(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】パンクレアチンおよびリパーゼ含有コーティングを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/46 20060101AFI20221129BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20221129BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221129BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20221129BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221129BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221129BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20221129BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20221129BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
A61K38/46
A61K9/28
A61K9/20
A61K9/16
A61K9/14
A61K47/38
A61P1/14
A61P1/18
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2019547655
(86)(22)【出願日】2018-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2018055351
(87)【国際公開番号】W WO2018158465
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】102017104482.5
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521327699
【氏名又は名称】ノルドマルク ファーマ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ジャン リューデマン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード フューラー
(72)【発明者】
【氏名】ヨルン トン
【審査官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-170463(JP,A)
【文献】特表2011-508755(JP,A)
【文献】特表2012-516289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00 - 38/58
A61K 9/00 - 9/72
A61K 31/33 - 33/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のリパーゼを含有するコーティングを有するパンクレアチンを含む
、消化障害の予防および/または処置のための医薬組成物であって、前記コーティングが塗布されるパンクレアチンを含有するコアを含み、前記コーティング中に使用される前記少なくとも1種のリパーゼが、前記パンクレアチン中に存在する前記リパーゼとは異なるリパーゼであ
り、
前記少なくとも1種のリパーゼが、ブルルリパーゼである医薬組成物。
【請求項2】
耐胃液性コーティングがない、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
錠剤、マイクロ錠剤、速崩壊性マイクロ錠剤、粒剤、ペレット剤、および粉体からなる群から選択されるコアを含む、請求項1
または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
速崩壊性マイクロ錠剤であるコアを含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記コーティングが、ブルルリパーゼおよび結合剤を含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記コーティングが、ブルルリパーゼおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
コーティング中において、10,000から500,000TBU/gまでの範囲の脂肪分解活性を示す、請求項1から
6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の組成物を含む
、消化障害の予防および/または処置のための医薬製品。
【請求項9】
嚢胞性線維症の患者における膵外分泌機能不全の予防および/または処置のための、請求項
8に記載の医薬製品。
【請求項10】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の医薬組成物を製造する方法であって、
- パンクレアチンを用意するステップと、
- 少なくとも1種のリパーゼを含有する前記コーティングのためのコーティング組成物を用意するステップと、
- 前記コーティングのための前記コーティング組成物で前記パンクレアチンをコーティングするステップと
を含
み、
前記少なくとも1種のリパーゼが、ブルルリパーゼである方法。
【請求項11】
前記パンクレアチンが、パンクレアチン含有速崩壊性マイクロ錠剤の形態で用意され、前記コーティングのための前記コーティング組成物が、ブルルリパーゼ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および他の補助剤の水溶液である、請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクレアチンを含む医薬組成物に関し、この医薬組成物は、少なくとも1種のリパーゼを含有するコーティングを有する。少なくとも1種のリパーゼは、ブルルリパーゼ(burlulipase)が好ましい。本発明は、そのような医薬組成物を含む医薬製品にも関する。そのような医薬組成物を生産する方法もまた、本発明の一部を形成する。
【背景技術】
【0002】
膵臓は、内分泌作用および外分泌作用の両方を有する腺である。膵臓は、十二指腸(外分泌腺)へと放出され、腸内で、食物中の脂肪、炭水化物、およびタンパク質を、腸粘膜により吸収できる形態へと分解する消化酵素を生産する。通常、食物の3つの基礎成分を消化するために必要な3つの酵素クラス(脂肪のためのリパーゼ、炭水化物のためのアミラーゼ、タンパク質のためのプロテアーゼ)に由来することが好ましい酵素は、「消化酵素」と称される。したがって、健康な人では、これらは、十分な量で外分泌性の膵臓分泌液中に含有されている。
【0003】
例えば、外分泌部に影響を及ぼす障害は膵炎である。膵炎、または膵臓炎では、放出された消化酵素は、臓器の自己消化をもたらし、したがって重度の炎症反応をもたらす。膵臓酵素の不適当な生産は、膵外分泌機能不全として公知である。膵外分泌機能不全とは、消化酵素の生産が減少することであり、その結果として、食物がもはや十分な程度まで分解されないこともある。これは、例えば、慢性膵炎または膵臓癌における膵臓組織の欠損による後天性のものであることもあるが、嚢胞性線維症のような遺伝的に引き起こされた障害の場合、先天性のものであることもある。膵外分泌機能不全は、脂漏症(脂肪便)および他の症状と共に、消化の問題をもたらし、一般的に、食事によるパンクレアチンの投与を介して治療される。
【0004】
嚢胞性線維症は、全ての外分泌腺分泌の組成が変更される遺伝性の常染色体劣性代謝障害である。第7染色体(CFTR遺伝子)上の変化した遺伝子が原因で、細胞の塩および水の輸送が妨害される。したがって、例えば、膵臓によって生産された消化液は、通常よりも粘着性であり、腺の排出管を遮断する。消化液の蓄積は、膵臓への刺激作用をもたらし、最終的には損傷をもたらす。さらに、腸における消化酵素の不足により、栄養素の吸収がより困難になる。その結果が、栄養失調および成長障害である。嚢胞性線維症により誘発された膵外分泌機能不全は、通常は、パンクレアチンの投与による公知の酵素療法により治療される。
【0005】
活性物質「パンクレアチン」は、ヨーロッパ薬局方(Ph.Eur.)では「膵臓粉体」として、米国薬局方(USP)では、「パンクレアチン」または「パンクレリパーゼ」としてモノグラフが書かれており、ブタ膵臓からの抽出により得られ、活性消化酵素の混合物を含有している。パンクレアチンの主成分は、リパーゼ、アミラーゼ、および様々なプロテアーゼである。パンクレアチンの最も重要な治療成分はリパーゼであり、リパーゼは、食物の脂肪を分解し、患者の栄養状態を改善し、同時に、脂肪便のような、不十分な脂肪消化の不快な副作用を予防するのを助ける。
【0006】
しかしながら、特に膵リパーゼの特異的酵素活性は、比較的低い。治療の実施において、これにより、毎食ごとに、相当数の、一般的に極めて大きなパンクレアチン含有薬物製剤を飲み込まなければならないという、患者にとって不快な必要性が生じる。このことは、それ自体が根本的な負担であり、既に重大な障害をもつ患者の生活の質におけるさらなる制約をもたらす。人工栄養患者、小児、幼児、および高齢の患者を含む、大きな薬物製剤を飲み込むことができない、または飲み込みたくない患者の場合には、投与に対する、考慮すべきさらなる障害が存在する。固形製剤の粉砕は、通常はそのような場合における確立された選択肢ではあるが、保護用の耐胃液性フィルムの破損につながり、結果として、酵素が無防備に酸性の胃液に送達され、この環境において不活性になり得るので、ここでは避けなければならない。
【0007】
これらの場合、例えば、膵臓の酵素調製物を含有するカプセル剤を開け、その中に存在する、固体の耐胃液性にコーティングされた多粒子ユニットを、食事、例えばリンゴピューレの上またはその中に散らす。そのような経口摂取の間、機能的な耐胃液性コーティングの完全性は、咀嚼することにより破壊される可能性があり、酵素が放出され、変性し、したがって間違った時点、特に胃を通過する前に不活性化し得る。加えて、個々の多粒子ユニットは、チーク・ポケットに入り込んだままとなる可能性があり、粘膜への刺激作用および損傷を生じさせ、最悪の場合、潰瘍を引き起こす。
【0008】
さらに、膵リパーゼは、酸に不安定であることが知られている。したがって、パンクレアチン含有医薬製品には、一般的に、胃酸から酵素を保護するために耐胃液性コーティングが設けられる。パンクレアチンの投与の一般的に利用可能な形態は通常、耐胃液性フィルムコーティング錠、マイクロ錠剤、マイクロペレット剤/粒剤、マイクロ糖衣錠、およびカプセル剤、ならびに粉体である。胃を通過した後、小腸に進入する際のpH値の上昇により、耐胃液性保護フィルムは溶解し、その後、食物塊中で効果を発揮することができる活性物質を放出する。パンクレアチンを含有する医薬製品は、小腸内で作用可能なように、摂取される食物と共に小腸に達するように、食事と共に服用されなければならない。
【0009】
この公知の療法の有効性を改善するために、患者に、例えば、胃酸分泌を阻害するために、プロトンポンプ阻害剤(PPI)またはH2-受容体アンタゴニストなどのさらなる酸抑制薬を与えるのは通例であり、頻繁に必要とされる。胃において、およびそれに続く腸管腔において、酸抑制薬は、高いpH値をもたらし、したがって、通常は機能的に耐胃液性にコーティングされたパンクレアチン製品からのより良好な活性物質の放出をもたらす。しかしながら、長期の使用において、酸抑制薬は、場合によっては、骨粗鬆症の発生または心筋梗塞のリスクの増加などの慢性損傷を伴う、相当な副作用を有する。
【0010】
膵臓のリパーゼ以外のリパーゼの使用が、既に提案されている。特許文献1は、消化障害、特に、膵炎および嚢胞性線維症の治療のためのブルルリパーゼの液体製剤を開示している。ブルルリパーゼ(国際一般名;INN)は、細菌種であるイネ苗立枯細菌病菌(Burkholderia plantarii)のリパーゼである。ブルルリパーゼは、トリアシルグリセロールアシルヒドロラーゼ(EC3.1.1.3)であり、イネ苗立枯細菌病菌およびイネもみ枯細菌病菌(Burkholderia glumae)により生産されたリパーゼに相当するアミノ酸配列を有する。ブルルリパーゼは、非組み換え型のグラム陰性細菌であるイネ苗立枯細菌病菌が生産株として使用される、古典的な発酵プロセスによって生産される。純粋なブルルリパーゼは、3,500TBU/mg(1ミリグラムのタンパク質当たりのトリブチリン(tributyrine)単位)より高い比活性を示すこともある。この高い脂肪分解活性により、ブルルリパーゼは、健康な人々および病気の人々における消化性能をサポートするのに特に適切である。ブルルリパーゼは、高い比活性と共に、非常に高活性な物質密度で含有させることができ、結果として、少量の物質(すなわち、小さな質量または小さな溶液体積)のみを投与すればよい。しかしながら、ブルルリパーゼは、これまで医薬製品におけるその実際の使用を妨げてきた欠点を有する。それは、様々な条件下で不安定であるということである。例えば、その活性は、保管中に非冷却液体中で減少し、ブルルリパーゼを含有する組成物の錠剤化は、活性の許容不可能な損失をもたらす(未公表の結果)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2010/085975号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第2295039号明細書
【文献】独国特許出願公開第3248588号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0583726号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0436110号明細書
【文献】欧州特許第2295039号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】Erlanson,Ch.およびBorgstrom,B.:「Tributyrine as a Substrate for Determination of Lipase Activity of Pancreatic Juice and Small Intestinal Content」;Scand.J.Gastroent.5,293-295(1970)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、消化障害の予防および/または処置、特に膵外分泌機能不全の予防および/または処置に適した、固体形態の医薬製品を提供することである。この処置は、嚢胞性線維症の患者の処置を含む。特に、これらの医薬製品は、これらの可能性のある障害の予防および/または治療を改善するべきである。特に、胃酸の分泌を阻害するか、または胃および/もしくは十二指腸の酸を調節するための薬の追加投与が不必要となるべきか、または少なくともそれらの投与を減少させることが可能であるべきである。加えて、その薬は、小児、幼児、および高齢者のような、大きな薬物製剤を飲み込むのが困難な患者への投与に適切であるべきである。投与するための製剤を、食物との混合により有効性が損なわれることなく食物と混合することも可能であるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
医薬組成物
本発明の1つの態様は、パンクレアチンを含む医薬組成物であり、この医薬組成物は、少なくとも1種のリパーゼを含有するコーティングを有することを特徴とする。ここで、少なくとも1種のリパーゼを含有するコーティングを有するパンクレアチンを含む医薬組成物が好ましく、ここで、この医薬組成物は、コーティングが塗布される、パンクレアチンを含有するコアを含み、コーティング中に使用される少なくとも1種のリパーゼは、パンクレアチン中に存在するリパーゼとは異なるリパーゼであることを特徴とする。そのような組成物の効果は、パンクレアチンの従来の投与と比較して、コーティング中のリパーゼの量を、医薬組成物中のリパーゼの組み合わせ活性が脂肪分解活性の要件を満たすのに十分であるような手法で選択できるものである。パンクレアチンの脂肪分解活性は、しばしば不十分であり、大量のパンクレアチンの投与、または薬の追加投与によって確保されなければならない。しかしながら、可能な最大量のパンクレアチンを投与しても、十分な脂肪分解活性が保証されないことは珍しいことではない。この問題は、コーティングの形態で適用される、少なくとも1種のさらなるリパーゼの使用によって解決できる。
【0015】
リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼは、予め定義された比率で、パンクレアチン中に存在する。パンクレアチンは、一般的かつ可能な限り、患者に十分なリパーゼが提供されるように服用される。プロテアーゼおよびアミラーゼが、一般的に、パンクレアチン中に過度に存在するので、これらはしばしば過剰服用される。本医薬組成物では、少なくとも1種のさらなるリパーゼと組み合わせて、より少ない量(質量)のパンクレアチンを投与することにより、リパーゼの、プロテアーゼおよびアミラーゼに対する比率を最適に調整でき、リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼの、患者に対する適切な提供を保証できる。医薬製品の絶対量(質量)は、これにより低減される。これにより、小児、幼児、ならびに高齢および寝たきりの患者だけでなく、大量の医薬製品を摂取するのが困難な患者の場合の、服薬遵守および処置の成功を高め、投与の成功も可能とする。加えて、パンクレアチンからのリパーゼの空間的な分離は、リパーゼの活性がパンクレアチンの酵素によって影響を受けないことを意味する。特に、プロテアーゼによる分解は起こらない。一方、例えば、粒子の混合物とは対照的に、コーティングを使用することにより、コーティングにおけるパンクレアチンおよび少なくとも1種のリパーゼの分離は起こらない。
【0016】
コーティング中の少なくとも1種のリパーゼの活性は、in vivoで、胃酸の影響に対して安定していることが好ましい。特に、このリパーゼは、パンクレアチンのリパーゼよりも、胃酸の影響に対してより安定していることが好ましい。コーティング中に使用される少なくとも1種のリパーゼは、パンクレアチン中に存在するリパーゼとは異なるリパーゼであることが好ましい。特に、このリパーゼは、微生物のリパーゼであることが好ましい。微生物のリパーゼは、大規模に容易に生産でき、ヒトに有害な微生物夾雑物を含有しないことを保証できる。少なくとも1種のリパーゼは、細菌のリパーゼであることが非常に特に好ましい。通例、細菌のリパーゼは、パンクレアチンよりも高い脂肪分解活性を有し、より酸安定性である。
【0017】
少なくとも1種のリパーゼは、ブルルリパーゼであることが非常に特に好ましい。ブルルリパーゼの高い比活性のために、パンクレアチンの量に対して少ない量(質量)のブルルリパーゼの使用は、適切な脂肪分解活性を確保するのに十分である。さらに、ブルルリパーゼの活性は、胃酸の影響に耐性がある。錠剤などのブルルリパーゼの固形製剤の生産は、一般的に、ブルルリパーゼの活性の大きな損失と関連している。典型的には、使用されるブルルリパーゼの本来の活性(TBU単位で測定される)の約60%のみが錠剤に残り、しばしば60%未満でさえある。活性の損失の程度は、プロセス条件にも依存する。同時に、ブルルリパーゼは、錠剤に使用される一部の賦形剤による影響を受けやすいと考えられる。活性の損失は非常に大きく、医薬製品としてのそのような錠剤の使用は一般的に不可能である。2つの異なるバッチ間の活性の差が非常に大きいことがあるので、なおさらそうである。
【0018】
しかしながら、驚くべきことに、コーティング中にブルルリパーゼを含有している固形の医薬組成物を生産することが可能なことを示すことができた。本発明による医薬組成物の生産では、驚くべきことに、ブルルリパーゼは、不活性化されないか、またはわずかな程度のみ不活性化される。その活性は、異なるバッチでも再現可能である。さらに、室温で保管された場合、本発明による医薬組成物はまた、驚くべきことに、安定している。本発明による組成物の生産では、ブルルリパーゼ活性の損失は、本発明による医薬組成物の実際の使用が可能になるほど小さい。
【0019】
本発明による医薬組成物は、容易に生産でき、医薬製品の、通常の期間にわたる室温での保管を可能とする。数年間保管された場合でさえ、その中に含有されるリパーゼの活性は、薬学的に許容可能な程度までしか減少しない。リパーゼの人為的な安定化もまた不要である。結晶リパーゼの使用は不必要となる。リパーゼの架橋もまた必要ではない。したがって、本発明による医薬組成物は、その中に含有されるリパーゼが化学修飾されていないことを特徴とすることが好ましい。また、その中に含有されるリパーゼが、結晶形態で存在せず、すなわち、非結晶であることを特徴とすることが好ましい。特に、リパーゼは、化学修飾されておらず、非晶形で存在することが好ましい。この段落の実施形態は、特にブルルリパーゼに適用される。
【0020】
パンクレアチンとして、本発明では、パンクレアチンのあらゆる固形の医薬調製物を使用できる。特に、本発明による医薬組成物は、コーティングが塗布されるパンクレアチンを含有するコアを含むことが好ましい。これは、本発明による医薬組成物を生産するために、コアとしての、以前から公知の医薬製品およびそれらの前駆体の使用を可能とする。実施形態の全ての形態では、リパーゼ、および特にブルルリパーゼの割合は、コーティングの層の厚さによって調整でき、パンクレアチンと、リパーゼ、特にブルルリパーゼとの間の、様々な量の比率を設定することができる。
【0021】
本発明による医薬組成物は、耐胃液性コーティングを備えないこともある。このことは好ましい。耐胃酸性コーティングは、パンクレアチンに含有されるリパーゼが胃液によって分解されるので、実際には、パンクレアチンを含有する従来の医薬製品に不可欠である。耐胃液性コーティングは、十二指腸で通常優勢なpH値で溶解され、パンクレアチンを放出するように調合される。逆説的に言えば、消化障害を処置するためのパンクレアチンの効果は、したがって、消化の少なくとも一部、すなわち、胃およびとりわけ十二指腸のpHの調節が円滑に機能するという事実に基づく。しかしながら、これは、多くの患者においてそうではないか、常にそうとは限らない。十二指腸は、しばしばpH値が低すぎ、このことは、パンクレアチンの酵素が放出されない、または完全にもしくはちょうど良いタイミングで放出されないことを意味する。pH調節薬を投与しても、適切な信頼性をもって常にこれを予防できるとは限らない。しかしながら、それらの投与は、しばしば相当な副作用に関連する。本発明による医薬組成物は、胃酸との接触においても安定している、少なくとも1種のリパーゼを含有することが好ましい。したがって、耐胃液性コーティングは必要ではない。したがって、コーティングのリパーゼの放出、およびパンクレアチンのリパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼの放出は、分解が既に胃で開始され、適切な消化を促進することを確かなものにする。パンクレアチンのリパーゼの胃における不活性化は、コーティング中の大量の少なくとも1種のリパーゼにより、容易に補うことができる。したがって、本発明による医薬組成物は、胃および/または十二指腸における酸調節障害を有する患者においても、消化酵素の適切な供給を保証する。胃の一時的な過酸性化、または強酸性もしくは強アルカリ性の食物はまた、その効果に負の影響を及ぼさない。したがって、耐胃液性コーティングを備えない本発明による医薬組成物は、胃および十二指腸に含有される酸に関して、パンクレアチンの欠点を解決できる。適用される細菌のリパーゼは、酸安定性であるので、十分な脂肪分解活性を確保し、かつ酸調節のための薬をさらに投与することを不必要なものとするか、またはそれらを投与する必要性を減少させる。驚くべきことに、本発明による医薬組成物の投与では、胃酸分泌を阻害する薬の追加投与が、一般的に、不要になることもある。このように、これらの医薬製品に他の場合では関連する、時には重い副作用を予防できる。加えて、消化酵素は、既に胃内で作用し始め、これにより消化を改善できる。
【0022】
しかしながら、本発明による医薬組成物はまた、耐胃液性コーティングを有することもある。この耐胃液性コーティングは、同時に、少なくとも1種のリパーゼを含有できる。しかしながら、少なくとも1種のリパーゼはまた、さらなるコーティングに、または両方のコーティングに含有されてもよい。耐胃液性コーティングが設けられる本発明による医薬組成物の実施形態の形態は、高度なリパーゼ活性を示し、通常の条件下で保管される場合、安定している。
【0023】
本発明による医薬組成物の実施形態のさらなる形態では、パンクレアチン含有コアは、少なくとも1層の耐胃液性コーティングにより包まれ、その上に、順に、少なくとも1種のリパーゼを含有するさらなるコーティングが塗布される。これにより、コアの原料との不適合性による、コーティング中のリパーゼの活性のあらゆる減退も予防する。実施形態のそのような形態では、胃および/または十二指腸の酸調節障害を有する患者において、パンクレアチンのリパーゼが放出されないこともあり得るが、これは、コーティング中の十分な用量のリパーゼによって容易に補うことができる。胃酸分泌障害の事象においてさえ、実施形態のこの形態は、十分な脂肪分解活性を発現させる。このことが、コーティングのリパーゼが既に胃に放出されているので、消化の改善をもたらす。好ましくは、コーティング中のリパーゼは、脂肪分解活性が胃酸のin vitroの模擬的影響に対して安定なリパーゼであることが好ましい。このリパーゼは、ブルルリパーゼであることが特に好ましい。
【0024】
パンクレアチン含有コア、特に、市販製品中に既に存在するような医薬形態、例えば、耐胃液性コーティングが設けられた賦形剤を含まないパンクレアチン・ペレット剤の例として、Cheplapharm Arzneimittel GmbH社(Mesekenhagen、ドイツ)による医薬製品「Cotazym(登録商標)」における、カプセル剤充填材料が使用できる。例えば、Mylan Healthcare GmbH社(Hannover、ドイツ)による医薬製品「Kreon(登録商標)」におけるカプセル剤充填材料はまた、パンクレアチン、および耐胃液性コーティングが設けられた賦形剤を含有するペレット剤の例として適切である。Nordmark Arzneimittel GmbH & Co.KG社(Uetersen、ドイツ)による医薬製品「Pankreatan(登録商標)」のカプセル剤充填材料もまた、耐胃液性コーティングが設けられた賦形剤を含む、パンクレアチンのマイクロ錠剤の例として適切である。適切なパンクレアチン含有コアの別の例は、耐胃液性コーティングを備える錠剤の例として、Nordmark Arzneimittel GmbH & Co.KG社(Uetersen、ドイツ)による医薬製品「Helopan(登録商標)」である。
【0025】
耐胃液性コーティングを備えない適切なパンクレアチン含有コアの例は、Laboratoires Mayoly Spindler社(Chatou、フランス)による医薬製品「Eurobiol(登録商標)12500、粒剤」であって、耐胃液性でないが、フィルムコーティングが設けられ、服用スプーンで投与される、賦形剤を含む、パンクレアチンのバラバラのマイクロ錠剤である医薬製品、および非コーティング錠剤の例としての、Allergan USA社(Irvine(カリフォルニア州)、USA)による「Viokace(登録商標)」である。
【0026】
耐胃液性コーティングが設けられる本発明による医薬組成物の実施形態は、高度なリパーゼ活性を示し、通常の条件下で保管される場合、安定している。それらの実施形態は、コーティングのリパーゼが胃に既に放出されているので、消化の改善をもたらし、食物に混合されると、耐胃液性コーティングの部分的な破損が、コーティング中に存在するリパーゼの活性に対して影響を及ばさないので、小児、幼児、および高齢者に対して投与できる。
【0027】
したがって、本発明による医薬組成物がパンクレアチンでできたコアを含むなら、それは好都合である。コア中に賦形剤が存在しないことで、製剤の比活性が増大し、より小さいサイズの製剤による同じ活性の投与が可能となる。これは、コアの原料との不適合性による、コーティング中の少なくとも1種のリパーゼ、および特にブルルリパーゼの活性が減退することによっても減少する。そのようなコアは、例えば、特許文献2に開示されている。そのコアは、様々な形態をとることができる。それは、例えば、錠剤、マイクロ錠剤、速崩壊性マイクロ錠剤、粒剤、ペレット剤、および粉体からなる群から選択できる。速崩壊性(または溶解性)マイクロ錠剤(FDMT)は、コアとして使用されることが好ましい。そのような製剤は、酵素の迅速で完全な放出を可能とする。これは、胃の中、または口の中でさえ既に起こっていることもある。コーティングされた速崩壊性マイクロ錠剤の溶解により、それらはまた、例えば栄養管を介して液体形態で投与できる溶解物、エマルジョン、または懸濁液を生産するために使用できる。本発明による調製の実施形態の全ての形態は、当然このような方法で投与できる。ブルルリパーゼの液体製剤は、熱不安定性であり、途切れないクールチェーンにまつわる問題全てを伴う冷却溶液の形態でしか市販されない。本発明による医薬組成物はここで、液体製剤の保管を回避するために成功裡に使用できる。梱包はまた、液体を用いるよりも簡単である。
【0028】
本発明による医薬組成物の別の好ましい実施形態は、それが、リパーゼおよびウイルスの含有量が減少したパンクレアチンを含有することを特徴とする。ブタ膵臓は、様々なウイルスを含有する。活性ウイルスの数は、熱の作用により、および他の方法によって減少させることができる。そのようなウイルスの減少または不活性化に関して、パンクレアチンのリパーゼの一部も一般的に不活性化される。そのようなパンクレアチンは、理想としては、脂肪分解活性が不十分である可能性があるというリスクを冒すことなく、本発明による医薬組成物中で使用できる。パンクレアチンのリパーゼの不活性化された部分を置き換えるような量の、コーティング中のリパーゼを、そのような製剤において使用する。同時に、概ねウイルスが存在しない医薬組成物が得られる。
【0029】
コーティング中において、10,000から500,000TBU/gまでの範囲の脂肪分解活性を示すことを特徴とする、本発明による医薬組成物が好ましい。本明細書に記載されるような、本発明による医薬組成物のコーティング中の、少なくとも1種のリパーゼ、好ましくは細菌のリパーゼ、特に好ましくはブルルリパーゼの酵素活性は、ペレット剤またはミニ/マイクロ錠剤などの多粒子製剤の場合、10,000~500,000TBU/gが好ましく、50,000~400,000TBU/gが特に好ましい。ミニ/マイクロ錠剤の場合、その範囲は、100,000~200,000TBU/gであり、わずかに大きいペレット剤(1.4から2.4mmまでの範囲)の場合、200,000から300,000TBU/gまでの範囲であり、わずかに小さなペレット剤(1.0から1.6mmまでの範囲)の場合、225,000から375,000TBU/gまでの範囲であることが、非常に特に好ましい。本明細書に記載されるような、医薬組成物のコーティング中の、少なくとも1種のリパーゼ、好ましくは細菌のリパーゼ、特に好ましくはブルルリパーゼの酵素活性は、錠剤などのモノリシック製剤の場合、10,000から200,000TBU/gまでであることが好ましく、20,000から150,000TBU/gまでであることが特に好ましく、50,000から100,000TBU/gまでであることが非常に特に好ましい。
【0030】
本発明による医薬組成物のコアは、パンクレアチンを含有し、そのパンクレアチンは、リパーゼ、アミラーゼ、およびプロテアーゼの3つの酵素分画を含有する。このことに関して、コアにおける酵素活性(脂肪分解活性、デンプン分解活性、タンパク質分解活性)のそれぞれの含有量、ならびに互いに対する、コアにおけるこれらの酵素活性の純粋な数値的比率の両方は、通常、ヨーロッパ薬局方(Ph.Eur.)のモノグラフである「膵臓粉体」に従う単位、すなわちPh.Eur.単位に対する膵臓酵素のためのように市場で入手可能なパンクレアチン含有製品のそれぞれの範囲内にあることも好ましい。パンクレアチン含有製剤が、それらの性質によって、本発明による医薬組成物においてパンクレアチン含有コアとして使用できるそのような製品の例は、既に上で列記されている。市販されているPankreatan(登録商標)10,000は、10,000Ph.Eur.単位の脂肪分解活性、7,500Ph.Eur.単位のデンプン分解活性、および450Ph.Eur.単位のタンパク質分解活性を示す。カプセル剤充填材料(この例では、マイクロフィルム錠)に関して対応する含有量は、脂肪分解活性に対しておよそ52,000から62,500Ph.Eur.単位/gまで、デンプン分解活性に対して39,000から47,000Ph.Eur.単位/gまで、およびタンパク質分解合計活性に対して2,300から2,800Ph.Eur.単位/gまでの範囲内にある。
【0031】
本発明による医薬組成物は、パンクレアチン、およびコーティング中の少なくとも1種のリパーゼまたはコーティング中の複数のリパーゼとは別に、賦形剤も含有できる。本出願の内容における賦形剤は、医薬組成物に通常使用される全ての補助剤である。活性物質、特に酵素は、本出願に従って賦形剤ではない。例えば、適切な賦形剤は、「米国薬剤師協会」の「薬学的賦形剤のハンドブック」に記載されている。
【0032】
本明細書に記載された、本発明による医薬組成物は、パンクレアチンに含有される酵素、およびコーティングに含有されるさらなるリパーゼに加えて、さらなる酵素、特にさらなる消化酵素を含有できる。消化酵素とみなされ得る酵素は、特に、プロテアーゼおよびアミラーゼからなる群から選択されるものである。プロテアーゼおよびアミラーゼの両方を含有する、本発明による医薬組成物は、発明の一部も形成する。
【0033】
本発明による医薬組成物で使用されるパンクレアチンは、固体形態の、また例えば、Ph.Eur.に記載されるような形態の、あらゆるパンクレアチンであってもよい。パンクレアチンは、商業的に取得できる。パンクレアチンを慎重に得る方法は、特許文献3に開示されている。この方法で生産されたパンクレアチンが好ましい。パンクレアチン・マイクロペレット剤を生産する方法は、特許文献4に開示されている。特許文献5は、パンクレアチンを含有する球状粒子を生産する方法を開示している。特許文献6では、パンクレアチンを排他的に含有する、パンクレアチン・ペレット剤およびマイクロペレット剤が開示されている。これらの文献に記載されたパンクレアチン製品は、本発明による医薬組成物において使用できる。本発明において使用されるコアはまた、パンクレアチンのあらゆる公知の固形製剤であってもよい。
【0034】
コーティングは、排他的に少なくとも1種のリパーゼからなることもある。コーティングはまた、排他的にブルルリパーゼからなることもある。しかしながら、コーティングが薬理学的に互換性のある賦形剤を含む場合、それが好ましい。例えば、適切な賦形剤は、「米国薬剤師協会」の「薬学的賦形剤のハンドブック」に記載されている。コーティングは、結合剤、軟化剤、剥離剤、充填剤、キャリア材、湿潤剤、崩壊剤、および着色剤からなる群から選択される1つまたは複数の賦形剤を含有できる。このリストは網羅的ではなく、当業者に公知の多くの他の賦形剤が使用できる。例えば、コーティング中に存在する可能性がある適切な薬理学的に互換性のある結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー類(polyoxyethylene polyoxypropyleine copolymers)、およびそれらの混合物を含む群から選択された化合物である。このリストは網羅的ではなく、当業者に公知の他の結合剤が使用できる。適切な着色剤は、例えば、食品着色剤、特にドイツの薬物着色剤規制に記載されている食品着色剤である。耐胃酸性コーティングが使用される場合、当業者に公知の材料および方法を使用することができ、それによって、これは、特に、前述の材料および方法に対して適用される。そのような材料および方法はまた、特許文献6の段落[0028]~[0033]に記載されている。
【0035】
医薬製品
本発明の別の態様は、本発明による医薬組成物を含む医薬製品である。これは、消化障害、特に膵外分泌機能不全の予防および/または処置のための医薬製品であることが好ましく、嚢胞性線維症の患者、幼児および児童、ならびに高齢のおよび寝たきりの患者における、膵外分泌機能不全の予防および/または処置のための医薬製品であることが特に好ましい。
【0036】
医薬組成物を生産する方法
本発明のさらなる態様は、本発明による医薬組成物を生産する方法であって、
- パンクレアチンを用意するステップと、
- 少なくとも1種のリパーゼを含有するコーティングのためのコーティング組成物を用意するステップと、
- そのコーティングのためのコーティング組成物でパンクレアチンをコーティングするステップと
を含む方法である。
【0037】
コーティング組成物中の少なくとも1種のリパーゼは、微生物のリパーゼ、特に好ましくは細菌のリパーゼであることが好ましく、コーティング組成物中の少なくとも1種のリパーゼは、ブルルリパーゼであることが最も好ましい。パンクレアチン、ならびにコーティングの原料、したがってコーティング組成物の実施形態の適切な形態は、上記されている。水中でコーティングするために必要な成分の溶液は、コーティング組成物として好ましい。パンクレアチンが、パンクレアチンを含有する速崩壊性マイクロ錠剤からコア形態の形態で用意され、コーティング組成物が、ブルルリパーゼ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および場合によっては他の賦形剤の水溶液である、本発明による方法が好ましい。
【0038】
コーティングは、例えば、Wursterカラムまたはボール塗装機を備える流動層処理装置において、公知の技術を用いて生産できる。コーティングのために、パンクレアチンが該装置へと導入され、コーティングのための少なくとも1種のリパーゼおよび賦形剤、ならびに場合によっては溶媒の予め生産された混合物が噴霧される。
【0039】
ブルルリパーゼおよび他のリパーゼが圧力の影響により不活性化される可能性があるので、より高い圧力は可能な限り避けられるべきである。したがって、コーティングのための少なくとも1種のリパーゼ、および特にブルルリパーゼを添加した後の押圧手順が不要である、本発明による医薬組成物のための本発明による生産方法が好ましい。コーティングのための少なくとも1種のリパーゼ、および特にブルルリパーゼを添加した後に、本発明による医薬組成物を圧縮または固めるための機械的圧力作用が全て不要である、本発明による医薬組成物のための、本発明による生産方法が、特に好ましい。
【実施例】
【0040】
分析方法:
脂肪分解活性の分析的測定は、いわゆるトリブチリンアッセイによって行なわれる(例えば、非特許文献1参照)。いわゆるトリブチリンアッセイによって測定された脂肪分解活性は、TBU単位(TBU u.、場合によってTBUに略される)で同義的に示され、ここで、その綴り(省略ピリオドの有り/無し、ハイフンの有り/無し、ならびにスペースの有り/無し)は、場合によって、科学文献によって大幅に異なる。1単位(1酵素単位)の酵素活性は、1分当たり1μmolの基質の材料変換に相当する。
【0041】
例:本発明による医薬組成物の生産
64650TBU/mlのTBU活性を有する75.2重量部のブルルリパーゼの水溶液を、24.8重量部のヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HARKE Germany Services GmbH & Co.KG」社(Mulheim an der Ruhr、ドイツ)からのタイプC606)の10.5%水溶液へ入れて撹拌する。pH値を、3%水酸化ナトリウム溶液を用いて7.5に調整する。
【0042】
約0.6mmの平均粒子径を有する、特許文献6の請求項1に記載の方法によって生産された、パンクレアチンからなる450gの球状パンクレアチン・マイクロペレット剤を、4,500gのブルルリパーゼの溶液を用いて、Wursterカラムを備えたタイプGlatt-GPCG-5のWursterスプレーコーティングシステムにおいて、コーティングする。以下のパラメーターを使用する:噴霧機空気圧 1.5bar、空気量 50~55m3/時間、入口空気温度 47.3~49.7℃、製品温度 30.6~31.8℃、噴霧速度 4.9~6.0g/分、スプレー持続時間 160分。収率は、96.7%である。
【0043】
噴霧プロセスによりコーティングされたマイクロペレット剤のブルルリパーゼの活性の損失(TBUで)は、22.2%である。これには、装置に付着する酵素による損失が含まれる。ブルルリパーゼの不活性化による活性の補正後の損失は、20.8%である。ポリエチレンバッグ中での8カ月にわたる25℃での保管後、さらなる活性の変化は検出できない。特許文献5の例2に従って生産されたパンクレアチン・マイクロペレット剤を用いる実験を繰り返すことで、非常に類似な結果がもたらされる。純粋なブルルリパーゼの水溶液(76,000TBU/ml)がコーティングに使用される場合、活性の損失は、噴霧プロセスを経ると17.4%であり、ブルルリパーゼの不活性化による損失を補正すると13.2%である。これらの結果は再現可能であり、その生産物は、医薬製品としての使用に適している。
【0044】
比較例:
5,000gのステアリン酸マグネシウムを、0.25mmの篩を介して、495.0gの微結晶性セルロース(「FMC社」、Philadelphia、USAから入手可能な商標名:「Avicel PH101」)に添加し、25rpm(U/min)で10分間、Zoller重力型混合機中で混合する。このように生成された300mgのキャリア混合物を、50,050TBU/mlの活性を有するブルルリパーゼの水溶液150μlと混合し、その溶液が完全に一体となるまでスパチュラで混ぜた。得られた混合物を、1.5時間、室温(<25℃)および50mbarで、真空乾燥炉中で乾燥させた。このように得られた混合物を、21.0kNの押付力で、Korsch EKO偏心プレスおよびスタンピングツールを用いて、10mmの直径を有する糖衣凸状の錠剤へとプレス成形する。完成した錠剤を、水中に置き、TBU活性を測定する。ブルルリパーゼ活性の損失(TBU)は、41.5%である。したがって、本医薬組成物は、正常な錠剤化よりも優れている。ブルルリパーゼが、固形の凍結乾燥物の形態でキャリア混合物に添加される場合、活性の類似の損失が得られる。