(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】試料のリアルタイム糖鎖アッセイを実施するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20221129BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G01N33/48 Z
G01N30/88 N
(21)【出願番号】P 2019570860
(86)(22)【出願日】2018-08-01
(86)【国際出願番号】 US2018044891
(87)【国際公開番号】W WO2019028191
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-28
(32)【優先日】2017-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チャオ-シャン
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/037407(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0030732(US,A1)
【文献】特表2010-536355(JP,A)
【文献】特開平05-227943(JP,A)
【文献】特表平06-511084(JP,A)
【文献】特開平02-069655(JP,A)
【文献】Carolin Huhn, et al.,IgG glycosylation analysis,Proteomics,Wiley-VCH,2009年02月01日,9(4),882 - 913
【文献】St Amand M M, et al.,,Development of at-line assay to monitor charge variants of MAbs during production,Biotechnology Progress,American Chemical Society,2014年01月01日,30(1),249 - 255
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖鎖分析のために試料をリアルタイムで調製する方法であって、
(a)ポリペプチドを含む試料を、保持コイルを介してポリペプチド結合カラムに移動させる工程と、
(b)前記試料中のポリペプチドを、前記ポリペプチド結合カラムに結合させる工程と、
(c)グリカナーゼを、前記保持コイルを介して前記ポリペプチド結合カラムに移動させ、前記結合されたポリペプチドから糖鎖を遊離させる工程と、
(d)キャリア溶液を、前記保持コイルを介して前記ポリペプチド結合カラムに移動させて前記ポリペプチド結合カラムを通過させ、それにより、前記遊離した糖鎖を前
記ポリペプチド
結合カラムから出す工程と、
(e)前記ポリペプチド結合カラムの下流で、前記遊離した糖鎖を糖鎖標識化試薬と混合する工程と、
(f)前記遊離した糖鎖と前記糖鎖標識化試薬との混合物を、前記ポリペプチド結合カラムの下流に配置された反応コイルに移動させる工程と、
(g)前記遊離した糖鎖と前記糖鎖標識化試薬との前記混合物を、前記反応コイル内でインキュベートし、それにより前記糖鎖を標識する工程と、
(h)前記混合物を、前記反応コイルの下流に配置された冷却コイルに移動させる工程と、
(i)前記冷却コイルを介して前記混合物の温度を低下させる工程と、
(j)前記冷却された混合物を、前記冷却コイルの下流に配置された糖鎖結合カラムに移動させる工程と、
(k)前記標識糖鎖を前記糖鎖結合カラムに結合する工程と、
(l)溶離バッファを前記糖鎖結合カラムに移動させて前記糖鎖結合カラムを通過させ、前記糖鎖結合カラムに結合した前記標識糖鎖を溶離する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
(a)、(c)、(d)、(e)、(f)、(h)、(j)、及び(l)の1つ以上は自動的に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)~(l)は、閉じたシステム内で実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(e)の後、かつ(f)の前に、前記冷却コイルの下流及び前記糖鎖結合カラムの上流に配置された真空装置に前記混合物を移動し、前記真空装置を使用して、前記遊離した糖鎖と前記糖鎖標識化試薬との前記混合物から気泡を実質的に除去することをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(l)の後、前記溶離した糖鎖を前記糖鎖結合カラムの下流に配置された混合チャンバを通過させ、前記標識糖鎖の溶離バッファ成分を、開始時のクロマトグラフィ移動相の条件に適合するように調整することをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(a)は、前記試料を、前記試料を収容する容器から前記ポリペプチド結合カラムに移動させることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記容器はバイオリアクターを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(g)は、前記糖鎖を前記糖鎖標識化試薬で蛍光標識化することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(g)は、前記反応コイル内の前記混合物に熱を加えることを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(m)前記溶離した糖鎖を、前記糖鎖結合カラムから糖鎖分析デバイスに移動させる工程をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(n)前記糖鎖分析デバイスを使用して前記糖鎖を分離し、定量する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリペプチド結合カラムに流体的に結合し、前記ポリペプチド結合カラムの下流に位置する弁を、前記弁が、前記ポリペプチド結合カラムを通過して流れる前記試料の残りを廃棄物チャンバに誘導する第1の位置に移動させることをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
(e)の前に、前記第1の弁が前記遊離した糖鎖を前記ポリペプチド結合カラムから出して前記糖鎖標識化試薬の方に誘導する第2の位置に、前記弁を移動させることをさせるに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
マルチポート弁と、前記マルチポート弁の上流の保持コイルと、前記マルチポート弁の第1のポートに流体的に結合され、前記マルチポート弁の前記第1のポートの下流にあるポリペプチド結合カラムと、前記ポリペプチド結合カラムの下流に配置された反応コイルと、前記反応コイルの下流に配置された冷却コイルと、前記冷却コイルの下流に配置され、前記マルチポート弁の第2のポートに流体的に結合され、前記マルチポート弁の前記第2のポートの下流にある糖鎖結合カラムとを含む閉じたシステムにおいて糖鎖分析のために試料をリアルタイムで調製する方法であって、
(a)前記閉じたシステムに通信的に結合されたコントローラによって、ポリペプチドを含む試料を、前記ポリペプチドを収容する容器から前記保持コイルに移動させる工程と、
(b)前記試料が前記ポリペプチド結合カラムに流れ、それにより、前記試料中の実質的に全ての前記ポリペプチドが前記第1のポリペプチドカラムに結合するように、前記コントローラによって、前記マルチポート弁を、前記保持コイルが前記マルチポート弁の前記第1のポートを介して前記ポリペプチド結合カラムに流体的に結合する第1の位置に配置する工程と、
(c)前記マルチポート弁が前記第1の位置にあるとき、前記コントローラによって、グリカナーゼを、前記保持コイルを介して前記ポリペプチド結合カラムに移動させ、前記結合されたポリペプチドから糖鎖を遊離させ、その後、前記コントローラによって、キャリア溶液を、前記保持コイルを介して前記ポリペプチド結合カラムに移動させ前記ポリペプチド結合カラムを通過させ、それにより、前記遊離した糖鎖を前記ポリペプチド結合カラムから出す工程と、
(d)前記コントローラによって、前記遊離した糖鎖を前記反応コイルの方に移動させる工程と、
(e)糖鎖標識化試薬が前記遊離した糖鎖及び酵素と混合するように、前記コントローラによって、前記遊離した糖鎖が前記反応コイルに到達する前に前記遊離した糖鎖の方に前記糖鎖標識化試薬を移動させる工程と、
(f)前記コントローラによって、前記混合物を前記反応コイルに移動させ、それにより、前記混合物中の前記糖鎖を標識する工程と、
(g)前記コントローラによって、前記混合物を前記反応コイルの下流に配置された冷却コイルに移動させ、それにより、前記混合物の温度を低下させる工程と、
(h)前記コントローラによって、前記冷却された混合物を前記冷却コイルの下流に配置された糖鎖カラムに移動させ、それにより、実質的に全ての前記標識糖鎖が前記糖鎖結合カラムに結合する工程と、
(i)前記コントローラによって、前記マルチポート弁を、前記糖鎖結合カラムが前記マルチポート弁の前記第2のポートを介して溶離バッファ溶液源に流体的に結合される第2の位置に配置する工程と、
(j)前記マルチポート弁が前記第2の位置にあるとき、前記コントローラによって、前記溶離バッファを前記溶離バッファ源から前記糖鎖結合カラム移動させ前記糖鎖結合カラムを通過させ、それにより、前記糖鎖結合カラムに結合した糖鎖を溶離する工程と、
(k)前記コントローラによって、前記溶離した糖鎖を糖鎖分析デバイスに移動させる工程と
を含む、方法。
【請求項15】
(e)の後、且つ(f)の前に、前記コントローラによって、前記ポリペプチド結合カラムの下流及び前記反応コイルの上流に配置された真空装置に前記混合物を移動させ、それにより、前記混合物から気泡を実質的に除去することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(j)の後、かつ(k)の前に、前記コントローラによって、前記溶離した糖鎖を、前記糖鎖結合カラムの下流及び前記糖鎖分析デバイスの上流に配置された混合チャンバを通過させることをさらに含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリペプチド結合カラムを摂氏約38度の温度に維持するように、前記プロセッサによって、前記ポリペプチド結合カラムを制御することをさらに含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記反応コイルを摂氏約80度の温度に維持するように、前記プロセッサによって、前記反応コイルを制御することを更に含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
(f)は、前記コントローラによって、前記混合物を前記反応コイルに移動させ、それにより、前記混合物中の前記糖鎖を蛍光標識することを含む、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
糖鎖分析のために試料をリアルタイムで調製するための閉じたシステムであって、
ポリペプチドを収容するように適合された容器と、
前記
容器に流体的に結合され、前記
容器から前記ポリペプチドの試料を受け取るように配置されている保持コイルと、
前記保持コイルに流体的に結合され、前記保持コイルの下流に位置するマルチポート弁と、
前記マルチポート弁に流体的に結合され、前記保持コイルから前記マルチポート弁の第1のポートを介して前記試料を受け取るように配置されたポリペプチド結合カラムと、
グルカナーゼが前記ポリペプチド結合カラムに結合した前記ポリペプチドに注入されるように、前記マルチポート弁に流体的に結合され、前記ポリペプチド結合カラムに前記グルカナーゼを供給するように配置されたグルカナーゼ源と、
前記マルチポート弁に流体的に結合され、前記ポリペプチド結合カラムにキャリア溶液を供給するように配置されたキャリア溶液源であって、前記キャリア溶液は、前記ポリペプチド結合カラムから糖鎖を遊離させ、運ぶように適合されている、キャリア溶液源と、
前記ポリペプチド結合カラムの下流に配置された第1のポンプであって、糖鎖標識化試薬が前記糖鎖と混合されるように、前記糖鎖標識化試薬を、前記ポリペプチド結合カラムから運ばれた前記遊離した糖鎖の方に誘導する第1のポンプと、
前記ポリペプチド結合カラム及び前記第1のポンプの下流に配置された反応コイルであって、前記糖鎖標識化試薬と前記遊離した糖鎖とを含む前記混合物を受け取り、前記遊離した糖鎖の標識化を可能にするように適合されている、反応コイルと、
前記反応コイルの下流に配置され、前記反応コイルから前記混合物を受け取るように適合された冷却コイルであって、前記混合物の温度を低下するように構成されている、冷却コイルと、
前記冷却コイルと、前記マルチポート弁の第2のポートを介して前記マルチポート弁とに流体的に結合された糖鎖結合カラムであって、実質的に全ての前記標識糖鎖を結合するように構成されており、前記マルチポート弁の前記第2のポートを介して溶離バッファ溶液を受け取るように適合されており、前記溶離バッファ溶液は、結合した標識糖鎖を溶離し、前記溶離した標識糖鎖を前記糖鎖結合カラムの下流の糖鎖分析デバイスに運ぶ、糖鎖結合カラムと
を含む、閉じたシステム。
【請求項21】
前記容器はバイオリアクターを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記反応コイルの上流、並びに前記ポリペプチド結合カラム及び前記第1のポンプの下流に配置された真空装置をさらに含み、前記真空装置は、前記糖鎖標識化試薬と前記遊離した糖鎖とを含む前記混合物から気泡を実質的に除去するように構成されている、請求項20又は21に記載のシステム。
【請求項23】
前記ポリペプチド結合カラムの下流及び前記反応コイルの上流に配置された混合チャンバをさらに含み、前記混合チャンバは、前記標識糖鎖の溶離バッファ成分を、開始時のクロマトグラフィ移動相の条件に適合するように調整することを促進する、請求項20~22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記マルチポート弁は、12個のサテライトポート及び中心共通ポート弁を含む、請求項20~23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記ポリペプチド結合カラムは、プロテインAカラム、プロテインGカラム、プロテインA/Gカラム、プロテインLカラム、アミノ酸カラム、アビジンカラム、ストレプトアビジンカラム、炭水化物結合カラム、炭水化物カラム、グルタチオンカラム、ヘパリンカラム、疎水性相互作用カラム、イムノアフィニティカラム、ヌクレオチド/補酵素カラム、特殊カラム、及び固定化金属アフィニティクロマトグラフィ(IMAC)カラムからなる群から選択される、請求項20~24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記グルカナーゼは、エンドグリコシダーゼ、グリコサミダーゼ、及びO-グリカナーゼ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20~25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記エンドグリコシダーゼは、エンドグリコシダーゼD、エンドグリコシダーゼF(エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、及びエンドグリコシダーゼF3、並びにこれらの組み合わせ)、エンドグリコシダーゼH、エンドグリコシダーゼS、エンドグリコシダーゼM、及びエンドグリコシダーゼBからなる群から選択される、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記グリコサミダーゼは、グリコペプチダーゼ、ペプチドN-グリコシダーゼ、PNGase、N-グリコヒドロラーゼ、及びN-グリカナーゼからなる群から選択され、任意選択的に、前記PNGaseはペプチド:N-グリコシダーゼF(PNGF)である、請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記O-グリカナーゼは、endo-GalNAc-ase D又はendoGalNAc-ase Aである、請求項26に記載のシステム。
【請求項30】
前記糖鎖標識化試薬は、蛍光団又は発色団であり、
任意選択的に、前記蛍光団は、2-アミノ安息香酸、8-アミノナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸二ナトリウム塩、8-アミノナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム塩、及びアントラニルアミド、4-メトキシベンズアミジンからなる群から選択される、又は、前記発色団は、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、又はフェニルヒドラジンを含む、請求項20~29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記糖鎖結合カラムは、多孔質黒鉛状炭素カラムである、請求項20~30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記マルチポート弁の上流に配置された、前記ポリペプチドの前記試料を前記容器から前記保持コイルに圧送するための第2のポンプをさらに含む、請求項20~31のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項33】
(i)前記マルチポート弁の前記第1のポート及び前記第2のポートを選択的に開閉するように構成された、前記マルチポート弁に通信的に結合されたコントローラ、及び/又は、
(ii)前記反応コイルを摂氏約80度の温度に維持するように構成された、前記反応コイルに直接隣接して配置された加熱要素
をさらに含む、請求項20~32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
糖鎖分析のために試料をリアルタイムで調製するための閉じたシステムであって、
マルチポート弁と、
前記マルチポート弁の上流の保持コイルと、
前記マルチポート弁の第1のポートに流体的に結合され、前記マルチポート弁の前記第1のポートの下流にあるポリペプチド結合カラムと、
前記ポリペプチド結合カラムの下流に配置された反応コイルと、
前記反応コイルの下流に配置された冷却コイルと、
前記冷却コイルに流体的に結合し、前記冷却コイルの下流にある糖鎖結合カラムであって、前記マルチポート弁の第2のポートを介して前記マルチポート弁に流体的に結合される、糖鎖結合カラムと、
前記マルチポート弁に通信的に結合されたコントローラであって、メモリと、プロセッサと、前記メモリに記憶された論理とを含み、前記論理は、
(a)ポリペプチドを含有す
る試料を前記保持コイルに移動させ、
(b)前記試料が前記第1のカラムに流れ、それにより、前記試料中の実質的に全ての前記ポリペプチドが前記ポリペプチド結合カラムに結合するように、前記マルチポート弁を、前記保持コイルが前記マルチポート弁の前記第1のポートを介して前記ポリペプチド結合カラムに流体的に結合する第1の位置に配置し、
(c)前記マルチポート弁が前記第1の位置にあるとき、グルカナーゼを、前記保持コイルを介して前記ポリペプチド結合カラムに移動させ、前記結合されたポリペプチドから糖鎖を遊離させ、その後、キャリア溶液を、前記保持コイルを介して前記ポリペプチド結合カラムに移動させ前記ポリペプチド結合カラムを通過させて、それにより、実質的に全ての前記遊離した糖鎖を前記ポリペプチド結合カラムから出し、
(d)前記遊離した糖鎖を前記反応コイルの方に移動させ、
(e)糖鎖標識化試薬が前記遊離した糖鎖と混合するように、前記遊離した糖鎖が前記反応コイルに到達する前に、前記遊離した糖鎖の方に前記糖鎖標識化試薬を移動させ、
(f)前記遊離した糖鎖と前記糖鎖標識化試薬との前記混合物を前記反応コイルに移動させ、それにより、前記混合物中の前記糖鎖を標識し、
(g)前記混合物を前記反応コイルの下流に配置された冷却コイルに移動させ、前記冷却コイルは前記混合物の温度を低下させ、
(h)前記混合物を前記糖鎖結合カラムに移動させ、それにより、前記標識糖鎖は前記糖鎖結合カラムに結合し、
(i)前記マルチポート弁を、前記糖鎖結合カラムが前記マルチポート弁の前記第2のポートを介して溶離バッファ溶液源に流体的に結合される第2の位置に配置し、
(j)前記マルチポート弁が前記第2の位置にあるとき、溶離バッファ溶液を前記溶離バッファ溶液源から前記糖鎖結合カラムに移動させ前記糖鎖結合カラムを通過させ、それにより、前記糖鎖結合カラムに結合した糖鎖を溶離する
ように、前記プロセッサによって実行可能である、コントローラと
を含む、閉じたシステム。
【請求項35】
(A)前記糖鎖標識化試薬と前記遊離した糖鎖とを含む前記混合物から気泡を実質的に除去するように構成された、前記反応コイルの上流、並びに前記ポリペプチド結合カラム及び前記第1のポンプの下流に配置された真空装置、及び/又は、
(B)前記標識糖鎖の溶離バッファ成分を、開始時のクロマトグラフィ移動相の条件に適合するように調整することを促進する、前記ポリペプチド結合カラムの下流及び前記反応コイルの上流に配置された混合チャンバ
をさらに含む請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
(A)前記論理は、前記試料を、前記試料を収容する容器から前記保持コイルに移動させるように前記プロセッサによって実行可能であり、
(B)前記容器はバイオリアクターを含み、
(C)前記論理は、前記溶離した糖鎖を前記糖鎖結合カラムから糖鎖分析デバイスに移動させるように前記プロセッサによって実行可能であり、
(D)前記ポリペプチド結合カラムは、プロテインAカラム、プロテインGカラム、プロテインA/Gカラム、プロテインLカラム、アミノ酸カラム、アビジンカラム、ストレプトアビジンカラム、炭水化物結合カラム、炭水化物カラム、グルタチオンカラム、ヘパリンカラム、疎水性相互作用カラム、イムノアフィニティカラム、ヌクレオチド/補酵素カラム、特殊カラム、及び固定化金属アフィニティクロマトグラフィ(IMAC)カラムからなる群から選択され、
(E)前記グルカナーゼは、エンドグリコシダーゼ、グリコサミダーゼ、及びO-グリカナーゼ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択され、又は、
(F)上記の組み合わせである、
請求項34又は35に記載のシステム。
【請求項37】
前記(E)について、
(i)前記エンドグリコシダーゼは、endo D、エンドグリコシダーゼF(エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、及びエンドグリコシダーゼF3、並びにこれらの組み合わせ)、エンドグリコシダーゼH、endo S、endo M、及びendo Bからなる群から選択され、
(ii)前記グリコサミダーゼは、グリコペプチダーゼ、ペプチドN-グリコシダーゼ、PNGase、N-グリコヒドロラーゼ、及びN-グリカナーゼからなる群から選択され、任意選択的に、前記PNGaseは、ペプチド:N-グリコシダーゼF(PNGF)であり、及び/又は、
(iii)前記O-グリカナーゼは、endo-GalNAc-ase D又はendoGalNAc-ase Aである、
請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記糖鎖結合カラムは、多孔質黒鉛状炭素カラムである、請求項34~37のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項39】
前記糖鎖標識化試薬は、蛍光団又は発色団であり、任意選択的に、前記蛍光団は、2-アミノアクリドン、8-アミノナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸二ナトリウム塩、8-アミノナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム塩、及びアントラニルアミド、4-メトキシベンズアミジンからなる群から選択され、又は、前記発色団は、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、又はフェニルヒドラジンを含む、請求項34~38のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項40】
前記コントローラは、前記ポリペプチド結合カラムを摂氏約38度、任意選択的に、摂氏約80度の温度に維持するように構成されている、請求項34~39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項41】
前記
試料中の前記ポリペプチドは、治療的ポリペプチドである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法又は請求項20~40のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項42】
前記治療的ポリペプチドは、抗体又はその抗原結合フラグメント、抗体又は抗体フラグメントの誘導体、及び融合ポリペプチドからなる群から選択され、
任意選択的に、前記抗体は、インフリキシマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブ、セツキシマブ、ラニビズマブ、パリビズマブ、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブ、アラシズマブペゴル、ald518、アレムツズマブ、アリロクマブ、アレムツズマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブマフェナトクス、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ、アルチヌマブ、アトリズマブ、アトロリムマブ、トシリズマブ、バピヌズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビバツズマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブリナツモマブ、ブロソズマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブメルタンシン、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ、カツマキソマブ、cc49、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、クレネズマブ、cr6261、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダラツムマブ、デミシズマブ、デノスマブ、デツモマブ、ドルリモマブアリトクス、ドロジツマブ、デュリゴツマブ、デュピルマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エナバツズマブ、エンリモマブペゴル、エノキズマブ、エノキズマブ、エノチクマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブシツキセタン、エピラツズマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、エトロリズマブ、エキシビビルマブ、エキシビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファルレツズマブ、ファシヌマブ、fbta05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガリキシマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、gs6624、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イクルクマブ、イゴボマブ、イムシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブラブタンシン、インフリキシマブ、インテツムマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レルデリムマブ、レキサツムマブ、リビビルマブ、リゲリズマブ、リンツズマブ、リリルマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツズマブ、マスリモマブ、マブリリムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モガムリズマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、モキセツモマブパスドトクス、ムロモナブ-cd3、ナコロマブタフェナトクス、ナミルマブ、ナプツモマブエスタフェナトクス、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オデュリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴボマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パジバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、パキセリズマブ、ピジリズマブ、ピンツモマブ、プラクルマブ、ポネズマブ、プリリキシマブ、プリツムマブ、PRO140、クイリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロレデュマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サマリズマブ、サリルマブ、サツモマブペンデチデ、セクキヌマブ、セビルマブ、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、シルクマブ、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スビズマブ、タバルマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テプロツムマブ、テゼペルマブ、TGN1412、トレメリムマブ、チシリムマブ、チルドラキズマブ、チガツズマブ、TNX-650、トシリズマブ、トラリズマブ、トシツモマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、TRBS07、トレガリズマブ、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バパリキシマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビジリズマブ、ボロシキシマブ、ボルセツズマブマフォドチン、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ジラリムマブ、ゾリモマブアリトクス、及び表1に示す抗体からなる群から選択され、又は、
前記治療的ポリペプチドは、糖タンパク質、CDポリペプチド、HER受容体ポリペプチド、細胞接着ポリペプチド、成長因子ポリペプチド、インスリンポリペプチド、インスリン関連ポリペプチド、凝固ポリペプチド、凝固関連ポリペプチド、アルブミン、IgE、血液型抗原、コロニー刺激因子、受容体、神経栄養因子、インターフェロン、インターロイキン、ウイルス抗原、リポタンパク質、カルシトニン、グルカゴン、心房性ナトリウム利尿因子、肺表面活性剤、腫瘍壊死因子α及びβ、エンケファリナーゼ、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、DNAse、インヒビン、アクチビング、インテグリン、プロテインA、プロテインD、リウマチ因子、免疫毒素、骨形成タンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ、表面膜ポリペプチド、崩壊促進因子、AIDSエンベロープ、輸送ポリペプチド、ホーミング受容体、アドレシン、調節ポリペプチド、イムノアドヘシン、ミオスタチン、TALLポリペプチド、アミロイドポリペプチド、胸腺間質性リンパ球新生因子、RANKリガンド、c-キットポリペプチド、TNF受容体、及びアンジオポエチン、及びそれらの生物学的に活性なフラグメント、アナログ、又はバリアントからなる群から選択されるポリペプチドである、請求項41に記載の方法又はシステム。
【請求項43】
請求項20又は34に記載の閉じたシステムによって実施されるオンラインリアルタイムアッセイを監視する方法であって、
前記閉じたシステム内の条件が、所定の性能閾値を満たすかどうかを判断する工程と、
前記閉じたシステム内の前記条件が、前記所定の性能閾値を満たしていないと判断した場合に、前記閉じたシステム内の前記条件が、前記所定の性能閾値を満たすまで少なくとも1つの細胞培養構成要素を調整する工程と
を含み、
任意選択的に、少なくとも1つの細胞培養構成要素を調整する工程は、pH、圧力、温度、媒体流、媒体含有量、ガス供給戦略、撹拌、添加剤含有量、添加剤供給量、又は潅流量のうちの1つ以上を調整することを含む、方法。
【請求項44】
請求項20又は34に記載の閉じたシステムを使用して生産時間を延長する方法であって、
前記閉じたシステム内の条件が、所定の性能閾値を満たすかどうかを判断する工程と、
前記閉じたシステム内の前記条件が、前記所定の性能閾値を満たしていないと判断した場合に、前記閉じたシステム内の前記条件が、前記所定の性能閾値を満たすまで少なくとも1つの細胞培養構成要素を調整する工程と
を含み、
任意選択的に、少なくとも1つの細胞培養構成要素を調整する工程は、pH、圧力、温度、媒体流、媒体含有量、ガス供給戦略、撹拌、添加剤含有量、添加剤供給量、又は潅流量のうちの1つ以上を調整することを含む、方法。
【請求項45】
リスクを軽減する方法であって、
請求項20又は34に記載の前記閉じたシステムの運転に関連するプロセス及び製品品質データを決定する工程と、
前記プロセス及び製品品質データが、所定のリスク閾値を満たすかどうかを判断する工程と、
前記プロセス及び製品品質データが、前記所定のリスク閾値を満たすかどうかに基づき、前記閉じたシステムの運転を継続するかどうかを判断する工程と
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年8月1日に出願された「Systems and Methods for Performing a Real-Time Glycan Assay of a Sample」という名称の米国仮特許出願第62/539,798号明細書の優先権の利益を主張し、その開示全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、全般的に、糖鎖アッセイに関し、より具体的には、試料のリアルタイム糖鎖アッセイの実施に関する。
【0003】
配列表
本願は、電子フォーマットの配列表とともに出願されている。「51970_Seqlisting.txt」という名称のファイルとして提出された配列表は、2018年7月31日に作成され、サイズは263,980バイトである。電子フォーマットの配列表における情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
アッセイは、一般に、薬物、生化学的物質、又は細胞などの分析物の1つ以上の属性を定量化するために実施される。このようなアッセイの一例は、試料の重要品質特性(CQA:Critical Quality Attribute)(目標製品品質プロファイル(QTPP:Quality Target Product Profile)により特定される)を検出し、定量化することができる多属性法(MAM:multi-attribute method)アッセイである(Development of a quantitative mass spectrometry multi-attribute method for characterization,quality control testing and disposition of biologics.Rogers RS,Nightlinger NS,Livingston B,Campbell P,Bailey R,Balland A.MAbs.2015;7(5):881-90)。MAMアッセイは、例えば、高分子遊離試験(LMRT)実験室内で実施される手動操作プロセスである。MAMは、液体クロマトグラフィ(LC)-質量分析法(MS)をベースとしたペプチドマッピング法であり、以下の3工程を有する:(1)試料調製(例えば、ポリペプチド変性、還元、アルキル化、及び消化を含み得る)、(2)LCによる消化ポリペプチドの分離及びそれらのMSによる検出、並びに(3)目的CQAに関するデータの分析及び参照基準と比較した場合の新たな信号(即ちピーク)の検出。
【0005】
CQAは、特定の値又は範囲値内に存在する化学的、物理的又は生物学的特性である。例えば、ポリペプチド治療的高分子において、物理的属性及びアミノ酸(ポリペプチドの構成単位(building block))の修飾は重要なCQAであり、製造中及び製造後、並びに薬物開発中に監視される。ポリペプチド全体又は一部のピークサイズ及びピーク形状の変化を追跡する従来の分析アッセイとは異なり、MAMはアミノ酸レベルにおける特定のCQAを検出する。
【0006】
治療用ポリペプチドの糖鎖プロファイルの分析は、多くの場合、CQA、例えば、である。これはバイオ後続品の場合に特に当てはまり、バイオ後続品のグリコシル化プロファイルは、先行製品のグリコシル化プロファイルと同等でなければならない。糖鎖アッセイを実施するための既知のプロセスでは、製品の試料を、分析のために、手動で収集し、試験室に届け、手動で濃縮し、精製し、例えば、調製することが必要である。これらの既知の手動操作プロセスの典型的な所要時間は約5日である。この時間経過によりコストがかさむとともに、薬物(先行製品及びバイオ後続品)の開発及び結果的な薬物発売が遅延する。薬物開発中、例えば、最適なグリコシル化のための培養条件を最適化するときに例えば5日の遅れが蓄積し、重要且つ新規のポリペプチド医薬品を患者に届けることを妨げる。更に、このような遅延により、製造後にプロファイルが決定されることとなり、製造パラメータをリアルタイムで調整することとは対照的に、仕様を満たさない製品を再製造することになる。したがって、糖鎖分析を、こうした分析のための試料調製を含め、促進するための効率的且つより迅速な方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Development of a quantitative mass spectrometry multi-attribute method for characterization,quality control testing and disposition of biologics.Rogers RS,Nightlinger NS,Livingston B,Campbell P,Bailey R,Balland A.MAbs.2015;7(5):881-90
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、糖鎖分析のために試料をリアルタイムで調製する方法を提供する。本方法は、(a)ポリペプチドを含む試料を保持コイルを介してポリペプチド結合カラムに移動させる工程と、(b)試料中のポリペプチドをポリペプチド結合カラムに結合させる工程と、(c)グリカナーゼを保持コイルを介してポリペプチド結合カラムに移動させ、結合されたポリペプチドから糖鎖を遊離させる工程と、(d)キャリア溶液を、保持コイルを介してポリペプチド結合カラムに、及びポリペプチド結合カラムを通して移動させ、それにより、遊離した糖鎖を第1のポリペプチドカラムから出す工程と、(e)ポリペプチド結合カラムの下流で、遊離した糖鎖を糖鎖標識化試薬と混合する工程と、(f)遊離した糖鎖と糖鎖標識化試薬との混合物をポリペプチド結合カラムの下流に配置された反応コイルに移動させる工程と、(g)遊離した糖鎖と糖鎖標識化試薬との混合物を反応コイル内でインキュベートし、それにより糖鎖を標識する工程と、(h)混合物を反応コイルの下流に配置された冷却コイルに移動させる工程と、(i)冷却コイルにより混合物の温度を低減させる工程と、(j)冷却された混合物を冷却コイルの下流に配置された糖鎖結合カラムに移動させる工程と、(k)標識糖鎖を糖鎖結合カラムに結合する工程と、(l)溶離バッファを糖鎖結合カラムに及び糖鎖結合カラムを通して移動させ、糖鎖結合カラムに結合した標識糖鎖を溶離する工程と、を含む。
【0009】
本開示の別の態様は、マルチポート弁と、マルチポート弁の上流の保持コイルと、マルチポート弁の第1のポートに流体的に結合され、マルチポート弁の第1のポートの下流にあるポリペプチド結合カラムと、ポリペプチド結合カラムの下流に配置された反応コイルと、反応コイルの下流に配置された冷却コイルと、冷却コイルの下流に配置され、マルチポート弁の第2のポートに流体的に結合され、マルチポート弁の第2のポートの下流にある糖鎖結合カラムとを含む閉じたシステムにおいて糖鎖分析のために試料をリアルタイムで調製する方法を提供する。本方法は、(a)閉じたシステムに通信的に結合されたコントローラによって、ポリペプチドを含む試料を、ポリペプチドを収容する容器から保持コイルに移動させることと、(b)試料がポリペプチド結合カラムに流れ、それにより、試料中の実質的に全てのポリペプチドが第1のポリペプチドカラムに結合するように、コントローラによって、マルチポート弁を、保持コイルがマルチポート弁の第1のポートを介してポリペプチド結合カラムに流体的に結合する第1の位置に配置することと、(c)マルチポート弁が第1の位置にあるとき、コントローラによって、グリカナーゼを保持コイルを介してポリペプチド結合カラムに移動させ、結合されたポリペプチドから糖鎖を遊離させることと、その後、コントローラによって、キャリア溶液を、保持コイルを介してポリペプチド結合カラムに、及びポリペプチド結合カラムを通して移動させ、それにより、遊離した糖鎖をポリペプチド結合カラムから出すことと、(d)コントローラによって、遊離した糖鎖を反応コイルの方に移動させることと、(e)糖鎖標識化試薬が遊離した糖鎖及び酵素と混合するように、コントローラによって、遊離した糖鎖が反応コイルに到達する前に遊離した糖鎖の方に糖鎖標識化試薬を移動させることと、(f)コントローラによって、混合物を反応コイルに移動させ、それにより、混合物中の糖鎖を標識することと、(g)コントローラによって、混合物を反応コイルの下流に配置された冷却コイルに移動させ、それにより、混合物の温度を低減することと、(h)コントローラによって、冷却された混合物を冷却コイルの下流に配置された糖鎖カラムに移動させ、それにより、実質的に全ての標識糖鎖が糖鎖結合カラムに結合することと、(i)コントローラによって、マルチポート弁を、糖鎖結合カラムがマルチポート弁の第2のポートを介して溶離バッファ溶液源に流体的に結合される第2の位置に配置することと、(j)マルチポート弁が第2の位置にあるとき、コントローラによって、溶離バッファを溶離バッファ源から糖鎖結合カラムに、及び糖鎖結合カラムを通して移動させ、それにより、糖鎖結合カラムに結合した糖鎖を溶離することと、(k)コントローラによって、溶離した糖鎖を糖鎖分析デバイスに移動させることと、を含む。
【0010】
本開示の別の態様は、糖鎖分析のために試料をリアルタイムで調製するための閉じたシステムを提供する。閉じたシステムは、マルチポート弁と、マルチポート弁の上流の保持コイルと、マルチポート弁の第1のポートに流体的に結合され、マルチポート弁の第1のポートの下流にあるポリペプチド結合カラムと、ポリペプチド結合カラムの下流に配置された反応コイルと、反応コイルの下流に配置された冷却コイルと、冷却コイルに流体的に結合し、冷却コイルの下流にある糖鎖結合カラムであって、マルチポート弁の第2のポートを介してマルチポート弁に流体的に結合される、糖鎖結合カラムと、マルチポート弁に通信的に結合されたコントローラと、を含む。コントローラは、メモリと、プロセッサと、メモリに記憶された論理とを含み、論理は、(a)ポリペプチドを含有する製品の試料を保持コイルに移動させ、(b)試料が第1のカラムに流れ、それにより、試料中の実質的に全てのポリペプチドがポリペプチド結合カラムに結合するように、マルチポート弁を、保持コイルがマルチポート弁の第1のポートを介してポリペプチド結合カラムに流体的に結合する第1の位置に配置し、(c)マルチポート弁が第1の位置にあるとき、グルカナーゼを保持コイルを介してポリペプチド結合カラムに移動させ、結合されたポリペプチドから糖鎖を遊離させ、その後、キャリア溶液を、保持コイルを介してポリペプチド結合カラムに、及びポリペプチド結合カラムを通して移動させ、それにより、実質的に全ての遊離した糖鎖をポリペプチド結合カラムから出し、(d)遊離した糖鎖を反応コイルの方に移動させ、(e)糖鎖標識化試薬が遊離した糖鎖と混合するように、遊離した糖鎖が反応コイルに到達する前に遊離した糖鎖の方に糖鎖標識化試薬を移動させ、(f)遊離した糖鎖と糖鎖標識化試薬との混合物を反応コイルに移動させ、それにより、混合物中の糖鎖を標識し、(g)混合物を反応コイルの下流に配置された冷却コイルに移動させ、冷却コイルは混合物の温度を低減させ、(h)混合物を糖鎖結合カラムに移動させ、それにより、標識糖鎖は糖鎖結合カラムに結合し、(i)マルチポート弁を、糖鎖結合カラムがマルチポート弁の第2のポートを介して溶離バッファ溶液源に流体的に結合される第2の位置に配置し、(j)マルチポート弁が第2の位置にあるとき、溶離バッファ溶液を溶離バッファ溶液源から糖鎖結合カラムに、及び糖鎖結合カラムを通して移動させ、それにより、糖鎖結合カラムに結合した糖鎖を溶離するように、プロセッサによって実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の教示に従い組み立てられたオンラインリアルタイム糖鎖アッセイを実施するためのシステムの概略図である。
【
図2】
図1に示されるシステムのコントローラの概略図である。
【
図3A】
図1のシステムの有効性を32日の生産時間にわたり監視した研究結果を示すグラフである。
【
図3B】
図1のシステムの有効性を32日の生産時間にわたり監視した研究結果を示すグラフである。
【
図3C】
図3Aの4日間にわたる結果のスナップショットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本開示の教示に従い組み立てられたシステム100の概略図を示す。実験室(例えば、高分子遊離試験実験室)に又はその中に位置し得るシステム100は、以下に更に詳細に記載するように、糖鎖分析のためにポリペプチドを含有する製品の試料を自動的に又は実質的に自動的に調製し、その試料の糖鎖アッセイを自動的に実施するための閉じたシステムである。システム100を使用して本プロセスを自動化する(又は実質的に自動化する)ことによって、アッセイを、全プロセスをわずか数時間(例えば、2~3時間)で実施することができ且つ所望の結果を得ることができるように、リアルタイムで(又は実質的にリアルタイムで)実施することができ、これは従来知られている手動操作プロセスに通常必要な5日に比べると大幅な向上である。更に、システム100を用いるプロセスの閉じた性質により滅菌条件を維持する。
【0013】
この態様では、ポリペプチドは治療的ポリペプチドである。治療的ポリペプチドについては以下で論じる。
【0014】
図1に示されるシステム100は、概して、マルチポート弁104と、保持コイル108と、第1のカラム112と、反応コイル120と、第2のカラム124と、コントローラ132とを含む。
図1に示される態様では、システム100はまた、容器136と、廃棄物チャンバ138と、第1のポンプ140と、酵素源142と、第1のバッファ源144と、第2のポンプ146と、第2のバッファ源148と、真空装置150と、冷却コイル152と、第3のバッファ源154と、第4のバッファ源156と、混合チャンバ157と、糖鎖を分析するための分析デバイス158とを含む。しかしながら、他の態様においては、システム100はこれらの構成要素の1つ以上を含まなくてもよい。一例として、システム100は、容器136、真空装置150、冷却コイル152、及び/又は分析デバイス158を含まなくてもよい。いずれにせよ、以下に更に詳細に記載するように、所望するときにシステム100の構成要素間の流体連通を容易にするように、概して、従来の配管がシステム100の各構成要素間に延びる。
【0015】
マルチポート弁104は、概して、システム100の各種構成要素間の流体連通を制御するように構成されている。この態様では、マルチポート弁104は、12個のサテライトポート及び中心共通ポートを有する弁である。換言すると、マルチポート弁104は、中心ポート160と、中心ポート160に選択的に流体的に結合される12個のサテライトポート164~175とを有する。マルチポート弁104は、中心ポート160をそれぞれ12個の異なるサテライトポート164~175と流体的に結合する12個の異なる位置間で移動可能である(そのうちのいくつかは
図1のシステム100の運転において利用されない)。他の態様においては、マルチポート弁104は、より多い又はより少ないサテライトポートを有することができる、異なるタイプの弁であり得る、又は1つ以上の異なる弁(それぞれが1つ以上のポートを有する)に置換することができる。一例として、マルチポート弁104は、コントローラ132に別々に接続され且つコントローラ132によって制御される複数の単一ポート弁に置換することができ、単一ポート弁のそれぞれはサテライトポート164~175の1つを効果的に置換する。
【0016】
容器136は、概して、調製され、分析される糖鎖を有するポリペプチドを含有する製品を保持する又は貯蔵するように構成されている。この態様における容器136は、製品を保持する又は貯蔵するバイオリアクターの形態をとる。しかしながら、その代わりに、他の態様においては、容器136は、フラスコ、プレート等などの細胞培養容器の形態をとることができる。弁104が、容器136内に収容された製品の試料を所望するときに容器136から得ることができるように、容器136は、配管の導管180を介して弁104のサテライトポート164に流体的に結合されている。
【0017】
保持コイル108は弁104の上流に位置し、配管の導管184を介して弁104の中心ポート160に流体的に結合されている。したがって、保持コイル108は、中心ポート160がサテライトポート164に流体的に結合される第1の位置に弁104があるとき、弁104を介して容器136から製品の試料を受け取るように配置されている。
【0018】
第1のポンプ140は保持コイル108の上流に位置し、配管の導管188を介して保持コイル108に流体的に結合されている。以下に更に詳細に記載するように、この態様におけるポンプ140は、一般に、各種材料を得るのに役立つように、且つそれら材料をシステム100の各種構成要素に及び各種構成要素間で移動するのに役立つように構成されたシリンジポンプの形態をとる。他の態様においては、ポンプ140は、異なるタイプのポンプであり得る並びに/又は複数のポンプ140を異なる材料に対して及び/若しくは異なる構成要素に材料を出力するために使用することができる。
【0019】
弁192は、第1のポンプ140と保持コイル108との間に位置し、第1のポンプ140を保持コイル108に選択的に流体的に結合する。より具体的には、弁192は、ポンプ140が保持コイル108に流体的に結合される第1の位置と、ポンプ140が保持コイル108から流体的に分離される第2の位置との間で移動可能である。換言すると、ポンプ140は、弁192の位置に応じて保持コイル108に選択的に流体的に結合される。
【0020】
所望するとき、及び弁104が第1の位置(中心ポート160がサテライトポート164に流体的に結合される)にあり、弁192が第1の位置にあるとき、第1のポンプ140は、弁104を介した容器136から保持コイル108への製品の試料の移動を促進することができる。製品の試料は、更に、結合のために第1のカラム112に送られ得る。
【0021】
第1のカラム112は弁104の下流に位置し、配管の導管196を介して弁104のサテライトポート165に流体的に結合された入口を有する。したがって、中心ポート160がサテライトポート165に流体的に結合される第2の位置に弁104があるとき、第1のポンプ140は、製品の試料を保持コイル108から弁104を介して第1のカラム112へと移動させる(例えば、圧送する、送る)ことができる。第1のカラム112は、第1のカラム112を廃棄物チャンバ138又は反応コイル120のいずれかと選択的に流体的に接続するように構成された三方弁198に流体的に結合される出口を有する。より具体的には、三方弁198は、第1のカラム112が廃棄物チャンバ138に流体的に結合され、真空装置150から流体的に分離される第1の位置と、第1のカラム112が真空装置150に流体的に結合され、廃棄物チャンバ138から流体的に分離される第2の位置との間で移動可能である。この態様では、(例えば、コントローラ132による、弁198に電流を適用することによる)三方弁198の作動に応答して三方弁198が第1の位置から第2の位置にのみ移動するように、三方弁198の第1の位置がデフォルト位置である。しかしながら、他の態様においては、三方弁198の第2の位置がデフォルト位置であってもよい。いずれにせよ、第1のカラム112が試料を受け取るとき、第1のカラム112はそれを通って試料が流れる際に、試料の実質的に全てのポリペプチドを結合するように構成されており、三方弁198はその第1の位置にある。このようにして、第1のカラム112は、試料中のポリペプチドを、三方弁198を介して廃棄物チャンバ138に送られ得る試料の残りから実質的に分離する。
【0022】
本明細書においては、ポリペプチド結合カラムとも呼ぶことができる第1のカラム112は、プロテインAカラム、プロテインGカラム、プロテインA/Gカラム、プロテインLカラム、アミノ酸カラム、アビジンカラム、ストレプトアビジンカラム、炭水化物結合カラム、炭水化物カラム、グルタチオンカラム、ヘパリンカラム、疎水性相互作用カラム、イムノアフィニティカラム、ヌクレオチド/補酵素カラム、特殊カラム、及び固定化金属アフィニティクロマトグラフィ(IMAC)カラムからなる群から選択される。例えば、サブクラス1、2、又は4、IgM、IgA、又はIgEのヒトIgG(及びヒトVH3ファミリーのヒトFc部分及び/又はFab領域を含む)であるポリペプチドの場合にはプロテインAカラムが有用である。プロテインGは、サブクラス1~4のヒトIgGを精製するために使用することができる。融合タンパク質はプロテインA及びプロテインGの結合部位を提供するので、組換え融合タンパク質A/Gもまた、これらのヒト抗体のクラス全てを精製するために使用することができる。したがって、プロテインA/G融合タンパク質は、ヒトIgG、IgA、IgE、及びIgMを精製するために使用することができる。更に、プロテインLは、標的抗体が適切なカッパ(κ)サブタイプ軽鎖(即ち、VκI、VκIII、及びVκIVサブタイプ)を有するという条件で、ヒトIgG、IgM、IgA、IgE及びIgDを精製するために使用することができ、プロテインLは抗体の可変(V)鎖に結合するので、プロテインLは、適切なκ鎖サブタイプも有するFabフラグメント及びscFvフラグメントを精製するためにも使用することができる。
【0023】
試料の実質的に全てのポリペプチドが第1のカラム112に結合した後、配管の導管200を介して弁104のサテライトポート166に流体的に結合された酵素源142によって、グルカナーゼを含有する(例えば、からなる)溶液がシステム100に供給される。この態様では、グルカナーゼを含有する溶液は、弁104が、中心ポート160がサテライトポート166に流体的に結合される第3の位置にあるとき、且つ弁192が第1の位置にあるときに、弁104を通って及びポンプ140の支援を得て保持コイル108に移動する。更に、グルカナーゼを含有する溶液は、弁104が第2の位置(中心ポート160がサテライトポート165に流体的に結合される)にあるとき、且つ弁192が第1の位置にあるとき、弁104を通って及び再びポンプ140の支援を得て保持コイル108から第1のカラム112に移動する。しかしながら、他の態様においては、グルカナーゼを含有する溶液は、第1のカラム112に異なる手法で(例えば、ポンプ140の支援なしに第1のカラム112に直接的に)供給され得る。いずれにせよ、グルカナーゼを含有する溶液が第1のカラム112に到達すると、溶液中のグルカンス(glucanses)は第1のカラム112に結合したポリペプチドを温浸する。温浸は、一般に、第1のカラム112をインキュベートすることによって促進され、この態様では、第1のカラム112を約35℃~約40℃の温度に、より好ましくは、約37℃の温度に維持することによって行われる。この目的のため、第1のカラム112を所望の温度に維持するのに必要な熱を供給するために、加熱要素(例えば、加熱コイル、誘導加熱器、ヒートポンプ、カートリッジヒータ)を第1のカラム112に接続することができる。いずれにせよ、溶液中のグルカンス(glucanses)での温浸は、結合したポリペプチドの糖鎖を、結合したポリペプチドから溶液中に遊離する役割を果たすと理解される。
【0024】
溶液中のグルカナーゼは、エンドグリコシダーゼ、グリコサミダーゼ(glycosamidase)、及びO-グリカナーゼ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。グルカナーゼがエンドグリコシダーゼである又はエンドグリコシダーゼを含む場合、エンドグリコシダーゼは、エンドグリコシダーゼD、エンドグリコシダーゼF(エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、及びエンドグリコシダーゼF3、並びにこれらの組み合わせ)、エンドグリコシダーゼH、エンドグリコシダーゼS、エンドグリコシダーゼM、及びエンドグリコシダーゼBからなる群から選択されることが好ましい。グルカナーゼがグリコサミダーゼである又はグリコサミダーゼを含む場合、グリコサミダーゼは、グリコペプチダーゼ、ペプチドN-グリコシダーゼ、PNGase、N-グリコヒドロラーゼ、及びN-グリカナーゼからなる群から選択されることが好ましい。グルカナーゼがPNGaseである又はPNGaseを含む場合、PNGaseは、ペプチド:N-グリコシダーゼF(PNGF)を含むことが好ましい。グルカナーゼがO-グリカナーゼである又はO-グリカナーゼを含む場合、O-グリカナーゼは、endo-GalNAc-ase D又はendoGalNAc-ase Aであることが好ましい。
【0025】
結合されたポリペプチドの糖鎖を溶液中に遊離させた(又は実質的に遊離させた)後、且つ三方弁198がその第2の位置にある(又は移動した)状態で、遊離した糖鎖(グルカナーゼを含む溶液中の)が第1のカラム112から出るように、キャリア溶液(例えば、脱イオン(DI)水)を第1のカラム112に及び第1のカラム112を通して移動させる。キャリア溶液は、概して、配管の導管204を介して弁104のサテライトポート167に流体的に結合される第1のバッファ源144によってシステム100に供給される。この態様では、キャリア溶液は、弁104が、中心ポート160がサテライトポート167に流体的に結合される第4の位置にあるとき、且つ弁192が第1の位置にあるときに、弁104を通って及びポンプ140の支援を得て保持コイル108に移動する。更に、キャリア溶液は、弁104が第2の位置(中心ポート160がサテライトポート165に流体的に結合される)にあるとき、且つ弁192が第1の位置にあるとき、弁104を通って及び再びポンプ140の支援を得て保持コイル108から第1のカラム112に及び第1のカラム112を通って移動する。しかしながら、他の態様においては、キャリア溶液は、第1のカラム112に異なる手法で(例えば、第1のカラム112に直接的に及び/又はポンプ140の支援なしに)供給され得る。いずれにせよ、キャリア溶液は、遊離した糖鎖(及びグルカナーゼ)を第1のカラム112を通して運び又は移動させ、第1のカラム112から出すと理解される。
【0026】
第2のポンプ146は、第1のカラム112の下流に位置している。以下に更に詳細に記載するように、第1のポンプ140と同様に、本態様における第2のポンプ146は、一般に、各種材料を得るのに役立つように、且つそれら材料をシステム100の各種構成要素に及び各種構成要素間で移動するのに役立つように構成されたシリンジポンプの形態をとる。他の態様においては、ポンプ146は、異なるタイプのポンプであり得る並びに/又は複数のポンプ146を異なる材料に対して及び/又は異なる構成要素に材料を出力するために使用することができる。
【0027】
弁208は、第2のポンプ146を、第1のカラム112の下流の導管212に選択的に流体的に結合するために、第2のポンプ146と、第1のカラム112の下流に位置する配管の導管212との間に位置している。より具体的には、弁208は、ポンプ140が保持コイル108に流体的に結合される第1の位置と、ポンプ140が保持コイル108から流体的に分離される第2の位置との間で移動可能である。換言すると、ポンプ140は、弁192の位置に応じて保持コイル108に選択的に流体的に結合される。
【0028】
本態様における第2のポンプ146はまた、第2のバッファ源148に流体的に結合され、第2のバッファ源148は、例えば、発蛍光団(例えば、2-アミノ安息香酸、8-アミノナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸二ナトリウム塩、8-アミノナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム塩、及びアントラニルアミド、4-メトキシベンズアミジンからなる群から選択される)又は発色団(例えば、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、又はフェニルヒドラジン)などの糖鎖標識化試薬を供給するように構成されている。したがって、弁208が第1の位置にあるとき、第2のポンプ146は、糖鎖標識化試薬を、導管212を通し、第1のカラム112から配管の導管216を通して運ばれる遊離した糖鎖の方に移動させる(例えば、圧送する、誘導する)ことができる。したがって、糖鎖標識化試薬は遊離した糖鎖と、第1のカラム112の下流の位置で混合される。
【0029】
真空装置150は、第1のカラム112及び第2のポンプ146両方の下流に位置している。真空装置150は、配管の導管220を介して導管216(遊離した糖鎖を第1のカラム112から運ぶ)と導管212(糖鎖試薬を第2のポンプ146から運ぶ)との両方に流体的に結合される。したがって、真空装置150は、遊離した糖鎖と糖鎖試薬との混合物を受け取るように配置されている。混合物が真空装置150を通って流れる際、真空装置150は、従来技術で知られるようにシステム100の下流構成要素の性能を妨げる可能性のある(例えば、勾配送達(gradient delivery)を妨げることにより)ガス(例えば、気)泡を混合物から除去する(即ち、混合物を脱気する)。
【0030】
反応コイル120は、真空装置150(したがって、同様に第1のカラム112及び第2のポンプ146)の下流に位置している。反応コイル120が、糖鎖標識化試薬と遊離した糖鎖とを含む混合物を受け取るように配置されるように、反応コイル120の入口224は、配管の導管230を介して真空装置150の出口228に流体的に結合する。反応コイル120は更に、一般に、遊離した糖鎖の標識化(例えば、蛍光標識化)を促進するように構成されている。これは一般に、反応コイル120内の混合物をインキュベートすることによって行われる。この目的のために、この態様における反応コイル120は、反応コイル120に接続された(例えば、取り囲み、直接隣接して配置された)加熱要素232によって加熱される。換言すると、加熱要素232は、標識化を促進するために、熱、好ましくは、約75℃~約85℃の温度を有する熱、より好ましくは、約80℃の温度を有する熱を反応コイル120に加えることができる。加熱要素232は、例えば、加熱コイル、誘導加熱器、ヒートポンプ、カートリッジヒータ、電気抵抗ワイヤ、又は反応コイル120の1つ以上の部分を加熱するのに適した他の要素の形態をとることができる。
【0031】
本態様においてステンレス鋼で作製される冷却コイル152は、反応コイル120の下流に位置し、反応コイル120に流体的に結合される。より具体的には、冷却コイル152が、糖鎖標識化試薬と遊離された(且つここでは標識された)糖鎖とを含む混合物を受け取るように配置されるように、冷却コイル152の入口234は、配管の導管242を介して反応コイル120の出口238に流体的に結合する。冷却コイル152は、(例えば、コントローラ132によって)反応コイル120が維持する温度よりも低い温度に維持される。したがって、冷却コイル152は、それを通って混合物が流れる際に混合物の温度を低下させるだけでなく、混合物を薄め、それにより、混合物の有機物含有量を低減させる。そうすることにより、反応コイル120は、糖鎖が第2のカラムに結合する能力を高める。
【0032】
本明細書では糖鎖結合カラム124とも呼ばれる第2のカラム124は、好ましくは、多孔質黒鉛状炭素カラムの形態をとり、冷却コイル152の下流に位置し、導管246を介して冷却コイル152に流体的に結合される。したがって、第2のカラム124は、冷却され、希釈した混合物を冷却コイル152から受け取るように配置されている。冷却コイル152から第2のカラム124への、冷却され、希釈した混合物の移動を促進するために、第2のポンプ146は、弁208が第1の位置にあるとき、バッファ溶液(例えば、0.1%のTFAを含むアセトニトリル(5%)溶液で形成された)を、弁208に流体的に結合された第3のバッファ源154から、導管212、220、230、234、及び246を通して第2のカラム124に移動させることができる。いずれにせよ、第2のカラム124が冷却コイル152から混合物を受け取ると、第2のカラム124は、それを通って混合物が流れる際、混合物の標識糖鎖を結合するように構成されている。このようにして、第2のカラム124は混合物中の標識糖鎖を、廃棄所(図示せず)に送られ得る残りの混合物から分離する。
【0033】
第2のカラム124はまた、配管の導管250を介して弁104のサテライトポート169に流体的に結合される。この態様では、導管250は第2のカラム124の上流の導管246に合流する又は交差するが、他の態様においては、その代わりに、導管250は導管246をバイパスし、第2のカラム124に直接接続することができる。いずれにせよ、溶離バッファ溶液(例えば、0.1%のTFAを含むアセトニトリル(5%)溶液で形成された)は、結合し、標識された糖鎖の実質的に全てを溶離するように、導管250を介して、第2のカラム124に及び第2のカラム124を通って移動する。溶離バッファ溶液は、概して、配管の導管254を介して弁104のサテライトポート168に流体的に結合される第4のバッファ源156によって供給される。この態様では、溶離バッファ溶液は、弁104が、中心ポート160がサテライトポート168に流体的に結合される第5の位置にあるとき、且つ弁192が第1の位置にあるときに、弁104を通って及びポンプ140の支援を得て第4のバッファ源156から保持コイル108に移動する。更に、溶離バッファ溶液は、弁104が、中心ポート160がサテライトポート169に流体的に結合される第6の位置にあるとき、且つ弁192が第1の位置にあるとき、弁104を通って及び再びポンプ140の支援を得て保持コイル108から第2のカラム124に及び第2のカラム124を通って移動する。しかしながら、他の態様においては、溶離バッファ溶液は、第2のカラム124に異なる手法で(例えば、第2のカラム124に直接的に及び/又はポンプ140の支援なしに)供給され得る。いずれにせよ、供給される溶離バッファ溶液は第2のカラム124に結合した糖鎖を実質的に溶離し、それらの溶離した糖鎖を第2のカラム124内を通して運び又は移動させ、第2のカラム124から出す。
【0034】
この態様では、溶離バッファ溶液は糖鎖を第2のカラム124から、第2のカラム124の下流に位置し、配管の導管258を介して第2のカラム124に流体的に結合される混合チャンバ157に運ぶ。溶離バッファ溶液と糖鎖との混合物は混合チャンバ157を通って流れ、混合チャンバ157は、混合物の有機物含有量を低減させ、糖鎖の溶離バッファ成分を、開始時のクロマトグラフィ移動相の条件に適合するように調整する役割を果たす。換言すると、混合チャンバ157は、混合物が容器136から入手する元試料を代表することを確実にするのに役立つ。
【0035】
混合物が、所定の時間量、混合チャンバ157内にあった後、混合物は、例えば溶離バッファ溶液を使用して、例えば、液体クロマトグラフィデバイス、高速液体クロマトグラフィデバイス、超高速液体クロマトグラフィデバイス、質量分析デバイス、糖鎖分析デバイス、別の分析デバイス、又はこれらの組み合わせの形態をとることができる分析デバイス158に移動することができる。この態様では、分析デバイス158は第2のカラム124の下流に位置し、配管の導管262を介して第2のカラム124に流体的に結合される。したがって、この態様では、混合物は、糖鎖分析のために(例えば、混合物中の糖鎖を定量し、分離するために)分析デバイス158に自動的に移動させることができる。しかしながら、他の態様においては、分析デバイス158はシステム100の一部ではない(例えば、第3のカラム128に流体的に結合されない)場合があり、その場合、混合物は、分析デバイス158に異なる手法で(例えば、手作業で)移動させることができる。
【0036】
上で簡単に述べたように、システム100はコントローラ132も含み、コントローラ132は、本態様においては、システム100の各種構成要素に通信的に結合又は接続され、システム100の各種構成要素に信号(例えば、制御信号、データ)を送信すること、及びシステム100の各種構成要素から信号(例えば、データ)を受信することによってシステム100の上記運転を監視及び促進する又は指示する。コントローラ132は、システム100の他の構成要素に直接隣接して(例えば、システム100と同じ環境内に)配置され得る、又はシステム100の他の構成要素から離れて配置され得る。図示されているように、コントローラ132は、通信ネットワーク300を介してマルチポート弁104に、それぞれ通信ネットワーク320、324を介して第1及び第2のポンプ140、146に、通信ネットワーク336を介して分析デバイス158に、それぞれ通信ネットワーク340、344を介して弁192、208に、及び通信ネットワーク348を介して熱要素232に通信的に結合又は接続されている。他の態様においては、コントローラ132は、システム100のより多数の又は少数の構成要素、例えば、保持コイル108、第1のカラム112、反応コイル120、第2のカラム124、容器136、冷却コイル152、混合チャンバ157、及び/又は三方弁198に通信的に結合若しくは接続され得る。
【0037】
本発明で使用する場合、「通信的に結合される(communicatively coupled)」及び「接続される(connected)」という語句は、直接的に結合される若しくは接続される、又は1つ以上の中間構成要素を介して間接的に結合される若しくは接続される、を意味するものと定義される。このような中間構成要素は、ハードウェア及び/又はソフトウェアベースの構成要素を含むことができる。ネットワーク300~348は、無線ネットワーク、有線ネットワーク、又は有線ネットワークと無線ネットワークとの組み合わせ(例えば、携帯電話ネットワーク及び/又は802.11x準拠のネットワーク)であり得るとともに、インターネットなどの公衆アクセス可能ネットワーク、プライベートネットワーク、又はこれらの組み合わせを含むことができると理解される。ネットワーク300~348のタイプ及び構成は実装依存であり、現在利用可能な又は後に開発される、コントローラ132とシステム100の構成要素との間の記載した通信を促進する任意のタイプの通信ネットワークを使用することができる。
【0038】
図2に示すように、コントローラ132は、プロセッサ352と、メモリ356と、通信インターフェース360と、計算論理364とを含む。プロセッサ352は、汎用プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、ASIC、フィールドプログラマブルゲートアレイ、グラフィックス処理ユニット、アナログ回路、デジタル回路、又は任意の他の既知の若しくは後に開発されるプロセッサであり得る。プロセッサ352はメモリ356内の命令に従って動作する。メモリ356は揮発性メモリ又は不揮発性メモリであり得る。メモリ356は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、電子的に消去可能なプログラム読み取り専用メモリ(EEPROM)、又は他の種類のメモリのうちの1つ以上を含むことができる。メモリ356は、光、磁気(ハードドライブ)、又は任意の他の形態のデータストレージデバイスを含むことができる。
【0039】
通信インターフェース360は、ネットワーク300~348を介したコントローラ132と冷却システム100の構成要素との間の電子通信を可能にする又は促進するために提供される。通信インターフェース360は、例えば、1つ以上のユニバーサルシリアルバス(USB)ポート、1つ以上のイーサネットポート、及び/又は1つ以上の他のポート若しくはインターフェースであり得る、又はそれらを含み得る。電子通信は、例として、USB、RS-232、RS-485、WiFi、Bluetooth、及び/又は任意の他の適切な通信プロトコルを含む任意の既知の通信プロトコルを介して行うことができる。
【0040】
論理364は、概して、メモリ356に記憶されるコンピュータ読み取り可能命令として具現化される1つ以上の制御ルーチン及び/又は1つ以上のサブルーチンを含む。制御ルーチン及び/又はサブルーチンは、PID(比例積分微分)、ファジー論理、非線形、又は任意の他の適切な種類の制御を実施することができる。プロセッサ352は、一般に、論理364を実行し、システム100の運転に関連するアクションを実施する。
【0041】
概して、論理364は、実行されると、システム100が本明細書中に記載の所望の手法で動作するように、プロセッサ352にシステム100の構成要素、特に、マルチポート弁104、第1及び第2のポンプ140、146、分析デバイス158、第1及び第2の弁192、208、並びに加熱要素232を制御させる。より具体的には、論理364は、実行されると、プロセッサ352に、(i)マルチポート弁104を本明細書中に記載される位置のいずれかに又は位置のいずれかの間で移動させ、それによって上述のようにシステム100の各種構成要素を流体的に結合することができ、(ii)第1のポンプ140を制御させることができ(例えば、上述のように、ポンプ140に材料を得させる又は誘導させる)、(iii)第2のポンプ146を制御させることができ(例えば、上述のように、ポンプ146に材料を得させる又は誘導させる)、(iv)弁192を開閉させることができ、(v)弁208を開閉させることができ、(vi)反応コイル120に熱を選択的に加えることにより反応コイル120の温度を制御するように、加熱要素232(用いられる場合)を制御させることができ、(vii)分析デバイス158を制御させることができる。
【0042】
他の態様においては、論理364は、プロセッサ352によって実行されると、更なる、より少ない、及び/又は異なった機能を実施させることができる。一例として、論理364は、プロセッサ352によって実行されると、糖鎖を第2のカラム124から分析デバイス158に移動させることはできない、又は分析デバイス156に所望の分析を実施させることはできない。更に、他の態様においては、論理364は、本明細書中に記載される順序と異なる順序でプロセッサ352によって実行され得る。最後に、システム100を使用して、(同じ製品及び/又は異なる製品からの)複数の試料のリアルタイム分析を実施することができるため、論理364は、任意の異なる回数、プロセッサ352によって実行され得ると理解される。
【0043】
図3A~
図3Eは、抗体ベースの治療的ポリペプチドの試料の調製におけるシステム100の有効性を監視するためのオンライン及びリアルタイムグリコシル化プロファイル研究の結果を示す。特に、研究では、システム100の有効性を32日の生産時間にわたり監視した。研究では、32日間の生産時間の4日目の%A1G0F、%A2G0F、%A2G1F(糖鎖)、及び%M5(マンノース5)などのCQAデータを監視及び収集を開始した。
図3A及び
図3Bに示されるように、システム100は本明細書に記載する所期の機能を32日の生産時間の全時間にわたって首尾良く且つ効果的に実施し、
図3D及び
図3Eに示されるように、4日目~32日目に収集したCQAデータは一定であった。即ち、時間が経過するにつれて製品品質に変化はなく、システム100の有効性及び堅牢性を示した。これは、生産時間の20日目に、酸素タンクの漏れのせいで容器136への酸素ガス流が2時間遮断されたにもかかわらずそのような状態であった。更に、容器136をより高い分解能で監視し、生産時間継続のリスクを評価するために、容器136からのサンプリング頻度を増加した(この場合、24時間毎に1回から6時間毎に1回に)。しかしながら、
図3A~
図3Cに示されるように、この中断はCQAデータのいくつかに一時的に影響を及ぼしただけであり、CQAデータは中断前の値に素早く戻り、安定した。したがって、生産時間を継続する決定をした。
【0044】
治療的ポリペプチド
以下の1つ以上に結合するタンパク質を含むタンパク質は、開示される組成物及び方法に有用であり得る。これらには、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD22、CD30、及びCD34を含むCDタンパク質が含まれる(受容体結合を妨害するものを含む)。HER受容体ファミリータンパク質、HER2、HER3、HER4、及びEGF受容体。細胞接着分子、例えば、LFA-I、MoI、pl50、95、VLA-4、ICAM-I、VCAM、及びα v/β 3インテグリン。成長因子、例えば、血管内皮増殖因子(「VEGF」)、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、ミュラー管抑制物質、ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-I-α)、エリスロポエチン(EPO)、NGF-βなどの神経成長因子、血小板由来成長因子(PDGF)、例えばaFGF及びbFGFなどの線維芽細胞増殖因子、上皮成長因子(EGF)、形質転換成長因子、例えば、とりわけTGF-α及びTGF-β、例えばTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4又はTGF-β5、インスリン様成長因子I及びインスリン様成長因子II(IGF-I及びIGF-II)、des(l-3)-IGF-I(脳IGF-I)、並びに骨誘導因子。インスリン及びインスリン関連タンパク質、例えば、インスリン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン、及びインスリン様成長因子結合タンパク質。凝固及び凝固関連タンパク質(例えば、とりわけ第VIII因子、組織因子、フォンヴィレブランド因子、プロテインC、α-1-アンチトリプシン、プラスミノーゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼ及び組織プラスミノーゲン活性化因子(「t-PA」)、ボンバジン(bombazine)、トロンビン、及びトロンボポエチン;(vii)他の血液タンパク質及び血清タンパク質、例えば、以下に限定されないが、アルブミン、IgE及び血液型抗原。コロニー刺激因子及びその受容体、例えば以下のもの、とりわけ、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSF、並びにそれらの受容体、例えばCSF-1受容体(c-fms)。受容体、及び受容体関連タンパク質、例えば、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、LDL受容体、成長ホルモン受容体、トロンボポエチン受容体(「TPO-R」、「c-mpl」)、グルカゴン受容体、インターロイキン受容体、インターフェロン受容体、T細胞受容体、c-Kitなどの幹細胞因子受容体、及び他の受容体。受容体リガンド、例えば、OX40受容体のリガンドであるOX40L。神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、及びニューロトロフィン-3、-4、-5、又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)。リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、及びプロリラキシン;インターフェロン及びインターフェロン受容体、例えば、インターフェロン-α、-β、及び-γ、並びにそれらの受容体。インターロイキン及びインターロイキン受容体、例えば、IL-1~IL-33及びIL-1~IL-33受容体、例えば、とりわけIL-8受容体。ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープウイルス抗原。リポタンパク質、カルシトニン、グルカゴン、心房性ナトリウム利尿因子、肺表面活性物質、腫瘍壊死因子-α及び-β、エンケファリナーゼ、RANTES(活性化制御で、正常T細胞で発現及び分泌される)、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、DNAse、インヒビン、及びアクチビン。インテグリン、プロテインA又はD、リウマチ因子、免疫毒素、骨形成タンパク質(BMP)、スーパーオキシドジスムターゼ、表面膜タンパク質、崩壊促進因子(DAF)、AIDSエンベロープ、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、調節タンパク質、イムノアドヘシン、抗体。ミオスタチン、TALLタンパク質、例えば、TALL-I、アミロイドタンパク質、例えば、以下に限定されないが、アミロイドβタンパク質、胸腺間質性リンパ球新生因子(「TSLP」)、RANKリガンド(「OPGL」)、c-キット、TNF受容体、例えば、TNF受容体1型、TRAIL-R2、アンジオポエチン、並びに前述のいずれかの生物学的に活性なフラグメント又はアナログ又はバリアント。
【0045】
例示的なポリペプチド及び抗体としては、Activase(登録商標)(アルテプラーゼ);アリロクマ、Aranesp(登録商標)(ダルベポエチンα)、Epogen(登録商標)(エポエチンα、又はエリスロポエチン);Avonex(登録商標)(インターフェロンβ-Ia);Bexxar(登録商標)(トシツモマブ);Betaseron(登録商標)(インターフェロン-β);ボコシズマブ(L1L3として示される抗PCSK9モノクローナル抗体、米国特許第8080243号明細書を参照);Campath(登録商標)(アレムツズマブ);Dynepo(登録商標)(エポエチンデルタ);Velcade(登録商標)(ボルテゾミブ);MLN0002(抗α4β7 mAb);MLN1202(抗CCR2ケモカイン受容体mAb);Enbrel(登録商標)(エタネルセプト);Eprex(登録商標)(エポエチンα);Erbitux(登録商標)(セツキシマブ);エボロクマブ;Genotropin(登録商標)(ソマトロピン);Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ);Humatrope(登録商標)(ソマトロピン[rDNA由来]注射液);Humira(登録商標)(アダリムマブ);Infergen(登録商標)(インターフェロンAlfacon-1);Natrecor(登録商標)(ネシリチド);Kineret(登録商標)(アナキンラ)、Leukine(登録商標)(サルガモスチム);LymphoCide(登録商標)(エピラツズマブ);Benlysta(商標)(ベリムマブ);Metalyse(登録商標)(テネクテプラーゼ);Mircera(登録商標)(メトキシポリエチレングリコールエポエチンβ);MyIotarg(登録商標)(ゲムツズマブオゾガマイシン);Raptiva(登録商標)(エファリズマブ);Cimzia(登録商標)(セルトリズマブペゴル);Soliris(商標)(エクリズマブ);パキセリズマブ(抗補体C5);MEDI-524(Numax(登録商標));Lucentis(登録商標)(ラニビズマブ);エドレコロマブ(Panorex(登録商標));Trabio(登録商標)(レルデリムマブ);TheraCim hR3(ニモツズマブ);Omnitarg(ペルツズマブ、2C4);Osidem(登録商標)(IDM-I);OvaRex(登録商標)(B43.13);Nuvion(登録商標)(ビジリズマブ);カンツズマブメルタンシン(huC242-DMl);NeoRecormon(登録商標)(エポエチンβ);Neumega(登録商標)(オプレルベキン);Neulasta(登録商標)(PEG化フィルガストリム、PEG化G-CSF、PEG化hu-Met-G-CSF);Neupogen(登録商標)(フィルグラスチム);Orthoclone OKT3(登録商標)(ムロモナブ-CD3)、Procrit(登録商標)(エポエチンα);Remicade(登録商標)(インフリキシマブ)、Reopro(登録商標)(アブシキシマブ)、Actemra(登録商標)(抗IL6受容体mAb)、Avastin(登録商標)(ベバシズマブ)、HuMax-CD4(ザノリムマブ)、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ);Tarceva(登録商標)(エルロチニブ);Roferon-A(登録商標)(インターフェロンα-2a);Simulect(登録商標)(バシリキシマブ);Stelara(商標)(ウステキヌマブ);Prexige(登録商標)(ルミラコキシブ);Synagis(登録商標)(パリビズマブ);146B7-CHO(抗IL15抗体、米国特許第7153507号明細書を参照)、Tysabri(登録商標)(ナタリズマブ);Valortim(登録商標)(MDX-1303、抗炭疽菌防御抗原mAb);ABthrax(商標);Vectibix(登録商標)(パニツムマブ);Xolair(登録商標)(オマリズマブ)、ETI211(抗MRSA mAb)、IL-1 Trap(ヒトIgG1のFc部分及び両IL-1受容体成分(I型受容体及び受容体補助タンパク質)の細胞外ドメイン)、VEGF Trap(IgG1 Fcと融合したVEGFR1のIgドメイン)、Zenapax(登録商標)(ダクリズマブ);Zenapax(登録商標)(ダクリズマブ)、Zevalin(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン)、Zetia(エゼチマイブ)、アタシセプト(TACI-Ig)、抗α4β7 mAb(ベドリズマブ);ガリキシマブ(抗CD80モノクローナル抗体)、抗CD23 mAb(ルミリキシマブ);BR2-Fc(huBR3/huFc融合タンパク質、可溶性BAFF拮抗薬);Simponi(商標)(ゴリムマブ);マパツズマブ(ヒト抗TRAIL受容体-1 mAb);オクレリズマブ(抗CD20ヒトmAb);HuMax-EGFR(ザルツムマブ);M200(ボロシキシマブ、抗α5β1インテグリンmAb);MDX-010(イピリムマブ、抗CTLA-4 mAb及びVEGFR-I(IMC-18F1);抗BR3 mAb;抗C.ディフィシル毒素A及び毒素B C mAbs MDX-066(CDA-1)及びMDX-1388);抗CD22 dsFv-PE38抱合体(CAT-3888及びCAT-8015);抗CD25 mAb(HuMax-TAC);抗TSLP抗体;抗TSLP受容体抗体(米国特許第8101182号明細書);A5として示される抗TSLP抗体(米国特許第7982016号明細書);抗CD3 mAb(NI-0401);アデカツムマブ(MT201、抗EpCAM-CD326 mAb);MDX-060、SGN-30、SGN-35(抗CD30 mAb);MDX-1333(抗IFNAR);HuMax CD38(抗CD38 mAb);抗CD40L mAb;抗Cripto mAb;抗CTGF特発性肺線維症第1期フィブロゲン(FG-3019);抗CTLA4 mAb;抗エオタキシン1 mAb(CAT-213);抗FGF8 mAb;抗ガングリオシドGD2 mAb;抗スクレロスチン抗体(米国特許第8715663号明細書又は米国特許第7592429号明細書を参照)、Ab-5として示される抗スクレロスチン抗体(米国特許第8715663号明細書又は米国特許第7592429号明細書);抗ガングリオシドGD2 mAb;抗GDF-8ヒトmAb(MYO-029);抗GM-CSF受容体mAb(CAM-3001);抗HepC mAb(HuMax HepC);MEDI-545、MDX-1103(抗IFNα mAb);抗IGF1R mAb;抗IGF-IR mAb(HuMax-Inflam);抗IL12/IL23p40 mAb(ブリアキヌマブ);抗IL-23p19 mAb(LY2525623);抗IL13 mAb(CAT-354);抗IL-17モノクローナル抗体(AIN457);抗IL2Raモノクローナル抗体(HuMax-TAC);抗IL5受容体mAb;抗インテグリン受容体mAb(MDX-Ol8、CNTO95);抗IPIO潰瘍性大腸炎mAb(MDX-1100);抗LLY抗体;BMS-66513;抗マンノース受容体/hCGβ mAb(MDX-1307);抗メソテリンdsFv-PE38抱合体(CAT-5001);抗PDlmAb(MDX-1 106(ONO-4538));抗PDGFRα抗体(IMC-3G3);抗TGFβ mAb(GC-1008);抗TRAIL受容体-2ヒトmAb(HGS-ETR2);抗TWEAK mAb;抗VEGFR/Flt-1 mAb;抗ZP3 mAb(HuMax-ZP3);並びに配列番号8及び配列番号6の配列を含むアミロイドβ mAb(米国特許第7906625号明細書)が挙げられる。
【0046】
方法及び医薬製剤に適した抗体の例としては、表1に示す抗体が挙げられる。好適な抗体のその他の例としては、インフリキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ラニビズマブ、パリビズマブ、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブ、アラシズマブペゴル、ald518、アレムツズマブ、アリロクマ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブマフェナトクス、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ、アルチヌマブ(altinumab)、アトリズマブ、アトロリムマブ、トシリズマブ、バピヌズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビバツズマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブリナツモマブ、ブロソズマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブメルタンシン、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ、カツマキソマブ、cc49、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、クレネズマブ、cr6261、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダラツムマブ、デミシズマブ、デノスマブ、デツモマブ、ドルリモマブアリトクス、ドロジツマブ、デュリゴツマブ、デュピルマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エナバツズマブ、エンリモマブペゴル、エノキズマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブシツキセタン、エピラツズマブ、エレヌマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、エトロリズマブ、エボロクマブ、エキシビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファルレツズマブ、ファシヌマブ、fbta05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガリキシマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、gs6624、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イクルクマブ、イゴボマブ、イムシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブラブタンシン、インフリキシマブ、インテツムマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レルデリムマブ、レキサツムマブ、リビビルマブ、リゲリズマブ、リンツズマブ、リリルマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツズマブ、マスリモマブ、マブリリムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モガムリズマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、モキセツモマブパスドトクス、ムロモナブ-cd3、ナコロマブタフェナトクス、ナミルマブ、ナプツモマブエスタフェナトクス、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オデュリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴボマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パジバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、パキセリズマブ、ピジリズマブ、ピンツモマブ、プラクルマブ、ポネズマブ、プリリキシマブ、プリツムマブ、PRO140、クイリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロレデュマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サマリズマブ、サリルマブ、サツモマブペンデチデ、セクキヌマブ、セビルマブ、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、シルクマブ、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スビズマブ、タバルマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ、テフィバズマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テプロツムマブ、テゼペルマブ、TGN1412、トレメリムマブ、チシリムマブ、チルドラキズマブ、チガツズマブ、TNX-650、トシリズマブ、トラリズマブ、トシツモマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、TRBS07、トレガリズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バパリキシマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビジリズマブ、ボロシキシマブ、ボルセツズマブマフォドチン、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ジラリムマブ、ゾリモマブアリトクスが挙げられる。
【0047】
抗体としては、アダリムマブ、ベバシズマブ、ブリナツモマブ、セツキシマブ、コナツムマブ、デノスマブ、エクリズマブ、エレヌマブ、エボロクマブ、インフリキシマブ、ナタリズマブ、パニツムマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロモソズマブ、テゼペルマブ、及びトラスツズマブ、並びに表1から選択される抗体も挙げられる。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
前述の記載に基づき、本明細書中に記載されるデバイス、システム、及び方法は、糖鎖分析のためのポリペプチドを含有する製品の試料の自動的な(又は実質的に自動的な)調製、及びその試料の糖鎖アッセイの自動的な(又は実質的に自動的な)実施を容易にすることは認識されよう。したがって、調製及び分析を実質的にリアルタイムで実施することができる。換言すると、全プロセスを従来のプロセスにより現在可能にされているものよりもはるかに素早く実施することができる。
【0052】
本明細書中に記載されるデバイス、システム、及び方法は、システム100を使用した糖鎖分析のために試料調製プロセス及びその試料の糖鎖アッセイの実施を容易に監視することを可能にし、これにより更に、リスクを軽減することができ、且つ製品の生産時間を延長することができることも理解すべきである。特に、このプロセスは、例えば、コントローラ132などのコントローラを使用して、及び/又はシステム100のオペレータが手動で、システム100内の条件が最適であるかどうか、即ち、それらが所定の性能閾値を満たすかどうかを判断することによって監視され得る。
図3D及び
図3Eに示されるように、生産時間が開始、継続、又は延長され得るように、例えば、一連のグリコシル化種(この場合、%M5、A1G0F、A2G0F、%HM、%Fuc、%Gal、A2G1F、及び%ハイブリッド)のグリコシル化率値を得、方法の適格性評価時に収集したそれらグリコシル化種の過去の値と比較し、システム100内の条件が最適であるかどうかを判断することができる。しかしながら、システム100内の条件が最適ではないと判断した場合、少なくとも1つの細胞培養構成要素は、閉じたシステム内の条件が最適になるまで調整され得る。調整され得る細胞培養構成要素の例としては、pH、圧力、温度、媒体流(例えば、媒体流量、媒体供給量)、媒体含有量(アミノ酸、栄養素、糖、バッファを含む)、ガス供給戦略(例えば、酸素と二酸化炭素の混合物のガス比率)、撹拌(例えば、撹拌速度)、添加剤(例えば、金属添加剤、糖添加剤)、添加剤(例えば、消泡剤)供給量、及び潅流量が挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、閉じたシステム内の条件が最適であるように1つのみの細胞培養構成要素を調整する必要があり得る一方で、他の場合では、複数の細胞培養構成要素を調整する必要があり得る。あるいは、条件が最適ではないと判断された場合、又は少なくとも1つの細胞培養構成要素を調整した後であってもシステム100内の条件が最適ではない場合、コントローラ及び/又はシステム100のオペレータはシステム100を停止してもよい。
【0053】
このようにして、本明細書中に記載されるデバイス、システム、及び方法はまた、条件が最適ではないとき、又はシステム100の運転を継続することが望ましくないときのシステム100の継続運転に伴うリスクを軽減する。特に、リスクは、システム100の現在の運転に関連するプロセスパラメータ及び製品品質データ、例えば、pH、温度、溶存酸素、細胞生存性、細胞密度、力価、凝集、チャージバリアント、グリコシル化等を決定する(例えば、計算する又は得る)こと、プロセスパラメータ及び製品品質データが所定のリスク閾値(システム100の運転前に、コントローラ132などのコントローラによって及び/又はシステム100のオペレータからの入力に応答して判断される)を満たすかどうかを判断すること、及びその後、プロセスパラメータ及び製品品質データが所定のリスク閾値を満たすかどうかに基づき、システム100の運転を継続する、停止する、又は調整するかどうかを判断することによって緩和され得る。所定のリスク閾値は、例えば、(1)入手可能なプロセスパラメータデータ及び製品品質データを適用し、システム100又はそれ以外の類似のシステムの従前の運転に関連する過去の平均多変量(MV)データを計算すること、次いで、(2)計算した過去の平均MVデータを閾値(閾値は、計算した過去の平均MVデータ自体又は計算した過去の平均MVデータに基づく何らかの値若しくは一連の値であり得る)として確立することによって判断してもよい。一例では、所定のリスク閾値は、計算した過去の平均MVデータからの許容可能な偏差(例えば、3つの標準偏差)を示し得る。代替的に又は付加的に、所定のリスク閾値は、システム100のオペレータからの入力に基づき判断してもよい。場合によっては、システム100の現在の運転に関連するプロセスパラメータ及び製品品質データが所定のリスク閾値を満たしていない(例えば、超える)ときにはシステム100は停止されてもよい。しかしながら、他の場合、システム100の現在の運転に関連するプロセスパラメータ及び製品品質データが所定のリスク閾値を満たしていないときには、又は更には、プロセスパラメータ及び製品品質データが所定のリスク閾値を満たしてはいるものの所定のリスク閾値に近接しているときには、システム100を調整してもよい。例えば、及び上で簡単に述べたように、容器136からのサンプリング頻度は調整してもよい。
【0054】
更に、本出願人は、本明細書中に記載されるデバイス、システム、及び方法はまた、システム100を使用する生産時間の延長を可能にすることを見出した。従来のプロセスでは、典型的には、最大でも32~40日の生産時間を可能にする。しかしながら、本出願人は、本明細書中に記載されるデバイス、システム、及び方法は、100ではないにしても50~80の集団倍加数を可能にする、即ち、100日ではないにしても約50~80日の生産時間を可能にすることを見出した。したがって、製品が品質目標を満たし且つリスクが緩和されることを確実にするためにシステム100の運転を監視しつつ、より多くの製品を得ることができる。
【0055】
本開示を実施するために本発明者が知る最良のモードを含む本開示の好適な実施形態が本明細書中に記載される。本明細書中に多くの例が示され、説明されているが、当業者であれば、各種実施形態の詳細は相互排他的である必要はないことは速やかに理解するであろう。その代わり、当業者は本明細書の教示を読むと、一実施形態の1つ以上の特徴を残りの実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせることができるであろう。更に、図示実施形態は単なる例示であり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきでないことも理解するであろう。本明細書中に記載されるあらゆる方法は、本明細書中に特に明記されない限り又は文脈により明確に否定されない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書中に記載される一切の例又は例示的な語(例えば、「などの」)の使用は、本開示の例示的実施形態の態様をより明らかにすることを単に意図しており、本開示の範囲に制約を課すものではない。明細書中のいずれの語も、任意の請求されない要素を本開示の実施に必須であるものとして示すと解釈されるべきではない。
【配列表】