IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーメンス ヘルスケア リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-機械的支持構造を有するMRI用電磁石 図1
  • 特許-機械的支持構造を有するMRI用電磁石 図2
  • 特許-機械的支持構造を有するMRI用電磁石 図3
  • 特許-機械的支持構造を有するMRI用電磁石 図4
  • 特許-機械的支持構造を有するMRI用電磁石 図5
  • 特許-機械的支持構造を有するMRI用電磁石 図6
  • 特許-機械的支持構造を有するMRI用電磁石 図7
  • 特許-機械的支持構造を有するMRI用電磁石 図8
  • 特許-機械的支持構造を有するMRI用電磁石 図9
  • 特許-機械的支持構造を有するMRI用電磁石 図10
  • 特許-機械的支持構造を有するMRI用電磁石 図11
  • 特許-機械的支持構造を有するMRI用電磁石 図12
  • 特許-機械的支持構造を有するMRI用電磁石 図13
  • 特許-機械的支持構造を有するMRI用電磁石 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】機械的支持構造を有するMRI用電磁石
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20221129BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20221129BHJP
   H01F 6/06 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
A61B5/055 331
G01N24/00 620Y
G01N24/00 600Z
G01N24/00 600B
H01F6/06 130
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020519420
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2018075940
(87)【国際公開番号】W WO2019072545
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】1716342.9
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516298515
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Siemens Healthcare Limited
【住所又は居所原語表記】Parkview, Watchmoor Park, Camberley, GU15 3YL, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ノイズ
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0291782(US,A1)
【文献】特開2016-140399(JP,A)
【文献】特開2017-046987(JP,A)
【文献】特開2000-138119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
H01F 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRI装置用の電磁石アセンブリ(10)であって、該電磁石アセンブリ(10)が、
磁気共鳴撮像(MRI)装置用の第1の電磁石(100)および第2の電磁石(100’)と、
支持板(210、220)を含む支持構造(200)と、
を含み、
第1の電磁石(100)および第2の電磁石(100’)の各々が、
第1の軸線方向外面(112)を有し、磁場を発生させるための環状コイル(110)と、
前記コイル(110)を前記MRI内に取り付けるための支持要素(120)であって、前記コイル(110)の前記第1の軸線方向外面(112)に接着された支持要素(120)と、
含み、
前記支持要素(120)が、前記支持板(210、220)に取り付けられており、
前記支持構造(200)が、前記コイルの径方向厚さよりも大きい距離によって前記径方向に分離されて、空洞(215)を間に形成する、前記環状コイルの前記径方向に沿って互いに離間する、一対の、軸線方向に配向されて離間した支持板(210、220)を備え、
前記支持要素(120)が、前記空洞(215)に受容され、前記支持板(210、220)に機械的に締結され、
前記支持板(210、220)は、前記第1の電磁石(100)から前記第2の電磁石(100’)まで延在する、
ことを特徴とする電磁石アセンブリ(10)。
【請求項2】
前記支持要素(120)が、支持構造(200)に機械的に締結されるように構成されている、請求項1記載の電磁石アセンブリ(10)。
【請求項3】
前記支持要素(120)が、前記支持要素(120)を前記第1の軸線方向外面(112)に接着するための接着面(122)を備え、前記接着面(122)は、その周縁部に向かって剛性が低くなり、かつその中央領域に向かって剛性が高くなるように構成されている、請求項1または2記載の電磁石アセンブリ(10)。
【請求項4】
複数の支持要素(120)が、前記第1の軸線方向外面に接着されており、前記複数の支持要素(120)が、前記第1の軸線方向外面(112)の周に等間隔に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の電磁石アセンブリ(10)。
【請求項5】
前記コイル(110)が、前記第1の軸線方向外面(112)とは反対側の第2の軸線方向外面(114)を備え、更なる支持要素(120’)が、前記第2の軸線方向外面(114)に接着されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の電磁石アセンブリ(10)。
【請求項6】
前記第1の電磁石(100)および前記第2の電磁石(100’)、対応する前記支持要素(120)とが、極低温用途に適した接着剤を用いて接着されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の電磁石アセンブリ(10)。
【請求項7】
前記コイル(110)と前記支持要素(120)とが、樹脂含浸されてモノリシック構造を形成している、請求項1から6までのいずれか1項記載の電磁石アセンブリ(10)。
【請求項8】
前記支持板(210、220)と前記支持要素(120)との間にピン接続部を形成するためにピン(300)の周囲に取り付けられた延長管(310)を備え、前記延長管(310)が、前記支持板(210、220)に当接するように構成されており、前記コイル(110)がその超伝導状態にあるときに、前記ピン(300)が前記支持要素(120)の圧縮を維持するように構成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の電磁石アセンブリ(10)。
【請求項9】
前記コイルがその超伝導状態にあるときに、前記支持板(210、220)が、前記支持要素(120)および前記更なる支持要素(120’)を前記コイル(110)に押し付けるように構成されている、請求項5を引用する請求項7または8記載の電磁石アセンブリ(10)。
【請求項10】
前記支持要素(120)および前記支持板(210、220)が、前記第1の電磁石(100)および前記第2の電磁石(100’)を前記支持構造(200)に固定するためのピン接続部を形成するように構成されている、請求項7から9までのいずれか1項記載の電磁石アセンブリ(10)。
【請求項11】
請求項8から10までのいずれか1項記載の電磁石アセンブリ(10)を備えた、MRI装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気共鳴撮像の用途に適した電磁石を取り付けるための装置に関する。
【0002】
特に、本開示は、磁気共鳴撮像装置用の電磁石および電磁石アセンブリに関する。
【0003】
背景
磁気共鳴撮像では、超伝導コイルを備える複数の電磁石が通電されて、空間的に制限された強力な磁場が発生する。これにより、電磁石間の相互作用が生じ、したがって電磁石に電磁負荷がかかる。さらに、輸送および設置によっても、電磁石に負荷がかかる場合がある。電磁石の所望の性能を維持するために、そのような負荷は、コイルの支持に使用される手段によって管理される必要がある。
【0004】
電磁石を支持する公知の手段として、コイルが内部に巻回され、機械的に支持されたジャーナルがある。しかし、当該構成では、ジャーナルと電磁石との相対的な運動が充分に拘束されない場合がある。
【0005】
電磁石を支持する別の公知の手段として、電磁石に巻き付けられた引張支持体がある。当該構成では、輸送負荷を効果的に管理するのに充分な回転拘束が提供されない場合がある。加えて、このような構成では、電磁石の空間的な位置決めに必要とされる小さな公差が適切に達成されるように構成することが困難となる場合がある。電磁石の最適な相対位置からのずれにより、性能にとって好ましくない局所的な応力集中が生じる場合がある。
【0006】
したがって、MRIデバイスの電磁石の正確かつ確実な取り付けを可能にする構成が強く所望されている。
米国特許出願公開第2016/314885号明細書および実用新案出願公開昭61-99046号公報には、超伝導コイルを支持するための構成が記載されている。
【0007】
概要
本開示によれば、添付の特許請求の範囲に記載された装置および方法が提供される。本発明の他の特徴は、各従属請求項および以下の説明から明らかになるであろう。
【0008】
したがって、磁気共鳴撮像MRI装置用の電磁石100が提供されうる。電磁石100は、第1の軸線方向外面112を有し、磁場を発生させるためのコイル110と、MRI内にコイル110を取り付けるための支持要素120とを備えることができる。支持要素120は、コイル110の第1の軸線方向外面112に接着可能である。
【0009】
したがって、接着された支持要素はコイルを支持構造に固定する手段を提供し、これにより、電磁石の軸線方向および回転方向での運動を抑制する。
【0010】
支持要素120は、支持構造200に機械的に締結されるように構成可能である。
【0011】
支持要素120は、支持要素120を第1の軸線方向外面112に接着するための接着面122を備えることができる。接着面122は、その周縁部に向かって剛性が低くなり、かつその中央領域に向かって剛性が高くなるように構成可能である。
【0012】
したがって、支持要素は、電磁石に作用する力に応じて接着面の周縁部に生じうる応力集中を低減するように構成される。
【0013】
複数の支持要素120を第1の軸線方向外面に接着することができる。複数の支持要素120は、第1の軸線方向外面112の周に等間隔に配置可能である。
【0014】
他の例によれば、複数の支持要素が不規則な間隔で配置されてもよい。すなわち、複数の支持要素120は、第1の軸線方向外面112に沿って不均等に分布していてもよい。
【0015】
コイル110は、第1の軸線方向外面112とは反対側の第2の軸線方向外面114を備えることができる。更なる支持要素120’を第2の軸線方向外面114に接着することもできる。
【0016】
電磁石100と支持要素120とは、極低温用途に適した接着剤を用いて接着可能である。
【0017】
コイル110および支持要素120は、樹脂含浸されてモノリシック構造を形成可能である。
【0018】
別の例によれば、MRI装置用の電磁石アセンブリ10であって、本開示による電磁石100と支持板210、220を含む支持構造200とを備え、支持要素120が、支持板210、220に取り付けられる、電磁石アセンブリ10が提供されうる。
【0019】
支持構造200は、空洞215を間に形成する一対の離間した支持板210、220を備えることができる。支持要素120は、空洞215に受容可能であり、支持板210、220に機械的に締結される。
【0020】
延長管310が、支持板210、220と支持要素120との間にピン接続部を形成するためのピン300の周りに取り付け可能である。延長管310は、支持板210、220およびピン300に当接して、コイル110がその超伝導状態にあるときに、支持要素120の圧縮を維持するように構成可能である。
【0021】
したがって、延長管は、支持要素がピンよりも大きな熱収縮係数を有する場合に、圧縮を維持するように構成される。
【0022】
支持板210、220は、コイルがその超伝導状態にあるときに、支持要素120および更なる支持要素120’をコイル110に押し付けるように構成可能である。
【0023】
したがって、支持要素120および更なる支持要素120’は、コイルを固定するように構成される。使用時に、支持要素および更なる支持要素は、コイルの第1の軸線方向外面およびコイルの第2の軸線方向外面が押圧されるよう、支持板と協働することができる。
【0024】
支持要素120および支持板210、220は、電磁石100を支持構造200に固定するためのピン接続部を形成するように構成可能である。
【0025】
別の例によれば、上述したような電磁石アセンブリ10を備えるMRI装置が提供されうる。
【0026】
別の例によれば、MRI装置用の電磁石の製造方法が提供されうる。当該方法は、超伝導ワイヤを金型内に巻き回してコイル110を形成し、コイル110の第1の外面112に接して支持要素120を配置し、コイル110および支持要素120に熱硬化性樹脂を含浸させ、コイル110および支持要素120を金型から取り出すことを含みうる。
【0027】
当該製造方法は、コイル110の第2の外面114に接して更なる支持要素120’を配置することを含むことができ、第2の外面114は、コイル110の第1の外面112とは反対側である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以下に、本開示の例を添付の図面を参照しながら説明する。
図1】電磁石アセンブリの概略斜視図である。
図2図1の電磁石アセンブリの径方向断面を示す。
図3図1および図2による電磁石の径方向断面を示す。
図4図3の電磁石の接線方向断面を示す。
図5】電磁石アセンブリの径方向断面を示す。
図6図5の電磁石の接線方向断面を示す。
図7】電磁石アセンブリの第1の変形例の径方向断面を示す。
図8図7の電磁石アセンブリの接線方向断面を示す。
図9図7および図8による電磁石の径方向断面である。
図10】電磁石アセンブリの第2の変形例の径方向断面である。
図11】別の電磁石の接線方向断面を示す。
図12】さらに別の電磁石の接線方向断面を示す。
図13】電磁石アセンブリの第3の変形例を示す。
図14】本開示による電磁石の更なる例の斜視図を示す。
【0029】
詳細な説明
本出願は、電磁石であって、当該電磁石を軸線方向および周方向に拘束する電磁石アセンブリ内に取り付けるのに適し、これにより、そのアセンブリ軸線A-A(後述する)に沿ってまたはその周りで電磁石装置の歪みを防止する、電磁石に関する。
【0030】
図1は、本開示による電磁石アセンブリ10の概略斜視図を示す。
【0031】
使用時に、電磁石アセンブリ10は、磁気共鳴撮像(MRI)装置(または「スキャナ」)の一部を形成する。こうした目的のために、電磁石アセンブリは、動作中、冷媒としての不活性ガス、例えばヘリウムを含むハウジング内に収容可能である。したがって、ハウジングは、極低温容器を形成し、これにより、性能が最適化される充分に低い温度まで電磁石アセンブリを冷却することができる。
【0032】
電磁石アセンブリ10は、回転方向もしくは円周方向に概ね対称であり、アセンブリ軸線A-A、径方向および周方向を規定する。したがって、「軸線方向」は、アセンブリ軸線に対して平行な方向を指し、「径方向」は、アセンブリ軸線に対して垂直な方向を指し、「周方向」は、アセンブリ軸線A-Aの周りでアセンブリ軸線および径方向の両方に対して垂直な方向を指す。電磁石アセンブリは、アセンブリ軸線に沿って軸線方向(または「長手方向」)に延在している。
【0033】
電磁石アセンブリ10は、一対の電磁石100と、電磁石を支持するように構成された支持構造200と、を備える。
【0034】
支持構造200は、電磁石100を特定の空間(すなわち、相対的に離間した)配置で保持するように構成されており、各電磁石が、アセンブリ軸線A-Aに沿って移動すること、またはアセンブリ軸線を中心として回転することを防止する。当該目的のために、電磁石は、支持構造に機械的に締結されている。本例によれば、電磁石100は、支持構造の2つのブラケット201、202に取り付けられている。代替例では、異なる数のブラケットが設けられていてもよい。例えば、3つよりも多くのブラケットを設けることもできる。ブラケットの使用数は、想定される負荷および電磁石の許容可能な撓みに(少なくとも部分的に)依存しうる。
【0035】
図2は、電磁石100が支持構造200に取り付けられた電磁石アセンブリ10の断面図を示す。
【0036】
本例によれば、電磁石100は、MRI装置の主磁石によって発生する磁場を使用時に能動的に遮蔽する磁場を発生させるように構成されている。各電磁石100は、磁場を発生させるように構成されたコイル110(または「遮蔽コイル」)を備える。
【0037】
さらに、各電磁石は、MRI装置内に取り付け可能な支持要素120を備える。支持要素は、例えばコイル間の電磁的な相互作用に応じて発生する力に抗してコイルを拘束するように構成されている。本例では、電磁的な相互作用により、電磁石アセンブリ10に関して外側に向かう力が各コイルに発生する、と仮定される。すなわち、各コイルは、そのそれぞれの支持要素にコイルを押し付ける力を受ける。さらに、支持要素はまた、例えば輸送中に発生しうる回転力に抗してコイルを拘束する。
【0038】
コイル110は、環状構造として巻き回された超伝導ワイヤから形成される。したがって、コイルは本質的に回転対称である。コイルは、軸線方向、径方向および周方向に関して記述可能である。MRI装置の文脈において考察すると、当該各方向は、MRI装置全体に関して上述した方向に対応する。特に、コイルは、アセンブリ軸線A-Aに関して回転対称性を有する。
【0039】
図3および図4は、コイル110および支持要素120を示す。
【0040】
コイル110は、第1の軸線方向端面112と、これとは反対側の第2の軸線方向端面114とを有する。一対の軸線方向端面は、軸線方向に沿ったコイルの範囲を定めている。同様に、コイルは、第1の径方向面116(または「径方向内面」)と、これとは反対側の第2の径方向面118(または「径方向外面」)とを有する。一対の径方向面は、径方向に沿ったコイルの範囲を定めている。
【0041】
支持要素120は、コイル110に固定されており、MRI内に、より具体的には支持構造200に、コイルを取り付ける手段を提供する。支持要素は、コイルに接着された接着面122を有する。支持要素、または少なくとも接着面は、極低温用途に適した接着剤を用いて接着されるように構成されている。本例によれば、支持要素は、コイルの第1の軸線方向端面112に接着される。
【0042】
支持要素120は、支持構造200と当接するもしくは接触するように構成された一対の合わせ面124、126を有する。本例によれば、合わせ面124、126は、支持構造200の対応する部分に平らに着座するように、実質的に平坦となっている。
【0043】
支持要素120を第1の軸線方向端面112に接着する本例によれば、合わせ面同士は、コイル110の径方向の範囲(または「径方向厚さ」)よりも大きく離れている。これにより、コイルの湾曲が合わせ面間で収容可能となる。また、通電に応じたコイルの径方向の拡張量も、合わせ面同士を適切に離間させることによって収容される。
【0044】
支持要素120は、コイルを支持構造200に取り付けるために構成されている。したがって、支持要素120は、支持構造200に機械的に固定する手段を備える。例えば、ボルト、ピン、または他の適切な機械的要素など、任意の適切な手段を使用可能である。本例では、支持要素は、ピンを受容するための穴128を備え、したがって、支持構造とのピン接続部を形成する。一例として、ピン300が図13に示されている。しかし、分かり易くするために、ピン(または他の機械的要素)は図2から図12には示されていない。
【0045】
図5および図6は、支持構造200内に取り付けられた電磁石100を示す。特に、図5は、支持構造、コイル110および支持要素120の径方向断面を示し、図6は、対応する接線方向断面を示す。
【0046】
支持構造200は、電磁石100を受け入れるように構成された一対の支持板210、220を備える。より具体的には、上側の支持板210および下側の支持板220が、電磁石の支持要素120を受容する通路(または「空洞」)215を画定するように配置されている。本例によれば、支持板同士は概ね平行に配置されるが、代替的に、支持構造の異なる剛性がもたらされるよう、非平行に配置することもできる。このように形成された通路は、支持要素120を受容するように適切に形成されており、本例によれば、支持要素の実質的に平坦な合わせ面116、118と合わさる支持板210、220の実質的に平坦な部分212、222によって画定される。図1を参照して説明したように、例示的な電磁石アセンブリ10は、2つのブラケット201、202を備える。各ブラケットは、一対の支持板210、220を備える。
【0047】
本例によれば、一対の電磁石100を支持板210、220によって支える場合、各支持板は、第1の電磁石100から第2の電磁石100’まで延在する。
【0048】
支持板210、220の間に受容されると、支持要素120は、少なくとも一方の、好ましくは両方の、支持板に定着される。好適には、各支持板210、220に各穴204、206が設けられる。支持要素を固定するために、支持要素120の穴128は、支持構造の穴204、206と位置合わせされる。次いで、位置合わせされた穴204、206、128を通してピンが取り付けられ、したがって、電磁石アセンブリ10が、ロック解除された構成からロックされた構成もしくは固定された構成へと移行する。ロックされた構成では、支持要素と支持構造との間の相対運動が拘束される(または「抑制される」)。
【0049】
支持板210、220の間に延在する筋交い要素230を設けることもできる。筋交い要素の寸法および/または位置は、必要に応じて、電磁石アセンブリ10に作用する予測負荷を適合化するために、支持要素の剛性が修正されるように選定される。こうした負荷は、電磁石アセンブリが動作する場所にある鉄製の建築材(例えば、床および壁の金属補強棒または桁)によって発生する場合がある。特に、磁石間の相互作用に応じて、他の負荷が内部で発生する場合がある。より具体的には、内向きに作用する同軸方向の力が各電磁石100に発生する場合がある。すなわち、電磁石アセンブリ10はまた、電磁負荷の方向が逆になる場合に圧縮状態で動作するように構成可能である。座屈を防止する充分な筋交いが板間に必要とされ、当該筋交い要素は、適切に寸法決定可能でありかつ/または配置可能である。
【0050】
磁気共鳴撮像に関する用途では、MRI装置をその目的地へ輸送する前に、完全にまたは実現可能な範囲で組み立てることが好都合であると考えられる。これにより、数日または数週間の組立時間が節約可能となる。また、初期の組立ておよび最終的な組立てを必要としない場合、必要とされる冷媒の量を低減することができ、したがって貴重な資源が節約され、「環境により優しい」最終製品が得られる。しかし、完全にまたは部分的に組み立てられた装置の輸送中に、コイル110に回転負荷が作用する場合がある。検査が行われない場合、力がコイルを位置ずれさせるかまたは変形させ、その結果、アセンブリの性能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0051】
しかし、接着された支持要素120を設けることで、支持構造200に対して電磁石100が軸線方向に拘束され、かつ回転方向(または「周方向」)に拘束される。
【0052】
付加的に、動作中、コイル110間の電磁的な相互作用は、支持要素120と支持構造200との相互作用によって拘束され、したがって、コイルの軸線方向および径方向の相対運動が防止され、これによりデバイスの性能が最適化される。
【0053】
したがって、本開示の接着された支持要素120は、回転負荷に抗してコイル110を支持し、運搬中および動作中のアセンブリの歪みを抑制し、したがって、最終製品の性能を最適化する機会を増大する。
【0054】
本開示による例示的な電磁石100は、任意の適切な製造プロセスを用いて製造可能である。
【0055】
電磁石100を製造可能な例示的なプロセスは、公知の樹脂含浸プロセスに関連する。当該プロセスの一部として、超伝導ワイヤが金型内に巻き回される。支持要素は、このようにコイルが形成された状態で、支持要素をコイルの外面に接触させて配置される。複数の支持要素が外面に配置される場合、当該複数の支持要素は等間隔で配置可能である。
【0056】
次いで、得られた構造が熱硬化性樹脂で含浸され、樹脂が硬化しまたは硬化させられる。その後、電磁石は、モノリシック構造として金型から取り出される。
【0057】
説明した例示的なプロセスによれば、超伝導ワイヤを巻き回すことによってコイルを形成するステップは、その後の支持要素の追加による影響を本質的に受けない。すなわち、コイルは、支持要素に接着されるかまたは支持要素によって支えられることを本質的に考慮せずに、性能のために最適化された形状に形成される。
【0058】
コイル110と支持要素120との接着はまた、コイルの形成と同時にまたはコイルが形成された後に、樹脂含浸によっても達成可能である。樹脂含浸はコイルの大きな構造強度をもたらすことが知られているが、本開示によれば、当該構造強度がコイルと支持要素とを接着するためにも使用される。注意すべきは、意図される用途にとって充分に強い接着が生じるよう、接着が例えば樹脂へのガラス繊維の追加によって補強可能であることである。特に、接着は、電磁石100間の電磁的な相互作用の反転に応じて発生しうる引張力に耐えうる程度に充分に強くすることができる。
【0059】
代替的に、支持要素120は、樹脂含浸されたコイル110に別個の製造工程で固定される。これは、所望に応じて、極低温用途に適した接着剤を用いて達成可能である。
【0060】
準備された電磁石100は、支持構造200に取り付けられて電磁石アセンブリ10を形成する。当該プロセスは、支持板210、220の間に形成された通路215に電磁石100の支持要素120を配置し、支持要素の穴128を支持板の穴204、206と位置合わせし、位置合わせされた穴を通してピンを取り付けることを含む。対応する穴におけるピン、特に丸ピンの形状マッチングを、高精度で効率的に達成できることに留意されたい。これにより、電磁石の最適な性能を保証する予測可能な負荷分布がもたらされる。
【0061】
特に、磁気共鳴撮像を含む極低温用途に関する用途では、電磁石100は、コイル110が超伝導状態となる臨界温度未満に冷却される。効率的な冷却には、コイルの広い表面積を冷媒に露出することが有益である。好都合なことに、本開示による電磁石100は、比較的広い表面積が露出されたままとなる、比較的小さな支持要素を可能にする。
【0062】
図7図8および図9は、特に圧縮負荷に抗して支持するように構成された電磁石アセンブリ10の代替的な構成を示す。
【0063】
図7は電磁石アセンブリ10の径方向断面図であり、図8は電磁石アセンブリの平面図であり、図9は電磁石100の接線方向断面を示す。図5および図6と同様に、図7および図8は、電磁石アセンブリ10の右側のみを示す点で部分的な図である。すなわち、本質的に同一である左側を図から省略している。
【0064】
図7および図8に示す例によれば、支持板210、220は、一対の電磁石100の間に部分的に延在している。これは、支持板が第1の電磁石から第2の電磁石までの距離の全体に延在する図5の例とは対照的である。別の方法では、図7および図8の例では、各電磁石100に、それ自体の一対の支持板210、220が設けられている。支持板210、220の各対間には、筋交い要素230が設けられている。上記の例では、筋交い要素230間に延在するロッド240を設けることもできる。
【0065】
図7図8および図9の例はまた、支持要素120の代替的な形状を示す。当該例によれば、接着面122は、接着面の範囲を定める周縁部に向かって剛性が低くなる。すなわち、支持要素120は、その接着面122において、周縁部によって範囲が定められる接着面の中央領域に向かってよりも、接着面の周縁部に向かってより柔軟に形成される。当該構成は「エッジ効果」を最小化するのに適している。「エッジ効果」は、圧縮負荷が関係するか引張負荷が関係するかにかかわらず、コイル110に及ぼされる応力に応じて生じうる。コイル110を接着面122に押し付ける圧縮負荷に関して、エッジ効果は、接着面の周縁部(または「エッジ」)に応力集中を生じさせ、当該応力集中により、コイルまたは支持要素に損傷が生じることがある。コイルを接着面から離すように軸線方向に引張る引張負荷に関しては、接着面の周縁部での応力集中が、コイルと接着面との間の接着を損なうことがある。したがって、エッジ効果を抑えることで、支持要素120とコイル110との間の接着不良の可能性も低減される。
【0066】
図10は、本開示による電磁石アセンブリ10’の代替例の一部の径方向断面図を示す。図10に示す例によれば、電磁石アセンブリは、圧縮状態で動作するように構成される。すなわち、使用時、電磁負荷の方向は、各コイル110が共にアセンブリ軸線A-Aに沿うに作用する。座屈に対する抵抗を高めるために、支持板210、220と筋交い要素230とは一体的に形成されている。支持板210、220および筋交い要素230は、中実部分または中空部分を含んでもよい。例えば、支持板210、220および筋交い要素230は、中実部分または中空部分の押出成形品であってもよい。付加的に、支持板210、220の間に画定された通路もしくは空洞215は、支持要素120のみを収容するように寸法決定された局所的な切欠に相当する。したがって、当該構成により、比較的大きな筋交い要素および比較的小さな通路215が提供され、特に圧縮下での座屈に対する高い耐性が得られる。例えばコイル表面112および接着面122の材料の適切な構成および/または選択により、当該例示的な電磁石アセンブリは、張力のかかった状態でも動作可能となり、一体となった筋交い要素230が誘起された負荷を支持する。
【0067】
図11は、支持要素120の代替的な形状を示す。当該例によれば、支持要素は、略台形の断面形状を有する。台形状の脚部(または側面)は、周縁部に向かって剛性がさらに低くなる凸状である。
【0068】
図12は、エッジ効果を低減するように構成された支持要素120の別の代替的な形状を示す。当該例によれば、支持要素は、接着面122の周縁部に向かう切欠部を含み、接着面の周縁部の柔軟性を高める。
【0069】
図13は、本開示による電磁石アセンブリ10’’の別の代替例を示す。当該例によれば、電磁石100は、超伝導コイル110の臨界温度未満にシステムを冷却した後、ピン接続部によって及ぼされる圧縮負荷が維持されるように、支持構造200内に取り付けられる。支持要素120が、ピン接続部の形成のために使用される1つもしくは複数のピン300よりも大きな熱収縮係数を有する場合、システムが冷却されると圧縮を維持することができず、電磁石が充分に固定されない。本例によれば、延長管310がピンの周りに取り付けられ、延長管(または「スリーブ」)は、ピンよりも小さな熱収縮係数を有する。延長管は、支持板210、220およびピン300に当接して、冷却されても支持板を支持要素に対して圧縮し、これにより圧縮を維持するように構成されている。
【0070】
図14は、電磁石100の変形例の斜視図を示す。上述した各例では、少なくとも1つの支持要素120が、第1の軸線方向端面112に接着されている。他の例として、少なくとも1つの支持要素120が、各軸線方向端面112、114に、またはより一般的にコイルの互いに反対側にある外面の各対に、接着されてもよい。すなわち、第1の支持要素がコイルの第1の外面に接着され、第2の支持要素が第1の外面とは反対側の第2の外面の対応する位置に接着される。図14によれば、第1の支持要素120が第1の軸線方向端面112に接着されており、第2の支持要素120’が第2の軸線方向端面114に接着されている。
【0071】
支持構造およびコイルを冷却するとき、かつ/またはコイルに通電するときに、アセンブリ軸線A-Aに沿ってコイルを圧縮するように構成された支持構造を設けることが好都合であると考えられる。当該目的のために、支持構造は、軸線方向に沿ってコイルよりも大きな熱収縮を有するように構成可能である。付加的にもしくは代替的に、支持構造およびコイルは、通電に際してコイルが拡張することにより、支持構造が支持要素をコイルに押し付けるように構成される。好都合なことに、説明した構成は、通電に際してコイルの位置ずれを低減し、また接着の耐久性を増大することができる。
【0072】
支持要素120を軸線方向端面に接着する例に関して、第1の支持要素は、第1の軸線方向端面上の特定の周方向位置に配置され、第2の支持要素が、第2の軸線方向端面上の本質的に同じ周方向位置に配置される。
【0073】
支持要素120を径方向面に接着する場合、上記の支持要素の接着面122は、取り付けられる特定の径方向面に応じて、適切に湾曲しているか、凸状であるかまたは凹状である。さらに、支持構造は、径方向面または複数の径方向面116、118に支持要素または複数の支持要素120を有する電磁石100を取り付けるために適切に適合される。
【0074】
本出願に関連して本明細書と同時にまたは本明細書よりも前に出願され、本明細書とともに公衆の縦覧に付される論文および文献の全てに注意が払われており、こうした論文および文献の内容は全て、参照により本明細書に援用されているものとする。
【0075】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示した特徴の全て、および/または開示した任意の方法もしくはプロセスのステップの全ては、こうした特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互に排他的となる組み合わせを除いて、任意の組み合わせにおいて組み合わせ可能である。
【0076】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示した各特徴は、特に別様の明記がない限り、同一の、等価のもしくは同様の目的を果たす代替的な特徴に置き換え可能である。したがって、別様の明記がない限り、開示した各特徴は、一般的な一連の等価のもしくは同様の特徴の一例に過ぎない。
【0077】
本発明は、上記の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示した特徴のうち任意の新規な特徴もしくは任意の新規な組み合わせ、または開示した任意の方法もしくはプロセスのステップのうち任意の新規な特徴もしくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14