Q1/54
C12Q1/32
G01N33/66 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019528988
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2018021676
(87)【国際公開番号】W WO2019012865
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2017137932
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】茶井 文彦
(72)【発明者】
【氏名】森内 健行
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/152225(WO,A1)
【文献】特開2008-197077(JP,A)
【文献】国際公開第2017/134878(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12Q 1/00-3/00
G01N 33/00-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液が供給される供給口と、該供給口が一端に形成された流路と、該流路を画成する内壁に配置された血糖値測定試薬と、を備え、前記血液中の血糖値を測定する血糖値測定装置に装着可能な血糖値測定チップであって、
前記血糖値測定試薬が、グルコースを基質とする酵素と、発色色素と、少なくとも1個のスルホン酸基を有する芳香族炭化水素とを含み、
前記血糖値測定試薬に含まれる芳香族炭化水素の総モル数をA(mmol)とし、前記血糖値測定試薬と血液とが溶解状態となる領域の容積をB(L)とした場合において、比A/Bが3.7(mM)以上30.8(mM)以下であり、
前記芳香族炭化水素が、1,3-ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム、又は、ナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウムであることを特徴とする血糖値測定チップ。
【請求項2】
前記比A/Bが3.7(mM)以上15.0(mM)以下であることを特徴とする請求項に記載の血糖値測定チップ。
【請求項3】
前記血糖値測定試薬は、前記発色色素と前記芳香族炭化水素とのモル比(前記発色色素:前記芳香族炭化水素)が1:0.07~1:7.4であることを特徴とする請求項1または2に記載の血糖値測定チップ。
【請求項4】
前記発色色素としてテトラゾリウム塩をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の血糖値測定チップ。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の血糖値測定チップと、血液中の血糖値を測定する血糖値測定装置とを備える血糖値測定装置セットであって、
前記血糖値測定装置が、
前記血液と前記試薬との反応物に光を照射する照射部と、
前記反応物を透過した測定光、前記反応物が吸収した測定光、又は前記反応物から反射した測定光を受光する受光部と、
前記測定光から得られる信号を処理する処理部と、
を備えることを特徴とする血糖値測定装置セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖値測定チップ及び血糖値測定装置セットに関し、特に、ヘマトクリット値(Ht)が高い血液が供給された場合であっても、血液展開性に優れ、血液と試薬との反応の速さを維持することが可能な血糖値測定チップ、及び、該血糖値測定チップを備える血糖値測定装置セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、血液中のグルコース成分を測定する血糖値測定装置が広汎に利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この血糖値測定装置では、例えば、酵素及び発色色素を含む試薬(例えば、特許文献2参照)を有する血糖値測定チップに血液(全血)を点着し、試薬と血液(全血)とを反応させた際の呈色度合を光学的に測定することにより、血液中のグルコース成分が測定される(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
ここで、上述したような血糖値測定装置を用いた血糖値測定においては、患者の苦痛を和らげる観点で、血液検体量が少ないことが好ましい。血液検体量を少なくするためには、血糖値測定チップ内の血液流路を狭くする(血液流路の断面積を小さくする)必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-215034号公報
【文献】特許第4381463号公報
【文献】国際公開第2014/049704号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような血糖値測定装置を用いた血糖値測定においては、血液に対する溶解性が高い血糖値測定試薬が用いられる。しかしながら、血液流路が狭い血糖値測定チップに、ヘマトクリット値(Ht)が高い血液が供給された場合、環境温度によっては、流路内を流れる血液と、血糖値測定試薬との混合・溶解を制御することが難しくなる。これにより、流入する血液に押し出されて排出されるはずのエアーが、血糖値測定チップから排出されなくなる。また、流入する血液にエアーが巻き込まれることで、血糖値測定チップの測定部(試薬部)にエアー(気泡)が残ってしまうことがあった。特に、発熱時や、夏場の高温環境下において、正確に血糖値を測定することができないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、ヘマトクリット値(Ht)が高い血液が供給された場合であっても、血液展開性に優れ、血液と試薬との反応の速さを維持することが可能な血糖値測定チップ、及び、該血糖値測定チップを備える血糖値測定装置セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様としての血糖値測定チップは、血液が供給される供給口と、該供給口が一端に形成された流路と、該流路を画成する内壁に配置された血糖値測定試薬と、を備え、前記血液中の血糖値を測定する血糖値測定装置に装着可能な血糖値測定チップであって、前記血糖値測定試薬が、グルコースを基質とする酵素と、発色色素と、少なくとも1個のスルホン酸基を有する芳香族炭化水素とを含み、前記血糖値測定試薬に含まれる芳香族炭化水素の総モル数をA(mmol)とし、前記血糖値測定試薬と血液とが溶解状態となる領域の容積をB(L)とした場合において、比A/Bが3.7(mM)以上184.8(mM)以下であることを特徴とするものである。
これにより、ヘマトクリット値(Ht)が高い血液が供給された場合であっても、血液展開性に優れ、血液と試薬との反応の速さを維持することが可能な血糖値測定チップを提供することができる。
なお、本明細書において、「芳香族炭化水素」は、複素環式化合物とは異なる炭素環式化合物(環式化合物のうち、環に炭素原子だけを含む化合物)の一種と定義され、アミンを有さない。
また、「血糖値測定試薬と血液とが溶解状態となる領域(例えば、図2における領域X)」とは、「流路を画成する内壁のうち、血糖値測定試薬が形成された試薬形成面(例えば、図2における試薬形成面1a)と、血糖値測定試薬の厚み方向において血糖値測定試薬と対向する対向面(例えば、図2における対向面2a)とで挟まれる隙間(例えば、図2における隙間X)」を意味する。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記比A/Bが、3.7(mM)以上123.3(mM)以下であることが好ましく、3.7(mM)以上61.6(mM)以下であることがより好ましく、3.7(mM)以上15.0(mM)以下であることが特に好ましい。
ここで、前記比A/Bを3.7(mM)以上123.3(mM)以下とすることで、Ht20~Ht70の範囲内のいかなるHtの血液が供給された場合であっても、血液展開性に優れ、血液と試薬との反応の速さを維持することが可能な血糖値測定チップを提供することができる。
また、前記比A/Bを3.7(mM)以上61.6(mM)以下とすることで、Ht0~Ht70の範囲内のいかなるHtの血液が供給された場合であっても、血液展開性に優れ、血液と試薬との反応の速さを維持することが可能な血糖値測定チップを提供することができる。
さらに、前記比A/Bを3.7(mM)以上15.0(mM)以下とすることで、血液展開性により優れ、血液と試薬との反応の速さをより維持することが可能な血糖値測定チップを提供することができる。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、前記芳香族炭化水素が2個以上のスルホン酸基を有することが好ましい。
ここで、前記芳香族炭化水素における芳香族環の周囲全体に亘ってスルホン酸基を配置することで、前記芳香族炭化水素分子内における親水性部分及び疎水性部分のそれぞれが偏在しないため、試薬が血液によって湿潤しやすい(なじみやすい)。
【0011】
ここで、前記芳香族炭化水素としては、1,3-ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム、又は、ナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム、がより好ましい。
なお、1,3-ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム及びナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウムは、緩衝能を有さない。血液に含まれるバッファー成分は、この血糖値測定試薬と血液とが反応するために必要な緩衝能を十分に有する。このため、緩衝剤を血糖値測定試薬に添加しなくとも、該反応の期間に亘って、血糖値測定試薬と血液との混合物のpHを維持することができる。
【0012】
本発明の1つの実施形態として、血糖値測定試薬は、発色試薬と芳香族炭化水素化合物とのモル比(発色試薬:芳香族炭化水素化合物)が1:0.07~1:7.4の範囲であることが好ましい。このモル比の範囲の血糖値測定試薬を用いれば、血糖値測定チップ内における血液の展開性を良好にすることができる。
【0013】
本発明の1つの実施形態として、前記発色試薬としてテトラゾリウム塩をさらに含むことが好ましい。
【0014】
本発明の第2の態様としての血糖値測定装置セットは、本発明の第1の態様としての血糖値測定チップと、血液中の血糖値を測定する血糖値測定装置とを備える血糖値測定装置セットであって、前記血糖値測定装置が、前記血液と前記試薬との反応物に光を照射する照射部と、前記反応物を透過した測定光、前記反応物が吸収した測定光、又は前記反応物から反射した測定光を受光する受光部と、前記測定光から得られる信号を処理する処理部と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヘマトクリット値(Ht)が高い血液が供給された場合であっても、血液展開性に優れるだけでなく、血液と試薬との反応の速さを維持することが可能な血糖値測定チップ、及び、該血糖値測定チップを備える血糖値測定装置セットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る血糖値測定チップを示す平面図である。
図2図1における線I-Iに沿った断面図である。
図3図1の血糖値測定チップにおける流路を説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態に係る血糖値測定装置セットを示す平面図である。
図5図4に示す血糖値測定装置セットの血糖値測定装置及び血糖値測定チップを示す縦断面図である。
図6図1の血糖値測定チップの製造方法を説明するための図である。
図7】各試薬(実施例1~6、比較例1)の発色速度を示すグラフであり、縦軸は吸光度指標(15秒後の発色量を100%とした場合の指標:%)を、横軸は点着後の時間(sec:秒)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(血糖値測定チップ)
以下、本発明に係る血糖値測定チップを詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る血糖値測定チップを示す平面図である。また、図2は、図1における線I-Iに沿った断面図である。さらに、図3は、図1の血糖値測定チップにおける流路を説明するための図である。
【0018】
図1図2及び図3に示すように、本実施形態における血糖値測定チップ100は、供給口10と、流路20と、試薬層30と、を備え、後述する血糖値測定装置に装着可能である。
以下、本実施形態における血糖値測定チップ100の各部材及び各部材により構成される特徴部の詳細について説明する。
【0019】
<供給口10、流路20、及び試薬層30>
図1図2及び図3に示すように、血糖値測定チップ100は、底面部を形成する第1基材1と、天面部を形成する第2基材2と、これらの第1基材1及び第2基材2の間に、且つ、チップ厚み方向に対して直交する幅方向の両端に設けられた接着部3,4とを備える。
このように、接着部3,4において、第1基材1及び第2基材2の間に任意の厚みを有するスペーサ(図には示していない)を挟んだまま、第1基材1及び第2基材2を接着させることで、第1基材1と第2基材2との間に所定の大きさの空隙が形成される。この所定の大きさの空隙は、血糖値測定チップ100の第一端部から第二端部まで流路20として形成されている。流路20の第一端部側(上流側)には、供給口10を有する。ユーザは、0.3μL以上3μL以下の血液を供給口10に付着させることで、毛細管現象を利用して、血糖値測定チップ100内に流入させる。流路20の第二端部側には、血糖値測定試薬が塗布されている。より詳細には、第二端部側において、流路20を画成する内壁のうち、少なくとも1つの面(試薬形成面1a)の少なくとも一部の領域に、血糖値測定試薬からなる試薬層30が設けられる。試薬層30は、試薬形成面1a上の全域に設けられてもよい。好ましくは、試薬層30は、試薬形成面1aの面積の少なくとも50%以上の領域を覆うように塗布される。流路20内において、試薬形成面1aおよび試薬層30の直上には空間Yが画定されている。流路20の断面形状は、長方形、正方形、円、楕円でもよい。流路20の体積は、0.0003~0.003cmが好ましく、0.0004~0.0015cmがより好ましい。流路20のうち、空間Yの体積は、0.00003~0.001cmであるのが好ましく、0.00005~0.0003cmであるのが特に好ましい。血糖値測定チップ100は、流路20内における血液の移動を促進するために、供給孔10の位置よりも下流側(流路20において供給口10と反対側)の任意の位置に通気孔を有していてもよい。ここで、空間Yは、通気孔となる空間を含まない。第2基材2に通気孔を設ける場合は、血糖値測定チップ100の外部空間から、流路20内の空間Yに連通するように1つまたは複数の細孔を設けるとよい。第2基材2に通気孔を設けない場合は、試薬層30よりも第二端部側(すなわち、空間Yよりも下流側)に、通気孔を設ける。いずれの場合においても、血液の漏れを防止するために、通気孔内に多孔質部材やフィルターを配置してもよい。あるいは、試薬部よりも下流側に、空間Yから延びる細い流路を更に設けることで、通気孔としてもよい。この場合、該通気孔を形成する第1基材1及び/または第2基材2に、撥水加工等を施すことで血液の漏れを阻害することもできる。
【0020】
第1基材1の材質としては、目的(光の照射・受光)に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタアクリレート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、環状オレフィンコポリマー、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等の透明な有機樹脂材料;ガラス、石英等の透明性な無機材料;などが挙げられる。
【0021】
第2基材2の材質としては、目的(光の照射・受光)に応じて適宜選択することができ、例えば、親水処理ポリエステルフィルム(3M親水化フィルム、tesa(登録商標)62580、ARflow(登録商標)93210、ARflow(登録商標)93127)等の透明な有機樹脂材料、などが挙げられる。
【0022】
接着部3,4の厚みは、流路20のチップ厚み方向の距離を所望の値にするために、適宜調整される。例えば、第1基材1と第2基材2との間に任意の厚みを有するスペーサを配置してから接着あるいは融着してもよい。あるいは、第1基材1と第2基材2を接着させる接着部材として所定の厚みを有する両面テープを使用することで、接着部材にスペーサの機能を兼ねさせてもよい。流路20内を血液が均一に流動するように、接着部3、4は、流路20の中心線に対して線対称に設けられる。
【0023】
試薬層30における血糖値測定試薬に含まれる後述の芳香族炭化水素の総モル数をA(mmol)とし、血糖値測定試薬と血液とが溶解状態となる領域X(流路20を画成する内壁のうち、血糖値測定試薬からなる試薬層30が形成された試薬形成面1aと、試薬層30の厚み方向において試薬層30と対向する対向面2aとで挟まれる隙間X)の容積(試薬長さL2×幅W×厚みt2)をB(L)とした場合において、比A/Bとしては、3.7(mM)以上184.8(mM)以下である限り、特に制限はないが、3.7(mM)以上123.3(mM)以下が好ましく、3.7(mM)以上61.6(mM)以下がより好ましく、3.7(mM)以上15.0(mM)以下が特に好ましい。比A/Bが3.7(mM)以上184.8(mM)以下であることで、優れた血液展開性を得ることができると共に、血液と試薬との反応の速さを維持することができる。
ここで、前記比A/Bを3.7(mM)以上123.3(mM)以下とすることで、Ht20~Ht70の範囲内のいかなるHtの血液が供給された場合であっても、優れた血液展開性を得ることができると共に、血液と試薬との反応の速さを維持することができる。
また、前記比A/Bを3.7(mM)以上61.6(mM)以下とすることで、Ht0~Ht70の範囲内のいかなるHtの血液が供給された場合であっても、優れた血液展開性を得ることができると共に、血液と試薬との反応の速さを維持することができる。
さらに、前記比A/Bを3.7(mM)以上15.0(mM)以下とすることで、より優れた血液展開性を得ることができると共に、血液と試薬との反応の速さをより維持することができる。
【0024】
なお、「血糖値測定試薬と血液とが溶解状態となる領域X」、即ち、「流路20を画成する内壁のうち、血糖値測定試薬からなる試薬層30が形成された試薬形成面1aと、試薬層30の厚み方向において試薬層30と対向する対向面2aとで挟まれる隙間X(図2における空間Yと試薬層30の領域とを足した領域X)」とは、例えば、「(i)試薬層30が形成された試薬形成面1aと、(ii)試薬形成面1aを構成する各点を通り、試薬形成面1aに対して垂直な垂線と、第2の基材2との交点により形成される表面(対向面2a)と、を2面として有し、流路20内に存在する隙間」を意味する。
【0025】
血糖値測定試薬は、発色試薬と芳香族炭化水素化合物とのモル比(発色試薬:芳香族炭化水素化合物)が1:0.07~1:7.4の範囲であることが好ましい。このモル比の範囲の血糖値測定試薬を用いれば、血糖値測定チップ100に流入した血液の展開性を向上させることができる。ここで、「血糖値測定チップに流入した血液の展開性」もしくは「血液展開性」とは、血糖値測定チップ内において、試薬層30の第一端部側から第二端部側に向かって流入する血液が、空間YおよびXに流入する際に、血液と血糖値測定試薬とが均一に混合・溶解することを指す。更には、「血糖値測定チップに流入した血液の展開性が良い」とは、流路20を第一端部側から第二端部側に向かって流動する血液と、血糖値測定試薬とが混合・溶解する際に、血液の流動状態が乱れたりせず、所定の速度で血糖値測定試薬と溶解しながら第二端部まで進むことをいう。「血液の流動状態が乱れない」とは、流路断面において、流入する血液の先端が均一に流路20内を進むことを含む。前記芳香族炭化水素は、血糖値測定試薬中に配合される酵素1Uあたり1pmol~12pmolの比率で配合されていることが好ましい。試薬層30における血糖値測定試薬に含まれる後述の芳香族炭化水素の血糖値測定チップ1チップ当たりの添加量としては、芳香族炭化水素の2-ナトリウム塩として、0.238(μg/チップ)以上11.7(μg/チップ)以下が好ましく、0.238(μg/チップ)以上7.82(μg/チップ)以下がより好ましく、0.238(μg/チップ)以上3.911(μg/チップ)以下が特に好ましく、0.238(μg/チップ)以上0.952(μg/チップ)以下が最も好ましい。前記芳香族炭化水素の含有比、あるいは、血糖値測定チップ1チップ当たりの添加量を、前記好ましい範囲内、前記より好ましい範囲内、前記特に好ましい範囲内、又は前記最も好ましい範囲内とすることにより、より優れた血液展開性を得ることができると共に、血液と試薬との反応の速さを維持することができる。
【0026】
流路20を通過した血液が、試薬層30直上の空間Yに流入すると、試薬層30における血糖値測定試薬は速やかに血液に溶解する。このとき、試薬層30における血糖値測定試薬に含まれる後述の芳香族炭化水素の血漿中の濃度としては、5.25(mM)以上308(mM)以下が好ましく、12.5(mM)以上205.3(mM)未満がより好ましく、12.5(mM)以上50.0(mM)以下が特に好ましい。前記芳香族炭化水素の血漿中の濃度を、前記好ましい範囲内、前記より好ましい範囲内、前記特に好ましい範囲内、又は前記最も好ましい範囲内とすることにより、より優れた血液展開性を得ることができると共に、血液における血糖と試薬との反応の速さをより確実に維持することができる。
【0027】
<<試薬層30の製造方法>>
前記試薬層構造の製造方法は、少なくとも、塗布工程と、乾燥工程とを含み、必要に応じて、その他の工程を含む。
【0028】
-塗布工程-
前記塗布工程は、後述する血糖値測定試薬を含む塗布液(コート液)を塗布する工程である。
前記塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スプレー塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
-乾燥工程-
前記乾燥工程は、塗布された塗布液を乾燥する工程である。
前記乾燥工程における、乾燥温度及び乾燥時間としては、目的に応じて適宜選択することができる。
【0030】
<<血糖値測定試薬>>
前記血糖値測定試薬は、少なくとも、酵素と、発色色素(インジケータ)と、芳香族炭化水素と、を含有している。また、前記血糖値測定試薬は、さらに必要に応じて、電子受容体(メディエータ)、遷移金属塩等のその他の成分を含有してなる。
なお、血糖値測定試薬としては、血液中のD-グルコースと発色色素(例えば、後述するWST-4のようなテトラゾリウム塩)とが、直接、酵素(例えば、後述するグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH))から電子を受けとることで、分析対象物の量や濃度に応じて発色色素が発色するものも含む。
【0031】
-芳香族炭化水素-
前記芳香族炭化水素としては、少なくとも1個のスルホン酸基を有する芳香族炭化水素である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゼンスルホン酸ナトリウム(BS)(下記構造式(1)参照)、1,3-ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム(DSB)(下記構造式(2)参照)、1,3, 5-ベンゼントリスルホン酸三ナトリウム(下記構造式(3)参照)、ナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム(TSN)(下記構造式(4)参照)、アントラセン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム(下記構造式(5)参照)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、2個以上のスルホン酸基を有する芳香族炭化水素(例えば、1,3-ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム(DSB)、ナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム(TSN))が、血液と血糖値測定試薬との反応速度をより向上させることができる点で、好ましい。芳香族炭化水素は、血液のような水性液体には容易に溶解しないが、芳香族炭化水素における水素をスルホン酸基(イオン)で置換することで、芳香族炭化水素が血液に溶解しやすくなる。さらには、芳香族炭化水素が複数のスルホン酸基で置換されることで、前記芳香族炭化水素が血液に更に溶解しやすくなるとともに、界面活性能が適度に付与される。したがって、前記芳香族炭化水素は、血球を溶血させる溶血作用がないため、全血での測定に好適に用いることができる。
2個以上のスルホン酸基を有する芳香族炭化水素を血糖値測定試薬に添加すると、血糖値測定試薬と、血液との反応速度を格段に高めることができる。これは、2個以上のスルホン酸基を有する芳香族炭化水素を血糖値測定試薬に配合することで、血糖値測定試薬と血液との親和性が増すからである。血糖値測定チップにおいては、前記芳香族炭化水素の含有量を調整することで本願発明の効果が顕著に得られる。すなわち、血糖値測定チップに塗布された乾燥状態の血糖値測定試薬と血液とが、均一に血糖値測定試薬と混合・溶解すると同時に、速やかに血液中のグルコース量に応じた発色を得ることができる。また、芳香族炭化水素が有するスルホン酸基の数が多くても、安定性に悪影響は無い。
【0032】
【化1】
【0033】
【化2】
【0034】
【化3】
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】
発色色素1molに対する芳香族炭化水素のモル数としては、0.07mol~7.4molであることが好ましい。このモル比の範囲の血糖値測定試薬を用いれば、血糖値測定チップに点着した血液と血糖値測定試薬との反応速度を良好にすることができる。発色色素1molに対する芳香族炭化水素のモル数としては、0.075mol~7.4molであるのがより好ましい。また、発色色素1molに対する芳香族炭化水素のモル数としては、0.075mol~3.7molであるのが特に好ましい。このモル比の範囲の血糖値測定試薬を用いれば、0mg/dL~1200mg/dLの幅広い血糖値を測定することができるだけでなく、前記芳香族炭化水素の含有量が、好ましい範囲内、又は、より好ましい範囲内であると、血糖値測定試薬と血液との展開性および反応速度を確実に向上させることができる。
【0038】
-酵素-
前記酵素は、例えば、血液中のグルコースと反応して、グルコースから電子を引き抜く、などの役割を果たす。
前記酵素としては、グルコースを基質とする限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、グルコースオキシダーゼ(GOD)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存型グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH-FAD)が、好ましい。
【0039】
グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)の反応がスムーズに進むpH領域(即ち、至適pH領域)は、通常、中性付近(約pH6.5~7.3)であるが、酵素によって至適pH領域は異なる。本発明の血糖値測定試薬は、使用する酵素の至適pHや、その他の成分の安定性を考慮し、適宜pH調整される。
【0040】
前記酵素の血液検体反応時の濃度としては、特に制限はなく、目的とする血糖値測定範囲に応じて適宜選択することができるが、1U/μL以上が好ましく、4U/μL以上がより好ましく、8U/μL~20U/μLが特に好ましい。
前記血液検体反応時の濃度が、好ましい範囲内、より好ましい範囲内、又は、特に好ましい範囲内であると、速やかに反応を終えることができる。
【0041】
血糖値測定試薬に含まれる酵素の量をE(MU:メガユニット)とし、隙間Xの容積をB(L)とした場合において、比E/Bが2(MU/L)以上であることが好ましく、比E/Bが2(MU/L)以上11(MU/L)以下であることがより好ましい。
比E/Bが、好ましい範囲内であると、幅広い濃度の血糖値を、速やかに測定できる。比E/Bが、好ましい範囲内であると、幅広い血糖値を速やかに測定できるだけでなく、保存安定性が向上する。
また、血糖測定試薬に含まれる酵素の配合比率としては、酵素(1U):芳香族炭化水素(pmol)=1:1~1:12であることが好ましい。
【0042】
-発色色素-
前記発色色素(還元系発色試薬)は、例えば、酵素と分析対象物との反応によって生じた電子や過酸化水素を受け取って(還元されて)、分析対象物の量や濃度に応じて発色(呈色)する。
前記発色色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラゾリウム塩(例えば、テトラゾリウム塩(A)、WST-4、WST-1、WST-5、MTS、MTT)、リンモリブデン酸ナトリウム、インディゴカルメン、ジクロロインドフェノール、レサズリン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ベンゾチアゾイル基を有する、テトラゾリウム塩が好ましく、水に対する溶解性が200mM以上のテトラゾリウム塩がより好ましい。これにより、血糖値測定試薬と血液サンプルとの溶解速度が向上する。上記テトラゾリウム塩において、2-(6-メトキシベンゾチアゾリル)-3-(3-スルホ-4-メトキシ-フェニル)-5-(2、4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウム塩(テトラゾリウム塩(A))、2-(2-ベンゾチアゾリル)-3-(4-カルボキシ-2-メトキシフェニル)-5-[4-[(2-ソジオスルホエチル)カルバモイル]フェニル]-2H-テトラゾール-3-イウム(WST-4)が、発色スペクトルが良好で、水性液体に対する溶解性が高い点で、特に好ましい。これにより、血液サンプルと血糖値測定試薬との溶解性がよく、血液サンプルが全血の場合でも精度のよい検出が可能となる。
テトラゾリウム塩(A)の化学式を以下に示す。
【0043】
【化6】
式中 X=Naである。
【0044】
試薬層30中の前記発色色素の含有量としては、目的とする血糖値測定範囲に応じて適宜選択することができる。例えば、0mg/dL~1200mg/dLの幅広い血糖値を正確に測定する試薬とするためには、コート液濃度として、17mM以上配合するのが好ましく、17.3mM~55.6mM配合するのがより好ましい。0mg/dL~600mg/dLの血糖値を正確に測定する試薬とするためには、コート液濃度として、8.7mM以上配合するのが好ましく、8.7mM~28mM配合するのがより好ましい。
前記発色色素の含有量が、好ましい範囲内又はより好ましい範囲内であると、幅広い濃度の血糖値に応じた吸光度を、精度よく測定できる。更には、血糖値測定チップに血糖値測定試薬を塗布する際の製造効率が向上する。
【0045】
試薬層30における血糖値測定試薬に含まれる発色色素の総モル数をD(mmol)とし、測定部(試薬部)の容積をB(L)とした場合において、比D/Bが25.0(mM)以上540(mM)以下であることが好ましく、比D/Bが25.0(mM)以上160.4(mM)以下であることがより好ましい。
比D/Bが、好ましい範囲内であると、幅広い濃度の血糖値に対して、精度よく吸光度を測定することができる。
【0046】
-電子受容体(メディエータ)-
前記電子受容体(メディエータ)は、(i)酵素と血液中のグルコースとの反応を促進する、(ii)酵素がグルコースから引き抜いた電子を一旦受け取って発色色素に渡す、などの役割を果たす。必要に応じて、適宜、血糖値測定試薬に配合してもよい。
前記電子受容体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記電子受容体は、5-メチルフェナジニウムメチルスルファート(PMS)、1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルファート(mPMS)、NAD,FAD、PQQ、フェリシアン化カリウム、などが選択できる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルファート(mPMS)が、反応性、安定性ともに優れている点で、好ましい。
【0047】
-遷移金属塩-
前記発色色素がテトラゾリウム塩である場合、遷移金属塩(遷移金属イオン)とテトラゾリウム塩とを、キレート反応させ、キレート錯体を生成して発色させてもよい。遷移金属塩としては、水性液体(例えば、水、緩衝液、血液、体液)中でイオンを生成するものであれば、目的に応じて適宜選択することができるが、ニッケルやコバルトの塩化物、臭化物、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩が好ましい。
【0048】
(血糖値測定装置セット)
次に、本発明の一実施形態としての血糖値測定装置セットについて説明する。
本発明の一実施形態としての血糖値測定装置セットは、上述した血糖値測定チップと、該血糖値測定チップが装着され、血液中のグルコース成分を測定する血糖値測定装置とを備える。
以下、血液と血糖値測定試薬との反応生成物を透過した光を測定する透過型の血糖値測定装置を備える血糖値測定装置セットについて説明するが、本発明は、これに限定されるものでなく、例えば、前記反応生成物が吸収した光を測定する血糖値測定装置を備える血糖値測定装置セット、前記反応生成物から反射した光を測定する反射型の血糖値測定装置を備える血糖値測定装置セットであってもよい。
【0049】
図4は本発明の一実施形態に係る血糖値測定装置セット500を示す。血糖値測定装置セット500は、血糖値測定装置110と、血糖値測定チップ100と、を備えている。当該血糖値測定チップ100は血糖値測定装置110の先端部に装着される。血糖値測定装置110は、測定結果や操作内容などを表示するディスプレー111と、血糖値測定装置110の起動と終了を指示する電源ボタン112と、操作ボタン113と、血糖値測定チップ100を取り外す取外レバー114と、を備えている。ディスプレー111は、液晶またはLED等で構成される。血糖値測定装置110は、外部機器と通信可能であってもよい。
【0050】
図5は血糖値測定装置セット500の血糖値測定装置110の先端部と血糖値測定チップ100を別々に示す縦断面図である。血糖値測定装置110に血糖値測定チップ100を装着するため、血糖値測定装置110の先端に開口部21が形成された装着部22を設け、血糖値測定装置110の内部に血糖値測定チップ100を装着する装着孔23を区画する。また、血糖値測定装置110の内部には、血糖値測定チップ100に採取した血液のグルコース成分(血糖値)を測定するための光学測定部24を設ける。また、血糖値測定装置110は、測定光から得られる信号を処理し血糖値を算出する処理部25と、取外レバー114(図4参照)と連動し血糖値測定チップ100を取り外すイジェクトピン26と、を備えている。以下、各構成について説明する。
【0051】
測定の際は、まず、血糖値測定チップ100が装着孔23に装着される。装着作業はユーザにより手作業で行われる。図示はしないが、手作業より生ずる装着位置のバラツキを最小限にするために、好ましくは、血糖値測定チップ100を装着孔23内の所定位置に固定するためのロック機構等を設置する。
【0052】
光学測定部24は、検出対象に光を照射する照射部31と、検出対象を透過した光(例えば、検出対象が吸収した光、又は、検出対象から反射した光であってもよい)を測定光として受光する受光部32と、を備えている。本実施形態では、照射部31には、発光ダイオード(LED)を用いるが、ハロゲンランプ、レーザー等であってもよい。受光部32には、例えば、フォトダイオード(PD)を用いる。受光部32は受光した光を所定の信号に変換できるものであればよく、CCD、CMOS等であってもよい。なお、検出対象としては、測定対象である後述の発色色素生成物だけでなく、血液成分、血液と血糖値測定試薬との反応生成物、反応中間体、血液と未反応の血糖値測定試薬の何れかが含まれていてもよい。
【0053】
本実施形態では、照射部31は、少なくとも、第1の波長を有する光を発する第1の発光素子51と、第1の波長と異なる第2の波長を有する光を発する第2の発光素子52とを含む。ここで、第1の波長は、血糖値に応じた発色度合を検出するための波長であり、例えば600~900nmの波長帯にある。第2の波長は、血液中の赤血球濃度を検出するための波長であり、例えば510~590nmの波長帯にある。また、照射部31は、目的に応じてさらなる発光素子を含むことができる。
【0054】
照射部31と受光部32の配置および両者の位置関係を説明する。血糖値測定装置110の内部には、第1の空間41と第2の空間42とが形成されている。照射部31は当該第1の空間41に、受光部32は当該第2の空間42に、それぞれ配置されている。血糖値測定チップ100が血糖値測定装置110に装着されていない状態では、当該第1の空間41と、当該第2の空間42とは、装着孔23を挟んで対向する(図5参照)。血糖値測定チップ100が血糖値測定装置110に装着された状態では、当該第1の空間41と、当該第2の空間42とは、当該血糖値測定チップ100上の試薬層30が保持されている位置を挟んで対向する。なお、血糖値測定チップ100の測定部を光学測定する際、光路長を一定にするために、照射部31は、照射光33が血糖値測定チップ100の底面に垂直に照射できる位置に配置されるのが好ましい。
【0055】
図示はしないが、照射部31に白色を照射するハロゲンランプを用いる場合は、特定の波長のみを照射光33として抽出するために分光フィルタを設ける方法であってもよい。また、低エネルギーの照射で有効に実施するために、集光レンズを備える方法も好適である。
【0056】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例
【0057】
(実施例1)
<試薬水溶液(コート液)の調製>
まず、酵素としてのグルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)10(MU/L:メガユニット/リットル)~11(MU/L:メガユニット/リットル)と、反応促進剤(芳香族炭化水素)としての1,3-ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム(DSB、Alfa Aear製)64.1mMと、発色色素としてのテトラゾリウム塩(A)(物質名:2-(6-メトキシベンゾチアゾリル)-3-(3-スルホ-4-メトキシ-フェニル)-5-(2、4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウム塩、テルモ製)56mMと、キレート剤としてのニッケルイオン207mMと、pH調整剤としての水酸化ナトリウム水溶液(適量)とを含む試薬水溶液(pH6.5~7)を調製した。
【0058】
<血糖値測定チップの作製>
調製した試薬水溶液を、ステージ上に載置されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム40(製造会社名:東レ株式会社、商品名:ルミラーT60、厚み188μm、8mm×80mm)上に、インクジェット(マイクロジェット社製、Labojet-500Bio)を用いて、±5μm以内のパターニング精度および1pL~1000pLの吐出液量のヘッドで塗布し、25℃で10分間乾燥した。乾燥後、試薬層30が形成されたPETフィルム40を所定の大きさに切り出してフィルム片40aを作製した(図6(a))。このフィルム片40aには、1個あたり0.6489μLのコート液が塗布された。このフィルム片40aには、1個あたり、23.8μgの有機酸ニッケル、25.0μgの発色色素(テトラゾリウム塩(A))、8.6μgのFAD-GDH(803U/mg)、11.7μgのDSBが塗布された。なお、血糖値測定チップ1個あたりの試薬質量は、コート液を調製する際に添加した各試薬成分の質量と、調製したコート液の最終容量(188μL)から、算出した。
第2基材2としての親水処理ポリエステルフィルム(製造会社名:3M社、商品名:親水処理ポリエステルフィルム9901P、厚み:100μm)の両側に、両面テープ(製造会社名:日東電工、商品名:5605BN、厚み:50μm)がスペーサ及び接着部3,4として形成されたチップ土台70に、フィルム片40aを、試薬層30がチップ土台70と対向し、且つ、流路20の中心となるように貼り付けた(図6(b))。フィルム片40aを貼り付ける際には、フィルム片40aが両面テープに所定量埋め込まれるように押圧した。さらに、フィルム片40aが貼り付けられたチップ土台70に、前述の親水処理ポリエステルフィルムに両面テープ(製造会社名:3M社、商品名:ポリエステルフィルム基材、両面粘着テープ9965、厚み:80μm)が貼り付けられたフィルム片40bを被せて(図6(c))、図1図2および図3に示す血糖値測定チップ100を作製した(図6(d))。
ここで、作製した血糖値測定チップ100における試薬層30の血糖値測定試薬に含まれる芳香族炭化水素の総モル数Aは、0.041×10-3(mmol)であった。
作製した血糖値測定チップ100は、流路部20aと測定部(試薬部)20bとを有する(図3)。流路部20aにおいて、流路長さL1は9mmであり、幅Wは1.5mmであり、厚みt1は0.13mmであった。測定部20bにおいて、試薬長さL2は3mmであり、幅Wは1.5mmであり、厚みt2は0.05mmであり、容積Bは0.225×10-6(L)であった。ここで、測定部の容積は、流路20を画成する内壁のうち、血糖値測定試薬からなる試薬層30が形成された試薬形成面1aと、試薬層30の厚み方向において試薬層30と対向する対向面2aとで挟まれる隙間X(即ち、血糖値測定試薬と血液とが溶解状態となる領域X)の容積Bである。以上より、A/Bは、184.8mMであった。
【0059】
<血液検体の調製>
血液(全血、ヘマトクリット値(Ht)40)に、高濃度のグルコース溶液(40g/dL)を添加して、グルコース濃度(BG)が100mg/dLの血液検体(BG100)を調製した。また、対照として、血液(全血、ヘマトクリット値(Ht)40)に、グルコース分解酵素を添加して、グルコース濃度(BG)が0mg/dLの血液検体(BG0)を調製した。
【0060】
<血液展開性評価>
調製した血液検体3mm3を、作製した血糖値測定チップに点着し、目視で下記評価基準により血液展開性評価を行った。結果を表1に示す。なお、環境温度は5℃(低温条件)と25℃(通常)と40℃(高温条件)との場合で行った。
<<評価基準>>
○:良好(全く気泡が発生しないで、一様に展開)
△:許容範囲(わずかに気泡が発生)
×:不良(気泡、残空領域が発生)
【0061】
<反応速度評価>
調製した血液検体3mm3を、作製した血糖値測定チップに点着し、血糖値測定試薬が血液検体に溶解した状態で、紫外可視分光光度計を用いて吸光度測定(測定波長:650nm及び900nm)を行い、下記評価基準により反応速度評価を行った。結果を表1及び図7に示す。
なお、図7は、発色速度(タイムコース)を示すグラフであり、縦軸は吸光度指標(15秒後の正味発色量を100%とした場合の正味発色量)を、横軸は点着後の時間(秒)を示す。なおここで、「正味発色量」とは、同じヘマトクリット値の血液において、所望の血糖値(例えば、100mg/mL)の血液を、血糖値測定試薬と反応させた場合の吸光度から、血糖値0mg/dLの血液を、血糖値測定試薬と反応させたときの吸光度を差し引いた、正味の発色量である。また、発色量の計算に用いた吸光度は、発色以外の光学的なばらつきを補正するため、650nmの吸光度から900nmの吸光度を引いた値を用いた。650nmの吸光度は、グルコースに由来する発色量と散乱光によるノイズを含む。900nmの吸光度は散乱光による650nmのノイズの量を反映している。
<<評価基準>>
○:良好(反応開始から、15秒間後の吸光度指標を100%としたときに、9秒間後の吸光度指標が90%以上であるもの。反応開始点は、試薬部空間が血液で満たされたことを画像解析にて検出することで特定した。)
×:不良(上記良好○以外)
【0062】
(実施例2)
実施例1において、試薬水溶液における反応促進剤(芳香族炭化水素)としてのDSBの濃度(DSBコート液濃度)を21.4mMとして、比A/Bの値を61.6mMとしたこと以外は、実施例1と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。評価結果を表1及び図7に示す。
【0063】
(実施例3)
実施例1において、試薬水溶液における反応促進剤(芳香族炭化水素)としてのDSBの濃度(DSBコート液濃度)を10.7mMとして、比A/Bの値を30.8mMとしたこと以外は、実施例1と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。評価結果を表1及び図7に示す。
【0064】
(実施例4)
実施例1において、下記測定方法により測定した各成分の比A/Bの値が、それぞれ、DSB:15.0(mM)、テトラゾリウム塩A(発色色素):50(mM)、ニッケルイオン:250(mM)、FAD-GDH:11.2(MU/L)となるように試薬水溶液(コート液)を調製したこと以外は、実施例1と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。なお、試薬水溶液(コート液)のDSB濃度は1.3mMであった。評価結果を表1及び図7に示す。
なお、15秒後の吸光度を100%としたときの9秒後の吸光度は、97.3%であった。
【0065】
<比A/Bの値の測定方法>
組み立て済みのチップに、1000μLのRO水を正確に加えて血糖値測定試薬を溶解させて水溶液を回収する。その溶液を、サンプル液としてUPLC(超高速高分離液体クロマトグラフィーSHIMAZU NEXERA X2、株式会社島津製作所製)にて発色色素を定量する。
次に、UPLCによる定量結果から、サンプル液中の発色色素の濃度を求める。
さらに、測定試薬と血液とが溶解状態となる領域の空間(容積B(L))に、RO水(グルコース濃度0mgの水)が流入して溶解した際の、発色試薬の濃度を算出する。
なお、発色色素以外の各成分に関しては、測定試薬のコート液組成(各成分の濃度比)に基づいて、算出する。
【0066】
(実施例5)
実施例4において、上記測定方法により測定したDSBの比A/Bの値が7.5(mM)となるように試薬水溶液(コート液)を調製したこと以外は、実施例4と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。なお、試薬水溶液(コート液)のDSB濃度は2.6mMであった。評価結果を表1及び図7に示す。
なお、15秒後の吸光度を100%としたときの9秒後の吸光度は、95.8%であった。
【0067】
(実施例6)
実施例4において、上記測定方法により測定したDSBの比A/Bの値が3.75(mM)となるように試薬水溶液(コート液)を調製したこと以外は、実施例4と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。なお、試薬水溶液(コート液)のDSB濃度は5.2mMであった。評価結果を表1及び図7に示す。
なお、15秒後の吸光度を100%としたときの9秒後の吸光度は、94.1%であった。
【0068】
(比較例1)
実施例1において、試薬水溶液における反応促進剤(芳香族炭化水素)としてのDSBの濃度(コート液濃度)を0mMとして、比A/Bの値を0mMとしたこと以外は、実施例1と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。評価結果を表1及び図7に示す。
【0069】
(実施例7)
実施例1において、検体としての血液のヘマトクリット値(Ht)を60としたこと以外は、実施例1と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0070】
(実施例8)
実施例7において、試薬水溶液における反応促進剤(芳香族炭化水素)としてのDSBの濃度(コート液濃度)を42.7mMとして、比A/Bの値を123.2mMとしたこと以外は、実施例7と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0071】
(実施例9)
実施例7において、試薬水溶液における反応促進剤(芳香族炭化水素)としてのDSBの濃度(コート液濃度)を21.4mMとして、比A/Bの値を61.6mMとしたこと以外は、実施例7と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0072】
(実施例10)
実施例8において、検体としての血液のヘマトクリット値(Ht)を70としたこと以外は、実施例8と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0073】
(実施例11)
実施例9において、試薬水溶液における反応促進剤(芳香族炭化水素)としてのDSBの濃度を21.4mMとして、A/Bの値を61.6mMとしたこと以外は、実施例9と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0074】
(実施例12)
実施例4において、検体としての血液のヘマトクリット値(Ht)を70としたこと以外は、実施例4と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0075】
(実施例13)
実施例5において、検体としての血液のヘマトクリット値(Ht)を70としたこと以外は、実施例5と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0076】
(実施例14)
実施例6において、検体としての血液のヘマトクリット値(Ht)を70としたこと以外は、実施例6と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0077】
(実施例15)
実施例1において、検体としての血液のヘマトクリット値(Ht)を20としたこと以外は、実施例1と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0078】
(実施例16)
実施例1において、検体としての血液のヘマトクリット値(Ht)を0としたこと以外は、実施例1と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0079】
(実施例17)
実施例1において、検体としての血液のグルコース濃度(BG)を400mg/dLとしたこと以外は、実施例1と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0080】
(実施例18)
実施例1において、検体としての血液のグルコース濃度(BG)を800mg/dLとしたこと以外は、実施例1と同様に、試薬水溶液(コート液)の調製、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0081】
(実施例19)
実施例18において、試薬水溶液における反応促進剤(芳香族炭化水素)として、DSBを用いて試薬水溶液の調製を行う代わりに、ナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム(TSN、東京化成工業株式会社製)を用いて試薬水溶液の調製を行ったこと以外は、実施例18と同様に、血糖値測定チップの作製、血液検体の調製、血液展開性評価、及び反応速度評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
比A/Bが3.7(mM)以上184.8(mM)以下の範囲内である血糖値測定チップを用いた実施例1~19と、比A/Bが3.7(mM)以上184.8(mM)以下の範囲外である血糖値測定チップを用いた比較例1とを比較することにより、比A/Bが3.7(mM)以上184.8(mM)以下の範囲内である血糖値測定チップを用いることで、血液と血糖値測定試薬との展開性に優れ、血液と血糖値測定試薬との反応の速さを維持することが可能であることが分かった。比A/Bが3.7(mM)以上123.3(mM)以下の範囲内である血糖値測定チップを用いることで、より展開性を高めながら、血液と血糖値測定試薬との反応の速さを維持することができた。比A/Bが3.7(mM)61.6(mM)以下の範囲内である血糖値測定チップを用いることで、通常、ヘマトクリット値が高いとみなされる血液であっても、良好な展開性を持ち、かつ、血液と血糖値測定試薬との反応の速さを維持することができた。比A/Bが3.7(mM)以上15.0(mM)以下の範囲内である血糖値測定チップを用いることで、特にヘマトクリット値が高い血液を、過酷な高温条件下で測定する場合であっても、展開性に優れ、血液と血糖値測定試薬との反応の速さを維持することができた。
以上のように、本発明の血糖値測定試薬、血糖値測定チップ及び血糖値測定セットは、ヘマトクリット値(Ht)が高い血液が血糖値測定チップに供給された場合であっても、血液と血糖値測定試薬との混合・溶解速度にバラつきが起こりくいため、流路内において、気泡の発生を制御することができた(血液と血糖値測定試薬との展開性に優れていた)。加えて、血糖値測定時には、血液と血糖値測定試薬とを速やかに反応させ、検出することができた。換言すれば、血糖値測定試薬が乾燥状態である血糖値測定チップにおいて、流入する血液のヘマトクリット値や環境温度にかかわらず、血糖値測定試薬を血液に速やかに溶解させながら流入する速度を高め、血液と血糖値測定試薬との均一に混合することができた。加えて、血液と血糖値測定試薬との反応速度も良好であった。以上から、迅速で正確な血糖値測定が実現できた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、血糖値測定チップ及び血糖値測定装置セットに関し、特に、ヘマトクリット値(Ht)が高い血液が供給された場合であっても、血液展開性に優れ、血液と試薬との反応の速さを維持することが可能な血糖値測定チップ、及び、該血糖値測定チップを備える血糖値測定装置セットに関する。
【符号の説明】
【0085】
1:第1基材
1a:試薬形成面
2:第2基材
2a:対向面
3:接着部
4:接着部
10:供給口
20:流路
20a:流路部
20b:測定部(試薬部)
21:開口部
22:装着部
23:装着孔
24:光学測定部
25:処理部
26:イジェクトピン
30:試薬層(試薬)
31:照射部
32:受光部
33:照射光
40:PETフィルム
40a:フィルム片
40b:フィルム片
41:第1の空間
42:第2の空間
51:第1の発光素子
52:第2の発光素子
70:チップ土台
100:血糖値測定チップ
110:血糖値測定装置
111:ディスプレー
112:電源ボタン
113:操作ボタン
114:取外レバー
500:血糖値測定装置セット
X:隙間(領域)
t1:厚み
t2:厚み
L1:流路長さ
L2:試薬長さ
W:幅
Y:空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7