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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】皮膚貼付用ゲルシート
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20221129BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20221129BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20221129BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/31
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/81
A61K8/891
A61K8/92
A61K9/70 401
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/44
A61P17/16
A61Q19/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019561632
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2018047181
(87)【国際公開番号】W WO2019131484
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2017251016
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恵悟
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 英美
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸次
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-278511(JP,A)
【文献】特開2003-212760(JP,A)
【文献】特開平11-228340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/02
A61K 8/31
A61K 8/34
A61K 8/37
A61K 8/81
A61K 8/891
A61K 8/92
A61K 9/70
A61K 47/10
A61K 47/32
A61K 47/44
A61P 17/16
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)~(f);
(a)ケン化度が70~90mol%であるポリビニルアルコール 1.5~26質量%
(b)アクリル酸系ポリマー 0.06~3質量%
(c)多価アルコール 40~93質量%
(d)25℃において固形及び/又は半固形の油剤 0.1~16質量%
(e)25℃において液状の油剤 1.0~30質量%
(f)水 10質量%以下
を含有する皮膚貼付用ゲルシート。
【請求項2】
前記ゲルシートの厚みが50~2000μmである、請求項1に記載の皮膚貼付用ゲルシート。
【請求項3】
前記成分(a)と成分(b)の含有質量割合(a)/(b)が3~160である、請求項1又は2に記載の皮膚貼付用ゲルシート。
【請求項4】
前記成分(a)と成分(c)の含有質量割合(a)/(c)が0.02~0.5である、請求項1~3のいずれか1項に記載の皮膚貼付用ゲルシート。
【請求項5】
前記成分(d)と成分(e)の含有質量割合(d)/(e)が0.001~3.5である、請求項1~4のいずれか1項に記載の皮膚貼付用ゲルシート。
【請求項6】
前記成分(c)がグリセリン及び/又は1,3-ブチレングリコールである、請求項1~5のいずれか1項に記載の皮膚貼付用ゲルシート。
【請求項7】
前記成分(b)が、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリロイルジメチルタウリンから選択される1種又は2種以上の組み合わせの原料モノマーを重合又は共重合させて得られるポリマーである、請求項1~6のいずれか1項に記載の皮膚貼付用ゲルシート。
【請求項8】
前記成分(b)が、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アクリルアミドと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の架橋コポリマー、アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン共重合体から選ばれる1種又は2種以上の組合せである、請求項1~7のいずれか1項に記載の皮膚貼付用ゲルシート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の皮膚貼付用ゲルシートを、
皮膚に貼付するか、又は、皮膚に貼付した後に、水若しくは水を含有する組成物を前記貼付したゲルシートに加えて当該ゲルシートを肌になじませる皮膚貼付用ゲルシートの使用方法。
【請求項10】
支持体を必要とせずにゲルシートを使用する、請求項記載の皮膚貼付用ゲルシートの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚貼付用ゲルシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧品、医薬品等への利用を目的として、水系成分、保湿成分、有効成分等を水溶性の皮膜形成剤やゲル化剤等によって固めた皮膚貼付用のシート又はパッチが開発されてきた。これらの皮膚貼付用のシート又はパッチは、肌上で長時間流れ落ちることなく種々の成分を高濃度で保持できるため、保湿効果や薬剤の浸透促進効果に優れるという利点を有する。このような機能、又は使用性を向上させるために、これまでに種々検討がなされてきた。
【0003】
老化した角質細胞をピールオフすることを目的としたパックをベースに、付着性を抑えることにより保湿効果の向上を狙ったアプローチとして、ポリアクリル酸、多価アルコール及び水を主成分とし、保水性に優れた低剥離力のパック剤(例えば、特許文献1参照)や、ポリアクリル酸ナトリウムゲル、水酸化アルミニウムゲル及びシリカからなる賦形剤により水系成分を固めた保水性に優れるパック剤(例えば、特許文献2参照)が提案されている。また、水溶性多糖類や増粘剤により保湿成分を保持することで保湿効果の向上を狙ったアプローチとしては、ゼラチンとポリアクリル酸塩により、多価アルコール、水等を固めたシート状パック剤(例えば、特許文献3参照)や、ジェランガムとセルロース誘導体又は他の水溶性多糖類とを組み合わせたゲルパッチ(例えば、特許文献4参照)が提案されている。さらに、水を大量に含むハイドロゲルではなく、アルコールをメインに配合することで保湿効果に優れるゲルを利用した技術としては、カルボキシ基含有水溶性高分子に酸を作用させ多価アルコールをゲル化させた化粧用ゲルシート(例えば、特許文献5参照)等が開示されている。
【0004】
さらに、支持体に乳化組成物を保持させることで、油剤によるエモリエント効果の付与を狙ったアプローチとしては、非イオン性界面活性剤、保湿剤、油剤を含有する乳液をシート状基材に含浸したパック化粧料(例えば、特許文献6参照)、ポリアクリル酸系高分子とエポキシ系架橋剤により多価アルコール、水、オイル成分を固めて作製したゲル状組成物を支持体上及び/又は支持体内に保持させた化粧用ゲルシート(例えば、特許文献7参照)、多価アルコール、高級アルコール、高級アルコール以外の油性成分、乳化剤、及び水を含有する乳化組成物を、支持体上及び/又は支持体内に保持させたシート状パック化粧料(例えば、特許文献8参照)、多量の多価アルコール、水とシリコーン油を、アニオン性活性剤と高級アルコールにより乳化した組成物を支持体上及び/又は支持体内に保持させたシート状パック化粧料(例えば、特許文献9参照)が開示されている。
【0005】
一方、有効成分の浸透性の向上を狙ったアプローチとしては、ポリビニルアルコールに経皮投与有効成分を保持させた皮膚貼付用パッチ(例えば、特許文献10参照)や、ゼラチン又はその誘導体と、水溶性多糖類とを組み合わせたハイドロゲルと、カロテノイド含有O/W型エマルジョンと含有し、カロテノイドの皮膚浸透性向上を狙った生体用粘着ゲルシート(例えば、特許文献11参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭54-49334号公報
【文献】特公昭63-15243号公報
【文献】特開平8-188527号公報
【文献】特開2000-86496号公報
【文献】特開2017-200899号公報
【文献】特開2003-342125号公報
【文献】特開平11-228340号公報
【文献】特開2004-35459号公報
【文献】特開2009-84240号公報
【文献】特開昭64-16718号公報
【文献】特開2009-73764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ピールオフパックをベースとし保湿機能の向上を狙った特許文献1及び2の技術は、膜が硬いために使用中に引きつりやつっぱり感を感じ、負担感の点で満足のできるものではなかった。また、ゲル化剤として水溶性多糖類又はゼラチンを用いた特許文献3及び4の技術は、膜の柔軟性に優れ負担感は軽減されているものの、揮発性の高い水がメインの液体成分となって形成されるハイドロゲルであり、経時で水が蒸発した後に残る保湿成分の量が少ないため、保湿性の点で劣るものであった。同様に、特許文献10の技術も、ポリビニルアルコールに水を担持させたハイドロゲルシートであったため、水溶性有効成分の浸透促進には適していたものの、保湿性に課題が残るものであった。
【0008】
これを解消するべくメインの保湿剤を多価アルコールとした特許文献5の技術は、保湿性には優れるものの、ゲルの支持体として水溶性不織布又は水溶性フィルムの使用が求められ、製造工程の増加につながっていた。また、使用方法として、シートを肌に貼付後適量の水を加えてマッサージすることで、シートを水に溶解させ肌になじませるという手法が提案されているが、実際には、シートを構成するゲルが硬く、また支持体を含むため、水への溶解性の点で劣るものであった。
【0009】
一方、水系の保湿成分に加え、エモリエント効果を有する油剤を配合した特許文献6~9の技術は、乳化により膜強度が低下するため、支持体の併用が必須であり、また一枚膜として除去できないために、使用後に肌上に残った乳液のふき取り性の必要を有しており、使用性の点で満足のできるものではなかった。さらに、特許文献11の技術では、ゼラチン又はその誘導体をメインのゲル化剤とするハイドロゲルにO/Wのエマルションを添加することで、油剤を配合しつつも、支持体を併用することなくゲル組成物単独でのシート化を実現しているが、特許文献3及び4の技術と同様にハイドロゲルであるため、保湿性の点で十分なものではなかった。
【0010】
このように、優れた保湿効果を付与しながら、高い膜強度により使用性に優れるゲルシートを実現することは容易ではなかった。高い膜強度がありすぎると、肌の動き等に柔軟に追従できず負担感が生じやすい;水への溶解性も低くなりやすい;また皮膚へのなじみもよくないこと;等がある。逆に膜強度を低くすると、貼付する際に剥離基材からのゲルシートの剥離が難しい;剥離したゲルシートの皮膚への貼付が難しい;また皮膚貼付後でも形状の安定や維持等のための支持体がゲルシートに必要になり、支持体があることでマッサージ等が行いにくいこと;等がある。
斯様に、保湿効果と使用性(膜強度、膜の負担感のなさ、水への溶解性)に優れた皮膚貼付用ゲルシートが望まれていた。
【0011】
さらに、ゲルをベースとして油剤を高配合しつつも、皮膚貼付用ゲルシート組成物自体を調製して、貼付後に支持体を用いずとも使用性に優れるゲルシートを得るための技術は容易ではなかった。このとき皮膚貼付用ゲルシートに油剤を配合することで、当該ゲルシートのエモリエント効果をより良好に奏することができる。さらに、シートを肌に貼付後適量の水を加えて成分を肌へなじませるという使用方法を想定した場合、水への高い溶解性も兼ね備える技術は容易ではない。
斯様に、シートの成形性に優れ、ユーザが皮膚に適用しやすいような使用性に優れた皮膚貼付用ゲルシートが望まれていた。
【0012】
しかしながら、優れた保湿効果と使用性(膜強度、膜の負担感のなさ、水への溶解性)を有し、優れたシートの成形性をも有する、皮膚貼付用ゲルシートを得るための、方向性や技術が未だ確立されていないため、このような皮膚貼付用ゲルシートを得ることは技術的困難性を伴うものである。このため、保湿効果、使用性(膜強度、膜の負担感のなさ、水への溶解性)及びシート成形性に優れる皮膚貼付用ゲルシートに未だ到達していないのが実情である。
【0013】
そこで、本発明は、保湿効果と使用性(膜強度、膜の負担感のなさ、水への溶解性)、シートの成形性に優れる皮膚貼付用ゲルシートを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる実情において、本発明者は上記課題に鑑み鋭意研究を行った結果、皮膜形成能がある(a)ポリビニルアルコール及び(b)アクリル酸系ポリマー、並びに水系である(c)多価アルコール及び(f)水と、油剤である(d)特定量の固形及び/又は半固形の油剤及び(e)特定量の液状の油剤とを混合分散させてO/Wエマルション組成物を得、当該O/Wエマルション組成物から、水を特定量以下にしたゲルシートを得た。
【0015】
この本発明の皮膚貼付用ゲルシートは、優れた保湿性を有し、また支持体がなくとも使用できる膜強度を有した一方で肌への柔軟な追従性を有していた。このように、本発明のゲルシートは、保湿性に優れながら、柔軟性と強度を兼ね備えるために、使用時に支持体を用いなくともよく、また使用性にも優れていた。また、本発明のゲルシートは、柔軟性及び強度を兼ね備える特異な性質を有するものの、製造時に変形が起こりにくく、優れたシートの成形性を有していた。さらに、本発明のゲルシートは、水への高い溶解性を有すると共に使用時に支持体が不要であることにより、容易に水に溶解又は膨潤して肌への違和感もなく肌になじませることが可能であり、また、ゲルシートに含まれる成分を肌になじませ易く浸透させることも可能である。また、本発明のゲルシートは、貼付後に支持体がなくても上述の保湿効果や使用性等に優れている利点があり、支持体がなくてもよいことで本発明のゲルシートと種々の成分を含む水系組成物等とを併用できる利点もある。
【0016】
すなわち、本発明者は、(a)ポリビニルアルコール、(b)アクリル酸系ポリマー、(c)特定量の多価アルコール、(d)特定量の固形及び/又は半固形の油剤、(e)特定量の液状の油剤、(f)特定量以下の水を含有させることで、保湿効果と使用性(膜強度、膜の負担感のなさ、水への溶解性)及び成形性に優れる皮膚貼付用ゲルシートを得ることができることを見出し、これにより本発明を完成させるに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、
次の成分(a)~(f);
(a)ポリビニルアルコール
(b)アクリル酸系ポリマー
(c)多価アルコール 40~93質量%
(d)25℃において固形又は半固形の油剤 0.1~16質量%
(e)25℃において液状の油剤 1.0~30質量%
(f)水 10質量%以下
を含有する皮膚貼付用ゲルシートを提供するものである。
【0018】
また、ゲルシートの厚みが50~2000μmであってもよい。
また、前記成分(a)と成分(b)の含有質量割合(a)/(b)が3~160であってもよい。
また、前記成分(a)と成分(c)の含有質量割合(a)/(c)が0.02~0.5であってもよい。
また、前記成分(d)と成分(e)の含有質量割合(d)/(e)が0.001~3.5であってもよい。
また、前記成分(c)がグリセリン及び/又は1,3-ブチレングリコールであってもよい。
また、前記成分(b)が、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリロイルジメチルタウリンから選択される1種又は2種以上の組み合わせの原料モノマーを重合又は共重合させて得られるポリマーであってもよい。
また、前記成分(b)が、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アクリルアミドと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の架橋コポリマー、アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン共重合体から選ばれる1つ又は2つ以上の組合せであってもよい。
また、前記成分(a)のケン化度が70~90mol%であってもよい。
前記成分(a)の含有量が、1.5~29質量%であってもよい。
前記成分(b)の含有量が、0.03~4.5質量%であってもよい。
【0019】
本発明の別の側面は、前記皮膚貼付用ゲルシートを、皮膚に貼付するか、又は、皮膚に貼付した後に、水若しくは水を含有する組成物を前記貼付したゲルシートに加えて当該ゲルシートを肌になじませる、皮膚貼付用ゲルシートの使用方法を提供するものである。
前記皮膚貼付用ゲルシートは、支持体を必要とせずにゲルシートを使用してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、保湿効果と使用性(膜強度、膜の負担感のなさ、水への溶解性)、シートの成形性に優れる皮膚貼付用ゲルシートを提供することができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の詳細について以下に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。また、質量%を単に「%」と示すことがある。本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0022】
<1.本発明の皮膚貼付用ゲルシート>
本発明の皮膚貼付用ゲルシートは、次の成分(a)~(f);
(a)ポリビニルアルコール、
(b)アクリル酸系ポリマー
(c)多価アルコール 40~93質量%
(d)25℃において固形及び/又は半固形の油剤 0.1~16質量%
(e)25℃において液状の油剤 1.0~30質量%
(f)水 10質量%以下;を含有するものである。
【0023】
本発明は、保湿効果と使用性(膜強度、膜の負担感のなさ、水への溶解性)、シートの成形性に優れる皮膚貼付用ゲルシートである。
本発明は、皮膜形成能がある成分(a)ポリビニルアルコール及び成分(b)アクリル酸系ポリマーと、水系である成分(c)特定量の多価アルコールと、油剤である成分(d)特定量の固形及び/又は半固形の油剤及び成分(e)特定量の液状の油剤と、成分(f)水とを、混合分散させてO/Wエマルション組成物を得、当該O/Wエマルション組成物から、特定量以下の含水量のゲルシートに形成させることができるものである。
【0024】
本発明の皮膚貼付用ゲルシートは、成分(a)ポリビニルアルコール、成分(b)アクリル酸系ポリマー、成分(c)特定量の多価アルコール、成分(d)特定量の固形及び/又は半固形の油剤、成分(e)特定量の液状の油剤、成分(f)特定量以下の水を含有するものである。本発明の皮膚貼付用ゲルシートは、柔軟性と強度を兼ね備えるために支持体がなくとも使用し易く、また多価アルコールを含む水系成分をゲルシート中で非常に多く含むため保湿性に優れている。さらに、本発明の皮膚貼付用ゲルシートは、さらに水への高い溶解性を有するので、水又は水を含む組成物を加えたり若しくは加えた後にさらに施術しながら、シートの形状を崩壊させながら成分を肌に浸透させることが可能である。このように、本発明の皮膚貼付用ゲルシートは、膜強度、膜の負担感のなさ、水への溶解性等の使用性に優れ、保湿効果も有する。
【0025】
<1(1)成分(a)ポリビニルアルコール>
本発明で用いられる成分(a)ポリビニルアルコールは、化粧料や医薬品等の原料として公知のものであり、水性の皮膜形成剤として汎用されるものである。ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルのアセチル基をケン化することにより製造され、ほぼ完全にケン化を行った完全ケン化型と、アセチル基をある程度残した部分ケン化型とに大きく分けられる。一般的に完全ケン化型(98mol%超)、中間ケン化型(90超98以下mol%)、部分ケン化型(70以上90以下mol%)に分類されている。また、本発明において、ケン化度の異なるポリビニルアルコールを適宜組み合わせて使用することが可能である。
また、本発明で用いられるポリビニルアルコールは、10~30℃程度の水で溶解可能な水溶性ポリビニルアルコールが好適である。
【0026】
本発明においては、いずれのケン化型のものも使用することができるが、ケン化度の下限値として、好適には70mol%以上、より好適には75mol%以上、さらに好適には80mol%以上、よりさらに好適には85mol%以上であり、ケン化度の上限値として、好適には98mol%以下、より好適には97mol%以下、さらに好適には95mol%以下、よりさらに好適には90mol%以下であり、当該数値範囲として、より好適には70~90mol%、さらに好適には80~90mol%、よりさらに好適には85~90mol%である。当該範囲内にすることにより、柔軟性及び膜強度が良好なゲルシートを得ることができる。また、当該範囲にすることにより、水への溶解性、水膨潤による崩壊性、成形性又はこれら組み合わせについても良好に調整されたゲルシートを得ることができる。
【0027】
本発明の皮膚貼付用ゲルシートにおいて、好適にはケン化度が80~90mol%の部分ケン化型のポリビニルアルコールを使用すると、成分(c)多価アルコールへの溶解性が高いために高配合でき、また、本発明の皮膚貼付用ゲルシートの水への溶解性に優れるため好ましい。一方、分子量や重合度はフィルム強度の調節に有効な指標であるが、成分(b)アクリル酸系ポリマーとの組み合わせや、成分(a)及び成分(b)の各々の含有量を調整すれば良いため、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0028】
<ケン化度の測定方法>
ケン化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基(アセトキシ基:-OCOCH)がケン化工程により水酸基に変化した割合をユニット比(モル%)で表したものであり、下記式:ケン化度(モル%)=100×(水酸基の数)÷(水酸基の数+酢酸基の数)で定義される。
ケン化度は、JIS K 6726-1994に準拠して求めることができる。
【0029】
本発明に用いられる成分(a)ポリビニルアルコールの重合度は、特に限定されず、市販品の範囲内のものを使用することができ、好適には重合度100~4000、より好適には100~2000、さらに好適には100~1000、よりさらに好適には200~700である。
また、本発明に用いられる成分(a)ポリビニルアルコールは、上述したケン化度及び重合度の両方を調整したものでもよく、好適には部分ケン化型かつ重合度100~4000であり、より好適にはケン化度80~90mol%かつ重合度100~1000、よりさらに好適にはケン化度80~90mol%かつ重合度200~700である。
【0030】
<ポリビニルアルコールの重合度の測定方法>
ポリビニルアルコールの重合度はJIS K6726-1994(ポリビニールアルコール試験方法)に準拠して溶液粘度測定法によって測定することができる。
【0031】
本発明に用いられる成分(a)ポリビニルアルコールの重量平均分子量は、特に限定されず、市販品の範囲内のものを使用することができ、好適には、200~3000である。
前記成分(a)ポリビニルアルコールの重量平均分子量は、後述する<水溶性ポリマーの重量平均分子量の測定方法>にて測定することができる。
【0032】
本発明に用いられる成分(a)のポリビニルアルコールの市販品として、例えば、クラレポバール204C、クラレポバール205C、クラレポバール217C、クラレポバール 220C、クラレポバール 224C(いずれもケン化度88mol%、クラレ社製)やゴーセノールEG-05、ゴーセノールEG-40(いずれもケン化度88mol%、日本合成社製)等が挙げられるが、本技術はこれに限定されない。本発明において、このような種々のポリビニルアルコールから、1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0033】
本発明で用いられる成分(a)ポリビニルアルコールは、本発明の皮膚貼付用ゲルシートにおいて主骨格となる皮膜形成性ポリマーであり、成分(c)多価アルコールを固めて柔軟な皮膜を形成することが可能である。
【0034】
本発明で用いられる成分(a)ポリビニルアルコールの含有量は、特に制限されないが、前記皮膚貼付用ゲルシート中、その下限値として、好適には1.5質量%以上、より好適には2質量%以上、さらに好適には3質量%以上、よりさらに好適には5質量%以上であり、その上限値として、好適には29質量%以下、より好適には26質量%以下、さらに好適には25質量%以下、よりさらに好適には20質量%以下、さらに好適には15質量%以下である。当該成分(a)のより好ましい数値範囲として、好適には1.5~29質量%、より好適には2~26質量%、さらに好適には3~20質量%、よりさらに好適には5~20質量%である。当該範囲内にすることにより、柔軟性及び膜強度が良好なゲルシートを得ることができる。また、水への溶解性、水膨潤による崩壊性や成形性又はこれら組み合わせについても良好に調整されたゲルシートを得ることができる。
【0035】
さらに、前記皮膚貼付用ゲルシート中、成分(a)ポリビニルアルコールの含有量は、好ましくは3.0~25質量%であると、シート強度が適度でより良好であり、5.0~20質量%がより好ましい。
【0036】
<1(2)成分(b)アクリル酸系ポリマー>
本発明に用いられる成分(b)アクリル酸系ポリマーは、特に限定されず、アルカリ剤を併用(好適には中和)することによってゲルを形成するものが好ましく、原料として配合するとき塩の形態でもよい。前記アクリル酸系ポリマーは、一般に水溶性のアルカリ増粘型ポリマーと称せられるものが用いられることが好ましい。
【0037】
本発明に用いられる成分(b)アクリル酸系ポリマーは、モノマー成分としてC=C-COOH骨格を含む原料モノマーを重合又は共重合させて得られるポリマーであることが好ましい。
前記アクリル酸系ポリマーを得るための前記原料モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、チグリン酸、2-トリフルオロメチルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルコン酸等のカルボン酸類;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリロイルジメチルタウリン等のスルホン酸類;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル等のエステル類(当該エステル部分のアルキル又はヒドロキシアルキルは炭素数1~4が好適)、及びこれらのアンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルキルアミン塩等の塩が挙げられる。
前記原料モノマーのうち、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリロイルジメチルタウリンから選択される1種又は2種以上の組み合わせが好適である。
本発明のアクリル酸系ポリマーは、前記原料モノマーのなかから1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0038】
前記アクリル酸系ポリマーの原料モノマーとして、アクリル酸モノマーを少なくとも使用することが好適であり、主たる成分とすることがより好適であり、具体的にはポリマー中のアクリル酸に由来する構成単位の量は、好ましくは40モル%以上、より好ましくは50モル%以上である。
前記メタクリル酸系ポリマーが、メタクリル酸及び当該メタクリル酸と共重合可能なモノマーのコポリマーである場合、モノマー全量に対するメタクリル酸の割合は、好ましくは40モル%以上100モル%未満、より好ましくは70モル%以上100モル%未満である。
【0039】
このようなアクリル酸系ポリマーとしては、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アクリルアミドと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の架橋コポリマー、アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の架橋コポリマー、アクリル酸とアクリル酸アルキルエステルの共重合体、アクリル酸・アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルの共重合体、アクリル酸・メタクリル酸及びアクリル酸アルキルエステルの共重合体、アクリル酸・アクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸ポリエチレングリコールエステルの共重合体、アクリル酸・メタクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸(ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル)エステルの共重合体、アクリル酸・メタクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸(ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル)エステルの共重合体、イタコン酸・アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸(ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル)エステルの共重合体、アクリル酸・アクリル酸アルキルエステル及びイタコン酸(ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル)エステルの共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体、アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン共重合体、アクリルアミド・アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体等が挙げられるが、これに限定されない。また、これらアクリル酸系ポリマーから1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0040】
前記成分(b)アクリル酸系ポリマーの市販品として、以下のものが挙げられるが、これに限定されず、また市販品から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
前記成分(b)の一例であるカルボキシビニルポリマーの市販品としては、例えばカーボポール940、カーボポール941、カーボポール980、カーボポール981(以上、LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)、アキュペックHV-501、アキュペックHV-504(以上、住友精化社製)等が挙げられる。
前記成分(b)の一例であるアルキル変性カルボキシビニルポリマーの市販品として、例えば、カーボポール1342、カーボポール1382(以上、LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)、ペミュレンTR-1、ペミュレンTR-2(以上、LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)等が挙げられる。なお、アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸とメタクリル酸アルキル(好ましくはアルキル基の炭素数8~30(より好適には炭素数10~30))との共重合体である。
前記成分(b)の一例であるアクリルアミドと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の架橋コポリマーの分散物の市販品としては、例えば、セピゲル305、セピゲル501(以上、SEPPIC社製)等が挙げられる。
前記成分(b)の一例であるアクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン共重合体の分散物の市販品としては、SIMULGEL EG(SEPPIC社製)等が挙げられる。
前記成分(b)の一例であるアクリル酸ヒドロキシエチル・アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体の分散物の市販品としては、SIMULGEL NS、SIMULGEL FL(以上、SEPPIC社製)等が挙げられる。
【0041】
前記成分(b)アクリル酸系ポリマーのうち、カルボキシビニルポリマー(カルボマーともいう)、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アクリルアミドと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の架橋コポリマー、アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン共重合体から選択される1種又は2種以上のものが、適度な硬さの皮膜を形成するため、より好ましい。このようなアクリル酸系ポリマーを含有させることにより、柔軟性及び膜強度が良好なゲルシートを得ることができ、また、水への溶解性、水膨潤による崩壊性、成形性又はこれら組み合わせについても良好に調整されたゲルシートを得ることができる。
【0042】
また、本発明で用いられる成分(b)のアクリル酸系ポリマーは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア、トリエタノールアミン等のアミン塩;L-アルギニン、L-リジン等のアミノ酸塩等の中和剤でO/Wエマルション組成物を得る際に反応や中和し増粘させて用いてもよいし、中和剤で反応や中和させたものを原料として用いることが好適である。
【0043】
成分(b)のアクリル酸系ポリマーの重量平均分子量は、500以上が好ましく、1500以上がより好ましく、5000以上が更に好ましい。また、上限値としては特に制限はないが500万以下が好ましく、またより好適には500以上500万以下である。
前記成分(b)のアクリル酸系ポリマーの重量平均分子量は、<水溶性ポリマーの重量平均分子量の測定方法>にて測定することができる。
【0044】
<水溶性ポリマーの重量平均分子量の測定方法>
本発明に用いられる水溶性ポリマーの重量平均分子量は、標準ポリスチレンを標準物質として、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析により、測定することができる(例えば、参考文献1:特開2014-140056号公報等参照)。
【0045】
本発明で用いられる成分(b)アクリル酸系ポリマーの含有量は、特に制限されないが、前記皮膚貼付用ゲルシート中、その下限値として、好適には0.03質量%以上、より好適には0.05質量%以上、さらに好適には0.1質量%以上、よりさらに好適には0.2質量%以上であり、その上限値として、好適には4.5質量%以下、より好適には4質量%以下、さらに好適には3質量%以下、よりさらに好適には2質量%以下、より好適には1.5質量%以下、より好適には1質量%以下である。当該成分(b)のより好ましい数値範囲として、好適には0.03~4.5質量%であり、より好適には0.05~3質量%であり、さらに好適には0.1~2質量%であり、よりさらに好適には0.1~1.5質量%であり、よりさらに好適には0.1~1.0質量%である。当該範囲内にすることにより、柔軟性及び膜強度が良好なゲルシートを得ることができ、また、水への溶解性、水膨潤による崩壊性、成形性又はこれら組み合わせについても良好に調整されたゲルシートを得ることができる。
【0046】
さらに、前記皮膚貼付用ゲルシート中、成分(b)アクリル酸系ポリマーの含有量は、0.1~2.0質量%が好ましく、0.1~1.0質量%がより好ましい。この範囲にすることで、シート化する前のO/Wエマルションの粘度が適度にでき展延しやすく、また(a)ポリビニルアルコールと組み合わせたときに適度な柔軟性と強度を有するゲルシートを得ることができる。
【0047】
本発明で用いられる成分(b)アクリル酸系ポリマーは、均一性と連続性に優れ、硬度の高い皮膜を形成するため、柔軟性の高い皮膜を形成する成分(a)ポリビニルアルコールと組み合わせることにより、強度に優れたしなやかな膜を形成し、本発明の皮膚貼付用ゲルシートにおいて、膜強度や負担感のなさに寄与する。また、前記成分(a)及び前記成分(b)を調整することで、水への溶解性、水膨潤による崩壊性、成形性又はこれら組み合わせについても良好に調整されたゲルシートを得ることも可能である。
【0048】
本発明において、前記皮膚貼付用ゲルシート中、成分(a)ポリビニルアルコールと成分(b)アクリル酸系ポリマーとの含有質量割合(a)/(b)は、その下限値として、好適には2以上、より好適には3.5以上、さらに好適には4以上、よりさらに好適には5以上、さらに好適には6以上、よりさらに好適には9以上であり、その上限値として、好適には160以下、より好適には150以下、さらに好適には100以下、よりさらに好適には70以下である。当該成分含有質量割合(a)/(b)のより好ましい数値範囲として、好適には3~160、より好適には4~150、さらに好適には5~100、よりさらに好適には6~70である。当該範囲内にすることにより、柔軟性及び膜強度が良好なゲルシートを得ることができ、また、水への溶解性、水膨潤による崩壊性、成形性又はこれら組み合わせについても良好に調整されたゲルシートを得ることができる。
【0049】
さらに、前記皮膚貼付用ゲルシート中、成分(a)ポリビニルアルコールと成分(b)アクリル酸系ポリマーとを組み合わせることにより、ゲルシートの柔軟性と硬さの調整を行うため、成分(a)と成分(b)の含有質量割合(a)/(b)は4.0~150が好ましく、5.0~100がより好ましい。この範囲にあれば、適度な柔軟性を有するために膜強度と負担感のなさに優れる皮膚貼付用ゲルシートが得られる。水への溶解性、水膨潤による崩壊性、成形性又はこれら組み合わせについても良好に調整されたゲルシートを得ることもできる。
【0050】
<1(3)成分(c)多価アルコール>
本発明に用いられる成分(c)多価アルコールは、骨格にヒドロキシル基を2つ以上有する構造のアルコールであり、通常化粧料等に用いられるものであればこれらに特に限定されるものではない。成分(c)多価アルコールは、骨格の炭素数が3~9であることが好適である。成分(c)多価アルコールは、骨格内にアルキル基又はアルキレングリコール部分を1~3つ有する構造が好適であり、さらに当該アルキル基又はアルキレン部分の炭素数は3~6であることが好適である。また、成分(c)多価アルコールは、骨格内にヒドロキシ基を2つ又は3つ以上有する構造が好適である。
【0051】
このような多価アルコールとしては、1、3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、及び1,2-ペンタンジオール等が挙げられるが、これに限定されない。これらから、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
これらのうち、二価アルコール及び/又は三価アルコールが好適であり、さらにこれらのうち、グリセリン、及び/又は1,3-ブチレングリコールが、成分(a)ポリビニルアルコール及び成分(b)アクリル酸系ポリマーの溶解性、及び保湿効果に優れ、また安価であるため好ましい。このように多価アルコールを含有させることで、保湿効果を付与できる。また、このような多価アルコールによって、前記成分(a)及び成分(b)との関係で、柔軟性及び膜強度がより良好なゲルシートを得ることができ、また、分散性や膨潤性による崩壊性や成形性等についてもより良好に調整されたゲルシートを得ることができる。
【0052】
本発明における成分(c)多価アルコールの含有量は、特に限定されないが、前記皮膚貼付用ゲルシート中、その下限値として、好適には30質量%以上、より好適には35質量%以上、よりさらに好適には40質量%以上、より好適には45質量%以上、さらに好適には50質量%以上であり、その上限値として、好適には95質量%以下、より好適には94質量%以下、より好適には93質量%以下、より好適には90質量%以下、さらに好適には85質量%以下、よりさらに好適には80質量%以下である。当該成分(c)のより好ましい数値範囲として、好適には35~95質量%、より好適には40~93質量%、さらに好適には50~80質量%である。当該範囲内にすることにより、柔軟性及び膜強度が良好なゲルシートを得ることができる。また、また、分散性や膨潤性による崩壊性や成形性等についてもより良好に調整されたゲルシートを得ることができる。
本発明における成分(c)多価アルコールの含有量は、前記皮膚貼付用ゲルシート中、50~95質量%が好ましく、より好ましくは50~80質量%である。この範囲内であれば膜強度に優れ、かつ使用後に高い保湿性が得られるゲルシートとなる。
【0053】
前記皮膚貼付用ゲルシート中の三価アルコールの含有量は、特に限定されないが、好適には25~85質量%、より好適には40~80質量%、さらに好適には50~70質量%である。
前記皮膚貼付用ゲルシート中の二価アルコールの含有量は、特に限定されないが、好適には1~30質量%、より好適には1~20質量%、さらに好適には5~15質量%である。
前記皮膚貼付用ゲルシートの含有質量割合(三価アルコール/二価アルコール)は、好適には3~9、より好適には4~8、さらに好適には4~7である。
【0054】
本発明に用いられる成分(c)の多価アルコールは、本発明の皮膚貼付用ゲルシートを形成する主溶媒であり、皮膚に対して高い保湿効果を付与することが可能である。
【0055】
本発明において、成分(a)ポリビニルアルコールは、(c)多価アルコールを抱え込みゲルを形成するメインの皮膜形成能を有するため、成分(a)と成分(c)の間には好適な配合比率が存在するので、当該好適な配合比率にすることが好ましい。前記皮膚貼付用ゲルシート中、成分(a)と成分(c)の間には好適な範囲内にすることにより、柔軟性及び膜強度が良好なゲルシートを得ることができ、また、分散性や膨潤性による崩壊性や成形性等についてもより良好に調整されたゲルシートを得ることができる。
【0056】
本発明において、前記皮膚貼付用ゲルシート中、成分(a)ポリビニルアルコールと成分(c)多価アルコールの含有質量割合(a)/(c)は、その下限値として、好適には0.01以上、より好適には0.02以上、さらに好適には0.03以上、よりさらに好適には0.04以上、より好適には0.05以上であり、その上限値として、好適には0.5以下、より好適には0.4以下、さらに好適には0.3以下、よりさらに好適には0.25以下である。当該成分含有質量割合(a)/(c)のより好ましい数値範囲として、好適には0.02~0.5、より好適には0.03~0.4、さらに好適には0.04~0.3である。
【0057】
本発明において、前記皮膚貼付用ゲルシート中、成分(a)ポリビニルアルコールと成分(c)多価アルコールの含有質量割合(a)/(c)は、0.03~0.4が好ましく、0.05~0.3がより好ましい。この範囲にあれば、膜強度と負担感のなさにより優れ、水への溶解性にもより優れる皮膚貼付用ゲルシートが得られる。
【0058】
<1(4)成分(d)25℃において固形及び/又は半固形の油剤>
本発明に用いられる成分(d)25℃において固形又は半固形の油剤は、25℃において固形状又は半固形状の油剤であり、当該成分(d)25℃において固形及び/又は半固形の油剤(以下、「固形及び/又は半固形の油剤」ともいう)は通常の化粧料等に含有されるものであれば特に限定されずに使用できる。当該成分(d)固形及び/又は半固形の油剤として、例えば、動物油、植物油、合成油等を起源とする、炭化水素系油、エステル系油、高級アルコール系油、エーテル系油、及びシリコーン系油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0059】
なお、本発明でいう半固形状ないし固形状とは、レオメーター(不動工業社製)により測定したゲル硬度(検体保存温度25℃、感圧軸(アダプター)の針径10mmφ、針入速度60mm/minにおける針入度試験において、感圧軸を深さ5mmまで押し込む際に感圧軸にかかる最大荷重)が15gf以上、好ましくは50gf以上であり、常温(約20~30℃)で流動性を示さないものをいう。
【0060】
前記成分(d)固形の油剤としては、例えば、炭化水素系固形油、エステル系固形油、高級アルコール系固形油、シリコーン系固形油等から選択される1種又は2種以上のものが使用できるが、これらに限定されない。
例えば、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系固形油、水添ホホバ油、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマー、α-オレフィン・ビニルピロリドン共重合体、トリベヘン酸グリセリル等のエステル系固形油、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール系固形油、(アクリレーツ/アクリル酸ベヘニル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸ジメチコン)等のシリコーン系固形油が挙げられる。これらから、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0061】
また、前記成分(d)半固形の油剤としては、例えば、炭化水素系半固形油、エステル系半固形油、エーテル系半固形油、シリコーン系半固形油等から選択される1種又は2種以上のものが使用できるが、これらに限定されない。
例えば、ワセリン等の炭化水素系半固形油、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル等のジペンタエリトリット脂肪酸エステル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、ヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油等の硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル等のコレステロール脂肪酸エステル、オレイン酸フィトステリル、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル等のフィトステロール脂肪酸エステル、水添ヤシ油、水添パーム油等の水添植物油、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ペンタヒドロキシステアリン酸スクロース、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)等のエステル系半固形油、ヒドロキシアルキルダイマーシリノレイルエーテル等のエーテル系半固形油、トリベヘニン等のトリグリセリド系半固形油、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等のシリコーン系半固形油等が挙げられる。これらから、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0062】
本発明に用いられる成分(d)25℃において固形及び/又は半固形の油剤は、ゲルシートの膜強度を高め、またシート化前のO/Wエマルジョンに粘度を付与する役割を果たすため、成形性の向上にも寄与している。この観点より、融点が50℃以上にある炭化水素系、エステル系、高級アルコール系、シリコーン系等の固形油が、膜強度及び成形性の面から好ましい。当該固形及び/又は半固形の油剤は、これらから選択される1種又は2種以上を含むことが好適であり、成分(d)全量中に30~100質量%であることが好ましい。
【0063】
本発明において固形及び/又は半固形の油剤を含有させることで、保湿効果を付与でき、また前記成分(a)及び成分(b)との関係で柔軟性及び膜強度が良好なゲルシートを得ることができる。また、水への溶解性、水膨潤による崩壊性や成形性又はこれら組み合わせについても良好に調整されたゲルシートを得ることができる。
【0064】
本発明における成分(d)25℃において固形及び/又は半固形の油剤の含有量は、特に限定されないが、前記皮膚貼付用ゲルシート中、その下限値として、好適には0.05質量%以上、より好適には0.08質量%以上、さらに好適には0.1質量%以上、より好適には0.5質量%以上、より好適には1質量%以上、より好適には3質量%以上であり、その上限値として、好適には20質量%以下、より好適には19質量%以下、さらに好適には16質量%以下、よりさらに好適には15質量%以下、より好適には13質量%以下である。当該成分(d)のより好ましい数値範囲として、好適には0.08~19質量%、より好適には0.1~16質量%、さらに好適には0.5~15質量%、よりさらに好適には1~15質量%である。当該範囲内にすることにより、柔軟性及び膜強度が良好なゲルシートを得ることができる。また、水への溶解性、水膨潤による崩壊性や成形性又はこれら組み合わせについても良好に調整されたゲルシートを得ることができる。
本発明における成分(d)25℃において固形及び/又は半固形の油剤の含有量は、前記皮膚貼付用ゲルシート中、0.1~16質量%が好ましく、より好ましくは1.0~15質量%である。この範囲内であれば膜強度と水への溶解性に優れ、かつ成形性の良好なゲルシートとなる。
【0065】
<1(5)成分(e)25℃において液状の油剤>
本発明に用いられる成分(e)25℃において液状の油剤(以下、「液状の油剤」ともいう)は、25℃で流動性を有する油剤を意味するものであり、化粧料等に使用されるものであれば、特に限定されない。当該成分(e)25℃において液状の油剤として、例えば、揮発性、非揮発性や、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、炭化水素類、油脂類、紫外線吸収剤も含むエステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等が挙げられるが、これらに限定されない。これらから、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0066】
前記成分(e)25℃において液状の油剤(例えば、極性油)として、具体的には、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油、アボカド油、メドゥフォーム油等の油脂類;ホホバ油、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、2-エチルヘキサン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン)酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル、トリメリト酸トリトリデシル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステアリル・2-オクチルドデシル)等のエステル類;イソテアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類;オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール等の高級アルコール類;酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類、等の極性油が挙げられる。これらから、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0067】
また、前記成分(e)25℃において液状の油剤(例えば、非極性油)として、具体的には、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油類;パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類;イソドデカン、イソヘキサデカン、軽質流動イソパラフィン、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、スクワラン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、等の非極性油が挙げられる。これらから、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0068】
前記成分(e)25℃において液状の油剤として、エステル系、高級アルコール系、シリコーン油系、及び炭化水素系等の液状油が好適である。当該液状の油剤は、これらから選択される1種又は2種以上を含むことが好適であり、成分(e)全量中に30~100%であることが好ましい。
本発明に用いられる成分(e)25℃において液状の油剤は、これら極性油及び非極性油から1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0069】
本発明に用いられる成分(e)25℃において液状の油剤は、エモリエント効果を付与することも可能であり、これにより、本発明の皮膚貼付用ゲルシートにおいて保湿効果の向上に寄与するだけでなく、膜に可塑性を与えて負担感のなさを向上させることも可能である。さらに、成分(e)25℃において液状の油剤は、油溶性有効成分を配合した際に、皮膚への浸透を促進する役割を果たすことが可能である。この観点より、20℃における粘度が500mPa・s以下である低粘度液状油を含むと更に好ましく、特に200mPa・s以下であると好ましい。これらの低粘度液状油は、成分(e)全量中に30~100%であることが好ましい。
【0070】
これらの低粘度油としては、流動パラフィン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ジメチルポリシロキサン、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、イソノナン酸イソノニル、リノール酸エチル、及び乳酸セチル等が挙げられる。これらから1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0071】
尚、本発明において成分(e)液状の油剤の粘度は、次の方法で求められる。ブルックフィールド型粘度計である、単一円筒型回転粘度計ビスメトロン(登録商標)(芝浦システム社製)を使用して測定する。測定方法は、測定試料を外径45mm、内径38mm、高さ82mmのガラス製ビンにエアスペースが生じないように充填し、ふたをして20℃恒温槽にて一昼夜放置する。翌日、20℃に調整した室内で、単一円筒型回転粘度計ビスメトロン(登録商標)にて、付属の1~4号ローターを用い、6~30回転で1分後の測定値を読み取り、各々の乗数を乗し、粘度値を得る。
【0072】
本発明における成分(e)液状の油剤の含有量は、特に限定されないが、前記皮膚貼付用ゲルシート中、その下限値として、好適には0.5質量%以上、より好適には1質量%以上、さらに好適には3質量%以上であり、その上限値として、好適には32質量%以下、より好適には30質量%以下、さらに好適には25質量%以下、よりさらに好適には20質量%以下である。当該成分(e)のより好ましい数値範囲として、好適には0.5~32質量%であり、より好適には1~30質量%であり、さらに好適には1~20質量%である。当該範囲内にすることにより、柔軟性及び膜強度が良好なゲルシートを得ることができ、また、水への溶解性、水膨潤による崩壊性、成形性又はこれら組み合わせについても良好に調整されたゲルシートを得ることができる。
さらに、前記皮膚貼付用ゲルシート中、成分(e)液状の油剤の含有量は、1.0~30%が好ましく、1.0~20%がより好ましい。この範囲であれば、保湿効果に優れる皮膚貼付用ゲルシートが得られる。
【0073】
本発明において、成分(d)25℃において固形及び/又は半固形の油剤は、ゲルシートの膜強度の向上に寄与し、成分(e)25℃において液状の油剤は、膜の可塑性向上に寄与している。
本発明において、前記皮膚貼付用ゲルシート中、適度な膜強度に調整するため、成分(d)固形及び/又は半固形の油剤と成分(e)液状の油剤の含有質量割合(d)/(e)は、その下限値として、好適には0.001以上、より好適には0.005以上、さらに好適には0.01以上、よりさらに好適には0.05以上、より好適には0.1以上、より好適には0.5以上であり、その上限値として、好適には4以下、より好適には3.5以下、さらに好適には3.1以下、よりさらに好適には3以下、より好適には2.5以下、より好適には2以下である。当該成分含有質量割合(d)/(e)のより好ましい数値範囲として、好適には0.001~3.5、より好適には0.003~3.1、さらに好適には0.1~2.5、よりさらに好適には0.5~2である。当該範囲内にすることにより、柔軟性及び膜強度が良好なゲルシートを得ることができ、また、水への溶解性、水膨潤による崩壊性、成形性又はこれら組み合わせについても良好に調整されたゲルシートを得ることができる。
【0074】
本発明において、前記皮膚貼付用ゲルシート中、適度な膜強度に調整するため、成分(d)固形及び/又は半固形の油剤と成分(e)液状の油剤の含有質量割合(d)/(e)は、0.003~3.1が好ましく、0.003~3.0がより好ましく、0.01~3.0がさらに好ましい。この範囲にあれば、膜強度と負担感のなさに優れる皮膚貼付用ゲルシートが得られる。
【0075】
<1(6)成分(f)水>
本発明の皮膚貼付用ゲルシートには、成分(f)水を含有してもよい。水は通常化粧料等の組成物に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、精製水、植物等の水蒸気蒸留水等を1種又は2種以上任意に選択し、使用することができる。
【0076】
成分(f)水の含有量は、特に限定されないが、前記皮膚貼付用ゲルシート中、10質量%以下であれば、保湿効果、膜強度、シートの成形性に優れるため、さらに好ましい。前記皮膚貼付用ゲルシート中、前記成分(f)水の含有量は、好適には8質量%以下、より好適には5質量%以下、さらに好適には3質量%以下である。
【0077】
前記成分(f)の水の含有量は、本技術のO/Wエマルション組成物からゲルシートを形成させるときに、乾燥等により10~0質量%に調整することが可能である。
前記成分(f)水の量の調整は、調製されたO/Wエマルジョン組成物を、所望の厚さ、形状のシートに成形した後、熱風乾燥、赤外線乾燥、真空乾燥、吸引乾燥、蒸気乾燥、ホットプレート乾燥、冷凍乾燥等の公知の乾燥方法により、水分を乾燥除去することにより行うことが可能である。
【0078】
<水含量の測定方法:カールフィッシャー法>
本発明の皮膚貼付用ゲルシートにおける水の含有量は、JIS K 0068記載のカールフィッシャー法を用いて測定することができる。本発明では、カールフィッシャー法を用いた水分計としては、カールフィッシャー容量法水分計(平沼産業社製の微量水分測定装置(AQV-7)等)等を使用することができ、溶媒としてはメタノールを使用する。
【0079】
<1(7)任意成分>
本発明の皮膚貼付用ゲルシートには、本発明の効果を妨げない範囲で通常の皮膚外用剤に含有される任意成分、例えば、粉末成分、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、前記成分(a)及び(b)以外の水溶性高分子や皮膜剤、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、pH調製剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜含有することができる。
【0080】
本発明において、良好なエマルション組成物を容易に作製する観点から、本発明の皮膚貼付用ゲルシートには、成分(g)として界面活性剤をさらに用いることが、好適である。
前記成分界面活性剤は、特に限定されないが、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤(親油性及び親水性)が挙げられ、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。さらに、以下の例のうちから、1種又は2種以上を用いることができる。
このうち、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(好適には、ステアロイルメチルタウリンナトリウム等)及び/又はリン脂質(好適には、レシチン、水添レシチン等)が好ましい。
【0081】
また、本発明における界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、前記皮膚貼付用ゲルシート中、その下限値として、好適には0.05質量%以上、より好適には0.1質量%以上、さらに好適には0.5質量%以上であり、その上限値として、好適には3質量%以下、より好適には2.5質量%以下、さらに好適には2質量%以下である。より好ましい数値範囲として、好適には0.1~3質量%、より好適には0.5~2質量%である。界面活性剤を用いることで、本発明の皮膚貼付用ゲルシートを得るための良好なO/Wエマルション組成物を得ることができる。当該成分界面活性剤により、柔軟性及び膜強度が良好なゲルシートを得ることができる。また、水への溶解性、水膨潤による崩壊性や成形性又はこれら組み合わせについても良好に調整されたゲルシートを得ることができる。
【0082】
前記アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等);高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等);アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POE-ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE-ラウリル硫酸ナトリウム等);N-アシルサルコシン酸(例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム等);高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ラウリルメチルタウリッドナトリウム等);スルホコハク酸塩(例えば、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等);高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等);N-アシルグルタミン酸塩(例えば、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等);硫酸化油(例えば、ロート油等);POE-アルキルエーテルカルボン酸;POE-アルキルアリルエーテルカルボン酸塩;α-オレフィンスルホン酸塩;高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;二級アルコール硫酸エステル塩;高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム;N-パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン;カゼインナトリウム等が挙げられる。
【0083】
前記カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等);アルキルピリジニウム塩(例えば、塩化セチルピリジニウム等);塩化ジアルキルジメチルアンモニウム塩(例えば、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム塩等);塩化ポリ(N,N’-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム);アルキル四級アンモニウム塩;アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;アルキルイソキノリニウム塩;ジアルキルモリホニウム塩;POE-アルキルアミン;アルキルアミン塩;ポリアミン脂肪酸誘導体;アミルアルコール脂肪酸誘導体;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0084】
前記両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン系両性界面活性剤(例えば、2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等);ベタイン系界面活性剤(例えば、2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等);リン脂質(例えば、レシチン、水添レシチン等)等が挙げられる。なお、レシチンの由来として、大豆、卵等が挙げられる。
【0085】
前記親油性非イオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリンポリグリセリン脂肪酸類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α’-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);硬化ヒマシ油誘導体;グリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0086】
前記親水性非イオン界面活性剤としては、例えば、POE-ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンモノステアレート、POE-ソルビタンテトラオレエート等);POEソルビット脂肪酸エステル類(例えば、POE-ソルビットモノラウレート、POE-ソルビットモノオレエート、POE-ソルビットペンタオレエート、POE-ソルビットモノステアレート等);POE-グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、POE-グリセリンモノステアレート、POE-グリセリンモノイソステアレート、POE-グリセリントリイソステアレート等のPOE-モノオレエート等);POE-脂肪酸エステル類(例えば、POE-ジステアレート、POE-モノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);POE-アルキルエーテル類(例えば、POE-ラウリルエーテル、POE-オレイルエーテル、POE-ステアリルエーテル、POE-ベヘニルエーテル、POE-2-オクチルドデシルエーテル、POE-コレスタノールエーテル等);プルロニック型類(例えば、プルロニック等);POE・POP-アルキルエーテル類(例えば、POE・POP-セチルエーテル、POE・POP-2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POP-モノブチルエーテル、POE・POP-水添ラノリン、POE・POP-グリセリンエーテル等);テトラPOE・テトラPOP-エチレンジアミン縮合物類(例えば、テトロニック等);POE-ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POE-ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE-硬化ヒマシ油マレイン酸等);POE-ミツロウ・ラノリン誘導体(例えば、POE-ソルビットミツロウ等);アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等);POE-プロピレングリコール脂肪酸エステル;POE-アルキルアミン;POE-脂肪酸アミド;ショ糖脂肪酸エステル;アルキルエトキシジメチルアミンオキシド;トリオレイルリン酸等が挙げられる。
【0087】
粉末成分としては、例えば、無機粉末(例えば、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、窒化ホウ素等);有機粉末(例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等);無機褐色系顔料(例えば、γ-酸化鉄等);無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等);無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、青色404号、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β-カロチン等)等が挙げられる。
【0088】
天然の水溶性高分子としては、例えば、植物系高分子(例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸);微生物系高分子(例えば、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等);動物系高分子(例えば、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等)等が挙げられる。
【0089】
半合成の水溶性高分子としては、例えば、デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等);セルロース系高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等);アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)等が挙げられる。
【0090】
合成の水溶性高分子としては、例えば、ビニル系高分子(例えば、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン等);ポリオキシエチレン系高分子(例えば、ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等);ポリエチレンイミン;カチオンポリマー等が挙げられる。
【0091】
増粘剤としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVM、PVP、ローカストビーンガム、グアガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸A1Mg(ビーガム)、ラポナイト、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0092】
紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等);3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン等が挙げられる。
【0093】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸3ナトリウム等が挙げられる。
【0094】
低級アルコール(好適には炭素数1~4)としては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール等が挙げられる。
【0095】
単糖としては、例えば、三炭糖(例えば、D-グリセリルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン等);四炭糖(例えば、D-エリトロース、D-エリトルロース、D-トレオース、エリスリトール等);五炭糖(例えば、L-アラビノース、D-キシロース、L-リキソース、D-アラビノース、D-リボース、D-リブロース、D-キシルロース、L-キシルロース等);六炭糖(例えば、D-グルコース、D-タロース、D-ブシコース、D-ガラクトース、D-フルクトース、L-ガラクトース、L-マンノース、D-タガトース等);七炭糖(例えば、アルドヘプトース、ヘプロース等);八炭糖(例えば、オクツロース等);デオキシ糖(例えば、2-デオキシ-D-リボース、6-デオキシ-L-ガラクトース、6-デオキシ-L-マンノース等);アミノ糖(例えば、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン、シアル酸、アミノウロン酸、ムラミン酸等);ウロン酸(例えば、D-グルクロン酸、D-マンヌロン酸、L-グルロン酸、D-ガラクツロン酸、L-イズロン酸等)等が挙げられる。
【0096】
オリゴ糖としては、例えば、ショ糖、グンチアノース、ウンベリフェロース、ラクトース、プランテオース、イソリクノース類、α,α-トレハロース、ラフィノース、リクノース類、ウンビリシン、スタキオースベルバスコース類等が挙げられる。
【0097】
多糖としては、例えば、セルロース、クインスシード、コンドロイチン硫酸、デンプン、ガラクタン、デルマタン硫酸、グリコーゲン、アラビアガム、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、キサンタンガム、ムコイチン硫酸、グアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸等が挙げられる。
【0098】
アミノ酸としては、例えば、酸性アミノ酸(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、中性アミノ酸(例えば、スレオニン、システイン等);塩基性アミノ酸(例えば、ヒドロキシリジン等)等が挙げられる。また、アミノ酸誘導体として、例えば、アシルサルコシンナトリウム(ラウロイルサルコシンナトリウム)、アシルグルタミン酸塩、アシルβ-アラニンナトリウム、グルタチオン、ピロリドンカルボン酸等が挙げられる。
【0099】
有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等が挙げられる。
【0100】
pH調製剤としては、例えば、乳酸-乳酸ナトリウム、クエン酸-クエン酸ナトリウム、コハク酸-コハク酸ナトリウム等の緩衝剤等が挙げられる。
【0101】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、B1、B2、B6、C、E及びその誘導体、パントテン酸及びその誘導体、ビオチン等が挙げられる。
【0102】
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類等が挙げられる。
【0103】
酸化防止助剤としては、例えば、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
【0104】
その他の含有可能成分としては、例えば、防腐剤(エチルパラベン、ブチルパラベン等);消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等);美白剤(例えば、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等);各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等);血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α-ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ-オリザノール等);抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等);抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)等が挙げられる。
【0105】
本発明の皮膚貼付用ゲルシートには、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧品や医薬部外品等に配合できる有効成分、例えば、美白効果、老化防止効果を奏する有効成分を配合してもよい。より具体的には、抗菌剤、美白剤、抗シワ成分、抗炎症剤、細胞賦活剤、活性酸素除去剤、保湿剤等を挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0106】
抗菌剤は、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール等が挙げられる。
【0107】
美白剤は、日焼け等により生じる皮膚の黒化、色素沈着により生ずるシミ、ソバカス等の発生を防止する作用を有しており、例えばアルブチン、エラグ酸、リノール酸、ビタミンC及び誘導体、ビタミンE及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、トラネキサム酸、胎盤抽出物、カミツレ抽出物、カンゾウ抽出物、エイジツ抽出物、オウゴン抽出物、海藻抽出物、クジン抽出物、ケイケットウ抽出物、ゴカヒ抽出物、コメヌカ抽出物、小麦胚芽抽出物、サイシン抽出物、サンザイシ抽出物、サンペンズ抽出物、シラユリ抽出物、シャクヤク抽出物、センプクカ抽出物、大豆抽出物、茶抽出物、糖蜜抽出物、ビャクレン抽出物、ブドウ抽出物、ホップ抽出物、マイカイカ抽出物、モッカ抽出物、ユキノシタ抽出物等が挙げられる。
【0108】
抗シワ成分としては、特に限定されないが、例えば、レチノール、レチノイン酸、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノールなどのレチノイド、ニコチン酸及びその誘導体等のビタミンB類、クエン酸、フルーツ酸、グリコール酸、乳酸などのα-ヒドロキシ酸、α-ヒドロキシ酸コレステロール、ルチン糖誘導体、N-メチルセリン、エラスチン、コラーゲン、セリシン、ツボクサエキス、黄金エキス等が挙げられる。
【0109】
抗炎症剤は、日焼け後の皮膚のほてりや紅斑等の炎症を抑制する作用を有しており、例えば、イオウ及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、アルテア抽出物、アシタバ抽出物、アルニカ抽出物、インチンコウ抽出物、イラクサ抽出物、オウバク抽出物、オトギソウ抽出物、カミツレ抽出物、キンギンカ抽出物、クレソン抽出物、コンフリー抽出物、サルビア抽出物、シコン抽出物、シソ抽出物、シラカバ抽出物、ゲンチアナ抽出物等が挙げられる。
【0110】
細胞賦活剤は、肌荒れの改善等の目的で用いられ、例えば、カフェイン、鶏冠抽出物、貝殻抽出物、ローヤルゼリー、シルクプロテイン及びその分解物又はそれらの誘導体、ラクトフェリン又はその分解物、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等のムコ多糖類又はそれらの塩、コラーゲン、酵母抽出物、乳酸菌抽出物、ビフィズス菌抽出物、醗酵代謝抽出物、イチョウ抽出物、オオムギ抽出物、センブリ抽出物、タイソウ抽出物、ニンジン抽出物、ローズマリー抽出物、グリコール酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等が挙げられる。
【0111】
活性酸素除去剤は、過酸化脂質生成抑制剤等の作用を有しており、例えば、スーパーオキシドディスムターゼ、マンニトール、クエルセチン、カテキン及びその誘導体、ルチン及びその誘導体、ボタンピ抽出物、ヤシャジツ抽出物、メリッサ抽出物、羅漢果抽出物、レチノール及びその誘導体、カロチノイド等のビタミンA類、チアミン及びその誘導体、リボフラビン及びその誘導体、ピリドキシン及びその誘導体、ニコチン酸及びその誘導体等のビタミンB類、トコフェロール及びその誘導体等のビタミンE類、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0112】
保湿剤は、例えば、エラスチン、ケラチン等のタンパク質又はそれらの誘導体、加水分解並びにそれらの塩、グリシン、セリン、アスオアラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、テアニン等のアミノ酸及びそれらの誘導体、トレハロース、イノシトール、グルコース、蔗糖及びその誘導体、デキストリン及びその誘導体、ハチミツ等の糖類、D-パンテノール及びその誘導体、尿素、リン脂質、セラミド、オウレン抽出物、ショウブ抽出物、ジオウ抽出物、センキュウ抽出物、ゼニアオイ抽出物、タチジャコウ抽出物、ドクダミ抽出物、ハマメリス抽出物、ボダイジュ抽出物、マロニエ抽出物、マルメロ抽出物等が挙げられる。
【0113】
<2.本発明の皮膚貼付用ゲルシートの原料組成物及び皮膚貼付用ゲルシートの製造方法>
本発明の皮膚貼付用ゲルシートは、(i)前記成分(a)~成分(f)及び適宜前記<任意成分>を含むO/Wエマルション原料組成物を作製すること、(ii)当該O/Wエマルション組成物をシート状にして所定の水分量まで乾燥させることにより、得ることができる。
前記(i)における組成物をエマルション化にする製造方法は、公知のエマルション化の方法を用いればよい。
【0114】
本発明に用いられるO/Wエマルジョン組成物は、前記成分(a)~成分(f)及び適宜前記<任意成分>を混合等によって乳化させることで得ることができる。より具体的には、当該O/Wエマルション組成物は、成分(d)固形及び/又は半固形の油剤及び成分(e)液状の油剤を少なくとも含む油相と、成分(a)ポリビニルアルコール、成分(b)アクリル酸系ポリマー、成分(c)多価アルコール、(f)水を少なくとも含む水相とを、乳化させることにより、得ることができる。
【0115】
また、前記O/Wエマルション組成物の製造方法の一例として、成分(c)多価アルコール及び成分(f)水を含む水系中に、成分(a)ポリビニルアルコール及び成分(b)アクリル酸系ポリマーを溶解させ、この水系に、成分(d)及び成分(e)の固形油等を含む油剤を分散させて得ることができる。この製造工程において、適宜、界面活性剤等の任意成分を添加して分散性を向上させたり、効果を期待する成分を添加してもよい。
【0116】
また、前記O/Wエマルション組成物の製造方法の一例として、成分(f)及び界面活性剤を含む分散液と、成分(d)及び成分(e)の固形油等を含む油剤とを混合分散させ、この分散液に、成分(a)ポリビニルアルコール、成分(b)アクリル酸系ポリマー、成分(c)多価アルコール及び成分(f)水を含む水系を分散させて得ることができる。この製造工程において、適宜、界面活性剤等の任意成分を添加して分散性を向上させたり、効果を期待する成分を添加してもよい。
【0117】
本発明におけるO/Wエマルション組成物の前記成分(a)~成分(f)及び適宜前記<任意成分>の各含有量又は質量含有割合は、上述した本発明の皮膚貼付用ゲルシートの各成分の含有量又は質量含有割合になるように調整することが望ましい。
【0118】
本発明のO/Wエマルション組成物において、成分(f)水以外の成分の全量を100質量%としたときの組成物(以下、「O/Wエマルション組成物(成分(f)量除く)」ともいう)中の各組成物の含有量について、以下に説明するが本発明はこれに限定されない。
【0119】
前記O/Wエマルション組成物(成分(f)量除く)中の成分(a)ポリビニルアルコールの含有量は、特に限定されず、好適には2~26質量%、より好適には3~20質量%、さらに好適には5~20質量%である。
また、前記O/Wエマルション組成物(成分(f)量除く)中の成分(b)アクリル酸系ポリマーの含有量は、特に限定されないが、好適には0.05~3質量%であり、より好適には0.1~2質量%であり、さらに好適には0.1~1.5質量%であり、よりさらに好適には0.1~1.0質量%である。
また、前記O/Wエマルション組成物(成分(f)量除く)中の成分(c)多価アルコールの含有量は、特に限定されないが、好適には35~94質量%、より好適には40~95質量%、さらに好適には50~80質量%である。
また、前記O/Wエマルション組成物(成分(f)量除く)中の成分(d)固形及び/又は半固形の油剤の含有量は、特に限定されないが、好適には0.08~19質量%、より好適には0.1~16質量%、さらに好適には0.5~15質量%、よりさらに好適には1~15質量%である。
また、前記O/Wエマルション組成物(成分(f)量除く)中の成分(e)液状の油剤の含有量は、特に限定されないが、好適には0.5~32質量%であり、より好適には1~30質量%であり、さらに好適には1~20質量%である。
また、前記O/Wエマルション組成物(成分(f)量除く)中の成分(g)界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、好適には0.1~3質量%、より好適には0.5~2質量%である。
【0120】
また、O/Wエマルション組成物に使用する水の量は、O/Wエマルション形成可能な量でかつ乾燥後に所望の水分含量のゲルシートに形成可能な量になるように、調整することができる。水分量は特に限定されないが、O/Wエマルション組成物中に、10~50質量%になるように調整することが好適である。
【0121】
前記O/Wエマルション組成物中の含有質量割合(a)/(b)のより好ましい数値範囲として、好適には3~160、より好適には4~150、さらに好適には5~100、よりさらに好適には6~70である。
前記O/Wエマルション組成物中の含有質量割合(a)/(c)のより好ましい数値範囲として、好適には0.02~0.5、より好適には0.03~0.4、さらに好適には0.04~0.3である。
前記O/Wエマルション組成物中の含有質量割合(d)/(e)のより好ましい数値範囲として、好適には0.001~3.5、より好適には0.003~3.1、さらに好適には0.1~2.5、よりさらに好適には0.5~2である。
【0122】
そして、本発明の皮膚貼付用シートは、前記O/Wエマルジョン原料組成物を、所望の厚さ、形状のシートに成形した後、公知の乾燥方法(例えば、熱風乾燥、赤外線乾燥、真空乾燥、吸引乾燥、蒸気乾燥、ホットプレート乾燥、冷凍乾燥等)により、水分を所望の含有量になるように、乾燥除去することにより、得ることができる。
【0123】
本発明の皮膚貼付用ゲルシートを成形する手法としては、例えば、ゲルシート形成用の組成物を剥離基材フィルム上に均一の厚みとなるように展開し、加熱乾燥後に、切断をして所定形状のシートを得る方法(キャスト法)、ロール、ブレード、カレンダーなどを用いて、前記組成物を剥離基材フィルムに所望の厚みでコーティングを行い、加熱乾燥後に、切断をして所定形状のシートを得る方法(コーティング法)、樹脂等で形成してある枠部(トレイ)に前記組成物を充填し、その後加熱乾燥することにより所定形状のシートを得る製造する方法、ゲルシートの形状に対応した開孔が形成されている孔版を用い、前記開孔に前記組成物を充填し、剥離基材フィルム上に前記組成物を印刷した後に、加熱乾燥することにより所定形状のシートを得る製造する方法(孔版印刷)等が挙げられるが、いずれの手法も用いることができる。また、本発明の皮膚貼付用ゲルシートは剥離基材をつけた状態でプラスチック製等の包装容器に収納又は密封されていてもよい。また、剥離基材は、本発明の皮膚貼付用ゲルシートが使用時に剥離できる基材が好ましく、フィルムに特に限定されずトレイ等でもよく、その材質も特に限定されない。
【0124】
使用する剥離基材フィルムやトレイの材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、紙、等が例示でき、また本発明の皮膚貼付用ゲルシートが剥離しやすいよう、表面にシリコーンやフッ素等、各種コーティングを施すことができる。
ゲルシートの形状としては、貼付対象部位に貼付しやすいよう最適な形状にすればよく、円形、楕円形、スクエア状、勾玉状、フェイス状等、自由に成形することができる。
【0125】
上述のようにして皮膚貼付用ゲルシートの製造方法にて得られた皮膚貼付用ゲルシートは、保湿効果と使用性(膜強度、膜の負担感のなさ、水への溶解性)、シートの成形性に優れるという効果を有する。さらに、得られた皮膚貼付用ゲルシートは、保湿性に優れながらも、柔軟性と強度を兼ね備えるために、支持体が不要で使用性に優れ、さらに高い水溶性により、容易に水に溶解し肌になじませることが可能である。
【0126】
<本発明の皮膚貼付用ゲルシートの使用方法>
本発明の皮膚貼付用ゲルシートの使用方法としては、シート単独での使用はもちろんのこと、シートを皮膚に貼付した後に、適量の水又は水を含有する化粧料等の組成物を前記貼付したシートに加えてマッサージするという使用も可能である。これにより、容易にシートが水に溶解し、保湿成分及び配合有効成分等の各種成分を皮膚に効果的に吸収させることが可能となる。本発明の皮膚貼付用ゲルシートは、支持体がなくても取り扱いやすく、水に溶けやすいので、様々な使い方に適用しやすい。
【0127】
本発明の皮膚貼付用ゲルシートは、成分(a)ポリビニルアルコール、成分(b)アクリル酸系ポリマー、成分(c)多価アルコール及び成分(f)水及び適宜任意成分から構成されているゲル内に、成分(d)及び成分(e)の油剤が分散して存在しているため、油剤による可塑効果によりゲルが柔らかくなっている。さらに、本発明の皮膚貼付用ゲルシートは、油剤を配合しない従来のゲルシートと比較して、格段に水に溶解しやすく、マッサージした際に溶け残りの欠片を生じないことに大きな特長を有する。
【0128】
また、膜強度、保湿効果、水への溶解性をより良好に両立するために、本発明の皮膚貼付用ゲルシートの膜の厚みを調整することも有効である。このとき膜の厚さとして、50~2000μmが好ましく、100~1000μmがさらに好ましい。
なお、本発明におけるゲルシートの膜の厚みは、デジタルマイクロメーター(ミツトヨ社製:MDE-25MJ)を用いてゲルが乾燥した後に測定を行った値である。
【0129】
本発明は、以下の構成を採用することもできる。
〔1〕 次の成分(a)~(f);
(a)ポリビニルアルコール
(b)アクリル酸系ポリマー
(c)多価アルコール 40~93質量%
(d)25℃において固形及び/又は半固形の油剤 0.1~16質量%
(e)25℃において液状の油剤 1.0~30質量%
(f)水 10質量%以下
を含有する皮膚貼付用ゲルシート。
【0130】
〔2〕 前記ゲルシートの厚みが50~2000μmである、前記〔1〕に記載の皮膚貼付用ゲルシート。
〔3〕 前記成分(a)と成分(b)の含有質量割合(a)/(b)が3~160である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の皮膚貼付用ゲルシート。好適には、前記(a)/(b)は4.0~150である。
〔4〕 前記成分(a)と成分(c)の含有質量割合(a)/(c)が0.02~0.5である、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の皮膚貼付用ゲルシート。
【0131】
〔5〕 前記成分(d)と成分(e)の含有質量割合(d)/(e)が0.001~3.5である、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の皮膚貼付用ゲルシート。好適には、(d)/(e)は、0.003~3.0である。
〔6〕 前記成分(c)がグリセリン及び/又は1,3-ブチレングリコールである、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の皮膚貼付用ゲルシート。
〔7〕 前記成分(b)が、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリロイルジメチルタウリンから選択される1種又は2種以上の組み合わせの原料モノマーを重合又は共重合させて得られるポリマーである、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の皮膚貼付用ゲルシート。前記ポリマー中のアクリル酸に由来する構成単位の量は、好ましくは40モル%以上である。
【0132】
〔8〕 前記成分(b)が、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アクリルアミドと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の架橋コポリマー、アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン共重合体から選ばれる1種又は2種以上の組合せである、前記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の皮膚貼付用ゲルシート。
〔9〕 前記成分(a)のケン化度が70~90mol%である、前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の皮膚貼付用ゲルシート。好適にはケン化度が80~90mol%である。
〔10〕 前記成分(a)の含有量が、1.5~29質量%である、前記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の皮膚貼付用ゲルシート。好適には3.0~25質量%である。
〔11〕 前記成分(b)の含有量が、0.03~4.5質量%である、前記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の皮膚貼付用ゲルシート。好適には0.1~2.0質量%である。
【0133】
〔12〕 前記成分(a)ポリビニルアルコールの重合度は、重合度100~4000である、前記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の皮膚貼付用ゲルシート。
〔13〕 前記成分(b)のアクリル酸系ポリマーの重量平均分子量は、好適には500以上500万以下である、前記〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の皮膚貼付用ゲルシート。
〔14〕 成分(c)多価アルコールは、骨格にヒドロキシル基を2つ以上有する構造のアルコールである、前記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の皮膚貼付用ゲルシート。好適には、多価アルコールとしては、1、3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、及び1,2-ペンタンジオールから選択される1種又は2種以上である。
〔15〕 さらに、成分(g)界面活性剤を含む、前記〔1〕~〔14〕のいずれかに記載の皮膚貼付用ゲルシート。好適には0.1~3質量%である。
【0134】
〔16〕 前記〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の皮膚貼付用ゲルシートを、皮膚に貼付するか、又は、皮膚に貼付した後に、水若しくは水を含有する組成物を前記貼付したゲルシートに加えて当該ゲルシートを肌になじませる、皮膚貼付用ゲルシートの使用方法。
〔17〕 前記皮膚貼付用ゲルシートは、支持体を必要とせずにゲルシートを使用する、前記〔16〕記載の皮膚貼付用ゲルシートの使用方法。
【0135】
〔18〕 皮膚貼付用ゲルシートを製造するための、成分(a)ポリビニルアルコール、(b)アクリル酸系ポリマー、(c)多価アルコール、(d)25℃において固形及び/又は半固形の油剤、(e)25℃において液状の油剤、成分(f)水を含むO/Wエマルション組成物であり、
成分(f)水以外の成分の全量を100質量%としたとき、前記(c)多価アルコールが40~93質量%;前記(d)25℃において固形及び/又は半固形の油剤が0.1~16質量%;前記(e)25℃において液状の油剤が1.0~30質量%である、
皮膚貼付用ゲルシートを製造するための、O/Wエマルション組成物。
さらに、好適には、成分(f)水以外の成分の全量を100質量%としたとき、前記成分(a)の含有量は1.5~29質量%、及び/又は、前記成分(b)の含有量は0.03~4.5質量%である。
〔19〕 前記〔18〕のO/Wエマルション組成物をシート状に形成し、所定の水分量まで乾燥させることにより得られる、皮膚貼付用ゲルシート又は皮膚貼付用ゲルシートの製造方法。
【実施例
【0136】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0137】
<実施例1~12及び比較例1~15:皮膚貼付用ゲルシート>
表1~表5に示す組成の皮膚貼付用ゲルシートを下記製造方法により調製し、「保湿効果」「膜強度」「膜の負担感のなさ」「水への溶解性」「シートの成形性」の各項目について、以下に示す評価方法及び判定基準により評価判定し、結果を併せて表1~表5に示した。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
【表3】
【0141】
【表4】
【0142】
【表5】
【0143】
*1:レシノール S-10 (日光ケミカルズ社製)
*2:ニッコール SMT (日光ケミカルズ社製)
*3:PERFORMALENE 500 (ニューフェーズテクノロジーズ社製)
*4:T.I.O (日清オイリオグループ社製)
*5:CARBOPOL 980(カルボキシビニルポリマー)(Lubrizol Advanced Materials社製)
*6:CARBOPOL 1382(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー)(Lubrizol Advanced Materials社製)
*7:SIMULGEL EG(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー(SEPPIC社製)
*8:メトローズ 65SH4000 (信越化学工業社製)
*9:ケルトロール (CPケルコ社製)
*10:PVA-205(クラレ社製)
*11:PVA-105(クラレ社製)
【0144】
なお、成分(d)25℃において固形及び/又は半固形の油剤の表中のNo.3ポリエチレンワックス及びNo.4セトステアリルアルコール、No.5ワセリンは、ゲル硬度(検体保存温度25℃、感圧軸(アダプター)の針径10mmφ、針入速度60mm/minにおける針入度試験において、感圧軸を深さ5mmまで押し込む際に感圧軸にかかる最大荷重)が15gf以上である。
また、表中のNo.6流動パラフィン、No.7トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、No.9ジメチルポリシロキサンは、成分(e)25℃において液状の油剤である。
また、表中のNo.10カルボマー、No.11アクリル酸・メタクリル酸共重合体、No.12(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルウタウリンNa)共重合体の重量平均分子量は、GPC分析(標準ポリスチレンを標準物質)にて、500以上500万以下である。
【0145】
(製造方法)
A:成分(1)~(2)に水10%を加え、70℃に加熱して均一に混合溶解する。
B:成分(3)~(9)を90℃に加熱して均一に混合溶解する。
C:成分(10)~(22)に水30%を加え、70℃に加熱して均一に混合溶解する。
D:AにBを加え、70℃にて均一に混合する。
E:70℃にてDを撹拌しながらCを加えて乳化した後室温に冷却し、O/W乳化型の原料組成物を得る。
F:Eを厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にドクターブレードにて均一な厚さになるよう展延成形し、60℃の送風乾燥機にて1時間加熱乾燥させ、室温で冷却することにより、膜の厚さ300μmの皮膚貼付用ゲルシートを得た。このとき得られた皮膚貼付用ゲルシート中の水含有量は、「水分が完全に蒸発した」と仮定して、0質量%としている。なお、<水含量の測定方法:カールフィッシャー法>にて、実施例1~9及び比較例1~11のゲルシート中の水含有量は1質量%未満であり、本明細書では1質量%未満を0質量%としている。
なお、実施例10及び比較例12における成分(f)水の量は、乾燥時間を短くすることにより所定の量に調整した。
【0146】
〔保湿効果〕
はじめに前腕内側部において何も塗布されていない皮膚の初期水分量を、SKICON-200EX(アイ・ビイ・エス社製)にて測定した後、一辺2cmの正方形に裁断した実施例1~12及び比較例1~15の各ゲルシートを前腕内側部に貼付し、貼付6時間後における皮膚水分量を測定する。各サンプルは、5人の健常人にて測定し、初期状態の水分量を100とした場合、6時間後の水分量を相対値として算出し、各パネルの相対値平均水分量により以下の4段階判定基準に従って保湿効果を評価した。
【0147】
4段階評価判断基準
(評価) :(判定基準)
初期水分量に対して相対値平均水分量が150%以上:◎(優)
初期水分量に対して相対値平均水分量が150%未満130%以上:○(良)
初期水分量に対して相対値平均水分量が130%未満110%以上:△(やや不良)
初期水分量に対して相対値平均水分量が110%未満:×(不良)
【0148】
〔膜強度〕
実施例1~12及び比較例1~15の各シートについて、基剤であるポリエチレンテレフタレートフィルムより剥離する際のシートの強度を、専門評価者一名が、以下の4段階判定基準に従って評価した。なお評価基準で用いる一枚膜とは、基剤フィルムからゲルシートを剥離する際に、シートがちぎれずに一枚の膜として取り扱うことができる状態を意味する。
【0149】
4段階評価判断基準
(評価) :(判定基準)
シートに亀裂がまったく入らず一枚膜として剥離できる:◎(優)
シートにわずかに亀裂が入るが一枚膜として剥離でき使用に問題はない:○(良)
シートが剥離の途中で破れ一枚膜として剥離できない:△(やや不良)
シートが固化しておらず一枚膜として剥離できない:×(不良)
【0150】
〔膜の負担感のなさ〕
実施例1~12及び比較例1~15の各シートについて、専門パネル5名による使用テストを行った。4cm×8cmの勾玉状に裁断した各シートをパネル各人が目の下の部位に貼付し、直後に下記評価基準により評点をつけ、パネル全員の評点合計から平均値を算出し、下記判定基準により総合判定した。
【0151】
<評価基準>
(評点):(評価)
4点:肌の動きや形状に柔軟に追従し、ひきつり感を感じない
3点:肌が動くと若干の浮きが生じるが、ひきつり感は感じない
2点:肌が動くと若干のひきつり感を感じる
1点:膜が硬く、付着させている状態で強いひきつり感を感じる
<判定基準>
(判定):(評点の平均値)
◎(優) :3.5点以上
○(良) :2.5点以上3.5点未満
△(やや不良):1.5点以上2.5点未満
×(不良) :1.5点未満
本発明においては、〇以上の判定が好適であると判断する。
【0152】
〔水への溶解性〕
一辺2cmの正方形に裁断した実施例1~12及び比較例1~15の各ゲルシートを前腕内側部に貼付し、水1mLを添加し、指でマッサージした際のシートの水への溶解性を、専門評価者一名が、以下の4段階判定基準に従って評価した。
【0153】
4段階評価判断基準
(評価) :(判定基準)
マッサージすることなく、水の添加で速やかに膨潤してクリーム状になる:◎(優)
水を添加後指でマッサージすると完全に膨潤しクリーム状になる:○(良)
水を添加後指でマッサージしても完全には膨潤せずシートの欠片が残る:△(やや不良)
水を添加後指でマッサージしても完全には膨潤せずシートの形状を保ったままである:×(不良)
【0154】
〔シートの成形性〕
実施例1~12及び比較例1~15のゲルシートを作成する際に、O/W乳化型の原料組成物を基剤である厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にドクターブレードにて均一な厚さになるよう展延成形し、60℃の送風乾燥機にて1時間加熱乾燥させるという工程をとるが、展延成形した原料組成物が基剤からはじかれて収縮し、変形してしまうかどうかを、専門評価者一名が、以下の4段階判定基準に従って評価した。
【0155】
4段階評価判断基準
(評価) :(判定基準)
展延成形後、室温で10分間静置しても、基材からはじかれず完全に形を維持している。:◎(優)
展延成形後、室温で10分間静置すると、端部より4mm未満の均一な収縮が生じるが、形は維持している。:○(良)
展延成形後、室温で10分間静置すると、端部より4mm以上10mm未満の収縮が不均一に生じ、形を維持できない。:△(やや不良)
展延成形後、室温で10分間静置すると、端部より10mm以上の収縮が不均一に生じ、大幅に変形する。:×(不良)
【0156】
表1~表5から明らかなごとく、本発明の実施例1~12の皮膚貼付用ゲルシートは、「保湿効果」「膜強度」「膜の負担感のなさ」「水への溶解性」「シートの成形性」のすべての項目において優れたものであった。これに対し、(a)ポリビニルアルコールの配合量が好ましい領域より小さい比較例1及び2は、膜強度とシートの成形性に特に劣っていた。逆に、(a)ポリビニルアルコールの配合量が好ましい領域より大きい比較例3は、水への溶解性とシートの成形性に特に劣っていた。また、(b)アクリル酸系ポリマーの配合量が好ましい領域より小さい比較例4及び5は、膜強度とシートの成形性に特に劣っていた。逆に、(b)アクリル酸系ポリマーの配合量が好ましい領域より大きい比較例6は、膜の負担感のなさ、水への溶解性に特に劣っていた。
【0157】
また、(c)多価アルコールの配合量が好ましい領域より小さく、かつ(d)25℃において固形又は半固形の油剤及び(e)25℃において液状の油剤の配合量が好ましい領域より大きい比較例7は、過剰量の油剤により膜の状態を保つことが困難であり、膜強度、水への溶解性に特に劣るものであった。逆に、(c)多価アルコールの配合量が好ましい領域より大きく、かつ(d)25℃において固形又は半固形の油剤及び(e)25℃において液状の油剤の配合量が好ましい領域より小さい比較例10及び11は、保湿効果及びシートの成形性に特に劣るものであった。
【0158】
油剤のバランスについては、(d)と(e)の比率(d)/(e)が好ましい範囲より大きい比較例8は、膜の負担感のなさと水への溶解性に特に劣るものであった。逆に、(d)/(e)が好ましい範囲より小さい比較例9は、膜強度とシートの成形性に特に劣るものであった。また、(a)ポリビニルアルコールにおいて、ケン化度の高いものを用いた比較例13は、膜の負担感のなさと水への溶解性に特に劣るものであった。そして、(b)のアクリル酸ポリマーの代わりにヒドロキシプロピルメチルセルロース又はキサンタンガムを用いた比較例14及び15は、成膜性が大幅に低下し、膜強度、シートの成形性に特に劣るものであった。さらに、水を10%以上含有している比較例12も同様に、成膜性が低く、膜強度、シートの成形性に特に劣るものであった。
【0159】
斯様に、多価アルコールを含む水系と、皮膜形成能及び柔軟性に優れるポリビニルアルコールと皮膜形成能及び強度に優れるアクリル酸系ポリマーと、固形油又は半固形油及び液状油を含む油剤とを、混合分散させたO/Wエマルション組成物を、シート状に展延後、水を特定量蒸発させ乾燥させることで、使用性に優れた皮膚貼付用ゲルシートを得ることができた。この皮膚貼付用ゲルシートは、保湿性に優れながらも、柔軟性と強度を兼ね備えるために、支持体が不要で使用することができる。またこの皮膚貼付用ゲルシートは、使用性に優れており、シートの成形性にも優れ、さらに水への高い溶解性を有するので水又は水を含む組成物によりシートが容易に崩壊しつつ効能成分を容易に肌になじませることが可能である。
【0160】
また、実施例16において、実施例1の水含有量及びグリセリン含有量を、それぞれ2質量%及び70.84質量%にした以外は、実施例1と同様にして水分含有量2質量%の皮膚貼付用ゲルシートを得た。
実施例17において、実施例1の水含有量及びグリセリン含有量を、それぞれ5質量%及び87.84質量%にした以外は、実施例1と同様にして水分含有量5質量%の皮膚貼付用ゲルシートを得た。
実施例1と同様に、各評価を行った。その結果、実施例16及び実施例17の皮膚貼付用ゲルシート(それぞれ水含有量2質量%及び5質量%)は、「保湿効果」「膜強度」「膜の負担感のなさ」「水への溶解性」「シートの成形性」のすべてにおいて優れているものであった。またゲルシートを貼付し10分後に市販の化粧水を用いてマッサージをするように馴染ませた後、肌の保湿効果の持続に優れているものであった。
斯様に、水含有量が0質量%超10質量%以下においても、保湿効果と使用性(膜強度、膜の負担感のなさ、水への溶解性)、シートの成形性に優れる皮膚貼付用ゲルシートを得ることができた。
【0161】
実施例13:皮膚貼付用ゲルシート
(成分) (%)
1.水添レシチン *1 1.0
2.ステアロイルメチルタウリンNa *2 0.3
3.ミツロウ(融点60~67℃) *12 3.0
4.ベヘニルアルコール(融点65~73℃) 2.0
5.ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)(融点35~38℃) *13 1.0
6.(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー(ジメチコン溶解物) *14 1.0
7.ミリスチン酸イソプロピル *15 2.0
8.2-エチルヘキサン酸セチル *16 1.0
9.オクチルドデカノール *17 1.0
10.ジメチルポリシロキサン 0.2
11.アクリルアミドと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の架橋コポリマーの40%分散物 *18 1.0
12.ポリビニルアルコール(ケン化度88mol%、重合度2400) *19 6.0
13.グリセリン 残量
14.1,3-ブチレングリコール 10.0
15.ジプロピレングリコール 20.0
16.L-アスコルビン酸2-グルコシド 2.0
17.クエン酸 0.03
18.クエン酸ナトリウム 0.2
19.水酸化ナトリウム 0.3
20.メチルパラベン 0.05
21.香料 0.1
*12:WHITE BEES WAX(三木化学社製)
*13:PLANDOOL-S(日本精化社製)
*14:KSG-16(信越化学工業社製)
*15:IPM-EX(日本サーファクタント工業社製)
*16:サラコス 816T(日清オイリオグループ社製)
*17:リソノール 20SP(高級アルコール工業社製)
*18:SEPIGEL 305(SEPIC社製)
*19:PVA-224(クラレ社製)
【0162】
(製造方法)
A:成分(1)~(2)に水10%を加え、70℃に加熱して均一に混合溶解する。
B:成分(3)~(10)を90℃に加熱して均一に混合溶解する。
C:成分(11)~(21)に水30%を加え、70℃に加熱して均一に混合溶解する。
D:AにBを加え、70℃にて均一に混合する。
E:70℃にてDを撹拌しながらCを加えて乳化した後室温に冷却し、O/W乳化型の原料組成物を得る。
F:Eを厚さ50μmのポリプロピレンフィルム上にキャスト機にて均一な厚さになるよう加熱乾燥しながら展延成形し、厚さ400μmの皮膚貼付用ゲルシートとした後に、勾玉状に裁断した。
【0163】
実施例13の皮膚貼付用ゲルシートは、「保湿効果」「膜強度」「膜の負担感のなさ」「水への溶解性」「シートの成形性」のすべてにおいて優れているものであった。またゲルシートを貼付し10分後に市販の化粧水を用いてマッサージをするように馴染ませた後、肌の保湿効果の持続に優れているものであった。
【0164】
実施例14:皮膚貼付用ゲルシート
(成分) (%)
1.水添レシチン *1 1.0
2.ステアロイルメチルタウリンNa *2 0.3
3.マイクロクリスタリンワックス(融点76~83℃) *20
1.0
4.パラフィンワックス(融点61~65℃) 2.0
5.セトステアリルアルコール(融点50~63℃) 3.0
6.ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)(融点33℃) *22 1.0
7.(ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー(ジメチコン溶解物) *23 1.0
8.ポリブテン(30℃の粘度:400,000mm/s) 1.0
9.ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2 *24 1.0
10.イソノナン酸イソトリデシル *25 2.0
11.デシルテトラデカノール *26 1.0
12.ジメチルポリシロキサン 0.2
13.(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマー *27 0.4
14.ポリビニルアルコール(ケン化度88mol%、20℃における4%水溶液粘度5.4mPa・s) *28 10.0
15.グリセリン 残量
16.1,3-ブチレングリコール 10.0
17.ジグリセリン 3.0
18.トリプロピレングリコール 5.0
19.ニコチン酸アミド 5.0
20.水酸化ナトリウム 0.2
21.1,2-ペンタンジオール 0.5
22.香料 0.1
*20:MULTIWAX W445(SONNEBORN社製)
*21:PARACERA P(PARAMELT社製)
*22:エルデュウ PS-306(味の素社製)
*23:KSG-710(信越化学工業社製)
*24:コスモール 43V(日清オイリオグループ社製)
*25:サラコス 913(日清オイリオグループ社製)
*26:リソノール 24SP(高級アルコール工業社製)
*27:PEMUREN TR-1(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)
*28:ゴーセノールEG-05(日本合成社製)
【0165】
(製造方法)
A:成分(1)~(2)に水10%を加え、70℃に加熱して均一に混合溶解する。
B:成分(3)~(12)を90℃に加熱して均一に混合溶解する。
C:成分(13)~(22)に水30%を加え、70℃に加熱して均一に混合溶解する。
D:AにBを加え、70℃にて均一に混合する。
E:70℃にてDを撹拌しながらCを加えて乳化した後室温に冷却し、O/W乳化型の原料組成物を得る。
F:勾玉形状の穴を空けたメタルマスクを用い、厚さ50μmのポリ塩化ビニル基材上にEを孔版印刷した後、真空乾燥させることで、厚さ400μmの皮膚貼付用ゲルシートを得た。
【0166】
実施例14の皮膚貼付用ゲルシートは、「保湿効果」「膜強度」「膜の負担感のなさ」「水への溶解性」「シートの成形性」のすべてにおいて優れているものであった。またゲルシートを貼付し10分後に市販の化粧水を用いてマッサージをするように馴染ませた後、肌の保湿効果の持続に優れているものであった。
【0167】
実施例15:皮膚貼付用ゲルシート
(成分) (%)
1.水添レシチン *1 1.0
2.ステアロイルメチルタウリンNa *2 0.3
3.合成ワックス(融点80~88℃) *29 3.0
4.エチレン・プロピレンコポリマー(融点95℃) *30 2.0
5.セトステアリルアルコール(融点50~63℃) 3.0
6.パラフィン(融点56~61℃) *3 1.0
7.マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル(融点35~38℃) *32
0.5
8.トリベヘニン(融点57~65℃) *33 1.0
9.(カプリル/カプリン/ミリスチン/ステアリン酸)トリグリセリル(融点35~45℃) *34 0.5
10.ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2(融点39℃) *35
0.5
11.ジフェニルジメチコン *36 1.0
12.リンゴ酸ジイソステアリル *37 1.0
13.イソノナン酸イソノニル *38 2.0
14.乳酸セチル *39 2.0
15.ジメチルポリシロキサン 0.2
16.(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマー *26 0.4
17.ポリビニルアルコール(ケン化度88mol%、20℃における4%水溶液粘度44.0mPa・s) *40 6.0
18.グリセリン 残量
19.1,3-ブチレングリコール 10.0
20.グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
21.水酸化ナトリウム 0.2
22.1,2-ペンタンジオール 0.5
23.香料 0.1
*29:CIREBELLE 108(CIREBELLE社製)
*30:EP-700(BakerPetrolite社製)
*31:PARACERA256(PARAMELT社製)
*32:PLANDOOL-MAS(日本精化社製)
*33:SYNCROWAX HRC(クローダジャパン社製)
*34:サラコス 334(日清オイリオグループ社製)
*35:SOFTISAN 649(SASOL GERMANY GMBH社製)
*36:KF-54(信越化学工業社製)
*37:コスモール 222(日清オイリオグループ社製)
*38:サラコス 99(日清オイリオグループ社製)
*39:CERAPHYL 28(ASHLAND SPECIALITY INGREDIENTS社製)
*40:ゴーセノールEG-40(日本合成社製)
【0168】
(製造方法)
A:成分(1)~(2)に水10%を加え、70℃に加熱して均一に混合溶解する。
B:成分(3)~(15)を90℃に加熱して均一に混合溶解する。
C:成分(16)~(23)に水30%を加え、70℃に加熱して均一に混合溶解する。
D:AにBを加え、70℃にて均一に混合する。
E:70℃にてDを撹拌しながらCを加えて乳化した後室温に冷却し、O/W乳化型の原料組成物を得る。
D:勾玉形状の凹みをつけたポリスチレン製のトレイにEを流し込み、60℃にて一時間加熱乾燥させることで、厚さ400μmの皮膚貼付用ゲルシートを得た。
【0169】
実施例15の皮膚貼付用ゲルシートは、「保湿効果」「膜強度」「膜の負担感のなさ」「水への溶解性」「シートの成形性」のすべてにおいて優れているものであった。またゲルシートを貼付し10分後に市販の化粧水を用いてマッサージをするように馴染ませた後、肌の保湿効果の持続に優れているものであった。