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特許7184797ビルディング機器用のモデル予測的メンテナンスシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ビルディング機器用のモデル予測的メンテナンスシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20120101AFI20221129BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019554919
(86)(22)【出願日】2018-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 US2018018039
(87)【国際公開番号】W WO2018217251
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】62/511,113
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518010511
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ テクノロジー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Johnson Controls Technology Company
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ターニー、 ロバート ディー.
(72)【発明者】
【氏名】シンハ、 スディー アール.
【審査官】山内 裕史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-141178(JP,A)
【文献】特開2001-357112(JP,A)
【文献】特開2005-182465(JP,A)
【文献】特開2011-048688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルディング機器のためのモデル予測的メンテナンスシステムであって、
前記ビルディング機器を動作させて、ビルディングでの可変状態又は状況に影響を与えるように構成された機器コントローラと、
最適化期間の継続期間にわたって前記ビルディング機器を動作させるコストを予測するように構成された動作コスト予測器と、
前記最適化期間の前記継続期間にわたって前記ビルディング機器に対するメンテナンスを実施するコストを予測するように構成されたメンテナンスコスト予測器と、
記最適化期間の前記継続期間にわたる前記ビルディング機器に関連する総コストを予測する目的関数を最適化することによって、前記継続期間にわたって前記ビルディング機器を動作させ及び前記ビルディング機器に対するメンテナンスを実施するための戦略を決定するように構成された目的関数オプティマイザと
を含み、
前記目的関数は、前記ビルディング機器を動作させる前記予測されたコストと、前記ビルディング機器に対するメンテナンスを実施する前記予測されたコストとを含む、モデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項2】
前記最適化期間の前記継続期間にわたって前記ビルディング機器を購入又は交換するコストを予測するように構成された資本コスト予測器をさらに含み、
前記目的関数は、前記ビルディング機器を購入又は交換する前記予測されたコストをさらに含む、請求項1に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項3】
前記ビルディング機器からの閉ループフィードバックに基づいてリアルタイムベースで前記目的関数を動的に更新するように構成された目的関数生成器をさらに含む、請求項1に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項4】
前記メンテナンスコスト予測器は、前記最適化期間の各時間中に前記ビルディング機器に対してメンテナンスが実施されるかどうかを示す複数のバイナリ決定変数の関数として、前記ビルディング機器に対するメンテナンスを実施する前記コストを予測するように構成される、請求項1に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項5】
前記動作コスト予測器は、
前記最適化期間の各時間ステップにおいて前記ビルディング機器の動作効率を決定し、
前記最適化期間の各時間ステップにおいて前記動作効率の関数として前記ビルディング機器を動作させる前記コストを予測する
ように構成される、請求項1に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項6】
前記動作コスト予測器は、
前記ビルディング機器からのフィードバックとして受信された機器性能情報を使用して、前記ビルディング機器の初期動作効率を決定し、
前記最適化期間の連続する時間ステップ間で動作効率が低下する量を定義する効率低下係数を識別し、
前記初期動作効率及び前記効率低下係数を使用して、前記最適化期間の各時間ステップにおける前記ビルディング機器の動作効率を決定する
ように構成される、請求項1に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項7】
前記目的関数は、前記最適化期間の各時間中に前記ビルディング機器に対してメンテナンスが実施されるかどうかを示す複数のバイナリ決定変数を含み、
前記動作コスト予測器は、メンテナンスが実施されることを前記バイナリ決定変数が示す各時間ステップにおいて、前記ビルディング機器の前記動作効率を、メンテナンス後の効率値にリセットするように構成される、請求項6に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項8】
ビルディング機器のためのモデル予測的メンテナンスシステムであって、
前記ビルディング機器を動作させて、ビルディングでの可変状態又は状況に影響を与えるように構成された機器コントローラと、
最適化期間の継続期間にわたって前記ビルディング機器に対するメンテナンスを実施するコストを、前記最適化期間の各時間中に前記ビルディング機器に対してメンテナンスが実施されるかどうかを示す複数のバイナリ決定変数の関数として予測するように構成されたメンテナンスコスト予測器と、
目的関数を最適化して、前記最適化期間の前記継続期間にわたる前記ビルディング機器に関連する総コストを予測するように構成された目的関数オプティマイザと
を含み、
前記目的関数は、前記ビルディング機器に対するメンテナンスを実施する前記予測されたコストを含む、モデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項9】
前記メンテナンスコスト予測器は、
前記ビルディング機器からのフィードバックとして受信された機器性能情報を使用して、前記最適化期間の各時間ステップにおける前記ビルディング機器の信頼性を決定し、
前記最適化期間の各時間ステップにおける前記ビルディング機器の前記信頼性に基づいて、前記バイナリ決定変数に関する値を決定する
ように構成される、請求項8に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項10】
前記最適化期間の前記継続期間にわたって前記ビルディング機器を購入又は交換するコストを予測するように構成された資本コスト予測器をさらに含み、
前記目的関数は、前記ビルディング機器を購入又は交換する前記予測されたコストをさらに含む、請求項8に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項11】
前記バイナリ決定変数の関数として、前記最適化期間の前記継続期間にわたって前記ビルディング機器を動作させるコストを予測するように構成された動作コスト予測器をさらに含み、
前記目的関数は、前記ビルディング機器を動作させる前記予測されたコストをさらに含む、請求項8に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項12】
前記動作コスト予測器は、
前記最適化期間の各時間ステップにおける前記ビルディング機器の動作効率を決定し、
前記最適化期間の各時間ステップにおける前記動作効率の関数として、前記ビルディング機器を動作させる前記コストを予測する
ように構成される、請求項11に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項13】
前記動作コスト予測器は、
前記ビルディング機器からのフィードバックとして受信された機器性能情報を使用して、前記ビルディング機器の初期動作効率を決定し、
前記最適化期間の連続する時間ステップ間で動作効率が低下する量を定義する効率低下係数を識別し、
前記初期動作効率及び前記効率低下係数を使用して、前記最適化期間の各時間ステップにおける前記ビルディング機器の動作効率を決定する
ように構成される、請求項11に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項14】
前記動作コスト予測器は、メンテナンスが実施されることを前記バイナリ決定変数が示す各時間ステップにおいて、前記ビルディング機器の前記動作効率を、メンテナンス後の効率値にリセットするように構成される、請求項13に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項15】
ビルディング機器のためのモデル予測的メンテナンスシステムであって、
前記ビルディング機器を動作させて、ビルディングでの可変状態又は状況に影響を与えるように構成された機器コントローラと、
最適化期間の継続期間にわたって前記ビルディング機器を動作させるコストを予測するように構成された動作コスト予測器と、
前記最適化期間の前記継続期間にわたって前記ビルディング機器に対するメンテナンスを実施するコストを予測するように構成されたメンテナンスコスト予測器と、
目的関数を最適化して、前記最適化期間の前記継続期間にわたって前記ビルディング機器を動作及びメンテナンスするための最適な戦略を決定するように構成された目的関数オプティマイザと
を含み、
前記目的関数は、前記ビルディング機器を動作させる前記予測されたコストと、前記ビルディング機器に対するメンテナンスを実施する前記予測されたコストとを含む、モデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項16】
前記動作コスト予測器は、前記最適化期間の各時間ステップ中の前記ビルディング機器の予測されるエネルギー消費量の関数として、前記ビルディング機器を動作させる前記コストを予測するように構成され、
前記メンテナンスコスト予測器は、前記最適化期間の各時間中に前記ビルディング機器に対してメンテナンスが実施されるかどうかを示す複数のバイナリ決定変数の関数として、前記ビルディング機器に対するメンテナンスを実施する前記コストを予測するように構成され、
前記目的関数オプティマイザは、前記目的関数を最適化して、バイナリ決定変数に関する最適値を決定するように構成される、請求項15に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項17】
前記動作コスト予測器は、
前記最適化期間の各時間ステップにおいて前記ビルディング機器の動作効率を決定し、
前記最適化期間の各時間ステップ中の前記動作効率の関数として、前記最適化期間の各時間ステップ中の前記ビルディング機器の前記エネルギー消費量を予測する
ように構成される、請求項16に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項18】
前記動作コスト予測器は、
前記ビルディング機器からのフィードバックとして受信された機器性能情報を使用して、前記ビルディング機器の初期動作効率を決定し、
前記最適化期間の連続する時間ステップ間で動作効率が低下する量を定義する効率低下係数を識別し、
前記初期動作効率及び前記効率低下係数を使用して、前記最適化期間の各時間ステップにおける前記ビルディング機器の動作効率を決定する
ように構成される、請求項16に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項19】
前記動作コスト予測器は、メンテナンスが実施されることを前記バイナリ決定変数が示す各時間ステップにおいて、前記ビルディング機器の前記動作効率を、メンテナンス後の効率値にリセットするように構成される、請求項18に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【請求項20】
前記最適化期間の前記継続期間にわたって前記ビルディング機器を購入又は交換するコストを予測するように構成された資本コスト予測器をさらに含み、
前記目的関数は、前記ビルディング機器を購入又は交換する前記予測されたコストをさらに含む、請求項16に記載のモデル予測的メンテナンスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年5月25日出願の米国仮特許出願第62/511,113号の利益及び優先権を主張し、上記仮特許出願の開示全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、概して、ビルディング機器用のメンテナンスシステムに関し、より詳細には、予測最適化技法を使用してビルディング機器用の最適なメンテナンス戦略を決定するメンテナンスシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
ビルディング機器は通常、ビルディング機器用のメンテナンス戦略に従ってメンテナンスされる。メンテナンス戦略の1つのタイプは、ランツーフェール(run-to-fail;故障するまで稼働する)である。ランツーフェール戦略は、故障が発生するまでビルディング機器が稼働できるようにする。この稼働期間中、ビルディング機器をメンテナンスするために、簡単な動作メンテナンスタスク(例えば、オイル交換)のみが実施される。
【0004】
別のタイプのメンテナンス戦略は、予防的メンテナンスである。通常、予防的メンテナンス戦略は、製造された機器によって推奨される1組の予防的メンテナンスタスクの実施を含む。予防的メンテナンスタスクは通常、定期的な間隔(例えば、毎月、毎年など)で実施され、間隔は、動作の経過時間及び/又はビルディング機器の稼働時間に応じていてよい。
【0005】
別のタイプのメンテナンス戦略は、予測的メンテナンスである。予測的メンテナンス戦略は、ビルディング機器の実際の動作条件を理解するために、ビルディング機器からのフィードバックを使用して診断を実施する。次いで、ビルディング機器の動作条件を使用して、どのメンテナンスタスクがビルディング機器の性能を最も向上させるかを予測することができる。しかし、いくつかのメンテナンスタスクは他のメンテナンスタスクよりも高価であり、ビルディング機器の性能に異なるレベルでの向上をもたらすことがある。どのメンテナンスタスクを実施すべきかを決定するとき、様々なメンテナンスタスクのコスト及び利益を正確に予測することは困難であり得る。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一実装は、ビルディング機器用のモデル予測的メンテナンス(MPM)システムである。MPMシステムは、ビルディング機器を動作させて、ビルディングでの可変状態又は状況に影響を与えるように構成された機器コントローラと、最適化期間の継続期間にわたってビルディング機器を動作させるコストを予測するように構成された動作コスト予測器とを含む。MPMシステムは、最適化期間の継続期間にわたってビルディング機器に対するメンテナンスを実施するコストを予測するように構成されたメンテナンスコスト予測器と、目的関数を最適化して、最適化期間の継続期間にわたるビルディング機器に関連する総コストを予測するように構成された目的関数オプティマイザとを含む。目的関数は、ビルディング機器を動作させる予測されたコストと、ビルディング機器に対するメンテナンスを実施する予測されたコストとを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、MPMシステムは、最適化期間の継続期間にわたってビルディング機器を購入又は交換するコストを予測するように構成された資本コスト予測器を含む。目的関数は、ビルディング機器を購入又は交換する予測されたコストをさらに含むことがある。
【0008】
いくつかの実施形態では、MPMシステムは、ビルディング機器からの閉ループフィードバックに基づいてリアルタイムベースで目的関数を動的に更新するように構成された目的関数生成器を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、メンテナンスコスト予測器は、最適化期間の各時間中にビルディング機器に対してメンテナンスが実施されるかどうかを示す複数のバイナリ決定変数の関数として、ビルディング機器に対するメンテナンスを実施するコストを予測するように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態では、動作コスト予測器は、最適化期間の各時間ステップにおいてビルディング機器の動作効率を決定し、最適化期間の各時間ステップにおける動作効率の関数としてビルディング機器を動作させるコストを予測するように構成される。
【0011】
いくつかの実施形態では、動作コスト予測器は、ビルディング機器からのフィードバックとして受信された機器性能情報を使用して、ビルディング機器の初期動作効率を決定し、最適化期間の連続する時間ステップ間で動作効率が低下する量を定義する効率低下係数を識別し、初期動作効率及び効率低下係数を使用して、最適化期間の各時間ステップにおけるビルディング機器の動作効率を決定するように構成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、目的関数が、最適化期間の各時間中にビルディング機器に対してメンテナンスが実施されるかどうかを示す複数のバイナリ決定変数を含む。動作コスト予測器は、メンテナンスが実施されることをバイナリ決定変数が示す各時間ステップにおいて、ビルディング機器の動作効率を、メンテナンス後の効率値にリセットするように構成されることがある。
【0013】
本開示の別の実装は、ビルディング機器用の別のモデル予測的メンテナンス(MPM)システムである。MPMシステムは、ビルディング機器を動作させて、ビルディングでの可変状態又は状況に影響を与えるように構成された機器コントローラと、メンテナンスコスト予測器と、目的関数オプティマイザとを含む。メンテナンスコスト予測器は、最適化期間の各時間中にビルディング機器に対してメンテナンスが実施されるかどうかを示す複数のバイナリ決定変数の関数として、最適化期間の継続時間にわたってビルディング機器に対するメンテナンスを実施するコストを予測するように構成される。目的関数オプティマイザは、目的関数を最適化して、最適化期間の継続期間にわたるビルディング機器に関連する総コストを予測するように構成される。目的関数は、ビルディング機器に対するメンテナンスを実施する予測されたコストを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、メンテナンスコスト予測器が、ビルディング機器からのフィードバックとして受信された機器性能情報を使用して、最適化期間の各時間ステップにおけるビルディング機器の信頼性を決定し、最適化期間の各時間ステップにおけるビルディング機器の信頼性に基づいて、バイナリ決定変数に関する値を決定するように構成される。
【0015】
いくつかの実施形態では、MPMシステムは、最適化期間の継続期間にわたってビルディング機器を購入又は交換するコストを予測するように構成された資本コスト予測器を含む。目的関数は、ビルディング機器を購入又は交換する予測されたコストを含むことがある。
【0016】
いくつかの実施形態では、MPMシステムは、バイナリ決定変数の関数として、最適化期間の継続時間にわたってビルディング機器を動作させるコストを予測するように構成された動作コスト予測器を含む。目的関数は、ビルディング機器を動作させる予測されたコストを含むことがある。
【0017】
いくつかの実施形態では、動作コスト予測器が、最適化期間の各時間ステップにおけるビルディング機器の動作効率を決定し、最適化期間の各時間ステップにおける動作効率の関数として、ビルディング機器を動作させるコストを予測するように構成される。
【0018】
いくつかの実施形態では、動作コスト予測器が、ビルディング機器からのフィードバックとして受信された機器性能情報を使用して、ビルディング機器の初期動作効率を決定し、最適化期間の連続する時間ステップ間で動作効率が低下する量を定義する効率低下係数を識別し、初期動作効率及び効率低下係数を使用して、最適化期間の各時間ステップにおけるビルディング機器の動作効率を決定するように構成される。
【0019】
いくつかの実施形態では、動作コスト予測器は、メンテナンスが実施されることをバイナリ決定変数が示す各時間ステップにおいて、ビルディング機器の動作効率を、メンテナンス後の効率値にリセットするように構成される。
【0020】
本開示の別の実装は、ビルディング機器用の別のモデル予測的メンテナンス(MPM)システムである。MPMシステムは、ビルディング機器を動作させて、ビルディングでの可変状態又は状況に影響を与えるように構成された機器コントローラと、最適化期間の継続期間にわたってビルディング機器を動作させるコストを予測するように構成された動作コスト予測器とを含む。MPMシステムは、最適化期間の継続期間にわたってビルディング機器に対するメンテナンスを実施するコストを予測するように構成されたメンテナンスコスト予測器と、目的関数を最適化して、最適化期間の継続期間にわたってビルディング機器を動作及びメンテナンスするための最適な戦略を決定するように構成された目的関数オプティマイザとを含む。目的関数は、ビルディング機器を動作させる予測されたコストと、ビルディング機器に対するメンテナンスを実施する予測されたコストとを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、動作コスト予測器が、最適化期間の各時間ステップ中のビルディング機器の予測されるエネルギー消費量の関数として、ビルディング機器を動作させるコストを予測するように構成される。メンテナンスコスト予測器は、最適化期間の各時間中にビルディング機器に対してメンテナンスが実施されるかどうかを示す複数のバイナリ決定変数の関数として、ビルディング機器に対するメンテナンスを実施するコストを予測するように構成されることがある。目的関数オプティマイザは、目的関数を最適化して、バイナリ決定変数に関する最適値を決定するように構成されることがある。
【0022】
いくつかの実施形態では、動作コスト予測器が、最適化期間の各時間ステップにおいてビルディング機器の動作効率を決定し、最適化期間の各時間ステップ中の動作効率の関数として、最適化期間の各時間ステップ中のビルディング機器のエネルギー消費量を予測するように構成される。
【0023】
いくつかの実施形態では、動作コスト予測器が、ビルディング機器からのフィードバックとして受信された機器性能情報を使用して、ビルディング機器の初期動作効率を決定し、最適化期間の連続する時間ステップ間で動作効率が低下する量を定義する効率低下係数を識別し、初期動作効率及び効率低下係数を使用して、最適化期間の各時間ステップにおけるビルディング機器の動作効率を決定するように構成される。
【0024】
いくつかの実施形態では、動作コスト予測器は、メンテナンスが実施されることをバイナリ決定変数が示す各時間ステップにおいて、ビルディング機器の動作効率を、メンテナンス後の効率値にリセットするように構成される。
【0025】
いくつかの実施形態では、MPMシステムは、最適化期間の継続期間にわたってビルディング機器を購入又は交換するコストを予測するように構成された資本コスト予測器を含む。目的関数は、ビルディング機器を購入又は交換する予測されたコストを含むことがある。
【0026】
上記の概要は単に例示にすぎず、何ら限定を意図するものではないことを当業者には理解されたい。特許請求の範囲によってのみ定義される、本明細書で述べるデバイス及び/又はプロセスの他の態様、進歩性のある特徴、及び利点は、本明細書で述べる詳細な説明を添付図面と併せて読めば明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】例示的実施形態による、HVACシステムを備えたビルディングを示す図である。
図2】例示的実施形態による、図1のビルディングの加熱又は冷却負荷をサービス提供するために使用することができるウォーターサイドシステムのブロック図である。
図3】例示的実施形態による、図1のビルディングの加熱又は冷却負荷をサービス提供するために使用することができるエアサイドシステムのブロック図である。
図4】例示的実施形態による、図1のビルディングを監視及び制御するために使用することができるビルディング管理システム(BMS)のブロック図である。
図5】例示的実施形態による、図1のビルディングを監視及び制御するために使用することができる別のBMSのブロック図である。
図6】例示的実施形態による、ビルディングに設置された接続された機器からの機器性能情報を監視するモデル予測的メンテナンス(MPM)システムを含むビルディングシステムのブロック図である。
図7】例示的実施形態による、図6のMPMシステムに機器性能情報を提供する1タイプの接続された機器であり得る冷却器の概略図である。
図8】例示的実施形態による、図6のMPMシステムをより詳細に示すブロック図である。
図9】例示的実施形態による、図6のMPMシステムの高レベルオプティマイザをより詳細に示すブロック図である。
図10】例示的実施形態による、図6のMPMシステムを動作させるプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面を全体として参照すると、様々な例示的実施形態によるモデル予測的メンテナンス(MPM)システム及びその構成要素が示されている。MPMシステムは、ビルディング機器に関する最適なメンテナンス戦略を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、最適なメンテナンス戦略は、最適化期間(例えば、30週、52週、10年、30年など)の継続期間にわたるビルディング機器の購入、メンテナンス、及び動作に関連する総コストを最適化する1組の決定事項である。これらの決定事項は、例えば、機器の購入の決定、機器のメンテナンスの決定、及び機器の動作の決定を含むことができる。MPMシステムは、モデル予測制御技法を使用して、これらの決定事項の関数として総コストを表す目的関数を定式化することができる。決定事項は、決定変数として目的関数に含めることができる。MPMシステムは、様々な最適化技法のいずれかを使用して目的関数を最適化(例えば最小化)して、各決定変数に関する最適値を識別することができる。
【0029】
MPMシステムによって最適化することができる目的関数の一例は、次式で示される。
【数1】
ここで、Cop,iは、最適化期間の時間ステップiにおいてビルディング機器が消費する単位エネルギーあたりのコスト(例えば、$/kWh)であり、Pop,iは、時間ステップiにおけるビルディング機器の電力消費量(例えば、kW)であり、Δtは、各時間ステップiの継続時間であり、Cmain,iは、時間ステップiにおいてビルディング機器に対して実施されるメンテナンスのコストであり、Bmain,iは、メンテナンスが実施されるかどうかを示すバイナリ変数であり、Ccap,iは、時間ステップiにおいてビルディング機器の新たなデバイスを購入する資本コストであり、Bcap,iは、新たなデバイスが購入されるかどうかを示すバイナリ変数であり、hは、最適化が実施される水平又は最適化期間の継続時間である。
【0030】
目的関数Jの第1項は、最適化期間の継続期間にわたるビルディング機器の動作コストを表す。いくつかの実施形態では、単位エネルギーあたりのコストCop,iは、エネルギー価格データとして公益企業から受信される。コストCop,iは、時刻、曜日(例えば平日か週末か)、現在の季節(例えば夏か冬か)、又は他の時間ベースの因子に依存する時変コストでよい。例えば、コストCop,iは、ピークエネルギー消費期間中にはより高く、オフピーク又は部分ピークエネルギー消費期間中にはより低いことがある。
【0031】
いくつかの実施形態では、電力消費量Pop,iは、ビルディングの加熱又は冷却負荷に基づく。加熱又は冷却負荷は、ビルディング占有、時刻、曜日、現在の季節、又は加熱若しくは冷却負荷に影響を与え得る他の因子に応じて、MPMシステムによって予測することができる。いくつかの実施形態では、MPMシステムは、気象サービスからの天気予報を使用して加熱又は冷却負荷を予測する。電力消費量Pop,iは、ビルディング機器の効率ηにも依存する。例えば、高い効率で動作するビルディング機器は、低い効率で動作するビルディング機器に比べて、同じ加熱又は冷却負荷を満たすために消費する電力Pop,iが少ないことがある。
【0032】
有利には、MPMシステムは、メンテナンス決定Bmain,i及び機器購入決定Bcap,iの関数として、各時間ステップiにおけるビルディング機器の効率ηをモデル化することができる。例えば、特定のデバイスに関する効率ηは、デバイスが購入された時に初期値ηで始まることがあり、時間と共に低下し、連続する各時間ステップiと共に効率ηが低下することがある。デバイスに対するメンテナンスを実施することで、メンテナンスが実施された直後に効率ηをより高い値にリセットすることができる。同様に、新たなデバイスを購入して既存のデバイスと交換することで、新たなデバイスが購入された直後に効率ηをより高い値にリセットすることができる。リセット後、効率ηは、メンテナンスが実施される又は新たなデバイスが購入される次の時点まで、時間と共に低下し続けることがある。
【0033】
メンテナンスの実施又は新たなデバイスの購入により、動作中の電力消費量Pop,iが比較的低くなり、したがって、メンテナンスが実施された後又は新たなデバイスが購入された後に各時間ステップiにおける動作コストがより低くなることがある。言い換えると、メンテナンスの実施又は新たなデバイスの購入により、目的関数Jの第1項によって表される動作コストを低減することができる。しかし、メンテナンスの実施により、目的関数Jの第2項が増加することがあり、新たなデバイスの購入により、目的関数Jの第3項が増加することがある。目的関数Jは、これらの各コストを捕捉し、MPMシステムによって最適化して、最適化期間の継続期間にわたるメンテナンス及び機器購入決定の最適な組(すなわち、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iに関する最適値)を決定することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、MPMシステムは、ビルディング機器からのフィードバックとして受信された機器性能情報を使用して、ビルディング機器の効率及び/又は信頼性を推定する。効率は、ビルディング機器での加熱又は冷却負荷とビルディング機器の電力消費量との関係を示すことがある。MPMシステムは、効率を使用して、Pop,iの対応する値を計算することができる。信頼性は、ビルディング機器がその現在の動作条件下で障害なく動作し続ける尤度の統計的尺度であり得る。より過酷な条件下(例えば、高負荷、高温など)での動作は、信頼性をより低くすることがあり、より過酷でない条件下(例えば、低負荷、中程度の温度など)での動作は、信頼性をより高くすることがある。いくつかの実施形態では、信頼性は、ビルディング機器が最後にメンテナンスを受けてから経過した時間量、及び/又はビルディング機器が購入若しくは設置されてから経過した時間量に基づく。
【0035】
いくつかの実施形態では、MPMシステムは、機器購入及びメンテナンスの推奨を生成及び提供する。機器購入及びメンテナンスの推奨は、目的関数Jを最適化することによって決定されるバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iに関する最適値に基づくことがある。例えば、ビルディング機器の特定のデバイスに関するBmain,25=1の値は、最適化期間の第25の時間ステップにおいてそのデバイスに対してメンテナンスが実施されるべきであることを示すことがあり、Bmain,25=0の値は、その時間ステップにおいてメンテナンスを実施すべきでないことを示すことがある。同様に、Bcap,25=1の値は、最適化期間の第25の時間ステップにおいて、ビルディング機器の新たなデバイスを購入すべきであることを示すことがあり、Bcap,25=0の値は、その時間ステップにおいて新たなデバイスを購入すべきでないことを示すことがある。
【0036】
有利には、MPMシステムによって生成される機器購入及びメンテナンスの推奨は、ビルディング機器の実際の動作条件及び実際の性能に基づく予測的な推奨である。MPMシステムによって実施される最適化は、メンテナンスを実施するコスト及び新たな機器を購入するコストを、そのようなメンテナンス又は購入の決定により生じる動作コストの低減に対して重み付けして、総複合コストJを最小化する最適なメンテナンス戦略を決定する。このようにして、MPMシステムによって生成される機器購入及びメンテナンスの推奨は、各グループのビルディング機器に特有のものとなり、特定のグループのビルディング機器に関する最適なコストJを実現することができる。機器に特有の推奨は、いくつかのグループの接続された機器610及び/又はいくつかの動作条件に関しては最適でないことがある機器製造業者によって提供される一般的な予防的メンテナンスの推奨(例えば、毎年の機器の整備)に比べ、全体的なコストJを低くすることができる。MPMシステムのこれら及び他の特徴を以下で詳細に述べる。
【0037】
ビルディングHVACシステム及びビルディング管理システム
ここで、図1図5を参照すると、いくつかの実施形態による、本開示のシステム及び方法を実施することができるいくつかのビルディング管理システム(BMS)及びHVACシステムが示されている。簡単な概要として、図1は、HVACシステム100を備えたビルディング10を示す。図2は、ビルディング10にサービス提供するために使用することができるウォーターサイドシステム200のブロック図である。図3は、ビルディング10にサービス提供するために使用することができるエアサイドシステム300のブロック図である。図4は、ビルディング10を監視及び制御するために使用することができるBMSのブロック図である。図5は、ビルディング10を監視及び制御するために使用することができる別のBMSのブロック図である。
【0038】
ビルディング及びHVACシステム
特に図1を参照すると、ビルディング10の斜視図が示されている。ビルディング10は、BMSによってサービス提供される。BMSは、一般に、ビルディング又はビルディングエリアの内部又は周辺の機器を制御、監視、及び管理するように構成されたデバイスのシステムである。BMSは、例えば、HVACシステム、セキュリティシステム、照明システム、火災警報システム、ビルディングの機能若しくはデバイスを管理することが可能な任意の他のシステム、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0039】
ビルディング10にサービス提供するBMSは、HVACシステム100を含む。HVACシステム100は、ビルディング10のための暖房、冷房、換気、又は他のサービスを提供するように構成された複数のHVACデバイス(例えば、加熱器、冷却器、エアハンドリングユニット、ポンプ、ファン、熱エネルギー貯蔵装置など)を含み得る。例えば、HVACシステム100は、ウォーターサイドシステム120及びエアサイドシステム130を含むものとして示されている。ウォーターサイドシステム120は、加熱又は冷却された流体をエアサイドシステム130のエアハンドリングユニットに提供し得る。エアサイドシステム130は、加熱又は冷却された流体を使用して、ビルディング10に提供される気流を加熱又は冷却し得る。HVACシステム100で使用され得る例示的なウォーターサイドシステム及びエアサイドシステムについては、図2~3を参照してより詳細に述べる。
【0040】
HVACシステム100は、冷却器102、ボイラ104、及び屋上エアハンドリングユニット(AHU)106を含むものとして示されている。ウォーターサイドシステム120は、ボイラ104及び冷却器102を使用して、作動流体(例えば水やグリコールなど)を加熱又は冷却することができ、作動流体をAHU106に循環させ得る。様々な実施形態において、ウォーターサイドシステム120のHVACデバイスは、(図1に示されるように)ビルディング10内若しくは周囲に位置していても、又は中央プラント(例えば冷却器プラント、蒸気プラント、熱プラントなど)など場外の位置に位置していてもよい。作動流体は、ビルディング10に暖房が必要とされているか冷房が必要とされているかに応じて、ボイラ104で加熱されるか、又は冷却器102で冷却され得る。ボイラ104は、例えば、可燃性材料(例えば天然ガス)を燃焼することによって、又は電気加熱要素を使用することによって、循環される流体に熱を加え得る。冷却器102は、循環される流体を、熱交換器(例えば蒸発器)内の別の流体(例えば冷媒)との熱交換関係にして、循環される流体から熱を吸収し得る。冷却器102及び/又はボイラ104からの作動流体は、配管108を通してAHU106に輸送され得る。
【0041】
AHU106は、(例えば冷却コイル及び/又は加熱コイルの1つ又は複数のステージを通って)AHU106を通過する気流と作動流体を熱交換関係にすることができる。気流は、例えば外気、ビルディング10内からの還気、又はそれら両方の組合せであってもよい。AHU106は、気流と作動流体との間で熱を伝達して、気流を加熱又は冷却し得る。例えば、AHU106は、1つ又は複数のファン又は送風機を含んでもよく、ファン又は送風機は、作動流体を含む熱交換器の上に、又は熱交換器を通して空気を流すように構成される。次いで、作動流体は、配管110を通って冷却器102又はボイラ104に戻り得る。
【0042】
エアサイドシステム130は、AHU106によって供給される気流(すなわち給気流)を、給気ダクト112を通してビルディング10に送給し、還気を、ビルディング10から還気ダクト114を通してAHU106に提供し得る。いくつかの実施形態では、エアサイドシステム130は、複数の可変空気体積(VAV)ユニット116を含む。例えば、エアサイドシステム130は、ビルディング10の各フロア又は区域に別個のVAVユニット116を含むものとして示されている。VAVユニット116は、ビルディング10の個々の区域に提供される給気流の量を制御するように動作させることができるダンパ又は他の流量制御要素を含み得る。他の実施形態では、エアサイドシステム130は、中間VAVユニット116又は他の流量制御要素を使用せずに、(例えば供給ダクト112を通して)ビルディング10の1つ又は複数の区域に給気流を送給する。AHU106は、給気流の属性を測定するように構成された様々なセンサ(例えば温度センサや圧力センサなど)を含み得る。AHU106は、AHU106内及び/又はビルディング区域内に位置するセンサからの入力を受信することができ、AHU106を通る給気流の流量、温度、又は他の属性を調節して、ビルディング区域に関する設定値条件を実現し得る。
【0043】
ウォーターサイドシステム
次に図2を参照すると、いくつかの実施形態によるウォーターサイドシステム200のブロック図が示されている。様々な実施形態において、ウォーターサイドシステム200は、HVACシステム100内のウォーターサイドシステム120を補助するか、若しくはそれに置き代わってもよく、又はHVACシステム100とは別個に実装されてもよい。HVACシステム100に実装されるとき、ウォーターサイドシステム200は、HVACシステム100内のHVACデバイスのサブセット(例えばボイラ104、冷却器102、ポンプ、弁など)を含んでもよく、加熱又は冷却された流体をAHU106に供給するように動作し得る。ウォーターサイドシステム200のHVACデバイスは、ビルディング10内に(例えばウォーターサイドシステム120の構成要素として)位置しても、中央プラントなど場外の位置に位置してもよい。
【0044】
図2で、ウォーターサイドシステム200は、複数のサブプラント202~212を有する中央プラントとして示されている。サブプラント202~212は、加熱器サブプラント202、熱回収冷却器サブプラント204、冷却器サブプラント206、冷却塔サブプラント208、高温熱エネルギー貯蔵(TES)サブプラント210、及び冷熱エネルギー貯蔵(TES)サブプラント212を含むものとして示されている。サブプラント202~212は、公益事業からの資源(例えば水、天然ガス、電気など)を消費して、ビルディング又はキャンパスの熱エネルギー負荷(例えば温水、冷水、暖房、冷房など)を提供する。例えば、加熱器サブプラント202は、加熱器サブプラント202とビルディング10との間で温水を循環させる温水ループ214内の水を加熱するように構成され得る。冷却器サブプラント206は、冷却器サブプラント206とビルディング10との間で冷水を循環させる冷水ループ216内の水を冷却するように構成され得る。熱回収冷却器サブプラント204は、冷水ループ216から温水ループ214に熱を伝達して、温水のための追加加熱及び冷水のための追加冷却を可能にするように構成され得る。凝縮器水ループ218が、冷却器サブプラント206内の冷水から熱を吸収し、吸収された熱を冷却塔サブプラント208内に排除するか、又は吸収された熱を温水ループ214に伝達し得る。高温TESサブプラント210及び低温TESサブプラント212は、その後の使用のために、それぞれ高熱及び低熱エネルギーを貯蔵し得る。
【0045】
温水ループ214及び冷水ループ216は、ビルディング10の屋上に位置するエアハンドラ(例えばAHU106)に、又はビルディング10の個々のフロア若しくは区域(例えばVAVユニット116)に、加熱及び/又は冷却された水を送給し得る。エアハンドラは、水が流れる熱交換器(例えば加熱コイル又は冷却コイル)に空気を押し通して、空気を加熱又は冷却する。加熱又は冷却された空気は、ビルディング10の個々の区域に送給されて、ビルディング10の熱エネルギー負荷を提供し得る。次いで、水はサブプラント202~212に戻り、さらなる加熱又は冷却を受ける。
【0046】
サブプラント202~212は、ビルディングへの循環用の水を加熱及び冷却するものとして図示されて述べられているが、熱エネルギー負荷を供給するために水の代わりに、又は水に加えて、任意の他のタイプの作動流体(例えばグリコールやCO2など)が使用されてもよいことを理解されたい。他の実施形態では、サブプラント202~212は、中間伝熱流体を必要とせずに、ビルディング又はキャンパスに加熱及び/又は冷却を直接提供し得る。ウォーターサイドシステム200に対するこれら及び他の変形形態も本開示の教示の範囲内にある。
【0047】
サブプラント202~212はそれぞれ、サブプラントの機能を実現しやすくするように構成された様々な機器を含み得る。例えば、加熱器サブプラント202は、温水ループ214内の温水に熱を加えるように構成された複数の加熱要素220(例えばボイラや電気加熱器など)を含むものとして示されている。また、加熱器サブプラント202は、いくつかのポンプ222及び224を含むものとして示されており、これらのポンプ222及び224は、温水ループ214内で温水を循環させ、個々の加熱要素220を通る温水の流量を制御するように構成される。冷却器サブプラント206は、冷水ループ216内の冷水から熱を除去するように構成された複数の冷却器232を含むものとして示されている。また、冷却器サブプラント206は、いくつかのポンプ234及び236を含むものとして示されており、ポンプ234及び236は、冷水ループ216内で冷水を循環させ、個々の冷却器232を通る冷水の流量を制御するように構成される。
【0048】
熱回収冷却器サブプラント204は、冷水ループ216から温水ループ214に熱を伝達するように構成された複数の熱回収熱交換器226(例えば冷蔵回路)を含むものとして示されている。また、熱回収冷却器サブプラント204は、いくつかのポンプ228及び230を含むものとして示されており、ポンプ228及び230は、熱回収熱交換器226を通して温水及び/又は冷水を循環させ、個々の熱回収熱交換器226を通る水の流量を制御するように構成される。冷却塔サブプラント208は、凝縮器水ループ218内の凝縮器水から熱を除去するように構成された複数の冷却塔238を含むものとして示されている。また、冷却塔サブプラント208は、いくつかのポンプ240を含むものとして示されており、ポンプ240は、凝縮器水ループ218内で凝縮器水を循環させ、個々の冷却塔238を通る凝縮器水の流量を制御するように構成される。
【0049】
高温TESサブプラント210は、後の使用のために温水を貯蔵するように構成された高温TESタンク242を含むものとして示されている。また、高温TESサブプラント210は、1つ又は複数のポンプ又は弁を含んでもよく、これらのポンプ又は弁は、高温TESタンク242の内外への温水の流量を制御するように構成される。低温TESサブプラント212は、後の使用のために冷水を貯蔵するように構成された低温TESタンク244を含むものとして示されている。また、低温TESサブプラント212は、1つ又は複数のポンプ又は弁を含むこともあり、これらのポンプ又は弁は、低温TESタンク244の内外への冷水の流量を制御するように構成される。
【0050】
いくつかの実施形態では、ウォーターサイドシステム200内のポンプ(例えばポンプ222、224、228、230、234、236、及び/又は240)又はウォーターサイドシステム200内のパイプラインの1つ又は複数が、それらに関連付けられた隔離弁を含む。隔離弁は、ウォーターサイドシステム200内の流体の流れを制御するために、ポンプと一体化されても、ポンプの上流又は下流に位置決めされてもよい。様々な実施形態において、ウォーターサイドシステム200は、ウォーターサイドシステム200の特定の構成と、ウォーターサイドシステム200によって提供される負荷のタイプとに基づいて、より多数、より少数、又は異なるタイプのデバイス及び/又はサブプラントを含むこともある。
【0051】
エアサイドシステム
次に図3を参照すると、いくつかの実施形態によるエアサイドシステム300のブロック図が示されている。様々な実施形態において、エアサイドシステム300は、HVACシステム100内のエアサイドシステム130を補助するか、若しくはそれに置き代わってもよく、又はHVACシステム100とは別個に実装されてもよい。HVACシステム100に実装されるとき、エアサイドシステム300は、HVACシステム100内のHVACデバイスのサブセット(例えばAHU106、VAVユニット116、ダクト112~114、ファン、ダンパなど)を含んでもよく、ビルディング10内又は周辺に位置し得る。エアサイドシステム300は、ウォーターサイドシステム200によって提供される加熱又は冷却された流体を使用して、ビルディング10に提供される気流を加熱又は冷却するように動作し得る。
【0052】
図3に、エアサイドシステム300が、エコノマイザ型エアハンドリングユニット(AHU)302を含むものとして示されている。エコノマイザ型AHUは、加熱又は冷却のためにエアハンドリングユニットによって使用される外気及び還気の量を変える。例えば、AHU302は、ビルディング区域306から還気ダクト308を通して還気304を受け取ってもよく、給気ダクト312を通してビルディング区域306に給気310を送給してもよい。いくつかの実施形態では、AHU302は、ビルディング10の屋根に位置する屋上ユニット(例えば図1に示されるAHU106)、又は還気304と外気314との両方を受け取るように他の場所に位置決めされた屋上ユニットである。AHU302は、混ざり合って給気310を生成する外気314と還気304との量を制御するために、排気ダンパ316、混合ダンパ318、及び外気ダンパ320を動作させるように構成され得る。混合ダンパ318を通過しない還気304は、AHU302から排気ダンパ316を通して排気322として排出され得る。
【0053】
各ダンパ316~320は、アクチュエータによって動作することができる。例えば、排気ダンパ316はアクチュエータ324によって動作することができ、混合ダンパ318はアクチュエータ326によって動作することができ、外気ダンパ320はアクチュエータ328によって動作することができる。アクチュエータ324~328は、通信リンク332を介してAHU制御装置330と通信し得る。アクチュエータ324~328は、AHU制御装置330から制御信号を受信することができ、AHU制御装置330にフィードバック信号を提供し得る。フィードバック信号は、例えば、現在のアクチュエータ又はダンパ位置の標示、アクチュエータによって及ぼされるトルク又は力の量、診断情報(例えばアクチュエータ324~328によって実施された診断テストの結果)、ステータス情報、試運転情報、構成設定、較正データ、及び/又はアクチュエータ324~328によって収集、記憶、若しくは使用され得る他のタイプの情報若しくはデータを含み得る。AHU制御装置330は、1つ又は複数の制御アルゴリズム(例えば、状態ベースアルゴリズム、極値探索制御(ESC)アルゴリズム、比例積分(PI)制御アルゴリズム、比例積分微分(PID)制御アルゴリズム、モデル予測制御(MPC)アルゴリズム、フィードバック制御アルゴリズムなど)を使用してアクチュエータ324~328を制御するように構成されたエコノマイザ制御装置であってもよい。
【0054】
引き続き図3を参照すると、AHU302は、給気ダクト312内に位置決めされた冷却コイル334、加熱コイル336、及びファン338を含むものとして示されている。ファン338は、給気310を冷却コイル334及び/又は加熱コイル336に通し、さらに給気310をビルディング区域306に提供するように構成され得る。AHU制御装置330は、通信リンク340を介してファン338と通信して、給気310の流量を制御し得る。いくつかの実施形態では、AHU制御装置330は、ファン338の速度を調整することによって、給気310に加えられる加熱又は冷却の量を制御する。
【0055】
冷却コイル334は、冷却された流体を、配管342を通してウォーターサイドシステム200から(例えば冷水ループ216から)受け取ることができ、また、冷却された流体を、配管344を通してウォーターサイドシステム200に戻すことができる。冷却コイル334を通る冷却流体の流量を制御するために、配管342又は配管344に沿って弁346が位置決めされ得る。いくつかの実施形態では、冷却コイル334は、給気310に加えられる冷却量を調整するために、(例えばAHU制御装置330やBMS制御装置366などによって)独立して作動及び作動停止され得る複数ステージの冷却コイルを含む。
【0056】
加熱コイル336は、加熱された流体を、配管348を通してウォーターサイドシステム200から(例えば温水ループ214から)受け取ることができ、また、加熱された流体を、配管350を通してウォーターサイドシステム200に戻すことができる。加熱コイル336を通る加熱流体の流量を制御するために、配管348又は配管350に沿って弁352が位置決めされ得る。いくつかの実施形態では、加熱コイル336は、給気310に加えられる加熱量を調整するために、(例えばAHU制御装置330やBMS制御装置366などによって)独立して作動及び作動停止され得る複数ステージの加熱コイルを含む。
【0057】
弁346及び352はそれぞれ、アクチュエータによって制御され得る。例えば、弁346はアクチュエータ354によって制御されてもよく、弁352はアクチュエータ356によって制御されてもよい。アクチュエータ354~356は、通信リンク358~360を介してAHU制御装置330と通信し得る。アクチュエータ354~356は、AHU制御装置330から制御信号を受信することができ、制御装置330にフィードバック信号を提供し得る。いくつかの実施形態では、AHU制御装置330は、給気ダクト312内(例えば冷却コイル334及び/又は加熱コイル336の下流)に位置決めされた温度センサ362から給気温度の測定値を受信する。また、AHU制御装置330は、ビルディング区域306内に位置する温度センサ364からビルディング区域306の温度の測定値を受信することもある。
【0058】
いくつかの実施形態では、AHU制御装置330は、アクチュエータ354~356によって弁346及び352を操作して、(例えば給気310の設定値温度を実現するため、又は設定値温度範囲内で給気310の温度を維持するために)給気310に提供される加熱又は冷却の量を調整する。弁346及び352の位置は、冷却コイル334又は加熱コイル336によって給気310に提供される加熱又は冷却の量に影響を及ぼし、所望の給気温度を実現するために消費されるエネルギーの量と相関し得る。AHU330は、コイル334~336を作動若しくは作動停止させること、ファン338の速度を調節すること、又はそれら両方の組合せによって、給気310及び/又はビルディング区域306の温度を制御し得る。
【0059】
引き続き図3を参照すると、エアサイドシステム300は、ビルディング管理システム(BMS)制御装置366及びクライアントデバイス368を含むものとして示されている。BMS制御装置366は、システムレベル制御装置として働く1つ又は複数のコンピュータシステム(例えばサーバ、監視制御装置、サブシステム制御装置など)、アプリケーション若しくはデータサーバ、ヘッドノード、又は、エアサイドシステム300用のマスタ制御装置、ウォーターサイドシステム200、HVACシステム100、及び/又はビルディング10にサービス提供する他の制御可能なシステムを含み得る。BMS制御装置366は、複数の下流のビルディングシステム又はサブシステム(例えばHVACシステム100、セキュリティシステム、照明システム、ウォーターサイドシステム200など)と、同様の又は異なるプロトコル(例えばLONやBACnetなど)に従って通信リンク370を介して通信し得る。様々な実施形態において、AHU制御装置330とBMS制御装置366は、(図3に示されるように)別々であっても、一体化されていてもよい。一体化された実装では、AHU制御装置330は、BMS制御装置366のプロセッサによって実行されるように構成されたソフトウェアモジュールであってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、AHU制御装置330は、BMS制御装置366から情報(例えばコマンド、設定値、動作境界など)を受信し、BMS制御装置366に情報(例えば温度測定値、弁又はアクチュエータ位置、動作ステータス、診断など)を提供する。例えば、AHU制御装置330は、温度センサ362~364からの温度測定値、機器のオン/オフ状態、機器の動作能力、及び/又は任意の他の情報をBMS制御装置366に提供することができ、これらの情報をBMS制御装置366が使用して、ビルディング区域306内の変動する状態又は条件を監視又は制御することができる。
【0061】
クライアントデバイス368は、HVACシステム100、そのサブシステム、及び/又はデバイスを制御、閲覧、又は他の形でそれらと対話するための1つ又は複数の人間-機械インターフェース又はクライアントインターフェース(例えば、グラフィカルユーザインターフェース、報告インターフェース、テキストベースのコンピュータインターフェース、クライアントフェーシングウェブサービス、ウェブクライアントにページを提供するウェブサーバなど)を含み得る。クライアントデバイス368は、コンピュータワークステーション、クライアント端末、遠隔若しくはローカルインターフェース、又は任意の他のタイプのユーザインターフェースデバイスであってもよい。クライアントデバイス368は、固定端末でもモバイルデバイスでもよい。例えば、クライアントデバイス368は、デスクトップコンピュータ、ユーザインターフェースを備えるコンピュータサーバ、ラップトップコンピュータ、タブレット、スマートフォン、PDA、又は任意の他のタイプのモバイルデバイス若しくは非モバイルデバイスであってもよい。クライアントデバイス368は、通信リンク372を介してBMS制御装置366及び/又はAHU制御装置330と通信し得る。
【0062】
ビルディング管理システム
次に図4を参照すると、いくつかの実施形態によるビルディング管理システム(BMS)400のブロック図が示されている。BMS400は、様々なビルディング機能を自動的に監視及び制御するためにビルディング10に実装され得る。BMS400は、BMS制御装置366及び複数のビルディングサブシステム428を含むものとして示されている。ビルディングサブシステム428は、ビルディング電気サブシステム434、情報通信技術(ICT)サブシステム436、セキュリティサブシステム438、HVACサブシステム440、照明サブシステム442、エレベータ/エスカレータサブシステム432、及び火災安全サブシステム430を含むものとして示されている。様々な実施形態において、ビルディングサブシステム428は、より少数の、追加の、又は代替のサブシステムを含むことができる。例えば、追加又は代替として、ビルディングサブシステム428は、冷蔵サブシステム、広告若しくは標識サブシステム、調理サブシステム、販売サブシステム、プリンタ若しくはコピーサービスサブシステム、又は、ビルディング10を監視若しくは制御するために制御可能な機器及び/又はセンサを使用する任意の他のタイプのビルディングサブシステムを含み得る。いくつかの実施形態では、ビルディングサブシステム428は、図2~3を参照して述べたように、ウォーターサイドシステム200及び/又はエアサイドシステム300を含む。
【0063】
各ビルディングサブシステム428は、その個々の機能及び制御活動を完遂するための多数のデバイス、制御装置、及び接続を含み得る。HVACサブシステム440は、図1~3を参照して述べたようなHVACシステム100と同じ構成要素の多くを含み得る。例えば、HVACサブシステム440は、冷却器、ボイラ、多数のエアハンドリングユニット、エコノマイザ、フィールド制御装置、監視制御装置、アクチュエータ、温度センサ、及び、ビルディング10内の温度、湿度、気流、又は他の可変条件を制御するための他のデバイスを含み得る。照明サブシステム442は、多数の照明器具、安定器、照明センサ、調光器、又は、ビルディング空間に提供される光の量を制御可能に調節するように構成された他のデバイスを含み得る。セキュリティサブシステム438は、人感センサ、ビデオ監視カメラ、デジタルビデオレコーダ、ビデオ処理サーバ、侵入検出デバイス、アクセス制御デバイス及びサーバ、又は他のセキュリティ関連デバイスを含み得る。
【0064】
引き続き図4を参照すると、BMS制御装置366は、通信インターフェース407及びBMSインターフェース409を含むものとして示されている。インターフェース407は、BMS制御装置366と外部アプリケーション(例えば監視及び報告アプリケーション422、企業管理アプリケーション426、遠隔システム及びアプリケーション444、クライアントデバイス448に常駐するアプリケーションなど)との間の通信を容易にして、BMS制御装置366及び/又はサブシステム428に対するユーザ制御、監視、及び調節を可能にし得る。また、インターフェース407は、BMS制御装置366とクライアントデバイス448との間の通信を容易にし得る。BMSインターフェース409は、BMS制御装置366とビルディングサブシステム428(例えばHVAC、照明セキュリティ、エレベータ、配電、ビジネスなど)との間の通信を容易にし得る。
【0065】
インターフェース407、409は、ビルディングサブシステム428又は他の外部システム若しくはデバイスとのデータ通信を行うための有線若しくは無線通信インターフェース(例えばジャック、アンテナ、送信機、受信機、送受信機、有線端末など)でもよく、又はそれを含むことができる。様々な実施形態において、インターフェース407、409を介する通信は、直接的なもの(例えばローカル有線又は無線通信)でも、通信ネットワーク446(例えばWAN、インターネット、セルラネットワークなど)を介するものでもよい。例えば、インターフェース407、409は、Ethernet(登録商標)ベースの通信リンク又はネットワークを介してデータを送受信するためのEthernetカード及びポートを含むことができる。別の例では、インターフェース407、409は、無線通信ネットワークを介して通信するためのWi-Fi送受信機を含むことができる。別の例では、インターフェース407、409の一方又は両方は、セルラ又は携帯電話通信送受信機を含み得る。一実施形態では、通信インターフェース407は電力線通信インターフェースであり、BMSインターフェース409はEthernetインターフェースである。他の実施形態では、通信インターフェース407とBMSインターフェース409がどちらもEthernetインターフェースであるか、又は同一のEthernetインターフェースである。
【0066】
引き続き図4を参照すると、BMS制御装置366は、プロセッサ406及びメモリ408を含む処理回路404を含むものとして示されている。処理回路404は、処理回路404及びその様々な構成要素がインターフェース407、409を介してデータを送受信できるように、BMSインターフェース409及び/又は通信インターフェース407に通信可能に接続され得る。プロセッサ406は、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ若しくは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、1群の処理コンポーネント、又は他の適切な電子処理コンポーネントとして実装することができる。
【0067】
メモリ408(例えばメモリ、メモリユニット、記憶デバイスなど)は、本出願で述べる様々なプロセス、層、及びモジュールを完遂又は容易化するためのデータ及び/又はコンピュータコードを記憶するための1つ又は複数のデバイス(例えばRAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスク記憶装置など)を含み得る。メモリ408は、揮発性メモリ若しくは不揮発性メモリでもよく、又はそれを含んでいてもよい。メモリ408は、データベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント、又は、本出願で述べる様々な活動及び情報構造をサポートするための任意の他のタイプの情報構造を含み得る。いくつかの実施形態によれば、メモリ408は、処理回路404を介してプロセッサ406に通信可能に接続され、(例えば処理回路404及び/又はプロセッサ406によって)本明細書で述べる1つ又は複数のプロセスを実行するためのコンピュータコードを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、BMS制御装置366は、単一のコンピュータ(例えば1つのサーバや1つのハウジングなど)内に実装される。様々な他の実施形態では、BMS制御装置366は、(例えば分散された場所に存在することができる)複数のサーバ又はコンピュータにわたって分散されることもある。さらに、図4は、BMS制御装置366の外部に存在するものとしてアプリケーション422及び426を示しているが、いくつかの実施形態では、アプリケーション422及び426は、BMS制御装置366内(例えばメモリ408内)でホストされることもある。
【0069】
引き続き図4を参照すると、メモリ408は、企業統合層410、自動測定及び検証(AM&V)層412、要求応答(DR)層414、故障検出及び診断(FDD)層416、統合制御層418、並びにビルディングサブシステム統合層420を含むものとして示されている。層410~420は、ビルディングサブシステム428及び他のデータ源から入力を受信し、入力に基づいてビルディングサブシステム428のための最適な制御アクションを決定し、最適な制御アクションに基づいて制御信号を生成し、生成された制御信号をビルディングサブシステム428に提供するように構成され得る。以下の段落では、BMS400での各層410~420によって実施される全般的な機能のいくつかを述べる。
【0070】
企業統合層410は、様々な企業レベルのアプリケーションをサポートするための情報及びサービスをクライアント又はローカルアプリケーションに提供するように構成され得る。例えば、企業管理アプリケーション426は、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)又は多数の企業レベルのビジネスアプリケーション(例えば会計システムやユーザ識別システムなど)にサブシステムスパニング制御を提供するように構成され得る。企業管理アプリケーション426は、追加又は代替として、BMS制御装置366を構成するための構成GUIを提供するように構成されることもある。さらに他の実施形態では、企業管理アプリケーション426は、層410~420と協働して、インターフェース407及び/又はBMSインターフェース409で受信された入力に基づいてビルディングパフォーマンス(例えば効率、エネルギー使用量、快適性、又は安全性)を最適化することができる。
【0071】
ビルディングサブシステム統合層420は、BMS制御装置366とビルディングサブシステム428との間の通信を管理するように構成され得る。例えば、ビルディングサブシステム統合層420は、ビルディングサブシステム428からセンサデータ及び入力信号を受信し、ビルディングサブシステム428に出力データ及び制御信号を提供し得る。ビルディングサブシステム統合層420は、ビルディングサブシステム428間の通信を管理するように構成されることもある。ビルディングサブシステム統合層420は、複数のマルチベンダ/マルチプロトコルシステムにわたって通信(例えばセンサデータ、入力信号、出力信号など)を変換する。
【0072】
要求応答層414は、ビルディング10の要求が満たされたことに応答して、資源使用量(例えば電気使用量、天然ガス使用量、水使用量など)及び/又はそのような資源使用量の金銭的コストを最適化するように構成され得る。最適化は、時間帯別の価格、削減信号、エネルギー利用可能性、又は、公益事業者、分散型エネルギー生成システム424、エネルギー貯蔵装置427(例えば高温TES242や低温TES244など)、若しくは他の提供源から受信される他のデータに基づき得る。要求応答層414は、BMS制御装置366の他の層(例えばビルディングサブシステム統合層420や統合制御層418など)からの入力を受信することもある。他の層から受信される入力は、温度、二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、空気質センサ出力、人感センサ出力、部屋スケジュールなどの環境入力又はセンサ入力を含み得る。また、入力は、公益事業からの電気使用量(例えば単位kWhで表される)、熱負荷測定値、価格情報、予測価格、平滑化価格、削減信号などの入力を含むこともある。
【0073】
いくつかの実施形態によれば、要求応答層414は、受信したデータ及び信号に応答するための制御論理を含む。これらの応答は、統合制御層418内の制御アルゴリズムと通信すること、制御戦略を変更すること、設定値を変更すること、又は制御下でビルディング機器若しくはサブシステムを作動/作動停止することを含むことができる。また、要求応答層414は、貯蔵されているエネルギーを利用すべき時を決定するように構成された制御論理を含むこともある。例えば、要求応答層414は、ピーク使用時間の開始直前にエネルギー貯蔵装置427からのエネルギーの使用を開始することを決定し得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、要求応答層414は、要求(例えば価格、削減信号、要求レベルなど)を表す1つ又は複数の入力に基づいて、又は要求に基づいて、エネルギーコストを最小にする(例えば自動的に設定値を変更する)制御アクションを能動的に開始するように構成された制御モジュールを含む。いくつかの実施形態では、要求応答層414は、機器モデルを使用して、最適な1組の制御アクションを決定する。機器モデルは、例えば、様々な組のビルディング機器によって実施される入力、出力、及び/又は機能を記述する熱力学モデルを含むことができる。機器モデルは、ビルディング機器の集合体(例えば、サブプラント、冷却器アレイなど)又は個々のデバイス(例えば、個々の冷却器、ヒータ、ポンプなど)を表すことがある。
【0075】
さらに、要求応答層414は、1つ又は複数の要求応答ポリシー定義(例えばデータベースやXMLファイルなど)を含む、又は利用し得る。ポリシー定義は、(例えばグラフィカルユーザインターフェースを介して)ユーザによって編集又は調節することができ、それにより、要求入力に応答して開始される制御アクションは、ユーザの用途に合わせて、所望の快適性レベルに合わせて、特定のビルディング機器に合わせて、又は他の事項に基づいて調整され得る。例えば、要求応答ポリシー定義は、特定の要求入力に応答してどの機器がオン又はオフにされ得るか、システム又は機器をどれほど長くオフにすべきか、どの設定値を変更できるか、許容できる設定値調節範囲はどの程度か、通常通り予定された設定値に戻るまでに高い要求設定値をどれほど長く保つか、能力の限界にどれほど近付くか、どの機器モードを利用するか、エネルギー貯蔵デバイス(例えば熱貯蔵タンクやバッテリバンクなど)の内外へのエネルギー伝達速度(例えば最高速度、アラーム速度、他の速度限度情報など)、及び(例えば燃料電池や電動発電機セットなどを介して)現場でのエネルギー発生を送出する時を指定することができる。
【0076】
統合制御層418は、ビルディングサブシステム統合層420及び/又は要求応答層414のデータ入力又は出力を使用して制御決定を行うように構成され得る。ビルディングサブシステム統合層420によって実現されるサブシステムの統合により、統合制御層418は、サブシステム428の制御活動を統合することができ、それにより、サブシステム428が単一の統合型スーパーシステムとして挙動する。いくつかの実施形態では、統合制御層418は、複数のビルディングサブシステムからの入力及び出力を使用する制御論理を含み、個々のサブシステムが単独で提供することができる快適性及びエネルギー節約よりも大きな快適性及びエネルギー節約を提供する。例えば、統合制御層418は、第1のサブシステムからの入力を使用して、第2のサブシステムに関するエネルギー節約制御決定を行うように構成され得る。これらの決定の結果は、ビルディングサブシステム統合層420に通信し返すことができる。
【0077】
統合制御層418は、論理的に要求応答層414の下位にあるものとして示されている。統合制御層418は、ビルディングサブシステム428及びそれらそれぞれの制御ループを要求応答層414と共同で制御できるようにすることによって、要求応答層414の有効性を高めるように構成され得る。この構成は、有利には、従来のシステムに比べて、破壊的な要求応答挙動を減少し得る。例えば、統合制御層418は、冷却される水の温度の設定値(又は温度に直接若しくは間接的に影響を及ぼす別の成分)に対する要求応答に基づく上方修正が、ファンエネルギー(又は空間を冷却するために使用される他のエネルギー)の増加をもたらさないことを保証するように構成され得る。そのようなファンエネルギーの増加は、ビルディング総エネルギー使用量を、冷却器で保存されているエネルギーよりも大きくしてしまう。
【0078】
統合制御層418は、要求応答層414にフィードバックを提供するように構成されてもよく、それにより、要求応答層414は、要求された部分的送電停止が行われている間であっても制約(例えば温度や照明レベルなど)が適切に維持されていることをチェックする。制約には、安全性、機器動作限界及びパフォーマンス、快適性、火災コード、電気コード、エネルギーコードなどに関係する設定値又は検知境界が含まれることもある。また、統合制御層418は、論理的に、故障検出及び診断層416、並びに自動測定及び検証層412の下位にある。統合制御層418は、複数のビルディングサブシステムからの出力に基づいて、計算された入力(例えば集約)をこれらのより高いレベルの層に提供するように構成され得る。
【0079】
自動測定及び検証(AM&V)層412は、(例えばAM&V層412、統合制御層418、ビルディングサブシステム統合層420、FDD層416、又は他の層によって集約されたデータを使用して)統合制御層418又は要求応答層414によって指令された制御戦略が適切に機能していることを検証するように構成され得る。AM&V層412によって行われる計算は、個々のBMSデバイス又はサブシステムに関するビルディングシステムエネルギーモデル及び/又は機器モデルに基づき得る。例えば、AM&V層412は、モデルに基づいて予測された出力をビルディングサブシステム428からの実際の出力と比較して、モデルの精度を決定し得る。
【0080】
故障検出及び診断(FDD)層416は、ビルディングサブシステム428及びビルディングサブシステムデバイス(すなわちビルディング機器)に関する継続的な故障検出機能を提供し、要求応答層414及び統合制御層418によって使用されるアルゴリズムを制御するように構成され得る。FDD層416は、統合制御層418から、直接的に1つ若しくは複数のビルディングサブシステム若しくはデバイスから、又は別のデータ源から、データ入力を受信し得る。FDD層416は、検出された故障を自動的に診断して応答し得る。検出又は診断された故障に対する応答は、ユーザ、メンテナンススケジューリングシステム、又は故障を修理する若しくは故障に対処することを試みるように構成された制御アルゴリズムに警報メッセージを提供することを含み得る。
【0081】
FDD層416は、ビルディングサブシステム統合層420で利用可能な詳細なサブシステム入力を使用して、故障している構成要素又は故障の原因(例えば緩いダンパ連係)の具体的な識別を出力するように構成され得る。他の例示的実施形態では、FDD層416は、「故障」イベントを統合制御層418に提供するように構成され、統合制御層418は、受信された故障イベントに応答して制御戦略及びポリシーを実行する。いくつかの実施形態によれば、FDD層416(又は統合制御エンジン若しくはビジネスルールエンジンによって実行されるポリシー)は、システムをシャットダウンして、又は故障しているデバイス若しくはシステムの周囲での制御活動を指示して、エネルギー浪費を減少させ、機器寿命を延ばし、又は適切な制御応答を保証し得る。
【0082】
FDD層416は、様々な異なるシステムデータストア(又はライブデータに関するデータポイント)を記憶する、又はそこにアクセスするように構成され得る。FDD層416は、データストアのうち、あるコンテンツを、機器レベル(例えば特定の冷却器、特定のAHU、特定の端末ユニットなど)での故障を識別するために使用し、他のコンテンツを、構成要素又はサブシステムレベルでの故障を識別するために使用し得る。例えば、ビルディングサブシステム428は、BMS400及びその様々な構成要素のパフォーマンスを示す時間的(すなわち時系列)データを生成し得る。ビルディングサブシステム428によって生成されるデータは、測定値又は計算値を含むことがあり、それらの測定値又は計算値は、統計的特性を示し、対応するシステム又はプロセス(例えば温度制御プロセスや流量制御プロセスなど)がその設定値からの誤差に対してどのように挙動しているかに関する情報を提供する。これらのプロセスは、FDD層416によって検査することができ、システムのパフォーマンスが低下し始めた時を明らかにし、より深刻になる前に故障を修理するようにユーザに警報する。
【0083】
次に図5を参照すると、いくつかの実施形態による、別のビルディング管理システム(BMS)500のブロック図が示されている。BMS500を使用して、HVACシステム100、ウォーターサイドシステム200、エアサイドシステム300、ビルディングサブシステム428のデバイス、並びに他のタイプのBMSデバイス(例えば、照明機器、セキュリティ機器など)及び/又はHVAC機器を監視及び制御することができる。
【0084】
BMS500は、自動機器発見及び機器モデル分配を容易にするシステムアーキテクチャを提供する。機器発見は、複数の異なる通信バス(例えば、システムバス554、ゾーンバス556~560及び564、センサ/アクチュエータバス566など)にわたって、及び複数の異なる通信プロトコルにわたって、BMS500の複数のレベルで行うことができる。いくつかの実施形態では、機器発見は、アクティブノードテーブルを使用して達成され、アクティブノードテーブルは、各通信バスに接続されたデバイスに関するステータス情報を提供する。例えば、新たなノードに関する対応するアクティブノードテーブルを監視することによって、新たなデバイスについて各通信バスを監視することができる。新たなデバイスが検出されると、BMS500は、ユーザ対話なしで、新たなデバイスとの対話(例えば、制御信号の送信、デバイスからのデータの使用)を開始することができる。
【0085】
BMS500でのいくつかのデバイスは、機器モデルを使用してネットワークにそれら自体の存在を知らせる。機器モデルは、他のシステムとの統合のために使用される機器オブジェクト属性、ビュー定義、スケジュール、トレンド、及び関連のBACnet値オブジェクト(例えば、アナログ値、バイナリ値、マルチステート値など)を定義する。BMS500でのいくつかのデバイスは、それら独自の機器モデルを記憶している。BMS500での他のデバイスは、機器モデルが外部に(例えば、他のデバイス内に)記憶されている。例えば、ゾーンコーディネータ508が、バイパスダンパ528に関する機器モデルを記憶することができる。いくつかの実施形態において、ゾーンコーディネータ508は、バイパスダンパ528又はゾーンバス558上の他のデバイスに関する機器モデルを自動的に作成する。他のゾーンコーディネータも、それらのゾーンバスに接続されたデバイスに関する機器モデルを作成することができる。デバイスに関する機器モデルは、ゾーンバス上のデバイスによって提示されるデータポイントのタイプ、デバイスタイプ、及び/又は他のデバイス属性に基づいて自動的に作成することができる。自動の機器発見及び機器モデル分配のいくつかの例を以下でより詳細に論じる。
【0086】
図5をさらに参照すると、BMS500は、システムマネージャ502と、いくつかのゾーンコーディネータ506、508、510、及び518と、いくつかのゾーンコントローラ524、530、532、536、548、及び550とを含むものとして示されている。システムマネージャ502は、BMS500内のデータポイントを監視し、監視される変数を様々な監視及び/又は制御アプリケーションに報告することができる。システムマネージャ502は、データ通信リンク574(例えば、BACnet IP、イーサネット(登録商標)、有線又は無線通信など)を介してクライアントデバイス504(例えば、ユーザデバイス、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、モバイルデバイスなど)と通信することができる。システムマネージャ502は、データ通信リンク574を介してクライアントデバイス504へのユーザインターフェースを提供することができる。ユーザインターフェースは、ユーザがクライアントデバイス504を介してBMS500を監視及び/又は制御できるようにし得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、システムマネージャ502は、システムバス554を介してゾーンコーディネータ506~510及び518と接続される。システムマネージャ502は、マスタ・スレーブトークンパッシング(MSTP)プロトコル又は任意の他の通信プロトコルを使用して、システムバス554を介してゾーンコーディネータ506~510及び518と通信するように構成することができる。また、システムバス554は、システムマネージャ502を、定容積(CV)ルーフトップユニット(RTU)512、入出力モジュール(IOM)514、サーモスタットコントローラ516(例えば、TEC5000系列のサーモスタットコントローラ)、及びネットワーク自動化エンジン(NAE)又はサードパーティのコントローラ520など他のデバイスと接続することもできる。RTU512は、システムマネージャ502と直接通信するように構成することができ、システムバス554に直接接続することができる。他のRTUは、中間デバイスを介してシステムマネージャ502と通信することができる。例えば、有線入力562は、サードパーティのRTU542をサーモスタットコントローラ516に接続することができ、サーモスタットコントローラ516は、システムバス554に接続する。
【0088】
システムマネージャ502は、機器モデルを含む任意のデバイスのためのユーザインターフェースを提供することができる。ゾーンコーディネータ506~510及び518並びにサーモスタットコントローラ516などのデバイスは、システムバス554を介してそれらの機器モデルをシステムマネージャ502に提供することができる。いくつかの実施形態では、システムマネージャ502は、機器モデルを含まない接続されたデバイス(例えば、IOM514、サードパーティのコントローラ520など)に関して、機器モデルを自動的に作成する。例えば、システムマネージャ502は、デバイスツリーリクエストに応答する任意のデバイスに関する機器モデルを作成することができる。システムマネージャ502によって作成された機器モデルは、システムマネージャ502に記憶することができる。次いで、システムマネージャ502は、システムマネージャ502によって作成された機器モデルを使用して、自機の機器モデルを含まないデバイスのためのユーザインターフェースを提供することができる。いくつかの実施形態では、システムマネージャ502は、システムバス554を介して接続された各タイプの機器に関するビュー定義を記憶し、記憶されているビュー定義を使用してその機器のためのユーザインターフェースを生成する。
【0089】
各ゾーンコーディネータ506~510及び518は、ゾーンバス556、558、560、及び564を介してゾーンコントローラ524、530~532、536、及び548~550の1つ又は複数と接続することができる。ゾーンコーディネータ506~510及び518は、MSTPプロトコル又は任意の他の通信プロトコルを使用して、ゾーンバス556~560及び564を介してゾーンコントローラ524、530~532、536、及び548~550と通信することができる。また、ゾーンバス556~560及び564は、ゾーンコーディネータ506~510及び518を、可変風量(VAV)RTU522及び540、切替えバイパス(COBP)RTU526及び552、バイパスダンパ528及び546、並びにPEAKコントローラ534及び544など他のタイプのデバイスと接続することもできる。
【0090】
ゾーンコーディネータ506~510及び518は、様々なゾーニングシステムを監視及び命令するように構成することができる。いくつかの実施形態では、各ゾーンコーディネータ506~510及び518は、別個のゾーニングシステムを監視及び命令し、別個のゾーンバスを介してゾーニングシステムに接続される。例えば、ゾーンコーディネータ506は、ゾーンバス556を介してVAV RTU522及びゾーンコントローラ524に接続することができる。ゾーンコーディネータ508は、ゾーンバス558を介してCOBP RTU526、バイパスダンパ528、COBPゾーンコントローラ530、及びVAVゾーンコントローラ532に接続することができる。ゾーンコーディネータ510は、ゾーンバス560を介してPEAKコントローラ534及びVAVゾーンコントローラ536に接続することができる。ゾーンコーディネータ518は、ゾーンバス564を介して、PEAKコントローラ544、バイパスダンパ546、COBPゾーンコントローラ548、及びVAVゾーンコントローラ550に接続することができる。
【0091】
ゾーンコーディネータ506~510及び518の単一のモデルは、複数の異なるタイプのゾーニングシステム(例えば、VAVゾーニングシステム、COBPゾーニングシステムなど)を取り扱うように構成することができる。各ゾーニングシステムは、RTU、1つ又は複数のゾーンコントローラ、及び/又はバイパスダンパを含むことができる。例えば、ゾーンコーディネータ506及び510は、それぞれVAV RTU522及び540に接続されたVerasys VAVエンジン(VVE)として示されている。ゾーンコーディネータ506は、ゾーンバス556を介してVAV RTU522に直接接続され、ゾーンコーディネータ510は、PEAKコントローラ534に提供された有線入力568を介してサードパーティのVAV RTU540に接続される。ゾーンコーディネータ508及び518は、それぞれCOBP RTU526及び552に接続されたVerasys COBPエンジン(VCE)として示されている。ゾーンコーディネータ508は、ゾーンバス558を介してCOBP RTU526に直接接続され、ゾーンコーディネータ518は、PEAKコントローラ544に提供された有線入力570を介してサードパーティのCOBP RTU552に接続される。
【0092】
ゾーンコントローラ524、530~532、536、及び548~550は、センサ/アクチュエータ(SA)バスを介して個々のBMSデバイス(例えば、センサ、アクチュエータなど)と通信することができる。例えば、VAVゾーンコントローラ536は、SAバス566を介して、ネットワーク化されたセンサ538に接続されて示されている。ゾーンコントローラ536は、MSTPプロトコル又は任意の他の通信プロトコルを使用して、ネットワーク化されたセンサ538と通信することができる。図5にはSAバス566が1つだけ示されているが、各ゾーンコントローラ524、530~532、536、及び548~550を異なるSAバスに接続することができることを理解されたい。各SAバスは、ゾーンコントローラを様々なセンサ(例えば、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、光センサ、人感センサなど)、アクチュエータ(例えば、ダンパアクチュエータ、バルブアクチュエータなど)、及び/又は他のタイプの制御可能な機器(例えば、冷却器、ヒータ、ファン、ポンプなど)と接続することができる。
【0093】
各ゾーンコントローラ524、530~532、536、及び548~550は、異なるビルディング区域を監視及び制御するように構成することができる。ゾーンコントローラ524、530~532、536、及び548~550は、それらのSAバスを介して提供される入力及び出力を使用して、様々なビルディング区域を監視及び制御することができる。例えば、ゾーンコントローラ536は、温度制御アルゴリズムでのフィードバックとして、ネットワーク化されたセンサ538からSAバス566を介して受信された温度入力(例えば、ビルディング区域の測定された温度)を使用することができる。ゾーンコントローラ524、530~532、536、及び548~550は、様々なタイプの制御アルゴリズム(例えば、状態ベースのアルゴリズム、極値探索制御(ESC)アルゴリズム、比例積分(PI)制御アルゴリズム、比例積分微分(PID)制御アルゴリズム、モデル予測制御(MPC)アルゴリズム、フィードバック制御アルゴリズムなど)を使用して、ビルディング10内又は周囲の可変状態又は状況(例えば、温度、湿度、気流、照明など)を制御することができる。
【0094】
モデル予測的メンテナンスシステム
次に図6を参照すると、例示的実施形態による建築システム600のブロック図が示されている。システム600は、図4~5を参照して述べたBMS400及びBMS500と同じ構成要素の多くを含むことができる。例えば、システム600は、ビルディング10、ネットワーク446、及びクライアントデバイス448を含むものとして示されている。ビルディング10は、接続された機器610を含むものとして示されており、機器610は、ビルディング10を監視及び/又は制御するために使用される任意のタイプの機器を含むことができる。接続された機器610は、接続された冷却器612、接続されたAHU614、接続されたボイラ616、接続されたバッテリ618、又は建築システム内の任意の他のタイプの機器(例えば、ヒータ、エコノマイザ、バルブ、アクチュエータ、ダンパ、冷却塔、ファン、ポンプなど)若しくはビルディング管理システム内の任意の他のタイプの機器(例えば、照明機器、セキュリティ機器、冷凍機器など)を含むことができる。接続された機器610は、図1~5を参照して述べたHVACシステム100、ウォーターサイドシステム200、エアサイドシステム300、BMS400、及び/又はBMS500の機器のいずれを含むこともできる。
【0095】
接続された機器610には、接続された機器610の様々な状態(例えば、電力消費量、オン/オフ状態、動作効率など)を監視するためのセンサを装備することができる。例えば、冷却器612は、冷凍回路内の様々な位置での冷却水温度、凝縮水温度、及び冷媒特性(例えば、冷媒圧力、冷媒温度など)などの冷却器変数を監視するように構成されたセンサを含むことができる。冷却器612の1つとして使用することができる冷却器700の一例が図7に示されている。冷却器700は、凝縮器702、膨張弁704、蒸発器706、圧縮機708、及び制御パネル710を有する冷凍回路を含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、冷却器700は、冷凍回路に沿った様々な位置での1組の監視される変数を測定するセンサを含む。同様に、AHU614には、給気温度及び湿度、外気温度及び湿度、還気温度及び湿度、冷却された流体の温度、加熱された流体の温度、ダンパ位置などのAHU変数を監視するためのセンサを装備することができる。一般に、接続された機器610は、接続された機器610の性能を特徴付ける変数を監視及び報告することができる。監視された各変数は、ポイントID及びポイント値を含むデータポイントとしてビルディング管理システム606に転送することができる。
【0096】
監視される変数は、接続された機器610及び/又はその構成要素の性能を示す任意の測定された値又は計算された値を含むことができる。例えば、監視される変数は、1つ又は複数の測定又は計算された温度(例えば、冷媒温度、冷水供給温度、温水供給温度、給気温度、ゾーン温度など)、圧力(例えば、蒸発器圧力、凝縮器圧力、供給空気圧力など)、流量(例えば、冷水流量、温水流量、冷媒流量、供給空気流量など)、バルブ位置、資源消費(例えば、電力消費量、水消費量、電気消費量など)、制御設定点、モデルパラメータ(例えば、回帰モデル係数)、又は対応するシステム、デバイス、若しくはプロセスがどのように動作しているかに関する情報を提供する任意の他の時系列値を含むことができる。監視される変数は、接続された機器610及び/又はその様々な構成要素から受信することができる。例えば、監視される変数は、1つ又は複数のコントローラ(例えば、BMSコントローラ、サブシステムコントローラ、HVACコントローラ、サブプラントコントローラ、AHUコントローラ、デバイスコントローラなど)、BMSデバイス(例えば、冷却器、冷却塔、ポンプ、加熱素子など)、又はBMSデバイスの集合体から受信することができる。
【0097】
接続された機器610は、機器ステータス情報を報告することもできる。機器ステータス情報は、例えば、機器の動作ステータス、動作モード(例えば、低負荷、中負荷、高負荷など)、機器が正常な状態で稼働しているか異常な状態で稼働しているかの標示、機器が稼働している時間、安全障害コード、又は接続された機器610の現在のステータスを示す任意の他の情報を含むことができる。いくつかの実施形態において、接続された機器610の各デバイスは、制御パネル(例えば、図7に示される制御パネル710)を含む。制御パネル710は、接続された機器610から監視される変数及び機器ステータス情報を収集し、収集されたデータをBMS606に提供するように構成することができる。例えば、制御パネル710は、センサデータ(又はセンサデータから導出された値)を所定の閾値と比較することができる。センサデータ又は計算された値が安全閾値を超える場合、制御パネル710は、デバイスをシャットダウンすることができる。制御パネル710は、安全シャットダウンが起きたときにデータポイントを生成することができる。データポイントは、シャットダウンをトリガした理由又は状態を示す安全障害コードを含むことができる。
【0098】
接続された機器610は、監視される変数及び機器ステータス情報をBMS606に提供することができる。BMS606は、ビルディングコントローラ(例えば、BMSコントローラ366)、システムマネージャ(例えば、システムマネージャ503)、ネットワーク自動化エンジン(例えば、NAE520)、又は接続された機器610と通信するように構成されたビルディング10の任意の他のシステム若しくはデバイスを含むことができる。BMS606は、図4~5を参照して述べたBMS400又はBMS500の構成要素のいくつか又はすべてを含むことがある。いくつかの実施形態では、監視される変数及び機器ステータス情報は、データポイントとしてBMS606に提供される。各データポイントは、ポイントID及びポイント値を含むことができる。ポイントIDは、データポイントのタイプ又はデータポイントによって測定される変数(例えば、凝縮器圧力、冷媒温度、電力消費量など)を識別することができる。監視される変数は、名前又は英数字コード(例えば、Chilled_Water_Temp、7694など)によって識別することができる。ポイント値は、データポイントの現在の値を示す英数字値を含むことができる。
【0099】
BMS606は、監視される変数及び機器ステータス情報をモデル予測的メンテナンスシステム602にブロードキャストすることができる。いくつかの実施形態では、モデル予測的メンテナンスシステム602は、BMS606の構成要素である。例えば、モデル予測的メンテナンスシステム602は、Johnson Controls Inc.が販売しているMETASYS(登録商標)ブランドのビルディング自動化システムの一部として実装することができる。他の実施形態では、モデル予測的メンテナンスシステム602は、ネットワーク446を介して1つ又は複数のビルディング管理システムからのデータを受信及び処理するように構成された遠隔コンピューティングシステム又はクラウドベースのコンピューティングシステムの構成要素でよい。例えば、モデル予測的メンテナンスシステム602は、Johnson Controls Inc.が販売しているPANOPTIX(登録商標)ブランドのビルディング効率プラットフォームの一部として実装することができる。他の実施形態では、モデル予測的メンテナンスシステム602は、サブシステムレベルコントローラ(例えば、HVACコントローラ)、サブプラントコントローラ、デバイスコントローラ(例えば、AHUコントローラ330、冷却器コントローラなど)、フィールドコントローラ、コンピュータワークステーション、クライアントデバイス、又は接続された機器610から監視される変数を受信して処理する任意の他のシステム若しくはデバイスの構成要素でよい。
【0100】
モデル予測的メンテナンス(MPM)システム602は、監視される変数及び/又は機器ステータス情報を使用して、接続された機器610の現在の動作条件を識別することができる。MPMシステム602によって現在の動作条件を検査して、接続された機器610の性能が低下し始める時を明らかにし、及び/又は障害が発生する時を予測することができる。いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、接続された機器610から収集された情報を使用して、接続された機器610の信頼性を推定する。例えば、MPMシステム602は、接続された機器610の現在の動作条件と、接続された機器610が設置されてから及び/又はメンテナンスが最後に実施されてから経過した時間量とに基づいて、発生する可能性があり得る様々なタイプの故障の尤度を推定することができる。いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、各故障が発生すると予測されるまでの時間量を推定し、各故障に関連する経済的コスト(例えば、メンテナンスコスト、増加される動作コスト、交換コストなど)を識別する。MPMシステム602は、信頼性情報及び潜在的な故障の尤度を使用して、メンテナンスが必要とされる時を予測し、所定の期間にわたってそのようなメンテナンスを実施するコストを推定することができる。
【0101】
MPMシステム602は、接続された機器610に関する最適なメンテナンス戦略を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、最適なメンテナンス戦略は、最適化期間(例えば、30週、52週、10年、30年など)の継続期間にわたる接続された機器610の購入、メンテナンス、及び動作に関連する総コストを最適化する1組の決定事項である。これらの決定事項は、例えば、機器の購入の決定、機器のメンテナンスの決定、及び機器の動作の決定を含むことができる。MPMシステム602は、モデル予測制御技法を使用して、これらの決定事項の関数として総コストを表す目的関数を定式化することができる。決定事項は、決定変数として目的関数に含めることができる。MPMシステム602は、様々な最適化技法のいずれかを使用して目的関数を最適化(例えば最小化)して、各決定変数に関する最適値を識別することができる。
【0102】
MPMシステム602によって最適化することができる目的関数の一例は、次式で示される。
【数2】
ここで、Cop,iは、最適化期間の時間ステップiにおいて接続された機器610が消費する単位エネルギーあたりのコスト(例えば、$/kWh)であり、Pop,iは、時間ステップiにおける接続された機器610の電力消費量(例えば、kW)であり、Δtは、各時間ステップiの継続時間であり、Cmain,iは、時間ステップiにおいて接続された機器610に対して実施されるメンテナンスのコストであり、Bmain,iは、メンテナンスが実施されるかどうかを示すバイナリ変数であり、Ccap,iは、時間ステップiにおいて接続された機器610の新たなデバイスを購入する資本コストであり、Bcap,iは、新たなデバイスが購入されるかどうかを示すバイナリ変数であり、hは、最適化が実施される水平又は最適化期間の継続時間である。
【0103】
目的関数Jの第1項は、最適化期間の継続期間にわたる接続された機器610の動作コストを表す。いくつかの実施形態では、単位エネルギーあたりのコストCop,iは、エネルギー価格データとして公益企業608から受信される。コストCop,iは、時刻、曜日(例えば平日か週末か)、現在の季節(例えば夏か冬か)、又は他の時間ベースの因子に依存する時変コストでよい。例えば、コストCop,iは、ピークエネルギー消費期間中にはより高く、オフピーク又は部分ピークエネルギー消費期間中にはより低いことがある。
【0104】
いくつかの実施形態では、電力消費量Pop,iは、ビルディング10の加熱又は冷却負荷に基づく。加熱又は冷却負荷は、ビルディング占有、時刻、曜日、現在の季節、又は加熱若しくは冷却負荷に影響を与え得る他の因子に応じて、MPMシステム602によって予測することができる。いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、気象サービス604からの天気予報を使用して加熱又は冷却負荷を予測する。電力消費量Pop,iは、接続された機器610の効率ηにも依存する。例えば、高い効率で動作する接続された機器610は、低い効率で動作する接続された機器610に比べて、同じ加熱又は冷却負荷を満たすために消費する電力Pop,iが少ないことがある。一般に、接続された機器610の特定のデバイスの電力消費量Pop,iは、次式を使用してモデル化することができる。
【数3】
ここで、Loadは、時間ステップiにおけるデバイスに対する加熱又は冷却負荷(例えば、トン単位での冷却負荷、kW単位での加熱負荷など)であり、Pideal,iは、対応する負荷点Loadでのデバイスに関する機器性能曲線の値(例えば、トン単位での冷却負荷、kW単位での加熱負荷など)であり、ηは、時間ステップiにおけるデバイスの動作効率である(例えば、0≦η≦1)。関数f(Load)は、性能曲線によって表されるデバイス又はデバイスのセットの機器性能曲線によって定義することができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、機器性能曲線は、理想的な動作条件下でのデバイスに関する製造業者仕様に基づいている。例えば、機器性能曲線は、接続された機器610の各デバイスに関する電力消費量と加熱/冷却負荷との関係を定義することがある。しかし、デバイスの実際の性能は、実際の動作条件に応じて異なることがある。MPMシステム602は、接続された機器610によって提供される機器性能情報を分析して、接続された機器610の各デバイスに関する動作効率ηを決定することができる。いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、接続された機器610からの機器性能情報を使用して、接続された機器610の各デバイスに関する実際の動作効率ηを決定する。MPMシステム602は、動作効率ηを目的関数Jへの入力として使用すること、及び/又は対応するPop,i値を計算することができる。
【0106】
有利には、MPMシステム602は、各時間ステップiにおける接続された機器610の効率ηを、メンテナンス決定Bmain,i及び機器購入決定Bcap,iの関数としてモデル化することができる。例えば、特定のデバイスに関する効率ηは、デバイスが購入された時に初期値ηで始まることがあり、時間と共に低下し、連続する各時間ステップiと共に効率ηが低下することがある。デバイスに対するメンテナンスを実施することで、メンテナンスが実施された直後に効率ηをより高い値にリセットすることができる。同様に、新たなデバイスを購入して既存のデバイスと交換することで、新たなデバイスが購入された直後に効率ηをより高い値にリセットすることができる。リセット後、効率ηは、メンテナンスが実施される又は新たなデバイスが購入される次の時点まで、時間と共に低下し続けることがある。
【0107】
メンテナンスの実施又は新たなデバイスの購入により、動作中の電力消費量Pop,iが比較的低くなり、したがって、メンテナンスが実施された後又は新たなデバイスが購入された後に各時間ステップiにおける動作コストがより低くなることがある。言い換えると、メンテナンスの実施又は新たなデバイスの購入により、目的関数Jの第1項によって表される動作コストを低減することができる。しかし、メンテナンスの実施により、目的関数Jの第2項が増加することがあり、新たなデバイスの購入により、目的関数Jの第3項が増加することがある。目的関数Jは、これらの各コストを捕捉し、MPMシステム602によって最適化して、最適化期間の継続期間にわたるメンテナンス及び機器購入決定の最適な組(すなわち、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iに関する最適値)を決定することができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、接続された機器610からの機器性能情報を使用して、接続された機器610の信頼性を推定する。信頼性は、接続された機器610がその現在の動作条件下で障害なく動作し続ける尤度の統計的尺度であり得る。より過酷な条件下(例えば、高負荷、高温など)での動作は、信頼性をより低くすることがあり、より過酷でない条件下(例えば、低負荷、中程度の温度など)での動作は、信頼性をより高くすることがある。いくつかの実施形態では、信頼性は、接続された機器610が最後にメンテナンスを受けてから経過した時間量に基づく。
【0109】
MPMシステム602は、複数のビルディングに分散された接続された機器610の複数のデバイスから動作データを受信することがあり、動作データのセット(例えば、動作条件、障害標示、故障時間など)を使用して、各タイプの機器に関する信頼性モデルを生成することができる。MPMシステム602が信頼性モデルを使用して、接続された機器610の任意の所与のデバイスの信頼性を、その現在の動作条件及び/又は他の外的要因(例えば、メンテナンスが最後に実施されてからの時間、地理的位置、水質など)に応じて推定することができる。いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、接続された機器610の各デバイスの推定された信頼性を使用して、最適化期間の各時間ステップにおいてデバイスがメンテナンス及び/又は交換を必要とする確率を決定する。MPMシステム602は、これらの確率を使用して、最適化期間の継続期間にわたるメンテナンス及び機器購入決定の最適な組(すなわち、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iに関する最適値)を決定することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、機器購入及びメンテナンスの推奨を生成及び提供する。機器購入及びメンテナンスの推奨は、目的関数Jを最適化することによって決定されるバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iに関する最適値に基づくことがある。例えば、接続された機器610の特定のデバイスに関するBmain,25=1の値は、最適化期間の第25の時間ステップにおいてそのデバイスに対してメンテナンスが実施されるべきであることを示すことがあり、Bmain,25=0の値は、その時間ステップにおいてメンテナンスを実施すべきでないことを示すことがある。同様に、Bcap,25=1の値は、最適化期間の第25の時間ステップにおいて、接続された機器610の新たなデバイスを購入すべきであることを示すことがあり、Bcap,25=0の値は、その時間ステップにおいて新たなデバイスを購入すべきでないことを示すことがある。
【0111】
有利には、MPMシステム602によって生成される機器購入及びメンテナンスの推奨は、接続された機器610の実際の動作条件及び実際の性能に基づく予測的な推奨である。MPMシステム602によって実施される最適化は、メンテナンスを実施するコスト及び新たな機器を購入するコストを、そのようなメンテナンス又は購入の決定により生じる動作コストの低減に対して重み付けして、総複合コストJを最小化する最適なメンテナンス戦略を決定する。このようにして、MPMシステム602によって生成される機器購入及びメンテナンスの推奨は、各グループの接続された機器610に特有のものとなり、特定のグループの接続された機器610に関する最適なコストJを実現することができる。機器に特有の推奨は、いくつかのグループの接続された機器610及び/又はいくつかの動作条件に関しては最適でないことがある機器製造業者によって提供される一般的な予防的メンテナンスの推奨(例えば、毎年の機器の整備)に比べ、全体的なコストJを低くすることができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、機器購入及びメンテナンスの推奨は、ビルディング10(例えば、BMS606)及び/又はクライアントデバイス448に提供される。操作者又はビルディングの所有者は、機器購入及びメンテナンスの推奨を使用して、メンテナンスの実施及び新たなデバイスの購入のコスト及び利益を評価することができる。いくつかの実施形態では、機器購入及びメンテナンスの推奨が整備士620に提供される。整備士620は、機器購入及びメンテナンスの推奨を使用して、整備の実施又は機器の交換のために顧客に連絡すべき時を決定することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、データ分析及び視覚化プラットフォームを含む。MPMシステム602は、整備士620、クライアントデバイス448、及び他のシステム又はデバイスがアクセスすることができるウェブインターフェースを提供することがある。ウェブインターフェースを使用して、機器性能情報にアクセスし、最適化の結果を閲覧し、メンテナンスが必要な機器を識別し、さもなくばMPMシステム602と対話することができる。整備士620は、ウェブインターフェースにアクセスして、MPMシステム602によってメンテナンスが推奨される機器のリストを閲覧することができる。整備士620は、機器購入及びメンテナンスの推奨を使用して、接続された機器610を早期に修理又は交換し、目的関数Jによって予測される最適なコストを実現することができる。MPMシステム602のこれら及び他の特徴は、以下でより詳細に述べる。
【0114】
次に図8を参照すると、例示的実施形態に従って、MPMシステム602をより詳細に例示するブロック図が示されている。MPMシステム602は、最適化結果をビルディング管理システム(BMS)606に提供するものとして示されている。BMS606は、図4~5を参照して述べたBMS400及び/又はBMS500の特徴のいくつか又はすべてを含むことがある。BMS606に提供される最適化結果は、最適化期間内の時間ステップiごとに目的関数Jの決定変数の最適値を含むことがある。いくつかの実施形態では、最適化結果は、接続された機器610のデバイスごとの機器購入及びメンテナンスの推奨を含む。
【0115】
BMS606は、接続された機器610の動作及び性能を監視するように構成されることがある。BMS606は、接続された機器610から監視される変数を受信することができる。監視される変数は、接続された機器610及び/又はその構成要素の性能を示す任意の測定された値又は計算された値を含むことができる。例えば、監視される変数は、1つ又は複数の測定又は計算された温度、圧力、流量、バルブ位置、資源消費(例えば、電力消費量、水消費量、電気消費量など)、制御設定点、モデルパラメータ(例えば、機器モデル係数)、又は対応するシステム、デバイス、若しくはプロセスがどのように動作しているかに関する情報を提供する任意の他の変数を含むことができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、監視される変数が、接続された機器610の各デバイスの動作効率ηを示し、又は監視される変数を使用して動作効率ηを計算することができる。例えば、冷却器によって出力される冷却された水の温度及び流量を使用して、冷却器によってサービス提供される冷却負荷(例えば、トン単位での冷却負荷)を計算することができる。冷却負荷を冷却器の電力消費量と組み合わせて使用して、動作効率η(例えば、消費される電気1kWあたりのトン単位での冷却負荷)を計算することができる。BMS606は、接続された機器610の各デバイスの動作効率ηを計算する際に使用するために、監視される変数をMPMシステム602に報告することができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、BMS606は、接続された機器610の稼働時間を監視する。稼働時間は、接続された機器610の各デバイスがアクティブである所与の期間内の時間を示してもよい。例えば、冷却器に関する稼働時間は、冷却器が1日に約8時間アクティブであることを示すことがある。稼働時間を、アクティブ時の冷却器の平均電力消費量と組み合わせて使用して、各時間ステップiにおける接続された機器610の総電力消費量Pop,iを推定することができる。
【0118】
いくつかの実施形態では、BMS606は、接続された機器610によって報告される機器故障及び障害標示を監視する。BMS606は、各故障又は障害が発生する時間、及び障害又は故障が発生した際の接続された機器610の動作条件を記録することができる。BMS606及び/又はMPMシステム602が、接続された機器610から収集された動作データを使用して、接続された機器610のデバイスごとの信頼性モデルを作成することができる。BMS606は、監視される変数、機器稼働時間、動作条件、並びに機器故障及び障害標示を機器性能情報としてMPMシステム602に提供することができる。
【0119】
BMS606は、制御されているビルディング又はビルディング区域内部の状態を監視するように構成することができる。例えば、BMS606は、ビルディング全体にわたって分散された様々なセンサ(例えば、温度センサ、湿度センサ、気流センサ、電圧センサなど)からの入力を受信することがあり、ビルディングの状態をMPMシステム602に報告することがある。ビルディングの状態は、例えば、ビルディング又はビルディングのゾーンの温度、ビルディングの電力消費量(例えば、電気負荷)、ビルディング内部の制御されている状態に影響を与えるように構成された1つ又は複数のアクチュエータの状態、又は制御されているビルディングに関係する他のタイプの情報を含むことがある。BMS606は、接続された機器610を動作させて、ビルディング内部の監視されている状態に影響を与え、ビルディングの熱エネルギー負荷を提供することができる。
【0120】
BMS606は、接続された機器610に制御信号を提供し、接続された機器610に関するオン/オフ状態、充電/放電速度、及び/又は設定点を指定することができる。BMS606は、制御信号に従って(例えば、アクチュエータ、継電器などを介して)機器を制御して、接続された機器610の様々なビルディング区域及び/又はデバイスに関する設定点を実現することができる。様々な実施形態において、BMS606は、MPMシステム602と組み合わされてよく、又は別個のビルディング管理システムの一部でもよい。例示的実施形態によれば、BMS606は、Johnson Controls,Inc.が販売しているMETASYS(登録商標)ブランドのビルディング管理システムである。
【0121】
MPMシステム602は、BMS606から受信された情報を使用して、接続された機器610の性能を監視することができる。MPMシステム602は、(例えば、気象サービス604からの天気予報を使用して)最適化期間内の複数の時間ステップに関してビルディングの熱エネルギー負荷(例えば、加熱負荷、冷却負荷など)を予測するように構成されることがある。MPMシステム602は、公益企業608から受信された価格データを使用して、電気又は他の資源(例えば、水、天然ガスなど)のコストを予測することもある。MPMシステム602は、最適化プロセスに対する制約(例えば、負荷制約、決定変数制約など)を受ける最適化期間の継続期間にわたって、接続された機器610の動作、メンテナンス、及び購入の経済的価値を最適化する最適化結果を生成することができる。MPMシステム602によって実施される最適化プロセスを以下でより詳細に述べる。
【0122】
例示的実施形態によれば、MPMシステム602は、単一のコンピュータ(例えば、1つのサーバ、1つのハウジングなど)の内部に統合することができる。様々な他の例示的実施形態では、MPMシステム602を複数のサーバ又はコンピュータ(例えば、分散された場所に存在し得る)にわたって分散させることができる。別の例示的実施形態では、MPMシステム602は、複数のビルディングシステムを管理するスマートビルディングマネージャと統合する、及び/又はBMS606と組み合わせることができる。
【0123】
MPMシステム602は、通信インターフェース804及び処理回路806を含むものとして示されている。通信インターフェース804は、様々なシステム、デバイス、又はネットワークとのデータ通信を行うための有線又は無線インターフェース(例えば、ジャック、アンテナ、送信機、受信機、送受信機、有線端末など)を含むことがある。例えば、通信インターフェース804は、イーサネットベースの通信ネットワークを介してデータを送受信するためのイーサネットカード及びポート、及び/又は無線通信ネットワークを介して通信するためのWiFi送受信機を含むことがある。通信インターフェース804は、ローカルエリアネットワーク又はワイドエリアネットワーク(例えば、インターネット、ビルディングWANなど)を介して通信するように構成されることがあり、様々な通信プロトコル(例えば、BACnet(登録商標)、IP、LON(登録商標)など)を使用し得る。
【0124】
通信インターフェース804は、MPMシステム602と様々な外部システム又はデバイス(例えば、BMS606、接続された機器610、公益企業510など)との間の電子データ通信を容易にするように構成されたネットワークインターフェースでよい。例えば、MPMシステム602は、BMS606から、制御されているビルディングの1つ又は複数の測定された状態(例えば、温度、湿度、電気負荷など)、及び接続された機器610に関する機器性能情報(例えば、稼働時間、電力消費量、動作効率など)を示す情報を受信することがある。通信インターフェース804は、BMS606及び/又は接続された機器610から入力を受信することができ、BMS606及び/又は他の外部システム若しくはデバイスに最適化結果を提供することができる。最適化結果により、BMS606は、接続された機器610に関する設定点をアクティブ化、非アクティブ化、又は調整して、最適化結果で指定された決定変数の最適値を実現することができる。
【0125】
引き続き図8を参照すると、処理回路806は、プロセッサ808及びメモリ810を含むものとして示されている。プロセッサ808は、汎用若しくは特定用途向けプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ若しくは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、処理構成要素のグループ、又は他の適切な処理構成要素でよい。プロセッサ808は、メモリ810に記憶された、又は他のコンピュータ可読媒体(例えば、CDROM、ネットワークストレージ、リモートサーバなど)から受信されたコンピュータコード又は命令を実行するように構成されてよい。
【0126】
メモリ810は、本開示で述べる様々なプロセスを完遂及び/又は容易化するためのデータ及び/又はコンピュータコードを記憶するための1つ又は複数のデバイス(例えばメモリユニット、メモリデバイス、記憶デバイスなど)を含み得る。メモリ810は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ハードドライブ記憶装置、一時記憶装置、不揮発性メモリ、フラッシュメモリ、光学メモリ、又は、ソフトウェアオブジェクト及び/又はコンピュータ命令を記憶するための任意の他の適切なメモリを含み得る。メモリ810は、データベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント、又は、本開示で述べる様々な活動及び情報構造をサポートするための任意の他のタイプの情報構造を含み得る。メモリ810は、処理回路806を介してプロセッサ808に通信可能に接続されてもよく、本明細書で述べる1つ又は複数のプロセスを(例えばプロセッサ808によって)実行するためのコンピュータコードを含み得る。
【0127】
MPMシステム602は、機器性能モニタ824を含むものとして示されている。機器性能モニタ824は、BMS606及び/又は接続された機器610から機器性能情報を受信することができる。機器性能情報は、監視される変数のサンプル(例えば、測定された温度、測定された圧力、測定された流量、電力消費量など)、現在の動作条件(例えば、加熱又は冷却負荷、現在の動作条件など)、障害標示、又は接続された機器610の性能を特徴付ける他のタイプの情報を含むことができる。いくつかの実施形態では、機器性能モニタ824は、機器性能情報を使用して、接続された機器610の各デバイスの現在の効率η及び信頼性を計算する。機器性能モニタ824は、目的関数Jの最適化に使用するために、効率η及び信頼性値をモデル予測オプティマイザ830に提供することができる。
【0128】
引き続き図8を参照すると、MPMシステム602は、負荷/料金予測器822を含むものとして示されている。負荷/料金予測器822は、最適化期間の時間ステップiごとに、ビルディング又は構内のエネルギー負荷(Load)(例えば、加熱負荷、冷却負荷、電気負荷など)を予測するように構成されることがある。負荷/料金予測器822は、気象サービス604から天気予報を受信するものとして示されている。いくつかの実施形態では、負荷/料金予測器822は、天気予報に応じてエネルギー負荷Loadを予測する。いくつかの実施形態では、負荷/料金予測器822は、BMS606からのフィードバックを使用して、負荷Loadを予測する。BMS606からのフィードバックは、様々なタイプの感覚入力(例えば、温度、流量、湿度、エンタルピーなど)又は制御されているビルディングに関係する他のデータ(例えば、HVACシステム、照明制御システム、セキュリティシステム、給水システムなどからの入力)を含むことがある。
【0129】
いくつかの実施形態では、負荷/料金予測器822は、測定された電気負荷及び/又は以前に測定された負荷データをBMS606から(例えば、機器性能モニタ824を介して)受信する。負荷/料金予測器822は、所与の天気予報
【数4】
、日付け(day)、時刻(t)、及び以前に測定された負荷データ(Yi-1)に応じて負荷Loadを予測することがある。そのような関係は、次式で表される。
【数5】
【0130】
いくつかの実施形態では、負荷/料金予測器822は、履歴負荷データから訓練された決定論的+確率モデルを使用して負荷Loadを予測する。負荷/料金予測器822は、様々な予測法の任意のものを使用して負荷Loadを予測することができる(例えば、決定論的部分に関しては線形回帰及び確率的部分に関してはARモデル)。負荷/料金予測器822は、ビルディング又は構内に関する1つ又は複数の異なるタイプの負荷を予測することがある。例えば、負荷/料金予測器822は、最適化期間内の時間ステップiごとに、温水負荷LoadHot,i、冷水負荷LoadCold,i、及び電気負荷LoadElec,iを予測することがある。予測される負荷値Loadは、これらのタイプの負荷のいくつか又はすべてを含むことができる。いくつかの実施形態では、負荷/料金予測器822は、米国特許出願第14/717,593号明細書に記載されている技法を使用して負荷/料金予測を行う。
【0131】
負荷/料金予測器822は、公益企業608から公共料金を受信するものとして示されている。公共料金は、最適化期間内の各時間ステップiにおいて公益企業608によって提供される資源(例えば、電気、天然ガス、水など)の単位あたりのコスト又は価格を示すことがある。いくつかの実施形態では、公共料金は時変料金である。例えば、電気の価格は、特定の時間帯又は曜日(例えば、高需要の期間中)にはより高く、他の時間帯又は曜日(例えば、低需要の期間中)にはより低くなることがある。公共料金は、様々な期間と、各期間中の資源の1単位あたりのコストとを定義することがある。公共料金は、公益企業608から受信された実際の料金、又は負荷/料金予測器822によって推定された予測公共料金でよい。
【0132】
いくつかの実施形態では、公共料金は、公益企業608によって提供される1つ又は複数の資源に関する需要料金を含む。需要料金は、需要料金期間中の特定の資源の最大使用量(例えば、最大エネルギー消費)に基づいて、公益企業608によって課される個別のコストを定義することがある。公共料金は、様々な需要料金期間と、各需要料金期間に関連付けられた1つ又は複数の需要料金とを定義することがある。いくつかの場合には、需要料金期間は、互いに及び/又は予測窓と部分的又は完全に重なることがある。モデル予測オプティマイザ830は、高レベルオプティマイザ832によって実施される高レベル最適化プロセスにおける需要料金を考慮に入れるように構成されることがある。公益企業608は、時変(例えば1時間ごと)の価格、最大サービスレベル(例えば、物理的インフラストラクチャによって又は契約によって許可される最大消費レート)、及び電気の場合には、需要料金、又は特定の期間内の消費量のピークレートに関する料金によって定義されることがある。負荷/料金予測器822は、予測される負荷Load及び公共料金をメモリ810に記憶することができ、及び/又は予測された負荷Load及び公共料金をモデル予測オプティマイザ830に提供することができる。
【0133】
引き続き図8を参照すると、MPMシステム602は、モデル予測オプティマイザ830を含むものとして示されている。モデル予測オプティマイザ830は、マルチレベル最適化プロセスを実施して、接続された機器610の購入、メンテナンス、及び動作に関連付けられた総コストを最適化するように構成することができる。いくつかの実施形態では、モデル予測オプティマイザ830は、高レベルオプティマイザ832及び低レベルオプティマイザ834を含む。高レベルオプティマイザ832は、接続された機器610のセット全体(例えば、ビルディング内部のすべてのデバイス)又は接続された機器610のサブセット(例えば、単一のデバイス、サブプラント又はビルディングサブシステムのすべてのデバイスなど)に関して目的関数Jを最適化して、目的関数Jでの各決定変数(例えば、Pop,i、Bmain,i、及びBcap,i)に関する最適値を決定することができる。高レベルオプティマイザ832によって実施される最適化を、図9を参照してより詳細に述べる。
【0134】
いくつかの実施形態では、低レベルオプティマイザ834は、高レベルオプティマイザ832から最適化結果を受信する。最適化結果は、最適化期間内の各時間ステップiにおける接続された機器の各デバイス又はデバイスのセットに関する最適な電力消費量値Pop,i及び/又は負荷値Loadを含むことがある。低レベルオプティマイザ834は、高レベルオプティマイザ832によって決定された負荷値で各デバイス又はデバイスのセットを最適に稼働する方法を決定することがある。例えば、低レベルオプティマイザ834は、接続された機器610の電力消費量を最適化(例えば、最小化)して対応する負荷値Loadを満たすために、接続された機器610の様々なデバイスに関するオン/オフ状態及び/又は動作設定点を決定することがある。
【0135】
低レベルオプティマイザ834は、接続された機器610の各デバイス又はデバイスのセットに関する機器性能曲線を生成するように構成されることがある。各性能曲線は、接続された機器610の特定のデバイス又はデバイスのセットによる資源消費量(例えば、kW単位で測定される電気使用量、L/sで測定される水使用量など)を、デバイス又はデバイスのセットに対する負荷の関数として示すことがある。いくつかの実施形態において、低レベルオプティマイザ834は、負荷点(例えば、Loadの様々な値)及び気象条件の様々な組合せで低レベル最適化プロセスを実施して複数のデータポイントを生成することによって、性能曲線を生成する。低レベル最適化を使用して、対応する加熱又は冷却負荷を満たすために必要とされる最小の資源消費量を決定することができる。低レベルオプティマイザ834によって実施することができる低レベル最適化プロセスの例は、2015年2月27日出願の「Low Level Central Plant Optimization」という名称の米国特許出願第14/634,615号明細書に詳細に述べられており、その特許出願の開示全体を参照により本明細書に援用する。低レベルオプティマイザ834は、データポイントに曲線を当てはめて、性能曲線を生成することがある。
【0136】
いくつかの実施形態では、低レベルオプティマイザ834は、接続された機器610の個々のデバイスの効率曲線を組み合わせることによって、接続された機器610のセット(例えば、冷却器サブプラント、ヒータサブプラントなど)に関する機器性能曲線を生成する。デバイス効率曲線は、負荷の関数としてデバイスによる資源消費量を示すことがある。デバイス効率曲線は、デバイス製造業者によって提供されることがあり、又は実験データを使用して生成されることもある。いくつかの実施形態において、デバイス効率曲線は、デバイス製造業者によって提供され、実験データを使用して更新された初期効率曲線に基づく。デバイス効率曲線は、機器モデル818に記憶されていてよい。いくつかのデバイスでは、デバイス効率曲線は、資源消費が負荷のU字関数であることを示すことがある。したがって、複数のデバイス効率曲線が組み合わされて複数のデバイスに関する性能曲線になるとき、得られる性能曲線は波状の曲線になり得る。これらの波は、単一のデバイスが負荷を上げることによって引き起こされ、その後、サブプラント負荷を満たすための別のデバイスの起動がより効率的になる。低レベルオプティマイザ834は、高レベル最適化プロセスで使用するために機器性能曲線を高レベルオプティマイザ832に提供することがある。
【0137】
引き続き図8を参照すると、MPMシステム602が、機器コントローラ828を含むものとして示されている。機器コントローラ828は、接続された機器610を制御して、ビルディング10での可変状態又は状況(例えば、温度、湿度など)に影響を与えるように構成することができる。いくつかの実施形態では、機器コントローラ828は、モデル予測オプティマイザ830によって実施された最適化の結果に基づいて、接続された機器610を制御する。いくつかの実施形態では、機器コントローラ828は、接続された機器610に通信インターフェース804及び/又はBMS606を介して提供することができる制御信号を生成する。制御信号は、目的関数Jでの決定変数の最適値に基づくことがある。例えば、機器コントローラ828は、接続された機器610に、最適化期間内の時間ステップiごとの最適な電力消費量値Pop,iを実現させる制御信号を生成することがある。
【0138】
モデル予測オプティマイザ830、機器コントローラ828、又はMPMシステム602の他のモジュールからのデータ及び処理結果は、監視及び報告アプリケーション826によってアクセス(又は監視及び報告アプリケーション826にプッシュ)されることがある。監視及び報告アプリケーション826は、ユーザ(例えば、システムエンジニア)が閲覧及びナビゲートすることができるリアルタイム「システムヘルス」ダッシュボードを生成するように構成されることがある。例えば、監視及び報告アプリケーション826は、GUIのユーザに重要業績評価指標(KPI)又は他の情報を表示するためのいくつかのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)要素(例えば、ウィジェット、ダッシュボードコントロール、ウィンドウなど)を有するウェブベースの監視アプリケーションを含むことがある。さらに、GUI要素は、(実際の又はモデル化された)異なるビルディングや異なる構内などでのビルディング管理システムにわたる相対的なエネルギー使用量及び強度を要約することができる。他のGUI要素又はレポートは、利用可能なデータに基づいて生成されて示されることがあり、ユーザが、1つ又は複数のエネルギー貯蔵システムにわたる性能を1つの画面から評価できるようにする。ユーザインターフェース又はレポート(又は元のデータエンジン)は、ビルディング、ビルディングのタイプ、機器のタイプなどによって動作条件を集計及び分類するように構成されることがある。GUI要素は、ビルディングシステムのデバイスに関する動作パラメータ及び電力消費量をユーザが視覚的に分析できるようにするチャート又はヒストグラムを含むことがある。
【0139】
引き続き図8を参照すると、MPMシステム602は、監視及び報告アプリケーション826をサポートするために、1つ又は複数のGUIサーバ、ウェブサービス812、又はGUIエンジン814を含むことがある。様々な実施形態において、アプリケーション826、ウェブサービス812、及びGUIエンジン814は、MPMシステム602の外部の別個の構成要素として(例えば、スマートビルディングマネージャの一部として)提供されてもよい。MPMシステム602は、関連データの詳細な履歴データベース(例えば、リレーショナルデータベース、XMLデータベースなど)を維持するように構成されることがあり、詳細なデータベースに維持されているデータに対して継続的に、頻繁に、又は低頻度でクエリ、集約、変換、検索、又は他の処理を行うコンピュータコードモジュールを含む。MPMシステム602は、任意のそのような処理の結果を、例えば外部監視及び報告アプリケーションによるさらなるクエリ、計算、若しくはアクセスのために、他のデータベース、テーブル、XMLファイル、又は他のデータ構造に提供するように構成されることがある。
【0140】
MPMシステム602は、構成ツール816を含むものとして示されている。構成ツール816により、MPMシステム602がBMS606及び/又は接続された機器610での変化する条件にどのように応答するかをユーザが(例えば、グラフィカルユーザインターフェースを介して、プロンプト方式の「ウィザード」を介してなど)定義できるようにし得る。例示的実施形態では、構成ツール816により、接続された機器610の複数のデバイス、複数のビルディングシステム、及び複数のエンタープライズ制御アプリケーション(例えば、作業指示管理システムアプリケーション、エンティティ資源プランニングアプリケーションなど)に及び得る条件応答シナリオをユーザが構築して記憶することができるようにする。例えば、構成ツール816は、様々な条件論理を使用して(例えば、サブシステムからの、イベント履歴からの)データを組み合わせる機能をユーザに提供することができる。様々な例示的実施形態では、条件論理は、条件間の単純な論理演算子(例えば、AND、OR、XORなど)から、擬似コード構造又は複雑なプログラミング言語関数(より複雑な対話、条件文、ループなどを可能にする)まで含むことができる。構成ツール816は、そのような条件論理を構築するためのユーザインターフェースを提示することができる。ユーザインターフェースは、ユーザがグラフィックでポリシー及び応答を定義できるようにすることがある。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェースは、ユーザが、予め記憶又は予め構成されたポリシーを選択し、そのポリシーを適合させる、又はそのユーザのシステムと共に使用できるようにし得る。
【0141】
高レベルオプティマイザ
次に図9を参照すると、例示的実施形態に従って、高レベルオプティマイザ832をより詳細に示すブロック図が示されている。高レベルオプティマイザ832は、接続された機器610に関する最適なメンテナンス戦略を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、最適なメンテナンス戦略は、最適化期間(例えば、30週、52週、10年、30年など)の継続期間にわたる接続された機器610の購入、メンテナンス、及び動作に関連する総コストを最適化する1組の決定事項である。これらの決定事項は、例えば、機器の購入の決定、機器のメンテナンスの決定、及び機器の動作の決定を含むことができる。
【0142】
高レベルオプティマイザ832は、動作コスト予測器910、メンテナンスコスト予測器920、資本コスト予測器930、目的関数生成器935、及び目的関数オプティマイザ940を含むものとして示されている。コスト予測器910、920、及び930は、モデル予測制御技法を使用して、いくつかの決定変数(例えば、メンテナンス決定、機器購入決定など)及び入力パラメータ(例えば、エネルギーコスト、デバイス効率、デバイス信頼性)の関数として総コストを表す目的関数を定式化することができる。動作コスト予測器910は、目的関数での動作コスト項を定式化するように構成することができる。同様に、メンテナンスコスト予測器920は、目的関数でのメンテナンスコスト項を定式化するように構成することができ、資本コスト予測器930は、目的関数での資本コスト項を定式化するように構成することができる。目的関数オプティマイザ940は、様々な最適化技法のいずれかを使用して目的関数を最適化(例えば最小化)して、各決定変数に関する最適値を識別することができる。
【0143】
高レベルオプティマイザ832によって生成することができる目的関数の一例は、次式で示される。
【数6】
ここで、Cop,iは、最適化期間の時間ステップiにおいて接続された機器610が消費する単位エネルギーあたりのコスト(例えば、$/kWh)であり、Pop,iは、時間ステップiにおける接続された機器610の電力消費量(例えば、kW)であり、Δtは、各時間ステップiの継続時間であり、Cmain,iは、時間ステップiにおいて接続された機器610に対して実施されるメンテナンスのコストであり、Bmain,iは、メンテナンスが実施されるかどうかを示すバイナリ変数であり、Ccap,iは、時間ステップiにおいて接続された機器610の新たなデバイスを購入する資本コストであり、Bcap,iは、新たなデバイスが購入されるかどうかを示すバイナリ変数であり、hは、最適化が実施される水平又は最適化期間の継続時間である。
【0144】
動作コスト予測器
動作コスト予測器910は、目的関数Jでの第1項を定式化するように構成することができる。目的関数Jの第1項は、最適化期間の継続期間にわたる接続された機器610の動作コストを表し、3つの変数又はパラメータ(すなわち、Cop,i、Pop,i、及びΔt)を含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、単位エネルギーあたりのコストCop,iは、エネルギーコストモジュール915によって決定される。エネルギーコストモジュール915は、エネルギー価格データとして、公益企業608からエネルギー価格のセットを受信することができる。いくつかの実施形態では、エネルギー価格は、時刻、曜日(例えば平日か週末か)、現在の季節(例えば夏か冬か)、又は他の時間ベースの因子に依存する時変コストでよい。例えば、電気のコストは、ピークエネルギー消費期間中にはより高く、オフピーク又は部分ピークエネルギー消費期間中にはより低いことがある。
【0145】
エネルギーコストモジュール915は、エネルギーコストを使用して、最適化期間内の時間ステップiごとにCop,iの値を定義することができる。いくつかの実施形態において、エネルギーコストモジュール915は、最適化期間内のh個の時間ステップそれぞれに関するコスト要素を含むアレイCopとしてエネルギーコストを記憶する。例えば、エネルギーコストモジュール915は、以下のアレイを生成することができる。
op=[Cop,1op,2 ・・・ Cop,h
ここで、アレイCopは、1×hのサイズを有し、アレイCopの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1・・・hに関するエネルギーコスト値Cop,iを含む。
【0146】
さらに図9を参照すると、動作コスト予測器910は、理想性能計算機912を含むものとして示されている。理想性能計算機912は、負荷/料金予測器822から負荷予測Loadを受信することがあり、低レベルオプティマイザ834から性能曲線を受信することがある。上で論じたように、性能曲線は、接続された機器610のデバイス又はデバイスのセットの理想的な電力消費量Pidealを、デバイス又はデバイスのセットに対する加熱又は冷却負荷の関数として定義することがある。例えば、接続された機器610の1つ又は複数のデバイスの性能曲線は、次式によって定義することができる。
ideal,i=f(Load
ここで、Pideal,iは、時間ステップiにおける接続された機器610の理想的な電力消費量(例えば、kW)であり、Loadは、時間ステップにおける接続された機器610に対する負荷(例えば、トン単位での冷却負荷、kW単位での加熱負荷など)である。理想的な電力消費量Pideal,iは、接続された機器610の1つ又は複数のデバイスが完璧な効率で動作すると仮定したそれらの電力消費量を表すことがある。
【0147】
理想性能計算機912は、接続された機器610のデバイス又はデバイスのセットに関する性能曲線を使用して、Pideal,iの値を識別することができ、この値は、最適化期間の各時間ステップにおけるデバイス又はデバイスのセットに関する負荷点Loadに対応する。いくつかの実施形態では、理想性能計算機912は、最適化期間内のh個の時間ステップそれぞれに関する要素を含むアレイPidealとして、理想的な負荷値を記憶する。例えば、理想性能計算機912は、以下のアレイを生成することができる。
ideal=[Pideal,1ideal,2 ・・・ Pideal,h
ここで、アレイPidealは、h×1のサイズを有し、アレイPidealの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1・・・hに関する理想的な電力消費量値Pideal,iを含む。
【0148】
引き続き図9を参照すると、動作コスト予測器910が、効率アップデータ911及び効率デグレーダ913を含むものとして示されている。効率アップデータ911は、実際の動作条件下での接続された機器610の効率ηを決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、効率ηは、次式で示されるように、接続された機器の理想的な電力消費量Pidealと、接続された機器610の実際の電力消費量Pactualとの比を表す。
【数7】
ここで、Pidealは、接続された機器610に関する性能曲線によって定義される接続された機器610の理想的な電力消費量であり、Pactualは、接続された機器610の実際の電力消費量である。いくつかの実施形態では、効率アップデータ911は、接続された機器610から収集された機器性能情報を使用して、実際の電力消費量値Pactualを識別する。効率アップデータ911は、実際の電力消費量Pactualを理想的な電力消費量Pidealと組み合わせて使用して、効率ηを計算することができる。
【0149】
効率アップデータ911は、接続された機器610の現在の動作効率を反映するために効率ηを定期的に更新するように構成することができる。例えば、効率アップデータ911は、接続された機器610の効率ηを、1日に1回、1週間に1回、1年に1回、又は時間と共に効率ηの変化を捕捉するのに適切であり得る任意の他の間隔で計算することができる。効率ηの各値は、効率ηが計算される時点でのPideal及びPactualの対応する値に基づいていてよい。いくつかの実施形態では、効率アップデータ911は、高レベル最適化プロセスが実施されるたびに(すなわち、目的関数Jが最適化されるたびに)効率ηを更新する。効率アップデータ911によって計算された効率値は、初期効率値ηとしてメモリ810に記憶されることがあり、ここで、下付き数字0は、最適化期間の開始時又は開始前(例えば、時間ステップ0で)の効率ηの値を表す。
【0150】
いくつかの実施形態では、効率アップデータ911は、接続された機器610に対するメンテナンスの実施、又は接続された機器610の1つ若しくは複数のデバイスを交換若しくは補完するための新たな機器の購入により生じる接続された機器610の効率ηの上昇を考慮に入れるために、最適化期間中の1つ又は複数の時間ステップに関する効率ηを更新する。効率ηが更新される時間ステップiは、メンテナンスが実施されることになる、又は機器が交換されることになる予測時間ステップに対応することがある。接続された機器610に対してメンテナンスが実施されることになる予測時間ステップは、目的関数Jでのバイナリ決定変数Bmain,iの値によって定義することができる。同様に、機器が交換されることになる予測時間ステップは、目的関数Jでのバイナリ決定変数Bcap,iの値によって定義することができる。
【0151】
効率アップデータ911は、その時間ステップにおいてメンテナンスが実施されること、及び/又はその時間ステップにおいて新たな機器が購入されることをバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iが示す場合(すなわち、Bmain,i=1及び/又はBcap,i=1)、所与の時間ステップiに関する効率ηをリセットするように構成することができる。例えば、Bmain,i=1の場合、効率アップデータ911は、ηの値をηmainにリセットするように構成することができ、ここで、ηmainは、時間ステップiにおいて実施されるメンテナンスにより得られると期待される効率値である。同様に、Bcap,i=1の場合、効率アップデータ911は、ηの値をηcapにリセットするように構成することができ、ここで、ηcapは、時間ステップiにおいて実施される接続された機器610の1つ又は複数のデバイスを補完又は交換するために新たなデバイスを購入することにより得られると期待される効率値である。効率アップデータ911は、1つ又は複数の時間ステップに関して効率ηを動的にリセットすることができ、(例えば最適化の各反復によって)バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの値に基づいて最適化が実施される。
【0152】
効率デグレーダ913は、最適化期間の各時間ステップiにおける接続された機器610の効率ηを予測するように構成することができる。最適化期間の開始時の初期効率ηは、接続された機器610の性能が低下するにつれて、時間と共に低下することがある。例えば、冷却器の効率は、冷却水管が汚れて冷却器の熱伝達率が低下した結果、時間と共に低下することがある。同様に、バッテリの物理的又は化学的構成要素の劣化により、バッテリの効率は、時間と共に低下することがある。効率デグレーダ913は、そのような低下を、最適化期間の継続時間にわたって効率ηを段階的に低下させることによって考慮に入れるように構成することができる。
【0153】
いくつかの実施形態では、初期効率値ηは、各最適化期間の開始時に更新される。しかし、効率ηは、最適化期間中に低下することがあり、初期効率値ηは、最適化期間の継続期間にわたって次第に不正確になる。最適化期間中の効率低下を考慮に入れるために、効率デグレーダ913は、連続する各時間ステップにおいて効率ηを所定量だけ低下させることができる。例えば、効率デグレーダ913は、各時間ステップi=1・・・hでの効率を以下のように定義することができる。
η=ηi-1-Δη
ここで、ηは、時間ステップiにおける効率であり、ηi-1は、時間ステップi-1での効率であり、Δηは、連続する時間ステップ間での効率の低下である。いくつかの実施形態では、ηのこの定義は、Bmain,i=0及びBcap,i=0である各時間ステップに適用される。しかし、Bmain,i=1又はBcap,i=1である場合、ηの値は、前述したようにηmain又はηcapにリセットされ得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、Δηの値は、効率アップデータ911によって計算された効率値の時系列に基づいている。例えば、効率デグレーダ913は、効率アップデータ911によって計算された初期効率値ηの時系列を記録することがあり、ここで、各初期効率値ηは、特定の時点における接続された機器610の経験的に計算された効率を表す。効率デグレーダ913は、初期効率値ηの時系列を検査して、効率が低下する率を決定することができる。例えば、時点tでの初期効率ηがη0,1であり、時点tでの初期効率がη0,2である場合、効率デグレーダ913は、効率低下率を以下のように計算することができる。
【数8】
ここで、
【数9】
は、効率低下率である。効率デグレーダ913は、
【数10】
に、各時間ステップの継続時間Δtを乗算して、Δηの値を計算することができる(すなわち、
【数11】
)。
【0155】
いくつかの実施形態では、効率デグレーダ913は、最適化期間内のh個の時間ステップそれぞれに関する要素を含むアレイηに、最適化期間の継続期間にわたる効率値を記憶する。例えば、効率デグレーダ913は、以下のアレイを生成することができる。
η=[η η ・・・ η
ここで、アレイηは、h×1のサイズを有し、アレイηの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1・・・hに関する効率値ηを含む。アレイηの各要素iは、前の要素の値とΔηの値とに基づいて計算されることがあり(例えば、Bmain,i=0及びBcap,i=0の場合)、又はηmain又はηcapに動的にリセットされることがある(例えば、Bmain,i=1又はBcap,i=1の場合)。
【0156】
効率アップデータ911及び効率デグレーダ913によって実施される効率更新及びリセット動作を特徴付ける論理は、次式で要約することができる。
main,i=1の場合 → η=ηmain
cap,i=1の場合 → η=ηcap
main,i=0及びBcap,i=0の場合 → η=ηi-1-Δη
これは、目的関数オプティマイザ940によって実施される高レベル最適化に対する制約として適用することができる。
【0157】
有利には、効率アップデータ911及び効率デグレーダ913は、各時間ステップiにおける接続された機器610の効率ηを、メンテナンス決定Bmain,i及び機器購入決定Bcap,iの関数としてモデル化することができる。例えば、特定のデバイスに関する効率ηは、最適化期間の開始時に初期値ηで始まることがあり、時間と共に低下し、連続する各時間ステップiと共に効率ηが低下することがある。デバイスに対するメンテナンスを実施することで、メンテナンスが実施された直後に効率ηをより高い値にリセットすることができる。同様に、新たなデバイスを購入して既存のデバイスと交換することで、新たなデバイスが購入された直後に効率ηをより高い値にリセットすることができる。リセット後、効率ηは、メンテナンスが実施される又は新たなデバイスが購入される次の時点まで、時間と共に低下し続けることがある。
【0158】
引き続き図9を参照すると、動作コスト予測器910は、電力消費量推定器914及び動作コスト計算機916を含むものとして示されている。電力消費量推定器914は、最適化期間の各時間ステップiにおける接続された機器610の電力消費量Pop,iを推定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、電力消費量推定器914は、理想性能計算機912によって計算された理想電力消費量Pideal,iと、効率デグレーダ913及び/又は効率アップデータ911によって決定された効率ηとの関数として、電力消費量Pop,iを推定する。例えば、電力消費量推定器914は、次式を使用して電力消費量Pop,iを計算することができる。
【数12】
ここで、Pideal,iは、対応する負荷点Loadでのデバイスに関する機器性能曲線に基づいて理想性能計算機912によって計算された電力消費量であり、ηは、時間ステップiにおけるデバイスの動作効率である。
【0159】
いくつかの実施形態では、電力消費量推定器914は、最適化期間内のh個の時間ステップそれぞれに関する要素を含むアレイPopとして電力消費量値を記憶する。例えば、電力消費量推定器914は、以下のアレイを生成することができる。
op=[Pop,1op,2 ・・・ Pop,h
ここで、アレイPopは、h×1のサイズを有し、アレイPopの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1・・・hに関する理想的な電力消費量値Pop,iを含む。
【0160】
動作コスト計算機916は、最適化期間の継続期間にわたる接続された機器610の動作コストを推定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、動作コスト計算機916は、次式を使用して各時間ステップi中の動作コストを計算する。
Costop,i=Cop,iop,iΔt
ここで、Pop,iは、電力消費量推定器914によって決定される時間ステップiにおける予測電力消費量であり、Cop,iは、エネルギーコストモジュール915によって決定される時間ステップiにおける単位エネルギーあたりのコストであり、Δtは、各時間ステップの継続期間である。動作コスト計算機916は、以下のように、最適化期間の継続期間にわたる動作コストを合計することができる。
【数13】
ここで、Costopは、目的関数Jの動作コスト項である。
【0161】
他の実施形態では、動作コスト計算機916は、次式で示されるように、コストアレイCopに電力消費量アレイPop及び各時間ステップの継続時間Δtを乗算することによって、動作コストCostopを推定する。
Costop=CopopΔt
Costop=[Cop,1op,2 ・・・ Cop,h][Pop,1op,2 ・・・ Pop,hΔt
【0162】
メンテナンスコスト予測器
メンテナンスコスト予測器920は、目的関数Jでの第2項を定式化するように構成することができる。目的関数Jでの第2項は、最適化期間の継続期間にわたる、接続された機器610に対するメンテナンスを実施するコストを表し、2つの変数又はパラメータ(すなわち、Cmain,i及びBmain,i)を含むものとして示されている。メンテナンスコスト予測器920は、メンテナンス推定器922、信頼性推定器924、メンテナンスコスト計算機926、及びメンテナンスコストモジュール928を含むものとして示されている。
【0163】
信頼性推定器924は、接続された機器610から受信された機器性能情報に基づいて、接続された機器610の信頼性を推定するように構成することができる。信頼性は、接続された機器610がその現在の動作条件下で障害なく動作し続ける尤度の統計的尺度であり得る。より過酷な条件下(例えば、高負荷、高温など)での動作は、信頼性をより低くすることがあり、より過酷でない条件下(例えば、低負荷、中程度の温度など)での動作は、信頼性をより高くすることがある。いくつかの実施形態では、信頼性は、接続された機器610が最後にメンテナンスを受けてから経過した時間量、及び/又は接続された機器610が購入若しくは設置されてから経過した時間量に基づく。
【0164】
いくつかの実施形態では、信頼性推定器924は、機器性能情報を使用して、接続された機器610の現在の動作条件を識別する。信頼性推定器924によって現在の動作条件を検査して、接続された機器610の性能が低下し始める時を明らかにし、及び/又は障害が発生する時を予測することができる。いくつかの実施形態では、信頼性推定器924は、接続された機器610で潜在的に発生し得る様々なタイプの故障の尤度を推定する。各故障の尤度は、接続された機器610の現在の動作条件、接続された機器610が設置されてから経過した時間量、及び/又はメンテナンスが最後に実施されてから経過した時間量に基づくことがある。いくつかの実施形態では、信頼性推定器924は、2016年6月21日出願の「Building Management System With Predictive Diagnostics」という名称の米国特許出願第15/188,824号明細書に記載のシステム及び方法を使用して、動作条件を識別し、様々な故障の尤度を予測する。上記特許出願の開示全体を参照により本明細書に援用する。
【0165】
いくつかの実施形態では、信頼性推定器924は、複数のビルディングにわたって分散された接続された機器610の複数のデバイスから動作データを受信する。動作データは、例えば、現在の動作条件、障害標示、故障時間、又は接続された機器610の動作及び性能を特徴付ける他のデータを含むことができる。信頼性推定器924は、動作データのセットを使用して、各タイプの機器に関する信頼性モデルを作成することができる。信頼性推定器924が信頼性モデルを使用して、接続された機器610の任意の所与のデバイスの信頼性を、その現在の動作条件及び/又は他の外的要因(例えば、メンテナンスが最後に実施されてからの時間、設置又は購入からの時間、地理的位置、水質など)に応じて推定することができる。
【0166】
信頼性推定器924が使用することができる信頼性モデルの一例は、次式で示される。
Reliability=f(OpCond,Δtmain,i,Δtcap,i
ここで、Reliabilityは、時間ステップiにおける接続された機器610の信頼性であり、OpCondは、時間ステップiにおける動作条件であり、Δtmain,iは、メンテナンスが最後に行われた時点と時間ステップiとの間で経過した時間量であり、Δtcap,iは、接続された機器610が購入又は設置された時点と時間ステップiとの間で経過した時間量である。信頼性推定器924は、接続された機器610からフィードバックとして受信された機器性能情報に基づいて現在の動作条件OpCondを識別するように構成することができる。より過酷な条件下(例えば、高負荷、極端な温度など)での動作は、信頼性をより低くすることがあり、より過酷でない条件下(例えば、低負荷、中程度の温度など)での動作は、信頼性をより高くすることがある。
【0167】
信頼性推定器924は、バイナリ決定変数Bmain,iの値に基づいて、接続された機器610に対してメンテナンスが最後に実施されてから経過した時間量Δtmain,iを決定することがある。各時間ステップiに関して、信頼性推定器924は、時間ステップi及び前の各時間ステップ(例えば、時間ステップi-1、i-2、・・・、1)におけるBmainの対応する値を検査することができる。信頼性推定器924は、メンテナンスが最後に実施された時点(すなわち、Bmain,i=1である直近の時点)を、時間ステップiに関連する時点から引くことによって、Δtmain,iの値を計算することができる。メンテナンスが最後に実施されてからの時間量Δtmain,iが長いと、信頼性がより低くなることがあり、メンテナンスが最後に実施されてからの時間量が短いと、信頼性がより高くなることがある。
【0168】
同様に、信頼性推定器924は、バイナリ決定変数Bcap,iの値に基づいて、接続された機器610が購入又は設置されてから経過した時間量Δtcap,iを決定することがある。各時間ステップiに関して、信頼性推定器924は、時間ステップi及び前の各時間ステップ(例えば、時間ステップi-1、i-2、・・・、1)におけるBcapの対応する値を検査することができる。信頼性推定器924は、接続された機器610が購入又は設置された時点(すなわち、Bcap,i=1である直近の時点)を、時間ステップiに関連する時点から引くことによって、Δtcap,iの値を計算することができる。接続された機器610が購入又は設置されてからの時間量Δtcap,iが長いと、信頼性がより低くなることがあり、接続された機器610が購入又は設置されてからの時間量が短いと、信頼性がより高くなることがある。
【0169】
信頼性推定器924は、その時間ステップにおいてメンテナンスが実施されること、及び/又はその時間ステップにおいて新たな機器が購入されることをバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iが示す場合(すなわち、Bmain,i=1及び/又はBcap,i=1)、所与の時間ステップiに関する信頼性をリセットするように構成することができる。例えば、Bmain,i=1の場合、信頼性推定器924は、Reliabilityの値をReliabilitymainにリセットするように構成することができ、ここで、Reliabilitymainは、時間ステップiにおいて実施されるメンテナンスにより得られると期待される信頼性値である。同様に、Bcap,i=1の場合、信頼性推定器924は、Reliabilityの値をReliabilitycapにリセットするように構成することができ、ここで、Reliabilitycapは、時間ステップiにおいて実施される接続された機器610の1つ又は複数のデバイスを補完又は交換するために新たなデバイスを購入することにより得られると期待される信頼性値である。信頼性推定器924は、1つ又は複数の時間ステップに関して信頼性を動的にリセットすることができ、(例えば最適化の各反復によって)バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの値に基づいて最適化が実施される。
【0170】
メンテナンス推定器922は、最適化期間の継続期間にわたる接続された機器610の推定された信頼性を使用して、最適化期間の各時間ステップにおいて接続された機器610がメンテナンス及び/又は交換を必要とする確率を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、メンテナンス推定器922は、接続された機器610が所与の時間ステップにおいてメンテナンスを必要とする確率を臨界値と比較するように構成される。メンテナンス推定器922は、時間ステップiにおいて接続された機器610がメンテナンスを必要とする確率が臨界値を超えるという決定に応答して、Bmain,i=1の値を設定するように構成することができる。同様に、メンテナンス推定器922は、接続された機器610が所与の時間ステップにおいて交換を必要とする確率を臨界値と比較するように構成することができる。メンテナンス推定器922は、時間ステップiにおいて接続された機器610が交換を必要とする確率が臨界値を超えるという決定に応答して、Bcap,i=1の値を設定するように構成することができる。
【0171】
いくつかの実施形態では、接続された機器610の信頼性とバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの値とに相互関係がある。言い換えると、接続された機器610の信頼性は、最適化で選択されるバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの値に影響を与えることができ、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの値は、接続された機器610の信頼性に影響を与えることができる。有利には、目的関数オプティマイザ940によって実施される最適化は、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iと接続された機器610の信頼性との相互関係を考慮に入れながら、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの最適値を識別することができる。
【0172】
いくつかの実施形態では、メンテナンス推定器922は、バイナリメンテナンス決定変数の行列Bmainを生成する。行列Bmainは、最適化期間の各時間ステップにおいて実施することができる様々なメンテナンス活動それぞれに関するバイナリ決定変数を含むことがある。例えば、メンテナンス推定器922は、以下の行列を生成することができる。
【数14】
ここで、行列Bmainは、サイズがm×hであり、行列Bmainの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップにおける特定のメンテナンス活動に関するバイナリ決定変数を含む。例えば、バイナリ決定変数Bmain,j,iの値は、第jのメンテナンス活動が最適化期間の第iの時間ステップ中に実施されるかどうかを示す。
【0173】
引き続き図9を参照すると、メンテナンスコスト予測器920は、メンテナンスコストモジュール928及びメンテナンスコスト計算機926を含むものとして示されている。メンテナンスコストモジュール928は、接続された機器610の様々なタイプのメンテナンスの実施に関連するコストCmain,iを決定するように構成することができる。メンテナンスコストモジュール928は、外部システム又はデバイス(例えば、データベース、ユーザデバイスなど)からメンテナンスコストのセットを受信することができる。いくつかの実施形態では、メンテナンスコストは、様々なタイプのメンテナンスを実施する経済的コスト(例えば、$)を定義する。各タイプのメンテナンス活動は、それに関連する異なる経済的コストを有することがある。例えば、冷却器圧縮機内のオイルを交換するメンテナンス活動にかかる経済的コストは、比較的小さいことがあり、冷却器を完全に分解してすべての冷却水管を洗浄するメンテナンス活動にかかる経済的コストは、かなり大きいことがある。
【0174】
メンテナンスコストモジュール928は、メンテナンスコストを使用して、目的関数JでのCmain,iの値を定義することができる。いくつかの実施形態では、メンテナンスコストモジュール928は、実施することができるメンテナンス活動それぞれに関するコスト要素を含むアレイCmainとしてメンテナンスコストを記憶する。例えば、メンテナンスコストモジュール928は、以下のアレイを生成することができる。
main=[Cmain,1main,2 ・・・ Cmain,m
ここで、アレイCmainは、サイズが1×mであり、アレイCmainの各要素は、特定のメンテナンス活動j=1・・・mに関するメンテナンスコスト値Cmain,jを含む。
【0175】
いくつかのメンテナンス活動は、他よりもコストがかかることがある。しかし、異なるタイプのメンテナンス活動が、接続された機器610の効率η及び/又は信頼性に対する異なるレベルの改良をもたらすことがある。例えば、冷却器内のオイルの単なる交換は、効率ηのわずかな改良及び/又は信頼性のわずかな改良をもたらすことがあり、冷却器の完全な分解及びすべての冷却水管の洗浄は、接続された機器610の効率η及び/又は信頼性のかなり大きな改良をもたらすことがある。したがって、複数の異なるレベルのメンテナンス後の効率(すなわち、ηmain)及びメンテナンス後の信頼性(すなわち、Reliabilitymain)が存在し得る。ηmain及びReliabilitymainの各レベルは、異なるタイプのメンテナンス活動に対応することがある。
【0176】
いくつかの実施形態では、メンテナンス推定器922は、異なるレベルのηmain及びReliabilitymainそれぞれを、対応するアレイに記憶する。例えば、パラメータηmainは、m個の異なるタイプのメンテナンス活動それぞれに関する要素を有するアレイηmainとして定義することができる。同様に、パラメータReliabilitymainは、m個の異なるタイプのメンテナンス活動それぞれに関する要素を有するアレイReliabilitymainとして定義することができる。これらのアレイの例は、次式で示される。
ηmain=[ηmain,1 ηmain,2 ・・・ ηmain,m
Reliabilitymain=[Reliabilitymain,1 Reliabilitymain,2 ・・・ Reliabilitymain,m
ここで、アレイηmainは、サイズが1×mであり、アレイηmainの各要素は、特定のメンテナンス活動に関するメンテナンス後の効率値ηmain,jを含む。同様に、アレイReliabilitymainは、サイズが1×mであり、アレイReliabilitymainの各要素は、特定のメンテナンス活動に関するメンテナンス後の信頼性値Reliabilitymain,jを含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、効率アップデータ911は、各バイナリ決定変数Bmain,j,iに関連するメンテナンス活動を識別し、Bmain,j,i=1の場合、効率ηを、対応するメンテナンス後の効率レベルηmain,jにリセットする。同様に、信頼性推定器924は、各バイナリ決定変数Bmain,j,iに関連するメンテナンス活動を識別することができ、Bmain,j,i=1の場合、信頼性を、対応するメンテナンス後の信頼性レベルReliabilitymain,jにリセットすることができる。
【0178】
メンテナンスコスト計算機926は、最適化期間の継続期間にわたる接続された機器610のメンテナンスコストを推定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、メンテナンスコスト計算機926は、次式を使用して各時間ステップi中のメンテナンスコストを計算する。
Costmain,i=Cmain,imain,i
ここで、Cmain,iは、時間ステップiにおいて実施することができるm個の異なるタイプのメンテナンス活動それぞれに関する要素を含むメンテナンスコストのアレイであり、Bmain,iは、m個のメンテナンス活動それぞれが時間ステップiにおいて実施されるかどうかを示すバイナリ決定変数のアレイである。メンテナンスコスト計算機926は、以下のように、最適化期間の継続期間にわたってメンテナンスコストを合計することができる。
【数15】
ここで、Costmainは、目的関数Jのメンテナンスコスト項である。
【0179】
他の実施形態では、メンテナンスコスト計算機926は、次式に示されるように、メンテナンスコストアレイCmainにバイナリ決定変数の行列Bmainを乗算することによってメンテナンスコストCostmainを推定する。
【数16】
【0180】
資本コスト予測器
資本コスト予測器930は、目的関数Jでの第3項を定式化するように構成することができる。目的関数Jでの第3項は、最適化期間の継続期間にわたる接続された機器610の新しいデバイスを購入するコストを表し、2つの変数又はパラメータ(すなわち、Ccap,i及びBcap,i)を含むものとして示されている。資本コスト予測器930は、購入推定器932、信頼性推定器934、資本コスト計算機936、及び資本コストモジュール938を含むものとして示されている。
【0181】
信頼性推定器934は、メンテナンスコスト予測器920を参照して述べたように、信頼性推定器924の特徴のいくつか又はすべてを含むことができる。例えば、信頼性推定器934は、接続された機器610から受信された機器性能情報に基づいて、接続された機器610の信頼性を推定するように構成することができる。信頼性は、接続された機器610がその現在の動作条件下で障害なく動作し続ける尤度の統計的尺度であり得る。より過酷な条件下(例えば、高負荷、高温など)での動作は、信頼性をより低くすることがあり、より過酷でない条件下(例えば、低負荷、中程度の温度など)での動作は、信頼性をより高くすることがある。いくつかの実施形態では、信頼性は、接続された機器610が最後にメンテナンスを受けてから経過した時間量、及び/又は接続された機器610が購入若しくは設置されてから経過した時間量に基づく。信頼性推定器934は、前述したように、信頼性推定器924の特徴及び/又は機能のいくつか又はすべてを含むことができる。
【0182】
購入推定器932は、最適化期間の継続期間にわたる接続された機器610の推定された信頼性を使用して、最適化期間の各時間ステップにおいて接続された機器610の新たなデバイスが購入される確率を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、購入推定器932は、所与の時間ステップにおいて接続された機器610の新たなデバイスが購入される確率を臨界値と比較するように構成される。購入推定器932は、時間ステップiにおいて接続された機器610が購入される確率が臨界値を超えるという決定に応答して、Bcap,i=1の値を設定するように構成することができる。
【0183】
いくつかの実施形態では、購入推定器932は、バイナリ資本決定変数の行列Bcapを生成する。行列Bcapは、最適化期間の各時間ステップにおいて行うことができる様々な資本購入それぞれに関するバイナリ決定変数を含むことができる。例えば、購入推定器932は、以下の行列を生成することができる。
【数17】
ここで、行列Bcapは、サイズがp×hであり、行列Bcapの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップにおける特定の資本購入に関するバイナリ決定変数を含む。例えば、バイナリ決定変数Bcap,k,iの値は、最適化期間の第iの時間ステップ中に第kの資本購入が行われるかどうかを示す。
【0184】
引き続き図9を参照すると、資本コスト予測器930は、資本コストモジュール938及び資本コスト計算機936を含むものとして示されている。資本コストモジュール938は、様々な資本購入(すなわち、接続された機器610の1つ又は複数の新たなデバイスの購入)に関連するコストCcap,iを決定するように構成することができる。資本コストモジュール938は、外部システム又はデバイス(例えば、データベース、ユーザデバイスなど)から資本コストのセットを受信することができる。いくつかの実施形態では、資本コストは、様々な資本購入を行う経済的コスト(例えば、$)を定義する。各タイプの資本購入は、それに関連する異なる経済的コストを有することがある。例えば、新たな温度センサの購入にかかる経済的コストは比較的小さいことがあり、新たな冷却器の購入にかかる経済的コストはかなり大きいことがある。
【0185】
資本コストモジュール938は、購入コストを使用して、目的関数JでのCcap,iの値を定義することができる。いくつかの実施形態では、資本コストモジュール938は、行うことができる資本購入それぞれに関するコスト要素を含むアレイCcapとして資本コストを記憶する。例えば、資本コストモジュール938は、以下のアレイを生成することができる。
cap=[Ccap,1cap,2 ・・・ Ccap,p
ここで、アレイCcapは、サイズが1×pであり、アレイCcapの各要素は、特定の資本購入k=1・・・pに関するコスト値Ccap,kを含む。
【0186】
いくつかの資本購入は、他のものよりも高価であり得る。しかし、異なるタイプの資本購入が、接続された機器610の効率η及び/又は信頼性に対する異なるレベルの改良をもたらすことがある。例えば、既存のセンサの交換のために新たなセンサを購入することで、効率ηがわずかに向上する、及び/又は信頼性がわずかに向上することがあり、新たな冷却器及び制御システムを購入することで、接続された機器610の効率η及び/又は信頼性がかなり大きく向上することがある。したがって、複数の異なるレベルの購入後の効率(すなわち、ηcap)及び購入後の信頼性(すなわち、Reliabilitycap)があり得る。ηcap及びReliabilitycapの各レベルは、異なるタイプの資本購入に対応することがある。
【0187】
いくつかの実施形態では、購入推定器932は、異なるレベルのηcap及びReliabilitycapそれぞれを、対応するアレイに記憶する。例えば、パラメータηcapは、行うことができるp個の異なるタイプの資本購入それぞれに関する要素を有するアレイηcapとして定義することができる。同様に、パラメータReliabilitycapは、行うことができるp個の異なるタイプの資本購入それぞれに関する要素を有するアレイReliabilitycapとして定義することができる。これらのアレイの例は、次式で示される。
ηcap=[ηcap,1 ηcap,2 ・・・ ηcap,p
Reliabilitycap=[Reliabilitycap,1 Reliabilitycap,2 ・・・ Reliabilitycap,p
ここで、アレイηcapは、サイズが1×pであり、アレイηcapの各要素は、特定の資本購入kに関する購入後効率値ηcap,kを含む。同様に、アレイReliabilitycapは、サイズが1×pであり、アレイReliabilitycapの各要素は、特定の資本購入kに関する購入後信頼性値Reliabilitycap,kを含む。
【0188】
いくつかの実施形態では、効率アップデータ911は、各バイナリ決定変数Bmain,k,iに関連する資本購入を識別し、Bcap,k,i=1の場合、効率ηを、対応する購入後効率レベルηcap,kにリセットする。同様に、信頼性推定器924は、各バイナリ決定変数Bcap,k,iに関連する資本購入を識別することができ、Bmain,k,i=1の場合、信頼性を、対応する購入後信頼性レベルReliabilitycap,kにリセットすることができる。
【0189】
資本コスト計算機936は、最適化期間の継続期間にわたる接続された機器610の資本コストを推定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、資本コスト計算機936は、次式を使用して各時間ステップi中の資本コストを計算する。
Costcap,i=Ccap,icap,i
ここで、Ccap,iは、時間ステップiにおいて行うことができるp個の異なる資本購入それぞれに関する要素を含む資本購入コストのアレイであり、Bcap,iは、p個の資本購入それぞれが時間ステップiにおいて行われるかどうかを示すバイナリ決定変数のアレイである。資本コスト計算機936は、以下のように、最適化期間中の継続期間にわたって資本コストを合計することができる。
【数18】
ここで、Costcapは、目的関数Jの資本コスト項である。
【0190】
他の実施形態では、資本コスト計算機936は、次式に示されるように、資本コストアレイCcapにバイナリ決定変数の行列Bcapを乗算することによって資本コストCostcapを推定する。
【数19】
【0191】
目的関数オプティマイザ
引き続き図9を参照すると、高レベルオプティマイザ832は、目的関数生成器935及び目的関数オプティマイザ940を含むものとして示されている。目的関数生成器935は、コスト予測器910、920、及び930によって定式化された動作コスト項、メンテナンスコスト項、及び資本コスト項を合計することによって目的関数Jを生成するように構成することができる。目的関数生成器935によって生成することができる目的関数の一例は、次式で示される。
【数20】
ここで、Cop,iは、最適化期間の時間ステップiにおいて接続された機器610が消費する単位エネルギーあたりのコスト(例えば、$/kWh)であり、Pop,iは、時間ステップiにおける接続された機器610の電力消費量(例えば、kW)であり、Δtは、各時間ステップiの継続時間であり、Cmain,iは、時間ステップiにおいて接続された機器610に対して実施されるメンテナンスのコストであり、Bmain,iは、メンテナンスが実施されるかどうかを示すバイナリ変数であり、Ccap,iは、時間ステップiにおいて接続された機器610の新たなデバイスを購入する資本コストであり、Bcap,iは、新たなデバイスが購入されるかどうかを示すバイナリ変数であり、hは、最適化が実施される水平又は最適化期間の継続時間である。
【0192】
目的関数生成器935によって生成することができる目的関数の別の例は、次式で示される。
【数21】
ここで、アレイCopは、最適化期間の特定の時間ステップi=1・・・hに関するエネルギーコスト値Cop,iを含み、アレイPopは、最適化期間の特定の時間ステップi=1・・・hに関する電力消費量値Pop,iを含み、アレイCmainの各要素は、特定のメンテナンス活動j=1・・・mに関するメンテナンスコスト値Cmain,jを含み、行列Bmainの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1・・・hにおける特定のメンテナンス活動j=1・・・mに関するバイナリ決定変数を含み、アレイCcapの各要素は、特定の資本購入k=1・・・pに関する資本コスト値Ccap,kを含み、行列Bcapの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1・・・hにおける特定の資本購入k=1・・・pに関するバイナリ決定変数を含む。
【0193】
目的関数生成器935は、目的関数Jでの1つ又は複数の変数又はパラメータに制約を課すように構成することができる。制約は、動作コスト予測器910、メンテナンスコスト予測器920、及び資本コスト予測器930を参照して述べた式又は関係のいずれを含むこともできる。例えば、目的関数生成器935は、接続された機器610の1つ又は複数のデバイスに関する電力消費量値Pop,iを、理想電力消費量Pideal,i及び効率ηの関数として定義する制約を課すことができる(例えば、Pop,i=Pideal,i/η)。目的関数生成器935は、効率アップデータ911及び効率デグレーダ913を参照して述べたのと同様に、効率ηをバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの関数として定義する制約を課すことができる。目的関数生成器935は、メンテナンス推定器922及び購入推定器932を参照して述べたのと同様に、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iを0又は1のいずれかの値に制約し、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iを、接続された機器610の信頼性Reliabilityの関数として定義する制約を課すことができる。目的関数生成器935は、信頼性推定器924及び934を参照して述べたのと同様に、接続された機器610の信頼性Reliabilityを機器性能情報(例えば、動作条件、稼働時間など)の関数として定義する制約を課すことができる。
【0194】
目的関数オプティマイザ940は、目的関数Jを最適化して、最適化期間の継続時間にわたるバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの最適値を決定することができる。目的関数オプティマイザ940は、様々な最適化技法の任意のものを使用して、目的関数Jを定式化及び最適化することができる。例えば、目的関数オプティマイザ940は、整数計画法、混合整数線形計画法、確率的最適化、凸最適化、動的計画法、又は任意の他の最適化技法を使用して、目的関数Jを定式化し、制約を定義し、最適化を実施することができる。これら及び他の最適化技法は当技術分野で知られており、本明細書で詳細には述べない。
【0195】
いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940は、混合整数確率的最適化を使用して目的関数Jを最適化する。混合整数確率的最適化では、目的関数Jでの変数のいくつかを、ランダム変数又は確率変数の関数として定義することができる。例えば、決定変数Bmain,i及びBcap,iは、接続された機器610の信頼性に基づいた確率値を有するバイナリ変数として定義することができる。低い信頼性値は、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iが値1を有する確率を高めることがあり(例えば、Bmain,i=1及びBcap,i=1)、高い信頼性値は、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iが値0を有する確率を高めることがある(例えば、Bmain,i=0及びBcap,i=0)。いくつかの実施形態では、メンテナンス推定器922及び購入推定器932は、混合整数確率的技法を使用して、接続された機器610の信頼性の確率関数としてバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの値を定義する。
【0196】
上で論じたように、目的関数Jは、最適化期間の継続期間にわたって接続された機器610の1つ又は複数のデバイスを動作、メンテナンス、及び購入する予測コストを表すこともある。いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940は、これらのコストを特定の時点(例えば、現時点)に投影し、特定の時点での接続された機器610の1つ又は複数のデバイスの正味現在価値(NPV)を決定するように構成される。例えば、目的関数オプティマイザ940は、次式を使用して、目的関数Jでの各コストを現時点に投影することができる。
【数22】
ここで、rは利率であり、Costは、最適化期間の時間ステップi中にかかったコストであり、NPVcostは、最適化期間の継続期間にわたってかかった総コストの正味現在価値(すなわち、現在のコスト)である。いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940は、正味現在価値NPVcostを最適化して、特定の時点における接続された機器610の1つ又は複数のデバイスのNPVを決定する。
【0197】
上で論じたように、目的関数Jでの1つ又は複数の変数又はパラメータは、接続された機器610からの閉ループフィードバックに基づいて動的に更新することができる。例えば、接続された機器610から受信された機器性能情報を使用して、接続された機器610の信頼性及び/又は効率を更新することができる。目的関数オプティマイザ940は、目的関数Jを定期的に(例えば、1日に1回、1週間に1回、1か月に1回など)最適化して、接続された機器610からの閉ループフィードバックに基づいて予測コスト及び/又は正味現在価値NPVcostを動的に更新するように構成することができる。
【0198】
いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940は、最適化結果を生成する。最適化結果は、最適化期間内の時間ステップiごとに目的関数Jの決定変数の最適値を含むことがある。最適化結果は、接続された機器610の各デバイスに関する動作決定、機器メンテナンス決定、及び/又は機器購入決定を含む。いくつかの実施形態では、最適化結果は、最適化期間の継続期間にわたって接続された機器610を動作、メンテナンス、及び購入する経済的価値を最適化する。いくつかの実施形態では、最適化結果は、特定の時点における接続された機器610の1つ又は複数のデバイスの正味現在価値を最適化する。最適化結果により、BMS606は、接続された機器610に関する設定点をアクティブ化、非アクティブ化、又は調整して、最適化結果で指定された決定変数の最適値を実現することができる。
【0199】
いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、最適化結果を使用して、機器購入及びメンテナンスの推奨を生成する。機器購入及びメンテナンスの推奨は、目的関数Jを最適化することによって決定されるバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iに関する最適値に基づくことがある。例えば、接続された機器610の特定のデバイスに関するBmain,25=1の値は、最適化期間の第25の時間ステップにおいてそのデバイスに対してメンテナンスが実施されるべきであることを示すことがあり、Bmain,25=0の値は、その時間ステップにおいてメンテナンスを実施すべきでないことを示すことがある。同様に、Bcap,25=1の値は、最適化期間の第25の時間ステップにおいて、接続された機器610の新たなデバイスを購入すべきであることを示すことがあり、Bcap,25=0の値は、その時間ステップにおいて新たなデバイスを購入すべきでないことを示すことがある。
【0200】
いくつかの実施形態では、機器購入及びメンテナンスの推奨は、ビルディング10(例えば、BMS606)及び/又はクライアントデバイス448に提供される。操作者又はビルディングの所有者は、機器購入及びメンテナンスの推奨を使用して、メンテナンスの実施及び新たなデバイスの購入のコスト及び利益を評価することができる。いくつかの実施形態では、機器購入及びメンテナンスの推奨が整備士620に提供される。整備士620は、機器購入及びメンテナンスの推奨を使用して、整備の実施又は機器の交換のために顧客に連絡すべき時を決定することができる。
【0201】
モデル予測的メンテナンスプロセス
次に図10を参照すると、例示的実施形態に従って、モデル予測的メンテナンスプロセス1000の流れ図が示されている。プロセス1000は、ビルディングシステム600の1つ又は複数の構成要素によって実施することができる。いくつかの実施形態において、プロセス1000は、図6~9を参照して述べたようにMPMシステム602によって実施される。
【0202】
プロセス1000は、ビルディングの可変状態又は状況に影響を与えるためにビルディング機器を動作させること(ステップ1002)、及びビルディング機器からのフィードバックとして機器性能情報を受信すること(ステップ1004)を含むものとして示されている。ビルディング機器は、ビルディングを監視及び/又は制御するために使用することができる機器のタイプを含むことができる(例えば、接続された機器610)。例えば、ビルディング機器は、冷却器、AHU、ボイラ、バッテリ、ヒータ、エコノマイザ、バルブ、アクチュエータ、ダンパ、冷却塔、ファン、ポンプ、照明機器、セキュリティ機器、冷凍機器、又は、ビルディングシステム若しくはビルディング管理システム内の任意の他のタイプの機器を含むことができる。ビルディング機器は、図1~5を参照して述べたHVACシステム100、ウォーターサイドシステム200、エアサイドシステム300、BMS400、及び/又はBMS500の機器のいずれを含むこともできる。機器性能情報は、監視される変数のサンプル(例えば、測定された温度、測定された圧力、測定された流量、電力消費量など)、現在の動作条件(例えば、加熱又は冷却負荷、現在の動作条件など)、障害標示、又はビルディング機器の性能を特徴付ける他のタイプの情報を含むことができる。
【0203】
プロセス1000は、機器性能情報に応じてビルディング機器の効率及び信頼性を推定すること(ステップ1006)を含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、ステップ1006は、図9を参照して述べた効率アップデータ911及び信頼性推定器924、926によって実施される。ステップ1006は、機器性能情報を使用して、実際の動作条件下でのビルディング機器の効率ηを決定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、効率ηは、次式で示されるように、ビルディング機器の理想的な電力消費量Pidealと、ビルディング機器の実際の電力消費量Pactualとの比を表す。
【数23】
ここで、Pidealは、ビルディング機器に関する性能曲線によって定義されるビルディング機器の理想的な電力消費量であり、Pactualは、ビルディング機器の実際の電力消費量である。いくつかの実施形態では、ステップ1006は、ステップ1002で収集された機器性能情報を使用して、実際の電力消費量値Pactualを識別することを含む。ステップ1006は、実際の電力消費量Pactualを理想的な電力消費量Pidealと組み合わせて使用して効率ηを計算することを含むことができる。
【0204】
ステップ1006は、効率ηを定期的に更新して、ビルディング機器の現在の動作効率を反映することを含むことができる。例えば、ステップ1006は、ビルディング機器の効率ηを、1日に1回、1週間に1回、1年に1回、又は時間と共に効率ηの変化を捕捉するのに適切であり得る任意の他の間隔で計算することを含むことができる。効率ηの各値は、効率ηが計算される時点でのPideal及びPactualの対応する値に基づいていてよい。いくつかの実施形態では、ステップ1006は、高レベル最適化プロセスが実施されるたびに(すなわち、目的関数Jが最適化されるたびに)効率ηを更新することを含む。ステップ1006で計算された効率値は、初期効率値ηとしてメモリ810に記憶されることがあり、ここで、下付き数字0は、最適化期間の開始時又は開始前(例えば、時間ステップ0で)の効率ηの値を表す。
【0205】
ステップ1006は、最適化期間の各時間ステップiにおけるビルディング機器の効率ηを予測することを含むことができる。最適化期間の開始時の初期効率ηは、ビルディング機器の性能が低下するにつれて、時間と共に低下することがある。例えば、冷却器の効率は、冷却水管が汚れて冷却器の熱伝達率が低下した結果、時間と共に低下することがある。同様に、バッテリの物理的又は化学的構成要素の劣化により、バッテリの効率は、時間と共に低下することがある。ステップ1006は、そのような低下を、最適化期間の継続時間にわたって効率ηを増分的に低下させることによって考慮に入れることができる。
【0206】
いくつかの実施形態では、初期効率値ηは、各最適化期間の開始時に更新される。しかし、効率ηは、最適化期間中に低下することがあり、初期効率値ηは、最適化期間の継続期間にわたって次第に不正確になる。最適化期間中の効率低下を考慮に入れるために、ステップ1006は、連続する各時間ステップにおいて効率ηを所定量だけ低下させることを含むことができる。例えば、ステップ1006は、各時間ステップi=1・・・hでの効率を以下のように定義することを含むことができる。
η=ηi-1-Δη
ここで、ηは、時間ステップiにおける効率であり、ηi-1は、時間ステップi-1における効率であり、Δηは、連続する時間ステップ間の効率の低下である。いくつかの実施形態では、ηのこの定義は、Bmain,i=0及びBcap,i=0である各時間ステップに適用される。しかし、Bmain,i=1又はBcap,i=1の場合、ステップ1018で、ηの値をηmain又はηcapにリセットすることができる。
【0207】
いくつかの実施形態では、Δηの値は、効率値の時系列に基づいている。例えば、ステップ1006は、初期効率値ηの時系列を記録することを含むことがあり、各初期効率値ηは、特定の時点におけるビルディング機器の経験的に計算された効率を表す。ステップ1006は、初期効率値ηの時系列を検査して、効率が低下する率を決定することを含むことができる。例えば、時刻tでの初期効率ηがη0,1であり、時刻tでの初期効率がη0,2である場合、効率低下率は、以下のように計算することができる。
【数24】
ここで、
【数25】
は、効率低下率である。ステップ1006は、
【数26】
に各時間ステップの継続時間Δtを乗算して、Δηの値を計算することを含むことができる(すなわち、
【数27】
)。
【0208】
ステップ1006は、ステップ1004で受信された機器性能情報に基づいてビルディング機器の信頼性を推定することを含むことができる。信頼性は、ビルディング機器がその現在の動作条件下で障害なく動作し続ける尤度の統計的尺度であり得る。より過酷な条件下(例えば、高負荷、高温など)での動作は、信頼性をより低くすることがあり、より過酷でない条件下(例えば、低負荷、中程度の温度など)での動作は、信頼性をより高くすることがある。いくつかの実施形態では、信頼性は、ビルディング機器が最後にメンテナンスを受けてから経過した時間量、及び/又はビルディング機器が購入若しくは設置されてから経過した時間量に基づく。
【0209】
いくつかの実施形態では、ステップ1006は、機器性能情報を使用して、ビルディング機器の現在の動作条件を識別することを含む。現在の動作条件を検査して、ビルディング機器の性能が低下し始める時を明らかにし、及び/又は障害が発生する時を予測することができる。いくつかの実施形態では、ステップ1006は、ビルディング機器で潜在的に発生し得る様々なタイプの故障の尤度を推定することを含む。各故障の尤度は、ビルディング機器の現在の動作条件、ビルディング機器が設置されてから経過した時間量、及び/又はメンテナンスが最後に実施されてから経過した時間量に基づくことがある。いくつかの実施形態では、ステップ1006は、2016年6月21日出願の「Building Management System With Predictive Diagnostics」という名称の米国特許出願第15/188,824号明細書に記載のシステム及び方法を使用して、動作条件を識別し、様々な故障の尤度を予測することを含む。上記特許出願の開示全体を参照により本明細書に援用する。
【0210】
いくつかの実施形態では、ステップ1006は、複数のビルディングにわたって分散されたビルディング機器から動作データを受信することを含む。動作データは、例えば、現在の動作条件、障害標示、故障時間、又はビルディング機器の動作及び性能を特徴付ける他のデータを含むことができる。ステップ1006は、動作データのセットを使用して、各タイプの機器の信頼性モデルを作成することを含むことができる。ステップ1006で信頼性モデルを使用して、ビルディング機器の任意の所与のデバイスの信頼性を、その現在の動作条件及び/又は他の外的要因(例えば、メンテナンスが最後に実施されてからの時間、設置又は購入からの時間、地理的位置、水質など)に応じて推定することができる。
【0211】
ステップ1006で使用することができる信頼性モデルの一例は、次式で示される。
Reliability=f(OpCond,Δtmain,i,Δtcap,i
ここで、Reliabilityは、時間ステップiにおけるビルディング機器の信頼性であり、OpCondは、時間ステップiにおける動作条件であり、Δtmain,iは、メンテナンスが最後に行われた時点と時間ステップiとの間で経過した時間量であり、Δtcap,iは、ビルディング機器が購入又は設置された時点と時間ステップiとの間で経過した時間量である。ステップ1006は、ビルディング機器からフィードバックとして受信された機器性能情報に基づいて現在の動作条件OpCondを識別することを含むことができる。より過酷な条件下(例えば、高負荷、極端な温度など)での動作は、信頼性をより低くすることがあり、より過酷でない条件下(例えば、低負荷、中程度の温度など)での動作は、信頼性をより高くすることがある。
【0212】
引き続き図10を参照すると、プロセス1000は、推定された効率の関数として最適化期間にわたるビルディング機器のエネルギー消費を予測すること(ステップ1008)を含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、ステップ1008は、図9を参照して述べたように理想性能計算機912及び/又は電力消費量推定器によって実施される。ステップ1008は、負荷/料金予測器822から負荷予測Loadを受信し、低レベルオプティマイザ834から性能曲線を受信することを含むことができる。上で論じたように、性能曲線は、ビルディング機器の理想的な電力消費量Pidealを、デバイス又はデバイスのセットに対する加熱又は冷却負荷の関数として定義することができる。例えば、ビルディング機器に関する性能曲線は、次式によって定義することができる。
ideal,i=f(Load
ここで、Pideal,iは、時間ステップiにおけるビルディング機器の理想的な電力消費量(例えば、kW)であり、Loadは、時間ステップiにおけるビルディング機器に対する負荷(例えば、トン単位での冷却負荷、kW単位での加熱負荷など)である。理想的な電力消費量Pideal,iは、ビルディング機器が完璧な効率で動作すると仮定したそれらの電力消費量を表すことがある。ステップ1008は、ビルディング機器に関する性能曲線を使用して、最適化期間の各時間ステップにおけるビルディング機器に関する負荷点Loadに対応するPideal,iの値を識別することを含むことができる。
【0213】
いくつかの実施形態では、ステップ1008は、理想的な電力消費量Pideal,i及びビルディング機器の効率ηの関数として電力消費量Pop,iを推定することを含む。例えば、ステップ1008は、次式を使用して電力消費量Pop,iを計算することを含むことができる。
【数28】
ここで、Pideal,iは、対応する負荷点Loadでのビルディング機器に関する機器性能曲線に基づく電力消費量であり、ηは、時間ステップiにおけるビルディング機器の動作効率である。
【0214】
引き続き図10を参照すると、プロセス1000は、予測されたエネルギー消費量の関数として、最適化期間にわたってビルディング機器を動作させるコストCostopを定義すること(ステップ1010)を含むものとして示されている。いくつかの実施形態において、ステップ1010は、図9を参照して述べたように動作コスト計算機916によって実施される。ステップ1010は、次式を使用して各時間ステップi中の動作コストを計算することを含むことができる。
Costop,i=Cop,iop,iΔt
ここで、Pop,iは、ステップ1008で決定される時間ステップiにおける予測電力消費量であり、Cop,iは、時間ステップiにおける単位エネルギーあたりのコストであり、Δtは、各時間ステップの継続期間である。ステップ1010は、以下のように、最適化期間の継続期間にわたって動作コストを合計することを含むことができる。
【数29】
ここで、Costopは、目的関数Jの動作コスト項である。
【0215】
他の実施形態では、ステップ1010は、次式で示されるように、コストアレイCopに電力消費量アレイPop及び各時間ステップの継続時間Δtを乗算することによって、動作コストCostopを計算することを含むことができる。
Costop=CopopΔt
Costop=[Cop,1op,2 ・・・ Cop,h][Pop,1op,2 ・・・ Pop,hΔt
ここで、アレイCopは、最適化期間の特定の時間ステップi=1・・・hに関するエネルギーコスト値Cop,iを含み、アレイPopは、最適化期間の特定の時間ステップi=1・・・hに関する電力消費量値Pop,iを含む。
【0216】
引き続き図10を参照すると、プロセス1000は、推定された信頼性の関数として、最適化期間にわたってビルディング機器に対するメンテナンスを実施するコストを定義すること(ステップ1012)を含むものとして示されている。ステップ1012は、図9を参照して述べたようにメンテナンスコスト予測器920によって実施することができる。ステップ1012は、最適化期間の継続時間にわたるビルディング機器の推定された信頼性を使用して、最適化期間の各時間ステップにおいてビルディング機器がメンテナンス及び/又は交換を必要とする確率を決定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、ステップ1012は、ビルディング機器が所定の時間ステップにおいてメンテナンスを必要とする確率を臨界値と比較することを含む。ステップ1012は、時間ステップiにおいてビルディング機器がメンテナンスを必要とする確率が臨界値を超えるという決定に応答して、Bmain,i=1の値を設定することを含むことができる。同様に、ステップ1012は、所与の時間ステップにおいてビルディング機器が交換を必要とする確率を臨界値と比較することを含むことができる。ステップ1012は、時間ステップiにおいてビルディング機器が交換を必要とする確率が臨界値を超えるという決定に応答して、Bcap,i=1の値を設定することを含むことができる。
【0217】
ステップ1012は、ビルディング機器に対する様々なタイプのメンテナンスの実施に関連するコストCmain,iを決定することを含むことができる。ステップ1012は、外部システム又はデバイス(例えば、データベース、ユーザデバイスなど)からメンテナンスコストのセットを受信することを含むことができる。いくつかの実施形態では、メンテナンスコストは、様々なタイプのメンテナンスを実施する経済的コスト(例えば、$)を定義する。各タイプのメンテナンス活動は、それに関連する異なる経済的コストを有することがある。例えば、冷却器圧縮機内のオイルを交換するメンテナンス活動にかかる経済的コストは、比較的小さいことがあり、冷却器を完全に分解してすべての冷却水管を洗浄するメンテナンス活動にかかる経済的コストは、かなり大きいことがある。ステップ1012は、メンテナンスコストを使用して目的関数JでのCmain,iの値を定義することを含むことができる。
【0218】
ステップ1012は、最適化期間の継続期間にわたるビルディング機器のメンテナンスコストを推定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、ステップ1012は、次式を使用して各時間ステップi中のメンテナンスコストを計算することを含む。
Costmain,i=Cmain,imain,i
ここで、Cmain,iは、時間ステップiにおいて実施することができるm個の異なるタイプのメンテナンス活動それぞれに関する要素を含むメンテナンスコストのアレイであり、Bmain,iは、m個のメンテナンス活動それぞれが時間ステップiにおいて実施されるかどうかを示すバイナリ決定変数のアレイである。ステップ1012は、以下のように、最適化期間の継続期間にわたってメンテナンスコストを合計することを含むことができる。
【数30】
ここで、Costmainは、目的関数Jのメンテナンスコスト項である。
【0219】
他の実施形態では、ステップ1012は、次式に示されるように、メンテナンスコストアレイCmainにバイナリ決定変数の行列Bmainを乗算することによってメンテナンスコストCostmainを推定することを含む。
【数31】
ここで、アレイCmainの各要素は、特定のメンテナンス活動j=1・・・mに関するメンテナンスコスト値Cmain,jを含み、行列Bmainの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1・・・hにおける特定のメンテナンス活動j=1・・・mに関するバイナリ決定変数を含む。
【0220】
引き続き図10を参照すると、プロセス1000は、推定された信頼性の関数として、最適化期間にわたってビルディング機器を購入又は交換するコストCostcapを定義すること(ステップ1014)を含むものとして示されている。ステップ1014は、図9を参照して述べたように資本コスト予測器930によって実施することができる。いくつかの実施形態では、ステップ1014は、最適化期間の継続時間にわたるビルディング機器の推定された信頼性を使用して、最適化期間の各時間ステップにおいてビルディング機器の新たなデバイスが購入される確率を決定することを含む。いくつかの実施形態では、ステップ1014は、所与の時間ステップにおいてビルディング機器の新たなデバイスが購入される確率を臨界値と比較することを含む。ステップ1014は、時間ステップiにおいてビルディング機器が購入される確率が臨界値を超えるという決定に応答して、Bcap,i=1の値を設定することを含むことができる。
【0221】
ステップ1014は、様々な資本購入(すなわち、ビルディング機器の1つ又は複数の新たなデバイスを購入すること)に関連するコストCcap,iを決定することを含むことができる。ステップ1014は、外部システム又はデバイス(例えば、データベース、ユーザデバイスなど)から資本コストのセットを受信することを含むことができる。いくつかの実施形態では、資本コストは、様々な資本購入を行う経済的コスト(例えば、$)を定義する。各タイプの資本購入は、それに関連する異なる経済的コストを有することがある。例えば、新たな温度センサの購入にかかる経済的コストは比較的小さいことがあり、新たな冷却器の購入にかかる経済的コストはかなり大きいことがある。ステップ1014は、購入コストを使用して、目的関数JでのCcap,iの値を定義することを含むことができる。
【0222】
いくつかの資本購入は、他のものよりも高価であり得る。しかし、異なるタイプの資本購入は、効率η及び/又はビルディング機器の信頼性に対して異なるレベルでの向上をもたらすことがある。例えば、既存のセンサの交換のために新たなセンサを購入することで、効率ηがわずかに向上する、及び/又は信頼性がわずかに向上することがあり、新たな冷却器及び制御システムを購入することで、ビルディング機器の効率η及び/又は信頼性がかなり大きく向上することがある。したがって、複数の異なるレベルの購入後の効率(すなわち、ηcap)及び購入後の信頼性(すなわち、Reliabilitycap)があり得る。ηcap及びReliabilitycapの各レベルは、異なるタイプの資本購入に対応することがある。
【0223】
ステップ1014は、最適化期間の継続期間にわたるビルディング機器の資本コストを推定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、ステップ1014は、次式を使用して各時間ステップi中の資本コストを計算することを含む。
Costcap,i=Ccap,icap,i
ここで、Ccap,iは、時間ステップiにおいて行うことができるp個の異なる資本購入それぞれに関する要素を含む資本購入コストのアレイであり、Bcap,iは、p個の資本購入それぞれが時間ステップiにおいて行われるかどうかを示すバイナリ決定変数のアレイである。ステップ1014は、以下のように、最適化期間中の継続期間にわたって資本コストを合計することを含むことができる。
【数32】
ここで、Costcapは、目的関数Jの資本コスト項である。
【0224】
他の実施形態では、ステップ1014は、次式に示されるように、資本コストアレイCcapにバイナリ決定変数の行列Bcapを乗算することによって資本コストCostcapを推定することを含む。
【数33】
ここで、アレイCcapの各要素は、特定の資本購入k=1・・・pに関する資本コスト値Ccap,kを含み、行列Bcapの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1・・・hにおける特定の資本購入k=1・・・pに関するバイナリ決定変数を含む。
【0225】
引き続き図10を参照すると、プロセス1000は、コストCostop、Costmain、及びCostcapを含む目的関数を最適化して、ビルディング機器に関する最適なメンテナンス戦略を決定すること(ステップ1016)を含むものとして示されている。ステップ1016は、ステップ1010~1014で定式化された動作コスト項、メンテナンスコスト項、及び資本コスト項を合計することによって目的関数Jを生成することを含むことができる。ステップ1016で生成することができる目的関数の一例は、次式で示される。
【数34】
ここで、Cop,iは、最適化期間の時間ステップiにおいて接続された機器610が消費する単位エネルギーあたりのコスト(例えば、$/kWh)であり、Pop,iは、時間ステップiにおける接続された機器610の電力消費量(例えば、kW)であり、Δtは、各時間ステップiの継続時間であり、Cmain,iは、時間ステップiにおいて接続された機器610に対して実施されるメンテナンスのコストであり、Bmain,iは、メンテナンスが実施されるかどうかを示すバイナリ変数であり、Ccap,iは、時間ステップiにおいて接続された機器610の新たなデバイスを購入する資本コストであり、Bcap,iは、新たなデバイスが購入されるかどうかを示すバイナリ変数であり、hは、最適化が実施される水平又は最適化期間の継続時間である。
【0226】
ステップ1016で生成することができる目的関数の別の例は、次式で示される。
【数35】
ここで、アレイCopは、最適化期間の特定の時間ステップi=1・・・hに関するエネルギーコスト値Cop,iを含み、アレイPopは、最適化期間の特定の時間ステップi=1・・・hに関する電力消費量値Pop,iを含み、アレイCmainの各要素は、特定のメンテナンス活動j=1・・・mに関するメンテナンスコスト値Cmain,jを含み、行列Bmainの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1・・・hにおける特定のメンテナンス活動j=1・・・mに関するバイナリ決定変数を含み、アレイCcapの各要素は、特定の資本購入k=1・・・pに関する資本コスト値Ccap,kを含み、行列Bcapの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1・・・hにおける特定の資本購入k=1・・・pに関するバイナリ決定変数を含む。
【0227】
ステップ1016は、目的関数Jでの1つ又は複数の変数又はパラメータに制約を課すことを含むことができる。制約は、動作コスト予測器910、メンテナンスコスト予測器920、及び資本コスト予測器930を参照して述べた式又は関係のいずれを含むこともできる。例えば、ステップ1016は、ビルディング機器の1つ又は複数のデバイスに関する電力消費量値Pop,iを、理想電力消費量Pideal,i及び効率ηの関数として定義する制約を課すことを含むことができる(例えば、Pop,i=Pideal,i/η)。ステップ1016は、効率アップデータ911及び効率デグレーダ913を参照して述べたのと同様に、効率ηをバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの関数として定義する制約を課すことを含むことができる。ステップ1016は、メンテナンス推定器922及び購入推定器932を参照して述べたのと同様に、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iを0又は1のいずれかの値に制約し、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iを、接続された機器610の信頼性Reliabilityの関数として定義する制約を課すことを含むことができる。ステップ1016は、信頼性推定器924及び934を参照して述べたのと同様に、接続された機器610の信頼性Reliabilityを機器性能情報(例えば、動作条件、稼働時間など)の関数として定義する制約を課すことを含むことができる。
【0228】
ステップ1016は、目的関数Jを最適化して、最適化期間の継続時間にわたるバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの最適値を決定することを含むことができる。ステップ1016は、様々な最適化技法の任意のものを使用して目的関数Jを定式化及び最適化することを含むことができる。例えば、ステップ1016は、整数計画法、混合整数線形計画法、確率的最適化、凸最適化、動的計画法、又は任意の他の最適化技法を使用して、目的関数Jを定式化し、制約を定義し、最適化を実施することを含むことができる。これら及び他の最適化技法は当技術分野で知られており、本明細書で詳細には述べない。
【0229】
いくつかの実施形態では、ステップ1016は、混合整数確率的最適化を使用して目的関数Jを最適化することを含む。混合整数確率的最適化では、目的関数Jでの変数のいくつかを、ランダム変数又は確率変数の関数として定義することができる。例えば、決定変数Bmain,i及びBcap,iは、ビルディング機器の信頼性に基づいた確率値を有するバイナリ変数として定義することができる。低い信頼性値は、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iが値1を有する確率を高めることがあり(例えば、Bmain,i=1及びBcap,i=1)、高い信頼性値は、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iが値0を有する確率を高めることがある(例えば、Bmain,i=0及びBcap,i=0)。いくつかの実施形態では、ステップ1016は、混合整数確率的技法を使用して、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの値をビルディング機器の信頼性の確率関数として定義することを含む。
【0230】
上で論じたように、目的関数Jは、最適化期間の継続期間にわたってビルディング機器の1つ又は複数のデバイスを動作、メンテナンス、及び購入する予測コストを表すこともある。いくつかの実施形態では、ステップ1016は、これらのコストを特定の時点(例えば、現時点)に投影し、特定の時点でのビルディング機器の1つ又は複数のデバイスの正味現在価値(NPV)を決定することを含む。例えば、ステップ1016は、次式を使用して、目的関数Jでの各コストを現時点に投影することを含むことができる。
【数36】
ここで、rは利率であり、Costは、最適化期間の時間ステップi中にかかったコストであり、NPVcostは、最適化期間の継続期間にわたってかかった総コストの正味現在価値(すなわち、現在のコスト)である。いくつかの実施形態では、ステップ1016は、正味現在価値NPVcostを最適化して、特定の時点でのビルディング機器のNPVを決定することを含む。
【0231】
上で論じたように、目的関数Jでの1つ又は複数の変数又はパラメータは、ビルディング機器からの閉ループフィードバックに基づいて動的に更新することができる。例えば、ビルディング機器から受信された機器性能情報を使用して、ビルディング機器の信頼性及び/又は効率を更新することができる。ステップ1016は、目的関数Jを定期的に(例えば、1日に1回、1週間に1回、1か月に1回など)最適化して、ビルディング機器からの閉ループフィードバックに基づいて予測コスト及び/又は正味現在価値NPVcostを動的に更新することを含むことができる。
【0232】
いくつかの実施形態では、ステップ1016は、最適化結果を生成することを含む。最適化結果は、最適化期間内の時間ステップiごとに目的関数Jの決定変数の最適値を含むことがある。最適化結果は、ビルディング機器の各デバイスに関する動作決定、機器メンテナンス決定、及び/又は機器購入決定を含む。いくつかの実施形態では、最適化結果は、最適化期間の継続期間にわたってビルディング機器を動作、メンテナンス、及び購入する経済的価値を最適化する。いくつかの実施形態では、最適化結果は、特定の時点におけるビルディング機器の1つ又は複数のデバイスの正味現在価値を最適化する。最適化結果により、BMS606は、ビルディング機器に関する設定点をアクティブ化、非アクティブ化、又は調整して、最適化結果で指定された決定変数の最適値を実現することができる。
【0233】
いくつかの実施形態では、プロセス1000は、最適化結果を使用して、機器購入及びメンテナンスの推奨を生成することを含む。機器購入及びメンテナンスの推奨は、目的関数Jを最適化することによって決定されるバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iに関する最適値に基づくことがある。例えば、ビルディング機器の特定のデバイスに関するBmain,25=1の値は、最適化期間の第25の時間ステップにおいてそのデバイスに対してメンテナンスが実施されるべきであることを示すことがあり、Bmain,25=0の値は、その時間ステップにおいてメンテナンスを実施すべきでないことを示すことがある。同様に、Bcap,25=1の値は、最適化期間の第25の時間ステップにおいて、ビルディング機器の新たなデバイスを購入すべきであることを示すことがあり、Bcap,25=0の値は、その時間ステップにおいて新たなデバイスを購入すべきでないことを示すことがある。
【0234】
いくつかの実施形態では、機器購入及びメンテナンスの推奨は、ビルディング10(例えば、BMS606)及び/又はクライアントデバイス448に提供される。操作者又はビルディングの所有者は、機器購入及びメンテナンスの推奨を使用して、メンテナンスの実施及び新たなデバイスの購入のコスト及び利益を評価することができる。いくつかの実施形態では、機器購入及びメンテナンスの推奨が整備士620に提供される。整備士620は、機器購入及びメンテナンスの推奨を使用して、整備の実施又は機器の交換のために顧客に連絡すべき時を決定することができる。
【0235】
引き続き図10を参照すると、プロセス1000は、最適なメンテナンス戦略に基づいてビルディング機器の効率及び信頼性を更新すること(ステップ1018)を含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、ステップ1018は、ビルディング機器に対するメンテナンスの実施、又はビルディング機器の1つ若しくは複数のデバイスを交換若しくは補完するための新たな機器の購入により生じるビルディング機器の効率ηの上昇を考慮に入れるために、最適化期間中の1つ又は複数の時間ステップに関する効率ηを更新することを含む。効率ηが更新される時間ステップiは、メンテナンスが実施されることになる、又は機器が交換されることになる予測時間ステップに対応することがある。ビルディング機器に対してメンテナンスが実施されることになる予測時間ステップは、目的関数Jでのバイナリ決定変数Bmain,iの値によって定義することができる。同様に、ビルディング機器が交換されることになる予測時間ステップは、目的関数Jでのバイナリ決定変数Bcap,iの値によって定義することができる。
【0236】
ステップ1018は、その時間ステップにおいてメンテナンスが実施されること、及び/又はその時間ステップにおいて新たな機器が購入されることをバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iが示す場合(すなわち、Bmain,i=1及び/又はBcap,i=1)、所与の時間ステップiに関する効率ηをリセットすることを含むことができる。例えば、Bmain,i=1の場合、ステップ1018は、ηの値をηmainにリセットすることを含むことができ、ここで、ηmainは、時間ステップiにおいて実施されるメンテナンスにより得られると期待される効率値である。同様に、Bcap,i=1の場合、ステップ1018は、ηの値をηcapにリセットすることを含むことができ、ここで、ηcapは、時間ステップiにおいて実施されるビルディング機器の1つ又は複数のデバイスを補完又は交換するために新たなデバイスを購入することにより得られると期待される効率値である。ステップ1018は、1つ又は複数の時間ステップに関して効率ηをリセットすることを含むことができ、(例えば最適化の各反復によって)バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの値に基づいて最適化が実施される。
【0237】
ステップ1018は、バイナリ決定変数Bmain,iの値に基づいて、ビルディング機器に対してメンテナンスが最後に実施されてから経過した時間量Δtmain,iを決定することを含むことがある。各時間ステップiに関して、ステップ1018は、時間ステップi及び前の各時間ステップ(例えば、時間ステップi-1、i-2、・・・、1)におけるBmainの対応する値を検査することができる。ステップ1018は、メンテナンスが最後に実施された時点(すなわち、Bmain,i=1である直近の時点)を、時間ステップiに関連する時点から引くことによって、Δtmain,iの値を計算することを含むことができる。メンテナンスが最後に実施されてからの時間量Δtmain,iが長いと、信頼性がより低くなることがあり、メンテナンスが最後に実施されてからの時間量が短いと、信頼性がより高くなることがある。
【0238】
同様に、ステップ1018は、バイナリ決定変数Bcap,iの値に基づいて、ビルディング機器が購入又は設置されてから経過した時間量Δtcap,iを決定することを含むことがある。各時間ステップiに関して、ステップ1018は、時間ステップi及び前の各時間ステップ(例えば、時間ステップi-1、i-2、・・・、1)におけるBcapの対応する値を検査することができる。ステップ1018は、ビルディング機器が購入又は設置された時点(すなわち、Bcap,i=1である直近の時点)を、時間ステップiに関連する時点から引くことによって、Δtcap,iの値を計算することを含むことができる。ビルディング機器が購入又は設置されてからの時間量Δtcap,iが長いと、信頼性がより低くなることがあり、ビルディング機器が購入又は設置されてからの時間量が短いと、信頼性がより高くなることがある。
【0239】
いくつかのメンテナンス活動は、他よりもコストがかかることがある。しかし、異なるタイプのメンテナンス活動が、ビルディング機器の効率η及び/又は信頼性に対する異なるレベルの改良をもたらすことがある。例えば、冷却器内のオイルの単なる交換は、効率ηのわずかな改良及び/又は信頼性のわずかな改良をもたらすことがあり、冷却器の完全な分解及びすべての冷却水管の洗浄は、ビルディング機器の効率η及び/又は信頼性のかなり大きな改良をもたらすことがある。したがって、複数の異なるレベルのメンテナンス後の効率(すなわち、ηmain)及びメンテナンス後の信頼性(すなわち、Reliabilitymain)が存在し得る。ηmain及びReliabilitymainの各レベルは、異なるタイプのメンテナンス活動に対応することがある。
【0240】
いくつかの実施形態では、ステップ1018は、各バイナリ決定変数Bmain,j,iに関連するメンテナンス活動を識別することを含み、Bmain,j,i=1の場合、効率ηを、対応するメンテナンス後の効率レベルηmain,jにリセットする。同様に、ステップ1018は、各バイナリ決定変数Bmain,j,iに関連するメンテナンス活動を識別することを含むことができ、Bmain,j,i=1の場合、信頼性を、対応するメンテナンス後の信頼性レベルReliabilitymain,jにリセットすることができる。
【0241】
いくつかの資本購入は、他のものよりも高価であり得る。しかし、異なるタイプの資本購入は、効率η及び/又はビルディング機器の信頼性に対して異なるレベルでの向上をもたらすことがある。例えば、既存のセンサの交換のために新たなセンサを購入することで、効率ηがわずかに向上する、及び/又は信頼性がわずかに向上することがあり、新たな冷却器及び制御システムを購入することで、ビルディング機器の効率η及び/又は信頼性がかなり大きく向上することがある。したがって、複数の異なるレベルの購入後の効率(すなわち、ηcap)及び購入後の信頼性(すなわち、Reliabilitycap)があり得る。ηcap及びReliabilitycapの各レベルは、異なるタイプの資本購入に対応することがある。
【0242】
いくつかの実施形態では、ステップ1018は、各バイナリ決定変数Bmain,k,iに関連する資本購入を識別し、Bcap,k,i=1の場合、効率ηを、対応する購入後効率レベルηcap,kにリセットすることを含む。同様に、ステップ1018は、各バイナリ決定変数Bcap,k,iに関連する資本購入を識別することを含むことがあり、Bmain,k,i=1の場合、信頼性を、対応する購入後信頼性レベルReliabilitycap,kにリセットすることができる。
【0243】
例示的実施形態の構成
様々な例示的実施形態に示したようなシステム及び方法の構成及び配置は、例示的なものにすぎない。本開示ではいくつかの実施形態のみを詳細に述べているが、多くの変更が可能である(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状、及び広さ、パラメータの値、取付け配置、材料の使用、色、向きなど)。例えば、要素の位置が逆にされてもよく、又は他の形で変更されてもよく、個々の要素の性質若しくは数又は位置が変化又は変更されてもよい。したがって、そのような変更は全て本開示の範囲内に含まれることが意図される。任意のプロセス又は方法ステップの順序又は並びは、代替実施形態に従って変更されか又は並べ替えられてもよい。本開示の範囲から逸脱することなく、例示的実施形態の設計、動作条件、及び配置について、他の置換、修正、変更、及び省略が行われてもよい。
【0244】
本開示は、様々な動作を達成するための方法、システム、及び任意の機械可読媒体でのプログラム製品を企図する。本開示の実施形態は、既存のコンピュータプロセッサを使用して実装されても、この目的若しくは別の目的で組み込まれた適切なシステムのための専用コンピュータプロセッサによって実装されても、又は有線システムによって実装されてもよい。本開示の範囲内の実施形態は、機械実行可能命令又はデータ構造を担持又は記憶するための機械可読媒体を備えるプログラム製品を含む。そのような機械可読媒体は、汎用若しくは専用コンピュータ、又はプロセッサを備える他の機械によってアクセスすることができる任意の利用可能な媒体であってもよい。一例として、そのような機械可読媒体は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD-ROM、若しくは他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置若しくは他の磁気記憶デバイス、又は任意の他の媒体を含むことができ、そのような媒体は、機械実行可能命令又はデータ構造の形態での所望のプログラムコードを担持又は記憶するために使用することができ、さらに、汎用若しくは専用コンピュータ、又はプロセッサを備える他の機械によってアクセスすることができる。上記の媒体の組合せも機械可読媒体の範囲に含まれる。機械実行可能命令は、例えば、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は専用処理機械に特定の機能若しくは機能群を実施させる命令及びデータを含む。
【0245】
図面は方法ステップの特定の順序を示しているが、ステップの順序は図示されるものとは異なっていてもよい。また、2つ以上のステップが並行して、又は一部並行して実施されてもよい。そのような変形形態は、選択されるソフトウェア及びハードウェアシステム、並びに設計者の選択に依存する。そのような変形形態は全て本開示の範囲内にある。同様に、ソフトウェア実装は、様々な接続ステップ、処理ステップ、比較ステップ、及び決定ステップを達成するために規則ベースの論理及び他の論理を備えた標準的なプログラミング技法によって達成することができる。
図1
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図10