(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】誘導加熱装置、誘導加熱装置を備えるエアロゾル発生システム、およびそれを操作する方法
(51)【国際特許分類】
A24F 40/465 20200101AFI20221129BHJP
A24F 47/00 20200101ALI20221129BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
A24F40/465
A24F47/00
H05B6/10 371
(21)【出願番号】P 2019571435
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2018067716
(87)【国際公開番号】W WO2019002613
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-29
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ブタン ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】フルサ オレク
(72)【発明者】
【氏名】ミロノフ オレク
(72)【発明者】
【氏名】ソッタ ブノワ
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02543329(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0150828(US,A1)
【文献】国際公開第2013/060784(WO,A2)
【文献】中国実用新案第204599333(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/465
A24F 47/00
H05B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル形成基体およびサセプタを備えるエアロゾル発生物品を受けるよう構成された誘導加熱装置であって、前記誘導加熱装置が、前記エアロゾル発生物品が前記誘導加熱装置によって受けられる時に、前記サセプタを加熱するように構成され、前記誘導加熱装置が、
DC電源電圧および電流を供給するためのDC電源と、
電源電子回路であって、
前記DC電源に接続されたDC/ACコンバータ、および、
前記DC/ACコンバータに接続され、前記エアロゾル発生物品が前記誘導加熱装置によって受けられる時に前記エアロゾル発生物品の前記サセプタと誘導結合するように配置されたインダクタ、を備える電源電子回路と、を備え、
前記電源電子回路が、
前記エアロゾル発生物品が前記誘導加熱装置によって受けられる時に、前記エアロゾル発生物品の前記サセプタを加熱するために、前記DC/ACコンバータを介して前記DC電源から前記インダクタに電力を供給することであって、前記電力供給が、時間間隔で分離された複数のパルスで提供され、前記パルスが、二つ以上の加熱パルスおよび連続加熱パルス間の一つ以上のプローブパルスを含む、供給することと、
前記一つ以上のプローブパルスの一つ以上で前記DC電源から供給される前記電流の一つ以上の測定値に基づいて、連続加熱パルス間の前記時間間隔の期間を制御することと、を行うように構成される、誘導加熱装置。
【請求項2】
前記加熱パルスが、少なくとも第一の加熱パルス、および時間間隔で前記第一の加熱パルスから分離された第二の加熱パルスを含み、
前記電源電子回路が、前記第一の加熱パルスと前記第二の加熱パルスとの間の前記時間間隔で、一つ以上のプローブパルスで前記DC電源から前記インダクタに電力を供給するように構成され、
前記電源電子回路が、前記一つ以上のプローブパルスの一つ以上で前記DC電源から供給される電流の測定値に基づいて、前記第一の加熱パルスと前記第二の加熱パルスとの間の前記時間間隔の期間を制御するように構成される、請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
前記
電源電子回路が、前記一つ以上のプローブパルスで前記DC電源から供給される電流の前記一つ以上の測定値を、一つ以上の標的条件と比較するように構成される、請求項1または請求項2に記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
前記電源電子回路が、
第一の加熱パルスで前記DC電源から前記インダクタに電力を供給し、
前記インダクタへの前記電力供給を中断して前記第一の加熱パルスを終了し、
前記第一の加熱パルスの前記終了からプローブパルス時間間隔が経過
した後に、第一のプローブパルスで前記インダクタに電力を供給し、
前記第一のプローブパルスで前記DC電源から供給される前記電流を測定し、
前記第一のプローブパルス
の開始からプローブパルス期間が経過した後に、前記インダクタへの前記電力の供給を中断して前記第一のプローブパルスを終了し、
前記第一のプローブパルスにおける前記電流の一つ以上の測定値を、一つ以上の標的条件と比較し、
電流の一つ以上の前記測定値が標的条件に一致する場合に、第二の加熱パルスで前記DC電源から前記インダクタに電力を供給するように構成される、請求項3に記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
前記第一のプローブパルスにおける電流の前記一つ以上の測定値が標的条件に一致しない場合に、前記電源電子回路がさらに、
前記第一のプローブパルスの前記終了から前記プローブパルス時間間隔が経過した後に、第二のプローブパルスで前記インダクタに電力を供給し、
前記第二のプローブパルスで前記DC電源から供給される前記電流を測定し、
前記第二のプローブパルス
の開始から前記プローブパルス期間が経過した後に、前記インダクタへの前記電力の供給を中断して前記第二のプローブパルスを終了し、
前記第二のプローブパルスにおける前記電流の一つ以上の測定値を、一つ以上の前記標的条件と比較し、
前記一つ以上のプローブパルスにおける電流の一つ以上の前記測定値が標的条件に一致する場合に、第二の加熱パルスで前記インダクタに電力を供給するように構成される、請求項4に記載の誘導加熱装置。
【請求項6】
前記電源電子回路がさらに、
一連のプローブパルスで前記DC電源から前記インダクタに電力を供給することであって、各プローブパルスが、プローブパルス期間と実質的に等しい期間を有し、連続プローブパルスが、プローブパルス間隔と実質的に等しい時間間隔で分離される、供給することと、
前記一連の前記プローブパルスのそれぞれにおける前記電流を測定することと、
前記プローブパルスにおける電流の一つ以上の前記測定値が標的条件に一致するときに第二の加熱パルスで前記インダクタに電力を供給することと、を行うように構成される、請求項3、4または5のいずれか一項に記載の誘導加熱装置。
【請求項7】
前記一つ以上の標的条件の一つが基準値を含み、前記電源電子回路が、前記一つ以上のプローブパルスにおける電流の一つ以上の前記測定値が前記基準値以上である場合に、第二の加熱パルスで前記インダクタに電力を供給するように構成される、請求項3~6のいずれか一項に記載の誘導加熱装置。
【請求項8】
電源電子回路が、前記一連のプローブパルスにおいて測定された電流が前記一連のプローブパルスにおける最小電流であると決定し、前記一連のプローブパルスにおける最小電流が発生したと決定される場合に、第二の加熱パルスで前記インダクタに電力を供給するように構成される、請求項6に記載の誘導加熱装置。
【請求項9】
前記一つ以上の標的条件の一つが、
第一の対の連続プローブパルスで前記DC電源から供給される前記電流の測定値が、前記連続プローブパルス間で減少すること、
第二の対の連続プローブパルスで前記DC電源から供給される前記電流の測定値が、前記連続プローブパルス間で増加すること、および、
前記第二の対の連続プローブパルスの時、またはその後に供給される電流の測定値が基準電流値以上であること、を含む、条件のシーケンスを含む、請求項6に記載の誘導加熱装置。
【請求項10】
前記誘導加熱装置が、第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料を含むサセプタを備えるエアロゾル発生物品を受けるように構成され、前記第一のサセプタ材料が前記第二のサセプタ材料と熱的に近接して配置され、前記第二のサセプタ材料が、500℃より低いキュリー温度を有し、各加熱パルスについて、前記電源電子回路がさらに、
前記DC電源から供給される前記電流が、最大電流値にあるときを決定し、
前記最大電流値が決定された時に、前記DC電源から前記インダクタへの電力供給を中断するように構成される、請求項1~9のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項11】
前記
電源電子回路が、連続加熱パルス間に二つ以上のプローブパルスを供給するように構成され、各プローブパルスが実質的に同様の期間を有する、請求項1~10のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項12】
前記
電源電子回路が、連続加熱パルス間に二つ以上のプローブパルスを供給するように構成され、連続加熱パルスがプローブパルス時間間隔で分離され、各プローブパルス時間間隔が実質的に同様の期間を有する、請求項1~11のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項13】
前記電源電子回路が、一つ以上の前記プローブパルスでDC電源から供給される電流および前記DC電源両端の電圧のうちの一つ以上の測定値に基づいて、連続加熱パルス間の前記時間間隔の期間を制御するように構成される、請求項1~12のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項14】
前記電源電子回路が、
一つ以上の前記プローブパルスで前記DC電源から供給される電流および前記DC電源の両端の電圧の一つ以上の測定値から一つ以上のコンダクタンス値を決定し、
一つ以上の前記決定されたコンダクタンス値に基づいて、連続加熱パルス間の前記時間間隔の期間を制御するように構成される、請求項13に記載の誘導加熱装置。
【請求項15】
エアロゾル発生システムであって、
請求項1~14のいずれかに記載の誘導加熱装置と、
エアロゾル形成基体およびサセプタを備えるエアロゾル発生物品であって、前記エアロゾル発生物品が前記誘導加熱装置によって受けられる時、前記誘導加熱装置が前記サセプタを受けて、前記サセプタを加熱するように構成される、エアロゾル発生物品と、を備える、エアロゾル発生システム。
【請求項16】
前記
誘導加熱装置が、第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料を含むサセプタを備えるエアロゾル発生物品を備え、前記第一のサセプタ材料が前記第二のサセプタ材料と物理的に密着して配置され、前記第二のサセプタ材料が500℃よりも低いキュリー温度を有する、請求項15に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項17】
前記エアロゾル発生物品が前記誘導加熱装置によって受けられる時に、前記エアロゾル発生物品の前記サセプタを加熱するために、前記DC/ACコンバータを介して、前記DC電源から前記インダクタに電力を供給することであって、前記電力供給が、時間間隔で分離された複数のパルスで提供され、前記パルスが、二つ以上の加熱パルスおよび連続加熱パルス間の一つ以上のプローブパルスを含む、供給することと、
前記一つ以上のプローブパルスの一つ以上で、前記DC電源から供給される前記電流の一つ以上の測定値に基づいて、連続加熱パルス間の前記時間間隔の期間を制御することと、を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の誘導加熱装置を操作するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル形成基体を加熱するための誘導加熱装置に関連する。本発明はまた、そうした誘導加熱装置を備えるエアロゾル発生システムに関連する。本発明はさらに、そうしたエアロゾル発生システムを操作する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾル形成基体を有するエアロゾル発生物品と、エアロゾル形成基体を加熱するように構成された電気的に動作する熱源とを備える電気的に動作するエアロゾル発生システムは、当業界で公知である。こうしたシステムは典型的に、熱源からエアロゾル形成基体に熱を伝達することによってエアロゾルを生成し、エアロゾル発生物品、冷却および凝縮を通して引き出される空気に混入されてユーザーによって吸入されうるエアロゾルを形成するエアロゾル形成基体から揮発性化合物を放出する。
【0003】
一部の電気的に動作するエアロゾル発生システムは、誘導加熱装置または誘導源を有する電気的に動作するエアロゾル発生装置を備える。誘導加熱装置は一般に、サセプタに結合されるように構成された誘導源を備える。誘導源により交流電磁場が発生し、これがサセプタ内に渦電流を誘起する。誘起された渦電流は、オーム加熱または抵抗加熱を通してサセプタを加熱する。サセプタはヒステリシス損失の結果としてさらに加熱される。
【0004】
誘導加熱装置を備える電気的に動作するエアロゾル発生システムは一般に、エアロゾル形成基体およびエアロゾル形成基体と熱的に近接したサセプタを有するエアロゾル発生物品も備える。これらのシステムでは、誘導源は、サセプタ内の渦電流を誘導する交流電磁場を生成する。誘起された渦電流はサセプタを加熱し、これが次にエアロゾル形成基体を加熱する。典型的には、サセプタはエアロゾル形成基体と直接接触し、熱はサセプタから主に伝導によってエアロゾル形成基体に伝達される。誘導加熱装置およびサセプタを有するエアロゾル発生物品を有する電気的に動作するエアロゾル発生システムの例は、WO-A1-95/27411およびWO-A1-2015/177255に記述されている。
【0005】
電気的に動作するエアロゾル発生システムの一つの目的は、一部のエアロゾル形成基体の燃焼および熱分解の公知の有害な副産物を減少させることである。そのため、これらのシステムは、エアロゾル形成基体の温度を監視して、エアロゾル形成基体が燃焼しうる温度に確実に加熱されないことが望ましい。
【0006】
エアロゾル形成基体と直接接触するサセプタを有するエアロゾル発生物品では、サセプタの温度はエアロゾル形成基体の温度を表していると仮定されうる。この仮定を用いると、エアロゾル形成基体の温度を、サセプタの温度を監視することによって監視することができる。
【0007】
一般に、誘導加熱装置に結合されるエアロゾル発生物品内のサセプタは、誘導加熱装置の回路に直接、物理的には接続されていない。結果として、誘導加熱装置は、電気抵抗などのサセプタの電気量を直接監視し、電気量と温度との間の既知の関係からサセプタの温度を計算することはできない。
【0008】
しかし、サセプタの電気量の直接測定のないサセプタの温度を決定するための先行技術の提案がある。例えば、WO-A1-2015/177255、WO-A1-2015/177256およびWO-A1-2015/177257では、DC電源と、インダクタと、DC電源の両端のDC電圧および電流を測定し、インダクタに結合されたサセプタの見かけの抵抗を決定するよう構成された回路とを有する装置を備える電気的に動作するエアロゾル発生システムが提案されている。上述の文書で説明したように、驚くべきことに、サセプタの見かけの抵抗は、サセプタの所定の温度範囲にわたる厳密なモノトニック関係におけるサセプタの温度と共に変化しうることが分かっている。厳密なモノトニック関係により、見かけの抵抗の決定からのサセプタの温度の明確な決定を可能にする。これは、見かけの抵抗の決定された値がそれぞれ、ただ一つの単一の温度の値を表すためであり、その関係に曖昧性はない。こうしてサセプタの温度と見かけの抵抗とのモノトニック関係は、サセプタの温度を決定および制御することができるようにし、したがってエアロゾル形成基体の温度を決定および制御することができる。
【0009】
誘導加熱装置を有する電気的に動作するエアロゾル発生システム内のエアロゾル形成基体の温度の決定および制御を改善する機会が存在する。具体的には、誘導加熱装置とサセプタを有するエアロゾル発生物品との間の相互作用を改善する機会が存在する。
【0010】
誘導加熱装置および実施が簡単で信頼でき、安価なサセプタを有するエアロゾル発生物品を備える電気的に動作するエアロゾル発生システムにおいて温度監視および制御機能を提供することが望ましい。また、実施が簡単で、信頼でき、かつ安価な誘導加熱手段を備えるエアロゾル発生装置において吸煙検出機能を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第一の態様によると、エアロゾル形成基体およびエアロゾル形成基体と熱的に近接したサセプタを備えるエアロゾル発生物品を受けるように構成された誘導加熱装置が提供されており、誘導加熱装置は、エアロゾル発生物品が誘導加熱装置によって受けられる時にサセプタを加熱するように構成され、DC電源電圧および電流を供給するためのDC電源および電源電子回路を備える。電源電子回路は、DC電源に接続されたDC/ACコンバータおよびDC/ACコンバータに接続され、エアロゾル発生物品が誘導加熱装置によって受けられる時にエアロゾル発生物品のサセプタと誘導結合するように配置されるインダクタを備える。電源電子回路は、エアロゾル発生物品が誘導加熱装置によって受けられる時にエアロゾル発生物品のサセプタを加熱するため、DC/ACコンバータを介して、DC電源からインダクタに電力を供給するように構成され、電力供給は、時間間隔で分離された複数のパルスで提供され、パルスは、二つ以上の加熱パルスおよび連続加熱パルス間の一つ以上のプローブパルスを含む。電源電子回路はさらに、一つ以上のプローブパルスの一つ以上においてDC電源から供給される電流の一つ以上の測定値に基づいて、連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成される。
【0012】
時間間隔で分離された複数のパルスでインダクタに電力を供給することにより、電源電子回路が、誘導加熱装置によって受けられるエアロゾル発生物品内のサセプタおよびエアロゾル形成基体の加熱に対して微細な制御を与えることができる。
【0013】
DC電源からインダクタへ供給される電力の各パルスの間、インダクタは、インダクタに結合されたエアロゾル発生物品のサセプタ内の渦電流を誘発するAC電磁場を生成する。サセプタ内の渦電流はサセプタを加熱し、これは次に物品のエアロゾル形成基体を加熱する。
【0014】
DC電源からの電力の連続パルス間の時間間隔の間、DC電源からインダクタに供給する電力供給が中断される。このように、インダクタはAC電磁場を生成しないか、または低減された磁界強度を有するAC電磁場を生成するかのいずれかである。こうして、DC電源からインダクタへの電力の連続パルス間の時間間隔の間、インダクタに結合されたサセプタは加熱されず、または誘起された渦電流によって加熱が低減され、冷却する機会が提供される。
【0015】
「中断」という用語は本明細書で使用される場合、インダクタによって効果的に交流電磁場が発生されないようにDC電源からのDC電力供給が停止されるまたは低減される実施形態を含む。同様に、「再開」という用語は本明細書で使用されると、インダクタに結合されたサセプタの加熱を引き起こすのに十分なインダクタによって交流電磁場が生成されるように、DC電源からの電力供給が開始または増大する実施形態を含む。
【0016】
「連続」という用語は、本明細書で使用される場合、一連の、またはシーケンスの、連続した、隣接したまたは近接する値を指す。
【0017】
本発明の誘導加熱装置の電源電子回路は、時間間隔で分離された一連の加熱パルス、または加熱パルスのシーケンスでDC電源からインダクタに電力を供給するように構成される。連続加熱パルス間の時間間隔の間、電源電子回路は、一つ以上のプローブパルスにおいてDC電源からインダクタに電力を供給するように構成される。一連の二つ以上のプローブパルスが連続加熱パルス間に提供される場合、プローブパルスは、プローブパルス時間間隔で分離される。
【0018】
加熱パルスは一般的に、後でより詳細に説明する通り、インダクタに結合されたサセプタの温度を上昇または維持することが意図される。インダクタへの電力供給が中断される、加熱パルス間の時間間隔は、サセプタを冷却することを可能にするように意図される。こうした加熱および冷却サイクルにより、サセプタの温度を、誘導加熱装置によって受けられるエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体からのエアロゾルの発生のための最適な温度範囲など、所望の温度範囲内に維持することができるようになりうる。
【0019】
連続加熱パルス間の時間間隔にインダクタに供給されるプローブパルスは、サセプタが冷却されるのに伴って、インダクタに結合されたサセプタの温度の間接的表示を提供することが意図される。プローブパルスは、DC電源からインダクタに供給される電流を測定することによって、インダクタに結合されたサセプタの温度を間接的に監視することが意図される。プローブパルスは、インダクタに結合されたサセプタの温度を実質的に上昇させることを意図していない。このように、プローブパルスの期間は一般的に、加熱パルスの期間よりも短い。さらに、一連の二つ以上のプローブパルスが連続加熱パルス間に提供される場合、プローブパルス時間間隔の期間(すなわち、プローブパルス間の間隔)は、一般的にプローブパルスの期間よりも長い。
【0020】
加熱パルスの期間と比較して比較的短いプローブパルスを提供すること、および連続プローブパルス間にプローブパルスの期間と比較して比較的長いプローブパルス時間間隔を提供することにより、確実に、連続加熱パルス間に経時的にインダクタに供給される平均電力が、各加熱パルスにおいてインダクタに供給される電力と比較して比較的低くなる。そのため、インダクタに結合されたサセプタを、プローブパルスの存在にも関わらず、加熱パルス間の時間間隔中に冷却することが可能になりうる。
【0021】
加熱パルス間の時間間隔の間にインダクタに結合されたサセプタの温度を監視することにより、インダクタに結合されたサセプタの温度に対する特に微細な制御が可能になりうる。これにより、電源電子回路が温度の急速かつ予想外の変化に迅速に反応することが可能になりうる。
【0022】
連続加熱パルス間の時間間隔の間にインダクタに供給されるプローブパルスの電流の測定値に基づいて連続加熱パルス間の期間を制御することは、先行技術の装置に勝るいくつかの利点を提供しうるが、これは以下に詳細に説明される。
【0023】
電源電子回路は、加熱パルス後の一つ以上のプローブパルスの一つ以上においてDC電源から供給される電流の測定値に基づいて、連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御するように特に構成される。上述の先行技術の文献で説明した通り、DC電源から供給される電流は、インダクタに結合されたサセプタの温度および見かけの抵抗に関連することが分かっている。従って、本発明の電源電子回路は、インダクタに結合されたサセプタの温度に間接的に基づいて、DC電源によって供給される電力の連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成される。連続加熱パルス間の各プローブパルスに対して測定された電流は、インダクタに結合されたサセプタの温度の間接的な測定を提供する。
【0024】
サセプタの温度に基づいて連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御することによって、本発明の誘導加熱装置は、加熱サイクル中にインダクタに結合されたエアロゾル発生物品のサセプタの温度変動を補正しうる。例えば、本発明の誘導加熱装置は、インダクタに結合されたサセプタの温度が最大閾値に到達またはそれより上昇するように決定された場合、連続パルス間の時間間隔の期間を増加させるように構成されてもよく、インダクタに結合されたサセプタの温度が最小閾値に到達するまたはそれより低くなるように見える場合、連続パルス間の時間間隔の期間を短縮するように構成されてもよい。
【0025】
本発明の誘導加熱装置は、その他の公知の誘導加熱装置と比較して、誘導加熱装置によって受けられるエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体の加熱を改善しうる。本発明の誘導加熱装置は、先行技術の誘導加熱装置と比較して、改善されたエアロゾル発生および改善されたユーザー体験をさらに提供しうる。
【0026】
特定のエアロゾル形成基体は、狭い温度範囲でのみ加熱された時に、満足のいくまたは許容可能なエアロゾルを生成しうる。このように、これらのエアロゾル形成基体は、インダクタに結合されたサセプタの加熱の微細または近接制御を可能にしない誘導加熱装置との使用に適していない場合がある。本発明の誘導加熱装置は、インダクタに結合されたサセプタの加熱の改善、微細または近接制御を提供し、本発明の誘導加熱装置をこうしたエアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品と併用することを可能にしうる。
【0027】
一部のエアロゾル形成基体は、約200℃~約240℃の間などの特定の温度範囲内だけで許容可能なエアロゾルを生成しうる。したがって、実施形態によっては、誘導加熱装置は、特定の温度または特定の温度辺りの、あるいは特定の温度範囲内のインダクタに結合されたサセプタの温度を維持するように構成されうる。
【0028】
本明細書で使用される「誘導加熱装置」という用語は、交流電磁場を生成する誘導源を含む装置を記述するために使用される。誘導源は、サセプタと結合しても相互作用してもよい。誘導源の交番磁界は、サセプタ内に渦電流を発生させてもよく、渦電流は抵抗加熱を通してサセプタを加熱しうる。サセプタはまた、ヒステリシス損失の結果としてさらに加熱されうる。
【0029】
本明細書に使用される時、「エアロゾル発生装置または電気加熱式エアロゾル発生装置」という用語は、エアロゾル形成基体を有するエアロゾル発生物品と相互作用してエアロゾルを発生する装置を記述するために使用される。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品と相互作用して、ユーザーの肺にユーザーの口を通して直接吸入可能なエアロゾルを発生する装置としうる。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品のホルダーとしうる。エアロゾル発生装置は誘導加熱装置であってもよく、誘導源を備えてもよい。
【0030】
本明細書で使用される「エアロゾル発生物品」という用語は、エアロゾル形成基体を含む物品を記述するために使用される。特に、本発明に関連して本明細書で使用される場合、「エアロゾル発生物品」という用語は、エアロゾル形成基体およびエアロゾル形成基体と熱連通するサセプタを含む物品を意味するために使用される。
【0031】
エアロゾル発生物品は、誘導加熱源を備えた電気的に動作するエアロゾル発生装置と係合するように設計されてもよい。誘導加熱源、またはインダクタは、エアロゾル発生物品が変動電磁場内に位置するとき、サセプタを加熱するための変動電磁場を発生することができる。使用時に、エアロゾル発生物品は、サセプタがインダクタによって発生させられた変動電磁場内に位置するように、電気的に動作するエアロゾル発生装置と係合しうる。
【0032】
本明細書に使用される用語「エアロゾル形成基体」は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を加熱に応じて放出することができる基体を記述するために使用される。本明細書に説明されるエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体から発生されるエアロゾルは、可視または不可視であってもよく、またベイパー(例えば、室温にて通常は液体または固体である物質の、気体状態にある物質の微粒子)ならびに気体および凝縮されたベイパーの液体の液滴を含んでもよい。
【0033】
「サセプタ」という用語は本明細書で使用される時、電磁エネルギーを熱に変換できる材料を意味する。変動電磁場の中に位置する時、サセプタ内で誘起される渦電流がサセプタの加熱を生じさせる。さらに、サセプタ内での磁気ヒステリシス損失が追加的なサセプタの加熱の原因となる。サセプタはエアロゾル形成基質と熱的に接するまたは近接する位置にあるため、エアロゾル形成基質はサセプタによって加熱される。
【0034】
サセプタおよびエアロゾル形成基体を参照して「熱的な近接さ」という用語が本明細書で使用されると、適切な量の熱がサセプタからエアロゾル形成基体の残りの部分に伝達されてエアロゾルを生成するように、サセプタがエアロゾル形成基体に対して位置していることを意味する。例えば、「熱的近接」という用語は、サセプタがエアロゾル形成基体と物理的に密着している実施形態を含むことを意味する。「熱的近接」という用語はまた、サセプタがエアロゾル形成基体から間隔を置いており、対流または放射を介してエアロゾル形成基体に適切な量の熱を伝達するように構成された実施形態を含むことを意味する。
【0035】
電源電子回路は、時間間隔で分離された二つ以上の加熱パルスにおいて、および連続加熱パルス間の時間間隔における一つ以上のプローブパルスにおいて、インダクタに電力を供給するように構成される。電源電子回路は、任意の適切な数の加熱パルスを供給するように構成されうる。電源電子回路は、加熱パルスのセットまたはグループを供給するように構成されうる。加熱パルスのセットまたはグループは、任意の適切な数の加熱パルスを含みうる。例えば、加熱パルスのセットまたはグループは、2~20の加熱パルスを含みうる。一部の実施形態では、加熱パルスの数は、エアロゾル発生体験に対して予め決定されていてもよい。一部の実施形態では、エアロゾル発生体験における加熱パルスの数は変化してもよい。エアロゾル発生体験における加熱パルスの数は、ユーザーによって制御可能であってもよい。電源電子回路は、連続加熱パルス間の任意の適切な数のプローブパルスを供給するように構成されうる。電源電子回路は、連続加熱パルス間のプローブパルスのセットまたはグループを供給するように構成されうる。例えば、プローブパルスのセットまたはグループは、1~50のプローブパルスを含みうる。連続加熱パルス間のプローブパルスの数は、変化してもよい。
【0036】
電源電子回路は、連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成される。インダクタに結合されたサセプタを、連続加熱パルス間の時間間隔で冷却することが可能であるため、電源電子回路は、連続加熱パルスの間の時間間隔の期間を制御して、一連における次のパルスの開始時のサセプタの温度を調整するように構成されうる。一部の実施形態では、加熱パルスの期間は、実質的に固定される、または一定であってもよい。しかし、一般的には、加熱パルスの期間は固定されない。電源電子回路は、後で詳細に説明する通り、加熱パルスにおいてDC電源によって供給される電流の一つ以上の測定値に基づいて、各加熱パルスの期間を制御するように構成されうる。そのため、各加熱パルスの期間は、加熱パルスにおけるサセプタの温度に依存しうる。
【0037】
加熱パルスの期間および連続加熱パルス間の時間間隔の期間の独立した調整は、インダクタに結合されたサセプタの特に効果的かつ効率的な加熱と、サセプタと熱的に近接するエアロゾル形成基体からの許容可能なエアロゾルの生成を提供しうる。
【0038】
二つの連続加熱パルス間の時間間隔の間、インダクタに結合されたサセプタを冷却することができる。二つの連続加熱パルス間の時間間隔の期間は、サセプタが許容可能なエアロゾルを発生するための最高温度より低い温度で冷却されるのに理想的な十分な長さであるが、サセプタが許容可能なエアロゾルを発生するための最低温度より低く冷却されるのに十分な長さではない。そのため、各サセプタおよびエアロゾル形成基体の配置は、連続加熱パルス間の時間間隔の異なる特定の理想的な期間を有しうる。
【0039】
DC電源からの電流の変動は、サセプタまたはエアロゾル発生物品の変化を示しうる。例えば、加熱パルスまたはプローブパルスのいずれかにおいて測定される電流の急激な増加は、サセプタが急速に冷却されたことを示しうる。サセプタの急速な冷却は、ユーザーによるエアロゾル発生物品の吸煙中にサセプタ上に引き出される空気から発生しうる。このように、誘導加熱装置の電源電子回路は、DC電源から供給される電流の測定値の変動に基づいて、吸煙を検出するように構成されうる。
【0040】
一般に、DC電源は、電力がDC電源からインダクタに供給されるときに定電圧を供給する。一般に、DC電源によって供給される電圧は各パルスにおいて実質的に類似している。DC電源によって供給される電圧は、各加熱パルスにおいて実質的に類似していてもよい。DC電源によって供給される電圧は、各プローブパルスにおいて実質的に類似していてもよい。各プローブパルスにおいてDC電源によって供給される電圧は、各加熱パルスにおいてDC電源によって供給される電圧と実質的に等しくてもよい。しかしながら、一部の実施形態では、各プローブパルスにおいてDC電源によって供給される電圧は、各加熱パルスにおいてDC電源によって供給される電圧よりも低くてもよい。
【0041】
プローブパルスは、任意の適切な期間を有してもよい。二つ以上のプローブパルスが、二つの連続加熱パルス間の時間間隔においてDC電源からインダクタに供給される場合、各プローブパルスは、実質的に類似した期間を有しうる。各プローブパルスの期間は、プローブパルス期間と実質的に等しくてもよい。プローブパルス期間は、予め決定された値であってもよい。プローブパルス期間は、電源電子回路のメモリ内に保存されうる。プローブパルス期間は、約2ミリ秒~約20ミリ秒、または約5ミリ秒~約15ミリ秒としうる。プローブパルス期間は、約10ミリ秒としうる。プローブパルス期間は一般的に、プローブパルスがインダクタに結合されたサセプタの温度を実質的に上昇させないように、加熱パルスの期間よりも実質的に短い。
【0042】
二つ以上のプローブパルスが、二つの連続加熱パルス間の時間間隔においてDC電源からインダクタに供給される場合、連続プローブパルスは、プローブパルス時間間隔で分離されうる。プローブパルス時間間隔は、予め決定された値であってもよい。プローブパルス時間間隔は、電源電子回路のメモリ内に保存されうる。一般的に、プローブパルス時間間隔の期間は、インダクタに結合されたサセプタをプローブパルス間で冷却することができるように、プローブパルス期間よりも長い。プローブパルス時間間隔は、実質的に一定または固定されていてもよい。プローブパルス時間間隔は、約50ミリ秒~約50ミリ秒、または約70ミリ秒~約120ミリ秒としうる。プローブパルス時間間隔の期間は、約90ミリ秒としうる。
【0043】
一連の二つ以上のプローブパルスが、二つの連続加熱パルス間の時間間隔においてDC電源からインダクタに供給され、かつ各プローブパルスがプローブパルス期間を有し、連続プローブパルスがプローブパルス時間間隔で分離されている場合、一連のプローブパルスまたはプローブパルスのシーケンスは、実質的に規則的でありうる。電源電子回路は、加熱パルスの終了後にプローブパルス時間間隔が経過した後に、一連における第一のプローブパルスに供給するように構成されうる。電源電子回路は、連続加熱パルス間の時間間隔が経過した時に、一連における最終プローブパルスの終了後にプローブパルス時間間隔が経過した後に、次の加熱パルスを供給するように構成されうる。
【0044】
一部の実施形態では、連続加熱パルス間のプローブパルスの数は、固定されてもよい。しかしながら、一般的に、連続加熱パルス間のプローブパルスの数は固定されていない。一般的に、連続加熱パルス間のプローブパルスの数は、連続加熱パルス間のサセプタの冷却速度に依存する。
【0045】
一部の実施形態では、電源電子回路は、連続加熱パルス間にDC電源からインダクタに、規則的な一連のプローブパルス、またはプローブパルスのシーケンスを供給するように構成される。各プローブパルスは、プローブパルス期間と実質的に等しい期間を有してもよく、連続プローブパルス間の時間間隔は、プローブパルス時間間隔と実質的に等しくてもよい。これらの実施形態では、連続加熱パルス間にインダクタに供給されるプローブパルスの数は、連続加熱パルス間の決定された時間間隔に依存する。
【0046】
一部の実施形態では、加熱パルスは、少なくとも第一の加熱パルスおよび第一の加熱パルスから時間間隔で分離された第二の加熱パルスを含む。電源電子回路は、第一の加熱パルスと第二の加熱パルスとの間の時間間隔における一つ以上のプローブパルスにおいてDC電源からインダクタに電力を供給するように構成されうる。電源電子回路はまた、一つ以上のプローブパルスにおいてDC電源から供給される電流の測定値に基づいて、第一の加熱パルスと第二の加熱パルスとの間の時間間隔の期間を制御するように構成されうる。
【0047】
一部の実施形態では、電源電子回路は、一つ以上のプローブパルスにおける電流の一つ以上の測定値を、一つ以上の標的条件と比較するように構成されうる。一つ以上のプローブパルスにおいてDC電源によって供給される電流の測定値は、次の加熱パルスが開始される前に、一つ以上の標的条件を満たすために必要とされうる。このように、電源電子回路は、一つ以上のプローブパルスにおける電流の一つ以上の測定値と一つ以上の標的条件との比較に基づいて、連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成されうる。一つ以上の標的条件は、電源電子回路のメモリ上に保存されてもよい。
【0048】
標的条件は、任意の適切な標的条件としうる。
【0049】
標的条件は、一つ以上のプローブパルスにおける電流の測定値と絶対値との比較を含みうる。例えば、標的条件は、基準電流値と実質的に等しいかまたはこれを上回るプローブパルスにおける電流の測定値を含みうる。基準電流値は、電源電子回路のメモリに保存されうる。電源電子回路は、プローブパルスにおいて測定された電流が基準電流値に実質的に等しいかこれを上回る場合に、第二の加熱パルスでDC電源からインダクタに電力を供給するように構成されうる。
【0050】
標的条件は、一連のプローブパルスにおける連続プローブパルスに対する電流の測定値間の比較など、相対値または条件を含みうる。例えば、標的条件は、一連のプローブパルスにおける連続プローブパルスに対する電流の測定値の低減を含みうる。電源電子回路は、連続プローブパルスにおいて測定された電流が減少する場合に、第二の加熱パルスでDC電源からインダクタに電力を供給するように構成されうる。
【0051】
一部の実施形態では、標的条件は、条件または標的のシーケンス、または一連の条件または標的を含みうる。電源電子回路は、連続プローブパルスにおける電流の測定値を、標的条件のシーケンスまたは一連の標的条件の各々と、シーケンスまたは一連の順に順番に比較するように構成されうる。
【0052】
一部の実施形態では、電源電子回路は、一連のプローブパルスにおいて測定された電流が一連のプローブパルスにおける最小電流であると決定し、一連のプローブパルスにおける最小電流が発生したと決定される場合に、第二の加熱パルスでインダクタに電力を供給するように構成されうる。電源電子回路は、任意の適切な方法で、一連のプローブパルスにおいて測定された電流が一連のプローブパルスにおける最小電流であると決定するように構成されうる。電源電子回路は、一連のプローブパルスにおける連続プローブパルスを比較し、第一の対の連続プローブパルスでDC電源から供給される電流が連続プローブパルス間で減少していると決定し、第二の対の連続プローブパルスでDC電源から供給される電流が連続プローブパルス間で増加していると決定することによって、一連のプローブパルスにおいて測定された電流が一連のプローブパルスにおける最小電流であると決定するように構成されうる。
【0053】
一部の実施形態では、電源電子回路のメモリ上に保存された標的条件のシーケンスは、第一の対の連続プローブパルスでDC電源から供給される電流が連続プローブパルス間で減少すること、および第二の対の連続プローブパルスでDC電源から供給される電流が連続プローブパルス間で増加していることを含みうる。第二の対の連続プローブパルスは、第一の対の連続プローブパルスの後の任意の適切な対の連続プローブパルスでありうる。例えば、第二の対の連続プローブパルスは、第一の対の連続プローブパルスの第二の一つを含み、第二の対の連続プローブパルスは、第一の対の連続プローブパルスの直後であってよく(すなわち、第二の対の連続プローブパルスの第一の一つが、第一の対の連続プローブパルスの第二の一つに対する連続プローブパルスであってもよい)、あるいは、一つ以上のプローブパルスは、第一の対の連続プローブパルスと第二の対の連続プローブパルスとの間でインダクタに供給されてもよい。
【0054】
一部の実施形態では、電源電子回路のメモリ上に保存される標的条件のシーケンスは、第一の対の連続プローブパルスでDC電源から供給される電流が連続プローブパルス間で減少すること、第二の対の連続プローブパルスでDC電源から供給される電流が連続プローブパルス間で増加すること、および、第二の対の連続プローブパルスの時、またはその後にDC電源から供給される電流が基準電流値以上であることを含みうる。
【0055】
一部の実施形態では、電源電子回路は、各加熱パルスに対して、DC電源から供給される電流が最小電流値にあるとき、DC電源から供給される電流が最大電力値にあるとき、および決定された最小電流値と最大電流値との間の中点、のうちの少なくとも一つを決定するように構成される。電源電子回路はさらに、決定された最小電流値、最大電流値、および中点電流値のうち少なくとも一つに基づいて、基準電流値または標的電流値を決定するように構成されうる。決定された基準値または標的値を標的条件としうる。電源電子回路は、連続加熱パルスと基準値または標的電流値との間で、一つ以上のプローブパルスにおけるDC電流の測定値間の比較に基づいて二つの連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成されうる。
【0056】
電源電子回路はさらに、プローブパルスにおける電流の一つ以上の測定値が標的条件に一致するとき、または第一の加熱パルスの終了後の期間が最大時間間隔の期間に達するときに、第二の加熱パルスでインダクタに電力を供給するように構成されうる。最大時間間隔の期間は、予め決定されていてもよい。最大時間間隔の期間は、電源電子回路のメモリに保存されてもよい。
【0057】
一部の実施形態では、電源電子回路は、第一の加熱パルスの終了から最大時間間隔の期間が経過した後に、第二の加熱パルスでDC電源からインダクタに電力を供給するように構成されうる。これにより、特定の期間内に標的条件が満たされなくても、サセプタを加熱するために、誘導加熱装置が引き続き加熱パルスをインダクタに供給することが可能になりうる。最大時間間隔の期間は、任意の適切な期間としうる。例えば、最大時間間隔の期間は、約3秒~約6秒、または約4秒~約5秒でありうる。最大時間間隔の期間は、約4.5秒であってもよい。最大時間間隔の期間は、電源電子回路のメモリに保存されてもよい。
【0058】
例示的な実施形態では、電源電子回路は、第一の加熱パルスにおいてDC電源からインダクタに電力を供給し、インダクタへの電力供給を中断して第一の加熱パルスを終了するように構成される。電源電子回路はさらに、第一の加熱パルスの終了からプローブパルスの時間間隔が経過した後に、第一のプローブパルスにおいてインダクタに電力を供給するように構成される。また、電源電子回路は、第一のプローブパルスでDC電源から供給される電流を測定し、第一のプローブパルスの開始からプローブパルス期間が経過した後に、インダクタへの電力供給を中断して第一のプローブパルスを終了するように構成される。電源電子回路は、第一のプローブパルスにおける電流の一つ以上の測定値を、一つ以上の標的条件と比較し、電流の一つ以上の測定値が標的条件に一致する場合に、第二の加熱パルスでインダクタに電力を供給するように構成される。
【0059】
さらなる例示的な実施形態において、電源電子回路は、第一のプローブパルスにおける電流の一つ以上の測定値が標的条件に一致しない場合に、第一のプローブパルスの終了からプローブパルス時間間隔が経過した後に、第二のプローブパルスにおいてインダクタに電力を供給するように構成される。電源電子回路はさらに、第二のプローブパルスでDC電源から供給される電流を測定し、第二のプローブパルスの開始からプローブパルス期間が経過した後にインダクタへの電力の供給を中断して第二のプローブパルスを終了するように構成される。電源電子回路はまた、第二のプローブパルスにおける電流の一つ以上の測定値を、一つ以上の標的条件と比較し、一つ以上のプローブパルスにおける電流の一つ以上の測定値が標的条件に一致する場合に、第二の加熱パルスでインダクタに電力を供給するように構成される。
【0060】
さらなる例示的な実施形態では、電源電子回路が引き続き、一連のプローブパルスにおいてDC電源からインダクタに電力を供給するように構成され、各プローブパルスは、プローブパルス期間と実質的に等しい期間を有し、連続プローブパルスは、プローブパルス時間間隔と実質的に等しい時間間隔で分離される。電源電子回路はさらに、プローブパルスにおける電流の一つ以上の測定値が標的条件に一致するとき、または第一の加熱パルスの終了後の期間が最大時間間隔の期間に達するときに、第二の加熱パルスでインダクタに電力を供給するように構成される。
【0061】
各加熱パルスについて、電源電子回路は、測定された電流値がインダクタに結合されたサセプタの温度が最大温度以上であることを示す場合、DC電源からインダクタへの電力供給を中断するように構成されうる。これを達成するために、インダクタに結合されたサセプタの最大温度に対応する基準最大電流値は、電源電子回路のメモリに保存されうる。電源電子回路は、DC電源からインダクタに供給される電流を測定し、測定された電流を保存された基準電流値と比較し、比較に基づいてDC電源からインダクタへの電力供給を中断するように構成されうる。例えば、基準最小電流値は、電源電子回路のメモリに保存されてもよく、測定された電流値が基準最小電流値に達するかまたは下回る場合、電源電子回路はDC電源からインダクタへの電力供給を中断するように構成されてもよい。一部の実施形態では、DC電源からインダクタへの電力供給の中断は、加熱パルスの終了を定義しうる。これらの実施形態では、加熱パルスの終了は、加熱パルスにおいてDC電源から供給される電流の測定値から決定される。これらの実施形態では、加熱パルスの期間は固定されていないが、インダクタに供給される電流に依存し、そのため、サセプタの温度に間接的に依存する。
【0062】
一部の実施形態では、電源電子回路は、各加熱パルスにおいてDC電源から測定された電流値の変化率の変化を検出するように構成されうる。これらの実施形態では、電源電子回路は、測定された電流値の変化率の変化の検出に基づいて、DC電源からインダクタへの電力供給を中断するように構成されうる。例えば、誘導加熱装置のインダクタに結合されたサセプタは、下記により詳細に説明する通り、エアロゾル形成基体のための任意の所定の最大加熱温度より低いキュリー温度を有する材料を含みうる。サセプタがキュリー温度に加熱されると、加熱パルスにおいて測定された電流値の変化率が変化しうる。言い換えれば、最大または最小などの極値は、サセプタ材料内で起きる相変化として測定された電流の変化率において検出されうる。これは、サセプタがキュリー温度にあり、かつエアロゾル形成基体が所定の最高温度にあるということを示しうる。従って、電源電子回路は、加熱パルスにおけるDC電源からの電力供給を中断して、エアロゾル形成基体のさらなる加熱を停止または防止するように構成されうる。一部の実施形態では、DC電源からインダクタへのこうした電力供給の中断は、各加熱パルスの終了を定義しうる。
【0063】
エアロゾル発生物品内のサセプタの温度を制御するために、サセプタを適応させるための様々な提案が当技術分野においてなされてきた。例えば、WO-A1-2015/177294号では、第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料を有するサセプタを備えるエアロゾル発生システムが提案されている。第一のサセプタ材料は、第二のサセプタ材料と熱的に近接している。
【0064】
第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料を有するサセプタを参照して「熱的近接」という用語が本明細書で使用されると、サセプタがインダクタによって発生した交流電磁場によって加熱されるとき、熱が第一のサセプタ材料と第二のサセプタ材料との間に移動されるように、第一のサセプタ材料が第二のサセプタ材料に対して位置付けられることを意味する。例えば、「熱的近接」という用語は、第一のサセプタ材料が第二のサセプタ材料と物理的に密着している実施形態を含むことを意味する。「熱的近接」という用語はまた、第一のサセプタ材料が第二のサセプタ材料ならびに第一および第二のサセプタ材料から間隔を置いている実施形態を含むことを意味する。
【0065】
一部の実施形態では、第一および第二のサセプタ材料は、密着したり物理的に密着したりして、単一のサセプタを形成してもよい。これらの実施形態では、加熱時には第一および第二のサセプタ材料は実質的に同一の温度を有する。
【0066】
エアロゾル形成基体の加熱のために最適化されうる第一のサセプタ材料は、エアロゾル形成基体のための所定の任意の最大加熱温度よりも高い第一のキュリー温度を有しうる。エアロゾル形成基体の温度を調節するために最適化されうる第二のサセプタ材料は、エアロゾル形成基体のための所定の任意の最大加熱温度よりも低い第二のキュリー温度を有しうる。サセプタが第二のキュリー温度に達すると、第二のサセプタ材料の磁性が変化する。第二のキュリー温度で、第二のサセプタ材料は強磁性の相から常磁性の相へと可逆的に変化する。エアロゾル形成基質の誘導加熱の間、第二のサセプタ材料のこの相変化は、第二のサセプタ材料との物理的接触なしに誘導加熱装置により検出されうる。相変化の検出により、誘導加熱装置がエアロゾル形成基質の加熱を制御することが許容されうる。
【0067】
例えば、第二のキュリー温度に関連する相変化が検出された時点で、誘導加熱は自動的に停止されうる。こうして、主としてエアロゾル形成基体の加熱を担う第一のサセプタ材料がキュリー温度、すなわち望ましい最大加熱温度よりも高い第一のキュリー温度を持たない場合でも、エアロゾル形成基体の過熱を回避することができる。誘導加熱が停止した後、サセプタは第二のキュリー温度よりも低い温度に達するまで冷却される。この時点で第二のサセプタ材料はその強磁性を再び獲得する。
【0068】
本発明の誘導加熱装置は、第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料を有するサセプタを含むエアロゾル発生物品を受けるように構成されうる。本発明の誘導加熱装置は、サセプタ内の第二のサセプタ材料の相変化の検出に基づいて、DC電源からインダクタへの電力供給を制御するようにさらに構成されうる。言い換えれば、本発明の誘導加熱装置の電源電子回路は、インダクタに結合されたサセプタの第二のサセプタ材料の相変化を検出し、相変化の検出に関してDC電源から供給される電力を停止または低減するように構成されうる。
【0069】
一部の特定の実施形態では、誘導加熱装置は、第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料と、を含むサセプタを備えるエアロゾル発生装置を受けるように構成されてもよく、第一のサセプタ材料は、第二のサセプタ材料に熱的に近接して配置され、第二のサセプタ材料は500℃よりも低いキュリー温度を有する。各加熱パルスについて、本発明の誘導加熱装置の電源電子回路は、DC電源にから供給される電流が最大電流値にあるときを決定し、最大電流値が決定されたときに、DC電源からインダクタへの電力供給を停止、低減または中断して加熱パルスを終了し、プローブパルスの測定された電流に基づいて決定された時間間隔後、第二の加熱パルスでDC電源からの電力供給を開始または増大させ、そのため、電力が一連の加熱パルスでDC電源からインダクタに供給されるように構成されうる。
【0070】
これらの特定の実施形態では、電源電子回路は、DC電源によって供給される電力の連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成されるだけでなく、DC電源から供給される電流の測定値に基づいて、各加熱パルスの期間を制御するようにも構成されている。
【0071】
DC電源から供給される電流と二つのサセプタ材料を有するサセプタの温度との間の関係は、特に
図9を参照しながら以下に詳述される。しかし、一般的に、DC電源から供給される電流のプロファイルは、サセプタが第二のキュリー温度に達すると一時的な屈折を示し、第二のサセプタ材料は相変化を経験する。
【0072】
例えば、これらの特定の実施形態の一部において、サセプタの見かけの抵抗は、サセプタが第二のキュリー温度に加熱されると増加する。サセプタが第二のキュリー温度に達すると、サセプタの見かけの抵抗が第一の極値を呈し、この例では最大であり、その後サセプタの見かけの抵抗が一時的に減少する。この一時的な減少は、相変化の間にその磁性を失う第二のサセプタに起因する。相変化が完了すると、サセプタの見かけの抵抗は、第二の極値、この例では、最小を示し、その後、DC電源がインダクタに電力を供給してサセプタを加熱し続けると、再びサセプタの見かけの抵抗が増大する。
【0073】
DC電源から供給される測定された電流は、オームの法則から予想されるように、サセプタの見かけの抵抗と逆の関係を示す。そのため、この例示的な実施形態では、サセプタが第二のキュリー温度に加熱されると、測定された電流は減少する。第二のキュリー温度では、測定された電流は最小IDCMINに達し、最大IDCMAXに達するまで一時的に増加する。その後、サセプタがさらに加熱されると、測定された電流は、再び減少する。
【0074】
本発明の誘導加熱装置の電源電子回路は、第二のサセプタ材料のキュリー移行を検出するように構成されうる。言い換えれば、本発明の誘導加熱装置の電源電子回路は、第二のサセプタ材料の相変化によって引き起こされるDC電源から供給される電流のプロファイルの一時的な屈折を検出するように構成されうる。キュリー移行の検出は、サセプタがエアロゾル形成基体を過熱することを避けるために、サセプタに供給される電力量を停止または減少させる時を電源電子回路が決定することを可能にしうる。
【0075】
DC電源から供給される電流の測定値の最大値または最小値などの極値の検出は、サセプタ材料の相変化が起こることを示しうる。特に、DC電源から供給される電流の最小値などの第一の極値の検出は、サセプタが第二のキュリー温度に達したことを示しうる。DC電源から供給される電流の最大値などの第二の極値の検出は、第二のサセプタ材料の位相変化が起こったことを示しうる。
【0076】
DC電源から供給される電流の屈折は、サセプタの温度のインジケータを提供する。第二のサセプタ材料のキュリー温度は、エアロゾル形成基体を点火することなく、エアロゾル形成基体から適切なまたは許容可能なエアロゾルを生成するための温度範囲内であるように選択されうる。
【0077】
一部の実施形態では、電源電子回路は、加熱パルスにおける電流の最大値を検出するように構成されうる。電源電子回路はさらに、最大値が検出された時に、DC電源からインダクタへの電力供給を中断するように構成されうる。この中断は、加熱パルスの終了を定義しうる。
【0078】
電源電子回路は、DC電源から供給される電源が加熱パルスにおける最小電流値にある時を決定するように構成されうる。
【0079】
一部の特定の実施形態では、電源電子回路は、加熱パルスの決定された最小電流値と加熱パルスの決定された最小電流値との間の中点を決定するように構成されうる。
【0080】
電源電子回路は、加熱パルスにおける、決定された最大電流値、最小電流値および中点電流値のうちの少なくとも一つを電源電子回路のメモリに保存するように構成されうる。また、電源電子回路は、一つ以上のプローブパルスにおける電流の測定値を、加熱パルスの保存された最大電流値、最小電流値および中点電流値のうちの少なくとも一つと比較するように構成されうる。電源電子回路は、比較に基づいて、連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成されうる。
【0081】
加熱パルスにおける、決定された最大電流値、最小電流値および中点電流値のうちの少なくとも一つを、所定の標的または基準値ではなく、それに対して一つ以上のプローブパルスにおける電流の測定値が比較される、標的または基準電流値として使用することで、本発明の誘導加熱装置は、複数の標的または基準値を電源電子回路のメモリ上に保存する必要なく、サセプタおよびエアロゾル形成基体の異なる配置で使用するのに適しうる。
【0082】
それぞれの特定のサセプタおよびエアロゾル形成基体の配置に対して、決定された最大および最小の電流値は、同一または非常に類似しているであろう。これは、それぞれの特定のサセプタおよびエアロゾル形成基体の配置に対して、サセプタが特定の温度にあるとき、決定された最大および最小の電流値が発生するからであり、それは各加熱パルスに対して同一であろう(すなわち、サセプタが第二のキュリー温度またはその近くである時)。したがって、決定された最大電流値と最小電流値との間の中点はまた、各連続加熱パルスに対して同一または非常に類似しているはずである。
【0083】
決定された最大電流値と最小電流値との間の中点は、各加熱パルスに対して特に適切な初期電流値であることが分かっている。したがって、加熱パルスの初期電流値が複数のパルスにわたって決定された最小C電流値と最大電流値との間の中点またはその付近で安定化するように、電源電子回路は連続パルス間の時間間隔の期間を調整するように構成されうる。
【0084】
一部の実施形態では、電源電子回路は、一つ以上のプローブパルスでDC電源から供給される電流およびDC電源の両端の電圧の一つ以上の測定値に基づいて、連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成される。電源電子回路は、一つ以上のプローブパルスにおける、DC電源から供給される電流およびDC電源の両端の電圧の一つ以上の測定値に基づいて、コンダクタンス値を判定するように構成されることが好ましい。コンダクタンス値は、電流測定値と電圧測定値の商または比から決定されうる。電源電子回路は、一つ以上の電流測定値および一つ以上の電圧測定値の商を決定するように構成されうる。言い換えれば、電源電子回路は、一つ以上の電流測定値を一つ以上の電圧測定値で割ることによって、コンダクタンス値を決定するように構成されうる。
【0085】
電源電子回路は、一つ以上の決定されたインダクタンス値に基づいて、連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成されることが好ましい。驚くべきことに、連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御することは、電流の測定値のみに基づく制御と比較して、サセプタの温度制御の安定性および信頼性の改善を提供することが分かっている。
【0086】
当然のことながら、本明細書で言及される電流の測定値に対するすべての参照は、電圧の測定値を追加的に含みうる。当然のことながら、本明細書で言及される電流の測定値に対するすべての参照は、電圧の測定値およびコンダクタンスの決定を追加的に含みうる。また、本明細書で言及される標的電流値および標的電流条件への参照は、標的コンダクタンス値および標的コンダクタンス条件を含みうることも理解されるであろう。言い換えれば、電流の一つ以上の測定値に基づいて、連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成される制御電子回路への参照は、電源電子回路がコンダクタンスの一つ以上の決定に基づいて連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成された実施形態も含みうる。
【0087】
本発明の第二の態様によれば、本発明の第一の態様の誘導加熱装置およびエアロゾル発生物品は、電気的に動作するエアロゾル発生システムを形成しうる。エアロゾル発生物品は、サセプタと熱的に近接したエアロゾル形成基体およびサセプタを備えうる。誘導加熱装置は、サセプタを受けて、エアロゾル発生物品が誘導加熱装置によって受けられる時にサセプタを加熱するように構成されうる。誘導加熱装置のインダクタは、サセプタ内の渦電流を誘発するための変動電磁場を生成して、サセプタを加熱することができる。
【0088】
本発明の誘導加熱装置または電気的に動作するエアロゾル発生装置は、ハウジングと、エアロゾル発生物品を受けるためのくぼみと、そのくぼみ内に変動電磁場を発生させるために配置されたインダクタと、インダクタに電力を供給するためのDC電源と、電源からインダクタへの電力供給を制御するよう構成された電源電子回路とを備えうる。
【0089】
誘導加熱装置は、インダクタに電力を供給するためのDC電源を備える。DC電源は、DC電源電圧および電流を供給するように構成される。DC電源は、適切な任意のDC電源としうる。例えば、DC電源は、単回使用電池または再充電可能電池としうる。実施形態によっては、電源はリチウムイオン電池でであってもよい。実施形態によっては、電源は、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、またはリチウム系電池(例えば、リチウムコバルト電池、リン酸鉄リチウム、チタン酸リチウム、またはリチウムポリマー電池)であってもよい。実施形態によっては、DC電源は、一つまたは複数のコンデンサ、スーパーコンデンサまたはハイブリッドコンデンサを備えうる。DC電源は、一つまたは複数のリチウムイオンハイブリッドコンデンサを含んでもよい。
【0090】
DC電源は、任意の適切なDC電圧および電流を供給するように構成されうる。DC電源は、約6.25ワット~約22.5ワットの間の範囲のDC電力に対応する、約2.5ボルト~約4.5ボルトの間の範囲のDC電圧および約2.5アンペア~約5アンペアの間の範囲の電流を供給するよう構成されうる。
【0091】
誘導加熱装置はまた、エアロゾル発生物品のサセプタに結合するインダクタを備える。インダクタはコイルを含んでもよい。コイルは、らせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルとしうる。インダクタは装置のくぼみの内部表面上またはそれに隣接して配置されうる。コイルはくぼみを囲みうる。実施形態によっては、インダクタコイルは、楕円形形状を有してもよく、約0.15cm3~約1.10cm3の範囲の内部容積を画定してもよい。例えば、らせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルの内径は約5mm~約10mmの間、または約7mmとすることができ、らせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルの長さは約8mm~約14mmの間としうる。インダクタコイルのワイヤーの直径または厚さは、円形断面のコイルワイヤーまたは平坦な長方形の断面のコイルワイヤーのどちらが使用されるかに応じて約0.5mm~約1mmの間としうる。らせん状に巻かれたインダクタコイルはくぼみの内部表面上またはそれに隣接して配置されうる。くぼみの内部表面上またはそれに隣接して配置されたらせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルにより、装置のサイズを小型化することができる。インダクタは、一つのコイルまたは二つ以上のコイルを含みうる。
【0092】
誘導加熱装置はまた、DC電源からインダクタへの電力供給を制御するように構成された電源電子回路を備える。
【0093】
電源電子回路は、DC電源からインダクタへの供給のためAC電流へ電流を変換するためのDC/ACコンバータまたはインバータを含みうる。
【0094】
DC/ACコンバータは、高周波で動作するように構成されうる。本明細書で使用されると、「高周波」という用語は、約1メガヘルツ(MHz)~約30メガヘルツ(MHz)、約1メガヘルツ(MHz)~約10MHz(約1MHz~約10MHzの範囲を含む)、および約5メガヘルツ(MHz)~約7メガヘルツ(MHz)(約5MHz~約7MHzの範囲を含む)の範囲の周波数を記述するために使用される。
【0095】
DC/ACコンバータは、LC負荷ネットワークを備えうる。LCネットワークは、エアロゾル発生物品のサセプタに結合するためのインダクタを備えうる。インダクタは、LC負荷ネットワーク内のコンデンサと直列に配置されうる。LC負荷ネットワークは、分路コンデンサをさらに備えうる。
【0096】
LC負荷ネットワークは、低オーム負荷で動作するように構成されうる。本明細書で使用される場合、「低オーム負荷」という用語は、約2オームより小さいオーム負荷を記述するために使用される。インダクタの電気抵抗は、一般的には十分の何オームであってもよい。一般に、サセプタの電気抵抗は、インダクタの電気抵抗よりも高くなり、それにより、サセプタは、エアロゾル形成基体を加熱するために、サセプタに供給される電力の大部分を熱に効率的に変換するよう構成されうる。サセプタの加熱中、サセプタの電気抵抗はまた、サセプタの温度が増加するにつれて一般的に増加する。動作の際には、サセプタの電気抵抗は、LC負荷ネットワークのオーム負荷を増加させるために、インダクタの電気抵抗に効果的に加えられうる。
【0097】
DC/ACコンバータは、電力増幅器を備えうる。具体的には、DC/ACコンバータは、トランジスタスイッチおよびトランジスタスイッチドライバ回路を備えるクラスE電力増幅器を備えうる。クラスE電力増幅器は一般に公知であり、Nathan O.Sokalのthe American Radio Relay League(ARRL),Newington,CT,U.S.Aの隔月雑誌QEXの2001年1月/2月版の9~20ページに記載された論文「Class-E RF Power Amplifiers」に詳細に説明されている。クラスE電力増幅器は、高周波数で動作するので有利でありうるが、同時に最小数の構成要素を備えた比較的単純な回路構造を有する(例えば、クラスE電力増幅器は、一個のトランジスタスイッチのみを必要し、これは、クラスD電力増幅器に比べて有利である。というのも、クラスD電力増幅器は、二個のトランジスタの一方がオフになっている時、二個のトランジスタの他方が確実にオンになるよう高周波数で制御される二個のトランジスタスイッチを必要とするからである)。さらに、クラスE電力増幅器については、スイッチング移行中のスイッチングトランジスタの両端間で低電力消費であることが公知である。クラスE電力増幅器は、単一のトランジスタスイッチのみを有するシングルエンドの一次クラスE電力増幅器でありうる。
【0098】
クラスE電力増幅器を備える実施形態では、トランジスタスイッチは任意の適切なタイプのトランジスタであってもよい。例えば、トランジスタは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)または金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)などのバイポーラ接合トランジスタ(BJT)または電界効果トランジスタ(FET)であってもよい。
【0099】
クラスE電力増幅器は出力インピーダンスを有し、電源電子回路はさらに、クラスE電力増幅器の出力インピーダンスをLC負荷ネットワークの低オーム負荷に整合させるための整合ネットワークを備えうる。例えば、整合ネットワークは小型の整合変成器を備えうる。整合ネットワークは、インバータまたはコンバータとインダクタとの間の電力伝達効率を改善しうる。
【0100】
電源電子回路はまた、マイクロコントローラを備えうる。マイクロコントローラは、DC電源によってインダクタに供給される電力の各パルスの期間を制御するようにプログラムされてもよい。マイクロコントローラは、DC電源によってインダクタに供給される電力の連続パルス間の時間間隔の期間を制御するようにプログラムされてもよい。マイクロコントローラは、誘導加熱装置と係合するエアロゾル発生物品のサセプタの見かけの抵抗(Ra)を決定するようにプログラムされてもよい。マイクロコントローラは、DC電源から供給されるDC電圧(VDC)およびDC電源から引き出される電流(IDC)のうちの少なくとも一つの測定値からのサセプタの見かけの抵抗(Ra)を決定するようにプログラムされてもよい。マイクロコントローラは、見かけの抵抗(Ra)からエアロゾル発生物品のサセプタの温度を決定するようにさらにプログラムされてもよい。マイクロコントローラはまた、サセプタの温度からエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体の温度を決定するようにさらにプログラムされてもよい。
【0101】
電源電子回路は、DC電源から引き出される電流を測定するように構成されうる。電源電子回路は、DC電源から引き出される電流を測定するための電流センサーを含みうる。電源電子回路は、適切な任意の電流センサーを備えうる。
【0102】
電源電子回路はまた、DC電源によって供給されるDC電圧を測定するように構成されうる。電源電子回路は、DC電源によって供給されるDC電圧を測定するための電圧センサーを備えうる。電源電子回路は、任意の適切な電圧センサーを備えうる。
【0103】
サセプタの見かけの抵抗は、DC電圧およびDC電源から引き出される電流の測定値から決定されうることが分かっている。驚くべきことに、サセプタの見かけの抵抗は、サセプタの温度の所定の範囲にわたる厳密なモノトニック関係におけるサセプタの温度と共に変化する。この厳密なモノトニック関係により、見かけの抵抗のそれぞれの決定された値はただ一つの単一の値を表すものであり、関係に曖昧さがないため、見かけの抵抗の決定からサセプタの温度について明瞭な決定が可能になる。サセプタの温度と見かけの抵抗との間の関係はモノトニックであるが、必ずしも線形ではない。こうしてサセプタの温度と見かけの抵抗とのモノトニック関係は、サセプタの温度を決定および制御することができるようにし、したがってエアロゾル形成基体の温度を決定および制御することができる。
【0104】
サセプタの見かけの抵抗は、オームの法則に従い、DC電源から引き出される電流とDC電源によって供給されるDC電圧との間の既知の関係から算出されうる。一般に、サセプタの見かけの抵抗は、DC電源から引き出される電流の測定値に基づいて決定される。サセプタの見かけの抵抗はまた、DC電源から供給されるDC電圧の測定値に基づいて決定されうる。しかし、実施形態によっては、DC電源は、一定のDC電圧値を供給するように構成されうる。これらの実施形態では、DC電源によって供給される定電圧値は既知であってもよく、電源電子回路のマイクロプロセッサのメモリなどに保存されてもよく、かつサセプタの見かけの抵抗の決定に使用されてもよい。したがって、一定電圧DC電源を含む実施形態では、電源電子回路が、DC電源によって供給されるDC電圧を測定するよう構成されることが必須ではない。これは、電源電子回路の構成要素の数、複雑さ、サイズ、およびコストのうちの一つまたは複数を減少させうる。当然のことながら、一定の電圧DC電源を備える一部の実施形態では、電源電子回路は、DC電源によって供給されるDC電圧を測定するように構成されてもよく、DC電圧の測定値は、サセプタの見かけの抵抗の決定に使用されてもよい。
【0105】
実施形態によっては、DC電源が定電圧値を供給するDC電源を備える場合、電源電子回路は、定電圧DC電源によって供給される定電圧値を示す基準定電圧値を保存するように構成されうる。これらの実施形態では、電源電子回路は、DC電源によって供給されるDC電圧を監視する必要がない場合がある。ただし、これらの実施形態では、DC電源によって供給されるDC電圧値を監視するために電圧センサーも提供されうることが理解されるであろう。
【0106】
電源電子回路はまた、DCチョークとして配置された追加的なインダクタを備えうる。
【0107】
電源電子回路のサイズまたは合計容積は、特に小さくてもよい。例えば、電源電子回路のサイズまたは合計容積は2cm3以下としうる。この小さなサイズは、電源電子回路の少ない数の構成要素によるものである。LC負荷ネットワークのインダクタが、エアロゾル形成物品のサセプタへの誘導結合のためのインダクタとして使用される実施形態では、特に小さなサイズまたは容積が可能である。整合ネットワークを含まない実施形態でも、特に小さなサイズまたは容積が可能である。電源電子回路の小さなサイズまたは小さな容積は、誘導加熱装置の全体的なサイズまたは容積を特に小さく保つのに役立つ。
【0108】
誘導加熱装置はまた、エアロゾル発生物品を受けるためのくぼみを備える。くぼみは、エアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体の少なくとも一部分を収容するよう形状設定された内部表面を有しうる。くぼみは、くぼみ内にエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体の一部分が収容されると、動作時にLC負荷ネットワークのインダクタがエアロゾル形成基体のサセプタに誘導結合されるように配置されてもよい。この配置は、LC負荷ネットワークのインダクタが、エアロゾル発生物品のサセプタに連結され、渦電流の誘導を通してサセプタを加熱することを可能にしうる。この配置により、クラスE電力増幅器の出力インピーダンスを負荷に整合させるための整合ネットワークなどの追加的構成要素の必要性がなくなり、従って、電源電子回路のサイズのさらなる最小化が可能になる。
【0109】
誘導加熱装置は、装置を操作するための手段を備えうる。実施形態によっては、装置を動作させるための手段として、単純なユーザー操作スイッチを備えうる。
【0110】
全体的に、本発明の誘導加熱装置は、小型で使いやすく、効率的、清潔および堅牢な加熱装置を提供する。これは、主に基体の非接触加熱および電源電子回路の配置および構成に起因する。
【0111】
上述のように、低オーム負荷を形成し、LC負荷ネットワークのインダクタの電気抵抗よりも著しく高い電気抵抗を有するサセプタについては、本発明の誘導加熱装置は、約五秒の時間、または一部の実施形態では五秒未満の時間でさえ300~400℃の範囲の温度にサセプタを加熱しうる。同時に、誘導加熱装置のインダクタの温度は、インダクタ内ではなく、サセプタ内の熱に変換される電力の大部分によってサセプタの温度よりも十分に低く維持されうる。
【0112】
実施形態によっては、誘導加熱装置は、エアロゾル形成基体が約200℃~約240℃の間の平均温度に加熱されうるように、エアロゾル形成基体内に配置されたサセプタに電力を供給するように構成されうる。
【0113】
誘導加熱装置は、約1キロアンペア/メートル(Ka/m)~約5Ka/mの間、約2Ka/m~約3Ka/mの間、または約2.5Ka/mの磁界強度(H-場強度)を有する変動電磁場を生成することができうる。誘導加熱装置は、約1メガヘルツ~約30メガヘルツの間、約1メガヘルツ~約10メガヘルツの間、または約5メガヘルツ~約7メガヘルツの間の周波数を有する変動電磁場を生成することができうる。
【0114】
誘導加熱装置は、ユーザーが単一の手の指の間に持ちやすい、携帯用の、またはハンドヘルドの電気的に動作するエアロゾル発生装置でもよい。
【0115】
誘導加熱装置は、約70mm~約120mmの間の長さであってもよい。
【0116】
誘導加熱装置は、実質的に円筒形の形状であってもよい。
【0117】
具体的には、誘導加熱装置は、装置ハウジングおよび装置ハウジング内に配置されたくぼみを備え、くぼみは、エアロゾル形成基体の少なくとも一部分を収容するように形状設定された内部表面形状を有し、くぼみ内に前記エアロゾル形成基体の一部を収容すると、インダクタが、前記装置の動作中に誘導加熱装置のサセプタに誘導結合されるように配置される。電源電子回路はまた、高周波で動作するように構成されてもよく、DC/ACコンバータは、低いオーム負荷で動作するように構成されたLC負荷ネットワークを備え、LC負荷ネットワークは、コンデンサおよびオーム抵抗を有するインダクタの直列接続を備え、電源電子回路はDC電源からインダクタへ供給される電力を制御するようにプログラムされるマイクロコントローラを備える。
【0118】
本発明の第二の態様によれば、エアロゾル発生物品もエアロゾル発生システムの一部として提供されてもよい。エアロゾル発生物品は、口側の端(すなわち、近位端であり、それを通してエアロゾルがエアロゾル発生物品を出て、ユーザーに送達される)と、遠位端との二つの端部を含むロッドの形態であってもよい。使用において、ユーザーはエアロゾル発生物品によって発生されるエアロゾルを吸入するために口側の端で吸ってもよい。口側の端は遠位端の下流である。また、遠位端は上流端と呼ばれてもよく、口側の端の上流にある。
【0119】
用語「上流」および「下流」は本明細書で使用される時、ユーザーがそれらの使用の間、エアロゾル発生物品を吸い込む方向に関してエアロゾル発生物品の要素または要素の部分の相対位置を記述するために使用される。
【0120】
用語「長軸方向」はエアロゾル発生物品に関連して本明細書で使用される時、エアロゾル発生物品の口側の端と遠位端との間の方向を記述するため使用され、用語「横軸」は長軸方向に対して垂直な方向を記述するために使用される。
【0121】
用語「直径」はエアロゾル発生物品に関連して本明細書で使用される時、エアロゾル発生物品の横軸方向における最大寸法を記述するために使用される。用語「長さ」はエアロゾル発生物品に関連して本明細書で使用される時、エアロゾル発生物品の長軸方向における最大寸法を記述するために使用される。
【0122】
エアロゾル発生物品はサセプタを備える。サセプタはエアロゾル形成基体と熱的に近接して配置される。こうして、サセプタの温度が高くなると、エアロゾル形成基体は加熱され、エアロゾルが形成される。サセプタは、例えばエアロゾル形成基体内で、エアロゾル形成基体と物理的に直接接触してまたは密着して配列されてもよい。
【0123】
サセプタは、ピン、ロッド、またはブレードの形態でありうる。サセプタの長さは、約5mm~約15mmの間、約6mm~約12mmの間、または約8mm~約10mmの間でありうる。サセプタの幅は、約1mm~6mmの間であってもよく、厚さは、約10マイクロメートル~約500マイクロメートルの間または約10~約100マイクロメートルの間であってもよい。サセプタが一定の断面(例えば、円形断面)を有する場合、幅または直径は約1mm~5mmの間としうる。
【0124】
サセプタは、その幅寸法またはその厚さ寸法よりも大きい、例えばその幅寸法またはその厚さ寸法の二倍より大きい長さ寸法を有しうる。こうして、サセプタは細長いサセプタとして描写されうる。サセプタはロッド内に実質的に長軸方向に配列されうる。これは、細長いサセプタの長さ寸法が、ロッドの長軸方向とほぼ平行に、例えばロッドの長軸方向に平行から±10度以内に配列されることを意味する。細長いサセプタ素子はロッド内の半径方向に中心の位置に位置付けられてもよく、ロッドの長軸方向に沿って延在してもよい。
【0125】
実施形態によっては、エアロゾル発生物品は単一のサセプタを含みうる。実施形態によっては、エアロゾル発生物品は二つ以上のサセプタを備えうる。エアロゾル発生物品は二つ以上の細長いサセプタを備えうる。こうして、加熱はエアロゾル形成基体の異なる部分で効果的に達成されうる。
【0126】
一部の好ましい実施形態では、サセプタは第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料を含む。その第一のサセプタ材料はその第二のサセプタ材料と熱的に近接して配置される。その第一のサセプタ材料はその第二のサセプタ材料と物理的に密着して配置される。その第二のサセプタ材料のキュリー温度は500℃より低くてもよい。その第一のサセプタ材料は、変動電磁場にサセプタが配置されるときにそのサセプタを加熱するために主に使用されてもよい。あらゆる適切な材料を使用してよい。例えば、第一のサセプタ材料はアルミニウムであってよく、またはステンレス鋼などの鉄材料であってよい。第二のサセプタ材料は、サセプタが特定の温度(第二のサセプタ材料のキュリー温度である)に達した時を示すために主に使用することができる。その第二のサセプタ材料のキュリー温度を使用して、操作中にサセプタ全体の温度を調節することができる。従って、第二のサセプタ材料のキュリー温度はエアロゾル形成基体の発火点未満である必要がある。第二のサセプタ材料に適切な材料は、ニッケルおよびある特定のニッケル合金を含んでもよい。
【0127】
少なくとも第一および第二のサセプタ材料を有するサセプタに、キュリー温度を有する第二サセプタ材料とキュリー温度を有しない第一サセプタ材料を提供するか、または互いに異なる第一のキュリー温度と第二のキュリー温度を有する第一および第二のサセプタ材料を提供することによって、エアロゾル形成基体の加熱とその加熱の温度制御が分離されうる。第一のサセプタ材料は、熱損失つまり加熱効率について最適化しうる一方で、第二のサセプタ材料は温度制御について最適化しうる。第二のサセプタ材料は、いかなる明白な加熱特性も有する必要はない。第二のサセプタ材料は、第一のサセプタ材料の所定の望ましい最大加熱温度に対応するキュリー温度、すなわち第二のキュリー温度を有するように選択しうる。「第二のキュリー温度」という用語は本明細書で使用される時、第二のサセプタ材料のキュリー温度を意味する。
【0128】
より具体的には、サセプタは、第一のキュリー温度を有する第一のサセプタ材料および第二のキュリー温度を有する第二のサセプタ材料を含み、第一のサセプタ材料が第二のサセプタ材料と熱的に近接して配置されてもよい。第二のキュリー温度は第一のキュリー温度より低くてもよい。
【0129】
望ましい最大加熱温度は、エアロゾル形成基質の局所的な過熱または燃焼が回避されるように定義されうる。第一および第二のサセプタ材料を含むサセプタは単一体の構造を有し、二材料サセプタまたは複数材料サセプタと呼ぶことができる。第一および第二のサセプタ材料がすぐ近くにあることは、正確な温度制御を提供するにあたって有利でありうる。
【0130】
第一のサセプタ材料は、500℃より高いキュリー温度を有する磁気材料であってもよい。加熱効率の観点から、第一のサセプタ材料のキュリー温度は、サセプタが加熱されることができる任意の最高温度を超えることが望ましい。第二のキュリー温度は400℃より低くなるように選択されてもよく、約380℃よりも低いか、または約360℃より低くてもよい。第二のサセプタ材料は、所望の最大加熱温度と実質的に同じである第二のキュリー温度を有するように選択された磁性材料であってもよい。すなわち、第二のキュリー温度は、エアロゾル形成基体からエアロゾルを発生させるためにサセプタが加熱されるべき温度とほぼ同じであってもよい。その第二のキュリー温度は、例えば約200℃~約400℃の範囲内、または約250℃~約360℃の間でありうる。
【0131】
実施形態によっては、第二のサセプタ材料の第二のキュリー温度は、第二のキュリー温度に等しい温度のサセプタによって加熱される際に、エアロゾル形成基体の全体的な平均温度が240℃を超えないように選択される場合がある。本明細書では、エアロゾル形成基体の全体的な平均温度はエアロゾル形成基体の中心領域および周辺領域での複数の温度測定値の算術平均として定義される。全体的な平均温度についての最大値を予め定義することによって、エアロゾルが最適に生成されるようにエアロゾル形成基体が調整される場合がある。
【0132】
第一のサセプタ材料は最大加熱効率について選択されてもよい。変動磁場内に位置する磁性サセプタ材料の誘導加熱は、サセプタ内で誘起される渦電流による抵抗加熱と、磁気ヒステリシス損失によって生成される熱との組み合わせによって起こる。
【0133】
実施形態によっては、第一のサセプタ材料は、400℃を超えるキュリー温度を有する強磁性の金属であってもよい。第一のサセプタは、鋼鉄または鉄ニッケル合金などの鉄または鉄合金であってもよい。第一のサセプタ材料は等級410のステンレス鋼、または等級420のステンレス鋼、または等級430のステンレス鋼など、400シリーズのステンレス鋼であってもよい。
【0134】
実施形態によっては、第一のサセプタ材料はアルミニウムなどの適切な非磁性材料でもよい。非磁性材料では、誘導加熱は渦電流による抵抗加熱によってのみ起こる。
【0135】
第二のサセプタ材料は、所望の範囲内、例えば200℃~400℃の間の特定の温度で検出可能なキュリー温度を有するために選択されうる。第二のサセプタ材料もサセプタの加熱に寄与しうるが、この特性はそのキュリー温度よりも重要ではない。第二のサセプタ材料は、ニッケルまたはニッケル合金などの強磁性金属であってもよい。ニッケルは約354℃のキュリー温度を有するが、これはエアロゾル発生物品内の加熱の温度制御にとって理想的なものでありうる。
【0136】
第一および第二のサセプタ材料は密着して単一体のサセプタを形成するなど、熱的に近接してもよい。こうして、加熱時には第一および第二のサセプタ材料は同一の温度を有する。エアロゾル形成基質の加熱のために最適化されうる第一のサセプタ材料は、所定の任意の最大加熱温度よりも高い第一のキュリー温度を有しうる。
【0137】
サセプタは、特定のインダクタと併用した時に、分散エネルギーが1ワット~8ワットの間、例えば1.5ワット~6ワットの間となるように構成されうる。構成という用語は、サセプタが特定の第一のサセプタ材料を備えることができ、また既知の周波数および既知の磁界強度の変動磁場を発生する特定の導体と併用した時、1ワット~8ワットの間のエネルギー分散が許容される特定の寸法を有しうることを意味する。
【0138】
第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料を有する適切なサセプタは、国際特許公開番号WO-A1-2015177294A1により詳細に記述される。
【0139】
エアロゾル発生物品はまたエアロゾル形成基体を含む。エアロゾル形成基体は固体エアロゾル形成基体であってもよい。エアロゾル形成基体は固体成分と液体成分の両方を含んでもよい。
【0140】
エアロゾル形成基体はニコチンを含む場合がある。実施形態によっては、エアロゾル形成基体はたばこを含んでもよい。例えば、エアロゾル形成材料は均質化したたばこシートから形成されうる。エアロゾル形成基体は、均質化したたばこシートを集結して形成されたロッドとしうる。エアロゾル形成基体は、均質化したたばこ材料の集結し、テクスチャ加工されたシートを含みうる。エアロゾル形成基体は、均質化したたばこ材料の集結し、捲縮したシートの集合体を含んでもよい。
【0141】
用語「均質化したたばこ材料」は本明細書で使用される時、粒子状たばこを凝集することによって形成される材料を意味する。本明細書に使用される「シート」という用語は、実質的にその厚さより大きい幅および長さを有する薄層状の要素を意味する。本明細書に使用される「集められた」という用語は、巻き込まれ、折り畳まれ、または別途エアロゾル発生物品の長軸方向軸に対して実質的に横断方向に圧縮され、または収縮したシートを説明するために使用される。本明細書で使用される「テクスチャ加工されたシート」という用語は、捲縮され、型押しされ、デボス加工され、穿孔され、または別途変形されたシートを意味する。本明細書で使用される「捲縮したシート」という用語は、複数の実質的に平行した隆起またはしわを有するシートを意味する。
【0142】
エアロゾル形成基体は非たばこ含有エアロゾル形成材料を含んでもよい。例えば、エアロゾル形成材料はニコチン塩およびエアロゾル形成体を含むシートから形成されうる。
【0143】
エアロゾル形成基体は少なくとも一つのエアロゾル形成体を含んでもよい。本明細書で使用される「エアロゾル形成体」という用語は、使用において、エアロゾルの形成を容易にし、実質的にエアロゾル発生物品の使用温度にて熱分解に対して抵抗性である任意の適切な公知の化合物または化合物の混合物を記述するために使用される。適切なエアロゾル形成体は、当技術分野において公知である。
【0144】
エアロゾル形成基体が固体のエアロゾル形成基体である場合、固体のエアロゾル形成基体は、薬草の葉、たばこ葉、たばこの茎、膨化たばこおよび均質化したたばこのうち一つまたは複数を含む、例えば、粉末、顆粒、ペレット、断片、より糸、細片またはシートのうち一つまたは複数を含みうる。固体のエアロゾル形成基体は、たばこまたは非たばこ揮発性風味化合物を含んでもよく、それは固体のエアロゾル形成基体の加熱に応じて放出される。固体エアロゾル形成基体はまた、例えば追加的なたばこ揮発性風味化合物または非たばこ揮発性風味化合物を含む一つ以上のカプセルを含有してもよく、このようなカプセルは固体エアロゾル形成基体の加熱中に溶融してもよい。
【0145】
固体のエアロゾル形成基体は、熱的に安定な担体上に提供されてもまたはその中に包埋されてもよい。
【0146】
エアロゾル形成基体は、紙またはその他のラッパーによって取り囲まれたエアロゾル形成材料を含むプラグの形態であってもよい。エアロゾル形成基体がプラグの形態である場合、任意のラッパーを含めてプラグ全体がエアロゾル形成基体であると考えられる。一つまたは複数のサセプタは細長くてもよく、一つまたは複数の細長いサセプタは、エアロゾル形成材料と物理的に直接接触してまたは物理的に密着してプラグ内に位置付けられてもよい。
【0147】
エアロゾル形成基体の外径は、少なくとも5mmであってもよい。エアロゾル形成基体の外径は、約5mm~約12mmの間としうる。実施形態によっては、エアロゾル形成基体の外径は、7.2mm±10%としうる。
【0148】
エアロゾル形成基体の長さは、約5mm~約15mmの間としうる。細長いサセプタは、エアロゾル形成基体とほぼ同じ長さであってもよい。
【0149】
エアロゾル形成基体は実質的に円柱状でもよい。
【0150】
エアロゾル発生物品はまた、エアロゾル形成基体の直ぐ下流に位置する支持要素を備えうる。支持要素は、エアロゾル形成基体に隣接しうる。
【0151】
エアロゾル発生物品はまた、エアロゾル形成基体の下流に位置するエアロゾル冷却要素を備えてもよく、例えばエアロゾル冷却要素は支持要素のすぐ下流に位置することも、支持要素に隣接することもできる。エアロゾル冷却要素は、支持要素とエアロゾル発生物品の最端の下流端に位置するマウスピースとの間に位置してもよい。エアロゾル冷却要素は、熱交換器と呼ばれてもよい。
【0152】
エアロゾル発生物品はエアロゾル発生物品の口側の端に位置するマウスピースをさらに含んでもよい。マウスピースはエアロゾル冷却要素のすぐ下流に位置することも、またエアロゾル冷却要素に隣接することもできる。マウスピースはフィルターを備えてもよい。フィルターは、一つ以上の適切な濾過材料で形成されてもよい。多くのこのような濾過材料は当技術分野で公知である。一実施形態において、マウスピースは酢酸セルローストウで形成されるフィルターを備えてもよい。
【0153】
エアロゾル形成物品の要素、例えばエアロゾル形成基体およびエアロゾル発生物品のその他の任意の要素(支持要素、エアロゾル冷却要素、およびマウスピースなど)は、外側ラッパーによって取り囲まれてもよい。外側ラッパーは任意の適切な材料または材料の組み合わせから形成されてもよい。外側ラッパーは紙巻たばこ用紙であってもよい。
【0154】
エアロゾル発生物品の外径は、およそ5mm~およそ12mmの間、例えばおよそ6mm~およそ8mmの間であってもよい。エアロゾル発生物品の外径は7.2mm±10%としうる。
【0155】
エアロゾル発生物品の全長は、約30mm~約100mmの間であってもよい。エアロゾル発生物品の全長は、40mm~約50mmの間、例えば、約45mmとしうる。
【0156】
本発明の第三の態様によると、本発明の第一の態様による誘導加熱装置を操作するための方法が提供されている。その方法は、
エアロゾル発生物品が誘導加熱装置によって受けられる時に、エアロゾル発生物品のサセプタを加熱するため、DC/ACコンバータを介して、DC電源からインダクタに電力を供給することであって、電力供給は、時間間隔で分離された複数のパルスで提供され、パルスは、二つ以上の加熱パルスおよび連続加熱パルス間の一つ以上のプローブパルスを含む、供給することと、
一つ以上のプローブパルスにおいてDC電源から供給される電流の一つ以上の測定値に基づいて、連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御することと、を含む。
【0157】
一部の実施形態では、方法はさらに、
第一の加熱パルス、および第一の加熱パルスから時間間隔で分離した第二の加熱パルスにおいてインダクタに電力を供給することと、
第一の加熱パルスと第二の加熱パルスとの間の時間間隔における一つ以上のプローブパルスにおいてインダクタに電力を供給することと、
一つ以上のプローブパルスにおいてDC電源から供給される電流を測定することと、
第一の加熱パルスと第二の加熱パルスとの間の一つ以上のプローブパルスにおいてDC電源から供給される電流の測定値に基づいて、第一の加熱パルスと第二の加熱パルスとの間の時間間隔の期間を決定することと、を含む。
【0158】
方法は、第一の加熱パルスと第二の加熱パルスとの間の時間間隔において一つ以上のプローブパルスを供給することを含みうる。各プローブパルスは、プローブパルス期間と実質的に等しい期間を有しうる。二つ以上のプローブパルスがインダクタに供給される場合、各連続プローブパルスは、プローブパルス時間間隔の期間に実質的に等しい時間間隔で分離されうる。
【0159】
例示的な実施形態では、方法は、
第一の加熱パルスにおいてDC電源からインダクタに電力を供給することと、
インダクタへの電力供給を中断して第一の加熱パルスを終了することと、
第一の加熱パルスの終了からプローブパルス時間間隔が経過した後に、第一のプローブパルスにおいてインダクタに電力を供給することと、
第一のプローブパルスでDC電源から供給される電流を測定することと、
第一のプローブパルスの開始からプローブパルス期間が経過した後に、インダクタへの電力の供給を中断して第一のプローブパルスを終了することと、
第一のプローブパルスの終了からプローブパルス時間間隔の期間が経過した後に、第二のプローブパルスにおいてインダクタに電力を供給することと、
第二のプローブパルスにおいてDC電源から供給される電流を測定することと、
第二のプローブパルスの開始からプローブパルス期間が経過した後に、インダクタへの電力の供給を中断して第二のプローブパルスを終了することと、を含みうる。
【0160】
方法は、第一の加熱パルスの終了から決定した時間間隔が経過した後に、第二の加熱パルスでDC電源からインダクタに電力を供給することを含みうる。方法は、第一の加熱パルスと第二の加熱パルスとの間の一連のプローブパルスの終了からプローブパルスの時間間隔の期間が経過した後に、第二の加熱パルスにおいてDC電源からインダクタに電力を供給することを含みうる。
【0161】
各プローブパルスにおいてDC電源から供給される電流は、プローブパルスにおける任意の適切な時間において測定されうる。一部の実施形態では、電流は、プローブパルスの開始時に測定されてもよい。一部の実施形態では、各プローブパルスにおける電流は、プローブパルスの終了において測定されてもよい。言い換えれば、各プローブパルスの最終電流を測定してもよい。一部の実施形態では、複数の現在の電流測定値を、各プローブパルスにわたって取ってもよい。
【0162】
一部の実施形態では、第一の連続加熱パルスと第二の連続加熱パルスとの間の時間間隔の期間の決定は、一つ以上の標的条件を電源電子回路のメモリ上に保存することと、一つ以上のプローブパルスにおいてDC電源から供給される電流の一つ以上の測定値を、一つ以上の標的条件と比較することと、比較に基づいて、第一の加熱パルスと第二の加熱パルスとの間の時間間隔の期間を決定することと、を含みうる。
【0163】
一部の実施形態では、第一の加熱パルスと第二の加熱パルスとの間の時間間隔の期間を決定することはさらに、一つ以上のプローブパルスにおいてDC電源から供給される電流の一つ以上の測定値を比較することと、一つ以上のプローブパルスにおいてDC電源から供給される電流の一つ以上の測定値が標的条件に一致する場合に、第二の加熱パルスでインダクタに電力を供給することと、を含む。
【0164】
一部の実施形態では、電源電子回路のメモリ上に保存される標的条件は、一連の条件または標的を含みうる。例えば、一部の実施形態では、電源電子回路のメモリ上に保存される標的条件は、
第一の対の連続プローブパルスでDC電源から供給される電流が、連続加熱パルス間で減少することと、
第二の対の連続プローブパルスでDC電源から供給される電流が、連続プローブパルス間で増加することと、
第二の対の連続プローブパルス時またはその後にDC電源から供給される電流が、基準電流値以上であることと、を含みうる。
【0165】
一部の実施形態では、方法は、基準最大時間間隔を電源電子回路のメモリ上に保存することと、第一の加熱パルスの終了後に基準最大時間間隔が経過した時に、第二の加熱パルスでDC電源からインダクタに電力を供給することと、を含む。
【0166】
一部の実施形態では、方法は、一つ以上のプローブパルスにおける、DC電源から供給される電流およびDC電源の両端の電圧の一つ以上の測定値に基づいて、連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御することを含み得る。
【0167】
これらの実施形態では、方法は、
一つ以上のプローブパルスにおける、DC電源から供給される電流およびDC電源の両端の電圧の一つ以上の測定値からコンダクタンス値を決定することと、
電流および電圧の一つ以上の測定値に基づいて、一つ以上のコンダクタンス値を決定することと、
一つ以上の決定されたコンダクタンス値に基づいて、連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御することと、を含みうる。
一つ以上のコンダクタンス値は、電流の一つ以上の測定値と電圧の一つ以上の測定値の商を計算することによって決定されうる。
【0168】
本発明の第四の態様によれば、本発明の第一の態様による誘導加熱装置を操作するための方法が提供されており、ここで誘導加熱装置は、第一のサセプタ材料は第二のサセプタ材料に熱的に近接して配置され、第二のサセプタ材料は500℃よりも低いキュリー温度を有する、第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料を含むサセプタを備えるエアロゾル発生物品を受けるよう構成されている。その方法は、
エアロゾル発生物品が誘導加熱装置によって受けられる時に、第一の加熱パルスにおいてエアロゾル発生物品のサセプタを加熱するためDC/ACコンバータを介してDC電源からインダクタに電力を供給することと、
DC電源から供給される電流が最小電流値にあるときを決定することと、
DC電源から供給される電流が最大電流値にあるときを決定することと、
最大電流値が第一の加熱パルスを終了すると決定された時に、DC電源からインダクタへの電力供給を中断することと、
第一の加熱パルスの終了からプローブパルス時間間隔が経過した後に、一つ以上のプローブパルスにおいてDC電源からインダクタに電力を供給することであって、各プローブパルスがプローブパルス期間と実質的に等しい期間を有し、連続加熱パルスがプローブパルス時間間隔の期間と実質的に等しい期間を有する時間間隔分離される、供給することと、
各プローブパルスにおいてDC電源から供給される電流を測定することと、
一つ以上のプローブパルスにおいてDC電源から供給される電流の一つ以上の測定値に基づいて、第一の加熱パルスと第二の加熱パルスとの間の時間間隔を決定することと、
第一の加熱パルスの終了後に決定した時間間隔が経過した時に、第二の加熱パルスにおいてDC電源からインダクタに電力を供給することと、を含む。
【0169】
一部の実施形態では、第一の加熱パルスと第二の加熱パルスとの間の時間間隔の決定は、一つ以上の標的条件を電源電子回路のメモリ上に保存することと、一つ以上のプローブパルスにおいてDC電源から供給される電流の一つ以上の測定値を比較することと、を含む。
【0170】
一部の実施形態では、電源電子回路のメモリ上に保存される標的条件は基準電流であり、方法は、電流の一つ以上の測定値が基準電流以上である場合に第二の加熱パルスでDC電源からインダクタに電力を供給することを含む。
【0171】
一部の実施形態では、電源電子回路のメモリ上に保存される標的条件は、条件または標的のシーケンスまたは一連の条件または標的を含みうる。電源電子回路は、連続プローブパルスからの電流の連続測定値を、一連の標的条件または標的条件のシーケンスのそれぞれに順番に比較するように構成されうる。例えば、一部の実施形態では、電源電子回路のメモリ上に保存された標的条件のシーケンスは、
第一の対の連続プローブパルスでDC電源から供給される電流が、連続プローブパルス間で減少することと、
第二の対の連続プローブパルスでDC電源から供給される電流が、連続プローブパルス間で増加することと、
第二の対の連続プローブパルス時またはその後にDC電源から供給される電流が、基準電流値以上であることと、を含みうる。
【0172】
一部の実施形態では、基準電流値は、第一の加熱パルスの最小電流値としうる。これらの実施形態では、方法は、第一の加熱パルスの最小電流値を標的条件として保存することを含みうる。
【0173】
本発明の第五の態様によると、本発明の第一の態様による誘導加熱装置用の制御システムが提供されている。制御システムは、本発明の第三または第四の態様による方法ステップのいずれかを実施するようにプログラムされたマイクロコントローラを備えうる。
【0174】
本発明の一つの態様に関連して説明した特徴は、単独で、または本発明の説明されたその他の態様および特徴と組み合わせて、本発明の任意のその他の態様に適用されうることが理解されよう。
【0175】
特定の値に関連して「約」という用語が本明細書で使用される時はいつでも、「約」という用語に続く値は、技術的な考慮事項のため、厳密にその特定の値である必要はないと理解されよう。ただし、本明細書で特定の値に関連して使用される「約」という用語は、用語「約」に続く特定の値を含み、かつ明示的に開示するものと理解される。
【0176】
また、一つの態様または実施形態に関して記述される特徴は、その他の態様および実施形態に適用できる場合がある。具体的な実施形態について、ここで図を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【
図1】
図1Aは本発明の実施形態によるエアロゾル発生システムのエアロゾル発生物品で使用するサセプタの平面図である。
図1Bは
図1Aのサセプタの側面図である。
【
図2】
図2Aは本発明の別の実施形態によるエアロゾル発生システムのエアロゾル発生物品で使用する別のサセプタの平面図である。
図2Bは
図2Aのサセプタの側面図である。
【
図3】
図3は
図2Aおよび2Bに図示したサセプタを組み込むエアロゾル発生物品の特定の実施形態の概略断面図である。
【
図4】
図4は
図3に図示したエアロゾル発生物品と併用するための、電気的に動作するエアロゾル発生装置の特定の実施形態の概略断面図である。
【
図5】
図5は
図4の電気的に動作するエアロゾル発生装置と係合する
図3のエアロゾル発生物品の概略断面図である。
【
図6】
図6は
図4に関連して説明したエアロゾル発生装置の電子構成要素を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、
図3の誘導加熱装置の電力電子回路の構成要素の概略図である。
【
図8】
図8は、負荷の誘導性およびオーム抵抗を含む、
図7の電力電子回路のLC負荷ネットワークのインダクタの概略図である。
【
図9】
図9はサセプタ材料がそのキュリー点に関連する相転移を受ける時に発生する、遠隔検出可能な電流の変化を図示した電流対時間のグラフである。
【
図10】
図10は、本発明による、加熱パルス間のプローブパルスの電流の測定値に基づく連続加熱パルス間の時間の期間の制御を示した電流対時間のグラフである。
【
図11】
図11は、連続加熱パルス間の複数のプローブパルスを示した電流対時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0178】
図1Aおよび
図1Bは本発明の実施形態によるエアロゾル発生システムのエアロゾル発生物品で使用するための、単一体の複数材料サセプタの特定の例を示す。サセプタ1は長さ12mmおよび幅4mmの細長い細片の形態をしている。サセプタは第二のサセプタ材料3と密着して結合されている第一のサセプタ材料2から形成される。第一のサセプタ材料2は寸法が12mm×4mm×35マイクロメートルの等級430のステンレス鋼の細片の形態である。第二のサセプタ材料3は、寸法が3mm×2mm×10マイクロメートルのニッケルのパッチである。ニッケルのパッチはステンレス鋼の細片の上に電気メッキされている。グレード430のステンレス鋼は、400℃を超えるキュリー温度を有する強磁性材料である。ニッケルは、約354℃のキュリー温度を有する強磁性材料である。
【0179】
本発明の実施形態によっては、第一および第二のサセプタ材料を形成する材料は多様なものとしうる。本発明の実施形態によっては、第一のサセプタ材料と物理的に密着した位置にある第二のサセプタ材料の二つ以上のパッチがあってもよい。
【0180】
図2Aおよび
図2Bは、本発明の別の実施形態によるエアロゾル発生システムのエアロゾル発生物品で使用するための、単一体の複数材料サセプタの第二の特定の例を示す。サセプタ4は長さ12mm、幅4mmの細長い片の形態である。サセプタは第二のサセプタ材料6と密着して結合されている第一のサセプタ材料5から形成される。第一のサセプタ材料5は寸法が12mm×4mm×25マイクロメートルの等級430のステンレス鋼の細片の形態である。第二のサセプタ材料6は寸法が12mm×4mm×10マイクロメートルのニッケル細片の形態である。サセプタはニッケル6の細片をステンレス鋼5の細片にクラッディングすることにより形成される。サセプタの合計の厚さは35マイクロメートルである。
図2のサセプタ4は二層または多層のサセプタと称しうる。
【0181】
図3は、本発明の実施形態によるエアロゾル発生システムのエアロゾル発生物品10を示す。エアロゾル発生物品10は、同軸に整列して配置された四つの要素、すなわちエアロゾル形成基体20、支持要素30、エアロゾル冷却要素40、およびマウスピース50を含む。これらの四つの要素の各々は実質的に円筒状の要素であり、各々は実質的に同一の直径を有する。これらの四つの要素は連続的に配置され、外側ラッパー60によって囲まれて、円筒状のロッドを形成する。細長い二層サセプタ4はエアロゾル形成基体内に位置し、エアロゾル形成基体と物理的に密着している。サセプタ4は
図2に関連して上述したサセプタである。サセプタ4はエアロゾル形成基体の長さとほぼ等しい長さ(12mm)を有し、エアロゾル形成基体の半径方向の中心軸に沿って位置する。
【0182】
エアロゾル発生物品10は近位または口側の端70を有し、ユーザーは使用中にこの近位または口側の端を自分の口の中に挿入し、遠位端80は口側の端70に対してエアロゾル発生物品10の反対側の端に位置する。組み立てられたエアロゾル発生物品10の合計長さは約45mmで直径は約7.2mmである。
【0183】
使用においては、空気は、使用者によってエアロゾル発生物品を介して遠位端80から口側端70に吸い込まれる。エアロゾル発生物品の遠位端80はまた、エアロゾル発生物品10の上流端として記述されてもよく、エアロゾル発生物品10の口側端70はまた、エアロゾル発生物品10の下流端として記述されてもよい。口側端70と遠位端80の間に位置するエアロゾル発生物品10の要素を、口側端70の上流にあると記述することができ、遠位端80の下流にあると記述することができる。
【0184】
エアロゾル形成基体20はエアロゾル発生物品10の最端の遠位端または上流端80に位置する。
図3に図示した実施形態において、エアロゾル形成基体20はラッパーによって取り囲まれる捲縮され均質化されたたばこ材料のシートの集合体を含む。均質化したたばこ材料の捲縮したシートはエアロゾル形成体としてグリセリンを含む。
【0185】
支持要素30はエアロゾル形成基体20のすぐ下流に位置し、エアロゾル形成基体20に隣接する。
図3に示した実施形態において、支持要素は中空酢酸セルロース管である。支持要素30がエアロゾル形成基体20を、エアロゾル発生物品の最端の遠位端80に位置させる。支持要素30はまた、エアロゾル発生物品10のエアロゾル冷却要素40がエアロゾル形成基体20から間隙を介するためのスペーサーになる。
【0186】
エアロゾル冷却要素40は支持要素30のすぐ下流に位置し、支持要素30に隣接する。使用においては、エアロゾル形成基体20から放出される揮発性物質は、エアロゾル発生物品10の口側端70に向かって、エアロゾル冷却要素40に沿って通過する。揮発性物質は、エアロゾル冷却要素40内で冷却されて、ユーザーが吸入するエアロゾルを形成してもよい。
図3に図示した実施形態において、エアロゾル冷却要素はラッパー90によって取り囲まれたポリ乳酸の捲縮したシートの集合体を含む。ポリ乳酸の捲縮したシートの集合体は、エアロゾル冷却要素40の長さに沿って延びる複数の長軸方向経路を画定する。
【0187】
マウスピース50はエアロゾル冷却要素40のすぐ下流に位置し、エアロゾル冷却要素40に隣接する。
図3に示す実施形態で、マウスピース50は低濾過効率の従来の酢酸セルローストウフィルターを含む。
【0188】
エアロゾル発生物品10を組み立てるために、上記の四つの円柱状要素は外側ラッパー60内で整列させられ、密接に包まれる。
図3に図示した実施形態において、外側ラッパーは従来の紙巻たばこ用紙である。サセプタ4は、エアロゾル形成基体を形成するために使用されるプロセス中に、複数の要素を組み立ててロッドを形成する前に、エアロゾル形成基体20内に挿入されうる。
【0189】
図3に関連して説明した特定の実施形態は、均質化したたばこから形成されるエアロゾル形成基体を含む。しかし、実施形態によっては、エアロゾル形成基体は異なる材料から形成しうることが理解されよう。例えば、エアロゾル発生物品の第二の特定の実施形態は、エアロゾル形成基質20がニコチンピルビン酸塩、グリセリン、および水を含む液剤に浸された紙巻たばこ用紙の非たばこシートから形成されることを除き、
図3の実施形態に関連して上述したものと同一の要素を有する。紙巻たばこ用紙は液剤を吸収し、そのため非たばこシートはニコチンピルビン酸塩、グリセリンおよび水を含む。グリセリン対ニコチンの比は5:1である。使用においては、エアロゾル形成基体20は摂氏約220度の温度に加熱される。この温度でニコチンピルビン酸塩、グリセリン、および水を含むエアロゾルが放出され、フィルター50を通してユーザーの口内に吸い込まれうる。基体20は、エアロゾルがたばこ基体から放出されるのに必要な温度よりもかなり低い温度まで加熱されることに留意されたい。そうであるため、こうした実施形態では、第二のサセプタ材料は、ニッケルよりも低いキュリー温度を有する材料でありうる。例えば、適切なニッケル合金を選択しうる。
【0190】
図3に図示したエアロゾル発生物品10は、ユーザーによって消費されるための誘導コイル(すなわち、インダクタ)を含む、電気的に動作するエアロゾル発生装置と係合するように設計される。
【0191】
電気的に動作するエアロゾル発生装置100の概略断面図を
図4に示す。本発明によれば、エアロゾル発生装置100は、誘導加熱装置である。電気的に動作するエアロゾル発生装置100は、実質的に装置の構成要素を含む実質的に環状の円筒形のハウジング11を備える。エアロゾル発生装置100はインダクタ110を備える。
図4に示す通り、インダクタ110はエアロゾル発生装置100の基体受け入れチャンバ130の遠位部分131に隣接して位置する。使用においては、ユーザーは、エアロゾル発生物品10のエアロゾル形成基体20がインダクタ110に隣接した位置になるように、エアロゾル発生物品10をエアロゾル発生装置100の基体受入れチャンバ130に挿入する。
【0192】
エアロゾル発生装置100はインダクタ110の起動を可能する電池150および電源電子回路160を備える。こうした起動は手動で行われてもよく、またはエアロゾル発生装置100の基体受け入れチャンバ130の中へと挿入されたエアロゾル発生物品10をユーザーが吸うのに応答して自動的に生じてもよい。電池150はDC電源であり、電流およびDC電圧を供給する。電源電子回路160は、後でより詳細に説明する通り、インダクタ110に高周波AC電流を供給するためのDC/ACコンバータまたはインバータ162を含む。電池150は、適切な電気的接続152を介して電源電子回路に電気的に接続されている。
【0193】
図5は電気的に動作するエアロゾル発生装置100と係合するエアロゾル発生物品10を示す。装置100が起動する時、高周波の交流電流がインダクタ110の一部を形成する巻線コイルを通過する。これにより、インダクタ110が装置の基体受け入れくぼみ130の遠位部分131内に変動電磁場を発生させる。電磁場は、約1Mhz~約30Mhzの間、約2Mhz~約10Mhzの間、または約5Mhz~約7Mhzの間の周波数で変動しうる。エアロゾル発生物品10が基体受け入れくぼみ130内に正しく位置付けられた時、物品10のサセプタ4はこの変動電磁場内に位置する。変動場はサセプタ内に渦電流を発生し、これはサセプタ4の温度を上昇させる。さらなる加熱がサセプタ4内の磁気ヒステリシス損失により提供される。熱は、主に伝導によって加熱されたサセプタ4からエアロゾル発生物品10のエアロゾル形成基体20へと伝達される。加熱されたサセプタ4はエアロゾルを形成するのに十分な温度までエアロゾル形成基体20を加熱する。エアロゾルはエアロゾル発生物品10を通して下流に引き出され、ユーザーによって吸い込まれる。
【0194】
図6は
図4に関連して説明したエアロゾル発生装置100の電子構成要素を示すブロック図である。エアロゾル発生装置100は、DC電源150(電池)、マイクロコントローラ(マイクロプロセッサ制御ユニット)161、DC/ACコンバータまたはインバータ162、負荷に対して適応するための整合ネットワーク163、およびインダクタ110を備える。マイクロプロセッサ制御ユニット161、DC/ACコンバータまたはインバータ162および整合ネットワーク163はすべて、電源電子回路160の部品である。DC電源電圧VDCおよびDC電源150から引き出された電流IDCは、マイクロプロセッサ制御ユニット161へのフィードバックチャネルによって提供される。これは、DC電源電圧V
DCおよびDC電源150から引き出されてインダクタ110に対してAC電力P
ACのさらなる供給を制御する電流I
DCの両方の測定によってもよい。
【0195】
当然のことながら、整合ネットワーク163は、エアロゾル発生物品10の負荷への電源電子回路160の最適な適合のために設けられうるが、必須ではない。実施形態によっては、電子機器が整合ネットワークを備えていない場合がある。
【0196】
図7は、電源電子回路160の、より詳細にはDC/ACコンバータ162の一部の構成要素を示す。
図7から分かる通り、DC/ACコンバータ162は、電界効果トランジスタ(FET)1621、例えば、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ電界効果トランジスタ(MOSFET))、切換信号(ゲート・ソース間電圧)をFET 1621に供給するための矢印1622で示したトランジスタスイッチ供給回路、ならびに分路コンデンサC1、およびコンデンサC2とインダクタL2の直列接続を含むLC負荷ネットワーク1623などを含む、トランジスタスイッチ1620を含む、クラスE電力増幅器を備える。さらに、動作中に電流I
DCがDC電源150から引き出される、DC電源電圧V
DCを供給するための、チョークL1を備えるDC電源150が図示されている。
図8には合計オーム負荷1624を表すオーム抵抗Rが示されており、これはインダクタL2のオーム抵抗R
Coilと、サセプタ4のオーム抵抗R
Loadの和である。
【0197】
クラスE電力増幅器の一般的な動作原理は公知であり、Nathan O.Sokalのthe American Radio Relay League (ARRL),Newington,CT,U.S.Aの隔月雑誌QEXの2001年1月/2月版の9~20ページに記載された論文「Class-E RF Power Amplifiers」、および前述のWO-A1-2015/177255、WO-A1-2015/177256、およびWO-A1-2015/177257号に詳細に説明されている。
【0198】
構成要素の数が非常に少ないため、電源電子回路160の容積を極端に小さく保つことができる。例えば、電源電子回路の容積は2cm3以下としうる。この極端に小さい容積の電源電子回路は、LC負荷ネットワーク1623のインダクタL2がエアロゾル形成物品のサセプタ4との誘導結合のためのインダクタ110として直接的に使用されているために可能であり、この容積が小さいことで装置1の全体寸法が小さく保たれる。インダクタL2以外の別個のインダクタがサセプタ21への誘導結合に使用される実施形態では、これは必ず電源電子回路のサイズを増加させることになる。電源電子回路のサイズはまた、整合ネットワーク163を提供することによって増大する。
【0199】
電気的に動作するエアロゾル発生システムの動作中、インダクタ100は、サセプタ4内の渦電流を誘導する高周波交番磁界を生成する。エアロゾル発生物品10のサセプタ4が動作中に加熱されると、サセプタ110の温度が増加するにつれて、サセプタの見かけの抵抗(Ra)が上昇する。この見かけの抵抗Raの増加は、DC電源150から引き出される電流IDCの測定値を介して電源電子回路160によって遠隔検出され、それはサセプタの温度および見かけの抵抗Raが増加すると、一定電圧で減少する。
【0200】
インダクタ110によって提供される高周波の交番磁界は、サセプタ表面の近くで、渦電流を誘起する。サセプタの抵抗は、第一および第二のサセプタ材料の電気的比抵抗に部分的に依存し、また誘起された渦電流に利用できるそれぞれの材料の表皮層の深さに部分的に依存する。第二のサセプタ材料6(ニッケル)がそのキュリー温度に達すると、その磁性が失われる。これにより、第二のサセプタ材料6内で渦電流に利用できる表皮層が増え、これによりサセプタの見かけの抵抗が減少する。その結果、第二のサセプタ材料がそのキュリー点に達した時に、DC電源150から引き出された検出された電流I
DCが一時的に増加する。これは
図9のグラフで見ることができる。
【0201】
電源電子回路160は、電源150からインダクタ110に電力の一連の連続パルスを供給するように構成される。特に、電源電子回路160は、時間間隔で分離された一連の加熱パルスにおいて、および複数の一連のプローブパルスにおいて、インダクタ110に電力を供給するように構成され、各一連のプローブパルスは、連続加熱パルス間の時間間隔のうちの一つにおいてインダクタに供給される。
【0202】
図10は、装置1の動作中、DC電源150からインダクタ110に供給される電力の一連の連続パルスのグラフを示す。具体的には、
図10は、時間間隔Δt
H1~Δt
H7で分離された一連の加熱パルスP
H1~P
H7、および複数の一連のプローブパルスP
P1~P
P7を示す。
図10に示されるように、一連のプローブパルスP
PNは、一連の連続した対の加熱パルスP
HN、P
HN+1間の各時間間隔Δt
HNにおいてインダクタ110に供給される。
【0203】
図10から分かるように、加熱パルスP
HNのそれぞれの期間、連続加熱パルスP
HN、P
HN+1間の時間間隔Δt
HNのそれぞれの期間、および連続加熱パルス間のプローブパルスの数は変化する(すなわち、固定されていない)。これらの態様の全ての期間は、以下にさらに詳述するように、パルスにおいてDC電源150によって供給される電流の測定値に依存する。
【0204】
上述の通り、DC電源150によってインダクタ110に供給される電流は、インダクタ110に結合されたサセプタ4の温度を示す。電源電子回路160は、DC電源150からインダクタ110に供給される電流を測定するように構成される。
【0205】
電源電子回路160は一般的に、各加熱パルスに対する最大電流IDCMAXを決定することによって、加熱パルスPHNのそれぞれの期間を制御するように構成される。最大電流IDCMAXは、サセプタ4が第二のキュリー温度よりも高く、かつ第二のサセプタ材料の相転移が起こっていることを示す。そのため、最大電流IDCMAXを供給するDC電源150を検出すると、電源電子回路160は、DC電源150からインダクタ110への電力供給を中断して加熱パルスを終了するように構成される。これにより、サセプタ4によるエアロゾル発生物品10内のエアロゾル形成基体の過熱が回避される。
【0206】
一部の実施形態では、電源電子回路160はまた、各加熱パルスに対する最小電流IDCMINを決定するように構成されうる。電源電子回路160はさらに、後でより詳細に説明する通り、基準電流として使用するために、決定した最小電流IDCMINを保存するように構成されうる。
【0207】
各加熱パルスPHNの終了時に、電源電子回路160は、一連のプローブパルスPPNにおいてDC電源150からインダクタ110に電力を供給するように構成される。各加熱パルスPHNの終了時に、電源電子回路160は、一連のプローブパルスPPNのうちの第一のプローブパルスPPN,1を供給するように構成される。電源電子回路160は、加熱パルスPHNの終了からプローブパルス時間間隔の期間ΔtPIが経過した後に、第一のプローブパルスPPN,1でインダクタ110に電力を供給するように構成される。電源電子回路160は、プローブパルス期間ΔtPの間、インダクタ110に電力を供給するように構成される。プローブパルス期間ΔtPおよびプローブパルス時間間隔ΔtPIは、電源電子回路のメモリに保存される。この実施形態では、プローブパルス期間ΔtPは約10ミリ秒であり、プローブパルス時間間隔ΔtPIは約90ミリ秒である。
【0208】
プローブパルス期間ΔtPが経過した後、電源電子回路160は、DC電源150から供給されている電流IPN,1を測定するように構成される。電流測定値が取られた後、電源電子回路160は、DC電源150からの電力供給を中断して、第一のプローブパルスPPN,1を終了するように構成される。
【0209】
電源電子回路160はさらに、測定された電流IPN,1を、電源電子回路のメモリに保存された一つ以上の標的条件と比較するように構成される。電源電子回路160は、プローブパルスにおいて測定された電流が標的条件に一致するまで、または、以下にさらに詳述するように、加熱パルス後の時間間隔が所定の最大値に達するまで、一連のプローブパルスPPN,Nにおいてインダクタ110に電力を供給し続けるように構成される。
【0210】
電源電子回路160は、一連のプローブパルスP
PNにおける全てのプローブパルスP
PN,Nが同一の期間(すなわち、プローブパルス期間Δt
P)を有し、一連の連続加熱パルスが同一の時間間隔(すなわち、プローブパルス時間間隔Δt
PI)で分離されるように、構成される。さらに、電源電子回路は、電流が、プローブパルスの同一の時点、本実施形態では、プローブパルスの終了時において測定されるように、構成される。
図11は、
図10よりもより詳細に、二つの連続加熱パルスP
HN、P
HN+1間の一連のプローブパルスP
PNの三つのプローブパルスP
PN,1、P
PN,2、およびP
PN,3を示す。
【0211】
電源電子回路160は、一連のプローブパルスPPNにおける各プローブパルスPPN,Nの電流IPN,Nの測定値を、一つ以上の標的条件と比較するように構成される。この実施形態では、標的条件のシーケンスが電源電子回路160のメモリに保存される。保存された標的条件のシーケンスの第一の条件は、第一の対の連続プローブパルスに対する電流測定値が、連続プローブパルス間で減少することである。保存された標的条件のシーケンスの第二の条件は、第二の対の連続プローブパルスに対する電流測定値が、連続プローブパルス間で増加することである。この電流測定値のシーケンスが一連のプローブパルスにおいて発生する場合、これは、プローブパルスにおいて測定された電流が一連における最大値に達したことを示しており、これは、先の加熱パルス後に、一連における次の加熱パルスを開始するためにサセプタ4が十分に冷却されたことを示している。したがって、この実施形態では、少なくとも三つのプローブパルスが標的条件のシーケンスを満たすために必要とされる。電源電子回路は、サセプタを任意の適切な温度に冷却することを可能にするように構成されうる。一般的に、電源電子回路は、サセプタを約250℃に冷却することを可能にするように構成されうる。
【0212】
標的条件を満たす例示的な一連のプローブパルスP
PNは、
図11に示すプローブパルスを使用して提供されうる。第一のプローブパルスP
PN,1において測定される電流I
PN,1は、第二の連続加熱パルスP
PN,2において測定される電流I
PN,2よりも大きい場合がある。これは、第一の対の連続プローブパルス間で電流が減少し、シーケンスの第一の条件が満たされたことを表す。第二のプローブパルスP
PN,2において測定された電流I
PN,2は、第三の連続プローブパルスI
PN,3において測定された電流I
PN,3よりも小さい場合がある。これは、第二の対の連続加熱パルス間で電流が増加し、シーケンスの第二および最終条件が満たされたことを表す。このため、第二のプローブパルスP
PN,2の終了からプローブパルス時間間隔の期間Δt
PIに実質的に等しい期間が経過した後、電源電子回路160は、一連における次の連続加熱パルスP
HN+1においてインダクタ110に電力を供給するように構成されうる。
【0213】
この実施形態では、連続加熱パルスPHN、PHN+1間の時間間隔の期間ΔtHNは、プローブパルスΔtPのそれぞれの期間と連続加熱パルスPHN、PHN+1間のプローブパルス時間間隔ΔtPIとの合計に実質的に等しい。
【0214】
各プローブパルスにおいて測定される電流は、インダクタ110に結合されたサセプタ4の温度によって影響を受ける。そのため、一つ以上の標的条件は、サセプタ4の温度が、一連における次の加熱パルスの開始時のエアロゾル発生に最適となるように、設定されうる。この実施形態では、連続加熱パルス間のより長い時間間隔は、標的条件を満たす前に、より大きな数のプローブパルスが連続プローブパルス間に生成されることにつながる。
【0215】
所定の最大時間間隔の期間も、電源電子回路160のメモリに保存されてもよい。電源電子回路160は、加熱パルスの終了後の時間間隔の期間を監視し、時間間隔の期間を、所定の最大時間間隔の期間と比較するように構成される。時間間隔が実質的に所定の最大時間間隔の期間以上である場合、電源電子回路160は、一連における次の加熱パルスにおいてインダクタ110に電力を供給するように構成される。この実施形態では、所定の最大時間間隔の期間は約4.5秒である。そのため、連続加熱パルス間の最大時間間隔は約4.5秒である。
【0216】
プローブパルスにおける電流を監視することによって加熱パルス間の時間間隔においてサセプタを冷却できるようにサセプタ4の温度を監視することにより、電源電子回路160は、サセプタの加熱を能動的に調整し、サセプタの温度の予想外の変化を補正する。サセプタの温度の予想外の変化は、多くの理由から起こりうる。例えば、サセプタは、ユーザーがエアロゾル発生物品で数回の急速な吸煙を行った場合に急速に冷却されうるが、このことは、電源電子回路160が連続加熱パルス間に比較的短い時間間隔を提供して、サセプタの温度を所望の温度範囲内に上昇または維持することを必要としうる。逆に、別の実施例では、電源電子回路160は、ユーザーがエアロゾル発生物品で吸煙しない場合に、サセプタが連続プローブパルス間の時間間隔にわたってより遅いレートで冷却するように、連続加熱パルス間に比較的長い時間間隔を提供する必要がありうる。
【0217】
当然のことながら、その他の実施形態では、プローブパルスにおいて取られた電流の測定値は、他の標的条件と比較されうる。特に、一部の実施形態では、電源電子回路160は、一連のプローブパルスPPNにおける各プローブパルスPPN,Nの電流IPN,Nの測定値を、上記第一および第二の条件、さらに第三および最終条件と比較するように構成されうる。第三の条件は、第二の対の連続プローブパルス時またはその後に測定された電流が基準電流値以上であるというものでありうる。基準電流値は、電源電子回路160のメモリに保存された先の加熱パルスに対して決定された最小電流IDCMINでありうる。測定された電流値が先の加熱パルスに対して決定された最小電流IDCMIN(すなわち、保存された基準電流値)に実質的に等しい場合、これはさらに、先の加熱パルスの後に、一連における次の加熱パルスを開始するために、サセプタ4が十分に冷却されたとの表示を提供しうる。
【0218】
標的条件を満たす例示的な一連のプローブパルスP
PNは、同じく
図11に示すプローブパルスを使用して提供されうる。この例では、第三のプローブパルスP
PN,3において測定される電流I
PN,3は、電源電子回路160のメモリに保存された基準最大電流よりも大きい場合がある。この例では、これは、標的条件のシーケンスにおける第三および最終条件を満たし、電源電子回路160は、プローブパルス時間間隔が経過した後に一連における次の連続加熱パルスにおいてインダクタ110に電力を供給するように構成されうる。
【0219】
上述の模範的実施形態によって請求の範囲を制限する意図はない。上述の例示的な実施形態と一貫性のあるその他の実施形態は、当業者には明らかであろう。
【0220】
例えば、一部の実施形態では、電源電子回路は、一つ以上のプローブパルスにおける、DC電源から供給される電流およびDC電流の両端の電圧を測定し、電流および電圧の一つ以上の測定値に基づいて一つ以上のコンダクタンス値を決定し、一つ以上の決定したコンダクタンス値に基づいて連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成されうる。電源電子回路は、電流測定値と電圧測定値との商を計算することによってコンダクタンス値を決定するように構成されうる。一部の実施形態では、電源電子回路は、一つ以上の決定されたコンダクタンス値を、一つ以上の標的条件と比較し、比較に基づいて、連続加熱パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成されうる。