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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】LED照明用実装基板を有する照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20221129BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20221129BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20221129BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20221129BHJP
   F21Y 105/10 20160101ALN20221129BHJP
   F21Y 113/13 20160101ALN20221129BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20221129BHJP
【FI】
F21S2/00 100
H01L33/50
F21V9/32
F21V7/00 510
F21Y105:10
F21Y113:13
F21Y115:10 500
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020138194
(22)【出願日】2020-08-18
(62)【分割の表示】P 2019552817の分割
【原出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2020198311
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2017218601
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小西 正宏
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-90972(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0058473(KR,A)
【文献】特開2017-139309(JP,A)
【文献】特開2017-163002(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3133653(EP,A1)
【文献】中国実用新案第206401358(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
H01L 33/50
F21V 9/32
F21V 7/00
F21Y 105/10
F21Y 113/13
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明装置であって、
複数個の導電部を有する基板と、
前記基板の有する前記複数個の導電部に各々接続するように実装された、個別に封止された複数個の表面実装型LED素子と
を含み、
前記基板が、
前記複数個の表面実装型LED素子を実装する側の面の少なくとも一部を覆う、第一の蛍光体を含んだ蛍光体層
を含み、
前記第一の蛍光体が、前記複数個の表面実装型LED素子のうちの少なくとも一個の発光波長によって励起されるものであり、
前記複数個の表面実装型LED素子が、一体的に封止されず、
前記複数個の表面実装型LED素子が、CSP素子、SMD素子、およびフリップチップ素子からなる群から選択される一種以上のLED素子である
ことを特徴とする、照明装置。
【請求項2】
前記基板がさらに反射層を含む、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記反射層が前記蛍光体層に隣接する、請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記複数個の導電部のうちの少なくとも一個が、前記基板の厚み方向に関して、前記蛍光体層の表面の下に位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記複数個の導電部のうちの少なくとも一個が、前記基板の厚み方向に関して、前記蛍光体層の表面と同じ高さに位置するかまたは前記蛍光体層の表面の上に位置する、請求項1~4のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記複数個の表面実装型LED素子のうちの少なくとも一個が、当該LED素子自体を封止する封止体を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記封止体が第二の蛍光体を含む、請求項6に記載の照明装置。
【請求項8】
前記複数個の表面実装型LED素子のうちの少なくとも一個以上がフリップチップ素子であり、
前記フリップチップ素子が前記基板と接する側に反射膜を有さない
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項9】
前記表面実装型LED素子が、第一の発光波長を有する第一の表面実装型LED素子および第二の発光波長を有する第二の表面実装型LED素子を含み、
前記蛍光体層が含む前記第一の蛍光体が、前記第一の表面実装型LED素子の発光および/または前記第二の表面実装型LED素子の発光により励起され、
前記第一の蛍光体の発光波長と、前記第二の表面実装型LED素子の発光波長とが、CIE色度座標におけるx値の差が1.0以下、かつy値の差が1.0以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の表面実装型LED(Light Emitting Diode)素子が実装される基板を有する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED照明器具(装置)の普及が進むにつれ、住宅室内用だけではなく、高天井用、屋外用などのバリエーションも豊富になっている。これに応じてLED照明器具の大型化も進んでおり、併せて大出力化も進んでいる。
【0003】
現行のLED照明用素子は、1~4pcs(pieces)程度のLEDチップを一つのパッケージに収めて、此れを複数個、PWB(Printed Wired Board)に実装したSMD(Surface Mounted Devices)タイプと、LEDチップを一つの基板に複数個搭載し一括封止し1デバイスとし、この1デバイスのみで出力を確保するCOB(Chip On Board)タイプとに大別されている。
【0004】
SMDタイプとしては、従来はリードフレームに樹脂成型されたパッケージにLEDチップを搭載し、蛍光体入り樹脂で封止してなるデバイスが用いられてきたが、高出力LEDチップを蛍光体樹脂で包みLEDチップと蛍光体樹脂だけの構成でパッケージレスとしたCSP(Chip Scale Package)タイプのデバイスの採用も始まっている。SMDタイプは、デバイスを分散させて搭載することができることから照明器具の放熱設計にも自由度があり、色々なデバイス配列によるデザインの多様化が考えられる。
【0005】
SMDタイプのLED素子を有する照明器具では、その個々の素子がそれぞれ独立に高出力な発光をするため、照明器具全体としてグレアや多重影が顕著となってしまうという問題を根本的に解決できていなかった。また出力の高いCSP素子を使おうとすれば、そうしたグレアや多重影は尚更大きくなってしまう問題もある。グレアや多重影を防止するために、照明器具に拡散板(カバー)をつけて対策しようとすることも行われているが、せっかくの高出力がそのカバーで阻害されて低減してしまい、意義は薄い。
【0006】
またCOBタイプは、1デバイスで高出力化ができ、かつ1コアである(1つの封止体のみを含む)為に、光のコントロール(照明設計)はしやすいメリットがある。しかしながら高出力な照明器具では、熱量の一点集中度合いが高まるので、COBタイプの照明器具では集中する熱量に応じてLED素子のサイズや出力に合わせた過大な放熱部材が必要になってしまい、器具全体の構造と整合させた放熱設計が困難になる問題がある。このため、COBタイプ照明器具には汎用化にも高出力化にも限界がある。
【0007】
さらに、COBタイプ照明器具で高出力化を図っていく場合、LED素子にワイヤーを用いるフェースアップタイプを使うと、放熱性の問題もさることながら、高出力化に伴いチップ数が増加し、ワイヤー本数が増加するのでワイヤー断線も起きやすいという懸念がある。このため、フェースアップタイプよりもフリップチップタイプのLED素子を使うことも提案されてはいるが、フリップチップタイプのLED素子にも実装時のジャンクションリークの懸念があり、かつ実装するには専用設備が必要となるという問題もあり、COBタイプ照明器具での使用には障害がある。
【0008】
このような事情から、COBタイプ照明器具では十分な高出力化は実現できていない。
【0009】
LED照明器具の発光効率を上げるためと称して、基板表面に反射材を設ける提案もされているが(特許文献1)、多コア構成になるSMDタイプの場合には特に、反射材からの反射光が一様にならないために、グレアや多重影の問題が充分に解決できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】中国特許公開106163113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した従来技術の限界を踏まえて、COBタイプでは実現できない程の高出力なLED照明器具において、SMDタイプで生じてしまうグレア・多重影の問題を解決できる新規な手法が希求されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明の実施形態では、以下を提供できる。
【0013】
[1] 照明装置であって、
複数個の導電部を有する基板と、
前記基板の有する前記複数個の導電部に各々接続するように実装された、個別に封止された複数個の表面実装型LED素子と
を含み、
前記基板が、
前記複数個の表面実装型LED素子を実装する側の面の少なくとも一部を覆う、第一の蛍光体を含んだ蛍光体層
を含み、
前記第一の蛍光体が、前記複数個の表面実装型LED素子のうちの少なくとも一個の発光波長によって励起されるものであり、
前記複数個の表面実装型LED素子が、一体的に封止されない
ことを特徴とする、照明装置。
【0014】
[2] 前記基板がさらに反射層を含む、[1]に記載の照明装置。
【0015】
[3] 前記反射層が前記蛍光体層に隣接する、[2]に記載の照明装置。
【0016】
[4] 前記複数個の導電部のうちの少なくとも一個が、前記基板の厚み方向に関して、前記蛍光体層の表面の下に位置する、[1]~[3]のいずれか一項に記載の照明装置。
【0017】
[5] 前記複数個の導電部のうちの少なくとも一個が、前記基板の厚み方向に関して、前記蛍光体層の表面と同じ高さに位置するかまたは前記蛍光体層の表面の上に位置する、[1]~[4]のいずれか一項に記載の照明装置。
【0018】
[6] 前記複数個の表面実装型LED素子が、CSP素子、SMD素子、およびフリップチップ素子からなる群から選択される一種以上のLED素子である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の照明装置。
【0019】
[7] 前記複数個の表面実装型LED素子のうちの少なくとも一個が、当該LED素子自体を封止する封止体を有する、[1]~[6]のいずれか一項に記載の照明装置。
【0020】
[8] 前記封止体が第二の蛍光体を含む、[7]に記載の照明装置。
【0021】
[9] 前記複数個の表面実装型LED素子のうちの少なくとも一個以上がフリップチップ素子であり、
前記フリップチップ素子が前記基板と接する側に反射膜を有さない
ことを特徴とする、[1]~[8]のいずれか一項に記載の照明装置。
【0022】
[10] 前記表面実装型LED素子が、第一の発光波長を有する第一の表面実装型LED素子および第二の発光波長を有する第二の表面実装型LED素子を含み、
前記蛍光体層が含む前記第一の蛍光体が、前記第一の表面実装型LED素子の発光および/または前記第二の表面実装型LED素子の発光により励起され、
前記第一の蛍光体の発光波長と、前記第二の表面実装型LED素子の発光波長とが、CIE色度座標におけるx値の差が1.0以下、かつy値の差が1.0以下である、[1]~[9]のいずれか一項に記載の照明装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施形態により提供される照明装置は、高出力でありながらグレアや多重影の問題を軽減・抑止できるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第一の実施形態に係る照明装置 10 を模式的に描いた断面図である。
図2】本発明の第二の実施形態に係る照明装置 20 を模式的に描いた断面図である。
図3】本発明の第三の実施形態に係る照明装置 30 を模式的に描いた断面図である。
図4】本発明の第四の実施形態に係る照明装置 40 を模式的に描いた拡大断面図である。
図5】比較例1に係る供試体から得られた照度比分布グラフである。
図6】実施例1に係る供試体から得られた照度比分布グラフである。
図7】実施例2に係る供試体から得られた照度比分布グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[定義]
本明細書においては、表面実装型LED素子(SMDタイプ)とは、LEDベアチップがパッケージ化された表面実装型のLED素子のことを指し、COBタイプ(一括封止されたLED素子)のものは含まないと定義する。すなわち本発明の実施形態に係る照明装置は、個別に封止された複数個のSMDタイプのLED素子を有する。
【0026】
本明細書においては、SMDタイプには、CSPタイプの素子とフリップチップ(素子)が包括される。ここで言うフリップチップ(素子)には、後述するように下層反射膜を有さない形態のものも包括される。
【0027】
本明細書における「蛍光体層」とは、いわゆる無機蛍光体を含む層のことを指す。本発明に関しては、この「蛍光体層」が別途に有機蛍光染料(いわゆる蛍光増白剤)を含んでいる実施形態があってもよい。しかしながら、有機蛍光染料を含むが無機蛍光体を含まないような層(例えば反射材層)は、本明細書における「蛍光体層」には含まれないものとする。
【0028】
本明細書における数値範囲は、別段の断わりがない限りは上限値および下限値を含むものとする。
【0029】
本明細書における基板の厚み方向に関する上下とは、別段の断わりがない限りは、表面実装型LED素子が実装される側の面がある方を上、他方を下と定義する。原則として図面においても、表面実装型LED素子が実装される側の面を上にして描いてある。
【0030】
[第一の実施形態]
図1には、本発明の第一の実施形態に係る照明装置 10 を模式的に示す。図1は照明装置 10 の断面図である。なお各図面はわかりやすさのために特徴と厚さ方向の大きさを極端に誇張して描いていることに留意されたい。この照明装置 10 は、複数個の導電部 14 を有する基板 12 を有しており、この複数個の導電部 14 の各々に対して複数個の表面実装型LED素子 16 が接続するように実装されている。複数個の導電部 14 のそれぞれには導線を含んだ実装パターン(不図示)がつながっており、表面実装型LED素子 16 の各々に給電できるようになっている。表面実装型LED素子 16 のそれぞれは封止材(不図示)で個別に封止されていてもよいが、複数個がまとめて一体的に封止されることはない(すなわち、COBタイプでは無い)。なお図1では表面実装型LED素子 16 と導電部 14 の個数がそれぞれ三個であるが、これはあくまで例示であって、当然ながらこれより多いか少ない個数であってもよい。また、表面実装型LED素子 16 の個数が、導電部 14 の個数より少ない(すなわち、導電部が余って使われない)ような実施形態があってもよい。
【0031】
上述した封止材としては当該技術分野で知られる任意の材料を使用できるが、例えばシリコーン樹脂が透光性・耐熱性の面で好ましく使用できる。別の実施形態ではそのような封止材を使わなくてもよい。さらに別の実施形態では表面実装型LED素子 16 のうちの一部だけが封止され、残りは封止されていなくてもよい。
【0032】
或る実施形態では、上述した封止材がさらに、蛍光体層 18 に含まれる蛍光体(第一の蛍光体)とは別に、第二の蛍光体を含んでいてもよい。第二の蛍光体は第一の蛍光体と同じ物質であってもよいし、別の物質であってもよい。このように封止材にも蛍光体を含めることで、さらに発光効率の向上や色度調整を図ることが可能となる。
【0033】
さらに基板 12 には、表面実装型LED素子 16 が実装される側の面に蛍光体層 18 が設けられている。この蛍光体層 18 は、表面実装型LED素子 16 から出力された光により励起される蛍光体を含んでいる。そして当該蛍光体からの発光(蛍光)により、蛍光体層 18 の少なくとも一部(好ましくは全体)が発光するので、擬似的な1コア発光構成が実現できる。つまり蛍光体層 18 の存在により、従来のSMDタイプの照明器具では解決できなかったグレアと多重影を低減・防止することが可能となり、しかもCOBタイプの照明器具の欠点を有しないという顕著な効果が奏される。
【0034】
なお図1では一列に導電部 14 と表面実装型LED素子 16 が並んでいる形態を描いているが、これはあくまで例示であって、導電部 14 と表面実装型LED素子 16 が複数列をなして並ぶ実施形態があってもよい。照明器具全体としての出力向上の観点からは、表面実装型LED素子 16 がm x nのマトリックス(m、nは2以上の整数である)を構成するのが好ましい。当該マトリックスは任意の構成であってよく、例えば標準(直交型)のもの、もしくは千鳥格子(interstitial)のものでもかまわない。
【0035】
基板 12 の材質としては、当該技術分野においてPWB(プリント基板)に使用されるものであれば特に制限されないが、例えばポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ガラス、金属(アルミニウム、銅、鉄、ステンレス鋼など)といったものを使用できる。好ましくは耐熱性の観点から、ポリイミド樹脂やシリコーン樹脂やガラスや金属(ベースメタルとしてアルミニウムや銅を使い、絶縁層を設けたいわゆる「メタル基板」としてのものなど)を使用できる。また放熱性の観点からは上記と同様の金属を好ましく使用できる。基板 12 の厚さは照明器具に用いることができる範囲であれば特に制限されず、例えば0.1~100mm、または1~10mm程度としてもよい。
【0036】
導電部 14は、表面実装型LED素子 16 と接続し、電源から供給される電力を表面実装型LED素子 16 に供給する機能を有する。その接続手法は、はんだや導電性ペーストによる接合であってもよいし、ソケット・プラグ式の脱着自在な接続であってもかまわない。なお導電部 14 に複数の電極(n電極とp電極など)が含まれていてもよい(図1では省略している)。導電部 14 は導電性の物質(銀や銅など)から作成でき、通常は基板 12 が有する実装パターン(不図示)につながっている。図1では導電部 14 が蛍光体層 18 の表面と下面よりもさらに下に在る態様を示してある(すなわち、基板 12 の厚み方向に関して蛍光体層 18 の表面の下に位置している)。別の実施形態では、導電部 14 が、基板 12 の厚み方向に関して蛍光体層 18 の表面と同じ高さに位置していてもよいし、あるいは蛍光体層 18 の表面よりも上に位置していてもよい。また別の実施形態では、導電部 14 の各々が、基板 12 の厚み方向に関してそれぞれ別々の高さに位置するような構成を取っていてもよい。
【0037】
表面実装型LED素子 16 としては例えば、CSP素子、SMD素子、およびフリップチップ素子が含まれる。フリップチップ素子を使用する場合には、改めて後述するが、その下層反射膜(基板に実装する側の面に通常存在する反射膜)を構成せずに用いてもよい。
【0038】
表面実装型LED素子 16 の発光色・色度には照明器具に使用できる任意のものを選択でき、蛍光体層 18 の発光色・色度と組み合わせた照明器具全体としての発光色を適宜調節することができる。照明器具としての色度調整を適切に行うことができるように、表面実装型LED素子 16 の発光波長により、励起発光する蛍光体を蛍光体層 18 が含むことがより好ましい。例えば或る実施形態では、表面実装型LED素子 16 の発光と、蛍光体層 18 の発光とが、同じCIE値を有するようにしてもよいし、またはそれらのCIE色度座標におけるx値とy値の差がそれぞれ1.0以下となるようにしてもよいし、またはそれぞれ0.1以下となるようにしてもよい。
【0039】
或る実施形態においては、表面実装型LED素子 16 と蛍光体層 18 の発光がともに白色または擬似白色(黄色と青色の組み合わせによるものなど)になるように構成できる。別の実施形態では、表面実装型LED素子 16 に、赤色もしくは緑色の単色発光をする第一の表面実装型LED素子と、青色単色発光をする第二の表面実装型LED素子とが含まれていてもよく、蛍光体層 18 に含まれる蛍光体が、その第一の表面実装型LED素子の発光もしくは第二の表面実装型LED素子の発光のいずれかで励起発光するようにしてもよい。蛍光体層 18 が含む蛍光体の発光色は例えば赤色や緑色や青色とすることができる。またこのような構成を取った結果として、LED素子の発光色と蛍光体の発光色の組み合わせを適宜調整することにより、照明器具全体としては白色または擬似白色の発光をするようにすることもできる。
【0040】
蛍光体層 18 が含むことができる蛍光体(無機蛍光体)は、当該技術分野において使用できるものであれば特に制限されないが、例えばいわゆるサイアロン蛍光体(α-SiAlONやβ-SiAlONなど)、CASN蛍光体、γ-AlON蛍光体、YAG蛍光体、TAG蛍光体、BOS蛍光体などを、得たい発光色に応じて選択し使用できる。
【0041】
蛍光体層 18 の基板 12 の表面に対する占有面積は、発光効率の観点からは基板 12 表面の実質的なすべて(すなわち、導電部 14 と表面実装型LED素子 16 が占有する箇所を除くすべて)であることが好ましい。このようにすることで基板 12 全体が発光し、擬似1コア構成を好ましく実現することができる。別の実施形態では、蛍光体層 18 が基板 12 の表面の一部分(例えば80%、70%、60%、もしくは半分)を占有するようになっていてもよい。そのような場合には、蛍光体層 18 の占有する部分が基板 12 上の一区画を構成するようになっていてもよいし、あるいは蛍光体層 18 を斑に(例えば市松模様のように)基板 12 上に設けてもよい。
【0042】
別の実施形態においては、基板 12 が蛍光体層 18 を兼ねるものであってもよい。つまり基板 12 を、蛍光体を混練した材料から形成するようにすることも可能である。そのような材料としては例えば、周知のガラスバインダー(旭ガラス社製のYPT531Eなど)やアクリルバインダー樹脂を使用できる。
【0043】
蛍光体層 18 の厚さは、その発光機能を発揮できるものであれば特に制限されないが、例えば0.1μm~10.0mm程度の範囲のうちの厚さであってよく、より好ましくは0.05mm~1.0mm程度の厚さ、さらに好ましくは0.1mm~0.5mm程度の厚さとすることができる。蛍光体層 18 を基板 12 上に形成するには任意の手法を採ることができるが、例えば蛍光体を任意の樹脂材料(シリコーン樹脂など)中に混合してから基板 12 上にコーティング(印刷)するようにしてもよいし、あるいは蛍光体と樹脂材料から形成したシート(導電部 14 の機能を阻害しないように穿孔してもよい)を基板 12 上に載せてもよいし、あるいは蛍光体粉末を基板 12 上に直接塗布・接着するようにしてもかまわない。蛍光体層 18 の形成は、表面実装型LED素子 16 を実装する前に行ってもよいし、可能であれば表面実装型LED素子 16 を実装する後に行ってもよい。例えば或る実施形態では、上述したようなシートを、既に表面実装型LED素子 16 が実装された基板 12 に対して、表面実装型LED素子 16 が顔を出せるように穴に通して被せて貼り付けることで、蛍光体層 18 を容易に設けることも可能である。
【0044】
基板 12 が、蛍光体層 18 に加えてさらに、光取り出し効率をより高めるための反射層(不図示)を含んでいてもよい。反射層には例えば有機蛍光染料やガラス砕片などを含めてもよいが、グレアや多重影の問題を引き起こさないものとするのが当然ながら好ましい。当該反射層は任意の位置に設置できるが、例えば蛍光体層 18 に隣接(接触)して配置することができ、蛍光体層 18 の直下に隣接して配置するのが光取り出し効率の向上に鑑みて好ましい。反射層には、絶縁性を持たせることが照明装置の電気的安定性に鑑みてより好ましい。
【0045】
[第二の実施形態]
図2には、本発明の第二の実施形態に係る照明装置 20 の断面図を模式的に示す。照明装置 20 は、第一の実施形態に係る照明装置 10 と同様に、複数個の導電部 24 を有する基板 22 を有しており、この複数個の導電部 24 の各々に対して複数個の表面実装型LED素子 26 が接続するように実装されている。
【0046】
導電部 24 は実装パターン(不図示)につながっており、導電部 24 と実装パターンがともに蛍光体層 28 の上に位置していることが照明装置 10 と異なっている。すなわちこの第二の実施形態では、基板 22 上に蛍光体層 28 を設けてから、さらにその上に実装パターンを設けているということである。このような構成とすることで、導電部 24 を避けるように穴開きの状態で蛍光体層 28 を設ける必要が無く、製造時の作業性が良いという効果が得られる。照明装置 20 のその他の特徴については第一の実施形態に関して上述したものと同様に構成可能である。
【0047】
[第三の実施形態]
図3には、本発明の第三の実施形態に係る照明装置 30 の断面図を模式的に示す。照明装置 30 は、第一の実施形態に係る照明装置 10 と同様に、複数個の導電部 34 を有する基板 32 を有しており、この複数個の導電部 34 の各々に対して複数個の表面実装型LED素子 36 が接続するように実装されている。
【0048】
導電部 34 は、基板 32 上に形成された実装パターン 35 に接続している。実装パターン 35 の上には蛍光体層 38 が設けられている。導電部 34 は蛍光体層 38 の上に顔を出すような構成を取っている。このような構成とすることで、実装パターン 35 の厚みを大きく取ることができ、通電により発生する熱を効率よく放熱できるという効果を奏することができる。また、導電部 34 が蛍光体層 38 の上に出ているので、表面実装型LED素子 36 の実装も容易になるという効果も得られる。照明装置 30 のその他の特徴については第一の実施形態に関して上述したものと同様に構成可能である。
【0049】
[第四の実施形態]
図4は、本発明の第四の実施形態に係る照明装置 40 であって、特殊構成を取るフリップチップ素子を用いたものを描いた模式図である。図4図1~3とは異なり、複数の表面実装型LED素子 46 のうちのひとつだけの周辺のみを極端に拡大した図になっていることを理解されたい。
【0050】
照明装置 40 は基板 42 を有し、基板 42 の上に蛍光体層 48 を有する。フリップチップ素子である表面実装型LED素子 46 は、それ自身のパッケージの基板(サファイヤ基板など) 47 と、発光部・結晶層 49 と、p電極 44a およびn電極 44b とを有している。このp電極 44a およびn電極 44b が基板 42 の導電部(不図示)を介して実装パターン(不図示)に接続している。フリップチップ素子 46 は、従来技術においては下層反射膜を基板に実装する側の面に有するのであるが、本実施形態ではそのような反射膜を有さない。これは、通常のフリップチップ素子であれば発光部が下面(実装される側の面)の近傍(一般的には基板面から数μmの距離)にあるため、光取り出しのためにそのような反射膜が必要になってしまうのに対し、本実施形態では蛍光体層 48 がその光取り出しの役割を担うことができるため、反射膜が不要になるのである。このような構成により、製造工程を大幅に簡易化できるという顕著な効果が奏される。なお別の実施形態においては、フリップチップ素子に従来のような下層反射膜を設けることも可能ではある。
【0051】
照明装置 40 のその他の特徴については第一の実施形態に関して上述したものと同様に構成可能である。
【0052】
また、第四の実施形態のようにフリップチップ素子をベースにしたCSPをLED素子として使用する際に、そのCSPタイプのLED素子の周囲を、第一の実施形態に関して上述したような蛍光体を含有した封止材を使って封止することも可能である。このような構成にすることで、CSPタイプのLED素子を実装する際のジャンクションリークを、封止材によって抑止することが可能になる。このように実装が容易であるため、専用設備の必要性を下げることもでき、COBタイプでは実現困難な高出力も得られることになる。
【実施例
【0053】
以下、さらに実施例および比較例によって本発明を説明するが、これは本発明の範囲を限定するものではない。
【0054】
[比較例1]
シリコーン樹脂(東レダウコーニング社製のOE6630、A,B材をA/B=1/4重量比で配合したもの)に、酸化ジルコニウム(第一希元素化学工業社製のHSY-3W)を50vol%混合した。ダイフリーGA-7550(ダイキン工業社製)を離型剤として塗布した50mm×50mm、深さ3mmのステンレス製の型に、当該原料樹脂混合物を流し込み、1次硬化条件として100℃で1時間加熱し、その後の2次硬化条件として150℃で1時間加熱して硬化を行い、白色基板を得た。
【0055】
Agペースト(室町ケミカル社製のEPS-110A)を使い、SUS200メッシュ3Dのスクリーン版を介して、5直5並列(5x5)のマトリックスパターンを上記白色基板上に印刷して、1次硬化条件として80℃で30分間加熱し、その後の2次硬化条件として150℃で2時間加熱して、実装パターンを白色基板上に形成した。
【0056】
当該白色基板上に、CSPとしてWICOP SZ8-Y15-WW-C8(ソウル半導体社製)を実装し、Agペースト(室町ケミカル社製のEPS-110A)を使って接合して、比較例1に係る供試体を得た。
【0057】
[実施例1]
上記原料樹脂混合物の作成にあたり、シリコーン樹脂に対してさらに、緑色蛍光体としてALONBRIGHT GRMW540K8SD(デンカ社製)および赤色蛍光体としてALONBRIGHT KR2K01(デンカ社製)を重量比1:3で混合したものを30vol%混練したこと以外は、比較例1と同様にして、実施例1に係る供試体を得た。
【0058】
[実施例2]
50mm×50mm、厚さ3mmのガラス基板を用意した。当該ガラス基板の表面に対し、蛍光体としてALONBRIGHT GRMW540K8SD(デンカ社製)およびALONBRIGHT KR2K01(デンカ社製)を重量比1:3で混合したものを30vol%で混合したガラスバインダー塗料(市販品)を、厚さ200μmで塗布し、蛍光体層を形成した。
【0059】
Agペースト(室町ケミカル社製のEPS-110A)を使い、SUS200メッシュ3Dのスクリーン版を介して、5直5並列(5x5)のマトリックスパターンを上記ガラス基板上に印刷して、1次硬化条件として80℃で30分間加熱し、その後の2次硬化条件として150℃で2時間加熱して、実装パターンをガラス基板上に形成した。
【0060】
当該ガラス基板上に、CSPとしてWICOP SZ8-Y15-WW-C8(ソウル半導体社製)を実装し、Agペースト(室町ケミカル社製のEPS-110A)を使って接合して、実施例2に係る供試体を得た。
【0061】
[評価]
供試体の実装面の上から5mm離して厚さ3mmの観察用ガラス板を設置し、その観察用ガラス板の上に厚さ0.1mmの拡散シート(きもと社製の75PBA)を敷いた。当該拡散シートの上から316mm離して、S-MOSカメラを設置した。
【0062】
供試体に12V(5直列)、0.8mA/eachで電圧を印加して通電し、CSPを発光させた状態で、上記カメラで撮影した。得られた写真から、CSP列上にあたる線上の照度を測定し、照度比(%)と主走査方向寸法(pixel)とのグラフをそれぞれ作成した。比較例1を図5、実施例1を図6、実施例2を図7にそれぞれ示した。グラフ上の破線は、照度比の極大部と極小部をそれぞれフィッティング近似した曲線である。
【0063】
比較例1では、CSP同士の隙間にあたる部分での照度比の落ち込みが大きく、CSP TOP面に対して約88%程度となっていた。したがって従来技術に係る比較例1では、グレア・多重影の問題が発生してしまうことが示唆された。
【0064】
一方、実施例1および実施例2はともにCSPの隙間における照度比の落ち込みが小さく、CSP TOP面に対して約95%程度にとどまった。よって本発明に係る実施例1および実施例2では、グレア・多重影の問題が軽減防止される効果を奏することが確かめられた。
【符号の説明】
【0065】
10 照明装置
12 基板
14 導電部
16 表面実装型LED素子
18 蛍光体層
20 照明装置
22 基板
24 導電部
26 表面実装型LED素子
28 蛍光体層
30 照明装置
32 基板
34 導電部
35 実装パターン
36 表面実装型LED素子
38 蛍光体層
40 照明装置
42 基板
44a p電極
44b n電極
46 表面実装型LED素子(フリップチップ素子)
47 パッケージの基板
48 蛍光体層
49 発光部・結晶層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7