(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】紫外線硬化型接着剤組成物、それを用いた貼り合せ方法及び物品
(51)【国際特許分類】
C09J 4/02 20060101AFI20221129BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2020138344
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本橋 隼
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0134930(US,A1)
【文献】特開2012-162652(JP,A)
【文献】特開平09-183951(JP,A)
【文献】特開平07-233356(JP,A)
【文献】特開2021-109889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの光学基材を貼り合わせるために用いる紫外線硬化型接着剤組成物であって、リン酸基を有する(メタ)アクリレート[成分A]、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート[成分B]、水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]、光重合開始剤[成分D]を含み、[成分B]と[成分C]の合計含有量が紫外線硬化型接着剤組成物の総量に対して70質量%以上であり、当該紫外線硬化型接着剤組成物を硬化させた硬化物の-20℃でのせん断弾性率が1.0×10
6Pa以下である紫外線硬化型接着剤組成物
であって、
リン酸基を有する(メタ)アクリレート[成分A]が0.05~10質量%であり、
水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート[成分B]が0.5~20質量%であり、
水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]が66~95質量%であり、
光重合開始剤[成分D]が0.05~10質量%であり、
リン酸基を有する(メタ)アクリレート[成分A]が、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、ビス(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、カプロラクトン変性リン酸モノ(メタ)アクリレートとカプロラクトン変性リン酸ジ(メタ)アクリレートの混合物から選択される1種以上のリン酸基を有する(メタ)アクリレートであり、
水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート[成分B]が、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレ-トから選択される1種以上の水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートであり、
水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]が、炭素数5~25個のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、環状骨格を有する(メタ)アクリレート、から選択される1種以上の水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレートである、
紫外線硬化型接着剤組成物。
【請求項2】
水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]として、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノルマルオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする
請求項1に記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
【請求項3】
水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]として、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノルマルオクチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする
請求項1又は2に記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]として2-エチルへキシル(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする
請求項1~3のいずれか一項に記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
【請求項5】
水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]として、環状骨格を有する単官能(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする
請求項1~4のいずれか一項に記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
【請求項6】
水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート[成分B]が4-ヒドロキシブチルアクリレートであることを特徴とする
請求項1~5のいずれか一項に記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
【請求項7】
当該紫外線硬化型接着剤組成物を硬化させた硬化物の-20℃でのせん断弾性率が5.0×10
5Pa以下であることを特徴とする
請求項1~6のいずれか一項に記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
【請求項8】
反応性オリゴマー成分を含有することを特徴とする
請求項1~7のいずれか一項に記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
【請求項9】
反応性オリゴマー成分として重量平均分子量が10000以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有することを特徴とする
請求項8に記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
【請求項10】
前記2つの光学基材のうち少なくとも1つの光学基材が、ガラス基板、透明樹脂基板、透明樹脂フィルム、透明電極が形成してあるガラス基板、透明基板に透明電極が形成してあるガラス基板またはフィルムが貼り合わされた基板、液晶表示ユニット、プラズマ表示ユニット、及び有機EL表示ユニット、LED表示ユニットからなる群から選ばれる1種以上の光学基材である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
【請求項11】
下記工程1~2の手順で少なくとも2つの光学基材を貼り合わせるために用いる
請求項1~10のいずれか一項に記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
(工程1)少なくとも1つの光学基材に対して、請求項1~10のいずれか一項に記載の紫外線硬化型接着剤組成物を塗布して、塗布層を形成し、該塗布層に紫外線を照射することにより硬化物層を有する光学基材を得る工程
(工程2)工程1で得られた光学基材の硬化物層に対して、他の光学基材を貼り合わせるか、又は、工程1により得られた他の光学基材の硬化物層を貼り合わせる工程。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の紫外線硬化型接着剤組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の紫外線硬化型接着剤組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物層を備える光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの光学基材を貼り合わせるための紫外線硬化型接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、ミニLEDディスプレイ、マイクロLEDディスプレイ等の表示装置の表示画面にタッチパネル機能を内蔵、もしくはタッチパネルを貼り合わせ、画面入力を可能とした表示装置が広く利用されている。スマートフォンや車載ディスプレイなどの表示装置のデザインの多様化により、ディスプレイの端部形状が円形のものや画面の一部が湾曲しているものや、折りたたみや巻き取りが可能な表示装置などが提案されている。これらの表示装置は有機ELディスプレイや液晶ディスプレイなどの表示装置、タッチパネル機能を有するフィルムやガラス、ポリカーボネートや透明ポリイミドフイルムやガラスなどの透明保護基材など、多様な光学基材が貼り合わされて製造される。
【0003】
これら多様な光学基材の貼り合わせに両面粘着シートを用いる技術がある。しかし、両面粘着シートを用いると面内に気泡が入りやすいという問題があった。そこで、両面粘着シートに代わる技術として、柔軟性のある紫外線硬化型接着剤組成物で貼り合わせる技術が提案されている(特許文献1)。また、液状の紫外線硬化型接着剤組成物を用いて光学基材を貼り合わせる際に液状接着剤が外周に漏れ出てしまう問題があったが、それを防ぐ方法として光学基材に液状樹脂を塗布した後紫外線を照射(一次硬化工程)して接着剤を硬化し、硬化膜にさらに別の光学基材を貼り合わせ、その後必要に応じて紫外線を照射(二次硬化工程)して光学基材の積層体を得る技術が提案されている(特許文献2)。
【0004】
一方で、多様な光学基材が貼り合わされた表示装置などの光学部材においては、各光学基材によって温度変化による膨張或いは収縮する量が異なるため、外部環境温度によっては光学部材に反りや内部応力が発生する場合がある。外部環境の温度変化によって発生する光学部材の反りや内部応力は、表示不良や光学基材の剥がれなどの原因となる場合がある。特に、氷点下などの低温環境下では光学部材の反りが発生しやすい傾向にあり、光学基材を貼り合わせるための両面粘着シートや接着剤には、不良発生防止の観点から、低温環境下での光学部材の反りの抑制機能が求められる。しかし、低温環境下での光学部材の反りを抑制できる両面粘着シートや紫外線硬化型接着剤は接着強度が低く、光学基材の剥がれが発生しやすいという問題があった。
【0005】
従来技術として、特許文献3では高温、低温、高温高湿環境下での耐久性に優れた紫外線硬化型の接着剤組成物が提案されており、光学部材の反りを抑えることのできる組成物が開示されている。しかし、特許文献3記載の技術では、低温での光学部材の反りを抑えることはできるものの、接着強度が不十分であり、光学基材の剥がれが発生してしまう場合があった。また、特許文献4では、低温での弾性率を低くすることにより低温での落下衝撃耐性を向上させる技術が提案されている。しかし、特許文献4で提案されている技術では光学部材の反りは抑制しきれず、さらに接着強度も不十分であるという課題があった。特許文献5では、画像表示部の変形に起因する表示不良を抑制するための方法として、25℃における貯蔵弾性率を特定の範囲とする技術が提案されているが、低温での反りについては言及されておらず、さらに接着強度も不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5343388号公報
【文献】特許第5138820号公報
【文献】特開2019-189712号公報
【文献】特開2017-048358号公報
【文献】特開2019-086783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、少なくとも2つの光学基材を貼り合わせるために用いる接着剤組成物に関するものであって、低温環境下での表示装置などの光学部材の反りを抑えることが可能で、且つ接着強度の高い紫外線硬化型接着剤組成物、及びその硬化物および硬化物層を備える光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意研究の結果、本発明を完成した。即ち、本発明は、下記(1)~(13)に関する。
(1)少なくとも2つの光学基材を貼り合わせるために用いる紫外線硬化型接着剤組成物であって、リン酸基を有する(メタ)アクリレート[成分A]、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート[成分B]、水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]、光重合開始剤[成分D]を含み、[成分B]と[成分C]の合計含有量が紫外線硬化型接着剤組成物の総量に対して70質量%以上であり、当該接着剤組成物を硬化させた硬化物の-20℃でのせん断弾性率が1.0×106Pa以下である紫外線硬化型接着剤組成物。
(2)リン酸基を有する(メタ)アクリレート[成分A]が0.05~10質量%であり、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート[成分B]が0.5~40質量%、水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]が20~99質量%であり、光重合開始剤[成分D]が0.05~10質量%である(1)に記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
(3)水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]として、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノルマルオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載 の紫外線硬化型接着剤組成物。
(4)水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]として、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノルマルオクチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする(1)~(3)に記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
(5)水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]として2-エチルへキシル(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
(6)水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]として、環状骨格を有する単官能(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
(7)水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート[成分B]が4-ヒドロキシブチルアクリレートであることを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
(8)当該接着剤組成物を硬化させた硬化物の-20℃でのせん断弾性率が5.0×105Pa以下であることを特徴とする(1)~(7)のいずれかに記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
(9)反応性オリゴマー成分を含有することを特徴とする(1)~(8)のいずれかに記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
(10)反応性オリゴマー成分として重量平均分子量が10000以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有することを特徴とする(9)に記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
(11)前記2つの光学基材のうち少なくとも1つの光学基材が、ガラス基板、透明樹脂基板、透明樹脂フィルム、透明電極が形成してあるガラス基板、透明基板に透明電極が形成してあるガラス基板またはフィルムが貼り合わされた基板、液晶表示ユニット、プラズマ表示ユニット、及び有機EL表示ユニット、LED表示ユニットからなる群から選ばれる1種以上の光学基材である、(1)~(10)のいずれかに記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
(12)下記工程1~2の手順で少なくとも2つの光学基材を貼り合わせるために用い請(1)~(11)のいずれかに記載の紫外線硬化型接着剤組成物。
(工程1)少なくとも1つの光学基材に対して、(1)~(11)のいずれか一項に記載の紫外線硬化型接着剤組成物を塗布して、塗布層を形成し、該塗布層に紫外線を照射することにより硬化物層を有する光学基材を得る工程
(工程2)工程1で得られた光学基材の硬化物層に対して、他の光学基材を貼り合わせるか、又は、工程1により得られた他の光学基材の硬化物層を貼り合わせる工程。
(13)(1)~(12)のいずれかに記載の紫外線硬化型接着剤組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物。
(14)(1)~(12)のいずれかに記載の紫外線硬化型接着剤組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物層を備える光学部材。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、紫外線硬化型接着剤で貼り合わされた表示装置などの光学部材が低温環境下に置かれた場合であっても反りを抑えることが可能で、さらに接着性に優れる紫外線硬化型接着剤組成物、およびそれを用いた光学部材を提供可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の紫外線硬化型接着剤組成物を使用する光学部材の製造方法の第1の実施形態を示す工程図である。
【
図2】本発明の紫外線硬化型接着剤組成物を使用する光学部材の製造方法の第2の実施形態を示す工程図である。
【
図3】本発明の紫外線硬化型接着剤組成物を使用する光学部材の製造方法の第3の実施形態を示す工程図である。
【
図4】本発明の紫外線硬化型接着剤組成物を使用する光学部材の構成の一例を示す図である。
【
図5】紫外線硬化型接着剤組成物を使用する光学部材の低温での反り量の評価方法に関して説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書においては、「(メタ)アクリレート」との用語は、アクリレートおよびメタクリレートのいずれか又は両方を指す用語である。また、「(メタ)アクリロイル基」との用語は、アクリロイル基およびメタクリロイル基のいずれかまたは両方を指す用語である。例えば、「オクチル(メタ)アクリレート」との用語は、オクチルアクリレートおよびオクチルメタクリレートのいずれか又は両方を指す。また、「硬化物」とは、接着剤組成物に紫外線を照射することにより硬化した、紫外線硬化型接着剤組成物の硬化物を指す。
【0012】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物の組成割合としては、好適には、リン酸基を有する(メタ)アクリレート[成分A]が0.05~10質量%であり、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート[成分B]が0.5~40質量%、水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]が20~99質量%であり、光重合開始剤[成分D]が0.05~10質量%であり、前記[成分B]と[成分C]の合計含有量が紫外線硬化型接着剤組成物の総量に対して70質量%以上であり、その他の成分が残部である。その他の成分としては、1分子中に2つ以上の反応基を持つモノマー成分、反応性オリゴマー成分、可塑剤および柔軟化剤や粘着性付与剤やポリマーなどの非反応性成分、酸化防止剤、チクソ性付与剤、消泡剤、表面張力調整剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、レベリング剤、帯電防止剤、表面潤滑剤、蛍光増白剤、光安定剤等の添加剤などが挙げられる。
【0013】
さらに、本発明の紫外線硬化型接着剤組成物を硬化させた硬化物の-20℃でのせん断弾性率は1.0×106Pa以下であり、より好ましくは、5.0×105Pa以下である。尚、せん断弾性率は以下のように測定できる。
紫外線硬化型接着剤組成物に対して高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)を用いて照射強度200mW/cm2で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射し接着剤組成物を硬化させた。得られた硬化物の-20℃におけるせん断弾性率(ずり弾性率、剛性率とも呼ばれる)をレオメータ(TAinstruments社製:DiscoveryHR-3、測定冶具径 8mmφ、測定周波数1Hz)を用いて測定。
【0014】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物は、リン酸基を有する(メタ)アクリレート[成分A]を含有する。リン酸基を有する(メタ)アクリレート[成分A]とは、1分子内にリン酸基を1個以上、好ましくは1~5個含有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個以上、好ましくは1~3個含有する化合物である。リン酸基を有する(メタ)アクリレート[成分A]の本発明の紫外線硬化型接着剤組成物中における質量割合は通常0.05~10質量%であり、好ましくは0.3~5質量%であり、より好ましくは0.5~3質量%である。10質量%より多いと接着剤組成物の硬化物の透明性が悪くなるおそれがあり、0.05質量%より少ないと十分な接着性が得られない。リン酸基を有する(メタ)アクリレート[成分A]は、単独で用いるか、または2種以上を併用することができる。
本発明においては、リン酸基を有する(メタ)アクリレート[成分A]を含有させることで、低温での基材の反りが抑制できる紫外線硬化型接着剤組成物であってもより高い接着性を発現でき、低温での反り抑制が可能且つ剥がれにくい接着剤とすることができる。
【0015】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物におけるリン酸基を有する(メタ)アクリレート[成分A]としては、特には限定されないが、例えば、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(例えば、共栄社化学社製の「ライトエステルP-1M」、「ライトアクリレートP-1A」等)、リン酸メチレン(メタ)アクリレート、リン酸エチレン(メタ)アクリレート、リン酸プロピレン(メタ)アクリレート、リン酸テトラメチレン(メタ)アクリレート等のリン酸アルキレン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレートのリン酸エステル、ポリプロピレングリコールモノメタクリレートのリン酸エステル、ビス(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート(例えば、共栄社化学社製の「ライトエステルP-2M」、「ライトアクリレートP-2A」等)、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、カプロラクトン変性リン酸モノ(メタ)アクリレートとカプロラクトン変性リン酸ジ(メタ)アクリレートの混合物(例えば、日本化薬社製の「KAYAMERPM-21」等)等を挙げることができる。
【0016】
上記のリン酸基を有する(メタ)アクリレート[成分A]の中でも、接着性、透明性、柔軟性の観点から、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、ビス(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、カプロラクトン変性リン酸モノ(メタ)アクリレートとカプロラクトン変性リン酸ジ(メタ)アクリレートの混合物(例えば、日本化薬社製の「KAYAMERPM-21」等)が好ましい。
【0017】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物は、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート[成分B]を含有する。水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート[成分B]は、1分子内に水酸基を1個以上含有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する上記[成分A]以外の化合物である。水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート[成分B]の本発明の紫外線硬化型接着剤組成物中における質量割合は通常0.5~40質量%であり、好ましくは2~30質量%であり、より好ましくは3~20質量%である。40質量%より多いと、接着性、透明性、硬化性が悪くなるおそれがあり、0.5質量%より少ないと接着性、高温恒湿環境での透明性が悪くなるおそれがある。水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート[成分B]は単独で用いるか、または2種以上を併用することができる。本発明においては、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート[成分B]を含有させることで、接着性、高温高湿環境における透明性を向上させることができる。
【0018】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物における水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート[成分B]としては、特には限定されないが、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレ-ト等を挙げることができる。
【0019】
上記の水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート[成分B]の中でも、柔軟性、高温恒湿環境における透明性の観点から、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレ-トよりも4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの方が高温恒湿環境における膜の白化を防ぐ効果が高い傾向がある。さらに、硬化性の観点から、4-ヒドロキシブチルアクリレートであることが最も好ましい。
【0020】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物は、水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]を含有する。水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]は、1分子内に(メタ)アクリロイル基を1個有する上記[成分A]および[成分B]以外の化合物である。水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]の本発明の紫外線硬化型接着剤組成物中における質量割合は通常20~99質量%であり、好ましくは40~98質量%であり、より好ましくは70~95質量%である。99質量%より多いと、接着性や硬化性が低下する恐れがあり、20質量%より少ないと、柔軟性、接着性の悪化や、接着剤組成物の粘度が高くなり塗布性不良を招くおそれがある。水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]は単独で用いるか、または2種以上を併用することができる。
【0021】
水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]としては、例えば、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ノルマルオクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等の炭素数5~25個のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、フェニルグリシジル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-エチル-2-アダマンチルアクリレート、1-アダマンチルメタクリレート、ポリプロピレンオキサイド変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート、ジシクロペンタジエンオキシエチル(メタ)アクリレート、等の環状骨格を有する(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキサイド変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0022】
上記の水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]の中でも、低温環境下での表示装置の反り抑制性、硬化性、希釈性の観点から、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノルマルオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートが好ましく、接着性の観点から2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノルマルオクチル(メタ)アクリレートがより好ましく、2-エチルへキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0023】
また、接着性の観点から、水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]として環状骨格を有する単官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。環状骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、具体的には、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-エチル-2-アダマンチルアクリレート、1-アダマンチルメタクリレート、ジシクロペンタジエンオキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。中でも、他材料との相溶性の観点から、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリンがより好ましく、接着性の観点からジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリンがさらに好ましい。水酸基を持たない単官能(メタ)アクリレート[成分C]として環状骨格を有する単官能(メタ)アクリレートを含有する場合、接着性と低温環境下での光学部材の反り抑制性の観点から、紫外線硬化型接着剤組成物中における環状骨格を有する単官能(メタ)アクリレートの質量割合は、1~50質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましい。
【0024】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物は、上記[成分B]と[成分C]の合計含有量が紫外線硬化型接着剤組成物の総量に対して70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。[成分B]と[成分C]の合計含有量が紫外線硬化型接着剤組成物の総量に対して70質量%以上とすることで、接着性と低温環境下での表示部材の反り抑制性の両立が可能となる。さらに、接着剤組成物の粘度を下げることが可能となり、スリットコート、スピンコート、ディスペンス、インクジェット等の様々な塗布方法に適用可能な紫外線硬化型接着剤組成物を得ることができる。
【0025】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物は光重合開始剤[成分D]を含有する。光重合開始剤[成分D]の本発明の紫外線硬化型接着剤組成物中における質量割合は通常0.05~10質量%、好ましくは1~5質量%である。10質量%より多いと、接着剤組成物の硬化物層の透明性が悪くなるおそれがある。0.05質量%より少ないと、硬化性、接着性が劣ってしまう。光重合開始剤[成分D]は単独で用いるか、または2種以上を併用することができる。
【0026】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物に含有される光重合開始剤[成分D]としては、特に限定されないが、例えば、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュアー184;BASF製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー(エサキュアONE;ランバルティ製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュアー2959;BASF製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(イルガキュアー127;BASF製)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(イルガキュアー651;BASF製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(DAROCUR1173;BASF製)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(イルガキュアー907;BASF製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン(カヤキュアDETX-S:日本化薬社製)、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](IRGACURE OXE01:BASF社製)、オキシフェニル酢酸2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸2-(2-ヒドロキシ-エトキシ)エチルエステルとの混合物(イルガキュアー754:BASF製)等を挙げることができる。
【0027】
光重合開始剤[成分D]としては、硬化性、透明性の観点から、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有することが好ましい。また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤以外の光重合開始剤を使用する場合には、アルキルフェノン系光重合開始剤、又は水素引き抜き型光重合開始剤を使用することが好ましい。アルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュアー184;BASF製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュアー2959;BASF製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(イルガキュアー127;BASF製)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(イルガキュアー651;BASF製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(DAROCUR1173;BASF製)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(イルガキュアー907;BASF製)、等が挙げられる。水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、メチル-2-ベンゾフェノン、1-[4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルフォニル)プロパン-1-オン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン及び4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン(カヤキュアDETX-S:日本化薬社製)、イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルチオキサントン、3-[3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イル-オキシ]-2-ヒドロキシプロピル-N,N,N―トリメチルアンモニウムクロライド及びフルオロチオキサントン等のチオキサントン系化合物、オキシフェニル酢酸2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸2-(2-ヒドロキシ-エトキシ)エチルエステルとの混合物等(イルガキュアー754:BASF製)が挙げられる。より広範囲の波長により硬化することが可能となるため、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とアルキルフェノン系光重合開始剤、又は水素引き抜き型光重合開始剤を併用することが好ましい。
【0028】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物は、前記の各成分に加え、必要に応じてその他の成分を含有することができる。その他の成分を含有するときは、硬化物の透明性を光学用に使用できない程度に低下させない物質が好ましい。
【0029】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物には、必要に応じて1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を持つモノマー成分を使用することができる。例えば、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びエチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート等のトリメチロールC2~C10アルカントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート等のトリメチロールC2~C10アルカンポリアルコキシトリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクロイルオキシエチル]イソシアヌレ-ト、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートペンタエリスリトールポリエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を持つモノマー成分を使用する場合、紫外線硬化型接着剤組成物中における1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を持つモノマー成分の質量割合は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を持つモノマー成分の含有量が多くなると、接着性や低温環境下での表示装置の反り抑制性が悪化する傾向がある。
【0030】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物には、必要に応じて反応性オリゴマー成分を使用することができる。反応性オリゴマー成分としては、例えば、重量平均分子量が3000~100000の範囲のウレタン(メタ)アクリレート、又はポリブタジエン/水添ポリブタジエン/ポリイソプレン/水添ポリイソプレンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の骨格をもつ(メタ)アクリレート、側鎖または末端に(メタ)アクリレート基を有するアクリルポリマー、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、接着性、柔軟性の観点からウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、さらに、ポリエステル/ポリプロピレン/水添ポリブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の骨格をもつウレタン(メタ)アクリレートがより好ましい。反応性オリゴマー成分を用いる場合、本発明の紫外線硬化型接着剤組成物における反応性オリゴマー成分の質量割合は通常1~29質量%、好ましくは3~20質量%である。紫外線硬化型接着剤組成物中に反応性オリゴマー成分を含有することにより硬化性を向上させることができる一方、含有量が多くなると接着性が悪くなる傾向がある。
【0031】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール、ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることによって得られる。
【0032】
多価アルコールとしては、例えば、ポリブタジエングリコール、水添ポリブタジエングリコール、ポリイソプレングリコール、水添ポリイソプレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1、5-ペンタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1、6-ヘキサンジオール等の炭素数1~10のアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のトリオール、トリシクロデカンジメチロール、ビス-〔ヒドロキシメチル〕-シクロヘキサン等の環状骨格を有するアルコール等;及びこれら多価アルコールと多塩基酸(例えば、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等)との反応によって得られるポリエステルポリオール、多価アルコールとε-カプロラクトンとの反応によって得られるカプロラクトンアルコール、ポリカーボネートポリオール(例えば1,6-ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの反応によって得られるポリカーボネートジオール等)又はポリエーテルポリオール(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA等)等が挙げられる。接着強度と耐湿性の観点から、上記多価アルコールとしては、ポリプロピレングリコール、水添ポリブタジエングリコールが好ましく、透明性と柔軟性の観点から重量平均分子量が1000以上のポリプロピレングリコール、水添ポリブタジエングリコールが特に好ましい。また、必要に応じて二種以上の多価アルコールを併用してもよい。
【0033】
有機ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート又はジシクロペンタニルイソシアネート等が挙げられる。中でも、強靭性の観点からイソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0034】
又、水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシC2~C4アルキル(メタ)アクリレート、ジメチロールシクロヘキシルモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシカプロラクトン(メタ)アクリレート、水酸基末端ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0035】
上記ウレタン(メタ)アクリレートを得るための反応は、例えば、以下のようにして行う。即ち、多価アルコールにその水酸基1当量あたり有機ポリイソシアネートをそのイソシアネート基が好ましくは1.1~2.0当量、さらに好ましくは1.1~1.5当量になるように混合し、反応温度を好ましくは70~90℃で反応させ、ウレタンオリゴマーを合成する。次いで、ウレタンオリゴマーのイソシアネート基1当量あたり、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物をその水酸基が好ましくは1~1.5当量となるように混合し、70~90℃で反応させて目的とするウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。
【0036】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量としては、3000~100000が好ましく10000~80000がより好ましく、15000~60000が最も好ましい。重量平均分子量が3000より小さいと柔軟性が損なわれてしまう可能性があり、重量平均分子量が100000より大きいと硬化性向上効果が得られない可能性がある。重量平均分子量はGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて下記条件にて測定できる。
機種:TOSOH HLC-8320GPC
カラム:SuperMultiporeHZ-M
溶離液:THF(テトラヒドロフラン);0.35ml/分、40℃
検出器:RI(示差屈折計)
分子量標準:ポリスチレン
【0037】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物には、必要に応じて、可塑剤および柔軟化剤や粘着性付与剤やポリマーなどの非反応性成分を使用することができる。非反応成分を含有させることにより、粘着性の向上、反応速度の調整、硬化収縮率の低減が可能である。使用できる非反応成分の具体的としては、組成物中に相溶するアクリルポリマー、アクリルオリゴマー、フタル酸エステル類、リン酸エステル類、グリコールエステル類、クエン酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、脂肪酸エステル類、エポキシ系可塑剤、ヒマシ油類、テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、水素添加ロジン系樹脂、および液状テルペン、水酸基含アクリルポリマー、水酸基含有水添ポリブタジエン、ポリエーテルグリコール等を例示することができる。透明性の観点から、水素添加ロジン系樹脂、水酸基含有水添ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、アクリルポリマー、水酸基含有アクリルポリマー、ポリブテン、液状テルペンが好ましい。上記非反応性成分を用いる場合、紫外線硬化型接着剤組成物中における非反応性成分の質量割合は通常1~29質量%、好ましくは3~15質量%である。
【0038】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物には、必要に応じて酸化防止剤、チクソ性付与剤、消泡剤、表面張力調整剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、レベリング剤、帯電防止剤、表面潤滑剤、蛍光増白剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン化合物等)等の添加剤を加えてもよい。尚、溶剤については、本発明では紫外線硬化型接着剤組成物中5質量%以下である。これは、溶剤を多量に含有すると、成膜が困難となる上、硬化性に悪影響を与えるためである。ここで、溶剤は紫外線硬化型接着剤組成物中3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【0039】
各種添加剤の組成物中に含有する場合、各種添加剤の紫外線硬化型透明接着剤組成物中における質量割合は、0.01~3質量%、好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.02~0.5質量%である。
【0040】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物は、前記した各成分を常温~80℃で混合溶解して得ることができ、必要により夾雑物をろ過等の操作により取り除いてもよい。本発明の接着用接着剤組成物は、25℃の粘度が1~10000mPa・sの範囲となるように、成分の配合比を適宜調節することが好ましい。さらに、基材への塗布性の観点から、25℃の粘度が1~6000mPa・sの範囲となるように成分の配合比を適宜調節することがより好ましく、25℃の粘度が1~300mPa・sの範囲であることがさらに好ましく、25℃の粘度が1~100mPa・sの範囲であることがより好ましい。さらに、25℃の粘度が1~30mPa・sの範囲であることが最も好ましい。粘度が10000mPa・sよりも高いと、基材への塗布性が悪くなり、また吐出部の径の細いディスペンサやバーコーター法、インクジェット法などでは塗布できないなど、接着剤組成物の塗布方法が限定されてしまう。
【0041】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物を硬化させた硬化物の-20℃でのせん断弾性率は1.0×106Pa以下であり、より好ましくは、5.0×105Pa以下である。尚、せん断弾性率は以下のように測定できる。
紫外線硬化型接着剤組成物に対して高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)を用いて照射強度200mW/cm2で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射し接着剤組成物を硬化させた。得られた硬化物の-20℃におけるせん断弾性率(シェア弾性率、ずり弾性率、剛性率とも呼ばれる)をレオメータ(TAinstruments社製:DiscoveryHR-3、測定冶具径 8mmφ、測定周波数1Hz)を用いて測定。
【0042】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物においては、特定の成分を特定の含有量含み、且つ硬化させた硬化物の-20℃でのせん断弾性率を特定の数値以下にすることにより、線膨張係数が異なる光学基材が紫外線硬化型接着剤組成物によって貼り合わされた光学部材が低温環境下におかれた場合であっても、紫外線硬化型接着剤の硬化物層が歪みや応力を緩和することにより、光学部材の反りを抑制し、表示不良や剥がれ等を防止することが可能となる。また、光学部材の耐久性向上の観点からは、-20℃と25℃のせん断弾性率の変化が少ない方が好ましく、具体的には、(-20℃のせん断弾性率)/(25℃のせん断弾性率)の値が、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、8以下であることが最も好ましい。
【0043】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物の硬化物の硬化収縮率は10.0%以下であることが好ましく、8.0%以下であることが特に好ましい。これにより、紫外線硬化型接着剤組成物が硬化する際に、硬化物に蓄積される内部応力を低減することができ、基材と紫外線硬化型接着剤組成物の硬化物からなる層との界面に歪みができることを有効に防止することができる。また、ガラス等の基材が薄い場合には、硬化収縮率が大きい場合には硬化時の反りが大きくなることから、表示性能に大きな悪影響を及ぼすため、当該観点からも、硬化収縮率は少ない方が好ましい。硬化収縮率の測定方法は、例えば下記の手法で測定可能である。
フッ素系離型剤を塗布した厚さ1mmのスライドガラス2枚を用意し、そのうち1枚の離型剤塗布面に、紫外線硬化型接着剤組成物を膜厚が200μmとなるよう塗布する。その後、2枚のスライドガラスを、それぞれの離型剤塗布面が互いに向かい合うように貼り合わせる。ガラス越しに高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で照射強度200mW/cm2で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を該接着剤組成物に照射し、該接着剤組成物を硬化させる。その後、2枚のスライドガラスを剥離し、膜比重測定用の硬化物を作製する。JIS K7112 B法に準拠し、硬化物の比重(DS)を測定する。また、25℃で接着剤組成物の液比重(DL)を測定する。DS及びDLの測定結果から、次式より硬化収縮率を算出する。
収縮率(%)=(DS-DL)÷DS×100
【0044】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物の硬化物は450nm~800nmの波長領域での透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。当該透過率が85%未満である場合、光が透過し難く、表示装置に使用した場合に視認性が低下してしまう。
透過率としては、下記の方法で測定することが可能である。
厚さ1mmのスライドガラス2枚を用意し、そのうちの1枚に、紫外線硬化型接着剤組成物を硬化後の膜厚が100μmとなるように塗布する。その後、2枚のスライドガラスを貼り合わせる。ガラス越しに高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で照射強度200mW/cm2で積算光量3000mJ/cm2の紫外線照射し、該接着剤組成物を硬化させ、透過率測定用の硬化物を作製する。得られた硬化物の透明性について、分光光度計(U-3310、日立ハイテクノロジーズ(株))を用いて、450~800nmの波長領域における透過率を測定する。
【0045】
光学基材を張り合わせる接着材として使用した場合に、視認性向上のために硬化物の屈折率が1.45~1.55であることが好ましい。当該屈折率の範囲内であれば、光学基材として使用される基材との屈折率の差を低減させることができ、光の乱反射を抑えて光損失を低減させることが可能となる。
【0046】
光学基材を張り合わせる接着材として使用した場合に、接着性向上のために硬化物の破断点伸度が100%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましい。尚、上限値は特に限定されないが、通常1000%以下である。破断点伸度が100%よりも低い場合、基材の変形に追従することが困難となり、基材が湾曲した場合や低温、高温などの温度環境が発生した場合に剥がれが生じる可能性が高くなってしまう。
【0047】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物を使用した光学部材の製造工程の好ましい形態について説明する。
【0048】
本発明の光学部材の製造方法においては、下記(工程1)~(工程3)により、少なくとも2つの光学基材を貼り合わせされることが好ましい。尚、(工程2)の段階で十分な接着強度が確保できると判断される場合においては、(工程3)を省くことが可能である。
(工程1) 少なくとも一つの光学基材に対して、前記紫外線硬化型接着剤組成物を塗布して、塗布層を形成し、該塗布層に、紫外線を照射することにより硬化物層を有する光学基材を得る工程。尚、工程1において、紫外線照射後の塗布層の硬化率については特に限定は無い。
(工程2) 工程1で得られた光学基材の硬化物層に対して、他の光学基材を貼り合わせるか、又は、工程1により得られた他の光学基材の硬化物層を貼り合わせる工程。
(工程3) 貼り合わされた光学基材における硬化物層に紫外線を照射して、該硬化物層をさらに硬化させる工程。
【0049】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の紫外線硬化型接着剤組成物を使用する光学部材の製造工程の第1の実施形態を示す工程図である。
この方法は、液晶表示ユニット1と透明基板2を貼り合わせることにより光学部材を得る方法である。
【0050】
液晶表示ユニット1は、電極を形成した一対の基板間に液晶材料が封入されたものに偏光板、駆動用回路、信号入力ケーブル、バックライトユニットが備わったものを言う。
透明基板2は、ガラス板、ポリメチルメタクリレート(PMMA)板、ポリカーボネート(PC)板、脂環式ポリオレフィンポリマー(COP)板、透明ポリイミド(CPI)等の透明基板である。
ここで、透明基板2は透明基板の表面上に黒色枠状の遮光部4を有するものを好適に使用でき、遮光部4はテープの貼付や塗料の塗布又は印刷等によって形成されている。尚、本発明においては遮光部4を有さないものにも適用できるが、以下の第1~3の実施形態の説明では、遮光部4を備える場合を具体例として説明を行う。遮光部4を有さない場合には、「遮光部を有する透明基板」を「透明基板」と読み替えれば、そのまま遮光部を有さない場合の例と考えることができる。
【0051】
(工程1)
まず、
図1(a)に示すように、紫外線硬化型接着剤組成物を、液晶表示ユニット1の表示面と遮光部を有する透明基板2の遮光部が形成されている面の表面とに塗布する。塗布の方法としては、スリットコーター、ロールコーター、スピンコーター、スクリーン印刷法、バーコーター、ドクターブレード法、インクジェット法等が挙げられる。ここで、液晶表示ユニット1と遮光部を有する透明基板2との表面に塗布する紫外線硬化型接着剤組成物は同一であってもよいし、異なる紫外線硬化型接着剤組成物を用いても構わない。通常は両者が同じ紫外線硬化型接着剤組成物であることが好ましい。
【0052】
各紫外線硬化型接着剤組成物の硬化物の膜厚は、貼り合わせた後の硬化物層7が10~500μm、好ましくは20~350μm、更に好ましくは30~150μmとなるように調整される。ここで、遮光部を有する透明基板2の表面上に存在する紫外線硬化型接着剤組成物の硬化物層の膜厚はその膜厚にもよるが、通常、液晶表示ユニット1の表面上に存在する紫外線硬化型接着剤組成物の硬化物層の膜厚と同程度か又はそれよりも厚い方が好ましい。後記工程3において、紫外線を照射した後も、未硬化のまま残る部分を最小限にして、硬化不良の恐れをなくすためである。
【0053】
塗布後の紫外線硬化型接着剤組成物層5に紫外線8を照射して、塗布層の下部側(紫外線硬化型接着剤組成物からみて液晶表示ユニット側または透明基板側)に存在する硬化部分(図では未表示)と塗布層の上部側(液晶表示ユニット側と反対側または透明基板側と反対側)(大気中で行うときは大気側)に存在する未硬化部分(図では未表示)を有する硬化物層6を得る。尚、ここで、工程2で光学部材を得る場合には、前記未硬化部分は硬化表面部分となる。前記未硬化部分を得る場合には、照射量は5~2000mJ/cm2が好ましく、特に好ましくは、10~1000mJ/cm2である。照射量が少なすぎると、最終的に貼り合わせた光学部材の紫外線硬化型接着剤組成物の硬化度が不十分となるおそれがあり、照射量が多すぎると未硬化成分が少なくなり、液晶表示ユニット1と遮光部を有する透明基板2の貼り合わせが不良となる恐れがある。前記硬化表面部分を得る場合には、紫外線の照射量は積算光量で約100~4000mJ/cm2が好ましく、特に好ましくは、200~3000mJ/cm2程度である。紫外~近紫外の光線照射による硬化に使用する光源については、紫外~近紫外の光線を照射するランプであれば光源を問わない。例えば、低圧、高圧若しくは超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、(パルス)キセノンランプ、LEDランプまたは無電極ランプ等が挙げられる。
【0054】
本発明において、「未硬化」とは25℃環境下で流動性がある状態を示すものとする。また、紫外線照射後に紫外線硬化型接着剤組成物層を指で触り、指に液状成分が付着する場合は、未硬化部分を有するものと判断される。
本発明の工程1においては、紫外線硬化型接着剤組成物に照射される紫外線の波長は特に限定されないが、前記未硬化部分を得る場合には、320nm~450nmの波長領域での最大照度(最大照射強度)を100とした時、200~320nmの波長領域における最大照度の比率(照度比)は30以下が好ましく、10以下であると特に好ましい。
【0055】
前記未硬化部分を得る場合には、320nm~450nmの波長領域での最大照度を100とした時、200~320nmの波長領域における最大照度の比率(照度比)は30よりも高いと、最終的に得られる光学部材の接着強度が劣ってしまうおそれがある。これは、低波長での照度が高いと、工程1における硬化時に過度に紫外線硬化型接着剤組成物の硬化が進んでしまい、工程3における紫外線の照射における硬化の際の密着性に対する寄与が減少してしまうためと考えられる。
【0056】
ここで、上記照度比率となるように紫外線を照射する方法は、例えば、紫外~近紫外の光線を照射するランプとして、当該照度比率の条件を満たすランプを適用する方法や、ランプ自体が当該照度の条件を満たさない場合であっても、工程1の照射時において短波長の紫外線をカットする基材(例えば、短波紫外線カットフィルター、ガラス板、フィルム等)を使用することで、このような照度比率で照射することが可能となる。紫外線の照度比率を調整する基材としては特には限定されないが、例えば、短波紫外線カット処理が施されたガラス板、ソーダ石灰ガラス、PETフィルム等が挙げられる。尚、石英ガラス等の表面に凹凸処理を施した減衰板等はあまり効果的ではない。これらのものは、光を散乱させて照度を落とすため、320nm以下の短波長の照度を選択的に小さくすることには向かない。
【0057】
工程1において、紫外線の照射は、通常大気中で、塗布側の上部側表面(紫外線硬化型接着剤組成物から見て、液晶表示ユニット側と反対側または透明基板側と反対側)(通常大気面)から照射するのが好ましい。また、窒素雰囲気下または真空にした後に硬化阻害性の気体を塗布層の上面表面に噴霧しながら紫外線の照射を行っても構わない。大気中で紫外線硬化型接着剤組成物を硬化した場合には、液晶表示ユニット側と反対側または透明基板側と反対側は大気側となる。尚、工程1で形成される塗布層表面のタック性を上げたい場合は、真空環境下、又は窒素などの硬化阻害を起こさない気体の環境化で紫外線を照射しても良い。
一方、工程3を省略する場合においては、真空中または硬化を促進させる気体(例えば、窒素)を噴霧しながら硬化を行うことが好適に行える。これにより、工程3を省略したとしても、十分な接着を行うことが可能となる。
尚、工程1を仮硬化工程、工程1にて作成された硬化膜を仮硬化膜と呼ぶことがある。
【0058】
紫外線照射時に、紫外線硬化型接着剤組成物層(塗布層)表面に酸素又はオゾンを吹きかけることにより、未硬化部分の状態や未硬化部分の膜厚を調整することができる。
即ち、塗布層の表面に酸素又はオゾンを吹きかけることにより、その表面において、紫外線硬化型接着剤組成物の硬化の酸素阻害が生じるため、その表面の未硬化部分を確実に形成し、また、未硬化部分の膜厚を厚くすることができる。
【0059】
(工程2)
次に、未硬化部分同士が対向する形で、
図1(b)に示すように、液晶表示ユニット1と遮光部を有する透明基板2を貼り合わせる。貼り合わせは、大気中及び真空中のいずれでもできる。
ここで、貼り合わせの際に気泡が生じることを防ぐためには、真空中で貼り合わせることが好適である。
このように、液晶表示ユニット及び透明基板の各々に硬化部分及び未硬化部分を有する紫外線硬化型接着剤組成物の硬化物を得てから貼り合わせると、接着力の向上を期待することができる。
貼り合わせは、加圧、プレス等により行うことができる。
【0060】
(工程3)
次に、工程3は任意の工程であるが、
図1(c)に示すように、透明基板2及び液晶表示ユニット1を貼り合わせて得た光学部材に、遮光部を有する透明基板2側から紫外線8を照射して、紫外線硬化型接着剤組成物(塗布層)を硬化させる。工程3は本硬化工程と呼ばれることがある。
紫外線の照射量は積算光量で約100~4000mJ/cm
2が好ましく、特に好ましくは、200~3000mJ/cm
2程度である。紫外~近紫外の光線照射による硬化に使用する光源については、紫外~近紫外の光線を照射するランプであれば光源を問わない。例えば、低圧、高圧若しくは超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、(パルス)キセノンランプ、LEDランプまたは無電極ランプ等が挙げられる。
こうして、
図4に示すような光学部材を得ることができる。
【0061】
(第2の実施形態)
第1の実施形態に加えて、次のような変形した第2の実施形態により本発明の光学部材を製造しても構わない。尚、各工程での詳細は上記の第1の実施形態と同様のことが当てはまるため、同じ部分については説明を省略する。
【0062】
(工程1)
まず、
図2(a)に示すように、紫外線硬化型接着剤組成物を、遮光部を有する透明基板2上の遮光部4が形成された面に塗布した後、得られた塗布層(紫外線硬化型接着剤組成物層5)に紫外線8を照射して、塗布層の下部側(前記紫外線硬化型接着剤組成物からみて透明基板側)に存在する硬化部分と塗布層の上部側(透明基板側と反対側)に存在する未硬化部分を有する硬化物層6を得る。尚、ここで、工程2で光学部材を得る場合には、前記未硬化部分は硬化表面部分となる。
このとき、前記未硬化部分を得る場合には、紫外線硬化型接着剤組成物に照射される紫外線の波長は特に限定されないが、320nm~450nmの波長領域での最大照度を100とした時、200~320nmの波長領域における最大照度の比率は30以下が好ましく、10以下であると特に好ましい。320nm~450nmの波長領域での最大照度を100とした時、200~320nmの波長領域における最大照度の比率は30よりも高いと、最終的に得られる光学部材の接着強度が劣ってしまうおそれがある。
前記硬化表面部分を得る場合には、紫外線の照射量は積算光量で約100~4000mJ/cm
2が好ましく、特に好ましくは、200~3000mJ/cm
2程度である。紫外~近紫外の光線照射による硬化に使用する光源については、紫外~近紫外の光線を照射するランプであれば光源を問わない。例えば、低圧、高圧若しくは超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、(パルス)キセノンランプ、LEDランプまたは無電極ランプ等が挙げられる。
【0063】
(工程2)
次に、
図2(b)に示すように、得られた硬化物層6の未硬化部分と液晶表示ユニット1の表示面が対向する形で液晶表示ユニット1と遮光部を有する透明基板2を貼り合わせる。貼り合わせは、大気中及び真空中のいずれでもできる。
【0064】
(工程3)
次に、必要に応じて、
図2(c)に示すように、透明基板2及び液晶表示ユニット1を貼り合わせて得た光学部材に、遮光部を有する透明基板2側から紫外線8を照射して、紫外線硬化型接着剤組成物の未硬化部分を有する硬化物層6を硬化させる。
こうして、
図4に示された光学部材を得ることが出来る。
【0065】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の紫外線硬化型接着剤組成物を使用する光学部材の製造方法の第3の実施形態を示す工程図である。尚、各工程での詳細は上記の第1の実施形態と同様のことが当てはまるため、同じ部分については説明を省略する。
なお、上述した第1の実施の形態における構成部材と同じ部材については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
【0066】
(工程1)
まず、
図3(a)に示すように、紫外線硬化型接着剤組成物を、液晶表示ユニット1の表面に塗布した。その後、紫外線硬化型接着剤組成物層5に紫外線8を照射して、塗布層の下部側(前記紫外線硬化型接着剤組成物からみて透明基板側)に存在する硬化部分と、塗布層の上部側(透明基板側と反対側)に存在する未硬化部分を有する硬化物層6を得る。尚、ここで、工程2で光学部材を得る場合には、前記未硬化部分は硬化表面部分となる。
このとき、前記未硬化部分を得る場合には、紫外線硬化型接着剤組成物に照射される紫外線の波長は特に限定されないが、320nm~450nmの波長領域での最大照度を100とした時、200~320nmの波長領域における最大照度は30以下が好ましく、10以下であると特に好ましい。320nm~450nmの波長領域での最大照度を100とした時、200~320nmの波長領域における最大照度は30よりも高いと、最終的に得られる光学部材の接着強度が劣ってしまう。
前記硬化表面部分を得る場合には、紫外線の照射量は積算光量で約100~4000mJ/cm
2が好ましく、特に好ましくは、200~3000mJ/cm
2程度である。紫外~近紫外の光線照射による硬化に使用する光源については、紫外~近紫外の光線を照射するランプであれば光源を問わない。例えば、低圧、高圧若しくは超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、(パルス)キセノンランプ、LEDランプまたは無電極ランプ等が挙げられる。
【0067】
(工程2)
次に、
図3(b)に示すように、得られた硬化物層6の未硬化部分と遮光部を有する透明基板2上の遮光部が形成された面が対向する形で液晶表示ユニット1と遮光部を有する透明基板2を貼り合わせる。貼り合わせは、大気中及び真空中のいずれでもできる。
【0068】
(工程3)
次に、必要に応じて
図3(c)に示すように、透明基板2及び液晶表示ユニット1を貼り合わせて得た光学部材に、遮光部を有する透明基板2側から紫外線8を照射して、紫外線硬化型接着剤組成物の未硬化部分を有する硬化物層6を硬化させる。
こうして、
図4に示された光学部材を得ることが出来る。
【0069】
上記各実施形態は本発明の光学部材の製造方法の実施態様のいくつかを一つの具体的な光学基材で説明したものである。各実施形態では液晶表示ユニットおよび遮光部を有する透明基板を用いて説明したが、本発明の製造方法においては、液晶表示ユニットに代えて光学基材として後述する各種部材を使用することができ、透明基板についても、光学基材として後述する各種部材を使用することができる。
【0070】
それだけでなく、液晶表示ユニットおよび透明基板等の光学基材としては、これら各種部材に、更に、他の光学基材層(例えば、紫外線硬化型接着剤組成物の硬化物層で貼り合わされたフィルム又はその他の光学基材層を積層したもの)を使用しても構わない。
さらに、第1の実施形態の項で記載した、紫外線硬化型接着剤組成物の塗布方法、硬化物の膜厚、紫外線照射の際の照射量及び光源、及び、紫外線硬化型接着剤組成物層表面に酸素又は窒素、またはオゾンを吹きかけることによる未硬化部分の膜厚調整方法等はいずれも、上記実施形態にのみ適用されるものでは無く、本発明に含まれるいずれの製造方法にも適用できる。
【0071】
上記液晶表示ユニットも含め、上記の第1~第3の実施形態で製造し得る光学部材の具体的態様を下記に示す。
(i) 遮光部を有する光学基材が、遮光部を有する透明ガラス基板、遮光部を有する透明樹脂基板、遮光部を有する透明フィルム及び遮光部と透明電極が形成してあるガラス基板からなる群から選ばれる少なくとも一つの光学基材であり、それと貼り合わされる光学基材が液晶表示ユニット、プラズマ表示ユニットおよび有機ELユニット、LED表示ユニットからなる群から選ばれる少なくとも一つの表示ユニットであり、得られる光学部材が、該遮光部を有する光学基材を有する表示体ユニットである態様。
【0072】
(ii) 一方の光学基材が遮光部を有する保護基材であり、それと貼り合わされる他の光学基材がタッチパネル又はタッチパネルを有する表示体ユニットであり、少なくとも2つの光学基材が貼り合わされた光学部材が、遮光部を有する保護基材を有するタッチパネル又はそれを有する表示体ユニットである態様。
この場合、工程1においては、遮光部を有する保護基材の遮光部を設けられた面、又は、タッチパネルのタッチ面の何れか一方の面又はその両者に、前記の紫外線硬化型接着剤組成物を塗布するのが好ましい。
【0073】
(iii) 一方の光学基材が遮光部を有する光学基材であり、それと貼り合わされる他の光学基材が表示体ユニットであり、少なくとも2つの光学基材が貼り合わされた光学部材が遮光部を有する光学基材を有する表示体ユニットである態様。
この場合、工程1において、遮光部を有する光学基材の遮光部が設けられた側の面、又は、表示体ユニットの表示面の何れか一方、又は、その両者に、前記の紫外線硬化型接着剤組成物を塗布するのが好ましい。
【0074】
遮光部を有する光学基材の具体例としては、例えば、遮光部を有する表示画面用の保護板、又は、遮光部を有する保護基材を設けたタッチパネル等を挙げることが出来る。
遮光部を有する光学基材の遮光部が設けられた側の面とは、例えば、遮光部を有する光学基材が遮光部を有する表示画面用の保護板であるときは、該保護板の遮光部が設けられた側の面である。また、遮光部を有する光学基材が、遮光部を有する保護基材を有するタッチパネルであるときには、遮光部を有する保護基材は遮光部を有する面がタッチパネルのタッチ面に貼り合わされる。このことから、遮光部を有する光学基材の遮光部が設けられた側の面とは、該タッチパネルのタッチ面とは反対のタッチパネルの基材面を意味する。
遮光部を有する光学基材の遮光部は、光学基材の何れにあっても良いが、通常透明板状又はシート状の光学基材の周囲に枠状に作成され、その幅は、0.1mm~10mm程度であり、好ましくは1~8mm程度、より好ましくは1~5mm程度である。
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物は、上記(工程1)~(工程2)、必要に応じては、さらに(工程3)により、少なくとも2つの光学基材を貼り合わせて、光学部材を製造する方法に使用することができる。
【0075】
本発明の紫外線硬化型接着剤組成物は、上記(工程1)~(工程2)により(必要に応じて工程3を工程2の後におこなうことにより)、複数の光学基材を張り合わせて光学部材を製造するための接着剤として好適に使用することができる。
本発明の光学部材の製造方法において使用する光学基材としては、透明板、シート、タッチパネル、及び表示体ユニット等を挙げることができる。
【0076】
本発明において「光学基材」とは、表面に遮光部を有さない光学基材と、表面に遮光部を有する光学基材の両者を意味する。本発明の光学部材の製造方法においては、好適には複数用いられる光学基材のうち少なくとも一つが、遮光部を有する光学基材である。
本発明に用いる光学基材の材質としては、様々な材料が使用できる。具体的には、PET、PC、PMMA、PCとPMMAの複合体、ガラス、COC、COP、ポリイミド、透明ポリイミド、プラスチック(アクリル樹脂等)等の樹脂が挙げられる。本発明に用いる光学基材、例えば透明板又はシートとしては、偏光板等のフィルム又はシートを複数積層したシート又は透明板、積層していないシート又は透明板、及び、無機ガラスから作成された透明板(無機ガラス板及びその加工品、例えばレンズ、プリズム、ITOガラス)等を使用することができる。また、本発明に用いる光学基材は、上記した偏光板などの他、タッチパネル(タッチパネル入力センサー)又は下記の表示ユニット等の、複数の機能板又はシートからなる積層体(以下、「機能性積層体」とも言う。)を含む。
本発明に用いる光学基材として使用することができるシートとしては、アイコンシート、化粧シート、保護シートが挙げられる。本発明の光学部材の製造方法に使用することができる板(透明板)としては化粧板、保護板が挙げられる。これらのシートないし板の材質としては、透明板の材質として列挙したものが適用できる。
【0077】
透明板又はシート等の板状又はシート状の光学基材の厚さは、特に制限されず、通常は、5μm程度から5cm程度、好ましくは10μm程度から10mm程度、より好ましくは50μm~3mm程度の厚さである。また、本発明に用いる光学基材として使用することができる光学基材は、板状の剛性の高い基材、湾曲やロール可能な薄型及びシート状の基材どちらでも適用できる。
【0078】
本発明の製造方法で得られる好ましい光学部材としては、遮光部を有する板状又はシート状の透明光学基材と、上記機能性積層体とが、本発明の紫外線硬化型接着剤組成物の硬化物で貼り合された光学部材を挙げることができる。
【0079】
また、本発明の製造方法において、光学基材の一つとして液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示ユニットを使用し、他の光学基材として光学機能材料を使用することにより、光学機能材料付き表示体ユニット(以下、表示パネルともいう。)を製造することができる。上記の表示ユニットとしては、例えば、ガラスに偏光板を貼り付けてあるLCD、有機ELディスプレイ、EL照明、量子ドットディスプレイ、電子ペーパーやプラズマディスプレイ、マイクロLEDディスプレイ等の表示装置が挙げられる。また、光学機能材料としては、アクリル板、PC板、PET板、PEN板、シクロオレフィン板、透明ポリイミド樹脂等の透明プラスチック板やフィルム、強化ガラス、タッチパネル入力センサーが挙げられる。
【0080】
本発明の製造方法で得られる光学部材の好ましい態様としては、下記(i)~(vii)を挙げることができる。
(i)遮光部を有する光学基材と前記機能性積層体とを、本発明の紫外線硬化型接着剤組成物の硬化物を用いて貼り合わせた光学部材。
(ii)遮光部を有する光学基材が、遮光部を有する透明ガラス基板、遮光部を有する透明樹脂基板、及び、遮光物と透明電極が形成してあるガラス基板、遮光物と透明電極が形成してある透明樹脂基板からなる群から選ばれる光学基材であり、機能性積層体が表示体ユニット又はタッチパネルである上記(i)に記載の光学部材。
(iii)表示体ユニットが液晶表示体ユニット、プラズマ表示体ユニットおよび有機EL表示ユニット、LED表示ユニットのいずれかである上記(ii)に記載の光学部材。
(iv)遮光部を有する板状又はシート状の光学基材を、タッチパネルセンサーに本発明の紫外線硬化型接着剤組成物の硬化物を用いて貼り合わせたタッチパネル(又はタッチパネル入力センサー)。
(v)遮光部を有する板状又はシート状の光学基材を、表示体ユニットの表示画面上に本発明の紫外線硬化型接着剤組成物の硬化物を用いて貼り合わせた表示パネル。
(vi)遮光部を有する板状又はシート状の光学基材が、表示体ユニットの表示画面を保護するための保護基材又はタッチパネルである、上記(v)に記載の表示パネル。
(vii)紫外線硬化型接着剤組成物が、前記(1)~(9)のいずれかに記載の紫外線硬化型接着剤組成物である、上記(i)~(vi)のいずれかに記載の光学部材、タッチパネル又は表示パネル。
【0081】
本発明の製造方法により得られた表示体ニットと遮光部を有する光学基材とを含む光学部材は、例えば、テレビ、小型ゲーム機、携帯電話、パソコン、ウェアラブルデバイスなどの電子機器に組み込むことができる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。
【0083】
(合成例1)
還流冷却器、攪拌機、温度計、温度調節装置を備えた反応器に、ポリオール化合物として旭硝子(株)製エクセノール3020(ポリプロピレングリコール、水酸基価:35.9mg・KOH/g)3126g(1mol)を仕込み攪拌しながら内部温度を50℃とした。続いてポリイソシアネート化合物としてイソホロンジイソシアネート289g(1.3mol)を添加し80℃で目標のNCO含有量に達するまで反応させた。次に、重合禁止剤として4-メトキシフェノールを3g添加し均一になるまで攪拌し、少なくとも1つ以上の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物として大阪有機化学工業(株)製2-ヒドロキシエチルアクリレート72g(0.62mol)を添加し80℃で目標のNCO含有量に達するまで反応させた。ウレタン化反応触媒としてオクチル酸スズを1g添加し、80℃で反応させ、NCO含有量が0.1%以下となったところを反応の終点とし、ウレタンアクリレート(UA-1)を得た。
【0084】
(合成例2)
還流冷却器、攪拌機、温度計、温度調節装置を備えた反応器に、ポリオール化合物として日本曹達(株)製GI-2000(水素化ポリブタジエンポリオール、水酸基価:46.8mg・KOH/g)2398g(1.0mol)を仕込み攪拌しながら内部温度を50℃とした。続いてポリイソシアネート化合物としてイソホロンジイソシアネート267g(1.2mol)を添加し80℃で目標のNCO含有量に達するまで反応させた。次に、重合禁止剤として4-メトキシフェノールを1.5g添加し均一になるまで攪拌し、少なくとも1つ以上の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物として大阪有機化学工業(株)製2-ヒドロキシエチルアクリレート48g(0.42mol)を添加し80℃で目標のNCO含有量に達するまで反応させた。次にウレタン化反応触媒としてオクチル酸スズを1g添加し、80℃で反応させ、NCO含有量が0.1%以下となったところを反応の終点とし、ウレタンアクリレート(UA-2)を得た。
【0085】
(紫外線硬化型接着剤組成物の調整)
表1に示す配合比率で加熱混合し、比較例1~11及び実施例1~11の接着剤組成物を調製した。
【表1】
PM-2:KAYAMER PM-2、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェートとビス(2-メタクリロイロキシエチル)アシッドホスフェートの混合物、日本化薬(株)製
PM-21:KAYAMER PM-21、カプロラクトン変性リン酸モノメタクリレートとカプロラクトン変性リン酸ジメタクリレートの混合物、日本化薬(株)製
4HBA:4HBA、4-ヒドロキシブチルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製
LA:ブレンマーLA、ラウリルアクリレート、日油(株)製
S-1800ALC:NKエステル S-1800ALC、イソステアリルアクリレート、新中村化学工業(株)製
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート、三菱ケミカル(株)製
IOAA:イソオクチルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製
NOAA:ノルマルオクチルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製
IDAA:イソデシルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製
IBXA:イソボルニルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製
FA-513AS:ファンクリルFA-513AS、ジシクロペンタニルアクリレート、日立化成(株)製
IRG 184:IRGACURE 184、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF社製
IRG 754:IRGACURE 754、オキシフェニル酢酸2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸2-(2-ヒドロキシ-エトキシ)エチルエステルとの混合物、BASF社製
TPO:スピードキュアTPO、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、LAMBSON社製
IRG 819:IRGACURE 819、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製
UX-3204:KAYARAD UX-3204、ポリエステル系ウレタンアクリレート(重量平均分子量Mw13,000)、日本化薬(株)製
UA-1:合成例1のウレタンアクリレート(重量平均分子量Mw11000)
UA-2:合成例2のウレタンアクリレート(重量平均分子量Mw35000)
TEAI-1000:NISSO-PB TEAI-1000、水添ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレート、日本曹達(株)製
AB-6:末端メタクリレート変性アクリルポリマー、東亞合成(株)製
R-684:KAYARAD R-684、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、日本化薬(株)製
HDDA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、大阪有機化学工業(株)製
UP-1171:ARUFON UP-1171、アクリルポリマー、東亞合成(株)製
KE-311:パインクリスタルKE311、水添ロジンエステル樹脂、荒川化学(株)製
GI-2000:GI-2000、両末端水酸基水添ポリブタジエン、日本曹達(株)製
HLBH-P3000:両末端水酸基水添ポリブタジエン、クレイバレー社製
【0086】
得られた比較例1~11及び実施例1~11を用いて以下評価を行った。
【0087】
(粘度)
実施例1~11、比較例1~11の組成物の粘度を、E型粘度計(TV-200:東機産業(株)製)を用いて25℃で測定した。結果を表2に示す。
【0088】
(せん断弾性率)
実施例1~11、比較例1~11の組成物に対して高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)を用いて照射強度200mW/cm2で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射し接着剤組成物を硬化させた。得られた硬化物の-20℃と25℃におけるせん断弾性率(ずり弾性率、剛性率とも呼ばれる)をレオメータ(TAinstruments社製:DiscoveryHR-3、測定冶具径 8mmφ、測定周波数1Hz)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0089】
(低温での光学部材の反り抑制性能)
厚さ0.7mm、幅135mm、長さ230mmのガラス板に、厚さ0.2mmの粘着層付き偏光板を気泡が入らないように全面に貼り付け、偏光板付きガラス板を得た。厚さ1mm、幅135mm、長さ230mmのポリカーボネート製樹脂板に比較例1~11、実施例1~11の組成物を150μmの膜厚になるように塗布した後、偏光板付きガラス板の偏光板側の面と樹脂板とを接着剤組成物を介して気泡が入らないように貼り合わせ、樹脂板越しに無電極UV照射装置(へレウス社製LH10-10Q、Dバルブ)を用いて照射強度200mW/cm
2で積算光量5000mJ/cm
2の紫外線を該組成物に照射し、
図5(a)に示す光学部材14を得た。さらに、
図5(b)に示すように、ガラス製の支持基材13に、先ほど得られた光学部材14を、光学部材14のガラス面が支持基材13に接するように配置し、さらに光学部材14の短辺側の一方を支持基材13の端部に揃えた位置に固定冶具15を用いて固定した。
支持基材13に光学部材14の短辺側の一方が固定冶具15で固定された試験片を、-40℃の低温環境下に3時間放置した。-40℃環境に3時間放置した後、
図5(c)に示すように、支持基材13と光学部材14の距離hをノギスで測定し、低温環境での光学部材の反り量とした。以下の基準で判定した。結果を表2に示す。
◎:反り量が4mm未満
〇:反り量が4mm以上、8mm未満
×:反り量が8mm以上
【0090】
(180°ピール接着強度)
厚さ100μmのPETフィルム上に比較例1~11、実施例1~11の組成物を100μmの膜厚になるように塗布し、UV-LED(365nm)ランプを用いて大気側から積算光量50mJ/cm2の紫外線を照射し、仮硬化膜が形成されたPETフィルムを得た。さらに、仮硬化膜とガラス板を貼り合わせ、ガラス板とPETフィルムの接合体を得た。次に、ガラス越しに高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)を用いて照射強度200mW/cm2で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を該組成物に照射し、試験片を得た。これらの試験片を用い、引っ張り試験器(エー・アンド・デイ製 RTG-1210)にて引っ張り速度300mm/minでの180°ピール試験を行った。PET基材を50mm引き剥がし、その平均値から180°ピール強度を算出した。結果を表2に示す。
◎:180°ピール強度が10N/cm以上
〇:180°ピール強度が5N/cm以上、10N/cm未満
×:180°ピール強度が5N/cm未満
【0091】
【0092】
比較例3の接着剤組成物は、[成分A]を含有し、[成分B]と[成分C]の合計含有量が紫外線硬化型接着剤組成物の総量に対して70質量%以上であるが、硬化物の-20℃でのせん断弾性率が1.0×106Paよりも高く、良好な接着強度を示したが低温での光学基材の反り抑制性能が悪かった。
比較例4の接着剤組成物は、硬化物の-20℃でのせん断弾性率が1.0×106Pa以下であるが、[成分A]を含有しておらず、[成分B]と[成分C]の合計含有量が紫外線硬化型接着剤組成物の総量に対して70質量%未満であり、低温での基材の反り抑制性能は良好であるが接着強度が低かった。
比較例4の接着剤組成物に[成分A]を添加した比較例5の接着剤組成物は、[成分A]を含有し、硬化物の-20℃でのせん断弾性率が1.0×106Pa以下であるが、[成分B]と[成分C]の合計含有量が紫外線硬化型接着剤組成物の総量に対して70質量%未満であり、低温での基材の反り抑制性能は良好であるが接着強度が低かった。
比較例8の接着剤組成物は、[成分B]と[成分C]の合計含有量が紫外線硬化型接着剤組成物の総量に対して70質量%以上であり、硬化物の-20℃でのせん断弾性率が1.0×106Pa以下であるが、[成分A]を含有しておらず、低温での基材の反り抑制性能は良好であるが接着強度が低かった。
比較例8の接着剤組成物に[成分A]を添加した実施例3の樹脂組成物は、[成分A]を含有し、[成分B]と[成分C]の合計含有量が紫外線硬化型接着剤組成物の総量に対して70質量%以上であり、硬化物の-20℃でのせん断弾性率が1.0×106Pa以下であり、低温での基材の反り抑制性能、及び接着強度共に良好であった。
実施例5~7の接着強度の評価結果から、[成分C]として、イソデシル(メタ)アクリレートよりもイソオクチル(メタ)アクリレート又はノルマルオクチル(メタ)アクリレートの方が接着性が良好であり、2-エチルへキシル(メタ)アクリレートの方がさらに接着性が良好であった。
実施例1~11の接着強度の評価結果から、[成分B]と[成分C]の合計含有量が紫外線硬化型接着剤組成物の総量に対して70質量%以上、80質量%未満の組成物(実施例3,4)よりも、[成分B]と[成分C]の合計含有量が紫外線硬化型接着剤組成物の総量に対して80質量%以上の組成物(実施例1、2、5~11)の方が、接着強度が良好であった。
【0093】
さらに実施例1~11の組成物を用いて、以下の評価を行った。
【0094】
(透明性)
厚さ1mmのスライドガラス2枚を用意し、そのうちの1枚に、実施例1~11の組成物の膜厚が100μmとなるように塗布し、その後、2枚のスライドガラスを接着剤組成物を介して貼り合わせた。ガラス越しに高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で照射強度200mW/cm2で積算光量3000mJ/cm2の紫外線照射し、該接着剤組成物を硬化させ、透過率測定用の硬化物を作製した。得られた硬化物の透明性について、分光光度計(U-3310、日立ハイテクノロジーズ(株))を用いて、450~800nmの波長領域における透過率を測定したところ、450nm~800nmの波長領域での透過率は90%以上であり、透明性は良好であった。
【0095】
(耐白化性)
厚さ1mmのスライドガラス2枚を用意し、一方のスライドガラスに実施例1~11の膜厚が250μmとなるように塗布し、その塗布面に他方のスライドガラスを貼り合わせた。その後、ガラス越しに高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス/)を用いて照射強度200mW/cm2で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を該組成物に照射した。得られた接合体を80℃85%RH環境下に48時間投入後、さらに25℃45%RH環境下に3時間置いた後の硬化膜の状態を目視にて確認したところ、膜の白化は見られず、高温高湿環境での耐白化性は良好であった。
【0096】
(硬化性)
厚さ1mmのスライドガラス2枚を用意し、そのうちの1枚に、実施例1~11の組成物を滴下し、膜厚が100μmとなるように2枚のスライドガラスを貼り合わせた。ガラス越しに高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス/)を用いて照射強度200mW/cm2で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を該接着剤組成物に照射し、該接着剤組成物を硬化させた。その後、2枚のスライドガラスを剥離して接着剤組成物の硬化物の硬化率をFT-IRにて確認したところ、硬化率は90%以上であり十分に硬化しており、硬化性は良好であった。
【0097】
(破断点伸度)
離形フィルムを2枚用意し、そのうち一枚に、実施例1~11の組成物を滴下し、樹脂層の厚みが100μmになるように離形フィルムを貼り合わせた後、高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)を用いて照射強度200mW/cm2で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射し、該接着剤組成物を硬化させた。その後、接着剤組成物の硬化物を幅10mm、長さ30mmに切り出して2枚の離形フィルムを剥離した後、引っ張り試験器(RTG-1210、A&D社製)を用いて接着剤組成物の硬化物の破断点伸度を測定した。測定条件は25℃、引っ張り速度100mm/minとし、破断点伸度(%)を([破断時の変位長]/[測定開始時のチャック間の長さ])×100で算出した。破断点伸度は200%以上であり、柔軟性及び伸びは良好であった。
【0098】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
【0099】
1 液晶表示ユニット、2 遮光部を有する透明基板、3 透明基板、4 遮光部、5 紫外線硬化型樹脂組成物(紫外線硬化型接着剤組成物)、6 未硬化部分を有する硬化物層、7 樹脂硬化物層、8 紫外線、9 樹脂板、10 ガラス板、11 偏光板、12 樹脂硬化物層、13 支持基材、14 光学部材、15 固定冶具