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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】車両用の圧力容器システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/12 20060101AFI20221129BHJP
   B60K 15/01 20060101ALI20221129BHJP
   B60L 58/30 20190101ALI20221129BHJP
   H01M 8/04 20160101ALN20221129BHJP
【FI】
F17C13/12 301Z
B60K15/01 B
B60L58/30
H01M8/04 H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019563439
(86)(22)【出願日】2018-05-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2018062863
(87)【国際公開番号】W WO2018219660
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】102017209000.6
(32)【優先日】2017-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】592245937
【氏名又は名称】バイエリッシェ モトーレン ヴェルケ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayerische Motoren Werke Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Petuelring 130, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローレンツ エーガートナー
(72)【発明者】
【氏名】ティモ グートマン
(72)【発明者】
【氏名】レアンダー ケーグル
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0016579(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0229286(US,A1)
【文献】特開2004-204955(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015218233(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016218692(DE,A1)
【文献】米国特許第8561453(US,B2)
【文献】国際公開第2006/6715(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/01
B60K 15/035
B60L 58/30
F16K 31/06
F17C 1/00-13/12
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の圧力容器システム(100)であって、前記圧力容器システム(100)は、
・燃料を収容する圧力容器(110)と、
・前記圧力容器(110)から燃料消費装置(101)に燃料を導くように構成されている燃料導管(112)と、
・休止状態において、前記圧力容器(110)から前記燃料導管(112、117)に燃料が流出するのを阻止するように構成されている遮断ユニット(115)と、
・電気エネルギを作用させることにより、前記休止状態から、前記燃料が前記圧力容器(110)から前記燃料導管に流出可能なアクティブ状態に前記遮断ユニット(115)を移行させるように構成されている、前記遮断ユニット(115)用の駆動制御ユニット(215)と、
・前記遮断ユニット(115)を駆動制御する電気エネルギを供給可能な、前記車両の車載電源網に至る導電接続部(105)と、
・前記車両の前記車載電源網から電気エネルギが供給されない場合に、前記遮断ユニット(115)を前記休止状態から前記アクティブ状態に移行させるように、前記遮断ユニット(115)を駆動制御する電気エネルギを外部エネルギ供給部(134)から供給可能なアクセス・インタフェースユニット(122)と、
・前記燃料導管(112、117)から、前記圧力容器システム(100)の周囲に燃料を導くように構成されているリリーフバルブ(231)と、
・前記燃料導管(112、117)から燃料を排出する外部のリリーフチャネル(133)を接続可能なカップリングエレメント(121)と、
を有し、
前記リリーフバルブ(231)は、前記燃料導管(112、117)と、前記カップリングエレメント(121)と、の間に配置されている、
圧力容器システム(100)。
【請求項2】
前記アクセス・インタフェースユニット(122)は、前記外部エネルギ供給部(134)から電気エネルギを供給するために、外部インタフェースユニット(132)とプラグ接続を形成するように構成されている、
請求項1記載の圧力容器システム(100)。
【請求項3】
前記アクセス・インタフェースユニット(122)は、コーディングを有する、
請求項2記載の圧力容器システム(100)。
【請求項4】
前記導電接続部(105)は、前記車両の前記車載電源網にも、前記アクセス・インタフェースユニット(122)にも前記駆動制御ユニット(215)を導電的に接続するように構成されている分岐部および/または切換器を有する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の圧力容器システム(100)。
【請求項5】
前記圧力容器システム(100)は、前記導電接続部(105)と、前記車両の前記車載電源網と、を接続するように構成されている内部インタフェースユニット(104)を有する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の圧力容器システム(100)。
【請求項6】
前記圧力容器システム(100)は、前記アクセス・インタフェースユニット(122)を導電的に前記駆動制御ユニット(215)に接続するかまたは前記駆動制御ユニット(215)から切り離すように構成されているスイッチエレメントを有し、
前記スイッチエレメントは、標準動作状態において、前記アクセス・インタフェースユニット(122)を前記駆動制御ユニット(215)から切り離すように構成されており、
前記スイッチエレメントは、トリガ信号に応じて、特に事故信号に応じて、前記アクセス・インタフェースユニット(122)を導電的に前記駆動制御ユニット(215)に接続するように構成されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の圧力容器システム(100)。
【請求項7】
部のリリーフチャネル(133)が前記カップリングエレメント(121)に接続された場合、前記リリーフバルブ(231)を開放するように前記カップリングエレメント(121)が構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載の圧力容器システム(100)。
【請求項8】
前記圧力容器システム(100)は、前記圧力容器(110)と前記燃料消費装置(101)との間で前記燃料導管(112、117)における燃料の圧力を減少させるように構成されている圧力変換器(116)を有し、
前記リリーフバルブ(231)および前記カップリングエレメント(121)は、前記圧力変換器(116)と前記燃料消費装置(101)との間の、前記燃料導管(112、117)の一区間に配置されているか、または、
前記リリーフバルブ(231)および前記カップリングエレメント(121)は、前記圧力容器(110)と前記圧力変換器(116)との間の前記燃料導管(112、117)の一区間に配置されている、
請求項7記載の圧力容器システム(100)。
【請求項9】
前記カップリングエレメント(121)および前記アクセス・インタフェースユニット(122)は、互いにすぐ近くに配置されている、
請求項7または8記載の圧力容器システム(100)。
【請求項10】
前記圧力容器システム(100)は、リリーフユニットを有し、前記リリーフユニットは、
・前記圧力容器システム(100)の前記アクセス・インタフェースユニット(122)と接続されるように構成されている外部インタフェースユニット(132)と、
・前記圧力容器システム(100)の前記圧力容器(110)の前記遮断ユニット(115)を前記休止状態から前記アクティブ状態に移行させるために、前記外部インタフェースユニット(132)を介して、前記圧力容器システム(100)の前記駆動制御ユニット(215)用の電気エネルギを供給するように構成されている外部エネルギ供給部(134)と、
を有する
請求項1から9までのいずれか1項記載の圧力容器システム(100)
【請求項11】
前記リリーフユニットは、前記駆動制御ユニット(215)に、前記遮断ユニット(115)を前記アクティブ状態に移行させるために、制御信号を生成して前記外部インタフェースユニット(132)に供給するように構成されている制御ユニット(202)を有する、
請求項10記載の圧力容器システム(100)
【請求項12】
前記制御ユニット(202)は、前記制御信号を生成するために、前記駆動制御ユニット(215)用の電流を、特にパルス幅変調を用いて変調するように構成されている、
請求項11記載の圧力容器システム(100)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を収容する、1つまたは複数の圧力容器を備えた、車両用の圧力容器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
路上走行自動車は、例えば水素のような燃料をベースにして、車両の動作、特に駆動のために電気エネルギを生成する燃料電池を有していてよい。この燃料は、車両の1つまたは複数の圧力容器もしくは圧力タンクに貯蔵することが可能である。燃料は、バルブを介して、車両の圧力容器から燃料電池に導くことが可能である。圧力容器は、車両の底部もしくは下部構造に配置することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、事故の結果、車両の1つまたは複数の圧力容器を安全な状態に移行させなくてはならない状況になることがある。この文献が取り扱っている技術的課題は、圧力容器システムの1つまたは複数の圧力容器を確実かつ効率的に安全な状態に移行させることを可能にする、車両用の圧力容器システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、独立請求項によって解決される。有利な実施形態は、特に、従属請求項に記載される。ここでは注意したいのは、独立特許請求項に従属する特許請求項の付加的な特徴的構成は、独立特許請求項の特徴的構成なしに、またはこの独立特許請求項の複数の特徴的構成から成るサブセットとの組み合わせにおいてのみ、固有かつ独立特許請求項のすべての特徴的構成の組み合わせに依存しない発明を形成することができ、この発明を、独立請求項、分割出願または後続出願の対象とすることができることである。このことは、本明細書に記載した複数の技術的な教示にも同様に当てはまり、これらの技術的な教示は、独立特許請求項の特徴的構成に依存しない発明を形成し得る。
【0005】
一態様によれば、車両用(特に路上走行自動車用)の圧力容器システムが記載される。この圧力容器システムは、燃料を収容する(特に水素を収容する)圧力容器を有する。さらに、圧力容器システムは、圧力容器から燃料消費装置に(特に燃料電池もしくは燃料電池スタックに)燃料を導くように構成されている燃料導管を有する。圧力容器システムは、燃料消費装置用の燃料を貯蔵するようにそれぞれ構成されている複数の圧力容器を有していてよい。燃料は、圧力容器において、大気圧に対し、350バール、700バールまたはこれを上回る圧力を有し得る。
【0006】
圧力容器システムは、さらに、休止状態において、圧力容器から燃料導管に燃料が流出するのを阻止するように構成されている少なくとも1つの遮断ユニット(特にバルブ)を有する。一般に、圧力容器システムは、圧力容器システムのそれぞれの圧力容器に対し、少なくとも1つの遮断ユニットを有する。
【0007】
さらに、圧力容器システムは、電気エネルギを作用させることにより、休止状態から、燃料が圧力容器から燃料導管に流出可能なアクティブ状態に遮断ユニットを移行させるように構成されている、遮断ユニット用の少なくとも1つの駆動制御ユニットを有する。したがって遮断ユニットは、非通電状態において閉鎖していてよい。さらに、遮断ユニットは、電流によって開放することが可能である。例えば、遮断ユニットを開放するために、電流を用いて駆動制御ユニットの電磁石に磁場を形成させることができる。休止状態において(すなわち電気エネルギが供給されていない場合に)閉鎖されておりかつアクティブに電流を供給することによってのみ開放することが可能な遮断ユニットを使用することにより、圧力容器システムの1つまたは複数の圧力容器の確実な閉鎖を保証することができる。
【0008】
圧力容器システムは、一般に、遮断ユニットを駆動制御する電気エネルギを供給可能な、車両の車載電源網に至る導電接続部を有する。遮断ユニットの駆動制御ユニットは、導電接続部を介して直接、または内部インタフェースユニットを介して(例えば、車両内部のプラグ接続部を介して)車両の車載電源網および/または車両内部の制御ユニットに接続可能である。これにより、車両の動作の枠内において(例えば車両の駆動部用に)、圧力容器の遮断ユニットを確実に駆動制御する(すなわち必要時に開放する)ことができる。
【0009】
さらに、圧力容器システムは、車両の車載電源網から電気エネルギが供給されない場合に、遮断ユニットを駆動制御する電気エネルギ(特に電流)を外部エネルギ供給部から供給可能なアクセス・インタフェースユニットを有する。したがって、圧力容器の遮断ユニットを開放するために、このアクセス・インタフェースユニットを介し、車両の車載電源網に依存せずに電気エネルギを供給することができる。これにより、燃料を燃料導管に導き、さらに圧力容器システムから導くために、車両の車載電源網には依存せずに圧力容器を開放することができる。したがって(例えば、車両の事故の後、レスキュー作業員による)圧力容器システムの、確実かつ効率的な負荷軽減を行うことができる。特に、確実かつ効率的に、圧力容器システムの1つまたは複数の圧力容器を安全な状態に移行させることができる。
【0010】
アクセス・インタフェースユニットは、外部エネルギ供給部から電気エネルギを供給するために、外部インタフェースユニットとプラグ接続を形成するように構成されていることが可能である。外部インタフェースユニットは、リリーフユニットの一部であってよく、このリリーフユニットは、外部インタフェースユニットを介してアクセス・インタフェースユニットに接続可能であり、ひいては遮断ユニットの駆動制御ユニットに接続可能である外部エネルギ供給部を有する。例えば、アクセス・インタフェースユニットは、プラグとして構成された外部インタフェースユニットを差し込むことが可能なソケットとして構成することが可能である。この場合、このプラグ接続を介して、確実かつ効率的に圧力容器の遮断ユニットを開放するための電気エネルギを供給することができる。
【0011】
アクセス・インタフェースユニットは、ユーザが楽にアクセス可能な、圧力容器システムおよび/または車両の箇所に配置可能である。例えば、アクセス・インタフェースユニットは、圧力容器システムが組み込まれている車両のボディに配置可能である。これにより、圧力容器の遮断ユニットの駆動制御ユニットに電気エネルギを楽に供給することができる。
【0012】
アクセス・インタフェースユニットは、コーディングを含むかもしくは有することが可能である。このコーディングは、圧力容器システムに固有であってよい。特に、アクセス・インタフェースユニットは、圧力容器システム固有に標準化することが可能である。このコーディングは、例えば、1つまたは複数の溝および/またはピンによって実現可能である。対応してコーディングされた外部インタフェースユニットだけと接続を形成することができる、専用にコーディングされたアクセス・インタフェースユニットを使用することによって保証できるのは、圧力容器の遮断ユニットが、容認されない仕方で、外部ユニットからエネルギを供給することができず、ひいてはこれを開放できないことである。
【0013】
導電接続部は、(例えば内部インタフェースユニットを介して)車両の車載電源網にも、アクセス・インタフェースユニットにも駆動制御ユニットを導電的に接続するように構成されている分岐部および/または切換器を有していてよい。これにより、必要時には(例えば、事故の結果として、またはメンテナンス時には)、車両外部からのエネルギ供給を確実に行うことができる。
【0014】
圧力容器システムは、アクセス・インタフェースユニットを導電的に駆動制御ユニットに接続するかまたは駆動制御ユニットから切り離すように構成されているスイッチエレメントを有していてよい。特に、このスイッチエレメントにより、アクセス・インタフェースユニットと駆動制御ユニットとの間の導電接続を閉成するかまたは遮断することが可能である。このスイッチエレメントは、例えば、リレーおよび/または半導体スイッチエレメント(例えばMOSFETまたはIGBT)を含んでいてよい。
【0015】
スイッチエレメントは、標準動作状態において、アクセス・インタフェースユニットを駆動制御ユニットから切り離すように構成可能である。したがって圧力容器システムおよび/または車両の通常動作において、アクセス・インタフェースユニットを遮断ユニットの駆動制御ユニットから切り離すことが可能である。これにより、外部エネルギ供給部による、駆動制御ユニットへの容認されない通電を確実に回避することができる。
【0016】
他方において、スイッチエレメントは、トリガ信号に応じて、特に事故信号に応じて、アクセス・インタフェースユニットを導電的に駆動制御ユニットに接続するように構成可能である。このトリガ信号は、例えば、圧力容器システムが組み込まれている車両の制御ユニットによって送信可能である。スイッチエレメントを閉成することによって保証することができるのは、必要時には、圧力容器の遮断ユニットを開放するために外部からエネルギ供給を行うことができることである。
【0017】
圧力容器システムは、燃料導管から、圧力容器システムの周囲に、特に車両の周囲に燃料を導くように構成されているリリーフバルブを有していてよい。
【0018】
リリーフバルブは、バルブを有していてよく、このバルブは、休止状態において閉鎖されており、これによって燃料導管から周囲に燃料が到達することはない。その一方、周囲に燃料を放出するために、このリリーフバルブを開放することが可能である。
【0019】
さらに、圧力容器システムは、燃料導管から燃料を排出する外部のリリーフチャネルを接続可能なカップリングエレメントを有していてよい。リリーフチャネルは、例えば、燃料を導くことが可能な管またはチューブを含んでいてよい。リリーフチャネルは、第一に、圧力容器システムもしくは車両から所定の距離で、大気に燃料を放出するために使用可能である。このリリーフチャネルは、例えば、相補的なカップリングエレメントを介して、圧力容器システムのカップリングエレメントに固定することができ、これにより、燃料導管とリリーフチャネルとの間に、ガスを導く、(特に燃料について)気密の接続が形成される。
【0020】
リリーフバルブは、一般に、燃料導管とカップリングエレメントとの間に配置されている。さらに、外部のリリーフチャネルが、カップリングエレメントに接続された場合、リリーフバルブを開放するようにカップリングエレメントが構成されていることが可能である。例えば、圧力容器システムのカップリングエレメントに、リリーフチャネルの相補的なカップリングエレメントを接続することにより、リリーフバルブを開放させることが可能である。リリーフバルブの開放は、カップリングエレメントとリリーフバルブとの間の機械的または電気的な接続によって行うことが可能である。
【0021】
圧力容器システムは、圧力容器と燃料消費装置との間で燃料導管における燃料の圧力を(例えば300バールより高い圧力を20バールよりも低い圧力に)減少させるように構成されている圧力変換器を有していてよい。リリーフバルブおよびカップリングエレメントは、圧力変換器と燃料消費装置との間の、燃料導管の一区間に(すなわち圧力容器システムの低圧領域に)配置することが可能である。これにより、燃料の効率的な排出を可能にすることができる。
【0022】
択一的には、リリーフバルブおよびカップリングエレメントは、圧力容器と圧力変換器との間の、燃料導管の一区間に(すなわち圧力容器システムの低圧領域に)配置することが可能である。これにより、燃料の迅速な排出を可能にすることができる。
【0023】
場合によっては、要求に応じて、燃料の効率的もしくは迅速な排出を可能にするために、圧力容器システムは、それぞれ1つのカップリングエレメントを高圧領域および低圧領域に有していてよい。
【0024】
(燃料を排出するための)カップリングエレメントおよび(圧力容器の遮断ユニットを駆動制御するための)アクセス・インタフェースユニットは、互いにすぐ近くに配置することが可能である。例えば、車両には、ユーザが容易にアクセス可能でありかつカップリングエレメントもアクセス・インタフェースユニットも配置されているリリーフインタフェースを設けることができる。これにより、圧力容器システムの圧力容器の燃料抜きを楽に行うことができる。
【0025】
別の一態様によれば、この文献に記載されている圧力容器システムを有する車両、特に路上走行自動車、例えば乗用自動車、貨物自動車またはバスが記載される。
【0026】
別の一態様によれば、圧力容器システム用のリリーフユニットが記載される。この圧力容器システムは、この文献で説明したように構成可能である。このリリーフユニットは、圧力容器システムのアクセス・インタフェースユニットと接続されるように構成されている(外部の)(すなわち圧力容器システムに関して外部の)インタフェースユニットを有する。特に、リリーフユニットの(外部の)インタフェースユニットは、圧力容器システムのアクセス・インタフェースユニットと共に導電性のプラグ接続を形成する。
【0027】
さらに、圧力容器システムは、圧力容器システムの圧力容器の遮断ユニットを休止状態からアクティブ状態に移行させるために、外部インタフェースユニットを介して、圧力容器システムの駆動制御ユニット用の電気エネルギを供給するように構成されている(外部の)エネルギ供給部(例えば12Vまたは48Vのエネルギ供給部)を有する。
【0028】
さらに、リリーフユニットは、駆動制御ユニットに、遮断ユニットをアクティブ状態に移行させるために、制御信号を生成して外部インタフェースユニットに供給するように構成されている制御ユニットを有していてよい。この制御ユニットは、制御信号を生成するために、駆動制御ユニット用の電流を、特にパルス幅変調を用いて変調するように構成可能である。遮断ユニットを開放するための電流を変調することにより、駆動制御ユニットの過負荷(例えば電磁石の過負荷)も回避することが可能である。
【0029】
圧力容器システムに対して外部であるか、もしくは圧力容器システムが組み込まれている車両に対して外部であるリリーフユニットを設けることにより、圧力容器システムの圧力容器の効率的かつ確実な燃料抜きを行うことが可能である。
【0030】
この文献に記載される方法、装置およびシステムは、単独でも、またこの文献に記載される他の方法、装置およびシステムとの組み合わせでも使用できることに注意されたい。さらに、この文献で説明した方法、装置およびシステムのすべての態様は、多様に互いに組み合わせることができる。特に、請求項の特徴的構成は、多様に互いに組み合わせることが可能である。
【0031】
以下では、実施例に基づいて本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】車両用の例示的な圧力容器システムを示す図である。
図2】車両用の例示的な圧力容器システムを示す別の図である。
図3】圧力容器を安全な状態に移行させる例示的な方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
冒頭に説明したように、この文献は、自動車用の圧力容器システム(特に圧縮水素貯蔵システム(compressed hydrogen storage System)(CHSシステム))を取り扱っている。圧力容器システムは、複数の周囲条件下において、気体の動力燃料もしくは燃料を貯蔵するために使用される。圧力容器システムは、例えば、圧縮天然ガス("Compressed Natural Gas"=CNG)または液化天然ガス(LNG)または水素によって作動させられる自動車に使用することが可能である。
【0034】
このような圧力容器システムには、少なくとも1つの圧力容器もしくは圧力タンクが含まれている。この圧力容器は、例えば、低温圧力容器(=CcH2)または高圧ガス容器(=CGH2)であってよい。
【0035】
高圧ガス容器は、実質的に周囲温度において、約350バール(ゲージ)(=大気圧に対する過圧)の、さらに好ましくは約700バール(ゲージ)の、またはそれを上回る公称作動圧(nominal working pressureまたはNWPとも称される)において、燃料を持続的に貯蔵するように構成されている。低温圧力容器は、自動車の動作温度を格段に下回る温度においても上記の作動圧で、燃料もしくは動力燃料を貯蔵するのに適している。
【0036】
図1には、車両の燃料消費装置(例えば燃料電池)101用に燃料(特に水素)を供給するために使用可能な圧力タンクもしくは圧力容器110を有する例示的な圧力容器システム100が示されている。圧力容器110は、燃料導管112、117を介して燃料消費装置101に接続されている。
【0037】
圧力容器110は、圧力容器110を製造する際に圧力容器110を保持するために使用可能なエンドピース111を端面に有していてよい。さらに、エンドピース111には、圧力容器110から(例えばバルブ115を介して導管112へ)燃料を導くことができる開口部を設けることができる。圧力容器110の開口部には、圧力容器110から、圧力容器110の周囲に燃料を排出し、これによって圧力容器110の圧力を減少させるために、所定のトリガ条件の場合(例えば所定の温度になった場合)にトリガ可能な減圧装置(図示せず)も配置することができる。
【0038】
圧力容器110の1つまたは複数のバルブ115(一般に遮断ユニットと称される)は、一般に、休止状態において閉鎖されており、これにより、1つまたは複数のバルブ115を介して圧力容器110から燃料が流出することはない。圧力容器110のバルブ115は、1つまたは複数の電気線路105を介して、制御装置102に接続可能であり、制御装置102は、閉鎖された休止状態から、開放されたアクティブ状態にバルブ115を移行させるために、バルブ115を電流源および/または電圧源に(例えば車両の12Vの車載電源網に)接続するように構成されている。バルブ115が電流源および/または電圧源に接続されている限り、バルブ115は、開放されたアクティブ状態に止まることが可能である。その一方、バルブ115が電流源および/または電圧源から切り離されると、直ちに、バルブ115は、自動的に休止状態に戻ることが可能である。制御装置102は、インタフェースユニット103、104を有する(例えばプラグおよびソケットを有する)(内部の)プラグ接続部103、104を介して、バルブ115に接続可能である。
【0039】
圧力タンク110には、燃料注入口114を介して(例えば、タンクニップルを介して)燃料を補給することができる。特に、燃料注入口114により、柱状計量給油計から燃料導管112を介して燃料タンク110に燃料を搬送することが可能である。燃料注入口114と燃料導管112との間には、一般に、圧力タンク110から燃料注入口114に燃料が逆流しないようにする逆止弁201(図2を参照されたい)が設けられている。
【0040】
燃料電池101は、一般に、(例えば10~20バールの範囲内の)比較的低い圧力によって作動させられ、燃料電池101用の低圧は、多くの場合に実質的に、燃料導管112および圧力タンク110における(例えば700バールの範囲内の)高圧よりも低い。したがって圧力タンク110と燃料電池101との間には、高圧燃料導管112からの(比較的高い圧力を有する)燃料を(比較的低い圧力を有する)低圧燃料導管117に変換するように構成されている圧力変換器116(特に圧力制御器)を配置可能である。次に燃料は、低圧燃料導管117を介して燃料電池101に導かれる。
【0041】
図2には、複数の圧力容器110を備えた、車両用の圧力容器システム100が示されている。さらに図2には、個々の圧力容器110の圧力容器・バルブ115用の駆動制御ユニット215が示されている。駆動制御ユニット215は、例えば、通電の際にバルブ115を開放する磁場を生成することが可能なそれぞれ1つの電磁石を含んでいてよい。
【0042】
したがって、車両の圧力容器システム100の圧力容器110は、一般に、1つまたは複数のバルブ115を介して(特に1つまたは複数の温度過上昇用バルブもしくはOTV(Over-Temperatur-Valve)を介して)圧力変換器116に接続されている。圧力容器110から燃料を取り出すためには、車両の車載電源網を介して1つまたは複数のタンクバルブ115に通電し、これによってこれを開放しなければならない。タンクバルブ115は、車載電源網の給電がなければ(例えば、事故の後もしくは技術的な故障の後)、一般に、排出させることはできない。というのは、電気的に操作されるタンク遮断バルブ115を駆動制御できないからである。したがって、このような状況では、圧力容器110の排出または減圧を行うことはできない。
【0043】
圧力容器110の1つまたは複数のバルブ115は、導電性の信号線路105を介してアクセス・インタフェースユニット122に導電的に接続可能である。アクセス・インタフェースユニット122は、ユーザにとって(例えば事故の後のヘルパにとって)容易にアクセス可能である、車両の箇所に配置可能である。アクセス・インタフェースユニット122は、制御装置102に至る内部インタフェースユニット104に対応して構成可能である。
【0044】
アクセス・インタフェースユニット122は、ユーザが、車両外部インタフェースユニット132を介して、車両外部エネルギ供給部134と、アクセス・インタフェースユニット122とを接続し、ひいてはバルブ115の駆動制御ユニット215とに接続できるようにすることが可能である。車両外部の外部エネルギ供給部134は、(例えば、外部制御ユニット202との組み合わせにおいて)、バルブ115の駆動制御ユニット215を駆動制御し、これによって(例えば、バルブ制御装置102と同様に)、バルブ115に、閉鎖された休止状態から、開放されたアクティブ状態に変化させるように構成することが可能である。これにより、車両の車載電源網からのエネルギ供給が遮断された場合であっても、圧力容器110における圧力抑制を確実に行うことが可能である。
【0045】
したがって、ここでは車両における圧力容器110(特にCGH2および/またはCCH2圧力容器)の燃料抜きを自立的にアクティブ化する装置が記載されている。このためには、車両のバルブ制御装置102と、圧力容器110の1つまたは複数の遮断ユニット(特にバルブ)115と、の間の、確実にアクセスされる、車両の1つまたは複数の位置に(例えば車両のキャビン内の高電圧・レスキュー分割箇所の他に)、1つまたは複数の制御線路105を導くことが可能である。この場合には、脱着可能なプラグ接続を介して、またはアクセスプラグを備えた切換器を介して(すなわちアクセス・インタフェースユニット122を介して)、1つまたは複数の制御線路105への外部からのアクセスを設けることが可能である。
【0046】
アクセス・インタフェースユニット122は、(例えば、バルブ制御装置102に至る車両内部のインタフェースユニット104に対応して)所定のコーディングを有していてよい。このコーディングは、例えば、1つまたは複数の(非導通の)溝および/またはピンによって実現可能である。このコーディングにより、アクセス・インタフェースユニット122と、車両外部インタフェースユニット132と、の間の正しい接続を保証することができる。さらに、容認されない車両外部インタフェースユニット132の使用を回避することができる。
【0047】
ここでは、車両外部の自立的な装置132、134(この文献では、リリーフユニットとも称される)を設けることも可能であり、これらの装置により、車載電源網電圧(例えば12Vバッテリ)に対応して、電気的に操作される1つまたは複数の遮断ユニット115に外部から通電する電圧供給部が設けられる。この車両外部の装置132、134には、アクセス・インタフェースユニット122と共にプラグ接続を形成するように構成されている、車両外部インタフェースユニット132(例えば、場合によってコーティングされた接続プラグ)が含まれている。さらに、車両外部の装置132、134には、車両側の制御装置102に対応して、1つまたは複数の電気的な遮断ユニット115をアクティブ化する制御信号(例えばPWM信号)を生成する、エネルギ供給部134および制御ユニットもしくは変調ユニット202が含まれている。
【0048】
したがって圧力容器110の1つまたは複数のバルブ115は、外部から通電することが可能である。このためには、アクセス・インタフェースユニット(例えばジャック)122を介して外部の電流源および/または電圧源を接続することができる。アクセス・インタフェースユニット122と、1つまたは複数のバルブ115と、の間のこの電流路において、クラッシュ信号によってトリガされる閉成器のような1つまたは複数の安全エレメントもしくはスイッチエレメントにより、1つまたは複数のバルブ115の配線を、誤用に対して保護することが可能である。
【0049】
1つまたは複数の圧力容器110の1つまたは複数の遮断ユニット115を開放することにより、燃料は、1つまたは複数の圧力容器110から燃料導管112、117に到達することが可能である。圧力容器システム100は、燃料導管112から圧力容器システム100の周囲に、特に車両の周囲に燃料を排出することができるリリーフバルブ231を有していてよい。特に、車両外部のリリーフチューブ133を、カップリング131、121を用いてリリーフバルブ231に接続することができる。リリーフチューブ133を接続することにより、リリーフバルブ231を開放することができ、これにより、圧力容器システム100から燃料を排出することができる。
【0050】
圧力容器システム100のカップリングエレメント121(例えばリリーフチャネル133の接続部)は、ユーザにとって、例えばレスキュー作業員にとって容易にアクセス可能な、車両の箇所に配置することが可能である。例えば、カップリングエレメント121も、アクセス・インタフェースユニット122も配置されている、車両のリリーフインタフェース230を設けることが可能である。場合によっては、燃料注入口のすぐ近くにカップリングエレメント121および/またはアクセス・インタフェースユニット122を配置することができる。
【0051】
リリーフバルブ231および/またはカップリングエレメント121は、好ましくは、(例えば図1および2に示したように)低圧燃料導管117に接続することが可能である。これにより、制御がなされた仕方で、燃料を排出することができる。択一的には、リリーフバルブ231および/またはカップリングエレメント121を高圧燃料導管112に接続することができ、これにより、燃料は素早く排出することができる。
【0052】
したがって、圧力容器システム100から燃料を排出するために、リリーフ管またはリリーフチューブ133(一般にはリリーフチャネル)を中央のクイックカップリング121、131に接続することができる。リリーフバルブ231のトリガは、嵌め込みによってリリーフバルブ231を機械的に開放するか、またはリリーフバルブ231を開放する液圧式の、もしくは電気的な操作メカニズムを有するカップリング121、131によって行うことが可能である。
【0053】
したがってここでは、例えば、レスキュー作業員による、圧力容器システム100の非常時の排出を可能にする中央の負荷軽減装置を説明する。アクセス・インタフェースユニット122を設けることにより、必要に応じ、車両の電流供給部およびバスシステムに頼ることなく、迅速、簡単かつ標準化可能もしくは標準化された、圧力容器110の非常時の負荷軽減を行うことができる。これにより、(例えば事故の後)圧力容器110を確実かつ効率的に安全な状態に移行させることができる。有利には、汎用的な車両外部の排出ユニット132、134により、レスキュー作業員および作業所が、圧力容器110の圧力の負荷軽減を行えるようにするために、圧力容器110の遮断ユニット115を駆動制御するプラグ装置および制御信号の標準化を行うことができる。
【0054】
図3には、圧力容器システム100を負荷軽減するための、例示的な方法300の流れ図が示されている。方法300には、圧力容器システム100のアクセス・インタフェースユニット122と、外部エネルギ供給部134とを接続するステップ301が含まれている。これにより、1つまたは複数の遮断ユニット115を開放し、またこれによって1つまたは複数の圧力容器110から、圧力容器システム100の燃料導管112、117に燃料を排出するために、圧力容器システム100の1つまたは複数の圧力容器110の1つまたは複数の遮断ユニット115に、(車両の車載電源網からのエネルギ供給が遮断された場合であっても)電気エネルギを供給することができる。
【0055】
さらに、方法300には、燃料導管112、117から、圧力容器システム100の周囲に燃料を排出するために、燃料導管112、117のリリーフバルブ231を開放するステップ302が含まれている。例えば、カップリングエレメント121を介して、圧力容器システム100に、特に燃料導管112、117にリリーフチャネル133(例えばチューブ)を接続することにより、リリーフバルブ231を開放することができる。
【0056】
したがって、ここでは、(例えば、車両の車載電源網が機能しない場合に)車両において、ガス圧力容器110(例えばCGH2+CCH2)の燃料抜きを自立的にアクティブ化する装置もしくはシステムを説明する。ここでは、圧力容器110の遮断ユニット115に至る1つまたは複数の電気線路105が、確実にアクセスされる接続箇所に向かって(すなわちアクセス・インタフェースユニット122に向かって)敷設される。この接続箇所は、例えば、HV(高電圧)レスキュー分割箇所に加え、車両のキャビンに配置することができる。
【0057】
圧力容器110の、電気的に操作される遮断ユニット115を外部から通電するために、外部の自立的なリリーフユニットを用いて、車載電源網電圧(例えば12Vのバッテリ)に対応した電圧供給を行うことが可能である。ここでは、接続プラグ132を介して、アクセス・インタフェースユニット122と、外部エネルギ供給部134とを接続することができ、接続プラグ132は、アクセス・インタフェースユニット122に対応してコーディングされている。制御ユニットもしくは変調ユニット202を用い、車両側の制御装置102に対応して(例えばPWM変調により)、遮断ユニット115をアクティブ化する制御信号を生成することができる。次に車両のサービスポート/燃料抜きポート121を介して、圧力容器システム100から燃料を導くことができる。
【0058】
本発明は、示した実施例には制限されない。特に、説明および図は、提案した方法、装置およびシステムの原理だけを説明するものであることに注意されたい。
【符号の説明】
【0059】
100 圧力容器システム
101 燃料消費装置
102 制御装置
103、104 インタフェースユニット
105 制御線路
110 圧力容器
111 エンドピース
112、117 燃料導管
114 燃料注入口
115 遮断ユニット(バルブ)
116 圧力変換器
121、131 カップリングエレメント
122 アクセス・インタフェースユニット
132 システム外部のインタフェースユニット
133 リリーフチャネル
134 システム外部エネルギ供給部
201 逆止弁
202 システム外部の制御ユニット
215 駆動制御ユニット
230 リリーフインタフェース
231 リリーフバルブ
300 圧力容器システムを負荷軽減する方法
301、302 方法ステップ
図1
図2
図3