(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】耐白化性および耐熱性に優れたポリプロピレン樹脂組成物、その調製方法、並びにそれにより製造された成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 53/00 20060101AFI20221129BHJP
C08F 297/08 20060101ALI20221129BHJP
C08F 4/654 20060101ALI20221129BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221129BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C08L53/00
C08F297/08
C08F4/654
C08J5/18 CES
B65D30/02
(21)【出願番号】P 2020152269
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】10-2019-0113380
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515253049
【氏名又は名称】ハンファ トータル ペトロケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ギム ボンソク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヨンソン
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-336198(JP,A)
【文献】特開2001-288330(JP,A)
【文献】特開平10-176022(JP,A)
【文献】特開平09-104729(JP,A)
【文献】米国特許第05760141(US,A)
【文献】特表2017-530249(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1985611(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/00
C08F 297/08
C08F 4/654
C08J 5/18
B65D 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器において段階的に重合されたエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を含み、
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂が、プロピレン単独重合体のポリプロピレン系マトリックス80重量%~85重量%と、溶剤抽出物含有量で測定されるエチレン-プロピレンゴム共重合体15重量%~20重量%とを含み、溶剤抽出物含有量はエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を、キシレンに1重量%の濃度で140℃にて1時間溶解させた後、常温にて2時間経過後に抽出された重量として定義され、
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂の溶融温度が161℃~165℃であり、溶融温度と結晶化温度との差(Tm-Tc)が40℃~45℃であり、重量基準の溶剤抽出物含有量に対するエチレン含有量の比[(溶剤抽出物含有量)/(エチレン含有量)]が2.5~3.0であり、
前記溶剤抽出物の固有粘度が1.2dl/g~2.5dl/gであり、
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン含有量が5重量%~8重量%であることを特徴とする、食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂の、ASTM D1238に基づき2.16kgの荷重で230℃にて測定した溶融指数が、1.0g/10分~10g/10分であることを特徴とする、請求項1に記載の食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
酸化防止剤、中和剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、補強材、充填材、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、および染料からなる群より選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項4】
ポリプロピレン樹脂組成物の総重量を基準に、酸化防止剤0.01重量%~0.2重量%を含むことを特徴とする、請求項3に記載の食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項5】
前記酸化防止剤が
、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート
)およびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする、請求項4に記載の食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項6】
ポリプロピレン樹脂組成物の総重量を基準に、中和剤0.01重量%~0.2重量%を含むことを特徴とする、請求項3に記載の食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項7】
前記中和剤が、ハイドロタルサイトおよびステアリン酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする、請求項6に記載の食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項8】
2つ以上の連続する反応器において、プロピレン単独重合体
のポリプロピレン系マトリックスを重合する第1重合段階と、
重合された前記ポリプロピレン系マトリックスの存在下でエチレンとプロピレンとを投入してエチレン-プロピレンゴム共重合体成分を共重合することにより、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を得る第2重合段階とを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の
食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物の調製方法。
【請求項9】
前記それぞれの重合段階が塩化マグネシウム(MgCl
2)担体にTiCl
3とTiCl
4とから選択される少なくとも一つの塩化チタンを担持させて合成されるチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒の存在下で行われることを特徴とする、請求項8に記載の
食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物の調製方法。
【請求項10】
前記チーグラー・ナッタ触媒の共触媒として、トリエチルアルミニウム、ジエチルクロロアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリスイソブチルアルミニウム、およびトリオクチルアルミニウムからなる群より選択される少なくとも一つのアルキルアルミニウム化合物が用いられ、
外部電子供与体として、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、メトキシトリメチルシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ-t-ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、およびジシクロヘキシルジメトキシシランからなる群より選択される少なくとも一つの有機シラン化合物が用いられることを特徴とする、請求項9に記載の
食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物の調製方法。
【請求項11】
前記第1重合段階が、2つ以上のバルク重合反応器において、チーグラー・ナッタ触媒の存在下でポリプロピレン系マトリックスを重合する段階であり、
前記第2重合段階が、気相重合反応器において、前記第1重合段階で重合されたポリプロピレン系マトリックスとチーグラー・ナッタ触媒との存在下で、エチレンとプロピレンとを供給してゴム成分のエチレン-プロピレン共重合体を共重合することにより、エチレン-プロピレンブロック共重合体を得る段階であることを特徴とする、請求項8に記載の
食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物の調製方法。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂組成物を成形して製造される
、食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルム用ポリプロピレン樹脂成形品。
【請求項13】
130℃のオーブンで30分間の熱処理(エージング)の際、フィルムの熱接着強度が2.0kg~5.0kgであり、落球衝撃強度が500g~750gであることを特徴とする、請求項
12に記載の
食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルム用ポリプロピレン樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂組成物、その調製方法、およびそれにより製造された成形品に関するものである。詳細には、本発明は、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を含み、耐白化性および耐熱性に優れたポリプロピレン樹脂組成物に関するものである。本発明によるポリプロピレン樹脂組成物は、折り畳まれたとき外観不良に見え得る食品包装用パウチの熱接着層フィルム、または後加工の際、変形に伴う白化が生じ得る電池の包装用フィルムなどに対して効果的に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、家電製品、自動車用複合素材、一般包装材料として幅広く使用されている高分子材料である。ポリプロピレン樹脂は、高分子の構造によって剛性、透明性、耐衝撃性などに差がある。
【0003】
中でも、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、エチレン-プロピレンゴム共重合体を含んでいるので、ホモポリプロピレンやポリプロピレンランダム共重合体に比べて耐衝撃の特性に優れている。したがって、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、耐衝撃性が求められる自動車用複合材料や一般雑貨に主として使われている。
【0004】
一方、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、このようなゴム成分により透明性が低いため、透明性が求められるフィルムなどの用途には使用することが難しい。したがって、アルミニウムと貼り合わされるレトルト食品包装フィルムのような、特に透明性が求められない用途にのみ限定的に使用されているのが実情である。
【0005】
レトルト食品包装は、食品を注入して包装した後に殺菌処理して、長期間に渡って常温にて保存することとなるが、従来のガラスや金属缶に比べて取り扱いが容易で、容積を少なく占め、包装材の費用が安いので、広く使われている。
【0006】
主に120℃~130℃の温度にて殺菌処理されるレトルト容器は、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなどのフィルムと金属箔などとを接着して多層に構成される。具体的には、用途に応じて、ポリエステル/ナイロン/金属箔/ポリプロピレン、またはポリエステル/金属箔/ポリプロピレンなどの多層で構成され得る。ポリプロピレン層に主に使用されるエチレン-プロピレンブロック共重合体は、無延伸フィルム(casting polypropylene film;CPPフィルム)で加工され、熱接着層として最も内側の面に位置することになる。
【0007】
一方、熱接着層に使用されるCPPフィルムは、レトルトパウチにおいて最も厚く使用されるので、熱接着性と耐衝撃性が必要である。ところで、レトルトパウチは、殺菌のために高温において熱処理を経るため、熱処理後に熱接着特性と耐衝撃性が低下し、フィルムの剛性が高くなるので、ソフトな触感を失うこととなり、これに対する改善が必要である。
【0008】
また、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、ポリプロピレンマトリックス(matrix)とゴム相との間に界面が存在するため、これにより製造されたフィルムが折り畳まれたとき、その折り目の部位が白く変化する白化(stress-whitening)現象により外観がよくない欠点がある。
【0009】
このようなエチレン-プロピレンブロック共重合体の欠点を補完するために、様々な研究が進められてきた。例えば、特許文献1は、エチレン-プロピレンランダム共重合体とエチレン-プロピレンゴム共重合体とが段階的に重合されたエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を開示している。この樹脂は、透明性と耐衝撃性は向上したが、溶融温度が低く、後加工において耐熱性を必要とする場合には、適用に限界がある。
【0010】
また、特許文献2は、ホモポリプロピレンをマトリックスとして使用したエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を開示している。この樹脂は、耐衝撃性に優れ、耐熱性が高いので、高温殺菌後でも外観は優れているが、高温殺菌後の物性変化や耐白化性に対する問題は考慮されなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国登録特許第1298417号号公報
【文献】韓国登録特許第1598715号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記のような問題点を解決するために、本発明の目的は、耐白化性および耐熱性に優れたポリプロピレン樹脂組成物を提供するものである。
【0013】
本発明の他の目的は、前記ポリプロピレン樹脂組成物の調製方法を提供するものである。
【0014】
本発明のまた他の目的は、前記ポリプロピレン樹脂組成物から製造される成形品、具体的には、食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するための本発明の一具体例により、反応器において段階的に重合されたエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を含み、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂が、プロピレン単独重合体および炭素数2~4のα-オレフィンが共重合されたプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体からなる群より選択されるポリプロピレン系マトリックス80重量%~85重量%と、溶剤抽出物含有量で測定されるエチレン-プロピレンゴム共重合体15重量%~20重量%とを含み、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂の溶融温度が161℃~165℃であり、溶融温度と結晶化温度との差(Tm-Tc)が40℃~45℃であり、重量基準の溶剤抽出物含有量に対するエチレン含有量の比[(溶剤抽出物含有量)/(エチレン含有量)]が2.5~3.0であり、溶剤抽出物の固有粘度が1.2dl/g~2.5dl/gであるポリプロピレン樹脂組成物が提供される。
【0016】
好ましくは、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン含有量が5重量%~8重量%であり得る。
【0017】
また、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、ASTM D1238に基づき2.16kgの荷重で230℃にて測定した溶融指数が1.0g/10分~10g/10分であり得る。
【0018】
本発明の具体例によるポリプロピレン樹脂組成物は、酸化防止剤、中和剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、補強材、充填材、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、および染料からなる群より選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含み得る。
【0019】
具体的には、本発明の具体例によるポリプロピレン樹脂組成物は、該組成物の総重量を基準に、酸化防止剤0.01重量%~0.2重量%を含み得る。
【0020】
好ましくは、酸化防止剤が、テトラキス(メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシリレート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート)、1,3,5-トリメチル-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゼン)およびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトからなる群より選択される少なくとも一つである。
【0021】
本発明の具体例によるポリプロピレン樹脂組成物は、該組成物の総重量を基準に、中和剤0.01重量%~0.2重量%を含み得る。
【0022】
好ましくは、中和剤が、ヒドロタルサイトおよびステアリン酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも一つである。
【0023】
本発明の他の具体例により、2つ以上の連続する反応器においてプロピレン単独重合体および炭素数2~4のα-オレフィンが共重合されたプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体からなる群より選択されるポリプロピレン系マトリックスを重合する第1重合段階と、重合されたポリプロピレン系マトリックスの存在下でエチレンとプロピレンとを投入してエチレン-プロピレンゴム共重合体成分を共重合することにより、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を得る第2重合段階とを含む、本発明の具体例による前記ポリプロピレン樹脂組成物の調製方法が提供される。
【0024】
前記調製方法において、それぞれの重合段階は、チーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒の存在下で行われ得る。なお、チーグラー・ナッタ触媒は、塩化マグネシウム(MgCl2)担体に、TiCl3とTiCl4とから選択される少なくとも一つの塩化チタンを担持させて合成され得る。
【0025】
また、チーグラー・ナッタ触媒の共触媒として、トリエチルアルミニウム、ジエチルクロロアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、およびトリオクチルアルミニウムからなる群より選択される少なくとも一つのアルキルアルミニウム化合物が使用され、外部電子供与体として、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、メトキシトリメチルシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ-t-ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、およびジシクロヘキシルジメトキシシランからなる群より選択される少なくとも一つの有機シラン化合物が使用され得る。
【0026】
好ましくは、第1重合段階が、2つ以上のバルク重合反応器においてチーグラー・ナッタ触媒の存在下でポリプロピレン系マトリックスを重合する段階であり、第2重合段階が、気相重合反応器において、第1重合段階で重合されたポリプロピレン系マトリックスとチーグラー・ナッタ触媒との存在下で、エチレンとプロピレンとを供給してゴム成分のエチレン-プロピレン共重合体を共重合することにより、エチレン-プロピレンブロック共重合体を得る段階である。
【0027】
本発明のまた他の具体例により、前記ポリプロピレン樹脂組成物を成形して製造されるポリプロピレン樹脂成形品が提供される。
【0028】
具体的には、本発明の具体例によるポリプロピレン樹脂成形品は、食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルムであり得る。
【0029】
好ましくは、130℃のオーブンで30分間の熱処理(エージング)の際、本発明の具体例によるフィルムは、熱接着強度が2.0kg~5.0kgであり、落球衝撃強度が500g~750gであり得る。
【発明の効果】
【0030】
本発明の具体例によるポリプロピレン樹脂組成物は、耐白化性および耐熱性に優れ、折り畳まれたときの外観が不良と見え得る食品包装用パウチの熱接着層フィルム、または後加工の際に変形による白化が生じ得る電池の包装用フィルムなどに対して効果的に使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0032】
本発明の具体例によるポリプロピレン樹脂組成物は、反応器において段階的に重合されたエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を含み、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂が、プロピレン単独重合体および炭素数2~4のα-オレフィンが共重合されたプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体からなる群より選択されるポリプロピレン系マトリックス80重量%~85重量%と、溶剤抽出物含有量で測定されるエチレン-プロピレンゴム共重合体15重量%~20重量%とを含み、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂の溶融温度が161℃~165℃であり、溶融温度と結晶化温度との差(Tm-Tc)が40℃~45℃であり、重量基準の溶剤抽出物含有量に対するエチレン含有量の比[(溶剤抽出物含有量)/(エチレン含有量)]が2.5~3.0であり、溶剤抽出物の固有粘度が1.2dl/g~2.5dl/gである。
【0033】
具体的に、本発明の具体例によるポリプロピレン樹脂組成物は、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を含む。なお、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、反応器において段階的に重合されたものである。
【0034】
例えば、まず、ポリプロピレン系マトリックス(matrix)が重合され、次いで、該ポリプロピレン系マトリックスにエチレン-プロピレンゴムがブロック共重合され、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂が調製され得る。
【0035】
なお、ポリプロピレン系マトリックスは、プロピレン単独重合体または炭素数2~4のα-オレフィンが共重合されたプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体であり得る。好ましくは、ポリプロピレン系マトリックスが、プロピレン単独重合体であり得る。
【0036】
エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のポリプロピレン系マトリックスの含有量は、80重量%~85重量%である。ポリプロピレン系マトリックスの含有量が80重量%未満であると、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂の重合時に生産性が低下し、フィルム製膜の際にフィルムのブロッキング(blocking)が発生して望ましくない。一方、ポリプロピレン系マトリックスの含有量が85重量%を超えると、樹脂組成物の剛性が高く、耐衝撃性が低下し得る。
【0037】
エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン-プロピレンゴム共重合体の含有量は、15重量%~20重量%である。エチレン-プロピレンゴム共重合体の含有量が15重量%未満であると、樹脂組成物の剛性が高く、耐衝撃性が低下し得る。一方、エチレン-プロピレンゴム共重合体の含有量が20重量%を超えると、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂の重合の際に生産性が低下し、フィルム製膜の際にフィルムのブロッキングが発生して望ましくない。なお、エチレン-プロピレンゴム共重合体の含有量は、溶剤抽出物含有量で測定され得、溶剤としてはキシレン(xylene)が好ましい。
【0038】
エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、示差走査熱量計(differential scanning calorimetry;DSC)で測定される溶融温度が161℃~165℃である。溶融温度が161℃より低いと、耐熱性が十分ではないため、成形品を高温にて後加工する際に変形が生じ得る。一方、溶融温度が165℃を超えるポリプロピレンは、商業的に重合が難しく、樹脂組成物が核剤を含む場合、フィルムの剛性が高いため、ソフトな感触が求められる食品包装用に適していない。
【0039】
また、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、溶融温度と結晶化温度との差(Tm-Tc)が40℃~45℃である。溶融温度と結晶化温度との差が45℃を超えると、成形品の高温殺菌の際、後結晶化(post-crystallization)によって剛性の変化が大きく、熱接着強度の低下が大きいため、高温殺菌後のフィルム物性の変化により、殺菌工程を経るべきパウチ用途に適していない。一方、溶融温度と結晶化温度との差が40℃未満であると、速い結晶化速度により、フィルム製膜の際に冷却ロール(chill roll)との接触が円滑ではないためフィルム製膜が容易ではなく、速い結晶化によりフィルムの剛性が高くなって、ソフトな触感を必要とする食品包装用に適していない。
【0040】
本発明の具体例によるエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂において、重量基準のエチレン-プロピレンゴム共重合体の含有量(重量%)とエチレン含有量(重量%)との比[(溶剤抽出物含有量含有量)/(エチレン含有量)]が2.5~3.0であり得る。この比率が2.5未満であると、樹脂組成物の耐白化性が低下し、ゴム成分の分散が均一でないため高温殺菌後にフィルム剛性の変化が大きい。一方、該比率が3.0を超えると、プロピレン含有量の高いゴムの組成により、耐衝撃性が低下して望ましくない。
【0041】
本発明の具体例によるエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン-プロピレンゴム共重合体(すなわち、溶剤抽出物)の固有粘度は、1.2dl/g~2.5dl/gである。該固有粘度が1.2dl/g未満であると、ゴム成分の分子量が低ため樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、2.5dl/gを超えると、ゴム成分の凝集により樹脂組成物の耐白化性が低下して望ましくない。
【0042】
好ましくは、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン含有量が5重量%~8重量%であり得る。エチレン含有量が5重量%未満であると、樹脂組成物の耐衝撃性が十分でなくなり得る。一方、エチレン含有量が8重量%を超えると、樹脂組成物の透明性が低くなり耐白化性が低下し得る。
【0043】
好ましくは、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、ASTM D1238に基づき2.16kgの荷重で230℃にて測定した溶融指数が1.0g/10分~10g/10分であり得る。溶融指数が1.0g/10分未満であると、押出時に負荷が上昇して生産性が低下する。一方、溶融指数が10g/10分を超えると、押出時にたわみが生じ、フィルムの厚さ均一度が低下して望ましくない。
【0044】
本発明の具体例によるポリプロピレン樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲内で、通常の添加剤をさらに含み得る。例えば、ポリプロピレン樹脂組成物は、酸化防止剤、中和剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、補強材、充填材、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、および染料などを含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0045】
好ましくは、本発明の具体例によるポリプロピレン樹脂組成物は、その耐熱安定性を増加させるために酸化防止剤を含み得る。なお、酸化防止剤は、ポリプロピレン樹脂組成物の総重量を基準に0.01重量%~0.2重量%、好ましくは、0.05重量%~0.15重量%の含有量で加えられる。酸化防止剤の含有量が0.01重量%未満であると、長期耐熱安定性を確保し難い。一方、酸化防止剤の含有量が0.2重量%を超えると、酸化防止剤が溶出したり、製品の経済性が低下したりし得るので、望ましくない。
【0046】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤等が用いられ、具体的に、テトラキス(メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシリレート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート)、1,3,5-トリメチル-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゼン)、およびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトからなる群より選択される少なくとも一つであり得るが、これらに限定されるものではない。
【0047】
好ましくは、本発明の具体例によるポリプロピレン樹脂組成物は、触媒残渣を除去するための中和剤として、ハイドロタルサイト、ステアリン酸カルシウム等を含み得る。
【0048】
この際、中和剤は、ポリプロピレン樹脂組成物の総重量を基準に0.01重量%~0.2重量%、好ましくは0.02重量%~0.10重量%の含有量で加えられる。中和剤の含有量が0.01重量%未満であると、樹脂の触媒残渣を除去する効果を確保し難く、0.2重量%を超えると、触媒残渣除去効果の増加が微々たるものであり、樹脂組成物の価格経済性が低下し得るため、望ましくない。
【0049】
本発明の他の具体例によるポリプロピレン樹脂組成物の調製方法は、2つ以上の連続する反応器において、プロピレン単独重合体および炭素数2~4のα-オレフィンが共重合されたプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体からなる群より選択されるポリプロピレン系マトリックスを重合する第1重合段階と、重合されたポリプロピレン系マトリックスの存在下でエチレンとプロピレンとを投入してエチレン-プロピレンゴム共重合体成分を共重合することによりエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を得る第2重合段階とを含む。
【0050】
この際、それぞれの重合は、スラリー法、バルク法、気相法等、本発明の技術分野において通常の公知の方法および反応条件を利用し得る。
【0051】
一方、前記それぞれの重合は、チーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒の存在下で行える。チーグラー・ナッタ触媒は、当業界に公知の触媒を制限なく用いられるが、具体的に、塩化マグネシウム(MgCl2)担体に塩化チタン(TiCl3またはTiCl4)のようなチタン化合物を担持させて得られる。これに共触媒と外部電子供与体とをともに用いることが望ましい。
【0052】
共触媒としては、アルキルアルミニウム化合物が使用され得る。アルキルアルミニウム化合物の例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルクロロアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
また、外部電子供与体としては、有機シラン化合物が好ましい。有機シラン化合物の例としては、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、メトキシトリメチルシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ-t-ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
本発明の具体例によるポリプロピレン樹脂組成物の調製方法において、前記第1重合段階と第2重合段階とが同一の重合反応器または異なる重合反応器において行える。
【0055】
好ましくは、第1重合段階が、2つ以上のバルク重合反応器において、チーグラー・ナッタ触媒の存在下でポリプロピレン系マトリックスを重合する段階であり、第2重合段階が、気相重合反応器において、第1重合段階で重合されたポリプロピレン系マトリックスとチーグラー・ナッタ触媒との存在下で、エチレンとプロピレンとを供給してゴム成分のエチレン-プロピレン共重合体を共重合することにより、エチレン-プロピレンブロック共重合体を得る段階であり得る。それぞれの重合反応器にて生成される重合体の溶融指数は、各重合反応器に投入される水素の含有量で調節され得る。
【0056】
具体的に、第1重合段階で得られたポリプロピレン系マトリックスを、エチレン-プロピレン共重合が行われる気相反応器に移送させ、エチレンとプロピレンとを同時に投入することにより、固体状のポリプロピレン系マトリックスと、新たに投入されたエチレンおよびプロピレンとが、エチレン-プロピレンゴム共重合体成分として連続して共重合され、エチレン-プロピレンブロック共重合体を調製することができる。
【0057】
このようにして得られたエチレン-プロピレンブロック共重合体は、本発明の目的を逸脱しない範囲内で、通常の添加剤と混合され得る。具体的な添加剤の種類および含有量は、前記ポリプロピレン樹脂組成物に関する内容と実質的に同一である。
【0058】
なお、エチレン-プロピレンブロック共重合体と添加剤とを混合する方法に特に制限はなく、本発明が属する技術分野に公知のポリプロピレン樹脂組成物の調製方法をそのまま、または適宜変形して使用し得る。
【0059】
具体的に例えると、エチレン-プロピレンブロック共重合体と添加剤との所定量の分を、ニーダー(kneader)、ロール(roll)、バンバリーミキサー(Banbury mixer)等の混練機または1軸/2軸押出機等に投入した後、これらの機器を用いて投入された原料をブレンドする方法により、本発明のポリプロピレン樹脂組成物を調製し得る。
【0060】
本発明のまた他の具体例により、本発明のポリプロピレン樹脂組成物を成形して製造されるポリプロピレン樹脂成形品が提供される。
【0061】
本発明の具体例によるポリプロピレン樹脂組成物から成形品を製造する方法に特に制限はなく、本発明が属する技術分野に公知の方法が用いられる。例えば、本発明の具体例によるポリプロピレン樹脂組成物を、射出成形、押出成形、キャスティング成形等の公知の方法により成形して、ポリプロピレン樹脂成形品を製造し得る。具体的な一実施例において、本発明の具体例によるポリプロピレン樹脂組成物をキャスティング成形して無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)を製造し得る。
【0062】
本発明の具体例によるポリプロピレン樹脂成形品は、耐白化性および耐熱性に優れる。したがって、前記成形品は、食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルムであり得る。
【0063】
好ましくは、130℃のオーブンで30分間の熱処理(エージング)の際、本発明の具体例によるフィルムは、熱接着強度が2.0kg~5.0kgであり、落球衝撃強度が500g~750gであり得る。
【0064】
(実施例)
以下、実施例および比較例により、本発明をより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を例示するためのものであるのみ、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0065】
(実施例1~2および比較例1~5)
[エチレン-プロピレンブロック共重合体の重合]
2台のバルク反応器と2台の気相反応器とが直列に連結され、連続的に重合することのできる三井(Mitsui)社のハイポール工程(Hypol process)を利用した。この際、チーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒を使用しており、塩化マグネシウム(MgCl2)担体に塩化チタン(TiCl4)を担持させ、フタル酸系の内部電子供与体(internal donor)を使用した。共触媒としては、トリエチルアルミニウムを用い、外部電子供与体(external donor)としてジシクロペンチルジメトキシシランを用いた。
【0066】
1、2段のバルク反応器における運転温度と圧力は、それぞれ68℃~75℃、30kg/cm2~40kg/cm2および68℃~75℃、25kg/cm2~35kg/cm2であった。3、4段の気相反応器における運転温度と圧力は、それぞれ75℃~82℃、15kg/cm2~20kg/cm2および68℃~75℃、10kg/cm2~17kg/cm2であった。1段~3段の反応器では、プロピレンを単独注入してプロピレン単独重合体を生成した。生成されたプロピレン単独重合体を、続く4段の反応器に移送し、前記チーグラー・ナッタ触媒の存在下でエチレンとプロピレンとを投入してエチレン-プロピレンゴムを共重合することにより、エチレン-プロピレンブロック共重合体を得た。この際、それぞれの反応器にて生成される重合体の溶融指数は、各反応器に投入される水素の含有量で調節した。このような方法により、下記表1に示すように、エチレン含有量、溶剤抽出物含有量を調節して、エチレン-プロピレンブロック共重合体を得た。
【0067】
得られたエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂の組成および物性を下記の方法により測定し、その結果を下記表1に示した。
【0068】
(1)溶融指数(melt index;g/10分)
ASTM D1238に基づき、2.16kg荷重で230℃にて、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂の溶融指数を測定した。
【0069】
(2)溶融温度および結晶化温度(Tm、Tc)
示差走査熱量計(DSC)を用いて、試料を200℃にて10分間等温に維持して熱履歴を除去した後、200℃から30℃まで毎分10℃ずつ冷却して結晶化させ、結晶化温度(crystallization temperature;Tc)を求めた。このような冷却により同じ熱履歴を有するようにした後、30℃にて10分間等温に維持した。次いで、さらに毎分10℃ずつ再昇温させながら、ピーク溶融温度から溶融温度(melting temperature;Tm)を求めた。
【0070】
(3)エチレン含有量(重量%)
赤外線吸収スペクトル(FT-IR)を使用して、720cm-1および730cm-1の特性ピークを利用して、エチレン-プロピレンブロック共重合体中のエチレン含有量を測定した。
【0071】
(4)溶剤抽出物(xylene soluble)の含有量(重量%)
エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を、キシレンに1重量%の濃度で140℃にて1時間溶解させた後、常温にて2時間経過後に抽出された重量を測定した。得られた重量をエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂の重量に対する百分率で表示した。
【0072】
(5)溶剤抽出物の固有粘度
溶剤抽出物を、135℃デカリン(decaline)溶液において粘度計を用いて固有粘度を測定した。
【0073】
[試験片の調製]
前記実施例および比較例において調製されたそれぞれのエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂に、含有量0.1重量%の酸化防止剤(ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート))と、含有量0.04重量%の中和剤(ハイドロタルサイト)を追加して混練し、二軸押出機において押出加工して、ペレット状に調製した。比較例5の場合は、ペレット調製時の添加剤として、有機金属系核剤のp-tert-ブチル安息香酸アルミニウム0.1重量%をさらに混練してペレットを調製した。
【0074】
得られた樹脂組成物を通常のキャストフィルム押出装置を用いて、厚さ0.7mmのフィルムに成形した。フィルム成形時の押出機の温度は230℃であり、フィルム成形のための冷却ロールの温度は30℃であった。得られたフィルムを130℃のオーブンで30分間熱処理した後、エージング(aging)後の物性を評価した。エージング前後のフィルムの物性を下記の方法により測定し、評価結果を表1に示した。
【0075】
(6)引張弾性率(tensile modulus)
ASTM D882の方法に基づいて引張試験を実施し、グラフの初期勾配から弾性率(modulus)を求めた。
【0076】
(7)熱接着強度(heat sealing strength)
2枚のフィルムを、温度180℃、圧力2kg/cm2、時間1秒の条件において熱接着した後、引張試験機で剥がす際の強度を測定した。
【0077】
(8)落球衝撃強度(falling dart impact;FDI)
ASTM D4226に基づいて測定した。
【0078】
(9)耐白化性(stress-whitening resistance)
フィルムに傷を与えた後、両方から引っ張って破れた部位の白化発生具合を目視により確認した(○:優れる、△:良好、×:不良)
【0079】
【0080】
表1から確認されるように、本発明の範囲に属する実施例の場合、通常の食品包装用パウチ製品の殺菌条件と同じ条件のオーブンエイジング後にも、フィルムの剛性(引張弾性率)および熱接着強度の変化が少なく、落球衝撃強度が高く、耐白化性にも優れていた。
【0081】
一方、本発明の範囲に属していない比較例1の場合、低い溶剤抽出物含有量のため耐衝撃強度が悪く、剛性および熱接着強度の変化が大きかった。比較例4の場合、溶融温度と結晶化温度との差が45℃を超え、熱接着強度の変化が非常に悪かった。また、比較例2と3の場合、溶剤抽出物含有量と溶剤抽出物に対するエチレン含有量との比が低く、溶剤抽出物の固有粘度が高いため、オーブンエイジング後のフィルムの剛性が高く、耐白化性が不良であった。比較例5の場合、溶融温度と結晶化温度との差が40℃未満であり、溶剤抽出物に対するエチレン含有量の比が高くてフィルムの剛性が大きく増加しており、熱接着強度の変化が大きく、耐衝撃性が良くなかった。
【0082】
本発明の範囲に属する実施例によるポリプロピレン樹脂組成物は、耐白化性および耐熱性に優れた成形品、具体的にフィルムを提供することができる。したがって、本発明の具体例によるポリプロピレン樹脂組成物は、食品包装用パウチの熱接着層フィルムまたは電池の包装用フィルムの製造に効果的に使用され得る。